金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」(第6回) 議事録

  • 1.日時:

    令和4年2月18日(金曜日)14時00分~16時00分

  • 2.場所:

    オンライン開催 ※一部、中央合同庁舎第7号館 9階 905B会議室

【神田座長】
 金融審議会のディスクロージャーワーキング・グループ、本日はその第6回目の会合になります。皆様方にはいつも大変お忙しいところを御参加いただきまして、誠にありがとうございます。

 本日の会議におきましても、新型コロナウイルス感染症対策の観点から、金融審議会の議事規則に則りまして、オンライン会議を併用した開催ということとさせていただきます。

 議事録は、通常どおり作成の上、金融庁のホームページにて後日公開させていただきます。

 会議を始める前に、いつものことで恐縮ですが、事務局から留意事項の説明をお願いいたします。
 
【廣川企業開示課長】

ありがとうございます。企業開示課長、廣川でございます。よろしくお願いいたします。

 オンライン会議について2点ほど留意事項がございます。

 1点目でございますが、御発言を希望される際は、オンライン会議システムのチャット上にて全員宛てにお名前を御入力ください。そちらを確認の上、座長から指名をいただきます。また、御発言される際には冒頭にお名前をお願いいたします。

 2点目でございますが、御発言されない間は必ずミュート設定にしていただくようお願いいたします。御発言される際にミュートを解除いただきまして、御発言が終わりましたら再びミュート設定にしていただくようお願いいたします。以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。また、これまでのように、本日の会議につきましてもウェブ上でライブ中継させていただいております。

 それでは、議事に移らせていただきます。

 まず、第5回ディスクロージャーワーキング・グループでの議論に関しまして、永沢委員から意見書をいただいております。そこで、今日は、まず、事務局からこの意見書を簡単に御紹介いただきます。続きまして、事務局から本日の第6回資料の説明を行っていただきます。そして、さらに続きまして、中野委員に四半期開示制度に関する実証研究の調査をしていただいておりますので、この点について中野委員から御説明をいただきます。これら一通り全部終わった後で、皆様方から御質問や御意見をお出しいただき、討議の時間とさせていただきたいと思います。

 それでは、まず、事務局の説明から始めたいと思います。よろしくお願いいたします。

【廣川企業開示課長】

ありがとうございます。それでは、まず、永沢委員より御提出をいただきました意見書につきまして御紹介をさせていただきます。お手元、また画面に表示されております意見書を御覧ください。

 第5回ディスクロージャーワーキング・グループで扱いました「経営上の重要な契約」に関して、4点御意見を頂戴しております。

 1つ目は、重要な契約について、契約の当事者双方において開示されるべきこと。

 2つ目は、開示の基準、重要性の判断基準が重要かつ難しい課題であること。

 3つ目は、開示すべき情報については、将来的なリスクに関する事項、会社の支配に関する事項の2つが特に重要であること。

 また、4つ目は、株式に譲渡制限を設ける契約は他の投資家にも開示されるべきであること、との御意見を頂戴しているところでございます。

 概要を説明させていただきましたので、後ほどお手元の資料で御確認いただけたらと存じます。

 続きまして、第6回、本日の資料について説明をさせていただきます。事務局説明資料に沿って説明申し上げます。

 お手元の資料、表紙をおめくりいただきまして、今日の概要でございますけども、企業を巡る変化と上場企業の情報開示のイメージということで、近年の企業を巡る変化として、デジタル化による企業業績のタイムリーな把握、また、企業経営におけるサステナビリティの重視というような変化がございます。こうした中で、いろいろな形で情報がどのように開示されているかという全体像をお示ししております。本日のテーマ、一番下に並べてございます。「四半期開示」、「適時開示と臨時報告書」、「重要情報の公表タイミング」、また、参考として「決算期と株主総会」の話もつけさせていただいております。

 それでは、最初の四半期開示について説明をさせていただきます。2ページ、目次でございまして、次の3ページ、四半期開示の概要ということで、上場企業は、四半期ごとに、取引所規則に基づく四半期決算短信、また、金融商品取引法に基づく四半期報告書を提出することが求められております。この四半期報告制度の導入の目的として、上のほうに書いてございますけれども、投資者に対し企業業績等に係る情報をより適時に開示するとともに、企業内において、より適時な情報把握により的確な経営のチェックが行われる必要性があるという目的・趣旨で導入されたところでございます。また、法定開示である四半期報告書につきましては、監査人のレビューを受けた上で提出することが求められてございます。

 4ページでございます。四半期開示の主な経緯ということで、1999年11月に、東京証券取引所におきましてマザーズ市場で四半期情報の開示の義務付けが行われました。その後、四半期の情報開示に向けて取組みが順次進められてきておりまして、2003年4月時点、東京証券取引所におきまして、段階的な「四半期財務・業績の概況」の開示を導入ということで、2004年末には東京証券取引所上場企業の9割が実施してきたというような状況でございました。その後、法制化の議論が行われます。結果として、2006年6月、金融商品取引法制定によりまして四半期報告が法制化され、2008年4月から施行されているところでございます。

 5ページに参ります。本ディスクロージャーワーキング・グループにおきましても、これまでにも四半期開示については議論をしてきておりまして、前回、2018年6月28日に報告書が出ておりますけれども、ディスクロージャーワーキング・グループにおきましては、ここにお示ししているような形で整理がなされております。四半期開示については、1つ目の丸ですけれども、中長期の視点で投資を行う観点からも進捗確認の意義を認める見解が大勢である。2つ目の丸ですが、非財務情報など中長期的な企業価値向上の観点から特に重視される情報の開示は必ずしも十分とは言えない。一番下の丸ですが、四半期開示を任意化した場合には、開示の後退と受け取られて我が国の資本市場の競争力に影響を及ぼしかねないと考えられる、等を踏まえまして、四半期開示制度を見直すことは行わず、引き続き、我が国における財務・非財務情報の開示の状況や適時な企業情報の開示の十分性、海外動向などを注視し、必要に応じてそのあり方を検討していくことが考えられると、こういうふうに整理されていたところでございます。
 6ページに参ります。当時の意見をつけさせていただいております。左側に四半期開示制度を見直すべきという意見、右側に維持すべきという意見でございます。

 7ページに参ります。これは岸田総理の所信表明演説及び施政方針演説ということで、2021年10月8日の所信表明演説におきましては、「企業が、長期的な視点に立って経営を行うことが重要という中で、非財務情報開示の充実、四半期開示の見直しなど、そのための環境整備を進めます」というふうにおっしゃっておられます。また、その下、2022年1月17日の施政方針演説におかれましても、「今年中に非財務情報の開示ルールを策定します」、あわせて、「四半期開示の見直しを行います」というふうに述べておられます。

 8ページに参ります。主要国の資本市場における四半期開示の取扱いということで、米国、中国では法定で義務化が継続されておりますけれども、欧州ではかつて法定されていたもの、義務づけられていたものが、現在では任意化されている。ドイツでは、取引所規則におきましてプライム市場の四半期開示が継続しているというところでございます。

 9ページに参りまして、これは御参考ですけれども、四半期開示の義務・任意に関わらず、諸外国では市場に重要な影響を与える情報を速やかに公表することを求める規定がございまして、左側、アメリカ、取引所規則におきまして、証券市場に重要な影響を与えることが想定されるニュース又は情報、例えば四半期収益、こういったものを速やかに公表するということになっておりまして、アーニングリリースというものが出ているということでございます。

 10ページに参ります。中長期的な視点に立った企業経営と四半期開示との関係ということで、四半期開示に関しては様々な御指摘がございます。例えば、日本の一番上のところですけれども、四半期開示というのは、投資家や企業の短期的利益への志向を助長するとの指摘がございます。一方で、中長期的な視点に立った経営にとっても、目標に対する進捗度の確認として四半期開示は重要との指摘もございます。また、開示全体の充実や資本市場からの信頼確保といった視点が不可欠との指摘もございます。アメリカにおきましては、短期主義との関係でいきますと、企業の短期主義をもたらしているのは、四半期開示というよりは、四半期の業績予想の開示であるとの指摘もあるところでございます。またアメリカの一番下の丸のところですけれども、四半期開示のコストへの配慮は必要だが、デジタル化により、必ずしも企業の負担は大きくならないとの指摘もある。一方で、欧州のところでございますけれども、四半期開示、特に中小規模の企業にとって、資本市場への上場に対する高いコストとなっているという指摘もあるということでございます。

 11ページに参ります。四半期開示が企業の投資行動あるいは市場への影響、こういったところで与える影響について実証研究がございます。後ほど中野委員から詳しく御説明いただくので、概要だけ御説明申し上げますと、まず、企業の投資行動に関する実証研究ということ、これ、様々でございまして、四半期開示の影響として、投資が抑制的になるというような研究もあれば、影響を与えていないというものもあり、はたまた、四半期報告の導入は投資の増加に有意な正の影響があるというような研究もあるところでございます。また、市場への影響に関する御指摘としては、四半期開示により情報の非対称性が緩和される、あるいは、市場の価格形成がより効率的になり、資本コストが低下するといったような指摘もあるところでございます。また、四半期開示を行っていない企業の株価については、同業者の四半期開示情報に過剰反応するというような指摘もあるところでございます。

 12ページに参ります。四半期開示の内容、特に日本の四半期開示で特徴的なのは、決算短信においても法定の四半期報告書においても様式が定められておりまして、比較可能性が高い形で情報提供が行われているところでございます。

 1ページ飛ばしまして14ページでございます。四半期決算短信等の簡素化ということで、2回前のディスクロージャーワーキング・グループにおきまして御議論がありまして、四半期を含む決算短信について、速報としての性格に比して作成・公表の事務負担があるということで、また、記載内容の有価証券報告書、特に四半期報告書との重複があるとの指摘がございましたので、これも踏まえまして、速報性の観点から整理・合理化を提言し、実際に見直しが2017年4月から適用されているというところでございます。主要な経営指標の様式についても、これまで義務だったものが要請になっていたり、四半期連結財務諸表などについては後日開示をすることも可能ということ、また、業績予想については、多様な記載例を例示するとともに、四半期レビューは不要であることを明確化してございます。

 15ページ、それから16ページは、四半期決算短信と四半期報告書の比較でございまして、例えば四半期決算短信については、監査人によるレビューが義務付けられていない、また、虚偽記載に対する罰則、課徴金がないといったところが異なっているところであります。また、16ページを御覧いただきますと、四半期決算短信の非財務情報部分については、法定の四半期報告書の記載事項と比較して簡易なものになっているところでございます。

 17ページからは海外のお話でございますけれども、特にヨーロッパ、四半期開示を任意化された国々ということですが、17ページではイギリス、18ページではフランスの例ですけれども、それぞれ任意で四半期開示を行っている企業については、財務諸表を添付している企業もあれば、添付してない企業もあるということで、ばらつきが見られるという状況でございます。

 19ページに飛びまして、ドイツですけれども、ドイツは先ほども申し上げましたが、プライム市場、正確に言うとプライムスタンダード市場では、四半期開示が求められているところですが、財務諸表はなしでも可能となってございます。

 現状につきまして、20ページ、それから21ページですけれども、まず20ページ、プライム市場の時価総額上位のうち、具体的にはDAXの指数構成銘柄39社のうち、どれぐらいが四半期開示において財務諸表をつけているか、要約財務諸表も含めてですけれども、8割がつけているということでございます。時価総額下位の40銘柄も試しに取ってみましたところ、同じく要約であるものも含めて8割がつけているということでございました。

 その上で、次の21ページですけれども、これは私どもというよりリサーチ論文を御紹介させていただいているのですが、プライム市場全体で見たときに、もう少し丁寧に見てみますと、財務諸表自体を開示しない企業というのが少しずつ増加しているということで、財務諸表そのものというよりは、例えば要約財務諸表を開示している企業が増えていたり、定性情報の記述にとどまる企業の割合が増えていたりしているというような状況でございます。

 22ページに参ります。こちらは、2016年度以降で会計上の問題により法定の四半期報告書あるいは年度については有価証券報告書の提出期限が延長された件数、148件ございますけれども、見てみますと、特定の四半期に偏りはなく、各四半期の決算手続きで会計上の問題があることが明らかになっているところでございます。

 23ページに参ります。御参考ですけれども、半期報告書の概要です。今、有価証券報告書を提出する非上場の企業につきましては、金融商品取引法に基づきまして半期報告書の提出が求められております。また、この半期報告書につきましては、中間監査という形で監査を受けることが義務付けられてございます。

 24ページに、その監査につきましてですけれども、中間監査、それから四半期レビュー、それらが年度監査とどういうふうに違うのかということで相違をつけさせていただいております。

