金融審議会金融分科会第二部会会合(第45回)議事録

日時:平成19年12月19日(水曜日)16時00分~18時00分

場所:中央合同庁舎第4号館9階 金融庁特別会議室

○岩原部会長

それでは、時間でございますので、ただいまから第45回金融審議会金融分科会第二部会を開催いたします。

皆様、お忙しいところお集まり頂きまして誠にありがとうございます。

会議に先立ちまして、本日の会議は公開ということになっておりますので、その点、まずご了承頂きたいと存じます。

本日は信託関係の諸問題についてご議論を頂きたいと思います。

議事に入ります前に、本日は堀内委員、黒沼委員、川本委員、神田委員、神作委員、柄澤委員、國部委員、筒井委員、羽田委員がご欠席でございます。

また、11月29日に信託に関するご審議を頂いたときと同様、信託ワーキンググループの委員の方々、杉浦中央大学教授、新井筑波大学教授、日本弁護士連合会の深山弁護士にもオブザーバーとして参加して頂いております。

それでは、本日の議事に移らせて頂きます。

本日の議事の進め方でございますが、前回に引き続きましていわゆる福祉型の信託を含め、信託をめぐる種々の論点について議論を深めるため、日本司法書士会連合会の大貫司法書士、みずほ信託銀行、宇波部長、杉浦教授のお三方の有識者の方々からヒアリングを頂きまして、自由討議を行いたいと考えております。

そのヒアリングに入ります前に、事務局より報告がございますので、遠藤信用制度参事官、よろしくお願いいたします。

○遠藤信用制度参事官

お手元に、「第二部会45-1」という形で右肩にナンバーリングしてあります資料をお配りしております。これはこれまでのご議論ということで、主に前回、11月29日のご議論でございますけれども、福祉型の信託についてさまざまなご意見、それからその前提としてのプレゼンテーションを頂きましたが、この資料は、そういった前回のご議論を中心に、福祉型の信託とは何か、福祉型の信託に対するニーズと、それに対する規律についての考え方、それから担い手の現状はどうか、担い手に対する規制、監督のあり方としてはどうかという形で、幾つかの論点別にさまざまなご議論を並べてみたものでございます。

言ってみれば論点別に議事録を並べ直したというものでございまして、本日、または今後のご審議の参考ということで置かせて頂きました。よろしくお願いします。

○岩原部会長

ありがとうございます。

それでは、ヒアリングに入りたいと存じます。

ヒアリングをお願いいたしました3名の有識者の皆様には、資料2のように、ヒアリングをさせて頂きたい事項をお伝えしてございますので、適宜ご参照頂きたいと思います。

それでは、まず、成年後見制度のもと実際に後見人実務を行われ、その活動を通じ、後見制度と信託の連携に対するニーズについて知見を有しておられます大貫正男司法書士より、日本司法書士会連合会を代表して、「福祉型信託」の新たな担い手についてご説明を頂きたいと思います。

大貫様、どうかよろしくお願いいたします。

○大貫参考人

日本司法書士会連合会の法改正対策本部参与の大貫正男でございます。本日はよろしくお願いいたします。

私は、成年後見センター・リーガルサポート、ちょっと長いものですから、以下「リーガルサポート」と呼ばせて頂きますけれども、設立当初から、この福祉信託につきましては大きな関心を持っておりました。

そこで、設立に当たりまして何とかリーガルサポートの定款に入らないかということで努力した記憶がありますけれども、その時は信託業法との兼ね合いで定款に織り込むことはできませんでした。しかしながら、それから8年経ちまして、本日こうしてヒアリングの機会を与えて頂きまして本当に感謝しているところであり ます。

では、早速お話ししたいと思っております。最初に、司法書士界における成年後見制度の取り組みについてお話しいたします。

社団法人成年後見センター・リーガルサポート、日本司法書士会連合会、以下「日司連」と呼ばせて頂きます、によって平成11年12月21日に設置されました。

リーガルサポートは、高齢者・障害者等が自らの意思に基づき、安心して日常生活を送ることができるように支援し、もって高齢者・障害者等の権利の擁護及び福祉の増進に寄与することを目的とし、司法書士を正会員として設立した社団法人であります。

現在全国に50支部ありまして、会員は約 4,339名を擁し、平成12年4月1日にスタートした成年後見制度の普及・発展活動を初め、我が国最大の専門家成年後見の供給団体として幅広い活動を展開しております。

先に、なぜ私たちがリーガルサポートをつくったかにつきまして簡単に説明したいと思っています。

まず、成年後見業務というのは、判断能力の不十分な人々の財産管理や身上監護を行い、生活全体を保護・支援する仕組みであります。具体的には、本人から預貯金通帳を預かり、施設の利用料とか消費を払います。場合によっては、不動産を処分することもあります。これが長期間、通常は本人が死亡するまで続きます。

そこで、こうした業務を長期間にわたって公正かつ安定的に行うには、しっかりした責任体制、研修体制、監督体制、そして家庭裁判所等との連携体制が求められるということがわかったわけであります。しかし、これらの体制は司法書士個人ではどんなに頑張ってもできない、限界がある、そのように考えまして、司法書士会では公益法人という組織を設立して成年後見業務に対応したわけであります。

続きまして、主な活動について述べたいと思います。

最初に、司法書士の成年後見人の就任件数ですけれども、現在、第三者後見人として5年間連続してトップでありまして、現在の受任件数は 5,000件を超えております。

そして、2番目に、各地における遺言と成年後見制度の普及と、親族向け成年後見養成講座の開設をいたしております。

3番目といたしまして、成年後見制度を利用したいのだけれども、どうしてもお金を払えないという方がいらっしゃいます。そのために、平成13年12月25日、公益信託成年後見助成基金を設立いたしました。この基金の設立は、総務省より、高齢化時代を先取りした公益信託として高い評価を受けているところであります。

ちなみに、当初の基本財産は約 2,000万円でありましたけれども、現在はふえておりまして、1億 9,000万円になっております。約10倍に上がっておりまして、これからますますこの公益信託の基本財産は増加するものと思っております。

それから、4番目として、全国一斉無料成年後見相談やNHK厚生文化事業団との共催による成年後見制度普及フォーラム等も開催しております。

5番目といたしましては、暴力事案等の困難事例に対処するため、リーガルサポート自体が成年後見人に就任する「法人後見」を多数受任しております。最近では、親族が後見人に選任された場合に、リーガルサポートが成年後見監督人に選任されるケースが増加しております。

特に平成18年度は、障害者自立支援法の施行に伴いまして、各地の家庭裁判所からリーガルサポートに対して後見監督人の要請が相次いでおりまして、私たちはそれに応えているところであります。

このように、リーガルサポートは成年後見制度に関するナショナル・センターのような役割を果たしているというふうに私は考えております。

続きまして、福祉信託につきましてご説明いたします。

まず、福祉信託とは「高齢者や障害者等の生活支援のための信託」、このように定義しております。

具体的に申し上げますと、高い収益を得ることではなく、高齢者や障害者等の生活支援や財産保全を目的としていますので、管理型の信託が中心になるかと考えております。

次のページに行きまして、信託制度と成年後見制度との連携につきましてご説明いたします。

まず、最初に、親亡き後問題に関連してであります。

親亡き後問題とは、親の死亡後、障害を持つ子どもの財産管理と身上監護をどうするかという問題ですが、その場合でも信託を利用すれば、障害を持つ子ども等に対して生活費が安定的に給付することが可能となります。まさに生活支援のための信託がここで力を発揮するわけであります。

2番目といたしまして、マル2任意代理と関連して信託を活用する方法も考えられます。

任意代理人は、身体障害者等から預金通帳などを預かり、そこから日常の生活費や治療等などを支払う業務を行っておりますけれども、法律上の監督者がいないというために横領されるなどの危険性があります。そこで、任意代理契約や任意後見契約とあわせて信託契約を結ぶ方法が考えられます。こうすれば、財産をガードできますし、一方、任意代理人が身上監護や財産管理に専念することができます。

なお、これはリーガルサポートに対しましては任意代理人に対しても監督する仕組みを採用しておりますので、リーガルサポートに関しましては不正が起こる危険性は解決され済みだと思っております。

続きまして、3ページ目、死後の事務について信託制度を活用することでございます。これは、「死亡後事務」となっておりますけれども、「死後事務」に直して頂きたいと思っております。

任意後見の場合、その特約として、本人が死亡した場合、葬儀・埋葬などの死後の事務を加えることが多いのですけれども、本人が死亡いたしますと預貯金口座はクローズされます。そうしますと、葬式費用などの主催のための払い戻しができなくなる恐れなどがあります。私も経験しましたけれども、困ります。

それでは、通常どうやってやっているかといいますと、病院からそろそろ危ないという知らせが入りますと、私たちは慌てて前もって一定額の払い戻しをして現金化しておくというやり方をとっております。

しかし、これには問題がありまして、中には1カ月経ってもなかなか死亡しない方もいらっしゃいます。こうした場合は、仕方なくもう1回銀行に入金する、こういった苦労もありまして、この辺は皆困っていると思っています。

任意後見契約がまだ発効していない「見守り事務」の段階で死亡した場合はもっと深刻です。財産はまだ管理していないので葬儀費用を支払えません。そこで契約時に当初から葬儀費用等を預託金として預かることが多いのです。しかし監督機関がない実態で預託が長期間に亘れば不正の温床になりかねません。

これは任意後見だけではなく、喪主がいないような身寄りのない方の法定後見に就任した場合も同様のことが考えられまして、こうした場合にも前もって信託しておく方法がベターと思っております。このニーズは非常に高いものがあるというふうに考えております。

以上が、後見制度に関連いたしました福祉信託の活用についてであります。

続きまして、公益法人の活用につきまして、4ページのほうに移ります。

日司連では、福祉型信託の担い手として公益法人の活用を考えております。公益認定法に規定される認定要件をクリアした公益法人は、ガバナンス、コンプライアンス、ディスクロージャーにおいて、信託業務を安定的かつ継続的に行う事業能力と健全性があるというふうに考えております。それに基づきまして、基本的な考え方を述べます。

まず、先ほど申し上げましたように、福祉信託とは、高齢者・障害者の生活の支援のために一定の財産を信託するものでありまして、極めてローリスクの管理が求められます。

2つ目に、受託者は常に委託者ないし受益者たる高齢者・障害者の社会保障や権利擁護に配慮しなければなりません。

それから、3つ目としまして、高い収益が望めない分野である。

それから、4つ目といたしまして、福祉信託は、ビジネスというよりむしろ公益を中心とした事業である、このように考えています。

私たちは、このような基本的な考え方に基づきまして、公益法人を活用というように考えているわけであります。

(2)といたしまして、公益法人の活用につきましてご説明したいと思っております。

来年、平成20年12月1日、公益法人制度の抜本的改革に関する3つの法律、一般法人法、公益認定法、整備法が施行されますので、このことを前提にお話しいたします。

そこで、福祉型信託の新たな担い手として、公益認定法に規定される認定要件をクリアした公益法人を活用することを考えております。一般社団や一般財団ですと、公益性、あるいは財政、人的構成に不安が残りますしかし、公益認定法に定める認定要件をクリアした公益法人、公益社団または公益財団であれば、信託の担い手として、信託業務を健全かつ適正に遂行していく財産的基礎及び人的構成が備わっていると考えているわけであります。

