金融審議会金融分科会第一部会(第53回)議事録

日時:平成20年10月15日(水)10時00分~12時00分

場所:中央合同庁舎第7号館13階 金融庁共用第1特別会議室

○池尾部会長

 それでは、一部まだ出席のご予定で見えられていない委員の方もおられますが、定刻になりましたので、ただいまから金融審議会金融分科会第一部会の第53回会合を開催いたしたいと思います。皆様には、本日はご多用のところご参集頂きまして、誠にありがとうございます。

会議に先立ちまして、いつもどおり本日の議事は公開とさせて頂いておりますことをご報告申し上げておきます。

それから、本日、中川金融担当大臣は国会出席のためにご参加頂けませんが、谷本副大臣にお越し頂いております。まず初めに、谷本副大臣からごあいさつを頂きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

○谷本副大臣

 どうも皆さん、おはようございます。

内閣府で金融担当の副大臣をしております、谷本龍哉でございます。本日、中川大臣は参議院の予算委員会出席のため、かわりに私が出席をさせて頂きます。金融審議会金融分科会第一部会の開催に当たりまして、一言ごあいさつをさせて頂きたいと思います。

皆さんご存じのとおり、国際的な金融市場におきましては、現在、緊張が一段と高まっております。これが株式市場等に大きな影響を及ぼしており、さらには世界の実体経済にも悪影響を与えつつあります。我が国の金融システムに関しましては、相対的には安定しているほうではありますけれども、またセーフティーネットも整備されていると考えておりますが、最近の急激な株価下落が我が国の金融や実体経済に与える影響については、今後も高い警戒水準でしっかりとフォローしていく必要があるというふうに考えております。

サブプライムローン問題をめぐっては、証券化商品の格付ビジネスに利益相反の可能性が内在していたのではないか等、格付会社についてさまざまな指摘が現在なされているところであります。金融庁といたしましては、こうした問題に適切に対応していく必要があると考えており、当部会には格付会社に対する公的規制の枠組みのあり方について、国際的な整合性に留意しながら審議を頂きたいというふうに考えております。

また、金融・資本市場の信頼性を確保するための必要なルールについては、引き続き整備を図ってまいりますが、同時に市場の機能を強化し、利用者利便の向上を図っていくことが引き続き重要であると考えております。この観点からは、金融商品取引所と商品取引所の相互乗入れなどが引き続きの課題となっておりますが、こうした点についてもしっかり対応してまいりたいというふうに考えております。

委員の皆様方におかれましては、ご多忙の中とは存じますけれども、積極的なご議論をぜひお願いをしたいと思います。

以上、簡単ではございますが、私からのあいさつとさせて頂きます。よろしくお願いいたします。

○池尾部会長

 どうもありがとうございました。

それでは、カメラ撮りの方はご退席をお願いいたします。

本日の会合は、昨年末の開催以来、久方ぶりの初めての会合ということで、しばらく開いていなかったんですけれども、その間、事務方の方は金融商品取引法の改正作業だとか、内閣府令の準備作業だとか、忙しく働いていらっしゃったと思うのですが、金融審議会の第一部会は久方ぶりの開催となりますので、委員等に異動がありましたので、また事務局のほうにもその間に異動がございましたので、池田市場課長からその点についてご紹介を頂きます。よろしくお願いします。

○池田市場課長

 それでは、ご紹介をさせて頂きます。

まず、今般異動がございました第一部会のメンバーの方をご紹介させて頂きます。

委員の皆様のほうから向かって右側になります、川端雅一委員がご就任されております。反対側になりますが、橋本雅博委員でございます。それから、増井喜一郎委員でございます。なお、本日ご欠席をされておりますが、杉山健二委員が新たに就任をされております。

続きまして、異動がございました事務局のメンバーをご紹介させて頂きたいと思います。皆様のほうから向かいまして中央左側、内藤総務企画局長でございます。反対側になりますが、総務企画局の土本開示業務参事官でございます。それから、井上国際会計調整室長でございます。それから、青戸市場機能強化法令準備室長です。

以上でございます。

○池尾部会長

 どうもありがとうございました。

それでは、本日の議事に移らせて頂きます。

本日は、まず一番最初に、今後の第一部会の進め方等につきまして事務局から説明を頂きたいと思います。その後、早速になりますが、引き続きまして、格付会社に係る規制の枠組みについての審議に入りたいというふうに考えておりますが、まずは今後の第一部会の進め方等について、事務局より説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

○池田市場課長

 それではまず、資料1、資料2を用いましてご説明をさせて頂きたいと思います。

当第一部会は、先ほどもありましたように、昨年末以来の開催ということになります。最初に昨年末以来の動きについて簡単にご説明させて頂きます。

資料1の表紙をおめくり頂きまして、1ページ目は、昨年12月におまとめを頂きました第一部会報告の概要でございます。左側にありますように、取引所機能の拡充・強化ということで、取引所における取扱商品の多様化、とりわけETF等の多様化の問題、それから、プロに限定した、いわゆるプロ向け市場のご議論を頂いたところでございます。右側のほうでは、銀行・証券間のファイアーウォール規制の見直し、それから、課徴金制度の充実・強化の議論を頂いたところでございます。

2ページでございますが、この報告を昨年12月18日に頂きました後、金融庁といたしまして、12月21日に市場強化プランというものを取りまとめさせて頂きました。ここでは、第一部会のほうからご報告頂きました取引所における取扱商品の多様化ですとか、プロ向け市場ですとか、課徴金の見直し、あるいはファイアーウォールの見直しのほか、第二部会のほうから報告書を頂きました銀行・保険会社グループの業務範囲の拡大など制度的な問題を盛り込むほか、右側になりますが、よりよい規制環境、いわゆるベター・レギュレーションということで、事業者との対話の充実を通じたプリンシプルの共有、規制・監督の透明性・予見性の向上、海外当局との連携強化など、制度の運用面での事項を盛り込みますとともに、 IV にありますように、市場をめぐる周辺環境の整備ということで、専門人材の育成・集積の問題、あるいは国際金融センターとしての都市機能向上の問題などを一括してパッケージとさせて頂いたものでございます。

3ページでございますが、金融庁のほうでは、先ほど部会長のほうからもございましたが、今のパッケージの中で法律の改正を必要とするものについて、一括いたしまして、本年3月に金融商品取引法等の一部を改正する法律ということで法律案を国会に提出させて頂きまして、これが本年の6月6日に成立をいたしまして、6月13日に公布をしたということでございます。

4ページでございます。この法律が6月に成立いたしましたのを受けまして、金融庁では、6月27日にその時点での市場強化プランの進捗状況を公表させて頂いております。この絵の中で右側のほうに灰色に塗られている部分がございますが、ここが先ほどの法律改正によって手当てをされた部分でございます。このほか、この灰色のところの左側になりますが、外国株式の取引機会の拡大等々、政令、内閣府令、あるいは取引所の規則などで手当てされるべきものについて、順次手当てをしてまいったところでございます。また、ベター・レギュレーションの関係でもさまざまな取り組みを行ってまいったところでございます。

今後のことにつきましては、右側のほうに主として矢印で示しておりますが、6月に成立した法律については、その大宗については公布の日から6カ月以内の施行というふうに法律で定められておりますので、本年の12月12日までに施行をする予定でございます。

なお、ファイアーウォール規制の見直しにつきましては、民間事業者サイドでの利益相反管理体制の整備など一定の準備が必要となることから、法律上も施行時期は1年以内と定められておりますので、来年6月12日までに施行していく予定です。

それから、残された課題といたしまして、先ほど副大臣からもございましたが、金融商品取引所と商品取引所の相互乗入れの問題につきまして、昨年の第一部会報告でもご指摘を頂いておりますが、この点については本年中を目途に検討を進め、その後速やかに実現を図るとさせて頂いているところでございます。

その他、会計基準のコンバージェンスの問題ですとか、上場企業等のコーポレート・ガバナンスの強化などの課題についても引き続き取り組んでいく必要があると考えております。

5ページでございますが、今のスケジュールに沿いまして、この法律の多くの部分は本年12月12日までの施行ということになりますが、このため、施行に必要となります政令・内閣府令の整備作業を進めさせて頂いておりまして、この9月19日に政令・内閣府令の案を公表させて頂いています。この20日までをパブリックコメント期間として、現在その手続を進めておるということでございます。1年施行の部分につきましても現在作業中でありまして、遅くない時期にパブリックコメント手続を開始できればというふうに考えているところでございます。

6ページでございますが、これは東京証券取引所のほうの取り組みでございますが、プロ向け市場の点につきましては、今申し上げたような政令・内閣府令案の整備と並行いたしまして、東京証券取引所のほうでも、具体的にプロ向け市場の創設に向けた制度概要試案というものを7月29日に公表しておられます。この概要によりますと、東証とロンドン証券取引所の共同出資によって、プロ向け市場の枠組みを活用した成長企業向け新市場を創設するということで、下に細かく書いてございますので説明は割愛させて頂きますが、例えば、会計基準については日本基準に限定せず、国際会計基準や米国基準等の採用を容認するとともに、四半期開示、内部統制報告書の作成義務は免除し、言語としても英語、日本語の選択を可能とするというような枠組みが示されているところでございます。

7ページでございます。取引所におけます取扱商品の多様化ということで、ETFの多様化といったものが一つの課題とされていたわけでございますが、この8月末時点でのETFの上場数について整理させて頂いたものでございます。諸外国と比較をいたしますと銘柄数は少ないということではありますが、従来に比べて品数等は相当な伸びを示しているということかと思います。

8ページ以降、今後の課題について触れさせて頂きたいと思います。

8ページでございますが、先ほど来ございます金融商品取引所と商品取引所の相互乗入れの問題につきましては、昨年の12月の第一部会報告で一定の方向はお示し頂いているところでございます。具体的には、我が国取引所の経営基盤を強化して国際競争力の強化を図り、利用者にとっての利便性を向上していくという観点から、下の4行のところになりますが、フルラインの品揃えを可能とするグループ化等に向けた制度整備を早急に行っていくということで、具体的には金融商品及び金融取引は金融商品取引法で規制し、コモディティ・デリバティブ取引は商品取引所法のもとで規制するという両法制の枠組みのもとで、資本提携等を通じた相互参入等を可能としていくことが喫緊の課題だということで、関連の法的措置等を早急に講じることが適当だということを指摘頂いているところでございます。

