金融審議会金融分科会第一部会(第46回)議事録

日時:平成19年10月26日 10時00分~12時00分

場所:中央合同庁舎4号館9階 金融庁特別会議室

○池尾部会長

それでは、定刻になりましたので、ただいまから、金融審議会金融分科会第一部会、第46回会合を開催いたしたいと思います。皆様、本日はご多用中のところご参集頂きまして、誠にありがとうございます。

会議に先立ちまして、いつものように本日も議事は公開ということにさせて頂いております。それから本日欠席の委員ですが、やや多いんですが、なかなか時間が皆さん合わなくて残念なんですが、本日の欠席は、淵田委員、植田委員、神作委員、島崎委員、野村委員、堀内委員、若松委員、上柳委員、神田委員、田中直毅委員、國部委員、田川委員、檀野委員、米田委員の各委員がご欠席ということで伺っております。

それから、本日は渡辺大臣と山本副大臣にお越し頂いております。何かご発言されますか。

○渡辺大臣

おはようございます。金融大臣の渡辺でございます。

私が福田総理から言われたミッションの一つが、まさに今日ご議論を頂くテーマでございます。諮問会議で総合取引所構想というのが出されております。おそらく競争力の強化ということを考えていくならば、こういうテーマについても相当突っ込んだ議論をしていかなければならないものと思います。総合取引所につきましては、機能、組織、法体系、そういった色々なレベルでの議論が必要になるかと思います。大変お忙しいところ、委員の皆様にはご参集を賜り、大変恐縮でございますが、積極的なご議論をぜひお願いをしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○池尾部会長

どうもありがとうございました。

それでは、早速本日の議事に移らせて頂きます。本日は大きく2つ議題がございまして、まずは前回に引き続きまして、取引所からのヒアリングということで、本日は、ジャスダック証券取引所の筒井社長からお話を伺いたいというふうに思っております。

その後、引き続きまして、プロに限定した取引の活発化という論点に関しまして、事務局からの説明を頂いて、それを踏まえながら、ご自由に議論を頂きたいというふうに思っております。

それでは、時間も限られておりますので、早速前半と言いますか、時間的に申しますと前半3分の1ぐらいですけれども、ヒアリングに入りたいと思います。本日はジャスダック証券取引所の筒井社長にお越し頂いております。お忙しい中どうもありがとうございます。

それでは、早速ですが、20分程度でお話を頂ければというふうに存じますので、どうかよろしくお願いいたします。

○筒井参考人

ジャスダック証券取引所の筒井でございます。おはようございます。よろしくお願いいたします。

池尾部会長はじめ、渡辺大臣、山本副大臣、委員の皆様の前で、こういう大変貴重なお時間を頂きまして、本当にありがとうございます。早速でございますが、レジュメに沿いまして、私の話をさせて頂きたいと思います。

まず、2ページをお開き頂きまして、目次でございますが、大きく2つに分けさせて頂いておりまして、「 I 」の方は市場の構造、特に流動性というような観点からお話をさせて頂きたいと思っております。それから、大きな2つ目は、お話にございましたプロ向けの市場というようなところ、特に私どもの新興市場という立場から少し切り込ませて頂きたいと思っております。

それでは、先に進んで頂きまして、4ページをご覧下さい。ここのところも大きな「 I 」の方の概略でございますが、まず、アメリカとヨーロッパのケースということで、アメリカとかヨーロッパのケースをそのまま導入すればいいという考えは毛頭持っておりませんが、やはり米国、欧州を中心にした市場の潮流といいますか、そこに流れる本質的なもの、あるいは必然性といったものは、我々としてできるだけ見極めて行動をとっていく必要があるのではないかという観点から少しコメントさせて頂きたいと思っております。ただし、あくまで、私の場合には実務をやっております人間の話でございますから、色々なご研究をされている皆さんからすると、非常に雑駁なところもあるかと思いますけれども、そういった実務者の直感というものも含めまして、少しお話をさせて頂ければと思っております。

次に、我が国の現状ということで、多少、やはり市場機能を向上させていくダイナミックなメカニズムというのはいま一つ作動していないという認識を持っておりまして、所感を述べさせて頂きたいと思います。

それから、最後に、流動性という観点から、市場開設者からすると、どんなことがあるべき姿なのかというようなところをお話しさせて頂きたいと、そのように「 I 」のところを考えております。

それでは、5ページをご覧下さい。5ページは、アメリカも、やはりここまで来る間に色々な苦労はしてきているなという部分でございまして、色々な証券取引所が沢山できまして、さらにそれに加えてプライベートなECNと言われるような、あるいはPTSと言われるようなものが非常に沢山できた過程がありまして、その過程で、競争は非常に激しくなりましたし、流動性が逆に分散していっているのではないかというようなことで、市場の効率性も低下してきたのではないかという局面もございました。大体、大雑把に言って、90年代まではそういった動きだったのではないかなと思っております。

6ページをご覧下さい。そういった苦労をしながらも、アメリカは競争をしつつ、それからもう一つは、やはり非常に大きなのはインフォメーションテクノロジーで、ITのテクノロジーをそこに適用していくという努力を重ねて、そこに色々なイノベーション、あるいはテクノロジーの技術的な進歩等もあり、そこのところを克服してきたというのが、ここのところ顕著に出てきているかなと見ております。

投資家の方からはいわゆるDirect Market Accessという直接取引所に注文をアクセスしていくということ。それから、それ以外の証券会社を通る注文も、Smart Order Routerと呼ばれるような仕組みを作りまして、どこの市場であれ、一番ベストのプライスのところに執行ができるような状態を作っていく。それから、さらに進みまして、プライスだけではなくて、投資家の価値観によりまして、ベストのプライスよりもスピードを重視するというときには、それもベストエクスキューションというコンセプトの中に入るということで、それを許容するルールづくりですとか、どんどん進化してきているというところで、金融テクノロジーと、それから競争の成果というようなものが最近は出てきているのではないかと考えて、結果として多様性がある投資家ニーズ、あるいは市場ニーズに対して、それに応えながら適正な競争を保ちつつ、さらに市場の流動性の集中を可能にしてきているという、そして結果として市場の効率性が向上してきているという苦労を重ねながら、そこをアウフヘーベンしてきているというような感じを持っております。

次のページは、全米のNational Market Systemの概要でございますので、少し眺めて頂ければよろしいかと思っております。

8ページをご覧下さい。8ページはヨーロッパでございまして、ヨーロッパの方はアメリカに遅れること5年から10年と思っておりますが、しかしながら、ここへきて急速にほぼ同じような方向性でまとまってきているなというふうに見ております。その典型的な、象徴的な事象が“MiFID”で、この11月からこれが施行されるということになっておりまして、内容を見ますと、ほぼアメリカのNMSと似たような方向性を持っております。少し遅れて作っておりますので、人為的なところがあるかなという感じはいたしますが、規制市場、いわゆる我々のような取引所、それからMTF、Multilateral Trading Facilityと言っていますが、アメリカでいうECN、PTSとほぼ同じことで、要するに私的な取引所というふうに捉えられてよろしいかと思うのですが、それからもう一つは、証券会社の中でも相対のマッチング売買、システマティック・インタナライザーと呼んでいるようでございますが、OTCで顧客注文を証券会社の中で付け合わせるというようなものでございます。それを今度の“MiFID”によりまして、投資家の観点からしますと、できるだけ平等に扱えると。どこの注文でもベストプライスのところに投資家の執行が行われるようなルール、それからそれを支えるシステムインフラというものを構築していくという方向性でございます。

それをベースに、また逆に、市場の中でも新しい動きが出ておりまして、そこの下にございますように、プロジェクト・ターコイスと呼ばれる7つの投資銀行が新しい市場構造を作っていく。あるいはChi- x と言われるようなインスティネットの私的な取引所といったものがそこに喰い込んでくるというような形でございます。これも、要するにそれ一つ一つ見ると、それぞれに分散しているように見えるのですが、しかしそこに、金融テクノロジーを使って、しかも全体的なルールを整合性のあるものにすることによって、決して分散させるのではなくて、集中のメリットも出しつつ、健全な競争というものをそこに実現しているというような形の方向性が出てきているのではないかと考えております。

翻って、我が国についてですが、9ページをご覧下さい。これは一般の株式の、日本株の注文の状況を書いたもので、決してあまり厳密な絵ではありませんが、海外の投資家の日本株に対する売買というのは非常に大きな比率になっている訳ですが、例えば、それをとりますと、海外投資家が売りたい、買いたいという需要を持っていたとすると、まず海外の方の市場でそのインタレストがぶつかり合う。それが今度、残った分が国内に回ってまいりまして、今度は国内の証券会社での売買ということになる。そこでさらに残ったものが取引所の方に出てくるというような流れになってきていると思います。

そうしますと、この日本株というもののプライスの決まり方が分散した形で決まるようになってきているということでございます。流動性も分散してきているということでございます。正直に言って、この比率は正確には分かりませんが、極めて、私の直感的に言いますと、海外のこの店内の取引というのが20%ぐらい、国内の証券会社間でのマッチングというのは10%ぐらい、取引所の方に出てきているのが70%ぐらいというようなものが、時によっても全然違うと思いますけれども、そのぐらいの状況にはなってきているのではないかと思っております。この状況が更に進めば、極端なケースは、日本の市場の空洞化というような表現にもなってくるような可能性もあるのではないかと思っております。

それから、もう一つ、日本でも取引所外取引というものが増加してきております。10ページに一応統計的な数字だけ載せてございますので、ご参照頂けたらと思います。

11ページをご覧下さい。11ページは、これに対して、どういった動きをしていくのがいいだろうかということですが、先ほどのアメリカとかヨーロッパが苦労しながら進んできている道というのをやはり日本もできるだけ時間を短くして対応していくべきではないかと考えております。それにはシステム機能のフル活用。それに対するそれぞれの取引所、あるいはPTS、そういったものがしっかりとした取り組みというものをやっていかなければならないと思っておりまして、それが投資家のニーズにしっかり対応していくというところを起点にしながら、自然な動きで、できるだけ作り上げていくというのがいいと思っております。ただし、やはり時間的には、欧米に遅れている面がございますので、人為的にスピードアップしていく必要性というのも同時にあるのではないかと思っております。