そこで、次に、私たち日司連が考える具体的な公益法人構想につきまして述べます。

まず、日本司法書士会連合会等による公益法人の設立ということで、日司連が中心になって公益法人を設立することを想定しております。日司連が中心になりますので、職業倫理と専門的能力に裏づけされた新たな公益法人が誕生することになります。

リーガルサポート自体が福祉型信託の受け皿となるという考え方もありましたけれども、後見業務とは異なる専門的能力、経営能力、財政基盤が必要となりますので、別個に公益法人を設立する構想を持っております。

2番目、管理型信託を中心に行う信託業務に特化いたします。信託業務は、当然でありますけれども他の業務の片手間にするものではありませんので、当然信託を専門に行います。

また、高齢者・障害者等の財産を保全することが目的ですので、需要の多い、そしてリスクの少ない管理型信託を中心に行います。この参入形態であれば、既存の信託会社との役割分担が可能と考えております。

3番目、設立に当たっては、日司連の助成はもちろんのこと、約1万 8,000の会員に対しても協力を求める考えを持っております。

4番目、これは先ほど申し上げましたように、財源確保の一環として「死後の事務」の信託の受託を積極的に行うことを考えております。

先ほど申し上げましたように、今リーガルサポートの会員が就任している継続的受託件数は 5,000件を超えておりますので、この中でやはり皆さん、「死後の事務」には悩んでいらっしゃいます。当然、弁護士、社会福祉士等の専門家も困っておりますので、こうした職能に呼びかけることによって、当面の財産確保につながるものと考えております。

5番目、財産確保のための方策の1つとして公益信託成年後見助成基金の手法を取り入れる、このことも考えております。資力の少ない人から金銭の信託を受けた場合、そこから信託報酬を頂くのはやはりなかなか難しい面があります。後見人に対する報酬を支払い、さらに信託報酬が追加されるからでありまして、そこで、まず、公益信託成年後見助成基金から信託報酬を払えるような運用をして頂くことを考えております。

現在では成年後見報酬に限定して助成をしていますが、さらに信託報酬も支払うような運用をこれからお願いし、仮にもしこれが困難であれば、信託報酬を支払うための新しい公益信託を別個に立ち上げすることも必要かと考えております。

それから、6番目、善管注意義務、分別管理義務、忠実義務等の受託者責任の徹底であります。考えてみますと成年後見人にはいろいろな義務が課されておりまして、後見業務を行う司法書士は善管注意義務、分別管理義務等を踏まえて日々実務を行っております。これは、信託の受託責任として課される義務と共通でありまして、これまで司法書士が経験して積み重ねてきたものであります。

ちなみに、成年後見人には民法 858条の身上配慮義務という成年後見実務に固有の義務が追加されておりますので、受託者としての基本的な責任体制や心構えはできているのではないか、このように考えております。

続きまして、内部監査等ガバナンスの制度的な保証であります。これから設立しようとする公益法人には法律上もしっかりしたガバナンス体制が強く要請されておりますので、内部監査なども、社員ないし評議員、理事、監事などにより、それぞれの職能権限と義務により、適正な監督が実効的に行われるものと考えております。

8番目、代理店方式であります。福祉信託型のニーズは、都市部だけでなく全国各地にあります。各地において福祉信託を必要とする人々にも門戸を開く必要があります。幸い司法書士の分布は全国各地に広がっておりますので、司法書士会等を拠点といたしましてサービスを提供したらどうか、この場合、代理店方式はどうかと考えております。統一的運用、集中的な管理、研修義務の徹底などができる点で、この代理店方式はメリットがあるというふうに考えております。

続きまして、公益法人の業務ということで、具体的にはどのような業務をするかということにつきましてお話ししたいと思っております。4点あります。

最初が、福祉信託一般であります。これも、先ほど申し上げましたとおりいろいろな型の福祉信託があるわけでありますけれども、こういった一般的な信託に対応したいというふうに考えております。

特に、高齢者が犯罪から守るため預貯金をプロテクトしたい、あるいは判断能力に問題がなくても、また身体に障害がなくても、財産管理が複雑と思ったり、あるいは財産管理はプロに任せたい、こういった方につきましてもお役に立ちたいと思っています。

そして、また、単に預貯金を管理するだけでなく、福祉的な見地から直接施設利用料や介護費を施設、病院等に支払う、そしてさらに日常的に生活費を信頼できる第三者に渡す、つまりその第三者と委託契約を結ぶわけでありますけれども、このような支払いサービスを併せて行えば、相当な需要があるのではないかというように考えております。

私は今年の9月にオランダへ行ったわけでありますけれども、そのときに、実際に入院中の患者や障害者の財産管理に特化した法人に出会いました。この法人は社員が28名おりまして、 1,500人の委託者を抱えて1人で平均80名の委託者を管理するということでありまして、私はここに非常に注目しました。日本でもこのようなニーズは広いと思っております。

2番目の高齢者・障害者不動産管理信託、これもこれからますます需要があると思っております。

最近私が経験した例でありますけれども、祖母は、自分が死んだ後は遺言により孫に自宅とか店舗を相続させたい、こう考えているわけですけれども、その孫というのはまだ20歳なのです。20歳ですから、管理能力に問題がある。結婚して一人前になるまで待っていたい。こんな場合にも信託が使えるかと思っております。

3番目の死後の事務、これは先ほど申し上げましたとおりです。

それから、後継ぎ遺贈への対応、これも対応して考えていきたいと思っております。

4番目、リーガルサポートとの連携でありますけれども、リーガルサポートから、福祉型信託利用者の紹介を受けたいと思っております。もちろんリーガルサポートだけではなくして、弁護士会、社会福祉会、福祉団体、もちろん信託会社等からも福祉型信託の紹介を受けたいと思っております。

それから、後見業務への協力・支援を行うということがあります。

それから、3番目といたしまして、定期的な連携協議会を開催する。

この3つのことの連携を考えております。

終わりになりますけれども、信託というのはまだ一般ではなじみの少ない分野だと思っております。しかし、この福祉信託を普及させることにより、信託がより市民に身近な制度として認知される絶好の機会であるというふうに私は考えております。少子・高齢化社会のインフラとしても、ぜひとも公益法人の参入を認めて頂きたいと思っております。

以上であります。

○岩原部会長

どうもありがとうございます。

それでは、次に信託業界を代表して、信託協会会長会社であるみずほ信託銀行より、「信託業界における福祉型信託等の現状について」、ご説明をして頂きたいと思います。

宇波部長、よろしくお願いいたします。

○宇波参考人

みずほ信託銀行の宇波でございます。

本日はお時間を頂戴いたしまして大変ありがとうございます。

今お話がございましたが、私のほうからは信託業界における福祉型信託等の現状につきまして、ご質問頂いた点を中心にお話をさせて頂きたいと思います。

お手元の資料、「第二部会45-4」という資料でございます。表紙をめくって頂いて、1ページをご覧頂けますでしょうか。そこに「信託とは」ということで、信託の仕組みを図でお示ししております。ご説明は省略させて頂きますが、適宜ご参照頂ければと思います。

次のページは目次でございますので割愛して、その次の3ページをご覧頂けますでしょうか。3ページには、主な信託商品、業務をお示ししています。私どもが取り扱っている商品の中で、今回の福祉型と言えるものとして、特定贈与信託、下のほうに長い丸がございますが、その右側の商品です。それと、金銭信託のうち特約付きの金銭信託、一番上のところに丸印がついております。これが挙げられると思いますので、本日はまずこれらについて説明いたします。

そして、福祉型信託とは異なるかもしれませんが、公益信託についてもご質問を頂き、また、前回までの本席においても取り上げられておりますので、ご説明させて頂きます。

なお、信託協会では、10月に10日間の日程で福祉型信託と公益信託について、米国でヒアリング調査を実施しております。その内容についても、これらのご説明の中でお話ししたいと思います。

4ページをご覧ください。まず、特定贈与信託についてご説明いたします。

特定贈与信託は、重度の心身障害を持つ特別障害者が安定した生活を送れるようにということで、親族や篤志家が金銭や有価証券などを信託銀行等に信託する制度でございます。

昭和50年4月に、相続税法第21条の4によって、特別障害者に対する贈与税の非課税制度が創設されたことによりつくられた信託で、現在は 6,000万円までの贈与財産が非課税になります。委託者は親族や篤志家、受託者が信託銀行等で、受益者が特別障害者となる他益信託でございます。

法人からの贈与は一時所得となり、この制度の対象とはなりません。

それから、受益者である特別障害者の範囲でございますが、重度の精神障害者、あるいは年齢65歳以上の重度の障害者などで、これは相続税法に定められております。

信託財産につきましては、その図の右側の下のほうに表がございますが、そこに書かれておりますように、マル1からマル6までの財産に制限されております。

不動産については、そこにマル5とございますが、「継続的に相当の対価を得て他人に使用させる不動産」と、マル6の「受益者である特別障がい者の居住の用に供する不動産」に限られておりまして、そのマル6については、マル1からマル5までの財産のいずれかとともに信託されるものに限られるということでございます。

受託状況については後ほどご説明申し上げたいと思います。

次のページをご覧頂けますでしょうか。5ページ目は、特約付き金銭信託の仕組みをご説明しております。

特約付き金銭信託は、単純に申しますと、委託者のニーズに合わせて信託の目的や設定方法、期間などの特約を設けることができる金銭信託でございます。長期間にわたる財産管理を委託することも可能でございまして、契約だけでなく遺言による信託の設定も可能でございます。

特約の例として、同じように図の右下に挙げてございます。

例えばということで、委託者に万一のことが起こった場合、残された高齢の妻のために財産管理を行うとともに、毎月一定額を給付する。あるいは、委託者に万一のことが起こった場合に、唯一の相続人であり、障害を持つ長男のために財産管理を行うとともに、毎月一定額を給付する。こういった条件、こういった信託目的がつけられております。

当社の場合は、信託金額は原則 2,000万円以上、信託期間は5年以上25年以内の期間としております。

次のページをご覧頂けますでしょうか。この6ページ目は、特定贈与信託と特約付き金銭信託の残高の推移を記載しております。特定贈与信託が左側でございますが、その受託件数と残高は、残念ながらここ数年若干減少しております。

