金融審議会金融分科会第一部会(第55回)議事録

日時:平成20年11月19日(水)10時02分~11時57分

場所:中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室

○池尾部会長

それでは、定刻を過ぎましたので、ただいまから金融審議会金融分科会第一部会の第55回会合を開催いたします。皆様には、本日はご多用中のところご参集頂きまして、誠にありがとうございます。

委員の異動について、池田市場課長からご紹介頂きます。

○池田市場課長

前回の会合の際に、異動のメンバーについてご紹介をさせて頂きましたけれども、私ども事務局のほうの不手際で住田委員をご紹介いたしませんでした。深くお詫びを申し上げるとともに、本日ご紹介をさせて頂きたいと思います。本年の4月から委員に就任されておられます住田委員でございます。

○住田専門委員

住田でございます。よろしくお願いいたします。

○池尾部会長

どうもありがとうございました。

それでは、本日の議事に入らせて頂きたいと思いますが、本日は議事次第にありますように2点です。1つは取引所の相互乗入れについてまずご審議を頂いて、それから前回に引き続きまして、2番目の課題として格付会社に係る規制の枠組みについてということで、ご審議を頂きたいというふうに思っております。

それでは、時間が限られておりますので早速中身に入らせて頂きたいと思いますが、まずは1番目の取引所の相互乗入れにつきまして、事務局より説明をお願いいたします。

○井藤市場業務管理官

それでは、早速ではございますが、説明を始めさせて頂きたいと思います。

お手元の資料の1というものを中心に、あと若干資料2も参照させて頂きながらご説明をさせて頂きたいと存じます。

それではまず、資料1の1ページ目でございますが、「論点メモ(1)」というものでございます。項目といたしまして、取引所の相互乗入れのための枠組みの整備についてとございます。まず、最初に、これは昨年に審議頂いてご報告頂いた事項でございますが、その内容を若干復習させて頂きますと、まず昨年の報告におきましては、相互乗入れにつきまして概要以下のような内容が取りまとめられたところでございます。諸外国の状況を踏まえると、我が国取引所の経営基盤を強化し、国際競争力の強化を図っていくためには、取引所間の資本提携を通じたグループ化などによって、株式、債券からコモディティ・デリバティブまでのフルラインの品揃えを可能とする制度整備を早急に行っていく必要がある。

次に、制度整備に当たりまして、金融商品及び金融取引は金融商品取引法で規制し、コモディティ・デリバティブ取引は商品取引所法の下で規制するという両法制の枠組みの下で資本提携等を通じた相互参入等を可能としていくことが喫緊の課題である。

具体的な相互参入の設計の形についてですが、まずこれは資料2のほうの3ページ目をおめくり頂きたいと思いますが、これは左側が金融商品取引所が商品取引所の分野に出ていくという場合のイメージでございまして、右側がその逆で商品取引所のほうが金融商品市場を開設していくと。基本的にはマル1にありますように、その中段の欄になりますけれども、子会社を持つことによって相互乗入れをしていくと、それからまたその次の類型といたしまして、本体で両分野の市場を開設すると。さらに持株会社制度がある金融商品取引法においては、持株会社の下での相互乗入れ、こういったものを認めていくことが適当とのご報告を頂いたところでございます。

商品取引所のほうのケースで持株会社がないのは、現行の法制上、持株会社制度がないということでございまして、当然その部分が手当されれば同様な枠組みが考えられるのではなかろうかということでございます。

こういったご報告を受けまして、政府の方でございますが、一番最後の資料1の部分でございますが、市場強化プランというものを取りまとめさせて頂いてございまして、このプランというものは政府一体として推進するということが骨太の方針でも決められておるわけでございますが、この中におきまして、2ページ目をおめくり頂ければと存じますけれども、金融商品及び金融取引は金融商品取引法の規制対象とし、商品デリバティブ取引は商品取引所法の規制対象とする両法制の枠組みの下で、この両取引所の相互乗入れを可能とするための所要の制度整備について、平成20年中、この年末まで、を目途に検討を進め、その後、速やかな実現を図るということが盛り込まれているところでございます。

こうした流れを受けまして、各取引所における取り組みでございますが、これは商品取引所との相互参入に加えまして、ETFの多様化ということについて昨年ご報告頂いて、これもまた先ほど申しました市場強化プランに沿って、コモディティ分野のETFを含む多様化を推進してきているわけでございますけれども、こういった動きを背景といたしまして、本年に入ってから金融商品取引所と商品取引所との間におきまして、金融商品市場と商品市場の双方の市場における一層の発展に寄与し、市場参加者にとって利便性の高い市場の構築に資することを目的として、相互協力協定を締結する動きが拡大しているということでございます。

これは、資料2の5ページ目にこうした動きをまとめさせて頂いておりまして、ご参照頂ければと思います。

それで、次に本日ご審議頂きたい事項でございますが、この制度整備に当たっての基本的考え方という項目でございます。今後、政府部内におきまして相互乗入れを可能とするための制度整備について、具体案を速やかに策定していくことが求められるけれども、その際には以下の点に留意する必要があるのではないかということでございます。

マル1といたしまして、柔軟な参入形態を可能にするということでございまして、取引所又はそのグループによる相互乗入れを可能とするに当たりましては、適切なガバナンスを確保しつつ、効率的かつ効果的な市場運営を可能とする観点から、その経営形態を柔軟に選択できるよう制度整備を行っていくことが適当ではないか。

具体的には同一の取引所において、金融商品市場と商品市場の両市場を開設することを可能とすることに加え、親子会社の形態や持株会社を通じた兄弟会社の形態によるものを可能とすることが適当である。

また、金融商品取引所又はそのグループが商品市場を開設する場合には、例えば、自主規制法人、こういった自主規制法人の制度は、現状におきましては金融商品取引法の世界のみにあり、商品取引所法の世界にはないわけでございますが、こういった自主規制法人の仕組み、また金融商品取引清算機関など、金融商品取引法に基づきます既存の枠組みというものを活用できるようにすることも検討すべきではないかと。

次の点といたしまして、取引所等に対する監督の重複排除、規制のスリム化という点でございまして、取引所又はそのグループが相互乗入れを行う場合、行政においては、金融商品市場の健全性・適切性を確保する観点と、商品市場の健全性・適切性を確保する観点の両面から、必要な監督を適切に行っていく必要がある。これは両法制の枠組みのもとで規制していくということで当然のことかと思いますけれども、しかしながら、同一の取引所またはそのグループが、複数の行政当局から、現行法に規定される許認可等の監督をそのまま重複して受けることとすれば、取引所等にとって過度な負担となるのではないか。このため、各法の立法趣旨を実質的に確保し得る範囲内におきまして、行政当局サイドで密接な連携を図ること等によりまして、機能別の監督を適切に実施しつつも、取引所等に対する監督、エンフォースメントの部分ですけれども、この重複を極力排除していくべきではないかということでございます。

最後の点でございますが、金融当局と商品当局との連携強化ということでございまして、取引所の相互乗入れによりまして、金融商品市場と商品市場がより一層近接したものとなり、両市場において裁定取引が進展する等、両市場の流動性が拡大していくことが考えられる。このようなご議論、ご指摘を昨年のこの部会でも頂いているわけですけれども、このような相乗効果をもたらし得ることを踏まえまして、取引所の相互乗入れを可能とするということと同時に、両市場をまたがる不公正な取引が行なわれることによりまして投資者保護に欠ける事態が生じることのないよう、両市場の監督当局による密接な連携を図っていく必要があるのではないかという点でございます。

最後の点といたしまして、制度整備に当たって踏まえられるべき事項等はあるかということも論点となろうかと思います。

以上、駆け足でございましたがご説明を終わらせて頂きます。

○池尾部会長

どうもありがとうございました。

今、ご紹介がありましたように、この点に関しては昨年度の報告で基本的な結論は出しているところですけれども、資料1の2ページにありますように、制度整備に当たっての基本的な考え方の確認をして頂きたい。いずれも当然のことのように私は思うんですけれども、確認をして頂きたいという趣旨で議題として取り上げております。

それで、今のご説明に関連いたしまして、ご意見、ご質問等ございましたらお願いしたいと思いますがいかがでしょうか。

上柳委員。

○上柳臨時委員

恐れ入ります。取引所の相互参入あるいは乗入れについて、基本的な方向性はもう去年から議論されているとおりですけれども、去年も議論したことなのかもわかりませんけれども、本来はというか、すごく大きな罪因としては、似たようなといいますか、かなり近似した金融商品について、法制なりあるいは監督の体系がわかれているということ自体も、いろいろ消費者保護上もあるいは市場の円滑化という点からも、私は問題があるんじゃないかと思っております。ただ、当面といいますか、2つの法制を維持した上で、相互乗入れをしていくという方向で幾つかの留意事項があるということはご指摘のとおりだと思います。

ということで、特に私が心配いたしますのは、いわゆる商品取引所法のもとでの業者について、いわゆる消費者被害が多くありまして、訴訟も多いですし、それから国民生活センターへの苦情も多いです。多分、商品取引関係について、いわゆるプロとアマとの区別をきちんとするとか、市場整備するという手当てをされているというふうには聞いておりますけれども、それをきちんとして頂くということが前提でこの議論は進んでいるんだというふうに認識しておりますので、その点ご確認して頂けるとありがたいです。

以上です。

○池尾部会長

私もご指摘のとおりだろうというふうに認識しております。

○飛山専門委員

ただいま井藤さんからご説明頂きました、取引所の相互乗入れのための枠組みの、論点メモの2ページのところにあります制度整備に当たっての基本的な考え方というところにつきまして、東証としては全面的に賛成いたします。

その前提とする考え方ですが、現在、国際金融市場は世界的に危機的な状況にあるということができるわけですけれども、そうした状況にも関わらず、日本から見ますと、東京市場の国際競争力を強化するということはやはり大事だろうということで、我が国取引所の相互乗入れに係る制度整備を可能な限り早期に実施するという方向性を堅持しまして、諸外国の取引所との市場間競争を通じたイノベーションの促進とか効率化をスピード感を持って実現していくということが必要であり、そうするのが我々の責務だろうというふうに感じております。この方向性を受けまして私ども東証でも、既にエネルギーでありますとかレアメタルなどの我が国の需要家や機関投資家にもニーズのあるコモディティ・デリバティブ商品の上場について、体制整備を含めて社内的な検討を開始しているというところであります。そうしたことからこのメモの考え方に賛同するものでありまして、ぜひこの方向で進めて頂きたいと思っております。

それから、具体的な制度整備に際しまして、2点ほどご配慮頂きたいということがございます。その1つは取引参加者の多様化ということでございまして、取引の流動性を確保する観点から、取引所が本体でコモディティのデリバティブ市場を開設するという場合には、商品取引所が開設している商品市場と同様の取引参加者の参入を可能として頂きたいということでございます。

それから、2点目が資金決済とか取引の効率性を確保する観点から、これはメモの中にも触れられておりましたけれども、既存の金融商品取引清算機関による金融取引とコモディティ・デリバティブ取引との間のネッティングとかリスク相殺を可能にして頂きたいということでございます。

