金融審議会金融分科会第一部会(第45回)議事録

日時:平成19年10月17日(水) 13時00分~15時00分

場所:中央合同庁舎4号館9階 金融庁特別会議室

○池尾部会長

それでは、定刻になりましたので、ただ今から、金融審議会金融分科会第一部会、第45回の会合を開催いたしたいと思います。皆様には本日ご多用中のところご参集頂きまして、誠にありがとうございます。

それでは、会議に先立ちましていつもの通りですが、本日の議事は公開ということで行わさせて頂いております。それから今日の会合は日程調整が非常に難しくて残念ながら欠席の委員の方が多くおられます。定足数等はもちろん達しておりますので会合としては成立しておりますが、淵田委員、岩原委員、植田委員、神作委員、野村委員、藤沢委員、藤原委員、堀内委員、上柳委員、神田委員、今尾委員、田川委員がご欠席ということになっております。ただ、本日は渡辺大臣及び戸井田政務官にお越し頂いております。また後ほど山本副大臣につきましてもご公務の都合がつきましたらお越しくださるという見込みであります。

それでは、大臣、何か一言ご発言されますか。

○渡辺大臣

本日はご多用のところご参集を賜りまして、誠にありがとうございます。今日は東証の斉藤社長と大証の米田社長にお越しを頂きまして、大変前向きのご提言が聞かれるものと期待をいたしております。今日のヒアリング事項の紙にも書いてありますように、我が国証券取引所の取扱商品はちょっと少ないと思うんですね。私の大臣室にはボードがございまして上から下まで全部入っています。私のときに追加をしたものもたくさんありまして、例えばCRB指数とかそれから金価格、WTI、日米の長期金利、それからLIFFEとかたくさん追加をしたのでございますが、いずれにしてもせっかく稼いだ富をたくさん持っている国民がすぐそばにいるわけでございますから、このお金の運用がもっと便利になると大変すばらしいなとつくづく思うものでございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○池尾部会長

大臣、どうもありがとうございました。

それでは、早速本日の議事に移らせて頂きます。本日以降は何回かに分けて論点のうちの「取引所における取扱商品の多様化」、それから「プロに限定した取引の活発化」といういずれも取引所市場をめぐる論点につきまして、ご審議を頂きたいというふうに思っております。

本日はその第1回目として、まず事務局より証券市場の現状等につきましてご説明を頂いた上で、東京証券取引所の斉藤社長及び大阪証券取引所の米田社長からヒアリングをさせて頂くということになっております。その後、それらを踏まえてご自由にご討議を頂くことといたしたいと思います。

それではヒアリングに先立ちまして、まず事務局よりご説明をお願いしたいと思います。

○池田市場課長

それでは、お手元の資料1に沿いまして本日のヒアリングあるいはその後のご討議のバックグラウンドとして関係する計数等につきまして簡単にご紹介をさせて頂きたいと思います。

表紙をおめくり頂きまして1ページ目でございますが、我が国株式市場の変遷を図に整理をしております。平成10年のところに二重線が縦に入っておりますけれども、いわゆる金融システム改革法が施行されました。この際、市場間競争ということが一つの重要なキーワードとされ、その後、新興市場の創設ですとかPTSの導入、あるいはグリーンシート市場の創設等、ここに掲載されていますような多様な取組みが行われているということでございます。

2ページでございますが、1ページは株の現物市場の関係ですが、金融先物・オプション市場でもここに書いていますように多様な新商品の導入が行われているということでございます。

3ページでございます。以上の変遷の中での証券取引所の現在の概要を整理したものが3ページでございます。現在、証券取引所ということでいいますと6つの証券取引所がございます。上の方で職員数が書いてありますが、東京証券取引所757名、大証204名という比較的大きな取引所、一方で例えば最少の札幌取引所では15名というような職員でやっており、規模としてはさまざまな取引所がございます。取引量等についてそこに計数を掲げてありますが、下から4行目、3行目あたりを見て頂きますと株の現物売買高、売買代金ということで言いますと、90%を超える取引が東京証券取引所で行われているということでございまして、他方、下の2行で言いますと、デリバティブの分野で見ますと大証において東証をしのぐ規模の取引が行われているということだと思います。

4ページでございます。米英の株式市場を見ましても我が国と同様に重層的な市場構造がとられている、むしろ正確には米国などの市場の構造をモデルに我が国市場制度の整備をしてきたということかと思いますけれども、重層的な市場構造というものが形成されているその状況を比較したものでございます。

5ページですが、国際的にはそうした中で特に欧米におきまして取引所の統合の動きが急であるということでございます。細かくは見て頂くとしまして、大きいグループで言いますと、一つはNYSEユーロネクストのグループが経営統合を行っている。それから右の方でドイツ取引所のグループというのが、またもう一つ大きなグループとして存在をしている。それから下の方にありますナスダックあるいはロンドン証券取引所の間でも現在買収をめぐる動きがあるということで、いずれにしましても取引所間の統合の動きが急であるということでございます。

そうした中で、我が国の市場が国際的に見てどういう状況にあるかということで幾つかの資料を並べさせて頂きました。まず、6ページが株式の現物市場の状況であります。これは時価総額を比べたもので株価動向等に左右される面も少なからずあるとは思いますが、例えば一番下、1991年で言いますと東証、大証の上場株式時価総額はNYSEと並んで世界第二位、第三位の規模であったわけでありますが、一番上の2006年の計数を見て頂きますとNYSEとは随分水をあけられた状況にあり、またナスダック、LSE、ユーロネクストといったようなところが伸ばしている、また香港、上海、韓国、シンガポール等のアジアの市場も成長をしているという状況かと思います。

7ページでございます。ETF、いわゆる上場投信といった世界でも品揃えということでは計数を整理しますとこんな感じで、現在東証で上場されています上場投信、ETFは11銘柄でありますが、各国取引所を見ますと200あるいは300近い銘柄数がある。またETFの内容を見ましても株式指数以外にも先物、商品現物関係も含めまして多様なETFの上場が行われているということでございます。

8ページはETFの銘柄数の3年間の推移を各取引所について計数を拾ったものでございます。NYSEあるいはユーロネクストについては2006年、2007年、ここ数年に急速な拡大をしているという状況かと思います。

9ページは債券の状況であります。左で見て頂きますと債券の上場総額で見ますと大証、東証と大きな規模になっておるわけですが、中身を見ますとその対象が公共債でございまして、民間債ということで言いますと非常に少ない規模であるということが言えるかと思います。

10ページでございます。デリバティブの関連を並べました。ここで数字を見る限り現物以上に諸外国のマーケットに対して水をあけられているという状況かというふうに思います。

以上、株の現物、それ以外のETF、債券、デリバティブ等々の状況でございます。こうした中で先ほど大臣からもありましたが、取引所の取扱商品の多様化についてどう考えていくかということが一つの論点になるということでございます。

11ページからは株式市場の状況に関しての資料を並べております。11ページは我が国株式市場での投資主体別の株式の保有比率の推移を図にしたものであります。1980年代の後半から金融機関、事業法人等、これは持ち合いの解消等もあって保有割合が低下をしていく、一方で外国人の保有割合というのは非常に上昇している。その中で個人の保有割合というのはおおむね20%前後で横ばいの状態にある。そうした中で、下の図は日々の株式の売買の中での比率でございますが、委託売買代金に対する比率で現在外国人の占める割合が60%前後でございまして、その他では個人が主たる売買のプレイヤーになっているわけですが、30%弱といった水準にあるということでございます。

以上が全体の計数でありますが、これを取引所の区分ごとに分解してみますと、この黒いところが個人の割合ですが、東証一部では最近時点で28.2%が個人、大証一部で24.5%が個人ということでありますが、13ページを見て頂きますと、東証二部、大証二部あるいはマザーズ、ヘラクレス、JASDAQといったところを見ますと8割近い売買の主体が個人であるということでありまして、マザーズ、ヘラクレス、JASDAQ、これらを仮に新興市場と称するといたしますと、こうした新興市場では8割近くが個人を中心としたマーケットになっているというのが現状だと思います。

14ページは我が国新興市場での上場銘柄数の推移を整理したものでございます。上場銘柄数自体は増加を続けているという状況かと思います。

15ページに若干、海外のマーケットとの比較をしてみますと、一つ目立ちますのはLSE、ロンドン証券取引所あるいは下のナスダック、あるいはロンドンのAIMという市場を見ますと、かなりこの棒グラフが上と下に伸びています。上が新規上場、下が上場廃止という数字でありますが、上と下双方にかなり大きい棒グラフがあるということで、この計数を見る限りにおいてかなり「出」と「入り」と両方がダイナミックに動いているということが言えようかというふうに思います。

16ページでございますが、我が国新興市場の売買高の状況を見ますと、この1年、2年かなり低下の状況が売買高、売買代金双方について見られるということでございます。

17ページですが、そうした中で株価水準も日経平均自体はここのところはおおむね横ばいあるいは緩やかに上昇しているわけですけれども、新興市場の株価自体はあまり奮っていないという状況かと思われます。

それから18ページでございます。我が国の株式市場におけます新規公開時あるいはその後の公募増資によります資金調達額の数字を国際的に比較をしたものでございます。上の方で見て頂きますと、NYSE、ユーロネクスト、ロンドン、香港等と比べますと我が国におけます新規公開時IPOあるいは公募増資の額は非常に少ないものにとどまっております。資金供給機能という観点から必ずしも本来の機能を発揮していないという指摘もあり得ようかというふうに思うところであります。

19ページはやはり株式市場の上場企業の国籍別の構成比を整理したものでございます。上の方の左側で見て頂きますと、我が国の東証あるいは大証では99%あるいは100%が国内国籍の企業であるということでございます。諸外国を見ますとニューヨークではこの比率が86.7%、ロンドン証券取引所で77.7%ということで、国際性ということでは若干差異があるということかと思います。

20ページは、今の海外企業の比率を新規上場企業に占める割合ということでフローの計数で拾ったものでございます。

最後に21ページは、グリーンシート市場の状況について1枚グラフを付けさせて頂きました。グリーンシート市場についてここ数年売買高の増加なども見られるところではありますけれども、銘柄数ということでいいますと2006年で90銘柄ということで非常に限定的な銘柄数にとどまっているというのが現状かと思います。