これに対して、特約付き金銭信託は、これは協会ベースの統計数値がないためにヒアリングベースの数字でございますけれども、件数・残高ともに順調に増加しております。この特約付き金銭信託は、やはり委託者のニーズに合わせてオーダーメイドの設計が可能であるという、これが増加の一因ではないかというふうに思っております。

ここで、信託協会の米国の調査について若干ご説明申し上げたいと思います。

調査はヒアリング先が限られておりまして、必ずしも米国の一般的な状況ではないというふうに考えておりますけれども、信託活用の今後の参考になればということで、その幾つかをご説明させて頂きたいと思います。

まず、米国では、「エステート・プランニング」と呼ばれる世代間の財産承継のための仕組みに信託が活用されており、受託者としては、信託銀行、信託会社、それから弁護士、家族が単独で、または共同で受託者となっているということでございます。

「福祉型信託」に該当する言葉はないということでございましたが、政府の福祉プログラムを補うために設定されるスペシャル・ニーズ・トラストという制度があって、「自己保有の財産が一定額以下であること」という福祉プログラムの受給条件を充足している人が、そのプログラムでカバーされていない部分を補うために使うような信託ということでございました。

公的機関や非営利団体が、高齢者・障害者向けの信託の受託者となるという例もあるということでございます。

信託財産が多額の場合には金融機関に相談し、少額の場合には非営利団体などに相談するというようなコメントもございました。

7ページをご覧頂けますでしょうか。7ページから9ページで、公益信託についてご説明しております。

公益信託は、福祉型の信託とは若干性格が異なるかと思いますが、中には社会福祉を目的とした公益信託もございますので、ここで概略を説明させて頂きます。

公益信託というのは、個人や企業が、例えば奨学金の支給であるとか、自然科学研究への助成、あるいは社会福祉等の公益活動の助成などを目的として、金銭等の財産を信託する制度でございます。

また、不特定多数の受益者の代表として、図の左側に「信託管理人」とございますが、受託者の職務のうち重要なものに承認を与えるこの信託管理人と、その図の右側のほうにございますが、助成先の推薦及び公益信託の事業遂行について助言・勧告を行う「運営委員会」等が置かれることが特色でございます。

公益信託に似た制度として、ご承知のとおり財団法人による助成というものがございますが、公益信託は、受託者が主務官庁への許可申請等を行うことができる、あるいは信託財産を取り崩して公益活動に活用できるため、財団法人に比べて、小規模資金を効率的に公益に生かすことができるというふうに考えております。

次のページに、公益信託の受託状況を載せています。

ちょっと小さくてすみませんが、この図は19年3月末現在の目的別の受託件数でございます。全体で 558件ございますが、奨学金支給を目的としたものが一番多くて、全体の約3割を占めています。社会福祉の目的の公益信託は42件、全体の約8%ということでございます。

具体的には、そこの右の囲みに書いてございますけれども、例えば「交通遺児になった高校生に対する交通遺児等援護一時金の給付と交通遺児等援護金の給付、交通遺児団体に対する活動費等助成金の給付を行い、県民の安全で快適な交通環境づくりに資すること」、あるいは、「視覚障害者福祉及び視覚障害者に対するボランティア活動を行う団体、並びに、社会福祉施設への活動費の助成を行うことにより、視覚障害者福祉事業の一端を担い、もって視覚障害者文化の向上と福祉の増進に寄与すること」、などといった目的がございます。

それから、先ほど大貫さんがお話になられた公益信託の成年後見助成基金、これも、この社会福祉の中に分類されております。

次のページをご覧頂けますでしょうか。これは受託の状況を示しております。

受託件数と残高は、横ばいから若干減少しております。ただ、助成先数と毎年の助成金額、これは着実に増加しております。これは、公益信託は財団法人と異なり、先ほども申し上げましたが、信託財産を取り崩して公益活動に役立てることが可能であるというところ、あるいは信託設定後に財産が追加されるケースがあるといったことが原因だと思います。

先ほどもお話がございましたが、公益信託については、先行して行われた公益法人制度改革と平仄を合わせるということで、新しい信託法では本格的な法律改正が見送られております。

ここでまた米国の調査結果を少しお話をしたいと思います。

米国で「チャリティ」と呼ばれる公益団体というのは大体 140万くらいあるということでございまして、その中には、公益法人、それから公益信託が含まれるということでございますが、その区別はあまり重要視されていないということでございました。

我が国の公益信託では、給付の都度、運営委員会の助言に従い受託者が助成対象者を選定し、最終的な対象者に給付しますけれども、米国の公益信託では、受託者は給付対象となる税制上的確な団体に対して給付するというのが一般的なようです。

それから、また米国では、公益と私益を組み合わせた信託、例えば具体的には信託期間中は公益団体に寄付を行って、信託終了後は残余財産を委託者の家族等に私的な交付を行う「公益先行信託」というものや、反対に、信託期間中は委託者やその家族等が給付を受け、信託終了後には公益団体に寄付を行う「公益残余信託」があるということで、件数としては両者で大体13万件ぐらいあるわけですが、このうち9万件が公益残余信託であるというようなお話も伺いました。

10ページに、特定贈与信託、それから特約付き金銭信託、公益信託の受託者の義務と役割を少しまとめてみました。

上の囲みに記載しておりますのは、信託の受託者であれば必ず負うことになる基本的な義務でございます。ここでは、善管注意義務と忠実義務、分別管理義務を記載しております。

それに加えて、例えば特定贈与信託では、表の下左側でございますが、非課税の適格要件として、「特別障がい者に対する信託財産からの金銭の支払いは、特別障がい者の生活または療養の需要に応じるため、定期的かつ実際の必要に応じて適切に」行われるといったことや、信託された財産の運用は、「安定した収益の確保を目的として適正に」行うことなどが定められており、私どももそれに従って信託を受託しているということでございます。

また、公益信託では、「学識経験者等により構成される運営委員会の意見に基づき、助成金の交付等の信託事務」を行うこと、あるいは、「信託事務の内容等の委託者への報告、または必要に応じて主務官庁への諸届報告等を実施」することなどが求められています。

最後、11ページでございますが、信託法の改正で可能になりました「後継ぎ遺贈型の受益者連続」についてご説明します。

この後継ぎ遺贈型の受益者連続というのは、下にイメージということで書いてございますけれども、例えばご主人が、生前は自らを受益者として、亡くなられた後は奥さん、妻を、妻の死後はさらに長男、お子さんをということで、連続して受益者とする旨を定める信託です。新しい信託では、このような後見的な財産管理や、遺産承継を目的とする家族信託の規定が整備されておりまして、この後継ぎ遺贈型の受益者連続については実は税制面等の課題がございますけれども、私どもも商品化に向けて努力していきたいというふうに考えております。

以上で、私からの説明を終わらせて頂きます。

○岩原部会長

ありがとうございます。

それでは、引き続きお願いします。

○田川専門委員

みずほ信託の田川でございます。

ただいまの説明に2点、補足をさせて頂きます。

ご質問のありました内容に関係いたしますが、まず、福祉型信託に対する新たな担い手に対する考え方でございます。

11月29日の本席で、複数の委員の皆様から、受託財産の規模や身上監護等の点で、福祉型信託については信託銀行での対応が難しいのではないかというようなご指摘があったと認識しております。

確かにご指摘のとおり、幅広く信託業務を営んでいる信託銀行や信託会社にありましては、大規模かつ多様な信託業務に対応した営業体制、内部管理体制を構えておりまして、私企業としての採算性や、信託銀行の現状の業務内容を考えますと、対応が難しい分野があるということは事実でございます。

特に、財産の運用・管理にとどまらず、身上監護のように個人のお客様の生活状況等を非常にきめ細かく見守る必要があるような分野につきましては、業務的にも非常に難しいと考えております。

このような分野において、新たな担い手がふえることは、信託業界としても期待いたすところでございます。

ただ、福祉型信託のように、高齢者や障害者等、社会で保護されるべき方々を受益者とする信託の担い手や、受託者としての業務のあり方につきましては、受益者保護、また信託制度の健全な発展という観点から、その参入基準、行為規制、監督のあり方についても十分議論すべきものというふうに考えております。

もう1点は、既存の信託銀行における福祉型信託とビジネスの係わりについてでございます。

先ほどご説明させて頂きましたように、特約付き金銭信託などにつきましては、信託各社がそれぞれ創意を工夫し、近年、取扱高を伸ばしてきております。

また、10月24日の説明においても一部申し上げましたが、平成16年の信託業法改正で信託業の担い手が拡大されたということに伴いまして、信託協会加盟会社は多様化、増加してきております。11月29日に意見を述べられた朝日信託さんもその一社でございますが、そのときの皆見社長のご説明のとおり、このような分野を中心にビジネスモデルを構築された信託会社でございます。

また、最後にご説明させて頂きました9月に施行された新しい信託法では、遺言代用信託や後継ぎ遺贈型受益者連続信託に関する規定など、高齢者・障害者を対象とした信託の活用に資する手当もなされました。税法上の問題等取り組むべき課題はまだございますけれども、今後さらにこのような分野に注力していく社も登場してくるものというふうに考えております。

以上でございます。

○岩原部会長

どうもありがとうございます。

それでは、最後に、海外の信託制度について研究され、先月も渡米されてアメリカにおける民事信託の現状について調査されていらっしゃいました杉浦中央大学教授より、「民事信託の担い手をめぐる諸外国の状況について」、ご説明を頂きたいと思います。

どうかよろしくお願いします。

○杉浦参考人

ご紹介いただきました中央大学の杉浦でございます。よろしくお願いいたします。

今座長のほうからのお話では、延々と信託のためだけに渡米したみたいな感じになっておりますが、必ずしもそれだけではございませんでいろいろな複数の目的のもとで行きましたので、そこはあるわけでありますが、私の場合、数年前まではこちら側サイドに座って信託の発表をさせて頂いて、今はちょうど真ん中に座っているので、いつか逆側に座れるのかはわかりませんが、こんな状況の中、説明させて頂きます。

ずっとそこで追ってきた中で、信託の大きな風、今回はその中で民事信託のお話を集中的にさせて頂ければと思っています。今までの信託の議論の中では、商事信託とかの分野のところがとかく注目をされてきたわけでありますが、今回の福祉信託のお話は、何を隠そう実態的にはこれは民事信託の話であります。したがって、アメリカの民事信託をめぐる状況と我が国への示唆ということでお話をさせて頂きたいと思います。

アメリカで信託はどのように活用されているのかということから、事務局側のお題に従っていくわけでありますが、これは実際に多様な目的で利用されているわけで、ややエスクロー・サービスと似たようなところがありますが、遠隔地にある財産を自分が持っている場合、その財産の管理をしたり、また金銭資産を含む包括的な財産管理、そこの中には遺言信託のようなもの、生前信託、これはファミリー・トラストみたいなものも含まれてくるかと思いますが、そういったものがあるかと思います。

