金融審議会「金融グループを巡る制度のあり方に関するワーキング・グループ」(第3回)議事録

  • 1.日時:

    平成27年6月16日(火)16時00分~18時00分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館13階 金融庁共用第一特別会議室

【岩原座長】

それでは、予定の時刻になりましたので、ただいまより「金融グループを巡る制度のあり方に関するワーキング・グループ」第3回会合を開催いたします。皆様、お忙しいところをお集まりいただきましてまことにありがとうございます。

はじめに本日の参考人のご紹介を事務局にお願いいたします。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

それでは、私からご紹介申し上げます。

委員の皆様方から向かって左手のほうにお座りいただいております、一般社団法人地域の魅力研究所、多胡秀人代表理事でございます。

私からのご紹介は以上でございます。

【岩原座長】

どうもありがとうございました。皆様、どうかよろしくお願いいたします。

それでは、議事に移らせていただきたいと存じます。本日はまず、地域金融機関のストラクチャーや経営管理の状況、規制見直しの要望事項について、川村委員、藤井委員からそれぞれ20分程度ご説明をいただきたいと思います。その後、多胡参考人から「地域銀行の本来の姿とグループ会社戦略」と題して30分程度ご説明をいただき、最後に、これらのご説明に関して一括して討議を行いたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

それでは川村委員、よろしくお願い申し上げます。

【川村委員】

横浜銀行の川村でございます。本日は貴重なお時間をいただき発表させていただきますことを、まことに感謝申し上げます。

それでは、資料1「地方銀行のグループ経営と金融規制の見直し要望」というタイトルがついております資料に基づきまして、ご説明をさせていただきます。

表紙をめくっていただきまして、1ページをご覧いただきたいと思います。主な目次になっています。私からは、地方銀行協会で取りまとめました業務拡大に対するニーズ、こちらにつきまして、横浜銀行に関する具体的な事項もとり混ぜながら、ご説明をさせていただきたいと思います。なお、私がおります横浜銀行につきましては、昨年11月に東日本銀行と持株会社による経営統合を検討するという発表をしたところでありまして、現時点においては、持株会社グループではございません。ただ、それを具体的にちょうど今検討している最中というところで、片足を入れたか入れないかぐらいの関係でございますので、そういったことも踏まえまして、両面からお話をさせていただければと思います。

次のページが1番目ということで、地方銀行とはどんな感じで業務をやっているのかといった全体についてお話をしたいと思います。ここで地方銀行と出てまいりますのは、全国地方銀行協会加盟の地銀64行のことを総称しておりますので、ご承知おきいただきたいと思います。

3ページをご覧いただきたいと思います。日本地図が出ておりますが、この地方銀行64行は、いわゆる北は北海道から南は沖縄まで、全国に7,500店余の営業拠点を有しておりまして、預金合計は243兆円、国内総預金の4分の1程度と。貸出金は178兆円ということで、国内総貸出の3割近くを占めているものでございます。この地図には、各地方銀行の本店所在地別の分布を示しておりますが、色を塗ってある銀行は現在、銀行持株会社の傘下の子銀行となっているものであります。現時点で、銀行持株会社は、ここでは8グループ、その子銀行数は12行であります。今年10月には、この九州の肥後銀行と鹿児島銀行が持株会社による経営統合を予定しております。また、私どもの経営統合がなりますと子銀行ベースでは15行となりまして、64行に対する比率は、それでも2割ちょっとといったところでございますので、大半は持株ベースではない単独での銀行経営をしているということでございます。

次の4ページをご覧いただきたいと思います。こちらには、地方銀行における経営統合以外でも、さまざまな業務面での連携あるいはシステムの共同化を行っているといった事例を紹介しております。それぞれ地方銀行は、各地元におきまして圧倒的なシェアを有しておりますので、この地元におきましては、他の地方銀行とは営業地域がバッティングすることが非常に少ないということで、地銀同士の競争はあまりございません。その結果、さまざまな形で連携をしたり、協働したりして、ともにウィン・ウィンを目指す関係でございます。こうした相互補完的な関係にはありますが、最近は、地方の人口減少などを背景に地元外へ進出する銀行も多くありまして、地方銀行同士の競争が激化しているといった報道も見られるところとなっているところであります。

次の5ページをご覧いただきたいと思います。ここからは、地方銀行の地域密着型金融の取組みについて簡単にご紹介したいと思います。この件につきましては、後ほど多胡さんから詳しくあると思いますが、地域密着型金融はリレーションシップバンキングとも言われておりますが、2002年の金融再生プログラムの中で触れられて、その後、2005年の新アクションプログラムにおきましては、地域企業の創業ですとか、新事業支援の機能強化、あるいは取引先企業の経営相談の強化、また早期事業再生に向けての取組みなどが具体的な項目として求められておりまして、こうした取組みは、地域の経済や地域の金融システムの支え役としての地方銀行の重要なテーマとなっております。地方銀行協会では、この全国的な取組みの実施状況を資料にある形で取りまとめておりまして、定期的に公表しております。

6ページには、そのほか、最近のテーマとしては農業ですとか、観光といった今後の期待業種への取組み、あるいはエネルギーや空き家対策など、各地それぞれの課題や特色を踏まえた問題解決に向けた取組みを紹介しているものであります。このように、地方銀行の主たる活躍の舞台は、それぞれの地域において個々のお客さま・事業者とフェース・ツー・フェースで多面的な関係を構築し、コンサルティング機能を発揮することであります。したがって、後ほどお話しする業務範囲の拡大についての要望事項も、個別にさまざまなものが出てくるといった状況にあります。

次に、7ページ以降は、数は少ないのですが、地方銀行の持株会社グループを構成しているところにつきまして簡単にご紹介したいと思います。

8ページに幾つかパターンを出しております。3つの例を示しておりますが、一番左側、ふくおかフィナンシャルグループ(FG)ですが、こちらは持株会社の直下に3つの子銀行が、すなわち福岡県の福岡銀行、長崎県の親和銀行、熊本県の熊本銀行が並列にぶら下がっている形であります。銀行以外の金融関連会社は、中核となる福岡銀行の子会社になっています。その隣ですが、ほくほくFGです。こちらは北海道銀行と北陸銀行の2つの銀行に加えて、リース会社など、金融関連会社も持株会社の下に入っておりまして、子銀行と兄弟関係にあります。その隣の池田泉州ホールディングス(HD)ですが、こちらは池田銀行と泉州銀行がもともと持株会社のもとで兄弟会社となり、その後、合併したことにより子銀行が1つとなっているケースであります。このように、地方銀行におきましては、銀行持株会社のもとで複数の子銀行が統合することによって金融グループを形成していますが、メガバンクさんのように銀行、証券、信託などの機能別の子会社によるグループ形成とは異なった形態がほとんどであります。

9ページは関連資料ですので飛ばさせていただきまして、10ページをご覧いただきたいと思います。こういった持株グループを持っているところの収益構造ですが、棒グラフは、銀行業務とその他の業務に分けた構成比です。ご覧いただきますとおり、どのグループも圧倒的に銀行業務の収益となっております。また、円グラフは国内・海外の別ですが、こちらも国内が9割ということで、従来からの国内の銀行業務がその収益構造のほとんどを占めているというのが現状であります。

11ページは、ふくおかFGにおけるリスク管理体制の説明資料を開示資料から持ってきたものであります。左側が持株会社の管理体制、右側が子銀行の管理体制で、一目でおわかりいただけると思いますが、右も左もほとんど同じような体制で、管理する項目もほぼ同一であります。持株会社による金融グループを構成していても、先ほどご覧いただいたとおり、業務内容は圧倒的に銀行業務がほとんどでありまして、持株会社と子銀行の間の管理体制は重複している、二重構造になっているケースが多くなっております。

続きまして、12ページ以降では、私がおります横浜銀行につきまして、経営戦略を踏まえたガバナンスについて簡単にご説明したいと思います。

13ページに、私どもが現在取り組んでおります中期経営計画、今年度が3ヵ年の最終年度になりますが、こちらの概要を示しております。「Tackle for the Dream」という名称でありますが、4番の基本戦略のところをご覧いただきますとおわかりのとおり、個人・法人のお客さまに対しては、取引の深化ですとか、問題解決支援といった、預金・貸出金といった伝統的な金融機能にとどまらず、さまざまなコンサルティング機能を提供し、多様化するニーズに応えると。そうした中で収益の多様化を図っていこうといった組立てが基本にあります。また、この4のマル4にもありますが、横浜銀行は過去に公的資金の注入を受けておりまして、当時からローコストオペレーションを徹底してきているということで、これまでの中計においては、経営効率化、経費削減は優先的なテーマとして取り上げているものであります。

次に、14ページでございます。こうした経営目標・経営課題の解決の取組みの中で、私どものような経営資源が限られた地方銀行におきましては、さまざまな外部の機能を取り込みながら、これを実現していくというやり方をしております。左側が国内業務に関する事項でありますが、ご覧いただきますとおり、東海東京フィナンシャル・ホールディングスとの合弁で証券子会社を設立したり、信託業務につきましては朝日信託と提携、投資信託の販売におきましては三井住友信託銀行と合弁で運用子会社を設立するなど、外部の方々のお力添えをいただきながら、多様な提携戦略を展開しております。また、右側の海外業務につきましては、上海支店やバンコク駐在員事務所、こちらは自前で開設いたしましたが、その他の東南アジア各国につきましては、それぞれの海外銀行との提携を軸に、お客さまの進出ニーズに対応しているということであります。

