金融審議会金融分科会第二部会会合(第44回)議事録

日時:平成19年12月13日(木曜日)13時00分~14時00分

場所:中央合同庁舎第4号館9階 金融庁特別会議室

○岩原部会長

それでは、時間でございますので、ただいまから第44回金融審議会金融分科会第二部会を開催いたします。

皆様、本日はご多用のところお集まり頂きまして、誠にありがとうございます。

会議に先立ちまして、本日の会議は公開とされておりますので、その点をまずご了承頂きたいと存じます。

山本副大臣、何か。よろしゅうございますか。

また本日は、金丸委員、黒沼委員、野村委員、堀内委員、神田委員、羽田委員がご欠席されております。

それでは、本日の議事に移らせて頂きます。本日の議題は、銀行・保険会社グループの業務範囲規制のあり方についてでございます。銀行・保険会社グループの業務範囲規制及び保険に関する規制緩和について、これまでの議論を踏まえ、取りまとめの審議を行いたいと存じます。

なお、本日も、国際銀行協会(IBA)証券文化委員会理事・角田様、横浜銀行副頭取・早川様、第二地方銀行協会金融情報室長・澤井様に参考人としてご参加頂いて進めたいと存じますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。

それでは、事務局に、第二部会としての報告書(案)を用意して頂いておりますので、まず事務局から読み上げて頂き、その後、報告書(案)についてご審議頂きたいと思います。それではお願いします。

○事務局読上者

それでは、読み上げさせて頂きます。お手元の資料をお願いいたします。


金融審議会金融分科会第二部会報告(案)
~銀行・保険会社グループの業務範囲規制のあり方等について~

はじめに

銀行・保険会社については、これら金融機関の経営の健全性を確保する観点から、他業禁止規制が課され、その行いうる業務については、その子会社、兄弟会社等の行いうる業務と併せて、関係法令等において限定的に定められている。

こうした業務範囲規制は、他業禁止の趣旨(本業に専念することによる効率性の発揮、利益相反取引の防止、他業リスクの回避等)を踏まえたものである。また、特に銀行については、決済機能を有するその公共的性格から、セーフティネット(預金保険制度)が存在することも考慮すべきものと考えられる。

これらの業務範囲規制については、これまでも、金融をめぐる状況の変化に応じ、利用者利便の向上等の観点も加味しながら、累次にわたり緩和され、銀行・保険会社グループによる業務内容が拡大されてきた。

金融サービスの高度化、多様化、国境を超えて金融グループの業務展開の一層の進展が見られる中、金融グループには、自ら創意工夫を凝らしながら多様で質の高いサービスを提供していくことが、従来にも増して求められているものと考えられる。このため、銀行・保険会社グループの業務範囲規制のあり方についても、今日的な視点から、規制の趣旨や業務の特性等を踏まえて見直していくことが適当である。

当部会においては、こうした問題意識に立ち、銀行・保険会社グループの業務範囲規制のあり方等について、計●回にわたり審議を重ねてきた。本報告はその検討結果を取りまとめものである。今後、関係者において、本報告書に示された考え方を踏まえ、適切な制度整備が進められることを期待する。

なお、銀行・保険会社グループの業務範囲規制のあり方については、金融をめぐる状況の変化等を踏まえ、不断に見直しが行われるべきものと考えられる。本報告でも引き続き十分な検討を要すると指摘した点、本報告で取り上げていない点についても、関係者において適切に検討が進められることが望まれることを付言しておきたい。

I .銀行・保険会社グループの業務範囲規制のあり方

1.基本的な考え方

銀行・保険会社グループの業務範囲の拡大を検討するに当たっては、銀行・保険会社本体の経営の健全性確保が強く求められるものと考えられる。

実際に、個別の業務を銀行・保険会社グループに認めるか否かについては、当該業務が銀行・保険会社本体の経営の健全性に及ぼす影響を踏まえつつ、利用者利便の向上、銀行・保険会社グループ全体としての経営の効率化、国際競争力の確保等を勘案した上で、きめ細かく判断していくことが適当である。

その際、個別の業務を銀行・保険会社本体、子会社、兄弟会社のいずれに認めるかについては、他業禁止の趣旨を踏まえつつ、

  • 当該業務と銀行・保険会社の本来的業務との機能的な親近性
  • 当該業務のリスクと既に銀行・保険会社が負っているリスクとの同質性
  • 銀行・保険会社本体へのリスク波及の程度

等を勘案して決定すべきものと考えられる。

なお、保険会社については、銀行の業務範囲拡大にあわせて業務範囲を直ちに拡大することの是非や、特に相互会社については、利益を目的としていないことから、株式会社と同列に論ずることが適当かといった指摘も見られた。

銀行の子会社及び兄弟会社の業務範囲については、現行制度では、他業禁止の趣旨及び組織形態に歪みを与えない観点から、法令で同一内容が限定列挙されている。

この点、兄弟会社間は、親子会社間に比べ、相互に経営に当たる影響がより少ない仕組みであることを踏まえれば、銀行の兄弟会社の業務範囲については、銀行の子会社に比して緩和する余地があるものと考えられる。

実際に米国の金融持株会社(FHC)においては、本来的業務の機能やリスクの親近性・同質性が認められるとは言い難い業務が、当局の承認の下に、金融を保管する業務として傘下の銀行の兄弟会社に認められている。

一方で、業務展開の相互補完性、グループ全体としてのレピュテーションとの観点から、実質的には、グループが一つの企業体と見なされうる実態にあること、我が国銀行グループの社会的な影響力の大きさ等を踏まえた慎重な対応が求められるとの指摘がある。

以上の点を勘案すれば、十分な経営管理、リスク管理が確保されることを前提として、銀行の兄弟会社に、新たに特別の業務を認めていく制度的枠組みを導入していくことが適当と考えられる。