この2点について特にご配慮頂きたいというのが、私どもの要望でございます。

以上でございます。

○池尾部会長

ありがとうございました。

では原委員、お願いします。

○原臨時委員

上柳委員がおっしゃられた発言に関連してということで挙手をしていたのですけれども、この方向性についてはちょうど1年前にもここで検討して、異論なくこれで進みましょうということではあります。

産業構造審議会の資料が今日、資料2で8ページ以降につけておられるのですけれども、これが7月の資料で、確か秋以降もまた検討が進められていると聞いておりまして、私は今日、経済産業省の方もオブザーバーでは来ておられるのかなとは思いますけれども、取引所の相互乗入れの姿の図はありましたけれども、私は審議会の相互乗入れというのでしょうか、お互いに金融庁側も経済産業省の審議がどのように進められているのか、それからこちら側、金融審側では経済産業省の審議がどのように進められているかというところについて、齟齬がないように、将来的な制度設計に向かって頂きたいと思っております。これは意見ということで、よろしくお願いしたいと思います。

○井藤市場業務管理官

今、ご指摘頂きました点でございますが、我々はこのプランで相互乗入れの点が盛り込まれて以降、経済産業省及び農水省とは密接に連携してきてございまして、今後の議論、今回のその論点等も含めいろいろと相互に議論をさせて頂き、ここに出させて頂いているわけです。

それで、同様の論点はあわせて産業構造審議会の商品取引所分科会でも議論されているというふうに承知してございます。それで配付資料の8ページ以降、今後の検討事項ということを載せさせて頂いておりますが、上柳委員からもご指摘がありましたけれども、昨年からまさに、商品取引に関するいろいろなご指摘もこの場でも頂いておりまして、その点につきましては、我々も密接にこういう議論があったということにつきましては、経済産業省さん及び農林水産省さんなりにご連絡をさせて、意見交換させて頂いているところでございます。こういった点については、まさに現在、産業構造審議会商品取引所分科会において、精力的に議論されているところでございまして、我々といたしましても、先方の議論を密接にフォローさせているところでございます。物理的な面も含めた審議会の相互乗入れというような点につきましては、貴重なご指摘として今後の課題として受け止めさせて頂きたいと思います。

○原臨時委員

私はうっかりしておりまして、池尾先生はもう相互乗入れしておられるんでしたよね。たしか、そうでしたよね、すみません。

○池尾部会長

はい、私個人は商品取引所分科会の委員も兼務しておりますので。

黒沼委員。

○黒沼委員

相互乗入れの具体的な方法についてお伺いしたいんですけれども、「論点メモ」の3ページには、例えば自主規制法人や清算機関など金商法に基づく既存の枠組みを活用できるようにすることを検討すべきではないかと書かれていまして、そのとおりだとは思うんですけれども、そこで考えておられるのは、例えば商品取引所法にも自主規制法人の制度を入れるという意味なのか、それとも金融商品取引法上の自主規制法人が商品取引所の自主規制も担当できるようにするという意味なのか、どちらでしょうか。

○井藤市場業務管理官

お答えいたします。

今、商品取引所の見直しにつきましては、資料のほうに添付させて頂きました多岐にわたる論点について精力的に検討されているというふうに存じています。その結果、いろいろ大きな枠組みについても議論の対象として検討されているとは思いますけれども、自主規制法人制度自体を導入するかどうかについては、私どものほうでこれをこういう方向だというふうにご紹介できる状況ではありません。

ただ、仮に自主規制法人制度がとられない場合であっても、金融商品取引法の世界では自主規制法人制度というものがあり、これはうまく機能しているということでございますので、商品取引の世界におきましても、不公正取引の監視等々いろいろな自主規制的な機能というのは必要であるので、そういう部分については委託できるようにできればどうかといった問題意識でございます。

○黒沼委員

それで結構だと思います。そうすると、委任の根拠規定を商品取引所法に置く必要がありますよね。商品取引所法の改正も当然必要になるという理解でよろしいですね。

○井藤市場業務管理官

そういう理解で結構かと思います。法的な位置づけをどこに置くかというような技術的な問題はあろうかと思いますが、大きな考えとしてはそういうことが必要になるということで、法制的にもこういうことが可能かどうかを含めて検討をする必要はあろうかと思いますが、可能であればそういう方向のことをできるように検討していくべきではないかということございます。

○池尾部会長

よろしいでしょうか。ほかにございますか。

それでは、いろいろご意見頂きましてどうもありがとうございました。

この相互乗入れの件に関しましては、今後、政府内での議論の状況等も踏まえなければいけないとは思いますが、基本的には本日のこの議論に沿った形で当部会は年内を目途に報告書を取りまとめる予定ですが、その作業を進めさせて頂きたいというふうに思っておりますので、どうかよろしくお願いいたします。

それでは次のというか、より議論に時間を要しそうなテーマのほうに移らせて頂きたいと思いますが、次の議題は格付会社に係る規制の枠組みについてということで、前回からの続きですが、本日はまずヒアリングをさせて頂きたいと思いますが、前回は格付会社の方々からヒアリングをさせて頂きましたが、今回は格付を利用する立場の方々からヒアリングをまずさせて頂きたいと思っております。

それで、本日はモルガン・スタンレー証券株式会社の赤井厚雄マネージング・ディレクターとそれから住友生命保険相互会社の荒巻晋運用企画部長のお二人においで頂いております。

お忙しい中、どうもありがとうございます。

それで、いつも自分で言っていて失礼だと思うんですが、5分という極めて短い時間でご意見を表明頂くということで誠に恐縮なんですが、よろしくお願いしたいと思います。

まずは、モルガン・スタンレー証券株式会社の赤井厚雄マネージング・ディレクターからお願いいたします。

○赤井参考人

ありがとうございます。

そうしましたら、5分でまとまるように若干早足で申し上げたい。

今日は私のほうから資料を2種類お持ちしております。資料3というところでございますが、今日、主としてお話しさせて頂く部分、このうちの前半半分ぐらいを5分でご説明させて頂きます。適宜、ご参考頂きたいものが資料3ということでありまして、今回の意見表明の中で若干触れられている部分について敷衍をする、ないしはその詳細な資料というふうなことでつけさせて頂いております。

まず、格付会社というものに、そもそも私ども利用者という立場から何を期待するのかというふうなことで、これは日本、海外に関わらないことでございますけれども、この資料の1ページのほうでございますけれども、やはり投資家の信用リスク分析に対する補完機能の提供ということだと思います。つまり、クレジットリスク分析業務の部分的代行及びそれに関する教育機会の提供、これが非常に大きなものではないか。実は、多数の案件に格付会社というのはアクセスをするということでございますので、それによってインハウスとして蓄積された一種の擬似的なマクロデータ、これに基づくやはり高度な信用分析能力の発揮というふうなものが本来期待されているのではないかと。

これは特に限定的な数の案件にしかアクセスをすることがない中小の機関投資家にとっては、実は極めて重要な機能であると。これは大投資家ですね、常時マーケットの大多数を購入しているような大投資家であればインハウスで持っているものが、やはり中小の機関投資家にはそれがない。それを提供することが期待をされている。

それからもう一つは、特に日本においてそういったことが多いわけでありますけれども、守秘義務その他、ないしは個人情報保護法その他に守られた情報など、不特定多数の投資家に提供することが困難な情報にアクセスすることによって得られる案件ごとのミクロレベルでの一定の洞察の提供。

それから、これは特に利用者ということで、私どもの場合は複数の格付をとるということをよくやっております。これは何かというと、やはり格付会社が相互に談合するということを想定しておりませんので、異なる山道から山頂に登ってくると。したがって、信用リスクの分析に関するさまざまな視角というものが提供されて、そのコンセンサスとしての格付というふうなものを投資家に対して提示できる、プラス、昨今問題になっておりますが、中立的な立場からの判断の提供ということではないかと。

その中で市場の混乱を招いた中で格付会社が果たした負の役割ということでございますけれども、やはり二次証券化商品ですね、一旦証券化されたものを再構成をする証券化商品の急拡大、それを背景とした過剰な市場全体における信用創造のプロセスの中で、格付会社がそれを促進したというところがあると思います。もう一つはその背景としましては、バーゼル II の実施に伴う格付に対する一種の過度な依存というふうなことが背景となってそういった格付の影響力を増したというところがあると思います。

二次証券化商品は、ただ単に複数のものを取りまとめてわかりにくいものをつくるだけではなくて、その中で信用リスク以外のリスク、例えばボラティリティ・リスク等、こういった本来の格付会社の範疇から外れるものも含めて、でき上がった商品としてはクレジット商品という形でつくり上げていったというところがありまして、その結果として原資産情報の追跡可能性に問題のある複雑な証券化商品が増加をした。複雑なものが増加すれば、投資家が直感的に判断することが広範には難しいことになりますので、それが投資家の格付依存というふうなものをさらに助長したというところがあると思います。次の3ページのところでございますけれども、これは今それを模式的に表現したものでございます。

4ページはこれはアメリカの証券化商品の市場の例でございますけれども、90年代の後半から20世紀の初頭に至るまでサブプライム、ホームエクイティと言われていましたけれども、こういったABSそれからCMBS、商業用不動産のABSそれからCDOというのは規模において大体似たり寄ったりの大きさのものであったわけであります。そういう中でこのサブプライムがまず先行して急激に膨張し、それに対する受け皿としての二次証券化、CDOというのがやはり急激に膨張し、それにつられた形で商業不動産の証券化が拡大したわけでありますけれども、やはりこの2者、まずサブプライムが先行し、それをCDOが受け、それを拡散させていったというプロセスがここから見ても、過去20年間ぐらいのトレンドの中で異常な値をこの緑のグラフと黄色いグラフが示しているということが示しているということがあらわれていると思います。

それで、この二次証券化商品について今、述べましたが、何が問題だったのかという5ページでございますけれども、従来の証券化商品になかった信用リスクの濃縮機能というのを果たしたということはあると思います。それからもう一つは異なる種類の証券化商品を、ないしは金融商品を集めることでリスクの分散が図られると言われておりましたが、それがそもそも疑問符が呈されるようになっている。結果として、問題発生時に原資産の情報の追跡による原因の把握が困難になった。それからもう一つは、従来の伝統的な証券化というのは、ある一定のキャッシュフローを本来必要のあるナチュラル・バイヤーといわれる長短の資金につなぐというふうなところに意味があったわけでありますけれども、主としてヘッジファンドその他を経由いたしまして短期の資金を吸引したと、短期の流動性資金を住宅ローンだとか商業用不動産ローンなどの長期性の資産との結びつきを助長したという部分があった。プラス、そういった商品の中には、先ほど申しましたような価格変動リスクが入っておりまして、それによって商品の投売りというふうなことを増長した中で、格付の投資家の依存というふうなものを出した。今の濃縮機能と分散機能というところは6ページのほうに書かせて頂きました。

