金融審議会金融分科会第一部会(第44回)議事録

日時:平成19年10月3日(水)10時00分~11時50分

場所:中央合同庁舎4号館9階 金融庁特別会議室

○池尾部会長

それでは、ただいまから金融審議会金融分科会第一部会の第44回の会合を開催いたしたいと思います。

皆様、本日はご多用中のところご参集頂きまして、誠にありがとうございます。申し遅れましたが、1月の金融審議会総会におきまして、当第一部会の部会長にご指名を頂きました池尾と申します。よろしくお願いいたします。

それで、会議に先立ちまして、本日の議事は公開とさせて頂いております。報道機関の方々などのために、後ろに席を確保させて頂いておりますということです。

それから、また本日は山本副大臣にお越し頂いております。それから、渡辺大臣、戸井田政務官にもご出席頂けるということですが、ご公務の都合上11時前後に来られるということです。それでは、大臣、政務官がお見えになりましたら、大臣からごあいさつを頂く予定ですが、その際、カメラ撮りもされるということですので、あらかじめお含みおき頂ければというふうに存じます。

それで、本日の会合は、今年1月の委員等の改選後第一部会としては初めて開く会合になりますので、委員等のご紹介と、それから事務局の方にも異動がございましたので、併せまして池田市場課長からご紹介を頂きたいというふうに思います。お願いします。

○池田市場課長

それでは、ご紹介をさせて頂きたいと思います。

まず、第一部会のメンバーの方を座席順にご紹介させて頂きます。

委員の皆様の右側から、太田省三委員でございます。次に、加藤雅一委員でございます。國部毅委員でございます。田川誠委員、田中浩委員でございます。檀野委員はちょっと遅れられているようでございます。次に、東英治委員でございます。嘉治佐保子委員でございます。神作裕之委員でございます。木村裕士委員でございます。黒沼悦郎委員でございます。斎藤静樹委員でございます。島崎憲明委員でございます。原早苗委員でございます。淵田康之委員でございます。若松誠委員でございます。田島優子委員でございます。鴇田和彦委員でございます。殿岡裕章委員でございます。飛山康雄委員でございます。米田道生委員でございます。渡辺達郎委員でございます。

それから、今後の審議に当たりましては、国際銀行協会のポールクオさんにもご参加を頂くこととしております。

また、第一部会以外の委員のうち高橋伸子委員にオブザーバーとしてご出席を頂いております。

また、本日は岩原紳作委員、植田和男委員、佐々木かをり委員、野村修也委員、藤沢久美委員、藤原美喜子委員、堀内昭義委員、上柳敏郎委員、神田秀樹委員、田中直毅委員、今尾和実委員がご欠席をされております。

続きまして、事務局の方のご紹介を申し上げます。

まず、金融庁関係でございますが、委員の皆様方から向かいまして中央左側から、佐藤金融庁長官でございます。それから、総務企画局の三國谷総務企画局長でございます。大藤総括審議官でございます。丸山審議官、岳野審議官でございます。監督局の河野審議官でございます。総務企画局の知原参事官でございます。同じく大森企画課長でございます。監督局の森田証券課長でございます。次に、証券取引等監視委員会事務局厚木次長でございます。同じく野山次長でございます。佐々木総務課長でございます。

次に、向かいまして右側でございますが、私の隣から総務企画局の増田市場機能強化法令準備室長でございます。井藤市場業務管理官、外崎企画官、三井企業開示課長、黒澤国際会計調整室長、それから公認会計士監査審査会事務局の振角事務局長、横山総務試験室長でございます。

次に、財務省から谷口参事官でございます。水野信用機構課長でございます。仲国際局調査課長でございます。

また、監事としまして、鮎瀬日本銀行企画局参事役にご出席を頂いております。

以上でございます。

○池尾部会長

どうもありがとうございました。

それで、最初に、当部会におきましては部会長代理を置くというふうにされておりまして、部会長が指名をすることになっているそうですが、淵田委員に引き続きお引き受け頂きたいと存じますので、どうかよろしくお願いいたします。

○淵田部会長代理

よろしくお願いいたします。

○池尾部会長

それでは、本日の議事に移らせて頂きます。

本日は、第一部会としては最初の会合ですが、この間金融審議会として活動していなかったわけではありませんで、いろいろ議論をしてきておりますので、まず事務局より金融分科会の「我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループ」における議論のご紹介及び当部会、第一部会の今後の運営に関する案等につきましてご説明を頂いて、その後、これらに関してフリーディスカッションをしたいというふうに思っております。本日は自由討議の時間を十分とってありますので、よろしくお願いいたします。

それでは、まず事務局よりご説明をお願いしたいと思います。

○池田市場課長

それでは、お手元の資料、説明資料10月3日付の資料でございます。こちらに沿いましてポイントをご説明させて頂きたいと思います。

ただいま、池尾部会長からご紹介がありましたように、金融審議会では、今年の1月から、我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループ、これは池尾先生に座長をお願いしておりましたが、こちらの方で我が国金融・資本市場の競争力強化に関します議論をお願いしてまいりました。そちらの方の議論が、この6月13日に論点整理という形で取りまとめられております。お手元にそのもの自体は、冊子としてお配りをさせて頂いておりますが、この説明資料、表紙をおめくり頂きました1ページ目と2ページ目にその論点整理の骨子を掲げさせて頂いております。

この論点整理自体は、冒頭、競争力強化というのが喫緊の課題であるという認識に立ちまして、ここの検討課題の1にございますように、多様な商品サービスの提供を通じた厚みのある市場の形成、あるいは市場参加者の高い自己規律に支えられた市場機能の十全な発揮ということが魅力ある市場の前提であるという認識に立ち、以下この2と次のページの3というところで、1つは制度面、制度を含むインフラ面での提言、次のページの3にありますように、そういう制度面というよりも、むしろ各プレーヤーが取り組んでいくべき課題、その2つに分けてさまざまな提言を頂いているところでございます。

2の方をざっと見て頂きますと、冒頭、より良い規制環境の構築ということで、いわゆるベター・レギュレーションの考え方が示されておりまして、例えばマル1にありますように、プリンシプル・ベースとルール・ベースのアプローチの両者を相互補完的なものとしてバランスよく運用していくという考え方、あるいはルールの更なる明確化を図っていくということで、ノーアクションレターの改善などの措置が提言をされているところでございます。

それから、マル2にございますように、本部会における今後の審議にも関連してまいりますが、ルールの適用ということで、具体的には、課徴金制度の見直しといったことが提言をされております。

さらに、マル3の市場制度のところでは、さまざまな提言がございますが、1番目にありますように、取引所における取扱商品の多様化、あるいは3番目にありますプロに限定した取引の活発化といった提言がございます。このあたりについては、後ほど若干詳しくご説明をさせて頂きたいと思います。

それから、その他のところでは、この9月30日に施行されました金融商品取引法制の適切かつ円滑な施行ということとあわせまして、銀行・証券に係るファイアーウォール規制のあり方について提言がなされているところでございます。

2ページ目、そのほかにもこの論点整理では、決済システムについて、より安全性、効率性、利便性の向上を図っていくといった提言、あるいは人材教育の面で、英語で対応できる専門的人材の確保をしていくといったこと、あるいは都市インフラということで、国際金融センターとしての都市インフラの整備といったことも提言をされているところでございます。

また、3にありますように、各プレーヤーが取り組む課題ということで、ここに掲げてありますように、人材の確保あるいは金融イノベーションへの積極的な取り組みとさまざまな論点が掲げられているところでございます。

3ページ目をご覧頂きたいと思います。

金融審議会としては、こうした検討をしてまいったところでございますが、一方、政府部内では、経済財政諮問会議におきましても、こうした市場競争力の問題が議論されてまいりました。この3ページは、経済財政諮問会議での議論を経まして閣議決定をされております「経済財政改革の基本方針2007」、いわゆる骨太2007と言われているものでございます。6月19日に閣議決定をされてございます。こちらの方でも、金融・資本市場の競争力強化のために、取引所等の市場インフラ、プレーヤー、それから市場監視などのアンパイア、こうした分野を包括します総合的な改革プランを策定するということが提言をされておりまして、(2)にございますように、このための金融・資本市場競争力強化プランを平成19年内、今年内を目途に金融庁が取りまとめ、政府一体として推進するということが閣議決定されているところでございます。