その際の具体的な制度設計としては、例えば、

  • (1) 米国の金融持株会社(FHC)における補完的業務のように、行いうる業務に特段の限定をかけずに、当局の個別の許認可の下で新たな業務を認める方式

  • (2) 予め行いうる業務を法令で限定した上で、当局の個別の許認可の下で新たな業務を認める方式

の二つの方法がありうる。

この点、顧客のニーズに銀行グループが機動的に対応するためには、(1)の方式によるべきとの指摘もあるが、

  • 銀行が決済機能を有することを踏まえ、他業禁止の観点から限定列挙を基本としている銀行法の業務範囲規制
  • 行政判断の透明性確保の観点
  • 当局による監督の実効性確保の観点

等を踏まえれば、(2)の方式を基本としつつ、金融をめぐる状況の変化等に応じ可能な限り柔軟に対応していく枠組みを確保していくことが、現実的な方策として適当と考えられる。

なお、こうした業務範囲の拡大に当たっては、許認可に当たっての判断基準等を法令等において可能な限り明らかにしていくことや、当局において新たな業務に対応した監督体制・手法を整備していくことが求められることに留意する必要があるものと考えられる。

2.個別の業務

  • (1)コモディティ

    現行制度においては、銀行・保険会社グループに対し、商品の現物取引を認めず、また商品デリバティブを差金決済に限定している。

    これは、一般に商品の現物の売買は物を保有することによるリスクを伴い、本来的銀行・保険業務とその性質やリスクに親近性・同質性が認められないことを踏まえ、他業禁止の趣旨の徹底を図るとの考え方に基づくものである。

    こうした規制は、以下のような見直しを行うことが適当である。

    • ア.商品デリバティブ

      差金決済に商品デリバティブを限定していることについては、顧客へのリスクヘッジ要請に対する銀行・保険会社グループの効率的かつ十分なサービスの提供を阻害しているとの指摘がある。

      この点、商品の現物の引渡しに伴うリスクについては、商品に十分な流動性が確保されており、カバー取引を行うことで十分解消しうるものと考えられるのであれば、一定の要件の下、銀行・保険会社グループに現物決済を認めることが適当である。

    • イ.商品の現物取引

      商品の現物取引については、商品そのものの価格変動リスクをヘッジする機能をもつ商品デリバティブ取引と密接な関連を有しており、銀行グループの業務範囲を考える上で両者を切り離して考えることは、実態にそぐわないものと考えられる。また、商品デリバティブ取引に従事する者は、その原資産の価格変動リスク等に関する高度な知識、管理能力を蓄積していると考えられ、一定範囲の商品の現物取引であれば、銀行グループとしてその取引に伴うリスク十分管理しうるとの指摘もある。

    実際に、米国においては、金融持株会社(FHC)傘下の銀行の兄弟会社が、商品デリバティブの補完的業務との位置付けで、リスク管理上の一定の制約下、商品の現物取引を許容されている事例があり、我が国金融機関の国際競争力の確保等の観点から、商品取引を銀行グループに一切認めないことは、適当とは考えられ難い。

    一方で、商品の現物取引を銀行グループの業務として認める場合には、上記のとおりで、現行制度において、本来的銀行業務とその性質やリスクに親近性・同質性が認められないとの考えの下、これを認めてこなかった点にも十分留意する必要があるものと考えられる。

    こうした点を勘案すれば、上記1.で述べた銀行の兄弟会社についての制度的枠組みを活用し、連結自己資金の一定水準以内、商品の取扱いに伴う固有のリスク遮断等の一定の条件を付した上で、最終的には当局による個別の許認可の下に、銀行の兄弟会社に商品の現物取引を認めていく道を開くことが適当である。

  • (2)イスラム金融

    イスラム金融は、利子を取ることが禁じられている中で、商品売買やリースの形式を用いることにより実質的には与信と同視しうる取引を実現するものである。

    商品売買等を形式上伴うものであることから、銀行・保険会社グループは、現行制度においては、基本的にこれらの業務を行うことはできないこととされている。

    近年、海外においてイスラム金融取引が台頭し、今後も急速にその市場拡大が見込まれることを踏まえれば、我が国銀行・保険会社グループの国際競争力の確保の観点から、実質的に与信と同視しうるという要件の充足を条件にイスラム金融を銀行・保険会社グループの業務範囲に加えることが適当である。

    なお、イスラム金融の実施主体については、銀行・保険会社の子会社及び兄弟会社にリース業務を認めている現状も踏まえ、銀行・保険会社の子会社及び兄弟会社とすることが適当である。

  • (3)排出権

    排出権は、追加的に温室効果ガスを排出しうる権利として観念され、その取引はいわば非実物資産の価値の取引として位置付けられる。その点で排出権は金融商品に近い側面を持つと考えられるものの、その法的な位置付けや価格評価方法等については、必ずしも明確となっていない。したがって、現状、直ちに銀行・保険会社本体に排出権取引の実施を認めるには至っていない。

    一方で、排出権の取引インフラである国際取引ログがまもなく本格稼働する見込みであるほか、政府部内においても、排出権の法的位置付け等についての検討が開始されるなど、新たな環境整備が急速に整いつつあり、将来、取引の活発化が見込まれるところである。

    このため、今後の状況を見極めつつ、排出権取引を銀行・保険会社本体の業務として明確に位置付ける方向で検討すべきである。

  • (4)リース

    物品・物件の賃貸は他業と考えられるが、いわゆるファイナンス・リースは、経済的には設備投資資金の貸付けと同等であると解され、現行制度においては、銀行・保険会社の子会社及び兄弟会社に、ファイナンス・リースを主として営むリース業(ファイナンス・リースによる収入が、リース業全体収入の50%超であるリース業)を行うことが認められている。

    また、中古物件の売買・メンテナンスについては、リース満了時の売却等、リース取引と一体と認められるものに限って認められている。

    こうした規制については、改めて以下のように整理することが適当である。

    • ア.ファイナンス・リースに関する収入制限

      ファイナンス・リースに関する収入制限については、これを撤廃すべきとの意見もある。しかしながら、ファイナンス・リース以外のオペレーティング・リースには、いわゆるレンタルも含め様々な形態があり、本来的業務との性質やリスク面での親近性・同質性の確保の観点からすれば、収入制限を直ちに撤廃することは適当ではないと考えられる。

