金融審議会金融分科会第一部会(第52回)議事録

日時:平成19年12月18日(火)10時02分~10時48分

場所:中央合同庁舎4号館9階 金融庁特別会議室

○池尾部会長

 それでは、定刻を過ぎましたので、ただいまから、金融審議会金融分科会第一部会、第52回会合を開催いたしたいと思います。皆様にはご多用中のところご参集頂きまして、誠にありがとうございます。

いつものとおり、本日の議事も公開の形で行わせて頂いております。

本日は山本副大臣、戸井田政務官にお越し頂いております。渡辺大臣も少し遅れていらっしゃる予定です。

それでは、早速ですが、本日の議事に移らせて頂きたいと思います。本日は、まず法制ワーキング・グループにおける審議の結果につきましてご報告頂きます。その後、このワーキング・グループの報告の内容や、前回の会合における委員の皆様からのご意見等を踏まえて修正いたしました第一部会報告(案)を事務局から説明して頂いて、それらをまとめてご審議頂きたいということです。それで、本日中にこれを第一部会報告として取りまとめて、渡辺大臣にお渡ししたいと考えておりますので、よろしくお願いしたいということです。

また、本日カメラ撮りをするということだそうで、その都合上、できましたら10時45分ごろに報告書をお渡ししたいということになっておりますので、よろしくご協力頂ければと存じます。

それでは、早速ですが、まずは法制ワーキング・グループ報告「課徴金制度のあり方について」のご説明をお願いしたいと思いますが、ワーキング・グループの座長をして頂きました黒沼先生からお願いします。

○黒沼委員

 黒沼でございます。10月3日の金融審議会第一部会において、課徴金制度のあり方を検討する場として法制ワーキング・グループの設置が決定され、池尾部会長から私が座長に指名されました。このことを受けまして、お手元の資料1-マル2にありますように、この分野に関係する各界の有識者にお集まり頂き、10月12日から12月7日まで、5回にわたり真摯なご審議を頂きました。その結果、お手元の資料1-マル1にありますような形で、報告書を取りまとめましたので、本日ご報告させて頂きます。

まず、報告書の内容に入る前に、簡単に法制ワーキング・グループにおける審議の経過をご説明させて頂きます。

お手元の資料1-マル3をご覧ください。第1回会合においては、課徴金制度の位置付けや検討の視点等について、ご審議頂きました。

第2回会合においては、まず証券取引等監視委員会から、課徴金制度の運用状況や実務的に見て制度上の論点となり得るもの等について、ヒアリングを行いました。その中では、例えばインサイダー取引に係る課徴金の現行の算定方法が、重要事実公表日翌日の終値を基準としているために、実際の違反行為者の利得相当額よりも低くなる事例などが紹介されました。

第2回会合の後半からは、課徴金の対象範囲と金額水準のあり方について、ご審議頂きました。具体的には、不公正取引の課徴金と発行開示書類・継続開示書類の虚偽記載、発行開示書類の不提出、継続開示書類の不提出、公開買付届出書・大量保有報告制度等の虚偽記載・不提出等に論点を分け、それぞれについて、金額の水準や課徴金の対象に含めることの是非について、ご審議頂きました。

第3回会合においては、第2回会合の論点について引き続きご審議頂くとともに、課徴金制度のその他の論点として、課徴金の加算・減算、除斥期間、審判手続等について、ご審議頂きました。

第4回会合においては、第3回会合の論点について引き続きご審議頂くとともに、これまでの審議内容全般にわたり、包括的なご意見を頂きました。

第5回会合におきましては、報告書の取りまとめに向けてご審議頂き、その後、第5回会合の議論を踏まえた修正を加え、お手元の資料1-マル1にありますとおり、法制ワーキング・グループ報告として取りまとめさせて頂いたところであります。

報告書の内容としては、現行の課徴金について、その課徴金の金額を、違反行為を実効的に抑止するためにより適切な水準に引き上げる。安定操作取引、発行開示書類・継続開示書類の不提出、公開買付届出書・大量保有報告制度等の虚偽記載・不提出等について、新たに課徴金の対象とする。繰返し違反の場合に課徴金を加算し、企業が社内の違反行為を早期発見・早期申告した場合に、課徴金を減算するなどの対応を可能とする枠組みを導入する。除斥期間3年を例えば5年に延長する等を盛り込んだところです。

