金融審議会「保険の基本問題に関するワーキング・グループ」(第40回)議事要旨

1. 日時:

平成19年11月22日(木)15時00分~17時00分

2. 場所:

中央合同庁舎第4号館9階 金融庁特別会議室

3. 議題:

保険法改正への対応について

4. 議事内容:

  • 法務省法制審議会で審議されている保険法改正への対応に関して、保険会社に対する監督規制という観点から考えられる論点について議論を行った。具体的には、法制審議会における保険法改正についての議論状況を踏まえ、

    • マル1保険の意義、

    • マル2生命保険契約における保険給付の内容としての現物給付、

    • マル3保険料積立金等の支払、

    • マル4未成年者の死亡保険、

    の4つの論点について取り上げ、論点毎に事務局がそれぞれ資料を用いて説明を行い、その後、自由討議を行った。なお、マル4未成年者の死亡保険については、生保協会の松澤委員からも資料に基づき説明がなされた。

【自由討議における主な質疑等】

【保険の意義について】

  • 意義を定めることについては慎重であるべきと思う。資料1の2ページに書いてあるとおり、保険ではよく問題になる詐欺的商品などが、保険業法違反としてチェックできなくなるのは非常に問題である。規定のない大数の法則や収支相等の原則は、確かに保険契約として望ましいものだが、入っていなければ保険ではない。といって業法の規制の外にやってしまうと、内容の悪い実質保険についてのチェックが効かなくなってしまう。他方、保険の意義を広く解した場合、今回の改正に合わせて保険デリバティブの問題などまで手当てするのは難しいのではないか。結論的には、保険に関する定義を置かない現在の状況で法技術的に済むのであれば、それが一番であると思っている。

【生命保険契約における現物給付について】

  • 法制審においては、中間試案のパブコメ後、一度保険部会でも審議をお願いしたが、なお意見が分かれており、方向性は出ていない。生保業界からは、特に限定をすべきではない、定義から外れるものが、契約法が想定していない無名契約になるだけであれば、むしろ広く契約法の適用対象になる定め方のほうが望ましいという意見が出ており、経済界の立場からも、同じように契約法での制約というのは必要最小限にすべきであって、その観点から限定を課すのは適当でないという意見が出ている。他方で、保険業法の観点から、あるいは研究者の立場からは、金銭以外の給付ということを想定した場合は様々な課題があり、その点を十分クリアしないで、限定を付さない形での金銭以外の給付が認められると読めること自体疑問があるとの慎重な意見がある。同時に、損保業界からは、損害てん補との区別が明確にできるのかという観点からの検討が不可欠との意見が出ているところであり、なお、今後の議論に結論が委ねられている状況である。

  • 資料1の9ページのマル1マル5のような規制はあってもよいが、定義のほうに入れると逆に不当なものが定義外で無規制になってしまうので、定義に入れないという方向性でお願いしたい。

    商品の限定として書き込むよりは、契約者等にとって不当に不利益でないというような現行の規定に基づき監督指針などに基準を示して、個別に商品審査で対応するほうがよい。一時払の老人ホーム給付などを考えると、すぐ給付になるので契約時点で保険金との代替を考える必要はないし、特定の老人ホームに入りたいというケースを考えると代替性は必要ないから、商品設計上考えなくてもいい部分がある。また契約後の話も含めて商品審査の話と捉えるべき。消費者保護を達成しながらも自由度を確保すべき。

    資料1の9ページマル6の価格変動リスクに関しては、給付開始前後で分けて考えるべき。契約開始から給付開始まで10年以上など長期にわたるものについては、保険会社がリスクを負担すべき。また、給付開始後、20万と約していたものが15万になったときに5万返せというように、給付された現物の価格が約定額よりも低かった場合に差額を返すと保険料率の高騰につながり、商品の魅力がなくなるので、柔軟に対応できるようにすべき。

    資料1の9ページマル7の責任準備金積立て方法については、一部危険準備金なども積みながら、一般の終身年金の責任準備金に商品の価格変動率などを加味していけばよいのではないか。

    資料1の9ページマル8の現物給付のための事業について、現物給付とは別の問題として、具体的なプランが出てきたときに考えればよいのではないか。

    資料1の9ページマル9は、損保業界の実損てん補保険の中で現物給付のものもあることを参考にすべき。また、規則53条の11(業務委託)の、委託先がきちんと能力があるかとか、モニタリングをするとか、苦情が出たときの態勢をきちんと整備するとか、このあたりを参考にしながら、検査・監督を考えていけばいい。監督の立場でも、業法の中に報告徴求や委託先への立入調査ができるという規定を考慮に入れながら考えていけばよいのではないか。