    • イ.中古物件の売買・メンテナンス

      一般に、リース業者は、中古物件の売買・メンテナンスに関し、当該物件に係る販路等のネットワークを有し、当該物件の価値等を熟知していると考えられる。したがって、このような業者に対して、中古物件の売買等をリース満了時の売却等に限定することは、利用者利便や全体としての業務の効率性を阻害しているとの指摘がある。

    このため、今後ともファイナンス・リースを主として営むことを条件としつつも、リース物件と同種の中古物件の売買・メンテナンスについては、リース業を保管する付帯的な業務として、銀行・保険会社の子会社及び兄弟会社に認めていくことが適当である。

  • (5)マーチャント・バンキング

    現行制度について、銀行グループは、有価証券投資やデリバティブ取引を投資目的で行うことができるものの、他業禁止の趣旨の徹底と子会社業務範囲規制の潜脱回避の観点から、一般事業会社の議決権のある株式等への投資には、上限規制(銀行本体とその会社の合算で5%以下、銀行持株会社とその子会社の合算で15%以内)が課されている。

    この点については、

    • 米国においては、一定の制限の下、金融持株会社(FHC)傘下の証券子会社等を通じて、本源的金融業務としてマーチャント・バンキング業務を行うことが認められている。国際競争力の強化の観点から、我が国銀行グループに対しても株式投資によるキャピタル・ゲインを得る道をより拡大していくことが適当ではないか。
    • 企業再生等の局面においては、企業サイドには多様な資金調達を含めた計画を講じていくことが求められる。そうした局面において、銀行グループには、デットに限らず、エクイティまで含めた総合的な企業ファイナンスに関与していくことが求められるのではないか。

    等の様々な指摘が存在する。

    一方で、こうした銀行グループによるエクイティ保有の拡大については、制度趣旨との非整合、株式持合いの復活、銀行グループによる産業支配等についての懸念が指摘される。

    また、マーチャント・バンキング業務の実施は、現状においても相当程度可能であり、直ちに現行の規制を緩和する必要はないのではないかといった指摘もある。

    これらを踏まえれば、銀行グループによるエクイティ保有の大幅な拡充については、他業禁止、議決権保有制限等の現行規制の本来の趣旨を踏まえて、整理していく必要があり、引き続き検討していくことが適当と考えられる。その際には、銀行グループに求められるエクイティ・ファイナンスへの関与のあり方等についても、国内外の金融グループによるエクイティ供給・投資の実態を踏まえた十分な検討が必要となろう。

    一方、現行制度においては、

    • 銀行又は銀行持株会社のベンチャーキャピタル子会社が保有するベンチャービジネス会社の議決権
    • 銀行グループが経営改善のための計画に基づくデット・エクイティ・スワップにより保有した議決権

    等が、一定の要件の下、議決権保有制度の例外とされている。

    こうした現行制度の枠組みを基礎として、上記のような懸念に十分留意しつつ、相応の政策的合理性が認められるものについては、早急に制度的な手当てを行うことが適当である。具体的には、地域密着型金融の一層の推進等の観点から、ベンチャービジネスの育成、企業再生(地域再生)等の分野を念頭に、議決権保有制限の例外措置の拡充を検討すべきである。なお、保険会社においても、同様の観点から、当該措置について検討すべきである。

  • (6)投資助言・代理

    投資助言・代理業は、金融商品取引法において登録金融機関の行うことができる業務と位置付けられているところであるが、銀行法及び保険業法においては、銀行・保険会社本体の業務として位置付けられていない。

    これらは、顧客の多様な資産運用ニーズに対応するフィービジネスとして、利益相反の防止等に留意しつつ、銀行・保険会社本体の業務として位置付けることが適当である。

  • (7)クロスボーダー取引

    現行制度においては、

    • 外国銀行在日支店や外資系邦銀が、日本国内の顧客に対し、母体である外国銀行の海外ブック取引の勧誘を行うこと
    • 邦銀が、国内の顧客に対し、海外現地法人の海外ブック取引の勧誘を行うこと

    は認められておらず、国際的に事業展開する企業への効率的な金融サービスの提供や我が国金融・資本市場への外国銀行の参入を阻害しかねない状況にある。

    こうした状況を是正するため、外国銀行に対して我が国当局の直接の監督が及ばないことやマネーロンダリング、脱税等の不適正な取引を防止する観点にも留意しつつ、以下のような枠組みを基本として、「外国銀行の業務の代理・媒介」を新たに銀行の業務範囲として認めることが適当である。

    • 受託者となる外国銀行在日支店等のグループ内の外国銀行を委託元とし、その外国銀行が行っている業務のうち、銀行法において認められている業務の代理・媒介のみを行えることとする。
    • 業務の受託者となる外国銀行在日支店等からの申請(委託元の外国銀行、委託業務の内容等を記載)に基づく許認可制(邦銀については、既に海外子会社の設立について事前認可制がとられている点を踏まえ、届出制)とする。
    • 受託する業務に関し、外国銀行在日支店等に対し、日本の預金保険制度の対象でないことの説明義務を設ける等、クロスボーダー取引であることに着目した行為規制を課す。
    • 許認可を受けた外国銀行在日支店等に対して、銀行法に基づき、クロスボーダー取引であることに着目した監督権を行使する。

II .利益相反による弊害の防止等

銀行・保険会社グループの業務範囲の拡大に伴い、利益相反による弊害や優越的地位の濫用の防止等につき、一層の実効性の確保を図っていくことが重要である。第一部会における銀行・証券間のファイアーウオール規制の見直しの議論等も踏まえ、以下のような措置を講ずることが適当である。こうした措置は、今後の新たな規制の枠組みの下、より広範な業務を展開する銀行・保険会社グループが、自己責任に基づき、これまで以上に厳しい規律付けをもって内部統制を行うことを求めるものである。