9ページは、今の点を絵に示したものでございますが、金融商品取引法、商品取引所法という両法の枠組みは維持した上で、例えば左で言いますと、金融商品取引所が両方の市場を同時に開設するということ、右側で言いますと、商品取引所が両方の市場を同時に開設することなどを可能にしていくという法的枠組みを整備していくということでございます。この相互乗入れの問題につきましては、先ほども申しましたように、市場強化プランの中では本年中を目途に検討を進め、その後速やかな実現を図るとしているところでございまして、今後、政府部内におきまして、相互乗入れを可能とするための制度整備について具体的な検討が本格化していくことになると考えております。

この関連では、産業構造審議会のほうでも商品取引所の競争力強化、あるいは委託者保護のあり方等について議論が行われているところと承知しております。この第一部会におきましては、これらの進展等を踏まえつつ、相互乗入れを可能とするための制度整備を検討していく上で踏まえられるべき基本的な事項などについて、必要に応じ、ご審議を頂きたいというふうに考えているところでございます。

10ページは、諸外国の状況ですので説明は割愛させて頂きまして、11ページでございます。市場強化プランの中では、先ほど来ございます格付会社のあり方についての検討というのも一つの施策として掲げられているところでございます。格付会社については、利益相反防止あるいは情報開示のあり方など、国際的にもさまざまな議論があるということで、こうした状況を踏まえながら、必要に応じ、適切な対応を検討していくとされているところでございます。この点につきましては、先ほどもありましたように、本日、早速審議を開始して頂きたいというふうに考えております。詳細については、後ほど企業開示課長のほうからご説明を申し上げることになるというふうに考えております。

それから、12ページでございます。市場強化プランの中では、市場の公正性・透明性の確保という項目のもとで自主規制機能等の強化の問題を掲げておりまして、例えばイの自主規制機関の取り組みのところでは、第2段落になりますが、苦情・あっせん機能などについての強化策、あるいは、ロのところでは、金融分野における裁判外紛争処理機能、いわゆる金融ADRの拡充についても施策として掲げさせて頂いているところでございます。この点につきましては、後ほど引き続きまして企画課長のほうからご説明を申し上げたいというふうに考えております。

以上を踏まえまして、資料2でございますが、今後の第一部会の進め方につきまして、お諮りさせて頂きます案を事務局のほうで作成させて頂きました。今後の審議テーマにつきましては、市場強化プランの実施等に伴う制度的な諸問題について検討を進めるということで、具体的には格付会社に係る規制の枠組み、それから、金融商品取引所と商品取引所の相互乗入れ、さらに開示制度の見直し、この点については、詳細は、後ほど引き続きまして企業開示課長のほうからご説明をさせて頂きたいと思いますが、こうしたものなどについて討議を行っていく。それから、(注)のところでございますが、開示制度の見直しにつきましては、第一部会のもとに設置されているディスクロージャー・ワーキング・グループにおいて、まず実務的な検討を進める。日程につきましては、年内を目途に議論の取りまとめを行って頂くといったことを案として掲げさせて頂いているところでございます。

以下、続きまして、企業開示課長、それから企画課長からご説明をさせて頂きます。

○三井企業開示課長

 企業開示課長でございます。

資料3「開示をめぐる状況について」の資料を取り出して頂きたいと思います。大きく分けて3点、細かく言いますと4点について説明いたします。それぞれについて海外比較がございますが、今日は海外比較についての説明は割愛させて頂きます。

1つ目でございますが、表紙をおめくり頂きまして、1ページ目、発行登録制度でございます。発行登録制度をご案内の方も多かろうと思います。釈迦に説法になって大変恐縮でございますけれども、繰り返し1点ご説明しますと、63年に入りました制度ですが、あらかじめ発行登録書というのをファイリングして頂きますと、一定期間、追補書類というのを出せば直ちに発行ができると。正確に言いますと、発行登録書に基づく勧誘ができて、追補書類によって契約ができるということでございます。

次の2ページでございます。発行登録制度の利用要件でございまして、1つ目、継続開示要件といいまして1年間の継続開示、もう一つは周知性の要件と言われていまして、ここにありますような売買金額あるいは時価総額が大きい数字、それから、一つ注目すべき点は3番目と最後ですけれども、社債の場合に格付を利用しておるということでございます。後ほど格付についてはまた別途ご説明いたしますが、格付については昨今いろいろな問題がありまして、公的に格付にお墨つきを与えるようなものを規制に取り込んでいる場合には、それをできるだけ廃止すべきであるという国際的な合意があります。こういったことを踏まえてどう考えるか、さらにはこの制度ができたときにはインターネットがさほど普及していなかったということと、現状ではEDINETで電子的に開示がされているということをどう考えるかというのがこの関係の論点になろうかと思います。

次のページから国際比較でございますので、すみませんが8ページまで飛んで頂ければと思います。

8ページ、これは2つ目の売出しの概念というところでございます。一言で言いますと、上右の薄い網のかかっているところですが、均一の条件で、50名以上の人に既発の有価証券を勧誘しますと売出しに該当しまして、法定開示の規制がかかります。したがいまして、有価証券届出書等の提出が必要になるということになります。

そして、若干細かいことがここにいろいろ書いてございますけれども、この関係のプラクティスとしまして、例えば49人まで同一の価格で勧誘したところで、50人目で1円値段を変えてまた49人勧誘すると、こういった小刻みに値段を変えながら、実態としては、全体がかなり大規模でありながら法定開示が行われないというケースがあり得るようでございまして、こういった点も踏まえて、実態に即し、かつ法律的な観点あるいは投資家保護なり適切な情報開示の観点から、どういうふうな規制体系にリファインしていくかという論点があろうかと思います。

これとの関係で、若干違っていて似ているカテゴリーとして、次の9ページがございます。海外で発行されました有価証券を国内で販売する場合、当然のことながら売出しに該当いたしますと法定開示が必要になります。それに対しまして、少人数向けの勧誘といいまして、一定の例外がございます。要件は大変細かくなっておりますので一個一個の説明は省かせて頂きますけれども、50人以下であって、ここにありますような一括転売規制等々の条件のもとに、比較的開示が免除された形で緩やかな販売ができるという規定でございます。これと、先ほどの均一の条件の実務的な運用、両方を足し合わせますと、かなり法定開示が抜けている部分があるということかと思います。

片や、昨年の金融審議会では、プロ向け、特定投資家向けの市場というものをご議論頂きました際に、法定開示が免除されている、法定開示が適用されない私募の世界の中で一定の情報提供という制度をご議論頂きまして、今回の法律ではそれが盛り込まれて成立しております。これはプロ向け市場のためにつくった制度でございまして、それ以外のこと、とりあえず法令レベルでは書いていないわけでございますが、私募の中での開示が柔構造化しているということも踏まえて、ここら辺のところをどのような制度のリファインができるかという点が論点としてございます。

次のページから、しばらくまた国際比較でございまして、恐縮でございますが、13ページに飛んで頂ければと思います。

目論見書の制度でございます。有価証券届出書等が提出されました有価証券は、勧誘する場合に目論見書を相手方に交付することが必要になります。ここにありますように、例として投資信託の証券の場合、交付目論見書と請求目論見書に分かれまして、交付目論見書は販売の際にあらかじめ、または同時にお客さんに交付しなければならない。他方、請求目論見書についてはお客さんからの請求があった場合に交付すればよいということになっております。具体的な記載内容は真ん中の段のようになっていまして、また一定の免除要件も書かれております。

それから、次の14ページでございますが、それに対して電子交付の規定が導入されておりまして、電子交付には、この4つの方法を実際に使うことが可能でございます。

15ページに具体的にこの4つについてどういうふうにするのかということを表の形で書かせて頂いております。メール、それからダウンロード、電子私書箱、ホームページ閲覧と、こういったことで、現実的にはかなり法制面ではいろいろな方法がとれるというふうなことになっております。この点については、現在の投資信託の目論見書が、必ずしも投資家にとって必要な情報がコンパクトにまとまっていないのではないか、あるいはかなり大部なものが投資者に交付されていて、効率性の面で必ずしも望ましい姿になっていないのではないか、たくさん情報があるということに対して、今度は販売サイドだけではなくて、投資家から見て必ずしも適切な情報が見やすい形で提供されているという意味で、十分な、あるいは適切な情報開示になっていないのではないかというご指摘があるところでございます。こういった点についてご議論頂ければありがたいというふうに考えている次第でございます。

以下はまた国際比較でございますので、省かせて頂きます。

以上でございます。

○大森企画課長

 ただいま両課長から、今後の第一部会の検討課題についての説明がございましたが、私からは業態横断的なお話を一つさせて頂きたいと思います。

従来から、金融商品取引法のときもすべての業態にかかわる問題だということで、第一部会、第二部会の合同部会という形で議論をお願いしてまいりましたけれども、同様の形でお願いしたいトップバッターが、先ほど市場課長から少し頭出しをして頂きました、裁判外の紛争処理、金融ADRでございます。

この課題につきましては、これまで業界団体、有識者、消費者団体、そして行政が自主的に参加する枠組みとして、金融トラブル連絡調整協議会という場で対応が検討されてまいりましたけれども、なかなか自主的な取り組みだけでは限界もあるのではないかといった、特に消費者団体、有識者の皆様方からの強いご意見もございまして、今年6月に考え得る制度論というのをまとめたものが資料4でございます。

ご説明は省略いたしますけれども、ただ、この協議会に参画されておられる業界団体の方、一生懸命顧客サービスに取り組んでおられる方もいらっしゃるわけですけれども、顧客サービス担当の方々でありまして、必ずしも制度論を議論するようなお立場にはないこと、客観的には、消費者庁の構想など、政府を挙げてこういった取り組みが加速しておりますし、私たちも、今年の金融商品取引法を国会に提出いたしますと、真っ先に金融ADRを強化せよという附帯決議を頂くような状況でありまして、また来年も金商法の改正案を提出しようとしておるわけでありますから、そういった国会のご指摘に対しても対応を検討していく必要があると考えております。

