金融審議会金融分科会第一部会(第57回)・第二部会(第48回)
合同会合 議事録

日時:平成20年11月25日(火)15時45分~17時30分

場所:中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室

○岩原第二部会長

それでは、ただいまから第57回金融審議会金融分科会第一部会及び第48回金融審議会金融分科会第二部会の合同部会を開催いたします。

皆様、本日はお忙しいところをお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。

会議に先立ちまして、本日の会議は公開とさせていただいておりますので、その点のご了承をお願い申し上げます。

前回、11月5日の会合でご承認いただきましたとおり、今回の会合では前回のご議論をさらに深化させていただきたいと思っております。事前に配付しておりますが、事務局で前回の議論の内容につき、論点整理をした論点整理メモを作成していただいております。そこで、本日は、まずこの論点整理メモについて事務局のほうからご説明をいただきたいと思います。その後、論点ごとに区切ってご議論をいただきたいと存じます。なお、本日で全部の論点につき、議論するという趣旨ではございません。

それでは、中沢企画官から論点整理メモのご説明をお願いしたいと思います。

○中沢企画官

ありがとうございます。

お手元の資料1、金融ADRに関する論点整理メモをおとりいただけますでしょうか。こちらの1ページをめくってください。論点整理の概要といたしまして大きく現状に対する評価、金融ADR改善策の具体像、それから制度化の要否という塊で論点を整理してみました。

さらにめくっていただきまして、下に1ページと書いてあるペーパーでございます。論点整理の詳細でございます。

最初の金融ADRの現状に対する評価につきましては、ざっと議論をしていただくということでございますが、第2点以降の具体像、金融ADR改善策の具体像のところに大きな論点が含まれている部分でございます。

第1に、現在の議論の目的、イというところでございます。これはどういう目的で改善策を考えていくのかと、1つ目が金融関連業態全体の底上げを目的としよう、2つ目が実効性の確保を目的としよう、あるいはその他、あるいはこの組み合わせと、こういった論点があると思われます。

次に、金融ADR機関の性格でございますけれども、1つ目の考え方は設立を法律上義務付けられたような機関、こういうあり方がふさわしいか。2つ目の考え方としては任意の団体で行政庁により金融ADRの実施体制、能力につき認定を受けたもの、こういうスタイルがいいのか。第3番目の考え方は任意の団体と、つまり現状の金融ADR機関と同様のものがいいのかと、こういう論点でございます。

それから、ハとしまして金融ADRの対象業務の範囲と書いてございますが、金融ADR機関が取り扱う業務の範囲をどのように考えるかという問題です。1つ目の考え方が一つの金融ADR機関が金融関連業すべての案件を取り扱う、金融ADR機関統一化・包括化を目指す考え方でございます。

2つ目の考え方でございますが、2ページ目の冒頭、第2案と書いてある箇所、預金、保険、金融商品、貸し金等の金融分野ごとに各分野の業務を取り扱い範囲とするそれぞれ別個の金融ADR機関が成立し得るものとする。これは金融商品・サービスに着目した分類というアプローチでございます。

第3案としておりますのが、業法単位で各業法上の業務を取り扱い範囲とする別個の金融ADR機関が成立し得るという考え方でございます。これは業法単位でADRを考えていこうという考え方でございます。

第4案は、業法上の業務をさらに細分化した任意の範囲を取り扱う金融ADR機関が成立し得るというような考え方、これは業法上の第3案でのアプローチをさらに絞り込んだ分野についてADRをつくっていく、という考え方でございます。

こういった対象範囲のあり方を前提としまして、他の箇所でも論点として書かせていただいておりますが、それぞれの金融ADR機関の連携について何らかの手当てが必要なのではないのか。参考までに、現状、日本証券業協会、投資信託協会等では、苦情相談窓口という名称の共通苦情相談窓口を設置するところまできております。

それから、同じく統一的なADRでないという前提に立った場合の話です。投資信託、保険、こういったものは銀行でも扱われているわけで、言ってみれば製販が分離しているような場合には、どの業態の金融ADR機関が取り扱うべきかという議論があり得ると考えております。これはやはり業態ごとにそれぞれのADRが成立するとしたとしても、サービスの内容あるいは商品の性格にそれぞれ即した専門性というものを考えるべきではないかという発想でございます。

それから、金融ADR機関がどのような業務を行うのかということでございますが、紛争解決のみを担当するのか、あるいは第2案で書かせていただいておりますとおり、相談・苦情対応も含めて、この機関で扱うのかという頭の整理がございます。

次に、ニとしまして自主規制機関化という論点がございます。これは前回ご審議いただいた中で、自主規制機関についての考え方がいろいろ議論されたことを受け、権限の観点から自主規制機関というものを分類してみました。

1つ目は、規則制定、調査及び規制の権限を有するようなスタイル。これは金融商品取引法上の自主規制機関と同様の権限を有するもの。現行では日本証券業協会等がここに相当します。

2番目は、規則制定の権限のみを有するというスタイルでございます。ここで言っております規則制定というのは、指針の制定も含めて規則制定と考えているわけでございまして、そうしますと3ページ目の冒頭に書いていますとおり、現行の金商法上の認定投資者保護団体と同様の権限を有するようなスタイル、これにつきましては現行では生保協会と損保協会、それから全銀協と、こういったものが該当するようなイメージでございます。

それから、3つ目のスタイルとしては、そういった権限もなく任意の活動にゆだねるというパターンでございます。

それから、3ページ目の中ほどに、ホとしまして金融ADR手続の性質という論点がございます。これは手続の性質について一応留意をしておきたいと、実効性、中立性・公平性、専門性、迅速性、解決内容の柔軟性、利便性、手続としての適正性、それから、それ以外にもし留意すべき点があれば議論していただきたいということでございます。

それから、引き続きまして3ページ目の下に、ヘとしまして金融機関の義務と書いてございますが、金融ADR改善の前提としまして、金融機関は顧客に対して金融商品販売後のフォローアップ・カスタマーサービスとして、誠実に相談、苦情、紛争に対応すべきであるという義務を課すべきではないか。それについてはどう考えるのかというのが1つ目の論点でございます。

それから、金融機関に金融ADR機関が設立されている場合におきまして、金融機関にADRに対する加入義務を課すという考え方はどうなのかということでございます。これは次の4ページの一番上に連なるところでございますが、この加入義務の中には金融機関の金融ADR機関に対する手続応諾義務、事情説明・資料提出義務、結果尊重義務あるいはその他の事項、こういったものを内容に含めることはどうなのかという論点でございます。前回ご説明いただきました4つの団体の中でも、このような義務を事実上、業界の中で課しながら活動されているということでここに書いてみました。もちろん、6月にまとめていただきました座長メモに従う発想でもあります。

それから、トといたしまして、実効性確保のために行政庁がどういうふうに関与するのかということでございますが、金融ADR機関との契約締結を金融業への参入要件とするという考え方をどう評価するのかと、あるいは金融ADRの実効性確保のための監督上の対応についてどう考えるのかと、こういった論点があると思っております。

これらを踏まえまして、制度化をすることはどうなのかという論点でございますが、4ページの一番下に、制度化を要するということになったときに、果たして金融ADRの制度化について各業態において金融ADRの整備状況、業態の実情などの諸事情に応じた配慮を行うことが可能なのかどうか。ここで考えております諸事情といいますのは、業界団体の加入率が低い、あるいはまだまだいろんな意味で業界としての準備ができていないという業態、これは貸金業などを想定しております。あるいは業態として専らホールセール業務だけを行っていて、苦情が非常に少ないと、こういったところについてもどういう扱いをすればいいのか。こういった業態ごとの扱いをどう考えるのかといった点もぜひ議論していただければというふうに思っております。

事務局からは以上でございます。

○岩原第二部会長

どうもありがとうございました。

基本的にこの論点整理メモに沿って、本日と12月3日開催予定の合同部会で金融ADRについてご議論していただきたいと存じますが、よろしゅうございましょうか。

それでは、論点整理メモの項目ごとに議論を始めたいと存じます。

それでは、論点整理メモをごらんいただきまして、最初の論点整理の詳細、これの第1の金融ADRの現状に対する評価、これは特によろしいでしょうか。

特になければ、実質的な2の金融ADR改善策の具体像というところからご議論をいただきたいと思います。

これについて、まず目的、これはよろしいでしょうか。特にいいですね、これは。

ロの金融ADR機関の性格、これについては何かご意見等はございますでしょうか。

どうぞ。

○川端専門委員

全銀協の立場で申し上げると、私どもの取組みとしては、今、ここの論点で書かれております第2案の形で進め始めたところでございますので、私どもの業界としては、そういう形が理想的であると考えています。ただし、他の業態との関係で、どうしても設立を法律上義務付けないといけないような場合があるのであれば、別の選択肢もあるかもしれませんが、そうした場合にも、例えば自主的な取組みをしている全銀協や生保協さんにまで一律に強制するのではなく、多様性を認めていただくような形が理想ではないかと考えます。