詳細については、事務局より説明いたします。よろしくお願いします。

○池尾部会長

 それでは、増田さん。

○増田市場機能強化法令準備室長

 それでは、ワーキング・グループ報告書の概要について、事務局の方からご説明申し上げます。資料1-マル4という概要の2枚紙がございますので、ご参照頂ければと思います。

最初に、課徴金制度の位置付けということで、課徴金による違反抑止の実効性を一層確保する観点から、制度のあり方について所要の見直しを図るべしとされております。

証券取引分野の課徴金制度、平成16年及び17年の改正で導入され、以来、2年余りの間に29件の発動実績があったところでございます。これらの事例を通じまして、一つは課徴金制度に対する市場関係者の認識も高まっている。さらに、これまでの実績を踏まえて、制度のさらなる活用ということについても期待されていると考えられております。こういった事情を踏まえて、ワーキング・グループではここに書いてありますとおり、違反抑止の実効性を一層確保するという観点から制度のあり方を見直すということと、課徴金の適切な運用に努めていくことが重要とされております。

次に、具体的な対象範囲と水準でございます。初めに、不公正取引のうちの(1)インサイダー取引の部分でございます。ここでは、最初に座長からもお話がありましたとおり、過去の事案で、課徴金が実際の利得を下回る事例が多く見られたということが指摘されております。インサイダー取引における課徴金、現行の算定基準は、重要事実公表日の翌日の終値を基準とするということになっておりまして、重要事実公表日前に買った価格と重要事実公表日の翌日の終値の差額を利得としてとるという考えになっております。一方、インサイダー取引に係る実際の事例を見ますと、公表された重要事実が市場価格に反映されていくには、数日間かかるといったこともございまして、現行の算定方法で算定される課徴金の額が実際に違反者が得た利得を下回るというものがかなり多く見られたということが指摘されております。

こういったことを踏まえまして、報告書では違反抑止の実効性の確保の観点から、より適切な水準へ引き上げるべしとしております。具体的には、課徴金の算定基準に、重要事実公表日の翌々日以降の価格動向も反映されるような枠組みを検討すべきではないかというふうにされております。

次に(2)相場操縦等でございます。相場操縦等の1点目は、現行課徴金の対象となっている違反行為について、違反行為を実効的に抑止するために、より適切な水準への引き上げを指摘しております。

2点目、相場変動型のみならず、安定操作取引を対象に追加すべしということですが、こちらは現行、相場操縦については金商法の第159条に規定があるわけでございますが、この159条では、第1項で仮装売買等による違反、第2項で相場を変動させる行為、第3項で相場をくぎ付けにする、固定する行為、いわゆる安定操作取引というものが、それぞれ禁止行為として規定されておりますが、このうち現行で課徴金の対象とされているものは、2番目の相場を変動させる行為のみということになっておりまして、ワーキング・グループでは、この相場を変動させる行為に限らず、ほかの類型、安定操作取引等についても、課徴金の対象にすべきであるということが指摘されてございます。

次に、(3)風説の流布の関係でございます。風説の流布についても、1点目として、課徴金の水準の適切な引き上げということが指摘されております。風説の流布については、2点目として、課徴金の現行の算定では、風説の流布と相場変動の因果関係を認定していく必要があり、これが制度の発動について支障になっているのではないかということが指摘されております。具体的には、現行の風説の流布に関する課徴金につきましては、風説の流布、偽計により相場を変動させて、その変動された相場により得られた利益を課徴金として取るという仕組みになっておりまして、風説の流布によってどの程度相場が変動したかということを認定していく必要がございます。

一方で、相場というのは、非常にさまざまな要因が複合的に作用して形成されるということで、風説の流布がどの程度、相場に変動したかということは、認定することが困難ということで、これが実際、課徴金の発動を困難にしているということがございます。こういったことから、制度の機動性を確保するために、因果関係の認定について何か工夫すべきであるということが指摘されております。

次に、(4)他者の計算において行われるインサイダー取引等という点でございます。現行の課徴金の対象については、会社の計算によるインサイダー取引という特別な事例があるわけですが、それ以外は、すべて自己の計算において行われたインサイダー取引等の不公正取引のみが課徴金の対象となっております。この点について、自己の計算以外、他者の計算で行われたインサイダー取引等につきましても、課徴金による抑止が有効と考えられるものについては、課徴金の対象に加えるべきではないかと指摘されております。