それで、我が国の市場において活動をしている格付会社において懸念されるポイント、やはり欧米とは若干違う事情もございます。まず、端的に申し上げますと、格付会社は日本においては中小企業であると。経営資源が極めて制約された中で活動を行っている。その中で取引量の急激な増大と業務の複雑さに人員がどこまで追いついているか、それからその人員の層の厚みがいかがなものであるか、それからもう一つはやはりそういう中で分析能力が属人的であったというふうなことが言えるのではないかという感想を私は持っております。プラス、格上げ格下げ、いずれも遅れるというようなところからありますようにモニタリング能力が確保されていたかという点については極めて疑問が呈されている。それは主として、やはり中小企業としての実態、資源の制約というところからそういうものが出てきているのではないか。

それからもう一つは、米国とは異なり我が国では実は、今申し上げましたような証券化商品の仕組みの複雑性というものが、投資家の格付依存を招いたとは必ずしも言えない部分がございます。むしろ、我が国においては裏づけとなるさまざまな原資産に関わる情報開示の不足、市場全体のマクロデータの不足、こういったことが翻って格付への依存を招いたのではないかということで、日米の違いということが言えると思います。

そういう中で、最後のまとめの部分でお話させて頂きたいのは、8ページですが、新たな環境下、今の環境下における格付の位置づけはどうあるべきかということで、利用者の立場からでございますけれども、日本の証券化商品はわかりやすい一次証券がほとんどです。日本の、証券化という名称を使うか否かはともかくといたしまして、いずれにしましてもやはり資産がこれだけある国において、現物資産、アセットファイナンスというのは本来金融市場の競争力の強化に資するものであると。そういうためには、格付会社の存在はある種必要悪として、引き続き必要でございますが、反面で我々が同時に横目で見ておかなければいけないことというのは、投資家に対する原資産情報の提供の環境整備というふうなものは、日証協、金融庁さんのリーダーシップで進んでいる。これは欧米よりはるかに進んでいるわけでございます。

提供されるそういった情報の標準化をさらに推進する、つまり情報の透明性が進むだけではだめであって、比較可能性を担保するという形でのやはり標準化というものをやる必要がある。それを従来は格付会社ないしは大機関投資家の中にインハウスで取り込まれていたものを、やはりデータベース化して提供できるような枠組みというふうなものをつくるべきではないか。その中でオリジネーターと言われる人たちが従来は情報の開示に後ろ向きであったり、あるいはインセンティブがないという形で横を向いていたところが正直ございましたが、それをどのようなインセンティブないしはルールという形で、あめとむちでこれを進めさせていくか。

そういう中で例えば2項有価証券、これは日本証券業協会のルールの外側に出てきてしまう有価証券でございますけれども、ないしは証券化されていないABL、こういったものも含めて、ひずみができない形で情報開示の基準というものを進めていく必要がある。そういう中で格付の役割というのは、私は徐々に低下していくというふうな方向であると考えておりまして、むしろ投資家によって与えられた情報を分析する、それをサポートするための新たなニーズというふうなものが発生し、これが一つの金融の新しい分野になると考えて、投資家の考える力の補強を通じて金融市場の足腰を強化するということが、むしろ我が国においては必要でございまして、そういう中で、繰り返しになりますが、従来の格付会社の役割は縮小すべきであると。投資家の信用分析に対する補完機能への回帰。そうすると、今言いましたように信用分析のサポート的な産業というふうなものに従来、格付会社において正しい分析を行っていた人はむしろ流出して、そういった新しい業態というのをつくるということが格付会社の中ではなくて、外でできるのではないか。

10ページに最後の結論でございますが、特に日本における視点ということでございますが、格付会社の規制においては、私の意見でございますけれども、国際的な協調というものはもちろん必要でございますが、盲目的な対米追従の必要は全くないと考えております。我が国においては、いわゆる二次証券化商品が非常に少ないというところからしますと、複雑な商品が少ないわけでありますので、むしろ格付会社の役割が縮小する中での規制という考え方が重要であって、これはよく懸念を表明されますが、規制の強化によって格付会社の行動が制約されるということが指摘されますが、そのマイナスはそれ自体の役割が縮小することによって、相対的に我が国においては小さい、アメリカにおいてはそれが混乱を招く可能性というのはあると考えております。本来、求められる補完的な役割を格付会社にいかにして果たさせるかというコンセプトに基づく規制のあり方ということが重要であると。

そういうわけで、対米追従は必要ないと申し上げましたわけでありますけれども、アメリカのSECにおけるNRSROの認定基準というのが、結果的には国際的に活躍をする格付会社、日本国内の格付会社の行動も一律に規定し得る、制約し得る可能性があるという点は非常に重要な点であると考えております。例えば、原資産情報の開示基準などに関しまして、日本として物理的に対応できないものをアメリカで決められて、即日適用ということに、もしなった場合は、さほど問題のない日本の市場が当日、実質的に閉鎖されてしまうと、そういうことも起こりうるわけでありまして、日本として必要に応じて独自の対応が可能となることをいかにして担保するか、こういう点が日本の市場を守っていくというふうな観点からは極めて重要であると。

それから、証券化商品に付される格付符号と社債等に付される格付符号、これを区別化するという議論がありますが、これについては私は有害であると考えておりまして、つまり何かというと、アメリカの場合は相当投資家の層が広い、日本ではただでさえ投資家の層が限定的で、ゆがみが見られる日本の証券化市場で、本来望まれる投資家がまだ入ってきていない部分が相当あります。この人たちの新規参入を阻害する可能性があるというふうに私は懸念をしておりまして、そういう意味では一定の配慮が必要ではないかと。

最後でございますが、こういった規制を進めるに当たっては、同時に両輪としてその原資産情報等の伝達流通に係るインフラ、それから制度の整備、これを同時に進めることが必要であり、それがないと、一つ間違えれば信用収縮を招くおそれがある。特に巨大な資産、現物資産市場を抱える我が国においては、これは大きな課題であり、ここのところをうまくやりますと、規制を適切に進めながら、市場をむしろ強化していくというところに持っていけるというふうに考えております。

後の部分は、若干そういったマクロ情報の提供の不備だとか、その中で幾つかの情報というふうなものを提示させて頂いていますので、後ほどもしご質問その他がありましたら、そこでお答えしたいと思います。

若干、時間を超過いたしましたが、以上、私の報告を終わらせて頂きます。

○池尾部会長

ありがとうございました。

それでは、次に住友生命保険相互会社の荒巻晋運用企画部長、お願いいたします。

○荒巻参考人

住友生命運用企画部長の荒巻でございます。よろしくお願いいたします。

資料は4でございます。

私のほうからは、投資家の立場として格付機関の格付をどのように利用しているかということについてご説明申し上げます。

資料を1枚おめくりください。弊社では、各種の投融資案件の実行可否を検討する際、弊社自身で正しく収益評価、リスク評価ができるのか、また投融資実行後も継続的なモニタリングができるかという点を判断基準としております。その際、格付機関の格付を参考情報として使用しておりますが、格付機関の格付のみで投融資判断をすることはございません。

では投資家にとって格付機関の格付の意義は何かと申しますと、まず今申し上げましたとおり、取引先の信用力判断のための有用な参考情報になっているということでございます。我々が気づかない視点や情報について格付機関のレポートが参考になることは多々あります。また、現実にマーケットでは、格付機関の格付が債券等、証券化商品等の価格に大きな影響を与えております。こういったことから、格付機関の格付の動向を継続的に注意深くウォッチしております。弊社では信用リスクを有するすべての投融資先に独自の格付、社内格付をつけ、収益管理及びリスク管理のすべてを社内格付をベースに行っております。そして、この社内格付をベースに資産横断的な信用リスク管理、クレジットポートフォリオ管理を行っております。その社内格付の精度の向上のためにも、社外の格付機関の格付情報を活用しております。

具体的には例マル1にございますとおり、公表されている格付機関の手法や分析で、当社内の社内格付のレベルアップに役立つものは参考にしております。また、例マル2にあるとおり、社内格付と格付機関の格付が乖離している場合、その要因を分析し対比させることで社内格付の精度向上に役立てております。さらに例マル3のとおり、格付機関が公表している累積デフォルト率と社内のそれと比較検証をやることで、事後的なフォローアップに役立てております。

次のページにお移りください。投融資に関する判断の流れを図に示しております。ここには一般論で示しておりますが、具体的に証券化商品の投資についてご説明申し上げます。左上のほうに情報収集の例として裏づけ資産の状況とありますが、当社では裏づけ資産のヒストリカルデータに対して独自にパラメーターを設定して分析しています。具体的に言いますと、デフォルト率についてストレスをかけたり、期限前弁済率等について保守的な前提を置いてシミュレーションしたりしてチェックを行っています。当然、債務者の分散状況、属性、信用補完の状況、法的問題についてもチェックをします。こうして独自の分析によって信用力の判断をいたします。一方、こういった分析は、格付機関のほうもされておりまして、ある程度レポートで公表されております。ですから、私どもがやったこういう分析と格付機関がやっている分析と比較対照させることで、より当社の独自の分析というのが生きてくると考えております。

こうしたことを通じて、証券化商品についても社内格付をつけて、それでもって判断をしていくわけでございますが、格付機関の格付がトリプルAであっても、弊社独自の分析の結果、社内格付の最上位の格付はつかないということは時々ございます。さらに特定のリスクについて当社ではクリアできないと判断して、格付機関の格付がトリプルAであっても投資不可という結論になる場合もございます。こうした弊社独自の審査を行なった上で、そういった社内格付に見合った金利、価格が設定されているのかという点も考慮して投資判断を行ないます。さらに、投資後の継続的なモニタリングとしては、毎月、信託銀行やアレンジャーから裏づけ資産の状況を全件取り寄せチェックし、その結果をさらに社内格付に反映すると、こういうサイクルをやっております。こういった一連のプロセスを当社で行うことが可能な案件に限って投資をしております。よって、中身が把握できないような、ブラックボックスになっているような商品への投資はしておりません。

海外証券化商品については、当社も一時、相応に投資をしておりましたが、9・11テロ後のマーケットの調整局面で価格が想定以上に下落し、今回のマーケットの混迷のときに起きたような問題点がそのときもかなり垣間見えたという経験を踏まえまして、リスクの認識をかなり慎重なスタンスにし、その後の相場の戻し局面で売却を進めました。その後、先ほどの赤井参考人のご説明のように二次化、三次化商品というのが欧米の中でかなりな大きな市場を占めるようになりまして、それは当社の投資尺度になかなか合わないということで投資を見送っていたため、今回の市場混乱の影響を避けることができました。

最後のページでございます。以上述べたことを含めて、まとめとして最後のページに書かせて頂いております。ここに書いてあるとおりでございますが、今回の問題を契機といたしまして、格付機関の格付の精度の、それからマーケットの信頼性が向上し、マーケットが健全に発展していくことを願っております。

私からの説明は以上でございます。ありがとうございました。

○池尾部会長

どうも大変ありがとうございました。

それでは、今ご意見を頂きましたお二人の方のご説明に関しまして、委員の方々から何かご質問とかご意見があれば少し時間をとりたいと思いますので、ご自由に出して頂ければと思いますがいかがでしょうか。

