金融審議会金融分科会第一部会(第54回)・第二部会(第47回)
合同会合 議事要旨

1. 日時:

平成20年11月5日(水)10時00分~12時00分

2. 場所:

中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室

3. 議題

金融ADRについて

4. 議事内容

  • 事務局説明

  • 以下の業界団体・自主規制機関における金融ADRの取組状況等について発表があった。

    • 全国銀行協会

    • 生命保険協会

    • 日本損害保険協会

    • 日本証券業協会

  • 討議における主な意見は以下のとおり。

    • 金融業界では、規制緩和により、多様な販売ルートで多様な金融商品が売られており、苦情件数が相当数あるにもかかわらず、他業種と異なり、苦情を業務改善に役立てるための取組みが十分に行われていない。

      現在の業界団体等による金融ADR機関では、苦情の受付件数が少なく、また、苦情解決支援手続で不調となったもので紛争解決支援手続に移行した件数も少ない。

      現在の業界団体等による金融ADR制度は機能不全に陥っており、金融ADR機関の自主規制機関化、金融ADR手続のうち基本的な部分については法的に担保することが必要である。

    • 金融トラブル連絡調整協議会の座長メモに記載された、金融ADR機関の規則制定権及び規制権限を有する自主規制機関化、金融機関の金融ADR手続に関する義務の法定、は最低限実現すべきものである。

      また、近い将来の包括的横断的金融ADR機関の設立に関する取組み、裁判手続の使いにくさの改善、等についても検討することが必要である。

      金融ADRについては、利用者の利便性の観点も必要である。

      業態それぞれに即した規則制定があって初めて金融ADRの実効性が確保できる。だからこそ金融ADR機関の自主規制機関化を図る必要がある。

    • 金融ADR機関の自主規制機関化については、規制の重複が生じ、遵守のためのコストが増えること及び業務改善が従業員も含めた自発的なものとならなくなることから消極である。

    • 現在、業界団体等で行われている金融ADRに関する取組みは、金融商品を販売した後のフォローアップ、カスタマーサービスとしての視点を欠いていると思われる。

    • 金融トラブルについては、業界がどう対応するのか、法令が分かり難いのか、利用者の理解が不足しているのか、といった観点から分析して対応しないと、なかなか減少にはつながらない。金融ADRについてみると、利用者に金融ADRが知られていない。

    • 現在の業界団体等による金融ADRに関する取組みは、金融機関に対しての罰則はなく、ピアプレッシャーだけで担保されているものであり、その実効性に疑問がある。規制に限定して考えていないが、金融機関が負う義務につき実効性・インセンティブを何らかの方法で確保する必要がある。少なくとも義務違反があったときの公表については、金融ADR機関の知名度を上げるためにも積極的に行うべきである。

    • 金融ADR機関が自主規制機関化されると、その役割が強化され、対応しやすくなると思われるが、金融ADRに取り組んでいる業界団体がなぜ望まないのか疑問。

      業態ごとの金融ADR機関を自主規制機関化すると、業態横断的な金融ADR機関の設立の妨げとなるとも思われる。

    • 金融ADRによる紛争解決は、裁判手続による場合と異なり、専門性、解決の柔軟性及び迅速性が確保されていることが利点。しかし、裁判手続を代替するには、適正手続の保障やあっせん案等に一定の拘束力を持たせるなどの手続の制度化が必要であり、手続の担い手についての法制化も考慮すべきである。

      金融ADRでも、専門性が重要ではないか。

    • 金融ADR制度では、裁判手続ではすくい上げられない苦情についてすくい上げることが特徴。事実認定等があいまいになるのはやむを得ないといえる。

    • あっせん・調停機関がない、金融ADR活動に関する公表すらしていない業界団体も多くあるところ、このような業界団体の金融ADRにつき質の向上をいかに図っていくか、また、金融ADRに関する取組みにおいて優等生といえる団体についても実効性を担保するにはどのようにすればよいのかということこそ、この会合で検討すべき問題である。