前回の審議会の中では、信託が広くあまねく利用されているというようなお言葉も一部委員からあったように思いますが、実際的に見ていると、あまりそうでもないのかなという印象も受けてはいます。

特にこれは税制度の関連性が非常に大きいというふうに私は考えていて、例えばニューヨーク州とカリフォルニア州という東西を比較してみると、カリフォルニア州は比較的利用が多いわけですが、ニューヨーク州はそれほどでもない。これはなぜかといったら、いわゆる相続税の違いみたいなものがそこに出てきている。

ですから、カリフォルニア州の方とか、例えばイリノイ州の方なんかは比較的もう子どもが生まれたらすぐウィルを設定して、そして信託に行ってしまうという方がいる反面、ニューヨーク州の方なんかはべつに、「いや、まあ、いいや。まだそんなことを考えなくても」みたいなことを言われるようなケースも見えていました。そういった意味で、税制との関連性はある程度大きいのかなというふうなことがわかりました。

そして、信託銀行とか信託協会のサイドのほうからもご説明がありましたが、ある種特殊な信託としてスペシャル・ニーズ・トラストのようなものもあるかというふうに思います。かつてワシントンとかあちこちで調べたときにもこの名前が出てくるわけですが、これは「信託」の名は言っているものの、ある種、社会福祉制度の一環であって、どちらかというと必ずしも「信託」というふうに言っていいのかというのはややクエスチョンなものであるというふうに思われます。

後でもお話ししますが、次の担い手のところと重なってくるわけですが、アメリカの場合、要するにそういった特に貧しい人を助けようというようなことを考えた場合、そこではこういったスペシャル・ニーズ・トラストで、年収がある程度のラインよりも低い人はここに入れましょうとか、そのほかの場合においては、ファウンデーションとかチャリティのような形でいわゆる比較的お金を持っている人がとか、宗教団体だったりするときも時々ありますが、そういったところが、その宗教上の理由だったり、あとは慈善事業として貧しい人を補助するという形態がありますから、そういった形でとりわけ行われているのかなというふうに思います。

そこで、まず信託の担い手という話に行きますと、そこでは、現在の状況を見ていると、いわゆる人口が圧倒的に多くて、そして個人、これは弁護士の方も含む、というのが中心的な担い手であろうというふうに思っています。

信託業者のほとんどは、実際は一般の商業銀行で信託業を兼営しているところが多い。国法銀行であれ、州法銀行であれ、アメリカでは信託の免許を追加的に取得することによって信託業務ができますから、そういう兼営の形で行っているということであります。

とりわけボストン市内だけと言ってもいい状態でありますが、マサチューセッツ州のケースでは、弁護士法人が信託会社等を立ち上げているケースもあります。ただ、これは非常にレアなケースである思って頂ければというふうに思います。

なお、完全なる信託会社といったものもございます。これは預金業務を行わない信託会社ですからいわゆる純粋な信託会社でありますが、その大半は国法銀行並びに有力州法銀行の子会社であります。そして、顧客層は富裕層が中心というふうになります。

富裕層が中心とも聞きましたが、カリフォルニア州の最新の情報によりますと、カリフォルニア州の信託会社というのは、以前に調べたときはたしか14だったのですが、今は10社に減ってしまいました。要するに、純粋な信託会社というのはもう、信託銀行というか、信託業務を兼営している銀行のほうに相当シェアが取られた。結果として、今現在はたったの10社、うち独立系はたったの2つ、あと残りはすべて国法銀行並びに有力州法銀行の子会社が行っているというのが実態です。

さらに言うと、その子会社8社のうちの3社は、実を言うと実質的にはそこでは信託業務を行っていません。何をしているかというと、要するに証券会社の子会社だったりしているのですけれども、が、預かった財産を分別管理しておくためのいわゆる箱として使っています。そういった感じになっているというのが実態であります。

これがアメリカの現在の担い手であるとすれば、その担い手に対する規制の話があるのかと思います。

信託兼営銀行に対する規制に関しては連邦法がありますが、これはOCC(米通貨監督庁)のいわゆるレギュレーション9、「レグ9」とも言われますが、が1つの基準になっている。そこでは、信託業務へ参入する際の事前の許可とか、あと待機資金、つまりいわゆる最低資本金のような話もそこに入ってきますし、自己取引とか利益相反とか、資産の管理方法・保管方法等に関して幾つかの規定がございます。

実質的には州法銀行もこの規制を使って規制されている。規制しているのは州の金融局長になるということにはなりますけれども、こういった規制になっています。

そして、OCCは、実を言いますとこの信託関連業務に関して、6つのいわゆる「ハンドブック」を出しています。アセット・マネジメントからスタートして、最後にパーソナル・フィデューシャリー・サービシズ、すみません、「i」と「c」が抜けていますけれども、パーソナル・フィデューシャリー・サービシズを含めてこの6つの分野に関して、いわゆる信託民事業務についてのハンドブックということになります。実際問題、このハンドブックに基づいて、OCCであればOCCが直接やるわけです。

あと、州であれば州の金融当局が直接的に銀行に対して検査に入るという形を取っています。ですから、国法、州法、いろいろな違いはあるわけでありますが、アメリカに関してのいわゆる規制の分野に関して言うと、比較的統一された規制が行われているというふうにご理解頂ければと思います。

さはさりながら、いわゆる信託会社に関する規制というところを見ていきますと、そこでは各州の金融法制の中に「信託」という分野があるケースが多うございまして、そこの中に、信託会社に対する規制というのもあります。これは各州ごとにものすごく大きな違いがあるということではございませんが、若干、州ごとの事情を反映した違いがそこには書かれています。もちろんそこでは、改めて参入要件やデータへの記載事項、投資規制とかガバナンスに関する規制など、業規制的な内容が中心になっていますが、後でご説明を差し上げますが、統一プルーデント・インベスター法の影響を多少受けた条文になっています。

そして、受託者業務だけではなく、広く受任者としての業務を規制しているというのもあります。規制権限は、州の金融局長が持っているという形になります。

ここで少し話題をずらしますが、統一プルーデント・インベスター法があることをちょっと申し上げておきます。

こういう形でやると、いわゆる業法みたいなのがアメリカでも存在するのだということがご理解頂けるかと思うわけですが、日本の信託業法のイメージとはやや異にするような感じもします。つまり、統一プルーデント・インベスター法によると、そこでは受託者の裁量が広く尊重され、そして受託者が従うべき基準というのが幾つかあるわけですが、どちらかというと堅めというか、合意が必要とかいろいろなことがあるわけですけれども、投資判断の委任も可能だとかそういったことが書かれていて、ここに沿っていくと、広く使おうとすると、日本におけるいわゆる証券会社のラップ口座みたいに使うことも不可能ではないのかなという、そこまで行けそうな感じもしないわけではありません。

ただ、一部の研究者の最近の論文によると、この統一プルーデント・インベスター法が実際の業者に対してどのようなインパクトを与えたかという、法と経済学の分野における研究もあります。そこによると、従来、このプルーデント・インベスター法が入ってくる前の段階においては、国債とか、いわゆる社債であったりとか、比較的堅いもので投資を行うというようなケースが多かったわけです。その受託者は大体が金融機関だったりするわけですけれども、そういった機関はそういった比較的手堅いものに投資するという傾向があったのですが、この94年を過ぎて、いくらか株への投資とか、投信への投資をここで進めていったということは事実としてございます。ただ、そのウエイトは思ったほど高くはないということも、幾つかの研究で明らかになってきてはいます。

さて、そのような中で、ではアメリカの民事信託が今どうなっているのかという話で、ちょっとアメリカ民事信託の変化ということを語らせて頂きたいというふうに思います。

信託業法の前々改正のときに多少関与させて頂く中で、民事信託の実態は当時から見て、かれこれ5年ぐらいになろうかと思われますが、その際においても、従来はどちらかというと不動産管理が受託会社の主要な部分だったかなという感じであったわけですが、そのころからでもあったのですけれども、今現在、金融機関を含む多様な財産が受託財産になってきてしまっています。

とりわけ最近特徴的であったなと思うのは、かなり投機性の高いファンドのようなものも受託財産に入れ込まれているケースがあります。したがって、金融分野に関しての専門的な知識がどうしても必要になってきます。

また、投資のタイミングとか、売り買いのタイミングを誤ると、これは損失発生時の責任問題が発生します。したがって、個人、とりわけ弁護士法人とか弁護士個人の方が受託しているケースがアメリカでは多々見られるわけでありますが、での受託は、非常に限定的な方向に向かっています。

たしかに今現在もう、カリフォルニア州の幾つかの大手の事務所に行くと3つぐらいコンピューター画面があって、そのうちの2つの画面は何か訴状を書いていたりとかいろいろしているのですけれども、1つの画面はロイターの画面で、それを見ながら、「あ、杉浦さん、ちょっと待っててね」と言って、「どこそこの株、買った」とか何か横でやっているという、何かこの人はディーラーではないかみたいな人がいたりするわけでありますが、そういった方たちは相当、だんだん減ってきているんですね。

むしろ、結果として何が起きているかというと、前回、日本でも、ある弁護士という資格者の方が結果としてそのお金を持ち逃げしてしまうような事例が紹介されたわけですけれども、こういったことはアメリカでもかなりあったんですね。

結果、カリフォルニア州では、州の弁護士会で、いわゆる主受任者と副受任者みたいな制度をつくろうというので2人受任者制度みたいのをやりましたが、ただ、これもやはり弁護士自体からも不評でありました。というのは、そうなるといわゆる副受託者というのは大体友だちの弁護士とかを頼まなければいけないと思うのですけれども、全部正直に教えてくれればいいわけですが、そうでなくて主たる受託者が逃げてしまうと一気に自分のところに回ってきてしまうということがあって、なかなかおいそれとはいかないということがあります。したがって、非常に厳しいという状況であります。

別途、こういった部門を個人とか個人に近い形で請け負っている弁護士とか弁護士法人においては、保険等をかけて何とかキープしているという形も散見されないわけではありませんが、これは和仁先生が前回若干コメントされておりましたけれども、いわゆるどれぐらいの掛け率で計算すればというのがよくわからないので、保険会社が嫌がってあまり受けていないというのもなきにしもあらずということであります。

したがって、こうなってくるとどうなるかというと、結果的に金融機関でのシェアが上昇してきているということが現状では見られるのかなというふうに思われます。ただ、これは一見、何か単純に、担い手が個人からずっとさらに金融機関に移ったという感じに見えるわけですが、そういった厳密なシェアの取り合いの表が存在するわけではありません。

ではどうなっているかというと、今現在は、包括的な受託形式からやや分散型へという感じになってきているように思います。つまり、共同受託が増加しているというふうに思います。つまり、個人が受託している部分は不動産管理だけにして、やや投機性が高いような金融資産に関しては金融機関が受託をするというような、うまいすみ分けが徐々に進んできているというような感じがいたします。