その際の重点的に取り組むべき施策としましては、このマル1からマル4が掲げられておりますが、マル1にありますように、取引所の競争力の強化、取引所において株式、債券、金融先物、商品先物など総合的に幅広い品揃えを可能とするための具体策を検討し、結論を得る。

それから、ファイアーウォール規制の見直し、それからマル3にありますような課徴金制度の適用範囲拡大、金額引上げ、マル4にあります規制監督の透明性・予見可能性の向上といったことで、先ほどのスタディグループで提言されているものとかなりパラレルの内容となっておるところでございます。

4ページ以下、今後の審議に関連してまいります各論について若干詳しく資料を並べてございます。

まず、1番目のテーマとしまして、取引所におけます取扱商品の多様化ということでございます。

スタディグループの論点整理では、下線部でございますけれども、海外取引所で上場されているような多様な商品が我が国でも取り扱われることにより、利用者の利便性が向上することが重要であるということで、具体的には、ETFの範囲の拡大と取扱商品の多様化に向けた制度整備について今後、検討する必要があるといったことが示されております。

それから、5ページでございますが、経済財政諮問会議の方では、最終的には先ほどの閣議決定が行われているわけですが、そうした議論の前段階としまして、ここにございます金融・資本市場ワーキンググループというものが組織をされまして、そちらの方で専門的な検討が行われたところでございまして、4月20日にそこの報告が出ております。

こちらを見ますと、この問題につきましては、1つは、ただいまのスタディグループの議論にもありましたように、投資信託やETFに金などの現物及び商品先物を主たる資産として組み込むことを可能にするなど、新しい金融商品を生み出すための制度整備を行うべきであるということ、それと、あわせまして、次の下線部ですが、証券取引所に商品先物、商品先物オプションを上場できるようにするとともに、金融先物、商品先物等も含めた総合取引所の設立を可能とするよう制度整備を行うといったことが提言をされているところでございます。

6ページは、ただいま何度か出てまいりましたETFの上場の状況を整理してみました。

東証では、現在11種類のETFが上場されております。中身は、いずれも株価指数連動のETFということでございます。諸外国の取引所を見ますと、200前後あるいは300前後のETFが上場され、中身としましても、株価指数のみならず商品現物、商品先物等が組み込まれたETFが多数上場されているという状況でございます。

7ページ、プロに限定した取引の活発化でございます。

スタディグループでは、我が国金融・資本市場の国際的な競争力を強化するためには、ホールセール市場での自由度を拡大し、機関投資家等の市場参加者間の競争を通じ金融イノベーションを促進することが重要であるという考え方が示されておりまして、次に、今般の金融商品取引法制の中で、プロ投資家向けの販売・勧誘については行為規制の適用を大幅に緩和するですとか、あるいは従来からございます適格機関投資家といったものについて、その要件の緩和を図るというようなことが行われております。

これらの制度整備をベースとして、ハイリスク商品等の取引を含め、ホールセール市場におけるプロに限定した取引を一層活発化させていくための方策について検討を行っていくことが重要であるということが提言されております。

8ページですが、経済財政諮問会議のワーキンググループの方でも直接的な意味での市場参加者をプロに限定することで、過剰な規制を受けることなく、自己責任原則の下で自由に活動できる市場を拡大していくことを目指すべきであるといったことが提言されております。

9ページは、今般の金融商品取引法制での適格機関投資家の対象の拡大、あるいは新しく導入されました特定投資家についての制度を説明したものでございます。ちょっと説明は割愛をさせて頂きたいと思います。

10ページは、銀行・証券間のファイアーウォール規制の点でございます。

この点につきまして、スタディグループでは銀行・証券に係るファイアーウォール規制のあり方については、利用者利便の向上や金融機関の適切かつ効率的な業務運営の確保等の観点とともに、利益相反や優越的地位の濫用の防止の観点も踏まえ、必要十分なものとなるよう、今後、金融審議会の場において早急に検討を開始するべきであるとされているところでございます。

11ページのワーキンググループの方でも、同様にファイアーウォール規制の検討が掲げられております。

12ページに銀行・証券間のファイアーウォール規制につきまして、簡単にまとめたものをつけております。

ご案内のとおり、銀証分離は、米国の1933年のグラス・スティーガル法で、当時の大恐慌を受けまして、銀行の証券業務を制限するという規定が存在しているところでございます。我が国でも、こうした規制を参考に、戦後制定されました証券取引法の65条、これは現在、金融商品取引法では33条になっていますが、原則として銀行の証券業務を禁止しているということでございます。

一方、1993年、平成5年に金融制度改革が行われまして、業態別子会社方式による銀証の相互参入を解禁したところでございます。この相互参入に当たりまして、弊害を防止するという観点から、銀行と証券子会社等との間のファイアーウォール規制を導入したということで、具体的には、ここにありますように役職員の兼職禁止、あるいは非公開情報の授受の禁止、信用供与を利用した抱き合わせ行為の禁止等の規制が行われているところでございます。

その後、実態を踏まえながら、弊害の少ない場合には規制を緩和するといった措置も講じられてきておりまして、例えばここにございますように、店舗の共用制限ですとか、内部管理業務のための情報の授受、あるいはコンピューターの共用といったことについて規制を緩和してきているところでございます。

13ページは、課徴金制度でございます。

スタディグループの報告では、課徴金制度は、平成17年の証券取引法改正で導入をされたわけでございますけれども、こうした課徴金制度のエンフォースメント手段としての有効性に対する認識も高まってきているという認識を示した上で、今後、市場の公正性・透明性の一層の向上を図り、より実効的な抑止効果をもたらす観点から、これまでの実施状況も踏まえ、課徴金制度のあり方について、その対象範囲や課徴金額の水準も含め、見直す必要があると。今後、法制面での専門的な検討を進め、おおむね平成19年内を目途に結論を得るべきであるとされているところでございます。

経済財政諮問会議の方でも、課徴金の範囲と金額の拡大の問題について速やかに具体的な検討を行い、結論を得るべきであるといったことが提言をされてございます。

15ページから若干課徴金の関係の資料をつけさせて頂いております。平成17年に導入をされまして、下の方にこれまでの課徴金納付命令の実績を書いてございますが、インサイダーの関係で19件、発行開示、継続開示は、重複計上が、下の注にありますように3件ありますので、差し引きますと6件ということになるかと思います。インサイダーと合わせまして25件の実績がこれまであるということでございます。

16ページに制度の概要を並べておりますが、現在の課徴金制度の対象、1にございますように、不公正取引では、インサイダー取引、相場操縦、風説の流布・偽計、こうしたものが課徴金の対象とされているところでございます。

また、ディスクロージャー関係では、有価証券届出書あるいは有価証券報告書の虚偽記載について課徴金が導入されているということでございます。

金額の水準については、違反者の不当な経済的利得を基準といたしまして、ここに掲げてありますような算定方法が規定されているということでございます。

それから、除斥期間、いわゆる時効のようなものかと思いますが、除斥期間は3年と規定されております。

課徴金の納付命令は、内閣総理大臣から委任を受けました金融庁長官によって行われるところでございます。一定の要件を満たした場合には、課徴金納付命令を行わなければならないという規定となっております。

17ページにありますように、納付命令を行いますときには、監視委員会からの勧告を受けて、金融庁長官が納付命令を行うわけですが、その際には、審判官3名からなります合議体による審判手続が行われるということになっております。

18ページですが、この課徴金制度につきましては、2年前に西武鉄道の問題等がございましたときに、証券取引法の改正が行われまして、継続開示に係ります課徴金制度が導入をされました。その際、議員修正の中で、改正法自体の附則に、おおむね二年を目途として課徴金に係る制度のあり方等について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとするということとされております。この法律は、17年12月に施行されているところでございます。おおむね2年といったことで、検討の時期が来ているというふうに認識をしているところでございます。