1.利益相反による弊害の防止

利益相反による弊害を確実に防止していくためには、銀行・保険会社等に対し、利益相反の管理のための態勢整備を法令上義務付け、それを当局が適切にモニタリングしていくことにより、規制の実効性を確保していくことが重要である。

具体的には、監督指針で、(1)利益相反の抽出・特定、(2)利益相反の管理(チャイニーズウオールの構築等)・記録の保持、(3)利益相反管理方針の策定等を着眼点として明記し、各金融機関に対して利益相反管理のための態勢整備とその適切な運用を求めることが考えられる。

また、各金融機関が策定する利益相反管理方針については、金融機関における態勢整備を促進する等の観点から、その概要の公表が求められるべきである。

2.優越的地位の濫用の防止

銀行の銀行法、保険業法等には、優越的地位の濫用、抱き合わせ販売の禁止等の規定がある。

この点、銀行・保険会社等の優越的地位の濫用の防止の実効性をより確保するためには、銀行・保険会社等自身において顧客等から寄せられる情報を適切に処理する体制を整備するとともに、当局においても、顧客等から寄せられる情報を検査・監督に活用する仕組みを強化することが重要である。

3.保険業法上のファイアーウオール規制の見直し

  • (1)役職員の兼職規制

    保険業法における、保険会社の役員と銀行等または証券会社の役職員との兼職規制については、保険会社、銀行等、証券会社に利益相反管理態勢の整備を求めることに伴い、撤廃することが適当である。

  • (2)顧客の非公開情報を利用した保険募集の制限

    保険業法では、保険会社がグループ銀行の保有する非公開情報を顧客の同意なく保険募集に利用することが制限されている。第一部会において、金融商品取引法における顧客情報の利用に係る同意取得の方法について、顧客属性を勘案した取扱いが検討されたところであるが、保険業法における本規制については、銀行等による保険販売規制におけるこれまでの議論等も踏まえ、顧客の属性にかかわらず取扱うという現行規制を維持することが適当である。

III .保険に関する規制緩和

1.保険会社の資産別運用比率規制

保険会社の財務の健全性を確保する観点から、保険会社の資産運用については、例えば国内株式及び外貨建資産の保有はそれぞれ総資産の30%、不動産の保有は総資産の20%を超えてはならないとされている(いわゆる「3:3:2規制」)。

この点、保険会社の資産別運用手法の発展や、ソルベンシー・マージン比率規制・オフサイト・モニタリングの導入等の事後監督手法の整備等を踏まえ、保険会社間に事業内容や負債構造、リスクマネジメント能力等に差異が現状見受けられる。こうした中、現行の画一的な規制は、経営・資産運用に関する方針が基本的に個社により自主的に判断されるべきものであることと合致しない面があること等が指摘された。また、経営の健全性を確保しつつ、保険会社の経営の自由度を向上させるとともにより機動的な資産運用を可能とする観点も重要である。

このため、ソルベンシー・マージン比率の算出基準等に関する検討が行われていること等を考慮すると、当面は現行制度を維持することとするが、その検討結果等を踏まえた上で、いわゆる「3:3:2規制」について廃止を含めた見直しを行うことが適当である。

2.保険契約移転時における移転単位

保険業法第135条において、保険契約を他の保険会社に移転する場合、責任準備金の算出基礎が同一である保険契約、すなわち生命保険については、予定利率や予定死亡率等を同じくするもの、損害保険については予定損害率等を同じくするものの全部を包括して行わなければならないとされている。本規制については、例えば、企業向け専門保険会社と家計向け専門保険会社といった顧客の特性に応じた分社化や、地域別の保険会社に再編することを困難としている等の指摘がある。

一方で、保険契約の移転単位の見直しに際しては、保険契約者や一般債権者の保護(異議申立制度のあり方を含む)、当事会社の財産状況の確認手法、包括移転が保険契約の特性を踏まえて保険契約者の同意を得ずに契約を移転できる特例的な手法であること等の多くの論点について、検討を行う必要があるものと考えられる。

このため、直ちに保険契約移転時における移転単位を見直すことは適当ではなく、この点については、上記のような論点を含め、引き続き慎重に検討すべきものと考えられる。


以上です。

○岩原部会長

どうもありがとうございました。

それでは、ただいまの報告書(案)につきまして、皆様からご自由にご意見を頂きたいと存じます。いかがでしょうか。

関委員、どうぞ。

○関委員

途中で中座するものですから、最初に発言をさせて頂くことにしました。

先回も私は申し上げたんですけれども、マーチャント・バンキング機能についてであります。ここでは、企業再生の局面における企業サイドのニーズがあるということを明確に書かれているわけですが、私は企業再生等の局面だけではなくて、今、事業会社のいわゆる国際展開と言いますか、国際的な規模でのM&Aであるとか事業提携であるといったことがどんどん進んで、これが一つの国際的な競争になっているわけですけれども、そういう局面で金融機関のマーチャント・バンキング機能というのは一定の役割を果たし得るのではないかと強く思います。日本でそういう事例というのはあまりないのですけれども、海外のいろいろな事例を見ますと、どうもそういう一定の役割を果たしているというふうに考えなくてはいけないのではないかという事例は数多く存在すると思うんです。

そういう観点から、事業会社サイドにニーズがあるということを申し上げているわけですけれども、考え方として、アメリカのFHCの考え方と言いますか、3つぐらいあるということでご紹介がこの参考資料にありますけれども、1つは、株を取得しても経営関与はしない。それから必ず一定期間の中でエグジットを考えるという2つ目の議論。それから金融機関の財務体質に大きな影響を与えないというような制限の中で、マーチャント・バンキング機能については、かなり認めるということになっているわけですが、そういう国際的なイコールフッティングと言いますか、アメリカのFHCに認められたようなことを、一定の条件が当然要るわけですけれども、日本の金融機関に認めるということにした場合に、ここに書いてありますような持ち合いの復活だとか、銀行グループによる産業支配だとかいった懸念が指摘されているわけですが、そういう懸念があることは承知しておりますけれども、本当にこういう懸念が払拭できないのかどうか。