  • 生保業界の規制緩和要望とは思うが、慎重であるべき。たとえ金銭的評価が可能であって、契約者が損害を被らない、しかも保険金の受取りと選択可能なものであったとしても、契約が非常に長期にわたり、将来の予測可能性が極めて低い。保険者がリスクヘッジを行っているかどうかを監督することになるかと思うが、責任準備金制度の改正によるのか。今販売されている変額保険のリスクヘッジについても数理的に必ずしも安全な態勢ではないと聞いているので、このような現物給付のリスクヘッジが適切に行われるようには思えない。

  • 現物給付は、市場拡大、需要喚起の手段にしか思えない。現物を金銭よりも魅力的に見せることは有利誤認を非常に誘い易い。アイディアで契約者を誘っておきながら支払わなかった例として、全国養護共済事件のような、保険料を集めておきながら現物を給付しなかったという実例が想起される。審議会としては実例にも基づいて審議すべき。

    インフレ対策については、既に変額年金などもあるから、金銭で給付後、契約者が自らに合ったサービスを選択すればよいのではないか。

  • 老人ホームを給付する場合、どのような商品設計を考えているのか。一時金などの金銭的価値を具体的に表示するのか、それとも抽象的に表示することになるのかよく分からず、議論するにも具体性がない。

  • 現在検討中の商品では、老人ホームのリストを作成し、満期時に選択できるようにする。将来に使用料が上昇した場合のヘッジになるなど、契約者にもメリットになる。

  • 現状でも老人ホームのトラブルは多い。長期の契約の後に選択する場合、非常に不安がある。保険会社に老人ホームの質まで見極めることができるのか。メリットばかりを強調されて、トラブルが見えにくくなってはいけない。慎重に検討してほしい。

  • 傷害・疾病に関する現物給付の問題もある。第三分野商品には多様な商品があるので、現物給付に関しても生命保険よりは柔軟に対応してもよいのではないかと漠然と思っていたが、例えば要介護状態になったときに週20時間ヘルパーを派遣し、その質が問題になってくるとなると、第三分野に関してもなかなか難しいものがあるだろう。保険法部会では介護はあまり前面には出てこなかったが、従来からこれに消極的な考え方の人の頭の中にあるのは、生命保険の長期性であり、長期にわたって払い込んだものに対して給付されるものが少ないというような問題が発生するのではないかと心配している。生命保険より問題が少ないと思われる第三分野でも懸念があるのだから、第一分野に関しては更に慎重であるべき。

    金銭給付との代替を認めない完全な現物給付を認めるのは問題が大きい。だが、保険法部会での議論次第では、完全な現物給付が認められる可能性もあるので、その場合でも、保険業法ではそれとは別に金銭との代替給付が可能なものだけを認めるなどの取扱いをすべき。

    金銭給付との選択権付きであればよいとの意見があるが、選択権があればその分オプションがない保険商品に比べて保険料は高くなっているはずであり、選択権が付いて非常にいい商品ですよ、ということになると問題なので、そこをきちんと説明しなければならず、その観点からの監督が必要となる。

  • 加入時ではなく給付時に選択権を与えるような商品を想定しており、加入時にそれを売り物にするということは現状ではあまり考えていない。老人ホームの質の問題については、どちらかといえばより前向きに、保険会社がサービスの質を見極めるという選択期間をご期待いただければよいのではないか。

  • 仮に契約法で無限定に現物給付を認めた場合、いろいろ制約を合理的にかけていけばそれなりに合理的な商品もできるかもしれないが、監督法の道具立てでそんなことができるのか。逆に、契約法で限定した場合、そこから一歩でも外れてしまうと保険業法でも他業となってしまい、保険会社で扱えなくなるのではないか。

  • 契約法で無限定ないしは限定が極めて少ない形で規定された場合、現物給付の問題に対して、保険業法のみの改正では制度共済への対応はできない。保険業法内の規律でどうするかというと、保険業法として契約者保護の観点に立つと、経営上のリスクが大きくならないようにするためには責任準備金制度を慎重に考えなければならない。価格変動リスクが保険料に転嫁されるようなものは、保険料の置き方についても議論がある。また、資料1の9ページマル1マル5のような要件を契約法で置かない場合、業法・監督指針どちらで規定するかについては、ある程度法令で規定するのがよいのではないか。

  • 将来のオプションを約すような規定をおいて、監督法が働くか、危惧を持っている。今までもできていなかったのではないか。以前盛んに売られた、定期付き終身保険で払込満了時に給付が年金や介護など様々なオプションが選択できるものがあったが、実際は運用収益の低下の影響で選択できないということになっているようだ。保険会社が将来のことを約束することはリスクが大きいのではないか。かつて破綻した生保会社でも、介護サービス、看護サービスをオプションとした商品を多く扱っていたところがあり、そのようなことも考慮してほしい。