次に、そうした結果、15ページであります。銀行子会社の業務範囲に対応させて、右側に横浜銀行グループの子会社あるいは提携先を表しておりますが、ここにありますように、リース、保証、あるいはベンチャーキャピタルといったようなところについては子会社により、グループでの対応をしておりますが、信託機能等々につきましては、今申し上げた外部の機能との提携で、これを補完してニーズに応えていこうという全体像になっております。

16ページにつきましては、グループ内の関連会社、子会社の管理態勢について示したものであります。銀行をヘッドとしたグループ会社に対する内部管理態勢につきましては、右側の表で上と下に分かれておりますが、各子会社の経営全般に対する責任部署として業務担当部を明確にはりつけるとともに、リスク種類ごとの内部管理の項目ごとに、リスク管理部署が管理を行うという縦横の管理態勢としています。また、左側の絵にありますとおり、頭取・役員と各社の社長をメンバーとするグループ戦略会議を頭に置きまして、この中で毎月、運営内容等を検討しているところであります。

このグループ戦略会議での運営内容は、次の17ページに示しております。グループ戦略会議は、左側にありますが、年度の予算あるいは具体的な各社の施策を決定するとともに、その進捗状況を毎月、きめ細かく把握し、また、問題事象が発生した場合には、速やかにグループとしての対処方針を決定するなど、きめ細かいPDCAにより厳格な管理態勢を敷いております。なお、参考に出しました右の棒グラフになりますが、こちらは、今年度、横浜銀行グループにおける資本のリスク別配賦の状況を示したものであります。横浜銀行の自己資本をベースに、事業に使える配賦原資7,600億円余と認識しておりますが、このうち4,571億円、配賦資本の合計ですが、これを事業遂行に必要な資本として、必要なリスク量に応じて種類別に配賦しております。関連会社分は上から2つ目のところに159とありますが、信用リスクが中心ですが、全体で159億円ということで、資本配賦額全体の5%未満とわずかであります。銀行業以外のリスクについて加味できていないという懸念もございますが、先ほどご覧いただいた銀行本体以外の収益が非常に小さかったことと、リスクテイクにつきましても限られているといったところには、相通じるものがございます。

続いて18ページ以降、最後になりますが、金融規制見直しの要望事項について、地方銀行からの要望事項を取りまとめましたので、簡単にご説明させていただきたいと思います。

19ページ、こちらはまず「子会社の業務範囲の拡大について」ということで、銀行としてお客さまに提供する業務の中での業務範囲拡大の希望であります。今回の主たるテーマでありますIT関連のビジネスにつきましては、電子マーケット等が出ておりますが、こちらでもECプラットフォームの運営ですとか、ビッグデータ分析のノウハウの販売といったようなものが挙げられております。ただし、広範な個人向けのマーケットというよりは、BtoB、企業間のビジネスマッチングなどに関するものをイメージしたという声が多く挙がっておりました。また、右側の箱ですが、地域活性化関連ということで、不動産関連業務、あるいは貿易実務の代行など、地方創生や地域活性化、地域密着型金融といった、先ほど申し上げたフェース・ツー・フェースの業務に関するものに関しての要望が多く寄せられております。どちらかというと、IT関連よりは、こういったものが従来からニーズが高かったといったところでございます。

20ページにつきましては、お客さま向けというよりは、先ほどありました金融グループを構成する場合の経営の効率化に関しての業務範囲ですとか、規制緩和の要望事項になっております。効率化等のために、銀行持株会社で行いたい業務が真ん中にございますが、これは、子銀行全体の資金運用や調達など、一部、執行と見られるような業務を認めてほしいと。あるいは、先ほど、ふくおかFGさんの件でもありましたが、リスク管理ですとか、監査体制などが持株会社と子銀行において二重構造になっている部分についての効率化といったところの要望も出ております。また、一番下の箱は、グループ内の子銀行の業務に関する事項でありますが、共同店舗におけるバックオフィスの一元化ですとか、市場運用専門会社の柔軟な設立・運用といったような要望も出ております。

最後に、21ページになります。その他の事項であります。金融グループ以外の地方銀行多数が親子会社グループとなりますが、そうしたものについても、業務の拡大の具体的ニーズが地方ごとに、あるいは地方銀行ごとにさまざまであり、多くの地方銀行がそれぞれの状況に合わせて創意工夫を凝らし、顧客利便の向上に資するアイデアを積極的に創出していくというインセンティブとなるように、一定の制限のもとでとなると思いますが、親子会社であっても業務範囲の拡大が可能な方法がないだろうかといったことにつきましては、今後も含めて検討されることを期待する声が多数寄せられております。また、認可方式につきましては、さまざまなニーズが出てくることが想定されるため、個別の認可方式が望ましいと考えますが、その上で先々になりますが、同じものが多数認可され、リスクも限定的であるような業務があれば限定列挙に加えていくという仕組みがあってもいいのではないかと思います。

以上、拙い説明で申しわけございませんでしたが、これでご説明を終わらせていただきます。ありがとうございました。

【岩原座長】

どうもありがとうございました。引き続きまして、藤井委員、よろしくお願いいたします。

【藤井委員】

北洋銀行の藤井でございます。本日はこのような機会をいただき、ありがとうございます。私からは、資料2「北洋銀行グループの現状と規制緩和要望について」、この資料に沿いましてご報告をさせていただきます。

表紙をおめくりください。本日お話しさせていただく内容は、ご覧の3点でございます。

1枚おめくりいただきまして、1ページ目をご覧ください。はじめに、北海道の現状であります。北海道では、全国を上回るスピードで少子高齢化が進展しております。図1をご覧ください。北海道の人口は現在536万人、これが2040年には419万人、約22%程度減少する見込みであります。図2は、その人口減少が全国のスピードに倍近い速度で進むことを示しております。その結果、図3に見られますように、大都市圏であります札幌圏への一極集中もありまして、右下の図4のように、人口ゼロの空白地帯が更に拡大する見込みであります。この白いところは、今のところ、人口があるメッシュでありますが、この50%程度は1平方キロメートル当たり人口が10人未満と、極めて過疎の進んだ地域ということでございます。

2ページ目をご覧ください。北海道の主要産業は全国シェアトップの農業、畜産、漁業など一次産業と食品関連の加工製造業、建設業、及び卸売・小売、サービスの三次産業であります。図5にありますように、第二次産業、とりわけ製造業のウェートが全国のおおむね2分の1程度と小さいことが特徴であります。一方、図8にありますように、外国からの観光客が大幅に伸びておりまして、観光業は極めて好調で、貴重な外需を形成しております。北海道の輸出入は、輸入8割、輸出2割と圧倒的な輸入超過でありまして、足もとでは円安によるメリットは一部の業種・企業にとどまり、北海道全体では、原材料、飼料等のコストアップ要因になっております。

次に、3ページをご覧ください。北洋銀行は北海道を営業基盤とし、道内に173店舗を配置し、道外店舗は東京支店1ヵ店であります。北洋銀行の預貸シェアはご覧のとおり、預金で3分の1、貸出で約4割と、いずれもトップシェアを占めております。また、年金、給与振込など、家計のメイン取引でも3分の1強のシェアを持ち、法人取引でも、これは外部の調査会社のデータでありますが、メイン先シェア34.6%と、いずれもトップシェアを占めております。

次に、4ページをご覧ください。昨年よりスタートしております中期経営計画では、当行グループの強みを生かした金融仲介機能の発揮と総合金融サービスの提供により、地域経済の活性化を図り、地域、お客さま、株主、従業員といったステークホルダーの価値向上につながる好循環の実現を目指して、北海道の新たな価値の創造に挑戦しております。

5ページをご覧ください。地方創生は、まさに今ご説明申し上げました当行が掲げる中期経営計画「挑戦」で目指します地域経済活性化と重なるものであり、地域の産・官・学・金・労・言、こういった機関の連携によって、その実現に向けて現在各自治体の推進組織に可能な限り参画し、戦略立案段階から推進を支援できるよう、専門部署を設置して、全行プロジェクトによる推進体制をとっております。

6ページをご覧ください。成長分野における当行の具体的な取組みであります。基本は、需要の喚起と付加価値の創出にあります。外部機関と連携しながら、北海道の強みであります食と農業の六次産業化、観光につきましては、各種プロモーションによる内外需の取込みに積極的に取り組んでおります。また、取引先の事業性評価に基づき、事業戦略、経営課題などを経営者の皆様と共有することを目的として、経営者と外部の専門家を交えた個社別のミーティングを積極的に開催し、銀行の提供する各種ソリューションメニューを活用して、その解決・実行を支援しております。

7ページをご覧ください。北洋銀行では、高齢者の増加、地域の過疎化が進む中で、一層重要性を増す医療福祉分野、北海道の豊かな森林資源、水資源の保全や生物多様性の確保、再生可能エネルギーの開発などの環境保全、それから次世代の育成に向けた教育文化活動、こういった3つの重点テーマを掲げ、ご覧のとおり、各種の取組みを行っております。

8ページをご覧ください。ここからは、北洋銀行のガバナンスについてであります。北洋銀行のグループは、親会社と4社の子会社からなる大変シンプルな構成の銀行グループで、金融関連業務を行う事業会社はカード会社とリース会社の2社であります。他の子会社2社は銀行の付随業務を行っており、全体の資産規模で見ると、親銀行の比率がグループ全体の98%を占めております。

