金融審議会「金融グループを巡る制度のあり方に関するワーキング・グループ」(第9回)議事録

  • 1.日時:

    平成27年12月16日(水)10時00分~12時00分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館13階 金融庁共用第一特別会議室

【岩原座長】

予定の時刻になりましたので、ただいまより金融グループを巡る制度のあり方に関するワーキング・グループ第9回会合を開催いたします。皆様、お忙しいところお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。

それでは、議事に移らせていただきます。本日は、事務局より本ワーキング・グループの報告書(案)についてご説明いただき、その後、討議を行いたいと思います。それでは、事務局から説明をお願いします。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

それでは、事務局からご説明を申し上げます。皆様のお手元に、報告書(案)と書いた資料が配付されているかと存じます。まず、表紙を1枚おめくりいただきまして、目次がございます。全体の構成といたしまして、最初にはじめにという巻頭言があり、第1章は金融グループにおける経営管理のあり方、第2章として金融グループの共通・重複業務の集約について、第3章で金融グループにおけるIT・決済関連業務の取扱い、最後におわりにということで、全体で15ページほどの報告書の素案となっております。

もう1枚おめくりいただきまして、まず、はじめにのところからご説明を申し上げます。朗読させていただきますと、銀行を中核とする金融グループを取り巻く環境は、大きな変化にさらされている。金融・ITを融合させる、いわゆるFinTechの台頭に代表されるITイノベーションの急速な進展は、決済をはじめとする金融サービス業の今後のあり方に大きな影響を及ぼすものである。欧米金融機関が、こうした環境変化に戦略的に応じる動きを活発化させる中、日本の金融グループがこれと伍して競争していくためには、様々な金融サービス分野において、イノベーションの促進に向けた取組みを強化していくことが重要な課題となっている。

また、金融グループの状況を見ると、メガバンクグループなどでは、銀行以外の業態の子会社や海外子会社のグループ全体に占める収益の割合が増加傾向にあるほか、地域に目を転じれば、持株会社を活用し、県域の枠を超えた銀行間の経営統合の動きが見られるなど、グローバル・ローカルな経済・金融環境の変化に対応し、それぞれ新たな展開を迎えている。更に、グローバルに活動する金融グループを巡る国際的な議論では、持株会社を中心とした金融グループ全体としての健全性を、持株会社の所在する母国当局が責任を持って監督していくべきとの流れもある。

こうした状況等を踏まえ、平成27年3月3日の金融審議会総会において、金融担当大臣より、「金融グループの業務の多様化・国際化の進展等の環境変化を踏まえ、金融グループを巡る制度のあり方等について検討を行うこと」との諮問が行われた。この諮問を受けて、金融審議会は、「金融グループを巡る制度のあり方に関するワーキング・グループ」を設置し、同年5月から数回にわたり、関係者からのヒアリングを行いながら、金融グループにおける経営管理機能の充実とグループ全体での戦略的かつ柔軟な業務運営の促進との視点を踏まえ、審議を行った。

本報告書は、当ワーキング・グループにおける審議結果をとりまとめたものであるということでございます。

続きまして2ページ目、第1章として、金融グループにおける経営管理のあり方でございます。最初に経営管理を巡る状況ということで、持株会社をつくって形成される金融グループは、大別して、まずメガバンクグループに見られる、持株会社を頂点として、その傘下に銀行、証券、信託など多様な業態の子会社(海外子会社を含む)を有するものと、地域銀行グループに見られる、持株会社のもとに複数の銀行と幾つかの子会社を有するものとが存在する。

まず(1)として、メガバンクグループ等でございますが、メガバンクグループなど大規模な金融グループでは、いずれのグループにおいても、グループ全体としての経営管理機能の充実に向けた取組みがなされている。一方で、各グループにおける経営管理形態の具体的な態様を見ると、必ずしも一様ではない。