したがいまして、例年秋も深まるにつれて拘束時間がふえる金融審議会ということで恐縮でございますけれども、第一部会、第二部会合同という形で、まずはこのテーマのご議論をお願いしたいと思っておりますので、よろしくお願いしたいと存じます。

なお、金融トラブル連絡調整協議会の座長は、8年前の発足以来、岩原先生にお務め頂いておりますので、この合同部会のお取りまとめの役も岩原先生にお願いできればと考えております。

以上でございます。

○池尾部会長

 どうもありがとうございました。

ということで、具体的には資料2ということで、市場強化プランの実施等に伴う制度的な諸問題について検討を進めるということで、第一部会プロパーとしては3つ、格付会社に係る規制の枠組み、それから金融商品取引所と商品取引所の相互乗入れの問題、それから3番目が開示制度の見直しについて、金融審議会第一部会として議論をすると、ただし、開示制度に関しては、大きな考え方をどうのこうのというよりは、やや言い方に語弊があるかもしれませんが、法技術的な面も強いので、専門的にワーキング・グループで検討して頂くと。それと、第一部会、第二部会にまたがるテーマとして、金融ADRについても検討を進めたいと。ただし、これは経緯からいたしましても、第二部会長の岩原先生にイニシアチブをとってやって頂くというふうなことを秋の審議課題として考えておりますが、いかがでしょうかということで、ご質問、ご意見等ございましたらお願いしたいと思います。

原委員、どうぞ。

○原臨時委員

 大変、金融は大波乱で、金融行政、金融政策もいろいろな課題があって、しっかりした議論をまたぜひお願いしたいと思っておりますが、私のほうから1点だけ。今、大森企画課長からご説明がありました金融ADRについて、第一部会、第二部会合同で審議をして頂けるということで、大変感謝をしております。

この金融トラブル連絡調整協議会というのは、スタートして8年目ということで、実質的に金融商品販売法を検討するときから課題として掲げられていたのですけれども、苦情・紛争解決についての横断的な取り組みは当面、金融トラブル連絡調整協議会で検討するようにということで、8年もの間が経過いたしましたが、この間トラブルは増加をし続けておりまして、保険で言えば不払い問題がありましたし、銀行も総合デパート化でいろいろな商品を扱われるので、またトラブルが多く、投資性のある商品についても苦情が寄せられているというところです。8年前にはありませんでしたけれども、ADR法も成立をしておりますので、そういうものも見比べながら、ぜひ横断的な金融ADRを立ち上げる検討を尽くして頂きたいと思っておりまして、委員の方々にもぜひご協力をお願いしたいと思います。

○池尾部会長

 どうもありがとうございました。

ほかにご質問、ご意見ございますでしょうか。

ないようでしたら、資料2にあるような方向で今後の審議を進めさせて頂くということでご了承頂きたいと思いますが、よろしいでしょうか。

どうもありがとうございました。

それでは早速、この方針に沿って審議をするということで、繰り返しになりますが、開示制度の見直しについては、ディスクロージャー・ワーキング・グループで審議をして頂きますが、従来どおり、これもまた岩原座長にお願いするということですので、どうかよろしくお願いいたします。

それでは早速ですが、審議テーマの1番目に掲げられております、格付会社に係る規制の枠組みについての審議に入りたいというふうに思います。

まず、この点に関しまして事務局から説明をお願いいたします。それから、参考人に格付機関関係者の方に来て頂いておりますので、入室して頂きます。

それでは、三井企業開示課長、お願いします。

○三井企業開示課長

 それでは、資料5「格付会社をめぐる状況について」という資料をご覧頂きたいと存じます。全体を10分程度で説明したいと存じますので、大変駆け足になって恐縮でございます。

1枚おめくり頂きまして、1ページ目でございます。鳥瞰図でございまして、まず日本の状況でございます。格付会社に対する規制・監督・検査というものは現在ございません。ありますのは、既にある格付会社に対するものではない開示や、銀行・証券会社などの自己資本比率規制などにおいて一定の格付を利用するという制度でございます。現在、今日お越し頂きますR&I、JCR、ムーディーズ、S&P、フィッチの5社を選定いたしまして、この5社の出している格付を開示会社が利用できる、あるいは証券会社等が利用できるという制度になっております。

昨今のサブプライム問題を受けまして、昨年、渡辺大臣の時代に、金融市場戦略チームということでサブプライム問題を幅広く議論した中に、格付も一つの論点として取り上げられております。内容につきましては、後ほどまた資料で説明いたします。

国際的な動向でございますけれども、これまたサブプライム問題を受けて各面で議論されております。G7、それからIOSCO(証券監督者国際機構)でも議論がされております。米国におきましては一昨年に法律ができまして、正式な規制・監督・検査の制度が導入されております。施行は昨年からでございます。これに対して、実際に検査も行われ、また規制の強化案がSECから出されております。それから、欧州におきましては、これまで日本と同様、規制・監督・検査の制度はございませんでした。それに対しまして、IOSCOにおけるコード・オブ・コンダクトの改訂を受けて、その遵守を確保するという議論をしている中で、今年の7月に登録制度を導入するということを経済財務相理事会が決議しております。

1枚おめくり頂きまして、日本におけます格付についての制度でございます。若干この中身については細かいところは省略いたしますが、先ほど申しましたように、開示で、例えば社債を発行するときにこの5社の格付、例えばトリプルAを取得したということでトリプルAというものを開示書類に記載するといったことができる、あるいは銀行・証券会社等の財務内容の監督をこの格付というものを使っているということでございます。

3ページでございまして、金融市場戦略チームの議論の内容でございます。格付会社以外の点についても多々論じられておるわけでございますけれども、格付会社につきましては、3ページの真ん中のところ、格付ビジネスに利益相反の可能性が内在していたのではないか、それから、証券化商品に格付をつける場合にはモデルが利用されるわけですけれども、そのインプットやモデル自体、あるいはその結果など、こういうモデルの内容等についてのディスクロージャーや検証がなされていたかどうかといった点。それから、格付に必要なデータを、かつ信頼性のあるデータを十分に組成者から入手していたのかどうか。あるいは、投資家は格付の意味について十分に理解していたかどうかといった点について疑義があるということが述べられてございます。

5ページに飛んで頂きまして、第二次報告書におきましても同様の指摘がございます。IOSCOの答えが出ていた時点でございまして、今後、国際的な動向を見ながら、調和的な規制・監督の方策について検討するといったことが書かれておりました。

7ページでございまして、ここは7月の時点、これは後ほど説明いたしますが、EU、ECにおける登録制度の導入の方針を受けて、日本でも検討が必要であるということを大臣がパブリックに述べたものでございます。

では、具体的な中身でございますが、8ページ以降でございます。金融安定化フォーラム、FSFが今年4月に報告書を出しておりまして、これも多岐にわたる提言をしておりますが、「 III .信用格付の役割と利用の変更」のところにありますような、先ほどと中身は若干重複しますけれども、提言をしております。IOSCOのコード・オブ・コンダクトの改訂とその十分な施行、それから証券化商品に関する格付を従来のコーポレート格付と区別をする、別の記号を使うべきではないかとか、あるいは情報提供の内容を拡大すべきである。それから、裏付資産のデータについての品質を十分確保するべきである。それから、投資家と当局による格付の利用については、とりわけ当局については、お墨つきを与えるような利用について、いいかどうか検証すべきだということが述べられております。

次の9ページでございまして、IOSCOのコード・オブ・コンダクト、2004年にできておったものを今回改訂してございます。今回、ストラクチャード・ファイナンスにおける問題点を幾つか特記してございまして、9ページの下の点にございます。信用格付機関というアンダーラインのところでございますけれども、信用格付機関が正確な情報と適切なモデルに基づいて格付を行ったかどうか、あるいは格付手法や前提に十分な吟味を行ったか、あるいはそれ以外の周りの環境であるとか、さまざまなインプットについての十分な勘案が行われていたかどうかといった問題が指摘されております。

次の10ページでございまして、具体的な行動規範の内容でございます。丸印は過去からあるもので、星印が今回追加されているものでございます。この行動規範の記載は、網羅的ではございません。若干幾つか、恣意的かもしれませんが、ピックアップしてございます。客観的な検証の対象となるような格付方法をとるべきであるとか、格付のモデル、格付方法についての適切性の検証、再評価、あるいは継続的なモニタリングといったことが書かれております。それから、2番目ですと、利益相反の可能性をできるだけ排除する。それから、3番目については十分な情報提供ということで、情報提供の具体的な内容について幾つか例示・列挙されてございます。

それから、遵守についてどうするかということでございまして、次の11ページ以降でございます。IOSCOにおいて、このコード・オブ・コンダクトをどう遵守していくかという議論が行われております。この7月では、次のステップをどうするかということでございますけれども、幾つかの案が1、2、3というふうに書かれておりまして、次の12ページでは、さらにそれが議論が進みまして、国際的なモニタリングボードの設置の可能性というものが述べられております。このページですと、一番下の矢印の6行の中の、真ん中辺でございます。具体的なイメージとしては、監査基準の監視機構である公益監視委員会(PIOB)のようなものをイメージしているということが提示されております。

今のがIOSCO等でございまして、次がアメリカの規制に移らせて頂きます。

1934年証券取引所法の改正という形で一昨年法律が成立し、去年SECの規則が公布されて中身が施行されております。趣旨は、競争促進ということと、それからSECによる信用格付会社に対する監督・規制を強化するということでございます。ここでNRSROという概念が出てきますが、これが真ん中の左の上の箱ですけれども、こういった参入要件のもとに登録できるということになっております。行為規制の中心は利益相反に対する規制ということ、それから非公開情報の濫用の防止、不公正な行為の禁止、そして開示規制でございます。利益相反の開示であるとか、格付に関する手法・実績等の開示、コンプライアンス体制の開示等でございます。これに対しては、ここにありますような広範な監督・検査・制裁権限が書かれております。

