金融審議会金融分科会第一部会(第48回)議事録

日時:平成19年11月14日(水)10時00分~12時00分

場所:中央合同庁舎4号館9階 金融庁特別会議室

○池尾部会長

それでは、定刻になりましたので、ただいまから、金融審議会金融分科会第一部会、第48回会合を開催いたします。皆様には本日はご多用中のところご参集頂きまして、誠にありがとうございます。

それでは、いつもの通り、本日の議事は公開で進めさせて頂きます。

本日は、渡辺大臣、山本副大臣にお越し頂いております。大臣、何か一言。

○渡辺金融担当大臣

本日も最後までおつき合いできませんが、どうぞよろしくお願いいたします。

論点メモにもございますように、ファイアーウォール規制導入後、いろいろな環境変化がございます。金融機関の組織の多様化は大きく進んでおりますし、また、金融商品販売面での規制緩和も進展しております。個人情報保護法の施行によって、顧客情報保護ルールの徹底が求められるところでございます。そういった環境の変化も、まさに今日のご議論の一つのテーマかと思います。ご忌憚のないご意見をよろしくお願いをいたします。

○池尾部会長

どうもありがとうございました。

議事に入ります前に、11月7日付で、当部会の委員に異動がございましたので、ご報告します。木村裕士委員が退任され、小島茂委員が就任されました。よろしくお願いします。

○小島委員

連合の小島です。よろしくお願いします。

○池尾部会長

それから、本日は、議題の関係で、第二部会の委員、臨時委員の方々にもご案内を差し上げておりまして、ご都合がつかれた翁百合委員、金丸恭文委員、高橋伸子委員、山下友信委員、吉野直行委員、今松英悦委員、川本裕子委員にご参加頂いております。さらに加えまして、本日は参考人といたしまして、横浜銀行の代表取締役副頭取、早川洋氏、それから第二地方銀行協会金融情報室長、澤井育雄氏にもご出席頂いております。

それでは、本日の議事に移らせて頂きます。本日からは、銀行・証券間のファイアーウォール規制のあり方について、ご審議頂きたいというふうに思います。本日は、まず最初ですので、事務局から現行制度の概要等につきましてご説明を頂いた後、討議をしたいというふうに思います。

それでは、まず事務局から説明をお願いしたいと思いますので、よろしくお願いします。

○池田市場課長

それでは、ご説明をさせて頂きます。お手元に資料1としまして、関係資料という表題があるものと、それから、その後に資料2、論点メモ(4)とございます、この2つにつきまして、ポイントをご説明させて頂きたいと思います。

まず関係資料の方をご覧頂きたいと思います。表紙をおめくり頂きました1枚目に制度の概要、経緯について、簡単に1枚で整理をしております。

1.のところにございますように、米国グラス・スティーガル法が1933年に成立をしておりまして、ここは大恐慌時の経験等を踏まえて、銀行の証券業務を制限した法律がございました。これを受けて、我が国でも戦後に証券取引法を制定しましたときに65条、今の金融商品取引法では33条という条文になっておりますけれども、銀行の証券業務を制限しているということでございます。その際の立法趣旨はこのマル1からマル3にございますように、銀行の財務の健全性、あるいは利益相反の防止、さらに銀行の優越的地位の濫用の防止といったものが立法の趣旨とされているところでございます。

その後、2.にございますように、1993年に業態別子会社方式による銀証の相互参入が解禁されました。その後、持株方式による参入も解禁をされてきておりますが、この際、弊害を防止するために、銀行・証券間のファイアーウォール規制というものが導入されました。(注)にございますように、代表的なものを3つ並べておりますが、役職員の兼職規制、あるいは非公開の顧客情報の授受の禁止、あるいは信用供与を利用した抱き合わせ行為の禁止、その他利益相反行為の禁止のルールが定められているところであります。

3.にありますように、その後、実態を踏まえつつ、弊害が少ないものについては規制を緩和してきたという過程がございます。

2ページ目でございますが、銀証間のファイアーウォール規制の規定を2ページ、3ページにわたりまして整理をしております。金融商品取引法では役職員の兼職規制のほか、アームズ・レングス・ルール、それから信用供与を利用した抱き合わせ行為の禁止、さらに、内閣府令の方で具体化しております禁止行為がございます。以下、その下の方から内閣府令の規定を整理しておりますが、おめくり頂いて3ページの最後の方になりますが、例えば、府令の153条7号に非公開情報の授受の禁止、8号に非公開情報の授受を利用した業務運営の禁止といったルールが定められているところでございます。

この非公開情報の授受の禁止については、下のところでございますが、適用除外が規定上設けられておりまして、内部管理に関する業務の全部または一部を行うための非公開情報の授受ということにつきましては、内閣総理大臣の承認を受けて禁止規定の適用除外を受けることができるというルールが設けられているところでございます。

4ページは、今最後に申しました適用除外の承認制度の細目を整理したものでございます。1にありますように、承認制度の対象は金融商品取引業者とその持株会社、あるいは親銀行、子銀行等の間のやりとりということでございまして、この(注)のところにありますように、従来は持株会社のほか、親・子法人等であります預金取扱金融機関、保険会社などが規定されておりましたが、今回の金商法施行時にグループ内の信託会社や貸金業者にも対象を広げているということでございます。内部管理に関する業務は、このマル1からマル6の内容が規定されております。承認基準については、マル1からマル4のものがございますが、例えば、マル3を見て頂きますと、内部管理に関する業務を行う部門から発行者等に関する非公開情報が漏洩しない措置が的確に講じられていることといったようなことが承認基準として定められているところでございます。

5ページは、冒頭に申し上げましたファイアーウォール規制の緩和を、その後図ってきているということの経過を整理させて頂いたもので、平成11年以降、累次にわたりまして、ファイアーウォール規制の緩和措置を行ってきているということでございます。

6ページ以下は、このファイアーウォール規制に関しまして、政府、あるいは審議会等での最近の指摘事項について整理をさせて頂いております。今年の6月19日に閣議決定されております「経済財政改革の基本方針2007」、いわゆる骨太2007と言われるものでは、このアンダーラインをしてあるところですが、「優越的地位の濫用や利益相反の防止などの措置を講じた上で、銀行・証券に係るファイアーウォール規制の見直しを行う」ということが記述されているところでございます。

また、当審議会のスタディグループの方で6月13日に中間論点整理がまとめられておりますけれども、こちらの方では、この6ページの下の方に3つほど並べてありますが、一つは金融グループとして利用者に総合的なサービスを提供するための金融イノベーションを、こうした規制が阻害しているのではないかということ。それから、金融グループとして要求される統合的リスク管理等の障害となっているのではないかということ。それから、海外金融機関にとっては規制対応のための体制整備に伴うコストが増加しているのではないかということ。

他方、現行のファイアーウォール規制の根拠とされている利益相反や優越的地位の濫用の可能性は今日においてもなお重要な論点であるということが書かれておりまして、「したがって」の段落でございますが、「銀行・証券に係るファイアーウォール規制のあり方については、利用者利便の向上や金融機関の適切かつ効率的な業務運営の確保等の観点とともに、利益相反や優越的地位の濫用の防止の観点も踏まえ、必要十分なものとなるよう、今後、金融審議会の場において早急に検討を開始すべきである」とされているところでございます。

その下の方は、先ほどの骨太2007にまとまります過程におきまして、経済財政諮問会議の方のワーキンググループで報告が4月20日に出されておりますけれども、そちらの方でもこの問題が記述されているところでございます。

8ページでございますが、6月22日に閣議決定をしております「規制改革推進のための3か年計画」におきましては、銀行・証券のファイアーウォール規制の在り方の検討ということで、平成19年度検討ということにされているところでございます。

9ページからは、このファイアーウォール規制をめぐる環境の変化ということで、先ほど大臣からもございましたが、幾つかの点について、事実を整理させて頂いております。

一つは、金融機関が行うことのできる有価証券関連業務の主なものをここに図示をしておりますが、一番右に証券仲介業の欄を設けさせて頂いております。下の方に注をつけておりますが、この証券仲介業、平成16年12月に導入されまして、金融商品取引業者の委託を受けて、当該金融業者のために行う有価証券の売買の媒介、募集の取扱い・私募の取扱い等、こうしたものを金融機関ができるということとされておりまして、従来、業務範囲としては社債、株券に関します売買、媒介・取次ぎ・代理、あるいは引受け、募集の取扱いといったものは、バツがついておる訳ですけれども、このうち、引受けを除きます部分については、かなりの程度、この証券仲介業でカバーされてきているということでございます。

10ページは、個人情報保護法の規定について、ご案内のところと思いますが、整理をさせて頂いております。個人情報取扱事業者が第三者に個人データを提供するという場合には、一番上にありますように、第三者への個人データの提供につきあらかじめ、個人の同意が必要であるということ。2番目の矢印のところにありますように、ただし、本人の求めにより原則として提供停止とするとしている、いわゆるオプトアウトとしている場合で、ここの※印にありますようなマル1からマル4のようなことをあらかじめ通知等をしている場合には、本人の同意は不要であるということ。それから、下の方で言いますと、マル1からマル3がありますが、例えばマル3で、グループによる情報の共同利用ということについては、共同利用する者の範囲や利用目的等をあらかじめ明確にしている場合には、こうした第三者に該当しないという取り扱いが認められているといった辺りがポイントになろうかと思います。

11ページは詳細な条文でございますので、省略をさせて頂きます。

それから、さらに昨今の変化としましては、12ページでございますが、元々我が国の法制のモデルになっております米国の状況でございます。1930年代からの推移を絵にしておりますが、この下の方にマルが3つありますが、下から2番目のマルからご覧頂きたいと思いますが、米国でも我が国と同様のファイアーウォール規制が存在した訳でございますが、1997年に見直しが行われまして、非公開顧客情報の共有の制限については原則撤廃をされているということでございます。(注)にありますように、別途、公正信用報告法というのがございまして、信用情報等につきましては、個人顧客にオプトアウトの機会を付与するということが義務づけられておりますが、個人以外の法人顧客については、こうしたオプトアウトの機会を付与するというようなことは求められていないという状況と理解をしております。