ポイントは、投資家のニーズはどんどん多様化してきている。それを満たすためには、商品の多様化というのも、色々な金融のイノベーションを通じてやらなければいけない。それをやりますと、必然的に放っておきますと流動性は分散していくという形になると思います。しかしながら、そこをもう一つアウフヘーベンして、金融テクノロジーを駆使し、それぞれの参加者の競争による努力というのも引き金を引きまして、その結果として、分散したものをもう一回集中させていくような仕組みというのを作り上げていくべきで、そのときにはそれが可能になるようなルールづくりとか、そういった枠組みについても柔軟に考えていく必要があるのではないかというのが意見でございます。

12ページをご覧下さい。では、ジャスダックは何をやっているかといいますと、大変小さな存在でございまして、大したことは出来ていないのですが、一応次世代システムというのを今デザイン中でございまして、2009年の秋までに作ることになっております。そのときに従来からのスピードとか堅牢性とか、そういったものに重要性があった訳ですけれども、これからも当然そこは重要ですが、今回の開発に関しては、できるだけ新技術を使って、柔軟性を持たせるというところに私どもの場合にもポイントを置いております。それから、今、証券会社の皆さんと相談しながら、今までやってまいりましたマーケットメイクという仕組みを発展させまして、流動性供給制度というのを工夫したところでございます。

それからもう一つは、私どものマーケットは新興市場のマーケットでございますので、ファンダメンタルな情報というのがもっとしっかりと投資家に伝わる、使えるような状態にしなくてはいけないと思っておりまして、それをこれも証券会社の皆さんとか独立系のリサーチ会社とか、そういうところとの連携に拠りまして、それをシステムでいかにうまく統合して、投資家の方ができるだけ瞬時に投資情報を使えるような状態に、過去の取引所機能にはちょっとなかったかも分かりませんが、そういうファンクションもやって参りたい、コーディネーターとしてやって参りたいということで取り組んでおります。

次のページをご覧下さい。ここの7のところが一番本日強調したいところですけれども、少し繰り返しになりますが、一つ、やはりPTS、ECNという動きがあります。日本でもこの動きはあるのですが、日本の場合の今のPTSの動きというのは、ネット証券会社の商売の道具というような、商売をプロモートするような道具というようなアプローチがちょっと強過ぎて、先ほど言いましたような、むしろ分散の傾向が出ているのが問題点だろうと思っております。やはりECNの良さというのは創意工夫をして、色々な新しい技術をそこに仕組みとして導入してくるというところにユニークさがあって、いわばベンチャー取引所のような機能です。それをそれぞれの人がやることによって、新しいものができて、それをさらに今度トータルのマーケットとして生かしていくというような流れを作らないといけないのではないかと思っています。

それから、取引時間の延長問題というのも、大体欧米の取引所は一場制になっております。ほぼ日本だけ、あるいはアジアの幾つかの取引所が午前、午後の二場制というふうになっておりまして、必ずしもそれがベストではないのではないかと思っております。それから、当然夜間の取引等も起こってきておりますので、そういう対応も考える必要がある。しかし、これも結果として流動性を分散させるような方向に行ってしまってはいけないという難しさがありますので、そのあたりをしっかり考えていく必要があると思っています。

もう一つ、逆にこのPTSに代表されるような動き、時間延長というのは、どちらかというと自由化していく、市場での自由な活動を促すという方向性ですけれども、そうしますと、一方でやはり規律の問題というのが出てくると思っておりまして、規制のあり方、とりわけ取引所が担っております自主規制のあり方というようなことについて、一方でしっかり考えていく必要があると思っております。

ここからは全くの私の私的な意見でございますが、私自身は、構造として非常に厳格なペナルティーを科すことのできる公的規制と、それから自由と規律のバランス、これが非常に難しいと思いますが、自由と規律のバランスを市場実態に合って、しっかりと図っていけるような自主規制機能、それから、取引所をいかに流動性の観点から機能向上を図り、公正な価格形成をして、市場の多様化に対して健全な競争をしながら、最新のテクノロジーを使っていく、したたかなというか、しなやかなというか、そういう取引所の仕組みを実現していくというコンビネーションがとても大事なのではないかというのが私の意見でございます。それを実現してこそ、あるいはしたときに、東京市場の国際的な競争力というのが初めて出てくるのではないかと思っているところでございます。以上が、市場の面からの私見でございます。

それでは、次に「II」の方に移らせていただきまして、プロ市場というような方向性でお話をさせていただきたいのですが、ここのポイントは、私はやはりイノベーティブな資金調達ということだと思います。色々な、非常に機動性のあるイノベーティブな資金調達をみんなしたい訳です。しかしながら、それをやりますと、やはりリスクが上昇すると言いますか、投資家にとりましては、リスク測定が非常に難しいプロダクトが出てきたり、仕組みが出てきたりするというところがポイントだと思います。それを可能にするものとして、プロ市場というのが現れてくるのではないのかなと思っておりまして、そういった流れでお話をさせていただきたいと思います。

15ページをご覧下さい。私どもが取り組んでおります新興企業のマーケットの方でも、色々な企業が早く公開したい訳ですが、特に研究開発型の企業の、よりアーリーステージでの公開というニーズが非常に強く出てきていると思っております。しかし、一方で、投資家を保護していくという非常に重要な側面がありますので、このバランスをどうやってとっていくのかというところが非常に大きな課題になっております。それから、海外の企業の中で、やはりこのグローバルな展開の中で色々なところで自由な資金調達をしたい、あるいは企業によっては、国籍とは関係なく、別の国の取引所でむしろ最初の公開から事業展開をしたいというニーズが出てきていると思います。それに対して我々も応えていく必要があると考えております。

そこで、直接的に個人投資家にリスク判断を委ねるのではなくて、やはりワンクッション置いた、プロの参加する市場というようなものを考えるニーズというのがそこに生まれてくると思います。ただ、日本の場合の問題点としては、機関投資家自身も非常にリスクアバース、必ずしもユニークな独自の主体的な投資判断をしないというような現状も、欧米に比べるとあると思いますので、そこら辺は問題点だと思います。その際にはやはり、海外の機関投資家もそこにできるだけ自由に参入できるような素地を作る必要があるのではないかと思っております。

16ページ、17ページは、IPOの数、新興企業の調達額の統計でございますので、ご覧頂けたらと存じます。

18ページをご覧下さい。では、やはりこれについてもジャスダックは何をやっているのかということについて少しだけ申し上げます。新市場「NEO」を立ち上げまして、一号銘柄が11月13日から初めてトレーディングされる運びになっておりまして、私ども、これをずっと1年近く準備してまいりました。ポイントは先ほど言いましたように、より研究開発型の企業で、必ずしも実績積み上げ型ではない企業でも、公開していく必要性、とりわけ今の日本にはイノベーションを促さなければいけない産業構造の中で必要性が高いのではないかというふうに思っていまして、そして、それに対する投資家のニーズもある。しかし、ここのところは、必ずしも、過去、うまく企業ニーズと投資家ニーズが市場の中でマッチングしていないという状態があると思っておりまして、そこに何らかの工夫を凝らすことによって、新しい市場を作れないかということで取り組みまして、このNEOというのを立ち上げました。

ポイントは、やはりそういったタイプの企業でございますので、技術評価という要素が今まで以上に必要だということと、過去の実績の積み上げよりもこれからの経営者の考え方、将来に対する事業計画というものをより厳しく問うていかなければいけないという要素がありますので、過去は今までよりも問わないけれども、むしろこれからの未来については、より厳しく企業に対して開示を要求していくというようなスタイルで特色を出しておるつもりでございます。そんな試みをジャスダックはやっておりますというご報告だけでございます。

19ページをご覧下さい。当然この19ページが言いたいところでございますが、そういったプロ向け市場をどうやって作るのかということに関しまして、私もやはりアメリカの144Aタイプと、イギリスのAIM-Alternative Investment Marketのタイプがあるのではないかと思っております。144Aタイプというのは当然プロ私募でございますので、私募でやったものにどうやって流動性をつけるかという観点から市場作りをしていくというアプローチだと思っております。

それから、一方で、AIMタイプというのは、私どもがやっておりますような取引所、市場のある意味での少しダウングレードといいますか、より下にまで取引所の機能を下ろしていくというアプローチになるかと思います。このAIMタイプというのは、実は私どもの前身の店頭市場の中にもそういう要素が入っておったと思っておりますけれども、デジグネイティッドアドバイザーと呼ばれる推薦人機能を使って、企業を市場に登場させるという仕組みになっているかと思います。どちらのアプローチも今後考え得ると思いますけれども、どういうアプローチかというのは、しっかり認識した上で作っていく必要はあるのではないかというふうに考えております。

それから、では、どういう市場にしたらいいのかということに関しては、もともとのニーズからしまして、機動的な資金調達ができなければ意味が無いというふうに思っております。例えば、公募価格の決定に非常に時間がかかるとか、会計基準が日本式じゃないとだめだとか、あるいは開示が日本語じゃないとだめだとか、そういう要素はできるだけバーを下げておかないと、機動的な資金調達というのはできないのだろうと思います。国際会計基準、あるいは信頼できる出身国の会計であれば認めるとか、あるいはできる限り英語のハンドリングでも認めていくとか、何かそういうグローバルな時代にふさわしいルールづくりというのが求められるのではないかと思っております。

