金融審議会金融分科会第一部会(第47回)議事録

日時:平成19年11月7日(水)10時00分~12時00分

場所:中央合同庁舎4号館9階 金融庁特別会議室

○池尾部会長

それでは、定刻になりましたので、まだ、ご出席の予定でご到着じゃない委員の方も若干おられますが、時間が限られておりますので、ただいまから、金融審議会金融分科会第一部会、第47回会合を開催いたしたいと思います。皆様には本日はご多用中のところご参集頂きまして、誠にありがとうございます。

それでは、いつもの通りですが、本日の議事は公開の形で行わせて頂いております。

それでは、早速本日の議事に移らせて頂きたいと思いますが、この間、取引所関係の論点を取り上げておりますが、本日は前回のプロ向け取引の活発化に引き続きまして、取引所の取扱商品の多様化に関する論点をご審議頂きたいと思いますが、それに関連いたしまして、本日はコモディティ・デリバティブ取引の実務に携わっておられます住友商事株式会社の高井裕之理事よりお話をお伺いする予定でおります。

その後、今申しました取引所の取扱商品の多様化に関する論点について、事務局から説明を頂き、これに関してご討議を頂くという順序で本日の議事を進めたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

それでは、早速ですが、ヒアリングに入りたいというふうに思います。それで、本日は住友商事金融事業本部の副本部長であります高井理事にお越し頂いております。お忙しい中、どうもありがとうございます。

それで、高井理事には、事前に資料1のような内容をヒアリングさせて頂きたいということでお伝えしております。非常に詳しい資料等を用意して頂いておりますが、誠に恐縮ですが、20分程度という時間でお話をお伺いできればというふうに思いますので、高井さん、よろしくお願いいたします。

○高井参考人

ご紹介頂きました住友商事の高井でございます。どうぞよろしくお願いします。

本日のプレゼンテーションですが、お手元に配付いたしましたパワーポイントの資料を使いましてお話をしたいと思います。

資料は話の筋書きを箇条書きにいたしました14ページの、ちょっと赤っぽい資料2と、グラフと図表類をまとめました11ページの資料3、この2種類がありますので、ご確認ください。

まず、第一章でリスクとは何か、デリバティブズとは何かという、極めて基本的な概念のおさらいと、金融と商品の違い、日本と欧米の違いなどのお話をします。既に部会でご議論されている内容もあるとは思いますけれども、その辺のところはご容赦ください。

では、早速ですけれども、資料2の3ページをおめくりください。住友商事ではリスクを的確に理解して、測定した上でリターンを追求しております。従って、リスクを正確に理解するということが重要となります。リスクには、価値を生み出してくれるリスクと、損害しか生まないリスクの2種類がありまして、前者は金融技術を使って定量化することができますが、後者は数値化することができません。ですから、当社では、測定可能なリスクのリスク量を一定の公式を用いて算出をいたしまして、それをコントロールすることで利益を生み出しております。

価値創造リスクには信用リスク、それから市場リスク、それに投資リスクというのがありまして、デリバティブズが対象になりますのは信用リスクと市場リスクの2種類ということになります。

さて、次にデリバティブズですが、当社では測定されたリスク量をコントロールするツールとして位置付けております。もともとデリバティブズというのは、英語で派生するという意味の動詞、deriveの名詞形でありまして、原油と金、それから為替と株といった原資産から派生して、値差だけを現金決済する目的で売買する金融商品です。原油の先物とか金のオプションとか、名前はコモディティではありますが、デリバティブズ化してしまえば金融商品に化けてしまうという特性があります。

4ページをおめくりください。デリバティブズがリスクコントロールのツールということなんですが、別の角度から見れば、これを2者(社)でリスクを移転するためのツールという言い方もできます。すなわち、リスクをとりたくない人(企業)からリスクをとりたい人(企業)に、リスクを移転することができるということです。デリバティブズの本質的な意味はリスク移転の手段ということでご確認ください。

契約形態でデリバティブズを分類いたしますと、2社間の相対で契約をする店頭デリバティブズと、取引所で上場する商品を取引所を相手に売買する上場デリバティブズがあります。上場デリバティブズには、フューチャーズ(先物)とオプションというのがあります。

次に、取引商品による種別ということで、金融、商品、そして無体物デリバティブズというのがあります。金融や商品は説明を要しませんが、無体物については、ここ10年間でさまざまな商品が開発されております。その多くは、早くから自由化が進みました米国の電力・ガス市場で生まれてきたもので、2001年末に破綻いたしましたエンロンが先駆者となって市場を開拓したものが多く含まれております。なぜ電力かと言いますと、電力の価格は、気温や降雨、降雪量に左右されまして、天候リスクをマネージする必要性に迫られていたというのが背景にあります。排出権の取引も、やはり石炭で発電をするか、天然ガスで発電をするかなど、エネルギー効率という発想から米国ではNOx(窒素酸化物)、SOx(硫黄酸化物)の取引で始まったのが最初です。昨日の日経新聞にも、昨今は国土交通省が不動産デリバティブズの調査をしているというのがありましたけれども、今後はこういった金融と商品とも分類できないような新規の分野が大きく伸びてくる可能性があります。

また、今世紀に入ってからの特徴といたしまして、90年代には純粋にリスクヘッジでの目的でのデリバティブズの活用というのが主流だったのですが、最近はデリバティブズを使って、自らリスクをとりにいく傾向というのが強くなっています。これは、多分に過剰流動性のしわざと思われ、コモディティバブルを生んでいる原因とも考えられております。

5ページをおめくりください。リスクにはとりたい人ととりたくない人というのがいます。とりたくない人は、デリバティブズ市場ではヘッジャーと呼ばれます。通常はメーカーや資源や農産物の生産者などの事業会社などですが、市場混乱時などには投資家もリスクヘッジャーに変身することがあります。ヘッジャーに相対する人種がリスクテイカーです。リスクテイカーはマーケットでは最も重要な役割を果たしておりまして、リスクを積極的にとりたがる人、そういう人がいなければ、市場は成立はいたしません。このタイプの人たちには銀行、証券、投資銀行、それから商社、それに個人投資家や機関投資家が含まれます。

ここ数年、市場には新しいタイプのリスクテイカーというのが出現しております。それらはオイルマネー、ヘッジファンド、プライベートエクイティーファンド、それからSWF(Sovereign Wealth Funds)と言われるアジアを中心とした公的な投資ファンドなどです。マッキンゼーの調査によりますと、オイルマネーは3.6兆ドル(約418兆円)、アジアのソブリンが3.1兆ドル(360兆円)、ヘッジファンドは1.5兆ドル(174兆円)、プライベートエクイティーファンドが0.7兆ドル(81兆円)などです。世界の年金基金の総額が2,500兆円と言われておりますので、これらニュープレーヤーの合計運用資産残高は1,033兆円となりまして、一大勢力となっていることが分かります。

6ページをご覧ください。日本と欧米の金融デリバティブズ、商品デリバティブズの規制の違いをまとめました。おおむね欧米では原資産の種別にかかわらず、デリバティブズであれば金融も商品も同等に扱えます。それに対しまして、我が国ではプロダクツの違いで所管官庁が分かれます。それぞれに利点と難点がありますが、デリバティブズ市場の拡大ということで言いますと、ここ10年間の世界の流れからは欧米型の横断的なやり方の方がユーザーの利便性に応えていたことは明確です。

7ページですが、商品デリバティブズ市場の欧米との比較をまとめてみました。欧米ではここ数年のM&A戦略で、多数ありました商品取引所がおおむね2つの陣営に統合されつつあります。一つがシカゴを本拠をいたしますChicago Mercantile Exchange、CME陣営と、もう一つが米英にまたがりますIntercontinental Exchange、ICE陣営です。

前者には米国最古で穀物を取引いたしますCBOTやニューヨーク最大の商品市場であります原油や貴金属の価格指標となっておりますNYMEX、COMEX等が含まれます。

後者ですが、もともと欧米の投資銀行や石油メジャーが中核となりまして、米国のアトランタに設立をしました電子取引市場がエネルギーデリバティブズ市場を席巻いたしまして、数年前には英国のIPE――これはブレントを上場しております市場ですけれども、を買収いたしまして、商品で初めて大西洋をまたいだ巨大電子商品市場というふうになっております。ICEの特徴は、店頭と上場デリバティブズ、両方に対応できるということです。欧米では両陣営とも早々に株式公開を実現いたしまして、豊富な資金量でシステム投資、M&A戦略を進めておりまして、出来高では圧倒的な存在に成長しております。

それに対して、日本市場はいまだに会員組織でありまして、中心メンバーもドメスティックな取引員と当業者中心の保守的な非営利組織で、片や国際的な金融機関が名を連ねております利益至上主義の上場企業でありますので、その実力の差というのは明らかかと思われます。

また、金融インフラとしての競争力の観点から、意外と議論されていない点といたしまして、クリアリング機構というのがあります。先物取引の場合は、参加者の国籍や規模が多様化すればするほど、プレーヤー破綻時の取引相手先リスク、すなわちカウンターパーティーリスクが増大いたします。競争力のある市場の土台には与信負担能力の高いクリアリングハウスが必須で、ロンドンのLCHクリアネットなどは、4,000億円ものリスク負担能力を有しております。それに対しまして、日本のJCCHの場合は、商品取引所法改正で2年前に生まれたばかりと言いながら、10億円にも満たない違約準備金しかありませんで、昨今の市場ボラティリティーの高さから来るリスク量の大きさには全く対応ができていないと言えます。上物、すなわち取引所の改革もさることながら、土台としてのクリアリングハウスの改革というのも急がれると思います。

第二章といたしまして、住友商事の市場活用について、お話をいたします。9ページをおめくりください。当社ではデリバティブズ市場をヘッジ取引と資金運用の取引と2つの側面から活用しております。最初にヘッジ取引ですが、商社では銅、アルミなどの非鉄金属、金、プラチナなどの貴金属、原油や石油製品などのエネルギー商品、トウモロコシ、大豆などの農産品等、さまざまな市況商品を原資産としてトレードしております。また、90年代後半からは資源ブームの中で、海外において鉱物資源の投資を積極的に実施しておりまして、トレードのみならず資源投資からも市場リスクのヘッジニーズというのは日々発生しております。発生した市場リスクを全てヘッジしているという訳ではありませんでして、一定の相場観に基づいてヘッジ戦略というのを組んでおります。

自社のリスクに加えまして、当社では幅広く住友商事のお客様に対して、リスクヘッジ商品を店頭デリバティブズの形でご提供しております。それら、スワップやオプションなどは顧客の個別のニーズに対応して組成いたしまして、成約した暁には上場デリバティブ市場を使ってヘッジをしております。どうしても顧客とのスワップと先物ヘッジの間にベーシスのリスクというのが発生する場合には、自社内でマネージをしていくということになります。これは総合商社という形態の企業が発展した我が国の特有の現象かもしれませんが、商社が商取引にかかわるリスク・アグリゲーターとしての機能を、本来自分で直接デリバティブズ市場に参加しないといけない事業会社の市場の直接利用というのを抑制している部分があるのかもしれません。