○岩原第二部会長

小島委員、どうぞ。

○小島委員

私もADR機関の性格とハの対象業務の範囲というところとの関係で、少し検討すべきじゃないかと思っています。というのは、ハのほうの対象業務の範囲ということで、第1案については一つの金融ADR機関がすべての関連を扱うというような、まさにすべてをカバーするというようなことだし、2ページの第2、第3案もありますけれども、現実的に私も将来的にはハのところは第1案のところを将来は少し検討を目指すとしましても、現実にはなかなかそこは厳しいだろうというふうに思いますので、現実的には2ページでいう、ここでは業務対象の範囲ということにすれば、第3案の業法単位でADR機関を設立するというのがより現実的ではないかというふうに思います。

そういう観点からした場合に、戻ってもらってロで言うADRの機関の性格を第1、第2、第3とございますけれども、第1というふうにすると、業態ごとにこういう法律で義務付けたものを複数つくらなければならないということで、これまた現実的には厳しいのではないかということでいえば、第2案の任意の団体という形で認定団体、そういうことがより現実的ではないかというふうに思っておりますので、ロのところは第2案、ハのところは第3案のところを中心に検討すべきではないかというふうに思います。

その関連でいうと、その下の2ページのその他でADR機関の連携についてということでありますので、業態ごとにつくるということであれば、やはり共通の相談窓口というようなものを設置して、そこで振り分けというか、そういうことが必要になってくるのではないかというふうに思います。

ついでに、その下のADR機関はどのような業務を行うかということでありますけれども、紛争解決のみか第1案か第2案といいますと、第2案の相談、苦情処理及び紛争解決まで扱うという第2案で考えるべきではないかというふうに思います。

そこまでにしておきます。

○岩原第二部会長

どうも。

今、ご指摘いただきましたように、確かにロの問題はハの問題、ハの中にはさらに丸が3つございまして、それぞれ関連した問題でありますので、ロ、ハで、ハの中の3つの丸の問題について、あわせてご議論いただければと思います。ただいま、川端専門委員の後、小島委員からご意見いただきましたが、これに関してほかの委員の方からいかがでしょうか。

藤原委員、どうぞ。

○藤原委員

ロの金融ADR機関の性格に関しましては第1案の設立が法律上義務付けられたものがいいと思います。なぜかと申しますと、現在ある苦情処理機関は保険会社や銀行など縦割りでできていて、苦情を受け付けるのはいいかもしれませんが、紛争解決に関しては今一つ効力を発揮していないと思うからです。それゆえ、縦割りの苦情処理機関の上に横断的に中立性・公平性を重んじるADR機関を1つ作る場合、その機関は、法律上設立が義務付けられたほうが紛争解決機関としてオーソリティーもでてくるでしょうし、使う側により受け入れられると思うからです。

○岩原第二部会長

ほかのハのほうについては何かご意見はございますか。

それでは、藤原委員はよろしいですね。ロについては第1案がいいというご指摘で、ハについても第1案がいいと、そういうことですね。

それでは、黒沼委員、どうぞ。

○黒沼委員

ハの対象範囲について質問させていただきたいんですが、成立し得るものとするというのは、それよりも大きい範囲をカバーするようなADR機関の成立も許すという趣旨でしょうか。

○岩原第二部会長

事務局からお願いします。

○中沢企画官

ここはまだ決め打ちで書いているわけではございません。将来的にはもっと大きなものができるかもしれませんが、まず、とっかかりとしては業法単位というのが一つの考え方として、スタート地点としてはいいのではないかということでございます。

○黒沼委員

それから、もう一つ、あとのほうの議論をしてしまうのはよくないかもしれないんですけれども、契約締結義務を課して、それを参入要件とするのであれば、受け皿が必要になるわけですよね。業界内で、ADR機関が何もつくられていないような場合については、ハの第1案の組織を1つ置いておく必要があるようにも思うのですけれども、その点はどうお考えなのでしょうか。

○中沢企画官

ここはまださらに議論が深まってから考えるべきだろうと思っておりますが、今のとりあえずのアプローチは、現在存在している認定投資者保護団体あるいは自主規制機関を前提として、どうやって広げていけるかというところから今スタートしているところでございまして、それがないところについてはどのぐらい手当てをしていくのかということは、追って考えるべきかなと思っております。とりあえず今の考え方のスタート地点としては、こういう団体があって機関があって、それに対する義務はどうあるべきか、という点から検討をスタートしたらどうかということです。現状に即したスタイルを今書いてみたところでございます。

○黒沼委員

最後に意見も言わないとよろしくないと思いますので、ハについて、認定投資者保護団体の制度をつくったときに、業界横断的な紛争解決の活動を促進するという観点からつくられたわけでありますし、商品の性質に応じた専門性ということが考えられますので、そういった筋から言うと2案がよろしいのではないかと思います。

○岩原第二部会長

ほかにどうですか。では、殿岡さんから。

○殿岡専門委員

生命保険業界でございますけれども、まず、ロの問題ですけれども、ちょっと戻るんですが、2のイとも関連をするのではないかというふうに考えております。前回、座長のお話でプレゼンテーションを生保業界と損保さんと銀行さんと証券さんと4団体が行ったわけですけれども、その4団体については優等生であると。問題はそれ以外の業界にあるというお話がたしかあったというふうに思うんですけれども、優等生である団体の実効性をどのように上げていくかいうことと、それからADRに関する機能が全くないところをどういうふうに底上げをしていくかという議論は多分別の議論ではないのかと。

そういった既に先ほどの4団体につきましては実効性がある程度上がっていて、さらにそれを上げていくという、そういう考え方でロを見た場合と、それから何もないところでどういう機関がふさわしいかということを考えてみた場合のロの観点、これはおのずと異なってくるのではないかというふうに考えております。現在、生保、損保、それから銀行さんについては今、任意の団体ということで、それの実効性を上げているというふうに考えている次第ですけれども、優等生というお話もあったわけですけれども、そういったことから、ここはそういうふうに考えていくべきではないかと考えております。

ハについてですけれども、ここはやはりそういったADRの機関については迅速性ないしは専門性といった観点は当然必要でございますので、そういった意味からは業法単位ということが妥当かというふうに思いますけれども、ただ、保険についていえば、保険業法の中でさらに生保、損保、それから少額短期といったいろんな業者がおりますので、実質的には4案に近いものも考えていく必要があるのではないかと、そういうふうに考えております。

以上です。

○岩原第二部会長

では、次に吉野委員、お願いします。

○吉野委員

全体の流れとしては、まずコストが低くてこういうことが実行できることが必要だと思いますので、私は既存のいろいろな協会があるところは、そこをなるべく使ったほうがコストが低くなると思います。新しくつくると、また組織を組み直さなくてはいけないと思いますから。それで、それが全体的です。

ロのところでは、法律上義務付けられたものとした場合でも、既存のいろんな協会のところの中につくれる方法があればいいのではないかと思います。

それから、2ページの一番上のところでは、第2案のところで先ほどいろいろお話が、例えば貸金業ですと加入が50%ぐらいしかないですし、恐らく保険や何かでも全部の会社が入っているわけではないと思いますから、そういう意味ではなるべくカバレッジが多くなって、ADRに関してはすべてがそこに従うというような方法が必要ではないかと思います。

それから、2ページの一番下のハの一番下の丸のところで、それで業界の団体がやる場合には中立性をきちんと保っておきませんと、サプライサイドだけの議論になってしまうといけないですから、きちんと利用者サイドのこともしっかり考えて、中立性、透明性ができるような、そういう形で業界団体の中に設置していただくということが可能じゃないかと思います。

○岩原第二部会長

藤沢委員。

○藤沢委員

ありがとうございます。

これを拝見していて、ロにしましてもハにしましても、それからどのような業務を行うのかというところにしましても、恐らく理想は第1案なんだと思うんですね、すべて。ただ、そう考えたときに、私が少し懸念をするのはやはりこういうふうにすべてを第1案でくくってしまったときに、やはり現場と実際に紛争を解決する弁護士の先生たちとの間の壁というのがやはりあるのかなと。

私はこういうことをすることによって、金融にかかわるローヤーの方々がふえるということは非常にいいことだとは思うんですけれども、今、まさに金商法ができた後の業界の動きを見ていると、非常に保守的になっているという動きがあることを考えると、理想の第1案をすべてやったときに、やはりまだ現実には合わないんじゃないかな、時期尚早なのではないかなという気がします。

ただ、私は将来的にすべて第1案でADRを考えていくということは、ぜひ検討し続けるべきだとは思いますけれども、現段階におきましてはやはり先ほどの吉野先生のコストの問題もありますし、現実を考えるとまずは既存をベースにして、例えばハにおけば、第3案的なものを既存の団体をベースに、こういうものをいかにつくっていくかということを考えるというのが現実的ではないだろうかと、そんなふうに思います。