それから、もう一つは、先ほど申しましたように、日本に機関投資家が非常に層が厚く存在していればいいのですけれども、残念ながら、少しそこに迫力に欠ける状況というのもあると思います。それを当面補っていくため、あるいは逆に日本により層の厚い機関投資家層を育てていくためにも、海外投資家の参入というのは容易にしておく仕組みというのが必要なのではないかと、そんなことを考えている次第でございます。

以上、前半は市場の流動性を中心に、後半はプロ市場について焦点を絞りまして、お話をさせて頂きました。いずれにしましても、市場の多様化と流動性の分散を克服した形でのIT技術を駆使した市場構造、そこに公的規制、自主規制、そして市場運営といったものをうまく組み合わせた市場構造というのが今、必要ではないかと考えている次第でございます。

大変貴重なお時間を頂きまして、どうもありがとうございました。以上でございます。

○池尾部会長

どうもありがとうございました。

それでは、ただいまの筒井社長のご説明に関しまして、ご質問、あるいはご意見がございましたら、どなたからでも結構ですので、お出しいただければ。嘉治さん。

○嘉治委員

ありがとうございます。3点お伺いします。

1つ目の質問は大変稚拙な質問で、大変申し訳ございません。6ページの図には、投資家からOMS、そして、DMAを通じて証券会社、NYSE、ナスダックその他に注文が行くことになっております。7ページは投資者から直接証券会社に行きまして、証券会社を通してのみNYSEとかに行くことになっておりますので、7ページの図のどこにOMSとDMAが入るのか疑問に思いました。

2つ目の質問は、13ページのところで、自主規制を効率化することが必要であるというふうにお話になられましたが、これについての質問です。そもそもなぜ「自主でない規制」ではなくて「自主規制」なのでしょうか。それから自主規制を効率化していくプロセスで、もしかすると今まで自主規制であったものが、自主でない規制に移行する、あるいは逆に規制が自主規制になった方がよいこともあり得るのだろうかということを疑問に思いました。

3つ目の質問ですが、19ページで、一番最後のポイントとして海外投資家の参入の容易性というお話をなさいました。これが容易でない理由は何なのでしょうか。その1つ前のところでご説明になった、例えば情報開示が日本語だとか、そういう翻訳さえすれば変わるようなことなのか、それとももっと本質的に時間をかけて構造的に変えていかなければ到底参入が容易にならないというレベルのことなのか、それをお聞きしたいと思いました。

以上の3点でございます。

○池尾部会長

では、お願いします。

○筒井参考人

ありがとうございます。できるだけ簡潔にお答えをさせていただきたいと思います。

6ページ、7ページ目のところは本質的には図の表現のことでございまして、投資家から、特に大手の投資家から直接取引所に注文が行くという形の流れが生まれてきておりまして、その場合には、証券会社を実質的に通らない。証券会社がオーダーをしっかり見るという機能は要求されているものですから、通ることは通るのですが、直接行って、手を介さないという状態が生まれてきておりまして、それは7ページの方ではそういう線を入れるべきものでございます。

それから、効率化の問題は、やはり自主規制というか、市場のテーマとして自由と規律と言われるものがありまして、できるだけ市場では参加者が自由に行動をとれた方が市場機能というのは基本的にはよろしいというふうに思っておりますが、ただし、みんなが本当に勝手気ままな自由をやりますと、今度は市場が乱れてしまうというジレンマがありまして、当然そこには規制をかけなくてはいけないという形になると思います。しかしながら、大枠の根本のところの規制というのは公的規制で、それを破ったら絶対もう大きなペナルティーだというアプローチがいいかと思うのですが、その内側では、市場に密着した形での自律的な規制、我々は自主規制と思っておりますけれども、そこの部分というのが市場運営の場合には非常に重要さがありまして、できるだけリアルタイムで色々なものに対応する、あるいはむしろ予防的に対応するとか、あるいはマーケットの実態に沿った規律を表現していくとか、そういったものをバランスよくやらないと、逆に市場機能が死んでしまうという要素がございます。そこをどうやって本当にうまくバランスするかというのは、これは各国とも悩んでいるところでございます。各市場とも悩んでいるところでございます。

そこのところを、やはり今後、市場を活性化させていきたい訳ですけれども、そういうことをしっかり考えながら、しかし市場は活性化していく方向、そのときに、市場が多様化してきておりますから、それをただ多様化すると流動性が分散してしまう訳です。それを一つにまとめてくるという仕組みづくりをしながら、そこにルールを作っていくという、ちょっとなかなか難しい芸当でございますけれども、それを各国やっておりますので、欧米ともにやっておりますので、日本もそこを克服しないといい市場にはならないというポイントでございます。

○嘉治委員

旗振りは誰がやるのですか。

○筒井参考人

それは正直言って、本当は市場参加者全員というのが望ましいところでございます。ですから、こういったご議論を通じても、市場のメカニズムのご理解をできるだけ多くの方々にして頂いて、その上にできるだけレベルの高い議論をして、もちろんまとめるときには金融ご当局とか皆さんの議論を集約する形で作り上げていくという形になると思います。

それから個々の、逆に競争を利用した、いかに競争に勝つかという観点からみんなが努力していくということの成果というのもうまく使っていくという必要も一方ではあるのではないかとそんなふうに思っております。

それから、最後のところの海外投資家の参入の件ですが、例えば、今度プロ市場を作るとしますと、特定投資家というコンセプトが出てくると思うのですが、海外の投資家が特定投資家に当たるかどうかというチェックが必要になってきます。そのときのチェックをできるだけスピーディーにチェックできるような仕組みが、例えば必要だと思います。

それから、これはなかなか難しい問題ですが、税制の問題もございます。どういうステータスを彼らに認めるのかとか、そういったようなことすべてが絡みますけれども、参入がもちろん悪意のある人なんていうのは絶対に入れる必要はない訳ですが、健全に市場に参加したいと思っている海外の投資家であれば、できるだけスピーディーに容易に入れるような仕組みづくりというのが必要なのではないかという、そういうポイントでございます。

○池尾部会長

ありがとうございました。もうお一方ぐらいご質問があれば。藤原委員。

○藤原委員

貴重なお話、どうもありがとうございました。ところで、16ページと17ページの表に関して質問が1つあります。この表を見ますと、ジャスダックにおけるIPOの件数が減っているだけでなく、資金調達額も減っているのが分かります。この原因はなぜか、ご説明していただけますのでしょうか。

○筒井参考人

残念ながら、一番大きな要因は市場状況でございます。2006年1月にライブドア事件がご案内の通り起きまして、それを引き金にしまして、新興企業全般に対する不信感というのが世の中、あるいは投資家の皆さんの中で強く認識されまして、ここ1年半ぐらい、非常に新興企業のマーケットというのが厳しいパフォーマンスになってしまったという状況があります。それを反映しまして、一つには企業の方からしますと、望むようなタイミングで、望むような資金調達ができにくいという状況が生まれたということがあります。

もう一つはそういう状況でございましたので、私どももそうですが、色々な意味での規制が非常に強化された、それから会計監査法人の皆さんのスタンスも非常に厳しいものになったという状況がありまして、調達する方の企業からしても、過去に比べて自由な形での動きというのがなかなかできにくい状態になっていたということがこの数字の背景にあると思います。ただ、私どもは必ずしもそれを後ろ向きに考えておりませんで、ここは本当にいい形でのIPO市場を作っていくチャンスだととらえまして、ずっと努力をこの間もしてきたつもりでございます。

以上でございます。

○池尾部会長

では、原さん。

○原委員

ありがとうございます。前回と今回を通じて取引所についての大変興味深いお話を聞かせて頂いたと思っております。2点、質問があります。

一つは6ページですけれども、これはアメリカの今の執行環境のお話をなさって、非常にうまくいっていると。競争と規律とのバランスがとれて、うまくいっていて、この最良市場注文回送という、こういったものが出てきているというような辺りは、投資家としても魅力的という感じがしているのですけれども、ただ、前回のヒアリングのときに出ていた話では、アメリカでも市場外取引が非常に増えてきているということで、必ずしも取引所を通すという形ではなさそうなのが増えてきているというのは、それでもこんなに魅力的な市場づくり、取引所というのを作っても、そういった外での取引が増える傾向というのは、やはりなかなか歯どめがかからないのだろうかということが一つ。

それから、もう一つは、海外の投資家の参入についてなんですが、これは嘉治委員の質問のご回答にあったところですが、参入の容易性というところだけでの話になるのかどうかということで、今、かなり海外の投資家が入ってきていらっしゃって、これをもっと増えるべきだとお考えなのかどうか。それとも、特定投資家への移行ということだけでのお考えなのかというのをお聞きしたいと思いました。

それから、開示についての工夫というのは、英語でもオーケーだという話は、確か3年ぐらい前にしてきた経緯がありまして、その辺りのハードルはやや低くなっているとは思っているのですが、ただ、それでもやはり入りにくい仕組みが開示とか会計基準の辺りが残っているのかという辺りをお話し頂けたらと思います。

○池尾部会長

では、手短にお願いします。

○筒井参考人

分かりました。どうもありがとうございます。

市場外につきましては、こういうふうに考えております。市場外で起こったものも、最終的にはトータルの市場の中にどういうふうに取り込んでいくか、見えるようにしていくかというのがポイントだと思います。その中では、色々なものが多層化してくるという発想法だと思います。

ポイントは、その一つ一つがどっちだとか考えるのではなくて、トータルのマーケットをどれだけ広がりのあるもの、どれだけ深みのあるものにするかという視点が極めて大事であって、それを生むのにアメリカという国ではかなり競争という原理をうまく使いながら、しかしながらトータルをより進化するような形で運んでいっているということでございます。中身は、正直申し上げて、血みどろの戦いをやったり、色々な苦労をみんなしていると思います。それをアジア的なアプローチですと、もうちょっと論理中心で、自然な競争だけではなくて、ある程度の整理をして、進展させていくということだろうと思います。ただし、それはやはりそういう理屈にあった形でやらないと、うまくいかないだろうというポイントでございます。