10ページをご覧ください。資金運用ビジネスでのデリバティブズの市場活用について、まとめてあります。当社では自己資金の運用と、機関投資家のお客様からお預かりした投資資金の運用という2つの側面で市場を活用しております。インベスターとして売買しております市場は、日米の株式市場、債券市場、日米欧の商品先物市場です。取引の手法はさまざまありますが、価格の上げ下げを収益化するというよりも、買いのポジションと売りのポジションを違う商品、市場、時間軸で同時に保有するということで、さやをとる運用というのが多いと言えます。

一つここでリクイディティ・プロバイダーについて、お話をします。欧米ではプロップハウスと呼ばれます電脳トレーダーが株、債券、通貨、商品の区別なく電子市場で高速回転売買を行っております。彼らはもともと取引所の場立ち上がりのフロアトレーダーが電子時代に対応いたしまして、事務所を構えて、最新鋭の取引システムを装備して、ワンティック抜きの薄利多売取引を始めたものです。2000年ごろからシカゴで始まったと言われております。プロップハウスでは、先進的なところではコンピューターのプログラマーを多数専属に抱えまして、ワンティックのさやとりを、いかにリスクを最小限にして行うか、アルゴリズムをシステムに落とし込んで、人間が介在しないような全自動取引を行っています。彼らの出現がシカゴ市場の流動性を飛躍的に高めて、市場成長の呼び水になっていることは間違いありません。現状、日本では証券会社じゃないと参加権がとれないとか、規制の存在がリクイディティ・プロバイダーの参入を阻んでいると思われ、規制の緩和が望まれるところです。

第三章としてオルタナティブ投資の話をします。特にこの投資分野におけるコモディティ投資の役割について、グラフを使ってご説明をしたいと思います。

12ページをご覧ください。オルタナティブ投資は、代替資産投資とも言われまして、伝統的な株、債券と相関性が低い、新しい投資分野のことを指します。具体的には4つの分野があります。一番規模的に大きいのは不動産投資で私募、公募の不動産ファンドや不動産のETFなどが含まれます。

次に、未公開株投資、プライベートエクイティー投資があります。日本では長銀を買収いたしましたリップルウッドなどがバイアウトファンドとして有名ですが、海外ではKKRやブラックストーンなどが知られております。

次に、ヘッジファンドですが、これは90年代の英国やアジア通貨危機の中で、中央銀行を相手に大相場を張ったジョージ・ソロスのクオンタム・ファンドというのが有名です。現在では、世界中に1万社弱のヘッジファンドがいて、運用資産残高は170兆円と言われております。ソロスのイメージとは少し違いますが、最近のヘッジファンドというのは株や債券のロング・ショート戦略や、M&Aなどの資本事象などを収益源とするイベントドリブン戦略、先物市場での罫線分析によるトレンドにベットするマネジドフューチャーズなどが主流となっております。マネジドフューチャーズ戦略には石油や金、穀物などの商品先物も含まれまして、コモディティ投資の一部とみなされております。

代替資産の最後の方に位置するのがコモディティです。歴史的にインフレヘッジとしての金投資であるとか、株価を下げる要因であります原油や、伝統的な金融資産の目減りをヘッジする上でのコモディティ投資が昔からありましたが、2000年以降のコモディティ価格の高騰で、にわかにこの分野が脚光を浴びております。具体的にはコモディティ指数に投資をする方法と、コモディティ市場での売買に特化した商品ファンドに投資する方法と2種類があります。コモディティ指数は分散をきかして多くの銘柄に投資できる利点から急速に拡大をいたしておりまして、ETFに加工して証券市場で上場したり、先物市場で売買したりしております。

それでは、コモディティ投資市場の概観をグラフや図表を使ってご説明をします。資料3、グラフが載っている方の補足資料をご覧ください。2ページ目の棒グラフですが、これはコモディティ指数投資の残高を示しております。90年代初めに、大手投資銀行が組成したのが始まりですが、商品相場が大底を打つ2000年前後までは低迷をしておりまして、原油や金属相場の上昇を先導する形で残高が上昇し、今年は15兆円に達するのではないかと言われております。年金系の足の長い投資資金がインデックス残高のベース部分を支えていると言われておりまして、商品相場の変動に左右されず、長期でステイすると考えられております。

3ページ目ですが、シカゴやニューヨークの米国商品先物市場におけます原油、金、トウモロコシの3商品の取組残高推移を示しております。2000年の水準から2007年までの間で3倍以上の伸びを示していることがお分かりになると思います。

次の4ページ目ですが、これは金のETF市場の残高推移をニューヨークのCOMEX市場の金先物取組高と比較したものです。2004年から登場いたしました金のETFはほぼ3年間で1,000トン弱まで拡大し、長い歴史があります金の先物取引市場の取組高に匹敵するほどの規模に成長してきております。ここで注目すべきは、ETFの伸びと先物取引の伸びが反比例しておらず、両市場が相乗効果を生んでいるということであります。

5ページをご覧ください。これは1人当たりのGDPの各国比較でありまして、棒グラフが日本、それから中国、ブラジル、ロシアというBRICs諸国のGDPがプロットしてあります。今後これら新興経済が、我が国と同様の経済成長の軌道をたどるとしますと、爆発的な商品需要というのが今後発生してくることになります。

6ページ目でございますが、コモディティ資産の金融商品との相関性を示しております。93年末を100とした場合に、コモディティ指数、この場合はGSCIをとっておりますが、300に上昇しておりますが、この14年間の動きを見てみますと、ITバブルで株価が堅調だった99年から2000年ごろは商品が下落、逆にITバブル崩壊後の2002年から2003年にかけては商品が上昇すると。株価との間の非相関性による分散効果がきいていることが見てとれます。

7ページ目ですが、これは米ドル相場と商品インデックスの推移です。点線が米ドル指数ですが、きれいにコモディティ指数と非相関していることが分かります。

以上、マル1マル2マル3の理由から、ポートフォリオの分散効果と新興国の成長期待から商品市場に大量の投資マネーが流入していることがお分かりになると思います。

次に、8ページです。これは過去50年間にどんなコモディティ商品が誕生したかというのを示しております。58年のCRB指数、91年のGSCI指数というのを別にいたしますと、大半の投資商品というのが過去10年以内に開発されていることが分かります。

次に、9ページ目ですが、これはコモディティ投資を実施しております年金基金等の投資実績をリストアップした表です。これらは公表されているデータだけですが、非公表のものも含めれば、もっと大きな市場になっていると考えられます。有名なところでは、2006年末に米国最大の年金基金でありますCalPERSが商品指数への投資を発表しております。27兆円もある大きな基金ですから、わずか5%をコモディティに向けるだけで、現状の指数運用の全残高の10%に相当する額にもなる。いかに価格に与えるインパクトが大きいかということがご理解頂けると思います。

最後の10ページ、11ページなんですが、10ページの左側のグラフは大変興味深いグラフでございまして、過去6年間の欧米市場の出来高の伸びと、日本市場、中国市場の伸びを重ね合わせたものです。シカゴ、ニューヨークの商品取引の伸びと中国市場の伸びというのが顕著でありまして、我が国の市場が全く逆の動きをしているというのが明確に分かると思います。特に驚くべきは、シカゴのCBOTで、左の目盛りでは収まり切らずに、右側の目盛りでプロットしております。

同じく10ページの右側の棒グラフなんですが、2003年の米国、日本、中国市場の出来高の比較と2006年のものを対比しております。米国が急成長して、アジアでは中国が日本を抜いているのが分かります。

11ページを開いて頂きますと、右側の折れ線グラフでは、中国の商品取引所の合計出来高と日本の商品取引所の合計出来高と中国の大連市場のそれが、2006年に見事に逆転しているというのが見てとれると思います。

以上で補足資料の説明を終了いたしますが、最後に資料の2の方に戻って頂きまして、最後の14ページをご覧ください。明らかにブームに乗り遅れた日本市場を今後どのように活性化していくかということが、取引所、主務省のレベルで危機感が醸成しておりまして、今年の後半に入りまして、大きく改革というのが進んでおります。改革の急先鋒に立っていますのは経産省さんで、今年6月に研究会を立ち上げまして、産構審の分科会での議論と並行して、工業品市場の改革に動いております。欧米並みの取引システムの導入、会員組織の変革など、明確な方向性を打ち出して、アジア地域での商品先物市場の覇権を東京に奪還すべく、積極的に動いておられます。

ただし、課題も多く、農水省さんを中心として、農業政策と金融インフラ論との整合性をどう保つか、個人投資家依存型のビジネスモデルをいかにプロ市場に構造変換していくのか。それから、海外の巨大取引所が合従連衡している中で、成長戦略の描けない国内の弱小の取引所をどういうふうにするのか。それに市場の土台でありますクリアリング機構、JCCHをどうやって金融インフラたる磐石な組織に変更していくのか等々、課題は沢山あると思います。

次に証券取引所ですが、金商法の施行や投信法が足かせとなりまして、コモディティ、ETFの市場発展が周回遅れになってしまいましたが、今後は障害物となっております制度を改正し、ETF商品の品揃えを豊富にすべきだと考えております。

その際に、ぜひ証券取引所関係者にお願いしたいのは、国内の商品先物取引所との横の連携をとって頂いて、円建てのETFの商品を組成することをご検討頂きたいという点です。日本に欠けておりますのは、国内に積み上がった投資資金を我が国の国内で運用していこうという姿勢かと思います。横の連携をとることで、金融と商品の融合が実務レベルで図られて、証券と商品の共存共栄という国益にかなった姿が可能になるかと思います。

以上で私の発表を終わらせて頂きます。ありがとうございました。

○池尾部会長

大変どうもありがとうございました。

それでは、ただいまご説明頂きました高井理事のお話に関連して、ご質問、あるいはご意見等がございましたら、ご自由にお願いしたいと思います。少し質疑の時間をとりたいと思いますので、どなたからでも結構ですので、ご質問、ご意見がありましたら、よろしくお願いいたします。

いかがでしょうか。加藤さん、何か補足されることはありませんか。

○加藤専門委員

正直申しまして、高井さんの今回のこのレポートと申しますか、非常に素晴らしくまとまっていたと思いますので、何も補足することはございません。

○高井参考人

恐縮です。

○池尾部会長

いかがでしょうか。

どうぞ、嘉治さん。

○嘉治委員

ありがとうございます。

資料2の6ページ、「欧米のやり方」は日本と違って、プロダクツではなくて原資産またはデリバティブズで分類されているとあります。有史以来こうだったのでしょうか。それともある時期に特定の理由をもって、誰かがイニシアチブをとって変更したのでしょうか。どういう経緯でそのように変更されたのかということを知りたいと思います。