 25ページに参ります。四半期開示書類の提出日の状況ということで、四半期決算短信と、それから四半期報告書、この提出日についてどれぐらい近いのか、ずれているのかというのを取りました。その結果は、一番端的には左下のグラフですけれども、横軸に四半期報告書の提出日、縦軸に四半期決算短信の提出日を取りまして、それぞれどこに位置するのかという社数を書いているところでございます。四半期決算短信のほうは、速報性ということを重視しているということではあるのですけれども、多くの企業は右上のほうですので、四半期決算短信を36日から期限内に開示して、四半期報告書を法定期限に近い日に提出しているグループが多いというところでございます。他方で、右下にありますように、四半期決算短信を少し早めに、30日以内に開示して、四半期報告書は法定期限に近い日に提出しているというグループも一定数存在するというところでございます。

 次に、適時開示と臨時報告書に関する関係資料を御説明申し上げます。

 27ページに参りまして、適時開示、それから臨時報告書の概要ということで、適時開示のほうは、証券取引所の有価証券上場規程に根拠があり、臨時報告書は金融商品取引法、法定開示書類でございます。ですので、一番下のところですけれども、適時開示はTDnet、臨時報告書はEDINETに開示ということになってございます。有価証券の投資判断に重要な影響を与える上場会社の業務、運営または業績等に関する情報を、直ちにその内容を開示しなければいけないと、これが適時開示の考え方でございます。臨時報告書のほうも同様に、重要な事実とか決定事項があった場合に、遅滞なく提出しなければいけないという考え方で制度が整備されてございます。

 28ページに参りまして、両者の開示事項を比較しております。適時開示のほうは、ここの青字部分ですね、これが臨時報告書よりもより多くの事項で開示を求めている部分ということでございます。

 29ページに参りまして、これは続きでございますけれども、特に今回の議論との関係でいきますと、下の枠で囲ってある部分、業績等に関する事項の開示事項というのが適時開示のほうにございます。具体的には、先ほど申し上げました決算短信、四半期決算短信、これも適時開示の中に入っているのですけれども、それに加えまして、特に適時開示のほうでは、上場会社(子会社等)の業績予想の修正あるいは予想値と決算値の差異、それから配当予想、配当予想の修正、あるいはその他上場会社の運営、業務若しくは財産又は当該上場株券等に関する重要な事項・事実があった場合の包括的な開示というのもなされているところでございます。

 30ページに参りまして、さらに続きますけれども、この適時開示、それから法定の臨時報告書もそうですが、業績等に関する規定につきましては、提出事由に数値基準を定めているものがあるということでございます。一例を申し上げますと、左の適時開示では、直近の予想値と比べたときに、新しく算出した予想値などが、例えば売上で見たときには10%プラス・マイナス振れているとき、あるいは利益でいくと30%プラス・マイナス振れているときといったような場合には、適時開示をしていただくというような枠組み。あるいは、左の下に行きまして、直前連結会計年度と比べてということで、例えば売上がプラス・マイナス10%、あるいは経常利益、当期純利益が30%プラス・マイナス振れるというような見込みがある場合には、開示というような数値基準がございます。

 31ページに参ります。適時開示の開示該当事由というのは、基本的にはインサイダー取引規制と、おおむねですけども、揃えられているということがございます。インサイダー取引規制のところ、右側を見ていただきますと、目的・趣旨のところでございますけれども、これ、規制自体は、一定の事項の情報開示を求めるものではなくて、当該事項が未公表の場合に、会社関係者等の売買等を禁止するものということになってございます。他方で、この適時開示の開示該当事由が基本的にインサイダー取引規制とそろえられているということでございますので、左側に参りまして、適時開示のほうでは、一方で情報開示を求めるというコンテクストの中で、また、右側に戻りまして、※印のところに書いていますけれども、当該情報を適時開示することによって、インサイダー取引規制は解除というような関係になっているところでございます。

 それから、32ページに参ります。これ、アメリカの臨時報告書、法定の開示書類の記載事項ですけれども、アメリカでは、財務状況も含めてプレスリリースなどで企業が公表した情報については、法定のForm 8-Kという臨時報告書により開示をすることが求められているというところでございまして、次の33ページですけれども、アメリカから見た外国企業、例えば日本の企業がアメリカ上場している場合には該当するのですが、そうした企業が本国において経営成績等に関する情報等を開示した場合、これは本国で法定開示をした場合、取引所規則に基づいて開示した場合が含まれますけれども、こうしたものについてもForm 6-Kによってアメリカで法定開示することが求められているということでございます。

 次、34ページ以降に参ります。3つ目の重要情報の公表のタイミングに関する資料でございます。

 35ページにつけておりますのは、重要情報の公表のタイミングについて、前回のディスクロージャーワーキング・グループでも御議論いただいて頂戴している提言についての御紹介でございます。当時の認識としては、多くの上場企業による重要情報の公表のタイミングというのが、証券取引の立会い時間終了後、いわゆる「引け後」の15時以降に集中しているという中で、その公表のタイミングについて御議論があって、例えばですけれども、立会時間前に開示されることが望ましいというような意見もあったところでございます。一番下の段落ですが、上場企業の株価に影響を与える重要な情報については、より速やかな公表に向けた取組みが進められるべきというふうにされていたところでございます。

 36ページに参りまして、これはファクトとして、昨年2021年4月下旬から5月上旬の開示の状況について見たところ、重要情報の公表タイミング、引き続き「引け後」の15時以降に集中しているような状況でございます。

 37ページ、これとの関連でということでございますが、東京証券取引所のアクション・プログラムにおきまして、立合時間を30分延伸する方向性が示されているということでございます。

 最後、38ページ以降、決算期と株主総会との関係です。

 御参考ということで39ページ、日本の企業の決算期は3月に集中している一方で、アメリカ企業、英国企業の決算期は12月に集中しているということで、いわゆる決算期のずれというのがあります。

 以上を踏まえまして、ご議論いただきたい事項です。41ページ以降を読み上げさせていただきます。

 まず、41ページ、四半期開示につきまして、総理大臣施政方針演説において、四半期開示の見直しを行うと述べられているところ、以下の主張があることを踏まえ、どのような見直しを行うことが考えられるか。「四半期開示の見直しは、投資家や企業の短期的利益への志向を見直す上でも重要」、「中長期の目標に対する進捗度を確認するためには四半期開示は有用」、「四半期開示の任意化について投資家の納得を得るためには、日本企業の非財務情報などの開示の充実が必要」、「四半期開示の任意化は、非財務情報を含む記述情報の充実度と合わせ、開示に向けた各企業のスタンスの『見える化』につながる」、「期中の企業の異変の兆候については、四半期開示ではなく、適時開示で対応することが考えられるのではないか」

 2つ目の丸としまして、上場企業は、金融商品取引法に基づく四半期報告書と取引所規則に基づく四半期決算短信の提出が求められているが、金融商品取引法と取引所規則で開示を義務づけていることについて、どのように考えるか。

 42ページに参ります。引き続いて四半期開示ですけれども、仮に金融商品取引法に基づく四半期報告書を廃止する場合、取引所規則に基づく四半期決算短信に関し、A)開示内容についてどう考えるか。見直すべき点はないか。B)開示内容の正確性を担保するための措置についてどのように考えるか。例えば、監査人のレビュー(現在、金融商品取引法に基づく四半期報告書に求められている)についてどう考えるか。

 次に、適時開示と臨時報告書についてでございます。

 期中であっても、投資家に信頼性のある情報が適時に提供されることを確保する観点から、重要事項が発生した場合に開示を求める金融商品取引法に基づく臨時報告書や取引所規則に基づく適時開示の制度に関し、例えば、以下の点について、どのように考えるか。A)よりタイムリーに企業の状況変化に関する情報を開示する規定の整備。B)特に業績の情報について、米国のように、取引所における適時開示を法定開示に組み込む制度の整備。C)適時開示を見直す場合に留意すべき事項というふうになってございます。

 最後のページ、43ページに参ります。重要情報の公表タイミングということで、決算情報を含む重要情報の公表タイミングに関し、社内手続きなどを終了していても、その公表を取引所の取引終了後まで先送りする事例が多いと指摘されている。今後、東証の取引時間延長も予定されている中、市場による情報の十分な消化や価格発見機能の適切な発揮などに向け、重要情報のより速やかな開示を促すためにはどのような取組みを進めることが求められるか。

 最後、その他といたしまして、我が国では、3月決算企業が全体の6割を占めている一方、諸外国では12月決算が多いと指摘されている。企業の決算時期は、様々な要因を踏まえて経営判断される事項であるが、決算時期を12月とすることについては、「海外子会社などとの間で決算期にズレがある場合には、グループ内の決算期の統一が図られ、経理事務の効率化のみならず、監査対応の効率化やより適切な決算数値の提供の観点からも意義が大きい」、「さらに、海外企業と同様、株主総会を4月~5月に開催すれば、有価証券報告書の株主総会前開示や十分な監査時間の確保の観点からも意義が大きい」、との指摘についてどう考えるかということでございます。以上でございます。

【神田座長】

廣川課長、どうも御説明ありがとうございました。

 それでは、続きまして、中野委員から、四半期開示制度に関する実証研究のサーベイということで御説明いただけるということでございます。中野委員、どうぞよろしくお願いいたします。

【中野委員】

どうもありがとうございます。法政大学の中野と申します。

 本日は、「四半期開示制度に関する実証研究のサーベイ」ということで、研究者の立場から、四半期開示制度に関する主な学術証拠につきまして紹介をしていきたいと存じます。

 資料3の2ページをご覧ください。四半期開示情報はセグメント情報と同様に「分割情報」の一種であり、頻度を高めるほど企業の透明性は向上するといえます。しかし、それに伴うコストや影響をどのように考えるかが論点であると認識しております。

 資料4ページのとおり、最初に学術文献の収集から開始したのですが、「証拠に基づく政策決定」、すなわちEBPM(Evidence-Based Policy Making)の観点から標準的な方法でアーカイバル・データに基づく実証研究、19点の論文を収集いたしました。その結果につきましては、資料の「補遺1 四半期開示制度に関する実証研究」(24ページ)にまとめてございますので、御覧いただければと存じます。

 資料5ページ、6ページに、四半期開示制度に関する実証研究の出版状況をまとめてあります。5ページの表に注目します。前回の平成29年度ディスクロージャーワーキング・グループ(平成29年度DWG)の時点では上の青い線のところまでが出版されていたのですが、赤い線の部分がその後発表されたものです。ここでのポイントは、前回の平成29年度DWG以降に、重要な研究の発表が相次いでいるということです。

 次に6ページの表では研究主題別に整理しておりまして、平成29年度DWGの際には「(1)資本市場への影響」に集中しており、私もその点について発言させていただいたのですが、今回、「(3)投資行動への影響」(四半期開示はショート・ターミズムを促進しているか否か)について研究が蓄積されているという点を指摘できます。この段階で、一旦、結論を先取りしていえば、まず、「(1)資本市場への影響」、すなわち四半期開示制度が資本市場に及ぼす影響については、おおむねプラスの効果が報告されているといえます。次に、「(2)経営に対する資本市場の規律付け」につきましても、やはり四半期開示は企業の透明性を向上させるので、規律付けは高まるとの報告が支配的です。さらに「(3)投資行動への影響」、すなわち四半期開示が経営の短期主義ないしはショート・ターミズムを促進するか否かにつきましては結果が分かれています。ただ、この点については、後ほどご説明いたしますが、私は分かれるべくして分かれていると解釈しています。最後に、「(4)その他-ベネフィット・コストを合わせた効果」については、中小の上場企業に限っての話ですけれども、監査コストや作成コスト等により一定の負担を強いている、もしくは強いることになるだろうということが報告されています。

 続いて、四半期開示制度について簡単に確認しておきたいのですが、7ページで私が申し上げたいことは、米国・日本と、EUの制度は異なるということです。EUの制度は、基本的に定性的な情報を報告するものであり、また国々でまちまちであると言えます。9ページのNallareddy et al.(2021)は、英国の状況を調査した研究ですが、左下のPanel Aに注目しますと、強制開示時に会計情報を含んでいた企業は4%のみと報告されています。一方、右下のPanel Bは、四半期開示任意化時の企業の選択状況を示していますが、四半期開示を中止したのは8.7%のみでほとんどの企業は定性情報を中心とする開示を継続していることが報告されています。これらを見る限りは、日本・米国の非常に標準化された会計情報を中核に置く制度と、EUの制度とを一緒くたに議論するのは必ずしも適切ではないということ、これを今回、文献調査をいたしまして強く感じました。