それから1999年のグラム・リーチ・ブライリー法で、ここではマル4と書いてありますが、銀行と証券会社の役職員兼職の禁止規定も原則として撤廃をされておるということでございます。

13ページ、14ページは米国の細目のルールを整理させて頂いたものでございますので、説明は割愛させて頂きたいと思います。

最後に15ページでございますが、今ご説明しました日本、アメリカの制度を比較対照したものでございますので個別の説明は省略させて頂きたいと思いますが、1点、EUのことについて、ここで若干言及をさせて頂いております。ヨーロッパについては、ご案内の通りユニバーサルバンクの仕組みをとっておりますので、こうしたファイアーウォール規制というようなものは存在をしていない訳でございますが、この非公開の顧客情報の共有につきましては、この欄の右側の、米国の下にEUということで書かせて頂いておりますが、グループ内外を問わず、個人情報を共有するためには顧客による同意が必要であるということがEU指令に規定されております。ただし、法人情報については、特段の規定はないと理解しております。

以上がファイアーウォール規制の概要と、この規制導入以降の変化について、ご説明をさせて頂きました。

以上を踏まえて頂きまして、今日ご議論を頂きたいと思う訳ですが、資料2の方に論点メモを、事務局の方で用意をさせて頂きました。今のご説明と重なる部分がございますので、ポイントをご説明させて頂きたいと思いますけれども、最初の黒マルのところはファイアーウォール規制は利益相反による弊害の防止、それから銀行の優越的地位の濫用の防止というものを主たる狙いとして導入されたもので、その後、必要に応じ緩和をしてきたということでございます。

2番目は、ファイアーウォール規制について、とりわけ非公開情報の授受や、役職員の兼職の問題などに関しまして、規制見直しの観点からの議論として代表的なものを整理しておりますが、金融グループとしての総合的なサービスが提供されていないといったこと。それから、統合的リスク管理の障害となっているということ。それから、諸外国において規制が緩和されているということで、競争力強化という観点でいうと、競争条件が同等のものにならないといったような指摘があろうかと考えます。

それから、一方で、ファイアーウォール規制の目的としております利益相反、あるいは優越的地位の濫用防止といったものについては、これをさらに徹底を求める指摘があるというふうにも理解をしているところでございます。

2ページ目でございますが、ファイアーウォール規制をめぐる環境としては、大臣からもございましたように、グループ経営等の多様化、それから証券仲介業の解禁、それから個人情報保護法の施行といったもの、あるいは米国における緩和の動向、こうしたものについて、どのように考えるかということがあろうかと思います。

3.のところで、以上を踏まえ、ファイアーウォール規制のあり方について、どのように考えていくか。

4.で、その他、ファイアーウォール規制のあり方に関し、検討すべき点があるかどうか。こうしたことについて、忌憚のないご意見を頂戴できればというふうに考えているところでございます。

○池尾部会長

ありがとうございました。

それでは討議に移りたいと思いますが、委員の皆様全員で討議して頂く前に、あらかじめ事務局から4名の委員の方に、議論を促進する意味で、冒頭でまとまって意見を陳述して頂こうということでお願いしておりますので、まず4人の委員の方から順次意見表明を頂いた上で自由討議ということにいたしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

それでは、最初に國部毅委員にお願いしたいと思いますので、よろしくお願いします。

○國部専門委員

三井住友銀行の國部でございます。本日は、意見を申し述べる機会を頂戴いたしまして、厚く御礼を申し上げます。資料3と資料4という2つの資料をお配りしておりますが、基本的には資料3に沿って、銀証ファイアーウォール規制の見直しのメリット、並びに指摘されている弊害への対応について、ポイントを絞って説明をさせて頂きます。

資料3の2ページをご覧ください。銀証ファイアーウォール規制を見直すことによりまして、個人、法人のお客様の利便性向上と、我が国金融・資本市場の国際化、競争力の強化が期待できるものと考えております。お客様の利便性向上という点では、グループ内での銀行・証券が一体的に運営されることを通じまして、複合的かつ高度な金融商品・サービスが円滑に提供され、また資金調達、運用の各局面におきましても、お客様がさまざまな選択肢を比較して頂けるようになることなどが挙げられると思います。

また、我が国金融・資本市場の国際化、競争力の強化という点では、国際的な規制のイコールフッティングを通じた国際競争力の強化や、直接金融市場へのアクセス拡大によるわが国金融・資本市場の競争力の強化、地位の向上、さらには銀行・証券の人材・インフラ・ノウハウの有効活用を通じた経営効率化、あるいはリスク管理を含む経営管理の高度化などが期待されると思います。

以上の観点から、情報共有や兼職といったファイアーウォール規制の見直しを行いまして、グループ内での銀証一体運営を実現していくことが望ましいと考えております。

3ページをご覧ください。法人マーケットの現況を整理しておりますが、我が国におけるM&Aや株式発行等の市場規模は、欧米対比かなり小規模になっております。この原因として、各国の市場環境の相違等ももちろんある訳ですが、グループ化した銀行・証券の連携を妨げる我が国固有の規制も影響しているのではないかと考えられます。

4ページをご覧ください。法人のお客様のメリットについてご説明します。左側の図表は、当行が本年2月に外部の調査会社に委託をして行った顧客アンケートの結果でありますが、今後の銀証連携に期待することとして、借入れ、起債等を組み合わせた複合的な資金調達などが挙げられております。この背景として、現在、銀証協働の場面でどのようなことが問題とされているのか、また、それが今後の銀証連携の強化でどのように解決され得るのかという点を右側に整理しております。

現下のファイアーウォール規制による問題点といたしましては、例えば、銀行が証券サービスにつきましては概要しか説明できず、その結果、お客様が提供の良否を十分に判断できないということがあります。これに対し、連携強化が実現すれば、直接・間接金融、あるいは流動化等のいろいろな調達方法におけます金利や期間等の諸条件を即座に比較し、ご判断頂けるようになるものと考えられます。

また、市場環境に応じた機動的な提案が行われにくく、お客様が調達機会を逸してしまうという問題もあります。これにつきましても、銀証の連携強化が実現すれば、例えば、マーケットの状況の良いときにはエクイティによる調達を選択し、そうでないときには銀行ローンでつなぐといったことが機動的に行えるようになると考えます。

5ページをご覧ください。米国における銀証一体運営の事例として、ここではシティグループの例をお示ししていますけれども、右側が法人格上の組織でございまして、網かけのように、商業銀行と証券会社は分かれておりますけれども、左側の顧客対応上の組織におきましては、大企業部門・投資銀行業務部門として一体的に運営されています。このように、法人格を超えて、お客様にベストのソリューションを提供するビジネスモデルが、既に世界的にはデファクトスタンダードとなっております。

6ページをご覧ください。個人マーケットにおけるメリットについてご説明いたします。現在の個人マーケットの状況でございますが、皆様ご承知の通り、家計の金融資産に占める銀行預金の割合は依然として高く、貯蓄から投資への流れの促進は未だに大きな課題と言えます。

7ページをご覧ください。資料右側に、個人のお客様にとりましてのメリットをお示ししておりますけれども、銀証連携強化による効果といたしましては、まず銀証にまたがる幅広い金融資産の中から、お客様のリスク許容度等に応じた最適な商品を提案することが一段とできるようになるほか、銀証にまたがる幅広い金融商品を網羅した、例えば詳細な報告書、運用実績であるとか、残高であるとか、そういった報告書の作成や、コンサルティングなども一段と可能になると考えられます。

8ページをご覧頂きますと、これは米国における実例ですけれども、銀行の提供する金融商品と証券の提供する金融商品を一体的に管理する口座が開発・提供されておりまして、我が国でもファイアーウォール規制の見直しが行われれば、このような商品の開発が容易になるものと考えられます。

次に、銀証ファイアーウォール規制の見直しに当たりまして、指摘されている弊害と、その防止のためのコンプライアンス体制の確立について、ご説明をいたします。10ページをご覧頂ければと思いますが、ここに3つの問題をお示ししております。次ページ以降、どのような対応が考えられるのか等を整理しております。

11ページをご覧ください。まず、有害な利益相反行為について、欧米における対応をご説明いたします。利益相反ということにつきましては、例えば、商品の売り手と買い手は常に利益が相反しているなど、それ自体は日常的に発生していることであります。問題は、その中で有害な利益相反行為をいかに取り除くかということでございます。このため、欧米では以下にお示ししております通り、監督マニュアルにおきまして、金融機関に対し、問題のある利益相反行為をしっかりと管理、排除する体制整備を求め、その実施状況を当局がモニタリングするという手法を採用しております。

次に、優越的地位の濫用防止について、ご説明いたします。12ページをご覧ください。優越的地位の濫用の問題は、ご承知の通り、銀行・証券間に限って発生するものではなく、既に独占禁止法、銀行法において明確な禁止規定が設けられているほか、ご覧の通り全銀協においても、また私ども三井住友銀行においても、防止に向けてさまざまな対応を行っているところでございます。

13ページをご覧ください。もう一つの論点として、銀証ファイアーウォール規制の見直しにより、個人情報の保護の水準が低下するのではないかという懸念についてでございますが、まず、銀証ファイアーウォール規制の見直し後も、当然のことながら、個人情報保護法上の個人情報の保護は従来どおり維持されます。下の図表で、個人情報保護法とファイアーウォール規制を比較しておりますが、対象となる「情報」の範囲は、個人情報保護法上の個人情報の方が幅広いものとなっております。また、第三者提供時の保護措置につきましては、個人情報保護法においても事前の同意、またはオプトアウト等の明示を行うことが必要とされているところであります。こうした点を踏まえれば、銀証ファイアーウォール規制の見直しを原因として保護の水準が低下するという懸念は、現実的には極めて小さいのではないかと考えております。

最後に見直しの方向性について、申し述べさせて頂きます。15ページをご覧ください。基本的な考え方でありますが、ファイアーウォール規制は「有害な利益相反行為の防止と優越的地位の濫用防止」という目的を達成するための「手段」としての事前規制と位置付けられると思います。これらの目的を実現するために、ファイアーウォール規制という手段が必要かどうかを検証する場合には、顧客利便性の向上と、我が国金融・資本市場の国際化、競争力の強化、そして、十分な顧客保護という視点から検証することが必要と考えられます。併せまして、欧米における規制とのイコールフッティングを図ることも必要であります。こうした考え方を踏まえれば、欧米と同様の銀証一体運営を実現するとともに、指摘されている弊害につきましては、顧客保護上必要な体制整備を金融機関に求め、それを監督当局がモニタリングするという手法に移行することが合理的ではないかと考えています。