以上が資料1のポイントのご説明でございます。以上のバックグラウンドデータを踏まえましてお手元に資料2と資料3をお配りさせて頂いていますが、今日、斉藤社長、米田社長の方には、池尾先生ともご相談をさせて頂きまして、この資料2の紙を事前にお渡しをさせて頂いておりまして、今日のヒアリングの中でお聞かせ頂きたい主たるポイントについてまとめてございます。1番目は今ありましたような国際的なプレゼンスの低下ということについてのご認識、あるいはその背景についてのお考えを伺いたいということ。それから2番目の○ですけれどもそうした認識を踏まえて今後の取組み方針についてお聞かせ頂きたいということ。それから3番目に取り扱う商品の多様化あるいはプロに限定した取引の活発化ということを中心として制度面でのご要望があればお聞かせ頂きたいということでございます。

それから併せてちょっと資料3にも触れさせて頂きたいと思いますが、ヒアリングをさせて頂いたあと自由討議を頂きたいというふうに考えておりますけれども、その際の主たる論点をメモにしたものでございます。

1は、今のヒアリングメモの方の冒頭の上の部分にあったもののほぼコピーでございますので説明は割愛させて頂きたいと思います。

2ページ目で1つは、「取引所における取扱商品の多様化」ということについて、取扱商品の多様化を図っていく必要があるのではないかということ、その際にはどのような商品の拡大を図っていくことが求められるか。それから2番目のところですが、金融商品取引所において、商品現物や商品先物を直接組み込んだETFあるいは商品先物取引等を取り扱うことができるようにしていくこと、こうしたことについてどう考えていくかということ。

それから「プロに限定した取引の活発化」ということで内外の企業の資金調達機会あるいは投資家の収益機会を拡大するための工夫として、プロに限定した取引を活発化させることについてどう考えるか。その際どのような方策が求められるかということ。

それから最後4として上記2、3に関連して考慮しておくべきことがあるかといったことを一応論点として並べさせて頂きました。どうかよろしくご討議頂きますようにお願いいたします。

○池尾部会長

どうもありがとうございました。それでは早速ですが、ヒアリングに移りたいと思います。

まず、本日は、東京証券取引所の斉藤社長にお越し頂いております。お忙しい中お越し頂きまして誠にありがとうございます。まず、斉藤社長の方から20分程度お話を伺えればというふうに思いますので、よろしくお願いします。

○斉藤参考人

斉藤でございます。本日はこういう席で東証の実情等々ご説明させて頂く機会を得ましたこと大変ありがたく思います。時間の制限もありますので早速お話に入らさせて頂きたいと思いますけれども、お手元にあります「我が国金融・資本市場の国際競争力強化に向けて」という資料をベースに説明をさせて頂きたいと思います。

ご案内のように1989年に東京証券取引所は世界最高のレベルの株価をつけまして、それ以来、鳴かず飛ばずなんですけれども、1990年から金融界といいますか証券界に何が起きたかというのはご案内の通り、やはりリスクというものを数学的にはっきり定義する技術が世界に定着したと、そしてそれを把握する能力、人材を特にアメリカを中心に育成した、そしてこれを業として管理するという体制を経営ベースとしても樹立した、この背景はやはりコンピュータ、インフォメーションテクノロジーが机の上で扱えるようになったということだと思います。このリスクを売買するという本来の証券業務の位置付けが非常にはっきり捉えられたということだと思います。結果としてはよく言われますように証券化やデリバティブあるいはヘッジファンド等々が生まれたわけでありますが、結局こういうものをタネにして今日あります資本市場、金融市場のM&Aというようなものが、非常に体系立ってこの十数年間伸びてきました。

残念ながら日本の証券金融市場というのはいろんな理由もありましてこの流れにうまく乗れていない、未だに乗れていないと思います。これは一つには人材の育成等々において遥かに遅れてしまっているということかと思います。しかし諸外国、アジアの諸国も含めてこれをマスターした国は、この金融産業の育成というものを通して結局は国家、国民の富を大変大きなものに変えつつあるということかと思います。池田課長のお話と少しだぶるのですけれども、“Where are we?”今我々はどこにいるかと、そして我々は今何をしようとしているかということを東京証券取引所の立場としてちょっとお話をさせて頂きたいと思います。

お手元の資料の1ページをご覧いただきますと、今お話があった通りでありますけれども、東証の株価指数が1989年にピークをつけまして以来、資料に書いてありますように1989年12月の東証の時価総額というのは円ベースでは610兆円、このころ円は比較的強いものですから610兆円ぐらいしております。今は先ほどお話がありましたように530兆ぐらいですから、この18年間ぐらいで日本は伸びるどころか、実は時価総額は減ったということであります。ニューヨークは、資料はドルベースで書いてあるのでわかりにくいのですが、ざっくり言いますと日本が610兆ぐらいあったときに四百数十兆円しかありません。それが今1,800兆円と、ニューヨークだけでなっております。ニューヨークはそれに加えてご案内のようにユーロネクストがありますので、実は両方足しますと2,200兆円ぐらいになります。ロンドンも日本より遥かに少なかったわけですけれども、いまや470兆円ぐらいになってきておりまして日本に近づいてきました。大体どこもそうなのですが、表の一番右にあります上海をご覧になりますと1億6,400万ドルしかなかったものが2兆3,823億ドル、145倍に膨らみました。これはもう270兆円ぐらいになってきておりますから上海だけで相当日本に近づいてきているというようなことが起きているということであります。

よく言われますように、アメリカのこの2,000兆円、実は持ち合いですとか法人持ち株というのはほとんどありませんので年金と信託を加えると、ニューヨークの市場は90%以上が個人ですから、この400兆から1,800兆に増えた1,400兆円分はアメリカ国民の可処分所得に変わったと、こういうふうな形で現在の国家というのは国民の富を増やし、国力を増やしているということでありますが、一方で、日本は先ほどご説明したような状況であったということであります。

資料の3ページをご覧になりますと、アジアが特にすごい数字が出まして、89年、これは上海、香港、深センを足しました時価総額は日本の50分の1でございました。ところが新聞報道にありますように2007年に至りましてこのブルーの線がはるかに東証の時価総額を追い越してしまったということで、この中国の3つの取引所の時価総額はもはや東証よりも上にあるということであります。我々が今何をしなければならないか、もちろん製造業、輸出産業というのは大事であるということは否めないわけでありますけれども、その産業構造だけに頼って国富を増やすという政策が本当にこのまま続けられるかどうか、もはや1年間に2,300万人の教育を受けた中国の低賃金労働者が市場に間接的に毎年出てくるわけであります。そういう労働者を使わなければ日本のメーカーといえども競争ができない時代になって、その結果日本でいろいろ格差の問題などが出てきているわけでありまして、このような状況の中、我々は国家戦略として金融産業というものを大きく育てる必要があるのではないかというふうに思っているわけであります。

先ほどお話がありましたように取引所関係ではどういうことが起きているかというと、一つはITの競争、コンピュータの能力アップであります。よく言われますように10ミリセカンド、1,000分の1秒のスピードで取引をするということですけれども、いまやシカゴでは3ミリセカンドの取引を繰り返しております。まさしく万分の数秒という取引で8つぐらいの市場の市場インパクトから何からすべて一気に計算してしまうという機械を持って取引を展開しておりまして、もう人間の力ではありません、全部コンピュータにインプットするだけでコンピュータ同士が取引をするというような時代に入っている。もう一つは商品の品揃え競争に入っている、必死になってどの国も自分のところに魅力ある商品を並べるという、これはもう国家間のものすごい競争になっております。

もう一つは、先ほどありましたように国境を越えたM&Aが活発化しているということかと思います。一方、伝統的なキャッシュ市場、これはロンドン、東京、ニューヨークというのが三大キャッシュ市場と言われましたが、この実情はいろいろ違っておりまして資料の4ページをご覧になりますと世界の金庫番を自認しておりました New York Stock Exchangeの株数ベースでの市場シェアはどんどん下がってきておりまして、もはや60%を切らんとしております。ましてやその右側をご覧になりますと、一約定当たりの売買株数が実に小さな株数に変わってきておりまして、ニューヨークの社長さんなどと話しますと、これが彼ら一番の悩みであります。これは誰がこのシェアを食っているかというと、実は取引所以外の市場、PTSとか表現はいろいろありますが、証券会社が作った市場あるいは証券会社をもスキップするバイサイド同士が行う取引であるブロックトレーディングという大きな玉の取引はもうそちらへ流れてしまいまして、ニューヨークといえども取引所へ流れてこないということが起こっております。一方で、取引所にはよく言われますようにアルゴリズムというような小さく刻んだ取引がいっぱい来ております。しかしながら、実はその10%ぐらいしか約定しない、注文を瞬時に90%キャンセルする能力、これもコンピュータにやらせるのですけれども、機械がオーダー執行とキャンセルを一瞬にしてやるというようなオーダーがニューヨーク市場には実は集中しているために、株数で見てもシェアは落ちていますが、特にこの一約定当たりの売買株数が下落しているということであります。従って、ニューヨークはこの対策に手を伸ばしまして、パリにまで手を出してNew York Stock Exchangeがユーロネクストを買収したということであります。

資料の5ページをご覧になりますと、これは取引所そのものの時価総額であります。CMEが3兆3,000億円と断然大きいわけでありますが、香港は2兆8,000億円に至っております。 New York Stock Exchangeとユーロネクストの足したものは2兆円しかありませんから、何と香港の方がもうNYSEユーロネクストよりも大きくなっているということであります。ここにちょっと小さく書いていますけれども、実は欧米人が非常に今気にしているのはオーストラリア、この市場も急速に実は伸びてきておりまして、この市場では自由化というのが非常に促進されているということであります。

それからドイツですが、これはデリバティブを中心とする市場で特徴を持っておりますけれども、2兆5,000億円です。このように取引所そのものもこういう競争をしておりまして、これは品揃えの競争とスピードの競争であります。

もともとご案内のように先物市場というのは日本のコメ市場で始まったわけですけれども、もともと先物から取引というのは始まっておりまして、現物から始まったわけではなくて、先物をカバーする意味で現物というのは始まったわけであります。大証さんはいろいろ頑張っておりますが、東証においてはこのデリバティブというのははるかに遅れてしまっているということであります。