 続きまして、証拠を確認していきます。

 まず11ページ、「資本市場への影響」についてですが、四半期開示の下では情報の非対称性が縮小するなどプラスの効果がおおむね報告されています。12ページ(3)のD‘Adduzio et al.(2018)に注目します。当該研究では、半期開示に比べ四半期開示を導入して以降、2期先以降に実現する利益が現在の株価に反映される程度が高まったことが報告されています。当該発見事実は、四半期開示を定期的に行うことによって、投資家は企業の将来の姿をより鮮明に捉えることができるということを示唆しています。また、13ページでは、半期開示と四半期開示を行う企業群が混在しているとき、どのような影響が生じるかについての証拠を記載しています。正と負双方の効果が報告されているのですけれども、負の効果として、四半期開示を行う米国企業の決算情報が、四半期開示を行わない、他の国々の企業の株価を決定づける程度が大きくなることが報告されております。

 14ページには、「経営に対する資本市場の規律付け」に関する証拠について記載していますが、四半期開示により企業の透明性は高まるので、規律付けには効果的であるということが報告されています。

 続いて現在の政策議論においてここが一番焦点になっているかと思うのですが、「投資行動への影響」について15ページから見ていきたいと思います。ここで、2つの例を想定させてください。まず、A案としまして、5年間の長期プロジェクトで、年率換算で20%の利益率が獲得できるであろう投資案件を考えます。一方、B案は、1年間の短期プロジェクトで、利益率は5%とします。短期主義の言わんとするところは、本当はA案の利益率20%の長期プロジェクトが選択されるべきであるにもかかわらず、投資家が経営者に圧力をかけ、結果としてB案の選択を余儀なくされるという状況を指していると考えられます。四半期開示と経営の短期主義化につきましては、実証研究に先立って理論研究において分析されているのですが、まず、完全情報下ではショート・ターミズムは起きない、と指摘されています。その理由は、投資家は、B案より、A案の長期プロジェクトが選択されたほうが企業価値は増大することは明白ですので、完全情報下では投資家は経営者に対してB案を選択させる動機をもたない。ただし、非対称的な情報下、経営者がどのような投資案件を選択肢として有しているかを、投資家側がわからないという状況は少なくありません。そのとき高頻度の財務報告を行うと、経営者にとって短期プロジェクトであるB案を選択した方が自身の利益を高める状況がありうるということで、高頻度財務報告は短期主義を助長することがあるということです。しかしながら、高頻度財務報告にはベネフィットもありまして、高頻度財務報告により経営者による過大投資を抑制することができる、すなわち経営者のモラルハザードを抑制する効果があることが分析されています。

 16ページには投資行動への影響に関する実証研究の結果をまとめてありますが、検証結果は一致していません。(1)短期主義を支持する研究、(2)短期主義と四半期開示には関連性がないとする研究、さらに、反対に(3)四半期開示制度の導入により投資活動は促進されていると報告する研究が混在している状況にございます。17ページに移りますが、私はこのように検証結果が一致しない主な理由として2点あると考えています。第1に、各研究により、(1)制度、サンプルを異にしておりまして、すでにご説明いたしましたとおりEUと米国の制度は、著しく相違しています。サンプルおよび依拠する制度を異にする以上、検証結果が一致しないのは至極当然のことのように思われます。第2に、検証仮説が非常に複雑である点を指摘できます。17ページの(2)検証仮説のところに注目します。投資行動への影響に関する検証では、四半期開示強制化以降に投資水準が低下したか否かを目的変数として検証するのですが、そこでは、四半期開示強制化に伴い短期主義化ないしは過小投資化が促進されたことを想定しているといえます。ところが、別の想定も可能です。例えば、四半期開示強制化前、経営に対する規律付けが十分ではなかったがゆえに過大投資が行われており、四半期開示強制化に伴い当該過大投資が是正された場合も、同じく、四半期開示強制化以降、投資水準は低下するはずです。このように検証仮説の論理が非常に複雑ですので、なかなか検証自体もクリアにできない部分もあるかもしれないと認識しております。

 さらにもう1点、指摘させていただきたいことがございます。17ページの(3)経営の短期主義化への影響要因の箇所で、Kraft et al.(2018)が指摘しているのですが、経営の短期主義化の問題については実は四半期開示制度以外を主題とする証拠の蓄積が進んでおり、例えばコーポレートガバナンスが強化されるほど、あるいは、機関投資家やアナリストの存在が大きくなるほど経営の短期主義化は起こりうることを示唆する証拠が報告されています。四半期開示の問題はあくまでこのような研究群の中の1つに位置づけられるということですので、経営者の短期主義志向の原因を四半期開示のみに帰するのは、必ずしも適切とはいえません。

 18ページは本日紹介する最後の研究です。シンガポールを例にした研究ですが、四半期開示強制化の決定時に、中小の上場企業の企業価値が5%減少したことを示唆する証拠を検出しています。当該効果(net effect)は、四半期開示のベネフィット((1)流動性)とコスト((2)コンプライアンス・コスト、(3)経営の短期主義化)が混合して発現したと考えられますが、本研究では検証を重ねた結果、(2)コンプライアンス・コスト、すなわち監査コストおよび作成コスト等が主因であることを特定し、中小の上場企業に関して言えば四半期開示強制化は一定の負担になっているのだろうとの知見を引き出しています。ただし、いろいろな角度から検証を重ねる中で、資本市場全体あるいは国の規制の観点からすると、四半期開示制度導入に伴うベネフィットの発現を裏付ける証拠も検出していますので、当該コンプライアンス・コストのみに重きを置いた政策判断は必ずしも適切ではない、ということを本研究の検証結果は指し示しているといえます。

 以上、ご説明して参りました考察の全体像は、19ページにまとめてございます。

 最後に、20ページに移りまして、今般の文献サーベイを通じて、私が政策上および研究上の課題として考えていることといたしまして、とくに2点指摘させていただきたいと存じます。まず、政策上の議論において「四半期開示のコスト」が重要な論点の1つになっているのですが、「四半期開示のコスト」の意味はやや多義的ではないかと感じています。先ほど申しました意味での経営の短期主義化を促進する可能性があるという点ばかりではなく、経営に対する資本市場の規律付けが向上するという点をも含めて、短期主義という文脈で捉えられている嫌いがあるかもしれないと、今回文献の精査を通じて考えるに至りました。

 また、四半期開示実施の効果についてはご説明してきたとおりでございますが、四半期開示を半期開示に戻したときにどのような効果が発現するのかという疑問に対しては、研究は答えられていない現状にあるといえます。

 以上、駆け足でございましたけれども、私の説明は以上とさせていただきたいと存じます。どうもありがとうございました。

【神田座長】

中野委員、どうもありがとうございました。

 それでは、事務局からの御説明と今の中野先生の御説明を踏まえて、委員の皆様方から御質問、御意見をお出しいただきたいと存じます。今、画面共有させていただいておりますけれども、資料1の41ページから43ページまでにご議論いただきたい事項を事務局からまとめて提示させていただいておりますので、御参考にしていただければと思います。

 いつものことで恐縮ですけれども、皆様方の御発言の時間を確保できるよう、大ざっぱな目安としましては、お一人当たり4、5分程度をめどに御発言いただける方は、チャット欄に全員宛てに1行入れていただければありがたく思います。どなたからでも、どの点についてでも結構でございます。御質問、御発言、よろしくお願いいたします。

 今、チャットをいただきました。ありがとうございます。井口委員、どうぞお願いいたします。

【井口委員】

ありがとうございます。事務局の御説明、それと中野委員、どうもありがとうございました。非常に難しいテーマですが、事務局説明資料の41ページ以降でも特に四半期開示についてコメントさせていただければと思っております。

 まず、四半期開示への私の評価ですが、事務局説明資料にもありましたように、四半期決算に基づいて投資家が四半期ベースの投資判断を行った場合というのは短期志向の弊害が出ると思っておりますが、そうではなくて、企業の中長期経営計画の遂行の進行状況を確認するという意味で活用すれば、四半期決算というのは有用な開示になると考えておりますし、企業経営者あるいは企業にとっても、そのように活用すれば意義のある開示になると思っております。

 最初の黒丸の見直しが考えられるかというところに関しましては、前回のディスクロージャーワーキング・グループ、私も参加させていただきましたが、そこからの変化で言いますと、記述情報の拡充によって投資家からの有価証券報告書への注目度は格段に向上したということもありますし、あと、想定していなかった大きな事象というのは、想定以上のスピードで非財務情報のグローバル化の潮流が押し寄せて、IFRS財団のサステナビリティ基準の策定、そして今まさに議論しておりますように、こういったサステナビリティ基準の有価証券報告書への記載の義務化の議論も行われていると考えております。事務局説明資料5ページにもありますように、前回のディスクロージャーワーキング・グループでも、非財務情報の開示の充実をもって四半期開示を含む企業開示の見直しの検討もあり得るという議論をしていたと記憶しておりますので、十分なサステナビリティ情報と、あと、さらなる記述情報の有価証券報告書への記載を前提として、企業開示全般の効率化を考えるということはあり得るのかなと思っております。

 ただ、最初に申し上げたく思いますのは、企業開示の効率化といった場合、最も重要となりますのは、事務局説明資料43ページの最後のところにあります「その他」のところに書いております、有価証券報告書の株主総会前の公開と、会社法に基づく株主総会関連開示書類の縮減と思っております。グローバルで見ても、このような開示状況というのは日本特有でありまして、私自身も例えば海外投資家への説明において窮することがあります。企業開示全般の効率化を考えたときは、これが早急に取り組む課題と考えております。四半期開示の枠組みは、冒頭申し上げましたように意義があることに加えまして、資本市場のプラクティスとして浸透しているということから、私は存続すべきだと思っております。任意にしますと、ドイツとかの例にもありますように、かなり開示が後退するのではないかと懸念しております。ですので、四半期開示の廃止ではなくて、効率化の観点ということで議論したらいいのではないかと思っています。

 そこで、2つ目の黒丸のところで言いますと、ちょうど事務局説明資料25ページにありましたが、現状、迅速に情報開示を行う役割の四半期決算短信と、四半期報告書の開示時期というのは、実際にはあまり違わないという現状があると考えております。これを踏まえますと、四半期決算短信を任意開示として、四半期決算短信においては必ずしも比較可能性にこだわらず企業の創意工夫に任せるということで、四半期決算短信を開示したい企業の開示スピードを向上させ、四半期決算短信本来の役割、そのときに四半期決算短信と言うかどうかという話もあると思いますが、短信の役割を取り戻す、という考え方もあるのではないかと思っています。

 四半期報告書を優先すべきと考える背景は、今申し上げたように、四半期決算短信と四半期報告書は、そもそも開示時期があまり変わらず、四半期決算短信の迅速性が評価できないということ、四半期決算短信の開示では財務諸表の注記などの情報開示というのが圧倒的に不足しておりまして、特にIFRS採用企業の場合には、本表の開示項目である、例えば「その他費用」とか「その他収益」の内訳の開示がなく、特別損益の内訳が分からないといったことも生じること、あと、四半期の監査人のレビューがないということで、財務諸表数値への信頼度が低下するといった点も挙げられると考えております。

 後者の監査人の四半期レビューに関しましては非常に重要と考えておりまして、例えば第1四半期の最初に会計不正とか誤謬が発生したとして、四半期開示と監査人のレビューがなければ、そのことを市場が知るのは最大で6か月も遅れるという事態になるということを懸念しております。また、企業も気付くのが遅れて傷が深くなるというケースもあると思いますので、非常に重要と思っております。

 ただ、この四半期報告書を優先させた場合の課題もあると思っていまして、事務局説明資料28ページにあります適時開示で行われている業績予想の変更などの開示事項、これは投資家にとっても非常に重要なプラクティスになっておりますので、こういったことが臨時報告書で対応可能かどうかということと思っております。

 あと、四半期報告書の方でも、例えば利用者が慣れ親しんでいる四半期決算短信のサマリー情報を最初のページに活用するとか、あるいは四半期報告書の役割から考えますと、決算情報の提供だけに特化して、提出会社の状況の記載項目を大幅に削減するといった、報告書の効率化なども考えられるのではないかと思っております。

 最後に、42ページの上の黒丸の四半期報告書が廃止されたケースというところにコメントさせていただきます。この場合、今申し上げたこととは逆に、四半期決算短信において注記などの開示情報の充実というのが求められると考えます。また、四半期の監査人のレビューも必要と考えております。これは、注のところで小さく保証レベルは低いということは書いていただいているのですが、事務局説明資料22ページにもありますように、現実には、四半期報告書でも適正意見が出ない場合や会計上の問題が明らかになって決算の延期なども多数ありますので、そういうところから見るとレビューは十分な保証効果を果たしておると思っておりまして、今後とも四半期レビューは重要ではないかと考えておる次第です。以上でございます。ありがとうございました。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

