金融審議会「協同組織金融機関のあり方に関するワーキング・グループ」(第2回)議事録

日時:平成20年4月18日(金曜日) 16時00分~18時03分

場所:中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室

○神田WG座長

それでは、予定の時間になりましたので始めさせて頂きます。協同組織金融機関のあり方に関するワーキング・グループの第2回目の会合になります。皆様方には、いつものことですが、ご多忙のところをご参加頂きまして大変ありがとうございます。今日はまた、天候が悪い中をおいで頂きましてありがとうございます。

審議に先立ちまして、当ワーキング・グループのオブザーバーに異動がありましたので、ご紹介させて頂きます。厚生労働省の坪田労働金庫業務室長でございます。

○坪田厚生労働省労働金庫業務室長

坪田です。よろしくお願いいたします。

○神田WG座長

どうぞよろしくお願いいたします。

また、本日は村田委員がご欠席と伺っております。

それでは、早速、本日の議事に移らせて頂きます。本日から本格的な勉強をさせて頂きますので、なかなか大変かと思いますけれども、よろしくお願いいたします。

そこで、まず本日は、諸外国における協同組織金融機関の制度につきまして、有識者の方々からご説明、ご教示を頂き、これを踏まえての議論を深めたいと思います。

本日は、米国、欧州、それぞれにおける協同組織金融機関の制度について研究をしておられ、知見を有していらっしゃいますお二方にご参加頂いております。茨城大学の准教授の内田さんです。足元の悪い中、どうもありがとうございます。

○内田参考人

内田でございます。よろしくお願いいたします。

○神田WG座長

もうお一方は拓殖大学准教授の山村さんです。

○山村参考人

よろしくお願いいたします。

○神田WG座長

どうもありがとうございます。

それでは、お二人にお話を伺う前に、そういう意味では、議事に先立ちましてということになるのですけれども、前回の会合において、委員の方々から若干ご指摘を頂きましたので、それについての説明を事務局からさせて頂きます。よろしくお願いします。

○遠藤信用制度参事官

それでは、まず私のほうから説明させて頂きたいと思います。協金WG2-1という資料でございますけれども、前回、村本委員あるいは今松委員のほうから、協同組織の非営利をどのように考えるのかという問題提起を頂きました。これについては、神田座長のほうから最後のほうでコメント、説明を頂いたところでございますけれども、我々、改めて商法の規定あるいは教科書を当たってみました。それをまとめたのがこの資料でございますけれども、まさに非営利性と言いますか、営利性と言いますか、これについて手がかりは二つありまして、一つは基準1と書きました左側でございますけれども、会社の営利性の概念といったものでございます。もう一つが基準2の商法上の商人の要件にかかるものでございます。

まず、左のほうから説明させて頂きますと、上、真ん中あたりに、旧商法第52条の第2項という条文を載せております。「営利ヲ目的トスル社団ニシテ……会社ト見做ス」といった規定がございました。現在の会社法は、こういった会社の定義規定が置かれておりません。その事由について真ん中の(注)に書いてあるとおりでございますけれども、何にしても旧商法の第52条の第2項の趣旨というのは、今の会社法でも生きているわけでございますが、まさに会社というのは営利を目的とする社団であるといったことでございます。この「営利を目的とする」という、この意味は何かというのが、これは神田先生のご本で見てみますと、上に図で書きましたけれども、対外的に事業を行い、それによって得た利益を構成員に分配することを目的とすることといったことが、まさに営利を目的とする意味でございます。

このご説明を3つのエレメントに分けますと、マル1が対外的に事業を行い、マル2がそれによって得た利益を構成員に分配する、マル3がそういったものを目的とするかといったことでございます。このマル1マル2マル3について、協同組織金融機関のメルクマールと比べてみますと、それが左側の真ん中あたりに書いてありますけれども、まず、対外的に事業を行うということに関しては、これはご案内のように協同組織については、まさに協同組織の会員向けに貸し出しを行うということでございますので、員外規制がございますので、マル1のメルクマールには必ずしもそぐわないのではないかということ。それからマル2については、この利益を構成員に分配するというのは、これは程度問題があるかもしれませんけれども、協同組織についておいては配当制限があるということ。それからマル3の目的ということでございますけれども、これは相互扶助目的というのが協同組織でうたわれているといったことでございます。そういったマル1マル2マル3の3つのメルクマールに照らし合わせてみても、協同組織金融機関というのは、営利を目的とする社団とは言えないのではないか、非営利ということになるのではないかと考えられます。

下に点線で大審院判決を載せました。この大審院判決は参考という意味でございますけれども、これは特に、上のマル2に関して、利益を構成員に分配するといったことについての実は判決でございまして、その利益の分配の仕方というのは、利益配当だけではなくて、残余財産を分配するということをもって足りるといった、これは通説でございますけれども、そういったことを裏づけている判決でございます。

もう一つの商法上の商人の要件で右側の図を見て頂きますと、上のほうに商法第4条第1項の規定が引いてあります。商人というのは、「自己の名をもって商行為をすることを業とする者」ということでございます。この「業とする」という説明といたしまして、「営利の目的で同種の行為を、継続的・計画的に行うこと」とされておりまして、ここに出てきます「営利の目的」というのは、上にありますように「収支の差額を利得することを目的とする」といったこととされております。この収支の差額、これも先ほどのように要素別に分解してみますと、収支の差額を利得するということだけを見ますと、これは必ずしも協同組織だからといってこれをやっていないわけでもないとも言えますが、収支の差額を利得することを目的とするといった形になりますと、先ほどと同じように、相互扶助目的が協同組織でございますので、こういった点からもこれは営利とは言えないのではないか、非営利ではないかというふうに考え、解釈できます。

下の最高裁判決については、昭和63年と平成18年のそれぞれ信用金庫・信用組合に関しての引用がある最高裁判決をここに載せておりますけれども、この判決の文章を見て頂きますと、ここでは割とあっさりと、例えば上のほうの昭和63年判決に関しては、文章の下から3行目、「信用金庫の行う業務は営利を目的とするものではないというべきであるから」というふうに書いてありますし、平成18年のほうは、上から1行目から2行目にかけて「信用協同組合は……営利を目的とするものではないというべきである」といった形になっております。

私からの説明は以上です。

○渡邊協同組織金融室長

続きまして、私のほうから資料2-2がございますけれども、3点ご説明させて頂きます。

まず、1つは、村田委員からありました資金力を確保する上で、上位10機関、下位10機関でどれぐらい差があるのかということでございます。資料は3段になっておりますけれども、信用金庫・信用組合の1番上の段につきまして、前回の資料でマクロの数字としてご説明させて頂きました。次の2段目、3段目が、2段目が上位10機関の合計、それから一番下の段が下位10機関の合計ということでございます。この数字を見て頂きますと、上位10機関と下位10機関で、預金量については格差があるということではございますけれども、近年の傾向としては、わずかずつではありますけれども増加してきているということでございます。

続きまして、次のページの員外預金比率の状況とありますけれども、これは家森委員からご指摘があったものでございます。信用金庫につきましては、出典と書いてございますけれども、全国信用金庫統計ということで、これは統計の数字でしか把握できないので、それを載せてございますけれども、19年3月で68.5%ということになってございます。その下の参考で信用組合をつけてございます。こちらにつきましては、全国信用組合決算状況等と、これも業界の統計からとったものでございます。こちらにつきましては、規制がございますので、14.55%というのが直近の19年3月期の数字でございます。括弧につきまして、(注2)で書いてございますけれども、国、地方公共団体、その他営利を目的としない法人等を入れたものということで、とるベースを信用金庫と合わせた形でお示ししてございます。

次のページでございますけれども、協同組織金融機関の破綻要因分析ということで、これも家森先生のほうから、破綻とガバナンスの弱さの関係があるのではないかというご指摘がございました。この資料につきましては、預金保険研究という2005年9月に出されたものでございまして、これは当時の前理事長を座長とするレポートということでございまして、破綻の類型ごとに件数、それから経営に欠陥があるかどうかということについて、当方で数字をまとめてみました。このレポートにつきましては、あくまでも個別の分析については、執筆者の個人的な見解であるということでございます。

これにつきましては、説明させて頂くことは2つございまして、一つは合計の欄で、銀行との比較をしてみますと、銀行で「経営の欠陥あり」というものはトータルで8割近くあって、信金・信組で63%ということで、数字自体は信金・信組のほうが低いということはございますけれども、内容、内訳を見て頂きますと、銀行はすべてが「貸出債権の不良化」ということでございますけれども、信金・信組の場合には「有価証券投資等の失敗」、「不正・不祥事件によるもの」というのがございますので、この点について、ガバナンスについては、やはり銀行とは別の特色があるのではないかということが言えるんじゃないかと思います。

「欠陥があり」というものの反面に「欠陥がない」という分析でございますけれども、これについては、破綻ということなので、全く経営の人々に責任がないと言えるかどうかということはあろうかと思います。この点につきましては、先ほど申し上げましたけれども、このレポートを書いた人の個人的な見解ということなので、それ以上のことは申し上げられないのですが、ただ、個別の説明を読んでいますと、例えば、産炭地域で炭鉱が閉鎖になったとか、あるいは震災などによって貸し出しの不良債権が多くなったとか、そういった事情もあるようでございまして、執筆者の方はそれをもって経営者に責任なしというふうに分析されたのではないかと思われます。

私からは以上でございます。

○神田WG座長

どうもありがとうございました。ただいまのご説明につきまして、もしご質問等ございましたら、短い時間ですけれどもお受けしたいと思います。いかがでしょうか。

どうぞ、村本先生。

○村本委員

非営利のところで、これも十分私も了解したつもりなんですけれども、信用金庫とか信用組合のほうのあれには相互扶助というのはかなり法律にも書かれているのですが、労働金庫とか農協では、確か営利を目的としてその事業を行ってはならないとか、そういう文言が入っているんです。その辺は何か違いがあるんですか。信金・信組と労金、農協とはそういう違いがあるかということだけ。法律の文言に書いてあるかないかというだけのことでしょうか。

○遠藤信用制度参事官

法律の文言に関しては、前回にお示しした資料のとおりですけれども、相互扶助ということに関しては、信金法あるいは中小企業等協同組合法には書かれております。協同組織のメルクマールになった独禁法の第22条には書かれております。

あと、農協や労金は、今、農協法、労金法が手元にないんですけれども、同じような規定が、信金法、信組法と比べてどういう形になっているのかということに関しては、改めて整理させて頂きたいと思います。

○神田WG座長

非常に難しい問題で、きわめるのは後日ということにさせて頂きます。また調査して、ご報告させて頂きます。

吉野先生、どうぞ。

○吉野委員

2つありまして、一つは今の相互扶助というものですけれども、経済学者から考えると、目的関数として何をもって相互扶助と言うのでしょうか。利益の目的というのは、利潤極大化とよく我々は授業で教えるわけですけれども、これは非常に合っているわけですけれども、相互扶助という場合に、少し利益にはマイナスですけれどもお互いにある程度貸すのか、変数として、こういうのが相互扶助ですというのがもう少しわかると、非常にわかりやすい。それが一つなんです。