払拭できないということであれば、それに必要な規制を加えればいいわけでありまして、今後の日本の事業会社であるとか金融機関の競争力の強化という観点から言えば、アメリカのFHCに認められた機能を認めるということでなお、ここに指摘されているような懸念、あるいはデメリットというものが、どの程度解消できるのかできないのかということが本論なのではないかというふうに、私は実は思っておるわけであります。

この局面でそこまで踏み込むには、なおいろいろ研究を要することがあるということですし、1ページに書かれておりますような、こうした金融の業務範囲規制というのは、「金融をめぐる状況の変化というものを踏まえて不断に見直していく」と書かれておりますから、私はそれはそれで今回はいいと思うんですけれども、マーチャント・バンキング機能をどこまで認めるかというのは、私は一つの重要な検討課題だと思いますので、ぜひ早く検討して、いい結論を出して頂きたいなということであります。

以上です。

○岩原部会長

どうも。

ほかにいかがでしょうか。和仁委員、どうぞ。

○和仁委員

基本的にこの報告書の方針には賛成なんですが、ちょっと細かいことをごちゃごちゃ言わせて頂きます。

まず、この報告書が銀行・保険会社グループについて、業務範囲の話をするようになっているんですが、銀行しか語っていない部分と、保険しか語っていない部分と、銀行・保険会社グループと使い分けて、すごくわかりづらいんです。一体どこの話をしているのかというのが。

例えば3ページの、すみません、細かいことをごちゃごちゃ言って申しわけないんですけれども、要するに、FHCでやるか、それともあらかじめ行える業務を法令に限定した上で、当局の個別の許認可の下で新たな業務を認める方針の2つがあるよという議論をされるんですが、その後で、考慮する理由というのは、「銀行が決済機能を有することを踏まえ」と書いてしまって、銀行に関してはこれはいいんですけれども、保険に関してはどうなんですかというところが全然抜けちゃっているんです。保険はやはり保険という制度として、他業禁止の点から限定列挙しなくちゃいけないわけで、やはり保険に対する言及が必要で、銀行の理屈を持ってきて保険の話を、もういいんだということには必ずしもならないと思うんです。

次に、同じようなロジックと言いますか、4ページのイの商品の現物取引のところで、「銀行の兄弟会社に商品の現物取引を認めていく道は開くことが適当である」、私はその結論には別に反対しないんですが、保険には認めない理由があるんですかということについての言及がない。これはやはり報告書ですから、きちんと論理を詰めた方がいいと思うんです。

それが一つ。以上が書き方のスタイルで、私が書くなら、そういうふうに全部詰めて書くということで、ちょっとお考え頂きたいということが一つ。

それから、もう一つはこれはちょっとお願いなんですけれども、8ページで利益相反による弊害の防止というところでいろいろ書いてくださっているんですけれども、利益相反に関しては監督指針でこういうふうなことを書きましょうと、書くことが考えられるというんですが、実は、同じことは銀行の優越的地位の濫用についても言えまして、優越的地位の濫用というのは独禁法から来たわけですけれども、独禁法というのは、要するに、公正競争阻害性ということを考えるんですが、優越的地位の濫用というのは必ずしもそうじゃない。いじめるとか、そういうふうな概念が入ってきて、それはそれでいいんじゃないかというのが白石先生なんかの考え方なんですけれども、やはりわかりづらい。それもやはり監督指針できちんと書いていきましょうということをお願いしたい。

更に言えば、ここには書いていませんけれども、今回アームズ・レングスの規制は残るわけですが、アームズ・レングス・ルールはもっと監督指針できちんと書いて頂かないと、よくわからない。相談を受けたって、我々もよくわからないし、一体何を基準にして考えればいいのか、そういう意味で監督指針をもう少しわかりやすくする。

前回も申し上げましたけれども、金融庁のプレスリリースというのは、処分を受けたところが一体何をやって悪かったのかちっともわからないという、そういう意味では処分を受けましたということはわかっても、処分内容がわからないので、どういうふうにそれをほかの業者が自分たちのコンプライアンスに役立てるかということについて、非常に難しいんですね。行間を読むような話になって、憶測を呼んでしまう。そこから考えると、一々個別の企業について挙げるのは難しいというのであれば、やはり監督指針の中にできる限り処分例を取り込んで、この辺きちんと、当事者にとって予見可能性があるようなシステムにして頂きたいと思います。

以上です。

○岩原部会長

それでは、諏訪園さん。

○諏訪園保険企画室長

最初にご指摘のありました保険会社と銀行の記述のバランスが悪いのではないか、具体的には、3ページの銀行の兄弟会社についてどう扱うかという話のところがまずあったかと思います。

それにつきまして、申し訳ありませんが、2ページ目をご覧頂きたいと思うのですけれども、2ページ目の脚注にございますとおり、保険会社につきましては、銀行に比べて決済システムを担っていないということ、それから信用秩序に与える影響は限定的であるということから、その兄弟会社は当局の承認を得れば、法令で限定列挙された業務(届出により実施可能な)、そういったもの以外の業務も行うことができると、既にそうした枠組みが認められているということから、3ページ目のところでは記述が必要ないということで記述されていないというものでございます。

同様に、商品の現物取引においても、兄弟会社については、現行承認が得られればできるということから、そこについて同じく保険の記載がないと。

わかりにくいということでございますが、背景としてはそういったことがあるということでございます。

○岩原部会長

よろしいですか、それ以外は。

では、遠藤さん。

○遠藤信用制度参事官

それから、もう一つ監督指針の話についてご指摘がございました。

基本的には監督局が監督指針の責任者でございますけれども、優越的地位の濫用についても、あるいはアームズ・レングス・ルールに関しても、予見可能性という観点からもできる限り具体的に詳細に書いていくという方針は従来から持っていると思いますので、ご指摘を踏まえまして、検討していきたいというふうに考えております。