次に、開示規制の関係でございます。(5)に発行開示書類、継続開示書類の虚偽記載の関係が書いてございます。指摘の1点目としては、課徴金の水準の引き上げを指摘しております。

第2点目として、訂正報告書と継続開示書類の有価証券報告書等の2種、2つの報告書に虚偽記載がある場合の調整規定の関係の指摘がございます。現行制度におきまして、記載の対象事業年度が同一の継続開示書類複数について虚偽記載があった場合、課徴金の算定にかかる調整規定が設けられており、例えば継続開示書類に虚偽記載があって、さらにその後出された訂正報告書においても、また虚偽記載が認められたという場合でも、最初の1件目に追加して2件目の課徴金をかけるということにはならず、1件分のみの課徴金が算定されるという仕組みになっております。特に継続開示書類と、その後の訂正報告書の双方に虚偽記載があるような場合、それぞれ異なる内容について虚偽記載を行っていると考えられることから、こういった場合については、追加的な課徴金の賦課を可能とすべきではないかと指摘されております。

ページをめくって頂きまして、(6)発行開示書類の不提出の関係でございます。発行開示書類については、現行は虚偽記載のみが課徴金の対象となっているわけですが、これに加えまして、発行開示書類の不提出、提出しなかった場合というのも課徴金の対象にすべきであるとされております。

同様に、(7)継続開示書類の方の不提出でございます。継続開示書類につきましても現行、虚偽記載のみが課徴金の対象となっているわけですが、これに加えて、継続開示書類の不提出についても課徴金の対象とすべきとされております。

(8)が公開買付届出書と大量保有報告書の関係の虚偽記載、不提出でございます。公開買付届出書及び大量保有報告書等につきましては、現行、課徴金の対象とはなっておりませんが、これらの書類についての虚偽記載及び不提出についても、新たに課徴金の対象とすべきであるとされております。

続いて、「3.課徴金制度等に対するその他の論点」でございます。(1)として課徴金の加算・減算でございます。まず加算の方ですが、繰返し違反、すなわち一度課徴金納付命令を受けた者が再び違反行為をしたといった場合には、通常の算定ルールで算出された課徴金の額に一定の額を加算するということで抑止力を高めていくべきではないかということが言われております。

一方、減算の場合ですが、社内のコンプライアンス態勢の充実、あるいは将来に向けての再発の防止に対する自主的な取り組みを促すといった観点から、例えば自社株売買にかかるインサイダー取引ですとか、各種開示書類の虚偽記載などについて、企業が自ら社内で違反行為を発見して、監視委員会の調査等が入る前に自ら申告したといった場合については、一定の減算措置を設けて、こういった各社のコンプライアンスの取り組みを促すべきではないかということが指摘されております。

次に除斥期間の関係でございます。現行、違反行為が行われた日から3年を経過したときは、審判手続の開始決定をすることができないというように法律で書いてございます。課徴金の手続としては、違反の端緒を見付けて、監視委員会が調査して勧告をすると、その後審判開始手続開始決定をして、審判手続をして、その後課徴金の納付命令がかかるという一連の手続が必要となり、勧告から審判手続の開始決定までの間、違反が行われた日から3年を経過すると、その事件はもはや事件として扱えないということになってございます。

一方、各種の違反行為というのは、違反があって直ちに見つかるという場合は必ずしも多くなく、監視委員会の方で事件の端緒を掴むまでにそもそも一定の期間がかかる。さらにそれに対して調査を行って、証拠の収集・分析をして勧告に至るというまでには相応の期間がかかるということから、現行の除斥期間3年間というのは、かなり短いのではないかということで、この期間について、例えば5年に延長すべきということが書かれております。

最後に、審判手続の関係でございます。審判手続に関しましては、手続の円滑、適正な実施を確保するといった観点から、例えば審判を受ける人、被審人に対して文書の送達場所等を届け出させるといった手続整備をすべきではないかということが盛り込まれております。