次に、9ページをご覧ください。北洋銀行は1998年に、その前年に経営破綻をしました北海道拓殖銀行の北海道内の営業を譲り受け、その後、2001年に持株会社方式により札幌銀行と経営統合いたしました。右側の上段の図でございます。HDというのはホールディングスの略で、銀行持株会社でございます。なお、図では省略しておりますが、厳密には、先ほどの2社、従属業務を行う子会社は銀行の子会社、持株会社から見ると孫会社ということで、北洋銀行の下にぶら下がっております。2008年には、北洋銀行と札幌銀行、子銀行2行が合併し、右側の中段の図のように1バンクとなり、次いで、2012年には、HDと子銀行の北洋銀行が合併し、HDの子会社は再び銀行の子会社となり、一番下の図のように、現在の北洋銀行を親会社とする銀行グループになっております。

次の10ページをご覧ください。左側が、持株会社の傘下にあった2012年当時のガバナンスの態勢であります。右側が現在の態勢ということで、大きく違いますのは、左側の持株会社の下、中段にグループ経営会議と開示委員会、それから下のほうに水色をかけてありますグループ報酬委員会と経営戦略に関する意見交換会、この4つの会議体が、右側では銀行の中に置かれているところであります。グループ報酬委員会、経営戦略に関する意見交換会は、それぞれ報酬制度、グループ全体の経営の方向性などについて、社外役員の知見を反映させ、より透明性を高める趣旨で設置した任意の会議体であります。

続きまして、11ページをご覧ください。本年の株主総会におきまして、取締役会の一層の機能強化を目的として、社外取締役を1名増員し、全取締役14名中3名を社外取締役とし、うち2名を女性取締役とする選任案をお諮りする予定になっております。

続きまして、12ページをご覧ください。ここからは、3つ目のテーマであります規制緩和に関する要望であります。北海道におきましては、高齢化・人口減が急速に進行していく中で、雇用の減少、人口の社会減のスパイラルを食いとめ、所得を確保し、地域として最低限必要な公共サービスをどうやって維持していくのかが地域の大変大きな課題であります。こうした課題認識から、以下、規制緩和についてご要望を申し上げさせていただきます。

13ページをご覧ください。はじめに、銀行の代理業者に関する規制緩和についてであります。左下の地図は、当行の店舗ネットワークであります。先ほど申し上げましたとおり、道外店舗は東京支店の1ヵ店、道内の173ヵ店を北海道の14の行政区すべてに配置し、また、道内に36市あるうちの34の市に支店を配置しております。支店のない市は、全国の市の中で人口が最も少ない歌志内市(人口3,766名)、2番目に人口の少ない三笠市(人口9,372名)、こういった2市について店舗がないということであります。更に過疎化が進む中で、銀行によるサービス提供へのニーズにどう対応していくか、これが課題の認識であります。

14ページをご覧ください。その解決策の1つとして、銀行代理店の活用が考えられますが、地方においては、代理店業者の許可要件を満たす成り手がいないのが実情であります。ついては、代理店業者の負担軽減となる許可要件の緩和のご検討を要望するものであります。

続きまして、15ページをご覧ください。2点目は、不動産リースに関する要望であります。資料に記載のとおり、公共施設整備や再開発事業など、地域の公共インフラに関する事業ニーズについて、PFIの活用がその有力な推進手段となっております。一方で、事業規模や自治体の規模によっては、PFI方式よりももう少し簡便な方法で民間事業者の協力も得たいと、こういったニーズもございます。

ページをおめくりいただきまして、16ページでございます。こうした課題に対しまして、リースの利用による取組みは有効な手段でありますが、現状では、純然たる公共施設におきましてはファイナンスリースの方式で対応することが可能でありますが、施設の一部を賃貸する等によって施設の利用効率を高めたいと、こういったニーズがあった場合には、現状のファイナンスリース方式では対応することができません。つきましては、不動産向けのリースにつきまして、こういったニーズにも対応できるよう、オペレーティングリースの業務が取扱いできるように規制緩和を要望するものであります。

続きまして、17ページをご覧ください。不動産業務につきまして、規制緩和のご要望であります。地方では、不動産の売・買・賃貸等の情報は銀行に集中しております。また、銀行の所有不動産が余剰となるケースもございます。銀行に集まった不動産情報を活用して、未利用となっている不動産や銀行の余剰不動産を有効活用できれば、地域の活性化にもつながると考えております。ついては、こうしたニーズに応えるために、銀行による不動産仲介等の直接的なサービスの提供や銀行保有不動産の賃貸等ができるようにご要望申し上げるものであります。

続きまして、18ページをご覧ください。4点目は、ITを活用した顧客ニーズへの対応についてのご要望であります。ITは、これまでもダイレクトチャネルの利便性向上やBPR、営業推進支援等に幅広く活用してきております。一方で、業種やサービスの分野を問わず、ワンストップでシームレスを求める顧客のニーズは極めて強いものがございます。本来、金融サービスはITと親和性が高く、また、特にローカルエリアにおきましては、さまざまな分野のユーザー利便を大きく向上させる可能性を秘めております。特に、ローカルエリアでは、金融サービスとさまざまな流通・物流サービスが連携した新たなサービスやテレワーク、テレエデュケーションなど、ローカルエリアの価値を高め、地域の活性化につながる多岐にわたるITの利用が考えられます。地域金融機関にとって、こうしたITを活用した各種サービスのプラットフォーム機能を提供できれば、顧客の利便性向上を通じて地域に貢献できる余地が極めて大きいのではないかと考えております。ただし、ローカルのニーズは、前回のこのワーキングで議論されましたグローバルな競争の中で求められるサービスラインとはおのずと中身もスケールも異なったものになると想定されます。つきましては、地域金融機関におきましても、地域のニーズに応じたサービスラインの進展について個別にお認めいただけるよう、ご要望するものであります。

以上、ローカルの視点から4点、ご要望を申し上げました。なお、資料に記載がございませんが、第二地銀協会加盟行から、銀行持株会社グループに関しましても、以下3点、要望がありましたので、あわせてご報告させていただきます。

1点目は、持株会社傘下の銀行間において、バックオフィスの共同化、顧客情報の共有等、より柔軟な業務運営を可能とする監督指針の緩和であります。2点目は、より効率的な資金運用を行うため、グループ銀行間の資金貸借について、アームズレングスルールの適用除外をお願いするものであります。3点目は、持株会社の機能強化の観点から、持株会社がグループ全体の資金管理・資金運用の一元化とグループ内の資金融通の弾力化など、いわゆるALMを実施できるよう、規制の緩和とあわせて、子会社の業務範囲の柔軟化を要望するものであります。

最後になりますが、事務局におかれましても、個別に他の銀行の意見・要望等を直接おくみ上げいただく機会を設け、このワーキング・グループの議論にも反映させていただければ一層有益かと思いますので、重ねてご要望を申し上げまして、私からのご説明を終わらせていただきます。ありがとうございました。

【岩原座長】

ありがとうございました。それでは、引き続きまして多胡参考人、よろしくお願いいたします。

【多胡参考人】

どうも、多胡でございます。お手もとの資料で説明させていただきます。

まず、最初に私事なのですが、一番最後のページにプロフィールで書いてある通り、もともと私はメガバンクの出身です。その中で主に海外業務をやっておりました。ただ、ここ10年ぐらいは地方銀行の社外取締役をしております。ということで、両方を経験して、メガさんと地銀さんといいますか、地域金融機関とは業種が違うぐらいの感覚でものを見ていかなければいけないのではないかと私自身、実感として持っているのです。ですから、そういうことを頭に置いて資料を作りました。それに従ってご説明いたしますので、ぜひよろしくご静聴お願いいたします。

まず、最初のページ、歴史認識と立ち位置と。これは、本来は川村委員とか藤井委員がお話しされるべき話で、私からするのも僣越なのですがご容赦下さい。まず、地方銀行というのは地域の産業資本家(旦那衆)が自らの持続と成長、並びに地域の経済社会のサステナビリティを高めるために始めた社会資本形成型のベンチャーキャピタルです。もちろん、地方銀行の場合、戦後にできた地銀もあるわけですが、これは金繰りがきついときに地元の商工会とかがみんなで集まって作ったという経緯があります。もともとはこういうルーツなのですね。それから、第二地方銀行並びに信用金庫、信用組合は、その中には地域限定、職域限定とあるのですが、互助思想、報徳思想といいますか、要するにここがスタートラインなのですね。まずこういう基本的な認識がないとなかなか話が進まない。それで、今も昔も、要は地域経済・地域社会の安定、成長、発展がなければ、地域金融機関自体の持続と成長はない。これが原理原則でして、更にもう1つ言えば、地域金融機関は規制で守られたせいもあるのですが、非常に処遇がよかったせいもあってか、人材、情報ネットワークといった地域リソースは地域金融機関に集中しています。あとは地方の役所でしょうね。地方というのはこういう構造になっているわけです。