  • 給付時に選択権を与えるというのは、単に顧客を囲い込んでいるに過ぎないのではないか。これを生命保険に入れること自体、疑問を感じざるを得ない。

【解約返戻金について】

  • 法制審の中間試案パブコメの中では、具体的な金額を明らかにしてほしいという要望が多いが、契約法でできることには限界があり、可能な限度で規定するしかない。おそらく大きくは2点ある。「保険数理」という言葉を日本の立法の中では契約法上で使用することは難しく「返すべきものを返す」というような表現にとどまらざるを得ない。資料マル119ページのドイツの例では「承認された保険数学の算式に従い」と書いているが、日本の現状ではなかなか難しいところもあり、合意で成立する契約の世界における権利義務の書き方として、保険法での受け止め方も自ずと制約がある、ということが一つ。消費者契約法との関係もあるが、「控除」と言ってしまえば簡単なのだが、無解約返戻金型商品など諸々ある中で「控除」と言ってしまって本当によいのか。あるいは、そもそも保険数理という言葉が使えないとした場合に、何を控除するのかといったことが本当に契約法の中で適切に書けるのかといったような問題がある中で、契約法としては、契約法の中で書けることには限界があるのではないかという思いで作業しているところである。

  • 返戻金の問題については、問題を分けて考えるべきではないかと思う。まずは、大きく分けて解約返戻金のような契約を保険契約者の方が解約した場合の払戻の金額と、もう一つは契約者の側には問題はないが、極端な例で言えば保険会社が破産した場合など、あるいはそれ以外の保険契約、商法657条のような規定に基づいて、契約者に責めがなくても契約が無効になってしまう場合、そのときの払戻金に当たる保険料積立金というものを分けて考える必要がある。

    まず、契約者のほうに問題がない、解約返戻金ではないタイプのものについて考えてみる。現在の保険業法がどうなっているか考えると、資料1の15ページを見ると、業法上明確な規定があるのは保険者の解散の場合だけで、保険業法177条3項、保険業法施行規則69条・70条に基づいて、いわゆる責任準備金から危険準備金を控除した額が返戻金の額とされている。しかし解散以外の保険者の免責、保険契約の無効・取消、保険契約の失効等の場合の返戻金については、格別の規定が保険業法になく、商法にも643条に「全部又は一部を払い戻す」としか規定されておらず、恐らく、保険業法施行規則10条3号の保険料及び責任準備金算出方法書に記載される「契約者価額」のチェックがあるはずだと思うが、基本的に契約自由に委ねられているようである。

    しかしそもそも保険契約が当初から無効とされるような場合には、そのような「契約者価額」に関する保険契約の定めが拘束力を持つのかという理論的な問題があるし、無効や失効の場合に関する払戻金に関する現在の約款の定めが実質的に妥当か、気になるところである。

    破産のときの破産債権として届け出られるような金額の明確な基準を私法上の問題としてきちんとしたルールを契約法なりで定めておくのが本来の姿だと思う。

    その次に、解約返戻金のほうは問題が違ってくる。解約返戻金については資料1の15ページでは規定無しとなっているが、実際には保険業法施行規則10条3号の「返戻金の額その他の被保険者のために積み立てるべき額を基礎として計算した金額」というのをいわゆる保険料及び責任準備金算出方法書の記載事項として提出させて、それを金融庁がチェックするということになっている。いわば約款規制の一部で、広い意味でのチェックを行っているわけで、契約の内容としての解約返戻金を基礎書類の審査という形で金融庁が見るということ。そしてそれについて施行規則11条や監督指針4-5-3が適用されるということになっている。そういう意味では、何らかのチェックはあるといえばあるのだが、問題は二つあり、一つは実質的にちゃんとチェックしているのかということ、もう一つはチェックすべき基準をどういうふうに考えたらいいかということである。

    まず、きちんとチェックしているかということについて言えば、ご存知のように18年4月からは定性的な要素についてしか約款審査基礎書類の審査ではチェックしないということになっている。新契約費等については事業費モニターで事後的に見るということになっているわけだが、事業費が適切かどうかというのを事後的にチェックするというのは分かるが、本当にそれできちんとチェックできているのか、それで十分かというのがある。事業費以外に、そもそも契約内容として適切な額として合意されているかという問題がある。つまり保険契約が解約したときに保険契約者としてはどれぐらい解約返戻金が貰えるかという期待を持っているわけである。その期待に沿った形での解約返戻金の支払がなされるような実態的なチェックがなされているか、というとおそらく現状の約款、商品審査についてはなされていないのではないかと懸念する。