グループ内のストラクチャー(法人構成)については、まず、持株会社のもとに、銀行・証券・信託など、グループ内の主要会社を併存させ、持株会社がこれら主要会社の直接の株主となることで、グループ全体の経営管理の中心的な存在とする例が見られる。また、持株会社の直接の傘下に主要会社を置くものの、幾つかの主要会社をグループ内の中核銀行等の子会社、すなわち持株会社からすれば孫会社として、経営管理上持株会社傘下の中核銀行等に、ある程度大きな役割を担わせる例もある。更に、グループ内の規模の大きくない子会社について、持株会社の直接の傘下に置くか孫会社とするかは、各グループによって様々である。

各グループにおける持株会社及び傘下子銀行の機関設計を見ると、持株会社に関しては、指名委員会等設置会社、監査役会設置会社とがあるほか、法令に基づかない任意の委員会を設けているケースもある。子銀行については、いずれのグループも監査役会設置会社となっている。グループ運営の実態について見ると、程度の差はあるものの、持株会社と各子会社との間及び子会社相互間で、役職員の兼務などを通じて情報共有と意思決定の調整を行いながら、グループの経営戦略の策定等を行っている例が多く見られる。

続きまして、地域銀行グループについてでございます。地域銀行グループにおいては、メガバンクグループ等の経営管理形態とは異なり、各銀行の営業地域ごとのブランド力や顧客基盤等の維持を背景とし、持株会社の直接の傘下に複数の銀行が存在するケースが多い。

地域銀行グループにおいては、持株会社傘下の各銀行が、ブランド力等を背景に、ある程度の独立性を保つケースが多いと見られるものの、運営上、持株会社が果たす役割の大小、及び傘下銀行その他子会社の果たす役割や機関設計、ストラクチャーは、各グループによって様々である。持株会社及び傘下子銀行の機関設計について見ると、指名委員会等設置会社や監査等委員会設置会社、監査役会設置会社があり、その形態は様々である。また、地域銀行グループのストラクチャーについては、将来の更なる統合・再編等を見据えた過渡的な形態として捉えているグループもあると見られる。

続きまして、経営管理のあるべき姿についての基本的考え方でございます。こうした各金融グループにおける経営管理形態の差異は、国際業務を展開しているか、国内業務のみに注力しているかといった業務内容の差異に由来するほか、各グループが強みを持つ、または注力しようとするビジネス分野の差異、グループが営む各ビジネスの規模・リスク特性、人事・資本政策を含む経営戦略全般などに由来するものと考えられる。また、グループ形成に至る歴史的な経緯等も反映されているものと考えられる。

こうした点を踏まえれば、金融グループにおける経営管理形態のあるべき姿は、単一のモデルのようなものを念頭に置くよりも、むしろ、営業基盤・規模・リスク特性・経営戦略等に応じて区々であることを前提とした上で、いかにして実効性を有する経営管理体制の構築を図っていくかとの視点が重要と考えられる。

各金融グループにおいてどのような経営管理体制が望ましいかについては、各グループの実状を踏まえた上で、グループと監督当局との間で日常的に対話が行われているところである。銀行法令等の規制は、銀行業を営む金融グループが共通に遵守すべきルールを定めるものであり、各金融グループの実状を踏まえた経営管理体制の選択に対して、基本的に中立的であるべきと考えられる。

4ページにいきまして、グループ全体の経営管理の実効性の確保、最初に経営管理に求められる機能でございます。金融グループは、法人格を異にする各エンティティが、いわば一つの集合体を形成し、エンティティの枠を越え、グループ一体として様々な業務を展開するものとしての側面がある。これを踏まえれば、金融グループにおける経営管理の「形態」は区々であることを前提としつつ、グループにおける経営管理の「機能」については、それぞれのグループの経営管理体制が十分に実効的であるため、各グループにおいて、グループ全体の経営方針が明確に策定され、それがグループ各エンティティにおいて浸透・徹底されるとともに、経営方針の実行に伴う各種リスクを的確に把握し、リスク顕在化時にも適切に対応できる体制の構築・運用が求められると考えられる。