そういう状況の中で、次のページにいっていただきます。要は、地域経済・地域社会に対するコミットメントが地域金融機関の重要なミッションなのです。両委員から人口減、高齢化等のお話もありました。歌志内市が今、人口3,000人というのはびっくりしたのですが、そういう状況の中でいくら厳しいといっても逃げるわけにはいきません。ですから、先ほどの代理店の話なんかも出てくるわけです。それから、業況が悪いからといって資金回収はできないわけです。これはもちろん事業者の真摯な経営姿勢が前提なのですが、当然、地元の事業者には雇用があり、かつ仕入れがあったり、販売があったり、いわゆる地域商流があるわけですね。ですから、こういうものを前提として考えていかなければいけない。それから、小口の取引先も非常に多いわけですが、アメリカの場合はオートスコアリングだとか、クレジットカードキャッシングとか、いろいろな小口を対象としたファイナンスがあるわけです。アメリカのことは今日は触れませんが、日本では零細であっても、地域金融機関が対面で面倒を見ている。かつ、小さい企業でも複数の銀行取引なのですね。アメリカはほとんど1行取引ですが、日本では複数取引になっているわけです。日本では地域金融機関は逃げるに逃げられない。ちょっと言葉は悪いですが、そういう状況なのですね。ですから、コスト効率のいいところ、信用リスクの良い貸出先だけをピンポイントで攻めていくことはできないわけです。

次のページなのですが、先ほどたまたま代理店のお話もあったのですが、更にここまでやるかという話で、地域の銀行が人材教育として寺子屋まで作っているケースを書いてみました。これは島根県松江市のケースなのですが、幕末に津和野藩が、貧乏の中から西周とか、森鴎外とか、そういう人たちを育てていった。そういうのが実はヒントになっているのです。こういうところまでやる。これが地域金融機関のある意味、使命であるというぐらいの意気込みをもって経営しているということです。

次のページにまいります。リレーションシップバンキング、これはリレバンと言われるものなのですが、これは今言ったような前提の中で、地域経済・地域社会の持続と成長と、更には、同時に地域金融機関自体も発展していくにはどうしたらいいか。こういう視点のもとで、金融再生プログラムの中で金融審議会のワーキング・グループが2002年12月からスタートしまして2003年4月にアクションプログラムが出ています。リレバンというのは、100人に聞くと100通りの答えが出るぐらい、それぞれ手前味噌の解釈があるのですが、私の解釈をここでご説明したいと思います。要は、地域経済・地域社会のために地域金融機関に偏在した人材・情報、これをどれだけ地域のために有効活用するか。これが基本中の基本なのです。

その次のページに、今から12年前の金融庁のガイドラインの一部改正があります。これを見ていただくと、3.(1)に下線が引いてありますが、「リレーションシップバンキングの機能の一環として」、後からリレーションシップバンキングについては説明しますが、「コンサルティング業務等取引先への支援業務が付随業務」として明確化されていますね。これは、その上のほうに書いてあるのですが、ワーキング・グループの中で議論になって、金融庁で検討してくれということになったのです。実は私はそのとき、金融庁に対し要望した当事者なのですが、今、金融機関がビジネスマッチングとか、コンサルティングができるのはこれがあるからなのですね。

それでまた5ページに戻りますと、ガイドラインの一部改正は、リレバンを推進する上では不可欠であったわけです。リレバンというのは、実は今のオンオフ一体化の金融モニタリング、事業性評価型の中小企業取引、いわゆる事業性評価と本質は同じなのです。

7ページを見てください。これは、私が今回のために作成した「地域金融年表」です。今から13年前の2002年6月に、金融検査マニュアルの別冊「中小企業融資編」が導入されたのですが、ここがスタートなんですね。それまで地域、中小であろうが、メガであろうが、検査マニュアルは一本でした。もちろん、中小企業に対しては配慮しなければいけないという配慮はあったのですが、ここで明確に分けたわけですね。それでリレバンが始まって、一次、二次とやりまして、2007年4月には、これが完全な恒久化ということで、今の原型ができたわけですね。ところが、その後、リーマンショックがあり、更には大震災もありまして、その間には円滑化法も入るわけですね。そのあたりのところを全部取りまとめたのが、2011年5月の監督指針の抜本的改正なのです。ここで、私は日本型地域密着金融の考え方が確立されたと思っています。それが今の事業性評価型の中小企業取引、ここに全部つながっています。こういう流れができ上がっています。ですから、これは全部一貫しているわけですね。

また5ページに戻ります。先ほども少しお話が出ていましたが、地方創生の「まち・ひと・しごと」も、実は事業性評価型の中小企業取引を面的に展開したものにほかならない。何かのイベントをやるとか、そういう話ではないのですよね。そういう誤解が結構あるようだけれども、全然、そんな話ではないのです。事業性評価型の中小企業取引というものを、いかに面的に広げていくかと。これがすべてだと私は思っています。ですから、地方創生における地域金融機関の役割は非常に重いということなのです。

8ページにいってください。今の事業性評価型の中小企業取引にしても、その源流にあるリレーションシップバンキングにしても重要な目標があります。目標マル1は、地域の事業者を財務面のみならず、本業面でも支援すること。要するに、ガイドライン変更で、本業面の支援がかなり思い切ってできるようになったわけですね。先ほどの12年前のガイドラインですね。まさに、金融機関が持っている人材とか情報ネットワークを総動員する環境ができあがっているわけです。ですから、それをやることで、地域経済、地域における雇用・社会を支えて、その次の目標マル2で、金融機関自身の持続と成長も果たす。この両輪なのですね。目標はこの2つです。この目標設定はメガバンクのそれとはかなり違うのですね。ですから、冒頭に私が業種が違うのではないかと言ったのは、実はここなのです。よくいろいろな方とお話をしていると、地域金融機関、地方銀行は、例えばメガバンクの小型版であるという誤解があるのだけれども、それは全く違うことだと言わなければいけないと思っております。

その次ですが、リレバンのポイントとは何かといえば9ページに書いてあります。繰り返しになりますが、目標マル1、これが一番重要ですね。これが達成できなければ、目標マル2は達成できません。これは時間軸が要ります。短時間ではできません。ある地方銀行の相談役をされていますが、長年、頭取をやられた方がおっしゃっていました。新古典派経済学では地域金融は経営できないと。私もそのとおりだと思います。経済学以上に社会学的な視点が非常に重要です。ファイナンス理論だって行動経済学まで変化しましたが、こういう感覚がなければ、絶対に地域金融の経営はできない。それから、ROE経営、これも今、非常に議論になっているわけですが、私自身、社外取締役を10年ぐらいやって、自分なりにいわゆる攻めのガバナンスを意識してやっていたつもりなのですが、ROE経営に過度に依存することはむしろ逆効果というのが実感です。これはどういうことかというと、時間があれば説明しますが、時間がないだろうと思って、私が2カ月ぐらい前に書いたペーパーを資料に入れました。23、24ページです。これは、お時間があればお読みいただければありがたいです。ROE経営というものも、これをすべてとり入れたら逆に経営がガタガタになるという感覚もあるのですね。

次です。だんだん持株会社の話に近づくのですが、まずは地域金融は規模だけではないというメッセージが10ページです。すなわち、2つの目標達成のためには規模がないと難しい。これは事実なのですが規模だけではない。つまり、規模が大きくなってエリアが広域化しますと、目標マル1がおろそかになって、それに対する施策が十分に打てなくなる。そういう恐れがあるのですね。特に大きくなっていきますと、どうしても産業基盤の弱い過疎地が取り残されるリスクは否定できない。まさに社会学的な視点で考えていった場合に、ここは結構重要な点になります。

次のページ、こういう状況の中で、規模はそこそこ必要であるが、地域のコミットメントは外せないという形の中で生まれてきたのが、この11ページのシェアードサービスと業務提携です。規模と地域へのコミットメントの両者をバランスよく達成するための基本はシェアードサービス。つまり、一言で言えば、バンクヤードを一緒にするということですね。お客さまとの接点のところについては、それぞれの銀行がコミットメントをしっかりやった上で、バックヤードを一緒にするという考え方です。それから業務提携によって、よりよいサービスを提供するシナジー効果を目指すと。こういう形ですね。特に、シェアードサービスによって効率化、いわゆる規模の効果を出すことをやっているわけですね。

12ページをご覧下さい。今の繰り返しになりますが、シェアードサービスの目的は、コストの効率化です。システム統合、これが長い歴史がありますし、最近では、ここに書いてあるようなこともやっている。それから、業務提携の目的は何かというと、シナジー効果なわけです。ビジネスマッチング等をやっているわけですが、双方向の顧客紹介とか、こういうこともできるし、先ほどのご説明の中でも有価証券の協業が要望事項の中に入っていましたが、これも業務提携の中でも考えることができる。ただ、業務提携ですと、所詮は別々な銀行なわけですね。限界はあるでしょう。シェアードサービスと業務提携、コストの効率化とシナジー効果、これらを足したものがいわゆる連携です。最近は地域銀行の広域連携という言葉で非常に注目度が上がっていますが、こういう流れなのですね。

次のポイントです。今度は、連携が発展して持株会社形式になるとどうなるかが13ページであります。シェアードサービスと業務提携による連携を更に進めたものが、地域銀行の経営統合です。経営統合は何かというと本質は1つで、資本が一本になること。資本統合なのですね。資本統合をすることでどういう効果があるかは後から言いますが、2番目の「・」に書いた通り、メガバンクのそれとは大きく異なります。これは既に川村委員からご説明がありましたので、ここは割愛いたします。先ほどから申し上げている2つの目的を達成する上で、資本統合が、単体や連携よりもより効果が大きいとの判断であれば、経営統合(持株会社形態)になるわけです。資本統合までしなくてもいいということであれば、持株会社にする必要はないわけです。連携でかなりのことができます。経営統合をしますと個別株を上場廃止するわけですから、これはやはり、地域のお客さんが地元株主であり、そこへの配慮を考えますと、かなりの納得できる説明理由がないといけないし、大きな決断が必要であります。そういうことをちゃんと考えた上で、経営統合に進んでいくわけですね。