それから、もう一つは、先ほど信用金庫・信用組合の破綻要因で3つほど分析して頂いたんですけれども、多分この中に入っていると思うんですけれども、私が見るところはもう一つありまして、地域の経済が不振になったために、それで信金・信組の場合にははそこしか貸せませんから、それが大きな金融機関と違う部分があるのではないかと思います。それは貸出債権の不良化の中に入っているかと思いますけれども。

○遠藤信用制度参事官

相互扶助性に関しては、前回、吉野先生はお休みになられてしまったんですけれども、今お配りしている協金WG2-5というのが参考資料でございますけれども、これは前回ご提出した資料を再掲しているわけでございますが、この4ページに、協同組織金融機関の特色の一番上のところにまず協同組織というのが一体何なのかということについて書いているところでございます。

それから、相互扶助性ということについては、10ページのところでございます。これは経済学的分析というよりも、どちらかというと歴史的にどういう認識がされていたのかと、こういった法律ができたときに、相互扶助というものについてどういった議論が行われて、相互扶助性という言葉を言いかえている部分はないかと。あるいは、それについて説明している部分はないかということをいろいろ探ってみたんです。

それについて、一応の我々の勉強の成果を10ページにまとめてあるんですけれども、結論から言うと、相互扶助性というものをブレークダウンしたり、あるいは相互扶助性というものを別の言葉に、「ああ、なるほど、こういうものか」という形で言いかえているものは、あまり見当たらないんです。大変申しわけないんですけれども、そういう意味で、この10ページのところはなかなか腑に落ちないところがあるのかもしれませんが、相互扶助は相互扶助という形で、その言葉として受けとめているということでございまして、恐らくその時々の社会経済情勢、それから歴史を踏まえて、その時代に応じた相互扶助という概念のとらえ方があるのではないかなというふうには思っております。

ですから、あくまで、この制度というのは、相互扶助を目的とした制度ということでございますので、今日における相互扶助性というのが一体何なのかということも、一つの論点としてとらまえて頂いて、ご議論頂ければと思っております。

○渡邊協同組織金融室長

先生のご指摘についてでございますが、この研究のレポートの詳細を読んでまいりますと、貸出債権の不良化につきましては、特定の業種への与信集中ということと、景気低迷、地域経済の低迷等という2種類からなってございますので、先生がおっしゃるとおり、地域がここしかないからということは、ここの貸出債権の不良化という中に含まれてございます。

○神田WG座長

目的関数の点は、ひとつ先生に将来整理して頂く機会をぜひ設けたいと思いますけれども…。難問ぞろいですから。

久保田委員、どうぞ。

○久保田委員

今の信用金庫・信用組合の破綻要因の部分に関連してご教示頂きたいのですが、信用金庫・信用組合は、銀行と比較すると、破綻要因第一位の「貸出債権の不良化」に次ぐ第二の要因である「有価証券投資等の失敗」の割合が銀行に比べるとかなり高い率となっていますね。そこで、信用金庫・信用組合が一体どのような有価証券の投資を行った結果、これだけの破綻リスクを負ったのかについて、簡単にご教示頂ければ幸甚です。

○渡邊協同組織金融室長

ここで幾つか見てわかったのは、当時、プリンストン債で破綻したというのがありました。そういうリスクの高い、それ以外にあるかどうか、ちょっと詳細を見てみないとわからないのですが、そういうリスクの高いものに投資していたということでございました。

○久保田委員

ありがとうございました。

○神田WG座長

今日は先へ進ませて頂きたいのですけれども。これ以上、あまりここで盛り上がると、また後が大変なものですから。申しわけありません。

それでは、また後でまとめてご質問のときにお出し頂ければと思いますので、強引な進行で申しわけありませんけれども、諸外国における協同組織金融機関の制度について、ゲストの方からお話を頂くということにさせて頂きます。なお、今もちょっと触れられましたけれども、資料2-5とある参考資料の中の31ページに、前回の会合でもお配りしておりますけれども、海外の協同組織金融機関についての簡単な整理、現時点での整理がありますので、適宜ご参照頂ければと思います。

それでは、順番といたしまして、まず茨城大学の内田聡先生から、アメリカの協同組織金融機関の制度についてお話を伺いたいと思います。よろしくお願いします。

○内田参考人

それでは、早速始めてまいりたいと思います。本日お話しいたします内容は2ページにありますように、最初に「1.はじめに」とありまして、その後に「2.金融機関」、また「3.ガバナンス」、そして「4.おわり」にとなっております。

それでは、「1.はじめに」でありますが、アメリカ金融システムの全体像を簡単に述べますと、80年代、90年代の規制緩和によりまして、ウォールストリートのマネーセンターバンクが勢力を拡大いたします一方で、小規模なコミュニティバンクが、今なお多く存在して、中小企業金融の一翼を担っております。また、これよりも規模の小さい協同組織で個人向けの貸し出しを行うクレジットユニオンが多く存在しております。

一方で、協同組織金融機関などのあり方については、さまざまな議論もございますが、これについては後ほど触れることにいたしまして、まずは金融機関の種類などを説明させて頂きます。

「2.金融機関」の1)金融機関の全体像であります。07年末ですが、まずマル1商業銀行は合計数が7,282ありまして、合計資産が11兆ドルです。1機関当たりの規模は15億ドル強であります。

マル2貯蓄金融機関は、合計数が1,251で、合計資産1兆8,000億ドル強であります。1機関当たりの規模は15億ドル弱であります。相互会社の組織につきまして、1機関当たりで見ますと、こちらのほうは2億2,000万ドル弱ということになってまいります。

マル3クレジットユニオンについては、合計数が8,396で、合計資産7,700億ドル強、1機関当たりの規模が9,200万ドルであります。

それでは続きまして、2)各種金融機関の仕組みと現状について、お話をいたしますが、資料1もあわせてご参照くださればと思います。

多くの金融機関につきまして、根拠法は連邦と州の両方にあります。どちらを選ぶかは金融機関の自由であります。一般にアメリカでは、州が連邦の下にあるという認識はあまりありませんので、どちらを選ぶか、金融機関の選択は自由でございます。

まず、商業銀行ですが、株式会社組織であります。国法と州法の免許があります。一般に連結総資産10億ドル未満をコミュニティバンクと呼びまして、数で全商業銀行の93.0%、合計資産で11.0%を占めております。

コミュニティバンクの多くは株式を上場しておりません。株主数はさまざまでありますが、少数の株主が多くの株を持っている傾向がございます。

アメリカには事業向け貸し出しを中心とする協同組織金融機関がありませんので、コミュニティバンクは株式会社ではありますけれども、その形態から協同組織性を備えた銀行という見方もあります。

ちなみに次のSコーポ銀行というのは、参考程度でございますが、Sコーポというのは、株主全員の同意によりまして、連邦税法第1章第S節に規定する課税方法を選択した法人です。具体的には株主数や株式の種類は制限されますが、法人所得税のかからない株式会社であります。1958年に一般の事業会社向けに制定されたものです。少し古くなりますが、02年に全法人数の55.4%を占めておりますので、アメリカでの法人形態でもっともポピュラーな形態であります。

96年の法改正で、銀行にもこのSコーポが認められまして、翌年施行されて、07年末には全銀行数の32.3%がSコーポ銀行であります。最大は35億ドル弱です。なお、株式会社の貯蓄金融機関にもこれを適用することができます。

次に、貯蓄金融機関でありますが、以下、業務範囲などの詳細につきましては、資料3をあわせてご覧頂ければと思います。貯蓄貸付組合(SA)と貯蓄銀行(SB)がございます。相互会社組織と株式会社組織があります。連邦法免許と州法免許があります。SAのほうは労働者階級へ住宅建築資金の積み立てと借り入れの手段を提供することから始まりました。SBのほうは零細な貯蓄資金を提供してきましたけれども、現在では両社の差は小さくなっておりまして、ともに住宅ローンを主要業務とする金融機関と言えるかと思います。

以下は相互会社組織について触れてまいります。07年末で数は558ありまして、全貯蓄金融機関数の44.6%を占めております。10年前は数は849で、シェアは47.7%であります。総資産10億ドル以上は22ございまして、最大は53.9億ドルです。10年前は同様に21で、最大は73.1億ドルでございます。ただ、この97年の最大のものは株式会社へ転換いたしました。株式会社への転換数は80年代、90年代がピークでありまして、年間に50から100ぐらいの転換がございましたが、現在は落ちつきまして、10前後ということになっております。

データの関係上から連邦免許について見ていきますが、貯蓄金融機関の合計資産に占める相互会社のそれは、4.0%であります。06年末であります。その10年前は9.1%でありますので、数のほうでは貯蓄金融機関自体が減ってきている中で、相互会社のシェアはあまり変わっていなかったのに対し、資産額のシェアでは、こちらにありますように、約半分になっているということであります。

業務範囲につきましては、80年代前半の規制緩和によりまして、現在は基本的に商業銀行と同じであります。しかしながら、実態としては、その成り立ちから、貸し出しでは住宅ローンが中心であります。会員資格は預金者でして、預金者になれるものの範囲に制限はございません。また、税制優遇はありません。

次に、クレジットユニオンですが、こちらのほうは資料2もあわせてご参照頂ければと思います。こちらは協同組合組織でありまして、連邦法免許と州法免許がございます。組合数は07年末に8,396で、10年前と比べますと減少傾向にありますが、組合数は約8,900万人から増加傾向にあります。合計資産は、同7,800億ドル弱でありまして、10年前と比べると倍程度になっております。資産成長の過程につきましては、資料1の右から2列目に年ごとに書かれておりますので、ご参照くださればと思います。

総資産10億ドル以上は、資料2にありますように、127ございます。行数シェアでいきますと、1.51%ですが、資産額シェアで見ると、40.01%を占めています。最大のクレジットユニオンは330億ドルの資産を持ち、組合員数は300万人に及びます。

一方で、数ではありますけれども、85%以上のクレジットユニオンが1億ドル以下のクレジットユニオンであります。

また、銀行などへの転換は年間数件程度であります。

クレジットユニオンは、法律上、組合員の倹約を奨励し、生産的な目的のために与信を提供することを目的に設立される協同組織金融機関でありまして、消費者等の相互扶助目的とまでは法定されておりません。設立するには、共通の絆(コモンボンド)に基づいている必要があります。

類型としては35種類の類型がありますけれども、主な種類と07年末の種類別組合数の分布を見てまいりますと、勤務先などの職域は35.3%、業界団体などの団体は9.1%、複数の職域等が一つのグループになった複合が30.7%、4番目の地域が22.3%であります。87年でちょっと古いのですけれども、当時、複合という種類はございませんでしたので、職域が80%、団体が16%、地域が4%でありましたので、もちろん複合が増えてきたわけでありますけれども、地域もかなり増えているということがご理解頂けるかと思います。