○岩原第二部会長

ほかに。では、川本臨時委員から。

○川本臨時委員

ありがとうございます。

総論として任意の紛争解決機関の存在はとても望ましいものだと思っています。ただし、気になっておりますのは、吉野先生もおっしゃいましたけれども、コストと機動性で、あまり重装備になると結局コストを負担するのは利用者ですので、そこを勘案すべきだと思っています。そういう意味ではADR機関を設立して運営するのに、どのくらいのコストがかかっているのかということが、本来であれば数字でわかっていることが望ましいのではないかなと思います。

その観点から申し上げますと、ロの性格のところは第2案の任意の団体が望ましいのではないかと思いますし、ハのところは第3案、業法単位で成立し得るものということ、それから、その他のところで連携として一つの窓口で受けるというようなことが書いてありますけれども、現実的にはかなり難しいのではないかと。最初、業界のところに行って、それでわからないところを親切に教え合うとかというような体制のほうが機動的ではないかと思っています。最後のポツは第2案のやはり相談と苦情だけでは役割を果たし得ないと思っています。はみ出て恐縮ですけれども、その意見を突き詰めていくと、自主規制機関化のところはやはり第2案だと思います。規制制定の権限や処分までは、行き過ぎなのではないかと思います。

以上です。

○岩原第二部会長

それでは、次に高橋臨時委員。

○高橋臨時委員

恐れ入ります。前回欠席だったのでちょっと議論についていけていないかもしれないんですが、私自身は金融審議会委員で10年前からこの件に関わっています。今日金融審の答申が資料3で配られておりますが、平成12年に一つの結論を得て、その後、金融トラブル連絡調整協議会で8年活動をさせていただきました。それを踏まえて申し上げますと、今日の事業者委員のご意見に関しては、報告書の8ページの(ハ)に書いてある領域にとどまっているというふうに思います。

当時の結論を読み上げますと、「ワーキング・グループは紛争処理機関の中立・公正性の確保、紛争処理機能の向上や制度の実効性・透明性の確保、紛争処理機関の統一化・包括化、コスト負担の問題、窓口の明確化や広報活動による裁判外紛争処理制度の活用促進等、広範な論点について、多面的な検討を行った。 金融分野における既存の裁判外紛争処理機関は、法的根拠やその実態等の面で多種多様である。そのため、ワーキング・グループでは、上記の各論点のすべてについて意見を一致させることはできなかった。しかし、それらに関する当面の施策として、意見の集約をみたものも少なくなかった。なお、統一的・包括的な第三者型機関を設立するメリットは少なくなく、中長期的には一つの理想型として評価すべき、との議論がなされた」と。

本来、統一的・包括的な第三者機関がいいということは、10年前から言われてきたんですが、なかなかできないということで、金融トラブル連絡調整協議会のほうでいろんなトライアルをしてきたんですけれども、8年やってきた中で、事業者の自主性に期待するということが非常に難しいというふうに感じました。

お言葉を返すようで恐縮なんですが、生保業界の方から優等生だというご意見がありましたけれども、金トラのほうでは日証協はかなり優等生だけれども、生保・損保はその次で銀行はその下でほかは全然という、実はそういう評価をしてきたという経緯がございます。ですので、その辺の実態をずっとフォローアップしてきた立場からしますと、座長メモにもありますように、ADRの理念にきちんと照らして考えれば、最初のところは1の形でなくてはならない、設立が法律上義務付けられたものでなくてはならない、というふうに思います。  それから、ハの業務の範囲のところですけれども、これは当時から私も主張しておりましたけれども、こういうADR機関というのは一つに限るのではなくて複数あって、それが競争的に働くことがよいという考えに基づいてまいりました。私はそこについては今も変わっておりませんで、専門的な機関も必要だし、横断的な機関も必要だというふうに思っているんですね。

どれを選ぶかというと非常に難しいんですけれども、私自身は横断的なもの、それから今業界としてついていけていないものということに関しては、横断的なもので連携してやるというのが効率的だと思いますし、例えば例を挙げますと投資に関するトラブルというのは、今、移送だとか複雑なことをやっているんですけれども、日証協のADRのようなところで投資に関しては変額年金であろうが何であろうが一緒にできるというふうな形が合理的だと思いますし、保険の中で生保とか損保とか、特殊なものに関しては、それぞれブースを持ってやるような形で統一的・横断的なものが模索できないかというふうに思っております。

やはり、これから一つ一つつくるというのはコストがかかりますけれども、今まであるリソースを使いながら、より効率的、効果的なADRを実現するということを遠い目標ではなく、近い目標として目指すべきではないかと思っています。

以上です。

○岩原第二部会長

ちょっと事務局のほうから、先ほどご指摘いただきましたコストの問題について紹介をいただくということですので、事務局のほうからその点。

○中沢企画官

先ほど川本先生のほうから実際にどういうコストがあるのか、機動性があるのかというご指摘を受けました。実は事務局としてちゃんとしたデータを持っていないという申しわけない事態なんですけれども、とはいいながら、やはり規制を導入する限りは、そのコストパフォーマンスを考えるということは重要な観点だと思っております。そこで、私どものほうで関係団体のほうに問い合わせをいたしまして、現状、どのぐらいのコストをかけてADR機関を運営していただいているのかというところを調べたいと思います。次回までに調べましてご紹介したいと思いますが、よろしゅうございますでしょうか。

○岩原第二部会長

それでは、大森企画課長。

○大森企画課長

優等生の4団体がどこまで優等生かという議論があるようですけれども、相対的に優等であることは確かであります。金融トラブル連絡調整協議会はすべての団体が今、高橋さんがお話ししたように集まっていただいているんですけれども、なかなからちがあかないから金融審議会でということになっているんです。ここの場は相対的な優等生の方しか業態として入っていないということで、劣等生はできる範囲のことをやってくださいというだけでは制度論にならないというところがありますので、今のコストの問題とともに専門委員になっていない業態の方も、次回は皆様のご賛同があればお招きして、ご意見をお聞きするということが必要ではないかと考えております。

○岩原第二部会長

よろしいでしょうか、そういうことで。

○岩原第二部会長

既にたくさんの方から手を挙げていただいておりますので、手を挙げていただいた順にご発言いただきたいと思います。それでよろしいでしょうか。

では、今松臨時委員、お願いします。

○今松臨時委員

ありがとうございます。

大体今までの中でかなり私も似たようなところになっているんですが、まず、ADR自体の目的としてというか、やはりこの3つ、実際にいろんな意味での金融トラブル等々、より簡易かつ早期に解決するという意味、あるいはまたかつてのというか、例えば生命保険等々の変額保険等々の年金の問題でいえば、結構、国民生活センターとか、そういうところに持ち込まれていろんな例があったと思います。その意味でいうと、やっぱりより広く最初のというか、3つ目のところですかね、実際に紛争解決だけではなく、どうしても相談とか苦情、そこから入らざるを得ないというのは、どうしても今までの性格からいって、当然のことになってくると思います。

そこで、実際にどのようにつくっていくかという意味での性格、今、実際にあるわけですけれども、それをより今説明等でありましたように広く、あるいは実態として動いていないようなところにまで持っていく場合にはどうするかというところでいくと、一番いいのは確かにロでいえば、それ自体がそれなりの効力を持ったような法律上義務付けられたものがいいわけでしょうけれども、実態としてはやはり2案のところから入っていかざるを得ない。つまり、3案ということになると、これ自体がどの程度のものなのか、実際に実効性等々がやはり問われると思います。新たにこれから本当の意味でのADRをやっていないような業界、そういうところ、あるいは金融商品、そういうものも含めたという意味でのところでいえば、やっぱり2案から入っていくのが一番やりやすいかなというふうに思っています。

ハの対象業務のところでいえば、高橋臨時委員からありましたように、実際、広くやっぱりどこにかかるのかわからないというものも相当あるんだろうと思います、消費者から見ると。一番わかりやすいのは業法単位、つまり証券商品であるとか預金であるとか、これは2案とか3案、そこのところでカバーできるわけなので、ここは単純に入口のところでどうなのかって、一つだけ決め打ちという格好よりは、現実には3案の形が、手腕が多いだろうと思いますけれども、例えば1の形の例えば生活センターとか、そういうところをどう位置づけるかというのは、これからも問題になると思いますけれども、そういうところを入れた場合には、1案というものも全体を包括するものとして認めていいという、そういうことになってくるのではないかというふうに思います。

以上です。

○岩原第二部会長

その次にさっき手を挙げられたのは住田さんですね。お願いします。

○住田専門委員

住田でございます。立場は信託協会でございます。信託協会では認定投資者保護団体の認定の取得の準備中の段階でありまして、本日、優等生の範疇には入らないということで来たんですが、「全然(できていない団体)」に入れられるのもちょっとそこまでじゃないかと思うんですが、一応優等生ということでお話しさせていただきます。