    次に、実質的なチェックをするときの中身をどうしたらいいかというと、これが大問題で、おそらく答は出ないのではないかと思うが、諸外国の例を見ても、アメリカ、フランスその他多くの国は、アメリカだと不没収法によって、あらかじめ契約者保護のために最低限これだけの解約返戻金は払われますということを、法律上かなり詳細に規定して、保険契約者の期待を最初から法律の枠で保護する形を取っている。それに対して、一方で、極稀な国、おそらくカナダだったと思うが、これは契約自由の問題であって、約款に決めておけばあとは自由に決めてよく、まさに低解約返戻金型や無解約返戻金型の契約も認めている。これは非常に大きな政策上の問題であり、保険契約者保護のためには、あらかじめ約款に書いてあっても保険契約者が十分に理解するのは難しいからこれはもうあらかじめ法律で最低限これだけの解約返戻金が貰えると言うことを、アメリカのように法律で定めてしまうか、それとも、そうではなくて、契約者もそういう選択はできるはずだという前提に立って、カナダのように、開示さえきちんとされていれば低(無)解約返戻金型も認めるという法制度にするかという、その選択の問題。そこはおそらくまだ腰が定まってなくて、監督指針でも一般的な抽象的な言葉しか書いてなくて、そこからは何も見えてこないというのが現状ではないか。

    その中で保険契約法でどう書いたらいいかということを法務省も頭を悩まされているのだろうが、現状の審査の実務は既に無解約返戻金まで認めてしまっているわけで、そうすると今の方針のところに、基本的な政策方針について契約法で定めをおけるのかという気がする。正直に言って、法務省のほうで規定を入れるというのは先ほどの現在の商品審査の業法のほうの状況を前提にすれば、規定を入れてそれで上手く行くのかと懸念するところである。仮に本当に規制を実体化させて、片面的強行規定とするということも考えられるが、そうすると低(無)解約返戻金の約款は無効になってしまい、現在の商品は無効な商品かということになってしまう。そこまでやるのか、そこまでやるとしたら裁判所もどういう基準でどうやって具体的に審査できるのか、それは大変なのではないか、という気がしている。

  • 自分が若いころは、解約返戻金は大きな消費者問題だったが、その後、それなりの改善はあったといえ、あまり目立たなくなって、そのうち保険危機という状態の中で低解約返戻金か無解約返戻金という商品が考案された。最初は生命保険会社もこのような商品は不健全だと言っていたが、今の時点ではOKと、わかりにくい状況になっている。そういう状況の中で契約法で一切触れないというのはよいのか、ということで問題提起して、中間試案ではあのような訳の分からない規定になっているのだが、やはり本当は監督法の中により大きな問題点があるのだろう。

  • 法務省でもし中間試案のような案がそのまま通ったとすれば、与えられる効果は、万が一、計算の合わない返戻金の支払い方、例えば、制裁的な控除が行われていることが発覚した場合に、返還を請求する法的根拠が明文化されたということになるだけである。一体いかなるものが返ってくるかという基準は明示されない。その背景には、資料マル121ページ以下にいろいろなパターンの解約返戻金のイメージ図が示されているが、21ページのパターンでも、全期チルメルという形を採ればまた違った図が書かれることになるわけで、初期の返戻金の解約控除というものがこの図とは違ったものになる、つまりオーソドックスなものでも返戻金の描き方は違っている。さらに低・無返戻金型というものになると、これら全部を網羅する形で法文を書くことはほとんど無理ということになって、最終的には「返すべきものを返す」という条文に帰着せざるを得ないというのが現状。

    そういう中で、問題点は、低・無返戻金型の商品の中には当たり外れの賭け事的要素を含んでしまうようなものがあり、長生きをすれば得をするけれども、早く解約してしまうと損をするというような要素が出てきている。例えば保険料が続かなくなってしまうと損をしてしまうという商品があったりすると。更には金利変動によって変動してしまい、勝ち負けが出てくるという要素がある割にはあまり契約者は知らないまま加入していることが問題点の一つ。それでも計算は一応合っているわけで、引いてはいけないものを引いて控除しているという要素はない。おそらく現在売られているものは、そういう観点から見れば数理計算はあっているのだと思うが、その数理計算がどういう根拠に基づいて行われていて、どういうようなときに不利になったり得になったりするということは伝わっていないということが問題。そこで、そういう賭け事的というか当たり外れが極端に大きく出るような商品まで認可するというのは行きすぎだと思うので、合理的な範囲で抑えていただくような運用を今後やっていただきたいということが一つ。それを前提にした上で、開示のルールをなるべく明確化していただいて、保険契約に入る人が契約の申込書面の中でいついつやめればこのぐらい戻ってくるんだ、損するんだということが明確に分かるような情報提供のルール整備をお願いしたい。