行政処分等のプレスリリースに関しても、私も監督局におりましたけれども、数年前に比べると、あれでもかなり詳細に書くようになったという実態がございます。ただ、それは、他の金融機関のコンプライアンスに役立てるという観点から、個別の話ではございますけれども、そこら辺はそういう観点からできるだけ詳細に書くというのはもっともなご指摘だと思いますので、そういう観点も踏まえて検討したいと思います。

○岩原部会長

それでは、河野さん。

○河野監督局審議官

監督局としましても一言申し上げさせて頂きますが、今、遠藤参事官から申し上げたとおりですけれども、実は今、当庁挙げてベターレギュレーションの取り組みということも進めておりまして、実はこの先も対話の充実とか、アンケートの実施、それからいろいろヒアリングを行うことにしておりますので、そういった点も踏まえて、今のご指摘に従って、よりわかりやすく、努力してまいりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

○岩原部会長

ということだそうです。

和仁委員、どうぞ。

○和仁委員

諏訪園さんのお話は、確かに保険のところに書いてあるのではないかというのは、それはそうですけれども、私はそれだったら、ロジックを最初から保険会社についてはこうだと、同じ考え方を銀行に適用できないかというふうなスタイルにした方がわかりやすいと思うのです。読んでいて、要するに銀行の話をしているのか、銀行・保険会社のグループの話をしているのか、保険会社の話をしているのかというのが、非常に読み物としてわかりづらいです。もし、ご検討頂ければと思います。

以上です。

○岩原部会長

遠藤さん。

○遠藤信用制度参事官

事務的に、それは検討させて頂きます。

○岩原部会長

ほかにございますでしょうか。

池尾委員、どうぞ。

○池尾委員

マーチャント・バンキングの件に関しまして、私も冒頭で関委員がおっしゃった趣旨に全く賛成で、ぜひ、積極的に検討するという方向で考えればいいのではないかというふうに思っています。

それで、要するに全体としての株式保有に関しては、Tier1キャピタルの範囲内にとどめるという、最後の大もとのところでリスク管理と言いますか、リスク管理面でのたがははまっているわけですから、そのたがの範囲内では自由度を上げてもいいのではないかというふうに思っているのですが、ただ、報告書の6ページの真ん中よりやや下のところですが、指摘が、「また、マーチャント・バンキング業務の実施は、現状においても相当程度可能であり、直ちに現行の規制を緩和する必要はないのではないかといった指摘もある」と書かれていますように、何か伺うと、関連会社等を通じて実はやっているんじゃないかというところで、実情がもう一つよくわからない面があって、銀行持株会社とその子会社、合計15%の制限があるのに関連会社でやっているとかいう話を聞くと、ちょっと変な気もしたりして、そういう意味では、そのあたりの実態の確認をするということが多分必要だと思うので、今日の報告書には直ちに盛り込めないにしても、そのあたりの調査、検討を早急に行って、前向きに考えていくということをお願いしたいと思います。

○岩原部会長

ありがとうございます。

確かになかなか実態が難しいところがありますし、実際に問題が起きるときにどうなるかということをいろいろ考えていかなければならないと思います。おっしゃるとおり、今後検討していきたいと思います。

ほかに何かございますでしょうか。早川参考人、どうぞ。

○早川参考人

私ども地銀会は不動産関連業務の限定的な規制緩和ということをお願いしてまいりましたが、この報告書の一番後段に、今回取り上げていない問題についても、適切に検討が進められることが期待されると付言されておりますので、大変これは感謝をしております。

前回も申し上げました、繰り返しになりますが、やはり利用者の利便、それから地域の活性化、あるいは企業再生等に、私ども銀行が限定的に不動産業務を取り扱うということは、極めて資する話だと確信をしているところであります。また、銀行の健全性という観点からも、このリスクは極めて限定的なものだと考えておるところであります。

従いまして、行政当局におかれましては、できるだけ速やかに、具体的な検討を進められることを期待しているところであります。よろしくお願いを申し上げます。

以上です。

○岩原部会長

ほかにいかがでしょうか。

高橋委員。

○高橋委員

ありがとうございます。

全体を拝見して、あまり前向きでなく書かれているなと私が感じましたのが、マーチャント・バンキングと、それから保険の契約移転のところでございました。マーチャント・バンキングに関しては、関委員初め、皆さんおっしゃって、私もそのとおりだと思いますし、「早急に」とか、「引き続き検討」と書かれている中にも、かなりの前向きさというのがここの総意だというふうに思っております。

翻って、保険の契約移転の方はどうかというと、最後に、「上記のような論点を含め、引き続き慎重に検討すべきものと考えられる」と書いてございます。これは役所言葉で、「当面やらない」というふうに私は読めます。委員として非常に残念なことは、検討してきていないということを申し上げたいわけです。前々回に海外のケースもみて日本としてどうするか検討しましょうよというお話をしたんですが、配付資料にあります43-5、12月5日提出資料の23ページにUKのFSAのケースなどが書いてあるものの、その説明もして頂けなかったわけなんです。これは平時と破綻時の区別があるのかないのかとか、伺いたいことはたくさんあるわけですけれども、こういうことを検討しないでいっていいのでしょうかと、あえて申し上げたいと思います。

事業者の方からも、国際競争力、M&Aの観点からというご意見も前回出ておりましたけれども、検討しないでこう書いてしまうことに関しては、私は職責が果たせていないと思っております。しかも、今後あまり前向きに検討しないような書きぶりをされていることについては、国際競争力強化のために、いろいろまとめていく段階の中でいかがなものかと思っております。規制改革の方で3年ごとの見直しをしなければいけないからつけ足し的に書きましたというふうに、どうも見えてしまうので、そのあたり、もう少しご配慮頂けないでしょうか。

○岩原部会長

諏訪園さん。

○諏訪園保険企画室長

秋に議題として掲げて以降、なかなか検討が進んでいなかったことについては、率直に反省したいと思います。

ただ、一方で、海外事例、なかなかイギリス以外に明示的な事例が見当たらなかったこともあり、それから、あまり言いわけは長くしてもしようがないのですけれども、何より、現行の包括移転の法制度をそのまま借用するような形でやることは、非常に契約者保護の観点から問題があるというところで、相当深い論点があって、もう少し丁寧な議論をしていかなければいけない大きな問題だということを認識しているわけでございます。