ご案内のようにその幾つかの理由は挙げられますけれども、やはり考え方として金利と変動率というものを中心にして、そこにキャッシュフローが生まれるもの、それが金であろうがオイルであろうが何であろうがその金利と変動率でキャッシュフローを作ったものは、それは金融商品として取引できるのだと、これはもう常識になっているわけです。ところがご案内のように日本では、いや、これは金利じゃないんだというような話が起こったりしております。これを英語に訳して世界へ流してみたら大笑いされる話だろうと思いますけれども、日本のコモディティは金利と関係ないという会話が出てみたり、そういうレベルではとても取引所を大きくするということはできない。我々は是非この商品デリバティブを金融商品取引法による規制の下におくことで商品のラインアップを拡充していただきたいと思います。逆を言いますと商品取引所の方が逆に株価指数先物などをやるならば私はやってもいいのではないかと思います。そういう競争はあってもいいと思いますが、このようにお互いに競争状態を作り出すということによって、お互いが成長するのではないかというふうに思っております。

6ページは先ほどありましたようにETFというのがあります。日本もETFはあることはあるのですが、実は投信を上場しますと証券会社の利益が非常に落ちてしまうわけですね、証券会社はネットでスプレッド売買をして利益を出している。しかしETFは投資家の立場から見ますと実はいろいろなコストが低いわけで、本当に日本の国民にこういう多くの商品を用意してあげたいという気持ちがあれば、私はETFの上場を促進すべきだと、証券会社にもそれはお願いしたいというふうに思うわけであります。

ご案内のように金のETFは大証さんでは大変苦労なさって、二重三重のコストを使った商品になっている。ところが世界の、日本以外の投資家は全部金が現引できるETFで毎日取引をしているわけでありまして、個人金融資産を1,500兆円も持っている日本人だけがなぜこのような商品を使ってヘッジができないのか。もしインフレ等々になったときにわざわざ債券に一回変えて、それをまた包み変えたというようなETFをコストを使いながらやらなければいけない、現引こうとしたら引けないと、なぜ日本国民にそういうチャンスを与えないのかというのが私には非常にわからないところであります。もちろん、ほかにもいろいろここで捕まえられるものは大いに捕まえてETFの商品を並べないといけないと考えております。日本のETFは、ずっと11本ですが、その理由にはもちろん税金の関係もありまして、現在、金融庁長官の認可が一本一本必要だとなっておりまして、この辺も今検討がいろいろ進んでいると思いますが、是非レギュレーションの緩和を、少なくとも世界で行われている常識的なレベルにして頂きたいというふうに思っております。

それからアジア新興企業の積極的な上場誘致というものを、現在、我々は推進しておりますけれども、東証としては、今までの新興市場と全く違うプロ市場を是非作ってみたいと思って具体的な計画に入っております。これはいろいろなところからヒント等も頂かなければいけませんし、今までの法律や市場論とはちょっと違う位置付けになりますので、これは行政の方々ともいろいろお話をしていくことも多いと思いますので、是非また、ご理解、ご協力を頂けたら大変嬉しく思います。

最後になりますけれども税金です。今日も政府税調から考え方が出ましたけれども、先ほど言いましたように日本のように610兆円あった時価総額が530兆円になっている市場、一方では中国等々を中心に1兆円もなかった市場が200兆円になったりする市場、アメリカのように2,000兆円になる市場、やはり市場を育ててそこから税金をとった方が遥かに取引をさせないように税金をかけるよりはよいと思います。それは政治の責任でもあると私はそれは思います。何が本当に国家を富ませるか、国民を富ませるかということを考えたら、取引そのものを縮小させるような税制を誘導すべきではないというふうに思いますので、ここはひとつ渡辺大臣はじめ皆様に是非よろしくお願いしたいと思います。

勝手なことばかり申しましたけれども時間がまいりましたので、資料の最後に参考で一人当たりのGDPの推移をグラフで出しております。ご案内のように日本は1993年に一人当たりGDPは世界一になりまして、いろんな数字がありますが、3万5,000数百ドルとよく言われます。アメリカよりは1万ドルぐらい当時一人当たりGDPは高かったわけであります。しかしこの93年をピークにしまして一人当たりGDPはどんどん下がり始めたわけであります。このグラフでありますとおりアメリカは着実に一人当たりGDPは伸ばしました。他の国もどちらかというと右肩上がりでありまして、右肩下がりなのは少なくともこの先進諸国では日本だけであります。結局順位はどうなったかといいますと、1993年のトップが、今18番目に落ち込んだということであります。結局この18年間貯めに貯めた日本のお金は実は資本効率も悪く使われて、投資の運用もうまくいかず、国民一人当たりの可処分所得といいますかGDPはどんどんとにかく下がって、あのイギリスでさえ、一人当たりGDPで遂に日本を遥かに抜いて、今イギリスは確か10位ぐらいにいると思いますが、日本よりも遥かに上になってしまったわけであります。このような現状でありますので、何とかして我々は東証をこのキャピタリゼーションで少なくとも時価総額1,000兆にしようぜと言っております。今500兆ですけれども1,000兆にしてちょうどアジアの諸国と同じスピードになるかなというのが現状かと思います。

以上、時間がまいりましたので終わらせて頂きます。ありがとうございました。

○池尾部会長

どうもありがとうございました。

それでは引き続き、本第一部会の委員でいらっしゃいます大阪証券取引所の米田社長から同じくやはり20分程度でお話を伺いたいと思いますので、よろしくお願いします。

○米田専門委員

はい、承知しました。私の方から資料5に「大証の取組みと我が国資本市場の活性化」というペーパーを用意しましたので、これに沿いましてお話をさせていただきます。ただいま斉藤社長の方からマクロ的、論理的なお話を頂いたので、私はミクロ的、非論理的な話をさせて頂きたいと思います。

お手元の資料1ページをちょっとお開け頂きたいと思います。ここに大証の歴史を書いておりますけれども、一言でいいますとちょこまかと他に先駆けていろんな新しい試みをやってきているというのが大証の特色ではないかなというふうに思います。

2ページをお開け頂きたいと思います。これは先ほど事務局の方からご説明がありましたので、あえて説明は避けさせて頂きますけれども、現物株の取引は随分落ちてきておりまして、一方でデリバティブが中心の市場になってきていると。それからここにETFを書かせて頂いておりますけれども、大証も4銘柄という銘柄数は非常に少ないのですけれども、ここには後ほど申し上げますけれども、この分野にも力を入れてきているということでございます。

3ページをお開け頂きたいと思います。私の方から主としてデリバティブ取引に少し焦点を当てまして話を進めたいと思います。実は株のデリバティブを始めましてからちょうど私ども今年で20年になります。1987年に日本で最初の株のデリバティブ取引を始めました。その20年間の推移をこのグラフに書かせて頂いております。実は導入して直後90年、91年、このときは日本の経済がバブルだったということもあるのですけれども、実は私ども日経平均の先物が主力商品なのですけれども、日経平均の先物がこのとき、90年、91年、世界で最大のデリバティブ商品になりました。その後、このグラフを見て頂きますとお分かりの通り10年近くずっと低迷が続いてきた。先ほど斉藤社長の方からもありましたけれども10年間で世界の金融市場がいわゆるリスク管理という観点から動いてきた段階、この10年間恐らく日本の資本市場はデリバティブという観点から見ても眠っていたのではないかなというふうに思います。ようやく2005年ぐらいから少しずつ伸び始めているというのが今の状況でございます。

4ページをお開け頂きたいのですけれども、デリバティブという観点から見れば私どもは株をやっているわけですけれども、商品もそれから金利、為替もデリバティブの機能としては全く同じでございます。日本にデリバティブをやっている取引所というのは、ここに書いておりますように商品系も含めまして7つございます。私どもが一番左の方に載っているのですけれども、私ども最近少し伸びが増えてきておりますので足元の状況だけを見ますと、年間ベースで約1億単位ぐらいの今年は取引量になるのではないかと思います。一方で残念ながら商品系のところはここ一、二年マイナス方向に動いてきているという、この辺もやはり根本的な問題があるのではないかというふうに思っております。

5ページをお開け頂きたいと思います。ここに世界のデリバティブ市場のこの10年間の成長状況を、もちろん商品の性格によって違いがあるのですけれども取引単位ベースの数字でここに書かせて頂いています。これはですから株だけではなくて商品、コモディティなんかも全部入っているものです。世界がこの2006年時点で78億単位の取引ができています。これは10年前、1996年は11億単位でございましたので約7倍にこの間伸びております。これに対しまして日本でございますけれども、2006年で2億単位、1996年段階でも1億単位はできておりましたので、わずか1.5倍ぐらいにしか伸びがないと、この差がこの10年間眠っていた状態になっていたのではないかなというふうに思います。

括弧の中でGDPとも数字の比較を出していますけれども、大体世界のGDPの10%ぐらいが日本の実力、そこはそう大きく変わっていないのだと思いますけれども、1996年段階では11.2%ぐらいデリバティブの取引がありましたけれども、世界でいくともう3%を切るという形で経済規模に比しまして、デリバティブというのは相当大きく劣後してきているということは言わざるを得ないのではないか。日本のこのデリバティブ、特にエクイティなんかもそうなんですけれども、20年前の進出したてはシカゴがあり、せいぜいロンドンに市場があったぐらいで、先ほど出ましたドイツとかは全く影も形もない、アジアも全く影も形もない状況だったと思います。この辺は1997年ぐらいからできていますので、この間かなり劣後したということではないかと思います。

6ページをお開け頂きたいと思います。個別取引所別の状況の表でございます。これは1~7月という最近の状況にしていますが、世界のデリバティブ取引所を上から並べますと日本の取引所は私どもも含めまして24番目以降という形で非常に劣後した状態になっております。これは皆さん不思議に思われるかもしれませんけれども、今デリバティブで一番大きいのは韓国の取引所でございまして、これは17億単位ぐらい年間でできているという状況でございます。もちろんこれは商品の特性とかそういうこともあるのですけれども、韓国は1997年ぐらいにこのKOSPIのオプションというのを始めていますから、ここ10年の間にここまで伸ばしてきていると、この辺のところはなぜこうなったのかというのは非常に大きな問題があるのではないかなというふうに思っています。