それから、次のページでございますが、IOSCOでの議論の後、あるいはFSFでの提言を受けまして、SECは幾つかの取り組みを行っております。包括的な規制改革案を出しております。第一部については、ディスクロージャーの充実などを柱とするかなり広範な規制強化案でございます。第二部というのは、信用格付のうちストラクチャード・ファイナンスについては別の記号を使うかどうかという点。それから、3番目については、規制の中において格付を使っている部分を減らすということの提案でございます。

それから、15ページでございますが、新たにできましたアメリカの信用格付法に基づき、SECは検査を行ったようでございまして、幾つか検査上重要な指摘がなされているということでございます。個々の検査内容の指摘につきましては省略いたしますが、これが前のページの規制強化案の背景にあるというふうにSECの担当の方は説明しておられました。

それから、次はEUの動きでございまして16ページ、17ページでございます。16ページ、7月の財務相理事会でございまして、アンダーラインのところでございますが、「格付機関をEUの登録制度の対象とすべき」ということでございます。

それを受けまして、17ページでございます。欧州委員会、ヨーロピアン・コミッションからパブリックコメントが出されてございます。全体的には、SECの従来の規制より若干厳しい内容となっております。幾つかの重要な点については選択肢を示すということになっておりまして、まず監督ですけれども、各国当局が承認・監督をするか、あるいはEUの単一組織で、EU全体としての登録制度の承認をとるかどうかという2つの案が出されております。それから、規制の内容ですけれども、格付を提供するためにはこの登録をしなきゃいけないという、できるということではなくてしなきゃいけないという規制をとっておるようでございます。ただし、格付の定義の中に、こういったEU域内での規制を遵守するために用いられる格付を付与するということになっているようでございます。

幾つか重要な点がありまして、承認の中で、事前承認の次でございますけれども、EU域内に子会社または支店の設置が義務づけられているということがございます。それ以外の主な規定は、ガバナンス、あるいは利益相反、格付方法やディスクロージャー等でございます。

以上が事務局資料でございます。大変駆け足で恐縮でございます。私の説明は以上でございます。

○池尾部会長

 どうもありがとうございました。

ただいまの格付会社をめぐる状況についてのご説明についてもご質問等があるかと思いますが、後でまとめて質疑の時間はとらせて頂きたいと思いますので、続きまして、指定格付機関からのヒアリングに入りたいというふうに思います。

本日は、5つの機関からおのおの、株式会社格付投資情報センターの田中英隆常務執行役員、株式会社日本格付研究所の江森剛文常務取締役、ムーディーズジャパン株式会社の北山慶代表取締役、スタンダード・アンド・プアーズ・レーティングズ・サービシズの張毓宋在日代表兼アジア・太平洋地域統括責任者、フィッチレーティングスリミテッドの工藤仁章マネージングダイレクターにお越し頂いております。お忙しい中どうもありがとうございます。

それで、誠に限られた時間で申しわけないのですが、各5分程度という非常に厳しい時間で申しわけありませんが、お話をお伺いできればと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

それでは早速ですが、まずは株式会社格付投資情報センターの田中英隆常務執行役員からよろしくお願いいたします。

○田中(英)参考人

 格付投資情報センターの田中でございます。よろしくお願いいたします。限られた時間でございますので、レジュメに沿って、格付の規制を考えるときの基本的な枠組みについて、今日はお話しさせて頂きたいと思います。

まず、レジュメの2ページ目をご覧頂きたいと思います。格付について今信頼がかなり失われているのだと思います。そういう中で、格付は本当に必要なのか、格付の価値とか機能というのは一体何なのかということを、一度掘り下げてここで議論したほうがいいのではないかと考えます。どのような機能を持たせ、あるいはどのような必要性があるのかということを踏まえて、仮に規制をするということが決まれば、どういう哲学で格付を規制するのかという考え方をしっかりと持つことが重要だろうというふうに思っております。

次に、欧米の議論につきましては今、三井企業開示課長から説明があったとおりでございますが、従来からIOSCOで格付の行動規範を作成しておりまして、私どもはそれに基づいて行動をしております。アメリカにおきましては、格付の問題が起きましたのは今回が初めてではなくて、エンロンの事件があったときに、格付会社の規制論がなされました。その後わずか7カ月で、SOX法で公開会社と監査法人の規制がかけられたわけですが、格付会社につきましては、それから5年近くの議論を要したわけであります。それだけ規制に関しては非常に難しい問題があるということを認識すべきであります。

それから、EU委員会につきましては、先ほどご説明のとおり案が出てきておりますが、EUでは大きく議論が分かれておりまして、英国の保険協会とか、あるいはEUの事業会社の財務部長協会、EUの監督当局であるCESRそのものが反対意見を出しております。このことに十分留意し内容をよく吟味する必要があるかと思います。

3ページ目に行きまして、それでは格付を考えるときにどういう視点を持つべきかという点であります。一つの考え方としては、格付という狭い世界ではなくて、日本のキャピタル・マーケットを発展させるためにはどうすればいいのか、そのために格付をどのような形で位置づけて機能させるのかというより高次の視点を持つことが非常に重要だろうと思います。これをやるに当たって、本来は市場規律でコントロールされることが基本であり重要でありまして、そういう意味では、IOSCOの基本行動規範をもとにしました各社の行動規範、特に利益相反の回避、格付の品質の確保、それから情報開示と、この3つの責務をきちんと果たすような形にするのが理想的であろうというふうに思われます。

4ページにまいりまして、CESRが提案しておりますIOSCOベースの自主規制を基本に置きつつも、今のままではまずかろうということで、投資家を中心といたしますモニタリングボードで、遵守状況のモニタリングをさらに強化をして品質を確保するという考え方が一つあるのではないかと思います。これは格付の持っております本質的な部分をかなり十分に吟味した上で、相当、苦渋の選択といいますか、よく考えられた案であろうと我々は考えております。

次に、最後に5ページ目でございますが、そうはいっても、仮に規制するというふうになった場合も、基本的にはプリンシパル・ベースの規制にすべきであろうと考えます。先ほど申し上げましたような規制の哲学をきちんと立てた上で、その中から幾つかの軸をプリンシパルとして確立し、それに基づいた運用をきちんと行うということが重要かと思います。いずれにしましても、格付の中身、独立性には踏み込まないような配慮が最低限必要ではないかというふうに考えられます。

最後に、格付の制度に枠組みをつくるのは非常に大事なんですけれども、最終的には、いかなる制度があるにせよ、格付会社としては長期的な観点に立ち信頼というものを根幹に据えた経営哲学を堅持していくということが非常に大事なことであろうと私どもは考えております。

以上でございます。

○池尾部会長

 どうもありがとうございました。

それでは引き続き、株式会社日本格付研究所の江森剛文常務取締役にお願いします。

○江森参考人

 私のほうからは、日本における格付会社の規制のあり方について、まず全体的な話と個別の論点についてと、2つに分けてお話をしたいと思います。

まず、全体についての話ということで、お手元のレジュメの資料7の2ページでございますけれども、まず規制の要否についてでございますけれども、JCRといたしましては、日本において格付会社に対しまして規制を導入することは必要であるという考えでございます。

理由としましては、国際的に見まして、今ご説明もございましたように、アメリカでの規制強化の動き、欧州での規制導入の動きというのが進んでいるわけでございますけれども、こうした動きを見ますと、世界経済の三極の一つである日本で格付会社に対する規制がないということは、国際協調に基づきます規制の実効性確保といった観点から問題があるのではないかということでございます。この点については後ほど、全体についての中の5番目でまたもう一度触れたいと思います。

それともう一つ、やはり格付は非常に金融のインフラ的側面が強いわけでございますけれども、今回の事態で格付会社の信頼が失われてしまったと思います。そういった信頼を取り戻す必要上からも、そういった規制の導入というのは何らかの効果を期待できるのではないかというのが理由の2つ目でございます。

次に、規制の対象ということでございますけれども、規制の対象に当たりましては、格付の手法とかプロセスという内容自体、いわばこれが格付の本丸に当たるわけでございますけれども、それは規制の対象としないで、情報開示を通じて、こうしたことはマーケットの判断にゆだねるということが重要かと思います。さもないと、国が個々の格付自体にお墨つきを与えたようなことに受け取られるおそれがあるかと思います。

したがいまして、規制はあくまで格付の外環部分に当たります利益相反行為の抑制、機密情報の管理、情報開示の促進、格付の質維持のための措置確保といった点に限定するのがよろしいかと存じます。このうち、特に利益相反行為の抑制は、規制導入の最大の眼目と位置づけるべきものと考えております。

次の3ページに移りまして、3つ目の論点としまして、過剰規制の回避ということを挙げさせて頂きました。公的規制が過剰なものとなりますと、格付業界への新規参入を阻害したり、また規模の小さな格付会社に不利に作用する可能性がございます。その結果、業界内におきます公正な競争を制限することのないよう、特別な配慮をお願いしたいというふうに思っております。

4番目が、規制における国際的整合性の確保でございます。日本の格付会社は、将来最大で、今のお話にありましたように、日米欧3当局による重畳的な規制を受ける可能性がございます。したがいまして、規制の国際的整合性を確保する必要性は大変大きいものと考えております。現に、既に公表されていますアメリカのSECの規制案とEUの規制案には多くの不整合な部分がございます。例えば、SFの格付記号の表記法でも、EUのほうでは別記号にしろと言っている半面、SECではレポート添付というオプションも認めております。こういった状況でございますので、日本において規制を行う場合には、米欧の規制案が最終版になった状況で、その内容を十分踏まえて、さらに規制間の不整合は生じないような配慮をお願いしたいと思っております。

5番目でございますが、公的規制の実施面におけます関係当事国間のグローバルな枠組みの構築ということでございます。オンサイト・イグザミネーションを含みまして、公的規制の実施面については、関係当事国の間でグローバルで協調的な規制実施の枠組みというものを構築できないかというふうに考えております。

次の、4ページの6番でございますが、報告中心の監督体制ということでございまして、通常時は、規制事項は格付会社の書面報告によりチェックして、規制当局によるオンサイト・イグザミネーションは不祥事発生時等、限定的に運用することが効率的ではないかと考えております。