16ページをご覧ください。具体的な見直しの方向性でありますが、まず、1点目といたしまして、金融グループ内における銀行と証券会社間での情報共有を許容するということ。2つ目といたしまして、金融グループ内における銀証役職員の兼職及びクロスマーケティングを通じて、銀証プロダクトの一括提供を許容することが必要と考えております。

こうした措置を講じることにより、銀証プロダクトを含む最適な資金調達、あるいは運用のプランの円滑な提供がなされることになります。

次に、下の段でございますが、先ほども申し上げさせて頂きましたが、有害な利益相反行為や優越的地位の濫用防止につきましては、金融機関の自主的取り組みと、監督当局のモニタリングを組み合わせる欧米型の規制フレームを採用することが合理的と考えております。

17ページでございますが、この点は、やや細かい事項ではございますが、お客様にメリットのある銀行・証券プロダクトの一括提供、例えばパッケージ商品などが、現行ファイアーウォール規制上のいわゆる抱き合わせ販売等に該当しないことを、解釈等により明確化して頂ければと考えております。いわゆる抱き合わせ販売の規制目的は、優越的地位の濫用防止でありまして、お客様にメリットのある商品の提供まで阻害することがないようにして頂きたいという趣旨でございます。

最後のさらなる国際競争力の強化のためにという部分は、ファイアーウォール規制とは直接関係ない訳ですが、我が国金融機関の国際競争力をさらに強化していく観点からは、金融グループの円滑な形成を通じまして、顧客ニーズの変化に柔軟に対応することを可能とするため、欧米同様に業務範囲規制を一層柔軟化することが望ましいということであります。

以上が、私どもの考え方であります。

お手元に資料4といたしましてお配りしている資料がございます。これは全銀協における経済学者の研究会で貝塚啓明先生が座長であります金融調査研究会が、先月シンポジウムを開催して作成した、『わが国金融産業の国際競争力をどう強化するか』という提言書でございます。参考としてお配りをしておりますが、後ほどご覧頂ければと思います。

以上、非常に駆け足でご説明させて頂きましたが、ファイアーウォール規制の見直しにつきましては、我が国金融・資本市場の国際化、あるいは競争力の強化に資するという観点から、前向きにご議論を頂ければ幸いであります。

ありがとうございました。

○池尾部会長

ありがとうございました。

それでは、引き続きまして、ポール・クオ参考人からお願いしたいと思います。

○ポール・クオ参考人

国際銀行協会のポール・クオです。よろしくお願いします。

ご承知の通り、国際金融センターとしての日本のプレゼンスは相対的に大きく低下しています。かつては、多くの外資系金融機関がアジア太平洋地域の統括本部を日本に置いていましたが、現在ではほとんどが香港やシンガポールに移管しております。金融センターの国際競争力を決定する要因は一つではありませんが、最近では、規制環境が金融市場の国際化にとっての最も重要な項目と考えられています。

規制環境という観点から他の国際市場と日本とを比較したとき、最も大きな違いはファイアーウォール規制の存在です。国際的には、ファイアーウォール規制のように、企業形態、マーケットストラクチャーを規制する方法から、業者の行為自体を規制する方法へ規制監督手法が変化しています。ファイアーウォール規制は、その効果と比較して弊害が多く、日本の市場と金融機関の国際競争力を強化するためにも、ぜひ見直しが必要です。

2ページ、3ページをご覧ください。先進国で機械的なファイアーウォール規制が存在するのは日本だけです。他の先進国では、各社が自己規律に基づいてベストプラクティスを確立し、個別事例の弊害の性質や程度に応じた手当てを行うことによって、顧客の利益が最大限に実現されるような方法をとっています。日本が金融センターとしての国際競争を生き残るには、他の主要市場やグローバルプレーヤーとのイコールフッティングを目指さなければなりません。将来的には、法改正による、日本もユニバーサルバンクを目指すべきと考えますが、当面は個別事項について、できるところから順次必要な手当てをしていくことが現実であると考えています。

ファイアーウォール規制は単に業者だけの問題だけではありません。業者が効率のよいサービスを提供することは、顧客保護と表裏一体の関係にあります。顧客保護を強調するあまりに、市場や金融機関の経営が非効率になってしまえば、そのコストは結局は顧客に転嫁されてしまいます。実際、ファイアーウォールによって、業者に人員とインフラの重複や非効率な資本配分によるコストが発生しており、それは顧客に転嫁されております。

他方で、ファイアーウォールが緩和されれば、銀行と証券のサービスの融合により、多様かつ高度な金融のソリューション技術が生まれます。例えば、グローバルな市場においては、銀行と証券の技術が融合したハイブリッドな商品が次々と生まれていますし、銀行と証券が協力して、企業のキャピタルストラクチャーに対する総合的なアドバイスも活発に行われています。そうした意味で、ファイアーウォールの緩和は、革新的金融技術の発展に貢献すると期待されます。

そのためにも、銀行と証券が顧客情報を共有し、テーラーメードの提案を迅速に行うことや、兼職による人員の共有、銀行と証券における経営戦略の共有を広く認めることが必要です。

銀行代理業や証券仲介業が認められ、銀行と証券との間の共同がある程度始まっていますが、銀行と証券のサービスの融合による総合的なソリューションの提供にはまだ多くの課題が残されています。

リスク管理という観点からは、グループ規模でリスク管理を行う上での阻害要因になっております。例えば、証券会社と系列銀行が同一のカウンターパーティーリスクやマーケットリスクを保有している状況において、個々には適正なリスクをとっていたとしても、銀行と証券の合計値はグループとして過度のリスクになっている可能性があります。ところが、顧客の書面による事前同意を求めるファイアーウォールの存在によって、両者の間で適切な情報共有ができないため、当該リスクへの対応が機動的に行えない可能性があります。

また、日常においても信用リスク、市場リスク、オペレーショナルリスクなどが別々に管理されているため、資本の使い方が非効率になっております。グループ会社間での内部管理部門の一部の兼職が認められていますが、リスク管理の観点からは、これでは十分ではありません。特に、外資系金融コングロマリットにとっては、日本での業務を行う全てのグループの企業を統括するカントリーマネージャーの設置を認め、カントリーマネージャーが国内におけるグループ企業についての情報を把握した上で、統合された形でリスクを管理することが望まれます。

ファイアーウォール規制の重要な目的に、利益相反の管理と優越的地位の濫用防止があるとされていますが、実際にはこうした目的が達成されているとは言いがたいところがあります。まず、利益相反への対応についてですが、ファイアーウォールの存在により、当然発見されてしかるべきグループ全体としての利益相反さえも見過ごしている事例もあります。国際的な観点からは、ファイアーウォールがあるため、グループとして利益相反を知らなかったという理屈は受け入れられません。利益相反は、その存在を特定し、その性質や程度に応じて顧客にとって最適な結果となる方法をとると、換言すれば、ベストプラクティスの実行が重要です。日本では、銀行と証券との間にファイアーウォールがあるので、グループとしての利益相反の検証を行うことができませんが、このような制度はグローバルベストプラクティスに沿ったものではありません。

具体的な例を挙げてみましょう。7ページをご覧ください。

ある企業の増資を証券会社が引き受けて、当該企業が増資で得た資金を使って、系列銀行が融資・返済を受けることについては、お互いがその事実を知らなければ、ファイアーウォール規制上は何ら違反行為ではありませんが、当該企業の株主や投資家から見れば、腑に落ちない事態であるには違いありません。

別の例を挙げます。8ページをご覧ください。証券会社がM&Aの売り主である企業のアドバイザーとします。系列銀行が買収者である企業のために買収資金を貸し付けることも、ファイアーウォール規制の下では違反行為となりませんが、グループとしては利益相反の管理の点で問題がないと言い切れるでしょうか。特に敵対的な買収であったらどうでしょうか。

さらにファイアーウォールで管理するとされている利益相反は、金融サービスの中でごく一部にすぎないという点も十分に認識する必要があります。例えば、証券会社の中でのリサーチ部署の独立性の確保、内部者取引の防止、自己勘定投資とアドバイザリー業務の管理などは、ファイアーウォール規制に頼らず、チャイニーズウォールという自己規律を中心に管理されている利益相反の事例です。利益相反の多様性だけではなく、個々の業者の取扱商品やビジネスモデル、内部管理態勢の多様性を考慮すると、機械的なファイアーウォール規制に依存するのでは限界があります。

言うまでもなく、競争力の強化には自由化が必要ですが、自由化によって多様化する金融産業を管理するためには、機械的、硬直的な規制ではなく、自己規律に基づく個社ごとの柔軟な対応が重要です。自由化と自己規律は表裏一体です。自己規律を担保するためには、業者各社の内部統制の枠組みの強化と、ディスクロージャーによる業務内容の透明性の確保を通じた市場の監視が重要になります。グループ会社間の個人顧客の情報共有の管理については、個人情報保護法によって十分に対応できているので、ファイアーウォール規制によって重ねて管理するべきではありません。

優越的地位の濫用を防止する手段として、ファイアーウォールはメインバンク制のもとでは、十分な効果を発揮できない危険があります。日本においては、依然、銀行が圧倒的な優越的地位を持っている事実は無視することはできません。銀行自身の自己規律が働かない限り、不透明な形で顧客の不利益が発生してしまう可能性がつきまといます。

一例を挙げてみましょう。どの顧客がどの銀行をメインバンクとしているかという情報は、ほぼ公然の事実で、また、こうしたメインバンクと企業の関係は、短期間で変化しません。従って、情報共有のありなしにかかわらず、系列銀行の力を背景に証券会社が営業を行うことが可能です。優越的地位の濫用や抱き合わせ販売の防止は、ファイアーウォールだけではなく、独禁法などで規制すべきです。このような違反は、銀行と証券の間で起こることに限らず、むしろ銀行内部で起こっている事例も見られます。こうした場合、ファイアーウォール規制は無力であります。