○上柳臨時委員

適切な質問なのかどうか自信がないのですけれども、荒巻さんに1つお伺いしたいんですけれども、最後のほうでおっしゃいましたいわゆるブラックボックス的な商品というお言葉に私は興味を持ったんですけれども、荒巻さんがおっしゃるブラックボックス的な商品でも格付がついているのはもちろんあると思うんですけれども、簡単に言うとどこが区別なのでしょうかね。私の感じですと、いわゆる原資産についてのリスクとそれから仕組み商品、二次化、三次化するとさらにそれが複雑になるのかもしれませんけれども、例えばリスクと分けることができるのか。いわゆる証券化商品について別の格付符号をつけるというのは、そこは分けられるという前提に基づいているんじゃないかと思うんですけれども、その区別と荒巻さんがおっしゃるブラックボックス的な商品かどうかということは多分同じ面もあり、ずれている面もあるんじゃないかと思うんですけれども、少しご回答がありましたらお願いしたいと思います。

○荒巻参考人

ちょっと私の言い方の中でブラックボックス化と言ったのは、私どもにとってなかなか独自の分析がしにくいという意味で申し上げまして、証券化商品、二次化、三次化商品がすべてブラックボックス的な商品であると、あるいは証券化商品は通常のものとは違っているから格付符号等も分けてやるべきであるとかいう議論には直接的には私はくみはいたしません。だから、ブラックボックス化云々という部分は投資家のスタンス、それから経営資源をどれぐらいつぎ込んで、人員をつぎ込んで分析体制を敷いているかとか、そこにもよるとは思います。

○池尾部会長

若松委員。

○若松委員

どうもご説明ありがとうございました。

伺いたいのは、お二方とも要するに格付機関の情報について補完機能、参考情報というふうにおっしゃって、私はまさにそのとおりだと思います。ただ、日本の場合には、どうしても一般投資家から見るとこの格付情報というのがかなり絶対的なものみたいに一人歩きしているような傾向があって、そこはちょっと懸念されるところかなと思っているんですけれども、質問したいのはこういう金融審議会という公の場で、プロの投資家から見て、現在の格付機関が出している格付について、プロの投資家の立場からその制度とか信頼度については率直に現状どのように思っていらっしゃるのかというのを、別に社名をおっしゃられなくて結構ですから、プロの投資家の立場のご判断というのをちょっと参考までに伺えたらと思います。

○赤井参考人

私は必ずしも投資家というわけではありませんで、アレンジメントですとか、そういったところの観点なんですが、まず、やはり日米で相当状況が違うと思います。先ほど申し上げましたように、日本の状況というのはあくまで中小企業的なもの、つまり私は格付機関という名前がそもそも悪いんだと思いますね。機関とついていますと、何か特別な能力を持っているというふうにとらえられがちだという部分があって、やはりむしろ私は格付会社という表現を使うものであります。しかも、信用格付会社という表現を使うのが適当である。この格付機関となると、全知全能のリスク判断の能力を持っているというふうにとらえられがちな部分がありまして、そこは日本語と英語でやはり違う部分というのがあります。

そういう中で、やはり能力ということに関しては、幸いにして日本は今お話にありました二次化それから三次化商品、それから特にその中で資産の入れかえを途中で、ファンドマネージャーのような、これは実質ファンドないしはヘッジファンド、こういうものが特にアメリカではABSCDOですとかSIVといったところで非常に問題となった部分があります。つまり、どの時点で何が入っているのかかが特定できないと。

それからもう一つは、複数のものが入っていて分散という美名のもとに行われた部分はありますが、反面で、そのデータの横串が刺せないと、つまり全く異なるものを比較しようとする、アップルトゥアップルの比較ができないというところが問題となったわけですけれども、幸いにして日本は欧米と比べまして人員その他の整備、体制というのは整っておりませんが、商品がまだ減少的な段階にあるがゆえに、さほど実は大きな問題には至っていないと。したがって、そのあたりをいかに維持していくのかということに関しましては、やはり投資家の格付依存というところを今のような住友生命さんのように大きなインフラを持っていらっしゃるところはいいわけでありますけれども、やはり日本の金融市場を全体として底上げしていこうと思った場合は、それ以外の人たちも入っていくような仕組みをつくらなければいけないとなると、やはり原資産の情報自体の伝達の仕組みというふうなもの、この間口を広げていくようなことをするというところに関しては、逆にアメリカよりも日本のほうが遅れている部分というのがこれまではあったと。ただ、それに対する取り組みという意味では、金融庁さん、日証協を中心として、今、相当程度進んできていると。あとは、その大もとのデータを出す人の協力がどこまでやれるか、そのためのインセンティブ、ルールをどうつくっていくのかというところを担保していくということが今後の非常に重要な課題であると思いまして、能力面というふうな意味では、今申し上げましたように日本の実情に合わせてはどうにか問題にならないような能力はそれなりに備えている、ただし、当然のことながらアメリカのような商品を格付する能力があるかというと、私はないと考えています。

○池尾部会長

ありがとうございました。

荒巻さん。

○荒巻参考人

私も日本の格付会社の分析能力には非常に敬意をお払いしているところもありまして、先ほど申し上げましたように、私どもが気がつかない視点とかも提供されることも多いと思って評価しております。やはり今回の問題でいきますと、海外でああいうことが起きたという中では、単に格付会社の役割、その部分もあったとは思いますが、やはりマーケット全体でのクレジットバブルというのがあって、それはレバレッジをきかせた投資家がその受け皿として証券化商品というものを大量に購入して、通常の社債等であればリアル・エコノミーの中で供給の限界があるわけですが、CDS、CDOを原資産として特に二次化、三次化した証券化商品というのは原理的には無数につくれるわけですから、ここがそういうレバレッジをきかせた投資家のニーズにもマッチしてバブルができていったということで、その中で証券化に伴う格付機関の負の役割というものもあったんだと思うんです。

日本に関して言うと、赤井参考人のほうからもありましたように、そういったところまで至る状況になっていなかったということもあって、比較的大きな混乱がなかったという状況ではないかと思うんですね。我々としては、格付会社の分析に評価をしておりますし、また、では我々がそういう格付がなくていいのかというと、先ほどの話にもありましたように、全く格付会社が健全にある精度を持った格付を出して頂かないと、本当のプロの投資家だけということ、相当のインフラ整備をして分析をできる投資家だけのマーケットになってしまうと、マーケットの流動性という問題もございますので、やはり格付会社に役割は果たして頂いて、マーケットが健全に大きく成長していくということを望んでおります。

○池尾部会長

では、原委員。

○原臨時委員

恐縮です。

私は全くの一般の消費者ではあるんですけれども、金融広告についての調査というのは8年重ねておりまして、毎年1回やっているんですけれども、金融広告の調査というのは、実際には金融商品を見ているということにもなって、おっしゃられたように非常に複雑な二次証券化した商品、それからわかりにくいというものがふえてきているというのは大変この数年、実感をしているところです。

質問でお願いをしたいのは、赤井さんにお願いしたいんですけれども、大変短い時間だったので多分もう少しご説明になりたかったというふうに思っておりますが、7ページに最後に裏づけとなる原資産に係る情報開示不足の話を書かれていて、私もやはり非常にここはディスクロージャー・ワーキング・グループも金融庁の中にあるわけですけれども、やはり情報開示不足ということを非常に感じておりまして、具体的にどのようなところをもうちょっと開示をしていく必要があるというふうにお考えになっているのかということと、8ページに、一番最後のところに信用分析サポート産業へ、これからは従来の格付会社は縮小して、具体的に数字をきちんと分析できる能力を持った産業という形が出てくるんじゃないかということを書かれているのですが、これはちょっと具体的なイメージとしてはどういうもので、それで欧米を見るとまだ格付機関というのが結構大きな存在でありますけれども、欧米にしてもやはりこういう信用分析サポート産業のようなところに移行していく流れなのかどうかというところをご紹介頂けたらと思います。

○赤井参考人

まず、情報の開示の不足というのは2つありまして、情報の開示をどれだけの量をやるかということと、それがどこまで標準化されているかと、つまり情報を開示するだけでは相互に比較可能性がないとなかなか難しいわけですね。ですから、そういう意味で今まで日本の証券化商品というのは、やはりオリジネーターの方の事情というものを相当おもんばかってきた部分があります。証券会社が手数料をもらうのはオリジネーターであることが多かったわけでありますので、そういう中で情報開示の標準化というのは、これは出せない、あれは出せるというふうなところで、相当程度縛られてきたという部分があるじゃないかと。

それではいけないので、それだと現状維持はできるけれども、市場は5倍、10倍にはなりません、今のままの規模で果たしていいんですか、これだけ資金の循環がなくていいんですかということを考えたときに、やはりある程度、目線合わせをしていく必要があるだろうというふうなことで、金融庁さんを旗振りに、もともとはこれは金融安定化フォーラムの中で出てきた証券化商品の透明性の向上という中で、透明性向上というのはたくさん情報を出せばいいというわけではなくて、それが相互に比較できないとだめだということですね。直接のこういった問題となっているデット型証券化商品以外の部分でわかりやすい例を言いますと、例えばJ-REITというのがあって、これは不動産会社さんは相当、情報開示を進めていらっしゃるという。ところが、その開示項目がてんでばらばらなんです。ですから、下がったときにどれが割安かを判断して買うというのがなかなか一般の人には難しい部分があって、勢い破産処理みたいな形で、今、清算したら幾らになるかというところから入らざるを得ないので、価格がやはりメンテナンスされない部分というのはあって、そういう部分が一つはあると思います。ですから、情報を開示を進めるだけではなくて、その標準化を図って相互に比較できるような形にしていかないと、言ってみればそれが格付に代替するような情報になる。それがないために、どうしても格付というふうな標準的な情報に、皆さんがついつい目がいかざるを得なくなってくるという部分があると思います。

それから信用分析サポート産業というのは、これは、もともとそういうものは例えばアメリカですと、例えばブラックロックのようなところが提供しているような部分がありますが、これが広範になっているとは必ずしも言えないと思います。ただ、アメリカの場合というのは、二次、三次の証券化商品が膨大なものですから、ある意味で言うと、その中で金縛りにあっていて、格付というのを維持していかなければ金融システムが立ち行かないような状況になっているということがあると思うんですね。日本はそういった状況がないので、むしろこういった方向に誘導していく、ないしは格付会社の業務が縮小していけば、当然、人員整理ということが起こってくると思いますので、その人たちが逆に能力を生かして、こういった部分でむしろ貢献することによって、例えば住友生命さんのようなインフラが整ったところ以外の、それより一歩、二歩落ちるようなインフラのところもそれに対してサポート、そうすると、むしろ外資系の格付会社などというよりは、日本のいわゆるシンクタンクだとか総研のようなところが、具体的な個社は挙げませんけれども、大いに活躍できる部分があるのではないかと考えています。

○池尾部会長

それでは、藤原委員。

○藤原委員

格付機関に関しては、あまり外資系とか日本とかというくくりをしなくてもいいと思います。現在、市場で何が起こっているかと申しますと、日本とか外国とかに関わらず格付機関がつけた信用格付が信用されなくなった結果、証券化市場が混乱を来たし、市場自体がなくなってしまったような状態に陥ってしまっているということです。皆さんもご存じのように、UBSとかシティバンクは何兆円という損失を出し続けています。しかし、彼らは格付の低いダブルBの債券を買って大損をしているのではなく、格付の一番良いトリプルAの債券を買って大損をしているのです。そこで、なぜ格付機関に対して何らかの規制を導入しなければならないかと申しますと、それは信用格付が機能しなくなった結果の大損のために公的資金、つまり国民の税金が使われることになったからです。