組合員は自己資本への出資ではなく、預金(シェア)をすることになります。法人税は免除されております。

業務範囲の制限がございます。実態といたしましては、貸し出しでは、自動車担保ローンがこれまで中心でありましたが、近年住宅ローンも増えてまいりまして、この2つが柱となっております。地域の制限などはございませんが、コモンボンドのとり方で地域がおのずと確定してくる側面はあるかと思います。98年の法改正で、コモンボンドの緩和――すなわち複合の追認と業務範囲の緩和――一定条件下での組合員向け事業向け貸し出しが容認されました。これは80年代以降の金融危機に対して、当局がクレジットユニオンの合併によって対応してまいりましたが、コモンボンドが違うと合併することができませんので、複合という手段を持ち出したということであります。当初は法律の解釈で行ってまいりましたけれども、その後、98年に法律になったということであります。

他の例では、ある地域に職域のクレジットユニオンがあったといたしまして、隣接地域にクレジットユニオンがない、あるいは設立しにくい場合、例えば隣接地区の教会をコモンボンドに加えて、隣接地域の住民にもサービスを提供するというような例もございます。また、1977年制定の地域再投資法(CRA)の対象外であります。

これはご参考でありますが、CRAは銀行などに安全性・健全性に反しない形で、所在地域の金融ニーズにこたえるよう要請するものであります。当初は、レッドライニングと呼ばれる融資を受けづらい低所得地域やマイノリティーへの住宅ローンの促進を目的としていましたが、現在ではその評価は資料7に詳細がございますが、当初の住宅ローン以外にも、貸し出しでは地域開発や中小企業向けを含むことになっております。さらに投資・サービスの各項目で行われて、総合的に判断されます。成績の悪い銀行などには支店開設や金融機関の買収などの申請を認めないというものであります。クレジットユニオンは組合員から組合員に資金を循環させるという組織上の仕組みや性格から、CRAの対象ではありません。

次に「3.ガバナンス」であります。ガバナンスについては、資料3もあわせてご覧頂ければと思います。以下は主に国法、そして連邦法について、貯蓄金融機関については相互会社組織について言及いたします。

まず1)前提といたしまして、業態にもよりますけれども、アメリカでは参入・退出が珍しくございません。また、金融機関の規模が小さいですので、より地域に密着しておりますから、地域のパブリックプレッシャーが一般的に言って強いものと思われます。

2)情報開示、財務でありますけれども、商業銀行と貯蓄金融機関は、FDIC(連邦預金保険公社)のホームページで四半期開示が義務づけられております。クレジットユニオンはNCUA(全国クレジットユニオン管理庁)のホームページで四半期開示が、一部の例外を除き義務づけられております。

3)外部監査につきましては、マル1からマル3、いずれについても資産5億ドル以上の機関については外部監査が必要になっています。資産5億ドル未満でもこれが望ましいとされているようであります。

そして、4)総会・議決権でありますが、商業銀行につきましては、一般の株式会社と同じでございますので、ここでは省略いたします。

2番目に貯蓄金融機関ですが、議決権は預金100ドルにつき1つありまして、1,000が上限となっております。委任投票は可能で、電話や電子的な手段をとって行うこともできます。

次にクレジットユニオンでありますが、議決権は1人1票であります。また、委任投票はできません。理事選挙は次の12ページにある4類型のいずれかによって行う必要があります。候補者はボードのチェアが任命した指名委員会によって指名されるほか、会員によるものも可能であります。また、投票方式は、総会での投開票のほか、電子的方法などによる事前投票、総会での開票も可能であります。4類型については細かいですので、口頭での説明は省かせて頂きます。

次に、5)ボードでありますが、商業銀行の場合は、そして上場企業につきましては、別途、取引所の規制などが課せられますけれども、今回の対象ではありませんので、こちらは省いてまいります。取締役は5人から25人とされ、CEOなどの一、二名以外は社外取締役であるのが普通であります。委員会につきましては、資産5億ドルを超える銀行は、社外取締役からなるaudit committeeが必要となります。auditとcompensationが通常ございます。そのほか、規模などに応じて、以下の委員会などがあり得るということであります。

次に貯蓄金融機関でありますが、理事は5人から15人でありまして、会員から選出されます。CEOなどの一、二名の理事兼任が普通であります。また、president and CEOがチェアである場合も珍しくはありません。委員会は、executive committeeなどを設けることができます。

次はクレジットユニオンであります。こちらについては、資料4と資料5もご参照くださればと思います。理事につきましては、5人以上の奇数となっております。組合員から選出されます。ボランティアであります。業務執行をCEOなどに委任することもできますが、CEOなどは、意思決定機関である理事会構成員ではありません。小規模なクレジットユニオンでは、理事が業務を執行する場合もないことはないので、ちょっと表現がなじみにくいかもしれませんが、こういう言い方になります。

また、CEOなどを理事にすることは可能ですけれども、通常はしておりません。CEOを理事にする場合でも、チェアになることはできません。また、理事の実際のところでありますが、例えば、コモンボンドが地域のような場合は、金融関係者、弁護士、会社経営者、地域代表などのような方がなっております。また、職域であれば、当該企業のこれに相当する仕事をしている方が理事についているというようであります。理事の研修プログラムなどが協会などにございます。

委員会につきましては、理事以外の組合員から選出される3人から5人の委員によるsupervisory committeeが必要であります。会計監査が重要な仕事であります。委員会独自に公認会計士を雇うことができます。任意でありますけれども、credit committeeがある場合が多く、この委員会はローンオフィサーを任命して、業務執行を委任することができます。ほかにexecutiveなどの、以下の委員会があり得ます。

次に6)系統上部機関の機能です。こちらのほうは資料3の2枚目の下をご覧頂ければと存じます。資料3の2枚目の下でございます。傘下金融機関の営業支援機能、そして信用確保機能、流動性供給機能も含みますが、これについては貯蓄金融機関の固有の組織はございません。また、クレジットユニオンについては、資料6の上から4列目をご覧頂ければと思います。

営業支援機能としては、全米レベルのU.S.セントラル・クレジット・ユニオンと州レベルのコーポレート・クレジット・ユニオンがございます。FedWire(FRBが運営する決済ネットワーク)に加盟し、組合間の資金過不足を調整しております。

次は同じ資料の一番上の列でありますけれども、信用確保機能(流動性供給機能を含む)についてはございませんが、ただし、組合員の任意出資で運営されるNCUA内のセントラル・リクィディ・ファシリティが流動性供給機能を提供しております。

ご参考ですが、クレジットユニオンについては、監督・検査というものは、基本的に当局のNCUAにあります。ちょっと雑駁でありますけれども調べてみますと、NCUAは約1,000人ぐらいの人員がおりまして、その半分は検査官であります。1検査官当たりのクレジットユニオン数を計算しますと、12ぐらいになります。同じことをFDICでやりますと、3程度になりますので、クレジットユニオンと比べて4倍程度の差がありますけれども、一番最初に金融機関の全体像で示しましたように、1金融機関当たりの規模が大分違いますので、こういった点を考慮すれば、数の上ではありますけれども、銀行並みの検査体制というのが、クレジットユニオンのNCUAにあると言えるかもしれません。この系統については、経営支援として、個々のクレジットユニオンから要請があるようなものを系統でバックアップしているというような印象を受けております。

最後に、「4.おわりに」でありますが、メインストリートvs.メインストリートと書きましたが、金融危機に対する1980年代、1990年代の対応を規制緩和を行ってきましたが、これが業態のあり方を大きく変えてまいりました。あるいは、変えざるを得なかったということだと思います。貯蓄金融機関では、株式会社化が進み、銀行業務との同質化などから、相互会社などは縮小してまいりました。

一方で、クレジットユニオンはむしろ勢力を拡大しておりまして、その中でも、伝統的な小規模クレジットユニオンと大規模なクレジットユニオンという二極化が生じております。コミュニティバンクと地域や業務の面で競合が生じ得ますので、税制優遇に対する非難が強くなってまいりまして、州レベルでの法改正をもくろむ動きも見られております。これに対して、クレジットユニオンの中には連邦法のクレジットユニオンに転換するものもあると聞いております。これに対して、クレジットユニオンは、例えばSコーポ銀行について、株主優遇の仕組みである、あるいは課税の損失が起きているといった批判を展開しております。

しかしながら、これらは大局的に見ますと、ウォールストリートvs.メインストリートの構図の一部と理解することもできます。例えば、Sコーポ銀行の容認は、政治的な妥協の産物でもありますが、州内外の支店設置規制が緩和される中で、我が国のような事業向け貸し出しを行う協同組織金融機関を持たないシステムにおいて、事業向け貸し出しでの地域密着を継続するための仕組みの組み換えが行われたという理解もできるかと思います。

また、市場原理が強く働くと言われるアメリカでも、数の上ではありますが、50%以上が協同組織金融機関でありまして、コミュニティバンクをこれに加えれば、90%以上が協同組織性を持った金融機関という見方もできます。

一方で、メインストリート以外からも、クレジットユニオンの大規模化に伴って、そのあり方に議論があることも事実です。これに関連しまして、あくまでもご参考ではありますが、先月末に、アメリカの財務省から公表されました金融行政の包括的改革案であるBlueprintについて、関連する部分を補足したいと思います。

いろいろな項目がございますが、長期構想の中で、FIDI Charterというものを提案しております。これは既存の国法銀行、連邦貯蓄金融機関、連邦クレジットユニオンの免許を統一化しようとするものであります。連邦預金保険に加盟する場合は、この免許を取ることが求められてきます。株式・相互・協同などのすべての組織に適用されることになりますが、違う言い方をすれば、相互や協同という枠組み自体は維持されるというふうになってまいります。

また、この免許にはコミュニティーステータスというオプションがありまして、幾つかの要件のもとに法人税が免除されるという金融機関の形態がとり得ます。その要件というのは、資産規模の制限が含まれ、このほか、営業地域の制限、また、メンバーシップの厳格化と言いますか、意味のあるような形での制限、そして、レンディングホーカステスト、例えば特定の地域に貸し出しがどの程度あるかといったようなことであります。あと、金融サービスが十分に行き渡らないとされる地域で支店を維持するなどが要件とされています。

一方で、Blueprintについては、例えばICBA(アメリカ独立コミュニティバンカーズ協会)などは、これに対してメインストリートを犠牲にして、ウォールストリートを利するものだと、二元銀行制度を終焉に追いやるものだと強く批判しております。

最後になりますけれども、アメリカの金融システムを見る際には、個々のレベルというのも大切なのですが、サブシステムなどの組み合わせ、あるいはその組み合さり方がとても大切で意味を持っておりますので、その点に注意が必要なのではないかと考えます。

以上、私からの報告です。

○神田WG座長

どうも内田先生、ありがとうございました。

ご質問、それからご意見を頂くのは、基本的には次のヨーロッパについてのお話を伺った後でまとめてさせて頂きたいと思いますけれども、ここでどうしても忘れるといけないから質問しておきたいというご質問があれば少しだけお受けしたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