○高井参考人

私も欧米の例を全て理解している訳ではありませんが、イギリスに長い間駐在いたしておりましたので、ロンドンのケースでは80年代のビックバンだとか、90年代に入ってからそういうやり方に変わっていったように記憶はしております。ですから、そんなに昔からデリバティブズを一つの規制、原資産を一つの規制という、横断的に分けるやり方を昔からやっていた訳ではないと思います。恐らく、金融デリバティブズという商品が大きくなり始めてから、そういう規制に変わっていったということだと理解しております。

○池尾部会長

若松委員、お願いします。

○若松委員

高井さんに伺いたいんですが、この欧米との比較で指摘されたクリアリング機構ですね、これは個人的な見解でも結構なんですけれども、欧米並みに強力にしていくにはどういうふうにしていくのが一番現実的な方法だと思われますか。それをちょっと、個人的な見解でも伺わせて頂けたらと思います。

○高井参考人

クリアリングハウスというのは、意外と取引所の後ろに回りますので目立たない存在なんですが、金融インフラという意味では、与信を全てそこでとることになりますので、先物取引所で行った取引の全てのカウンターパーティーはクリアリングハウスということになりますので、やはりそこの与信力をつけていくということが非常に重要になってくると。

またロンドンのケースで申し上げますと、LCHクリアネットなんかは、全ての商品、株、債券、為替、商品、全てこのLCHクリアネットという、確かリスクバッファー量にして、資本金とデフォルトファンドと両方あるんですけれども、足して4,000億円超だと思いますが、そこで全てまとめて決済、清算を行っていると理解しております。

それに対しまして日本の場合は、取引所にくっつく形でクリアリングハウスというのがずっと成長してきましたので、非常にフラグメンティッドな状態になっている訳です。ですから、どうしても欧米のように、そういう大きな決済会社、決済組織というクリアリングハウスという形にはなっておりませんで、しかも、欧米の場合にはクリアリングというのをビジネスとして捉えておりますので、与信をとることによって、クリアリングフィーを徴収して、商売として成り立たせるという発想でやっているんです。ですから、そこら辺のところが、日本と欧米の場合はやはり大きく違うのかなというふうに感じます。

ですから、ロンドンなんかの場合は、クリアリングハウスが上場商品の決済だけではなくて、OTC、店頭デリバティブの決済にまで関与して、クリアリングフィーを徴収して儲けていくというふうに成長しておりまして、日本でも恐らくそういうやり方で、ここの与信負担能力を持つ、このインフラのところを大きくする必要があるのではないかというふうに思います。

○池尾部会長

まず田中委員で、その次、殿岡委員。

○田中(浩)専門委員

私からの質問は、日本と欧米の方の取り扱いの違いについてです。日本の場合、縦割りの構造になっていて、その理由として、コモディティには、産業政策、農業政策、それに対する金融インフラという観点があるという議論になっています。当然、こういう観点は欧米でも存在するかと思いますが、欧米では、ここの辺りのことについてどういう整理がなされているのか、もしご存じであればお教え願いたいのですが、よろしくお願いいたします。

○高井参考人

私でよろしいですか。

私も専門家じゃないんでよく分からないんですが、恐らく欧米でもやはり産業政策、農業政策それぞれあると思うんです。当然のことながら、原資産のところが産業を作っていきますので、それと金融をごっちゃにはしていないと思うんです。

ただ、デリバティブに一旦なってしまうと、フィナンシャルプロダクツというふうに、彼らはそういう認識をしていますので、原資産が原油であってもトウモロコシであっても排出権であっても天気であっても、一旦デリバティブ化してしまったら、それはもう金融であるという捉え方をしているんです。現に、金融になってしまったそういうコモディティ、それが原資産の流通にどれだけの影響を与えるかというと、それほど大きな影響を与えなくて、実際には非常に標準化されたシンプルな取引をデリバティブでは行いますので、日本では逆にデリバティブズが複雑で、原資産の方が簡単という理解があるんですが、欧米では逆でありまして、原資産の方が非常に複雑なんですね、ものを渡せないというリスクをはらんでいたりとか、デリバティブの方がよほど金融商品として標準化されていますのでリスクは少ないという捉え方をしていると思います。

ですから、原資産を産業政策としてやっていくということはやっているとは思うんですが、それとデリバティブを完璧に分けているということですね。

○池尾部会長

ありがとうございました。

では、殿岡さん。

○殿岡専門委員

どうもありがとうございました。

欧米中心でこれまで発達してきたということで、主なプレーヤーとしては、伝統的なプレーヤー以外に、オイルマネーですとかヘッジファンドですとか政府系のファンドですとか、そういったものがあるということだったと思うんですけれども、資料3の11ページで中国が非常に急成長しているという図がございますけれども、ここでの主なプレーヤーというのは、やはりそういう中国以外のプレーヤーであるというふうに考えてよろしいんでしょうか。

○高井参考人

実はそうじゃありませんでして、中国市場というのは未だに参入が規制されております。ですから、住友商事のような外国籍の企業が、例えば大連とか上海の取引所の会員になろうと思ってもなれない。方法は、恐らくないことはないと思うんですが、完全に自由化はされていないということです。ですから、ここにあります出来高というのは、純粋に中国の国内だけと。それはプレーヤーとしては恐らく中国の投機業者も入っていると思いますし、あとは個人の投機家ですね。中国人は日本人と比べて非常に投機的な国民ですので、こういう売った買った、切った張ったの世界というのは非常に、国民性として嫌いじゃないというのもありまして、先物取引が大きくなる土壌というのが、そういう国民性の中にもあらわれているのかもしれないですね。

○池尾部会長

それでは、高井さんのプレゼンテーションに対する直接の質疑というのは、そろそろこれぐらいにさせて頂いてよろしいでしょうか。それでは、議論を進めさせて頂きまして、その中でまた高井さんにも議論につき合って頂くということでお願いしたいと思います。

それでは引き続き、事務局から論点資料に関するご説明をお願いしたいというふうに思います。

○井藤市場業務管理官

それでは、資料4、論点メモ(3)と書いているものと、資料5、関係資料という書いているものが席上に配付されていると思いますが、これに沿ってご説明させて頂きたいと思います。

まず、資料4の論点メモの方でございます。基本的考え方といたしまして、「経済財政改革の基本方針」、いわゆる骨太の方針2007でございますが、これにおきまして、取引所における総合的で幅広い品揃えを可能とすることによって、取引所の競争力を強化することが示されているという状況でございます。

若干、背景的なものをご説明させて頂きますと、資料5の2ページ目をおめくり頂きたいと思うんですけれども、この骨太の方針がまとめられることに先立ちまして、経済財政諮問会議のグローバル化改革専門調査会金融・資本市場ワーキンググループの第一次報告というものが出されまして、その中でおおむね2点のことが言われてございます。一つは(1)といたしまして、「金などの現物及び商品先物の投資信託法上の特定資産化」ということで、こうした金の現物や商品先物を組み込んだETFといったものを可能とするための制度整備を行うべきではないかということでございます。

それから2点目でございますが、(2)として「取引所間競争を促進するための金融商品取引法、商品取引所法等の改正」といたしまして、マル1のところでございますが、証券取引所でも、商品先物、商品先物オプションを上場できるようにして、金融先物、商品先物なども含めた総合的な取引所を可能とするように制度整備を行うべきだと。

マル2に飛んで頂きまして、この際、柔軟な組織再編が行われるということにすべく、証券取引所の持ち株会社の下に、商品取引所を設立することを可能とすることなどもやってはどうかと。さらに、こうした証券取引所サイドで行う商品先物取引については、商品取引所法の適用除外として、金融商品取引法の下で規制を行うべきであると。こういった提言を頂いておりまして、こういった提言も踏まえながら、最終的に骨太の方針及びこの金融審議会のスタディグループなどにおきまして、取引所における総合的で幅広い品揃えを可能とすることについて検討すべきだということになってきた訳でございます。

論点メモに戻って頂きまして、次のバーでございますが、諸外国の取引所に関する現状を見ますと、ETFやデリバティブ取引等について、商品の多様化が進展してございます。また、取引所間の提携等の推進によって、取引所グループとして、そこではコモディティ・デリバティブだけを切り離すということではなくて、株式や債券等の現物から金融デリバティブ、さらにコモディティ・デリバティブを含んだ形で幅広い商品をスコープに収めて、取引所間の国際的な競争が進展しているということでございます。

ここで、資料5の8ページ目をおめくり頂きたいと思うんですけれども、まず、ETFにつきましては、これは先般も若干ご説明させて頂いた資料とほぼ同様の資料でございますが、東証、大証におけるETFにつきましては、かなり数が限られており、商品関連のものも大証の金のリンク債を原資産とするものに限られていると。他方、諸外国においては、非常に数多くのETFがバラエティーに富んだ形で上場されているという状況でございます。

次に、資料5の4ページでございますが、こうした中で、諸外国におきましては、ここの表にありますように、各取引所が合従連衡を行うというような形で有価証券の現物から金融デリバティブ、商品デリバティブまでをグループとしてスコープに収めるという形で競争力の強化を図ってきているという状況が見られると思います。

論点メモにお戻り頂きまして、中ほどの黒マルでございますが、こうした中で、我が国においても「厚み」のある市場を形成し、我が国金融資本市場の国際的な魅力を高めるためには、海外取引所で上場されているような多様な商品が我が国でも取り扱われることにより、利用者の利便性が向上することが重要ではないだろうかと。投資者保護の観点などに留意しつつ、我が国取引所におけるETF等の取扱商品の多様化を図っていくことが重要との指摘があるがどうか、という点が一つの論点になろうかと思います。

さらに、下の黒マルでございますが、取引所の国際競争力を強化するためには、取引所間の競争を促進するとともに、新しい金融商品の開発やシステム投資を促進することが必要ではないだろうかと。従って、我が国においても、取引所、またはそのグループなどにおいて、株式、債券の現物から金融デリバティブ、コモディティ・デリバティブまでを含めた総合的で幅広い品揃えを可能とする制度整備を行っていくことが必要だとの指摘があるが、どうだろうかということがポイントになろうかと思います。

1ページおめくり頂きまして、最初のイシューとなりますETFの多様化でございますが、ETFはご承知の通り、そこに書いております通り、投資家にとって、いろいろな意味で利便性の高い商品であろうかと思います。従いましてETFの多様化を図ることが必要ではないかと。従って、次の黒マルでございますが、このための制度的整備が必要ではないかと。