 それでは、チャットをいただいています順番ですと、永沢委員、近江委員、三瓶委員という順になると思います。永沢委員、どうぞお願いいたします。

【永沢委員】

永沢でございます。ありがとうございます。私は、個人投資家、個人株主の立場から意見を述べさせていただきたいと思います。

 まず、中野委員のお話でよく理解できました。ありがとうございます。今回の四半期開示の見直しの話、四半期開示をしなくてもいいようになるようなニュアンスで伝わってきたときには、投資家としては不安を感じました。証券市場といいますのは情報の非対称性の非常に大きい市場でございます。変化も特に大きい時代でもございます。個人の投資家というのはそれでなくても情報弱者でございます。四半期開示をやめるという話は、この情報格差を広げることを認める姿勢と取られてしまうと思いますことを一番懸念しております。四半期開示制度の見直しの議論がそのように市場などから受け取られないようにこの議論はまず進めていくべきかとは思います。

 私としては、結論といたしましては、先ほど井口委員からもお話がありましたように、見直しという表現ではなくて、効率化をしていくという表現で進めていくべきだと思っております。

 いくつか私の感じていることを述べさせいただきますが、企業経営というのは、これも先ほどの井口委員の御意見と重なりますけれども、やはり経営は定点チェックをされていくべきものであるし、それが外に見える化ということを考えますと、この四半期開示制度というのは意義のあることだと思っております。

 それからまた、思い出してみますと、私も何回かディスクロージャーワーキング・グループに入らせていただいておりますけれども、私の認識では、四半期開示制度がこのように導入されてきた背景というのは、粉飾決算というものがいくつか起こったということがあり、その反省に基づいて導入された制度だったと認識しております。この認識が違うと言われてしまったら改めたいと思いますが、そういう制度導入の経緯を踏まえますと、今ここで任意に切り替えても大丈夫なくらい、環境整備が行われてきたのかというところの確認ができていないように思います。海外で任意になったからといって日本は任意にしていいのでしょうか。海外の事情は海外の事情、日本で制度導入をした経緯を踏まえまして、その辺の点検が必要ではないかと思います。

 それから、次は素朴な個人投資家の思いでございますけれども、任意にされても、恐らく日本の企業で「うちはやめます」というふうにおっしゃる企業はないのではないかと思っております。だから法律で強制にしておけばよいというわけではないのですけども、個人株主の立場からは、「うちはやめます」と経営者に言われてしまいますと、これは機関投資家から、格好の売りの材料にされてしまい、株価が相当に下がるのではないかと思うのです。個人株主としてはそこが一番心配でございまして、「うちは任意になったのでやりません」というふうなメッセージを会社側が出されるようなことは決してあってほしくないと思います。これは個人株主として経営の方々にお願いしたいことです。

 それから、今回のお話の背景をいろいろお聞きしておりますと、非財務情報の開示充実の関係で、監査の方々が大変になっている、人材が足りないというようなお話も聞こえてきます。そういうことも1つの考慮しなくてはいけない要因になっているとするならば、先ほど効率化というお話をさせていただきましたけれども、この開示のあり方についてどのようにすれば効率的なものになるのか、を検討して、これも先ほどの井口委員がおっしゃっていましたけど、書類が大変多いというお話がありました。そういった点なども見直しをして効率化を図るという方向に持っていったほうがいいのではないかと私も思います。いずれにしても、自分の保有する会社の情報開示が後退するようなメッセージが経営陣の口から出るようなことは、株主としては困ります。また、海外から、日本の会社の経営は情報開示に後ろ向きと受け止められますと日本市場の評価が下がるのではないでしょうか。この辺の四半期開示に対する政府の姿勢に関する情報の扱い方、発信のされ方については、十分に気をつけていただきたいと思います。以上でございます。ありがとうございました。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは次に、近江委員、どうぞお願いいたします。

【近江委員】

近江です。御指名ありがとうございます。議論事項について、当社の運用担当者とも様々意見交換をしてございますので、その内容も踏まえまして意見を述べさせていただければと思います。

 第1に、四半期開示がイコール・ショート・ターミズムであると、そのように私どもは認識していないということでございます。四半期開示は長期投資において有益な論点を提供するものでもあると我々は考えておりまして、四半期開示により、例えばコロナであったり、あるいは自然災害などを含む様々な業務環境の変化などから、企業がどのような影響を受けたのかということが明確になりますので、これは経営のレジリエンスというものを理解することにつながると、そのように考えております。これらの開示を通して経営の状況を正しく理解し、将来の事業ポートフォリオであったり、あるいはビジネスモデルの適正化などの議論を建設的に行っていくということは、企業の長期的な企業価値向上に資すると、そのように考えてございます。

 頂きました事務局説明資料5ページの前回ディスクロージャーワーキング・グループを踏まえた整理の中にある、欧米と比較して日本の上場企業の開示内容が見劣りすると見られている中、四半期開示制度の廃止によって企業の開示姿勢が後退したと受け取られれば、海外投資家の我が国への投資に水を差すおそれがあるという指摘、ここに関しましては、私ども、日々の業務を通じて認識しているところでございまして、非常に同感しているというところでございますので、十分ここのところも考慮いただければと思います。

 仮に四半期開示を任意開示とした場合に、例えば、一部の優良企業を除いて多くの上場企業の開示が後退するという懸念も残ります。何より我々が強調したいのが、企業と投資家とのコミュニケーションこそが大事であると考えているということであって、適切な自主開示をする企業姿勢というものをまず高く評価しているという点、これをこの場を借りて改めて強調したいと、そのように思います。自主性に任せるということは、ルールで縛らなくても企業が投資家にとって重要な情報を開示するという、そういった暗黙の合意があってこそ成り立つものではないかと、そのように考えてございます。

 一方、現在の四半期開示は、四半期決算短信と四半期報告の間で重複がありますので、一本化ということには基本的に賛成いたします。ただし、その際には、双方のよいところを取ることが重要だと思っておりまして、例えば簡素化してきた四半期決算短信の記載事項というものを四半期報告書並みにした上で、法定開示に組み込んで、例えば四半期決算短信の内容を臨時報告書として提出するなどという形にすれば、開示内容の正確性というものについても担保されるということになるかと思います。

 一方で、投資家は、四半期決算短信の提出においてはタイムリーさ、速報性もやはり重視しておりますので、一本化により提出が後ろ倒しになる可能性などが懸念されることから、例えばある一定の期間内であれば監査後の再提出を認めるなど、運用ルールを工夫していく必要もあろうかと、そのように思います。

 決算時期を12月に促す件につきましては、強い意見はございませんけれども、海外を含めたグループ会社の決算期の統一化、これは適切な企業分析に資すると考えますし、また、何より有価証券報告書が総会前に提示されることにより経営状況が適切に開示されることということは、対話促進、そして何より適切な議決権行使につながるということから、企業にとっても投資家にとっても非常に意義が高いと、そのように考えてございます。私からは以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは次に、三瓶委員、どうぞお願いいたします。

【三瓶委員】

三瓶です。どうぞよろしくお願いいたします。私からは大きく3点申し上げたいと思います。

 最初に、ご議論いただきたい事項(1)で全体のところですけれども、四半期開示の義務付けを廃止するとしたらというのは何が目的だろうかと。これがもしかして、これまでも言われているとおり、非財務情報の開示充実促進の代わりに四半期開示の負担軽減ということであると、それは本当に合理的なものなのかどうか。結果として何が起こるかというと、情報不足になって不確定要素が増加して、結果的に企業価値の評価はディスカウントになる。それは、これまで日本でずっと企業価値向上のために何をすべきかと課題に向き合ってやってきたことと相反するのではないのかということです。

 それともう1つ、グローバルの動きを見たときに、間もなくISSBが始動するわけですけども、そこで1つの重要なポイントとして、非財務情報と財務情報のコネクテビティーというのがあります。そういうことをこれからやっていこうという中で、日本で財務情報と非財務情報でどちらかの開示を促進して、どちらかの開示は軽減するということだと、グローバルな方向性を見誤るのではないかということがもう1つの懸念です。

 2つ目の点、ご議論いただきたい事項(2)の開示内容についてなんですが、今回の中野委員のプレゼン、非常に興味深く拝聴いたしました。その中で1つ確認しておきたいところがあるのですが、アナリスト・フォローイングという言葉が出てくるのですが、これはアナリスト・カバレッジのことでいいのか。つまり、何人のセルサイド・アナリストが、その企業の業績予想とか投資推奨のレポートを発行しているかと、そういうカバレッジのことということでよろしいのでしょうか。

【中野委員】

はい、おっしゃるとおりです。

【三瓶委員】

ありがとうございます。では、そういった理解を踏まえて、中野委員説明資料9ページ、12ページに書かれている言葉というか、内容ですね、日本のマーケットだけを中心に見ている方からすると誤解される方が多いのではないかなと思って、私は欧州株の投資もしてきたので、実務経験を踏まえてコメントしたいと思います。

 中野委員説明資料9ページにある第3四半期の開示の内容ですけれども、例えば売上高、利益の開示があるかということが出てきます。これ、実際に英国でどのように開示しているかということですけれども、英国ではナラティブで、文章で開示するのが多いんですね。それと、数字として開示しないけれども、流れから読めるというような開示が上手です。英国の中で比較的開示がいいと言われている3社について、今回改めて見てみました。ロールス・ロイスと、ユニリーバ、マークス&スペンサーですけども、ロールス・ロイスは例えば四半期開示で、売上高と利益への言及は全くないです。ただし、全体として徐々に回復基調であるとか、また、この企業は昨年度から今年度に関して2つのコミットメントをしています。コスト削減とフリー・キャッシュ・フロー、そのため、売上高とか利益は全く言わないけれども、コスト削減は順調にいっているとか、フリー・キャッシュ・フローについてガイダンスで示している状況を若干上回りそうとか、そういうような言い方です。ユニリーバについても、売上高のみですね。利益の公表はありません。ただし、その中で、数量効果、価格効果がそれぞれどのぐらいあるのかということは開示をしています。そして、事業別のセグメント及び地域別売上高を開示しています。ですから、単に利益がないとか、売上があるとか、そういうことではないですね。アナリストが分析するのに必要な切り口というのは与えているということ。マークス&スペンサーは小売業ですけれども、こちらも売上高のみで、利益は開示していません。ただし、事業別セグメントの売上高、それと、小売業なので既存店ベースでの対前年の数値、こんなものを出します。ですから、分析の糸口になるものは出しているということです。

 そして、中野委員説明資料9ページ、12ページには、「経営者予想の開示」とか「経営者予想値」という言葉が出てきます。事務局参考資料17ページにも、4ポツのところで「会社が公表する業績予測」というのがあるのですけど、これ、日本語の「予想」とか「予測」というのは「forecast」というようなニュアンスがありますけども、実際これは、英語では「outlook」というふうになっているはずです。「forecast」というもう少ししっかりしたものよりは、先ほどのロールス・ロイスの例ではコミットメントに対する「見通し」とか「見解」という感じですね。日本の決算短信では、御存じのとおり、1ページ目に、売上高、営業利益、経常利益、当期純利益、EPSの会社予想値が表になっています。これとはかなりニュアンスの違うものだということを踏まえないと、予想値を開示しているかということだけではちょっと理解がずれてしまうのではないかと思います。

 例えば、ロールス・ロイスの「outlook」には、そのコスト削減はコミットメントを“達成するペースで行っている”とか、フリー・キャッシュ・フローは前回ガイダンスで示した数値を“上回りそうだ”とか、そういったのが「outlook」です。ユニリーバについても、売上高成長率3~5%の範囲、これは期限が特に決まっていない中長期の方針ですけども、“その範囲に収まる”とか、営業利益率の数字は言いませんけども、“横ばい”とか、そんな感じです。マークス&スペンサーも“年度ガイダンスは変わりません”、不変ですと。粗利率が“ガイダンスの下限です”と、そういう誘導の仕方です。なので、英国では、こうやって当該企業に関しての固有かつ経営者がマネージできる指標についてコミットメントまたはガイダンスで示していって、それを四半期開示でその進捗のみ「outlook」としてアップデートする。ですから、これを受けるアナリスト、投資家は分析力や洞察力というのが鍛えられます。

 翻って日本ですけれども、企業による業績予想としてエクセルシートを埋めるのに役立ちそうな情報が出ていて、日本では、年度途中の決算説明会でよく業績予想に対して進捗が超過ペースであれば、「では、年度予想を上方修正するのかしないのか」という質問になったり、そこで上方修正しないとなると、「じゃあ逆算して、残った期については成長ペースが鈍化するのか」など、何かつまらない1年間の中の引き算で議論するようなことになるのですね。企業が提供する業績予想に釘付けになってしまって、分析力とか洞察力が鍛えられていないと感じます。これが近視眼的になる有力な原因の1つだと私は見ています。なので、情報の開示の内容について、この近視眼的という問題に対しては、企業がどのようなガイダンスをするのかという、その仕方について再考すべきではないかと思います。