それから、課徴金につきましては、先般の金融商品取引法におけます国会審議の中でも附帯決議がございまして、制度全般のあり方について検討を進めることとされているところでございます。

最後、19ページでございますが、以上を踏まえまして、今後の第一部会の運営についての案を掲げさせて頂いております。

内容をご紹介させて頂きますと、1の審議事項にございますように、「貯蓄から投資へ」の流れを推進し、我が国金融・資本市場の競争力の強化に資するため、スタディグループの論点整理における指摘等を踏まえ、以下の課題を中心に制度面からの検討を行うと。

1つ、取引所の取扱商品の多様化、2つ、プロに限定した取引の活発化、3つ、銀行・証券間のファイアーウォール規制、4つ、課徴金制度の見直し等ということでございます。

2にございますように、上記の課題のうち、課徴金制度の見直しの問題につきましては、第一部会の下に法制ワーキンググループを設置し、まずそちらの方で専門的な観点からの検討を頂いて、そこの検討結果を踏まえて、最終的に第一部会として考え方を取りまとめていくということとさせて頂いてはどうかということを書いてございます。

検討のスケジュール、3でございますが、ご紹介しましたように、骨太2007では、金融・資本市場競争力強化プランを年内を目途に金融庁が取りまとめると、これ自体は金融庁が行政として取りまとめるわけですが、ここでご審議頂きますテーマは、その中でも重要な位置付けを占めてくるものというふうに認識をしておりますので、このスケジュールにかんがみますと、第一部会におきましては、年内を目途に報告書を取りまとめて頂きたいというふうに、私どもとしては考えているところでございます。

以上、概要をご説明させて頂きました。

○池尾部会長

どうもありがとうございました。

それでは、ただいまから事務局の説明を踏まえて、今後の当部会の運営等につきまして、あるいは市場の競争力強化に関しまして、全般的なご意見や個別のイシューでも結構ですが、ご意見を頂きたいというふうに思うんですが、今ご説明の最後にありましたように、金融・資本市場競争力強化プランを年内にまとめるということに部会としても対応する形で、年内に報告書をまとめるということになると、もう年内って言われても、10月、11月、12月と2カ月半ぐらいしかない状況で、したがって、論点として具体的に取り上げられるものはやっぱり絞り込まざるを得ないということで、4つの論点ですね、取引所の取扱商品の多様化、プロに限定した取引の活発化、それから銀行・証券間のファイアーウォール規制という、それから4番目が課徴金制度の見直しという、ほかにも重要な論点は当然考え得るわけですが、時間的制約等から考えると、この4つの点を中心に議論をせざるを得ないのではないかというのが1つですね。

それから、そのうちの課徴金制度の見直しに関しましては、既に金融審議会でも議論がされてきていまして、これの意義ということについては、もうコンセンサスができているわけですね。今の時点で、課徴金制度が必要かどうかとか、そういう議論をする必要はもう既にないわけでありまして、意義については確認がされているということですので、そうすると、より具体的な、やや技術的な面も含む検討をするということが必要になりますので、そういう趣旨から、部会で直接議論をするというよりは、法制ワーキンググループというのを設置させて頂いて、そこで専門的に技術的な面を含めて議論して頂いて、その結果を部会に報告してもらうと、フィードバックしてもらうというふうな形で、この4つ目の点については議論をしてはどうかというふうなことを案として考えているということでございます。

ということで、4番目の課徴金制度見直しに関しましては、今後中心の議論がワーキンググループで行われるということになりますので、現時点で議論に対して発言しておきたいと、課徴金制度見直しに関してこういう点を特に十分検討して欲しいとか、そういうご意見がございましたら、お願いしたいということです。

それでは、順次議論をしてもいいんですが、十分に自由討議の時間がとってあるとはいいましても、委員の方々も多いので、お一人方二、三分ずつ発言して頂くと、もうそれでいっぱいになると思いますので、各委員の方から一番ご発言したいポイントに関して、順不同で結構ですのでご意見を頂ければというふうに思います。

どうぞ、じゃ、木村委員から。

○木村委員

審議事項が4点に限られているということですけれども、全体的に、「中間論点整理(第一次)」とあるんですが、この先第二次、第三次っていうのがあるのかどうかっていうところをまずお聞きしたいというのと、この中身については、基本的に、国内の金融・資本市場が非常にプレゼンスが落ちているということで、そういう問題意識のもと、魅力を強めて、国民の利益を増進させるという趣旨、目的については大賛成ということでございます。

ただ、プロが活躍をすると、プロの活性化ということについても、これは十分理解するところですけれども、そのほかのアマの部分についても十分な投資家保護ルールが、実効性が確保できるようなことが大前提になってくるだろうというふうに思います。

それから、ファイアーウォールの関係ですけれども、銀行・証券各業界、現時点でこの金商法の施行に伴います体制整備に現場は追われているというようなことを聞いております。実態については、各業界の方々からお聞きをした上で判断をすることになるというふうに思いますけれども、現行の規制の見直しにつきましては、現在の業界の体制整備の進捗状況を見ながら慎重に検討をしていくべきではないかと。ただ、この慎重に検討というのは、前も私どこかで使ったら、反対だというふうに新聞に書かれたんで、そういう反対という意味ではございませんので、慎重に対応時期等を見きわめてやって頂きたいということでございます。

それから、その際いわゆる利便性向上、消費者保護という観点も入れて頂いて、ルールをしっかり作って頂くことも必要でございますけれども、一方でそのルールが適用される現場、そしてそのお客様との接点となっている窓口といいますか、そういったところが双方ともルールの内容なり、その背景をしっかり理解をした上でその対応が図られていくということではないと、かえって消費者の利益を損なうということにもなりかねないというふうに思いますので、十分注意をして頂きたいと。

それから、釈迦に説法的なところもあるんですけれども、証券市場全体の活性化だとか、あるいは国内金融・資本市場のプレゼンス向上のためにはどのような制度的な対応が必要で、解決に向けた課題は何かといった幅広い視点でのご検討をぜひお願いしたい。ともすると、このパイの奪い合いとか、業態間の争いみたいな狭い議論にして頂きたくないという思いから発言をさせて頂きました。

○池尾部会長

どうもありがとうございました。

最初のご質問については、私が答えるのがいいのか、事務局から答えて頂くのがいいのかわかりませんが、ちょっと私自身の考えを申し上げますと、我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループというのは、スタディグループという名前からもわかりますように、問題を発見するというか、問題を掘り起こすというのが任務、ミッションだったと思うんですね。

それで、掘り起こされた問題に対して、解決とか政策的な対応を考えていかなければいけないわけですが、その段階に関しましては、やはり法制度の変更等を含むような議論が必要になるわけで、そういたしますと、やはり正式の金融審議会の部会を開いて議論をして頂く必要があるということで、第一部会等を現在開いてご議論をお願いしているということだと思うんですね。

それで、年内に競争力強化プランをつくれば、それでもう金融・資本市場改革の話は終わるということでは到底ありませんので、来年以降さらなる議論をしていかなければいけないという中で、問題を掘り起こすような議論が必要な局面では、またこの同じグループかどうかわかりませんが、類似の形で議論をして、二次以降の報告書をまとめるということもあると思うんですが、今は一応発見された問題に対して、対応を考えるというステージですので、正規の部会での議論を中心にやって頂く局面ではないかというふうに私自身は理解しておりますが、よろしいですか。

ほか、ご意見いかがでしょうか。嘉治委員、どうぞ。

○嘉治委員

ありがとうございます。このスタディグループの報告書を見ますと、例えば目次の(1)のマル1に、規制プロセスとありまして、かなり詳細に述べられています。それと比べますと、本日の議事次第は、例えば14ページで、(2)のマル1マル2とございまして、マル1のところに確かにそれに対応することが書いてございますけれども、マル2にアンダーラインが入っておりまして、その後はほぼマル2の内容に関するお話になっているように見受けられます。最後の19ページでは、審議事項(1)、(2)、(3)、(4)とございまして、その中にはこの規制プロセスのところでこのスタディグループの報告書が述べているような内容は登場しないように見受けられますが、これは自明だから審議する必要がないのでここに挙がっていないということなのでしょうか。内容を見ますと、比較的に大事なポイントではないかと思われますので、ここで審議事項に挙げないこと自体はご判断だと思いますけれども、そのことによって、このスタディグループの論点整理の中から、この規制プロセスに関する議論が忘れ去られていくということがあってはいけないのではないかと思いました。