  • 解約返戻金の算出方式はいろいろあると思うが、消費者の立場からすれば、早期に解約したときに新契約費だと言われて、かなりのものが没収されるというのは問題。その理由がきちんと示されていないということが大きな問題。この解約返戻金というのは、過去問題となったように、今後消費者問題となっていく芽をいろいろはらんでいる。一つは、個人年金保険を募集したのはよいのだけれども、将来年金の保険料の払込みが満了してから毎年生存確認をして払っていくような企業が、できれば一時金で受け取ってくれないかなと思っていますというのが本音と言っていた。これは国内生保のケース。変額年金を売っている外資なんかは、堂々と90歳年金開始というものや95歳年金開始というものが認可されている。取材すると明らかに、生命保険のメリットと投資信託のメリットを組み合わせて、もともと年金という名前はついていても年金で払うつもりはないという商品が横行している。だとすると、例えば一時払でもらうのと、年金払いでもらうのと、解約返戻金をもらうのであれば一時払でもらうほうが多くなければおかしいが、そういう問題を今後どうやって解決していくのか。

    今は国内もよく売っている無選択型終身だが、取材したところ、返戻金の額は保険会社によってかなり差がある。分かったことは、テレビコマーシャルを多くやっている会社は早期解約の控除が非常に高くいということで、解約したときに他の会社の半分とか3分の1ぐらいしか返ってこない。それは、契約時に知らされておらず、根掘り葉掘りしつこく取材して、こういうケースで解約したらどうですかと各社に質問を出して、各社に解約返戻金を出させて初めて分かるというもの。資料1の17ページのような基礎書類が消費者に開示されていなければ、何の判断もできない状況にある。今後、短期保証事業者がどんどん営業を開始するようになると、シンプルな商品に乗り換えますという人もおり、複雑な解約返戻金が伴う過去の主力商品といわれる生保商品から単純な商品に乗り換えるときにその解約返戻金でトラブルが起こることも予想される。今の問題をどうするかは大変複雑なのだが、今後の商品開発とか認可のところでこういう問題が起こらないように、監督法できちんと解約返戻金の規定を置くのがよい。

  • まず、ペナルティを解約控除に含めていいかどうかという問題、保険会社が事業費と定めたらすべて控除してしまっていいのかという問題がある。今回ドイツの新法では完全に自由じゃないという発想である。それから、低・無解約返戻金型商品の問題。保険料が安くなっているというメリットは確かにあるけれども、これを長期間続ければそれでまた問題になる。たまたま保険料が払えなくなって早期に解約すると何も戻ってこない。似たような問題でいえばNOVA。非常に長期の契約をしておいて、更に安い、しかし、解約したらペナルティが非常に高くかかって大損をする。ある意味で似たような問題。契約者が自己責任だから解約返戻金が低いということは、当然募集のときに説明した上で売っているが、それは自己責任で、安くなっているというメリットもあるのだから認めていいんじゃないかなと思える反面、完全に自己責任に任せていい世界なのか、やはりある程度どこかで法律が監督法にしろ契約法にしろ何か介入する一線があるのではないかということも一つの考慮ポイントではある。

    資料1の24ページの解約返戻金削減型商品の表を見ていただくと、さすがに終身保険の無解約返戻金型はゼロ。おそらく終身で無解約返戻金なんてものを認可するといろいろと問題があるというご意見が多いのではないか。では終身以外はいいのかという辺りは、実に悩ましい問題で、どのくらい法律が介入すべきかという政策判断がなかなか難しい。

    中間試案の日本語を見てもなかなかよく分からない案が、今あるようなものであれば、ぎりぎりペナルティを取ってない限りはセーフになるという気持ちで作ってある。あるいは監督法上はもう少し制限してもよいのかもしれないという気もする。個人見解だが、資料1の16ページの今の施行規則ないし監督指針で書いてあるような非常にぼう漠とした書き方ですべて規制しているというのは、少し問題ではないかと問題提起をしたい。

  • 低・無解約返戻金型についてNOVAの例を用いて解説していただいたが、私立大学の入学金・授業料に関する訴訟も同様の構造であり、入学しない人から入学金や授業料まで取っていたということがある。この領域になると消費者契約法的な要素があり、ペナルティがなぜ取られるのですか、という問いに対する答が必要になってくる。それは、少なくとも保険契約法の審議の段階で、下に作ったワーキング・グループの議論などを踏まえると、ペナルティを取ることは望ましくないということはコンセンサスで、できればどこかに基準を書いていただきたい。