7番目はコード・オブ・コンダクトとの関係でございますが。コード・オブ・コンダクトについては、格付会社に対して、IOSCOモデルに沿ったコード・オブ・コンダクトの制定・公表を義務づける一方、規制当局は、格付会社におけるコード・オブ・コンダクトの条項の遵守状況をチェックするという役割を担って頂ければというふうに考えております。

次のページで、各論的な個別の視点でございますが、まず第1が親会社の規制ということで、日本現法の規制を行うわけでございますが、親会社が格付業務を行っている場合は、日本現法の規制に必要な限りにおいて、親会社も規制の対象にすべきだというふうに考えております。これは、先ほど申し上げました、規制実施面でのグローバルな枠組みの一環として対応すべき問題ではないかというふうに思っています。

2番目でございますけれども、格付会社の利益相反を考える場合に当たりましては、その格付会社が子会社である場合はその親会社、格付会社自体が子会社を有している場合はそれと一体的に含める形で、利益相反になっていないかどうかを判断するべきだというふうに考えております。

各論の3つ目として、コンサルタント業務の禁止ということで、格付会社が格付先にコンサルタント業務を行うことを禁じるべきだと考えております。これは、どうしても利益相反を回避することは困難ではないかと考えております。

4番目の勝手格付については、IOSCOでも書いてございますけれども、その旨のしかるべき表示を義務づけるということを徹底して頂きたいと考えております。

5番目のレート・ショッピングの可否ということでございますが、レート・ショッピングというのは、格付の取得を希望している会社が複数の格付会社に依頼して、その中からよい格付を選択する行為のことでございますけれども、これはEUの規制とかIOSCOのコード・オブ・コンダクトの最初の案で抑制的な規制が入っているわけでございますけれども、現在の格付の寡占状況、特にストラクチャード・ファイナンスの分野とか、新しいタイプの格付の分野では、寡占状況を緩和するためにも、格付先が複数の格付会社を選択できる余地を与えるべきだというふうに考えております。

以上でございます。

○池尾部会長

 ありがとうございました。

それでは引き続き、ムーディーズジャパン株式会社の北山慶代表取締役からお願いします。

○北山参考人

 ムーディーズの北山でございます。お手元の資料8をご覧になりながらお話を聞いて頂ければと思っております。

2ページ目にまいりまして、かなり内容が先ほどお話のあった2社さんと重なっている部分がございますので、重なりのないようにお話を進めさせて頂ければと思っています。初めに、格付会社ないしは格付の役割に関して簡単に触れた上で、規制・監督の必要性、最後にその枠組みに関する私どもの意見を簡単に述べさせて頂きます。

3ページ目にまいりまして、皆様方もう既にご案内のことだとは思いますが、格付会社及び格付自身は、資本市場において、限定的ではあるものの非常に重要な役割を担っているというふうに理解をしています。すなわち、有価証券の相対的な信用力に関する意見を提供しているというところでございます。

先ほど申し上げた限定された範囲というのは、具体的にどういうことを指しているのかということに関して、4ページ目をご覧になって頂けないでしょうか。

まず、格付の特質ですが、信用リスクに関する将来に向けた意見でありまして、財務諸表や追加的な情報、ないしはマクロデータに基づいて構成されております。先ほど申し上げた「限定的ではあるが」の中身でございますが、何らかの事実を表明するものではなく、もしくは売り推奨、買い推奨をするものではない、すなわち価格に関する影響力、ないしは価格決定のツールとはなし得ないというところでございます。もしくはコンプライアンス実現のための監査の代用でもありませんし、投資家自身が信用力を判断することの代替と使われることは想定しておりません。

続きまして、5ページにまいりまして、先ほど皆様方のご議論の中で出ておりますグローバルな格付に対する関心の広がりというところでございますが、今年4月の金融安定化フォーラムにおいても、5本の柱のうちの1本として格付会社に対する規制のご議論がされていると思います。すなわち、資本流動性リスクマネジメントの強化、ないしは時価会計、ないしは規制当局の国際協調、それから中央銀行の役割とともに格付の規制を行って、これを一体として市場の安定化を目指していくというコミットメントではなかったかと思っています。

そういう意味で、5ページの最後に書きました格付の規制の焦点となっていますのは、格付プロセスの質、ないしはストラクチャード・ファイナンス格付に関する情報、データの質のところが論点になっておりますし、先ほどお話のあった7月のSECの改訂版においても、情報の質のところが引き続き論点になっているというふうに理解をしております。

6ページにまいりまして、具体的に規制・監督の論点でございますが、まずその目的・目標を明確化していく必要があろうかと思っております。特に効率のいい規制の分野としましては、先ほど2社さんお話のあった独立性の確保及び利益相反の管理は非常に重要であろうと私どもも考えております。と同時に、市場における透明性の確保が非常に重要だろうと思います。すなわち格付の符号だけではなく、その意見の内容、格付の手法、その合理性に関して、及び使用したモデル、手法の公開、レポートの公開を義務づけていくということが重要ではないかというふうに思っています。一方、なじまない分野・領域といたしましては、格付の内容、質、その真偽に関しまして、過度な監督・規制を行うことによって画一化を招いてしまう可能性があるのではないかと考えております。

7ページにまいりまして、格付の規制においては重要だとは思いますが、ただしその目標ないしは目的が市場の安定に資する、日本の資本市場を強化していくということであるならば、おそらく格付会社への規制のみをもって市場の安定化を図るということよりも、市場安定化のための一つのパーツであろうというふうに考えております。

8ページにまいりまして、格付の枠組み、あるべき姿、これは私どもの意見でございますので、皆様方のご議論の何らかの参考になればということでございますが、先ほどの2社さんの繰り返しになりますが、独立性の保護というのが私どもも重要だと思っていまして、意見を抑制ないしは変更を強要してしまうということ自体は、市場にとってはあまりよろしくないことではないかと思っています。格付会社間で意見が異なっていること自体が自然だと思いますし、逆に投資家の、ユーザーの観点からすれば、画一化してしまうと、その利用価値が落ちるのではないかと思っております。

先ほどの2社さんの繰り返しになりますが、プリンシプル・ベースの規制、それからグローバルな一貫性ということが重要だと思っています。グローバルな一貫性というところで申し上げますと、昨今の金融市場の動向を見ておりましても、かなり市場ないしはプレーヤーが国際化してグローバルな動きをしている中で、格付を通してのクレジット・リスク比較可能性が損なわれてしまうことがないようにしていく必要があろうかと思っています。

それから、先ほどご紹介のあったIOSCOの行動規範というのは、私どももそれをベースにして私どもなりの行動規範を作成しておりますが、非常にバランスのとれた枠組みとして、日本の規制を考える上でも基盤として利用されるべきかと存じます。

最後に、9ページにまいりまして、もし登録制度を導入するということになっていった場合は、おそらく他の金融業界同様、監督・検査、さらにそのご指導という枠組みになっていこうかというふうに推察しております。その過程において、まず法令をどうするのかということももちろん大事だと思っていますが、その監督の要領ないしは運用、もしくはもうちょっと具体的に申し上げますと、検査マニュアルのレベルの規定が非常に重要になってこようかと思っています。と申しますのは、何らかの格付の変更のレーティング・アクションが、格付会社がご当局の規制を意識するがあまり、格付の変更が金縛りになってしまうようなことは、あまり市場のユーザーにとっては望ましくないのではないかなというふうに考えておる次第でございます。

以上でございます。

○池尾部会長

 ありがとうございました。

それでは次に、スタンダード・アンド・プアーズ・レーティングズ・サービシズの張毓宗在日代表兼アジア・太平洋地域統括責任者からお願いいたします。

○張参考人

 スタンダード・アンド・プアーズの張と申します。よろしくお願いします。

5分という短い時間ですので、早速本題に入らせて頂きたいと思いますが、まずは簡単にスタンダード・アンド・プアーズの基本的なスタンスと最近の対応についてのご説明をさせて頂き、その後、格付会社の規制に関するスタンダード・アンド・プアーズの考え方についてお話をさせてください。

金融市場が引き続き不安定な中、格付に対する市場の信頼を回復することが金融市場の安定化にもつながるとスタンダード・アンド・プアーズでは考えております。格付の信頼を回復するために、各国の規制当局、あるいは政府機関、その他市場の関係者の意見を取り入れることが不可欠だと思っておりますし、協議を継続的に行っております。

このような協議を重ねた結果、市場のフィードバックをもとに、格付のプロセスの強化や、透明性の向上を目的に、今年2月に、27項目に及ぶ施策をスタンダード・アンド・プアーズ独自で発表し、現在その施策の実施を粛々と進めております。時間の関係上、この27項目の施策の詳細についてのご説明は今回行いませんが、皆様お時間があるときに、添付資料とプレゼンテーションの資料の3ページ目から7ページ目をご覧頂ければと思います。

それでは、いきなり飛びますけれども、8ページ目をご覧頂ければと思います。格付会社の規制に関連して、スタンダード・アンド・プアーズの基本的な考え方についてご説明をさせてください。

格付会社に対する法規制を導入すべきか否かという議論には、その法規制が金融市場全体に対する影響と、コスト・ベネフィットを慎重に考えた上で議論すべきだと考えております。規制ありきの、規制のための規制ということではなく、金融市場をより一層発展させるための規制を考えていくべきではないかと。その議論の中で特にご考慮頂きたい点が4点ございます。4点とも既に3社がお話しされましたが、また私のほうで繰り返しになりますが、お話をさせてください。

1点目は、IOSCOについていろいろお話がされましたけれども、スタンダード・アンド・プアーズも含め、ほかの格付会社もそうだと思いますが、ここ数年IOSCOにおける議論を機にいろいろな行動規範の見直しなども進めておりますし、最近発表された改訂行動規範に関してもスタンダード・アンド・プアーズは賛同しております。ある意味IOSCOがスタンダード・アンド・プアーズ、そしてほかの格付会社にとっての格付会社の規制だと考えておりますので、引き続きIOSCOの行動規範をベースに、追加的に施策を講じていきたいと思います。