この観点から、金融グループを巡る国際的な議論等における指摘も踏まえつつ、グループの経営管理として、例えば、グループの経営方針の策定、グループの収益・リスクテイク方針、並びに資本政策等の策定、経営管理体制の構築・運用、コンプライアンス体制の構築・運用と利益相反管理、再建計画の策定・運用(特にG-SIFIs――国際的に活動する金融グループ――の場合など)を行うことを求めていくことが適当と考えられる。

これに対し、現行法では、持株会社や、持株会社がない場合のグループの頂点の銀行について、これらの者が果たすべき金融グループにおける経営管理機能の内容についての明確な規定が置かれていない。したがって、これらの者に対して、グループの経営管理として求められる機能を、法令上明確にしておくことが適当と考えられる。

続きまして、会社法との関係でございます。金融グループの経営管理のあり方を考えるに当たっては、会社法や銀行法による規制等との関係で、以下のような指摘が存在する。

まず、持株会社は子銀行の株主としての権限を有するが、子銀行の取締役等に対し具体的に指揮命令する権限を有しておらず、株主としての権限行使とは別に、持株会社が子銀行に対して指揮命令を行い得ることを制度的に担保する必要はないか。その上で、当該指揮命令に子銀行の取締役が従った場合には、当該取締役に任務懈怠責任が生じないこととする必要がないか。こうした問題を回避するための方策として、経営委任契約を活用することが考えられるが、契約の有効性に問題はないか。持株会社において実効的な監督機能を発揮する体制が整っており、そのもとでグループの経営管理を行っているケースについて、グループ内の子銀行にまで、例えば監査役会等の設置による別個の監督体制の整備が求められていることが、かえって監督体制を錯綜させる結果を生むこともあり、過剰な要請となっていないか。

これらの点については、金融グループについてのみ、通常の事業会社とは異なる規律を及ぼすだけの特別なニーズ・要請があるか否かといった視点に加え、持株会社とその傘下の子銀行とでは法人格を異にすることや、子銀行の少数株主や債権者が存在すること、一定の部分に特則を設けた場合に会社法の体系全体との整合性を確保できるか等にも十分留意し、引き続き検討を深めていくことが適当と考えられる。

続いて、情報の共有でございます。グループ全体の実効的な経営管理を行う上では、グループ内で、そのための情報を集約・共有することが必要になると考えられる。この点に関しては、既に現行法令においても、「子法人等の経営管理に関する業務」に係る情報の共有は許容されているところであり、これらの業務に係る、グループ全体としての実効的な経営管理をより有効に機能させていく方向での適正な情報の共有については、これを柔軟に認めていくことが考えられよう。

続きまして6ページ目、第2章、金融グループの共通・重複業務の集約でございます。まず基本的な考え方といたしまして、国内外において日本の金融グループを取り巻く環境が目まぐるしく変化する中、日本の金融グループがこうした動きに戦略的に対応していくためには、グループとしての経営管理の実効性を確保するとともに、グループとしてより柔軟かつ効率的な業務運営を行うことが重要である。特に地方においては、持株会社を活用し、県域の枠を越えた経営統合の動きが進展しているが、その中で、統合によるシナジー効果・コスト削減効果を発揮することが大きな課題となっている。

こうした中、地域銀行を中心に、金融グループからは、例えばグループ内の各エンティティに共通・重複する業務を持株会社あるいは、その子会社に集約することで、コスト削減を図りたいとの声がある。グループ内の共通・重複業務を集約することは、グループ全体の業務運営におけるシナジー効果・コスト削減効果の発揮に寄与するものであり、ひいては利用者利便の向上にも資する面がある。経営管理の実効性の確保と規制の趣旨には十分に配意しつつ、各金融グループがこうした取組みを更に進めることができるよう、制度面からも必要な見直しを行っていくことが重要である。

