金融審議会「保険の基本問題に関するワーキング・グループ」(第45回)議事要旨

1. 日時:

平成20年7月3日(木)13時00分~14時40分

2. 場所:

中央合同庁舎第7号館12階 共用第2特別会議室

3. 議題:

  • 未成年者・成年者の死亡保険について

  • 本WGにおける今後の検討課題について

4. 議事内容:

  • 未成年者・成年者の死亡保険及び今後の保険ワーキングにおける検討課題について、議論を行った。

  • 議論の結果、内閣府令の概要案については了承された。

【未成年者・成年者の死亡保険について】

  • 資料で提示された水準についてワーキング全体として合意できる、ということであれば、重く受け止め、この内容を踏まえて協会として自主ガイドラインを策定するとともに、協会長会社個社としてもこれに沿って引受基準を整備していきたい。

    なお、例えばずっと以前から付けている継続契約の多くや、海外旅行保険の3000万円の設定が許容される場合などについて、各社が適切なアンダーライティングのもと運営していく前提で、合理的な例外を設ける場合がありうることにはご理解をいただきたい。

  • 未成年者の死亡保険について、生命保険会社も損害保険会社も1,000万円を引受上限金額としているが、この金額は業界が自主的に決めた金額で、皆が合意しているものか。

  • 業界がこれでしっかりやりますということだとご理解いただきたい。

  • 損保につきましても同様で、業界においてこの線で守らせていただきたいと考えている。

  • 1,000万円の根拠は何か。

  • 葬儀費用等も一定の幅があるという事務局からの説明に加えて、生命保険の販売実態を説明すると、販売時に設計書で死亡高度障害の保障金額とその場合の保険料をしっかりと記載した書面で説明を行う中で、1,000万円程度の金額が多くのお客様に受け入れられており、これくらいの金額が適切ではないかと考えている。

  • 損害保険についても、これまでの議論を踏まえ、モラルリスクを制限しつつ、契約者のニーズを損ねない範囲として、葬祭費等を基に1,000万円を線として考えた。

  • 金融庁の提出資料によると、葬祭費だと永代供養等もろもろ含んで300万円くらい。保険というのは基本的に被保険者利益に着目する必要があり、未成年者の死亡保険に関しては被保険者利益的な損失があるのかが、大きな争点。1,000万円を上限として義務化することには抵抗があり、基本的には子供に保険が必要かという原点から考えていくべき問題だと考える。

  • 母子家庭や祖父母が子供を育てているという生活事情の中では、葬式代も必要である場合もあり、金額の設定は難しい問題であるが、未成年者の死亡保険のニーズはあるのではないか。しかしながら、モラルリスクの防止として、監督や適時の見直しが必要。

  • 基本的には、業界の自主規制と金融庁による内部管理体制のチェックを行い、金融審も実施状況についてフォローアップを行っていくことになるのではないか。

  • 保険金総額について、名寄せを行う必要があると考えており、特に海外旅行については、パスポートの名前や番号を利用した形での名寄せを行うべき。支払い時のチェック体制について、業界全体できちんと構築されるのであれば、引受総額で1,000万円以下という線は妥当なラインではないか。

  • 葬儀費用はかなり幅が大きいので、ある程度のニーズはあるのではないか。他方、過去の保険金事故を見ると、1,000万円という金額はある程度犯罪防止になり得るのではないか。

  • これだけ海外に行く子供達が多いことを考えると、ニーズがあるのも事実。出費について合理的に見積もり、世間的に見ても妥当な数字という観点から、1,000万円でよいのではないか。ただし、必要性のない保険の販売は問題であるので、その部分は業界でも真摯に検討していただきたい。規制については、あまり細かく規律しようとするとビジネスの進歩も阻害されるため、業界の自主規制ルールで妥当な金額でやればよいと思う。

  • 我が国ではたとえ未成年者であっても、交通事故などで死亡した場合には当該未成年者に数千万円の損害が発生し、その損害賠償請求権を遺族が相続して行使するという構成がとられているから、未成年者についてはそもそも多額の損害が発生しないからという理由付けは苦しい。やはりモラルリスクという視点から金額制限を整理する方が法制度や法実務に適合するのではないか。モラルリスクについては、金額が低ければ低いほど安心ではあるが、それだけではなく、引受時のチェックをきちんとすることで、モラルリスクは相当程度防止できると思う。結論的には1,000万円は妥当ではないかと思う。