そして、信託の世界を議論するときに、いわゆる信託ではとか、信託と代理とか委託の違いみたいなことがよく言われるわけですが、ここは、信託業を営んでいるか、業を営んでいないかという受託問題ともリンクするのですけれども、個人で、日本人的に考えると受託者に見えるような業をやっていらっしゃるような方たちも、なかなか信託における受託者という自覚を持っていない方が時々いらっしゃいます。

なぜかといえば、1つ、民事信託契約というものを、あえて「民事信託契約」という言い方をしますが、今度は「財産管理契約」という別の言い方にすると、信託もあれば代理もあれば委託もあるという、契約がごちゃごちゃに織り混ざっているというのが今のアメリカのエステート・プランニングの実態だと思います。

したがって、その中では、ほかの州に友だちの弁護士がいるからその分のやつを受けてあげるよとか言って、ある法律事務所における弁護士の役割がどちらかというと何か日本における弁護士プラス司法書士の役割に、ほかの州とかあちこちにいろいろな財産を持ったりしますので、ある種、登記登録代理人みたいなそういった状態になっているのかなというようなところも見受けられなくはありません。したがって、そういった意味で言うと、やや複雑な状況になっているのではないかというふうに思われます。

最後に、そのような状況を見て、我が国への示唆を考えてみようというふうに思います。

福祉信託の定義に関しては司法書士会のほうからも今発表があったわけでありますが、実際に民事信託ということをアメリカで考えてみると、これは比較的所得の高い層向けが主流を占めていますので、どちらかというと、議論としては何か我が国におけるプライベート・バンキングの話に少し類似しているのかなというような感じを受けます。

そして、実際その中で、今「比較的所得の高い層」というふうに言いましたが、現在金融機関間のこういった金融資産の管理に関しては比較的シェア争いが激しくなっておりまして、そういった意味で言うと、いわゆる財産管理口座みたいなものがかつては本当に比較的所得の高い方だけだったのですけれども、今現在は、中の上の所得層とまで言い切るかどうかはちょっと、アメリカの所得者層の分け方というのは難しいのでありますけれども、ややそこに近い層まで大分広がってきているかなというような状態になってきています。

しかし、ではそれだけたくさんのお客さんが来たのだから、金融機関はハッピーなんですねというと、先ほど信託協会の方からもいろいろなご提案はあったものの、あまり所得が低いほうまで行ってしまうとやはりコスト高になってきてしまって、金融機関としてはなかなか受けにくいという状況が発生してきているということは事実でありまして、ここは民事信託全体のマジョリティから言うと恐らく、中の上の所得層より下の層まではなかなか難しいのではないかというふうに思われます。

では、既存のそういう民事信託の実態があるとすれば、我が国におけるプライベート・バンクの世界で、もちろんメガバンクさんもそうですが、昨今外資系が熱心にそこの分野をねらってきているというのは何となくわからないでもないというふうに思います。

では、福祉信託ということを考えていくと、さらにそこで考えられるのは、では、いわゆる既存の福祉という分野というのがかなりスペシャルリストが必要であるというふうに考えるなら、だれがスペシャリストなのかということを1つ考えておく必要性があろうかというふうに思います。

前回の弁護士会からの発表、そして今回の司法書士会からの発表、2つの団体からの発表を考えてみると、いわゆる1つの統一されたテーマがあるのは、これは遺言のときにおける執行時の問題が1つのテーマになっているような感じがいたします。

そこで考えていくならば、確かに有資格者である弁護士の方、司法書士の方、個人個人がお受けになるというのは確かになかなか大変であろうというふうに思われますが、ただ、これが公益法人なりNPO法人なりをつくって行うという形は、ある程度形としては該当するのではないかというふうに思われます。大変意味がある形ではないかというふうに、私としては思います。

ただ、そこの中でも、金銭の部分とかそこにやや投機性が入ってきた場合においては、やはりプロである金融機関のところに任せて、共同受託のような形をつくったりさまざまで、やや込み入った形になるかもしれませんが、そういった2つの柱をつくってみるのも肝要な形なのではないかというふうに思われます。

もっとも、弁護士の方も司法書士の方も、昨今はかなりスペシャリスト状態になっているというふうにもお聞きしていまして、例えば遺言のケースなんかにおいてはとか、例えば倒産が生むケースとかもそうですけれども、最近は倒産弁護士とか、遺言弁護士とか、中には離婚弁護士という方もいらっしゃるようですが、そういったさまざまに分けられているという状況である以上、一人一人が集まるよりはそういったNPO法人で集団化して、そういった形で公益法人なりNPO法人という形で参入を頂くというのは、これはこれで、プロ集団に一番的確な処理をしてもらえるという意味でいいのではないかというふうに思います。

これは、日本弁護士連合会における「遺言PT」で考えられているような公益法人とか、あそこはNPO法人になるのかもしれませんが、そういった形の議論も全くそうでありますし、今回、大貫参考人のほうからご発表頂いた司法書士会の考え方も、ある意味で言うとそこにつながっているのではないかというふうに思われます。

さて、とは言いながら、そこは資格の話であるとして、では規制の枠組みをどういうふうに考えるのかということを述べさせて頂きますと、では有資格者ならいいのかという議論がありまして、前回も各委員の方々からもご意見があったわけですが、やはり一定の財産的基盤がないと責任の行きどころがありませんので、ここは何とかしなければいけない。

そして、NPO法人とか公益法人とかあっても、なぜ公益法人改革が必要だったかということになるわけですから、そこの中においては当然のことながらガバナンスとか内部管理体制をきちっと整えておくということが必要ですし、リンクして言うと、継続的な営業体制の確保は当然必要であるということになろうかというふうに思われます。

そして、さらに言いますと、昨今アメリカの需要でもあります共同受託の場合ですが、ここでは共同受託をすると、ものすごく契約書が厚くなるんですね。つまり、どこからどこまでがだれの責任ということを明確化しなければいけませんから、そこの責任関係の明確化ということが必要になってこようというふうに思われます。

最後に、福祉信託をどのように実現するのかというお話を申し上げますと、よく我が国の公益信託の考え方とリンクさせればとかいろいろあるわけで、我が国の公益信託の制度がこれからどういう形で変化していくのかということが1つ注目されるわけですが、アメリカのスペシャル・ニーズ・トラストみたいなものを1つのアメリカの福祉型信託と置くならば、そこにはやはり大きな違いがあるのではないかというふうに思われます。

そうなってくると、必ずしも公益信託だけではなくて新しい信託タイプのようなものがあって、しかも民間の企業もそれが請け負えるような形がそこに存在してもいいような感じがいたします。これは、コストの便をどういう形でとらえていくのか、そしてどこの層までを顧客として受け入れられるのかという、いわゆるビジネスモデルの問題だというふうに思われます。

信託業法の世界においても、実を言うと、NPOもどきのような形というのはもう議論されているはずですよね。それは何かといったら、承認TLOがそこに該当していたはずです。

ただし、承認TLOが参入してこなくてよかったなと私は内心思っていて、というのはちょっと暴言になるかもしれませんが、日本の承認TLOってほとんど赤字でありまして、中でガバナンスが効いているかというと結構疑問な団体も幾つかあるということが実態的にはありましたので、そこは異論があるわけですが、ただ、そういったガバナンスの内部管理体制をきちっと講じていけば、民間であれ、NPO法人であれ、もう少しいろいろなところからの参入も期待できて、もう少し、司法書士会のほうでおっしゃっていらっしゃるようないわゆる福祉信託の概念にも該当する部分もカバーできるようなエンティティの参入も期待できるのではないか、というふうに思った次第であります。

以上、私のほうからの発表を終わらせて頂きます。ご清聴ありがとうございました。

○岩原部会長

どうもありがとうございます。

それでは、ただいまの有識者の皆様からのヒアリング等を踏まえまして、ご自由にご発言を頂きたいと存じます。ご質問、ご意見、いかがでございましょうか。

吉野委員、どうぞ。

○吉野委員

担い手を広げるということはいいと思うのですけれども、それに対して検査とか監督がきちんとできるかというそのバランスではないかと思うのですが、日本司法書士連合会の場合に、しっかりとそういう成年後見制度が適用されているかどうか。

多分、善良な方というのが多いと思うのですけれども、それに対してどういう形でチェック体制が今行われていらっしゃるのかどうか、それを、もし具体的な例があれば教えていただけばと思います。

○岩原部会長

大貫さん、いかがでしょうか。

○大貫参考人

今私たちは成年後見業務をやっているわけですけれども、これは2つの面で体制を取っております。

理事会を中心にいろいろな意見を求めているということが1つあります。

それから、第三者、これは「業務審査委員」と呼んでおりますけれども、弁護士とか、あるいは学者とかいろいろな方に入ってもらって、私たちの業務についてのいろいろな見解を述べてもらう。そこでチェックを行っております。

他方、先ほど申したように、今継続で扱っているのが 5,000件やっておりますけれども、会員に対して定期的に本部のほうに報告書を出してもらう。それで、私たちはその会員がきちんとした事務をやっているかどうかについてのチェックを行っております。

もし何か問題があれば、そこで是正を求める。そういった形で成年後見業務を行っておりまして、依頼者もしくは障害者に、いろいろな損害が及ばないような仕組みを採用しております。以上です。

○岩原部会長

よろしいですか、吉野委員。

○吉野委員

ということは、会員の方からのさまざまな情報をもとにチェックをされていると、そういうことなんですね。司法書士の方からの情報のみでやられていると。

○大貫参考人

それから、広くいろいろなクレームといいますか苦情等もありますけれども、そういったことにつきまして、私たちはそれを聞きまして、もし仮に問題があればその会員についていろいろな報告を求めるというようなことを行っております。

今度新しく「執務規則」というものを改定いたしまして、もし何か問題等があれば、その調査権等に基づき、調査を行っております。

今年の定時総会において公益法人としましてある会員を除名処分にいたしました。注意とかいろいろな指導をしましたけれども、それでも改善されない場合につきましては社会的責任を果たすという意味でもかなり思い切ったそういった監督もやっているところであります。

○岩原部会長

新井参考人、どうぞ。

○新井参考人

筑波大学の新井です。質問が2つと、コメントが1つ、できるだけ手短に申し上げます。

まず、大貫さんに対する質問ですが、公益信託成年後見助成基金を福祉型信託にも活用するという考え方、これは私も非常に評価したいと思います。

というのは、成年後見人のなり手がない方というのは随分いらっしゃるんですね。日本の場合、80%が親族が後見人でありますけれども、親族もいない、しかも所得がないという方は、後見人のなり手がないのですが、そういう場合は職業後見人が成年後見人になって、この公益信託からその報酬を出すということで非常に意味があると思うんですね。

例えばドイツとかフランスの場合は「国家後見」というのがあって、最終的には国が後見人になるんですね。イギリスとかアメリカの場合は「パブリック・ガーディアン」という公務員がいるのですが、日本は国家後見もなければパブリック・ガーディアンもない。そういう中で、この公益信託というのはそういう機能を果たすということで非常に評価できると思っています。