ですから、前回、「中長期的課題」と書きまして、非常に評判が悪かったので、今回、「引き続き」というのは、早ければ来年ということも含めて、今後とも不断の、保険につきましては、今、保険ワーキングでもいろいろな課題について議論されていますが、なかなか全部今年にこなせないものもあろうかと思います。そういったものも含め、不断に保険制度についての議論をする中で検討していきたいと思っているところでございます。

○岩原部会長

マーチャント・バンキング業務にせよ、この包括移転の問題にせよ、役所用語で割り切っているわけではなくて、本当にこのとおり素直に読んで頂いて、今後引き続き検討していきたいということでありますので、十分なご理解をお願いしたいと思います。

どうぞ。

○高橋委員

報告書のスタイルとして、前のほうに何回にわたって審議を重ねてきたというふうに書いてあると、実際に審議したのかと、疑問に思ってしまう項目が幾つかあるというのが正直なところでございます。

それで、「中長期的」より、今回の書きぶりの方が早いというのは、私はすごく意外で、「中長期的」よりもっと先なのかなというふうに読めてしまいました。こういう時代ですので、あいまいな表現はなるべくやめて、来年なり何なり、ここでの合意なら合意として、私は期限を示ししていくべきではないかと思っています。深い問題があることは当然存じ上げておりますけれども、ここの場に、その深い問題の論点さえも挙げられないで、事業者の方々の要望と、消費者、有識者の懸念とだけが出されて、それだけで検討したことになるのか、私はせっかくこういう場を設けているのに大変残念だと思いますので、一言余計だと思いますけれども、申し上げておきます。

○岩原部会長

川本委員、どうぞ。

○川本委員

ありがとうございます。

今のご発言にも関連しまして、2点申し上げたいと思います。

1ページ目に、まず今日的な視点から、このペーパーがまとまったという位置付けがあって、下のところに「不断に見直し」と書いてあって、「不断に見直し」、本当にいい言葉だなと思います。ここのところにはマーチャント・バンキングとか入ってくるのだろうと思いますし、あと、さらに、本報告に取り上げられていない点についてもメンションして頂いているというのは、かなりフォワードルッキングで希望の持てるペーパーだと拝見しています。

それとともに、今、高橋委員もおっしゃったのですけれども、保険の契約移転のところですけれども、やはりセグメント別ですね。顧客のセグメント別に保険会社とかを分けていく必要性とか、あるいは地域別の保険会社を再編するという可能性というのがあると思います。今、諏訪園さんにご説明頂いたように、契約者にとって不利な状況が起こらないような、詰めなければいけない論点がたくさんあると思いますし、法技術的にたくさんの課題をクリアしなければいけないというふうに思っているのはわかっています。ただ、「慎重に」というのが後ろ向きではないということが今わかったんですが、さらに「慎重に、ただし建設的に」とか、「慎重に前向きに」とか、「慎重に適切に」とか、あるいは「将来の経営環境を考慮しつつ、引き続き慎重に」とか、「今後の環境変化を意識しつつ、引き続き慎重に」とか、何らかの工夫をして頂けると、さらにありがたいと思います。

○岩原部会長

今松委員、どうぞ。

○今松委員

ありがとうございます。

全体として、この報告書については賛成いたします。それで、今、川本委員などから出た点にもかかわるのですが、やはりマーチャント・バンクのところは、これまで出た意見と同じように、もう少し強めでいいと思います。それで、関委員からもありました弊害なり何なりというのは、まさに今、川本委員がおっしゃった不断の見直しの中で、いろいろなことができるのではないかと。

例えば、アメリカのFHCのような形を完全に想定し、それを一つやるのであるとすれば、やはり銀行本体での株式の保有なりをどうするのかという問題、これが将来的にというか、先々議論してもいいのではないかと思います。

それと、若干これによって法的というか、制度的な枠組みが新たにというか、よりわかりやすくなって業務範囲、いろいろなことができるようになるわけですから、そうなってくると、次にマーチャント・バンクの業務のところにもありましたけれども、今までも一定できたのではないかという議論もある。そうすると、ここに國部さんがおられるので、これまでも努力されてきたわけですけれども、より一層やはり銀行が、本当にどういうことをやっていくのかということを、これまで制度的な問題等々があったにしろ、そこのところを金融機関側にもお願いしたいと思います。

それと、文章的なところで、先ほど高橋委員があいまいなところというお話をしたのですね。私も自分で原稿を書いていてもこういう表現をたくさん使うので、あまりよくないと思っているのは、「一定の」というのがたくさんあるのです。「一定の」というのは何なのか、わかるところもあるのですけれども、非常にわかりづらいところもあるのです。なるべく具体的なところは、やはり一般の人に提示する場合、わかりやすくというか、明示できるもの、あるいはそういうものは何らか例示するなりした方が、より読みやすくなるのではないかと思います。

以上です。

○岩原部会長

國部さん、どうぞ。

○國部委員

ありがとうございます。

まず、全体と致しまして、今回、銀行グループの業務範囲規制に関して、個別承認制の導入、あるいは7つの新たな業務について規制緩和の方向でおまとめ頂いたことは、我々にとりまして、サービスの提供力強化を通じた利用者利便の向上や、国際競争力強化の観点から、誠に意義深いものと考えておりまして、感謝を申し上げたいと思います。

また、今、今松委員からもご指摘がございましたが、私ども銀行グループとしましても、今回広げて頂いた領域を活用しながら、従来以上にイノベーションを発揮しまして、お客様のニーズに応えられるよう努めて参りたいと考えております。