当協会の場合、加盟会社の多くが全銀協にも加盟しているということと、それから業務の範囲、これも他の団体と重複する分野が非常に多いということで連携の話が出ていますが、今後、他団体と連携を進めていくということが実効性を上げていく上で、一番重要な方策の一つであると考えております。したがいまして、遅ればせながらではありますが、まずは認定投資者保護団体となった上で、規則・運営を他団体と共通化して、利用者利便を向上させた上で、その上で他団体と連携を検討し、運営等の改善を加えるという方向で考えております。制度のあり方については、こうした実務を通じて見えてくる部分も多々あるのではないかという認識であります。

それから、コストについてお話が出ていますが、さきの議案とも絡むかもわかりせんが、我々は相対的に規模の小さい団体でございまして、やっぱり気になるのはコストでございます。法制化によりまして権限がふえた部分を担保するための義務や体制整備、これは単にコスト換算、金額、お金の換算だけの意味じゃなくて、組織のあり方などもどの範囲で法制化していくのか、法制化の範囲によっても違ってくるかと思いますが、コスト効率性の問題、これ抜きには議論しづらいなという側面もあるということはご理解いただきたいと思います。

以上でございます。

○岩原第二部会長

藤原委員、どうぞ。

○藤原委員

業界の方たちのご事情はよくわかりました。これを間違った金融商品を買ってしまった消費者のほうから見てみたいと思います。英国のオンブズマンを例に挙げて説明をしていきたいと思います。英国の場合ADR機関は1つしかなく、この機関がすべての金融商品の紛争解決をしております。

残念ながら資料はちょっと古く3年前のものですが、2005年3月末までの1年間で、電話による苦情件数は33万件。1日にして1,400件苦情が来ております。苦情申し立ての3分の1は金融商品に対するトラブルをどこへ持って行ったら分からない人たちからの苦情です。苦情処理機関が一元化されたことで、新聞や雑誌でADRの存在を知り、苦情申し出だけをしてくる人たちが3割いるのです。また約3割の人たちは金融機関を通してADR機関へ苦情を申し立てしております。

金融業界の方たちはコストがかかることを問題にしておりますが、ここで大事なことは苦情処理の目線をどこに置くかだと思います。英国では、不景気とか好景気にかかわらず、元本保証ではない商品を売り出した時点で、買った人間の何%の人たちが不満や苦情を言ってくると想定し、金融業界が自らの顧客サービスの一部として処理機構をつくっていったほうがいいと思いADR機関を設立しています。そして、紛争解決の機関は権威が必要と考え設立が法律でバックアップされています。紛争解決の専門家じゃない人間がいろいろ言って、トラブっている個人を説得させるのは非常に難しいです。だから、コストがあまりかからないからという観点からではなく、苦情を持ってきた人たちの問題点をどう顧客側に立って紛争解決するのがベストかの観点から、費用対効果を考えております。

私は仕事柄、英国と日本を行ったり来たりしているのですが、その英国のADR機関(FOS)では1,000人ぐらいの人たちが仕事をして、紛争解決にかかわっております。例えFOSへ苦情を持ってこられても、個人が勝つとは限りません。FOSの専門家が、「この件に関してはあなたの言い分ではなく業界が言っている方が正しい」と言ったら、個人はそれを受け入れなければならないのです。

以上です。

○岩原第二部会長

ほかに。

先に手を挙げられたのは二宮専門委員ですね。では、二宮さん、どうぞ。

○二宮専門委員

損保協会の二宮でございます。イの目的のところ、金融ADRに関する取組みが不十分である業態の質の向上をいかに図るかという、そういう目的、消費者にとっての信頼性、安心感の確保、消費者の利便性の確保ということを考えましたら、ロにつきましては第2案を検討する必要があるんだろうと。私どもは前回においても任意の団体、第3案ということのお話をしてまいりましたけれども、やはりこの目的の一つを考えますと、やはり第2案を検討する必要が出てくるのだろうというふうに考えます。

次のハのところですけれども、これにつきましてはいわゆる業態の専門性の観点、また、今、申し上げました消費者の利便性、それとやはり苦情相談から生じます、そういった事案をベースとした会員企業への有効なフィードバック、やはりこれが非常に重要だと思いますが、こういうことを考えますと第3案が妥当なのではないかというふうに考えます。

○岩原第二部会長

その次に増井専門委員。

○二宮専門委員

それと、すみません、もう1点よろしいですか。

このADR機関はどのような業務を行うのかということがございますけれども、これも今、申し上げましたような消費者の利便性の確保とか、会員企業へのフィードバックという観点からしますと、やはり第2案、相談、苦情対応、紛争解決のすべてというふうに考えております。

以上です。

○岩原第二部会長

どうも失礼しました。

次に増井専門委員、お願いします。

○増井専門委員

日本証券業協会は先ほど優等生みたいでありがとうございます。優等生がそんなことを言ってはいかんのかもしれませんが、現実のことも考えながらやっていきたいと思っておりまして、私どもは個人的にいえば、ロでもハでも基本的に最終的に第1案になれば一番いいなというふうに思っているわけですけれども、ただ、現実問題を考えますと、例えば私どもは金融商品取引法の世界、私ども日証協はそのうちの第1種金融商品取引業者の一部ですけれども、守備範囲にしているわけですけれども、例えば私どもの守備範囲外でありますけれども、第2種金融商品取引業者というのはどういった方々が多いのかというと、圧倒的に多いのは不動産業者です。それから、あといろんな例えば馬主クラブとか、とにかく種々雑多な方々がいるわけですね。

そういった方々のトラブルについても、やっぱり対応するものがあったほうがいいというのはそのとおりだと思うんですが、例えば私どもが、今、実はこの前も申し上げましたけれども、金融商品取引法の世界でなるべく統一的な、シームレスなあっせん相談センターというのをつくろうということで検討しております。検討はしておりますが、いきなりそういう今のいろんな業者の方々が来ても、なかなかノウハウも何もないものですから、それなりの対応を考えることができるかどうかという現実の問題がございます。

志はあるんですけれども、そういうことを考えると、ここに書いてありますようなハの第1案から第4案までございますけれども、もちろん第1案の形でもいいですし、第2案、今、とりあえず私どもは第2案のような団体をつくりたいなと思っているわけですが、第3案でもあるいは第4案についても、そういった当面、過渡的には、あるいは例外的な措置なのかもしれませんけれども、金融証券取引法のような主だった業者がある場合には、過渡的に何かそういった団体をつくらざるを得ないかもしれないと。

それはやってみなければわからないので、そうでなくて、私どものところで一遍につくれる可能性もあることはありますけれども、いずれにしても業者の方の顔が見えないというのもあって、どういうことになるかわからないということがあるものですから、そこら辺の事情もぜひご参酌いただいて、仮に何かどうしても一つにまとめるというのであれば、それなりの準備期間も必要になるかもしれないというようなこともあるものですから、志はそういう非常に高いつもりでいるんですけれども、現実にうまく機能できる団体をつくれるかどうかということになりますと、やっぱりそれなりの準備段階が必要ではないかという感じがいたしております。

○岩原第二部会長

和仁委員、どうぞ。

○和仁委員

すみません、何か大勢はロは第2案、それからハは第3で、それはそれで一つの考え方だと思うんですが、私がよくわからないのは2ページ目の最初の丸のポツの2つ目の注で、「全国銀行協会は、銀行における保険商品の窓口販売に関する苦情について、一定の場合に、生命保険業協会又は日本損害保険協会への取次ぎを行っている」と書いてあるんですが、こういうふうに切り分けができるんですかねというのがちょっと私はの疑問です。

というのは、要するに保険会社のお仕着せ商品を銀行が売っている場合、その場合であれば確かにこういう形で苦情が出たときに、保険の専門家のほうへ回そうということもわかります。しかし、実際に現場で何が起こっているかというと、銀行がやはり自分の預金者向けに預金にかわるものとして、保険を客の囲い込み商品としてつくってくれと保険会社に発注していることで、製販が分離していないというか、分離しなくなりつつあるような印象を私は持っております。そういう場合にハの第3案でいきますと、業法でいえば保険業法ですから保険のほうへという形でやりますと、例えば行為規制の問題で銀行の販売の仕方に問題があったというときに、そのような切り分けで良いのか、つまり一体、それは保険の話なのか、あるいは銀行の話なのかというのがよくわからなくなる。

私の疑問というのは、本当にこれで今おっしゃっているような取次ぎのやり方

で、うまく問題は解決しているんでしょうかというのを実はお伺いしたいんですけれども、多分似たような問題は今後も起き続けると思います。逆に銀行代理店をやっている証券会社のやり方がまずいということで、また、銀行のほうにいくのか、それとも証券会社のほうへいくのかということだって起こるでしょうから、乗入れが起こっているので、業法単位で切るということはコストの点から考えてやむを得ない、小さく産んで大きく育てるという見地からは、そういうアプローチが一番現実的ではありましょうが、さっき高橋先生がおっしゃったように、両方で管轄権を広げてしまって例えば登録金融機関業務に関しては、例えば保険のクレームであっても全銀協の組織で扱えるとか、そういう形での解決はできないのでしょうか。