そこで質問ですが、その福祉型信託にこの公益信託を利用するというのは、新たな公益信託をつくって後見と信託の2つをカバーしようとするのか、それとも全く別の信託をつくるのか。別の信託をつくるということで、信託業界にも特別な配慮をされているというような趣旨、ちょっとこれは余計なことですけれども、既存のものでやるのか、新たにつくるのかというのが質問の1つです。

それから、もう1つは、リーガルサポート、今公益法人がありますが、お話をお伺いしていますと、もう1つ公益法人をつくるというふうに理解しました。そうすると、既存の会員は成年後見業務をやっているわけですが、その会員は、新たにできる公益法人の会員になれるのでしょうか。つまり、利益相反の関係はどうかということ。

この2点をお伺いします。

それから、田川さんと宇波さんに質問ですが、これは特約付き金銭信託についてお話があって、これが受託残高も伸びている、件数も伸びているということで、これは信託銀行にとっても非常にハンドルしやすいもので、私はこれは注目していっていいだろうと思うのですが、不動産についてはこれは扱わないわけですね。

特定贈与信託も、それから公益信託も不動産は扱うことになっているのですが、私の認識では現実には受託していないというケースがほとんどだと思うのです。ついては、特約付き金銭信託について、将来的に不動産について何かするようなことはお考えなのか、それとも一切それは考えず、金銭だけで行くのかということをお聞きしたいと思います。

最後にコメントですけれども、前回と今回お話を聞いておりますと、要するに福祉型信託への参入をどうするかということで、信託銀行も対応すると言っていますし、信託会社のほうも非常に積極的に対応したいと。それから、日弁連の遺言PTもNPO法人をつくるというようなふうに聞いていますし、司法書士会も、日司連のほうも公益法人をもって参入したいということですから、ほとんどが参入したいということですので、その前提として、ぜひ次のステップとして、ではその参入基準はどうする、監督の内容はどうするというようなところへ議論を進めて頂ければと、これはコメントです。

以上です。

○岩原部会長

それでは、最初に大貫さんからお答えいただけますか。

○大貫参考人

公益信託成年後見助成基金につきましては、今の先生のご指摘のとおり、これは成年後見人の報酬を払うというところが主な事業になりまして、ちなみに現在これは1カ月1万、最高で2万ぐらいを払っているわけでありますけれども、これはあくまでも成年後見人に対する報酬を払うということのみに使われております。

したがって、直ちに信託報酬を払えるかというと少し問題があるかと思いますので、これから、この公益信託成年後見助成基金のほうにそういった運用ができないかということのお願いをするつもりでおります。もしこれが無理であれば、やはり新たに公益信託、例えば福祉型信託助成基金とか、そういった名前の公益信託をつくらざるを得ないのではないかというふうに考えております。

それから、リーガルサポートの会員が別の公益法人に入った場合の利益相反行為の問題です。例えば成年後見人が今預かっている財産を信託する場合、つまりこれは居住用不動産であれば、これは家庭裁判所の許可が要りますので、恐らくこれは「信託していいでしょうか」ということで家庭裁判所の許可を取らなければいけない。

居住用財産でなくも、これは本当に信託する必要があるかどうかということで吟味されますので、仮に居住用不動産でなくて、例えば駐車場とかアパート等の場合も、これは信託していいかどうかということを家庭裁判所に聞かなければいけないと思います。でないと、必要でないのに信託しますと、まさに後見人の権限の濫用の問題が発生しますので、この点は慎重になるかと思っております。

そういった形で、これは会員が、新しくできる公益法人にどう係わるかという問題がここでは区別されていくかと思っております。

今のところ、具体的にどういう形の役割分担ができるかということは、まだまだこれから考えていかなければいけないわけでありますけれども、リーガルサポートの会員と新しくできる公益法人の会員とは、やはり分離したほうがいいのかなと、そういうことをイメージしておるところであります。

以上です。

○岩原部会長

それでは、宇波さん。

○宇波参考人

それでは、お答え申し上げます。

先ほどの新井先生からの、特定贈与信託と、それから特約付き金銭信託に不動産ということでございますけれども、私の用意させて頂いた資料の10ページのところに例えば「特定贈与信託における役割」というようなことで書いてございますけれども、ちょっとご覧頂けますでしょうか。10ページの左下のほうでございます。

信託財産の運用は、実は安定した収益の確保を目的として適正に実施するというようなことが定められておりまして、特に障害者の方が亡くなられるまで、例えば毎月定期的に安定した収益を上げていくというようなことを考えたときに、やはりどうしても金銭というようなものが一番安全・確実であるということは実際にあると思います。

ただ、全く私どもも受託していないということではございませんで、当社の場合にはたしか大体 140件、受託があるのですけれども、ごくわずか、数件でございますけれども、不動産と金銭信託を組み入れたケースも、これは特定贈与信託の場合にはございます。

それから、特約付き金銭信託でございますけれども、これも特定贈与信託と同じでございますけれども、先ほど私のほうで、当社の場合には5年以上、25年以内というようなことで設けておりますと申しましたけれども、実際には10年・15年・25年というようなことで、やはり一般的には、自分が亡き後に、例えば障害を持つお子さんとか、あるいは奥様とか、そういった方の生活を確実に保証していくというか、そのための支援をしていくというようなことを考えて特約付き金銭信託をご利用されておりますので、やはりこれは金銭が中心になっていくのかなというふうに思っています。

ただ、将来にわたってこういう形なのかどうなのかというのは、ちょっと私もまだ何とも申し上げられないところでございます。

○岩原部会長

よろしいですか、新井さん。

ほかに、何かございますでしょうか。池尾委員、どうぞ。

○池尾委員

どなたに対する質問というわけでもないのですけれども、ちょっとお話を聞いていて1つ疑問に思った点は、参入を希望される方がたくさんおられる。あるいは、取り組もうとおっしゃる方がたくさんおられるということなのだけれども、それは非常に好ましいように思えるのですが、その結果として、本当にすべてのニーズというか、すべてと言ったら言い過ぎかな、大方の必要性とかニーズが結果として本当にカバーされることになるのだろうかという点は、ちょっと疑問に思ったんですね。

というのは、やはり参入に当たって、例えば今日お話し頂いた司法書士会連合会の場合、公益法人をつくるのだけれども、そのニーズが一番大きくてリスクの少ない管理型信託を中心にして行うということであると、それ以外の部分は直接は対象にならないわけですよね。

そうすると、仮定的な話ですけれども、参入希望者が多くても、全員が例えば管理型信託しかやらないとかいうことになると、ニーズは少ないのだろうけれどもカバーされない部分というのが残ってしまうということになって、本当に担い手が全体として本格的な形になるのだろうかという点を疑問に思ったのですが、これはどなたにお答えして頂くのがいいのか、べつに、部会長に答えて頂いてもいいのかと思いますが。

○岩原部会長

それに関係してですか。では、原委員、どうぞ。

○原委員

重ねての素朴な質問なのですが、いろいろと事例を挙げられているのもあり、私もニーズはあると思うんですね。

ただ、もう一方で、やはりそれほどの収益が見込めないということも書かれていて、ある程度公益的なもの、事業にならざるを得ないというのがあるところに、皆さん全部参入したいとおっしゃっているのはどういう収益構造というのでしょうかね、収益にならなくてもやるということなのか、そのあたりはどのように考えておられるのか、お聞きしたいと思います。

○岩原部会長

大貫さん。

○大貫参考人

例えば不動産管理信託がありますけれども、例えば既存の信託会社、株式会社は、ただただその管理だけのものはそんなに積極的にやっていないと思うんですね。

しかも、例えば 2,000万以下のものについてはなかなか既存の株式会社あるいは信託会社はやらないだろうと思いますので、そういったものについて取り組みたいというふうに考えております。

具体的には、先ほど申しましたように「死後の事務」がありますけれども、例えばお一人から頂くものは 100万とか 200万とか、そのような額を私たちは想定しております。しかし、これがかなりの額に、数になるわけです。

今リーガルサポートが 5,000人をかさむ後見人に就任しておりますけれども、仮に2割の方々から仮に200万の信託を受けた場合、20億円になると思います。しかし、今はそういったことに対応しているところはないわけですよね。ですから、そういった隙間のものにつきまして、私たちはまず第一に考えたいと思っています。

それから、管理型でありますけれども、これは例えば管理だけではなくて、最終的には財産処分とすることを考えておりますので、一定の収益は望めるのではないでしょうか。

以上です。

○岩原部会長

はい。それでは、田川委員、どうぞ。

○田川専門委員

ただいまのお答えになるかどうかはわからないのですが、これはビジネスモデルの問題もありますので業界を代表してというわけにはいかないのですが、みずほ信託銀行の個社についての、この分野についての取り組みの考え方みたいなものをちょっと、お話し申し上げますと、1つは信託銀行の社会的貢献という観点がございます。

企業の存続とかそういうものについて、我々は社会的責任とか社会的貢献、いわゆる「CSR」でございますけれども、これは企業存続の非常に重要な要素と考えております。当社に限らず、みずほグループを挙げてさまざまなCSRの取り組みを実施してきているわけでございますけれども、信託銀行としては、信託の仕組みを用いた信託銀行らしい社会貢献ができないのかという観点から、1つは積極的に取り組んでいきたいというように考えています。

公益信託も、ある意味で言うと非常にそういう重要な要素で、公益信託の信託報酬というのは過大な報酬を取ってはいけないルールになっているわけでございます。ただ結果的には、私企業の経営としてどうか、という面に対しては、それぞれ個々の案件の採算性がどうであっても、最終的にそういう観点は企業としても必要と考えております。

それから、2つ目は、個人、特に高齢者の方々に対する信託銀行のビジネスという観点でございます。信託銀行は貸付信託という主力商品を古い時代から有しておりまして、ご退職後の方々を中心とした非常に年齢の高いお客様からの財産をお預かりしてきたという経緯もございます。

例えば弊社、みずほ信託銀行で資産をお預かりしている個人のお客様について申し上げますと、60歳以上の割合は件数で言うと50%でございます。残高で申し上げますと、なんと70%が60歳以上の方からの資産のお預かりをしている、こういうことでございます。今後、我が国が高齢化社会を迎えるに際して、信託銀行にとりましても、個人のお客様に対するビジネスの拡大というのは重要な経営戦略の1つだというふうに位置づけています。

新井先生からは、前回の本席で高齢者の方に対する商品とかサービスについて、まだまだ取り組みが不足しているのではないかという激励も頂いたわけでございますけれども、私どもも決して十分だとは認識しておりませんで、今後こういったビジネスとしてどうなんだというフィージビリティも含めて引き続き検討したいというふうに考えている、こういうことでございます。