よろしゅうございますでしょうか。内田先生は最後まで今日はご参加頂けるということですので、また後でまとめて議論にも参加頂ければと思います。

どうもありがとうございます。

それでは、続きまして、ヨーロッパの協同組織金融機関の制度につきまして、拓殖大学の山村先生からお話を頂きます。よろしくお願いいたします。

○山村参考人

それでは、ヨーロッパの説明に入りますけれども、まず初めにヨーロッパの協同組織金融機関がどのような地位を持っているのかというところの表を組合員数や顧客数、従業員数、あるいは預貸シェアを見まして、フランス、ドイツ、オランダ、イタリアが非常に充実した協同組織金融機関グループが存在しているということがわかると思います。歴史の教科書で言えば、フランク王国のあたりです。そして、シェアも、そのあたりが何十%というようなシェアを持っていて、地域金融機関と言えば協同組織金融機関を思い浮かべるようなエリアなんだというところを紹介しているわけです。

そこで、その中でも非常に重要なのは、フランス、ドイツ、オランダ、イタリアなのですが、今回はフランス、ドイツ、オランダの順に説明していきたいと思います。

フランスの状況です。フランスの法制度で、どういうふうに協同組織金融機関が営業を行っているかと言いますと、まず金融業務の根拠法というのは、Code Monétaire et financierと呼ばれている貨幣金融法典と訳されている統一の法典がありまして、これに基づいて免許が与えられています。法人の設立、それが株式会社であるか、あるいはその他の会社であるかというのは、それぞれの会社法で設立されているので、協同組合はCode de la Mutualitéと呼ばれている協同組合法で設立、その他の金融機関もそういうふうになっているわけです。ですから、統一の貨幣金融法典というので金融業の免許、信用業の免許がおりているということであります。

そして、三大協同組織といえるのが、クレディ・アグリコル、クレディ・ミュチュアル、バンク・ポピュレールでありまして、ケスデパーニュと呼ばれるものも郵貯系統の民営化によって結構大きいのですけれども、一般的にはこの3つぐらいを挙げていいと思います。

バンク・ポピュレール、あるいはケス・デパーニュというのは、カナダに渡って、クレジットユニオンと呼ばれるものになっているようなものです。一番大きいのはクレディ・アグリコルです。そして、それも世界で4位ぐらい、かなりでかい。これはどういうふうに組織されているのかというところを、ちょっとご紹介したいと思います。

クレディ・アグリコルグループは、全体的な組織構造といたしましては、3層構造で、一番上は株式会社形態をとっている中央金庫であるクレディ・アグリコルS.A.というのがありまして、あるいは地域レベルでいきますと、ケス・レジョナールと呼ばれている39行の地域銀行です。この2つの段階には免許を置いているわけです。

地元のケス・ロカールと呼ばれているのは、金庫とは言っていますけれども、銀行免許は持たないし、支店も持っていないというようなものです。

それで、上層部の2つを見てみると、アグリコルS.A.は株式会社ですから取締役会というのを持っております。そして、地方組織は、基本的には協同組織ですけれども、地元の金庫というのはそれぞれ、基本的には理事会、平均すると13人を持っていて、これが地域の顧客と地域銀行を結びつける生命線として、いわゆる金融サービスのソーシャルワーカーとして活動している人たちなんです。

所有構造は11ページにありますように、やはり地元金庫のほうが地域銀行を所有している形になっていますし、地域銀行のほうがクレディ・アグリコルS.A.を所有している形になって、また、クレディ・アグリコルは地域銀行の持ち分を持っているというような形です。そして、上の2つは支店制のいわゆる銀行として、金融機関の免許が与えられています。

もうちょっと地域銀行のほう、あと地元金庫の状況をイメージしやすくするために、模式図にしたのが次の12ページですけれども、大体平均しますと、地域銀行当たり、たくさんの支店を持っていますけれども、その中にまたたくさんの地元金庫というのが組織されているわけです。それは大体住民が2万3,000人ぐらいいたら顧客が6,000人ぐらいで、その中で2,000人ぐらいは組合員になっていて、その中から13人ぐらいの理事会を選んでいる。これが地域銀行に情報提供を与えたり、預金・証券・保険などの取り次ぎもやるというような活動もしております。支店を維持しているのは地域銀行レベル、つまり地域レベルです。

それで、地域と中央との関係がどうなるのかということなんですけれども、リジョナルバンクは横で契約によって相互に保証しているんです。ですから、どれかがつぶれるようなことになっても、お互い相互に保証しているのでつぶれないのだと。縦の保証というのもありまして、縦は地域銀行が中央機構であるクレディ・アグリコルS.A.も保証していると、法律によって地域銀行を保証しなければならないということになっているので、要するに縦にも横にも保証をとることになって、グループがかなり強固に結びつけられていることになります。そのように十字型の相互保障制度、英語にするとcross guaranteeなので、十字というのはなくてもいいんですけれども、字のごとく十字架型に相互にクロスして保証しているわけです。

そして、1980年の銀行法改正で、その規定によって、貨幣金融法典の中で、グループ内の銀行の流動性と支払い能力を確保する義務を負うとされているので、そこが銀行法上の保証義務なんです。この保証義務があるがゆえに、監督責任もS.A.のほうに委ねられているということで、銀行規制をそれぞれ所属している金融機関に適用し、遵守させる責任、そして、その責任を実行するために検査権限と処分権限を与えられている。それは実質的には、S.A.の中に管理部、経営管理部というのがありまして、検査や処分を実施しています。

この権限の付与の経緯ですけれども、1984年にフランスで、欧州全体の金融システムをユニバーサルバンク化に伴って、協同組織は非常に小さいものがたくさんあったのですが、これを再編成する必要があったということで、協同組合銀行や相互銀行と呼ばれるものは、監督法制上は中央機構によって代表されるということにして、中央機構に系統地域銀行を規制する権限が委任されることになりました。そして、クレディ・アグリコルの場合は、本当はもともとは地元に小さな金庫があったものを、地域のほうに銀行業務を移管して、地元のほうは単に理事会だけの存在というような状況になったようであります。

次のページは同じことを書いてあるので飛ばしまして、それで、ユニバーサルバンク化をしておりますので、基本的には総合金融業務ができるんです。ですから、子会社として保険業をやっていたり、証券業をやっていたりしているわけなので、合理化でIT化を進めて余剰になった人員はそういうところに配置して、多角化戦略を進めています。

それが、ほかの金融機関、商業銀行などと伍していくために非常に重要なのが会員制度だということで、マーケティングという、要するに商売の中に会員制度というのを位置づけて、この中で、何が地域や会員に必要であるのかということを経営層まで持っていって、それでいろいろ戦略を決めているという多角的な戦略をやっているわけです。

次にドイツの状況なんですけれども、ドイツの法制度もやはりユニバーサルバンクのシステムです。ユニバーサルバンクは銀行と証券の兼営ができるというだけではなくて、どの金融機関も同じ一つの免許であるという話、これもまたユニバーサルバンクです。信用制度法と呼ばれる根拠法で、すべての金融機関は免許をもらっています。協同組合銀行も同じです。協同組合の法人を設立するのは協同組合法です。だから、フランスとよく似ています。

ドイツの金融制度は3つの柱というのが有名になっておりまして、後では鼎立という別の訳を使っていますけれども、信用銀行と呼ばれる民間の商業銀行と、州法で設立された貯蓄銀行グループ、ただし免許はやはり信用制度法で免許を受けているので、やっているのは商業としての金融業です。そして、信用協同組合グループの3つが、それぞれの地域で三つどもえの戦いをしている。平等な免許ですし、平等な条件で戦っているわけです。そういう意味では税的優遇もありません。

協同組織金融機関の構造はどうなっているかというと、DZバンクとWGZバンクと呼ばれている中央機関と、州の中央機関のようなものがありますけれども、WGZというのはラインラント・ヴェストファーレン地域だけにしか存在しない上部機関なので、実質的には全ドイツで考えると、中央機関と個別の金庫、個別の協同組合銀行というスタイルになっています。昔は農村系統と都市銀行系統で分かれていたのが、今は一つで、フォルクスバンクが都市系だし、ライファイゼンバンクは農村系なんですけれども、合同しています。

そして、位置づけなんですけれども、個別の機関を見ますと、ドイツ銀行、ヒポフェラインス、コメルツ、ドレスナーとか四大銀行、あるいはバーデン・ヴュルテンブルク州立銀行とか、バイエルン州立銀行といった貯蓄銀行、要するに商業銀行と州立銀行2行の後に伍して、DZバンクが来ていますけれども、ほかの地域のやつを入れていないからこうなっているのであって、それも含めれば、もっと大きなものは一番初めに見たとおりです。

ですから、その全体のシェアを見て見ると、次のページのように、大銀行セクターが全国津々浦々に支店も持っているんですけれども、それが大体18%ぐらいシェアを持っているとすると、貯蓄銀行が一番シェアが大きくて36%、そして信用協同組合も鼎立というにふさわしいぐらい16.6%ぐらいのシェアを持っている。ちなみに、この白抜きの地方銀行・その他銀行セクターというのは、イメージ的には日本の地銀ではなくて、貸金業とか自動車に対する金融であるとか、そういった中期の消費者金融をやっている銀行であるとか、あるいはプライベートバンカーであるとか、あるいは抵当証券を発行する抵当銀行であるとか、そういったものも含めてのことなので、あるいは建築貯蓄など、そういう特殊なものも含めているので、実質的に地域で生活していると、四大銀行、商業銀行と、貯蓄銀行、シュパールカッセと信用協同組合が大体銀行のあるところには存在しているということです。

そのDZバンク、あるいはフォルクス・ライファイゼン銀行は、2層構造を部分的に州によっては3層構造になっているわけですけれども、基本的には中央と地方の2層構造が存在しているわけです。単協の機関はこのように書いてあるとおりで、2名以上の執行役会ということになります。通常、理事会と訳されているかもしれませんし、取締役会と訳されている場合もありますが、執行役会は信用制度法のところで銀行業務をやるときは2名以上となっているので、2名以上になります。そして、3名以上の監査役会を持たなくてはいけないんです。監査役会と申しましても、英語で訳せばスーパーバイザリーボードですので、監督・監視をする機能を持っています。そういうイメージ、監査役という意味ではなくて、監視をする役なんです。

あとは、ここで総代会の制度も説明していますけれども、次、監査役会には所有者の代表が半数が事業所委員会の半数の代表が選出されるということなんですが、細かく言いますと、2,000人以上の職員を持つ株式会社あるいはその他を含め、協同組織もその場合は半数は監査役というのは、労働者が選挙で秘密投票と平等、要するに普通選挙です。普通選挙で選挙をして選んだ者が入ってきます。2,000人以下の場合はと言いますと、500人以上2,000人以下の場合は、3分の1の監査役は労働者の選挙によって選ばれなければいけないということになっています。