 そして3点目のところですが、ご議論いただきたい事項(3)のその他の決算期の関係です。これも中野委員説明資料13ページに書かれていることと関連するのですけども、私は、2000年から2003年にロンドンで欧州株の運用をしていたので、また、それ以前はニューヨークで米株の運用をしていたので、その両方の違いから実感があるのですけども、欧州株に投資していると、当時は半期報告しかないので、その業績動向を見定めるのに同業のアメリカ企業の四半期業績の発表を注視します。そして自分が見ている欧州企業の業績動向を見定めるというような使い方をする。なので、ここでは短期的な売買のところにだけ焦点が当たっていますけれども、売買だけじゃなくてそういう分析の仕方をするということが1つですね。

 それに関して日本でどうなるかというと、日本では、特に海外から注目されている業種として、電子部品、電子材料、機能性化学品などがあります。その四半期決算は海外からすごく注目されています。それは、その企業に投資をしたいという関心の他に、そこからのインプリケーションがあるからです。もし仮に半期報告のみとなると、そうした日本企業にはいろんな問合せは来ると思います。ただ、そこで不用意に何か言ってしまうと、インサイダー情報の漏えいという問題になって非常に危険だと思います。一方で、全く情報提供をしないということになると、決算期がずれているので、役に立たないということになります。例えば、海外で一番重要な本決算、12月決算のときに、周辺情報を突き合わせて調べようというときに、日本企業はちょうど空白になる。3月決算期の企業が多いとすると、ちょうど海外の12月期というのが日本では半期開示の間で空白になってしまう。そうすると、一番情報を収集したいときに日本企業は黙っているということで、日本の注目度は下がる、地盤沈下が起きるというような懸念もあります。

 あと最後に、これはちょっと臆測で、正しいかどうか分かりませんけれども、先ほどの事務局説明資料の中で、ヨーロッパの中ではドイツだけ、取引所ルールでプライム銘柄については四半期報告を続けるということですが、この背景は何だろうかというのを考えたときに、1つは、英米法は、私がこんなところで言うのはあれなんですけれども、何々をしなくていいと言っても、それはしてもよいということに捉える。一方で、ドイツ法だと、何々をしなくていいと言えばしない、または何々してよいと言われればする。日本もそうですよね。だから、そういうところからすると、四半期開示を法的に義務化しないということになったときに、ドイツ企業が自主的に開示するのかが必ずしも期待できないので、取引所で促す役割が必要だったのかなということを思ったりします。また、ドイツでは90年代からユーロの統合を見据えて資本市場振興法というのを何回もバージョンアップしていて、かなり資本市場の力をつけてきた中でこういったことがあるので、そういう意味ではあまり方向が真逆に行かないようにということでやったのかなと。いずれにせよ、海外事例を参考にする場合には、現地でのプラクティス、また、その制度の背景というのを踏まえて理解することが必要ではないかと思います。以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは、チャットをいただいている順番で、次に、黒沼先生、どうぞお願いいたします。

【黒沼委員】

黒沼でございます。よろしくお願いします。私からは、四半期開示の見直しと、それから適時開示と臨時報告書について意見を述べたいと思います。

 まず、四半期開示については、法定開示として維持すべきであると考えます。日本は第二次世界大戦後、アメリカのディスクロージャー制度及び銀行・証券の分離制度を導入しまして、その結果、分散した多くの投資者が上場企業に直接投資を行うことが可能な透明性の高い資本市場を構築することに成功しました。これは、ユニバーサルバンキング制度を取り、大株主や親会社のある企業が多数上場している欧州と状況が大きく異なります。中でも、ディスクロージャーが行われ、違反に対して罰則、課徴金及び民事責任による制裁がきちんと機能している日本の資本市場は、むしろ欧州に比べて透明性が高いと私は考えます。せっかくこのように透明な資本市場を持つ日本において、その根幹をなすディスクロージャーを後退させるということは、単に海外からの投資に水を差すだけではなく、日本の資本市場の質を低下させることになりますので、慎重な検討が必要であると思うからであります。これが総論ですね。

 それから各論としまして、第1に、四半期開示は年度の業績の進捗状況を四半期ごとに開示させるというものでありまして、四半期開示が短期主義を助長するという見方を経営者がしているとしたら、それは誤解にすぎないのではないかと考えます。

 第2に、法定開示には、それよりも前に行われる任意開示の正確性を担保するという機能がありますので、法定開示による担保を欠く任意開示は、正確性、信頼性の低いものになってしまいます。したがって、四半期決算短信があるから四半期報告は不要であるという議論には賛成できません。

 第3に、非財務情報の開示の充実が図られたから財務情報の開示を後退させてもよいという議論があるようです。企業の開示負担を減らすために開示事項を不断に見直すということは必要ですけれども、非財務情報の開示は財務情報の開示を補完するものであって、これに代替するものではありません。また、近年は、投資者との対話を通じた企業価値の向上を目指す観点からの非財務情報の開示が図られてきたわけであり、このように、開示の目的は非財務情報と財務情報とでは異なるわけであります。したがって、非財務情報の開示が充実したということは、財務情報の開示を後退させる理由にはならないと考えられます。

 次に、適時開示と臨時報告書の関係についてです。

 その論点の趣旨がどこにあるのか必ずしも明確ではないと思いましたが、もし適時開示を行った情報は臨時報告書に記載させて提出させることにしたらどうかという提案を含んでいるとすれば、それは自主規制による開示を法的開示でバックアップするという点で評価できると思います。もっとも、それが実効性を発揮するには、大量に提出されることになる臨時報告書を財務局が審査し、虚偽記載に対してエンフォースができなければならないわけですが、その体制が整っているか疑問もあります。

 また、もしこの提案が、四半期報告書を廃止するけれども、四半期決算の内容を臨時報告書に記載させて提出させ、四半期報告の代わりにするという趣旨でされているのであれば、理解できなくありませんが、そこまでするのであれば、四半期報告を廃止しないほうがよいのではないかと思います。

 また、業績予測の適時開示をした場合に、それを臨時報告書に記載させて報告させるということも考えられます。もっとも、業績予測の開示というのは強制されていないわけですので、任意に開示した場合のみ臨時報告書の記載対象となり、それが罰則や課徴金の対象になるということになりますと、任意の業績予測の開示が後退してしまうのではないかという点を心配しております。私からは以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは次に、田代委員、どうぞお願いいたします。

【田代委員】

ありがとうございます。冒頭に非常に分かりやすい御説明をいただきまして、ありがとうございます。

 私のほうからは、今回、見直しをすることになったきっかけとして、ショート・ターミズムをあおっているのではないかという点だと思いますが、少なくとも、私が同友会の経営者の方に伺った中では、四半期開示によって短視眼的になると思うとおっしゃった方はいらっしゃらなかったかと思います。なので、皆様も先ほどからおっしゃっているように日本の資本市場に対する信認に影響が及ぶ可能性もあると思いますので、見直しのきっかけというものの表現の仕方には留意する必要があるのではないかと思います。経営者全般の意見として扱われることには少々違和感があると思います。

 一方で、今回、プライム市場でそのまま非常に多くの企業が残ったということに関していろいろ疑問があるというのは、実は今、ロンドンから参加しているのですけども、何人か聞いた中では、「今後、プライム市場になって、どういうプラスになるか注目したい」というコメントとともに、「でも、あんまり変わらないよね」って言われているのも事実なので、このタイミングでやるという観点からすると、やはりコスト面、中小企業の効率面で見直しをするというような表現の仕方をすると、何でこのタイミングでやるのかというのが、海外を含め、ある程度の説明ができ、理解を得られるのかなと思うので、ちょっと中身についての本質的なコメントではなくて申し訳ないんですけども、メディアを含めた対応というのも非常に重要だと思います。そこも含めて、今回、見直しの結果というのをどう発表するかという問題もあると思うのですが、非常に重要だと思いますので、発表の際にはぜひいろいろ検討する必要があると思いますので、よろしくお願いいたします。私からは以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは次に、小林委員、どうぞお願いいたします。

【小林委員】

冒頭の御説明ありがとうございます。あと、中野委員から非常に興味深い御発表をいただきまして、感謝いたします。私からは、四半期開示の意味と決算期の問題について、2点お話ししたいと思います。

 まず、私がいくつかの企業の企業経営者あるいはCFOにヒアリングをしましたところ、仮に四半期開示が任意になったとして、開示をやめるかと聞きましたらば、「いや、別にやめませんよ」との返答でした。四半期開示は投資家に対するコミットメントであって、そこを任意になったからといって開示をやめることは、必ずしも企業の姿勢として望ましくないということをおっしゃられる企業が圧倒的に多かったということをまず1つ申し上げたいと思います。ということは、この議論を進めるに当たっての視点は、各企業がどうするかという話なのか、それとも日本市場全体に対する信認の話、そのどちらなのかということをしっかりとまず踏まえて考えるべきことと思います。おそらくこれは、各企業、特に海外の投資家が多い企業については、投資家との対話を非常に重視している中で、今さら、任意になったからといって開示をやめる企業というのは少ないと思いますし、もし仮に任意の開示をやめたとしても、それに代わる何か、投資家との対話の機会は充実させていくのではないかと思います。むしろこの問題は、任意にすることによって開示をする企業が減ったときに、日本の市場全体に対する信認はどうなるのかという文脈で考えるべきことではないかと思います。

 それから、四半期開示の位置付けですけれども、これは有価証券報告書や統合報告書で語っている中長期戦略の進捗の補完であって、非財務情報開示の充実による負荷を減らすというような文脈で議論するべきことではないのではないかと思います。四半期開示がいくら義務化されていたとしても、それが中長期の戦略と全くかけ離れた数字だけが走るようなものであれば、結局、投資家にとって有効な開示とは言えません。年に1回発行される有価証券報告書であるとか統合報告書に書かれている中長期戦略のストーリーの進捗状況、あるいは市場の変化によって修正があったようなことを、タイムリーに発信するツールということだと思います。

 加えて言うと、企業側からの意見では、四半期開示が任意になるかどうかということよりは、むしろ決算短信と法定開示との間の重複感を、随分改善されてきていますけれども、もっと一本化して事務負担を減らしてほしいという点と、四半期開示におけるレビューと有価証券報告書における監査が、実際には全く別物になってしまっていて、そこを何かもう少し連携するような方法はないかというような意見も聞かれました。

 決算期の問題については、そもそも決算期は3月にしなさいよと言われているわけではなくて、各企業が決めていることだと思います。より投資家の利便性に資する、あるいは投資家に対して的確な情報を提供して議決権行使をしていただくという、本当に投資家との目線を合わせるのであれば、本来、企業はその事業に即したタイミングで決算をすると思います。それがなかなか進まないというのであれば、本来やるべきことは、決算の時期を適切に決定させるインセンティブは何かということを議論したらいいのではないかと思います。以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは次に、清原委員、どうぞお願いいたします。

【清原委員】

ありがとうございます。この機会に、四半期を含めた開示のところで少し考えているところも併せて意見を述べさせていただければと思います。

 最初に、「見直し」というところで、四半期開示をどうするかという点に関しては、今の制度のままこれを残す必要があるかどうか、制度としてどうあるべきか、ということを考えてみるいい機会だと考えておりまして、その点では、東京証券取引所の四半期決算短信と法定の四半期報告書という2つが併存している現在の制度について合理性があるかといえば、そこは見直しが必要になる余地があるだろうと。次に、それをなくしてしまうのがいいか、というところの廃止の部分に関しては、廃止は適切ではないだろうと考えているところであります。

 そもそも、今回、この議論のところで短期主義の話もありましたけれども、開示制度というところで考えたときに何を守るべきかといえば、やはり開示を通じた透明性の確保、それから公正性、公平性、それから信頼性ということ、そして広い意味での日本市場への信頼ということを考えていくことが必要だろうと考えております。

 透明性に関して言えば、迅速な開示がなされることと開示の充実がなされることを考えていく、その中で開示の充実について言えば、このディスクロージャーワーキング・グループでサステナビリティを含めた開示の充実について話をしていて、これから充実していく、規律が増えていく、そういったところを踏まえて、四半期開示のあり方についても議論していくとよいのではないかと考えます。言い換えると、東京証券取引所の速報性のある四半期決算短信というものがある中で、仮にこれを残すというふうに考えれば、四半期報告書の方についてどうするか、といえば、速報性はないけれども、法定制度として罰則を伴う形で信頼性の高い開示書類としてあり、それが速報性のある決算短信その他のものを支えている、そういうバックボーンになっているものです。