次のポイントです。「経営統合のポイント」、14ページです。今の繰り返しですが、連携以上にコスト効率化が図れる、システム統合等に拍車がかかる。それから、連携以上にシナジー効果があること。子銀行の地域間の経済交流が大きいほどシナジー効果が大きいですね。例で示します。たまたま先ほど、ふくおかFGさんの事例が出ていましたが、福岡-熊本、福岡-長崎、これらはものすごく商流の太い地域なのですね。ですから、こういう商流の太い地域で統合しますと、やはりそれなりに効果が大きいのですね。また、仙台と山形だってそうです。仙山経済圏と言いますね。ここにもホールディングカンパニーがあります。非常にシナジー効果が大きいと思いますね。逆に、商流があまりないところはシナジー効果はあまり大きくないので経営統合はいかがなものか。こういうふうに判断するわけです。さらに連携から一歩進んで資本統合をやるときの原理原則を数式で表してみました。要するに、個別銀行の資本から見込まれる予想最大利益、その和よりも、統合した場合の資本をバッファーにして、いろいろな投資をしたほうが(リスクをテイクしたほうが)より大きなリターンを予想最大値として見込めるのであれば、経営統合にいくわけですね。当然、経営統合をしている経営は、こういう原理原則をきちんと守った上でやっているはずですよ。

次のページにまいります。「資本統合の効果」ということなのですが、資本を一本にすることで、まず集中資本投下ができるわけです。ですから、今、「まち・ひと・しごと」もそうですが、地域の再生をやらなければいけないときには、地域の銀行には、リスクマネーの提供が求められていくわけです。それは、目標マル1を達成するために非常に重要なことなのですが、そのためには、ある程度の規模の資本が必要です。もう1つは、いろいろな地域の銀行の資本が一緒になりますと、信用リスクの分散効果が出てくることです。1つの例を出しますと、先ほどの山形と仙台のケースでいくと、山形県は製造業立地なのですね。一方、仙台はサービスと不動産です。だから、非常に単純に言えば、製造業とサービス、不動産の相関関係が低ければ、分散効果が働くわけです。これは、厳密に計算すればもう少しきちんとしたものが出るのですが、感覚的に言えばそうなのですね。そういう形で、信用リスク面での資本統合の効果があるわけです。ただ、大事なことはその次の項目に書いてあるのですが、統合資本が短期的な結果を求めること、これは先ほどのROEの話と同じなのですが、これは避けなければいけない。要するに、信用リスクで大事なのは時間軸を持った経済合理性なんですね。先ほども言いましたが、地域金融機関の経営は時間軸を持った経済合理性がポイントなのです。広域化することで資本は統合したが、資本効率の良いところにばかり行って、過疎地が取り残される。これでは本末転倒です。とくに持株会社の権限が強い中央集権型の経営統合だと、こういうリスクがあるので気をつけなければいけない。それから有価証券投資での資本統合効果ですね。資本が厚くなれば運用の多様化が図られるし、個別トランザクションのロットをでかくできる。そういうことがあるので、それはそれなりに資本統合をすれば有価証券運用でも意味があります。先ほども要望事項で出ていたのですが、そういう展開はあるということです。

次に、地域銀行の持株会社の連結子会社ということで16ページにまとめてみました。これは先ほどのご説明にもありました。連結子会社に限定し、現在ホールディングカンパニーを組んでいる地域銀行、つまり地銀協・第二地銀協の加盟銀行の持株会社の連結子会社を拾ってみたら、大体こういうものが並んでいるわけです。この中で実は私が重要だと思うのは下の3つ(コンサルティング、シンクタンク、中小企業投資ファンド)です。この3つについて、さらに説明をいたします。

何度も繰り返しますが、地域銀行の場合は、あくまでも目標マル1が非常に重要なのですね。2つの目標を書いていますが、やはりマル1がきちんとできなければマル2は成り立たないわけですから、目標マル1をどれだけ達成できるかという点になってきます。そう考えるとシンクタンクとか、コンサルティング機能の会社とか、中小企業投資ファンドとか、地域事業者の本業支援、その集積体である地域経済の活性化・成長、こういうものを支援するような子会社は必須になってくる。大体、地域銀行は業績が悪くなると、こういう部門からやめていくのですね。昔、経済研究所があったけれども今はないとか、大体こういう流れなのですね。ところが、やはり今の状況からすると、重要なのはむしろこちらです。ですから、体力のない銀行は、どうしても後回しになるのだけれども、自力でできないのだったら、連携や持株会社で逆に作ったっていいではないかと。こういう発想が出てくるはずなのです。

それで次のポイントです。あえて入れましたが、「厳しさを増す地域金融機関経営」です。この3月の地域銀行決算を一通り見たのですが、厳しいですね。スライドの上の段落に書いてあるのが、いわゆる資金収支が縮小した、その理由にはこういうものがあると。それから倒産確率(PD値)は今は低下していますが、油断大敵です。円滑化法の後、いろいろな措置で倒産確率は全国的に下がっていますが、安心できない状況です。また預かり資産とか、投資銀行業務とか、いろいろな業務があるわけですが、これらでは銀行の収益の屋台骨にはなりえない。ちょっと語弊があるかもしれませんが、前期の決算を見て、やはり株の値上がり益とか、退職給付費用の減少、これも株の値上がりにつながるわけですが、こういった形で最終利益が確定している、そういう銀行が非常に多い。非常に厳しい経営環境なのですね。では、どうすればいいかということなのですが、やはり原理原則のもとに戻って、リレバン、更には今の事業性評価型の中小企業取引で収益基盤をもう一回立て直すこと。私は、これしか地域金融機関の今後生き残っていく術はないと思っています。

そういう意味で、規制緩和の話にもなってくるわけですが、次のページをご覧ください。銀行の単体であろうが、連携であろうが、経営統合であろうが、どの形でも結構です。やはり、地域の企業の再成長・活性化、地域経済社会の発展のために、今地域銀行にあるいろいろな知恵や情報を見直す必要があるのではないかと思います。それに加えて、規制も見直さねば、そういう視点でまとめてみました。3つほど挙げているのですが、2番目(不動産賃貸業務規制の緩和)については既にお話が出ましたので、割愛します。1番目、いわゆる株式保有制限、ここなのですね、大事なのは。今までは産業支配論だとか、いろいろな視点から議論があったのですが、この5%ルールの緩和は地域再生、地域活性化の観点で今こそ検討すべきことだと思います。

「株式保有制限(5%ルール)の緩和」ということで次のページに書きましたが、特定のケースで例外扱いができないかという提案です。ここに書いてある特定のケース云々というのは、全部実例です。私が作った話ではありません。実際に地域経済のためにやってみて、株式保有制限のために非常に苦労したという話なのですね。特定のケース1、これは事業承継ですね。相続人が複数いる場合とか、非常に評価額が高額になった場合の相続人ということで事業承継が非常に難しいので、銀行が一時的にブリッジの役割といいますか、一時的に受けて立つという事例です。5%ルールが障害になり、うまくいかなかったのです。2番目は、これはリレバンの時期、12年前からずっと議論になっていましたが、いわゆる地域銀行――信用金庫や信用組合の協同組織も同じですが――の中小企業向け融資の多くは、実は疑似エクイティーなんですね。貸出のキャッシュフローが実際のキャッシュフローとずれてくることが原因です。当初見込んだキャッシュフローと実際の返済が合致しなくなるというのは中小零細企業ではよくあることです。それが根雪のように底溜まっていって、これがエクイティーのような形をとるということで、疑似エクイティーというのです。こういうものが非常に多いので、ここを整理して、きちんとした株式の形をとれば、過少資本解消に向けた取組みが実践できるという趣旨です。その場合、5%を超えることは十分にありうる。こういう事例がありましたので、これも入れておきました。 それから3番目、次のページです。公益性の高い企業(施設)と書いてありますが、旅館とか、そういうところなのです。再生の段階で、私は別に悪いと言っているわけではないのですが、地域外とか海外からの出資を入れるケースは少なくありません。ただ、新たな地域外株主が事業再生のときに経済合理性のみで経営判断をしますと、地元の雇用とか、地元の商流に影響が出てくる可能性があります。これは東北のある観光地ですが、大どころの旅館がほとんど地域外や海外が大株主になったことで地元の魚屋、肉屋、八百屋がつぶれるという事態になっています。さらに旅館の従業員たちが大量に解雇されています。こういったことが実際にあるわけです。これは東北の某地区で、非常に極端なケースだったので、実際に見に行ったら、ひどかったのですが、他のところでも多かれ少なかれあるわけですね。こういうときに、やはり地元の金融機関がある程度の額を出資して、それによって地元の雇用とか、商流とかを守っていく。当然、地元事業者自身も経営努力して変わっていかなければいけないわけですが、地元の金融機関がそういうものの考え方をすることは非常に重要ですね。その視点から出資比率の上限を見直す必要があるのではないか。それから一番最後は、これも観光関係なのですが、地域活性化のために新たに会社を作って広域での観光事業を起こそうといった場合に、広域であることもあり出資者を集めきれないというケースです。地元企業だけでは出資が揃わないため、銀行のシェアを高めて、何とかやろうと思ったけれども、やはり5%ルールの問題があって、なかなか動きがとれなかったという事例です。