信用制度法の規定により、執行役は2名以上、かつ専門的適性を要するということになっていて、あとは専門的適性は類似の種類と規模の金融機関を3年以上経営していることというふうになっています。よくいろいろなレポートを見てみますと、大体経営者はMBAであるとか、博士相当の学位を有していることが珍しくありません。ドイツの大学は仕事をやりながら大学に行くというパートタイム型の大学が中心だったので、基本的には仕事をやりながら、MBA相当の学位や博士の学位を持ってトレーニングを受けているということです。

構造は、次のような2層構造、3層構造になっているということを説明しております。単協の数はフランスなどに比べますと非常に多くなりまして、1,250行ぐらいです。それが地域連合というものも持っていますけれども、これは銀行の機能は持っていない。しかし、監査、検査をする機能は持っておりまして、なぜかというと、この地域連合には預金保険制度のようなものが自前で設置されているわけです。公的な保証制度は非常に額が低うございますので、その他の金融業態に伍して戦っていくために、自前で全額の預金を保証するというシステムをつくる、そのためにそれぞれの地域連合で保証制度に相当するギャランティー連合というのがありまして、それを持っているのが地域連合だから、地域連合としては単協を検査して、ちゃんと状況を把握していかなきゃいけないという利害関係もあるわけです。

ですから、そういうこともありまして、ほかの商業銀行タイプとは違った特例が検査・監督の制度に認められております。その特例その1は、通常の金融機関、商業銀行などでありますと、経営監査士、これは公認会計士のようなものだと考えて、あとは検査官の任務も課せられているのですけれども、これは年末決算の監査結果をBaFin、つまり金融監督機構と連銀に直接送付しなければならないということをやるわけです。それが通常の銀行であればそうなんですが、ただ監査連合に属している協同組織金融機関などは、BaFinが要求したときだけ送付すればよい。ただし、金融機関維持基金、つまり預金保険制度のようなものを持っていますが、その関連で監査を行っているときは、BaFinに言われなくても報告することということになっています。ですから、維持基金を持っているということを念頭に置いて、検査・監査あたりは割と委任的になっているということです。

そして、特例その2は、通常の商業銀行だと、選任した監査士というのを届け出なければいけないし、その監査士に信頼が置けないと当局が判断したときは、別の監査士を任命させるという制度があるんですが、これは監査連合の監査を受ける協同組織金融機関には通用しないということで、あくまでも監査連合は自分でも利害関係があるから、ちゃんとした監査をするであろうということが念頭に置いてあるものと思われますし、そういう意味では、自己責任と自治の原則に配慮しているようにも見えます。そして、これは会員制度を持っていない貯蓄銀行、銀行法上の銀行にも存在しているので、どちらかというと、金融機関が集まって連合をつくって、それで相互検査・相互維持を図っているがゆえに、そのような特例が見受けられるんだ。つまり逆ピラミッド構造というか、そういう系統をつくっているがゆえの問題、そういう特例があるということです。ただ、フランスの場合とか、オランダもそうなんですけれども、中央機関が監督権限、処分権も持っているわけですが、ドイツの場合は、監督・処分権までは持っていないということです。

オランダの例ですが、オランダの金融機関はラボバンク、INGグループ、ABNアムロ銀行が三大金融グループとなっておりまして、そのラボバンクというのが、協同組織金融機関なわけです。かつて、無限責任の会員ということで協同組織性が必要に強かったようですけれども、現在は、無出資で会員になることができると。ただ、準備金の積み立てで資本増強するというだけでは難しいので、ラボバンク会員証書という劣後債を発行して、これで会員から出資金を集めるということもしているんですが、原則無出資で会員になれるということになっております。

主な金融機関の順位で見ていけば、ラボバンクグループというのは結構大きいです。

全体の構造、オランダという土地も、そんなに大きな国土を持っておりませんし、大体イメージ的には、日本の一つの地方をイメージしたものでもいいかと思いますけれども、そこで3層構造をつくるというよりは、やはり2層構造が普通になっています。地元の銀行と全国中央銀行であるラボバンクNL――NLというのはネーデルランドですから、オランダという意味ですが、その2層制になっています。ただ、地元金庫と全国の間に一応、全国を20の地域に分けまして、17の地元銀行につき、1地域ぐらいで存在していて、それぞれ地元銀行から代議員を送って、それで中央代議員総会を構成いたしまして、地元の銀行と中央本部との合意をやっている。

会社機関は、本部、つまりNLのほうは、3層制の統治組織になっています。監査役会、ドイツ的な監督役会という意味の監査役会と取締役会と執行役会があったんですけれども、取締役会を途中に入れなくてもいいだろうということで、12人のドイツ的な監査役会の下に執行役会というイメージであります。監査役会は12名で構成されて、いろいろな委員会もその中で、我々のイメージする取締役会の中の委員会制度と同じように、委員会を持っています。ですから、取締役会の名前が監査役会の名前に変わったぐらいのイメージで、ただし、プレジデントとCEOは監査役とオフィサーズですから、身分が違いますから兼任はできません。監査役というのは、そういう意味では監査役は兼任不可というもがありますから、経営にはタッチしない。

ラボバンクの20の地域代表と183の地方組合と中央機関の図というのは30ページに載せております。

そして、地元銀行の役員制度はどうなっているかと言いますと、役員は、地元のほうには理事と監事というのがあるわけです。これはラボバンク全体の人的なネットワークととらえられております。理事会は経営政策の責任を負うとか、顧客の開発、あるいは対応といったものの決定を会員と顧客のためにやる。監事会というのは、理事会が地元ラボバンクのすなわちステイクホルダーを公平に扱うよう保証する機関として経営を監視するもの。そして、おもしろいのは、総主事――ジェネラルマネジャーを私はこのように訳してみましたけれども、日本で言えば参事という職がありますので、参事に当たるものです。これが執行役社長なんです。オフィサー、マネジャーがいて、ジェネラルマネジャーがいて、これが日常的にはオペレーションに責任を負う、要するに経営者なんです。

ですから、理事・監事はそこまで経営的なプロフェッショナルでなくてもいいわけですから、役員の年齢分布などを見ましても、32ページにありますが、35歳未満の理事・監事というのも数%いますし、55歳以上、45歳以上といった壮年層がメインでもあります。監事になると若干若い人も多いかなという以上です。でも、人数は監事のほうが多いです。しかもまた、女性の比率も、オランダでこのぐらいなのかなという思う気もしますが、それなりに多いわけです。1割ぐらいは女性の監事なり理事です。それから青年役員もいるといった意味では、確かに地域の人的ネットワーク、要するにどこにでもある地域を切り取ったような、性別――性別は女性はそんなにすごく多くないですが、少なくとも年齢においては多様なんですね。

そして、やはり役員はどうやって選ぶんだろうとすると、だれかがリクルートしてきて、推薦候補をやってそれを選出するというタイプになるんでしょうから、そこからすると、経営者の気に入った役員ばかりにならないのかなと疑問もありますけれども、それをもし避けるような力があるとすれば、グループ本部がそんなことではいけませんよ言うか、あるいは競争的に三大銀行で競争していますから顧客市場からそっぽを向かれてはいけませんから、競争的な市場があるか。あるいは、オランダというのは、4つのグループ、カトリックとプロテスタント、あるいは保守と革新ということで2掛ける2で4つのグループがあるらしいんです。それを平等に扱うとすれば、やはりそれなりの口角泡飛ばし議論できるような制度をとっておかないと、そういうような社会的な要因もあって、うまく行うような多様性もあって、機能しているんだろうなというふうに考えます。

しかし、制度的に法律的に、あるいはその他契約によって、そこの検査・監督をやってるんだろう、機能保証をやっているんだろうと申しますと、やはりオランダもややフランス型に近い、中央機関に検査権と監督権が委任されている型の協同組織金融機関なんです。そもそも銀行免許も個別の銀行にではなくて、グループを統括する本部、NLのほうに与えられていて、当局は中央機関を通じて間接的にグループ全体を監督しているということです。

そして、やはり十字型のクロスギャランティー保証制度を持っている。そして、本部の側から、あるいはグループが検査員を派遣しまして、コンプライアンスにかかる四半期報告書というのを作成して、個別の経営がひどい場合には役員を解任する権利も与えられているということです。

そうすると、全体を見ると、3つぐらいの回路があって、経営陣を規律づけているだろうなというのが34ページの三重ループ制御施設です。これはサイバネティックスの考えを応用して、物事が均衡状態にいくという発送で、そうすると、三重のループで、重要なターゲットである地銀の経営陣がコントロールされていく。それは、経営陣のほうから右下にぐるっと回るのは代議員総会とか、グループの中での経営者の中での集まりで全体の中央機関がやはり統制されているので、そこからまた行政規律、検査・監督権限を持っていますから、そこで統制をやっていく。しかも、左のほうに行きますと、指揮・監督を与えて、顧客サービスを提供している、あるいは事務をやっている労働者も、オランダも協同決定法ではありませんが、事業所委員会法というのがあるようでして、従業員評議会というのが各経済主体に設けられております。この中で選ばれて、いろいろ、これはおかしいというようなことがあったら、不正があったら、そういう中間を飛ばして上のほうに相談したりするというように、こういう流れがある。

そして、顧客のほうはサービスを受けているわけですが、これは会員や役員という形で地銀の経営陣をコントロールする。規律づけをしていくという形で、3つぐらいの輪っかがありまして、どっちが弱くなってもどれかは機能するであろうと。そして中央機構には資本市場から資本、市場規律がかかわっているわけですし、監督当局は経営陣などに行政規律を与える権限を持っているというか、そういうところから効いているんだろうということになります。

個別の事例のところで重要なところは、読んだところは飛ばしまして、総合金融機関化しているというのは、ドイツ、フランス同じですね。ヨーロッパの協同組織はおしなべてユニバーサルバンク制度ですので、窓口で保険も売っているし、証券も売っているし、何でも扱っていると。その中でメインは特に住宅金融になっていますけれども、カード業務ということもやっておりますし、あらゆる消費者金融もやっています。

まとめますと、フランス、オランダ、ドイツなどでは、信用協同組合が主たる、また重要な地域金融機関であるということが言えます。全国中央機関、地域機関、地元機関と3層ありますけれども、銀行としては、2層制が主流でして、末端は非営利組織との共同が見られるものもあるということです。

そして、個別金融機関の構造ですが、保険・投資信託など窓販は普通に行われていて、窓口販売の業態別規制もないですから、取り次ぐ金融商品、保険プロダクトといったものはある程度自由にカスタマイズすることができます。だからこそ、地元の住民などとのリレーションシップが重要ですから、そこから会員制度と結びついているということです。

流動性の管理なんかは、割と中央の方でバーゼル II への対応を指導していたり、ドイツはやっておりますし、フランス、オランダはとにかく本店機能をほとんど担っているもので、かなりALMを管理していたり、債券発行して、安定的な長期資金を個別金融機関に供与していたり、そして住宅金融に長期的な金融を可能にしたり、そういうような形をやっております。