 次に、この信頼性に関して言えば、開示される内容の信頼性は、やはりしっかりと社内で検討された上で開示されるものである。特にこれからサステナビリティに関する記述を含めた非財務情報が増えていくことがあります。それから、ドイツの状況の紹介にありましたけれども、短期間に開示させるとすると、どうも定性的な開示が十分でないことになりかねない。現在の日本の制度でも、せっかく記述情報の開示の充実を図ろうとしている中、年次報告としての有価証券報告書では充実が図られているのですが、四半期報告書の段階では重要な変化についての開示が必ずしもまだ十分ではないのではないかという点があります。それは当然、負担もありますので、そういった開示について事務方がやるものと考えるのではなくて、取締役会などの社内で議論したものがしっかり反映できるような、そういったことを可能とする時間的な余裕ということも考えていくこと、すなわち開示内容の充実と信頼性を高める、そのこととの関係では、現在の提出時期のルールが本当にこのままでいいのかという点があると考えられます。それが仮に60日というふうに提出期限が延長され、準備をする時間、開示内容としての充実を図るための時間が確保される、急いで短期に早く出せというふうなことではかなり負担がかかりますから、そういった観点を考えて、やはり時間的なフレームワークというところを含めて見直しを考えるということをしていくのがよいのではないか。そして、東京証券取引所の四半期決算短信との棲み分けということを考えたときに、やはり私は、非財務(記述)情報、サステナビリティを含めた開示、そちらのほうの充実が図れる制度としての四半期報告書というものが位置づけられると適切ではないかと考えるものであります。

 ここで、先ほどから他の委員からお話がありましたように、非財務情報が財務情報を補完するという面があるというのはまさにおっしゃるとおりで、四半期報告書に財務情報が載らないということ、これ自体も問題になるとは思います。ただ、様式、フォーマットが複数の開示制度の中でばらばらにいくつかあって、それぞれに合わせて準備していかなければならないという負担については、見直しをしていっていいのではないか。そういう観点から、1つの案としては、四半期報告書に添付する形で財務諸表、それは既に公表したもの、他で使ったものを使うこともできるというふうに、その制度のところについても考えていくことが適切でないかと考えるところであります。

 開示の充実について申し上げましたが、1つ気になっておりますのが、内外の格差という意味で、海外の投資家に向けた情報発信、英文開示というものが日本の場合は現状必ずしも十分でないという点を考慮するべきではないかと考えます。特に有価証券報告書について、実際に英訳がされているというところは多くない状況にあります。しかし、日本に長期の資金を取り込んでいくということを考えたときに、日本企業の英文での情報開示が十分でないということが、それならば日本株に投資しないでおこうという形で素通りすることにつながってしまう状況が、これがもし仮にあるのだとすれば、そこは見直していくことが適切であり、その意味でいうと、法定開示の書類に求める内容について、英訳が必要な内容が求められている、というような開示ルール、そういう重要性の高い事項の開示が求められている、というような形で議論が進んでいくことが適切ではないかと考える次第です。

 そういったことも考慮したときに、時間的な検討の期間・機会というものを確保した上で開示がなされ、かつ、そういったものについて非常に重要性の高いものがしっかりと書かれ、それが日本語だけで英訳に関しては我関知せずということではなく、英文開示が仮に将来的に強制されるようなことがあったとしても、合理性があると言えるような重要性のある事項、そういったコアな内容、しかもそれは社内での検討を十分に経た信頼性のある内容、特に取締役会で内容についても検討・議論する機会・時間があるような、そういった制度の枠組みということが四半期報告書については考えられてもよいのではないかと。その意味でいうと、短期に情報をすぐに出すということ、それは取引所のルールがよいのかもしれないのですけれども、法定開示としての枠組み、立ち位置としてどういうものが適切かということを考えると、これまであったものを金科玉条のように残そうとするのではなく、ここは立ち止まって、一度見直しをしていくことが適切ではないか、というふうに考えているところであります。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは次に、佐々木委員、どうぞお願いいたします。

【佐々木委員】

佐々木でございます。御指名ありがとうございます。

 まず、四半期開示の点でございますけれども、もう既にいろんなメンバーの方から御意見が出ておりますので、1点だけ財務諸表の作成者の立場から申し上げますと、上場企業は、四半期報告と四半期決算短信と両方に対応しているというふうなことでございますけれども、皆さんおっしゃるとおり、開示のタイミングもあんまり変わらない。それから、かなり改善はされてきていますけれども、やはり重複しているという部分がありますので、これから非財務情報の開示の充実を図っていく中で、やはり見直せるのであれば見直しいただきたい。今の並存状態はできたら改善をして、例えば一本化に進んでいくということには賛成でございます。

 それから、決算の公表のタイミングの話でございますけれども、取引所の引け後での公表のタイミングという事例が多いというふうなことでございまして、これは、当社住友化学株式会社も、実は3時あるいは3時半に公表しているというのが現状でございます。ただ、今から10年ぐらい前までは1時とか1時半とかそれぐらい、つまり後場の中で公表していたのですけれども、何があったかといいますと、私どもの、いわゆる決算日には、決算役員会、それから取締役ではない出向役員も含めた会がございますが、こういったものが、今から10年前、2012年ぐらいまでは全て午前中に終わると、こういうふうなことでございましたが、その後、社外取締役の方との議論を深めていく、審議の時間を十分に取る、そういったことから現在は、そういった一連の社内手続きが終わるのがやはり3時あるいは3時を回るというふうなことでございます。そういった意味では社内手続きが終わり次第公表しているということでございまして、その辺りを御理解いただければと思うところでございます。

 それから最後に、決算期のことなのでございますけれども、私どもも3月決算というふうなことでございます。実は1990年代の半ばぐらいまでは12月決算期でございまして、決算期が12月という企業はその頃も少なかったと思いますけれども、やはり比較可能性といいますか、例えば同業他社との比較ですとかそういったこともありますし、それから、国の3月に終わるいろんな統計ですね、そういったものとの比較分析なんかもしやすいようにということで、3月決算に1995年に変えたという記憶がございます。その後、私どもは、日本基準からIFRS基準に2016年に変えているんですけれども、その準備を進めるときに、IFRSの場合は日本基準と違いまして、子会社と親会社の決算期の差が3か月というものが認められないということで、どこに合わせようかという議論を社内でもかなりした結果、最終的にはやっぱり3月、それまでの3月を継続しようというふうなことになりました。事業の面ですとかいろんな面から12月にすべきだという積極的な理由がそれほどなかった、乏しかったというふうなことから、3月ということにしてございます。現在の状況は、いろんな企業がその実情に合わせて判断をされている結果じゃないかと思います。私からは以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは次に、藤村委員、どうぞお願いいたします。

【藤村委員】

ありがとうございます。私のほうからは、四半期開示を任意開示とすることについて、そして四半期開示の中身の問題、そして3番目に四半期報告書と四半期決算短信の重複感の問題、この3点について意見を述べさせていただきたいと思います。

 まず、四半期開示を任意開示にすることについては、実務の観点で申し上げると、任意開示への制度変更が生じた場合には開示内容の定めもなくなってくるということになると思いますので、むしろ、かえって開示の要否や開示の内容の検討に企業の労力が割かれるおそれもあると考えます。例えば、そういう問題意識があるのかどうか分かりませんが、四半期開示制度が新規上場を目指す企業への障壁にもなっているということがもしあるのであれば、例えばグロース市場のみ任意化するとか、そういった形での制度設計もあり得るのではないかなと思います。

 次に、四半期開示の中身、内容についてでございますけども、企業の中長期的な価値をはかる上で、今の四半期報告で開示されている情報はどれぐらい意味を持っているのかというのは、正直、疑問に思うところもあります。もちろん、何か企業価値に影響がある事項があれば適時開示するというのは当然ではありますけども、四半期でアップデートの対象になるのは基本的には財務情報でありまして、投資家の皆さんに見ていただく新たな情報というのは財務情報が中心になるわけでございます。現状の四半期ごとの開示内容で投資家の皆さんがどのように中長期的な企業価値を評価しているのか。事務局の資料の中でも、中長期の視点で投資を行う観点からも進捗確認の意義を認める見解が大勢であったと前回の検討の御紹介がありましたが、その辺の具体的イメージが、正直、私自身、湧かないところであります。サステナビリティも含めた非財務の取組は四半期でその進捗を図れるようなものではなくて、加えて、その成果も3年、5年、10年というスパンで出てくるものであります。現状の四半期開示でアップデートされる情報、すなわち主として足元の財務情報で、具体的にどうやって中長期視点で企業価値をはかっているのか、この辺については、単純に疑問に思います。

 最後に、四半期決算短信と四半期報告書の問題です。結論から申し上げると、四半期決算短信と四半期報告書は重複感が大きくて、改善が望まれると思います。四半期決算短信は、東京証券取引所様式の仕様が事実上義務化しておりますし、実態としては、後続の四半期報告書との乖離回避のために、公表までの監査人による財務諸表レビューが実体化している現状がございます。そういった意味では、本来意図されている柔軟性、速報性というのが損なわれている気がしております。四半期報告書についても、多くの情報が四半期決算短信と同様の内容になっていて、追加的に得られる保証、これは保証といっても消極的保証なわけですけども、そういった保証の対象になるのは一部の注記事項など限定的であって、そもそも非財務情報はレビューの対象外とか、そういった形になっているので、両者の重複というのは著しいと感じます。

 あと、その保証についてなんですけども、四半期報告書で四半期レビューによる消極的保証の論点がございますが、それについても諸外国の状況ですね、レビューを義務化していない欧州各国で重要な問題が起きているのかというようなことも踏まえて、よく検討される必要があるのではないかなと思います。

 最後に、実態として、四半期決算短信を出して四半期面談の後、その後の資本市場の対話において、四半期報告書を基にした質問とか議論というのはほぼないのですね。むしろ四半期決算短信に追加して開示される有用な情報を包括的に規定することが困難な状況もあるので、企業ごとの特性に応じた任意開示、これを充実させて有用な対話につなげるということは大事なのではないかなと思います。私からは以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは次に、上柳委員、どうぞお願いいたします。

【上柳委員】

ありがとうございます。もう皆さんの大勢がおっしゃったとおりですけども、それから、別に事務局の労苦に応えるというわけではないのですけども、事務局説明資料の22ページの四半期開示と投資家に対する適時で正確な情報の提供の関係というデータは極めて重要な立法事実と言うべきものだと思います。この数年間ということですけれども、148件の有価証券報告書、四半期報告書の提出期限が延長されたと。延長されたというのは、なかなかその間にきっちり数字が作れなかったということで、その決算手続きで会計上の問題が明らかになったという御指摘があります。これが、延長自体が四半期への偏りはなくと。当たり前かもしれませんけども、年間異常事態というのはどこでも起こり得るわけですね。あるいはずっと構造的にあった問題でも、それが発現するときというのは時を選ばないと思います。本来、適時開示で出されるべきものですけど、問題があるものはなかなか適時開示しにくいということもあるので、やはり定期的な法定開示というのは大変大事だろうと。そこにレビューなり保証が入るというのも大事だろうと思います。先ほど御発言ありましたけれども、問題事例がスタートアップに近いところ、マザーズとかグロースでも多いとデータも、なかなか裏腹な面はあるかもわかりませんけれども、やはり、スタートアップ企業の信頼性を高める、あるいは企業に強くなってもらうという意味でも見逃せないと思います。そういう意味で、適時開示には至らない、あるいはそれがしにくかった現象の早期警戒情報としての役割は極めて大きいと。今、オリンピックをやっていますけども、スピードスケートの、あるいはスキーのラップタイムとか、あるいは体調管理の場合の体温とか血圧と同じで、変わらないのがいいというわけではないのですが、企業の場合、変わってもいいんですけども、変化が経営陣とか、あるいは投資者のリスク容認範囲に入っているといいますか、想定内であって、リスクが発現したというわけではないという指標として大変重要だろうと思います。ということから、金融商品取引法上の四半期開示報告書は廃止すべきでない、つまり法定開示を維持すべきだと思います。実際、皆様おっしゃいましたけれども、企業は恐らくリアルタイムで、少なくとも月次で数字を整理しており、監査法人も継続的にウォッチされているのが実際だろうと思います。非財務情報の開示は重要で、ぜひともと思いますけれども、矛盾するものではないというのは皆さんおっしゃったとおりです。

 私の考えるところ、非財務情報は、財務経理部門というよりも、やっぱり経営陣、首脳陣がもっと力を割くべきところで、その人たちに頑張っていただくと。総務、広報の方々はいずれしても大変かもしれませんけれども、そんなふうに思います。ショート・ターミズムとの関係はないと思います。私は、中野委員の説明も、それから小林委員の発言もそのように受け止めました。投資者なり、今の市場の主流、これからの主流は、非財務情報を含む中長期的な見通しを見つつ、他方、四半期ごとにリスクの発現がないかどうか、ある意味ではネガティブ情報として見ていくという方向なのではないかと思います。

 最後にしますけれども、施政方針演説に「見直し」という言葉があったわけですけども、私の理解するところ、日本語としては、これは廃止だけを意味するものではなくて、見直したら従来のままということもあり得るかもしれませんし、存続するけれども、改善をするという選択肢もあると思います。皆様御指摘されてきていますように、四半期決算短信と四半期報告書の相互引用とか、清原委員がおっしゃった財務諸表の引用とか、その辺り、あるいはレビューの合理化というのはあり得ると思います。やっぱり実務上、四半期決算短信と四半期報告書の短期の間の重複感というのは否めないように思います。