以上でございます。

○池尾部会長

 どうもありがとうございました。

それでは引き続き、第一部会報告(案)の修正等に関しまして、事務局から説明して頂きます。

○池田市場課長

 それでは、お手元に配付させて頂いております資料2をご覧頂きたいと思います。

前回からの修正点をご説明させて頂きたいと思いますが、まず、表紙をめくって頂きまして1ページでございますが、ちょっとここにはそうなっておりませんので追加的に修正させて頂きたいと思いますが、冒頭の2行目ですけれども、「1,550兆円を超える金融資産」というものが出てまいりますが、日本銀行の方で出された資金循環統計の速報では、6月末で1,535兆円ということが報じられておるようでございますので、ここについては、「1,500兆円に及ぶ」といった形に、現時点では訂正させて頂く方が正確かと思いますので、そのように修正をさせて頂きたいと思います。

それから、ちょっと飛んで頂きまして9ページでございます。プロ向け市場の部分になりますが、前回のご審議で、まず、神作先生から、「プロ・アマ区分におけますプロについて、とりわけ情報収集能力等の点で日本とEUでは違いがあるということに留意していくことが必要だ」というご指摘を頂きました。また、原委員からも、「情報提供の重要性というのは、プロ市場でももっと強調されるべきである」というご趣旨のご発言がございました。

それを踏まえまして、ここの点について修正をさせて頂いておりまして、マル2の2行目の「収集」というのを削除させて頂きまして、「プロ投資家のみが参加する市場であることを踏まえ、当事者間の自主的な情報提供・分析を基本とし、公衆縦覧を前提とした現行の法定開示は免除することが適当である。ただし、その場合、特定投資家の中には、発行体に対し情報提供を要求し、又は直接情報収集しうる立場には必ずしもない者が含まれうる。したがって、企業内容の虚偽又は不適正な説明・提示を防ぎ、投資家に的確な情報提供がなされることを確保する等の観点から、以下の法的枠組みを設けることが適当である」というふうに加筆させて頂いております。

次に、13ページに移って頂きたいと思います。銀証のファイアーウオールの関係のところでございますが、まず、13ページの中ほどでございますが、利益相反管理方針の概要の公表ということにつきまして、前回、原委員から、「概要ということで、あまり抽象的なものでは公表しても意味がない」というご指摘がございました。その趣旨を踏まえさせて頂きまして、「その概要をわかりやすく公表することが求められるべきである」と修正させて頂いております。

次に、14ページでございます。まず、マル2法人情報の初めの方ですけれども、前回、島崎委員から、島崎委員のご趣旨は、「単に社内稟議といった手続だけではなくて、情報の共有が質の高い金融サービスの提供につながるのであれば、顧客にもメリットがあるという趣旨である」というご指摘がありました。また、佐々木委員からも、顧客へのメリットについてのご指摘を頂きました。

これらを踏まえまして、「法人情報については、欧米では特段の規制はなく、我が国においても、情報共有がより多様で質の高い金融サービスの提供につながるのであれば顧客にもメリットがある、あるいは、…」という形で修正をさせて頂きました。

それから、オプトアウトの機会の付与の仕方について、田中(浩)委員の方から、「その仕方について、もっと文言を追加すべきである」というご指摘がございました。検討させて頂きまして、ここにありますように、「法人情報の取扱いについて、顧客に明確にオプトアウトの機会を付与することが適当である」という形に修文をさせて頂いております。

それから、下の注でございますが、オプトインの説明が不正確であるということでございましたので、「顧客の積極的な同意を得て、情報共有を行うこと」という形に修正させて頂いております。

それから、15ページになりますが、クロスマーケティング規制の部分につきまして、國部委員から、「前々回の審議等も踏まえ、もう少し前向きな表現にならないか」というご指摘を頂きまして修正させて頂いております。最後のところを読ませて頂きますが、それまで、クロスマーケティング規制についてのニーズと、それに対する問題点の指摘が紹介されておりますが、それを受けまして、「そのため、発行体向けクロスマーケティング規制の見直しについては、こうした点を念頭に置きつつ、検討を続ける必要がある」という形で書かせて頂いております。

最後になりますが、16ページでございます。課徴金制度の見直しについて、前回は空欄になっておりましたが、先ほどの法制ワーキング・グループの報告を踏まえまして、加筆させて頂いておりますので、読み上げさせて頂きたいと思います。