2点目は、これに関連して、各格付会社ともさまざまな改善策を既に講じているのではないかと思いますので、こうした努力に対してもご理解頂きたいと思います。

3点目は、格付は一つの意見であり、売り買いの推奨ではないことです。また、格付というのは信用リスクに限定した意見であることも忘れないで頂きたいと思っております。

4点目は、格付のプロセスの過度な規制が格付の手法などのイノベーションを阻害する可能性もありますので、そのインパクトについても考慮して頂くことが重要だと思っております。

1枚めくって9ページ目ですけれども、議論の結果、仮に法規制を導入することになった場合、以下の点についてご考慮を頂ければと考えております。特に最初の2点に関しては、格付会社としてもなかなか譲れない点ではないかと思います。

1点目ですが、既にお話のあったように、国際的な整合性を考えた規制であることをぜひ考えて頂きたいと思います。各国の規制に整合性がない場合、各国独自のルールをトラッキングするシステム投資だけでもかなりの負担が想定されますし、仮に各国の規制が矛盾した場合、スタンダード・アンド・プアーズのようにグローバルで活動を行っている会社としては、身動きがとれなくなってしまう可能性もあるのではないかと思います。矛盾する規制があった場合、特定の国から、例えば撤退すら考えなければならない状況も出てくるのかもしれません。

2点目ですけれども、格付という意見を格付会社が独自に判断して、その意見を自由に市場に提供することが格付会社の大きな存在意義だとも考えておりますので、格付の結果、あるいは格付の手法までも規制の対象になると、格付会社は独立性を失う惧れがあると思います。

3点目ですけれども、規制のルール自体が、規制の趣旨や目的から逸脱した形にならないように考慮して頂きたいということと同時に、規制の遵守が実務上困難にならないような、そういう規制となるよう配慮して頂ければと思います。

4点目は、既にいろいろお話がありましたけれども、ルール・ベースでなくプリンシプル・ベースの規制になることが望ましいと思っております。特に、規模が全く異なるような格付会社が存在する中、すべて同じルールで規制するというのはなかなか困難であり、趣旨を明確にしたプリンシプル・ベースの規制を考えて頂ければと思っております。

最後ですが、規制導入後の監督に関しても、各国の規制当局が協調することをお願いしたいと思います。格付は、世界各国で使用され、ある意味、格付を使用する投資家やユーザーを格付会社は選べません。しかし、例えば日本の法人に対する我々の格付を世界中の投資家が参照しているからということを理由に、世界の当局の規制に東京事務所が対応しなければいけないという状況になった場合、これもまた身動きがとれなくなる可能性があり、このような状況を避けるためにも各国当局との協調をお願いしたいというふうに考えております。

以上の5点について考慮して、今後の議論を重ねて頂ければと考えております。今後のルールの検討に関し、引き続き、金融庁様及び金融審議会とも協力をさせて頂きたいというふうに考えております。

○池尾部会長

 どうもありがとうございました。

それでは最後に、フィッチレーティングスリミテッドの工藤仁章マネージングダイレクターからお願いしたいと思います。

○工藤参考人

 フィッチレーティングスの工藤でございます。どうぞよろしくお願いします。このたびは、格付会社の規制に関しまして意見を述べる機会を与えてくださいまして、どうもありがとうございます。

私どもでも行動規範というものを策定しておりまして、これに則り格付業務を実施しているところでございますけれども、現在、行動規範は改訂作業をしておりまして、5月に改訂されましたIOSCOの行動規範に全面的に準拠した形で行動規範の改訂作業を進めているところでございます。この改訂の作業が終わった段階で、完全に私どもの業務内容につきましてもIOSCOの改訂基本行動規範に則った形で行われるということが予定されております。

格付会社の業務運営がこれらの行動規範、あるいはそういったルールに基づいて適切に遂行されているかどうかということに関しまして、金融監督当局が監督のご意向を示されておいでのことは、私どもとしても当然のこととして受けとめております。ただ、格付会社の規制といたしましては、格付のプロセスがルールに基づいて的確に実施されているかどうかといった観点から実施されるべきと考えておりまして、他社さんもご指摘のように、格付の基準や格付手法の内容の規制に関するものというのは回避されるべきであろうと考えております。

バーゼル2でも格付会社の適格性に関しまして6つの基準が設けられておりまして、その基準の一つに独立性というものが含まれております。そこでは、格付に影響を与え得る政治的・経済的圧力から自由でなければならないと記されておりまして、格付というのは、信用評価に関しての私どもの意見でございまして、その客観性・透明性を維持、向上させていくためには、格付が政治的・経済的圧力から自由でなければならないという点は非常に重要と考えておりますので、こういった格付基準、格付手法、及びその適用の結果である格付そのものに関しましては、格付会社の内部ルールによって決定し、この部分に関しての規制というものはぜひ回避されるべきものであるというふうに考えております。あくまでも規制の内容は、格付のプロセスが適正にルールに基づいて行われているか否かといった観点で実施されるべきと考えている次第でございます。

さて、私どもの格付業務に関しましては、グローバルに展開して、他社さんも同様と思いますけれども、規制に関しましてもグローバルに整合的な基準によって実施して頂くことをお願いしたいと思います。その意味で、5月に改訂されましたIOSCOの基本行動規範に関しましては、監督当局を含むマーケット関係者からのフィードバックを幅広く反映されたものと伺っております。私どもも全面的に改訂基本行動規範に対しまして賛成の意見を持っておりまして、私どもの行動規範自体も準拠した形に改訂すべく作業中である旨は先ほど申し上げたとおりでございます。

金融監督当局による規制も、IOSCOの行動規範の内容と最大限整合性を保って頂くことが、実際の規制の実効性を高めるものではないかと考えておる次第でございます。また、効率的な監督の観点から、各国の金融監督当局の間で情報交換を円滑にして頂くような仕組みをご考案頂いて、監督を受ける格付機関の負担軽減についてもあわせてご検討を頂ければ幸甚に存じます。

また、当然ではございますけれども、規制の内容は規模あるいは本社所在地にかかわらず、すべての格付機関に対して同一のルールが適用されることが重要と考えております。

以上でございます。

○池尾部会長

 どうもありがとうございました。

それでは、最初の事務局からの説明及びただいまの各指定格付機関からのご説明に関しましてご質問あるいはご意見がございましたら、どなたからでも結構ですので、お願いしたいと思います。

はい、植田委員。

○植田委員

 議論の前提みたいなことですけれども、特に最近、格付そのもののパフォーマンスが悪かったということは非常に明らかだと思うんですけれども、問題はその原因ということだと思うんですが、一つ考えられますのは、いわゆる金融工学的な手法が今回のような事態をきちんと分析するのに完全な手法となっていないということも明らかで、それが大きな影響を及ぼしたということだと思うんですが、それが100%の理由だとしますと、格付会社に規制を導入するということがプラスに働くかどうかは非常に不確かだと思うわけであります。

それ以外に、格付が問題となったかもしれない、パフォーマンスが落ちたかもしれない理由としてここにも幾つか挙がっています。その中でも強調されていますのが、利益相反の可能性です。これは非常に単純に言ってしまえば格付を担当する人あるいは会社が、クライアントとのその他の業務を配慮して、そちらのフィーをとるために、格付についてコンプロマイズをするということだと思うんですが、これが原因で、例えば昨今の格付のパフォーマンスが非常に悪かったとしたら、それは非常に大変なことなわけですが、そうだとしますと、本当にそういうことがあるのかどうかというのは、非常に議論の中心にならないといけないと思うんですが、1つは、金融庁さんのほうでそういうことをもう少しお調べになった結果、その確信に近いようなものを持たれていらっしゃるのか。もちろん私もアネクドータルにはいっぱい聞くわけですが、例えば格付会社の収益構造をきちんと見た場合に、そういう証拠がかなりあるというような認識をお持ちなのかどうか。

それからもう一方で、今日の参考人の方々にこの点を強く伺うのは酷かもしれないんですが、しかし、複数の方々から、利益相反の可能性は非常に無視できないし大事であるというご指摘があったように思います。本当に、例えばサブプライム、証券化商品等の格付等のプロセスにおいて、利益相反の問題が非常に大きく格付をゆがめることになったというご認識をお持ちなのかどうか。その辺、非常に難しい問題ではありますが、何か、どなたからでも結構ですが、ご意見を伺えればと思います。

○池尾部会長

 非常に本質的な質問ですが、まず企業開示課長から頂けますか。

○三井企業開示課長

 すみません、先ほど資料の説明を省略いたしましたが、15ページをご覧頂きたいと思います。

現在、格付会社に対して検査等の形で直接的にアプローチできる規制当局は、アメリカのSEC以外にはございません。日本も検査権がございませんし、一度も検査に入ったことはございません。したがいまして、利益相反について確たる証拠を持っているということは、金融庁に関する限りはございません。

片や、SECにおける検査結果の概要でございますけれども、公表されております。まずRMBS(住宅ローン担保証券)とか、CDO(合成債務担保証券)のディールの複雑さ、件数が著しく増加しているという場合に、この格付プロセスや格付方法の重要な局面が開示されていない。この格付についての明確な手続面での書面化がされていない。与えられた情報の信頼性や正確性を検証していない。これについては、例えばアメリカの住宅ローン債権について借入れ者が詐欺的な借入れをしていた、あるいは貸付け者がOriginate to distributeということで、十分な審査をしないで、直ちに自分のバランスシートから切り離すために、審査をしないインセンティブがあったのではないかとか、そういったことを背景に、そういう怪しい情報が格付会社に与えられていたのではないかということが言われております。

それから、格付手続の重要なステップや、関与者について文書化されていないので検証ができない。

それから、初回の格付に比べてサーベイランスの後での検証プロセスが不十分である。

それから、利益相反について、アナリストが発行体との報酬交渉に関与することが必ずしも禁止されていない。どのぐらいモニタリングされているかということについても差異がある。

それから、内部監査プログラムのレビューという点の深さや範囲についても十分でないというふうにSECは認識しているといったことが、非常に一言で言いますとこういうことでございます。

むしろ、検査を受けられた会社がいらっしゃると思いますので、もう少し深度のあるご報告が頂けるのかもしれませんが、公表物を一言で言うと、こんなことが言われておるという状況でございます。