 事務局説明資料42ページの適時開示と臨時報告書のA)、B)いずれも賛成でございます。

 本当に最後にしますけれども、資本市場の最も重要な役割というのは、価格形成の公正を維持し、投資者を保護することで、これを世界中の市場が競争していると、グローバルにやっていると思います。私はそのときに、単に狭い意味でのコスト削減ではなくて、社会的費用を含めた社会的トータルコストでの競争であるべきだと思っていますけれども、そういう中で、日本という国が金融商品取引法という法律によって、つまり国家として一定の保証をする形で企業の四半期の状況を明らかにすると、そういう姿勢を持っているという国であるということは、我が国の資本市場への内外からの信頼を確保するための重要な制度だと思っております。以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは次に、高村先生、どうぞお願いいたします。

【高村委員】

ありがとうございます。まず、事務局の資料、それから中野委員の御説明、どうもありがとうございました。大変包括的なこの問題についての資料を出していただいて、これまでもワーキング・グループで議論、経緯があったというふうに伺っております。そういう意味では、大変よく分かる資料を作って御報告をいただいたと思います。

 私からは大きく2点申し上げたいと思います。

 1点目は、もう既に多くの委員がおっしゃいましたので、簡潔に申し上げますけれども、今回、四半期開示の存続か否かという命題の立て方ではなく、恐らく開示の効率性などの観点から、開示の内容の検討等についてどうしたら改善ができるかという点から見直し、精査をすると。とりわけ開示内容にいくつかの委員の御意見もあったかと思いますけれども、そうした御意見について、そういう理解で四半期開示の見直しというものを理解いたします。

 その上で、これも三瓶委員ほか数人の委員から御意見があった点でありますけれども、私も、非財務情報の充実のために係る負担の軽減のための見直しという趣旨ではないと理解をしております。三瓶委員からも御指摘がございましたけれども、基本的に非財務情報、特にこのワーキング・グループでも重視をして、今議論しているサステナビリティ情報の開示に関して言えば、当然、こうしたサステナビリティの局面、企業活動のサステナビリティに与える影響ですとか、あるいは企業の事業活動のサステナビリティの局面について、こうした情報が企業の短中長期にわたる将来のキャッシュ・フローに影響を与え、そういう意味では、情報を利用する資本市場のプレーヤーなどがしっかり、こうした情報から財務情報と併せて企業価値を正しく適切に評価をするための情報開示だと理解をいたします。したがいまして、非財務情報充実のためにこうした四半期開示の見直しが必要という、そういう理解ではないという御意見について、全く賛同いたします。

 それから、2つ目の点でございますけれども、今回の議論で、四半期開示と併せて、適時開示、臨時報告書についても提起をいただきました。今お話をした点にも関わるところですけれども、非財務情報の開示あるいは特にサステナビリティに関する情報開示について、ISSBなどの国際的議論を見て、少なくとも1年に1度、このワーキング・グループでも有価証券報告書での開示を念頭に置きながら議論していると思います。まさにそこでも、これまで議論してまいりました開示の媒体と頻度の問題についての論点でもあると思っております。サステナビリティ情報開示に関して言うと、年に一度を前提としたときに、その期中においてサステナビリティに関わって事業の重大な変更があった場合などにはやはり速やかに開示をされる必要があるという点で、どういう媒体で開示をしていくかという論点があるように思います。四半期開示において開示を位置付けないという趣旨ではございませんけれども、適時開示ないしは臨時報告書における開示項目について、この非財務情報の開示、サステナビリティに関する情報開示の観点から検討を加える必要があるように思っております。これは事務局には適切に提起をしていただいておりますけれども、当然、それに伴ってインサイダー取引規制等との制度上の課題があると思いますので、それも併せてやはり今後の検討課題としていただければと思います。以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは次に、松元委員、どうぞお願いいたします。

【松元委員】

御指名いただきましてありがとうございます。私も、これまで他の委員の皆様方がおっしゃられてきた意見とほとんど同じですけれども、意見を申し述べさせていただきたいと思います。

 四半期報告書をそもそも法制化した際には、これまでの委員の皆様方のお話にもありましたように、必要だから法制化されたわけです。そして、当時の、四半期開示が必要で、あったほうがいいという状況が変わったのかというと、そこは別に何も変わっていなくて、もう四半期報告をやる必要がなくなりましたという状況が特にあるわけでもないと理解しております。そうだとしますと、四半期報告書の内容を例えば大幅に簡素化するとか、あるいは廃止するということをするのであれば、かなり慎重に、十分な根拠があって初めて大幅な簡素化や廃止という話になるのではないかと考えています。そうしないと、透明性のためとか、市場の信頼のためとか、情報の非対称性の緩和のためとか、そういった趣旨は一体どこに行ってしまうのだという話になりますので、慎重に検討すべきだと思っています。

 その上で、仮に簡素化していく、あるいは廃止していくというふうになった場合には、その根拠を少なくともまず明確にして議論すべきだと思います。事務局の資料あるいは御説明からは、これまで出てきたとおり、大きく2つの根拠が可能性としてはあって、1つ目はショート・ターミズムにつながるのではないかという話、それから2つ目は、もし無駄なコストがかかっているのだとすると、同じような効果をより簡単に出せるのであれば効率化したほうがいいという話のおそらく2つがあるのだと思います。じゃあ、ショート・ターミズムにつながるという話が本当に実際にしっかりした根拠になっているかというと、今日、中野委員の御説明ですごく勉強になりましたが、中野委員の御説明によれば、少なくとも現時点で、四半期報告書がショート・ターミズムを助長することになっているというしっかりとした根拠は、学術研究上も出ていないということだと理解しました。そして、四半期報告書がショート・ターミズムを招いているという実務の方からの強い御意見があるわけでもないということになると、ショート・ターミズムを理由にして大幅な簡素化あるいは廃止をするというのは根拠が弱いのではないかと思います。

 もう1点の、コストを減らすべきだというお話であれば、確かに四半期報告書と四半期決算短信とは内容としては重複している部分が多いので、もしこれを例えば四半期報告書に一本化するとか、どっちかをどっちかに取り込むとか、そういったことで事務負担が簡素になるのだというようなお話があれば、投資家にとっても四半期報告書と四半期決算短信が両方あるというのは、プロの方には自明のことですが、個人投資家の方にはちょっと分かりにくいという話もあるかもしれませんので、分かりやすさという面からも、そこをシンプルにしていくということはあり得るのかなというふうには思います。ただ、その場合であっても、法定開示であることによる、もし何か間違いがあったとか違反があったというときのエンフォースメントというのはやはり重要になってくると思いますので、効率化をするという場合であっても、四半期報告書自体を廃止するというようなことはよくないだろうと考えております。

 それから最後、もう1点だけですが、先ほど、見直すなら見直しを行う趣旨を明確にすべきだと申し上げましたが、仮にショート・ターミズムの懸念があることを根拠として四半期報告書は廃止しますという話をするのであれば、理論上、四半期決算短信も一緒になくさないと意味がないということになります。つまり、四半期報告書はなくなったけれども、四半期決算短信で定量的な数字は出てくるということになると、全くもってショート・ターミズムの改善にはならないので、ショート・ターミズムを根拠として廃止するのであれば、まとめて両方なくすしかないということになるのだと思います。しかし、ちょっとそれは、四半期ごとの数字が全然出てこなくなるというのは、根拠が今のところない以上はやるべきではないと思っております。以上です。ありがとうございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは次に、熊谷委員、どうぞお願いいたします。

【熊谷委員】

ありがとうございます。もう既にいろんな方から出ているのですが、まず、皆さんおっしゃっておられるように、今回の事務局説明資料、それから中野委員の資料、あとプレゼンテーション、非常に分かりやすくて、いろいろ考えさせられることがありました。大変参考になりました。まず御礼を申し上げたいと思います。

 それから、私、この会議は個人の資格で出ているつもりではありますが、一方で、アナリスト協会の企業会計部長というのを務めております関係上、やはりそういう立場もどうしても入らざるを得ないのかなと思っておりまして、私自身も、今回、この四半期開示が取り上げられるということで、まさに見直しと言いつつ、皆さんが御指摘なさっておられるように、やはりショート・ターミズムとコストという観点から見たときに、ショート・ターミズムを理由に四半期開示を見直すということになりますと、今まさに松元委員がおっしゃられたように、恐らく、四半期報告書をなくす、かつ四半期決算短信もなくすという方向でないとショート・ターミズムの解消にはならないと思いますし、そもそも、今日の中野委員の資料あるいはプレゼンテーションでございますとおり、あるいは、今、他の方々もほとんど同意されていたと思うのですけれども、四半期開示とショート・ターミズムって全く結びつかないと思っておりますので、そういう意味では四半期開示をなくす根拠というのはないのかなと思っております。

 先ほどアナリスト協会の企業会計部長の立場があると申しましたけれども、そういう立場にありますので、いろんな方の意見を聞いてみました。まさに四半期開示そのものをやめるということに関しては、皆さん反対ということで意見の一致を見ていると思います。ただ正直言いまして、その内容のレベルに関しましてはいろんな意見があるなと感じております。一番保守的というよりも、現状の四半期報告書というのはぜひ残してほしいという方がいる一方で、四半期開示の内容そのものですね、本当に四半期開示でフルセットの財務諸表というのが全ての企業について必要かということに関しては、そこまでは求めなくてもいいのではないかというような考え方を取られる方々もおられます。

 逆に、私から、今回、事務局にお聞きしたいのは、仮に金融商品取引法の四半期報告書をやめて、東京証券取引所の規則に基づく四半期決算短信のみで四半期情報を開示するということになりますと、そもそも四半期決算の意味というのがちょっとよく分からなくなってくるといいますか、法定じゃなくて取引所規則のみで四半期決算制度というのを維持できるのか。すなわち、本当の四半期決算、正式な四半期決算として正式な開示資料を、財務諸表を四半期決算短信のみにつけるということがそもそも論として可能なのか。すなわち、四半期決算短信に財務諸表をつけるとしても、プロフォーマの財務諸表、仮の財務諸表にしかなり得ないのではないか。そういったものにレビューといったものをつけることができるのかどうか、これがまず1つの質問であります。

 それから、もし仮にそれがプロフォーマでしかないということになりますと、東京証券取引所の適時開示制度の下で四半期開示を行うということになりますと、今の制度の枠組みですと、年度の決算一度しか正式な財務諸表が作られないことになってしまうのではないか。先ほどの事務局説明資料を拝見して、42ページの資料に絡んでくると思うのですが、今の金融商品取引法の立てつけで、例えば上場企業でない場合には、中間報告書の発行を義務付けられていて、監査も必要ということですけれども、仮に金融商品取引法の四半期報告書をやめてしまった場合で東京証券取引所の適時開示制度に移行した場合に、自動的に今の金融商品取引法で上場企業に中間報告書の作成を義務付けることができるのかどうか、あるいはそれに関しては法改正が必要なのかどうかというところを教えていただきたいなと思っております。この質問の趣旨というのは、今申し上げましたとおり、東京証券取引所の適時開示制度で四半期決算短信だけでいいということになりますと、本当に年に一度しか正式な財務諸表が出てこないということになってしまいますので、それはさすがにまずいのではないかと思っております。もし仮に、今日の皆さんの意見を聞いていますと、金融商品取引法の開示を残すべきであるということですので、そういう心配はないのかなと思います。しかし仮に東京証券取引所の開示制度でやった場合に、金融商品取引法で中間期に関しては正式な財務諸表を作るということを強制できるのかどうか。これが2つ目です。

 それから最後に、逆に今度、金融商品取引法の開示にした場合に、で、四半期報告書を残すといった場合に、財務諸表の添付というものの自由化といいますか、フルセットでなくて、例えば要約財務諸表でいいというようなことにできるのかどうか。やはり要約財務諸表に加えていろんなKPIの開示というのが必要になってくると思います。これは、先ほど三瓶委員もおっしゃっておられたように、仮に財務諸表がなくても、むしろ四半期ではKPIのチェックというのが重要になってくると思います。そういったものの開示というのを正式の財務諸表の代わりに、要約財務情報とKPI等の開示を義務付けるというようなことは今の金融商品取引法の立てつけで可能なのかどうかと、この辺りについて教えていただきたいという、3点につき質問させてください。

 最後に、このようにこの問題を考えていきますと、いろんな技術的な問題が山積してきてしまいまして、今回のディスクロージャーワーキング・グループで全て検討して、制度の枠、方向性は決めることができると思うのですが、制度の詳細まで決めることってなかなか難しいのではないかと思いますし、そういった意味では慎重な議論が必要ではないかなと考えておる次第であります。すみません、長くなりましたけど、私のほうからは以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。事務局への質問があったと思いますけど、いかがでしょうか。