7ページをお開け頂きたいのですけれども、これはもう先ほど来、話がありましたけれども各国のメジャーなデリバティブ取引所は一つの取引所で株、金利商品いろんなものを扱っているという状況でございます。

それから8ページは主要な海外の取引所の規模等をここに書かせて頂いておりますけれども、この部分は先ほど来、説明がありましたのでちょっと省略をさせて頂きたいと思います。

こういった状況の中で大証としてどう取り組んでいるのかということにつきまして、9ページ以降説明をさせて頂きたいと思います。我々としましては、取引所が何であるかという観点から見たら私どもは金融サービス業ではないかと思います。ですからサービス業ですから、お客さんが何を求めているかということを、いち早くとらえてやっていくということに尽きるのではないかなと思います。投資家の求めるニーズというのは時々刻々変わってきているわけですから、そこをいかにとらえていくかということかと思います。それから取引所ですから、当然のことながら公正透明な市場というのはもう当然のことですね、この公正透明性自体も投資家が求めているのだと思いますが、その上にどういったことをやっていくかということではないかと思います。以下、システムの話、それからニーズのある商品の導入、それから使い勝手の良い取引制度、それから取引所間の連携について簡単に述べさせて頂きたいと思います。

世界で、今、取引所で合従連衡が起きているのは、幾つかの要因があるのだと思いますけれども、私はひとつ大きいのは取引所がシステム装置産業化したことが要因ではないかと思います。それも高性能のシステムを求められるようになってきた場合に、やはり規模の利益を追わざるを得なくなってきているというのが今の状況ではないかと思います。そういった中で、システムの善し悪しというものが取引所の命運を左右するような状況になってきているのではないかと思います。それからこのシステムの処理容量もさることながら、先ほど斉藤社長の方からもお話がありましたけれども、レスポンスの速さということが一つの大きなポイントになっております。

私どもは昨年の2月に、比較的日本の取引所としては性能の高い取引システムを導入しました。初めての分散処理のシステムを導入したということでございますけれども、現状はそのシステムを逐次能力アップをしてきているという状況でございます。この表の中で一番下の欄に、レスポンス能力ということを書かせていただいています。私ども今0.06秒です。レスポンスというのは、注文を出した人に対して注文を受け付けましたよという、返すまでの時間です。これは人間の目で見ればほとんどもう0.1秒ぐらいになると瞬時になるのですけれども、先ほど来の話のようにコンピュータでもう注文をするようになってきますと、このミリセカンドのところが一つの命運を左右するようになっておりまして、0.06秒、60ミリセックで今返しておりますけれども、この現行のシステムで状況を見ながら20ミリセックまで上げていこうかなというふうに考えております。ただ、世界はどんどん進んでおりまして、特にデリバティブ取引所の段階ではこれが1ミリセック、場合によってはそれを切るとかそういった状況も展望されてきておりますので、我々としては次世代のシステムをどうするかということも研究にこれから入っていこうというふうに思っております。

それからもう一つは、この下の方に書かせて頂いていますけれども、システム装置産業になっておりますのでシステムの安定性というのは非常に重要でございまして、災害時の対応として私どもバックアップ・サイトを設置しておりまして、本年度末には本格的に稼働をしていく予定になっております。

次のページをお開け頂きたいと思います、10ページです。どういった商品を導入しているかということでございますけれども、最近やはりデリバティブの分野におきましても個人投資家が増えてきております。そういった中で昨年の7月に小さなサイズの先物を導入いたしました。1年ちょっと経ったところですけれども、おかげさまで順調に伸びてきているということだと思います。それから金融商品取引法が施行されまして我々の取引所でも扱える商品の範囲が広がってまいりますので、この辺も新たな商品の導入というものを研究している段階でございます。

11ページでございます。先ほど来、ETFの話がございました。私どももETFというものにつきまして、力を入れている商品でございます。この一番下の欄の表をご覧頂きたいと思いますけれども、先ほどもお話にありましたように日本のETF、これは本格的なETFは確か2001年に始めたのだと思いますが、以来6年ぐらい経っておりますけれども、国内株だけのETFで来たわけですけれども、海外はその間どんどん範囲が広がってまいりました。私どもの取引所に対しましても日本の投資家から金のETFをやりたいとか、外国株のETFをやりたいと、こういった話がありましたので2年ほど前からいろんな検討をやっていたのですけれども、先ほどもちょっとお話がありましたが、投信法上、金の現物は組み込めないという形になっておりますので、金のETFというのを金リンク債を組ませる形のETFという形で、基本的に投資家のニーズは一応満たせる形だと思いますけれども、こういったものをこの8月に上場しております。上場来、金のETFという商品なのですけれども、そう大きな市場ではありませんけれども、毎日3億とか4億、このぐらいの出来高ができている状況でございます。

それからもう一つ、外国株のETFということで、これも全く新しい分野ですけれども、中国の上海のA株指数のETFをこの10月23日から上場いたしまして取引を開始したいというふうに思っています。こういった形でETFは投資家のニーズというのが結構高くありますので、いろいろと今後も検討をしてまいりたいというふうに思っています。これは結局、現行法制の枠組みの中である面工夫をすることによって多様化を図ったということではないかというふうに思っております。

次に12ページでございますけれども、制度の問題、デリバティブ取引なのですけれども、このデリバティブ取引というのは現物株式の取引以上に、やはり海外からの取引ニーズが高いということがございます。そういった中でやはりグローバルな需要というものが私どものデリバティブ商品に対しては潜在的ニーズがございます。そういったものをいかに捉えていくかという観点から見た場合に、やはり制度面でもグローバルなスタンダードを導入していく必要があるだろうということで、3つここに書かせて頂いておりますけれども、1つは、デリバティブの決済の制度としてギブアップというやや技術的な話でございますけれども、こういったグローバルスタンダードの制度をこの5月から導入しております。

それから日本の市場は時間という観点で見ても株式は3時に終わる、手前どもは10分だけ長くて3時10分なのですけれども、国際的にはグローバルなところでは24時間取引みたいなところに動いているのですけれども、これも日本は随分遅れていたのですけれども、ようやく私どもこの9月からデリバティブに関しまして4時半から7時という夜間の時間帯を初めて設けました。これも始めてまだ1カ月経っていない段階なのですけれども、大体日中取引の5%程度ぐらいはできております。日によってやはり夜間でいろんな動きが、夜間といってもイブニングの時間で動きが出たときにはやはり少し取引が膨らむという形になってきております。

それからもう一つ、リモート・メンバーシップ制度という非常にわかりにくい名前なのですけれども、日本の場合には取引所というのは日本に所在する証券会社からしか注文を受け付けない形になっているのですけれども、法律上は海外からダイレクトに取引ができる形になっています。ただ日本の取引所の場合はまだこのリモート・メンバーをとったところはないということなのですけれども、海外のそういった業者からリモート・メンバーで大証のデリバティブ商品にアクセスしたいという要望が強いものですから、今、海外からこのリモート・メンバーシップ制度でできないかということを検討しております。その場合、一点、いろいろ内容を検討しているのですけれども海外と国内では取引参加者の形態が違います。一言で言いますと国内は証券会社、海外は特にデリバティブ取引については証券会社だけではなくて、個人のいわゆるプロップ業者というふうに専門的には言うようですけれども、そういった業者などがかなり入っていまして、その辺のところもどう考えていくかということも検討をしていく必要があるのではないかなというふうに思っています。

13ページです。取引所の連携という形で書かせて頂いているのですけれども、グローバルにはご存じのように合従連衡が進んできております。株式会社化されてシステム装置産業化されてきたというところでいろんな動きが出ているのだと思います。具体的にそういった合従連衡を通じて取引所として何が得られるかというのは、今ひとつやはり見えないところはあるのですけれども、私どもとしてそういった動きというものは逐一注意しながらやってまいりたいというふうに思っております。私どもとしては当面は先に提携ありきということではなくて、提携を通じて大証市場の魅力が増すかどうかという観点で積極的に内外取引所との連携はやってまいりたいというふうに思っています。今、海外の取引所と具体的にやっていますのは、ユーレックスというデリバティブ取引所と相互に協力関係で何か具体的なことができないかということを、今やっているような状況でございます。

次に14ページをお開け頂きたいと思います。ご質問の中にもありましたけれども、制度面について何か要望がないかということでございます。私は先ほど証券ビックバンという話がありましたし、それ以降も日本の制度というのはそれなりに自由化というのが進められてきているのではないかなというふうに見ております。今回は金商法の施行という形で私ども自身が取引できる範囲というものも広がってまいります。そういった中でやはり個々の取引所というものがいかにイノベーティブに動いていくのかという、そこのところがやはり制度面の要求もさることながら、各取引所がいかにイノベーティブに動いていくかという段階ではないかなという感じで見ております。そういった中で少し意見だけ述べさせていただきたいのですけれども、総合取引所構想というのがございます。機能としての総合取引所は非常に望ましい姿ではないかなというふうに見ています。先ほどデリバティブ取引所の商品内容の話をしました。斉藤社長のお話にもありましたように、このデリバティブは株式も金利も為替も商品も基本的な機能としては、金融機能としては全く同じでございます。ですからこれが一つの取引所の中で行われるというのは投資家にとっては非常に利便性が高まることでございます。

それからもう一つは、システムも全く同じシステムが使えるわけですから、先ほどシステム装置産業化されている中ではこの取引所システムの資源の効率化という観点でも一体化した方がいいのではないかと思います。これが結局この本審議会の問題になっている日本市場の競争力強化にもつながっていくのではないかなということを私は考えております。ただ、よくある議論として、では、日本の取引所を全部くっつけて一本にしちゃえという議論があるのですけれども、それは私はいかがかなという感じを持っております。やはり競争というものが市場の効率化、イノベーションというものを生み出しているわけですから、もちろん複数の取引所というのは、幾つあればいいかということとの中身の問題もあるのだと思います。効率的な取引所が複数存在して、そこで真の意味での競争をしていくという姿、それが日本証券市場全体をよくしていくことにつながっていくのではないかと思いますし、それが証券ビックバンの基本的な考え方だったのではないかというふうに思っております。