 我が国金融・資本市場の魅力を高め、「貯蓄から投資へ」の流れを一層確実なものとしていくためには、市場の公正性・透明性を向上させ、我が国市場に対する信頼を確保していくことが重要となる。

 このためには、金融・資本市場における不公正取引や開示規制への違反行為に対して抑止が十全に図られることが必要である。

 金融商品取引法上の課徴金制度は、こうした観点から平成17年に導入がなされ、その後の2年余の期間において一定の実績がみられる。この課徴金制度については、違反抑止の実効性を一層確保する観点から、当部会の下に設置された法制ワーキング・グループがとりまとめた報告「課徴金制度のあり方について」を踏まえ、課徴金の金額水準、対象範囲、除斥期間等につき、所要の見直しを行うことが適当である。

以上であります。

○池尾部会長

 どうもありがとうございました。

それでは、今説明して頂きました法制ワーキング・グループの審議結果及び第一部会報告(案)につきまして、ご意見等ございましたら、ご発言をよろしくお願いいたします。

○飛山専門委員

 プロ向け市場のところでございますけれども、プロ向け市場の設立に向けまして、開示面などでこれまでの考え方とか規制に捉われないで大胆な内容を示して頂いたことは、プロ向け市場の設立、開設を考えている者としては、大変ありがたく思っております。

ただ、1点お願いしたい点がございまして、これは前回にも議論があったところでございますけれども、国内会社の開示義務に係る外形基準、現在500人といっているところでございますけれども、報告書の中では10ページだと思いますけれども、マル5その他で、報告書(案)では、その外形基準につきまして、例えばということで人数を500人から1000人に引き上げるということになっております。外形基準を緩和する必要があるだろうという点については、まさにその通りであろうと思っているわけですけれども、やはりプロ向け市場の運営を考えた場合に、人数基準を引き上げただけでいいのだろうかということをちょっと心配しているということでございます。

これは前回議論があったとおりで、制度論的に言いますと、人数のカウントからやはりプロの投資家、特定投資家以上の投資家を除くということが正しい考え方ではないかというふうに私どもも思っております。プロの投資家をカウントに入れてしまいますと、プロ向け市場で取引が行われている銘柄につきまして、株主数が基準、報告書(案)では1000人でございますけれども、1000人に達した途端に、仮にその株主がすべてプロの投資家であったとしても、発行会社は有価証券報告書を提出するという必要が生じるわけであります。

こうなりますと、日本語で日本の会計基準ということになりますので、せっかくプロ向け市場ということで大胆な規制改革をしたわけですけれども、それが相当程度元に戻るということになってしまいますので、プロ向け市場の使い勝手の点で問題が出てくるのではないかということをちょっと心配しているということであります。

これはもちろん、前回、三井課長さんからもご説明がありましたように、プロの投資家とそうでない投資家の区別をするということは、なかなか実務的に大変だということも理解しておりますけれども、私どもでもプロ向け市場をつくるときに何か工夫ができないかということを検討してまいりたいと思いますので、ぜひ、ここのところは、プロの投資家は人数カウントから除外するという方向でご検討をお願いできないかということがお願いでございます。

以上でございます。

○池尾部会長

 ここの文章は、あくまで例えばであって、これを決定したという強い意味ではないという理解で。

他にご発言いかがでしょうか。

特定の論点でなく、最後ですので、ご感想でも結構ですが、いかがでしょうか。

岩原先生、どうですか。

○岩原委員

 法制ワーキング・グループの報告について、意見と申しますか、感想を申し上げるとともに、質問させて頂きたく存じます。私自身はこの課徴金の額を利得を基準に算定するという方法を今回改めるべきだというように思っておりました。あくまで、利得にこだわる以上は、結局、違法行為のやり得でありまして、課徴金を課されても、利得した分を吐き出せばいいというだけになってしまい、失うものはない。抑制の効果を期待できない訳でありますので、今回、根本的な見直しをして頂けるのではないかというように期待しておりましたので、この点、極めて遺憾でございます。