  • 以前より引受上限金額の根拠を判断する材料の提出を求めてきたが、保険業界の1,000万円の根拠の説明は不十分と考える。業界は議論の材料を出すことを怠っていることを反省すべき。また、適切な引受上限金額の設定がなされたとしても、その上限金額にはりつくことがないようにすべき。

  • 未成年者の死亡というものは、精神的な苦痛に加えて、個々の状況により異なるが経済的な損失もあり、今までなされた説明の中から、1,000万円という額については理解できる数字である。ただし、各保険会社においては審査体制をしっかり整備・運用していく中で、個々のケースについてしっかり対応していくべき。

  • 独自にインターネットでニーズ調査をしてみたが、子供に死亡保険が必要かについて、55パーセントが「必要ない」、45パーセントが「必要」との回答。「必要」の回答には、いわゆる逸失利益的な考え方もあったが、1週間にわたり意見募集したところ、モラルリスクの観点から、金額制限すべきとの回答が次第に多くなった。また、死亡保険を「必要」とする理由については、ほとんどの契約者が、高度障害保険金のために入っていることがわかったが、未成年の子供の高度障害に関しては、本来は公的な制度で対応すべきもので、親が経済的に自腹を切るものではないと思う。高額の死亡保障のセールスの道具に高度障害が使われる、という状況は問題ではないか。

    資料には1,000万円を超える契約が42.7パーセントで、6割弱が1,000万円以下だとあるが、1,000万円の契約が相当に多いはずである。したがって、金額制限を「1,000万円未満」としたら保険の契約状況は大きく変わると思う。保険会社にすすめられるままに1,000万円の契約をする状況から、それぞれの家庭が本当に必要な金額を考えはじめるはずだ。真のニーズが損なわれないように、かつ不幸な子供が生じないような金額の設定ができないものか。

  • 色々とご批判やご意見をいただいているが、きちんとお客様のニーズを踏まえて販売すべきということだと認識しており、いただいたご意見については業界内にしっかりと連携をし、各社しっかり取り組んでいけるようにしたい。

  • いずれにしても、未成年者の死亡保険に対し何らかの規制が必要ということについてはコンセンサスがあり、今日の意見を伺ったところ、その理由付けや根拠についての議論はかなり整理されてきている。大きくは保険金殺人というモラルリスクの観点からの規制の必要性と親が子供を経済的に利用してよいのか、あるいはそういうビジネスを事業者として行ってよいのかという社会倫理的な観点からの規制であると思う。モラルリスクについては、100パーセントの防止というのは不可能であるが、いくらの保険金額であれば根絶できるというものでもない。しかし、色々な過去の保険金事故などを経験的に見ていくと、1,000万円という金額は保険金殺人という意味でのモラルリスクの誘因にはなりにくいと思う。また、社会倫理的な面では、葬儀費用程度に限って容認してはどうかという意見もあったが、これは、親に子供の死亡によって経済的に損失が生ずる分を埋め合わせる程度の保険なら正当化できるのではないか、逆に、それを超えると親に利得が生じて問題があるのではないか、という観点である。しかし、葬儀費用についても幅があり、いくらが倫理的に問題なく適切であるのかを、具体的な金額で科学的に定めることは難しい。

    生命保険というのは、契約法の理論では定額保険の位置づけとなっており、損害保険というのは、実際に生じた損害を限度にてん補する保険であり、これは利得の禁止を非常に強く強調する保険である。人が死亡したような場合にどれだけ経済的な損失が生ずるかについては一概に判断できないので、一定の金額で規制することはしない、そういう定額保険という概念をもって認めている。経済的な損失がいくらかということをここだけで確定し、それをもって規制の根拠とすることは難しいと思う。