次に、2としまして、関連する規制のあり方、最初が持株会社による共通・重複業務の執行でございます。現行法のもとでは、持株会社が行うことができる業務は、「子会社の経営管理を行うこと並びにこれに附帯する業務」に限定されており、持株会社自身が業務執行を担うことは認められていない。

この点に関し、金融グループからは、グループ全体の資金運用や共通システムの管理など、グループ内の各エンティティにおいて共通・重複する業務について、持株会社が統括的・一元的に実施したほうがコスト削減につながり、また、グループ全体の効率的なリスク管理も行いやすいと考えられることから、持株会社がこうした業務の執行を担うという選択肢も柔軟に認めてほしいとの声がある。他方、持株会社が業務執行を担うことについて、これを無制限に許容することとなれば、本来持株会社に期待されている経営管理機能の発揮が疎かになる可能性が、また、子会社との利益相反が生じる可能性があり得る。

この点については、上記のように、グループ内の共通・重複業務を持株会社が統括的・一元的に実施することが、グループ全体の一体的・効率的な経営管理に資すると考えられる業務であって、例えば持株会社の取締役等に「社外の視点」を取り入れるなどの工夫も行いながら、グループ全体に対する実効的な監督機能の発揮が確保されるのであれば、持株会社が業務執行を担うことを許容していくことが考えられる。

続いて、子会社への業務集約の容易化でございます。グループ内の共通・重複業務をグループ傘下の特定の子会社に集約する場合、子会社に対する業務の委託元である銀行には、委託先に対する管理義務が課されている。このため、グループ傘下の複数の銀行からグループ共通業務を傘下の子会社に集約する場合、委託元である各子銀行は、それぞれ別個に委託先の管理義務を負うこととなり、グループ内の業務集約に際して大きな負担が生じることになる可能性がある。

この点については、委託先の管理義務を持株会社が一元的に担うことで、委託先に対する責任や指揮命令が一元化されれば、グループ全体の経営管理の実効性の確保にも資すると考えられる。このため、委託元である各子銀行それぞれに重複して委託先の管理を求めるのではなく、グループ全体の経営管理を担う持株会社による一元的な管理に委ねることを許容することが適当と考えられる。

続きまして、グループ内の資金融通の容易化でございます。金融グループにおいては、統合によるシナジー効果発揮に向けた様々な取組みが行われている。こうした中、グループ全体での収益強化を図るため、金融グループからは、グループ内で資金余剰の状態にあるエンティティから資金不足のエンティティに対し、社内レートを活用して資金融通を行いたいとの声がある。この点に関し、現行法上、銀行がその特定関係者との間で取引を行う場合、特定関係者を優遇する条件での取引、または特定関係者に不当に不利益を与える条件で取引を行うことは、原則として禁じられている――いわゆる「アームズ・レングス・ルール」があるということでございます。

アームズ・レングス・ルールの趣旨は、銀行が自らと特別の関係がある者の利益を図ることにより、銀行の健全性を損ない、預金者等の利益が害されることを防止することにある。加えて、銀行単体でのリスク管理のみならず、アームズ・レングス・ルールをグループ全体のリスク管理手段の一つとして機能させることで、ディシプリンの効いていない仲間内での不明朗な取引が、銀行グループ全体としての健全性に問題を生じさせるような事態を防止することも目的としている。

一方、金融機関のグループ化が進展する中、今日的には、グループ内の資源を有効に活用し、シナジー効果を発揮することで、グループ全体の収益の最大化を図ることも重要な課題となっている。その際、持株会社の傘下に複数の銀行が存在するようなケースにおいては、現行のアームズ・レングス・ルールに基づく条件での取引が、必ずしもグループ収益の最大化の実現、及び、その成果の適切な配分に適さない場面もある可能性がある。