その上で、いろいろな場合について、より適切な水準に課徴金の額を引き上げるべきであるということが書かれているのですけれども、利得に課徴金が限定されるという原則をとりながら、どうやって引き上げていくのか。インサイダー取引については、算定の基準日を見直すということが示唆されていましたので、ある程度理解はできるのですけれども、それ以外の場合、どのようにして、実際上、課徴金の額の引き上げを図っていくのか、伺えればありがたく存じます。

○増田市場機能強化法令準備室長

 事務方からご説明させて頂きます。

法制ワーキング・グループでは、取りまとめとして、現行の水準からより適切な水準に引き上げるべきということをまとめて頂きまして、そういった意味では、利得について、直接的な言及はないわけでございます。

ただ、一方、その利得についてもいろいろご議論があって、利得を超えるべきというお話もある反面、刑事罰もある中で、いわゆる課徴金としてあまり高いのはどうかというような意見も、一方ではございました。

そういった中で、課徴金の額と利得との関係について、利得を気にせず取れという結論にはなっていないわけですが、一方で、例えば現行の仕組み、利得を基準にしているといっても、利得をどういうふうにカウントするか、算定するかということによって、実際の水準というのは、それぞれ異なってくることがございます。わかりやすい例として、インサイダーを例に挙げているわけですけれども、重要事実公表日の翌日を基準としてとるか、あるいはそれ以降、株価がしばらくの間上がっているような状態のときに、その上がっている状況まで含めてとるかといった算定の仕方を変えると、実質的な、課徴金の額は変わってくるということで、当方としては、あまり観念的な利得というのを、最初に頭に置いて、それを取るとか、それ以上にするとかということではなく、むしろいろいろ基準を置いたときに、今の水準より、どの程度、有意に上がっていくのかということを検討したいと思っております。そういった中での水準の見直しでございますが、インサイダーについては今言ったとおりでございます。

あと、例えて言えば相場操縦等につきましては、まだ実績はないわけですけれども、現行の算定の考え方は、相場操縦が行われた後1カ月間で確定した利得となっていまして、逆に言うと、1カ月以降に確定したものは課徴金の算定の基礎に入っていないということで、こういったものを何らかの形で算定の中に折り込むですとか、あるいは、開示書類の関係については、過去の株価の変動等のデータを基に率を決められているところですが、これについても、これまでの実績も踏まえて、新しいデータを用いるあるいは範囲を広げるといったようなことをして、実質的に引き上げにつながるような水準の見直しをしていきたいと考えております。

以上です。

○池尾部会長

 岩原先生がご指摘になった点は、私も個人的には全く同感なんですが、なかなか懲罰的課徴金という考え方は、我が国の法的伝統になじまないというふうに考えられている方々もおられるようですので、岩原先生を初めとして、一層のご努力をお願いしたいと思います。

他にご意見はいかがでしょうか。田島委員。

○田島臨時委員

 ただいまの課徴金の金額の水準についての問題で一つ質問がございます。

課徴金の加算という論点なんですけれども、これは、利得の剥奪を超えて、制裁の色彩を強く帯びるものではないかと思うのですが、これと、その利得の剥奪を原則とするということについての論理的整合性をどのように考えられたのかということをお尋ねしたいと思います。

○池尾部会長

 お願いします。

○増田市場機能強化法令準備室長

 この繰返し違反についての加算でございますが、おっしゃるような論点もあるわけですが、私どもとして考えておりますのは、繰り返しで違反をするというのは、1回目に、課徴金を納付しても、なお余りある利得があったと。要するにやった方が得だったからこそ、さらに違反行為をするのであろうということで、個々の違反による利得がどうなるかというのは、それぞれの違反によって、異なってくるものであり、繰り返しをする人は、それ以外の違反者に比べ一般的に言ってより多くの利得を得ているのではないかというふうに考えられるということから、これを基にして加算ができないかということを考えております。

ちなみに、この考え方というのは、先般の改正で独禁法の中にも入っておりまして、独禁法においても、過去10年に一旦違反を受けた人は、繰り返して違反した場合には何割か増しの加算措置をとるというふうになっております。