それから、海外投資家のこともほぼ似ておりまして、海外投資家を増やしたいというのはその通りですが、比率を上げたいと言っている訳ではないので、でき得るならば日本の投資家がもっと育ってくれる。個人投資家も健全な形で、それから、私は非常に大事だと思っていますのが、欧米に比べてやはり日本の機関投資家の層があまりにも薄過ぎて、これでは世界に競争力のある市場を東京に築くというのは到底無理だなというふうに思っておりまして、ここの層をやはりしっかりと厚くしていかないといけないのではないかという、そういうポイントでございます。

それから、最後の開示のところは、ご案内のとおり、英文でもいいよ、というのは一応スケジュールにも少し載ってきていると考えておりますが、ただ、最近私、グローバルなそういった趣旨の会合に二、三出たのですけれども、やはり正直申し上げて日本はちょっと特殊だなと、あまりにも日本語に自信を持ち過ぎかなというふうに思っておりまして、もうヨーロッパでも、フランスでもドイツでも英語でいいよと言っている訳です。しかも、アジアでも中国はみんな英語でいいよと言い出して、中国、インドも英語でいいよと言い出しているので、日本だけが日本語じゃないとだめだぞというのは、やはりちょっとグローバルという視点からは置き去りにされるリスクが高まってきているのではないか。ですから、みんな英語はアメリカの言葉だ、イギリスの言葉だという意識はもうほとんどなくなってきていて、英語はグローバルにコミュニケートするためのツールだという意識にもう変質してきているのではないかなというふうに私には、そういう会合に出ますと非常に強く感じられますけれども、そういう視点でございます。

○池尾部会長

どうもありがとうございました。

まだまだご質問はあるかと思うんですが、本日、次の議題が控えておりますので、誠に申し訳ありませんが、そろそろ次のテーマに移らせて頂きたいというふうに思います。どうも、筒井社長ありがとうございました。

○筒井参考人

どうも貴重なお時間、ありがとうございました。

○池尾部会長

それでは、プロに限定した取引の活性化ということで、まずは事務局から資料2、資料3についてご説明を頂きたいというふうに思います。

○井藤市場業務管理官

市場業務管理官をしております井藤と申します。よろしくお願いいたします。時間の関係もございますので、資料に沿いながら、なるべく簡潔に説明するよう努力したいと思います。

まず、資料2の論点メモ(2)をご覧頂きたいのですが、これは全体で四部構成になっていまして、まず最初、1ページから基本的考え方といたしまして、諸外国の状況、そして、そういうものを踏まえた上で、我が国にプロに限定した取引の場を創設する意義といったものについて、論点として出させて頂いております。

3ページ目からでございますが、そうしたプロに限定した取引の場を考えていく際の制度的枠組みについての基本的な視点というものについて、論じさせて頂くという形になってございます。

それで、この取引の場についてですが、我々の方から、2つのパターンがあるんじゃないかというふうに考えてございまして、そのそれぞれにつきまして、6ページ目から1つめの枠組みのイメージといったものを掘り下げて書かせて頂いているという形になってございます。それで、2パターン目については7ページ目からという、こうした全体の構成になってございます。

それで、1ページ目にお戻り頂きまして、基本的考え方についてですけれども、まず諸外国の状況等でございますが、時間の関係もあり、資料の説明を若干割愛させて頂きますが、英国のAIMや米国の144Aといったようなプロ投資家を念頭に置いたような市場というものが拡大しておりまして、シンガポールなどにおいてもこうしたAIMをモデルとした市場の開設に向けた動きがあるといったような状況になってございます。

そこで、資料3の10ページをご覧頂きたいんですが、特にこうした観点で、シンガポール、それからロンドンのAIMですね、下の段の右の方から3番目と2番目ですけれども、海外の企業というものをかなり、4分の1近くを占めるぐらい引き寄せていると。翻って、日本を見ますと、なかなか海外の企業にアピールできていない部分があるという状況があろうかと思います。それで論点メモにお戻り頂きまして、2ページ目ですが、我が国においても、こうした取引の場というものを考えていく必要があるんじゃないかと。

次の点ですが、こうした中で、よく英国のAIMが参考となるのではないかという指摘がございます。他方で、イギリスの市場環境の相違等に照らして、それをそのままの形で我が国に持ち込むことが適当なんだろうか、こうした視点もあるかと思います。こういった状況を踏まえまして、我が国において、プロに限定した取引の場を創設する意義等ということでございますが、先ほどからの議論にも色々あったかもしれませんけれども、我が国におきましては、法定の情報開示等のコストが、やはり海外の企業、さらには国外のアーリーステージの企業にとっては負担になっているのではないかというような指摘があると存じております。

そして、次の点ですけれども、一般の投資家を念頭に置きますと、やはり今後ともガバナンスや情報開示の重要性というものはやはりますます高まってくるんだろうと。他方で、プロというものは、プロとしての能力がある訳ですから、自己責任ということをベースに制度というものを考え得るんではないだろうかと。そうしたことが考え得るのであれば、一般投資家とプロというものをきっちりと区別さえできれば、取引の効率性を重視した観点から、規制のコストというものを抑えた市場というものを考えられないか。そうすれば非常に円滑な資金調達を行うことができる場というものを提供できるのではないかということが考えられるのではないかと思います。

そうして、そういった自由度の高い取引の場というものが考えられるのであれば、そこから3つぐらいの点を挙げておりますが、ここに述べられているような良い効果というものが期待されていくのではないかということでございます。

ちょっと時間の関係上、急がせて頂きますけれども、1ページおめくり頂きまして、それでは、こうしたプロに限定した取引の場というものを考えていくに当たって、基本的な視点というのは一体どういう点なのであろうかという点でございますが、最初の点でございますけれども、資金調達者の視点から見ますと、当然のことながら自由度が高ければ高い方が良いということになろうかと思いますけれども、取引の場の厚みというものを考えて、参加者を多くしたいと。従って、プロの範囲を拡大したいということになれば、やはり投資者保護等の規制というものが求められてくると。従って、自由度とプロの範囲というものがトレードオフの関係にあるんじゃないかということがあろうかと思います。

参考といたしまして、現在の金商法においてプロの範囲と開示規制について、皆様ご案内の通りかと思いますが、確認のため触れさせて頂きますと、まず最初のマルですが、機関投資家とプロ私募というものがございまして、現在、ディスクロージャーの関係では、取引の対象となる投資家によって、機関投資家すなわちプロとそれ以外という形に分けてございまして、適格機関投資家を対象とした制度としてプロ私募ということで開示規制が適用されない制度がございます。他方、金商法上、ご案内の通り、今般プロ投資家として特定投資家制度というものが導入されてございます。特定投資家についても、情報の判断能力等があるということで、販売・勧誘についての行為規制が大幅に緩和されているということはご案内の通りでございます。

それで、この制度なんですけれども、これは商品の種類や業者ごとによって、別の取り扱いをすることを認めるフレキシブルな制度でありますが、ただ、フレキシブルさゆえに、開示制度に関しては採用されていないというような現状になっているところでございます。

こうした制度をベースとしてどういうことが考えられるんだろうかということでございますが、4ページに2つの類型というのを掲げさせて頂いております。まず、最初の黒マルでございますけれども、取引の自由度を最も高くする観点ということを考えれば、これは多分適格機関投資家を対象とするということになるんだろうというふうに考えてございますが、この場合に、先ほどからの議論にも若干あったと思いますが、既にプロ私募制度というものがある。それから、PTSというものがあります。時間の関係で、資料は添付させて頂いておりますが説明は割愛させて頂きますけれども、私設取引システムについて現行の制度がございまして、こういったものを活用すれば、取引の場の枠組みを考えることができるんではないかだろうかということが一つのパターンとしてあろうかと考えてございます。

次に、他方で、参加者が適格機関投資家だけでは、やはり市場の厚みという観点から十分じゃないんじゃないかと。特定投資家も、取引参加者として対象とすべきではないかといったような指摘があるんだろうというふうに考えてございます。この場合、先ほどご説明したように、金商法上、特定投資家もプロということで位置付けられている訳でございますので、こうしたことにかんがみれば、特定投資家という範囲にまで、プロの範囲を拡大して、参加者を拡大して、現行の開示規制や、販売規制が適用されない、自己責任というものをベースとして考えた新しい規律に基づく取引の場というものを取引所市場として整備していくことが考えれらないか、というのが2つ目のパターンでございます。

次に転売制限ですけれども、いずれの場合もプロを対象とした取引の場ということでございますので、一般投資家に転売されないということについては適切に措置が講じられる必要があるんじゃないだろうかと。

次に、不公正取引規制でございますけれども、これについては、取引の場の信頼性を確保するというものでございますので、プロだから不公正取引をしてもいいということでは当然ないので、場の性質にも照らしながら適切なものを課していく必要があるんじゃないかという点でございます。

それで、1ページめくって後半部分に移らせて頂きますけれども、では、最初のパターンの、プロ私募制度を活用し、適格機関投資家を取引参加者とする枠組みのイメージとしてどういうことが考えられるかということでございますけれども、開示規制につきましては、プロ私募でございますので、これは適用されないと。転売制限等は、プロ私募の有価証券ですので転売制限が制度上、課されてございます。従って、一般投資家には流通されないという形になってございます。

他方、プロに限定した取引の場において取り扱われることになった会社の株式等で、既にオーナーさん等が持たれているものがあると考えられるわけですが、これは原則として対象とならないのではないか。若干補足しますと、そうであっても、売出しに該当しなければ、市場外での売買というのは可能だとは考えられますけれども、この取引の場としては、そういうことかということでございます。