最後に15ページですけれども、非常に細かい話になるかもしれませんけれども、先ほど金のETFのところでお話ししましたけれども、現行法制の枠組みでもそれなりに工夫を凝らすことによりある程度のニーズは応えられたということは、もう間違いないのだと思います。ただ、やはりこれは2年近くかかりました。やはり法的な制約が少し少なければもっと早くできたのではないかという感じを持っております。この辺のところはいろんなご事情があるのだと思いますけれども、今のETFというか投資信託は不動産と有価証券しか組み込めない形になっておりますので、その点の方も広げていくとさらに多様化というものは進んでいくのではないかなという感じを持っております。

それから最後に税制のお話なのですけれども、この税制というよりも、税金は恐らく国民の意識の問題が絡んでいるのではないかなというふうに思います。先ほど20年前に私どもデリバティブ取引を始めて90年、91年には世界最大の取引になったのですが、その後ストンと落ちて10年間眠っていましたと、これは何だというと先物悪玉論という議論が出てまいりました。要するに先物というものは現物市場をおかしくするのだという議論がありました。これは恐らく国民の素朴な認識としてもそれがあったのだと思うし、それに携わる人たちの問題もあったのだと思うのですけれども、現実、それによって各種の規制をかけて非常に低迷をしてきたという状況でございます。その間に先ほど斉藤社長のお話がありましたようにグローバルな金融市場というのはリスク管理という観点で、このデリバティブというものをかなり使ってきた、この金融工学の世界を使ってきたということでございます。

そういった意味でここには税制について書いてあるのですけれども、実はこのデリバティブというのは現物取引のヘッジ機能があるわけですけれども、現物は現物で税金をかけ、デリバティブはデリバティブで税金をかけるという形でばらばらになっています。ですからこれを一体化していくというのは、恐らくそのためにはこのデリバティブに対する国民の意識というものを変えていかないと、そこを変えないとなかなか税金は変わらないのではないかと思うのですけれども、是非大臣にもその点ご理解をいただけるとありがたいなというふうに思っております。

あと1分程ございますけれども、やや繰り返しになります。日本の取引所、特にデリバティブは1990年の半ばぐらいから10年間大きく劣後してきました。その間はもう米国だけではなく欧州でもユーレックスという欧州最大の取引所も実質的に動き出したのは1997年です、またアジアもデリバティブでも動いてまいりました。やはり制度の問題もさることながら個々の取引所をはじめ、証券界全体の意識の問題もあるのだと思います。個々の取引所というものが効率的にイノベーティブに運営をし、それが複数存在してお互いに真の意味での競争をしていくということが最終的に日本の証券市場の活性化につながっていくのだと思います。合従連衡もそういった競争の過程の中で起きてくる問題ではないかなという感じを私は持っております。以上、非常に非論理的な雑駁な話ですけれども、時間がまいりましたので、以上とさせていただきます。どうもありがとうございました。

○池尾部会長

どうもありがとうございました。それでは大臣がご政務で中座されるそうなので、ご発言を頂きたいと思います。

○渡辺大臣

お二方から税制についてのお話がございました。ご案内のように国会のねじれ現象の中で軽減税率の恒久化というのは非常に難しい状況になってきております。今の段階で諦めているわけでも何でもございませんが、斉藤社長がおっしゃるように、530兆円が1,000兆円の世界になれば、これは税収の面からも大変に貢献をするわけですね。死んだ私の親父が「豚は太らせてから食え」といって怒られたことがあるのですけれども、やはりそういう発想もあると思うんですね。金融一体課税の中でどういう戦略をとっていくか、この税制の中でもですね、大いにこれからも議論していかなければいかんと思います。

それからもう一つ、ちょっとコントラバーシャルな問題提起なのでございますが、事務方のペーパーにない話で恐縮です。ついこの間、原丈二というベンチャーキャピタリストと対談をしました。この人は自民党のベテランの先生方からえらい人気があるんですね。なぜかというと、時価会計はだめだとか減損会計を否定したりとか、それからファンドはけしからんとか、そういう大変な人ですが、年は私と同じ年なんですけれども、要するに彼は長期のお金が入ってこないと、例えばコンピュータの次の世界、彼の話では何回聞いてもよくわからないですけれども、要するにコンピュータの次の世界があるのだそうでございまして、こういう世界を作るためには、もう昔流の簿価会計とか減損をしない会計とかそういうことをやるべきだというんですね。もう今の仕組みだととにかく銀行借入もだめ、ファンドもだめ、要するに内部留保を使うしかないんだと。しかしその内部留保もファンドにかかればもうばらばらに解体される恐れがあるじゃないかと、こういう話でございまして。

私としては彼の言い分に、そうだ、その通りだとは絶対言えませんので、戦略的資本主義というのはあるよねと、ですから長期投資という戦略的マネーを呼び込む、そういう仕掛けがあったっていいじゃないかと。例えば取引所の中に、プロ向け市場の中にまさにそういう長期投資あるいは超長期投資の分野を作ることだって大いに可能なのではないですかという反論をしておきましたので、何かお知恵を後で教えていただければと思います。

以上でございます。

○池尾部会長

どうもありがとうございました。

それでは、自由討議に入らせて頂きたいと思います。小一時間ほど残った時間、後半についてはご自由に議論して頂きたいと思いますが、冒頭に事務局からご紹介がありましたように資料3という形で論点メモが用意されておりますので、どこからご発言頂いても結構ですが、ご発言に際しましては論点メモを少し意識して頂いて、論点メモのこのあたりについてはこうだとか、あるいは論点として欠落している部分があるのではないかとか、そういう形でご発言を頂けると審議の促進に有効かなと思いますので、できればご協力をお願いいたします。

それでは、どなたからでも結構ですが、ご意見あるいはただいまのお二人のお話に対するご質問でも結構ですので、よろしくお願いいたします。

○田中専門委員

それでは二、三コメントをさせて頂きたいと思います。まず、最初はこの論点メモでいいますと、1ページ目の黒ポツの2番目の商品の多様化についてですが、先ほどの渡辺大臣のお話にありましたように、国民の豊かな金融資産がうまく運用されていない、あるいは先ほど両取引所の社長からもございましたように、我が国の市場そのものがここ十数年拡大していないということがあります。こうしたことを考えたときにいかに個人の金融資産、これを貯蓄から投資へと持っていくかという目的において、やはり品揃えが非常に重要だと思います。

そういう面で、取引所で扱う商品を拡大する、あるいは総合取引所構想、いろんな対応のレベルがあるとは思うのですが、実務的な観点から見て一番アプローチしやすいのは先ほどから何回も出ておりますETF、これをうまく利用することだと思います。現状、投資信託を作るにあたっては投資対象となる特定資産の範囲が有価証券及び不動産と決まっており、ETFを組成するにあたって、金をはじめ諸々の商品を組み込むことができません。その意味で、先ほど米田社長が使われた資料の最後のページ、15ページにありますように、特定資産の範囲の拡大を行えば、ETFの組成が非常に楽になります。ただ、金の現物を直接、特定資産に入れるというのも、結構重い話と考えられます。そういう面では一番実務的に障害が少ないということでは、商品取引所に上場されている商品先物を特定資産の中に組み入れられるようにすれば多様なETFの組成が非常に円滑にできるようになると思います。

現在、大証さんに上場している金ETFは一回リンク債を介在させていますので、組成コストが高くなってしまっています。こういうことで現状、商品のETFの組成は結構大変なのですが、先ほど私が申し上げましたように特定資産に上場商品先物を入れて範囲を拡大すればETFの品揃えの多様化が容易になると思います。是非、この点は早期に実現できればと考えます。

これが1点目で、次に2点目ですが、90年代は日本の先物市場、大証の先物市場が世界一だったものの、それがその後パッとしないという話があったのですが、これにはさまざまな理由があるとは思うのですが、ひとつに私は税制の問題が大きいと思います。というのは、この先物やオプションの市場では多様な価値観や投資判断を持つ人たちが集まってきて売り買いがぶつかるべきですが、現状では個人がデリバティブ市場に入るメリットがないと思います。個人の方も最近はいろいろなポートフォリオ構築を日常的に行うようになっており、株式をロングしてデリバティブでショートポジションを作る、こういった形で投資理論的にもいろいろなおもしろい仕組みで投資している人がいます。ただ、そういうコンビネーションを作ったとしても、現物とデリバティブの損益が合算できないので、理論的には片方で損した、片方で利益がある、最終的にはこれだけ利益が残るという計算は成り立っても、税を考えると儲かった方は課税され、損した方は救済されないことになります。その結果として個人が先物オプションの方にはあまり入ってこられませんでした。従って、市場での需給動向に関しては個人が不在で機関投資家だけのニーズしか入っていない状況です。そうすると結局、需給がマッチングしないので出来高も拡大しないというのが90年以降の展開と考えています。従いまして、このデリバティブと現物の損益通算ができるようにするのが極めて大きなポイントだと思います。これが2点目です。

3点目はここで発言するのが適切かどうかわからないのですが、論点メモの1ページ目の黒ポツの一番上について、先ほど東証の斉藤社長がシステムの執行速度についていろいろ言われたのですが、これに関して一つ私が問題意識を持っているのは、日本の空売り規制の件です。これを数年前に導入するにあたって、アメリカでも規制があるのだから、日本でも規制するのは当然だと、非常に簡単に言いますとそのような動きがありました。ただ、アメリカでは空売り規制はもう撤廃されていますので、空売り規制があるのは日本だけになっています。そういう面で証券会社が取引所に注文を出すときに空売りか否かという表示を立てて、取引所の方でも空売り注文かそうでない注文かに分けて対応すると、それによって確実に他の国の取引所と比べると執行速度が遅くなってしまっています。この空売り規制についても見直しの是非を議論すべきではないかと考えます。

以上です。

○池尾部会長

どうもありがとうございました。

それでは、他の委員の方から引き続きご意見をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか、ちょっとご議論しづらいですか。