      また、上記問題の解決策としての金融ADR機関の自主規制機関化の内容は、金融ADRに関して会員に対して拘束力があるものとするという意味であって、すべての問題について拘束力を有するものとするという意味ではない。

    • 金融商品取引法等に基づく金融庁による過剰攻撃に対して金融機関が過剰防衛を行って法と運用が乖離しており、相互不信が生じていることが根本的な問題である。

      カスタマーへの対応を求める前に金融機関と行政の相互不信を解消することが必要。

    • 金融機関における過剰対応に関しては、法律制定時に、法律違反をしないという方向で組織防衛がされるのはやむを得ないといえる。法律による規制ではなく、自発的に業務の改善が図られるのが望ましいと考えている。悩みながら、経営している状況を見守っていただきたい。

    • 実効性の確保については、会員企業及び業界団体のいずれも努力を尽くしており、現在の枠組みでも必ずしも不足はないと考えている。

      むしろ、現在の業界団体による金融ADRでは、会員企業は自らが整備した制度として手続に協力するし、また、紛争解決支援委員も業界団体に任命されているからこそ、意識的に中立性、公正性の確保に心がけている面もある。金融ADR機関が自主規制機関となると、柔軟な対応や顧客と会員企業双方に対する中立性の確保が難しくなると思われる。

    • 現在の金融ADRの取組みが十分であると思っているわけではなく、過去の事例の検証、検証体制の強化及び相談員のスキルアップ、等の強化策を講じているところである。

      現在の業界団体における金融ADRの改善を図っていけば、金融ADR手続の実効性、中立性及び公正性の確保は図ることができる。

      金融ADRに関する取組みが十分でない業界について、顧客の信頼、利便性の確保のために一定の水準に底上げすることは必要であると考えるが、その解決策を自主規制機関化とするのは早急である。

    • 業態横断的な自主規制機関化については、自ら紛争解決支援手続を行っていない業界団体の底上げのために、紛争についてのみ業態横断的な自主規制機関とする方法もある。ただ、ネックになるのは、苦情から紛争に上がる道がすごく狭いことである。

      投資性商品、保険及び預金・貸金の3つのグループごとに自主規制機関としての金融ADR機関を設立することを、金融商品・サービスに関する横断的法制のホップ、ステップ、ジャンプのステップとして検討していただきたい。

    • 金融ADR機関の自主規制機関化の問題に関しては、プリンシプルベースの規制のエンフォースや金融庁と金融機関との関係等の金融行政の在り方についても議論すべきである。まず、金融庁のルールがトラブルを招いていないか、規制効果評価が必要であり、その上で、自主規制機関化、金融ADRについて議論できると思われる。

    • 金融ADR機関の自主規制機関化というのは、現行の自主規制機関と同様の権限を付与することではなく、金融ADRの実効性を確保する限度で自主規制機関としての権限を有するものを想定している。また、自主規制機関というのは、仲間同士のピアプレッシャーで規律・処分して行政庁の余計な世話を受けないというものである。

      行政庁の余計な世話を受けずに、上記のような意味での自主規制機関化により金融ADRの実効性を高めるのがよいか、行政機関が金融ADR機関を認定し、金融機関の免許等の要件として認定ADR機関との契約締結義務を定める等の行政機関の手を借りて金融ADRの実効性を高めるのがよいか、議論していただきたい。

    • 業界横断的な金融ADRの確立については、他に、金融庁の金融サービス利用者相談室を活用し同室において金融ADR手続を行うなど様々な選択肢が考えられるが、業界単位での金融ADR機関の自主規制機関化が現実的な選択肢であると考える。

以上

問い合わせ先

金融庁 Tel:03-3506-6000(代表)
総務企画局企画課(内線3682、3516)
本議事要旨は暫定版であるため、今後変更があり得ます。

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