○池田市場課長

おっしゃるようにこのベター・レギュレーション、より良い規制環境の構築の中の規制プロセスのところについては、今回の審議事項には掲げていないわけですけれども、これは、こうしたベター・レギュレーションへの取組みが、法令の改正等による制度改正ということでいいますと、必ずしもそれらに直結をするというものではないということから、この第一部会で取り扱うということには掲げていないところでございます。

ただ、今ご指摘ありましたように、我が国市場の競争力強化ということを考えますと、極めて重要な要素であることは、私どもも認識をしておりまして、このベター・レギュレーションの肉づけにつきましては、今後庁内で真剣に議論をし、最終的に金融庁として取りまとめますプランの中には、恐らく極めて重要な柱の一つとして掲げられていく要素になるだろうというふうに考えているところでございます。

○池尾部会長

私自身も、金融・資本市場改革の最も中身となるべきなのは、ご指摘の点である、良質な規制環境を構築するということが、即、金融・資本市場改革の現時点での一番中心的な課題だというふうに思うんですが、ただ、その良質な規制環境の構築というのは、一編の法律をつくれば実現できるような話ではないので、総合的に取り組んでいかざるを得ない課題だということで、重要性という点においては、嘉治委員の指摘されたとおりというか、それ以上に重要だというふうに私も思っております。

それでは、ご意見を順次ほかの委員の方からも頂きたいんですが、いかがでしょうか。

じゃ、國部委員。

○國部専門委員

私は、スタディグループにもメンバーとして参加をさせて頂いておりましたので、この最後の19ページにあります4つの論点について議論を深めていくということについては賛成でございます。

1点、3番目の銀行・証券間のファイアーウォール規制についてですが、例えば情報の共有であるとか、役職員の兼務規制といったファイアーウォールと称せられる弊害防止措置と、その目的であります利益相反の防止、あるいは優越的地位の濫用という問題は、銀行と証券の間だけの問題ではなくて、銀行と証券並びに信託、あるいはリース、クレジットカードと、こういうさまざまなグループ間の問題になると思います。

まさに金融グループとして商品を提供していくために、どういう規制がいいのかという議論だと思います。

また、銀行・証券の問題につきましても、ファイアーウォールだけではなくて、業務範囲の問題もあるわけでございます。皆さんご承知頂いているとおり、世界の金融の流れというのは、総合的な金融サービスの提供ということでございまして、企業が資金調達するときに、ローンだけではなくて、エクイティ等を含めた資金調達、あるいはリースと、こういう総合的な提案をしていくことが我が国の金融産業の競争力を強化していくという方向に資するということでございます。従いまして、そういう観点を持って検討を進めていくべきだと考えております。

それで、見直しの第一段階といたしまして、銀行・証券間のファイアーウォール規制について議論をすることは賛成でございます。従いまして、金融審議会あるいは金融庁さんに対するお願いということになるかもしれませんが、中間論点整理の中でも、11ページに、金融グループに対する業務範囲規制のあり方等も含まれているわけでございますので、利用者利便の向上という観点、あるいは金融産業の競争力強化という観点から、金融グループあるいは金融コングロマリットに対する枠組み、あるいは規制のあり方の検討というのを金融・資本市場競争力強化プランの中に盛り込んで頂ければというふうに考えております。

以上です。

○池尾部会長

ありがとうございました。

じゃ、田中委員。

○田中専門委員

今回の審議については、「貯蓄から投資へ」の流れを推進して、金融・資本市場の活性化を図る、これが目的だと思います。それを考えるに当たって、非常に単純化した整理になりますが、利用者という概念と、サービスを仲介する会社、すなわち業者という概念を持ち出した場合、利用者と業者の双方にとってメリットがないと、いくら枠組みを作っても市場は活性化しないと私は考えます。

そういったときに、本当に利用者にとってメリットがあるのは何なのかをきちんと整理せずに、業者や行政の立場から、こうあるべきだというのが先に出てくると、形は作ってもうまくいかないということになりかねないと思います。そのような中、今、金融庁の方で、利用者保護の徹底ということを考えられているわけで、これは本当にいいことだと思います。

それで、本当に利用者の保護が確保される中で初めて、先ほども申しました市場の拡大が実現できるのだと思います。そういった中で、利用者の保護を基本観とした場合、この、(1)、(2)、(3)の各項目について考えた場合、本当に利用者にとって意味があることなのかどうか。中には、業者サイドの方で、利用者にとってこれは意味があるはずだという先入観なり、思い込みがあってこういうことが掲げられてはいないか。そのあたりのところを慎重に見きわめるのが非常に重要なことだと思います。

特に、3番目の銀行・証券間のファイアーウォールの規制に関しましては、グローバルの流れの中でものを考えるのも必要ではありますが、それと同時に日本の現状の金融システムの特異性も踏まえた上で、本当にどのような仕組みが利用者保護に寄与するのかを考える必要があると思います。多少具体的に言えば、日本の金融行政の中で、やはり銀行の置かれているポジショニングは、諸外国と比べてその存在が非常に大きいかと思いますので、そのあたりの特殊性を十分に踏まえた上で、利用者保護という観点を考えなければいけないと思います。

それから、4番目の課徴金制度に関しまして、これは金融市場におけるいろいろな違反行為を摘発・指摘するのは、非常に技術的に難しいところがあります。そういう面で、この課徴金制度を的確に利用することによって抑止力を発揮することが非常に重要だと思いますので、課徴金制度の充実を期待したいと思います。

以上です。

○池尾部会長

ありがとうございました。

じゃ、原委員、それからその次。

○原委員

先ほど國部委員からご発言があったファイアーウォールのことについて、私もちょっと同様な考えを持っておりまして、実際にはその情報の授受とか、信用の供与とか、こういったことが今の規制の中で入っていることを考えると、証券と銀行だけではなくて、その範囲はやっぱり金融グループということになると思いますので、適切な範囲ということも含めて検討を進めて頂きたいと思っております。

それから、私としては2点意見を申し上げたいと思っておりまして、1つは金融商品取引法の施行ということですね。これによって、かなり市場も活気が出てくるというのでしょうか、私ども消費者から見ると非常に多様な商品が登場してきているということがあって、これは今回の審議事項の中にも取引所の取扱商品の多様化というところで触れられていますけれども、4つのことを考えておりまして、1つは、取引所に上場する場合の取引基準ですね。これは、法律の規制ではなくて、取引所の基準になるとは思いますけれども、やはりこの基準の明確化が必要だと思います。

それから、2つ目は、ファンドの開示義務です。これは、内容と、それからわかりやすさです。今、広告の規制が導入されたために、9月ぐらいから金融広告は変わってきてはいるのですけれども、ただ、文字の大きさは確かに変わっているんですけれども、やはりその表している内容、それからリスクの程度とか、そういう意味ではまだ私は非常に不十分さを感じておりまして、やはりこの開示の内容が大事だと思います。

3点目は、適用除外とされる範囲を無限定に広げないということですね。その開示義務をかけても、その開示をしなければいけない範囲というのが、非常に限定された範囲でしか行われていないと、ほとんどの外部の人たちが野放しというような状況にならないように、その商品を手にする人、目にする人にはきちんと開示された情報が届くようにして頂きたいと思います。

4つ目は、金融消費者教育の重要性はいつも書かれてはいるのですが、もう一つ私がすごく感じているのは、これほど多様な商品を金融機関内部の人たちは本当にわかってやっていらっしゃるのかなっていうのがあって、私は2つの大学で、今経済学部で教えているのですが、教えた子たちは、金融機関に就職する人達が多いのですよね。だけれども、私の話はものすごく意外そうに聞かれることが多くて、すごく基本的な金融論は聞いていらっしゃるだろうと、大学の講義で聞いていらっしゃると思うのですけれども、やはり今の状況にフィットした大学教育になっていないんじゃないかなと、今日大学の先生がいらっしゃると大変恐縮なのですけれども、これは私ども消費者の方の教育も大事ですけれども、やはりその中にいらっしゃる方の人材育成ということも、触れられておりますけれども、大事だと思っております。