それから2.、不動産賃貸。これは先ほどからのお話にもありますが、やはり賃貸を目的として取得していないのが明らかな物件でも、なかなかうまく活用できないという話でございます。

それから3.、これは実は私自身もびっくりしたのですが、ビジネスマッチングということで当たり前のように今行われているわけですが、当然、ここの2番目の「・」に書いてありますように、単なる引き合わせではなく、取引先の商品・サービスを明示して、いわゆる媒介をするわけです。こういうことは、今、日本の地域金融機関はみんなやっているわけですが、実は、ある地域銀行がお客さんから、これはお酒の蔵元ですが、お酒を媒介する際は酒税法で酒類販売媒介業の免許が必要であると言われたケースがあるのです。そういうことで、その銀行は、お酒のビジネスマッチングは手控えようということになった。これはたまたまお酒ですが、お酒以外にもおそらくいろいろな商品の中に、こういう話が内在しているのではないかと思うのです。私自身もこれ以外の事例は知らないのですが、おそらく掘り返してみるといろいろあるでしょうね。ここのところをある程度きちんと整理していく必要があるのではないかと思います。もちろん、関連会社で、お酒の免許をとってやるとか、そういう方法はもちろんあるのですが、小さい金融機関になると、そういう関連会社もないわけです。ですから、今の銀行法であったり、信用金庫法であったり、信用組合法であったり、そういったものの中で、こういうものをどう取り扱うかを決めておくことは今後を考えると非常に重要な検討課題ではないでしょうか。

ということで、時間になりましたので以上です。どうもありがとうございました。

【岩原座長】

どうもありがとうございました。それでは、これより討議に移りたいと思います。これまでのご説明に関しまして、ご質問・ご意見があればお願いいたします。どなたからでも結構でございますので、ご発言をお願いします。家森委員、どうぞ。

【家森委員】

1つだけです。多胡先生から、規制緩和要求として不動産以外のものがいくつか出てきているのですが、銀行のお二人から、こういうものについてどういうふうにお考えなのかを少し教えていただけますでしょうか。

【岩原座長】

それでは川村委員。

【川村委員】

資料を拝見して、いろいろなケースがあるのだなと感じているところはあります。不動産は前からよく言われているところですが、ビジネスマッチングにはいろいろなケースがあって、確かに、媒介になってしまわないようにどうやって注意しようかと内部のいろいろなルールで工夫してみたり、あるいは、BtoBがBtoCになってしまわないようにどういうふうに注意しようかとか、そういう面ではいろいろあります。私どもの銀行では観光関係は多くはありませんが、でも、温泉街の開発云々といったようなところで、関係者が集まって、コンソーシアムで、プランを立てるといったような話もありますので、機会によってはいろいろなケースがあるのかなと思いまして、逆に教えていただいて興味深かったと思います。

【岩原座長】

藤井委員、何か。

【藤井委員】

共通しているかと思うのですが、やはり多胡参考人からご説明いただきましたように、地方では、プレーヤーが少ないのが決定的な要因の1つかなと思っています。それで、不動産にしても活用できる不動産が、そういったものを活用できる事業主体がなかなか現れないので未利用なままに放置されるとか、あるいは、この資料の中にもございましたように、例えば観光業についても、本来は地域の力のあるプレーヤーが再建に当たるとか、スポンサーになるとかということで、地域内で資本が還流すれば、これはここで危惧されているような地域経済へのダメージは最小限にとどめられる。しかしながら、実際の具体的な事例の中におきましても、地域の中で、特に大きな事業体が経営を悪化させた場合には、それを建て直す、あるいはサポートするようなプレーヤーがなかなか地域の中で見つけにくい、あるいは現れにくい。こういったところの中で、やむを得ずというと語弊がありますが、域外からも資本を入れていただく、場合によっては海外からも資本が入ると。ただし、ご懸念のとおり、地域金融機関が長期的な地域経済へのプラスマイナスを重視して判断をしていくのと、やはり一定の期間内でリターンをとってという考え方とはかなり結果においては差が出てくる可能性があるかなと。こんなふうに考えております。以上です。

【岩原座長】

よろしいでしょうか、家森委員。ほかにいかがでしょうか。福田委員、どうぞ。

【福田委員】

ここのワーキング・グループの1つの問題意識として、銀行持株会社は非常に規制が多いけれども、事業会社が銀行を持っている場合の持株会社は、かなり幅広いことが許されているということがあると思います。そのような観点から考えた場合、地方でも、例えば郊外にショッピング・モールがあったりして、そこに流通系の銀行が窓口を作って、地銀にはできないいろいろな業務ができることがないわけではないと思うのです。そこで、地銀が業務を行う現場で、競争の平等という観点で多少不満があるとお考えなのか、それは別に大きな支障がなく、そういうこととは関係なく、地方銀行は業務が遂行できているとお考えなのか、現場感覚を教えていただけるとありがたいと思うのですが。

【岩原座長】

それでは、川村委員。

【川村委員】

いろいろなケースがあると思いますが、例えば、流通系の金融会社が扱う住宅ローンを利用すると、系列のスーパーでは5%引きで買い物ができますとか、金融商品そのものの価値というよりは、参入された業界の特質的なものとの組合せで付加価値がついてくると、そういう部分では非常にかなわないなと。今のは一例ですが、全部が全部、だめということもなくて、一緒に何かやることによって、逆に銀行のお客さまに銀行で持っていない商品をサービスするという局面もあります。ただ一方で、今申し上げたように金融商品としての競争力でかなわないなというケースはあります。

【岩原座長】

藤井委員、何かありますか。

【藤井委員】

私どもは資料の18ページに、先ほどは説明を省きましたが、来店客数と預金の推移というグラフを入れています。預金は増勢ですが、お客さまが店頭を利用される数は顕著に減少していると。これは、前回のときもそういったご報告があったと思いますが、もちろん自行のサービスラインの中でダイレクトチャネルにお客さまがシフトしているということもありますが、一方で新しい形態の銀行、例えばスーパーマーケットとATMを併設するとか、こういったところと、言ってみると地域においてはライバルということになるわけですが、こういったところにお客さまが流出していることも懸念材料としては感じております。

それで、先ほどご説明の中でもお話ししたとおりですが、お客さまはワンストップで、できるだけいろいろなことを充足したいというニーズは非常に強くなってきていると。その結果、例えば、毎日買い物に行くところで銀行取引もできれば、銀行は銀行へ、買い物は買い物へと行くよりも、はるかに強い利便性を感じられているのだろうなと。そういうことから言うと、一般のお客さまが通常のニーズを持っている事業と銀行業務が併設というか、かなり近いところでビジネス展開をされることについては、ある意味ではお客さまにとって、そちらのほうが利便性が高ければ、当然長い目で見ると逆に金融機関側としては結構厳しい影響が出てくるかなと。こんなふうに感じております。以上です。

【岩原座長】

はい、川村委員、どうぞ。

【川村委員】

今ちょうど来店客と預金量という資料がありましたので、それに関係してですが、この10年ぐらいの動きで見ますと、コンビニが自前で銀行をやっていますが、10年ほど前は、銀行は自前で出す店舗は増やさないけれども、コンビニATMと提携することによって、地域のお客さまのアクセスポイントを増やして、サービスを増やすと。そのほうが投資コストが少なくて、お客さまにサービスをたくさん提供できるということで、ほとんどのコンビニと提携して、ほぼ24時間で引き出しができるようなサービスを提供するようになっていました。ただ単にお金の出し入れだけの付き合いになってしまう、単純なサービスの提供のみになります。この数年は、コンサルティング的な情報提供を銀行みずから提供するために自行のATMにより多く誘導してワン・ツー・ワンで商品・サービスをご提案するような機能を増やそうとしています。そういう面では、質問に直接お答えしていないかもしれませんが、協業してやってきたものが、見直しをして離れていく、そういうテーマ、分野もあります。

【岩原座長】

それでは中村委員、どうぞ。

【中村委員】

川村委員の資料の8ページで、地方銀行の持株会社グループのご説明をしていただいたのですが、地方銀行のホールディングカンパニーがメガバンクグループと違って、ファンクションごとへの統合があまり行われていないということでございました。一般に資本の面から、あるいは経営リソース、あるいは一番端っこの例でいいますと、福岡であったことを熊本の例で応用するとか、リスクの分散でありますとか、あるいは将来に向けてのバックオフィスの統合、その他いろいろ考えますと、銀行自体を統合することにある種の経済合理性があるように思うのでございますが、こういう地方銀行の方が地方ごとの銀行を維持されて、ホールディング会社の下にぶら下げられることに何らかの別の角度とか、そういったものがあるのでしょうか。それとも、これは一時的な移行段階の措置として、こういうステップを踏まれるということなのでしょうか。教えていただけると助かります。

【岩原座長】

では、川村委員。

【川村委員】

それぞれ別の銀行なので、本当のところはどうお考えになっているかは存じ上げていないわけですが、これまでにあるケースは、不良債権問題が大きくあった時代に、支援をするとか、あるいは一緒になることによって、それを乗り越えようといったところが多かったと思います。その先にあるものが合併なのか、あるいはこういう形でずっといくのかは両方あるかと思いますが、以前は合併にいくまでの過渡期、例えば資料では池田泉州銀行は、池田銀行と泉州銀行で最初グループを作っていたけれども、その後に一緒になりました。今、私どもが検討している東日本銀行との経営統合は将来合併をしようというプランがあるわけではなくて、それぞれの銀行が、横浜銀行は神奈川のお客さまに親しまれた横浜銀行の看板で、東日本銀行は東京地区で親しまれた看板で営業していくと。その中で、バックオフィスですとか、あるいは営業の仕方、あるいはマーケットへのかかわり方を、お互いが持っているものでいいところを出し合って、プラスのシナジーを出そうと思っておりますので、過渡期として認識しているわけではないということです。他の銀行のことはわかりませんが、いろいろなケースがあるのだろうと思います。