それから、議論のプロセスでは、IOSCOでもかなり各国の規制当局なり市場参加者からそういうことについての懸念が私どもには寄せられましたと、これ以上のところは、残念ながら私どもは証拠を持っているということではございません。

○池尾部会長

 それでは、北山参考人、お願いします。

○北山参考人

 ムーディーズの北山でございます。

利益相反に関しましては、今先生のご指摘のあった、格付業務の手数料をレバレッジにして他のビジネスで収益を上げるという懸念と同時に、もう一つ大きな懸念としては、多くの格付会社の収益構造が発行体からの手数料収入で成り立っていると。したがって多くの格付のアサインメント、お仕事をちょうだいするために、格付を甘くしたんじゃないかというところが一番懸念を言われているところではないかと思っています。

一方、アメリカ、もしくは日本においても、投資家から報酬を取ることを中心とした会社さんもございます。いずれにしましても、発行体から多く格付手数料を取る会社は発行体寄りの、ないしは投資家から収益の多くを頂く会社は投資家寄りの、どちらにしても、利益相反自体はおそらく構造的にビルトインされていて、それを完璧に排除するということは難しく、おそらく私ども格付会社ができることは、それをいかに格付のプロセスにおいてマネージをするのかということではないかと理解をしています。

その観点におきまして、おそらく他社さんも同様だと思いますが、まず一つは、格付を担当するアナリストは手数料、報酬に一切タッチさせない。もしくは、そのアナリストの評価において、幾ら収益を生んだかということではなく、格付の質のみに評価の基準を置くというようなことを徹底しているところでございます。

もしくは、先ほど課長さんのご指摘のあった、モニタリングが手薄になっていたのではないか、ないしはモニタリングに手心が加わったのではないかというところに関しましては、格付の現場部門とは独立したクレジット・ポリシー・コミッティーという組織を私どもが設営いたしまして、格付現場をダブルチェックするというようなシステムを導入しているところでございます。

○池尾部会長

 はい、藤原委員。

○藤原委員

 投資銀行で資本市場の仕事を長く続けてきた人間として、特に発行体サイドの仕事をしてきた経験から私見を述べさせてもらいますと、格付機関に関しては規制は必要だと思います。

かなり前から、格付機関が発行体からお金をもらってその発行体のために格付を決めるというシステムは利益相反の点からおかしいと思ってきました。今日皆様が、格付機関の独立性とか、政治的・経済的圧力から自由になるとかとご発言していましたが、「えっ、そんなことが言えるのかしら」と実は思いました。本日は、せっかくスタンダード・アンド・プアーズとムーディーズの方がいらっしゃっているので、1つご質問させてください。

今、資本市場で起こっている混乱の原因の1つは、本来倒産するはずがないと思われていたトリプルA格のAIGがつぶれかけたということだと思います。国が救済をしていなかったらAIGはつぶれていたと思います。こういう前代未聞のことが起ったので投資家は何を信用して投資したらいいいのか分からなくなってしまっているのです。これに関して格付機関の皆様たちはどういう意見を持っているのでしょうか。皆様たちは、今日のプレゼンで格付とは信用リスクに関する将来に向けた意見であると発言してました。しかし、その将来の見方を大きく間違えてしまったわけです。シングルBの企業がつぶれるとかじゃなく、トリプルAの企業が倒産危機に陥ったのですが、例えば、AIGに対して社内で3カ月ぐらい前に、トリプルA格を下げなければいけないとかといった話はでていたのでしょうか。この辺について少し教えてください。

格付機関に対してどういう規制をしたらいいのかという、その度合いについてはあとで話し合えばいいと思いますが、そのためにもAIGのトリプルAという格付に関して何が起こっていたのかについて教えてもらいたいと思います。

○張参考人

 私は直接AIGの格付のプロセスには残念ながらタッチしていませんので、詳細についてお答えすることはできませんが、一つお話をさせて頂きたいのは、格付がトリプルAであったとしても、それはデフォルトする確率の問題でありまして、トリプルAというものがデフォルトしないということではないということです。

かといって、トリプルAがデフォルトするというのはやはり大きな問題ですので、AIGに限らず、サブプライムだとかCDOの問題でそれだけデフォルトが発生したというのは、格付会社としては、やはりいろいろと改善すべき点が多々あるというふうに思っておりますので、そういった反省も踏まえて、いろいろなプロセスの改善をしていかなくてはいけないと考えております。

○北山参考人

 ムーディーズの北山でございます。

先ほど、AIGの政府による救済の話ですが、AIG以外にも過去、金融機関、アメリカにおいてもヨーロッパにおいても、かなり私どもが、必ずしもトリプルAでなくても、ダブルA、もしくはシングルAという非常に高格付の金融機関において、政府のサポートを受けざるを得ないような状況に今なっているという観点においては、その金融機関の格付に関しても、非常に市場の信頼に大きな毀損を生じているというふうに認識をしています。

私どもは、先ほどS&Pの方がおっしゃったように、AIGの格付自身の、格付委員会に入っているものではございませんが、概論して申し上げますと、格付については、これはファニメイ、それからフレディ・マックのときもそうだったのですが、シニアのデッド商品に関する格付をやっております。一部優先株等の格付もやっておりますが、基本的にはそういった発行体のシニアのデッド部分の格付でございます。

そういった部分に関しましては、必ずしもすべての将来の予想をするということは私どもも不可能であり、昨今の未曾有の流動性危機ということをすべて予想し得たかというと、必ずしもそうではなかったかもしれませんが、私どもの格付においては、各国の主要な金融機関に関しましては、ご当局の日常ベース以外のサポート要因というのを格付の中に加味して行ってきたというところは申し上げられればと思っています。

ただ、金融機関のバランスシート、もしくは金融機関のバランスシート以外のCDSのマーケットが巨大化している中で、今の流動性危機に関して十分な織り込みができずに、一部の投資家の想定を大きく逸脱するレーティング・アクションが行われたというところは、確かにそういった面はあったのではないかと。首をうなだれて反省ばかりしていても仕様がないものですから、この状況を踏まえて、いかに信頼される格付を今後出し続けるのかというところで、今、鋭意努力をしているところでございます。

○池尾部会長

 ほかにご意見、ご質問ございませんでしょうか。

黒沼委員。

○黒沼委員

 お話を伺っていまして、各社とも独立性の確保が重要だということを強調されておられ、したがって格付手法や内容への規制は好ましくないというご意見を述べられたと思います。ただ、格付投資情報センターさんのレジュメでは、独立性の確保、格付の内容には踏み込まない配慮が最低限必要だと書かれていまして、ここで言われている独立性の確保には踏み込まないという意味は何か、お教え頂きたいと思います。

それから、確かに格付手法や内容への規制が独立性を害することはあり得ると思うのですけれども、先ほど来お話に出てきているように、政治的・経済的圧力によって独立性が害された結果として、あるいは格付の能力が十分でないために、格付の結果が不合理なものになっている場合もあるかと思うのです。そのときに、独立性が確保されなかったから規制をするというのと、結果として出てきた内容が虚偽に近いものであったからそれについての規制を置くというのと、それほど変わらないようにも思えるのです。そこで、独立性の確保は重要だけれども、内容の規制は好ましくないと言われているときに、どういうやり方で規制をすればそのような結果を達成できるとお考えなのか、もし今の時点でお考えがあれば、それぞれお伺いしたいと思います。

○池尾部会長

 まずは田中参考人から、可能な範囲でお答え頂けますか。

○田中(英)参考人

 そこで言っている踏み込まないという意味は、ほかの格付会社と同様に、手法とか内容については規制の対象外とするという意味で書いております。

○黒沼委員

 独立性は確保するということですか。

○田中(英)参考人

 はい、そうです。独立性を確保するという意味です。

続けまして、2番目のご質問でございますが、先ほどムーディーズの北山さんのほうからもお話がありましたように、格付会社というのは、ある意味では利益相反の塊でございます。先ほど、SOX法はわずか7カ月で成立して、格付会社改革法には5年近くかかったというのは、そのあたりの議論が非常に難しかったということであります。

要するに我々は今、イシュア・ペイ・モデルでやっており発行体から手数料をもらっております。そうすると発行体に甘い格付をするのではないかという利益相反が出てくる可能性がございます。逆に投資家から手数料をもらいますと大手の投資家に甘い格付をするということで、起債をする企業のほうにとってきつい条件になってしまうというリスクがございます。

それでは面倒なので、たとえば国でやればいいじゃないかという議論が米国でもあったわけですけれども、そうしますと、もともと国債にも格付をしておりますので、そこでコンフリクトはございますし、自由な意見ではなくて統一された1つの意見だけが出てくるということになりこれも好ましからざることだろうということになります。従って、先ほど申し上げましたのは、格付を使う以上は、利益相反をどういうふうに回避していくのかというのが非常に重要な命題になってくるわけでございます。利益相反を回避することによって、格付の質を保つということが重要になるということでございます。

そのための方策としまして、格付というのは1人のアナリストが決めるわけではなくて、格付委員会での真摯な議論による合議制でやっております。その格付け付与に関わるアナリスト、あるいは格付委員会の議決権者に利益相反がないか、例えば本人、配偶者、扶養家族等の株式等の取得状況を全部調べておりまして、そういったところでのコンフリクトがないかということを毎回必ず確認をしてやっております。

格付の利益相反回避のために、ほかの部門とのファイアーウォールの確立等も内部の規定、それから行動規範で規定し、利益相反を厳しく排除をしております。それから、そもそも株主からの圧力、干渉の可能性がございますので、これは定款で禁止するという形で、利益相反を排除しております。規制当局のほうで、これらの点についてちゃんと遵守しているかということを見るという意味は、規制を導入したの場合には意味があるのかもしれません。