では、島崎委員お願いします。

○島崎委員

論点メモの1のグローバル化の進展に対しての取引所の統合連携、それから国際的な競争にどう打ち勝っていくかという観点で申し上げます。先ほど来の事務局プレゼンテーション、あるいはお二人からのプレゼンテーションでも日本の現状が非常に問題であるということは理解しましたし、ほとんどのところについては方向性についても基本的にそうなのかなという感じを持ちました。国際的に打ち勝っていくためにはシステム等のインフラ整備が必要で、これに相当な投資がかかる等々考えますと、これだけの数の取引所がいるのかなと思います。これは商品取引所も含めまして検討すべき問題の一つであるのかなと思います。先ほど大証の社長から国内においてもお互いに競い合うことが大事なのだというお話もありましたけれども、そうなのかなと思います。問題は国内の中で競うというよりは、むしろ外との関係において、先ほど説明があったアジアにおける上海あるいは香港のプレゼンスが高くなってきていること、あるいは欧米にも置いて行かれているという現状を考えますと、もう少し大きな視点でこの合従連衡というものを考えるべきではないのかなと思って聞いていました。いろんな思いもあるのでしょうけれども、いかがなのでしょうか。

○池尾部会長

もし、お答えされるのでしたら、どうぞ。

○米田専門委員

今、委員がおっしゃられたのはある面、真理だと思います。先ほど来、ご説明申しましたように、商品を含めると日本に11取引所があるわけですけれども、これはあまりにもどうか、数というよりも中身の問題だと思うのですね。個々の取引所が効率的にイノベーティブに経営をしているかどうかという問題であって、そういったものが競争をする状態というのが非常に望ましいのではないかなというふうに思います。ですから、11が幾つになればいいかというのはそれはもう中身の問題ですね。

もう一つは、おっしゃるようにもう国際的な競争になっているのだから、オールジャパンでという発想、これも理屈としてはあるのだと思いますね。ところが、今確かに合従連衡が起きていますけれども、日本の経済規模というのはアメリカ、欧州に次いで3番目の経済規模があるわけですね。そういった経済規模のあるところで、じゃあ、アメリカがニューヨークとナスダックが一体になっているか、シカゴまで加わっているか、ヨーロッパでもドイツがありユーロネクストがあるという形でかなり大きく競争しているんですね。唯一アジアなんかでは一国一取引所になっていますけれども、これはスモールエコノミーの世界ですね。そういった状況の中で、もちろん将来的にどうなのかというのはなかなか議論が難しいですし、いろんな意見があるのだと思いますけれども。ただ言えるのは、もちろんグローバルな競争はあるのですけれども、この株式という観点で見た場合に完全にグローバルな競争はできるのかといった問題、国によって取引制度が違うわけですからNYSEユーロネクストが合体したといっても市場は2つばらばらですよね、経営体が一本になっただけの話。そうなってくるとやはり独占によるイノベーションが起きてこないことを、非効率化、この辺はどう考えるかというのはきちっと議論をしておいた方がいいのではないかと思います。

海外でもいろいろ調べてみますと、取引所が一本化したあとは必ず手数料が引き上げられているという実績があります。だから独占の弊害をどう考えるか、グローバルの競争をどう考えるか、そこはいろんな議論があってしかるべきではないかなというふうに私は思っております。ただ、日本の場合はあまりにも競争しないという国民性がありますので、競争というものの意味というものはもう少し考えた方がいいのではないかなというのが私の考えです。

以上です。

○池尾部会長

他にご意見いかがでしょうか。

○クオ参考人

是非、斉藤社長にお聞きしたいのですけれども、マーケットが活性化するためにはある意味では金融イノベーションが起きる環境というのは大事であると、金融イノベーションというのは他の市場ではプロの市場でどちらかというと起きると、どちらかというと一般投資家、リテールは投資家保護で守りながらイノベーションはプロの市場で起きると、もちろんプロの事情を規制するためには機関投資家というものを育成するということ、さらに規制緩和が必要になるというふうに思います。

ちなみに今朝、USSECの方とミーティングをしていて、アメリカは去年初めて私募市場のボリュームがパブリックマーケットを越したというふうにおっしゃっていました。びっくりしました。更なるどういう規制緩和が必要なのかということを、是非お聞きしたいと。

○池尾部会長

プロ向け市場関係でお考えのことをちょっとお願いします。

○斉藤参考人

クオさんはよく日本の市場をご存じなのですが、先ほども少しプレゼンテーションしましたけれども、田中(浩)さんから説明があったように税の問題もあるかもしれませんが、日本のプロというのはデリバティブを使わないことが根本的な問題ではないかと考えています。実際デリバティブ市場で取引をしているのは個人であってデイトレーダーみたいにして使っているという非常に特異な市場ですね。例えば新興市場というのは、本来はハイリスクリターン、ハイグロースマーケットとしてポートフォリオの中にどのくらい入れたらいいかということなるはずであって、必ずリスク理論でどのくらいの新興市場を入れてトータルリターンを例えば10%なら10%にもっていくにはどうしたらいいかというような理論はちゃんとやっていなければなりません。ところが新興市場の取引量をご覧になると日本はプロの参加というのは非常に少なくて、個人がデイトレーディング的に参加している。マーケットの位置付けが非常に違うんですよ。私は日本の機関投資家の行動をいろいろ長く見てきまして、やっぱり欧米人がやり出すとやるのです。ですから、私のベースの理論は日本に欧米の投資家が自由に入ってきて、自由に売買するような市場を作れば、日本のプロもそこで刺激されてポートフォリオ理論を展開するようになるということであります。例えば200とか300のETFを用意して、これを上場しますと例えば1,000万円持っている人が例えば100のETFに分散する、その間のリレーションの低いもので構成してあげるようなことを証券会社がビジネスとしてアドバイスする、そういうふうなふうにして国民の富を増やす一つの道具を作ってあげる必要があるということを言っているわけです。

今後、インフレが発生するかもしれないし、そういう時にこのような市場がないと日本の投資家はインフレに対するヘッジ機能が非常に弱くなってしまうわけですね。現物株だけしかありませんとか、せいぜい先物でそういうことができるかどうかよくわかりませんが、いずれにしても長期的なポートフォリオを構成するにもそういうツールが必要だという意味で、私はやはり商品を大いに並べるということが結果的には日本の個人もプロも参加されるようになるでしょうし、やっぱり外国からの参加というのが刺激になると思いますので、そこは何とかバリアーを下げるということが大事ではないかと思っています。答えになっているかどうかちょっとわからないのですけれども。

○池尾部会長

では、檀野委員。

○檀野専門委員

いささかミクロの話になりますが、論点の中の市場の厚みや利便性に関する諸外国との競争力の強化、この観点から少しお話をさせて頂きたいと思います。

不動産証券化市場に身を置いている立場からの発言になりますが、現在、証券取引所に上場している不動産投資信託、すなわちJ-REITは、2001年9月に初の上場銘柄が登場して以来、現在時価総額は約6兆円になっております。金融市場、不動産市場に新たな商品が登場して、その活性化に大きな貢献を果たしてきたと思っております。J―REITは現在まで、比較的順調にその規模を拡大してきたわけですが、不動産投資のグローバル化の中で投資商品として今後更にその魅力を高めていくためには、安定性や透明性等の一層の向上を図るとともに、グローバル化への対応、国際競争力への強化といったものが必要であると考えております。

世界のリート市場でございますが、現在世界17カ国でリートが上場されておりまして、その時価総額は約100兆円と、急激に拡大を続けております。我が国の機関投資家による海外不動産への投資ニーズも年々高まってきております。海外リートのみを投資対象とするファンド・オブ・ファンズ、これの純資産額は今年の3月で2兆6,000億円、それから海外リートを含むファンド・オブ・ファンズ、これは8兆円を超えるという状況になっており、機関投資家による海外不動産への投資ニーズというのはこれからも高まってくるものと思われます。

一方、J―REITは海外不動産投資に関する制度インフラが未整備であることから、その投資対象が国内不動産に限定されているという現状がございます。先ほど世界のリートは17カ国で上場されているというお話をさせて頂きましたが、海外不動産に投資をできないリートというのは我が国を含めて4カ国のみで、残りの13カ国のリートは海外不動産への投資が認められております。

また、昨今海外のリートの他国の不動産への投資意欲というものが大変旺盛になってきています。例えば、オーストラリアのLPTは、これはリートになるわけですけれども、市場規模が約13兆円ですが、その中に4社、日本の不動産のみを投資対象とするLPTがございます。また、LPTは他国のリートとエクイティ交換ができてM&Aができるような税制改正の動きが積極的に論議されているという状況にございます。シンガポールはアジア市場の拠点を目指して海外不動産を対象とするリートを組成する場合に、シンガポールの制度を活用するように各国に働きかけているという情報もあります。こういった形で海外のリートが他国の不動産へ投資する姿勢が積極的になっている中で、J―REITが海外不動産への投資を行えないという状況がJ―REITの国際競争力を阻害し、このような状況が今後も続いていくのではないかと心配しております。

この点については経済財政諮問会議のグローバル化改革専門調査会や、国交省の社会資本整備審議会、国土審議会等で早期に海外投資ができるようなマーケット、並びに制度の整備をすべきというような提言がなされております。J―REITはまだまだ改革していかなければいけない点もあるわけでございますが、不動産投資市場の厚みを増して利用者の利便性の向上に資するという観点から金融資本市場の競争力の強化策として投資家保護の観点に十分留意しつつ、この点について具体的な検討が今後必要ではなかろうかと考えております。これは制度だけの問題ではなくて、いろいろな問題が輻輳的に絡み合ってきておりますが、本格的な検討をすることによって、何とかこれを実現に向けていく努力が必要ではなかろうかと思っております。

以上です。

○池尾部会長

ありがとうございました。原委員どうぞ。

○原委員

遅れて参りまして申し訳ありません。

お話を聞くことはできなかったのですが、事前に資料をお送りいただいていたので、一応目を通させていただいて、今日久し振りに東京証券取引所に出向いて、今どういう情報提供をしていらっしゃるかというようなこともちょっと拝見させていただいたので、そういうことも含めて3点なのですが、1つは、この論点メモの1ページの一番最初の小さい丸のところなのですけれども、「我が国各取引所は相対的に立ち遅れているのではないか」というところで、今、日本には商品も含めて11の取引所があります。大証の方はここでやっぱり競争力が働くことがいいというお話がありまして、私もそれを否定するものではないのですけれども、現状、今の株式年間売買代金でいうと東京証券取引所が92.7%を占めており圧倒的に強い。だからそういう意味でいえば独占の弊害というのは今でも十分起こりうるという状況にはあると思っているのですが、こういったあまりにも規模が違い過ぎると競争原理もうまく働いているのかどうかというようなことを考えると、競争原理を最初に立てるのではなくて、どういうふうにすればやはり日本の取引所が総体的に国際的な場面で強くなれるかという話を、それがどのくらい緊急度を持つのかどうかというところは私にはちょっとまだはっきり分からないのですけれども、そういった規模の差というところからももう少し検討を深めてみるべきではないかとに思っております。