さっき増井専門委員のほうから、なかなか専門家がいないと、馬の場合は困るという話がありましたけれども、そういうときは別にプロの人を臨時にお願いして委員に入っていただけばいいだけの話であって、知恵で解決できるのではないかなという感じがいたします。したがって、業法単位でやるということがアプローチとしては現実的ですし、私もハの第3案に賛成しますけれども、もう少し緩いものにしてしまっていいんじゃないかなという感じがいたします。

それから、もう一つ疑問なんですけれども、今、ADRはコストがかかる、業界団体がお金を出さなくてはいけない、負担しなくてはいけないということで考えておられまして、日本の国では今のところ、そういうことなのでしょうが、もうかるADRというのも考えていいと思うんですね。ロンドンなんかですと、この辺は私よりもご存じの方が多いんでしょうけれども、紛争になってADRでやるかというときに、うちでやらせてくださいという申込みが結構来るんですね。結構高い金を取られるし、委員の日当も出さなくてはいけないんですけれども、その辺を考えると、もうかるADRというのも成立するのではないかと私は思っておりまして、そこのところで、皆さんもそういう考え方もあるのだということを頭の中に入れておいていただければと思います。

以上です。

○岩原第二部会長

ただいまのご指摘に関して、2ページの真ん中の丸のその他で、注のところにある全銀協が一定の場合には生保業協会あるいは損保業協会への取次ぎを行っているという、この実態等について何でしたら、川端さん。

○川端専門委員

私どもとしては、現状取次ぎは機能していると認識しております。私どもの紛争の内容をみてみますと、融資のご判断などを除きますと、通常のご預金で紛争になるということは基本的にはあまりなくて、外貨預金でありましたり、デリバティブ内在型のものでありましたり、やはり投資性のあるようなものが場合によって紛争になっております。それ以外ですと、投資信託などがあり、そうした一定の場合にお取り次ぎをさせていただいておりますが、現状においては機能しているというように理解しております。

○岩原第二部会長

田中専門委員、どうぞ。

○田中(浩)専門委員

先ほどからいろいろとコストの話が出ておりますので、証券会社の立場から、コストについてちょっと考えていることをお話したいと思います。今、証券業協会に投資家から証券会社に対するクレームがあって、それが協会のあっせんセンターに話が持ち込まれてあっせんの手続になりますと、金額にもよりますが、おおむね投資家の方は1万円前後のお金を払ってあっせんの手続を依頼する形になります。

そうしますとあっせん委員、これは弁護士の先生になるのですが、弁護士の先生があっせんの手続を行うことになります。その弁護士の先生がどの程度の報酬を受取っているか、私は詳しくは知りません。和仁委員がもうかるADRということを言われましたが、弁護士の先生はそれなりのビジネスにはなるかもしれません。報酬は日本証券業協会が支払をする形になっています。

そういった場合、自分たちはしっかりやっていると思っている大手、準大手の証券会社の立場からすると、そもそもあっせんのために協会として払うお金というのは、誰のために払っているのだという思いがあります。すなわち、あまりお行儀がよくない証券会社が顧客との間で問題を起こすと、業界全体でそのためお金を払うという形になっており、会社の規模によって準じて協会費という形で負担させられていることになります。市場全体の信頼性を確保するという観点から、当然、必要な経費ということで、現状ではすべての証券会社が規模に応じてお金を支払っているわけなのですが、そのコストがだんだん大きくなっていくと、そもそもそういう費用負担の仕組みは何かちょっとおかしいのじゃないかという議論が業界内でも出てきております。

また、安全な投資環境をつくるという面で、ここをさらに充実しようという一般論は、誰にも反対のしようがありません。ただ、どんどんコストが過大になってくると、業者のクレジットや業務内容、実際にやっている業務のレベルによって分けなければいけないのかというような、業界内での分離の議論というのも出てきてしまうこともあるかと思います。ですから、このコストの問題というのは、結構いろんな意味で様々な要素が入ってきて、結構難しい問題だと思います。

それから、もう1件、今の話とは別なのですが、2ページ目に書いてある共通窓口の件なのですが、これは非常に実務的には意味があると思います。個人の投資家あるいは消費者の方が何かトラブルに巻き込まれたといったときに、どこに連絡していいのかわからないというケースというのは非常に多いと思います。ですから、共通のADRということではなくても、共通の窓口ということで、そういうのを設置するというのは意味があると思います。そこで、その共通の窓口のところでは、その問題に関してはどこそこが担当しますので、こちらのほうにお回ししますというようなことをやるというのは、極めて意義があることだと思います。

以上です。

○岩原第二部会長

今、田中専門委員がご指摘になりました最初の前半の行儀のよくない会社のために、協会のほうがコストを負担することになることについて、協会の中でご議論があるということですが、たしかイギリスの場合は、さっき和仁委員がご指摘になったようにもうかるADRになっているというのは、あっせんの対象になった企業がコストを負担することに基づいていたように記憶するのですが、藤原さん。

○藤原委員

イギリスの場合は、ADR機関の予算は円貨にして約100億円です。約2万6,000の金融業者がメンバーですが、メンバーが年間予算の25%のコストを負担しています。残りの75%は紛争解決の利用費として金融機関に支払ってもらっています。例えば保険会社YのケースをFOSが扱った場合は、そのY保険会社が利用費として費用を負担します。これが一件当たり平均10万円くらいです。裁判をした時の費用と比較するとこの利用費は安いとみていいと思います。

このADRの問題で私が心配するのは、どうやって短期間の間に紛争解決の専門家を育成するかという点です。これに関しては今後もっと具体案が示されてもいいと思います。それから、今みたいに日本の銀行が保険も売り、なおかつ投資信託も売り続けていくのでしたら、業界ごとのADRを作るのではなく信頼できるADR機関を1つ作ることが困っている消費者のためになるのではないかと思います。

○岩原第二部会長

高橋臨時委員もそれに関してですか。

○高橋臨時委員

原因者負担という考え方は入れるべきだという議論を10年前からやってきていると思います。ですので、日証協さんがなぜ入れていらっしゃらないのかというはよくわからないのですけれども、優等生論に対して、すみません、一言だけつけ加えさせていただくと、日証協さんというか、証券業界の場合にはいろんな不祥事があって劣等生だったので法定化して、それでよくなってきたという道筋はあったというふうに私は思うのですね。だけれども、本当に頑張られて、今、いい事業者と悪い事業者がもしかなりはっきりしているのであれば、そういう原因者負担みたいなところで、やはり苦情が多い金融機関にたくさん払っていただくということが、そもそも苦情、紛争をなくしていくということには有効だと思いますので、それを考えられたらどうでしょう。海外では結構そういうケースというのは多いと思います。何も業界が抱えなければいけないということはないと思います。

それから、窓口のことなのですけれども、私はやはり藤原委員がおっしゃるように信頼できる窓口を一つ、これは必ずつくらなければいけないと思っています。これも10年前に議論したことではあるのですが、製造者責任なのか、販売者責任なのか、わからないようなものがかなりある中で、まずはそこの窓口に行って病院の総合窓口みたいに一つ受け付けをしてもらったら、カルテを持って回るような形にする。複雑な紛争であった場合には1カ所で済まないと思いますので、そういうふうな形できちんと解決してあげるということが必要だと思いますし、イギリスの例でいえば、何もかもが紛争になっているわけではなくて、半分以上が第三者の中立的な人が説明してあげると、その時点で解決するものも多いということですので、そんなに怖れることはなくて、いいものをつくっていけばいいのでないかと私は思います。

○岩原第二部会長

まさに原因者負担にするかどうかという問題は、現在のようにそれぞれの各業態のつくっているADR機関であれば、コストをどのように業態の中で負担するか、原因者負担をどこまでのパーセンテージにするかという、まさにメモの2ページ目の自主規制機関化に係る問題になります。各ADR機関において、みずからが規則でもってどういう費用負担を業界の中でするかということを決めていくことができるようにするかという問題になってくるかというように思われます。

何かほかにご意見はございますか。特にないですか。

今までのところでないとしますと、先ほどの続きのところ、主に自主規制機関化の前まで来たわけですね。今、私がちょっと申し上げたこともかかわりますけれども、ニの自主規制機関化以下のところ、あるいはホの金融ADR手続の性質、あるいは金融機関の義務、ト、実効性確保のために行政庁の関与、ここら辺のところで皆様のご意見を引き続き賜ればと思います。いかがでしょうか。