3つめの黒マル、これは重要な点であろうかと思いますが、こうしたコモディティ関連のETFが上場されることとなれば、これに関連した取引を通じて、金融商品市場の厚みの拡大に加え、コモディティ市場の厚みの拡大にもなるなど、相乗効果が働くことも期待できるのではないか。すなわち、ゼロサムゲームではなくて、ウイン・ウインゲームというか、そういうようなことで考えていくことができるのではないか。さらに、こうした商品設計等を通じた金融商品取引所と商品取引所間の協力関係が深まれば、将来的には我が国においても本格的な提携等に進展していくといった効果が期待され、ひいては国際競争力もついていくというようなことも期待される面があるのではないだろうかということでございます。

参考といたしまして、若干、現行のETFに関連する制度を説明させて頂きますと、まず、最初の白マルでございますけれども、今般、金商法と併せまして、改正信託法によりまして、投資対象等の制限のない受益証券を発行する信託、受益証券発行信託と申しますが、これが導入されてございます。この受益証券発行信託が有価証券に指定されてございまして、金融商品取引所において、このスキームを使って組成したETFが上場できるというような形に法律上なった訳でございます。

次の点といたしまして、投資信託及び投資法人に関する法律、いわゆる投資信託法でございますが、これにつきましては、最初の点でございますが投資信託の主な投資対象、これは特定資産というふうに呼んでございますけれども、これは有価証券、金融デリバティブ取引にかかる権利、不動産などに限定されていまして、現状におきましては、コモディティ・デリバティブにかかる権利は含まれていない。これは政令で規定されているということでございます。

次の点、若干テクニカルな点も含まれますけれども、投資信託というものにつきましては、現行は金銭信託が原則とされまして、証券投資信託の一部については例外的に現物交換が認められているということで、これは法律上決められているということでございます。さらに、マル1マル2でございますけれども、現物で設定して、現物で交換するという形のものについては、株価指数を金融庁長官が告示したものに連動することを目的としたものに限られているということでございます。他方、金銭設定、現物交換というものについては、上場有価証券や公社債等、割と幅広く認められているということになってございます。

最後の白マルの点でございますけれども、関連する法律として商品ファンド法というものがございまして、コモディティ・デリバティブへの投資を行うファンドについては、商品ファンド法に基づき商品投資顧問業者に対して商品投資にかかる投資判断を一任する必要があるということでございまして、これは受益証券発行信託や投資信託というスキームを使って行った場合でも、こういったことがかかってくるということに現状なっているということでございます。

それで、資料5の16ページをご覧頂きたいと思うんですけれども、コモディティ関連のETFを組成しようとする場合に、現行法令の適用関係がどうなるかということでございますが、縦の欄に、先ほどご説明しました受益証券発行信託と投資信託というものを記載しております。横の欄で、投資対象がコモディティ現物、金などを直接投資対象とする場合と、それからコモディティのデリバティブのポジションといったものを投資対象とする場合で、若干法律関係が変わってございます。

左上の一番上の象限ですけれども、受益証券発行信託で金などのコモディティ現物を直接の投資対象とする場合は、現行法令上は制約がないと。他方、投資信託で行う場合には特定資産として、まず政令指定することが必要であると。さらに現物交換型を可能とするためには、先ほど申したような点について、投資信託法の改正が必要だと。

デリバティブを対象とする場合も基本的な制約というものは現物の場合と変わらないんですが、さらに受益証券発行信託、投資信託共通のものですけれども、商品ファンド法に基づき、商品投資顧問業者に対して、商品投資にかかる投資判断を一任する必要がございまして、このため、委託者自ら運用指図ができず、商品投資顧問業者を選任するコストが発生するのではないかというような点、こういうことが論点になっております。

論点メモに戻りまして、3ページの中ほどから5ページの頭までについては、今申し上げた事項について、それぞれ適切な措置を行っていく必要があるのではないかということを個別具体的に論点として掲げさせて頂いているところでございます。

それで、論点メモ5ページ目のその他のところからでございますが、その他の論点といたしまして、ここはコモディティ関連のETFの問題から離れた問題でございますけれども、最初の黒マルといたしまして、投信法における株価指数の告示指定の在り方についてでございますが、先ほどご説明させて頂きましたように、現行投信法上、現物設定・現物交換型ETFの連動対象となる株価指数の追加に当たっては、個別に指定、告示をするということになってございまして、これにつきまして、やはり告示ということで時間がかかるということで、迅速な商品設定を阻害しているとの指摘もあるところでございます。このため、適切な価格形成や相場操縦防止の観点から、問題のない範囲で対象となる株価指数を包括的に定めるなどの方策を講じることが考えられるがどうかということが論点になろうかと思います。この関係につきましては、右の欄に記載させて頂いているような税金の問題も関わってくるということでございます。

次のポイントでございますが、投信法における現物設定、現物交換型のETFの投資対象の拡大についてでございますが、これも先ほどご説明させて頂きましたように、現状、株式関連に限定されている訳でございますけれども、株式以外であっても上場有価証券等については、投資額の適正な評価が可能であるので、例えば債券やREITの受益証券などについても投資対象として拡大すべきではないかということが論点になろうかと思っております。

その他、ETFの多様化を図る観点から留意すべき事項があればご議論頂きたいということでございます。

1ページおめくり頂きまして、最後のページでございますが、金融商品取引所、またはそのグループにおけるコモディティ・デリバティブの取り扱いというところでございますが、諸外国においては、若干繰り返しになりますが、金融商品やシステムの開発といった面で取引所間の競争が激化する中で、株式、債券や金融デリバティブに加えまして、コモディティ・デリバティブまでのフルラインでの品揃えをスコープにおいて、取引所間の資本提携等を通じたグループ化が進展している訳でございます。こうした状況を踏まえますと、我が国取引所の経営基盤を強化し、国際競争力の強化を図っていくためには、取引所間の資本提携を通じたグループ化等によりましてフルラインの品揃え可能とすると、そういったことをスコープにおいて経営を展開できるといったような制度的な土台を作ることが併せて重要であるとの指摘がありますが、これについてどう考えられるかということが大きな論点になろうかと思います。

その際でございますが、一番最後の点でございますが、現行の金融商品取引法と商品取引所法のもとでは、例えば金融商品取引所、またはその持ち株会社がグループとして子会社等の形で商品取引所を持つことが現在できない訳でございますが、これについてどう考えるかという点がかかわってこようかと考えてございます。

これにつきましては、また資料5の18ページをおめくり頂きたいと思いますが、現在の金融商品取引所と商品取引所の業務範囲等についてまとめさせて頂きましたが、特に、例えば資本関係を通じたグループ化といったような視点で考えた場合ですけれども、そもそも商品取引所につきましては、これは株式会社化というのは現在でもできる規定がございます。ただ、株式会社になった場合でも5%超の取得・保有というのは、上から2番目の欄でございますが、これは禁止されておりますものですから、資本によるグループ化ということはできないということになっている訳でございます。翻って金融商品取引法における金融商品取引所につきましても2番目の欄で、原則20%以上の取得・保有を禁止しておりまして、基本的に金融商品取引所等の子会社以外にはなれないということでございますものですから、逆に金融商品取引所が商品取引所の下につくこともできないと、こんな状況になってございます。こういう点を含めてどう考えるかということにつきまして、ご議論頂ければというふうに考えてございます。

以上、簡単ではございましたが、ご説明を終わらせて頂きます。

○池尾部会長

どうもありがとうございました。

それでは、ディスカッションに移りたいと思いますが、本日は今ご説明頂いた論点メモ(3)に沿ってご議論を頂きたいと思うんですが、例によって、論点が多岐に渡っている面がありますので、ちょっと分量的にはアンバランスですが、一番最後の6ページの3.のところは組織論的な話になりますので、それはちょっと別立てで議論させて頂きたいと思いますので、まずは1.の「基本的な考え方」と、やや技術的な内容も含んでおりますが、2.の「ETFの多様化」です。この1.と2.の部分に関しましてご議論をまず頂きたいというふうに思います。その後、3.について、後ほど議論をさせて頂きたいというふうに思いますので、どなたからでも結構ですので、まずは1.の「基本的考え方」、及び2.の「ETFの多様化」に関連いたしまして、ご意見がございましたら、よろしくお願いいたしたいというふうに思います。

田中委員。

○田中(浩)専門委員

この論点メモの1.と2.の「基本的な考え方」及び「ETFの多様化」ですが、非常によく整理されていると思います。ここに書いてあることに関しまして、私も全くその通りで、内容に100%賛成です。

前回、市場が本当に拡大するかどうかということに関しまして、投資家、発行者及びその仲介業者である証券会社、この三者にとってそれぞれメリットがあるというのがポイントであるという話をいたしました。それに関連して、今回ETFを使った商品の多様化によって市場の活性化を図る場合、前回掲げた三者のうち、発行者のところが運用者に置きかわると思います。つまり、投資家及びETFの運用者、それと証券会社、それぞれにメリットがあれば、市場は拡大していくと思います。

そのように考えたときに、投資家の観点から見た場合、コモディティプロダクトがETFという形で取引されることになりますと、個人や機関投資家にとって非常にアクセスしやすい、投資しやすい道具になりますので、メリットがあると思います。

特に個人に関しましては2点ポイントがあるかと思います。1点目は、今回、ETFという形でコモディティが取り扱われることになりますと、新たに制定された金融商品取引法、あるいは金融商品販売法、これらの適用を受けることになります。3年ほど前に社会問題になりました外為証拠金取引、これは法律に全くカバーされていない取引だったためにいろいろな社会問題が起きた訳ですが、今回ETFという形で取引されることになりますと、個人投資家の保護という観点からも非常に優れた部分があると思います。

これが1点目で、2点目ですが、個人が参加することを考えたときに、ETFという枠組みになりますと、税の取り扱いに関しまして、株の税と同じような形で取り扱うことが容易になると思います。そういたしますと、個人からすれば、株との損益通算もでき、また税率も同じということになりますと、非常に参加しやすい市場になると思います。

それから、運用会社の観点から一言申し上げますと、ETFがなぜいいかというと、コストが非常に安いというのが最大のポイントになると思います。そういう面で、先ほどの論点メモでいろいろなテクニカル的なことが指摘されておりましたけれども、そうした点は制度設計において、運用会社にとってそれほど大きなポイントはないかもしれません。ただ、手続が簡単であることが重要で、先ほど指数の告示指定の話がありましたけれども、こうしたものが迅速に指定されるということが一つポイントになると思います。あるいは商品ファンドとの絡みで規制や手続が非常に複雑になる、その結果コストがかさむということになるとちょっと問題かと思いますが、コストが過大にならないような形で制度設計されれば、運用会社にとってもメリットがあります。そうした条件が整って、この論点メモの考え方にのっとって進められれば非常にいい市場ができるのではないかと思います。