一方、格付機関が自らのブランドを高め、信用力を強化していった結果、日本の個人投資家なども、トリプルAだったら安心と思い、投資をしてきて今大きく損をしています。今起きている100年に1回といわれている金融危機が再び起こらないようにするためには、何らかの規制が必要だと思います。

モルガン・スタンレー証券株式会社の方に3つ質問がございまして、1つは、格付機関に格付をつけてもらうとき、発行体は格付機関にお金を払って格付を付けてもらいます。私は利益相反の点からおかしいと思うのですが、これについてどういうご意見をお持ちか教えてください。

2つ目は、発行体は日本の格付機関から格付をもらうよりも、ムーディーズから格付をもらうほうが「格上」だと思っています。ムーディーズはS&Pと並び世界トップ2の格付機関だからです。しかし、企業がムーディーズに自分が意図しているのよりも低い格付をつけられ、不満を持ったとき、その企業はどこへ不満を言いに行くのが一番いいのでしょうか。格付機関に不満を言うとかえって逆効果な場合があります。私は当局にそういう不満を受ける部署があればいいと思うのですが、この点についてどういうお考えかを教えてください。

3つ目の質問ですが、前回委員会が開かれたとき、参考人として格付機関の方たちが出席され、彼らは独立性ということと政治的、かつ経済的プレッシャーからの自由ということを強く主張し、だから規制は要らないと言っていました。それはそれでいいのですが、私は最近の格付には非常に主観が入っているような気がします。例えば、日本が金融不安に陥った時、米系の格付機関は日本国の格付を、待ったなしでアフリカのどこかの国と同じぐらいに下げました。今、アメリカの格付はトリプルAです。米国は不良債権をたくさん抱えているにも関わらずその額を発表していません。ディスクロの点で問題があります。こういう状況にも関わらず、アメリカの格付は「格下げ見直しのウォッチング」にもなっていません。そして、米国はいまだにトリプルAで、アメリカほどひどくないと言われている日本はダブルAです。アイスランドもトリプルAでした。説明が長くなって申し訳ありません。私の3つ目の質問は格付機関が格付をするときに主観が入っていると思うかどうかについてです。

○池尾部会長

藤原委員のご意見に関わる部分については、後半で議論をする予定になっていますので、純粋にご質問のところだけお答え下さい。

○赤井参考人

わかりました。

まず格付機関に、ないしは私は格付会社という呼び方をしますが、それにオリジネーターだとかあるいは発行体がコストを払うというのは、これ自体は本来、格付会社が一定の規律というふうなものを持っていれば、問題にされるものでは必ずしもない。例えば、私どもが不動産の証券化商品を組成するときに格付も取得しますが、例えば鑑定評価書というものも取得をしたりする。つまり、外部のそういった評価のサプルメンタルなサービスを提供してもらうためのコストというふうに考えたら、そこでは問題がない。

ただ問題は、例えば鑑定であれば、不動産鑑定の法律に基づいて一定の規制がそこにあるわけでありますけれども、格付会社についてはそういったものがなかったという点が、やはり一種の規制が入っていなかったという点が、結果的に言いますと、日本でそれが問題だったかということはまだ、先ほど来のお話のように、商品の組成の事情が違いますので、むしろ日本は私はとばっちりであると考えていまして、日本においてもアメリカと同じように証券化商品の市場の機能停止が起こっております。しかしながら、それは日本の証券化商品のファンダメンタルが悪化したことによる機能停止かというのとそうでもなくて、アメリカの商品のファンダメンタルが悪くなった。特に悪くなったという場合に、今の藤原先生のお話の中にありましたように、先ほどのお話とも絡むんですが、私は格付会社にクレジットの分析の能力は一定程度やはりあったと思うんですね。ただ問題は、昨今の流れというのは、証券化商品の中にクレジット以外のリスクが入ってきて、それをクレジットというくくりの中で飲み込んで同じ表示でやってしまった。だから、もし格付の符号を変えるとするならば、クレジット以外のリスクが入っても、ボラティリティ・リスクだとか、こういったものを変えるというふうなことによって、そこに中身が違いますよというふうなことを表示するよというふうな意味では、表示上は適当なことではないか。

それから、日本の格付会社のお話について、今ご質問を頂きましたけれども、アメリカでも日本でも関係ない、確かにおっしゃるとおりでございます。ただ、人材を考えると、やはりアメリカの格付会社がより多くの優秀な人材を引きつけたということはあると思います。そういう意味では、人材の層というのは相対的に広い。ただ、そうは言っても、例えば私も詳細な情報を存じていませんが、ムーディーズさんとかS&Pさんも、日本では例えば500人とか1,000人とか人がいるという組織じゃなくて、せいぜい100人、200人という組織でありますので、それで日本の市場全体をカバーはどこまでできたかというと、冒頭申し上げましたように中小企業として何とかやっているという状況ではないか。

それを補完するものとしては、これは私の主張ということで、私どもの会社ではそうやっているわけですが、必ず複数の格付会社からの格付をとると、当然一番弱いところ、一番弱気なところに格付がさや寄せされていきますので、それによって一定の牽制機能を果たさせて、特に新しいものであるほど、例えば私どもが日本で初めての不良債権の証券化ですとか、あるいは消費者信用債権の証券化というのを大規模に行ったときは、これは国内の格付会社も含めて、ほとんどのところに声をかけて、できるというところについては3社とか、4社出して頂いているのですが、そういうことに対して若干、海外でもコストセーブという観点から、逆に言うとその格付会社の数を少なくするとか、国内においてはむしろ最初から1社格付でいいんだと、投資家はそれでいいんだというふうな形でやられている風潮があって、それについては私は常に憂慮していたところであります。

○池尾部会長

そろそろヒアリングに関しての質問という議論は終わらせて頂きたいんですが、今ヒアリングに関しての質問ということで、じゃ、淵田さん。

○淵田委員

赤井さんに2点。1つは格付機関の役割が縮小するという方向性を示されていらっしゃるわけですが、バーゼル II とかあるいは日本でもさまざまな規制の中で格付を利用していますけれども、そういう規制や制度の中で格付を利用することについていかがお考えかということ。もう一点は原資産情報の伝達流通に係るインフラ制度の整備を強調されている点についてです。多くの場合、証券化商品というのは私募発行だと思います。私募というのはプロが買うから必要な情報は相対で自分でとればいい、情報が得られなければ買わなければいいという、そういう世界だと思います。したがって、公募の場合との比較感でどの程度の大がかりな制度なりインフラなりというのを、この私募発行が多い証券化商品というものに求めるべきかどうかということを教えて頂きたいということです。

それから、荒巻さんにその関連で1点だけ。荒巻さんの場合は、開示といっても格付付与の手法とかプロセスの開示の必要性を強調されていらっしゃいますが、赤井さんのおっしゃるような原資産の情報の開示についてはいかがお考えか、教えて頂ければと思います。

○池尾部会長

お願いします。

○赤井参考人

まず、役割縮小というのをバーゼル II その他の中でどうするかというところでありますけれども、もし必要であればバーゼル II の枠組み自体も必ずしも不可侵なものと考える必要はないというのが私の考え方でありますが、それがもちろん混乱を招くというふうなことは認識しております。相対的に役割縮小というのは、これは投資家のリスク判断という中においての役割というふうなものは当然縮小されてしかるべきであるし、むしろこれをさらに拡大をさせていって、それに基づいてリスク判断を、投資の判断をするという世の中の流れではないかと考えております。

それから、原資産情報に係るインフラということでありますが、確かに今おっしゃるように私募というふうなことはございます。これは何かと言うと、1つは投資家のそもそもの受け皿というのは、すそ野がさほど広くなかったがゆえに、まずそこから取り組まなければいけなかったという日本の証券化商品の事情があります。ただし、例えば昨年、一昨年を見ますと、社債の発行市場と新規発行の資金流入額では同じぐらいになって、非常に重要な資金媒介経路になっております。このいわゆる公募という枠組みに移行したら情報開示が充実されるかというと、例えば情報開示の企業のいわゆる公募の基準のようなものをまたつくらなければいけないようになってくると、それが不完全であったらそれはどうにもならない部分があります。

そういう意味では、今現在、日本証券業協会のほうで進めております、あるいは証券化商品全般に関わる情報開示の自主規制ルールというのが来年から施行されますが、それに伴って導入されております情報開示の標準情報レポーティングパッケージというのがありまして、これはかつて日本銀行さんが推奨フォーマットというのを出されたときは、RMBSとそれからCLOとその他ABSしかなかったわけでありますけれども、それに加えて重要なコンポーネントとしてCMBSが今度の日証協の中の枠組みに入っております。

そうすると、それを使うこと自体は任意とされておりますけれども、むしろ何らかのインセンティブを与えてそれを使うという形にして、なおかつそこで集まってきた情報というのはある程度標準化されていますので、それをデータベース化してまとめることが今ようやく可能になってきたと。そういった流れをつくっていけば、投資家の皆さんが特に先端的な投資家以外の方もその情報を使っていく。もちろんその中で、今申し上げましたように、そのかけ橋になるようなサポートというのを当然求めるというニーズが出てきますので、そこについては能力のある方がベンチャー的に、ないしは事業の一環として取り組んでいけば、一つのいい流れが出てくるのではないかというふうに考えております。

これは、もう一つは不動産の分野でもあるんですね。去年、不動産鑑定基準の標準化ということが行われて7月から施行されております。そうなってきたがゆえに、それに基づく不動産のパフォーマンスデータというふうなものをデータベース化できるというふうな動きがありまして、これは国土交通省のほうで動いているわけで、現状はアンケートベースなんですが、それを例えば法制化する、ルール化するという形で吸い上げる形にすると、全国規模でのそういった原資産情報のデータベース化も図れる。いずれにしましても、情報開示の雛形というものができますと、それに基づいてそれを吸い上げていく。これは民がやっても官がやっても、能力と意欲のある方がやればいいと思いますけれども、そうなってくると過度に格付に依存せずリスクの判断をできる投資家というのがふえてくる、ないしは海外からも流入してくる可能性は非常に高いというふうに考えております。

○荒巻参考人

ご質問でありました、格付の手法とかだけではなくて原資産情報についても開示を求めるのか、というご質問に対しては、情報をできる限り開示することが促進されればいいと考えております。