そして、ガバナンスが重要ですから、ガバナンスで申しますと、顧客の代表や職員の代表が役員としてガバナンスに関与しているんだと。そこでは、特にオランダなどでは、年齢、性別に偏りがないとか、多様性があるというか、あるいは金融機関内部、外部の環境に適用した創意工夫あるいは戦略づくりを、そこで支援していると考えられるんです。常識に基づく監視機能を発揮することが要請されます。

そして従業員評議会、ヨーロッパはおしなべてそういう制度を持っているので、監査役に出席できるか、監査役になっているかどうかというのがドイツがなっているけれども、それ以外は推薦権があるだけだとか、いろいろな違いはありますけれども、従業員評議会がありまして、業務の合理化であるとか、不正の浄化というのが促進されているわけです。中間管理職の不正というのも、末端のほうから上のほうに行くわけです。そして、経営者の専横というのがそこで防がれていて、内部環境に合致した無理をしない経営が行われる前提条件となっております。

あとはフランス、オランダの場合には、十字型相互保証制度というのを系統の全組織が持っていて、個別金庫の検査・監督が中央機関に任命されているということ。免許は地域連合レベルで持っているか、あるいは全国レベルでしか与えられていないということです。そして、当局は中央機関を通じて、もちろん自前の検査あるいは監督権限も持っていながら、でも、ルーチンワーク的には、協同組織金融グループを間接的に検査・監督しているということです。

そして、特にオランダとか、経営者が実質的な経営者である参事が就任するときの認可権が中央機関であるとか、当局に与えられている。あるいはフランスも個別銀行の経営がひどいと、理事長を解任したり、理事会解散の権利も与えられているということで、何か起こったときに介入するというところが中央に与えられているということが重要です。

ドイツの場合は、そういう強硬な、強力な処分権みたいなものは中央にあるというわけではございませんけれども、地方連合や全国連合レベルで預金保護制度に当たる基金を運営していますから、そこで、しっかりと参加している個別の機関を検査する、モニタリングする、そういうインセンティブもあるわけです。それでしっかりととめさせているということになっています。

これが一応概要であります。

○神田WG座長

どうもありがとうございました。内田先生と山村先生には、限られている時間の中、大変要領よくご説明頂きましてありがとうございました。

それでは、残りの時間をご質問、それからご意見等をご自由にお出し頂きたいと思います。

若松委員、どうぞ。

○若松委員

私は今回テーマになっている協同組織金融機関、前回金融庁の方から過去の節目の審議についてのご説明がありましたけれども、その存立の意義とか、そこは今日も変わらないと思うんです。ただ、一番変わってきているのは結局景気の低迷、地元の地域の商店街とか地場産業が衰退して、地域経済が冷え込んできていること。だから協同組織金融機関を取り巻く経営環境の悪化ということが、今後ますます相当負担になってくる、その状況がなかなか変わらないんだろうなと、残念ながら思います。

そうした意味の観点から、両先生に伺いたいんですけれども、例えば、今のアメリカの場合は住宅バブルが崩壊していますよね。それからアメリカの場合、やはりドライですから、儲からないとなると、その地域にかなり大きな工場とか、それをもとにした商店街なんか発達していても、急に、時には極端な例にはゴーストタウンになったりしますよね。そうした諸外国の例を先生方から見て、今の日本のそうした地元の信用金庫などの経営環境は悪化しているという現状に対して、何かアドバイスなり、実際にその住宅バブルというものは、アメリカの協同組織金融機関に及ぼしているのか、その辺、もしご説明なり、ご意見を伺えたらと思います。

○神田WG座長

はい。内田さん、いかがでしょうか。

○内田参考人

我が国へのアドバイスというのは、なかなか難しいところでございますので、アメリカの状況について、もう少し補足いたしますと、まずは、先生がおっしゃいましたように、アメリカの場合は基本的に人口が増大しておりますので、日本と環境が違うということがあります。もちろんそうは言っても、州の中をさらに郡の単位ぐらいで見ますと、人口が減少している地域も結構ありますので、もちろん全く同じにアメリカを議論することもできないことも事実であります。

一方で、アメリカの場合は、やはり規制緩和が進んできまして、非常に大きな金融機関と、そして小さなコミュニティバンクやクレジットユニオンとの関係の中で、地域の金融がどのように維持されていくのかということが、例えば都市部なりでも大きな問題であります。したがって、それらに対して、クレジットユニオンなりがあるということに意義があると思われますし、またコミュニティバンクが買収されても、また次から次へと出てくるというのは、それなりのニーズがあるところがあると思われます。

ただ、一方で、かなりクレジットユニオンなども大規模化しておりますので、そういったことに対しては、いろいろと議論があるというあたりだろうと思います。

以上です。

○神田WG座長

どうぞ、いかがでしょうか。

○山村参考人

ドイツの信用協同組合のほうをより詳しく知っているので、そちらのほうから言いますと、バーゼル II の対応をいたしまして、行内格付によって、関連している中小企業に対して、もっといいコンディションで融資ができないかというようなのが、進んでいる。これがドイツの信用協同組合及び中央地区銀行で見られる動きですね。

そして、これが中小企業金融ですけれども、あるいは住宅金融にも進出しているところはありますし、特にフランス、オランダなどは住宅金融の占めるところが大きいというところと、あとは消費者信用についてもユニバーサルバンクとして積極的に対応していますから、特に特定のところだけをやるよりは幅広い収益源を持っているので、それを前提にして地域経済に貢献していこうということであろうかと見ております。

○神田WG座長

ありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。どなたからでも、どの点についてでも結構です。

久保田さん、どうぞ。

○久保田委員

単純にご報告に対するご質問でもよろしいですか。

では、アメリカとヨーロッパで1つずつお伺いします。

まず、アメリカについてですが、最後に先生がご説明されたBlueprintについて私は大変興味を持ったのですが、ヨーロッパのお話ではユニバーサル化とかメガ化が急速に進んでいるとのことでした。そこで、こうしたヨーロッパの方向性に対するアメリカのスタンスのようなものはBlueprintの中で打ち出されているのでしょうか。また、ご報告ではBlueprintではコミュニティステータスの話も議論されているとのことでしたが、なぜそれがウォールストリート的に過ぎるとしてメインストリートがそんなに反対するのかという辺りをもう少し詳しく教えて頂ければと存じます。これがアメリカに対するご質問です。

次に、ヨーロッパに対するご質問ですが、クレディ・アグリコルの十字型相互保証制度に大変興味を持ったのですが、どの程度相互保証するかについてご教示いただければ。仮に100%相互保証するということになってしまうと、相互に債務を持ち合うので、システミックリスクが高まってしまう可能性もあるし、モラルハザードが高まってしまう可能性も懸念されますが、具体的にはどこまで保証する内容なのでしょうか。100%なのか、あるいはある程度で切るなり条件付で保証するのか。特にモラルハザード防止策がどの程度施され、どこまで保証されるのかについて詳しく教えて頂ければと思います。

以上2点です。

○神田WG座長

いかがでしょうか。

○内田参考人

まず、2つの種類があったと思いますが、前半のほうで、ヨーロッパはユニバーサル化しているということでありますけれども、アメリカで議論するときは大変難しいのは、商業銀行と貯蓄金融機関とクレジットユニオンがありますので、それぞれが違いますので区別しなければいけないというところであります。

クレジットユニオンというのは、もう本当に業務の限られた、そもそも規模の小さい、非常に地域に密着した金融機関でありますので、個人金融をやることが目的ですから、もう一つは税免除との関係もあるかもしれませんけれども、基本的にはあまりリスキーな業務をせずに地域に密着していくというのが基本スタイルであります。それはやはり貯蓄金融機関やコミュニティバンクについても、形態は違っても言えることかなと思います。

ただ違いを言えば、大手と同じことをやっても勝てませんので、大手のできないことをやりメインストリート対ウォールストリートとなっているんですが、さらにメインストリートの中は、それぞれの得意分野があって、あまり拡大しないほうがいいという考え方もあるのかもしれません。

また、Blueprintに対する反対ですけれども、これはもうアメリカでは、反連邦的な考え方が強くありますから、そういう連邦主体の議論が出れば必ず反発が出るのは事実でありますし、違う言い方をすれば、この案が成立するには相当なる政治的なエネルギーが要るのかなと思いますし、どうなるのかは定かではありません。

したがって、今回の案で言いますと、フェデラルの連邦のレベルの議論をしていますけれども、連邦預金保険に入るには、その新しい提案の免許を取らなきゃいけないよということになっていますから、じわじわと州法のほうよりも連邦の優先度を上げてこようとしているそこに対してとても批判が強いんだろうと思います。

以上です。

○神田WG座長

ありがとうございました。

○山村参考人

クロスギャランティー制度については、そこまで、どの程度までということを詳しく説明できるほどの情報は持ち合わせないのですが、一応わかっている範囲で言いますと、自己資本で相互保証し合っているということです。あとは包括的に保証を与え合っているということなので、そして、この十字型保証制度ゆえに、すべての加盟金庫は一つの格付で評価されているということなので、要するに法人は別になっているけれども、経済的には一つとして見なし得るようにするための技術的なものなんだろうと思っています。

そして、法的に明示されているのが、中央機構が全体を保証しなさいということですから、それに対してこちらだけ保証するのは、ということで、向こうからも保証を受けているし、横にも保証させているというふうにもとれますので、まずは中央機関の検査・監督・保証といったところが、かなり強いのかなというふうに思います。

○神田WG座長

どうもありがとうございました。

吉野先生、どうぞ。

○吉野委員

幾つかあるんですけれども、こういう協同組織から借りられる方は、銀行から借りられないので借りられるという感じでいいのでしょうか。ですから、融資条件が金利が高いとか、いろいろな、銀行と比べると厳しい条件があるのかどうかが1番です。

2番目、先ほどの若松委員のご質問にも関係するんですが、アメリカの場合には地域的にすごく不景気になったりする大きな流れがあると思うんですが、そうしますと、こういう地域だけに密着したところというのは非常に不安定なように思いまして、そういうときにはどういう形でうまくそれを処理されていらっしゃるのか。というのは、今後も日本でも起こる可能性があるんじゃないかと思いますけれども。

3番目は、ドイツとかアメリカでこういう組織のガバナンスが本当に効いているのかどうか。先ほど、お互いにやっているというわけですけれども、どうやってどういう形でうまくガバナンスを効かせていらっしゃるのかどうか。

最後は、ヨーロッパの場合、ユニバーサルバンクなんですが、日本の場合には、先ほどご説明があったように貸し出しが減っている中で、有価証券投資でノウハウがないところをやってしまって失敗したことがあるんですけれども、こういうコミュニティのようなバンクでも、ユニバーサルバンクでうまく貸し出しと有価証券といろいろなことができるので、そこをうまく補っているのかどうか、4つぐらいです。

○内田参考人

まずは協同組織金融機関からお金を借りたりするのは、銀行から借りられないからかということでありますけれども、必ずしもそうではないと思います。そもそも、業務範囲が大分違いますので、そういう違いがあります。