それから、2つ目の意見ですが、課徴金制度の拡充には大賛成です。これは導入した当初から、最初は小さく入れて大きく育てようということでしたので、賛成なのですが、ただ、気になりますのは、1つは行政処分の強化がありますね。それが左側にあるとすると、右側の端には刑事罰がありますね。刑事罰がなかなか動かしにくいからということで、この課徴金制度を入れて、実際にはペナルティーとして有効になるだろうと、この3つの柱で考えられていると思うのですが、この柱を立てたときに、落ちてしまうのが被害救済の観点です。

ここについては、報告書の7ページに、実際には紛争処理制度の充実ということで書かれてはいます。それから、金融商品取引法の中にも認定投資者保護団体の規定がありますので、もちろん問題意識としてはだれもが抱えていることではありますけれども、私はやはり被害救済の観点ということも今後の民事ルールの中では大変大きなことだと思いますので、12月までというタイムリミットの中では間に合わないかもしれませんけれども、ぜひ大きな課題として継続して検討して頂きたいと思っております。

以上です。

○池尾部会長

それでは、若松委員。

○若松委員

久しぶりに開催された会合なので、ちょっと抽象的なことを申し上げさせて頂きたいと思います。

まず、審議事項の進め方について、この4つに整理されて、特に課徴金制度についても、技術的な問題は専門家の方々に議論して頂いてフィードバックという、その議論の方向性、今ご説明があったことには、私はその方向で賛成です。

ただ、先ほど一部の委員からもご指摘があったように、やはりこれは国民的視点に立って、一般国民にとってこの改革、方向性が結局はプラスになるということが明確にわかるような 形で、進んでいくべきではないかと私は思います。福田政権も発足して、改革を進めながらも、行政を国民的視点から立って進めていきたいと、総理の最初の所信表明演説などで考え方を披露されています。

私もスタディグループに参加させて頂いて、時々ふと感じることは、この議論している  テーマは、確かに今後の高齢化社会を考えると、議論していることがうまく理想的に実現した暁には、結果として一般国民にもプラスになると、それは何遍も議論してきました。でも、今国民がこの議論、テーマなどを、例えば新聞報道、テレビの報道などで見た場合、どうも一部の競争力のある金融機関がより活躍できるというか、より業績を上げやすくする結果にだけ つながるんじゃないかという疑問を多少持たれないかと、私はそういう誤解を与えるような結果になっては、いけないと思います。

そういう意味においては、特にここに出てくるこの(3)、(4)の議論のときには、  日本の今の金融市場を活性化させなきゃいけないですけれども、それとともに、やはりこれが最終的には国民の、一般国民にとってもプラスになるのだという視点を絶えず持って、専門家の方がその課徴金制度の部分においても、その議論を詰める際にも、そういう視点に立って ぜひ議論の方も進めて頂きたいと思います。

以上です。

○池尾部会長

ありがとうございました。

いかがでしょうか。今日は初回ですし、各委員からできましたらご意見を。

東委員。

○東臨時委員

市場の競争力強化という趣旨でこれまで議論をしてきたわけですが、過去何年かで制度ですとか法律とかは随分整備されてきたと感じています。

ただその結果、日本の市場の世界の中でのプレゼンスが上がったのだろうかというと、どうもそういう印象がない。例えば、時価総額という株式市場の大きさで見ても、むしろ劣化しているような印象さえある。これは、制度が悪い、あるいはその日本に何か問題があるからそうなのかというと、どうも私はそうではない気がします。事実として、売買代金の六、七割が海外の投資家が売り買いをし、かつ、過去5年間で、ずっと外国人投資家が日本の株を買い越し、日本人投資家は売り越しているという状況が続いています。ですから、今回は時間も少ないので、先の4つの論点に絞るということについては賛成ですけれども、なぜマザーマーケットの投資家が売り越しを続けているのかについての議論が必要ではないかと思います。自国のマーケットにより参加しやすい、あるいは参加する気になるという、ここの仕組みが十分ではないのではないか。ですから、ここはもう少し大きな枠組みになろうかと思いますけれども、やはり税制ですとか年金のあり方ですとか、日本の投資家のすそ野が残念ながら海外に比べて小さい現状に対する対策が必要であろうと思います。今回の議論ではございませんけれども、やはり方向感としては、今後より重視すべき論点ではないかというのが1つ目でございます。

その上で、今回の4つの論点で、1番目と2番目は今申し上げた趣旨では方向は賛成でございます。

3番目のところの考え方として、私は2つ軸を入れた方が良いと考えています。1つはプロ同士の話であれば、それはそれでいいと思うんですけれども、一般投資家がかかわる話について、そことの利益相反なりという、ここは一つの線を引く考え方ではないかというふうに思います。

それから、もう一つは、緩和することによって、今度は市場機能をゆがめないかという、ここがもう一つ視点として重要なのではないかと、そう考えております。

以上でございます。

○池尾部会長

ありがとうございました。

じゃ、田島委員。

○田島臨時委員

審議事項の4つ目の課徴金制度の見直しについて、1つ要望させて頂きたいと思います。

信頼される金融・資本市場の実現のために、やはりルール違反を行う者を適切に排除していくということが第一だと思いますが、それを原則として刑事罰によって実現するのではなく、やはり金融監督当局が機動的に課徴金を課すという対応で、それを本則として実現していくことが大事だろうと思います。

そのためには、先般も初めて導入するということで、課徴金の対象も限定し、金額も抑制して設定されたと思いますけれども、その対象範囲も広げて、そしてもう一つぜひご検討頂きたいのは、その金額につきまして、経済的利得の剥奪ということに限定するのではなく、税法上いわば重加算税に該当するようなペナルティー的な要素を課した金額への引き上げということをご検討頂きたいというふうに考えております。

以上です。

○池尾部会長

ありがとうございました。いかがでしょうか。

では、島崎委員。

○島崎委員

何人の方からか、インサイダーの関係の話がありましたので、ちょっとその点でお話しさせて頂きます。2年前の証取法改正時に、私もインサイダー問題について意見書を出させて頂いたわけですが、2年たってみて、先ほどお話あったように20件の勧告案件があったということで、この法律の効果が出てきていると思います。また、立法の趣旨も、マーケットあるいは国民の皆さんからも理解されているんだと思います。初めからこの法の網をくぐって何か不当利得を得ようなんていう会社は、恐らく上場会社に少ないんだろうと思います。時々何かおかしな人がいますが、普通の人はそうじゃないと思うんです。最近私の周りで起こっていることを見ますと、企業が報酬の一部としてとか、あるいは合併の対価として自社株を利用するというような行為が増えてきています。自社株を動かすということで、インサイダー取引がらみの問題が発生しますが、インサイダー取引の重要事実の中身を見ていくと、形骸化しているようなものもあるわけで、そういうものの今日的な見直しというのはぜひともお願いしたいと思います。それから、重要事実がいつ発生しているのかということにつきましても、かなり判断の難しいケースもあると思います。実際、私どもは事前にいろいろ弁護士事務所等にも相談しますけれども、なかなかピンポイントの話が返ってこないケースもあるわけでして、その辺のところについても、このワーキングの方で議論を深めて頂きたいと思います。

以上です。

○池尾部会長

ありがとうございました。引き続き、いかがでしょうか。

先ほども言いましたが、初回ですので、できれば各委員の方から一言ずつはご意見を頂きたいというふうに思いますが、まだご発言頂けていない委員の方で、じゃ、米田委員、お願いします。

○米田専門委員

先ほど来議論されていることと重複するのかもしれませんけれども、私も市場の運営者として、市場周りに直接絡んだことは第一、第二の論点だと思います。要すれば、ここにも書いてありますように、市場の国際競争力というものが、非常にこう劣後してきていると。これはもう市場の一端を担う人間として、ひしひしとそういったものは現実問題として認識しております。