ただ、この点につきましては、各信託銀行、信託会社がそれぞれライバルでございますので、それぞれどういうビジネスモデルでやるのかということについては、知恵を絞り、切磋琢磨していくものだろうと、かように考えております。

ちなみに、先ほど金額の話が出ましたので、具体的に、では当社でどのぐらいの金額のものを扱っているのかということを申し上げますと、例えば先ほど出ました特定贈与信託でございますと、これは税法上の上限がありますので、自ずと上限は絞られるわけですけれども、平均で 2,200万円でございます。

それから、先ほど言いました特約付きの金銭信託で申し上げますと、これは 2,000万以上のお客様についてお預かりをする。例えば資産を分配してこれを年々削っていくという形になれば、ある程度の金額がございませんと年々の支払いもできない、こういうこともございます。そういった観点から 2,000万円と。また、給付が非常に長い、25年までできるというような、そういった観点もございます。

以上でございます。

○岩原部会長

いかがでしょうか。では、今松委員、どうぞ。

○今松専門委員

質問というか、ちょっと感想に近いと思いますけれども、今、田川さんからご説明がありましたように大体1人

2,000万とか 2,000万以上とか、そこと、先ほど杉浦先生がアメリカの場合は特殊な信託というか、スペシャル・ニーズ・トラストですね、こうなると、これはどちらかというとそういうところよりはより低い層というか、そういうところが恐らく対象のように感じたわけです。それと、司法書士会でやっておられるところも、恐らくそこより下というか、場合によるとかなり厳しい方ということになります。

そうすると、そういうふうなところについてビジネスとしてこれが恐らくあまり成り立たないというか、少なくとも今までの株式会社、信託会社等々では成り立たないとすれば、何か新たな形のものが必要だろうと思いますが、その場合、可能性として、杉浦先生とか、あるいはこれは大貫さんの場合もあると思うのですけれども、例えば実際に運用であるとかそういうところは、うまくこの共同受託等々も含めたより新しいタイプの信託が必要だと、そういう感じがするわけですけれども、この点、信託銀行等々ではどのようにお考えになっているのか。

つまり、今の体制でより全体のニーズというものに応えられるのか、それとも、新たな仕組みというのがやはり何らか、その場合には財産的な問題等々がこれは必要だろうと思うのですけれども、そこについてできれば宇波さんに、ちょっと質問になりましたが、考え方をちょっと聞かせてもらえればと思います。

○岩原部会長

では、宇波さん、お願いします。

○宇波参考人

それでは、お答え申します。今お話がございましたとおり、信託銀行の取り組みの姿勢の部分でございますけれども、まさに先ほど田川のほうからもお話をさせて頂きましたけれども、信託銀行というのはもともと財産管理の、物の管理ということでは、正直言ってノウハウはしかるべきレベルまであるのだと思います。

それに対して、例えば受益者の方の個人的な生活の部分の配慮とか、まさに身上監護というのですか、そういった部分については、我々もやはり足りない部分がというか、現実に私どものビジネスの構え方が、正直言ってそういったことをきちっとやっていくような体制はなかなか取りきれていないというのが事実だと思います。

その中で、やはり私どもの足らざる部分というのがあるだろうということで、こういった福祉型の信託の担い手ということは、やはり増やしていってしかるべきではないかというふうに申し上げているところです。

ただ、気になるのは、この福祉型の信託というのは非常に概念が広いのですけれども、やはりお客様の大切な財産をお預かりする部分でございますので、先ほど皆さんからもありましたけれども、業務の安定性とか継続性とか、あるいは規制のあり方とか、そういったところというのはきちっと議論をしていかないといけないのではないだろうかと。

具体的に、ではどこまでというのはちょっと私どもも今すぐに申し上げられないところがあるのでございますけれども、やはりそういう方向で検討をしていかないといけないというのは常に思っているところでございます。

ちょっとお答えになっておりませんけれども。

○岩原部会長

今までの議論に係わるところ、いかがでしょうか。

果たして、今日ご報告頂いたような状況のもとで十分なニーズに応えていけるのかということが特に問われて、今までのような体制で十分かということが問われているかと思うのですが、専門家の新井先生とか杉浦さん、何かコメントでも頂けたらと思いますが。

新井先生、お願いします。

○新井参考人

では、まず私から。あと、杉浦先生、お願いします。

複数の先生から、たくさんの方がこの分野に参入したがっているようだという発言がありましたけれども、私はそうはとらえていなくて、参入者はむしろ少ないと見ています。ニーズはあるのだと思います。潜在的なニーズはすごくあるのだけれども、参入者は極めて限定されている。金融庁はうまくアレンジしてこういう場を設けて参入したい方を呼んできているので、ここで聞くと何か参入者が多いような印象を受けるのですが、ここに呼ばれないところには参入のニーズがないんですね。

ですから、政策として大事なことは、そのニーズに応える前に、この育て方、それがすごく重要だというふうに私はむしろ思っています。ですから、うまくいくように、いろいろな仕組みを慎重にこれから構築しなければいけないというふうに思っています。

○岩原部会長

その場合、重要なことはどのようなことですか、そういう構築していく上で。

○新井参考人

まず、担い手なんですけれども、前回も申し上げたのですけれども、1つはやはりこれは法人にすべきだというふうに思います。そして、やはり金融庁の監督下に置くべきだというふうに思います。

しかし、その身上監護の部分をどうするかというところが非常に重要で、公益信託なりNPOなり、そこのところに置くのもちゃんと入れる。ただし、そうなってくると、では金融庁の監督でそこのところは対応できるのかという問題があるんですね。ですから、ここが一番議論しなければいけないところだというふうに思っています。

○岩原部会長

では、杉浦さん、何か。

○杉浦参考人

今、実を言うとアメリカでも1つ問題になっているのは、変な話ですけれども、いわゆる真ん中が抜けているという議論があるんですね。

つまり、低いところだと、かえってファンデーションとか基金が救ってくれるのだけれどもとか、すごい金持ちはプライベートバンクでやっていけるわけですね。真ん中はどうなんだろうという議論をやるとき、大分下がってきたのだけれども、どうしても出てきてしまうブランクの部分になります。

この話というのは、今「福祉信託」という名前にしているので、諸委員の先生方も何となく「ああ、これは何か年とった人とか貧しい人の話で、私の話じゃないわ」と思ってお聞きになっていらっしゃるような感じがしますが、そうではなくて、実を言うとこの話というのは要するにこれから自分にも発生してくるいわゆる遺言みたいな話ですね、いわゆる家族のつながりみたいなやつとかで、そうなってくると何か変に道徳的になりますが、そういった部分のところを含めたところで、やや家族の関係が希薄化している現状の中で、アメリカの中で信託を使ってそういうところを回避しているという現状がある。死後の紛争も回避しているというのがあったりするわけです。

時々誤ったやり方があって、何かペット信託みたいのが前に目的信託で議論されましたけれども、ペット信託というのはたくさん使われていますというような説明がどこかにあったような気がしますが、それは嘘で、あまり使われていないのですけれども、要するにペット信託までやらなければいけない状況のアメリカという姿もあるという。

というのは、要するに子どもとか親とかそんなに会う機会がなくなっていて、もう家族分散状態になっているときに、なんか亡くなる寸前にふっと現れて「はい、お金ちょうだい」という世界があるわけですね。そのときに、「こんな家族にやるのはいやだから、じゃあ、イヌのタロウ君にあげる」と言って渡してしまうという、そういう世界ですから、そうすると、イヌのタロウ君だって10年も20年も30年も生きないわけで、そうすると、そのときにまたイヌのタロウ君の分の財産をどうするかというくだらない問題をやらなければいけないんですね。

ある州でまともにあった話なんですけれども、カメレオンか何かを飼育するというのをつくってしまったら、飼い主が亡くなって翌日にそのカメレオンが死んでしまったというのがあって、では結局何だったんだというのもありましたけれども、要するに、遺言でそのときにちゃんと処理しておかなければいけないことを、その相続業務をあとに先延ばししているだけの話なわけですね。今はそういうとらえ方があるので、各弁護士の先生方も、「ペット信託でちょっと」と言うと、何か非常にみんないやがるというのが現状としてはあるわけです。

ちょっと話が脱線しましたが、そうなると、その中間のところをだれがやるのかとなると、そこは実を言うと担い手があっちにもいないし、では日本も、明らかに必要なはずなんですね、なのだけれども、そこはいないという。

では、そこは要するに信託銀行さんを含めたところの、おめがねにかなったいわゆるそれなりの正直そうな方かというと、必ずしもそうではないかもしれない、となっときに、そこはやはり利益を上げない、上げられないのだけれども、利益が上がらなくても何とかやっていけるという程度の1つの団体みたいなのが必要なのかなと思うと、そこが公益法人だったり、NPOだったりするのかなというのは答えとしては1つあるのかなという気もします。

ただ、新井先生がおっしゃったように、ではそういうのがたくさんあるのかなというと、多分今日のヒアリングまでで尽きてしまうかもしれなくて、そんなにたくさん人がいるかというと、あれで。

ただ、それぞれの団体は、少なくとも株式会社ではないわけですから、そこを考えていくと、ここのところで、担い手の議論のところでもう1回、株式会社だけでなく、その他の法人格なのか、個人まで広げるかは議論があるかと思いますが、そこからさらに広げていって、さらにその分野のところを参入させるということには意味があるというふうに思います。

以上です。

○岩原部会長

どうもありがとうございます。

他に、いかがでしょうか。では、小島委員、その後、翁委員。

○小島委員

前回私、発言したときの関連で、社会福祉法人が今権利擁護事業で高齢者等に対する日常的な金銭管理というのをやっているということなんですけれども、今度新たに生活保護受給前のまさに低所得層の高齢者に対して、リバース・モーゲージを活用して長期生活資金貸付制度というのを今年からスタートすることにしたということで、必ずしも都道府県の社会福祉協議会がすべてどこまでやっているかというのはわからないのですけれども、そういう制度を活用する。

これは、生活保護受給ぎりぎりのところで、それでも資産を持っているということで、一応目安としては 500万以上の土地・住宅等を持っている、資産を持っている人を対象にして、そこから日常的な生活資金を貸し付けるということで、亡くなったときにそれで処分するというような制度がスタートした。それは、まさに低所得者対策ということなので、今、杉浦先生が指摘されたとおりに、それ以上というか、その前のところ、まさに中間層に対するニーズ、これをどう受けとめて、どこがやるかということが一番ポイントなのだろうというふうに思っています。そこをどうするかということであると思います。

○岩原部会長

それでは、翁委員、お願いします。

○翁委員

多分これからどんどん高齢化して、高齢者のシェアが圧倒的に大きくなって、人口動態のピラミッドが逆の形になっていきますので、こういったニーズは本当に大きくなると思いますし、そういう意味では、株式会社だけでなくてNPOや公益法人がこういった信託を担えるようにしていくということが非常に重要だと思うのですが、この福祉型信託と、公益信託の議論というのは、きちんとこれから議論を整理していく必要があるのではないかということが1つです。