以上です。

○池尾部会長

ありがとうございました。

いかがでしょうか。どうぞ、島崎委員。

○島崎委員

先ほどの高井さんの話にもありましたが、品揃えを増やしていくということについては非常に結構だと思うんですけれども、ちょっと二、三確認したいと思います。まず、関係資料の方の2ページ目のいわゆる経済財政諮問会議でのワーキンググループの報告の(2)のところなんですが、ここのマル1のところに「取引所の国際競争力を強化するためには、取引所間の競争を促進する」とあります。この取引所間というのは、我が国にある、いわゆる先ほどおっしゃった金融商品取引所だとか、商品取引所、そういう諸々の取引所の競争を促進すると、こういう読み方でよろしいのかどうか。であれば、具体的にどういう競争を考えているのかというのが一つあります。

それと関連してくる話で、論点整理の2ページ目のところのETFの多様化、この黒マルの3つ目ですが、言ってみたら金融商品市場の厚みが拡大すると、相乗効果が出てきますね。これは金融商品取引所間の話、プラス、この商品取引所との話だと思うんですが、こうであれば非常に理想形なんですが、長い間なかなかこういうことが進まなかった。先ほども話がありましたけれども、原資産をいわゆる所轄しているところがそれぞれ違う訳で、そういうところとの話というのが具体的にどういう話になっているのか。この場ではこれでいいでしょうけれども、実際に具体的に話したときにどうなんだろうかというのが非常に心配するところです。関係省庁との間ではこういうことについて、基本的に日本の金融市場、あるいは商品市場を国際的にもっと強くしていくんだと。だから、今までの流れと違う流れでいこうということになっているのかどうなのか、これから話をするということであれば、その辺のところもよく踏まえた上で議論した方がいいのかなと思いまして、質問しております。

○池田市場課長

部会長に補って頂くところがあるかもしれませんけれども、まず最初にありました2ページの経済財政諮問会議のワーキンググループの報告は、これは経済財政諮問会議の中に置かれているワーキンググループの報告ですので、私どもが事務局をしている訳ではないので、この取引所というのはどの取引所なのかということを正確に承知をしているところでは必ずしもありません。池尾先生がメンバーでいらっしゃったので、もし必要があればそのご説明を頂ければと思いますけれども、私どもとしては、取引所といったときにはこれは証券取引所、商品取引所、その他の区別なく、また国内、国外、そうしたものに区別なく広く取引所というふうに言っておられるのではないかなというふうに考えているところです。

それから、この報告自体は経済財政諮問会議の下に置かれたワーキンググループにあり、1ページの方になりますが、骨太2007というところに最終的に集約されていまして、この6月19日の骨太2007というのは閣議決定がされている文章でありまして、そこでマル1のところにありますように、「取引所の競争力を強化」というようなことが記載をされていますので、細目について関係省庁間の議論というのはなお今後も含め必要かとは思いますけれども、大きい方向性としてこういう取引所の競争力の強化、あるいは品揃えを広げていこうということ自体は政府全体の課題というふうに位置付けられているものというふうに理解をしています。

○池尾部会長

私、この経済財政諮問会議の下のワーキンググループの委員もしておりますので、ちょっとその立場で個人的に発言したいと思いますが、この取引所は、今ありましたように、全ての取引所ということで、国内の各種取引所を中心に考えているということで、そうした場合、証券取引所と商品取引所の間の競争というと、ある種、異種格闘技的な感じの競争にはなる訳ですけれども、他面で高井さんのお話なんかにもありましたが、投資商品という意味では同じレベルで競争しているという側面はありますので、投資家の資金を引きつけて、投資対象を提供しているという、投資というレベルでは、共通の土俵でそれぞれ切磋琢磨して頂くことが日本全体のレベルアップにつながる道ではないかという意味で、ここでは競争というふうにしか書いていませんが、競争と協調とか提携という話も、その裏側でもちろんあると思うんですが、そういうことをぜひ進めて頂くことが全体としての底上げにつながる近道ではないかという、そういう趣旨で議論をしたというふうに記憶しております。

省庁間での調整が順調に進めば、それにこしたことはないんですが、もし、ご紹介があったように、閣議決定がされているにもかかわらず、うまく進まないということでありますと、多分経済財政諮問会議で再度その点についてプッシュするという話になるんだというふうに理解しております。

他にご意見いかがでしょうか。どうぞ、國部委員。

○國部専門委員

基本的な考え方というところですけれども、ETF、デリバティブ取引、そして、コモディティ関連のETF、こういった商品の多様化を進めることは賛成でございます。当然我が国の資本市場の国際化、活性化に資するということとともに、投資家へのアクセスの向上であるとか、あるいは取引所の競争力の強化という観点に資すると思いますので、賛成でございます。

こういった商品を考えるときに、一つ考えなければならないのは流動性だと思うんです。いろいろな商品が上場されたときに使い勝手がいいかどうかというのは、まさに流動性が確保されているかどうかというところが非常に大きいと思います。基本的に制度設計であるとか、あるいは商品の設計というのは自由度を高めるべきだと思いますが、実際に商品を設計するに当たっては、その商品が本当にお客さんのニーズに合致しているのかとか、流動性が確保できるかという観点からぜひ商品設計を進めていく観点を、やはり頭によく入れておかないといけないというふうに思います。

商品デリバティブにつきましても、基本的には原資産、ここのところの取引が活況でなければなかなかその商品デリバティブというのも本当に使われるのかというところがございまして、例えば私どもの銀行でもお客様のニーズで、ヘッジニーズがあるのは、例えば原油であるとか非鉄金属であるとか、そういったもののニーズがある訳ですが、例えば原油なんかでも、国際的な価格を標準としたデリバティブというものが非常に使われている訳ですけれども、やはり日本でいろいろな商品を設計していくに当たっては、日本の例えば原資産市場とのリンクとか、そういったところをきっちりと手当てしておきませんと、なかなか使い勝手がよくならない懸念もあります。その点はよくこれから考えていかなければいけないのではないかと思っております。

○池尾部会長

どうもありがとうございました。

どうぞ、原委員。

○原委員

基本的には、商品の多様化、それから市場に厚みを持たせるということで提案をされていることに賛成をいたしますが、二点気になることがありまして、意見ということにさせて頂きたいと思いますが、一つは、既に9月の段階でコモディティ投信が新聞広告に登場してきておりまして、これは多分価格リンク債を使った形の商品なのだろうと思いますけれども、大手の証券会社が大手の新聞に掲載をしていらして、ちょっと見たときに大変びっくりしたのは、そのコモディティ関連のものが投信として登場してきているということについて、消費者側にほとんど認知がない状況で出てきておりますので、広告自体は金融商品取引法の広告規制に倣った形で書かれてはおりましたけれども、こういった市場の変化、商品の変化が起こっていることについては、前回も申し上げましたけれども、ぜひ情報提供をして頂きたいと思います。

田中委員がおっしゃられたように、こういったものを組み込んだETFになれば、金融商品取引法にならった形のルールがかかってくるということにはなりますが、今、商品先物については販売勧誘というのでしょうか、行為規制のところだけはほぼ同等のルールを金融商品取引法でかけることにはなっておりますけれども、ほかのところも、こういったものを組み込んだときにうまく入れるようなことになっているのかどうか。今、商品設計のところだけのお話になっておりますけれども、少し見ていく必要があるのではないかなと思っております。それが1点です。

それから、2つ目は、金融商品取引法の議論をしている段階では経済産業省も農林水産省も全くこれは異質なものであると。金融商品ではなくて、これは商品そのものなのだからということで、本当にすごいバリアというか壁が非常に高かったんのすが、先ほどのヒアリングで住友商事の方がおっしゃられたように、経済産業省でも今検討が進められておられて、それで私も実際にどのような審議をなさっているのか、少しお話もお伺いに何度か行って聞いております。もう一つ、だからその流れの中で言うと少し懸念をしておりますのは、今の商品先物の市場の構成者ですね。現状では幾つかの事業者の方があって、それからもう一つ構成をしている市場のもう一つの側という、私ども契約者は、不招請勧誘で市場に取り込まれた個人が、結果として1年ぐらいで大損をして出ているというような、こういう構図になっております。資産全体としてはわずかではありますけれども、市場のメンバー構成からするとそういう形になっていて、こういった市場の中で今までやられてきたものが、ETFという形で入ってくるときに、うまく入ってこられるのかどうか。だから法律的に入ってこられるような仕組みを作るというところはもちろん大事で、今こうやって検討しておりますけれども、適正な市場の構成者がうまくこの仕組みの中に入ってこられるようになっているかどうか。やはりその辺りの検討も、ぜひ、経済産業省、農林水産省とともに進めて頂けたらいいなと思っております。

以上の二点です。

○池尾部会長

原委員がおっしゃった後者の点に関しては、商品先物市場をプロ市場化するというのが基本、方向性として求められていることだと思うんです。商品先物市場をプロ市場化するということの裏側で、では個人の資金というのは今、直接商品先物市場に入っている面がある訳ですけれども、そういう直接的な参入ではなくて、個人の資金についてはファンド等を通じて間接的に入るような形に改めてもらうと。そういう個人投資家の資金については間接的に関与するという形に改めてもらう上でも、商品先物を組み込んだETFというのは、プロ市場化を進めるという面においても有益ではないかという理解をしているんですが、そういうふうにいいように回っていくように、おっしゃったようにいろいろ配慮というか検討しないと、放っておいていいように回るという保障は必ずしもない訳ですから、基本的な構図としては、繰り返しになりますが、商品先物市場、それ自体はプロ市場化して、個人の資金はETF等を通じて間接的に入る、市場型間接金融の仕組みにするというふうに組みかえていく、再構築していきたいと、そういうふうにうまくいくようにいろいろご努力頂きたいということです。

○原委員

重ねることもないんですけれども、池尾先生がおっしゃられた通りで、私どもも経済産業省とは話をしていて非常にそれは感じていて、やはりちょっと農水省の対応がやや若干気になる、遅れているんじゃないのかなというところでやや気にしておりまして、それから、やはりこれまでの既存の事業者の方々が本当にうまくこの仕組みの中に乗っかるというんでしょうか、入ってきて頂けるようにということを私も同様に考えているところでございます。

○池尾部会長

どうぞ、高井さん。

○高井参考人

すみません、参考人の立場で一言発言をさせて頂きたいと思いますけれども、今、原委員のおっしゃったコモディティ投信というのが最近新聞紙上で宣伝されているということなんですが、中に入っている商品はほとんどがコモディティのインデックス商品です。海外で組成されたGSCIというゴールドマンさんがやっておられるのとか、AIGさんのやつとか、それからジム・ロジャーズさんがやっておられる、いろいろあるんですけれども、基本的にはそういう指数の商品が中に組み込まれているということなんです。