この問題については、4年前のこの審議会でも議論されましたし、もとをたどれば証券ビックバンの時から、こういった国際競争力をいかに高めるためにどうやっていけばいいかということで、いろんな制度面の手当てもなされてきているわけですね。

今回、上場商品の多様化ということに絞って議論する、それはもう全く私も異論はありませんし、一方でプロ向けの市場を作ってもいいんだと思います。ただ、やはりその根底になっているのは、そういった商品の多様化だけでは済まない、要すれば、日本の証券市場、これはもう私どもが直接的にやるんですけれども、イノベーションが起きてこない市場だと、それは何なんだという根底のことを踏まえた上でやはり議論しないと、単に上場商品を多様化しましたというだけで済まない問題があるのかなという感じを持っています。

これは私どもの問題意識ということで、そういう感じを持っておりますので、そういった観点の議論というものを踏まえないと、また同じような形になっていくという感じじゃないかなという感じを持っているんです。

以上です。

○池尾部会長

どうも。まさに10年前の頃から、その当時の蝋山先生がおっしゃっていましたけれども、目的は、投資家保護を徹底するということと、もう一つは、おっしゃったイノベーティブな金融サービス産業を健全に発展させること、その2つを軸として実現していかないと本当の意味の改革として意味はないんだということを、ずっと蝋山先生がおっしゃっていたと思いますが、その両面の両立ということが、今なお大きな課題として、残念ながら残っているといいますか、取り組んでいかなければいけないという状況かと思います。いかがでしょうか。

黒沼委員。

○黒沼委員

今後議論していく課題の1つとして挙がっているプロに限定した取引の活発化について、疑問といいますか意見を申し上げたいのですが、これは今後第一部会の場で議論していけばいいことだと思いますけれども、今日お配り頂いた資料の1、金融・資本市場ワーキンググループの第一次報告では、少し具体的に、プロであれば過剰な規制は必要ないとし、そのかわりに、コンプライアンスと内部統制の体制を確立すべきだというようなことが書かれています。

ところが、その上の段のところでは、市場参加者にコンプライアンスと内部統制の体制が求められると書いてありまして、投資家についてもこういうものを求めていくというふうにも読めるのですが、下のところでは、市場参加者をプロに限定し、業者の側におけるコンプライアンス、内部統制体制の確立を前提としてとあって、ここでは、業者側の規制を考えているようにも読めるのですね。このあたりはどうもよくわからないので、もし答えて頂けるならばお答え頂きたいのですけれども、どういうことかといいますと、結局プロ投資家を、投資家として規制の対象に乗せるのか、それとも業者という位置付けで行政規制の対象に乗せるのかということです。ここは、今後の議論の対象かもしれませんけれども、どういうことを考えているのかはっきりしないということであります。

特に、市場に関するルールについては、一律に今までは投資家に対して適用があるところを、もし一部の投資家に対してそれを外して、その代わりに法令等遵守体制と内部統制体制の整備を求めるということにしますと、これは業者として何らかの行政規制に取り込んでいくということが必要になると思うのですけれども、そういうところまで視野に入れて議論をしていくということなのでしょうか。ちょっと疑問に思いましたので、発言しました。

○池尾部会長

今、言及されたのは8ページのところ、直接言及されたのは、8ページのところですね。

○黒沼委員

スタディグループでは、そこまでは議論はなされていないのでしょうか。

○池田市場課長

スタディグループの中で、具体的に制度として、どうこのプロ向け市場について仕組むかというようなところまで突っ込んだ議論が行われたとは記憶をしていません。

それで、ただ、アマとプロとをある程度区別して考えることによって、アマに対する投資者保護を徹底しつつ、イノベーティブなものを同時にプロの世界では実現していくというようなことができる余地があるのではないかという発想で、この問題に言及がされているということだと思います。

ただ、当然に、プロの背後にはアマがあるわけであります。直ちにそこに黒沼先生がおっしゃったように、何か業法的な規制をかけるのかどうかという、そういう制度論をしてきた、あるいはしようとしているというわけではありませんけれども、直接の参加者はプロでありますが、機関投資家の背後には一般の投資家があるわけですから、そうしたときに、その機関投資家というものがそういう自由な市場の中でしっかりとどういう行動をしていくかという規律が、これは制度として求めるかどうかはまた別途の問題としても、そうしたものが重要になるという発想は存在するのではないかというふうに考えるところです。

いずれにしても、制度の問題については、スタディグループで、あまりこのところについて突っ込んだ議論があったわけではないと認識をしていますので、今後、むしろこの第一部会でご議論頂く問題だと考えています。

○池尾部会長

だから、私なんかも、いわゆる市場型間接金融を前提にしてプロ向け市場ということを考えていますので、プロ向け市場に参加するプロっていうのは、市場型間接金融を担っている金融機関というのが、私なんかのイメージでは中心をなすもので、その限りにおいては一定の業者ルールの適用対象になるというふうなイメージを私個人は持っておりましたけれども、今課長からご説明がありましたように、それについて明示的にスタディグループで議論してきたというわけではないので、今後黒沼先生からも問題提起をして頂いて、議論を深めていければというふうに思います。

それでは、渡辺大臣が来られるということですので、ここで1回、ちょっとインターミッションで議論を中断させて頂きたいと思います。カメラが入るそうです。

それでは、渡辺金融担当大臣、戸井田政務官がご到着になりましたので、早速ですが、大臣からごあいさつを頂きたいと思いますが、よろしくお願いします。

○渡辺大臣

このたび、福田内閣の金融大臣に再任をされました渡辺喜美でございます。金融審議会の委員の皆様には、大変日ごろのお仕事を抱えている中でこうしてお集まりを頂きまして、誠にありがとうございます。

ご案内のように、9月30日、金融商品取引法が施行されました。私のところには、山のような苦情のメールが来ておるのでございます。何でこんな法律作ったんだよ、こんなことじゃ、買う方も売る方も厄介でしようがないじゃないかなどというたぐいの話が大半でございます。

私もこの法律にかかわった者の一人として、非常に残念に思うんですね。やはり、我が日本の皆様方、ちょっとリスク過敏症に陥っておられるような気がいたします。やはり、売る方も、作る方も、お買いになる方も、こうしたリスクの説明ということには大いにこれから慣れていって欲しいなと、つくづく思うのでございます。

また、渡辺さん、こんな規制厳しくしたらみんなシンガポールへ逃げちゃいますよ、こういうお話も頂くんですね。やはり、市場の公正性の確保、透明性の確保、これと使い勝手のよさというのも一つのジレンマかもしれません。

いずれにしても、我々はもう既に後戻りできない段階に入ってしまっているわけでございます。豊かさを実感できる社会を作っていくためには、やはり「貯蓄から投資へ」という流れを確実なものにしなければならないと思います。ずっとデフレが長い間続いております。こういう先進国は日本だけであります。日銀の短期金利が0.5%に上がったといっても、銀行の預金金利は0.2%ぐらいしかないわけですね。

一方、電力株でも買っておけば、配当利回り2%余りで回ったりするわけでございます。日経225の平均配当利回りでも1%を超えるぐらいでしょうか。そういうことを考えれば、やはり1,550兆円を超える個人金融資産をいかに上手に使い、運用をしていくかということこそが、まさしく豊かさの実感できる社会につながるかということでございます。この金融審議会第一部会においては、さまざまな課題についてご議論を賜っておるわけでございます。すぐれた市場を構築するという視点、内外の市場参加者にとって魅力のある市場を作るという視点から、制度面からのさらなるご検討を進めて頂きたいと思います。

どうぞよろしくお願いをいたします。

○池尾部会長

どうもありがとうございました。

それでは、カメラ撮りは以上ということで、カメラの方はご退出をお願いいたします。

それでは、引き続き議論を続けたいというふうに思いますので、まだ委員の方でご意見を頂いていない方もいらっしゃると思いますので、ぜひ、どのような点に関しましても結構ですので、ご意見を頂ければというふうに思いますが、いかがでしょうか。