あと、先ほど池尾先生もおっしゃったのですけれども、多分、いろいろこれからそういったパイがどんどん大きくなればなるほど、ニーズもいろいろな形で複雑化していくことが予想されると思います。相続の関係の法的な処理とか、不動産の売却とか、あと、その方が例えば寝たきりになって長くいらっしゃる場合に、例えば不動産を持っていらっしゃれば、どういうふうにその不動産で収益を上げながら、生活費、その方の入院費を考えていくかとか、いろいろなニーズが出てくると思うんですね。

ですから、そういう複雑化するニーズに対してきちんと応えられるような体制を整備しなければならないと思います。先ほど、例えば司法書士連合会の方がお話しになったように、多分管理型信託だけでは十分にニーズに応えられないという分野が出てくると思うので、そういう点は、さっき杉浦先生もおっしゃったのですけれども、例えばもっと具体的に専門的なところと共同で行う必要があるし、または非常に高額なものをお持ちの方で、たまたま相続人がいなくて司法書士のところに後見人依頼が来たような場合は、株式会社と連携するとか、そういういろいろなニーズに応えられる形も、考えていかなければならないのではないかなというような感想を持ちました。

具体的に、成年後見人として司法書士連合会員の司法書士の方がなさる場合、すべてを公益法人の管理型の信託で受けとめられるというおつもりなのか、そのあたりはいかがですか。これはちょっと質問なんですけれども。

○岩原部会長

それでは、大貫さん、よろしいでしょうか。

○大貫参考人

私たちも、やはり共同受託ということは検討しております。

つまり、信託財産の規模とか性格によってやはり、私たちはどちらかというと管理型になりますけれども、資産運用の面からすると弱い面があるわけですね。ですから、そういった業務分掌型と申しますか、そういった役割は十分できるかと思っております。

例えば先ほど「死後の事務」ということで、仮に 2,000人の方から 100万、 200万の預託を受けますと、相当高額になるわけですね。そうした場合に、私たちは運用についてはあまり得意ではありませんから、例えば具体的に既存のそういった信託会社と共同して受託する方法が考えられるかと思っています。そういった形で、単に公益法人だけでは限界がありますからできない、いろいろな組み合せがこれから考えられます。

先ほど委員の方から、どうしてこういった例えば収益性のないところに参入するのかといったお話がありましたが、これは、率直に申し上げまして、私たちが成年後見をやっていますと、どうしてもやはり信託が必要という場面にはたくさん出くわすわけなんですね。

ところが、既存の信託会社、株式会社でやっていただけないというところがありまして、私たちは、何とか財産を守ったり、あるいは継続的な管理をする必要を感じる場面がたくさんあるんですね。そのときいつも、ではリーガルサポートがやってあげたいのだけれども、これはリーガルサポートはそういった信託はできないわけですよね。それでいつも困っている。

ですから、私は、やはり後見業務の中で必要性を感じてこういった福祉型信託というものを1つイメージして、そこで公益法人という受け皿をつくることによって、少しでもやはり高齢者・障害者の権利を守れるのではないか、そういったことを考えたわけであります。

○岩原部会長

はい。

○原委員

ここの議論が福祉型信託でスタートしていて、ですから、やはりニーズの中でも非常に切羽詰まったような場面でどうしても何とかしなければいけないというところで、非常に現場に近い司法書士の方などがリーガルサポート・センターなどを核にしてやるみたいなことについては理解しておりまして、それで、ただ、先ほど杉浦先生がおっしゃられたように、福祉型だけに何かすごく限定をしたようなものではなくて、本来であれば日本にも、先ほどみずほ信託銀行の方がおっしゃられたように、60歳以上の方の資産で7割を占めているというようなお話がありましたように、これからの資産管理というところでは、本当はミドルというのでしょうか、が核になる、中央になるような感じがありまして、そうなると、業務としても本当に収益が上がることになるのではないかという印象がありましたけれども、入り口は何か福祉で入っておりますけれども、やはり全体的な民事信託の話で検討をしていって、その中で、福祉型になるような部分をどう整理していくかで検討なさっていったほうがいいのではないかと思います。

ただ、第二部会としては多分もう議論をする場がないということですし、金融庁だけでの検討では終わらないように思うので、何か新たな検討の場が必要ではないかと思います。

○岩原部会長

金丸委員。

○金丸委員

皆さんの意見を聞いておりまして、私は新井先生のおっしゃられた、組織で対応すべきということに賛成でございます。

といいますのは、受益者の多様なニーズとか、あるいは変化に個別対応するためには、物理的に近い人というのがまずは必要だということですね。

一方で、先ほど来お話の出ている収益性であるとかそんなことを考えますと、いずれにしてもサービスや運用とか事務の集中化といいますか、フロントの方を支援するようなバックみたいなものも必要ではないかと思いますし、それから、知識とか経験の共有化というようなものも必要だと思います。かつ、受託者の継続的な健全さの確保等から考えてみても、私は組織で対応するようなサービスではないかなというふうに感じています。その組織がどんな組織であるべきかというのは、いろいろな議論があるところだと思いますが。

あと、その組織に対して、その組織自身の自己規律性と、それからその監督のあり方についてどう考えるのかということなのだろうなというふうに感じて聞いておりました。

以上でございます。

○岩原部会長

どうもありがとうございます。

先ほど翁委員から、公益信託との関係の言及がございましたが、法務省で公益信託法の検討をされておりますが、佐藤さん、もし何かございましたら。

○佐藤法務省民事局参事官

どうもありがとうございます。オブザーバーで参加しております法務省民事局の参事官をしております佐藤と申します。

私のところで、信託法と公益信託法を所管しております。

ご承知のとおり、信託法の改正のときに、公益信託の部分は実質改正をせず、公益信託法となっております。

信託法の国会の審議において、附帯決議で、「公益信託制度については、公益法人と社会的に同様の機能を営むものであることにかんがみ、先行して行われた公益法人制度改革の趣旨を踏まえつつ、公益法人制度と整合性のとれた制度とする観点から、遅滞なく、所要の見直しを行うこと」というふうに附帯決議をされました。ですので、我々も、公益法人制度の改革の趣旨を踏まえて、できるだけ早く、公益信託法制についても改革を考えているところです。

ご承知のとおり、公益法人制度につきましては来年12月から施行されるということで、現在、関係省令等もできてガイドラインを策定中ということで、我々としては、その制度の方向を踏まえましてこちらも改革をやるということで改正ができるかどうか、今、法務省の内部で検討をしております。

法制審の信託法部会につきましては、公益信託の部分につきましては部会がまだ残っておりまして、これをいつ再開するかどうかということが問題になるのですが、ちょっと現段階では、いつ再開するかどうかというのは未定なんですが、我々としてはできるだけ早くに再開したいというふうに考えております。

その際に、公益信託が、先ほどみずほ信託銀行のほうからもご紹介がありましたけれども、公益信託制度というのは、ご承知のとおりあまり活用されていないということでありますので、公益信託ができるだけ広範に利用されるように、使い勝手がよくなるようにいろいろ検討しておりまして、現在は助成型の信託ばかりなんですが、これについて、ほかに事業型信託ですね、信託財産を運用する、それについて、そういう制度を導入すべきかどうかということも論点の1つとなっています。

これとの関連で、その事業を行うにふさわしい受託者として、現在はほとんどが信託銀行が受託者となっているのですが、それ以外の法人、例えばNPO法人でありますとか公益法人も受託者となることができるようにすべきではないか、こういうふうなご意見もありますので、公益信託制度を検討する上では、受託者の範囲を広げるべきではないかという意見が出ることもあるとは思っております。

ですので、現段階では、検討して、できるだけ早期に信託法部会を再開したいというふうに考えている段階でございます。

○岩原部会長

どうもありがとうございます。

まだまだご意見があるかと思いますが、本日はもうそろそろ時間でもございますので、これまで数回にわたり、平成16年に全面改正されました信託業法についてご議論を頂いてきましたが、ここで私なりの議論の整理をさせて頂きたいと思います。

平成16年に信託業法が全面改正され、その際、附則におきまして、法律の施行の状況について検討し、必要があると認めるときにはその結果について所要の措置を講ずることとされておりました。そして、10月24日の当部会におきまして施行状況についてのご議論を頂きましたが、特段の問題点のご指摘はなかったと理解しております。

一方、改正時と、昨年の信託法制定時の附帯決議におきましては、福祉型の信託について、その担い手として株式会社以外の信託業への参入の取り扱いを含め、幅広く検討することとされておりました。

この福祉型の信託の議論につきましては、11月29日及び本日の当部会において、実務的な観点や法的な観点等からさまざまなご意見を頂いたところでございます。

今後、高齢化の一層の進展が予想される中で、財産管理、資産承継のための仕組みとして、信託制度の重要性が増していくものと思われます。そうした中、今般の福祉型信託の議論は、家族や友人等が受託者となるいわゆる民事信託として想定されていた分野に、一定の報酬を得て反復継続して受託者となる者が参入した場合、どのような規律が適用されるべきかという議論であったと思います。

今回議論していますような信託分野は、大量、定形的対応が困難であり、利潤を上げることが難しいものと考えられます。したがって、一定の事業規模を確保することで利潤を上げることが想定されている、従来の信託銀行、信託会社が想定する信託業務とは異なる特徴を有するものと思われます。こうした特徴は、公益信託にも共通するところであります。

そして、この公益信託のあり方については、今後、公益信託制度の見直しが予定されているところであります。

以上を踏まえますと、信託業の担い手の問題につきましては、今回いただきましたさまざまなご意見を踏まえつつ、公益信託制度の見直しの動向を見守り、これと平仄を合わせて慎重に議論する必要があると考えられます。

今後の方向性につきましては、これまでに頂きましたご意見、問題点を事務局のほうで整理して頂きまして、引き続き検討を行っていきたいと存じております。

以上、私の現時点での所感を申し上げさせて頂きました。

なお、この後、事務局の方と私とで記者会見を行いまして、本日の会議の模様等につきましては簡単にご紹介させて頂くことにしたいと思います。

それでは、事務局からご連絡がございましたらよろしくお願いします。

○遠藤信用制度参事官

事務局におきましては、ただいま部会長に考え方の整理という形でご発言いただきましたその方向に従いまして、これまでの議論を整理し、年明け以降にお示ししたいというふうに考えております。

次回、第二部会の日程につきましては、部会長ともご相談の上、別途事務局から正式にご連絡差し上げたいと思いますので、何とぞよろしくお願いいたします。

以上でございます。

○岩原部会長

どうもありがとうございました。

それでは、以上をもちまして本日の会合を終了させて頂きます。

どうも長時間、熱心なご討議、ありがとうございました。

以上

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