特に、先ほどもありましたように格付をつけた後、短期間に格下げになったケース、こういったケースは一体何が問題であったのかというような、どこを見誤ったのかというようなプロセスを含めて、あるいは証券化商品であれば原資産の情報を見誤ったのか、先ほどありましたようにそのクレジットリスク部分以外のボラティリティ・リスクだとか、そういった部分を見誤ったのか、あるいはよく言われているように証券化商品であればトリプルAのものが急に落ちたのは、そもそもリスクシナリオ、シミュレーションの掛け方が甘かったのか、あるいはコリレーションを多めに見積もっていたのが間違っていたのか、そもそもがコリレーションをもとにしてやっていた二次化、三次化のそこの証券設定自体にかなり無理があったのか等、そういったみずからのどこが見誤っていたのか、あるいはマーケットで、格付を付けたときはこういう想定をしていたんだけれども、現実にマーケットでこういうことが起きてしまった等、その辺を丹念に開示して頂ければ、格付会社の相互牽制にもなりますし、これはそういった分析はマーケット全体の財産にもなると、我々のような投資家にとっても非常に興味深いところでございますし、そういったことを含めて、相互に牽制もきいて、より格付の精度が上がっていくのではないかというふうに考えております。

先ほどの報酬云々とかいう話も、場合によってはそこも開示が進んでいけば、そのこと自体がというよりも、その格付のショッピングの問題とかも出ておりますが、そういうプロセスを含めて開示が進めばより牽制効果も働くでしょうし、マーケット全体の信頼性が高まっていくというふうに考えております。

以上です。

○池尾部会長

ありがとうございました。

まだまだご質問ありそうなんですが、時間の関係でヒアリングに関しては以上ということにさせて頂きたいと思います。

いろいろご意見を頂きまして、誠にありがとうございました。

本日お伺いしたご意見につきましては、今後の審議に当たって、できるだけ貴重な参考として利用させて頂きたいと思います。

それではどうもありがとうございました。退席して頂きます。

それで、今も議論してまいりましたように、格付会社は金融資本市場における情報インフラとして一定の重要な役割を果たしているわけでありまして、それに見合った適切な機能発揮というのが求められるというふうに考えられるわけです。それで、先週末の金融サミットでも、格付会社に対する規制ということが行動計画等の中でうたわれているわけでありまして、そういうことを踏まえて、本日は格付会社に対する規制のあり方を考える上での背景とか基本的な問題意識、考え方などについて議論をしたいというふうに思っております。後半といいますか、ちょっと時間は押してきたんですけれども、させて頂きたいと思います。

それでは、まず事務局から、そうした点に関して国際的な動向も含めたご説明をお願いしたいと思います。

○三井企業開示課長

それでは資料5と6、後で7も途中で参照いたしますが、まず5と6を並べてお開き頂ければと思います。

まず、資料の5でございますけれども、「論点メモ」とございます。

これまでのヒアリングなどで出てまいりました、信用格付会社についての問題なりその背景なり問題意識について整理したいと思います。

まず、はじめに、というところでございますけれども、信用格付というのは投資判断を行う際の一つの信用リスクという局面における判断材料を補完するあるいはその材料の一助になると、こういうものであろうかというご意見が多いかと思います。資本市場における情報インフラとして重要な役割を担っているという意味で、もちろん、さまざまな情報がマーケットにはインプットされるわけでありますけれども、その中でも格付というものは大きな情報インフラとしての機能を示しているのではないかということでありまして、資料6を並べてお開き頂きたいと思います。備考のところに資料の6でp.1から4というのがございます。

まず資料6の1ページでございますけれども、IOSCO(証券監督者国際機構)がどのような整理をしているかということでございます。ここでも同様の、序文の3つ目の三角でしょうか、信用リスクを分析することを助ける役割ということが書かれています。サブプライムローン問題を受けまして、既にできていました基本行動規範を改定するという議論がされた中で指摘されている事項を、ここでは整理しております。

後ほど説明しますように、この行動規範というのは、かつてエンロンなどで格付に対する信頼が大きく揺らいだ、あるいは格付がマーケットの混乱を増長したという反省に基づいて、改善すべき基本行動規範を制定したものであります。その改善ででてきたものは一個一個読み上げるのは省略いたしますけれども、本来、格付は個々の投資家の情報取得能力を考慮して、情報の非対称性を縮小する一助になり得るというものであります。したがいまして、格付そのものが投資判断に代替されるようなものではありませんし、格付そのものについて今回のプロセスでは、2つ目の三角以下、例えば公正性に疑義がある格付プロセスであれば、投資家の投資判断にむしろ有害になるとか、さまざまな問題が指摘されているということであります。

2ページ目でございますけれども、信用格付の定義でございますけれども、主に信用格付は記号をもって表示されているということが特色かと思います。それから、当然のことながら信用リスクについての評価であると。それから一つ特徴的なことは、本来はこの格付を付与するに当って使われたモデルや手法、あるいはその前提アサンプション、あるいはそれがどういうものにフィットしているのか、どういうものにはフィットしていないという信用格付の限界といったものとセットで、いわばレポートのような形で書かれているものであれば比較的理解しやすいと思いますが、いろいろなプロセスの中で、この記号だけは唯一のものとして受け取る投資家が存在したかもしれないといったことがあるかもしれません。

3ページ、格付の沿革でございます。これは参考までに掲げております。

4ページでございまして、日本での公的利用の枠組み、これもこれまで説明してまいりましたので割愛いたします。

それでは「論点メモ」、資料の5に戻りまして、2つ目の黒丸、これはこれまで規制していなかったということですので、その次でございます。2で、米国企業会計不正事件をめぐって提起された問題とその対応というところでございまして、今申し上げましたように2001年の不正会計事件の後、この破綻直前まで投資適格の格付があったということで、このとき既に格付のプロセスにおける専門性・中立性に対する疑念というものが世の中から提起されていたと思います。ここで提起されている問題は、今日、議論されていることと実はかなり共通するものがありまして、格付会社の役割機能、発行体からの報酬を得るというビジネスモデルに内在する利益相反があるのではないか。イシューアズペイモデルなどと言われているものです。

それから、発行体から入手する非公開情報の取り扱いなどについて、当時から問題が提起され、IOSCOの基本行動規範ができております。その流れで、米国でも信用格付機関改革法というのが成立しまして、格付会社規制が導入されております。資料6でいいますと、5ページでございます。これも一個一個の項目についての説明は省略いたしますけれども、ここの特徴は上の箱の3つ目の白丸でございまして、従来SECから認定されたNRSROという格付を行政上利用する認定格付会社制度がありましたが、このSECによる監督が行われていなかった、あるいは大手格付会社の寡占状態にあったということが背景にありまして、1つには競争促進ということ、あるいは参入を促進する、こういうことが掲げられております。片や、参入促進と言う割には、行為規制や開示規制がかなり詳細に定められているということでありまして、登録はできるという制度ではあるんですけれども、利益相反の規制、それから利益相反についても、利益相反の防止を体制整備として求めるということに加えて、スペシフィックに一定の行為を禁止するという行為規制のようなものが掲げられております。

それから、利益相反のポテンシャルとか、それを招くおそれのあるような事実についての開示を求める。それから、実際に格付の品質や中身、プロセスについて、投資者が判断できる材料をディスクロージャーさせるために、格付手法、メソドロジー、実績等々の開示を求めている。それから、コンプライアンス体制についても一定のルールが定められているということでございます。

証券法の中に定められておりますので、証券法と同様のシビル・マネー・ペナルティーやインジャンクション等々の制裁措置があるということで、これをNRSRO(Nationally Recognized Statistical Rating Organizations )という規制体系になっています。

また資料5に戻りまして、3番でございます。サブプライムローンをめぐって提起された問題でございますけれども、ここでも高格付の証券化商品に、エンロンのときと同じように突然大幅な急激な格下げがあったということで、格付に対してまた議論が起きているとういことであります。

次の3ページでございますけれども、今回行なわれている議論につきましては、まずその格付会社の格付に当たって入手したデータというのもが果たして適切なものであったのか、あるいは格付会社として検証をしたデータを使用しているのか。逆に、その格付会社に情報を提供したサイドに着目しますと、貸付からオリジネーターにいたる種々の関係者が誠実にデータを提供したのかということが問題提起されています。それから2つ目、先ほどと同じ、2001年と同じでございますけれども、利益相反がこのビジネスモデルに内在しているのではないかということ。それから3つ目、これも2001年と同様のものでございますけれども、格付の限界、射程距離、これがどの程度の、補完情報としてのどれぐらいの意味がある情報なのかということが投資家が理解できるという状況になっていない。これは投資家サイドだけではなくて、格付会社についても問題があったのではないかという指摘であります。

投資家についてはその裏返しということになりますし、それから、その共通事項としては、信用リスクに関するものでありますけれども、先ほどのヒアリングでもご指摘があったように、証券化商品の再構成を繰り返していくうちに、信用リスクは統計上高いけれども、ボラティリティとかほかのリスクはより増幅されるという商品をつくって高い格付を得ていたということについて、それが十分に投資家に理解されるような形になっていなかったのではないかと。言葉をかえますと、本来、投資判断を助けるはずのものが、投資判断をゆがめるような情報の使われ方なり、あるいは流通のされ方をしたのではないかという問題ではないかと思います。

サブプライム関連商品の格付の引き下げについては、資料6の7ページ、それから格付会社について指摘されている問題点は8ページに整理いたしました。

そして、資料5でいいますと4ページでございます。国際的な動きでございますけれども、米国では先ほどのエンロン、2001年以降の議論を踏まえてできた信用格付法があるんですけれども、これが昨年の6月に施行された後サブプライム問題が顕在化いたしまして、その後、今年の春でございますけれども、これまでの議論を踏まえて、規制強化案がパブリックコメントに出されております。ただ、EU、欧州では7月に蔵相・経済相理事会で登録制度の導入の方向を決議して、11月に欧州委員会は詳細な規則案を公表しております。

11月にサミットで合意された内容の中に、格付についての記述がございます。恐縮ですが、資料6の12ページにポイントだけ掲載してございます。首脳宣言の行動計画主要項目という中に、3月末まで緊急に行うべき行動というところがあるわけでございます。アクションプランの中の、緊急・短期的な行動プランの項目の中に、2009年3月31日までに行うべきことが格付について書かれております。証券監督当局の国際機構(IOSCO)の最も高い規範を満たすことということで、また信用格付会社が利益相反を避け、投資家、発行体への開示を強化し、複雑な金融商品に関する格付を区別することを確保するための措置をとるということで、そこから先は情報提供の補完であることが書かれています。

それから、2つ目のポチではIOSCOのこの行動規範を遵守させるメカニズムの採用ということであります。中期的には格付会社に対する登録制の導入ということが掲げられているということでございます。ちなみに、その前のページ、それから10ページ、11ページには米国、それから欧州委員会のそれぞれの規制強化案、あるいは規制導入案のポイントを整理してございます。一つ一つ説明している時間がありませんので、個々の項目の説明は省略させて頂きます。

それで、今のサミットの共同宣言にありますところ、IOSCOの今ある行動規範というのが、この国際的な合意では重要な一つの規制のモデルになります。資料7とその後にA3の1枚、大きな紙がございます。ここに、特にこの大きなA3の紙で全体像を整理してございます。このIOSCOのコード・オブ・コンタクトのポイントでは、格付プロセスの品質がよいこと、公正性が確保されること、独立性が確保されること、利益相反の回避をすること、それから一般投資家や発行体への責任と、こういう3つのカテゴリーに分けて、それぞれ書かれております。一つ一つは、その文章に翻訳をつけてございますので、お時間のあるときにご覧頂ければと思いますが、若干日本の法的な思考からするとオーバーラップしたり、やや整理が日本人にはわかりにくいところがございますが、このプロセスにはIOSCOに参加している規制当局に加えまして、格付会社あるいは投資銀行、金融機関等の格付をめぐるさまざまな市場関係者のインプットが入っております。したがいまして、その意味では規制当局のみならず市場参加者、格付会社も含めた今の時点でのというか、今年の春の時点での一応のコンセンサスといったものではなかろうかと思います。