【廣川企業開示課長】

企業開示課長の廣川でございます。御質問ありがとうございます。

 熊谷委員から、正式かどうかというお言葉があったかと思うのですが、その正式というのをどのように定義するかという、そういうことなのかなと思っておりますので、私なりの言葉で申し上げると、法律で定めているというのは、あくまでも法定化されているかどうかということであって、取引所規則で定められているものは、まさに取引所規則上のものであると。何が言いたいかと申し上げますと、取引所規則に基づいて開示されているものは、取引所規則に則っている限り正式だと思います。法律で定めているものは法律に基づいてやっぱり正式だと思っておりまして、法定されてないものが直ちに一般的に正式なものにならないということではないのではないかと。その上で、多分、プロフォーマの話をされましたのでこういうことかなと思っているのですが、取引所規則に基づいて開示をされている財務諸表であっても、結局、それが一般に公正妥当な会計基準に基づいて作成された上で開示されているのかどうか、そこが1つ、財務諸表としてはポイントになるのではないかと思います。仮にそれが一定の公正妥当な会計基準に基づいて作成されている財務諸表を取引所規則が作成・公表を義務付けているのであれば、その限りにおいては、規則に沿っているという意味では正式になるのではないかというのが私の理解でございます。

 その上で、四半期レビューなるものをつけるかどうかということですけど、四半期レビューも、四半期レビュー基準という監査の基準がありまして、それに則ったレビューということになるので、そういったものを取引所規則上求めるかどうかというのは、まさに規則が定めるところによるということであって、ただ、あくまでも取引所規則で定めているものは法定ではないという、そういう整理なのではないかなと考えております。

 その上で、金融商品取引法上は、今、上場企業においては四半期開示でございますので、仮にですけれども、金融商品取引法の四半期開示義務付けをなくす場合には法律を改正することが必要になるのですけれども、仮に上場企業の四半期開示を、法律改正をしてなくす場合には、直ちに法の手当てなく中間の報告書の作成が義務付けられるわけではございませんので、中間報告書を上場企業に義務付けるということになるのであれば、その部分についても法律上の手当てが必要になると考えてございます。

 最後、もう1つ、四半期報告書の提出義務ですけれども、こちらについては、法律上、四半期報告書というものの記載事項の法律レベルでの定義というのがございまして、「経理の状況その他公益または投資者保護のため必要かつ適当なものとして内閣府令で定める事項」ですね、これを記載した報告書を作成・開示していただくということになりますので、具体的にどこまでを内容として求めるかは内閣府令事項になります。

 ちょっとこれで全部答えられているか、もし答え漏れがあったら、もう一度、御質問いただけたらと思います。すみませんが、よろしくお願いいたします。

【熊谷委員】

いや、大変よく分かりました。今、いろいろお話を聞いておりましても、あと他の委員の方々の御意見を聞いておりましても、そもそも四半期開示の見直し、内容の見直し、あるいは効率化ということがあっても、四半期開示制度そのものはなくさないということが大勢であろうかなと、ほとんど全員一致だろうと思いますし、あと、仮に四半期報告書と四半期決算短信と比べたときに、今の御説明を聞いていても、もし一本化するのであれば報告書に一本化すべきではないかということと、あと、決算短信の在り方については、前々回のディスクロージャーワーキング・グループでも議論しましたけども、より柔軟にして、ここについては例えば財務諸表の添付というのをしない、むしろ主要な指標だけにして、あとKPIの開示なんかで済ませるというようなやり方があるのではないかと思いました。

 実は前回、決算短信の自由化あるいは簡素化の話が出ましたとき、私、決算短信から財務諸表の添付を外すということに大反対させていただいたのですけれども、それは主に年度の決算短信について、決算短信と有価証券報告書の発行までに非常に大きな間があるというコンテクストの中で反対させていただきました。一方で、四半期開示については、皆さん御指摘のように、あまり日にちに差がないということであれば、四半期決算短信におけるフルセットの財務諸表の添付までは必要ないのではないかなと考えております。どうもありがとうございました。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それで、予定の時間を既に過ぎているのですけれども、もう少しだけ、申し訳ありません、延長をお認めいただけませんでしょうか。中野委員と上田委員から御意見をいただきたいと思います。中野委員、お願いいたします。

【中野委員】

先ほどは中立的な立場からご説明いたしましたが、ここでは私の意見を申し上げます。

 まず1点目として、四半期報告制度、すなわち金融商品取引法上の四半期報告制度を維持すべきです。私は、公認会計士のレビューが四半期ベースに行われる点はとても大きな意味を持っていると考えています。したがって、四半期報告制度の維持を明確に支持します。

 先ほど、私は米国・日本と、EUの制度は相当異なるということを申し上げまして、その後、三瓶委員がEUにおける実態等について非常に詳しく敷衍してくださいましたけれども、さらに若干、付言させていただきますと、EUでは2000年代はじめの時点では四半期財務諸表の強制開示を目指していたのですが、同案は可決に至らず、その後、開示水準を引き下げる形で進行したという経緯があります。それで、先ほど三瓶委員が指摘された「経営者予想」についてですが、文献上は、日本の経営者予想も同様ですが、guidanceという用語が使用されています。なお、英国に関する文献では四半期開示、すなわちIMS(期中マネジメント・ステートメント)開示強制化以降、英国においては年次利益に関する経営者予想を公表する企業群が増加した事実を特定しておりまして、IMS、換言すれば四半期ベースの定性的報告により投資家は当該経営者予想の進捗度を確認するという実務が醸成されたといえると思います。「EUは四半期開示の強制化を取り止める代わりに非財務情報を拡充している」との議論に接することがあるのですが、その解釈は適切ではないように思います。EU域内の各国には、各々、異なる制度、文化的背景があり、例えば英国の場合には既存のディスクロージャー制度及び実務が全体として有機的に機能する中で、四半期開示もまたそこに適合する形で位置付けられているのではないかと、私は理解しています。

 2点目として、政策議論を耳にする中でずっと気になっていたのですが、「非財務情報を拡充する代わりに四半期開示を見直す」という意見には全く納得感を覚えることができず、先ほど黒沼先生からもご指摘がありましたとおり、両者は補完的関係にあるということを強く主張します。両者は車の両輪であって、例えば非財務情報を拡充することにより企業の将来の姿、あるいは、よく指摘されるところですけれども、非財務資本もより鮮明になると期待されますが、ただ、非財務情報の拡充を試みるだけでは、投資家、ひいては証券市場は適切な予想を形成することは難しい。四半期報告制度により実績値としての信頼しうる財務的業績が定期的に公表されることによって、非財務情報の有用性も向上すると考えられるので、両者は、代替的関係ではなく、まさしく補完的関係にあるという点を強調しておきたいと思います。

 なお、申し上げるのを忘れておりましたが、四半期報告制度は維持すべきである一方で、委員の皆様方が指摘されておられますように、私もこの機会に、より有効性と効率性を兼ね備えた四半期報告制度に再構築する、という意見に賛成します。以上でございます。どうもありがとうございました。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは、上田委員、どうぞお願いします。

【上田委員】

上田でございます。では、もう時間を過ぎていますので、簡潔にと思います。

 まず、皆様のお話を伺っておりまして感じたことですが、この四半期報告のあり方という以前に、日本市場の信頼性の維持というのが何よりも重要な、考えるべきよりどころではないかと思います。

 その上で、四半期開示の目的は何かというと、速報性であり、進捗状況の確認、ラップタイムを確認するというところであろうかと思います。他方、議論されているサステナビリティ等の非財務情報の拡充、これは、全く別の次元でありまして、今、中野委員がおっしゃったように、これはこれ、それはそれということで、別の次元のものとして議論する必要があろうかと思います。

 四半期報告についてはショート・ターミズムの懸念という文脈で、逆にサステナビリティの情報の開示というのが中長期のものとして議論としてされているようですけれども、企業の方に伺っていますと、あまりその懸念ということはなくて、むしろ四半期についてはルーティンとして実務を行っているようです。

 また、対話の充実ということ、コーポレートガバナンス・コードあるいは日本のガバナンス改革で、エンゲージメント、対話の充実と言っている前提として、やはりラップタイムの報告として四半期情報の開示というのは必要と思います。

 また、この四半期開示については、個人投資家というものを意識しますと、個人投資家と機関投資家との情報ギャップというものは歴然としてございますので、やはり完全廃止というのは、市場の信頼性、投資家保護の観点から望ましくないのではないかと思います。

 他方、今回、見直しということで、これを機会に見直すべき点もあるかと思います。特に効率性という観点からしますと、四半期開示については、四半期決算短信と四半期報告書との間で重複感があります。情報ユーザーである投資家側にとってもそれほどこの違いというものが認識されて利用されているわけではなく、企業においてはこれが負担感となっているということであるとすれば、この見直し、統合なのか、一本化なのかというものは必要なのではないかと思います。

 他方、仮に四半期決算短信に寄せた場合には、罰則規定がないという問題があると思っています。ライブドア事件が紹介されていましたけれども、罰則規定がないといったところから、投資者保護の観点はクリアしておくべき必要があると思います。ということであれば、仮に四半期決算短信のほうに寄せるというような見直しが行われる場合には、例えば臨時報告書という形でそれをそのまま開示する等の仕組みを別途設けることで、四半期決算短信というコンテンツは1つであるとしても、この中身について金融商品取引法の枠組みにおける規制をかけるとすることで、企業の負担、重複感を軽減して効率性というものは高めつつ、他方で投資者保護というものを確保していく必要があるのかと思いました。以上でございます。ありがとうございました。

【神田座長】

どうもありがとうございました。オブザーバーの方々でもし御発言があれば、手短に承りたいと思うのですけれども、チャット欄に1行入れていただけますでしょうか。オブザーバーの皆様方、いかがでしょうか。

 ありがとうございます。日本公認会計士協会、小倉オブザーバー、お願いいたします。

【小倉オブザーバー】

御指名いただきましてありがとうございます。皆様方からレビューについて非常に有用であるという御意見を多数いただきまして、引き続き、資本市場のゲートキーパーとしてしっかり対応していきたいと思いました。

 事務局提案の取引所規則に基づく四半期情報開示についてレビューを行う場合というのがあるのですが、それについては、情報の作成基準がどのようなものになるかということを含め、新たな検討が必要になってしまうということです。今、効率化等を検討する際に、新たなものを作り出すということはどうなのかというところでございます。レビューが引き続き有用で必要ということであれば、金融商品取引法のレビューを行う現行制度の継続をしていただくのがよいのではないかと考えております。

 それから最後に、重複開示という課題では、年度の会社法と金融商品取引法の重複開示、二重監査の問題が非常に大きな問題となっておりますので、こちらについても解消に向けて議論が進展することが望まれます。以上でございます。ありがとうございました。

【神田座長】

どうもありがとうございました。では、経団連、小畑オブザーバー、どうぞお願いいたします。

【小畑オブザーバー】

ありがとうございます。あくまでも四半期開示は途中経過であり、そのアップデートでございます。また、この制度の成り立ちからいっても、もともとマザーズから始まり、東京証券取引所全体の規律になって、それが金融商品取引法にも入ってきたということで、その経過で両方の制度が成り立つ非常に重たい手続きになっているということであり、この機会にぜひとも重複を見直していただきたいということでございます。

 その上で、例えば東京証券取引所開示に一本化するのであれば、東京証券取引所の出すものが決していい加減なものを出しているわけじゃないという点が重要です。企業の開示書類を作成する立場としては、きっちりしたものを出しているということであります。東京証券取引所のエンフォースメントという観点からも、非常に厳しい規律があるという前提で作られて出されていることも含めて御勘案いただければと思っております。以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。もう既に予定の時間を15分以上超過いたしまして、私の不手際もあり、申し訳ございませんでした。本日はこの辺りとさせていただきます。

 御参加の委員全員の方々から非常に貴重な御意見、いろいろな角度からいろいろな点に注意すべきだという御意見を多数いただきまして、誠にありがとうございました。さらにお気付きの点などございましたら、どうか事務局のほうまでメール・電話等でお知らせいただければありがたく存じます。

 本日いただきました御議論を踏まえまして、特に四半期開示制度につきましては、今後、さらに御議論をいただく機会を設けていきたいと思います。

 最後に、事務局のほうから御連絡等ございましたらお願いいたします。 

【廣川企業開示課長】

次回のワーキング・グループの日程でございますけれども、皆様の御都合を踏まえました上で最終的に決定させていただきたいと思いますので、御案内をお待ちいただければと存じます。以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは、以上をもちまして本日の会議を終了とさせていただきます。長時間、熱心に御参加いただき、どうもありがとうございました。

―― 了 ――

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
企画市場局企業開示課(内線3688、2872)

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