それから2つ目ですが、商品の厚みを増すというお話はこの夏ぐらいから各新聞とか報道にも数多く掲載されていて、その方向に向かうということは否定いたしませんが、ETFについては私ども消費者がイメージしている今のETFですね、そういうのがありますので、中身が金の現物とかそういうのも報道なんかに出てきていたので、内容が随分変わってくるとなると、情報開示ですね、商品の情報開示や説明義務。金融商品取引法で手当てはされていますけれども、ここはやっぱり十分にやっていただきたいと思っております。先物関係が登場してくる、それから組み込んだ形のものが登場してくるということは、今日の東京証券取引所に行ってもメインのエントランスでこの話ばかりコマーシャルで流していらっしゃって、随分力を入れようとなさっていらっしゃるのだなというのは感じました。

消費者からすると、その先物取引の機能というのは否定はしていないんですね。

ただ、確かにおっしゃるように個人がたくさん日本の場合は入っていて、7割から8割入っていると思いますけれども、1年でまた7割ぐらいが退出しているような市場の状況です。海外に比べるとこのデリバティブの市場というのがやはり少しいびつな感じになっていて、私はまず先物の市場をきちんとしていただくということをやっていただいて、それと並行してこういったものが組み込まれたETFというのもあると、それから情報開示と考えておりますので、是非並行した議論を進めていただきたいと思います。

それから東京証券取引所に置いてあったこのガイドブックなのですけれども、海外の投資家がたくさん入っているというのがレジメにもございましたけれども、半分ぐらいが海外というふうになっていて、年間委託者別売買代金に占める外国人投資家の割合はここ数年50%前後ということで、50%というと半分なわけですから相当なボリュームなわけですよね。こういった海外の投資家というものが入ってきていることで考えなければいけないという問題点、問題点といってはおかしいですね、課題ですね。何かそういうものもあるのではないかなというふうに思っておりまして、ここは論点の指摘事項にとどまっておりますけれども、そのあたりについても検討しておくべき課題がありましたら、是非お願いしたいと思います。

以上です。

○斉藤参考人

ありがとうございます。一つ一つ大変ごもっともなご指摘だと思っておりますので、まず全て原委員のおっしゃることは、まず正しいとして受け取った上でのお話をさせていただきます。

独占性の問題というのは、世界の取引所に絡む長い間の行政や関係者との問題だったわけですね。その独占性を廃止しようという動きがいまだにずっと続いているわけですが、その一つとしていわゆる For Profit Exchange、利益を追う取引所、いわゆる民間化して利益を追う取引所を作ろうということで、現在、実は大手の取引所で上場公開しておりませんのはCBOEというシカゴにありますオプションの大きい取引所と東証だけだと思います。あとは全部上場公開しております。昨日も上海で54カ国の取引所から300人ぐらい集まりまして討議をしたのですけれども、その時の資料の中にいっぱい書いてあったのは、もう我々はパブリックインタレストばかりあまり考えているときではないというようなことも、かなり謳っておりまして、アメリカもご案内のように業者のウオッチドッグのところは外に出しましたから、ニューヨークの取引所のジョン・セイン社長は、俺たちはもう今から利益追求集団、というようなことを言っておりした。

ただ、さはさりながらやはり公的な仕事であることはもう間違いないわけでありまして、従って現在テーマになってきていますのは、行政のお互いの乗り合いであります。そこが一致しないにもかかわらず、先ほど話がありましたように New York Stock Exchangeがユーロネクストというのを買収したわけですあります。したがって、フランスはフランスの法律でないとだめだと主張しましたし、ニューヨーク側はSECルールでないとだめだと主張しまして、実際はお金をパリへ入れただけになっておりますし、経営は完全に独立した状態の中で行われているわけです。そうすると、これは意味がないじゃないかという論理が、アメリカで起こってきまして、実は何とSECの委員長、コックスさん自身が mutual recognition、相互承認というものを進めようということで、お互いにどの程度まで mutual recognitionをするかというような話になってきております。

そして独占性のところは逆に、先ほどから取引所同士の競争の話が出ているのですが、現在、取引所にとってこの独占性を排除するためにヨーロッパのMifidにおいては、いわゆる証券会社そのものにほとんど取引業務をやらせようしております。更には、取引事業も、それからもう証券会社もいらない、証券会社もスキップしてバイサイド同士でマッチングだけやらせるようなものを作ろうとしておりまして、いろんな表現があるのですけれども、PTSといわれたり multi trading facilityといわれたりするものが、どんどんできてまいりまして、実は我々もよく分からないのですけれども、独占性を廃止するために取引所同士が戦いなさい、とはあまり言っていないのです。取引所と違う形のものを生もうとしているようなので、そうすると値段の正しさとか透明性とかインサイダー問題とか、そういうのはどういうふうに管理するのですかという質問をすると、言葉はたくさん並べてあるのですけれども実務をほとんどやったことのない人たちの言葉ですから、とても本当にこれで管理できるのかなと考えております。将来的にまたもう一つ大きな問題が起こるのではないかなと私は思っています。

従って、その独占性の問題というのは非常に混乱していまして、本来は有効な取引所が競争すればいいのだと思います。日本で取引所の採算が合っているということが非常にある意味では不思議なのです。本来はちゃんとした状況で競争していれば小さな取引所は採算が合わなくて消えるはずです。なぜ消えないのか、これが日本の経済のいろんなところに見られる摩訶不思議さなのです。これが社会全体の効率性を落としているところがありまして、ヨーロッパもちょっとそういうところがあったわけですが、今では採算の成り立たないところは消える。そうすると自然に市場は強力な一つ、二つになってくる。あるいはその中で3番目ぐらいがこれはちょっとまずいなと、とても太刀打ちできないなと思ったら横へ、すなわちよその国へ逃げる。何か特徴を持とうと、結果的には使用者、利用者にどういうベネフィットを与えるか、どういう安い値段を提供するかというところで勝負なんです。そういう方向に私は東京もというか日本も行くべきと思いますので、先ほどから米田さんが何か奥歯に挟まったような表現を色々なさっているのですけれども、要はあまり「べき」論が先にあって、こうしなければいけない、たくさんあるから一つになれとかいうのではなくて、フリー競争をした結果、やはり市場に受け入れられないものは立ち行かない、あるいはどうやったら市場に受け入れられるようにするかというのが取引所のテーマだというふうになっていって、残ったところがあればそれは客観的に私は国民にとってはいいものだと思っています。それだけ一つだけお答えします。

○池尾部会長

米田社長の説明資料の14ページの下のところに書いてある囲みの内容について、ちょっと私が聞き漏らしたのかもしれませんが、説明のときにスキップされたのではないかという感じがあるので、14ページの下の四角囲みのところの制度整備の要望事項をちょっと説明していただけませんか。

○米田専門委員

14ページなんですけれども、総合取引所構想に絡めて例えば金融商品取引所が商品の先物をやるには今の法律上はこういった面での制約がありますと、ここは変える必要があるでしょうということと、もう一つは、これはまだちょっと私どもも中身が議論されているわけではないのですけれども、取引所がいろんなことをやっていく場合に、今、取引所というのは取引所の業務以外というのはもうかなり制約されてきているというところがあります。その辺はもう少し具体的に議論をしなければいけないのですけれども、そういった面もちょっと含まれておるものですからスキップしちゃったのかもしれませんね、スキップというかちょっとこれはもろもろに広い意味があると思います。いろんな連携統合をやっていく場合には、場合によってはここの制限がもう少し楽だったら、もちろん取引所が何か違った業務をやることはないのですが、あまりにも厳格なということでこの辺はやっぱり考えていく余地があるのかもしれません。

○池尾部会長

あともう少し時間がございますが。では、東委員。

○東臨時委員

まず2番目の「取引所の取扱商品の多様化」ということについては、大賛成です。取引所の品揃えの拡大にとって制約になるものは、限りなく排除すべきだろうと思っています。従って先ほど来、議論が出ていたETFの組成についても同様であり、長官認可ということは知りませんでしたが、やはりいろんな意味でここの制約を外すべきだというふうに思います。

それからもう一つ、最近の外国企業上場の例として、先日中国の環境関連の会社が上場しました。今のところ上場が割合うまくいき、高い評価を受けています。取引所の取扱商品の多様化という意味で、アジア企業の日本への上場を促すことが必要だと思います。ただそのための、制約というかコスト高となるのが会計制度の問題です。今回の中国企業の例でも、中国の会計基準を一遍国際会計基準に組み換え、それを日本基準に修正をして日本語の資料で販売をするというこういう手続きを踏みました。当然そのコストは誰かが負担をしなければいけなくなります。中国企業なりアジアの企業が日本に上場するメリットとの兼ね合いで、コスト高あるいは手続きの煩雑さが制約になるならば、そこは限りなく制約条件を下げるべきだろうと思います。

そういう意味でとりわけプロの市場であるならば、これは3番目の論点になりますけれども、日本基準でなければ認めないという会計制度のあり方の修正が必要ではないかと思います。従来は、日本は日本のルールがあるという議論だったと思うのですが、今は国際会計基準へのコンバージェンスに向けての方向性が出ています。ただ気になりますのは、国際会計基準への収れんが終了をしたあとであれば、国際会計基準でも自動的に日本への上場を認めるということに、多分なるのだろうと思います。が、そこまで待っていたのでは取引所の品揃えを遅らせることになり、取引所の厚みを厚くしよう、あるいは貯蓄から投資への移行を加速させようという方向性に対して、十分なスピード感なのだろうかというところが気になります。プロ市場にについて言うならば、日本基準以外の会計基準に対する幅広い対応、更に英文開示でも良いではないかという選択肢があるのではないかと思います。