  • 開示に関して業界の立場を説明すると、過去からいろいろ批判があり、今は解約返戻金はこうなりますよと募集時に開示している。保険料と解約返戻金がいくら出るのかということを御覧の上、商品をお選びいただくということが基本的にある。これを更に基礎書類の中まで開示ということになると、企業機密にかかわってくるので、イノベーティブな会社が損をする部分もあり、なかなか難しい。

  • 数は多くないけれども、解約時に落胆して帰ってくる人が100パーセント。気の弱い人はそうですかと言って帰ってくるが、気の強い人がなぜですかと問い詰めたら内部規定ですということを言われて、それ以上入り込めなかったということがあった。約款に書いてあるといわれても、約款は小さくて難しくてほとんど読まない。言葉にもただ「早くやめると損」としか言われていない。それで途中で解約に行ったときに「何でこんなに少ないの」といった声が100パーセント。アメリカのように最低これだけですよと解約したらこれだけありますよと明らかに分かれば納得する。だから、低くても納得できるような規制・監督をお願いしたい。

  • NOVAや私立大学の例が出ているが、総務省の携帯の販売奨励金問題は、まさに保険でいえば事業費を勝手に決めてよいのかという話と同じである。端末が7万円すると、3万円が本体の価格で4万円が販売奨励金で、大体皆2年で買い換えるから、販売奨励金を回収しなければならないのだが、奨励金がいくらかということははっきりせずに、2年間上乗せをする形で、通信料として回収するという形になっている。そもそも端末価格と通信料は一緒ではよくないというのが我々の結論。そうすると、端末を2年で買い換えた人はその端末を7万円で買えることになっていいのだが、その端末を1年で買い換える人は2万円得。その代わり、物を大切に使う人間が3年とか4年使うと、早く解約した人の分を払わなければならないということになっている。解約返戻金は、関心が高まっているところなので、事業費というのもそんなに自由にしてよいという話ではない。最初の早期解約の分が、契約時に持ってきたお菓子とかいろいろなものを下さった営業職員のインセンティブの料金や奨励金でしたよということまで説明したならば、なかなかその商品は売れなかったのかもしれない。何をどう開示するのかというのが大切なことであって、単に早期解約の場合は事業費を差し引くというだけでは説明したことにならない。その辺りは、監督の方でもお考えいただきたい。

【未成年者を被保険者とする保険について】

  • 法制審では、資料1の25ページでまとめられているとおりの状況であり、なお意見が分かれている。

  • 諸外国では例がなく、未成年者、特に16歳未満の死亡保険の存在そのものを放置しているこの国の価値観に非常に強い懸念を感じる。特に、資料マル2の死亡保障の意義というところの理由は、時代感覚に合っておらず、成熟国になった子供のあり方というのは全く違う。それとともに、親の方のモラルというのもあると思うので、これに対しては強く反対する。

  • 法制審でこういう種類の議論がされていることに大変驚いている。保険金額を制限するとか、禁止をするとか、一部無効にするとか、これは大変なことであり、やめていただきたい。例えば、歌舞伎役者や音楽家などは、子供のころから非常に大きな保険金をかけている人もいる。保険会社に任せるべき。保険会社もいろいろあり、金額制限をする場合もあるだろうし、やらないという場合もあろう。それは保険会社の自由だと思う。これは、契約法に書くことはもちろん、保険業法等でもこの種のことはやめてほしい。

  • 存在するものがすべて合理的であるとは思わないが、子供を被保険者とする貯蓄保険というのは我が国では戦前から定着しており、徴兵保険会社が売ってきたという経緯があった。それに合わせて、現在でもそうだが、簡易保険も戦前から児童保険という形でかなり多くの子供保険を売ってきている前提がある。そういった前提の中で、転ばぬ先の杖で正義の観点から規制を加えた方がよいのか、あるいは長い伝統の中で、もちろん個別のケースとしては、痛ましい事件もあるかと思うが、業界のこれまでの実績に任せるということをベースにして、しかしながらやはり正義の面というのは重要なので、その観点からも監督していくというスタンスでも特段問題はないか。

    むしろ、正義のためには本来ならばあった市場を減退させてしまうというのは、逆にリスクの保険可能性を制約して市場を狭めてしまい、そちらとのバランスも考えて、慎重に検討すべき問題ではないかと思う。