それを買ったお客さんというのは、基本的にコモディティの指数をロングすると。単純にロングするという形になりまして、そのお金は海外の市場に大体流れていく訳です。ですから、恐らく、さっき池尾先生がおっしゃったみたいに、これから市場参加というのは、個人の場合は商品の場合は非常にリスクが高いんで、集団投資スキーム、間接的な市場参加ということになっていくと思うんですけれども、その一つの手段が、こういう投信という商品を使ったコモディティ指数を経由した間接参加ということになっていくと思います。

ですから、この投信の部分とETFの部分というのは、ちょっと議論が違いまして、ETFの場合には直接上場されている投信を取引したいという個人のお客さんが証券市場で売買をすると。間接参加とは言いながらも、より商品市場には近い参加の形態がETFで、より間接的なのがコモディティ投信という考え方です。

○原委員

ちょっと私も補足いたしますが、新聞広告で書かれているのは、全面広告を使っていらっしゃるのでかなりスペースがあるので、商品名の下にコモディティ投信という書き方をされていて、それで今はきちんと商品内容も分かるように説明しなければいけないし、リスクも説明しなければいけないというふうになっておりますので、9月の段階ではありましたけれども、既に今おっしゃられたような形では、中身を読み込むと書いてございました。

○池尾部会長

ほかにいかがでしょうか。

内容的にもっともだからというふうに思っておられても、はっきり賛成だという意見が非常に強かったということが重要ですので、賛成だという場合も賛成だということをはっきりご発言頂ければと思います。

○東臨時委員

論点メモの1.と2.については、全面的に賛成であります。

改めて感じますのは、ニーズがないから市場が広がらないのか、ニーズを吸収する商品が少ないからなのかという議論が常に出てくるんですけれども、日本の場合、商品の多様性に欠けているということは、そんなに議論が要らないんではないかと思います。従って、どうやって、個人の金融資産を市場に導くのかというときに、従来からチャネルの拡大等々の対応がとられてきた訳ですけれども、やはり一番重要なのは投資対象がどれだけ多様化しているかというところが重要だろうというふうに思います。そういう意味では、結論として、ETFであれ、ファンド型の投信であれ、商品の多様化ということに対しては必要であるという大前提で先ほどの制度的なコストをいかに下げるかということと、高井さんがおっしゃったインフラ整備という、この2点が、根っこの議論になるのではないかというふうに思います。

それからもう一つは、さまざまな商品を取り込むときに、なかなか制度的にというか、省庁間のつながりという意味ではやりにくいという議論がございますけれども、そこも先ほど高井さんの資料にございましたように、デリバティブの成長自身が決して原資産を阻害するものではなくて、むしろ相乗効果があると思います。日本の原資産産業の育成という意味でもデリバティブの成長は重要ではないかというふうに感じました。

以上です。

○池尾部会長

黒沼委員。

○黒沼委員

私も全般的には賛成です。

まず、コモディティの現物について、信託の形態を利用してETFを組成するというときに、ここで問題として挙がっているのは、投資信託法上の特定資産に政令指定する必要があるということですが、これは投資信託法が抑制的に政令指定をしてきたというだけですので、拡大しても特に問題はなかろうかと思います。コモディティ・デリバティブについても同じだろうと思います。

それから、現物交換型のものが必要ではないかということも、投資額を適正に評価できるようなコモディティの現物やデリバティブであれば、現物設定、あるいは現物交換型にすることは好ましいのではないか、できるのではないかと思います。

コモディティ・デリバティブを投資対象とするような信託の場合には、商品ファンド法に基づいて、商品投資顧問業者に対して投資判断を一任をする必要があるという点ですが、これは法律改正が必要ではないかと思っているのですけれども、この点については、専門家に投資判断を行わせるという、もともとの法律の目的がある訳なので、その目的をもう一度考え直してみる必要があるかと思います。

ただ、きちんと理解できていないところもあるのですが、コモディティ・デリバティブを投資対象とするETFのように指数に連動するように組成するETFであれば、個別の投資判断はそれほど必要なくて、連動するようにどうやって組むかということだけが問題になりますので、必ずしも商品投資顧問業者でなくてもできる話であって、金融商品取引業者、これは運用業者としての登録が必要ではないかと思いますけれども、その資格をきちんと見れば、やっていい事柄ではないかと思います。

以上です。

○池尾部会長

ありがとうございました。

殿岡委員。

○殿岡専門委員

ここに書かれていらっしゃることにつきましては、基本的に賛成でございます。その上で、私、生命保険会社の人間ですので、ちょっとそういった立場から意見といいますか、ご参考になればということで申し上げたいと思います。

生命保険業界もバブル期は非常に羽振りがよくて、いろいろなものに投資をしたということがあった訳なんですけれども、その後幾つかといいますか、かなりの苦い経験を踏みまして、最近は非常にオーソドックスな運用に回帰をしているというのが実態です。オーソドックスな運用というのが、生命保険負債というのは非常に長期であるということ、それから確定利付の負債であるということから、資産につきましても同じように長期の固定利付の資産で運用するということで、当社、簿価ベースで約24兆円の資産がございますけれども、大体4割が債券、国債が中心ですけれども、3割が貸し付け、1割強が株式、それから1割弱が外貨建て資産と、そういった中で、いわゆるオルタナティブ的なものにつきましては2%から3%程度と、そういった運用でございます。この流れというのが国際的な会計基準の変更ですとか、あるいは監督規制の流れですとか、そういったものとも相まって、この動きというのは、これからますますそういった方向に動いていくだろうというふうに考えています。

そういった中で、こういったリスク性資産のものについては限定的な投資ということになってしまう訳ですけれども、ただ、もちろん投資対象の幅が広がることにつきましては、基本的には歓迎すべきことで、それにつきまして、もちろん私どもも十分参加をさせて頂きたいと思います。

ただ、先ほど申し上げましたような制約があって、これは日本のほとんどの機関投資家がやはりそういったリスクをとりづらい負債構造になっているのではないかというふうに思います。年金なんかが、諸外国では非常に活発な投資をされているということですけれども、日本の場合ですと、年金基金もこれから少子高齢化が進んでまいりますので、あまりリスクをとった運用というのは、これからはしづらくなってくるのかなと、そんな気もしておりますし、私どももそういった状況と。

先ほど来お話を伺っておりますと、やはり個人の資産というものを、ここでのメインプレーヤーとして考えていくというふうな感じが見受けられる訳ですけれども、先ほどの高井さんのお話にもあったように、中国の方のように日本人が切った張ったが好きかどうかというところはいろいろ議論があるところかもしれませんけれども、そういった個人のマネー、これを中心にプレーヤーとして考えていくのか、あるいはさらには海外の投資家の資産まで呼び込むということを考えるのか、それによって商品の作り方ですとか規制ですとか、そういったものが非常に変わってくると思うので、そこら辺も踏まえたご検討をして頂ければというふうに思います。

以上でございます。

○池尾部会長

田中委員。

○田中(浩)専門委員

今の殿岡委員の問題提起に関しまして、少々私なりの解釈を申し上げますと、コモディティのETFが証券取引所で取引される場合、参加者として個人が当然想定されますが、機関投資家も相当入ってくるだろうと私は考えております。

先ほど、機関投資家の方もなかなかリスクがとりにくくなってきたというご指摘がありましたが、リスクがとりにくくなってきたからこそ、分散投資で安全なもの、リスクの高いもの、いろいろな資産を組み入れての運用が、これから機関投資家に求められるようになると思います。そういう意味で、今まで年金の運用などで、なかなか商品を対象に加えるのは特別な規約でも入れない限り難しかったと思いますが、それが証券取引所で取引されることになりますと、分散投資の一つの対象として投資がしやすくなると思います。

それから、取引所の流動性について別の委員の方からご指摘がありましたけれども、流動性が増すための条件として、多様な投資家が入ってくることが必要になります。そういう面で機関投資家と個人の両方が参加することによって、市場に厚みがでてくると考えています。

以上です。

○池尾部会長

いかがでしょうか。

米田委員、お願いします。

○米田専門委員

取引所としてお願いしている立場ですから、もちろん賛成ということなんですけれども、この論点メモのところの4ページの右欄に書いてあるんですけれども、ここに書いている通り、私ども現行法の枠内で、8月にコモディティのETFとして金のETFというのを出しました。これは実は、2年ほど前から市場参加者からのニーズがかなり出てきて、何とか上場できないかということで、相当苦労をして上場したというのが事実です。ですから、もちろん現行法の枠内でそのニーズというのは大半満たせるようなものを作ったんですけれども、まさに今こういった新商品というのは、先ほど高井さんのお話にもありましたように、時々刻々いろいろと大きくグローバルに動いています。

ですからそういった意味で、今回こういった形でこれをやっていけるというのは非常にいいことだと思うんですけれども、もちろん今の想定される範囲内では、これは確かにパーフェクトだと思うんですけれども、今後いろいろな形で想定外の動きというのが出てくると思うんです。ですから、やはりもう少しいろいろなところが弾力的に、ここにも一つ、例の指数の選定なんかも、少し弾力化ということが書いてありましたけれども、それ以外にもいろいろなことがあるんだと思いますけれども、ぜひ弾力的な対応をやって頂けるとありがたいなという感じがいたします。

それで、先ほど原委員からコモディティのETFの話がありまして、これは私ども上場しているETFのことなのか、非上場の投資信託なのか、ちょっとよく分からないんですけれども、取引所に上場するというのは透明性が一段と高まってくるという意味では非常にいいんだと思います。ただ、我々が気をつけていますのは、こういう新しい商品というのは非常に商品の内容について、やはりきちんと説明していく必要があるということで、これは一義的には証券会社さんがおやりになるんですけれども、取引所側としてもいろいろな機会を通じて、この説明をきちっとやっていますし、これからも特にこういうETFの範囲が広がっていきますと、その辺のところは心してやっていきたいなというふうに思っております。

以上です。

○池尾部会長

ありがとうございました。

飛山委員、いかがですか。

○飛山専門委員

今、米田委員が述べられたことと同じでございますが、証券取引所でありますので、ETFの範囲の拡大という意味では、ぜひお願いをしたいと思っております。

そして、この論点メモの中にも取引所として整備すべき点が幾つか挙げられておりますし、高井参考人からも商品を原資産としたETFの整備を進めて、原資産市場との相乗効果を図るべきであるという意見を頂いていますので、その方向で制度の整備を図っていきたいと考えております。

範囲の拡大につきましては、コモディティだけではなくて、債券とか、リートの方も含めるようにする方向で考えて頂きたいと思っています。また、これは米田委員も言われた通り、包括指定の部分の弾力化をぜひお願いしたいと考えております。これは税金の面も含めて、ぜひお願いしたいということでございます。