以上、主要なポイントを指摘させて頂きました。ファイアーウォール規制の緩和は金融イノベーションを触発し、リスク管理手法を高度化し、さらに金融機関の効率性を高めることを通じて、日本の金融・資本市場や金融機関の国際競争力を強化するきっかけとなると信じております。金融自由化の中で、国際競争に生き残っていくためには、自己規律に基づく臨機応変な顧客ニーズへの対応が極めて重要です。それは、顧客保護と顧客利便性を最適な形でバランスさせるアートであり、それこそがグローバルスタンダードのベストプラクティスと言えます。

ありがとうございました。

○池尾部会長

どうもありがとうございました。

それでは、続きまして、田中(浩)委員にお願いしたいと思います。

○田中(浩)専門委員

野村證券の田中です。今回このような機会を与えて頂きまして、大変ありがたく思っております。

このファイアーウォール規制に関しまして、今からお話をさせて頂きたいのですが、今、2人の委員の方が先にお話をされていましたが、私の方から今回のファイアーウォール規制のポイントをどのように考えたらいいのかというところをまず確認したいと思います。過去10年間、ビックバン以降、いろいろな規制緩和がなされておりまして、我々の認識では、欧米の規制の方とかなりイコールフッティングに近くなってきていると感じています。先ほどからいろいろと話を聞いておりますと、ファイアーウォール規制があるので、日本の資本市場の発展が阻害されているような印象を受けるのですが、ここで今言われていることには、多分2つのポイントがあるのではないのかと思います。

一つは、銀証の間の情報の共有化が禁止されているという、そういう言い方がされているのですが、これは正確には、顧客の同意なくしての共有が禁止されているだけで、お客様が共有を認めれば今でも銀証間で共有できています。したがって、先ほどから銀証グループで顧客に対してサービスがあたかもできないかのような印象を受けるのですが、これは事実関係として間違いだと思います。

あと、それから、役職員の兼職に関しましては、これは情報の共有が、顧客の意に反して共有ができないのであれば、この兼職というものもおのずから制限されることになると思います。

その2点を踏まえた上で、私どもの考え方をご説明したいと思います。

まず、基本的な考え方といたしまして、規制緩和をすることにより、市場機能を活性化するということに関しては大いに賛同するものですが、元々このファイアーウォール規制というものがなぜ入ったのかということに関しまして、証券会社の経営の独立性ですとか、健全性の確保、こういったものを確保するといった点から入ってきているということを忘れてはいけないと思います。

具体的には、ポイントとして2つの視点が重要であると考えています。マル1利用者の自由な選択を確保すること、公正な競争を通じ、金融イノベーションを促進させ、一層の利用者メリットの向上を図ること、マル2優越的地位の濫用や利益相反の防止のために必要な措置を講じること、及びその規制措置の実効性確保のため、当局による監視体制を充実させること、こういうことだと思います。

まず、利用者の自由な選択の確保ということに関して説明をさせて頂きたいと思います。

現在、銀行グループ、銀行の方で、証券業務を銀証一体で行うことがほとんどできるようになっております。同じ名前を使って営業をする、共同店舗、あるいは銀証の役職員の顧客への共同訪問、こういったものが認められております。また、商品の販売もできるようになっています。また、顧客が望めば、書面による同意を得て、銀行から証券に非公開情報を提供することが可能になっております。ですから、先ほど申し上げたように、情報の授受が禁止されている訳ではなくて、顧客の同意を得て、情報を授受することができるようになっております。

こういった中にあって、顧客が望んでいない場合でも勝手に情報が共有できるようにしろというのが、先ほどの委員の方々からの主張につながる訳ですが、この顧客が望んでいない中で情報の共有をしたらどうなるかということを考えますと、例えば、個人の場合ですと、住所、氏名、年齢、性別、勤務先、家族構成、年収、預金残高、融資状況、有価証券等の取引状況、機微情報なども、仮に銀行が管理している情報があれば、そういうものが、銀行のグループ各社の中で共有が可能になるということになります。

先ほどから、個人情報保護法で保護されているというふうな言い方をされていますが、この個人情報保護法の規定の中には、グループ間で情報を共有する場合、顧客に通知するという方法で同意をとるというのもあるのですが、あともう一つは、顧客が容易に知り得るような状況で情報開示するということでも認められます。従いまして、ホームページ上に、こういうお客様の情報をグループ間で共有させて頂くということを載せることによって、情報共有が可能になります。そういう面では、先ほどから個人情報保護法で保護されているというのは、正しくはないというふうに思います。

法人についても同じように、情報の共有化が、繰り返しますが、現状では顧客の同意があればできる訳ですが、同意もなくやりたいというのは、現況では適切ではないと考えます。

それから、優越的地位の濫用に関して説明させて頂きたいと思います。2年ほど前、平成17年12月に公正取引委員会からメガバンクの一つに対して、排除勧告がなされております。これは、融資先の法人顧客に金利スワップの購入を提案し、金利スワップを購入することが融資の条件である旨又は金利スワップを購入しなければ融資に関して不利な取り扱いをする旨を明示又は示唆することにより、金利スワップの購入を要請し、金利スワップの購入を余儀なくされた例があったということで、公正取引委員会が排除勧告を行っております。その後、金融庁の方からも行政処分がおりています。それを受けて、その翌年、昨年4月に銀行法が改正されて、優越的地位の濫用が禁止行為として位置付けられました。

そして、その後、昨年6月に公正取引委員会が調査報告をまとめております。これによりますと、3ページ目の下の方になりますが、短期借入残高がある全国の法人事業者から無作為抽出した2,000社に対して、1,299社から回答があって、金融機関から融資の申し込みの際、あるいは融資実行後に当行の関連会社の商品、サービスを購入するように要請されたことがあるかという質問に対して8%が要請されたことがあると。また、要請された72.3%が、それに応じて購入したと。それで、要請に応じたことがある企業に対して、意思に反していたかどうかを聞いたところ、56.7%が意思に反して購入させられたと、こういうふうなことを公正取引委員会の報告書が述べております。

優越的地位の濫用については、しかるべき措置がとられて、法的な措置がなされていれば問題ないというふうに言われている訳ですが、この優越的地位の濫用の性質上、これがなかなか摘発しにくいと思います。従って、先ほどのアンケート調査で言えば、この2,000社の中で43社が、意に反して買わされていると答えてはいる訳ですが、それは全然摘発されていないというのが実態になっています。

こういうものを踏まえたときに、実際に規制の実効性というものを強化していくために、公正取引委員会や金融庁の調査、検査に加えて、証券取引等監視委員会による調査、検査というものを可能とするような枠組みが必要ではないかと考えます。

次に、利益相反及び役職員の兼任について触れたいと思います。

この利益相反に関しましては、従来、十数行あった都市銀行の再編を受けて、3つのメガバンクが登場した訳で、業務範囲も非常に拡大しております。そういう面では利益相反の可能性というのは、非常に高まってきており、そういうことを踏まえた上での対応というのが必要だと思います。役職員の兼任についてですが、確かにアメリカの方では兼任というものは規則上認められております。ただ、現実には大手の金融機関におきましては、この兼職の事例というのはほとんどございません。と言いますのは、顧客から見て利益相反の疑いを受けることがあるということで、実際には行われていないという形になっております。

それから、5番目のグループ経営管理について触れたいと思います。先ほどからのご指摘で、コンプライアンス管理、あるいはリスク管理、こういうものがファイアーウォールがあることによってできないというふうな指摘がなされておりましたが、先ほど事務局の方から説明がございましたように、適用除外承認制度というものが設けられております。当野村ホールディングスの方も適用除外申請を出しておりまして、認められております。従いまして、ファイアーウォール規制がございましても、きちんとこういったものは管理できるような状況になっております。現在のところ、銀行の方での申請はなされていないようなことを聞いております。

以上の点を踏まえまして、3点提案させて頂きたいと思います。「顧客が望んでいないにもかかわらず、顧客情報の共有化というものは認めるべきではないだろう」というのが1点目で、2点目は、「金融商品取引法において、優越的地位の濫用を禁止行為として規定するとともに利益相反行為の防止のための体制整備を義務付ける」。3点目は、「金融商品取引業者(証券会社)による親銀行等の影響力を利用した不当行為等の有無について、調査に必要な範囲で、証券取引等監視委員会が直接親銀行等を含めた検査が可能となるような体制整備が必要である。これによって弊害防止措置の実効性をより高めていく」。

以上でございます。ありがとうございます。

○池尾部会長

どうもありがとうございました。

以上、お三方は金融サービスの提供サイドの委員の方だったんですが、最後に、ユーザーサイドといいますか、島崎憲明委員にお願いしたいと思うんですが。

○島崎委員

ありがとうございます。

これから、私ども住友商事がこれについてどう考えているかということを、申し述べさせて頂きます。

私は現在、経団連の資本市場部会長もやっておりまして、そこでの議論はまだこれからも必要であればやろうと思っていますが、今回はあくまでも私どもの意見ということで、ご説明させて頂きます。まず、初めに私どもが利用している金融サービスについてご紹介をしまして、その後、本件にかかわる我々の考え方を説明したいと思います。

私どもは、金融取引という観点からは、国内におきましては、銀行を中心とした金融機関からの借り入れ、それから社債、CPの発行による資本市場からの直接調達を行っております。また、海外におきましても、金融機関からの借り入れに加えまして、ユーロ・ミディアム・ターム・ノート、あるいは欧州・米国におけるCPプログラムも利用して、デットを調達するということをやっております。また、エクイティにつきましても、現在、私どもの株主構成は4割が外国人ということでございますので、そういう意味では、グローバルにエクイティの方も調達しているという状況であります。

また、その他の金融サービスとしましては、預金の取引ですとか資金決済取引に加えて、最近ではM&A関連のアドバイス、あるいは投資家に対する情報提供等のいわゆるIR活動のサポートなど、国内外を問わず、広く金融サービスを利用しております。現在、私どもの資金調達のトータルは5兆円ほどですが、このうち、デット関係で3兆4,000億円ぐらい、エクイティで1兆7,000億円と、こういうレベルでございます。