次に、不公正取引規制でございますが、これについては資料3の15ページをご覧頂きたいと思いますけれども、一番左に、現行の不公正取引規制というものを並べさせて頂いておりますけれども、マル1の真ん中辺の欄でございますけれども、上場有価証券、これは全ての規制がフルでかかってございます。他方、プロ私募の証券につきましては、何も制度的手当てがなければ青空銘柄ということで、一般則の限られた規制以外はかからないと。

ただ、こうした場の公正を図る観点からは、例えば、現行、グリーンシート銘柄というものがありますけれども、それについては協会が指定する取扱有価証券にするということによって、右から2つ目の欄の規制がかかってございます。こういったことを参考にしながら、適格機関投資家が参加者ということをベースとして、不公正取引規制の適用というのを考えていくことが適当ではないかという論点があろうかと考えてございます。

1ページおめくり頂きまして、その他のところですけれども、プロに限定した取引の場ということでございますが、現行の制度でPTSということが考えられる訳でございますけれども、その開設者は金商業者となる訳で、取引所ではないというのが現行の制度でございます。そこで、取引所が子会社等として金商業者を設立してPTS業務を行うことが考えられますけれども、この場合、取引所の子会社等の業務範囲の取り扱いについては、どのように考えていくべきであろうかという点が論点になろうかと思います。これについては、資料3の16ページをおめくり頂きますと、現行、金融商品取引所本体につきましては、上の部分ですけれども、金融商品市場の開設及びこれに附帯する業務に業務範囲が限定されてございまして、その子会社は本体の業務範囲にプラスして、認可を受けて、市場の開設に関連する業務を行うことができると。こういった現行の業務範囲との関係で、どういったように考えていくべきかという点があろうかと思います。

最後の論点でございますけれども、2つ目のパターンの取引参加者を特定投資家にまで拡大した場合の枠組みのイメージではどういうことが考えられるだろうか、ということでございますが、最初に、開示規制のところでございますが、この市場というのは情報収集等の能力があるプロ投資家、特定投資家まで含めた範囲でございますが、こういったものを参加者として考えているということを考えますと、必ずしも現行の開示制度に依拠する必要はないんじゃないだろうかと。自己責任ということをベースとして、効率的で高度な市場というものを実現できるんではないだろうかと。ただ、幾らプロが対象だといっても、虚偽の記載やミスリーディングな、不適切な説明等については、やはり何らかの形で法的な枠組みのもとでサンクションがかかるようなことを考えていくべきではないかということが論点になろうかと思います。

次に転売制限等でございますが、これについては、1ページおめくり頂きまして、一般投資家への流通を防止するための方策というのが必要ではないだろうかと。他方、先ほどもちょっと同様な点が出てまいりましたけれども、発行企業のオーナー等が既に保有しているものについては、適切な転売の機会等を設けてもいいんではないだろうか。ただ、技術的な点も含めて、こうしたことは可能であろうかどうだろうかという点があろうかとでございます。

次に不公正取引規制でございますが、この市場というのは相当流動性が生じる可能性もあると。我々としては、ぜひ流動性のあるものになってもらえればというふうに考える訳ですけれども、そうであるとすれば、上場有価証券に適用される規制と同等のものが必要となるのではないかということが論点になろうかと考えてございます。

最後にその他でございますけれども、現行制度上、国内会社に対してはプロ私募や非上場の場合であっても、株主数が500人以上になった場合には、やはり開示規制というものがかかってまいります。流動性が高まって投資家も増えてくると、プロに限定して開示規制を弾力化するというこの市場がうまく機能するためにはということを考えますと、この500人基準というものがどういう形で働くんだろうかと。やや制限的になるんではないか、どうだろうか。こういった点で留意すべき点はないかということが論点になろうかと思います。

次に、公開買付制度や大量保有報告制度についてもどう考えるかというようなところも論点になろうかと思います。

最後に、9ページでございますが、取引所に上場等する際の審査についてですけれども、イギリスのAIMのようにアドバイザー制度を導入して、それに全面的に依拠するというような議論もあろうかと思いますけれども、なかなか我が国においてそういったものが過去においてうまく機能していないというようなことを踏まえれば、やはり基本は市場開設者が行うと。そういった専門家なり、証券業者なりにどのような役割を果たして貰うかというようなことは、その先の問題としてどうやって知恵を絞っていけばいいかというようなことではないか、どうだろうかというような点を掲げさせていただいています。

以上、若干、足早だったかもしれませんけれども、説明を終わらせて頂きたいと思います。

○池尾部会長

どうも大変ありがとうございました。12月の末に報告書をまとめるまで時間が非常に限られているという事情もありまして、いきなり突っ込んだ論点メモが出てきたという感じかと思いますが、これからこの論点メモを巡って自由討議をして頂きたいと思いますが、今ご説明がありましたように、4項目から構成されておりまして、前半の総論的な部分と、後半の、2つのイメージに関する各論というふうに分かれておりますので、まずは1ページ目の基本的考え方のところから、2ページ、制度的枠組みについての基本的視点ということで5ページまで、論点メモのうちの1ページから5ページの前半の辺りに関して、まずご意見を伺いたいというふうに思います。いかがでしょうか。

どうぞ、田中委員。

○田中(浩)専門委員

意見ということではなくて質問と言いますか、確認ですが、このプロ向け市場と新興市場との関係や位置付けについて聞きたいと思います。

この資料で、プロ向け市場が今、日本の証券市場で必要ではないかという指摘があります。それでその一つのモデルという言い方が多分適当だと思いますが、AIMが挙げられています。このAIMのロンドンにおける位置付けは、紛れもなく新興市場だと思います。一方、現在の日本でもいわゆる新興市場は沢山あります。そういう中にあって、プロに限定にした市場というものを日本においてどう位置付けるのか、お聞きしたいとお思います。

新興市場のあり方に関しまして、ここ10年ぐらいを振り返ってみますと、ロンドンにAIMがありますが、ヨーロッパ大陸にもそれぞれ、英語で言えばニューマーケットと称するものが誕生して一時期は非常に活況でしたが、それが今ではほとんどのところがうまくいかず縮小した、あるいはほとんど手じまいしたという状況になっています。そういう中にあって、AIMが唯一成功しています。

この資料3の3ページのロンドン証券取引所のAIMの概要によると、投資家の約57%は機関投資家であるけれども残りはそうではないということです。要するに、個人が入って初めて成立しているマーケットであると思います。すなわち、グローバルで見て新興市場として非常に活況を呈していると言われるAIMであっても、機関投資家だけでは成立していないというのが一つの事実だと思いますが、そういうことを踏まえた上で、我が国における新興市場と今ここで議論しようとしているプロ向け市場との位置付けや関係について整理して教えて頂けるとありがたいと思います。

○池尾部会長

どうぞ。

○池田市場課長

ここでの今日の論点メモ、あるいはここの金融審議会での議論を求められている課題ということについて言えば、制度としての、法制度といってもいいかもしれませんけれども、法制度としての市場制度をどう考えていくかという問題の提起で、その制度の下で各取引所がどのような取引所市場の開設をし、運営をしていくかというのは、これは各取引所の経営判断の問題。もちろん金融庁としてトータルの取引システムがうまく回るものであるということはもちろん最終的には考えていく必要があるのかもしれませんが、基本的には、各取引所の経営判断の問題であると。

そうした中で今、田中委員からあった、現在の新興市場というものが法制度としてどういうものかといえば、これは参加者はプロに限定されておらず、現実には個人投資家が8割ぐらいかと思いますけれども、一般の上場市場であり、そういう意味で法制度の規定、これはディスクロージャー、公正取引ルールを含めて、例えば取引所の第一部の取引と法的には全く同一の法的な枠組みになっているということでございます。

今回の議論は、そうした一部市場及び現在の新興市場もひっくるめた、そういう一般投資家も参加可能で、ディスクロージャーなどについては、それなりに重厚な規制のある制度とは別に、こういう参加者を限定することによって、そういう規制については一定の緩和をするという可能性を考えられないかということを提示しているということでございまして、今ご質問にあった、現在の取引の枠組みをどうするかは、これは各取引所の運営の問題だというふうに割り切って考えるべきではないかというふうに考えているところです。

○池尾部会長

では、原委員。

○原委員

4ページに掲げられております、こういったプロの市場を新設しての活性化ということで、特定投資家まで取引参加者を拡大する場合というのが掲げられていて、これまでの適格機関投資家だけではなくて、金融商品取引法で新たに設けられた特定投資家まで範囲に入れるということなのですが、これは要件としては、1年以上取引の経験があり、それから純資産額として金融資産が3億円以上という形なので、ある程度移行はできると言っても、限定されたグループかなとは考えているのですが、実は金融商品取引法の施行後、証券会社から色々なご案内のようなものが入ってくるようになりまして、その中に金融商品取引法の解説をしたパンフレットなんかも作って送っていらっしゃるところがあるのですが、その解説を見ると、私ども一般消費者が考えているのとはちょっと違っていまして、随分特定投資家についてページを割いて説明をしていらっしゃるという感じがあって、証券会社としては、ぜひ特定投資家に移行して欲しいというご判断があるのかなという感じがして、これはふたを開けてみたときの感想的な意見も含めてなんですけれども。

そうしますと、この特定投資家というのがどれぐらい、こういった新たな市場に登場してくるのかという感じですね。それから期待度というのがあるのかどうかというのは、どのように思われているのか。それによって、その後の制度設計というところで配慮することも変わってくるかなと思って、市場の厚みへどれぐらいの寄与というものをお考えになっておられるのかをお聞きしたいと思っております。

○池田市場課長

仮にこういう制度ができたときにどう機能していくかということを占うのはなかなか難しい点があるんですけれども、むしろ今の特定投資家の制度について、もう一度確認的に申し上げておいた方がいいかなと思いますのは、確かに個人投資家については、これは特定投資家という制度が初めて設けられる制度だということもあって、比較的高い水準に色々なレベルが設定されているという面があるのかと思います。そういう意味で、今ご質問して頂いたように、本当の個人の方がどれだけスタート時点で広がりがあるかということについては、限定的な面もあるのかと思います。