せっかく大臣が来られていますので、大臣の前で何か一言言っておきたいことがございましたら、お願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

○原委員

今大臣のお話を聞いていて、苦情が山のように来ているっておっしゃられていましたが、金融庁にも来ているのですか。報道にもいろいろ、この法律の評価も含めて、滑り出しのところでいろいろな記事が出ていますけれども、法律策定に携わった者としてはどういう評価を受けているかというのは、これからのステップアップを考える時にも非常に重要だと思いますので、ぜひどういう意見が来ているかという、苦情とおっしゃられたけれども、意見なのだと思いますが、どこかの段階でお示し頂くと、またこれからのいろいろな議論の参考になるかと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

○池田市場課長

私ども現場の方に、苦情というような形と評価するかどうかはわかりませんけれども、特に30日の施行に向けては、大変多くの照会が、業界の方からもありましたし、あるいは法律事務所の方などからも、大体私の聞いているところでは日に200件程度の照会がある。これも施行が近づくにつれて、だんだん終息はしてきているというふうに聞いていますが、我々はそうした照会への対応をしている状況で、我々としても政令、内閣府令は出しているわけですけれども、それだけではなかなか現実の当てはめがはっきりしないというようなものについては、できるだけ丁寧に照会等には対応しているという状況で、それを、私どもの観点からいうと、聞いておられる方は、その気持ちは大臣のところにメールで届けているような気持ちをお持ちなのかもしれませんが、我々との関係では、一応照会とそれに対する回答の立場なので、明確には苦情ということはおっしゃりません。内心はそう思っておられる方も少なくないのかもしれませんが、我々はそういう丁寧な対応に努めて、何とか円滑な施行をしていきたいというふうに考えている状況です。

また、状況を、必要があれば整理して報告したいと思います。

○池尾部会長

ご発言しづらいかもしれませんが、専門委員の方で、どういう受けとめ方をされているかとか、どうぞ。

○田中専門委員

先ほど大臣がリスクに皆さん過敏になっているとおっしゃいましたが、業者の立場から申し上げますと、この新しい法律の趣旨は十分理解しています。ただ、検査対応上十分かという観点から見て、どこまでそれを実際の業務の中に組み入れたらいいのかという部分において、かなり多くの金融機関が非常に過敏になっていて、法令に対応しているというエビデンスをどうやって残すかということで、これでもか、これでもかとやっているのが実情です。そのため、お客様からすると、非常に何か不便に感じられるというのが今の状況かと思います。ただ、このあたりは、時間とともにだんだんこなれてくるのではないのかと思っております。

以上です。

○池尾部会長

檀野委員。

○檀野専門委員

私、不動産証券化とか不動産投資市場で実業の日々を送っておりますが、今回金商法の立法過程の当部会でも、プロ同士に限定した取引については、一定程度の緩和措置をということで発言させて頂いたこともございまして、今度の金商法については、それがかなりの部分実現しているのではないかなと思っております。

ただ、かなりの不動産業者が今回の業登録に向けて、現在コンプライアンス体制、それから内部統制も含めた管理体制の整備を進めておりますが、やはり法とか、それから政令、内閣府令で不明確な部分が残り、かなり戸惑っているところもあるのではなかろうかと思っております。

従いまして、今後監督とか、それから検査の段階で、今回の金融イノベーションを実現していく、促進していくという観点から、法の適用をやっていくべきではなかろうかと。そういう意味では、今回4つに絞って議論していくということでございますけれども、それぞれにベター・レギュレーションのあり方とか、そういったところについてもフィードバックしながらあわせて議論していくことが有益ではなかろうかなと思っております。

○池尾部会長

ありがとうございました。

○渡辺大臣

この際言いたいこと全部お聞かせ頂ければと思いますが。

○池尾部会長

では、東委員、どうぞ。

○東臨時委員

金商法については、その商品の範囲を広げ、かつ問題のある業者が結果的に排除されることになるという意味では大変良い枠組みになったと考えています。

ただ、結果的に金融商品の情報提供ですとか、広告を出すときに何が起きているかというと、ディスクレーマーというか、言い訳が非常に多くなっています。これは、本当にリスクをきちっと伝えるという趣旨では充実させるべきだと思うのですが、一方で感じますのは、どんどん説明が多くなっていくということが本当に一般投資家のためになっているんだろうかという点です。かつて、投資信託の目論見書があまりに厚いために、現実的には読みにくいというので、簡便な資料を作りましょうということで非常に簡素化した資料でも勧誘できることになりました。しかし実際には、お客様がその簡便なものだけではなくて、本当の目論見書が欲しいと言われたときに、すぐに渡さなければならない。募集期間がそう長くはありませんから、結果的に何が起きたかというと、最初から両方作って、両方渡すというケースが多くなったそうです。このコストは結果的に投資家に転嫁されますから、そこのコストアップと、本当に一般投資家の方が必要な情報とは何なんだろうかという視点が重要だと思います、商品の資料の読みやすさというと語弊がありますけれども、理解のしやすさ、本当にリスク・リターンのバランスが投資家に伝わる方策というのはどうあるべきなのか。金商法が施行され、今後もう少し時間が必要だとは思うのですが、一般投資家に対しての情報提供のあり方については、やはり一番気をつけてみていかなければならないと思っています。

○池尾部会長

どうぞ、鴇田委員。

○鴇田専門委員

金商法につきましては、ベンチャーキャピタル業界はおかげさまで、いわゆる特例業務を設けていただき、基本的には、従来の業務にそれほど支障を来さないよう、ご配慮いただきました。ただ、私どもが対象とする市場、特に新興市場は、ご高承のように、マザーズ、ジャスダックを始めとして、会計不信等、いろんな問題・課題により、大変低迷しています。

従って、ベンチャー企業がIPOしたがらないとかですね、当然産業の活性化も遅れます。そうしますと、産業活性化を通して雇用創出を図り、さらに規模拡大を図っていく私どもとしましても非常に難しい局面にあるわけで、こういった状況を変えていくには、やはりここに4点ある中で、2点目のプロに限定した取引の活性化を図っていくべきだと思っております。先ほどもお話がありましたけれども、やっぱりイギリスのAIMのような専門家の集団を対象とする市場を整備し、金商法で投資家を保護するのとは別の観点から、プロの投資家、金融機関とかいうような機関投資家だけではなくて個人のプロ投資家の規定とか、その辺の整理もして、もっと積極的にやらないとアジアの各市場からも取り残されるという危機感を抱いております。

以上でございます。

○池尾部会長

どうも。ほかにご意見、いかがでしょうか。

田川委員、まだご発言頂いておりませんが。

○田川専門委員

それでは、信託に携わっている者として、信託の観点から一言申し上げたいと思います。

先ほど、今回の議論の議題となっておりますこの4点について、特に銀証間のファイアーウォールのことを含め、世界的な大きな流れの中で議論をすべきであるとのご意見がございました。まさに、私ども銀行だけではなく、日本の金融制度そのものが、欧米に追いついていく段階に来たわけですが、昨今の、情報が非常に速く伝達されるグローバルな世界においては、アジアの中でも急速に改革が進んでおり、日本の制度改革を遅らせることが、結果的に日本が欧米に追いつくどころかアジアも含めて世界から取り残されてしまうということになりかねないということを危惧しております。そういう意味では、ぜひこの改革を進めて頂きたいと思います。

我が国の信託法につきましては、おかげさまで、昨年84年ぶりの改正を行って頂き、金融商品取引法とあわせて、この9月30日より施行されております。一方、中国におきましては、まだ信託法ができて10年にも満たないわけですが、この日本の信託法改正の動きについて様々なところでヒアリングを行うなど、既に次の改正へのステップを踏んでおります。中国の信託法というのは、まだまだ改正する余地があると思われるのですが、常にそのように先を見て改革を進めているというのが現状でございます。そういったことを考えますと、我々は、あまりのんびりしたことを言っていられないと思います。