前回は自主規制機関化のところのご議論が随分多かったと思うのですけれども、その意味はかなり今回のメモでクラリファイされたと思いますが、いかがでしょうか。それにはさっき申し上げたような問題も、一つの例として含まれるということになるかと思います。

何か急に静かになっちゃいましたけれども、いかがでしょうか。もうほとんど異論がないということでしょうか。

それでは、増井専門委員、どうぞ。

○増井専門委員

ニのところですが、私は第2案、今の金商法上の認定投資者保護団体と同じような形でやられるのがいいのではないかという感じがいたしております。第1案というのはあるのですけれども、調査とか、あるいは監査とかというのを私どもはやっておりますけれども、相当重複する可能性が出てくるということもあって、コストの面とか、あるいは規制を、自主規制を受けるほうからいくと、いろんなあちこちいろんな団体が来るというようなこともあったりして、自主規制機関としては数年前に相当たしか大森市場課長のときだったと思いますけれども、整理をして、特に当時の証取法の時代にはたしか取引所と私どもの日証協のいろんな監査の連携とか、幾つも逃避所がたくさんあるとかというのがあったりなんかして、そういう意味で整理をした記憶がございますけれども、そういう意味では2案のほうがすっきりしているのではないかという感じがいたしております。

○岩原第二部会長

そもそも第1案と第2案がどれだけ違うのかということもあるようにも思いますが、調査はある程度わかりますが、規制の権限というのは具体的には何を考えているのですか。

○中沢企画官

具体的には制裁権限といいましょうか、自主規制機関の中における規制にひっかかった場合に、制裁する権限があるのかということが1つございます。それが一番大きな違いであろうと思っております。

○岩原第二部会長

そうしますと、現在の例えば認定投資者保護団体になられました全銀協などでは、あっせんに従わないようなときには、従わない金融機関の名前を公表するというようなことをたしかお考えだと思いますけれども、それですと第1案には入らないということなのですか。

○中沢企画官

何をもって制裁と呼ぶかということですけれども、事実上、そういう仕組みは現在、多くの団体の中で手当されているようです。それを制度として書き込むかどうか、という問題でございます。現在、認定投資者保護団体のステイタスを取っておられる生保、損保あるいは全銀協におかれましても、事実上、そういうサンクションを持っておられますけれども、それを制度化するかという、その点でございます。

○岩原第二部会長

ある意味で規則を制定しただけで、それをエンフォースする手段がないと、意味がないという感じもしないではないので、さっきの増井さんのご発言も現在の金融商品取引法上、与えられている権限をもっと狭めたいということではないのでしょうね。

増井さん、どうぞ。

○増井専門委員

すみません、ちょっとやや私の理解が不足していたかもしれませんが、いずれにしても仮に何かあった場合に、私どもは自主規制機関なものですから、仮に例えばこちらのADRのもとで何か問題があったときには、当然のことですけれども、私どものADRのルールに違反をしているということになると思いますので、私どもの中で処分ができるという仕組みにもともとなっているものですからそう申し上げたのですが、仮にそういう形になっていない場合、確かにおっしゃるようにどうやってペナルティーを課すのだというような、そういう問題はあるだろうと思います。

○岩原第二部会長

日本証券業協会の場合は法律上、そういうペナルティーを課徴金みたいな形で協会として課すということが法律上認められているわけですけれども、ほかの業界団体については、業法等ではそういう権限は特別には認められていないということで、もし考えられるとすると、さっきの全銀協がお考えになっているような名前の公表とか、そういうことになってくるわけです。しかし、それでどこまで実効的なことができるのか、実効性を確保するためにはどこまでのことを求めていくのかといった問題を、具体的な制度論としては多分考えていくことになるのかなと思います。

いかがでしょうか、そこら辺を含めてご意見があれば承れればと思いますが。

川端さん。

○川端専門委員

私も1案の調査、規制の権限を有するというところの意味合いがなかなか具体的にイメージできなかったので、2案というように思っていました。逆に2案の場合でも、規則の中に従わなければ公表するという規定を設けることが可能であり、むしろ、実効性を保つために、公表する権限を付加するなどの何らかの措置を規則で決めてしまえばいいのかと考えております。

また、調査というと、どうしても監査といったイメージになってしまい、そうなると非常に違和感を覚えるので、この言葉の持つ意味合いについて理解しがたかったわけであります。トラブルを解決するために、各金融機関が資料を出すとか、そういうことに協力するのは当然でありまして、したがって3ページ目のヘに書かれている金融機関の義務の整理に違和感はなく、調査の権限を法制化するということの意味合いがよくわからないと思っています。

○岩原第二部会長

どうもありがとうございました。

今、おっしゃいましたように、実際のところは当然ある程度調査等にも応じていただかないと実態もわかりませんから、そういう意味では、たとえ第2案の立場においても、ある程度の調査の協力義務とか、規則に従わなかったときは一定の広い意味でのペナルティーはあるという前提ではないか。ですから、ある意味でいうと、この1案、2案というのも相対的な問題だろうという感じはします。

川本さん、どうぞ。

○川本臨時委員

先ほど2案というふうに申し上げました。1案と2案ともう少しきっちり書き分けていただいたほうがいいかと思うのですが、私のイメージとしては調査というと立入検査権まで持つようなイメージを持っております。そういう重装備のものというよりも、裁判所以外での紛争解決を今目指しているわけですから、自主規制機関が処分とか制裁とか立入検査とか、何かそういうことをする機関ではないのではないかというふうに思っております。

○岩原第二部会長

ほかに何か。殿岡さん。

○殿岡専門委員

生命保険業界ですけれども、優等生という表現はともかくといたしまして、一定の点数をいただいているというふうに認識はしておりますけれども、自主規制機関という言葉、これは前回もご意見が出たところですけれども、やはりさまざまな意味があるのではないかというふうに考えております。

現在、生命保険業界ではいわゆる不払いの問題もございましたので、そういったところから業界としての信頼性の確保・向上といったところで、各社、積極的に業界のADR機関には協力をすると。そういった形での義務化、手続応諾義務ですとか、参加義務ですとか、裁定の結果の尊重義務ですとか、そういったものは業界の中で規定をされておりまして、それに違反した会社というのはこれまでのところ出ていないと。そういった意味でも実効性は十分に確保できてきているのではないかというふうに考えております。

そういったところからしますと、ここで言っている自主規制機関というのがそういう意味での業界の中での自治あるいは自主的な取組みということであれば、違和感はないのですけれども、そうではなくて、これを法制化するということであれば、そこは最終的な消費者保護という観点からは、必ずしもそれが消費者保護に資するというふうには思えないというところもございます。具体的にはやはり業界としては先ほど申し上げたようなところもあって、さまざまな義務を課して、また実際問題としては紛争の処理に当たるのは、業界外の方々が当たっていらっしゃるといったところもございます。

そういった業界の自主的な取組み、ある意味では現実を踏まえた柔軟な取組みということを業界各社の協力の中で進めてきているところで、これが法制化されるということによって、逆にそこが何からの制約を受けてしまうことがあるのではないかと。法律ということになりますと、当然、改正するにも国会の手続といったことが必要になりますので、場合によっては現実的な対応あるいは柔軟な対応というのは、必ずしもそれによって促進されるとは思えない部分もございますので、そこは必ずしも適切ではないのではないかというふうに考えております。

以上です。

○岩原第二部会長

法制化という言葉もこれまたいろいろ多義的でありますので、今おっしゃった法制化に異論があるというのは、各業界団体が金融機関なり、あるいは加盟保険会社に対して、サンクションをする権限を持つということを法律自体に書くようなことには違和感がある、ということですか。

○殿岡専門委員

法制化といった場合には、やはり日証協さんが一つモデルにはなろうかと思いますけれども、やはり業法で規定された自主規制機関ということまでも含めてのことであると、そこは違和感があるのかなということです。

○岩原第二部会長

さっきのお話では、自分達は自治として、まさにピアプレッシャーで内部的にきちんとやりますと、つくった規則は守るし、調査にも協力するし、もしあっせん機関のあっせんが出たときには、それを尊重し、守ります、もしそうでない場合には一定のペナルティーを受けます、その実効性を担保するようなことは異論がないという感じでしたよね。

○殿岡専門委員

実際に、これが法制化されていく過程かということかと思いますけれども、おっしゃった限りのところであれば、それほど違和感は感じないというのは正直なところです。ただ、後ほど法制化のところ、制度化という言葉も出てまいりますけれども、それがそういう自主的な取組みを促進することばかりのほうの方向だけに作用するものでは必ずしもないのではないかと。やはりそういう業界の自主的な取組みとは、ちょっと一歩離れてしまうことが場合によっては出てくるのではないかと、法制化されるという、そこの重みですね、そこのところをちょっと危惧しているところでございます。