なお、SECの改革法では、法律において内容には踏み込まないということが明文化されておりますので、つけ加えておきます。

以上でございます。

○池尾部会長

 では、若松委員から。

○若松委員

 せっかく格付会社の方がいらっしゃっているので、要望を込めて申し上げさせて頂きたいと思います。

今回の一連の金融危機に関して、やっぱり格付会社への失望とか、信頼感というのは相当失われてきているんじゃないかと思うんです。

そもそも論として、格付情報の意義について、金融庁さんがおまとめになったここのレジュメにも書いてあるように、投資家に誤解を与えてこなかったのかと。今皆さんがここでおっしゃって、簡潔にまとめられて、自分らの提供している情報というのはどういうものなのかということを今改めておっしゃいましたけれども、こういうのをやはりその都度、いろいろなメディアの取材を受けたときか、いろいろなときに、やっぱりきちっとこれはおっしゃるべきだと思うんです。

それをしないと、日本においては、私は、欧米よりも非常に格付会社さんの出される情報というのが、ひとり歩きしているような感じを強く持っていますので、ぜひこの辺のことを、今日いろいろご説明なさったことを踏まえられて、今後の活動に生かして頂けたらというふうに思います。

○池尾部会長

 どうもありがとうございました。

原委員、お願いします。

○原臨時委員

 一般消費者の立場からですけれども、格付機関というものが、私たち一般消費者にもなじみがある存在として雑誌などに登場してきていましたが、私たちがしょっちゅう話題にしていたのは、格付機関がやっている格付とは何なのかと。さらには、格付機関の格付が欲しいというようなことを話していました。そこで出されている情報の信頼性については、半分疑問を感じつつその情報に接していたということがあります。

今日のプレゼンテーションをお聞きしていて感じることは、これからここで審議が始まることについての規制について、私どもはどう考えるということのご意見ばかりだったと思っていて、私は、先ほど藤原委員がおっしゃられたように、なぜこのような事態になったのかということの分析をまずきちんとされて、それを明らかにされるべきだと思っておりまして、反省ばかりして頭を垂れていてはどうにもならないので、次に向かってというふうにおっしゃられたのですが、私はまだ反省も分析もできていないと思っておりますので、ぜひそこをしっかりやって頂きたいと思います。

資料5の15ページで、アメリカの検査をした結果の概要が出されているわけですけれど、やはり内容的に見て非常に驚く感じがありまして、私はなぜこのような状況になったかということについては、中でのきちんとしたルール、それから当事者としてのきちんとした格付ができる能力、それから、今大変話題になさっていらっしゃる利益相反のようなこういったところだと思っていて、どれも欠けているという印象が大変強いのです。ですから、利益相反に今焦点を当てられてお話をなさっておられますけれど、きちんとしたルールですとか、それから能力を高めるにはどうしたらいいか、それからこういった利益相反のようなことをどう考えたらいいかということを検討すべきであって、これは何かプリンシプルだけに逃れるような話ではないと私は思っております。しっかりした検討をお願いしたいと思います。

○池尾部会長

 北山参考人。

○北山参考人

 先ほどちょっと不適切な表現があったかもしれませんが、反省をしていないとか分析をしていないということではございませんので、反省・分析ということでごく短く申し上げますと、一つには、やはり私どもが収集した情報の信憑性、確からしさを、いかに自分自身たちの努力で担保するのかというところが非常に大きな反省点であり、今後の取り組むべき課題ではないかというふうに思っております。それから、先ほどの繰り返しになりますが、社内としてのダブルチェック機能を強化していくということだと思っております。

それから、先ほどご指摘のあった、格付情報をどういうふうに、今、信用が失墜している中で、もっと公の場で述べていくべきではないかというところに関しましては、一部やはり格付の効用、使い方の誤解があったところに関しましては、私どもも積極的に外に出て、先ほど私が申し上げた格付の限界、こういうことに使うとおそらく本来的なものではないのではないかというようなことを積極的に述べていこうというふうに考えております。

それから、もう一つ戻りまして、先ほどご指摘のあった、じゃ内容に入らないで、中身に立ち入らないで、どうやって規制するのかというご質問があったかと思います。それに関して、もちろん日本での規制に関して今後議論の行くところではあろうかと思いますが、欧米の議論の中心になっていますのは、格付のつけ方、格付手法に関してはすべて公開しなさいと。その手法に基づいて格付をつけていない場合、どこをどういうふうに調整しているのか、この部分も個々の格付において公表しなさいというような規制の方向ではないかというふうに理解をしています。そのことで客観性を担保し、かつ利用者が取捨選択できる道を切り開くというような考え方が中心ではないかというふうに理解をしております。

○池尾部会長

 はい、佐々木委員。

○佐々木委員

 本日はいろいろと説明頂いて、どうもありがとうございました。

私としては、大変やはり驚きましたのが、格付会社でアナリストが発行体との報酬交渉にかかわっているということを、そもそも想像も私はしていなかったので、そういうレベルなのかと思って大変驚いたわけです。例えば企業の信用審査であっても、調査に来る人はクライアントを知らないですし、あるいは報道番組でしても、記者は別にその番組のコマーシャルの営業をしているわけではありません。なのに、格付会社が、アナリストと営業面というか交渉面と一体化しているクライアント名も知っているというのは、私は大変驚きました。これは今後の規制に入ってくるのかとは思うんですけれども、明確に分けて頂きたいなというのが、今聞いていて率直な感想です。

1つ質問は、先ほどからコード・オブ・コンダクトの話などが出てきますが、格付会社こそが、他の企業よりもより高い崇高な倫理基準に基づき、コード・オブ・コンダクトに従って業務を進めていると想像していたわけです。コード・オブ・コンダクトなどをたくさん制定されている中で、どのようなトレーニングをされているのでしょうか。

私どもは今、いろいろな企業の企業理念や行動規範をつくったり、トレーニングをする仕事をしておりまして、紙だけでつくっているけれども、そしてトレーニングは、一回みんなに配ったけれども実態の毎日の仕事には反映できていないという企業はやはりまだ多いと思うんですが、今お話を伺っていると、トレーニングの部分、つまりどういう時間数、頻度、方法で、どんなふうに行われているのか、各社から伺えたらと思います。

○池尾部会長

 すみません、5社全部に聞いている時間はちょっとないので、代表的に。張参考人、お願いします。

○張参考人

 まず、トレーニングに関してですけれども、先ほど詳細はお話できなかったのですが、2月に発表した27項目に及ぶ施策の中で、トレーニングに関する施策もありまして、各アナリストのトレーニングの時間を増やすということと、それからスタンダード・アンド・プアーズで考えていますのは、共通の試験というものをアナリストに受けさせて、その試験にパスした者だけに、実際にアナリストとして格付委員会での投票権を持たせることも考えております。これを外部の、例えば大学ですとかそういったところとパートナーシップを結び、そういう業界共通的な試験としてほかの格付会社も使えるようなものにしていければと一つの案として考えております。

それと、1つ目のポイントでおっしゃっていたように、SECの報告書で格付の費用の交渉をアナリストが行っていたということですけれども、どの格付会社のことを指しているのか、スタンダード・アンド・プアーズも入っているのか、私はわかりませんが、一つ言えるのは、日本の場合、アナリストが費用の交渉をするということは、スタンダード・アンド・プアーズの日本の事務所では全くありません。海外の事務所ではアナリストが交渉する場合がありますが、それは自分の持っている案件を交渉するのではなくて、自分が全く格付委員会での投票権を持たないケースでそのような交渉をするまれなケースにとどまります。自分の担当の会社、あるいは案件の交渉をするということは、スタンダード・アンド・プアーズでは完全に禁じられております。

○池尾部会長

 北山参考人、手短にお願いします。

○北山参考人

 私どもの会社で、アナリストが報酬にかかわったことは過去もございませんし、今後もないです。

それから、トレーニングに関してご質問がありましたが、私どもでは、すべての格付に携わるアナリストが、研修最低2時間、及びテストを行っております。パスしなければ格付は担当できないシステムを既に導入しております。

以上です。

○池尾部会長

 東委員。

○東臨時委員

 今日のプレゼンを伺っていて感じましたのは、格付会社さんが格付の限界のお話を随分され、格付けは意見であって売り買いの判断ではないとのことでした。この点は全く私もそうだと思うのですが、現実には、マーケットは、格付会社さんが思っている以上に格付会社を信用して動いてきたという印象がございます。したがって、一つ規制のありようという意味では、先ほどどなたかおっしゃいました、意見としての格付のプロセスを限りなくつまびらかにするというのがまず一歩目だろうと思います。

その上で、どなたかにお伺いしたいのですけれども、マーケットの中でも、OTCの証券化商品のような場で、仮に格付会社さんが従来の印象より限定的な機能を果たすことにとどまった場合に、証券化商品市場を効率化するために、どのような機能を付加したらいいのかというようなことについて、もしご意見がおありでしたらお聞かせ頂きたいと思います。

○池尾部会長

 ちょっと時間がほとんどなくなってきまして、この点に関する議論は今日だけで終わるわけではなくて、まだまだ議論として尽きない点が残されていると思うのですが、引き続き格付機関のあり方及び今出されたような関連した問題については議論を続けていきたいというふうに思っておりますので、本日のところは一応このあたりで議論を終了させて頂きたいと思うんですが、どうしても一言言っておきたいということがもしあればですが、もしないようでしたら、本日の審議はこれで終わらせて頂くということで、格付会社にかかわる規制の枠組みにつきましては、欧米などにおける状況等も踏まえながら、今後引き続き議論を深めていきたいというふうに思いますので、よろしくご協力をお願いいたします。

それでは、最後に事務局のほうからご連絡等ございましたらお願いします。

○池田市場課長

 次回の第一部会単独での開催につきましては、今ありましたように欧米などにおける状況等も踏まえていく必要がございますので、しばらくお時間をちょうだいして、おそらく11月中・下旬頃に開催をさせて頂きたいというふうに考えておりますが、正式な日程、議題等については追って連絡をさせて頂きたいと思います。

また、先ほどありました第二部会との合同での金融ADRの審議につきましては、第二部会のほうの運営との中で、場合によってはそれ以前にも開催をお願いすることがあるかもしれませんが、その場合はまた追ってご連絡をさせて頂きます。

○池尾部会長

 そういうことで、ちょっと第一部会はあきますが、おっしゃっていた金融ADRの審議はあると思うので、それでは、以上をもちまして本日の会議は終了とさせて頂きます。どうもありがとうございました。

以上

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