ただ、注意しなければいけないのは、特定投資家というのは、個人だけでは必ずしもなくて、法人であるとか、あるいは組合形態などをとった場合には、業務執行社員の方の持っておられる資産がそうした規模をクリアし、かつその組合の参加者全員の同意が得られている場合には、特定投資家になれるというような扱いが規定されておりますので、個人単独でということであれば個人投資家限定かもしれませんが、法人あるいは組合というものを通じた、一種のそういう意味では間接型の部分があるかもしれませんけれども、そうした形での実質的個人の参加の余地というのは、制度としてはかなり広がりを持ったものがあるのではないかというふうに考えられると思います。

○池尾部会長

先ほどのご質問と同様で、制度的選択のオプションを拡大するという話と、ビジネスモデルとしてどういうものが展開していくだろうかというのとはちょっと別の次元の話で、もちろん制度整備をするときに何らかの見通しみたいなものは持ちながら制度整備を当然するんでしょうけれども、つまり全然利用されっこないようなことをわざわざ整備する必要はない訳ですけれども、でもあくまでもビジネスモデルを考えられるのは、ビジネスをやられている当事者だという問題がありますから、そこはあまり決め打ちできないという感じだと思います。

藤原委員。

○藤原委員

まず総論のところから私の意見を述べてみたいと思います。国際金融市場で約20年仕事をしてきて、私は日本の金融市場が必ずしも世界のトップにはなっていないというのを非常に悔しく思ってきました。英国の金融街シティーが出している資料によれば、日本の金融資本市場は世界で9番目です。アジアでも4番目です。その理由はなぜかといいますと、英国やシンガポールなどに比べ日本では、金融に関して「国家戦略」が存在しなかったからだと思います。日本は製造業では世界一を目指し、その夢は実現しましたが、金融業では世界のリーダーになるという目標さえもなかったのです。金融・経済が益々グローバル化していくなかで、その競争に打ち勝つために、私たちはアジアのナンバーワンを目指すための、戦略と、実施案を作っていかなければいけないと思います。それもリスクをとって金融戦略を構築しなければいけないと思います。金融市場で20年以上仕事をしてきて、日本の金融資本市場の国際化のために、そして今の30代、40代の人たちのために私たちの世代がリスクをとって戦略と実施案を決めていかなければいけないと思っています。

このプロ私募選択肢ですが、私は賛成です。これは日本が選択をしなければいけないことの1つだと思っています。その理由を3つ述べたいと思います。

第1の理由は、プロ私募市場の選択がアジア企業の日本での資金調達の機会を広げるからです。2つ目ですが、日本の中小企業の資金調達の機会が広がるからです。日本では大手企業によるエクイティを使っての資金調達は意外と簡単にできます。ところが中小企業の場合、公的機関である中小企業金融公庫などから融資を受ける機会はありますが、エクイティを使っての資金調達のチャンスはほとんどありません。例えば、若い人たちがいいアイディアを持っていて、起業し、お金を調達したいと思ったとき、返済をしなくていい資金の調達(銀行融資や私募債ではなく株式での資金調達)となるとなかなかチャンスがありません。とくに立ち上げたばかりの会社のエクイティ・ファイナンスはほとんど不可能です。例えば、売上げが1億とか2億といった小規模企業に対する株式市場での資金調達は存在しません。プロ私募市場はこれを可能にしてくれるのです。3つ目の理由ですが、日本の投資家サイドをみてみると、日本では個人投資家はあまり育っていないことがわかります。金融庁が出した、私がスタディグループの発表の際に使った資料にもあったのですが、日本では個人の6割から7割の人たちが株式投資が何なのか、債券投資は何なのかについて知らないと答えています。このプロ私募市場一般の投資家が投資できないプロの投資家つまり機関投資家対象の市場ですので、この市場が形成されても、一般の投資家はリスクにさらされることはないのです。先ほど3つの理由がありますと申しましたが、あと1つ4つ目の理由があります。4つ目ですが、やはり日本の金融市場というのは世界から孤立しています。先ほどのジャスダックの社長さんの説明に、「英語アレルギー」というのがありましたが、英語で目論見書をつくって資金調達をする市場が日本であってもいいと思います。プロ私募市場は英語での資金調達関連書類をつくることが許可されますので、今後アジアの企業による日本で資金調達件数は増えていくと思います。

○池尾部会長

どうもありがとうございました。

どうぞ。

○鴇田専門委員

ベンチャーキャピタル協会の者ですが、中小企業、零細企業にエクイティの場がないというのは間違いでございまして、私どもは、残念ながら欧米に比べるとかなり少ないですが、今、ベンチャー企業に対して一兆円くらいの投資をしておりまして、もうちょっとこれを拡大していきましょうと言っています。アメリカが大体30兆円ぐらいありますから、かなりの差がございます。これについては、どのぐらいが適正かわかりませんが、やはりそういう起業家を、アントレプレーナーを輩出させるべく支援するというのが我々の仕事で、それを加速させるために、こういったAIMのような市場を作って、さらにプロの投資家から資金を集めるということに当然賛成なんですが、今のような中小企業・零細企業にエクイティ調達の場がございませんということはないし、我々としては今までデットも含めてかなりの部分で支援してきたというつもりでございます。

以上でございます。

○藤原委員

すみません。ちょっと言葉足らずでした。「エクイティでの資金調達の機会がほとんどない」といったほうがよかったと思います。訂正させていただきます。中小企業でも愛知県の中小企業の場合は資金調達機会はそれなりにあるかと思いますが、例えば、岩手県の立上げ小企業の経営者が資金調達をしたいと希望したときは、市場からのエクイティでのファイナンスというのは現実的に非常に難しいと思います。

○池尾部会長

どうぞ。

○田中(浩)専門委員

今回、プロ市場の検討を行う、市場活性化のために色々検討するというのは、非常にいいことだと思っております。先ほど私が質問した背景は、市場の拡大について考える場合に、制度、インフラが前提としてあるものの、その上に市場の登場人物である、資金調達者である発行体、それから投資家、またその間を仲介する証券会社という三者について考える必要があるということです。その三者のそれぞれにとってメリットがあれば、市場はどんどん拡大していくと思います。

そういう面でまず、新興市場に関して、色々な見方があるかと思いますが、現行制度の枠組みに著しく何か問題があって、それがゆえに東京市場が活性化していないという見方は、私は持っておりません。ただ、改善する余地があるかと言えば、当然あると思っています。

そういう中で、今回プロ市場という概念を持ち出して考えていこうというのは、非常に結構だと思います。ただ、そのときにロンドンにAIMがあって、これが非常にバラ色に見えるから日本でもやろうと考えるばかりでなく、色々な問題、具体的には今言った投資家、発行体、証券会社、それぞれの立場から考えてみなければいけないと思います。発行体にとっては、今では新興市場ということで、10年前から比べればはるかに低いハードルで上場できるような状況になっています。ただそれすらも、ハードルが高いという発行体の、今よりも開示をしなくてもいいような形で資金調達をしたいというニーズを満たしていこうというのが、このプロ市場の考え方になっているかと思います。そうなると、発行体としては、コストをかけない形で資金調達をしようとする。一方、投資家サイドからすれば、情報が限定されている中での投資になる。そういう面では投資のリスクが高くなります。

そういうわけで、個人は排除して機関投資家に限定する形になっていると思います。ただ、機関投資家は、分析能力が高く、情報をきちんと集めて精査してプライシングする形になりますので、一般投資家も含めた場合のプライシングよりもかなり厳しいものになる可能性が高くなります。つまり、資金調達者からすれば、なかなか自分たちが思っているような値段では売れない可能性が高いと思います。

また、仲介者の証券会社の立場からすれば、そのマーケットが小さい、あるいは調達額が小さければ、労力をかけてもなかなかフィーが取れません。先ほど申し上げました通り、プロ市場においては、発行体の方は現在の新興市場と同程度のディスクローズもしたくない、お金もかけたくないということが前提になっていますから、そうすると仲介者に対してもフィーを払えないというか、払いたくないという形になると思います。そうなりますと、仲介者たる証券会社の方もあまり積極的に取り組まない可能性もあると思います。

あと、投資家については、今の新興市場の参加者の大方は個人ですが、その個人を一切排除いたしますので、投資家の方もぐっと絞られることになります。そうすると、プロ市場の考え方そのものは非常に良くても、実際に制度ができて、これが本当にワークするかということに関しては、慎重に考える必要があると思います。

以上です。

○池尾部会長

シティのランキングがリバイスされまして、東京は10位に下がったんですよ。

どうぞ、東さん。

○東臨時委員

結論は、プロ市場の育成は賛成であり、かつ、この頂いたメモの4ページ目の特定投資家まで拡大させていくという方向性だろうと思います。

なぜそう考えるかというと、先ほどジャスダックの筒井社長さんからもありましたけれども、日本にはプロが少な過ぎるという、ここがスタートだろうと思います。従って、プロが少ないので、やはり海外の企業、海外の投資家が入りやすい場としてプロ市場を作っておくという、これがスタートだろうと思っています。その上で、少ない日本のプロの厚みを増すために、適格機関投資家に絞るよりは、むしろ特定投資家をどのような形で、そのプロ市場に参加をさせるかというところが焦点ではないかというふうに思っています。

ただ、特定投資家についてなんですけれども、やや意外でしたのは、頂いた参考資料の13ページに適格機関投資家と特定投資家の区分けがございまして、適格機関投資家は当然特定投資家なんですが、上場会社あるいは資本金5億円以上の特定投資家が、私の印象ではまさかその下の矢印の一般投資家に移行するとは思ってはいなかったんですけれども、どうも聞くところによると、上場会社でも一般投資家になりたいと。従って、書面は十分よこせという、こういう状況もあるようであります。従って、上場して公募をしている会社が素人だというのはどうも違和感があって、ここの縛りは少し緩過ぎたのかもしれないというのが今の認識であります。