以上でございます。

○池尾部会長

ありがとうございました。

ほかにご意見いかがでしょうか。田中委員。

○田中(浩)専門委員

今、両証券取引所の方から弾力的な運用という話が出たので、若干それに関して補足させて頂きたいと思います。大阪証券取引所で金のETFの上場に2年ほどかかったという話がありました。現行法でも商品のETFを作ろうと思って苦労すれば、苦労すればというのは時間とコストをかければということですが、作ることは可能です。およそ2年間、当グループの運用会社も加わっていろいろ考えて作ったのですが、先ほど私が申し上げたとおり、このETFの一番いいところは何かというと、コストが安いというのが最大のセールスポイントになるはずです。現行法に基づいて組成すると、いろいろとワンクッション入れるなど、組成のための手数料がかかってしまいます。そうすると、海外のETF商品との価格競争力がなくなってしまいますので、ETFを推進するのは大いに賛成ですが、そのときに最も注意しなければいけないのは、いかに低いコストでETFが組成できるような枠組みにしていくかということだと思います。

そういう面で、いろいろな技術的なポイントが、選択肢として出されていますが、特別何かこうでなければ、これは機能しないということはないと思います。ただ、ポイントは、いかにコストを安く、なおかつ商品の組成に至るまで短時間でできるようにするかということだと思います。

以上です。

○池尾部会長

ありがとうございました。

いかがでしょうか。

それでは、1.、2.のところを中心にご意見を頂きたいということで、ご意見を頂いてまいりましたが、そろそろ3.のところも含めてと言いますか、論点メモ(3)の最後の6ページの金融商品取引所、またはそのグループにおけるコモディティ・デリバティブの取り扱いということで、機能論だけではなくて、やや組織論的な話も含んだ論点のところについてご意見を頂ければというふうに思いますが、いかがでしょうか。

神作先生、お願いします。

○神作委員

意見というよりもご質問が中心となると思うのですけれども、1.、2.の論点にもかかわりますし、3.の論点にもかかわると思いますので、この場をお借りして2点お教え頂ければと思うのですが、まず第1は、基本的にお話を伺っていて、このような方向が実現すれば、私もよろしいのではないかと思うのですけれども、諸外国等においては現物交換型というのができる、そのこととコストとの関係でお尋ねしたい点がございます。

もし、現物で決済するということになりますと、現物の品質の検査や保持ですとか、確実に引き渡しがなされるのか等々、むしろコストがいろいろかかりそうな問題が出てくるようにも思うのですが、他方で現物で決済できるということで、現物の市場と先物の市場がつながるという大きなメリットはあると思います。諸外国において、先ほどコストが非常に低い点にメリットがあると言われたと記憶しておりますが、現物による決済を認めた上で、コストを低くする工夫がどのようになされているのか。例えば、クリアリング機構の話が出ましたけれども、このクリアリング機構というのは現物決済の不履行までカバーしているものなのかどうか、あるいは先ほど問題にいたしました品質の保障ですとか、引き渡し、デリバリーが確実になされるというようなことが、この現物交換型の場合には非常に深刻な問題になるように思われるのですけれども、現物交換が認められている諸国においてどのような取扱いがなされているのかについてご教示頂ければというのが第1点でございます。

それから、第2点は、不公正取引との関係なのですけれども、相場操縦等の規律はかかってくるかと思いますが、例えば、こういったコモディティ関連のETF等で特に諸外国で代表的な事例としてどのような不公正取引がなされたことがあるのか。例えば、私、ドイツ法を多少勉強しているのですけれども、ドイツ法ではこういったコモディティ関連のデリバティブであっても、内部者取引規制がかかってくるということがございまして、こういったものが実際に取引される、上場されるというようなことになったときに、不公正取引の考え方というのが、これまでの考え方のままで十分なのか、検討を必要としないのかどうか、多少気になるところがございます。ぜひ諸外国でこういったタイプのETFをめぐる取引で何か非常に不透明だとか、あるいは問題だと指摘されたり摘発されたような事例があるのかどうかということについて、お教え頂ければというふうに思います。以上の2点でございます。

○池尾部会長

これはできましたら、高井参考人にまずお答え頂ければというふうに思います。

○高井参考人

そうですね、分かることと分からないことが実はありまして、まず現物にひもついたETFというのは、金のETFが今から、2004年ですから、それほど歴史は長くないですね。恐らく残高で800トンとか850トンぐらいまで積み上がっていると思います。これは、クリアリングシステムが担保をしてくれているかというと、それはそうじゃありません。これは先ほど私がお話ししている取引所のクリアリングハウスとは別の議論でございまして、一私企業がそういうETFを組成して、それが金の現物に引き換えができるという形の有価証券ということで取引されています。

現物の品質という部分に関しては、これは必ずシステム的にチェックが入っていますんで、投資家がETFを金の現物に引きかえたときに偽物の金が来るというリスクはほとんどありません。

コストという面でいうと、これは保管料というのが当然かかってきますので、商品の先物契約にひもつく現物型じゃないETFに比べると、金の現物を交換できる形というのは、実際には紙は持っているんですけれども、金はちゃんと金庫に保管されていますので、当然金庫のコストがかかる訳です。ですから、その分のコストは投資家が負担する形にはなります。

それはどれほど高いんだというと、それほど高くはないですね。皆さんが例えば、田中貴金属さんあたりで金の地金をお買いになって、それを例えば三井住友銀行さんの貸し金庫に預けられた場合とどれだけ違うんだというと、恐らくETFの方がずっと安いと思います。しかも、それは見えない形で保管されていますので、信託銀行が全部システム上絡んでいますので、実際に自分で金の現物を買って貸し金庫に預けるよりかはずっと安全、かつコストは安いというふうに理解しています。

それから、いろいろな問題、インサイダー取引等々の問題が起こったケースがあるのかと言われると、私の知る限りではないです。一つにはまだ歴史が浅いということもあって、そういう不祥事が発生していないというのもあるんだと思いますけれども、非常に規制がかかっている商品なので、それほど不正が入り込む余地がないのかなというふうには理解していますけれども、私が聞いた限りではないです。

○井藤市場業務管理官

若干説明させて頂きます。我々もコモディティについては決して専門家ではないので、現時点で必ずしも詳細を把握していない部分があるのですが、まず一つのポイントは、先ほど高井さんもおっしゃられたように、コモディティのETFというのはまだ発展途上の話で、我々の調べるところ、主にあるのが金とインデックス型のものでして、そういう面では保管コストというのも、例えばこれが大豆とかそういった話になると現物を渡すときに品質の問題等がいろいろ出てくるんだろうなと思います。ただ、現実には、金などでは割と分かりやすい問題で、例えばインデックス債、指数債、リンク債を組成するコストと保管コストがどっちが有利かとか、こんな感じでコスト面では考えられているのではと。

それから、先々いろいろなものを考えられるに当たって、世界でも今後取り組まれる部分なので、いろいろ我々もヒアリングしてみた中でも、さすがに大豆とか豚肉とか、そんなものをETFにするのかなという話で、現実には貴金属のようなものを念頭に置かれている方が多いと思うんですが、そういった面ではコスト面とか品質面では比較的ハードルが低いと。

あと、制度面のことに加えまして、やはり上場する際には、そういった品質確保といった面からも、それは我々としても制度面プラスアルファの取引所の審査といったようなものもあって、二重三重に、組成会社も含めて、投資家保護上問題ない形で商品を組成するというチェックが働くことが必要だとは考えてございます。

さらに不公正取引についても、我々勉強中ではございますけれども、認識としては、まさに先ほど高井参考人がおっしゃられた通りの認識を、我々も現状では持っているところです。まだ勉強中ではございますが。

○池尾部会長

ほか、ご意見いかがでしょうか。

淵田委員、お願いできますか。

○淵田委員

私は日本において、商品先物取引所を含む取引所グループの設立というものを可能にしていくことが、ぜひとも必要だと思っております。参考資料にもありましたように、世界の取引所の競争というのは、個々の証券とか先物とか別々の取引所ごとの競争というよりも、取引所グループという単位での競争にどんどんなっている訳でありまして、特にそういう取引所グループ会社の競争ということを考えた場合に、一番重要な位置付けになりつつあるのはデリバティブ取引な訳です。これは、スタディグループの一番最初の頃に私もプレゼンテーションしたことがありますけれども、取引所グループの収益構成を見ますと、デリバティブの寄与というのが非常に大きくなっている訳で、これをうまく取り込めるかどうかが取引所グループの競争力に大いにかかわってくるということだと思います。

それから、やはりグループ化することによって、いわゆる範囲の経済というものも機能していくと思われます。商品取引、証券取引、それぞれ歴史的には別々に発展してきた経緯がありますけれども、本日、高井参考人からも強調されましたように、基本、金融取引という性格があります。すると、金融取引に絡むさまざまなインフラ的なところというものがどんどん共有できるようになっていく訳です。コンプライアンス、リスク管理、いろいろな点が共有しうると思います。先ほどは清算会社の話もありました。よく以前から言われているのは統合的な担保の管理、クロスマージニングという言い方がされますけれども、この点の効率化のメリットも、グループ化によって追求できる訳であります。

こうした競争力のある取引所グループを日本でどう実現していくかということを考えた場合、非常に現実的なのは、金融商品取引所の関係会社を通じた新たな商品取引所運営という、この論点メモの最後にあるようなことが、一つの選択としてあり得るのではないかなという気がしております。と申しますのは、商品取引所というのは、株と違って、取引される商品はもともとグローバルですから、その競争力の差がどこで決定されるかというと、会員と投資家がどうであるかということかと思います。失礼ながら、日本の今までの商品取引所の歴史を考えると、さまざまな会員をめぐる事件もあった訳でございますし、それから投資家につきましては、個人中心にそうした会員が営業を展開してきたという市場構成になっている訳で、先ほど原委員がご指摘されました構成者の問題というものをどうしても引きずってしまうような気がするのです。ですから、新しい発想で金融商品取引所を絡めた何らかのグループ化というものの中で、新たな商品取引所というものを構想しまして、会員とか、あるいは投資家についてもこれまでとは違ったアプローチをしていくということによって、今の日本の商品取引所が抱える問題というものを克服していくことができるのではないかというふうに想像する訳であります。

今、参加者、関係者の中でどれだけそのニーズがあるかどうかというのは、もちろん今後の検討課題だとは思うのですけれども、これだけ議論になった、せっかくの機会でございますので、少なくとも制度的な手当てというものを早急にしていくということが望ましいと思っております。