○岩原第二部会長

おっしゃる法制化は4ページの3のところに書いてある制度化という意味での法制化ですか。

○殿岡専門委員

そうです。

○岩原第二部会長

では、その前に、その前の段階として例えば3ページのヘのところの丸、特に2つ目など、金融機関に対し、金融ADR機関との間で金融ADR手続に関する契約を締結する義務を課すとか、あるいはその後のトのところにあります、実効性確保のための行政庁の関与というような形で、例えば実効性を担保するために、そういうピアプレッシャーをちゃんと守っているか、自分たちの自治を守るための体制をつくっているか、というようなことを金融庁が監督等を通じてチェックするというようなことは、おっしゃるような違和感のある制度化とに入るのか、それとも、それは自治をむしろ金融庁がサポートするという意味で、それほど違和感のない形での実効性を持たせるための方法としてお感じになるのか、そこら辺はどうですか。

○殿岡専門委員

いかんとも答えがたいところにだんだん話が入ってきている感じがするのですけれども、おっしゃるような先生のお言葉であれば違和感は感じないというのが率直なところでございます。ただ、実際にこれが法制化をされるということの、そういうことをすることのメリットというのがいま一つ感じられないと、おっしゃられた限りではですね。

今、そういった形で業界団体としてできる限りのことはしてきておりますし、それなりの実効性も積んできているというふうに私どもは自負しているわけですけれども、そういった取組みをあえて法律で規定することが最初のそれなりの4団体、それなりの効果、実績を積んできている4つの団体と、それ以外の団体との間の落差をどうするかといったところに立ち返ってみますと、ちょっとそういった形での法規制の目的が一体何になるのか、どちらの方向を目指すものであるのか、実効性の向上というほうに力点を置いているのか、あるいはそういったADRの機能がない業界を引き上げるという方向のものなのか、そこのところもやっぱりはっきりさせていったほうが議論としてはわかりやすいのではないかというふうに考えます。

○岩原第二部会長

それは両面で働き得るのではないでしょうか。既存の団体の実効性をより高めるという形でも、先ほど申し上げたような体制をつくっていくということは役割を果たすでしょうし、また、そうでない団体については、少なくとも今までよりはよりましな体制をつくっていただくという意味で、先ほども例えば申し上げたような行政庁が、そういう形で関与することでサポートするということは考え得ると思います。

その行政庁のサポートをどういう形で制度化するかということも、程度論でいろいろ議論があり得るところかと思います。よりはっきりさせるためには、そういうことを行政庁が一定の形でサポートしますよということを法律に書いていくという意味での法制化もあり得るでしょうし、そうではなくて、そういうことをやっていないということが健全な業務をしていないというふうにみなして、現行法のもとである程度関与していくということだってあり得るのではないかと思います。

藤原さん、どうぞ。

○藤原委員

業界の方たちが結構消極的なので、他国の例を1つ挙げながら説明をしていきたいと思います。イギリスの例ですが、消費者がADR機関に話を持っていって、消費者側が勝った例というのは35%しかないのです。にもかかわらず、80%の消費者がその結論に対して、つまり業界側が勝ったことに対しては満足しているとアンケートに答えているのです。これはなぜなのかと申しますと、それはADRが紛争解決の専門家を集めた独立機関だからです。同じことを業界の人に言われるよりも、きちとした専門家が独立機関にいて、かつ権威がある機関から言われるほうが皆さん腹に落ちるのです。

また、そういう独立機関の専門家が説明してくれるほうがトラブルに陥った人たちは公平だと思うのです。金融商品が複雑化し、また銀行・証券・保険業界の垣根がなくなってきていることを考えると、繰り返しになりますが、銀行が銀行だけの苦情を処理しているだけではちょっと効率が悪いですし、カスタマーサービスの点からいっても消費者のニーズにこたえていないのではないかと思います。イギリスなどの場合は業界が積極的にADR独立機関をつくったのですが今の銀行協会の方とか保険業界の方たちのお話を聞くと、なぜそこまで警戒しなければならないのか私にはよくわかりません。

あと消費者の立場というのをお金で換算して、費用が高いか安いかによって4つつくるとか3つとかいっているように聞こえるのですが、大事なことはちゃんと仲裁ができる、紛争解決ができる人たちを入れた機関というのを消費者のために作ることだと思います。

○岩原第二部会長

川端さん、どうぞ。

○川端専門委員

今、藤原委員がおっしゃるように消極的というわけでは決してないので、恐らくさっき殿岡さんがおっしゃったのも、法制化というときの具体的なところが見えないということかと思います。前回、岩原先生に整理いただきましたように、法制化とは、日証協さんのような形を目指しているわけではなく、まさに紛争解決のところをどうすべきかということであると、私も思います。例えば、私どもが全銀協でつくったあっせん委員会の案に従うときに、非常にシンプルにいうと、従わないといけないという法律があれば、事業者側もその法の根拠に基づいて従える面もあると思います。したがって、法制化の具体的内容次第であり、法制化がすべてだめだというつもりは全くございません。それから、コストが膨らむからやりたくないということももちろんございません。

私どもも、個別の銀行において、お客様の相談や苦情への対応に大変な組織と人材をかけてやっておりますし、そうした取組みを通じて、より納得性の高い形で解決する形ができていくのは大変望ましいことですので、そのことについて後ろ向きになるつもりは全くございません。まさに法制化ということが、どう受けとめられるかだけの議論になっているような気がいたします。

○岩原第二部会長

ちょっと法制化という言葉が一つのレッテルになっちゃって、ややアレルギーを起こしているところがあるようですけれども、それにもいろんな具体的な内容があり得て、今、川端さんがおっしゃったような方向での法制化ということも十分考えられるというふうに思いますが、今、黒沼さん。

○黒沼委員

実効性確保については現在、会員企業が皆従っており実効性が確保されているということと、実効性確保の手段が制度的に整っているということは全く別問題ですので、それらはきちんと切り離して議論すべきだと思います。そうした観点から見た場合に、実効性を確保するために制裁手段が準備されているほうがいいのは当たり前でありまして、その点で第1案と第2案の違いは私の理解するところでは、第2案の場合には契約締結義務と契約を締結することを参入要件とすることが、セットになって入ってくるという点ではないかと思っています。つまり、第1案がいいと思うのですけれども、もし第2案を採用するのであれば、契約締結義務と参入要件とすることも入れるべきだと思います。その場合の両者の違いは、業界の自主規制機関が制裁をしたほうが効率的なのか、それとも金融庁が制裁したほうが効率的なのか、それによって決まるべき問題だろうと思います。

○岩原第二部会長

金融庁が制裁したほうがということのほかに、業界が自分でやるけれども、それがちゃんとやれているかどうかを金融庁がレビューするというようないき方も多分中間的にもう一つあるということかもしれませんね。

吉野先生。

○吉野委員

先ほどからここに座られている方は非常にいい業界であって、こういうことなのですが、貸金業に関してもこれが適用されるとしますと、監督上の対応をしていただかないと、多分、自主規制団体の方が来られたとしても我々だけではやりませんと。ああいうところはやっぱり苦情相談が非常に来ておりますし、それから、どこまでこの業界を含めるかということも含めて、きょう来られていないような業界の方もぜひ呼んでいただいて、特に貸金業というのは去年12月にできたばかりですから、そういうところに全部これと同じようなことをやってくださいといったら無理だと思いますから、そういうところに対してはある程度期間を設けるとか、さらに事情も全然違うと思いますので、その点、よろしくお願いいたします。

○岩原第二部会長

大変もっともなご指摘でございますので、その点、後で申し上げたいと思いますけれども、次回の際に、貸金業協会の方からのご意見もできれば伺いたいと考えております。

二宮専門委員、どうぞ。

○二宮専門委員

ニの自主規制機関化ということについては、ADRに限ったものというふうに認識しております。それで、本件についてはやはり損保協会においては調停の実効性の確保のための先ほどお話しいただきましたような規定、不受諾の場合の理由の公開、そういった規定もあわせ持っておりますので、規制制定の権限のところにそれも含まれているということであれば、第2案で結構なのだと思います。

それと、もう1点、先ほどの業界が消極的といいましょうか、そういったことに関してなんですが、私どももやはり消費者の安心感、信頼感、また利便性の確保といったところから業務のあり方を考えているつもりでございます。それで、先ほど田中専門委員のほうからご発言のありましたような一つの統一的な窓口、それは単純に振り分けるということであったかと思うのですが、そういった意味であれば、振り分けられた専門性を持った業態が責任を持って回答していく、また、苦情なり相談なりの結局奥深くにある原因というのでしょうか、そうしたものを分析し、それを業界にフィードバックをして業務改善につなげるというような、そういった過程を持てるのであれば、そのような単一の窓口、振り分けだけの窓口というのも非常に消費者の利便性からは意味があるとは思うのですが、そこにやはり専門性ということを考えますと、そこにそういった機能も全部持たせるというのはなかなか難しいのであろうと。やはり業態別に分けていかないと、適切な対応はできないのではないかというふうに思っております。