その上で、今度は特定投資家になることのメリットは何かというと、書面交付義務が要らない分、本来コストが下がらなければいけないのですが、一般投資家のコストが今のところ全く上がっていません。もともと非常に安い手数料水準の中で、一般投資家にはコストが上がるような制度に変わっている。現実には、まだこの部分を転嫁できていません。結局、特定投資家の方にとってはコスト面でのメリットが全くありません。それなら十分資料をよこせという一般投資家化という動きが出てくるのも、ある種当然なのかなというふうに思います。

従って、コストの方をすぐに一般投資家が高く、特定投資家が低いという構図に持っていければいいのですけれども、そこはそう簡単ではなさそうな印象がありますので、むしろコスト面よりは、投資対象、あるいは運用の選択肢なりを増やすという意味で、プロ市場への参加というところを促すというのが方向性ではないかというふうに考えています。

以上でございます。

○池尾部会長

ありがとうございました。

それでは、時間の関係もありますから、後半の制度設計の部分も含めて、ご意見を引き続きお出し頂ければというふうに思います。いかがでしょうか。

黒沼委員、お願いします。

○黒沼委員

各論部分のプロ私募を利用するか、特定投資家まで拡大するかという点ですが、どちらでもいいとは思うのですけれども、まず現在のプロ私募を利用する場合に、従来の制度と比べると、適格機関投資家の範囲は拡大されていまして、この資料にもあるように個人も適格機関投資家になれるようになっていますので、これだけでも従来よりは活発化するという見方もできなくはないと思います。ただ、制度として見た場合には、従来のプロ私募と比較して、取扱有価証券に指定して不公正取引規制を適用するということと、取引所の子会社もPTS業務を行えるようにするという点が違っているだけなので、どれだけ活発になるかというと少し心許ないかなと思います。

そこで、特定投資家まで拡大することができるかという観点から少し意見を述べたいのですけれども、特定投資家というのは、情報収集能力があると考えられますので、開示規制を適用除外にしても、みずから情報を収集できると考えていいと思います。従って、ディスクロージャーを適用しないことがコスト削減そのものとして考えられているのであれば、そこの点は特定投資家であればクリアできるように思います。

その際に、この7ページのところにありますように、発行者などに強制的に情報を開示させるという制度は適用しないけれども、発行者や仲介業者が虚偽または誤解を招くような表示をしたような場合には、やはり民刑事の責任というような形、あるいは課徴金というような形で一定程度の法的枠組みを用意しておく必要があるのではないかと思います。それは、特定投資家といえども、嘘を見抜く能力までは持っていない訳で、開示されている情報が正しいということを前提に分析し、あるいはそういう前提で情報を収集するからであります。

それから、一般投資家への流通を防止するための方策を講じることが当然必要でありまして、その場合には、現行のプロ私募のように一般投資家に対して勧誘すると罰則がかかるという形ではなくて、ここで想定されているような取引所を通じた取引を行わせるか、あるいは、何らかの施設を通じた取引を行わせて、その入り口のところで仲介業者に顧客が特定投資家かどうかという資格をチェックさせる方が有効ではないかと思います。

それから、不公正取引の規制については適用する必要があるというのに賛成です。

最後に、開示制度の外形基準との関係ですけれども、現行では、一般投資家、特定投資家を区別せず500人以上の投資家、株主がいれば、その者が情報を欲しているだろうということから開示制度が適用されることになっているのですけれども、やはり、プロと認められるような投資家であれば、自ら情報収集をする能力があると考えられますので、私募の場合に少人数私募から適格機関投資家の数を除外したように、500人の計算からプロ投資家を除くという方策をとって、この点をクリアすることができるのではないかと考えています。

以上です。

○池尾部会長

どうもありがとうございました。

田中委員。

○田中(浩)専門委員

この開示規制に絡んだところでちょっとお話をさせて頂きます。

先ほど、私から発行体、投資家、それぞれにメリットがなければ市場は成り立たないという話をいたしましたが、ここで、プロの範囲を適格機関投資家に限定するのか、特定投資家まで入れるのか、それはどちらでも構いませんが、情報収集・分析能力があるというのと、それがコストに合うかどうかというのは全く別問題です。1,000億とか500億のファンドを運用している適格機関投資家にファンドマネジャーが5人いて、彼らが開示されていない企業から相対で情報を収集、分析することが可能か不可能かといったら可能だと思います。ただ、その開示もできない会社というか、非常に規模が小さくてそこまで余裕がない会社で、例えば投資できる金額が5,000万とか2,000万程度だとします。そういう会社にわざわざ行って、相対で色々と開示されていない情報をとって投資しますかといったら、そんなことは基本的には考えられないと思います。つまり、情報収集を出来るか出来ないかというのと、経済合理性に則ってそういうことをするかしないかというのは、全くこれは別問題であると考えます。

それで、先ほどから出ていますロンドンのAIMでは法的規制はないものの、現実にはNomadの指導の下で、発行開示ですとか、半期ごとの継続開示及び株価に影響する情報の適時開示の義務が課されています。それで初めて市場としては成り立っており、相手を機関投資家に限定しているから、開示を義務化しなくてもいいということは現実にあり得ないと思います。

○池尾部会長

どうもありがとうございます。

では、藤沢委員。

○藤沢委員

ありがとうございます。

前半の話のところの特定投資家まで拡大するかという件につきましては、まさに藤原委員がおっしゃったことに私も深く共感するところもありまして、拡大するべきだというふうに考えています。この拡大した上で、プロ向けの市場において、どういったものが上場されてくるんだろうかというふうに考えたときに、不動産投信のような幅広い投資対象を持つファンドのようなものの取引というのがかなり活発化するんではないかというふうに思っています。

その場合に、やはり私は、これは調達側、運用側の両方から見ても大変いいことであり、運用側ということであれば、これがまた新たなファンド・オブ・ファンズの形になって、より一般の投資家の方にまで広がっていくチャンスというのがあるのではないかと。逆に、調達側からみれば、先ほど委員がおっしゃったような未公開の会社、小さな会社、それから今起きているのは、地方公共団体が持っている不良資産みたいなものがあって、あれをファンドで買って何とか再建していくというのは、まだまだこれからやっていかなくてはいけないと思うんですけれども、そういったものがファンドとして調達のツールとしてプロ向けに使われるというのは私は非常に意味があると思うんです。

ただ、そう考えた時に、ここの中で開示規制の中でありましたように特定投資家向けの公衆縦覧までの開示というのは、やはりやるべきではないというふうに逆に思います。これがあることによって、特に研究開発型の企業等にとっては、情報が公衆縦覧されるほどまで開示されるということはあまり嬉しいことではありませんので、プロ向けの市場全体においては、そこまでの開示の必要性はない。ただし、やはり違法なことがあった場合に関しては、きちんとした法的枠組みは用意しておくべきだろう。

そしてもう一つ、この資料の中にありましたけれども、そういった市場を作る中でPTSの活用というお話があったんですけれども、そこでやはり私は取引所というのも、このPTSというものを利用するのであれば、子会社を作るなりして参加する用意はするべきであろうと。なぜかと言えば、ファンドのような形で、こういったプロ市場と取り組んでいくと考えていくと考えますと、やはり価格というものをどこを基準にして評価していくのかということを考えたときに、私的な市場が競争して、出来高の一番高いところの価格を採用しましょうという考え方もあるかもしれませんけれども、やはりまず一番公的な取引所というものが入っておく必要性というのが非常に高いのではないか、そんなふうに思っています。

以上です。

○池尾部会長

どうもありがとうございました。

どうぞ、飛山委員。

○飛山専門委員

総論も含めて、意見を申し上げます。前回の私どもの社長の斉藤が東証としてプロ向け市場の創設に取り組みたいということを言明させて頂いた訳ですけれども、その基本的な考え方というのは、この1ページ、2ページに掲げられている通りでございまして、今我々が持っている市場でございますと、なかなか日本であるとかアジアの成長力のある資金需要の旺盛な企業が、やはり開示などに負担に感じて、なかなか上場していただけないということもございますものですから、投資家を区分してこういう形で、プロ向け市場という形で作って頂くということは、国際競争力の強化等の観点からも非常に意味があると考えております。

それから、各論のところでございますけれども、一つは投資家の範囲についてでございますけれども、片方で開示をどの程度求めるかということとのバランスの問題だろうと思うんですけれども、これは流動性等を考えますと、できるだけ広い範囲を認めて頂きたいと思っております。その意味から、特定投資家まで拡大していただきたいということでございます。

それから、開示のところも、できるかぎりなるべく負担にならないような形で最低限の開示でお願いしたいと考えております。

それからもう一つは、一番最後のところですが、実際に市場として、このプロ向け市場を作ったときに、どういう形で上場審査だとか上場管理をやっていくんだろうかという観点で、資料では取引所のところで管理してというのが前提であり、その先に色々考えたらどうかというご説明があった訳ですけれども、実際に現状を見てみますと、証券会社等は、AIMにおけるNomadのような機能を果たしていないというのが事実だろうと思うんですけれども、プロ向け市場を創設する際には、単に市場を作るということではなくて、そこを取り巻いているプレーヤーの新しいビジネスチャンスの創設というようなことも考えていく必要があるんじゃないかと思っております。そうした観点から、これに限定することなく、証券会社等がNomadのような機能を果たせるようなことも考えていく必要があるんじゃないかと考えております。