  • 自分も子供保険を掛けてきたが、子供保険や学資保険に期待するのは入学・進学、結婚、けが・病気くらいまでであり、死亡保険に期待はしないのではないか。資料マル2の死亡保障の意義は、全くナンセンスであり、人生の最後に頼るべき支え手は、生活保護とか社会保障が整備されており、子供保険は必要ないのではないか。また、手塩にかけた子供の慰めになるのは金銭ではないのではないか。

  • 高額の死亡保険については、何らかの制約を加えるべき。ただ、音楽家や歌舞伎役者などの例外はあり得るので、子供の収入の何倍かという形で制約を加えればいい。基本的に収入のない未成年者に対する高額の死亡保障については,何らかの制約を加えるべき。

  • やや技術的なことだが、特に傷害保険で、不慮の事故で障害を負った場合、非常にコストがかかるわけであり、それに対する備えとして、障害保障のニーズがある。しかし、後遺障害と死亡を分けて、死亡のみ不担保という契約形態というのは、現実では難しい。この点はニーズと仕組みというのが、保険の実務との関係からすると、一律に規制することは難しいのではないか。それで、収入がないという普通の子供の場合に、例えば生命保険でも8,000万などは確かにどう考えてもおかしいわけで、許容できるという意味では全くない。したがって、結果的に制約がかかった状態になるというのが健全な状態であろう。一律何百万円ということを決めてしまうと、例外的な実需が否定されることになり、必ずしも適当ではないと思う。いろいろな両極面からの価値観の主張に対し、それぞれ賛同すべき点はあるが、やはり保護法益は何かということから考えるべきではないかと強く思う。

  • 子供保険なら大丈夫であろうとのことだが、子供保険という名のもとにどのような商品開発ができるのかということを見ていくと、若干の不安がある。例えば、損保の子供保険は傷害保険に付けたものであり、それと学資ということで一般のニーズに応えた商品だと思う。生保も最初のころの子供保険は葬式代程度しか付かないという形であり、これは納得がいくのだが、資料2の3ページの生存給付金付定期保険は、本来は定期保険なので、下の「定期保険」の欄に入れなければいけない商品で、これはもともとは主婦などを対象にして、1,000万とか1,500万、2,000万、それに貯蓄機能をつけた商品として出てきたはずのものを、養老保険をベースにした子供保険より、定期保険をベースにした生存給付金付定期保険の方が保険会社としてメリットが大きいということで、どんどん低年齢化して売られてきた商品である。子供保険では子供の死亡保障は少なく、払込保険料累計額を払うとあり、子供の死亡、高度障害というと1,000万とか1,500万とかが乗ってくるわけで、これを一緒にして統計するとか、一緒にして議論することはできない。生存給付金付定期保険が子供保険だというならば、そこのところの定義も含めて検討してほしい。

  • 仮に保険契約法では制約を置けないとした場合に、保険監督、保険業法の方で何ができるかという問題についてだが、契約法で定められないならば監督法でも無理であるということについては異なった考え方を持っている。契約法で金額制限等ができない理由が法律で制限を置くことができないという理由であるならば、監督法でもできないということになるのだろうが、契約法で制限できないというのは、そういう発想からの意見もあったと思うが、一律に保険金額だけで制約することには難しい問題があるということも大きな理由になっているのだと思う。

    保険法部会での話であれば、例えば未成年者について、葬儀費用500万円程度の保険金ならばよいが、それを超えるのはどうかという考えの人も、富裕者向けに一時払い養老で2,500万円の保険料を払って、死亡したときに、あるいは満期が来たときに3,000万円の保険金がもらえるという保険がだめかと問えば、それは結局2,500万円の預金と500万円の定期保険に入ったのと同じことなので、それをだめだとは言わないと思う。保険金で一律に制約すると貯蓄型の保険すら売れなくなるという問題がある。

    そこで、保険業法や施行規則等を使えば、保険商品ごとにきめ細かな規制をすることができるのではないか。保険監督法の枠内で金額に何か制限を置くのがベストだと思うが、仮に保険業法でもその具体的な金額が書けないということになったとしても、少なくとも保険会社に対する一般的な監督ルールを定める中で、未成年者の生命保険の引受けのあり方について、やはり明文の規定を置くということを考えてほしい。例えば、保険業法100条の2、それを受けた保険業法施行規則の中で、未成年者は生命保険については、いわゆる危険保険金が未成年者の死亡によって生ずる経済的需要を勘案した合理的な範囲内にあること、といった基準を設けて監督するということが考えられるのではないか。検討してほしい。