以上でございます。

○岩原第二部会長

鴇田専門委員。

○鴇田専門委員

3番のほうにまで及んでいるようですので、よろしゅうございますか。この最後の段落の、業界団体の加入率が低いというところの次から、業界として専らホールセール業務、それから苦情が少なく紛争につきADRの解決になじまないという記述がありますが、私どもベンチャーキャピタル協会とか、プライベートエクイティーの業界、いわゆるバイアウトとか、特定の機関投資家との相対取引でいわゆる投資事業組合、組合契約が中心となっている業種においては、ほとんどそういったものがない、いわゆる苦情とか紛争が起きづらい。それは準拠法まで記載させた形での投資契約を結んで対応しているからでございまして、こういった業種に対する対応についてはぜひここに書いてありますように、諸事情に応じた配慮というのは絶対必要ではないかというふうに思います。この辺については金商法上の特例業務届出者ということで、いわゆる私募を中心としている業種というのは、結構金融ではありますので、この辺の配慮もぜひお願いしたいということでございます。

○岩原第二部会長

どうも。

ほかに、落合専門委員。

○落合専門委員

先ほどから意見の中に本件に対し、業界が消極的ですとか、コストを気にしているとかの話が出ていますが、実態は各金融機関大変重要視しておりますし、その必要性は認識しております。

しかし、制度を見直す場合は、現実をとらえた上でいろいろ論議しないと、机上の空論になってしまう恐れがあります。例えば、資料2の最後のページに19年度の各業界団体の相談件数や苦情・紛争の一覧表が出ています。

これを見ていただくと、先ほど川端専門委員が預金業務については、ほとんど苦情も紛争もないのですと言いましたように、紛争は年間に4件しか発生しておりません。このような現状を踏まえると先ほどから論議されているような、仰々しい制度を本当に作って良いものかどうか、また、この維持がコスト負担等でなかなか難しいとの意見が多くある中で仰々しく一律的に作って良いのか。疑問に思います。

実は苦情に対するコストは、各金融機関が非常に時間と労力をかけています。例えば当金庫では日々色々と営業店から来る苦情につきまして、トップまで報告が来て、それに対して改善の指示だとか、それが妥当なのか、を管理しております。このようなことは多くの金融機関が実施している状況であることから、現実的に

新たな高コストを一律に払って有効なのかどうか、を論議していただきたい。

具体的には、リスキーな商品を扱う金融業態ほど確かに紛争は多くはなるので、

業態別の状況に合った、あるいはお客様の真のニーズに合った、制度にしていただきたいと思います。

○岩原第二部会長

業態に合った制度を考えていくというのはおっしゃるとおりだと思うのですけれども、先ほどの資料2の最後のページにあります紛争が、預金については4件しかないということは、今までの金融トラブル連絡調整協議会での長い議論では、むしろこれだけしか金融機関のADRに出てこなかったことが問題ではないかといった議論になっていました。既に預金についていえば、不正な預金の払い戻しに関して裁判所に係属した事件だけで100件ほどはございますので、紛争が4件しかないということのほうが異常ではないかということが問題になっています。

○落合専門委員

もちろん、そうなのかもしれません。ですが、お客さんは紛争解決の窓口があっても、金融側に問題が明確にある場合は、裁判所に行くことが多いわけです。だからと言って、ADRを私たちは全面的に否定するわけでは全くないのです。実態に合わせていただきたいのです。

紛争になる事故は、基本的には裁判等でほとんど顕在化するのだと思います。ですから、100件もの、裁判事例が出ているのではないでしょうか。それ以外のものは多分苦情の中で話し合いにより解決が進んでいると感じています。ですから4件が必ずしも正しくないとは断定できないと思います。

○岩原第二部会長

そこら辺は評価の分かれるところとは思いますけれども、ここで考えているのは結局裁判所のほうに行かざるを得ないような現状を、できれば各業界なり、それぞれでおつくりになったADRがもっと効率的に専門性を発揮し、むしろ裁判所に行く前にそこでなるべく解決して、迅速に安いコストで利用者の方に、広い意味での紛争の解決のチャンネルを広げてはどうかということを、今は議論しいているのだということをご理解いただければと思います。

○落合専門委員

私も全く同じ考えです。ですから、一律に仰々しく制度化するよりも早く対応できる、苦情相談の中で解決するような、そのような体制にした方が良いのではないかと思います。

あまり、形式張った体制ですと、解決が遅くなったり、コストが高止まりしてしまうと考えております。

○岩原第二部会長

増井さん、どうぞ。

○増井専門委員

私も自主規制機関ですので、そのことから申し上げます。私どもとしては、ヘ、トと書いてあるところについては特段異論というか、違和感はないと思いますし、あと幾つか実態で先ほど鴇田専門委員なんかのお話がありましたけれども、そこら辺をどこら辺まで考えるかというのはあるのかもしれませんが、いずれにしても基本的に違和感はございません。逆に私どもはこういった手続横断の義務とか、結果尊重義務とかというのはある意味では会員に課しているわけですけれども、それだからといって、多分、そういった苦情だとか、相談だとか、うまくいっていないということではないと思います。あと、要はそれぞれの会社の姿勢とか、業界の姿勢とかということが大事ではないかというふうに思います。

○岩原第二部会長

まだまだご議論はあると思いますが、最初に申し上げましたように、きょうで議論を終わらせるわけではございませんで、次回、引き続きご議論いただきたいと思いますので、もし特に今ご発言をされたいということがなければ、そろそろ時間でございますので。高橋さん、どうぞ。

○高橋臨時委員

すみません、金融トラブル連絡調整協議会で、今、落合専門委員がおっしゃったようなことの試みをやって、我々もフォローアップにずっとおつき合いしてきた結果、うまく進んでいないということがあるのだということは申し上げたいと思います。

それと、先ほど振り分けのことのお話があったのですけれども、振り分けってそんな簡単なお話ではなくて、実はそこが一番難しいというふうに私は考えています。これは金融庁さんが一番ご存じで、金融サービス利用者相談室を開いていらっしゃいますので、そこから各金融機関や業界団体に紹介という形をとっていて、それがうまくいっていないということも、実は金融庁さんが一番ご存じなのではないかと私は思っております。そういう意味で、本当に消費者に信頼されて、それから実効性のある機関を今こそつくらなくてはいけないのではないと思っています。

それから、規則化、法制化の話なのですけれども、私も長い間、いろんな相談窓口の方々とおつき合いしてきて、業界団体のプロパーの方々は本当に一生懸命やっていらっしゃるのです。もっと誇りを持ってやるためには、法的な権限も欲しいというふうな声をたくさん聞きまして、それもここであえて申し上げておきたいと思うのですが、ここに出ていらっしゃる方は業界の委員の方々であるのですけれども、プロパーの方々は実際に窓口で顧客、消費者の方と接していらして、助けたいこともいっぱいあるけれども、今の枠組みの中ではできないこともたくさんあるのだというふうに伺っておりますので、これを最後につけ加えさせていただきます。

○岩原第二部会長

どうもありがとうございます。

振り分けの難しさは多くの委員の方がご指摘されるところであり、さっき和仁さんもおっしゃったことでありまして、そういうところはまさに本当に知恵の出しどころだと思います。いい制度をこの際、考えていきたいと思っております。

それでは、時間が参りましたので、本日の審議は終了させていただきたいと存じます。

次回の合同部会は現在のところ、12月3日午前10時から12時まで開催することを予定しております。

先ほど吉野委員からご指摘いただきましたが、貸金業についてご議論いただいたところでありまして、次回に貸金業の実情について貸金業協会からご説明を受けたいと考えております。また、金融ADRの整備が進んでいない業態について、貸金業以外の業態の団体からも説明を受けたいと考えております。貸金業以外の業態についての選定を含め、その点、事務局に手配していただきたいと思っておりますが、よろしゅうございましょうか。

それでは、そのようにさせていただきたいと思います。事務局のほう、よろしくお願いいたします。

それでは、次回の合同部会の議事進行について、事務局からご連絡があると聞いておりますので、よろしくお願いします。

○大森企画課長

いろいろ活発なご意見をありがとうございました。

ただいま岩原部会長がおっしゃったことに加えまして、藤原さんがおっしゃったADRの独立性とか、あるいは和仁先生のおっしゃったもうかるADRみたいなことを民間ベースで弁護士さんたちが集まって、試みも始まっておるようでして、近々、成案がまとまるというようなことも聞いておりますので、次回はそういったこともあわせてご紹介して、また議論の参考にしていただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

○岩原第二部会長

それでは、事務局で今おっしゃったようなこともお考えいただいているようでございますし、また意見の集約も行っていただけるようですので、それについて皆様、よろしゅうございましょうか。

それでは、事務局にそういう努力をしていただきたいと、意見の集約を含めてしていただきたいと思います。

それでは、以上をもちまして本日の会議を終了させていただきます。

長時間どうもありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企画課
(内線3682、3516)

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