すなわち、これは先ほど池尾先生が言われた通りで、制度的な選択肢を広げるという観点から、必要ではないかと考えているということでございます。

以上でございます。

○池尾部会長

では、原委員。

○原委員

たびたびで恐縮です。具体的仕組みですけれども、7ページ、8ページ、9ページにかけて、特定投資家まで参加を拡大した場合の枠組みというのが書かれていて、開示規制、転売制限、不公正取引という辺りは検討を深めて頂きたいと思いますし、それから、「企業内容の虚偽又は不適正な説明・提示を防ぐ等の観点から最低限の開示の法的枠組みは必要」と、ここの部分も黒沼委員もご発言がありましたけれども、藤沢委員もご発言ありましたけれども、重ねてお願いをしたいと思います。

それで、最後の9ページにロンドンの証券取引所のAIMにおけるアドバイザー制度についてなのですが、資料3の4ページを見る限り、まだちょっと具体的な中身が見えないところがありまして、ぜひこの辺りをもう少し調べて頂いて、具体的にどのようなことをやっていらっしゃるのかどうか、参考になる点があれば、もう少し深めた議論のところでお願いをしたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

○池尾部会長

先ほどはちょっと時間の関係で説明をはしょってしまわれたんですけれども、一言か二言、補足が今の段階でありますか。特によろしいですか。

○井藤市場業務管理官

若干だけ補足説明させて頂きます。

資料の3ページ、4ページと基本的に似たようなことを書いているんですけれども、4ページのところで、「Nomadとは」ですけれども、基本的に取引所自体が上場審査や上場管理をやるということではなくて、NomadすなわちNominated Adviserと言いますけれども、これを通じて登録会社のフォローをしているという制度となっています。それでNomadなしでは取引所の登録・売買というのができないということになっていまして、そこに書いておりますように、4ページですけれども、Nomadが不在になると、売買ができなくなって、1カ月も継続すると登録廃止となると。ただ、ロンドンの人に聞きますと、不在になって登録廃止というような例はあまりないように聞いています。

主な業務は次のページですけれども、3の(1)で登録申請会社、及び登録後は登録会社の適格性を審査してフォローすると。それから(4)、(5)を見て頂ければいいかと思いますが、取引所への随時の情報提供など、取引所との間の連絡調整をしていると。

それで、5、Nomadの現状というところなんですけれども、我々、プロ向け市場を議論する際に、色々な証券会社さんにお話を聞かせて頂いたんですが、なかなか日本ではこのようなビジネスが成り立っていないという話をおっしゃる方が多かったので、ロンドンにおいて何故こういうビジネスが成り立っているんだろうということを色々聞いてみましたところ、5の現状というところにあるのですけれども、Nomadとしてライセンスを受けているのは、証券会社、法律事務所、監査法人等で直近のデータで90社弱なんですが、常時やっているのは30社程度。結構小ぶりなところが、このニッチなところに資源を投入してやっているような感じがありまして、中小の規模の案件については、地場証券会社が担当しているというようなケースが多いと。彼らに聞きますと、結構儲かる商売だというふうに言っていまして、ここら辺は日本の証券会社の方にも見解をもっと聞いてみたいとは思ってございます。

以上です。

○池尾部会長

どうもありがとうございました。

どうぞ。

○田中(浩)専門委員

今ちょっとNomadの話が出て、儲かると言われました。常時Nomadをやっている会社が30社程度あるということですが、野村ホールディングスでも、孫会社といいますか、100%子会社でこれをやっている30社のうちの1社であります。だけれども、儲かっているというのは、若干違うかなと感じております。

○井藤市場業務管理官

ロンドンの取引所の方に聞いた話ではということでございます。

○田中(浩)専門委員

そうですか。

これに関して、現状が分からないから何か色々言っているのではなくて、ちゃんとAIMの状況、あとそれから、私どものところでもAIMでアドバイザーを務めているということを踏まえて、先ほどから色々発言させて頂いております。

それで、ちょっと繰り返しになりますが、先ほどから開示基準について色々な議論がなされておりますが、発行体とすればベンチャーであり、なかなかディスクローズするのも大変だし、あるいはビジネス上の観点からしたくないということがあるのは、これはまさにその通りだと思います。その一方で、市場では取引参加者が公平に色々と売買できるものであるという観点で考えたときに、本来、市場における取引と相対取引とは全く別物であると思います。それで、現在は新興市場というディスクローズをして、そこで資金調達をするというマーケットがあります。このマーケットに入れない、入りたくないという発行体があった場合、そうした発行体に対しては、相対でベンチャーキャピタルが資金を入れるという道があります。それらの両方のいいとこ取りをした制度を作れば、それがベストではないかと思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、これはあくまでもそう見えるだけであって、実際に発行体、投資家、仲介業者、そうした当事者がビジネスとして成り立つと合意形成できるかということとは違うと思います。

先ほど私が申し上げたように、機関投資家は分析能力があるものの、あるというのと、実際にコストをかけて十分にそういうことをやるメリットがあるのかというのとは全く別問題ですので、実際の投資家、発行体、証券会社、彼らの行動を考えて決めないといけないと思います。

○池尾部会長

では、岩原委員、どうぞ。ちょっと時間も迫っていますので。

○岩原委員

金融審議会で議論しているのは、制度的な枠組みとして、こういう市場の活性化をするのにはどうしたらいいかということ、制度として何ができるかということを考えていると思います。その意味で私は先ほどから田中委員が指摘されている点が、大変重要だと思っておりまして、まず大きくはプロ向け市場の問題と、イギリスのAIMみたいな市場とまず分けて考える必要があると思います。

まず、プロ向け市場について言えば、日本の現在の金融商品取引法の下の制度は、アメリカの144Aの制度をいわばモデルにして作った制度でありまして、制度的にほとんど違いはありません。適格機関投資家の範囲が若干違うので、それは確かに見直しの余地があるかと思いますけれども、制度上はほとんど違いがない。それなのに、アメリカでは144Aが活用されているのに対して、日本では活用されていないというか、ほとんど使われていない訳で、むしろそれは制度以前の問題ではないかと考えております。先ほどから田中委員がご指摘されているような、本当にビジネスとして成り立って、市場が活用されていくにはどうしたらいいかということを、むしろビジネスの現場の方から考えて頂くのが、まず大事ではないかと思っております。

それから、もう一つ、AIMタイプの市場ですけれども、これはプロだけでなくて、一般投資家も参入してくる市場です。これは、ある意味、危険も大きいし、グリーンシートその他で、従来色々なことをやりながらうまくいっていないところです。制度的に考えてみますと、ここも結局プロ向け市場、適格機関投資家の適用除外とあるいは少数者向けの適用除外で開示等が免除されている市場ということになると思いますけれども、制度的に何か従来と変わったことをすることによって、そういう新しいマーケットができるようにすることができるかということを考えてみると、あまりないのではないでしょうか。

さっきのお話でも、制度的な制約として出てくるのは500人の要件の問題ぐらいであります。これも黒沼委員がご指摘になったように、500人の数から適格機関投資家等を除くことは考えられると思うんですけれども、それ以外にさらに広げて、もっと多くの投資家が入ってくるような場合についても、開示を緩めてしまっていいかというと、これはかなり問題ではないかと思っています。なぜAIMみたいなのが日本ではうまくいっていないのかというのは、私はむしろこれもビジネスの問題ではないかと思っていまして、田中委員が指摘されたようなNomadみたいな仕組みがうまく日本で機能するにはどうしたらいいかということをむしろ考えるのが大切ではないかと思っております。

簡単ですが、以上です。

○池尾部会長

どうもありがとうございます。

お願いします。

○斎藤委員

先ほどの田中委員のお話ですけれども、開示制度をもう全部やめてボランタリーにしても、理屈の上ではいいのかもしれません。どうせ調達する側に開示のインセンティブが働きますから、必要な情報は出てくると思うんですね。しかし、その場合はルールもフォーマットも全部ばらばらということで非常に混乱した状態になるので、最低限の仕組みというのはあった方がいいと思います。ただ、今の岩原委員のお話のイメージに比べると、私の感じではもうちょっと大幅に簡素化してもよいのではないかという印象は持っています。

その開示制度について、さっきから会計基準の違いということが話題になっています。通常のシナリオですと、基準がそろっていると情報は比較可能になり、逆に基準が違っていると情報を比較できないからご遠慮願った方がいいという議論になりやすいんですけれども、どうもそういう議論はおかしいのじゃないかという話が出始めています。実際に開示される財務情報というのは、基準の解釈とか適用とか、あるいは監査を含めた実務に依存する訳で、それは非常にローカルな、経済的あるいは政治的なファクターに影響されていて、必ずしも情報の等質化が実現する訳じゃないというわけです。そういうふうに考えますと、情報開示基準の違いを盾にとって、外国企業を排除するというのは、どうもこれはグローバル化の流れにあまりそぐわないというふうに思うんです。

ですから、むしろ基準間の重要な違いだけを開示させる程度の方式を、まずプロ向けの市場に導入してみるのがよいのではないか。市場に入ってくれば、当然劣悪な開示基準はある程度淘汰されますから、そのプロセスで生き残った外国基準に基づく会計情報を、今度は順次一般向けの市場でも認めていくという方向を考えるのが一番よいのではと思っています。

○池尾部会長

どうもありがとうございました。

それでは、まだまだご意見があるかと思いますが、時間が来てしまいましたので、一応本日の議論は以上とさせて頂きたいんですが、よろしいでしょうか。どうしてもとかいうことがなければ。

それでは、本日の審議は終了とさせて頂きたいと思いますので、最後に事務局の方からご連絡等がございましたら、お願いいたします。

○池田市場課長

次回の第一部会の開催でございますけれども、11月7日の水曜日、午前10時から12時ということでお願いをしたいと思います。

今日、大変活発なご議論を頂きまして、この問題について今後どのようにしていくか、また座長とご相談させて頂きたいと思いますが、次回は、一応もう一つの取引所関係の大きな柱のテーマであります、取引所の取扱商品の多様化の論点を中心にご議論頂くこととしたいというふうに考えております。どうかよろしくお願いをいたします。

○池尾部会長

それでは、どうもありがとうございました。

以上

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