  • 資料1にあったように、契約者間での契約の上限金額を定めるというのは、民事効であり、諸外国でも契約法に金額の規律があるというのが実情である。また、法制審でも話題になった栃木県での子供保険金殺人という疑いがあった事件については、報道ベースでは、学資保険1,000万円、農協の生命保険7,000万円とのことである。このように、保険業法だけ何かルールを求めたとしても、他の制度共済等も同じように規律を置かない限りは、しり抜け的なことが発生するわけであり、規律を求めるのであれば、契約法で広く置いた方が立法技術上、効率的ではないか。

    金額を定めることについては、保険業法は保険契約者等の保護を図るということは抽象的にまず目的としてうたっており、ある種の社会政策上の危険性とか、刑事予防政策的な観点から、こういうケースの保険についてどこまで制約するということをどう取り込んでいくのかというのが、契約法も同じだと思うが、法的に書くのが難しいという点である。

  • 保険という制度は常にモラルリスクが伴う制度であり、それが現実化しないように制度的な工夫をしながらやらなければならない。特に、子供を被保険者にする生命保険に関して言えば、ほかの被保険者利益に当たるものが一体どれだけあるのかという問題もあるし、モラルリスクを抑えるための一番根本的なチェック手段である本人の同意をきちんととることができないという根本的な問題があり、どうしてもモラルリスクという大きい問題が生じざるを得ない。仮にこれで事件が起きると、保険という制度についての社会の厳しい目が出てしまうということになるので、十分な配慮が必要である。

    結局それぞれが互いに押しつけ合って、自分のところでは処理したくないというように聞こえる。それぞれ問題があり得ることは認識していて、業界も特に高額の契約については問題があるということは認めているが、ではそれをどういう形でチェックして、少しでもそういう問題が起きないようにしていくかについて、自分のところではなくて他のところでやってほしいというのがあまりにも強く出ているのではないか。それぞれが自分でできるところをやってほしい。

    契約法の方でも、本当は諸外国でこういった法規定を設けられているのに、何で日本ではできないのかということはあると思うし、業法の方だって、やれることはいろいろある。監督指針でももっと具体的なことが書ける。監督指針の中にモラルリスクが高い契約についての部分があったが、被保険者が未成年者であるということが要素として書き込まれていない。

    制度が共済と違うので、保険業法で措置しても共済の方で規制がなされなければ、しり抜けであるというが、それならば、共済の方にも声をかけて、お互いに協力して、そういったものをチェックするシステムを考えなければ、役所の責任を果たしたことにならない。 また、保険会社間で、お互いに問題のあり得る契約を登録しているが、それでも加入限度額自身が高過ぎるとは思うが、生命保険会社だけではなく、共済も含めた登録制度を構築することを努力するなど、努力してほしい。

  • 高度障害の場合に保険金がある一定程度払われるにもかかわらず、死亡だったときに払わないわけにはいかないという発言があった。一般の大人を対象とした死亡保険の場合について、高度障害と死亡の連続性というのはあるのかもしれないが、子供が高度障害に陥ったときにお金がかかるということに対して保険金を使うということは合理的なことだと思うが、そういう状態に陥らずに死亡に至ったという場合に、保険料積立金相当額程度のものが何らかの形で返戻金程度戻ってくると、額に差があったとしても、高度障害になってくれればよかったのにと思う親はまずいないだろう。そういう意味で、そこに親が連続性を見出すということはまず考えられない。実需程度のものが必要だということで収めておけばいいのであって、高度障害の場合はまさに実需があるから、それに対して高い保険金が払われることが社会的正当性の根拠だとすれば、死亡の場合の実需というのは葬儀費用程度のものではないかと思う。

  • 高度障害と死亡を分けられないとか、そういうテクニカルなことをおっしゃらないでいただきたいというのが一つ。また、歌舞伎役者さんの話は、女優さんでも脚に保険を掛けている方とかいろいろあって、商品性で解決できる問題なので、それを子供の死亡保障という形の商品の中で解決しなくても済むのではないかというのがもう1点。

    それから、夫婦の方がそういうケースがあるのではないかという話だったが、ドメステックバイオレンスから奥さんならシェルターに逃れられるが、子供たちは親権があるのでシェルターには逃れられない。この機会に皆さんにはこの国の未成年者保護のあり方についてぜひ考えていただきたい。

  • 生命保険文化センターのデータで、4割程度の方は死亡保障があってもよいと思っていることは事実である。危険選択に関する取扱いに関しては、過去のいろいろな経験を踏まえた中で、いろいろ工夫をしてきて作ってきたものであり、これをもってよかれと思っているわけではない。いかによくしていくのかということについては、今後とも十分努めていきたい。

以上

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総務企画局 企画課 保険企画室(内線3571)
本議事要旨は暫定版であるため、今後変更があり得ます。

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