銀証分離のファイアーウォール規制における情報共有に関しましては、私どもでは案件がまいります都度、必要に応じて取引金融機関に対して個別の承認を行っておりまして、現在まで、包括的に承認したものが2件あります。限定的にプロジェクト・バイ・プロジェクトで情報共有を承認したものが24件という状況で、最近そういう要請が増えてきているということでございます。

欧米におきましては、同一の金融グループ内で認められている非公開の顧客情報の共有というものが、日本国内では制限されているということから、その都度、金融機関に対して個別の承認を行っておりまして、海外では一体的なサービスを享受できることと比較すると、お互いに非効率で不便なプロセスとなっている訳でございます。

銀証分離ファイアーウォール規制の見直しにより、こうした不便が払拭されると思いますけれども、その結果、我々ユーザーがどのような総合的な、複合的な金融サービスを受けられるのかという点につきましては、漠然とバランスシート全体にかかわる高度かつ複合的な提案が証券・銀行から受けられるのではないかという印象がありますけれども、現状、具体的なものが見えてきていないというのも、事実でございます。

一方で情報を共有されて、我々は何を失うのかということについては、実際問題、あまりないのかなという印象でございまして、高度な複合的サービスが期待できるのであれば、そういう方向でいくべきではないのかなというのが基本的な考えです。先ほど来、懸念検討して、個々にいろいろご説明があった点については、それぞれ対応が可能ではないかと思います。また、もう一つ高いレベルで、一企業を超えて考えた場合には、ファイアーウォールの見直しが、いわゆる我が国の金融サービスの向上につながり、かつ金融機関の国際競争力の向上にもつながってくるということは、私は賛成できるところではないのかなと、こう思っております。

それでは、もう少しネガティブサイドというか心配している点、ファイアーウォール規制の見直しに関して懸念される点について申し上げたいと思います。

先ほど来ご指摘がありましたけれども、ファイアーウォール規制があるがゆえに、最近、ある証券会社が幹事を務めて、増資によって調達した資金で幹事証券会社の親銀行からの借り入れを返済したという、欧米から見れば、利益相反ではないかと疑われるような事象が結果として生じてしまったという記事を読みました。今日のように、金融機関がグループ化していくという時代におきまして、ファイアーウォール規制がかえって、この時代に合っていないという面もあるんではないかなということを示唆する事象であったと思います。

ただ、利益相反ですとか優越的地位の濫用の防止について、手放しにこれらにかかわる規制を緩和することについては若干懸念を感じておりまして、インサイダー情報の取り扱い等、コンプライアンス遵守は当然としまして、規制を見直す際の留意点、方向性について、3点ほど申し上げたいと思います。

まず、一つは、貯蓄から投資への流れを本物にしていくには、この優越的地位の濫用について、大企業についてはあまりそういうことは問題ないと思いますけれども、特に中小企業や個人に対する配慮を十分に考えていく必要があるのではないのかなと思います。

2つ目に、当局からの規制もさることですが、国際的な視点を踏まえれば、やはり金融機関の自己規律型の対応、例えば金融機関みずから利益相反ですとか、優越的地位の濫用の防止策を策定して開示し、その実行状況を当局がモニタリングというか、検査するというような方法も考えられるのではないかなと思います。先ほど、チャイニーズウォールの話がございましたけれども、そういう自己規律というのがまず大事なのではないのかなと思います。

私どもは金融機関の自主管理に期待しておる訳ですけれども、やはり金融機関の役職員の個々人の意識が非常に大事だろうと思います。そういう趣旨を踏まえて、個々人レベルでの意識、この辺のところの教育ということを考えていく必要があろうかと思います。

先ほど、事務局の方から銀証分離の立法趣旨について3点お話がありましたけれども、その一つに銀行の財務健全性の確保というものがございました。最後にこの点について申し上げたいと思います。これはファイアーウォール規制とか利益相反の問題とは関係ありませんけれども、銀証分離の主旨の一つである、証券業務に関わるリスクが銀行に預金を置いている企業なり個人に及ぶおそれをいかに回避するかということについては、ファイアーウォール規制を見直した場合にどういう建て付けで、そういう仕組みを考えていくのか、例えば資本関係上、縦につなげていくのか、アメリカ的に横にしていくのか等々の検討も要るのではないかと思います。

要しますと、銀証分離の見直しの議論につきましては、今申し上げましたような銀行財務の健全性の確保の観点も踏まえて、預金の取り扱いをしておる金融機関に期待される預金者保護というか、そういうことも十分配慮して進めるべきではないのかなと思います。

以上でございます。

○池尾部会長

どうもありがとうございました。

それでは、お待たせいたしましたが、自由討議に入りたいと思いますので、委員の方々、どなたでも結構ですので、ご意見があれば。吉野先生、それから上柳委員。

○吉野委員

先に失礼しなくちゃいけないものですから、3点ほど申し上げたいと思うんですけれども、今、やはり銀行と証券が分離されているために、なかなかリスクマネーをうまく提供できていないんではないかと思うんです。

その例としましては、例えば銀行があるベンチャー的な中小企業に貸したいと思って審査をしますけれども、そこで結局は自分が貸せない。しかし、その情報を関連の投資信託とかファンド会社に流せない訳ですから、そうすると、その中小企業というのは、そこでひょっとすると死んでしまうかもしれない。つまり、そういう銀行がせっかく審査して、その情報を関連のホールディングカンパニー、下のファンドとか投信に流してあげれば、別の仕方でそういう中小企業などにお金が流れる可能性があると思うんですが、現行ではそれができないということがあると思います。

それから2番目は、アジアに出ていかれた場合に、リシプロシティーがありますから、ヨーロッパの金融機関と比べると、日本の金融機関がどうしても劣ってしまうと。つまり融資と証券業務を分けなくちゃいけない訳ですから、やはりアジアとか、そのほかの国で現状でどういうふうに劣っているのかというのも見ておいて頂く必要があると思います。

それから、3番目は、先ほどいろいろ弊害の例があったんですけれども、恐らく諸外国で、ヨーロッパの辺りはいろいろな弊害が起こっているんだと思うんです。そういうこれまでの弊害の例をやはり情報交換して頂いて、それから、頻繁にそれを交換するということが重要だと思います。弊害は起こらないということはない訳ですから、必ず起こると思うんですけれども、その弊害が起こったときにどういう措置をするか。それから、やはり継続的に諸外国との情報を共有することによって、この制度を改善していくということが私は重要じゃないかと思います。

○池尾部会長

どうもありがとうございました。

それでは引き続き、上柳委員。

○上柳臨時委員

今の吉野委員のご発言の3番目に賛成で、その観点からの質問なんですけれども、ただ、吉野先生が言われた1番目については、今でも最初に事務局の方からもご説明がありましたように、証券仲介業が入って、さらに規制緩和がされているので、お客さんの方が望めば十分できるんじゃないかというふうに思っているのが意見です。

質問は大きく分けて2点あるんですけれども、ヨーロッパの状況で、事務局の方から頂きました資料1の15ページのEUのことを見ますと、向こうの方はユニバーサルバンキングだと思うんですけれども、グループ内外を問わず、お客さんの同意がなければ個人情報の共有ができないというふうになっていまして、國部さんとポール・クオさんに伺いたいんですけれども、これは実際にどういう話になっているのか。

私なんかが心配しますのは、銀行というのは、ほとんど全ての私たちの生活の情報を握っている訳ですね。どこで何を買った、幾らで買った、幾らぐらい給料があるか、そういう個人情報の共有について、EUはやはり警戒心を持っているんじゃないかと思いますので、ぜひ実態を伺いたい。特に、ポール・クオさんには、EUに対して、これの改善をどのように求められているのかというところもお伺いしたいと思いますし、関連ですけれども、アメリカの状況について、ちょうど昨日来ました『月刊資本市場』の11月号の24ページに、みずほ証券の漆畑さんが書かれているんですけれども、アメリカは確かに規制緩和されたけれども、まだ議会でも反対論が強いというふうに聞いておりますので、多分、IBAといいますか、ポール・クオさんの方ではそのような情報をよくご存じだと思いますので、アメリカの状況についても教えて頂きたいと思います。

2つ目の質問は、ポール・クオさん、それから國部さんのお二人に伺いたいんですけれども、本当に顧客の方が望んでいるのかという点です。先ほど、島崎さんの方からのお話があったんですけれども、私、たまたま産業構造審議会の方で、資料として、「企業の資金調達の円滑化に関する協議会」という人たちが平成17年の5月にアンケートをされたところ、これは企業の方のご回答ですけれども、銀証グループ内での顧客情報の共有について認めるべきでないというふうに回答された社が半数以上あると。企業の方ですから、銀行から社債の取り扱いを受けるとか、あるいは銀行による有価証券引き受けの勧誘だとか仲介だとか、それについては認めるべきだという意見も結構あるんですけれども、顧客情報の共有については、大変抵抗がある。これはやはり、結局日本のように銀行がメガバンク化している中で、企業の方でもその情報共有には大変警戒的なのではないかと私は思っております。本当に望まれるお客さんは、自分でオプトインで同意をして情報共有を認めていって、トータルサービスを受ければいいというふうに思うんですけれども、その辺りの顧客ニーズをどのように把握されているのか、それが第2点です。

以上です。

○池尾部会長

國部さん、お答え頂けますか。

○植田委員

関連なんですが。

○池尾部会長

では、どうぞ。先に植田先生。

○植田委員

今の情報の共有の問題なんですけれども、上柳さんがおっしゃった点と非常に関係するんですが、やや違う視点で、複数の委員から、銀行経営の方からは、今の体制では情報のスムーズな利用はできないという趣旨の話がありまして、田中さんからは、顧客の同意を得てやればいいので問題ないのではないかという趣旨の話があり、その上で、島崎さんからはユーザー側から見て、同意を得るというプロセスに多少のコストも感じられるというお話があったんですが、私ども取引の現場にいない者としましては、顧客の同意を得てやるというプロセスが規制当局との関係も含めまして、どれぐらいコストがかかって、従って効率的なサービスの提供の支障となっているかという点を、先ほどの議論も踏まえまして、もう少し具体的に詳しく説明して頂かないと、ちょっと分からないまま進んでしまうなという気がしたんです。