これを今度、脇に置いて頂きながら、資料5をご覧頂きたいと思います。その考察というところでございまして、ここは全体像をどのように考えるかということで、IOSCOでは独立性というのを非常に重視していまして、それに格付の品質であるとか、格付の投資家にとっての有用性を高めるというための個々の措置を掲げるというスタイルをとっています。ただ、独立性がどちらかというとより高次な概念のように読めるくだりがありまして、格付の品質と投資家にとっての有用性を確保するための各措置について、独立性を損なうような解釈をしてはいけないであるとか、格付会社が適時にタイムリーに格付の意見を表明することを妨げるように解釈すべきでないという留保がついているということであります。

日本ではどう考えるかということで、この利益相反と独立性というのを非常に強く考えるのか、もう一つは先ほどから出ています信用リスクについての情報の補完であるという、投資家の判断の一助にするという部分をまず最初に置くべきかという点がございます。ここは試みに、格付についてのどういうふうな考え方でいくのかということを考察してございまして、次の5ページをご覧頂きたいと思いますけれども、投資家の信用リスクの分析をサポートするという格付の本来の機能・役割に立ち戻るということでありまして、その個々の論点に入っていく、やや下位というと言葉が語弊がありますけれども、そういう。2つ目の黒丸は1つ目の目標に資するものとして独立性であるとか利益相反の防止、あるいはプロセスの公正性とか情報提供の十分性というものを位置づけるということがあり得るのではないかと思います。

ということで、IOSCOのコード・オブ・コンタクトを範をとりますと、3番目の黒丸にありますようなマル1マル2マル3という、こういう考え方で大きく整理するということが一つあり得るのではないかということがここでの問題提起でございます。

6ページでございますが、国際的な整合性、これは今までの議論にもありますように、サミットでもこの国際的な合意というものがございます。それともう一つは、格付会社の場合は一般の証券取引と異なりまして、業者とお客さんが直接に取引を行なうものではないという特色がございます。イシューアズペイモデルですと、特に格付を付与される発行体が発行した証券が転々流通をして国境を越えるということが想定されております。したがいまして、外国の規制が結果的に他国に、他国といいますか、自分の国の規制が他国にあるいは他国の規制が自国に結果的に影響を及ぼすという関係にあるということから、少し悩ましい問題が起きてくるということでございます。

7ページでございまして、以上のような問題意識で、具体的な規制案に今日の段階ではまだ十分に立ち入れていないわけでございますけれども、その一つの考え方、規制の案の柱といたしまして、まず規制の対象でございます。これまでの議論を踏まえますと、信用リスクに対する意見を記号・符号で示すということがまず出発点になろうと思います。ただ、これをすべて対象にしますと、過度に広いということがありまして、もともとの意義からしますと、情報インフラとなっていると。それから、投資家が投資判断の一助ではあるけれども、現実的には重く影響してしまっているということを考慮したものということになろうかと思いますので、最後の3行ですけれども、格付が広く金融市場において利用されていて投資判断に大きな影響を及ぼし得る立場にある格付会社という限定的なカバレッジにすることが考えられるかと思います。

規制の対応でございますけれども、先ほど申しましたような独立性の確保・利益相反の防止、それから格付プロセスの品質と公正性の確保、透明性確保ということからの体制整備や情報開示を求めるという一つの枠組みがあろうかと思います。この遵守を求めるための検査・監督、それとその検査・監督の国際的な協調といったことで実効性を確保していくというのが一つの基本的な考え方ではないかと思います。

そうした場合の具体的な手法でございますが、米国、ヨーロッパはいずれも登録制度という法的な形式を利用しております。登録制度そのものに本質があるわけではないのですが、その上の目的なり規制の枠組みを行なうための一つの法律的な手法として登録というものを用いているということがあろうかと思います。外国との情報交換なり、協力を考えますと、比較的要件が緩やかである登録という制度は考慮に値するのではないかと思います。

右側の欄にIOSCOの行動規範、資料7なりその後にあります1枚紙を仮のということで掲げてみますと、例えばマル1の誠実義務というのがあります。IOSCOのコード・オブ・コンタクトで言いますと、例えば格付プロセスの品質とかプロセスの公正性であるとかですね。独立性というのは、大きな2番のくくりにあることが独立性のことに分類されようかと思います。次の8ページをめくって頂きまして、適確かつ公正に遂行するための体制を整備することということでございますが、これは実は独立性ともオーバーラップしますし、それから格付プロセスの品質、公正性ともオーバーラップします。この中で、格付会社として独立性を確保しながら、そのアナリストの専門性が格付に生きるようにするための体制整備ということで、このA3の資料で言いますと、それぞれの柱にオーバーラップして散らばってございます。その中でご覧頂きますと例えば独立性の中で、総論のところの2.4に禁止とか、2.12から15にかけて何々の禁止という言葉が出てきます。具体的にどれがどういう構成要件になっていくのかということについて精査が必要ですが、この独立性を体制として求めることに加えて、個々のアナリストなり会社として特にひどい、普通では行われないことについて禁止行為として定めるということがあり得るかと思います。

4番目の格付方針、これは格付の品質、公正性あるいは投資家にとってそれが理解可能になる、あるいは格付が投資判断の一助に過ぎない、その限界を理解するというために、格付方針やそのデータモデル、そのカバレッジについて公表しておくということが一つあります。また、それを補完するものとしての定期的なレポート公表、これを事業報告書というふうに日本では言うことができるかもしれません。あるいは説明書類の縦覧ということで置きかえることができるかもしれません。それに、通常で言いますと検査・監督の仕組みを整備すると、こういった仕組みが一つの試みの案としてあり得るかと思います。

9ページでございますけれども、最後のページで、アメリカではこの寡占打破のために競争促進ということが書かれています。これについて、日本の法制を考える場合にどう考えるかという点がございます。

以上、駆け足になって済みませんが、資料の説明でございます。

○池尾部会長

ありがとうございました。

それでは、ただいまの説明に関連してご意見を頂きたいと思いますが、いかがでしょうか。規制の具体的なあり方については、頭出しはして頂いていますが、次回、それが主たるテーマになると思いますので、どちらかというと考え方とか背景のところについて、「論点メモ」で整理されているような内容で適切かどうか、あるいは不足しているポイントはないかどうかというような点についてご意見頂ければと。

藤沢委員。

○藤沢委員

ありがとうございます。

私の基本的な考え方としては、格付機関というのはやはり信用分析をするための補完的な存在であるべきというふうに私は考えています。しかしながら、その現実はどうかと申し上げますと、やはり今日ヒアリングに来てくださったような大きな会社ばかりではありませんので、これはバーゼルの問題もあるんですけれども、中小の金融機関であったり、あと個人のレベルに落ちていけば、やはり格付というものが非常に大きな意味を持っているというのはいたし方がないと。そのときにやはり公正な評価というものが必要になってくるんですが、やはり情報の非対称性というのは非常に大きなものがあって、それを排除するために格付機関があるというふうにはなっているんですけれども、実際に私自身がかつて投資信託の評価をやっていたときの経験でもあるんですけれども、やはりお金を頂いて評価をするというときに、こちらの評価が低い結果になるということになると、やはり依頼しないというのは確かに非常に多かったわけですね。あちらの評価機関のほうが高い評価をくれるので向こうに払いますと、あなたのところからの評価は一応お金を払いますけれども発表しませんなんていうことは、実際あったわけなんですね。私の会社はもう売って存在しませんから、今言ってもいいんだと思いますけれども、そういうことがあると考えると、実は格付機関が存在しているから情報の非対称性がある程度解決されているのかというと、決してそうではないと思うんです。

したがって、この格付機関の規制について議論をするのであれば、やはり先ほどのヒアリングの中にもご提示がありましたけれども、情報のデータベースの整備というものとあわせて行うことは不可欠ではないかというふうに思います。その上で、やはり公平な情報を集めた情報のデータベースをつくった上で、格付機関が格付を発表しないと、今の格付は、すべてがそうとは申し上げませんが、パブリックなインフォメーションで格付されたものと、パブリックではないプライベートな情報も含めて格付を出されたものというのが、個人のレベルもしくは中小の金融機関のレベルからでは比較ができないと思うんです。すべてが同じに見えていると思いますので、まずは公表されたもので格付をして、自由な競争が生まれるようにすると、そして特別なプライベートなデータに関しては、また別の扱いで考えるというような何か整理が必要ではないかと、そんなふうに思います。

○池尾部会長

どうぞ、田中委員。

○田中専門委員

今回のこの「論点メモ」に関しまして、まず一言感想から言うと、非常によくまとめられていて、問題点、背景、それから今後の対応策が網羅されていて、ほとんどのところで違和感がなく、私の考えと一致しています。

ただ1つ、論点メモの最後のところの「少数かつ特定の格付会社が主に利用されている」という点ですが、実態はまさにそうではあります。ただ、格付会社の数が少ないからといって、何かをするといっても、無理やり新設するというのも、非現実的だと思います。それから格付機関が極めて重要な存在であることは間違いありませんが、マーケット全体におけるサービス量もかなり限定されていますので、無理やり何か過剰競争の状態を作ろうとすると、かえって別の不公正なことが出てきてしまうのではないかと思います。少数であるから問題だということではなく、少数である現実を認識した上で、どのように透明性・独立性を確保するかということがポイントになるのではないかと思います。

それから、先ほど参考人の方から、格付会社の存在が今後低下していくのではないかというような発言がありましたが、私の考え方は全く反対です。この市場そのものがプロの投資家だけで成り立っているのであればまさにそうだと思いますが、市場には個人投資家も必ず入りますし、個人投資家にとって格付会社は大きな役割を果たしており、今後も一定の役割を果たしていくということは変らないと思います。

それから、具体策に関しては、次回に話をされるということですが、私からこの利益相反に関して一つの具体的な提案をしたいと思います。現在、上場会社は監査法人に支払った監査報酬の開示が義務化されておりますが、それと同じように格付会社が格付を行った場合、その報酬が幾らであったかというのを一律確認できるような状況に置くというのは利益相反を回避するという面では有効な手段ではないのかと思います。

以上です。

○池尾部会長

ありがとうございました。

それでは、ほかにご意見いかがでしょうか。

はい、どうぞ。

○上柳臨時委員

私は基本的な方向感としては、やはり何らかの行政の介入も含めてできるようにということで、例えば登録制度というのはあり得る選択だろうと思います。ただ、問題はやはりその後の中身で、まず心配のほうから言えば、本当にそれだけで大丈夫かというか、何か改善されるのか、あるいは逆に、例えば当局に登録しているということで、さらに消費者なり投資家のほうが過度に信頼をして、かえって誤解を招くんではないか、あるいはいろいろ開示をするとはいっても、やはり一言で符号をつけて格付をするとこれは大変わかりやすくて、そこにいろいろまたこれは限定的な情報に基づいているとか、これは信用リスクだけを示したものであるとか、いっぱい警告文言をつけるというふうに私なんかはいうことになるんですよね、今後ね。というのだと、その格付の意味がかなり少なくなるんじゃないかとか、そういう議論があり得ると思うので、本当に工夫が必要だろうと思います。