以上です。

○池尾部会長

 あと、ご意見ございますでしょうか。

よろしいでしょうか。藤原委員。

○藤原委員

 課徴金の件ですけれども、やはり製造業と何が違うのかというと、インサイダーの情報を使うことによって、例えば、年収が700万円の人であっても、その5年分とか10年分の年収に値する利益が一瞬にして儲かってしまう怖さです。これがファンドの場合、インサイダー情報を使うことで、何百億円という額を一瞬にして儲けてしまうことがあるのです。そういう状況をかんがみた場合に、今回の改正でインサイダー取引の課徴金が、現行よりは増えることは分かりますが、その増え方が期待したより低いようなので、ちょっと物足りない気がします。その点では、岩原委員がおっしゃったことはごもっともなことで、近々、またこの件について、委員会を開いて、課徴金の額を大幅に増やしてもらいたいと思います。もしその委員会に私が参考人として参加できるのでしたら、海外の例についていろいろ意見を述べたいと思います。

実際に、私は海外の金融機関で仕事をしていた時にインサイダー取引について見てきています。もちろん、こういうたくさんの人たちがいる席では述べられませんが、クローズドの委員会の場合は、いくつかの実例をあげて、何が起こっているのかというのを説明できると思います。

2つ目は、風説の流布ですけれども、私はこれに関してはすごく前進したと思っております。この因果関係の認定を不要とするという、この1行は短い文面ですが、これがあるとないとでは大違いだと思います。委員会でこういう結論を出してくださった先生たちに非常に感謝しております。

○池尾部会長

 どうもありがとうございました。

それでは、よろしいでしょうか。

それでは、いろいろご議論を頂きましたが、審議は一応これまでということにさせてだたいと思います。

それで、この資料2としてあります報告(案)を、報告書として取りまとめさせて頂きます。それに、先ほどの法制ワーキング・グループの報告を添付するということで全体としての第一部会報告というふうにさせて頂きたいと思いますが、それでよろしいでしょうか。

どうもありがとうございました。

それでは、ただいまから、渡辺大臣に第一部会報告を手交させて頂きたいと思いますが、もうカメラも入室していますね。

それでは、報告になります。

(報告書 手交)

○渡辺金融担当大臣

 どうもありがとうございました。

○池尾部会長

 それでは、大臣から、ご挨拶を頂きたいと思います。

○渡辺金融担当大臣

 ご報告を頂きましたので、この機会に一言ご挨拶をさせて頂きます。

10月以降の2カ月半で、9回にわたり、また、法制ワーキング・グループを含めますと、14回にわたり、精力的なご審議を頂きました。委員の皆様方のご尽力に、心から感謝をする次第でございます。

日本の市場がお宝満載でありながら、どうもそのお宝を掘り起こしていないのではないかという疑念を、私はずっと長い間持ち続けてまいりました。世界の市場がこれだけ急激な成長を遂げ、また、最近ではサブプライムローン問題のように、ジェットコースターに乗っているかのごとき状況にあるわけでございます。日本は、振り返って見れば、この十数年間、大変な危機の連続でございました。まさに我々が歴史の教訓として学んだことは、危機というものは未来永劫続くものではない、危機の先の次の未来を見据えた危機対応をやらなければならない、そういう思いでございます。

まさに日本の経験が、今の国際的な金融・資本市場のレッスンになることはあるのかもしれません。そして、この日本市場が、まさにそういった非常時対応の中で、次の未来を見据えた制度改革をきちんとやっていくことができれば、まさに日本市場こそが、次の未来を切り開く、国際的な金融・資本市場になっていくのではないでしょうか。

ぜひ、そういうことを目指して、この頂きましたご提言の制度整備に早急に取り組んでまいりたいと思います。大変精力的なご議論を頂きましたことに改めて御礼を申し上げ、ご挨拶にかえさせて頂きます。

どうもありがとうございました。

○池尾部会長

 どうもありがとうございました。

それでは、カメラ撮りの方、ご退室をお願いいたします。

それでは、どうもありがとうございました。当部会は、今の渡辺大臣のご挨拶にもありましたが、本年10月3日以来、9回会合を重ねてまいりました。それで本日、一区切りをつけることができたわけですが、皆様の精力的なご議論のおかげだと思っておりますので、この場をかりて厚く御礼を申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。

それでは、以上をもちまして、本日の会議は終了ということにさせて頂きたいと思います。あと、この模様等については、私の方から記者会見をさせて頂く予定でおります。

誠にどうもありがとうございました。

○渡辺金融担当大臣

 ありがとうございました。

以上

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