【岩原座長】

藤井委員からは何かありますか。

【藤井委員】

今、川村委員からお話があったように、私どもは効率だけを考えれば、1つの持株会社の下に札幌銀行と北洋銀行の2バンクが子銀行としてあった時代と、それをあえて1バンクに統合して、なおかつ持株会社も子銀行と合併してということで現在に至っていますから、その中で、北洋銀行グループの判断で言えば、やはり、合併に進むことによって得られる効率化の効果と、経営統合との一番大きな違いは、顧客基盤が銀行によって異なることがありまして、例えばですが、北洋銀行と取引しているけれども札幌銀行とは取引したくないとか、逆のケースとかがありますが、これが合併したときに、どの程度影響を受けるかといった点は重視せざるを得ないかなと思っております。私どもの例で言えば、やはり効率化を進める上で一番大きかったシステムの統合の問題が、2行が子銀行でホールディングカンパニーのもとにあった時点で発生しまして、グループとして最適に進めるためにはシステムを統合する選択肢がよかろうと。システムまで統合すると、事務処理ですとか、そういったものが全部一体となりますので、そうすると、では、それで2つのバンクでやっているよりは一歩更に進んで、合併まで行ったほうがはるかに効果が出ると。こんな経緯で、2行が合併して1バンクになったということでありますので、一番考えなければいけないのは、顧客基盤への影響が合併した場合にどうなるかと。たまたま私どもの場合は、同じ北海道という地盤の中で、なおかつ北洋銀行はどちらかというと地域の中堅中小企業、職域、富裕層取引と、札幌銀行は小規模零細企業、そしてその周辺の個人のお客さまと、比較的マーケットの中で同一エリアで、あまり重なりが大きくなかったので、この辺も合併へと進めた要因の1つかと考えております。以上です。

【岩原座長】

ほかに。野﨑委員、どうぞ。

【野﨑委員】

先ほどの福田委員の論点に関連してですが、事業会社を出発点ないしは頂点企業とする場合、銀行を出発点ないしは頂点企業とする場合の業務範囲についての非対称性の話だったのですが、私の問題意識としては、既存の銀行業であっても、この出発点の違いによって格差が出てきている可能性があるのではないかと。なぜ、わざわざそういう話をするのかというと、中小企業金融のお話であります。

問題意識のもとになるのはノンバンク、具体的にはいわゆる商工ローンとかではなくて、リース会社、こと銀行が子会社としていないリース会社を含めてですが、これの貸出約定金利、中小企業向けの約定金利と銀行の貸出金利が違うと。要するに、ノンバンクのリース会社等の貸している金利のほうが高い傾向があるということです。適正なプライシングができているのであれば、当然、そのリスク量が異なるわけで、これが銀行ですと、例えば金融検査マニュアル等、自己査定あるいは引当償却基準というものに基づいて行う貸出とそうではない貸出の差で、こういったことが出てきているのではないかというところが問題意識です。

そういう中で私が伺いたいのが、まず横浜銀行さんの資料で、資料1の17ページになりますか、一番右手のほうに「統合リスク量の状況」ということで、配賦資本の中身をご覧いただきますと、銀行の本来業務である信用リスクをとって収益化することに関して、この配賦資本の状況を見る限りにおいては、やはり市場リスクは非常に大きい。それに対して、信用リスクは非常に萎縮している状況に見えるわけです。PDとかLGDの状況が非常に安定して遷移しているところが1つの背景だとは思うのですが、先ほど申し上げた論点、要は、ノンバンクと銀行業で同じような与信業務をしていながら、金融の円滑化に資する観点からいうと、実はそこに差が出ているのではないかということです。

ちょっと前置きが長くなりましたが、私の質問としては、川村委員、藤井委員について、ちょうど平成25年度、26年度で金融モニタリング基本方針が出されて、その中で、金融庁としても、こういったある程度信用リスクをとっていくことについての背中を押すような形のコメントもございました。それを踏まえて、地域金融を行う上で、これが少し状況変化をもたらしているのかということと、それから、リスクの深掘りが実はできていない分野があるのかないのかという点が1つの質問です。それから、多胡参考人に関しては、何かその点についてご示唆いただけるものがあればお聞かせいただきたいと。以上です。

【岩原座長】

ただいまの野﨑委員からのご質問について、まず川村委員、お願いします。

【川村委員】

ご回答の前に、この資料の中で、市場リスクの配賦額が信用リスクの配賦額の倍ぐらいありますが、今、私どもの内部管理としては特殊な状況にありまして、日銀の金融緩和が出口に来たところで、金利上昇によりそこで起きるボラティリティーの変化までを今から資本配賦しておこうと。素の状態でリスク量をカバーすると、この半分ぐらいということではありますが、現時点では、将来のことまで考えると市場リスクが非常に大きいことにほかなりません。

この信用リスクにつきましては、ご指摘のとおり、リーマンショックから一定の期間も経ちましたので、PD、LGDも落ち着いてきたといったこともございます。それから、企業の格付分布が大分上方に上がっていて、そういったことが相互に加味していますので、現時点で使用している資本は非常に少ないということになります。そうした中で、特に地域金融機関は、事業性評価に基づいて、地域の将来を支えるような企業にきっちりとコンサル機能を果たして成長支援をさせていただくという役割・期待があるのだと。そういうことは従来から念頭にはありましたが、明確に当局指導という形で出てきている中で、ここはそういうものを踏まえてリスク管理も含めた枠組みの中でどうしようかというのは、現状、いろいろと検討したり議論しているところであります。審査のレベルでは、外部の方々のところに勉強に行ったり、あるいはメイン先について特にサンプルを作って、経営者の方々と議論するという形で、従来以上に企業の持っている経営力と、その市場の将来性をよく分析しながら、支援をしていこうということには取り組んでおります。

そういったことに加えて、議論している1つのテーマとしては、先ほど格付と申し上げましたが、大体どこの銀行も同じような格付のモデルを作って分類をしていますので、よさそうな会社は大体どこの銀行でもよく見えていると。少し危なそうな企業はどこの銀行が見ても危なそうだと。こういう形になっています。それで、いいところについて、みんな同じような目線で融資の推進をしますので、したがって金利や利鞘は下がってしまうということだと思います。銀行に開示される資料以外の情報に基づいて、中核となる企業の潜在力、将来性、まさに事業性を理解しながら、現状の格付がこうであっても将来の絵を描きながらやっていく必要があります。そういったお客さま向けに一定の金額の枠で、あるいはファンドをつくって、例えば100億円を資本配賦していこうみたいなことができないかといったことを検討しているところです。まだ枠組みとして動いているわけでなく、去年一昨年のモニタリング方針を踏まえて、そういうものを作り上げていかなければいけないなと検討しているのが今の段階でございます。

【岩原座長】

藤井委員、いかがでしょうか。

【藤井委員】

まずはじめに、私どもの信用リスクに対する配賦資本の状況をお話し申し上げますと、やはり、信用リスクに対して配賦している自己資本に対して、実際は相当余力が残っていると。この面からはもっと信用リスクをとれる状況でありますので、当然、中小企業向け貸出を中心に、貸出量の増加のインセンティブは強めて推進しております。しかしながら、やはり営業現場では相当、そういう意味では貸出ができる先については隈なく幅広にということで営業活動は続けておりますが、現状ではまだ資本を十分使い切るところまで信用リスクがとれていないのが実情であります。

それから、適用金利につきましても、審査判断としましては、一定の信用コストをカバーして利益が出せる原則的な金利の運用基準は当然設けています。それは基本的には変えておりません。しかしながら、実際の約定金利は低下をずっと続けておりまして、その主たる要因は、やはり営業現場の一線では、そういった原則はありつつも、貸出を維持あるいは増加させようというときに金融機関同士の競合が一番大きな要因で、金利が十分な水準からかなり大きく下回って、なおかつ今現在も低下傾向が続いていると、こういう状況であります。そのために、貸出については従来より、特に最近時点では、今、川村委員からご説明があったような、事業性を評価して、例えば担保だとか、保証能力だとか、こういったものがなくても、将来のキャッシュフローが十分期待できる、あるいは地域の経済にとって有効な融資効果が見込めるとか、いろいろな着眼点がありますが、こういったあらゆる観点から評価して、取り組めるものは漏らさず取り組もうと。こういった営業姿勢では進めておりますが、残念ながら、実際の融資ボリュームがそれについてこないのが実情であります。以上でございます。

【岩原座長】

どうもありがとうございました。それでは、多胡参考人から。

【多胡参考人】

私は客観的な立場なのですが、事業性評価型の中小企業取引の取組みは率直に言って二極化していると思います。委員のおっしゃったように、きちんとやっていらっしゃる金融機関と、失礼な言い方だけれども、そうではないところとが二極化していると思います。両委員が今おっしゃられたお話は非常にいい事例なのですが、実際、いろいろな銀行の決算を見ていますと、27年3月のものを見ていると、融資のどこを伸ばしているかというと、保証付と地公体でしか貸出が伸びていない。こういう金融機関はかなりあるわけです。これは本当にリスクをとっていない。こういうことをやっているから、利回りがどんどん落ちて、総資金利鞘は実質マイナス。こういう地域金融機関がかなりあるわけです。総資金利鞘はお化粧すればいくらでもプラスにできますから、その数字だけ見てもしょうがないのですが、細かく見れば実態はよくわかるのです。二極化していると思います。