それで、以下、若干お願いということになりますけれども、報告書の書きぶり云々ということではございませんが、一つは個別承認制につきまして、今回あらかじめ行い得る業務を法令で限定して、当局の個別認可のもとで新たな業務を認める方式が導入される方向と示されております。こうした制度の導入は、我が国における個別承認制の第一歩として、大きな価値があるものと考えております。報告書にもお示し頂いておりますとおり、現下の金融環境のもとでは制度の機動性の確保ということが極めて重要と考えておりますので、ぜひ柔軟な運用について十分ご配慮頂ければと思います。

それからもう一つは、イスラム金融業務でございます。今回、子会社及び兄弟会社での取り組みを可能として頂くということで感謝をしております。1点、制度論というよりは、解釈の問題ということになるのかもしれませんが、イスラム金融につきましては、実態としてさまざまな形態のものがございまして、例えば一つ例を挙げますと、我が国の銀行がアレンジャーではなく、単に参加する場合で、物品売買等を行わず、実態として純粋な資金提供者であるようなケースもございます。こうしたケースについては、現行規制の枠内で、解釈により銀行本体での取り組みを認めて頂くことも可能と考えられますので、日本の銀行がこうした業務にも取り組めるようご配慮頂ければ幸いです。

以上でございます。

○岩原部会長

ほかにいかがでしょうか。

よろしゅうございますか。

原委員。

○原委員

全体的な意見というところで、特に修文とかを求めるものではないのですけれども、保険についてです。全体的な大きなタイトルが業務範囲規制のあり方についてというふうになっていて、9ページで、保険に関する規制緩和というタイトルが入ってきて、そして個別に資産別運用比率規制と、それから契約移転時における移転単位の話と、具体的な項目が2つ並んでいるのです。

ずっとこの数年の動きを見ていると、証券、銀行、保険という、それぞれの金融機関同士が非常に近似してきているという、非常に似通った構成になってきている。特に資産運用のところはそのように感じていて、ですけれども、やはり保険は保険独自の商品性というものがあって、その運用というところの制約があるように、私は思います。

ですから、その中でどういうふうに規制緩和を考えていくのかというのが一番大きなポイントで、規制改革の検討も少しお手伝いをしておりましたけれども、規制緩和の要望の中、毎年半年で1,000件ぐらいの要望が上がってきて、そのうちの半分が金融です。そのうちのまた半分が保険という状況がずっと続いておりましたので、保険に関する規制緩和というのは非常に要望としては細かなものを含めてたくさんあるというふうに感じておりますので、今回はこの2つを大きな、両方とも大きな課題ですけれども、取り上げられましたけれども、将来に向けては、保険に関する規制緩和の中で何をすべきかという、やはり全体的な討議をするという場を、ぜひ早急に設けて頂きたいというふうに私は思っております。これは意見ということですので、修文の要請ではありませんけれども、よろしくお願いしたいと思います。

以上です。

○岩原部会長

ほかに何かございませんでしょうか。

翁委員、どうぞ。

○翁委員

今、原委員がおっしゃったこととも関連するのですけれども、3ページのやはり今後の課題として、業務範囲の拡大に当たって、どういう判断基準が見えてくるかということが非常に重要だと思っておりますので、それが可能な限り明らかになっていくということは、ここで記述がありますけれども、非常に重要なことだというように思っておりますので、ぜひよろしくお願いしたいと思っております。

それから、先ほど、高橋委員、川本委員からもご指摘があった最後のところでございますけれども、私も「中長期」が「慎重」となったことについて、どっちが慎重なのかがよくわからなかったので、できるだけ速やかに結論を出して頂くような方向で、ぜひご検討頂きたいというふうに思っております。よろしくお願いいたします。

○岩原部会長

ほかにいかがでしょうか。

よろしいでしょうか。ここに書かれていることを、慎重というよりは、積極的に今後とも進めてほしいというご意見が非常に多かったかと思います。ただ、あまり同じ見方の意見ばかり出るのもどうかという気がいたしまして、私一委員としてあえて申し上げさせていただきますと、同時に、ここの文章に書いてありますような慎重な見方をしなければならない問題もあるとは、私は考えておりまして、平成9年、10年のあの経験も忘れてはいけませんし、そういうことを踏まえた上で、ご指摘になったような、日本も確かに金融機関の活性化を図っていかなければいけませんので、このような方向を私もとるべきだと思いますけれども、その際に、そういうことも忘れずに、かつ、アメリカのGLB法等についても、いろいろな評価が出ているところでありますので、そういうまさに幅広い検討をして、今後慎重というより積極的にいろいろな検討をして、見直しを進めていくべきかというふうに思う次第であります。いろいろな多面的な見方から、こういうことは検討していく必要があるかと思います。原委員がおっしゃいましたように、銀行、保険それぞれについて、それぞれの問題として検討していく必要もあるかなというふうに考えております。本当に皆さん、熱心なご討議ありがとうございます。

それでは、特に、ご意見がないようでございますので、本日、若干の文言のご指摘等を頂きましたので、その点につきましては事務局に検討して頂きまして、報告書(案)を一部修正の上、第二部会として報告書を公表することとさせて頂きたいと思います。よろしゅうございましょうか。

それでは、そのように作業を進めさせて頂きたいと思います。なお、公表時には、私と事務局の方で記者会見を行いまして、報告書の概要について説明をしたいと考えております。

最後に事務局より、連絡事項等がございましたら、お願い申し上げたいと思います。

○遠藤信用制度参事官

銀行・保険会社グループの業務範囲規制のあり方等につきまして、これまで委員の皆様方には大変精力的に熱心なご議論を頂きまして、事務局として御礼申し上げます。ありがとうございました。

報告書の公表時期でございますけれども、これは部会長とご相談いたしまして、決定次第、事前に委員の皆様方にご連絡さしあげたいと考えております。よろしくお願いいたします。

次回の第二部会でございますけれども、12月19日、水曜日、16時から開催させて頂きます。信託関係の課題について、ご審議頂きたいと考えております。よろしくお願いいたします。

○岩原部会長

それでは、以上をもちまして、本日の会合を終了させて頂きます。どうもありがとうございました。

以上

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