○池尾部会長

どうもありがとうございました。

ほかにご意見いかがでしょうか。藤原委員。

○藤原委員

今、この委員会で話し合われていることは、今までの世界がどう変わってきたのか、そういう動きに対して、当局、日本の証券関係者、銀行、並びに証券取引所がどういう対応をしてきたのか。そして、今後どういう改革をしていくのかの3つに点についてだと思います。

正直に申しまして、過去20年間の金融環境変化に対し、日本の当局、金融機関の対応は不十分だったと思います。しかし、既に時遅しという状態ではないと思ってます。今からでもやれることは色々とあると信じてます。そしてそれらを実施していくことで、グローバル金融競争の遅れを取り戻していけると思ってます。

この遅れを取り戻し、リーダーとしての生き残りをかける場合に必要な金融商品の1つがデリバティブです。デリバティブは残念ながら今まで日本の当局・金融関係者が避けてきた金融商品だったような気がします。それはなぜかというと、「知らない商品」であったし、「難しい商品」かつ「リスクの高い商品」だったからです。日本ではリスク、イコール危険ですから、危険なことは止めておけ・・ということになり、デリバティブの発展にネガティブな人たちは最近まで多かったです。それは、ある意味では日本の金融業は「融資業務」が主流となって発展してきたからだと思います。デリバティブは日本では金融業では主流ではなく「そのたの業務」であったのです。しかし、金融業とは何かというコンセプトは海外の先進国ではこの15年ぐらい大きく変わっりました。日本では今でも金融業イコール一般の人たちからお金を集め、それを企業に貸すということことですが、例えば同じ質問をフランスの銀行経営者に聞くと銀行業とはリスクマネジメントであるという答え方をします。銀行業がリスクマネジメントですから、そこではヘッジの必要性がでてき、デリバティブがもっと身近な選択肢になります。また、コモディティも金融商品の中に入ってきます。こういう時代の変化を考慮していくと、日本の証券取引所の役割とかそういうのも、今までは単体でやってきたけれども、これからは商品取引所も一箇所に置きグループで競争していかなければいけないということは今選択しなければいけないことの1つになって行きます。今後の日本の金融市場を世界市場並みに強くしていくということを考慮した場合、この3.について、私は賛成です。3を選択することにはリスクが伴うかもしれません。しかし、グローバル金融競争に生き残るためには、イエスという選択をせざるを得ないと思ってます。これが私の意見です。

以上です。

○池尾部会長

ありがとうございました。

島崎委員。

○島崎委員

ちょっと印象になるんですけれども、この論点メモの6ページに書かれていることについては、その通りであると。若干遅きに失しているから、もっと加速的にやって欲しいと思います。欧米における取引所の統合の動きが資料についていますが、日本においてはこれは比較するのがおかしなほど周回遅れであるということぐらい書いて欲しいなと本当に思うんです。というのは、もう欧米の場合には、国際間でそういう提携をして、国際的にグループ化してやっていこうと。今、まだ日本は日本の国内の中でどうするかという議論をしている訳で、これはやはりスピードを上げていかないと、本当に欧米の取引所と伍してやれるのかと、これが非常に私は心配をしています。これが私の印象です。

○池尾部会長

ありがとうございました。

どうぞ、太田委員。

○太田専門委員

私の取引所はデリバティブ専門の取引所なものですから、新金融商品取引法上は現物もできるようになりましたが、今までデリバティブの専門取引所だったので、その観点から幾つかお話をしておきたいと思います。今、世界の取引所はデリバティブでないと生き残れないような時代になっていることは、皆さんご案内の通りですが、幾つかちょっと誤解があると思うんです。まず取引所が競争力をつけるべきだというのは、何のためなのかと。世界の取引所で、取引所を強化するというのは、実は、取引所自身の時価総額を高くしたいという事が主要な動機です。株主からそういうプレッシャーがかかるからです。

例えば、ニューヨーク証券取引所はデリバティブ分野で非常に立ち遅れた。シカゴ勢のCMEグループに時価総額でも大きく引き離されております。それで、ニューヨーク証券取引所は焦って、自分でデリバティブ分野を今から立ち上げることはなかなか難しい。しかし、シカゴ勢も自分の方を向いてくれないので、ユーロネクスト・ライフの方と合併をして、自分の弱点を補おうとした。それは結局、ニューヨーク証券取引所の時価総額を増やしたいということがポイントなんです。

私どもの取引所も株式会社ですし、いずれ私どもも上場を考えております。そのときに時価総額がどうなるかというのは、非常な関心事なんですけれども、マーケットとしては、いかに安いコストで投資家がさまざまな金融商品に投資できるかということを目指すべきでして、そのためにマーケットなり取引所はどうするかということを考えるべきなんですね。

日本の取引所が、例えば幾つかの商品取引所と金融先物取引所とが合併したりすることが必ずしも常に良い訳ではありません。例えば、シカゴのCMEがCBOTと合併するときに、合併したら独占になって、手数料がむしろ上がって、投資家にとって使い勝手が悪くなるんじゃないかという懸念が、ニューヨーク勢の方からそういうクレームがつきまして、アメリカでも大変議論になりました。

大きくなることが、マーケットの投資家にとって本当にいいかどうかは別問題です。アメリカでもヨーロッパでも、クロスボーダーになってマージャーが起こっているのは、実は、取引所の時価総額をどうするかという観点から進められているのが実情です。それが本当に投資家にとってどういうことなのか、そこの企業が安いコストで資金調達ができるのかという観点、もちろん合併するときには、きれいごとは言いますよ、だけど本当はそこのところが一番重要であります。私はこの6ページに書いてありますことは、制度として、子会社でやれるとか、いろいろ手当をしていくことについて異論はございません。けれども、取引所が競争するのは何のためなのかということをよく踏まえて頂かないと議論がおかしくなるんじゃないかと思います。

さらに、先ほど高井さんからクリアリングが大事だというお話がございましたが、まさに取引所の一番最後のコアはクリアリング機能なんです。OTCの場合は相対取引ですけれども、カウンターパーティーリスクがある。取引所はないというのが最大のメリットでして、クリアリングが全てなんです。例えば、ドバイで、オイル先物のドバイ取引所がスタートしました。だけど、そのクリアリングはニューヨークのNYMEXが牛耳っている訳でございます。従って、ドバイ取引所の死命は実はNYMEXが握っているのです。

さて、このクリアリングについて、例えば私どもの取引所で申し上げますと、ユーロ円の3カ月の金利先物が私どものメインの取引でございますが、もう一つ外為証拠金取引もやっております。ところが、この金融先物のクリアリング機構と外為証拠金のクリアリング機構とは別々になっております。

なぜか。クリアリング機構というのは、いざ、あるメンバーがデフォルトを起こしますと、他のメンバー全体でデフォルトをカバーするということになっている訳でございます。従って、メンバーがお互いに信用できるかどうかによって、そのクリアリングの機構が組成される訳ですが、金利先物のクリアリングメンバーである、例えば日本の三メガバンクの皆さん方は、商品先物会社の方々とか、いろいろ入っておられる為替証拠金のクリアリング機構には入りたくない。なぜならば、信用度が違うからです。従って、クリアリングメンバーが違うことによって、それぞれの証拠金の率とかも違ってくる訳です。いろいろな商品をバラエティーよく、上場すればいいと、皆さん方はお思いになるかもしれませんが、全ての商品について一つのクリアリング機構で処理できるかどうかは難しい問題なのです。

結局、いろいろな商品を上場するたびに、取引のシステムも違ってくれば、そのクリアリングシステムの構築コストも異なって来れば、商品が多様化したからといって、全ての商品を一つの取引システムと一つのクリアリング機構で処理する場合のような低コストを実現できるかは、不明なのです。従って、沢山の種類を上場したからといって、果たして投資家にとってのコストが下がるかどうかは全く別問題でございます。

欧米なんかでも、持ち株会社でのマージャーは起こっておりますけれども、それぞれの商品ごとにクリアリングとかシステムが違うところも多々ございまして、それぞれ専門分野に特化して競争している訳でございます。

長くなりましたけれども、こういう6ページに書いてあるようなことをやるという制度的な手当てをすることに私は賛成でございますけれども、実際に、本当にマーケットのコストが安くなるのか、そこのところの観点が一番重要ですし、ディテールが重要である。そういう点を詰めませんと、ブランケットなステートメントを幾らやっても前に進まないということだけ、申し上げておきたいと思います。

○池尾部会長

大変ありがとうございました。

それでは、時間が迫っていますので、手短にお願いします。

○野村委員

私は今のご指摘は全くそうだと思うんですけれども、資料の方の18ページの表を見させて頂きますと、私は法律家としての観点から見れば、どうしてこんなに違った制度になっているんだろうと素朴に思う訳です。そうしますと、何とか理由をつけなきゃいけないということになるので、理由を考えると、例えばM&Aが起こらないようにしているんだという、そんな理由しか思いつかない訳なんですが、そんな理由は不合理だということになれば、結局これは時間軸がずれているだけであって、いわば揃えなければいけないという、こういう結論になる訳です。先ほど、今ご指摘がありましたように、実際にM&Aをする当事者はM&Aをすることがプラスかどうかは、それは経営判断として考えるべきでありますし、また国が誘導する必要はない訳でありまして、それはマーケットに任せればいい。最終的に投資家のコストが下がらなければ、最終的には株主の方にだって利益が行かないということになりますから、総合的にマーケットが決めることだろうというふうに思います。

そう考えると、今、あえて逆に国がM&Aが起こらないような制度にしておくということの必要性が全くなければ、そこは制度を揃えるべきではないかというふうに思います。

○池尾部会長

大変どうもありがとうございました。

それでは、まだあるかと思いますが時間が来てしまいましたので、本日の議論はこれまでにさせて頂きたいと思いますが、このテーマにつきましては、重要な論点を数多く含んでおりますので、これで終わりという訳にはできませんので、事務局とも相談の上、後日また議論する機会を設けるという方向で考えております。だから、取引所関係の点については、後日もう一度議論をするということで、次回につきましては、ちょっと論点を移させて頂くと、ファイアーウオール規制の見直しの方に次回は入りたいというふうに思っております。

それでは、事務局からご連絡をお願いします。

○池田市場課長

ただいまありましたように、次回の第一部会につきましては、11月14日、水曜日の午前10時から12時ということで開催をしたいと思います。

今、部会長からもありましたように、次回は、銀行、証券間のファイアーウオール規制の論点について、ご議論を頂くこととしたいと考えております。この問題につきましては、銀行、証券にまたがる問題でありまして、池尾部会長からは、第二部会の委員、臨時委員の方にもご関心のある方には参加頂いてはどうかというご指示を頂いておりますので、そのように進めさせて頂きたいと考えております。

以上でございます。

○池尾部会長

それでは、以上をもちまして、本日の会議を終了とさせて頂きます。どうもありがとうございました。

以上

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