以上です。

○池尾部会長

ありがとうございました。どうぞ。

○斉藤参考人

大変いいご指摘をいただきまして、私どもはこのプロ市場、せっかくテーマにも挙がっておりますので現実に何とか作りたいなと考えております。これはいろいろまだ関係者ともお話をしなければいけないのですが、国際会計基準であろうが、英文であろうが、ほかのいろいろ旧来の取引所、東京証券取引所あるいは大証かもしれませんが、取引所というものの規定で固まったものでない形の何かできないかと考えております。これは外国にそういうケースがあって大成功しているわけでありまして、それがどういう制度で動いてどうなったかというのも今徹底的に研究をしております。できるだけ早く具体的なテーマにさせていただきたいと思って、今作業をやっております。

○池尾部会長

委員の中にはほかの取引所の方もおられると思いますが、いかがでしょうか。特にご発言は。黒沼さん。

○黒沼委員

3つほどコメントをさせていただきたいのですけれども、まず第1点の、日本の市場が企業の資金調達ニーズに十分に応えられていないのではないかという問題については、今日はあまり議論の対象にならなかったのですけれども、どうも皆さんのお話を伺っていると第2点と関係のあるようなお話をされていたのではないかと思うのです。しかし、これは第2点の品揃えを多くして競争力を強化するということとは直接関係が無いですよね。ここで品揃えの対象となっているのは様々な指数に関するETFなので企業の資金調達とは直接関係が無いし、投資家の利便性が高まれば企業がそこで資金調達をしてくれるかというとそうでもないわけですから、別途議論すべき問題ではないかと思います。

第2点の、市場の競争力強化のための取扱商品の多様化ですが、私は原委員が言われたように、まず投資者保護の仕組みをきちんと組み立てることが大前提でありまして、今ある市場の取扱商品が増えれば競争力が強化されるからいいんだと、そういう議論も分かることは分かるのですけれども、現在では様々な市場でルールが違っているわけで、それをこっちに持ってくれば投資者保護にとってこんないいことがあると、むしろこういったルールの下で投資者を保護すべきであるからこの商品はこちらで扱うべきだと、そういう立場で議論がされるべきではないかと感じています。

第3点の、プロに限定した取引の活発化ですが、今日はあまりその議論の対象にならなかったのでよく分からないところなのですけれども、これは取引所に上場しつつプロに限定して取引をさせるという制度なのか、それとも実際には取引所の施設を使って行うけれども非上場のものをプロの間で取引するという話なのかがよく分からないので、そこを区別する必要があると思いました。

それともう1つは、プロが直接参加して取引をするのか、委託者として仲介者を通じて取引をするのか、それによってルールのあり方も違ってくるので、そこを分けて議論をしていく必要があるのではないかと思いました。感想めいたもので恐縮ですけれども以上です。

○池尾部会長

どうもありがとうございました。3番目におっしゃった点は次回以降、具体的に議論していくことになるかと思います。

では、太田委員お願いします。

○太田専門委員

私は東京金融取引所におりますので、今日は証券取引所のお話だということであまりコメントをするのは適切ではないと思っておりますから、ちょっと別の観点から申し上げたい。私の取引所も1990年代は大変取引量が多くて、シカゴのCMEなんかもうちの取引所が脅威だという認識を持っていました。また、先ほど来のお二人のお話からしましても、当時と比べて日本のレギュレーションが最近になって強化されたわけでもありませんし、税制が特に厳しくなったわけでもありません。では、なぜ日本のプレゼンスがこんなに落ちてきたのかということが基本的な問題としてあるわけです。

金融マーケットというのは実体経済の鏡でございまして、日本経済が先ほどもお話がございましたように一人当たりの国民所得がこんなに落ちてきたということが背景にあると思います。私どもの方は金利の先物が主要商品なのですが、世界の通貨でドルとユーロと円、これは三大通貨と言われているわけですが、それぞれの金利先物の取引量を比較しますと、1990年代の半ばごろはドルもユーロも円もほぼ同じでした。ところが今や、ユーロドルの金利先物をやっておりますCMEは私どもの取引所の15倍以上の取引量になっています。それからユーロの金利の先物をやっておりますLIFFEは6~7倍になっております。なぜか、これは日本の金利水準が低すぎるからでございます。私は金融政策について是非を言うつもりはないのですが、0.5%の日銀の金利水準では金利先物でヘッジするニーズも起こってきませんし、ボラティリティが低ければ投資の対象にもならない。それが結果として世界の金融のプロフェッショナルが東京マーケットに入ってこない理由でございます。

また最近、新聞でも報道されておりましたが、FXの取扱高、ドルとユーロと比較して円が非常に少なくなっている。なぜか、日本の円が安過ぎるからでございます。2週間ほど前ロンドンにも行きましたが、ロンドンのプロフェッショナルは、そんな安い通貨のマーケットに誰も入りませんよと、金利も0.何パーセントというような低金利の国に金融のプロフェッショナルは入ってこない、取引のメリットがない、スプレッドも低い、その結果として、私は今デリバティブの関係だけ申し上げまして、証券取引所の方がおられますので株のことは差し控えますけれども、日本の金融マーケットは活発化しない、プレゼンスが落ちている。

産業界の方では円安とか低金利で非常に企業経営が支えられている。そういう方々がそういうことが原因で金融マーケットのプレゼンスが落ちていることを何か物足りないようにおっしゃっておられるようですが、なかなか両取りはできないのではないか。金融マーケットというのは実体経済と不即不離の裏表の関係でございまして、従って、確かにETFの商品とか品揃えを増やせば大変コンビニエントになると思います、利便性は高まると思いますが、それで先ほどのご指摘がございましたような日本の金融マーケットが適切な産業資金の調達の場になるのか、また日本の金融マーケットが世界の金融センターの一つになりうるのかと、これは全然別の話だと思います。もちろんいろんな利便性、税制とかそういうことを改善するのは、私は大いに賛成でございますけれども、そもそもそういうところに問題があるのではないか。

よく言われていることでございますが、私どもの取引所でも7割は外資の方が取引をされておられます、東証でも株は外国の方の取引が非常にウエイトが高い。日本の金融機関はどうなっているのか、これだけ670兆円も国債が累積しているわけですから、本当は金利が少し変動すれば価格が暴落するわけでございます、金利が上がると。で、ヘッジニーズがあるはずなのですが、0.5%ではそういうニーズも働かない。さらに長い間の不良債権の問題がございまして、日本の金融機関は非常にコンサバティブになっておられる。で、日本のマーケットでどういうことが起こっているかといいますと、本来リスクをとるべき機関投資家は非常にティミッドになっておられてリスクをとらない。他方、本来なら慎重になるべき個人の方が貯蓄から投資への流れという波に乗って、あまりにも低金利の定期預金の金利に耐えかねてデリバティブ市場になだれ込んでいると、そういう結果として投資家保護とかいろんな問題が生じてきている。これが今の日本の金融マーケットの風景ではないかと思うわけでございます。いろんな金融商品の上場の品揃えをするというのは大変結構でございますけれども、この金融審議会で議論するべき目的は、日本の金融センターが世界の金融センターの一つになるための方策である。そういうことを議論するのであれば、もう少し別の観点から今の日本の金融マーケットの現状を踏まえた議論もあってもいいのではないかというふうに思うわけでございます。ちょっと今日のテーマに水をかけたようなことになって大変恐縮なんですが、一言申し上げました。

更に、世界の取引所が今非常に合従連衡を行っていると言われています。私ども世界の取引所の会合にしょっちゅう出かけますけれども、対外的な説明は、ビューティフルストーリーになっているわけですが、実は欧米の取引所はみんな株式会社で自分の取引所の株価を上げるために、合従連衡を画策しているのです。世界では今、それぞれの取引所が提携をいろいろされておられますけれども、世界のクロスボーダーの取引所の連携で具体的かつ実質的な利益が上がった例は一つもございません。MOUとかいろいろ結びますけれども、マーケットにはマザーマーケットがあるわけでございます。例えば、日本の企業は最初に上場するときはやはり東京証券取引所に上場するわけでございます。それから円金利の取引をやる場合には私どもの東京のマーケットでやるわけでございます。そういうマザーマーケットがあって、それを踏まえてアメリカとかヨーロッパの取引所の経営者は、株主からの圧力を受けて、自分たちの株価を上げるために、一挙にそれらを取り込むためにいろんなところと連携を仕掛けていると、それが実は真のモチベーションでございます。きれいごととして、世界の取引所間でいろんな商品が融通できればいいじゃないかとか、いろんな話がございますが、実態は私は違うと思います。

例えばユーロネクストとNYSEの合併につきましても、ユーロネクストと私どもは大変親しいわけですが、ユーロネクストの人たちはあの合併はそれ程の意味はなかったと最近は言っております。そういうものであるということをよく認識していただいて、欧米の合従連衡に我々は惑わされる必要はないのではないか、むしろ必要なのは、それぞれの取引所が投資家の利便性を目指してコンペティションをやる、イノベーションを追求する、その結果として最後にどこの取引所が残るかはこれはマーケットが決めるわけでございます。これは先ほど来、斉藤社長と米田社長のおっしゃった点で、私は全く同意見でございます。

以上です。

○池尾部会長

大変どうもありがとうございました。私も同感な点は非常にたくさんあります。

それでは時間が来てしまいましたので、本日の審議に関しましては以上ということにさせていただきたいと思います。なお、何かこの後一応記者会見をして本日の会議の模様について私と事務局の方からご紹介するということだそうです。取引所関係の議論はもう数回続けたいと思っておりますので、次回の会合等の予定に関しまして池田市場課長の方から事務連絡をお願いいたします。

○池田市場課長

次回の会合ですけれども、10月26日、金曜日、午前10時から12時までということで開催させていただきたいと思います。次回は、ジャスダック証券取引所の筒井社長からお話をしていただくことをまず予定しております。また、そのあとプロに限定した取引の活発化の論点を中心にご議論をいただくこととしたいというふうに考えております。どうかよろしくお願いいたします。

○池尾部会長

それでは、以上をもちまして本日の会議を終了とさせていただきます。どうもありがとうございました。お二人ともどうもありがとうございました。

以上

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