今日の私のプレゼンのキーワードなのですが、事業性評価型の中小企業取引をやる場合に時間軸が不可欠ですね。事業性評価型はきちんとやれば、間違いなく収益につながってくるわけだと私は思うのです。リレバンのときから12年、同じことを言っているわけだけれども、結局、利回りはどんどん落ちていっている。おそらく個別の良い取組み事例はいっぱいあるわけですね。例えば、金融庁のリレバンの取組み事例などで公表されているのだけれども、これがいかに組織的・継続的に銀行全体の運動になっているかという視点で見ると、はっきり言って、できていないケースが圧倒的に多いのですね。単発のイベント型で、こういうことをやっていますと、ちゃんとやっていますと、多くの地域銀行は言うのですが、組織的・継続的にできているかとなるとクエスチョンマークがつくのですね。こういうお茶を濁すようなことをやっていたら、おそらく将来はないと思うのですが、引き続きそういう状況になっている金融機関がマジョリティなのは残念ですね。こういうところについては、本当に今ネジを巻き直さないと地域顧客も住民も迷惑します。以上、客観的な立場で言わせていただきました。

【岩原座長】

よろしいでしょうか、野﨑委員。それでは他のご質問を。では、加藤委員、どうぞ。

【加藤委員】

川村委員の資料の8ページで地方銀行の持株会社グループとメガバンクの比較をしていただき、11ページで地方銀行の持株会社グループのガバナンスの例を挙げていただいたのですが、前回のメガバンクからの参考人のご説明によれば、持株会社と銀行との関係で、メガバンクでは銀行と持株会社は一体的に運営するのが主流であるとの印象を持ちました。そこで、地方銀行の持株会社と銀行との関係についてですが、これもおそらく多様だとは思うのですが、例えば取締役の兼任とか、幹部従業員の交流であるとか、そういった状況について教えていただければと思います。

【岩原座長】

それでは、川村委員。

【川村委員】

これも他の銀行の例なので、あまりいろいろなことは言えませんが、当該銀行から伺っている範囲でお答えすると、子銀行と持株会社の役員は大体兼任になっていると。それから、その下の部長ぐらいのところ、あるいは担当者も含めてですが、兼務をしているのが非常に多いです。この例にありますふくおか(FG)がそうかということではありませんが、ほとんどミラー状態といいましょうか、そうなっていますので、まず持株会社で全体のことを決めて、その後、各銀行の会議で同じことを決めると。そういったことを兼務者が運営しているケースも多いと聞いております。

【岩原座長】

藤井委員、いかがでしょうか。

【藤井委員】

私どもは先ほど、持株会社のもとに子銀行が入っていたときの体制を若干ご説明申し上げましたが、基本的には銀行のウェートが圧倒的に大きいものですから、コンプライアンスですとか、リスク管理ですとか、こういったところについてはほぼ重なる機能がありました。先ほど申し上げたように、違いは、銀行が子銀行のときには、株式を公開しているのが持株会社になりますので、それに付随する総会ですとか、情報開示ですとか、あるいは連結決算ですとか、こういった機能が持株会社には固有にあって、そのほかに関連会社(子会社)を含めたグループ全体を経営管理する機能がメインでのっていると、こういう状況です。

それで、役員につきましては、当時、持株会社の取締役は、一部社外取締役が入っておりますが、それ以外の取締役は基本的には社内兼任ということです。スタッフにつきましても、私どもは非常にコンパクトな組織でございましたので、専任のスタッフは12名程度で、内部の監査、これはグループの各子会社の監査等をやるために持株会社に固有に置いてあるものと、それから先ほど申し上げました決算関係、連結決算のところ、株式関係のところ、こういったところを持株会社の専任スタッフで、それ以外のところは基本的には銀行と持株会社で、今、ミラーという言葉がありましたが、兼務で両方が同じような機能を果たしていると。こんな状況でございました。以上です。

【岩原座長】

ほかに。松井委員、どうぞ。

【松井委員】

大変興味深いご報告をいただきましてありがとうございました。

川村委員にお伺いをしたいのですが、川村委員の資料の19ページを拝見いたしますと、「子会社の業務範囲の拡大について」というところで、地域活性化関連で幾つか挙げられております。一点、少し気になりましたのは、「地域振興の観点で地域に有益となるビジネス」というものが挙がっている点でございます。この点につきましては、従前までのメガバンク等との議論とはやや方向性の違うものが含まれているかなという感じがしております。地銀協会さんでどういうご意見だったのか、よくはわからないのですが、具体的にこれはどういうビジネスを想定されて出てきた議論になりますでしょうか。気になっておりますのは、銀行が事業リスクをとるようなことを考えて、このような意見を出されているのか、という点でございます。仮にそうなりますと、また銀行規制のあり方にも直接影響が及んでくるものですから、このあたり、どのような議論があったかをお教えいただけたらと存じます。よろしくお願いします。

【岩原座長】

川村委員、お願いいたします。

【川村委員】

地方創生「まち・ひと・しごと」の取組みが半年ぐらい前からスタートして、今、各地方銀行では、地元の自治体といろいろな相談をさせていただくようになってきています。まだ具体的な形で出てきているわけではありませんが、いろいろな自由な議論をしている中で、何かおもしろいものが出てきそうだみたいな声が集まって、こういう書き方になっているのです。具体的にこういうものが3つ4つありましたとは申し上げられないのですが、各地の地方創生の取組みにおいて創意工夫をする中で、銀行がもう一歩踏み込んでいくと、おそらくいろいろなことが出てくるのではないかという期待と想像をしながら、こういう声が複数の銀行から上がってきたということであります。

【岩原座長】

よろしいですか。ほかに何か。小鈴委員、どうぞ。

【小鈴委員】

詳細なご説明をありがとうございました。私からは規制の見直し要望に関して、川村委員に2つほどお教えいただきたい点があります。

まず1つ目にお教えいただきたいのは、資料1の20ページの一番下のボックスで、持株会社傘下の子会社で集約したい業務について3点要望されていますが、2点目の「従属業務子会社の業務範囲の拡大」について具体的にどういった業務をお考えになっているのかという点でございます。

2つ目は、同じく要望の3点目にある、傘下銀行の市場部門を切り出し、持株会社の傘下の子会社で一元化するということについて、具体的に何が問題になるのかという点でございます。例えば、次のページで、子会社との資金貸借におけるアームズレングスルールの問題を指摘されていると思います。また、その他に、グループ内で資金を移動する際には大口信用供与等規制の問題があると思いますが、こちらについては、昨年度の監督指針の改正で、金融グループの再編やビジネスモデルの再構築においてその目的を実現するために必要な場合には適用除外になりうると認識しております。こうした事例以外に、何か妨げとなる規制があるかどうかをお教えいただければと思います。

【岩原座長】

川村委員、お願いします。

【川村委員】

従属業務の拡大につきましては、どの業務ということではございませんで、いわゆる収入依存度の中で総収入の50%以上であることといったところで、いろいろな業務をまぜこぜにしている中で、銀行ではない部分も受託していくと、これはカウントできるできないといったようなことが起こり、子会社であるけれども、従属業務を営む子会社にならないケースとか、中間的な状況があって管理が非常に複雑になっているということであります。

それから、市場部門の一元化につきましては、いろいろな方法があると思いますが、運用専門の子会社を作った場合に、A行、B行、C行が、運用会社に運用を委託することになりますが、1つのやり方は信託免許をとって、金銭信託として運用する方法があります。ただし、同じグループ内なので、そうしたところは委託・委任関係として、運用成果の分配をもう少し機動的に自由にできないかといったことや、分別管理みたいな新しいことができないかと。資金貸借については、アームズレングスルールの適用除外とも関連をしてまいりまして、例えば、子会社を作らないで片方の銀行に運用を任せるといった場合について、資金を預けるのはインターバンク取引になりますので、いわゆる市場の貸借だけであります。その運用成果について、元金を出した銀行にプラスアルファの付け替えができないわけで、このような技術的なことも含んでおります。

【岩原座長】

よろしいですか、小鈴委員。ほかに何かございますか。特にございませんか。

特にないようでございましたら、そろそろ時間も近づいてまいりましたので、本日の審議はこれぐらいにさせていただきたいと思います。本日は活発なご議論をいただきましてまことにありがとうございました。本日いただきましたご意見も踏まえまして、次回以降も引き続き検討していきたいと思います。なお、次回は外国金融機関の状況等について、UBS銀行からご説明をいただくとともに、慶応義塾大学の池尾和人教授を参考人としてお招きし、金融グループにおけるガバナンスや業務範囲のあり方などについてご意見を伺いたいと思います。

最後に事務局から連絡事項がございましたら、お願いいたします。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

私から日程につきましてご連絡申し上げます。

次回ワーキング・グループの日程でございますが、委員の皆様のご都合を勘案いたしまして、6月29日月曜日の14時から約2時間、16時までを目途として開催することを予定しております。どうぞよろしくお願いいたします。

私からは以上でございます。

【岩原座長】

それでは以上をもちまして、本日の会議を終了させていただきます。どうもありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企画課信用制度参事官室(内線3538、3582)

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