それに加えて、あとは、これはクレジットユニオンの人々が言うことですけれども、銀行よりもクレジットユニオンのほうが業務というか、対応に対しての満足度が非常に高いとか、あるいは株主に利益を還元しないので低い金利で対応できるんだとか、あるいは預金についても少し高めに出せるんだということがしばしば言われております。ですので、必ずしも借りられないからということではないかと思います。

ただ、借りられないときの対応などについては、例えばクレジットユニオンのようなところに行けば、どういうふうにすると将来借りられるようになるのか、そんなような指導というか、そんなところまで含めて懇切丁寧に教えてくれるというようなことが、そういうことを好み、ひいきになる方もいらっしゃるのかもしれません。

2つ目の地域のことなんですが、これも例えば地域が過疎化していくとそこに、これも3つぐらいレベルがあるわけですけれども、金融機関が集約されてしまうということが起こってまいります。そうしたときに幾つかの対応があると思います。例えば、CRAのようなものを通じて地域への貸し出しがされるものもあれば、CDFIと言われる地域開発金融というような、さらにノンプロフィットな金融機関が対応していくというようなこともあると思います。また、これは銀行についてですから必ずしも協同組織ではありませんけれども、Sコーポレーションが所在している地域というのは、3分の2ぐらいは都市ではなくて地方にありますので、こうした税制優遇などを通じて、そういうところに張りついている、そこで業務を維持しているという側面はあるのかなと思います。

以上です。

○山村参考人

ほとんどユニバーサルバンク化が進んだドイツ、ヨーロッパでは、特定のフィナンシャルエクスクルージョンができているから、そこを埋めるという意味は、そういう系統もあるかもしれませんが、フランスの場合は系統が幾つもありますので、しかし一般的にはそういうことはないと。

例えばドイツであれば、貯蓄銀行が公的機関として存在しているので、そこが、むしろファイナンャルエクスクルージョンには対応しようということをやっていますし、信用協同組合の場合は、自助、公助、共助の共助のほうですから、少しは違うかもしれませんけれども、基本的にはどの銀行に口座を持っていてもみんな同じだというイメージがあります。

あとはガバナンスがうまく効いているか。これはドイツではグーテンベルクという経営学者が、1960年代あたりに、「結局、監査役会と言っても、それは経営者が選んだ監査役会を単に株主がオーケーと言っているだけなんだから、それは監督がうまくいかないんじゃないか」と言っているわけですが、20世紀の今になって経営者たちが何と言っているかというと、「監査役会は非常に重たい、自分たちはもうちょっと自由に経営したいんだ」と言っている。この40年の間に何が違うのかというと、私からすると、共同決定法で労使が、労働者側が監査役会に派遣されるようになっているというのが、ドイツでは非常に大きいですし、あるいはその他のところでも、要するに内部でよく事情を知っている人間がまた、しかし出てきているわけですから、そういったところがヨーロッパにおしなべて存在しているので、そういった事業所といいますか、労働法制の部分で組織に手当てがなされていて、ちょっとガバナンスが効くようになっているんではないかと思います。

そして、ユニバーサルバンクのよい点は、ある特定の分野がおかしいときには、ほかのところで、間に合わせるというようなことができるということで、これがだめだったらあれができるじゃないかと、いろいろ何でもやってみるということができるというのが、ユニバーサルバンクのいいところです。ですから、ここだけしかやってはいけませんというと、例えばドイツの州立銀行はリテールをやっちゃいけませんということがあって、それが業容よくないのでどうしようかと言って、アメリカに行って、アメリカのやつを買って、今ちょっと問題になっているわけなんで、要するにリテール方面をちゃんとやってもいいんですよというようなところの金融機関は、消費者信用をやったり住宅金融をやったり、その他もろもろの金融商品の媒介をやったりできるので、収益源が多様化しているがゆえに、どれか一つでおかしくなることがなりにくいと言えるのではないかと思います。

○神田WG座長

ありがとうございます。

それでは、家森委員、神吉委員の順番でお願いいたします。

○家森委員

幾つかお尋ねしたいのですが、今日のご説明を聞いて、こういう地域に密着している金融機関の形態ですので、地域特性によってかなり状況が違うな、各国によって特性があるんだなと感じました。2つ目に、欧米でも協同組織金融機関というのは、依然として重要な役割を果たし続けているということも認識いたしました。

それで、まず1つ目の質問なんですが、株式会社があって、片方にこの協同組織金融機関があって、これが競争上、負けていないという理由、つまり、先生方はどの点に協同組織金融機関の強みがあると思われているかという点を1つ教えて頂きたいと思います。

それから、ご説明のあった範囲で聞いていると、この協同組織金融機関は、住宅ローンなどの分野で非常に重要であるというような感じの説明が多かったんですが、日本の信用金庫や信用組合では、中小企業金融機関として重要であると通常とらえております。中小企業金融機関として、特にヨーロッパでの協同組織金融機関の位置づけについて、ご説明して頂ければと思います。

今日のご説明から、中央機関の位置づけや機能も重要な論点なんだなと感じました。ヨーロッパで特に中央機関に検査とか監査の役割を担ってもらっているというのは、金融当局と中央機関の間での役割分担のような、そういう発想があるんでしょうかという点についても、教えて頂きたいと思います。

今日の最初の議論でも協同組織金融機関の非営利性が問題になっていましたが、ヨーロッパやアメリカでの協同組織金融機関も、非営利というのが重要なメルクマールになっているのか。逆に言うと、組織の目的は何なのか。あるいは、1人1票制というのがメルクマールになっているのでしょうか。要するに、欧米における協同組織金融機関としてのメルクマールは何なんだろうかという質問です。

それから、役員の構成についても、今日、お二人の先生からそれぞれ状況をご説明頂きました。内田先生のご説明では、5人から15人と理事の人数が出ていた表があったんですが、これは法律で5人から15人にしろと決められているのか、実態として5人から15人ということでしょうか。

山村先生は、役員について、ヨーロッパのある国だけかもしれませんが、顧客が役員になっているというようなご説明をされました。日本で言えば非常勤理事だと思いますけれども、この位置づけについて、何かヨーロッパで議論があれば、教えて頂きたい。

多々質問しましたけれども、全部でなくても結構ですので、お願いいたします。

○神田WG座長

次から次へと質問攻めで恐縮ですけれども、両先生、どちらからでも結構ですので、よろしくお願いします。

○内田参考人

まず答えやすいほうから言いますと、理事の人数等については、法律ないし附則のレベルで、要するに法定事項であります。

そして、最初のころに頂きました株式会社に対して、なぜ協同組織は力を持っているかというのは、これは先ほどもちょっとお話ししたんですが、商業銀行は基本的に事業向け貸し出しを中心にしていて、クレジットユニオンは住宅ローンのほうですから、業務範囲があまり重なっていないということもあると思います。

また、株式会社といっても、メガバンクとコミュニティーという、そういう区分もありますので、どことどこで比較するかによっても違うんですが、少なくともコミュニティバンクと、クレジットユニオンと言っても、大分変わりつつはあるんですけれども、主たる業務はあまり重なっていないということだと思います。また、クレジットユニオンなどについて言えば、税免除などが源泉になっている部分がないことはないのではないかというふうに思います。

もう一つは、非営利のメルクマールですが、クレジットユニオンについて言うと、やはり組合員の中で完結しているということではないでしょうか。

説明いたしましたように、もちろん法律の目的もありますけれども、実態からしましても、組合員から理事が選出され、組合員の中で資金が回りということがあって、組合員になる資格も緩やかにはなっていますけれども、貯蓄金融機関なんかに比べると、ある程度明確というか、相対的に明確な領域があるというあたりかと思います。

(お答えが)ちょっと漏れているかもしれません。

○山村参考人

ドイツは、そもそも協同組合法の中で協同組織はみなし商人ということになっているので、商業なんです。ですから、営利、非営利ということは関係ないんです。そもそも営利なんです。

あとは、強みは、株式会社のシステムと協同組合のシステムは何が違うかと。営利性というのが重要でないとしたら何が重要かというと、その大きな違いは、マーケティング組織がそのままガバナンスに直結していると、ここにあると思うんです。要するに、お客様が会員になってガバナンスになっている。これは株式会社は一応マーケティング組織部門を置くことはできますけれども、それは部門ですから、別に経営者でも何でもないし、そこを監督しているわけじゃない。市場メカニズムを通じて、株式会社だったら株式売買を通じてしか公式には入ってこない情報が、マーケティング組織から直接、理事になってやっている、マーケティングの対象であるお客様が会員であり、会員が理事になってやっていくものですから、マーケティングの組織が、回路がガバナンスに直結している。これか協同組織と株式会社の大きな違いだと言えると思います。

ですから、中小企業の経営者が非常勤理事になっているということは、非常にそうなんですけれども、それがどういうふうに言われているかというと、パーソナルネットワークであるということで、顧客の代表である、それが理事なんだ。ローカルコミュニティーに張りめぐらされた根っこであるんだと。それを経営に反映させていくんだという、やはりマーケティングとガバナンスの統一とニュアンスでとらえられていますね。だから、会員のためにやるということが、お客様のためにもなるのだという意見です。逆もあると思います。

そして、第3番目の話は、ドイツで中小企業融資がどのぐらいあるか。ヨーロッパでは、ドイツの例はここに挙げなかったので、ちょっと調べますと、大体協同組織のほうがほかの業態よりはやや中小企業や企業に対する貸付のほうが大きくなっていますが、割合は、住宅・金融関連融資が3割で、中小企業融資が3割で、ちょっとした大企業融資は1割ちょっと。そして、割賦信用であるとか、消費者信用は2割、そういう感じに残高はなっていますね。

○神田WG座長

では、神吉委員、どうぞ。

○神吉委員

まず内田先生に2つお伺いしたいんです。事業向け貸し出しを中心とする協同組織金融機関がアメリカにはないということを、どのように理解すればよいかということが1点でございます。そもそも必要とされなかったことの背景をどのように理解すればよいか。これは、アメリカは直接金融の国ですから、直接金融と、あるいは銀行で対応して、それで十分だったんだというようなことなのかということをまずお伺いしたいと思います。

それから、2つ目は、協同組織性ということをどのように理解すればよいかということなんです。アメリカで、「複合」ということのご説明もございましたけれども、もう協同組織性というような概念が放棄されていて、金融機関なんだという方向で進んでいるのかということをお伺いしたいのです。それはなぜかと申しますと、我が国では、地区ということを重要なキーワードにして協同組織性が維持されているわけですけれども、地区だけで協同組織性が維持されるのかということに私は疑問を感じておりまして、その点をお伺いできたらと思います。

山村先生には3点お伺いしたいと思っております。1点目は内田先生への質問と同じでございまして、ヨーロッパで協同組織性ということが、どういうふうに考えられているかということでございます。

それから2つ目は、39ページの先生のレジュメに、地域住民の代表が信頼性を証明した企業に信用供与するということが書かれております。これは大変興味深いなと思いまして、もう少し具体的に仕組みについてご説明、ご教示頂ければと思います。