○池尾部会長

ありがとうございました。

では、その辺りも含めて、可能な範囲で國部委員からお願いします。

○國部専門委員

それでは、私の方からご説明させて頂きます。まず、ヨーロッパの個人情報の話でございますけれども、グループ内での個人、法人顧客の情報共有には顧客の同意が必要ということでございますが、私の知る限りにおいて、実務的にどう対応しているかというと、取引を開始するときなどに徴求する包括的約款に情報共有の旨を盛り込むことで対応しているというふうに聞いております。

それから2つ目に、頂いたコメントの中で、産業構造審議会のレポートがございました。これはちょっと私も見てみたんですけれども、レポート、調査の詳細を存じ上げている訳ではございませんが、同小委員会の資料を拝見する限りにおいては、例えば、ファイアーウォール規制が見直しされたときのメリットについての議論があまりなされていないのかなという印象も受けますし、また、先ほど上柳委員がおっしゃられた通り、各論のところで銀行が株式の取り扱いとか、有価証券の引き受けの勧誘・仲介とか、そういうものは認めるべきだという意見が多いということも、その中に含まれておりますので、このグループ内での顧客情報の共有を認めるべきでないというのが、どういうふうに深められたアンケートの結果なのかというのはちょっと分からないということでございます。

それから、3つ目といたしまして、情報共有のところでございますけれども、確かに事前の同意を頂戴すれば対応はできる面もある訳ですが、まず一つは同意書を頂戴したとしましても、例えば銀行の職員と証券の職員が一緒に行くということになる訳ですが、例えば、欧米の大手金融機関においては、証券会社に籍を置いて、その人が一体的にサービスを提供するというようなことができる訳です。クロスマーケティングが認められ、それから兼職規制が認められ、情報共有ができるようになれば、日本でもそういった形の対応ができるようになると。すなわち、企業の活動がグローバル化して、またニーズもさまざまなニーズがある中で、総合的な提案をするためには、そういったことが必要ということでございます。

それから、同意書につきましては、ほかのメガさんも同じような感じだと思いますが、私どもの状況を申し上げますと、やはりなかなか同意書を頂けない企業さんも多うございます。それは、例えば、企業さんにとってニーズが本当にはっきりしているということであれば、同意書を出すのはやぶさかではないんでしょうけれども、例えば、我々が証券の商品を説明しても、具体的な細かい条件等の説明はできない訳で、ニーズがはっきりとしていない段階で同意書を出すことについては、各社さんの社内でなかなか説明がしにくいという事情もあるやには聞いております。このように、なかなか同意書を頂けないケースも多いということでございまして、これだけ企業の活動がグローバル化した中で、私どもも銀行・証券一体となって、本当にいい商品・サービスを提供していくためには、こういった手当てが必要と思っているところでございます。

○池尾部会長

クオさん、いかがですか。

○ポール・クオ参考人

いや、今のに足すことはございません。

○池尾部会長

それでは、島崎さん。

○島崎委員

今、上柳委員の方から産構審のアンケートの話がありましたが、私どももこのアンケートに応じた会社なので、この点に関して申し上げたいと思います。

実は私どもも、当時アンケートが来たときに、かなり慎重な意見を出しています。これはアンケートの聞き方の問題もあるのかなと思いますし、実際に回答を作成したのが資金調達を担当している部署で、いわゆる証券投資ですとか、M&Aですとか、広くそういうことをやっている部署でもなかったということでありまして、情報共有について望みますか望みませんかということになると、どうしても慎重な意見が出てきている訳です。

恐らく、先ほどあった国際的な競争力強化とか、そういういろいろな意味合いをきちっと説明した上で、どうですかとなれば、企業の方の回答も変わってくるのではないのかなという感じがいたしますので補足いたします。

○池尾部会長

それでは田中委員。

○田中(浩)専門委員

先ほどから出ている議論の中で、ちょっと現状の誤解等があったらいけないと思いますので、ちょっと私の方から幾つかコメントさせて頂きたいと思いますが、最初に吉野委員の方からご指摘のあった、銀行が貸そうと思ったけれども、ちょっと貸せなかったというケースですが、現在ファイアーウォール規制がかかっているのは証券会社とそれ以外のグループ会社との情報のやりとりですので、証券を除くグループ会社間での情報共有化は顧客の同意なく可能になっています。

それから、くどいようですけれども、お客様から同意をもらえば情報の共有化はできます。

あと、それから、クロスセリングだとか、この商品の提供、サービスの提供のところに関しましては、銀行と証券の役職員が同伴して外交することはできますので、幾らでもこれはできます。ただ、何ができないかといえば、顧客の同意なくして非公開情報を銀行から証券に渡しちゃいけないという規定があるだけで、何かをお勧めするに当たって勧めちゃいけないということは、何の規定もありません。

それから、あと、銀行本体でできない業務は何があるかというと、基本的には株式、債券の引き受け、これができないという規定があります。これはアメリカと全く同じであって、それ以外のことは何でもできます。それで、債券、株式の引受けに関しては、系列の証券会社がそれは当然できますし、それをやるに当たって、銀行とタイアップして勧めたいのであれば、お客様の同意を得ればいい。これは同意のコストがどうかということに関しては、形式的には、要するに紙といいますか、契約書1枚に、事業会社さんの方が銀行から証券にこういう非公開情報を伝達することを同意するという、それを入れてもらえばいい訳で、それが入らないとすれば、お客様が望んでいない訳ですから、それを顧客の同意なく全て認めるというのはいかがなものかなというふうに思います。

あと、アメリカではこういう規制がないということですが、現実の運用は、これとは違っておりまして、例えばシティで口座を開設しようとした場合、規制上グループ間で情報の共有は可能であるものの、口座開設の書類の中にきちんとオプトアウトの条項が入っていて、グループ間での情報共有を制限するという項目があって、そこにチェックすれば、情報共有はなされないことになります。一旦なされなければ、ずっとなされない。ですから、そこにチェックせず、情報共有を拒否しなければ、グループ間で情報は共有できることになりますが、その場合でも1年ごとに本当にそれでよろしいですかという通知が来ますので、これは日本でいう同意書の位置付けよりももっと厳しい運用になっているということができます。

それから、先ほどの説明のときに不足していたのですが、現在の個人情報保護法では、先ほど申し上げましたように、グループ間で共有するに当たっては、ホームページにその旨掲載すればよいとされています。仮にファイアーウォール規制が緩和され、顧客の同意なくして非公開情報が共有できるということになりますと、銀行さんがやるかやらないかは、それは分かりませんが、ホームページにグループ間で個人情報を共有すると掲載すれば、法的にも何の制約もなく、銀行さんが持っているいろいろな顧客情報が全部系列の証券会社に行くことになります。例えば、預金残高ですとか、職業ですとか、そういうある意味大口顧客リストみたいなものが、自動的に証券会社に行く。証券会社はそれを受けて、いろいろな有価証券の販売を勧誘するということができるようになるということです。そうした状況ですので、ここで、情報の共有が禁止されているという言い方をするのは非常にミスリーディングだと思います。

以上です。

○池尾部会長

では、金丸委員。

○金丸委員

いわゆる両陣営の方々からお話を聞いていたんですけれども、私の経験と言いますか、私はこの委員の中でも自分で会社を経営しておりまして、それから個人資産も多少は有しておりまして、かなり多くの金融機関の方々とこれまでおつき合いをしてきた訳です。振り返りますと、金融ビッグバンが起き始めてから非常に大きな変化があった訳ですけれども、私は株式公開前は、メガバンクの方々と、5行とおつき合いをしておりましたけれども、数が減って、今、3行の方々とおつき合いをしておりますし、それからメガバンクの方々のプライベートバンキング部と、それから証券会社のプライベートバンキング部の方とおつき合いをしている訳です。

それほど多くはありませんけれども、利用してきた立場から申し上げますと、私は、この金融ビッグバン以降、何が起きたか、何が起きるべきだったかというと、我々日本の金融機関の方々の国際競争力が増して、かつ顧客の利便性が増すはずだった、そうでなければいけなかったんだと思いますけれども、その両方において、私はまだ全く実現できていないんじゃないかなと思っております。

ファイアーウォールの規制そのものについては、私は個人的にはそんな規制はなくてもいいと思っておりますけれども、一方で、その規制があるから、銀行の方々の競争力がそれほど高くないんだということと全く関係がないことだと私は思っております。なぜかと言いますと、今のルールの中でも、もっと勝とうと思えば勝てるはずなんです。だけども、我々の実態として印象を受けているのは、メガバンクの方々も全てフルバンキングで総合的になってしまって、ほとんど違いもありませんし、それから先ほどお話が出てましたけれども、私の下にも証券会社の方とメガバンクの方が例えばお見えになられて、それは供給サイドから見ると、私はコストもかかっておられると思いますけれども、そこで以前よりも素晴らしいご提案があるかというと、私はほとんど過去の経験ではないと思っています。ですから、経営戦略の質と実行力こそが私は本質的な国際競争力向上のポイントであって、ですから、規制を取り除くことは、そのことを高めることだということとイコールのようにおっしゃるのには違和感が私はあります。

それからあとは、多分、証券会社のお立場から見ると、特に野村證券は銀行というようなものもお持ちじゃないので、メガバンクの方々がこれ以上強くなることに対しての懸念というのはおありだと思いますが、それは私は健全な懸念ではあると思うんです。市場の中で競争なさっておられる訳ですから。ですから、私はマクロ的に見たら……、あと、すみません、もう一つは顧客の利便性について、金商法がスタートして、先ほど植田委員ですか、顧客の利便性についてといいますか、コストと見合うようなことがあったかというと、私は双方ほとんどメリットが今のところ実現できていなんじゃないかと。私の手元にある、それまで取引していた手続から見ると、もう読みもしないペーパーがどっと来て、同意をとらなきゃいけないというルールを実行しなきゃいけないので、その同意をとるためにコンタクトが増えて、私自身もコストもかかって、だけれども、その結果何が起きているかというと、先ほど申しました、以前よりも素晴らしい提案があるかどうかについては大いに疑問がありまして、私、ここ数カ月間は金融取引はもうしばらくやめておいた方がいいなと。市場も低いこともありまして、そんなことすら思うことでありまして、先ほどポール・クオさんがおっしゃられた中で、私は本質的なところは機械的になっているということじゃないかと思うんです。ですから、いろいろなルールができるんですけれども、その本質を忘れてしまって、もうどうも手続だけが機械的になってしまって、ですから、先ほどの競争力向上は経営戦略の質とその実行力であるという、その本質もやはり忘れてしまっているんじゃないかなということで、そんなことを思っておりました。