もう一つの側面として、何人かの委員の方から、日本の実情や、本当に今これが消費者や国民にとって必要なのかを考えるべきだというご意見が出ておりました。まさにこういう視点は非常に大事だと思います。長い目で見たときに、本当にこの金融制度が改革されていくことが結果的に消費者、そして国民の利益になるのかどうかということまで踏み込んで議論を進めていくべきであると考えております。

以上でございます。

○池尾部会長

ありがとうございました。ほかにご意見、ございませんでしょうか。

神作先生。

○神作委員

審議事項の(3)に挙げられております銀行・証券間のファイアーウォール規制に関連いたしまして、さらにより抽象的、一般的な観点からコメントをさせて頂きたいと思います。

銀行・証券間のファイアーウォールの規制の趣旨といたしましては、中間論点整理にも挙げられておりますように、大きく2つ、利益相反の防止と、それから優越的地位の濫用の防止、この2つの観点があると書かれており、いずれもその通りだと思いますけれども、以下のコメントでは、利益相反の観点に絞って発言をさせて頂きたいと思います。

利益相反規制のこれまでの考え方というのは、基本的には画一的、事前的、予防的な規制をして、利益相反行為はそもそもやってはいかんという、そういう規律の仕方だったかと思いますけれども、恐らくそれではかえって利用者の利益にならない側面があるということが認識されてきたのだと思います。それが、恐らく世界的に見ても、金融コングロマリット化が進んできており、それによってむしろイノベーションが進んで利用者の利便も高まっていると認識されているという側面があろうかと思います。

従って、やはりここでは大原則、すなわち利用者の利益の最善化という、そういう大きな原則のもとに利益相反の規制がどうあるべきかということを考えていく必要があると思うのです。けれども、他方で、この利益相反の問題の非常に難しい点といたしましては、害された側は最後までそのことに気付かないという点に大きな特徴があるかと思います。

従って、利益相反の規制を考える場合には、何よりも透明性の確保ということが非常に重要だと考えておりまして、少なくとも害された側は害されたかどうかがわかる、あるいは監督する側にとっても、利用者を害していないかどうかということがわかるということが重要であります。恐らく、先ほどのご議論を聞きますと、監督される側にとっても組織的に方針を立ててきちんと対応していくことの方が、対応がし易い、そういう観点もあろうかと思います。

従って、ここは中間論点整理にも出ております、ルールと、それからプリンシプル・ベースのアプローチをどういうふうにベストミックスさせていくか。それから、また他方で、後半の方には、フィデューシャリー・デューティーの考え方の重要性というものがうたわれておりまして、そういった論点にすべてかかわってくる問題かと思いますけれども、利益相反規制で、あくまでも利用者の最善の利益のためという、そういうプリンシプルを貫きつつ、他方で透明性を確保し、それを通じた投資家・利用者の側からの信頼の確保、監督官庁の側から見れば、きちんと監督ができる、監督の実効性の確保、こういった観点から検討をしていく必要があるのかなと思いましたので、一言述べさせて頂きました。

○池尾部会長

ありがとうございました。

斎藤先生。

○斎藤委員

今の神作先生のご発言について、全く同感でありますけれども、そのなかでルール・ベースとプリンシプル・ベースという言葉が出てきました。これは結構便利な言葉なので、特にホールセールなんかですと、すぐにプリンシプル・ベースに飛びつくのですね。

ところが、プリンシプル・ベースといっても、実際に運用する局面では、その解釈を通じてルールまで落とし込まざるを得ないと思うのです。そうしますと、結局プリンシプル・ベースをあまり強調し過ぎて、むしろルールからプリンシプルに後退するという規制の仕方をとりますと、結局インプレメンテーションのレベルで非常に恣意性が介入して、結果として不透明になるという点を私は強く危惧いたします。

その意味で、特にホールセールとかプロ向けの議論をする時に、単にプリンシプルという話をするだけじゃなくて、結局やっぱりルールそのものの簡素化という観点から、ルールの世界できちんとした議論を詰めておいて頂かないと、ちょっと心配が残るという気がいたしますので、一言コメントさせて頂きます。

○池尾部会長

どうもありがとうございます。それは、私も同感で、本当にルールメーキングの積み重ねをもっとしなければいけない段階に、実はまだあるんじゃないかという気の方が非常に強くいたしていましたので。

あと、淵田委員、いかがでしょうか。

○淵田部会長代理

今年の前半までは、日本もアメリカもこの資本市場の競争力問題で盛り上がっていたわけですが、ご承知のように、夏以降サブプライム問題が表面化しました。これが山を越えたのかどうかという議論もさることながら、明らかなことは、これが資本市場の制度議論にも今後さまざまな影響を及ぼしていくということであります。今回の第一部会の議論の項目として4つ挙げられております。これはスタディグループでの議論を踏まえたものでありますので、今年前半の問題意識を掘り起こしてこの第一部会で議論するという流れになっておるわけですが、世界の資本市場における制度論議の今後の行方次第では、もしかしたら今後日本でもこれ以外の課題にも取り組む必要が出てくるのかなという気がいたしております。今の段階で、これに何かつけ加えなくてはいけないとか申すつもりはありませんけれども、これからの議論においてもそうした変化が生じているということを念頭に議論していくことが必要だと思っております。

○渡辺大臣

ちょっといいですか。

○池尾部会長

はい、どうぞ。

○渡辺大臣

サブプライムローン問題については、私の私的懇談会として、金融市場戦略チームというのを立ち上げまして、これはこういった審議会とはちょっと異質のチームでございます。まず、大学の先生が一人も入っていないというメンバー構成になっておりまして、実務に携わる第一線の方々に入って頂いております。

できれば、11月ぐらいまでに第一レポートをまとめたいと思っておりまして、もしそちらの方のチームで話がしたいという方がいらっしゃれば、早目に事務局の方にお申し出を頂ければと思います。

○池尾部会長

ありがとうございました。他にご意見、ございますでしょうか。

それでは、大体ご意見をお出し頂いたということで、説明資料の最後のページ、19ページに戻りまして、「今後の金融審議会第一部会の運営について(案)」というふうになっておりますが、これまで頂いたご意見で、この案に関してネガティブなご意見はなかったように伺いましたが、ここの案のような形で、今後審議を進めていくということでよろしいでしょうか。ご承認頂けるでしょうか。

どうもありがとうございました。それでは、こうした方針で、運営をさせて頂きたいと思います。

それでは、運営案にございます法制ワーキンググループですね、それを設置するということですが、課徴金制度等に関して専門的な観点から検討して頂くということで、このワーキンググループの座長ですが、黒沼委員にお願いしたいというふうに思っておるんですが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。

ありがとうございました。

それでは、黒沼先生、せっかくですから、一言。

○黒沼委員

課徴金の問題は、以前に第一部会で報告書を出しまして、それに沿った法制の整備が必ずしも十分に行われていなかったという面と、これまでの実施状況を踏まえて見直しが必要になったという面と、双方があると思いますけれども、専門的な観点から、実務と理論の両面から検討して第一部会に報告をしたいと考えております。

以上です。

○池尾部会長

ありがとうございました。

そうしましたら、法制ワーキンググループのメンバーに関しましては、黒沼座長とご相談の上決定させて頂きたいというふうに思いますので、ご了解ください。

それでは、本日の審議は以上ということにさせて頂きたいと思いますが、この後記者会見が一応あるようで、会議の模様につきましては、私と事務局の方からご紹介させて頂くということにしたいと思います。

それでは、最後に事務局から今後の会議等のご連絡をお願いいたします。

○池田市場課長

次回の第一部会の会合でございますが、10月17日水曜日の午後1時から3時までということで開催をさせて頂きたいと思います。

次回は、東証の斉藤社長、それから大証の米田社長からお話を頂いた上で、取引所市場等をめぐる諸問題についてご議論を頂いていくということにしたいというふうに考えております。

また、3回目以降の日程につきましては、今事務局の方から委員の皆様方の日程を伺っているところと思いますが、早々に固めまして、予定をできるだけ前広にご連絡をさせて頂きたいと思います。どうかよろしくお願いをいたします。

○池尾部会長

それでは、以上をもちまして本日の会議は終了とさせて頂きます。どうもありがとうございました。

以上

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