私はマイカル債の被害者というか、デフォルトの被害を受けた相談者から訴訟を受任したことがあるんですけれども、そのときも格付会社を訴えられるかどうかとかいろいろ検討したんですけれども、どうすればよかったのかなかなか難しいところなので、本当に工夫が必要だということを留保しつつ、基本的な方向性については賛成いたします。

○池尾部会長

植田さん。

○植田委員

一つの議論の流れが、情報の開示をもう少ししていくことだと思うんですけれども、例えば今日のヒアリングでは、原資産に係る情報それから格付会社が使っているモデルのようなものの情報をもっと開示していくべきではないかというのが、規制の中でもう少し促進されるべきであるというお話が一つの方向だと思うんですが、ここで金融業の中で情報をどうやって生産していき、そしてそれを一応民間の会社が行う場合にどうやってペイさせるのかという難しい問題が含まれていると思うんですね。原資産に関する情報と自分が使っている格付手法を全部開示してしまうんであれば、そもそもその会社が成り立たなくなるリスクが非常に高いわけで、その結果として情報自体が生産されなくなってしまうという問題もあるんだと思うわけです。

またちょっと違った観点からは、そういうことを開示したとしても、それはきちっと利用して自分で格付にかわるものをつくれるところは今日ヒアリングにいらしたような大手のところであって、もう少し中小のところは、やはり格付に依存する度合いが高いというのが若干は現実的な線かもしれないわけですけれども、そうだとしましても、例えば難しいモデルに関する情報が出てくる、大手金融機関はそれを利用する、しかしもう少しアマ的な人は開示された情報をどう利用していいかわからない、結果として大手の投資家とそれ以外との情報の格差はかえって広がってしまうとか、いろいろな弊害も考えられますので、どういう情報をどこまで開示させるかというような点は非常に注意して進めないと、いろいろな問題を引き起こすように思いますが。

○池尾部会長

ありがとうございました。

佐々木委員。

○佐々木委員

私も、本日の流れは基本的に賛成なんですけれども、今後、規制をする、考えていく上でもやはりプロ以外の人たちにとってこの格付会社とは何なのか、どういうふうに使っていったらいいのかということを、定義づけたり、易しい言葉で表現していく必要があると思います。先ほど藤沢委員もおっしゃったように、どんな情報から格付がなされているのかとか、また、もしかするとこれは格付会社を活用しない人にとってもニュースで発表されたりすることがよくありますから、企業イメージにもつながっていくわけですので、格付の定義については、きちっと教えていくということも一つ教育面で重要だと思います。

それから、今日、これから考えていくという具体的な規制の内容として、基本行動規範の具体的項目というのを先ほど資料5の中の右側のところで書いて頂いたんですが、この行動規範というのは前回から出ていて大変重要だと思いますが、私はそのときも述べたかと思うんですけれども、この中にもう一つ項目として、この内容がどういった社員に対してどのぐらいの頻度で研修されるのかという教育に関する項目も入れておく必要があると思うんです。

開示ルールとかというのとちょっと違いまして、行動基準に関しては、どの企業も今、再度重要視して取り組んでいます。私ども、さまざまな大企業と行動基準を見直すという仕事をさせて頂いていますが、会社にコンプライアンスの規定もあるし行動規範も冊子になっているが、今までは例えば入社式、あるいは何とか研修のときに何とか部の人が30分説明してパンフレットを配っているというふうな状態のところが多々あって、今、研修から導入し企業も変ろうとしています。ですから、このようなことをもう一回裁定するのであれば、ぜひこの項目の一つに、行動規範を書くだけなく、実際に日々実践していただくための研修の義務化なり時間数を明記するなり頻度を明記するなりして、徹底的に格付会社の中の方々の行動規範が高まっていくようにというふうに願いたいと思います。

以上です。

○池尾部会長

いかがですか。

格付機関の絶対的な役割は低下することはないと思うんですけれども、相対的に役割が低下するかどうかというのは、そのほかのサービスがどの程度供給されるようになるかどうかにかかっていると思うんですよね。例えば、個人投資家向けのファイナンシャルアドバイス的なサービスがどこまで供給されるか、そういうサービスが全然なければ格付に頼るしかないという話になるんでしょうけれども、一般の個人投資家でもかなり充実したアドバイスサービスが受けられるような体制がもしできれば、それで、そのアドバイスの中で、これは格付は高いですけれども別のこういう理由からあなたには適していませんというようなアドバイスがされるようになれば、相対的な役割は下がるんだと思うんですよね。だから、そういう意味では関連のサポートビジネスの展開がどうなるかということを抜きにして、格付会社のあり方だけを孤立的に考えることはちょっと難しいというのは確かにあるかというふうに思ったりはいたしますが。

はい、どうぞ。

○田中専門委員

今の部会長の発言されたことは確かに理想論としてはそうあるべきだろうなとは思いますが、現実の個人投資家の行動パターンを考えた場合、なかなか、格付会社はこうやっていますけれども、これはあなたに合いませんからというような説明がそもそも本当に成り立つのか、あるいはそういうことを金融商品取引業者が言った場合の業者のリスクを考えると、なかなかそういうことは難しいのではないかと思います。

○池尾部会長

はい、どうぞ。

○藤原委員

一般個人の方たちは、発行体の信用リスクに関しては、情報収集の時間もなければ、そういうノウハウも持っておりません。だから、投資判断をする際に、格付機関がトリプルAをつけているか、あるいはシングルAをつけているかが大きく影響します。地方の金融機関である地銀さんも、社内格付を持っていますが、ムーディーズといった格付機関がつけた格付をもっと信頼していて投資判断に役立ててきています。今回格付機関が格付を大きく間違ってしまった結果、こういう投資プロセスがある意味では使えなくなってしまったのです。

格付機関が格付を大きく間違ってしまったのですから、こういうことが今後起こらないようにするためにも、私は今回は格付機関にある程度の規制を導入したほうがいいと思います。格付機関がどういう形で経営されているのか、債券に対してトリプルAを付ける際、どういうプロセスと判断でトリプルAが付けられたのか、格付を付けてもらう際の企業側が支払う手数料はどう決められるのかなど、格付機関はベールに覆われていて何がどう行われているのかが見えないわけです。かつてエンロン問題が起こったとき、監査法人が本来の監査の仕事とは別にコンサル業務を企業に対してたくさんしていたのが問題になりました。私が聞くところによると、格付会社もコンサルの仕事もしているようです。例えば、シングルAの会社に対して「どうしたらダブルAになるか」についてのコンサル業務もしたりしていると聞いています。

だから、もしそれが本当なら、そういう仕事は本来の格付機関の仕事とは違う仕事なので、これからは利益相反の点から禁止してもいいのではないでしょうか。

今日のこの論点のメモはすごくよくまとまっていると思いますが、最後に1つだけ、格付機関の問題点を付け加えるのなら、それは金融のグローバル化とともにスタンダード&プアーズ、ムーディーズがグローバル市場で独占的な役割を果たすようになったことです。製造業の場合、独占を抑えるために独占禁止法があり、規制が働いていますが、資本市場が小さい、例えばインドなどの場合、地場の格付機関がないので、企業も投資家もムーディーズやスタンダード&プアーズの格付に頼らざるを得ないのです。それぐらい格付機関の数が世界的に非常に少ないわけです。

我々が規制をしようとするのは、何も格付機関をいじめようとかそういうことではなく、今、起こっている問題が二度と起こらないようにするためと、今、開店休業状態に陥っている資本市場が再び取引を開始できるようにするためであることを理解してもらいたいと思います。そのためにも、私は8ページに書いている、例えばというこの辺のところも今後もっと具体的に議論していっていいのではないかと思います。

以上です。

○池尾部会長

はい、どうも。

原委員、時間がなくなってきましたので手短にお願いします。

○原臨時委員

方向性としては賛成ですが、若干、疑問というのでしょうか、懸念を感じるところで発言したいと思います。1つは、登録制をとられるということで、これは今、金融商品取引法でいろいろな事業者は全部登録制ですので、それに異論はないのですけれども、この登録制の中身ですね。特に今、第一種、第二種となっておられますけれども、第二種の登録業者ですね。やや私は疑念を持っているようなところがありまして、登録制という中で、中身は何にしていくのかというところを、やはりきちんと詰めて頂きたいと。今、藤原委員がおっしゃられた例えばのところに具体的に書かれておりますけれども、より具体化して頂きたいと思います。

それから、2つ目ですけれども、それとも関連いたしますけれども、登録制にした場合、検査とか監督とかそのルールをきちんと守っているかどうかということについて、行政側が何らか少し機能を果たすということになられるのか。前回のヒアリングのときは、皆さんは自主規制でやりたいということをおっしゃられておりましたので、その兼ね合いがどうかということが2点目です。

それから3点目は、藤沢委員が冒頭おっしゃられたとおりのところを大変感じていて、やはりいい評価をしてくれるところでないと回避をしちゃうということですよね。これは非常によくわかる話なのですけれども、そういうことが起こらないような仕組みをぜひ考えて頂きたいと思います。

以上です。

○池尾部会長

田中委員。

○田中専門委員

先ほど、個人の投資家にとって格付の意味合いというのは非常に大きい、なかなか位置づけを変えるのは難しいという発言をいたしました。若干補足させていただきますが、だからといってどうしようもないということではなくて、今後やるべきこととしては、格付会社がつけている格付の限界というものを投資家に周知することが必要だと思います。

以上です。

○池尾部会長

それでは、まだご意見はいろいろあると思いますが、そろそろ時間が参りましたので、本日の審議はこのあたりにさせて頂きたいと思います。

最後のほうでご意見が出ていましたが、規制の中身とか具体的なことに関しては次回の審議の主たるテーマになるかと思いますので、引き続きこの点については次回以降、議論をさせて頂きたいというふうに思います。

それでは、最後に事務局のほうからご連絡等がございましたらお願いします。

○池田市場課長

毎年、この時期になりますと、金融審議会についてかなり無理なお願いを各委員の方にしているので恐縮なんですけれども、次回の第一部会の開催につきましては、11月25日、火曜日の午後2時半から3時半ということでご案内を差し上げていると思います。よろしくお願いいたします。ただいまありましたように、次回は今回に引き続きまして、格付会社の規制の枠組みの問題について議論を頂きたいと考えております。

また、当日25日ですけれども、この2時半から3時半の会合に続きまして、第一部会と第二部会の合同部会を3時45分から5時半まで開催をさせて頂くということで、こちらのほうでは金融ADRの問題についてご議論頂くということで、合わせて3時間の審議になりますけれども、どうかよろしくお願いをいたします。

以上でございます。

○池尾部会長

それでは、以上をもちまして本日の会議を終了させて頂きます。

どうもありがとうございました。

以上

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