以上でございます。

○池尾部会長

すみません、佐々木委員から。その次。

○佐々木委員

今までのお話を伺っていて、これは本当にどちらのお立場も正しいというか、どちらがいいということではなく、それぞれの両者の言い分は、主張はどっちがいいかを比べても仕方がないことだなと思っているんですけれども、ただ、国際化の流れの中、あるいは自由化という流れの中で、もしそう変化していくのであれば、やはりもう一度皆さんがご提案されているように考えなくちゃいけないことがいっぱいあるんだろうというふうに思っています。

やはり自由化になって、ファイアーウォールの規制を見直すことによって、メリットの可能性というのが十分に見えた訳ですけれども、懸念は何なのかということだと思うんです。今、やはり日本では、三大メガバンクの支配が強い中で、その恩恵を正しく誠実に受けられる利用者というのがどのぐらい、本当にいるのかと。変な言い方ですけれども、大きな企業や取引の多い個人や、そういう人たちにとってはもしかすると利便性が高くなるかもしれませんけれども、中小企業、零細企業、ベンチャー企業などの小さな企業にとっては、融資の提案などをうける場合、銀行と証券会社からの提案も両方一つの会社からになると、悪い言葉で言えば、握られて、八方ふさがりになって、仮に条件が悪いものが出てきても、金融機関の数がそもそも少ないということから、あまり比較もできない。先ほどの構造の規制から行為の規制へという話がありましたけれども、実際にこの規制がなくなったときにどうやって、弱い利用者にとってもプラスの働きがあるのかということをしっかりと見守っていく必要があるんだろうと思います。

また、個人に関して言えば、やはり金融に関する一般的な知識が、欧米の市民と日本の今の市民と差があるんじゃないかというふうに思っているんです、理解度が。ですから、情報がどう共有されて、誰から何の提案が受けられるのかということがメリットに働く可能性と、やはりデメリットに働く可能性があるとすると、情報の共有に関しましては、私は今はオプトインが守られて、それもあまり包括的な沢山の契約書の中に一文入っているということではなくて、これは大変重要なことなので、皆さんが理解して、私はこういう提供を受けたいので情報を提供しますとか、あるいは、先ほどの1年ごとで、私は逆にいいんじゃないかと思うんですけれども、1年ごとに私も今度はオプトインしたいんですということを消費者の方が、あるいは中小企業も今回の提案の期間のみオプトインをしたいなどと言えるというような、少し今の実態に合った形で導入していったら弱い利用者を守れるのではないかなと思っています。

○池尾部会長

それでは、早川さん。

○早川参考人

横浜銀行の早川でございます。

基本的には國部委員がおっしゃったように、この規制の見直しについては賛成という立場をとっておりますが、地方銀行というのは、地域とこれは共存共栄、まさに運命共同体でありまして、特にリレバン、今年度からは監督指針に盛られて、その地域の中で何をやっていくのかということもコミットしている訳であります。

そんな中で、今回の問題につきまして、多くの地方銀行の経営の方々の意見を聞いてみましたところ、論点の一つであります利用者保護のところについては、若干危惧をするご意見もないではない。その背景は何があるのかということでありますが、やはり、地域の利用者の、証券業務に対する知識、理解度、あるいは成熟度、そういう面ではどうも全国平均して高いレベルにあるとは言えないというようなご意見が聞かれます。従いまして、今回の議論については、方向は賛成ですが、そのプロセスにおいては、各方面においていろいろな配慮が必要だというご意見が多いことをお伝えしておきたいと思います。

基本的にはファイアーウォールの見直しは賛成ということであります。よろしくお願いします。

○池尾部会長

どうもありがとうございました。

そうしたら、若松委員、川本委員の順でお願いします。

○若松委員

理論的には銀行さんがおっしゃるように、国際的な競争力の向上とか、そういうメリットは、考え方としては理解できます。ただ、この議論というのはさんざんされてきているので、今回金融庁さんが資料として配付されました資料2の1ページに問題点の利益相反とか優越的地位の濫用とか、その辺の懸念もこのペーパーでまとめられている通り、国民からすると不安に感じると思います。

国民が、例えばこの議論を聞いていて不安を感じるのは、先ほどから出てきた自分の顧客情報ということと、あともう一つは、要するにアメリカの例ではこうなっている、だから日本の方はまだここのところが遅れているとか、制度面の比較があるんですが、一般的に持っている情報として、アメリカの場合はやはり当局のチェック監視体制、それから要するにそれに伴うペナルティーが日本よりも非常に厳しいんじゃないかと。日本の場合は、予算面の問題もあり、当局から以前もご説明がありましたけれども、チェック監視体制の人員がまだ必ずしも十分とれていない。今後このように踏み出していった場合、一般国民が感じる懸念などを払拭できるだけのチェック監視体制を十分とれるのかと、あと金融機関さんも非常に自己規律ということをおっしゃられるけれども、内部でそれだけの体制と、それにもし万一、犯すようなものがあれば、ペナルティーとか罰則とか、言葉は悪いですけれども、そういうものを国民の不安を払拭するだけのものを十分おとりになれるのかと、こうした観点をぜひ忘れないことが、私は最終的には重要じゃないかと思います。

○池尾部会長

私も全く賛成です。

どうぞ、川本さん。

○川本臨時委員

ありがとうございます。金融機関の競争力が経営戦略の質だというのはおっしゃる通りだと思いますけれども、やはり規制のあり方が競争力を規定してくると思います。また、規制当局が意図していないのに、それがネガティブに働いてしまうような懸念もあるのではないかなと思います。そういう意味では、ファイアーウォールの規制の見直しは、不便を感じているのであれば、それは緩和する方向というのが望ましいのではないかというふうに思います。なぜかというと、現場サイドで、欧米の金融機関と日本の金融機関のそれぞれの市場での活動を拝見してきた経験から言うと、やはり取引を始めるときの包括的な約款と一回一回の顧客への書面での同意とは実務面では非常に煩雑さが違うので、そういうことの一つ一つの積み重ねで、やはり競争力に影響力があるのではないかと感じるからです。

特に、欧米とのイコールフッティングというご議論ですけれども、私が非常に心配しているのは、アジアの中でも、香港とかニュージーランドとかオーストラリアとかシンガポールとかは、皆ファイアーウォールの見直しがなされています。しかも今、韓国とか台湾とか中国もそちらの方向に移っていくというふうに認識をしていますので、そこと同じ時間帯の市場において、我が国だけが現在の規制にどれだけスティックするのかというのは、考えるべきポイントではないかと思います。

もちろん、利益相反を避けるために、欧米金融機関に見られるような内部での規律、クリアリングハウスを設けてコンフリクトを避ける仕組みというのをきっちり作る方法があると思いますので、そこは各金融機関の課題と思います。けれども、これをまたいろいろな配慮とか言って何年もかけてやっていると、またほかの国とのバランスから我が国だけがすごく遅れてしまうのではないかということを、私は非常に懸念をいたします。

以上です。

○池尾部会長

はい、どうも。

田中委員。

○田中(浩)専門委員

先ほどから何か銀証の対決というふうに言われて、何か規制論者みたいに思われているのは、非常に個人的には心外ですが、規制緩和そのものに関しては全然反対するつもりはなくて、これで賛成です。それから、今の日本の金融市場の停滞というのが、あたかも金融庁の規制がきつ過ぎるためにそうなっているかのような話になってきている部分もあるかと思うのですが、冒頭申し上げたように、私は、ここ10年間緩和が進められてきて、今の制度そのものに著しく不都合があるというようなことではないと思っています。

ただ、このファイアーウォールの見直しということで、皆さん漠然と言われていますが、主に銀行さんの方の主張というのは、顧客の同意なくして情報をグループ内で共有したいというのが多分一番大きなポイントになると思っています。

そういう面で、参加されている委員の方々に考えて頂きたいのですが、顧客の同意なくして本当にグループ間で情報を共有されてもいいのか。皆さん方、銀行口座をお持ちだと思うのですが、そこで当然口座を開設するに当たっていろいろとデータを提出する。またお金を借りていれば、もっと機微情報も含んだいろいろなデータを提供されていると思います。それがこのファイアーウォールの見直しで、同意がなくてもいいんだということになってしまうと、系列の証券会社の方へデータが来て、皆さん方のところにいろいろな勧誘の書類なども送られてくるというような、全て個人データを知った上で外交に来られるというようなことが発生してしまうことになります。

また、法人のところに関しましては、島崎委員のような大企業のところは別格ですけれども、中堅企業のところに関しては、先ほど私もご紹介した、優越的地位の実態というのはまだ存在していますので、そういう中にあって、顧客の同意なくいろいろな状況がどんどん伝わってしまいますが、それでも本当に競争上、それが一番望ましいのか。先ほど金丸委員がおっしゃったことで、一つ訂正させて頂きたいのですが、野村グループにも野村信託銀行というのがございまして、数兆円のバランスシートを持っております。海外でも銀行をやっております。本来、プロとしての競争があるべき、そこで市場というのは活性化するんだというような金丸委員のご主張だと思うのですが、この優越的地位が存在していると、そのメカニズムが歪んでしまうおそれがあるのではないかというのが私どもの最大の懸念です。きちんとした、本当にプロの証券ビジネスの専門性でプライシングがなされなければいけないところを、ローンが絡んだ、融資が絡んだところの影響で競争が歪められはしないかと。そういうことを申し上げております。

このファイアーウォールの規制の緩和というところにおいて、もう少し、何を緩和するのかという部分に関して、今実際に主張されているのは、顧客の同意なしでの情報の共有化という観点ではないのかなと思っています。もしそうではないのであれば、その点を明らかにされた上で議論して頂けると、私としては非常に分かりやすいので、よろしくお願いいたします。