3つ目は、中央機関のことなんでございますが、中央機関を運営いたしますコストを、当然傘下の機関が負担していくということになろうかと思いますけれども、その場合に、例えば傘下の機関の経営状態に応じて、可変的にこのコストの負担が決まっていくというような、そういう仕組みが導入されているのか、これはモラルハザードの問題が兼ねあってまいりますので、その点について、もしおわかりでしたら、教えて頂ければ幸いでございます。

○内田参考人

まず第1点目でありますけれども、商業銀行は事業向け貸し出しに熱心で、個人向け貸し出しなどに、これまではあまり興味がなかったと。そうすると、そこを補う金融機関がありませんので、そこを補うというか、補足するような専門的な金融機関が並行的に生じてきたというふうに理解しております。

2つ目の協同組織性のお話はかなり難しくて、先ほども述べましたけれども、また違う観点から言えば、現状で言えば、かなり大きなクレジットユニオンと小さなクレジットユニオンを、同じ一つの法律で定めておりますので、確かに小さいほうの人から見れば、規制緩和によって大きな人が受けるメリットは、小さいほうはありませんので、あまりそういう規制緩和を進めて、いろいろなところで協同組織機関のあり方についての議論が出てしまうことを懸念しているというところもあるかと思います。例えば、Blueprintは、これはあくまでも財務省が出したものですけれども、いわゆるこれまでクレジットユニオンがやっていたことをかなり限定的にしようというものでありますので、基本的には協同組織性は組合員なんですが、それが大分緩やかになってきているというところが、いろいろ議論が出ているところです。ただ、一方で、非常に小さなところもありますので、そういう人たちから見れば、自分たちがやっていることとは全く関係のない世界というような感覚を持っているのだと思います。

○山村参考人

ヨーロッパの金融機関が協同組織性についてどういうふうに考えているのかというところまでは、ちょっとお答えできるほど詳しくないのですが、私が見るところでは、少なくとも自分たちは銀行家だと思っているに違いない。そういうふうに考えます。協同性は、私は、マーケティング組織からガバナンスに入っているというところにしか、もう持っていないんじゃないかというふうにも思います。

ただ、協同組合にも全国に支店を持った、例えば医療関係者の信用協同組合とか、そういったものがありますので、それははっきりとコモンボンドが存在しているので、そういう全国で特定の身分・階層に特化したものであれば、そういう協同性というのをメインにしないと、やはり競争とかしないといけないわけですけれども、それ以外の地域に根ざした協同組合は、地域金融の一種の三本柱の1つだというふうに、私には見えます。

あとは、地域住民がどういうふうに信用協同組合に関与しているかというところで、クレディ・アグリコルの例ですけれども、地元の金庫と呼ばれている理事会がそこでスクリーニングをするというところなんですけれども、要するに融資を受けたいという人がそこの理事に言って、これは信頼できるかどうかという第1次審査をその理事のところでやって、こいつはなかなかいいやつだというようなところがわかったら、必要書類を書いて持っていくということですね。地元の銀行のまず支店に行くんですね。支店へ行ったら、そこから地元金庫に話が行っていて、この人を知っているかどうか、大丈夫かどうかという意見を言う。ですから、そういうふうに肯定的な判断があったら、そして書類が、ほかに問題がなければ用意する。そういう意味ですから、第1段階のスクリーニングが行われていると考えていいんだと思います。

以上です。

○神田WG座長

どうもありがとうございました。

村本委員、どうぞ。

○村本委員

どうも両先生、大変興味深いお話をありがとうございました。

大分頭の整理ができたなと思っているんですが、内田先生に2点だけお伺いしたいんですけれども、1点は、Sコーポレーションと呼ばれる存在が多くなってきた、銀行にも多くなってきたという話がありました。アメリカの税制ですから二重課税の問題があって、それを回避するという別な問題があるのかもしれませんが、先ほど吉野先生もちょっと言われましたが、地域がディストレス、劣化していく状態の中で、地域の金融を活性化させるから、Sコーポレーションを選択するというのは、独立銀行家協会(IBAA)などが言っているようなものがあるのかなという気もするので、その辺で何かお気づきのことがあったら、教えて頂ければと思います。

もう一つ、クレディ・アグリコルの場合には、日本の協同組織とはやはり違う、もう少し違う組織だなと思うんですけれども、特にボランティアが理事をすると。理事はボランティアだと、その意味をもうちょっと教えて頂ければと思いました。

それから、山村先生のヨーロッパの話はいろいろあるので、1つ2つにしておきますが、例えばクレディ・アグリコルは株式会社になりましたね。そうしますと、格付を得ているわけですが、先ほどちょっとおっしゃいましたように、グループ全体で一つの格付なんだという理解でよろしいのかなと。あるいは格付をとっていますと、グループの中の地域銀行が劣化したときに連鎖的に影響すると。そうすると、資産劣化も起きますから格付が下がるようなことが起こり得るわけですが、それはどういう整理になっているのかなというのが一つございます。

それから、実際にラボとかクレディ・アグリコルのクロスギャランティーというのは、実際にどういうふうに発動されて、実際にもう発動された例というのをご存じでしたら教えて頂きたいと思います。

以上でございます。

○内田参考人

まずはSコーポレーションのほうでございますけれども、Sコーポレーションというのは地方、そして、土地柄でいうと農業などが多い地域により多く存在しているという意味もありますが、そうした地域で、一つは、グループ化の中の入っていくという選択もあると思うんですですが、もう一つはそうしたSコーポレーションのような税免除を使いながら、地域に存続し続けるという部分があると思います。また、それをねらいとして、Sコーポに転換するということも行われていると思われます。

また、では、それは地方だけかといいますと、都市についてもある程度、都市にもSコーポレーションがございますので、例えば大都市であればたしかに金融機関や支店はたくさんあるように見えますけれども、そこから借りられない、アメリカの場合ですと、マイノリティーの問題などがありまして、そうしたところに専門的に貸すマイノリティー銀行などが、都市部であっても大手の金融機関などが相手にしませんので、このSコーポレーションの税免除を使いながら自分たちの金融を維持して、そういう人たちに貸し出しをするということを行っていますし、インタビューでそういうことを聞いたこともあります。

もう一つ、ボランティアの意味でありますけれども、もともとは同じ職場で働いている人たちが、そういう相互の金融のためにお金を集めて貸し出しをすると。それをだれかがボランティアで手助けして、その役割をしていたわけですけれども、ただそれがだんだん大きくなってくると、もうちょっと組織だった、法律にのっとったものになってやらなければいけないということになって、現在の形になってきたものかなと思います。

ただ、ボランティアというと、例えばちょっと難しいんですが、地域と職域でかなり違うんですね。職域の場合は、組合員というのは、実際企業の職員ですから、企業から給料もらっていますので、そちらからもらいながら選ばれて理事として働いているということであります。ですから、全くほかから給料をもらわずにやっているということではありません。

地域のような場合は、もちろん自分の職業をしながらやっている方もいらっしゃいますし、さらに例えば金融機関などを引退されたような方が、地域のためにボランティアでやっているというようなこともございます。したがって、ボランティアの意味自体は、もともと歴史的な流れの中で、そういう理事会についてはボランティアであるというものと、法律的な規定が原則の規定がありますので、それに従わざるを得ない。ただ、そうは言っても、理事だけでは、金融業務のすべてをクリアできなくなってきますので、CEOなどに給料を払って、業務執行の委任をするというのが一般的な形になっていると思います。

以上です。

○山村参考人

クレディ・アグリコルグループ、その他の株式会社で全体で格付が一つなのかどうかということですけれども、これはどうやら私が理解した範囲では、それぞれの金庫に格付があるらしいのですが、例えば、長期のワンプログラムで格付があるらしいのですが、詳しいことはよくわかりません。それに格付をする人がどういうふうな基準で、そういうふうに持っているのかというのも、かなり秘密になっているところもあるらしいので。ドイツのほうも、ドイツの人たちは、クレディ・アグリコルが何でこういうところでいい格付をとれるかというのを興味があるらしいのですが、なかなか格付を一つにはできないので、そこはクロスギャランティーがあるからだというふうにしかわからない。何を評価して、格付会社の人がそこをいいと言っているのかというのはわからないですね。

ただ、発動の事例というのは、恐らくドイツとも同じなんですけれども、発動されても外に出てこないのでわからないんですね。いつの間にか合併されている。何か危機があったとか言われないうちに合併するのがいい合併の仕方なので、その辺はよくわからないですね。恐らく今、再編が進んで地域銀行が合併しているというところは、ヨーロッパのグローバル戦略でそうやっているのか、あるいはそれが問題があるからなのか、そこはわかりません。ただ、問題があったときには、規制当局、監督当局である銀行委員会と協議しながら地域銀行の問題に関与するのが、例えば自己資本比率が満たせないというときになったら、そういう介入をする。当局と一緒に介入するようですね。

以上です。

○神田WG座長

もう時間が来てしまいました。大変活発にご質問頂いたのですが、今日はゲストの方をお招きしてということもありますので、このあたりで打ち切りにさせて頂きたいと思います。

委員の皆様方には大変多数のご質問を活発に出して頂きまして、ありがとうございました。それで、ちょっと気がついたことですけれども、またこれでお帰りになると忘れてしまうということがあると思いますので、ちょっと質問したかったけれどもという点があったら、ぜひ事務局にメール等でお寄せ頂けませんでしょうか。そうしましたら、事務局から両先生にまたお伺いし、あるいは事務局のほうで調査してという積み重ねをしていきたいと思います。この分野は非常に難しい分野で、かつ動いていますので、盛りだくさんの質問というのは、次々出てくると思うんですけれども、早目にお出し頂ければ、できるだけの努力をさせて頂きたいと思います。

それでは、本日の審議はこのあたりとさせて頂きます。内田先生、山村先生には大変お忙しい中をお越し頂き、多数の質問にお答え頂きまして、本当にどうもありがとうございました。

それでは、最後に事務局からのご連絡をお願いします。

○遠藤信用制度参事官

ただいま神田座長のほうからお話がありましたように、私ども事務局に対する質問、今回だけでなく前回もございましたし、まだお答えしていないものもございます。それから、今日の両先生に対する質問についても、ご連絡頂ければ、我々が調べる、あるいは両先生にお願いしてご回答をつくって頂くという形でフィードバックさせて頂きたいと思っております。

次回の協同組織金融機関のあり方に関するワーキング・グループでございますけれども、この協同組織金融機関についてご研究され、論文を多く書かれていらっしゃいます大阪大学の筒井先生と、大阪市立大学の清田先生にいらして頂きまして、協同組織金融機関のあり方に関するご意見を両先生から頂き、それをもとにご討議頂くということにしたいと思います。次回は5月9日、金曜日の16時からを予定しております。正式には追ってご連絡いたします。よろしくお願いいたします。

○神田WG座長

それではこれで散会いたします。ありがとうございました。

以上

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