    これまでの議論で伺っている限りは、1,000万円について、高いという方もいればそうでないという方もおり、なかなかコンセンサスが得られる性質の問題ではない。しかし、高いという方も、1,000万円で今回制限をすることについて、根本的におかしいといった意見はなかったと思う。モラルリスクと社会倫理的な両面で不十分なところがあるといった意見もあるかもしれないが、大多数の委員の賛同は得られていると思う。ただ、勧誘の基本方針を各社できちんと定め、金融庁もそれをウォッチしていく制度を、保険業法においても整備するという条件は必要であるとの意見は多かったと思う。

  • 府令の概要案で「社内規則等に基づいて業務が運営されるための十分な体制を整備する」とあるが、この「十分な体制」とは何か。また、資料には「通算可能な商品について、まずは各業界内通算とし、将来的には生損保業界の情報交換のあり方を含め、業界内で今後検討」とあるが、この「将来的には」については、目標年限を設定すべき。

  • 「十分な体制」については、保険会社各社のほうで体制を考え、金融庁が監督・検査に行ったときに十分な体制ができているのかということについて説明を求め、各社のほうからきちんとした説明を行うという、ある種の挙証責任の転換が行われるような形での監督手法のための表現であると考えている。業界の通算については、業界のほうで対応がとられるものと考えている。

  • 生損保業界の情報交換については、一度打合せを行っているが、現状ではシステム的な課題もあり、持ち帰って検討しているところ。期限の確約はできないが、ご意見を踏まえて、早急に取り組んでいきたい。

  • 日本損害保険協会と外国損害保険協会との接続に関しても打合せは持っており、これについても早急に詰めていきたい。

  • 保険はいつも難しい議論が多く、意見に幅がある中で、様々な議論を頂きながら一歩一歩進めてきているのが実態かと思う。本件のテーマについても、これまでルールがないところに新しいルールを設けるということであり、とにかく一歩でも前に進めるということが肝要と考える。まずは業界の自己努力が大前提ではあるが、金融庁もそれをウォッチしていきたいと思っている。その上で、この委員会でいただいたご意見を心に刻み、一歩前へ進めさせていただきたいと考えている。

  • 原案をWGとして了承するということでよろしいか。

  • (「異議なし」の声あり)

  • 業界による引受上限金額の自主的な制限について説明を受け、内閣府令の概要案をこのワーキング・グループとして了承するということで、ご賛同頂けたようなので、これをもって決定としたい。

【本WGにおける今後の検討課題について】

  • 外国保険会社規制をきちんと整理すべきである。

  • ワーキング・グループの今後の検討テーマは、必要に応じて法改正も行うという考え方で検討していくのか。また、生命保険協会や損害保険協会が作成している、引受けや支払いのガイドラインについては、本来は立法で措置すべき条項を応急措置的にやってきたというものも幾つか見受けられるため、それらをきちんと整理し、見直していくべき。責任開始前発病不担保の適用や告知義務についても、是非検討項目の中に加えてほしい。

  • 責任開始前発病不担保の問題は、支払いのあり方に含まれていたかと思う。

  • 法改正をしないことを前提に議論するのではなく、幅広い視点から議論すればよいと思う。

  • 支払い漏れや請求漏れがないようにということで行っている訪問活動について、その効果や教育はどうなっているか。また、訪問活動以外のサービスはどうか。説明に来るのが1年に1度くらいというのは、頻度としては少ないのではないか。

  • お客様をしっかり訪問すべきというご指摘はごもっともであり、訪問活動についてはより一層取り組みを進めてまいりたい。訪問活動の効果については、顧客満足度を調査するとかなり上がっている。また、訪問に際しては、お客様に対し現状の商品の説明を行うよう教育を行っている。請求漏れをしないような取り扱いとして訪問活動以外にも、例えば約款の簡易な説明のペーパーであるとか、あるいは保険金等の請求に当たって注意すべき事項を冊子にしたものや、チェックシートを活用するなど諸々の取り組みをしている。

  • 生命保険のような訪問活動というわけではないが、損保では1年契約が中心であり、契約更改の都度、内容確認ということで活動している。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企画課保険企画室(内線3571)
本議事要旨は暫定版であるため、今後変更があり得ます。

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