○池尾部会長

翁委員、小島委員、黒沼委員で、そろそろ時間が迫っていまので、手短にお願いします。

○翁委員

三井住友銀行の4ページのところで、銀証連携で期待することというグラフがありまして、M&A等の事業再編というのが書いてありますけれども、私はやはり日本企業はこれからどうしてもグローバルに生きていかなければならなくて、そういう意味でM&Aとか、そういうことに関するニーズというのは非常にあるのではないというように思っております。

最近の企業のCFOのアンケートなどを見ましても、やはり今や日本のメインバンクや主幹事証券に最初に相談をするというよりも、ナレッジのある、スキルのある内外の投資銀行や証券会社にまず相談をするというような回答が非常に増えておりまして、そういう意味では、ナレッジやスキルというのも、ある程度経験や実績がなければつかないでしょうから、やはり競争条件を整えていくということが重要なんではないかということが1点目です。

それから、2点目に、銀証複合した資金調達とか、そういったニーズにつきましては、やはりクロスマーケティングということに関しても一緒に、総合的に考えていく必要があるんではないかと思います。現在は、やはり発行体を取引対象とする営業の分野については引き続き制約が存在していると承知していますので、そういったクロスマーケティングについても、総合的にこの中で検討していく必要があるのではないかというふうに思っています。

それから、3点目ですが、やはり利益相反、それから情報を間違った扱いをするということについては、自己規律が重要でございますけれども、また同様にどういった問題を起こした場合にどういったペナルティーがあるのか、それが分かりやすいような形で予測可能性のあるような形でそういったペナルティーについてきちんと議論していくということが、規制体系として重要になるのではないかと思っております。

○池尾部会長

それでは、小島委員。

○小島委員

私は一つだけ、個人情報保護法とファイアーウォールの規制との関係です。皆さんからご意見を伺いますと、現行の一般的な個人情報保護法と、ファイアーウォール規制との関係では、事前に本人の書面による同意が必要であるが、この書面による同意ということをどう考えるかということだと思います。やはり、ここは現行の個人情報保護法でも事前の同意というのが前提になっていますので、この前提をなくして、グループ内での情報の共有化というのはできないということになっています。

その際に、ファイアーウォール規制の中ではより書面による同意ということが前提になっておりますが、その書面による同意というのが、どれだけコストがかかるのかということと、先ほどのEUの事例で示されたような、包括的な約款の中で同意をとるということとの違いがどれだけ大きいのかということについても、議論が必要ではないかと思っています。

○池尾部会長

ありがとうございました。

では、黒沼委員、お願いします。

○黒沼委員

ファイアーウォールのうち、利益相反への対応についての点なのですけれども、クオ参考人が指摘されたように、現在の規制を見ますと、例えば有価証券を発行させてその手取り金で融資を返済させるといった利益相反について、現在の規制では知らなければいいとか、顧客に説明すればいいといったルールで、それが、しかも一律にかかっているという状況です。これが必ずしも適切でないということはよく分かるし、むしろその点では各金融機関の自主的な自己規律に基づくベストプラクティスの実施が有用であるというのは、大変説得力のあるご議論だと思います。

また、國部委員のご報告でも金融機関の自主的取り組みと監督当局のモニタリングを組み合わせることが重要だという指摘がなされています。

ただ、こういった利益相反にかかるルールを各会社に定めさせて、内部ルールを決めさせて、それに基づいて監督していくことによって、本当に利益相反を防止できるうまいルールを発見し、それを適切に執行できるのだろうかという点に若干の疑問を感じます。

というのは、今のような利益相反のルールでは、例えば発行者の信用が悪化した場合に株式を発行させて融資を回収するのが最もやってはいけないことな訳です。しかし、そういう場合こそ、銀行にとってはやることにメリットがある訳で、そういう場合にはできるというルールを作った場合に、そのルールに従っていればいいということになるとおかしな訳でありますから、各金融機関にルールを決めさせることで利益相反のルールがうまく機能するかという点については慎重に検討する必要があると思います。

○池尾部会長

野村委員。

○野村委員

今の点に関連しての発言と、あと、情報の共有の関連で、2点お話ししたいと思います。今、黒沼委員からお話がありましたけれども、自己規律の方についてはどんな規律でもいいということにはならない訳でありまして、当然ベストプラクティスであるかどうかは当局が監視することになるはずですので、そういう意味でご懸念のような自主ルールではだめということに恐らくなるだろうと思われます。ただ、それが果たしてエンフォースできるかどうかというところは、先ほど来からちょっとご指摘がありますように、金融庁の力量にかかっていますので、ここはぜひご検討頂ければというふうに思います。

情報の共有の件なんですけれども、先ほど来からの議論をいろいろ伺っていますと、やはり消費者の情報というものと、ビジネス上の情報というものの議論がごちゃごちゃになっているように思われます。この点はちょっと切り分ける必要があるかなというふうに思っていまして、個人が融資を受けているような場合についての情報は、ビジネス上流用される必要性は乏しい訳でございますので、そこはちょっと切り分ける必要があるかなというふうに思っています。

他方において、リスク管理の方の観点から見た場合に、統合的リスク管理等々の関係の中で、むしろ情報はグループ内で共有した方がいいという場合がございますので、この部分についてまで、今ファイアーウォールがかかっているというのはちょっと望ましくないと考えます。これは実際に新しいグループを形成する、例えばM&Aなどで、これまで別な事業体であった証券会社が例えば他の証券会社を買収しているようなケースは最近も多くなってきていますし、外資の買収も多くなっていますが、そういう観点の中で、先進的なリスク管理をやろうと思ったときに、ファイアーウォール規制が問題になるというのは、本末転倒のような感じがしますので、そういう意味では、そこのところは必ずしもオプトアウトの規制なしに情報共有ができるというやり方をしたほうがいいんじゃないかなというふうに思います。

○池尾部会長

田中委員。

○田中(浩)専門委員

たびたびすみません。今、野村委員が言われたことの最後のポイントに関して、ちょっと誤解があるのではないかなと思うのですが、リスク管理及びコンプライアンス管理、こういったところに関しては適用除外承認制度というのがありまして、これを申請し、承認を得ることによって、可能になっています。

○野村委員

適用除外の承認制度があることは承知しております。ただ、先ほどから金丸委員もおっしゃっておりましたけれども、規制があると何がなんでも遵守しようという動きがでるのも事実です。私も弁護士事務所に所属していますが、金商法バブルみたいなものが起こっていまして、虫眼鏡で文字の大きさ(ポイント)を一生懸命みんなで見て、大きいとか小さいとかやっていて、大変なビジネスチャンスを得ている訳でございます。つまり、規制があればそれを遵守しようという圧力がかかるわけで、そのような状況の下で適用除外を申請しようという動きにはなりにくい。なぜなら、認めてもらえない可能性がある以上、申請することが薮蛇になるといった雰囲気もありますし、金融庁からご返答を頂くまでに時間がかかるといった問題もあります。そのため申請しにくいというのが事実だと思います。確かに、認めて頂けるかどうかは、ガイドラインに基準が書いてあるんですけれども、その基準に該当するかどうかは、なかなか分かりにくいというところがあって、やや敬遠されている部分もあろうかと思います。野村證券さんが適用除外の申請をされていることは、よく存じ上げております。

○池尾部会長

そろそろにさせて頂きたいんですが、ちょっと私一言だけ、あまり発言すべき立場じゃないかもしれませんが、やはりずっと議論がありましたように、問われているのは、金融機関の側の自己規律のレベル、あるいはマーケットの規律のレベルだというふうに思うんです。公的規制と自己規律というのがあって、何か公的規制の方が厳しくて、自己規律の方が甘いんだという、もしもそういう暗黙の前提があると、それはちょっと撤回させて頂きたい。本来的には自己規律の方が厳しくなければいけないのであって、従って、公的規制が緩和されれば何でもできるようになるという話ではなくて、田中委員もおっしゃいましたが、運用の実態というのは、自己規律の結果決まる面がある訳ですから、当然自己規律の方が厳しいんでしょうねということで、それをただ、金融機関に期待するだけじゃなくて、自己規律の厳しさを裏付けるだけの監督当局のモニタリング体制が組めるのかどうかという問題になる訳ですが、当然自己規律の方が厳しい。

公的規制というのは、むしろミニマムスタンダードを決めているのであって、実際はそれよりも厳しいものを自己規律として課すはずだということが大前提でありまして、そうしたときには、公的規制というのは一律的、機械的になりやすいので、より弾力的で実情に合わせた、しかし厳しい自己規律でやってもらった方が望ましいじゃないかということで、機械的になりがちな公的規制については緩和することが考えられるというロジックになると思いますので、当然、厳しい自己規律が大前提で物事が進むというふうに、我々が納得できれば、規制緩和ということで意見が一致できるんだと思うんですが、そこがまだやや疑念を持たれる委員も多いということで、自己規律をバックアップする監督当局のキャパシティーというのも必ずしも十分ではないんじゃないかという、そういうところが論点だというふうに、今日の議論は伺いました。

それで、今日の議論だけで結論が出る話ではありませんので、次回以降もこのテーマにつきましては、引き続きご審議頂くことにさせて頂きたいというふうに思います。

ということで、よろしいでしょうか。ほかにご発言、特になければこれまでということにさせて頂きまして、最後に事務局の方からご連絡等をお願いいたします。

○池田市場課長

次回の第一部会でございますけれども、11月21日、水曜日の午前10時から12時ということで開催をさせて頂きたいと思います。

次回は、まず前回までの議論を踏まえまして、取引所関係の問題、具体的にはプロに限定した取引の活発化、それから取引所の取扱商品の多様化等に関するご議論を、部会の前の方ではやらせて頂きたいと思います。そして、残りました時間で、引き続きファイアーウォール規制の見直しについて、ご議論を頂きたいと考えております。前半はそうしたことで、第一部会固有の問題を取り上げますけれども、ファイアーウォール規制についてもご議論頂きたいと考えておりますので、第二部会の委員、臨時委員の方も、ご関心の方には、ぜひ引き続きご参加を頂きたいというふうに考えております。

以上でございます。

○池尾部会長

どうもありがとうございました。それではこれで終わりにさせて頂きます。

以上

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