この点、アームズ・レングス・ルールについては、今後、金融グループにおける業務の柔軟化がますます図られていく中、その趣旨の徹底は一層重要になっていくものと考えられるが、同時に、例えばグループ内の資金融通に係るアームズ・レングス・ルールの適用については、アームズ・レングス・ルールの趣旨が損なわれないよう留意しながら、グループにおけるシナジー効果の発揮といった今日的な課題を踏まえ、柔軟化を図る余地がないか検討することが考えられる。

その際、まず、アームズ・レングス・ルールが、銀行の他業態への進出に伴う弊害を防止する観点から導入されたものであることを踏まえれば、グループ外の他業態との競争条件に不均衡をもたらさないよう、あくまで同一グループ内に複数の銀行が存在する場合の銀行間の取引のみを対象とすることが適当と考えられる。

また、グループ内での資金融通に当たっては、預金保険制度や会社法等との関係にも留意することが必要と考えられる。具体的には、同一グループ内であっても、傘下の銀行は、それぞれに預金者保護の対象とされていること、更に、これら各子銀行には、それぞれに債権者が存在することに留意する必要がある。

このような観点からは、グループ内での収益・リスク管理等が恣意的にならないよう、アームズ・レングス・ルールに代わる明確な取引ルールを定めていることに加え、当該銀行の財務状況が健全であり、それが損なわれるおそれがないことが必要と考えられる。更に、グループ傘下の子銀行には少数株主が存在し得ることとの関係にも留意する必要がある。

このため、各子銀行に少数株主が存在しないことを原則としつつ、仮に少数株主が存在する場合には、各子銀行の経営陣において、当該取引について少数株主に対する説明責任を十分に果たせることが必要と考えられる。

以上のような前提のもと、上記のようなグループ内の資金融通の柔軟化を許容することが考えられる。

続きまして(4)として、グループ一体での銀行サービス提供の容易化でございます。現行法では、邦銀や外国銀行支店が外国銀行の業務の代理・媒介を行う場合には、委託元の外国銀行ごとに認可を受けることが求められている。このため、同一グループに属する複数の外国銀行から委託を受ける場合であっても、委託元の法人ごとに、その都度、認可を受ける必要がある。このため、特にグローバルに経済活動を展開する金融グループから、例えば日本に本拠地を置く企業グループの世界各地の支店・関係会社に対して、当該金融グループの各拠点を活用してグループ一体で機動的にサービス提供することが行いづらくなっており、認可や届出などの事前の規制を全面的に撤廃することも含めて検討してほしいとの指摘がある。

外国銀行の業務の代理・媒介について、認可の枠組みが設けられている趣旨は、外国銀行に対しては直接の監督権限が及ばないことから、国内においてその業務の代理・媒介を行う者に対する監督を通じて、外国銀行によって不適切な金融サービスが国内で提供されることを防ぐことなどにある。こうした観点を考えると、認可制は引き続き必要なものと考えられる。

また、現行法のもとでは、委託元の外国銀行の監督を担う外国当局の規制・監督の態様、外国銀行支店のビジネスモデルや内部管理体制等の態様も、個々の外国銀行ごとに様々であり得ることに留意し、個別の認可を求めているが、監督当局において、委託元たる外国銀行グループ全体のビジネスモデルや内部管理体制等について審査し、これに加え、個々の委託先である外国銀行支店について、日々の監督等を的確に行うことを前提とすれば、必ずしも委託元法人ごとの個別の認可を求める必要まではないものと考えられる。このため、委託元法人単位での個別認可に代え、委託元法人グループ単位での包括的な認可制のもとで、グループ内の外国銀行が新たに委託元となる場合には、届出を求めることとすることが適当と考えられる。

続きまして第3章、金融グループにおけるIT・決済関連業務の取扱いでございます。最初に1としまして、業務範囲に係る法制上の考え方についてまとめております。日本の金融グループが今後も持続的成長を続けていくためには、IT分野におけるイノベーションを戦略的に取り込みながら、柔軟に業務展開を行っていくことが重要と考えられる。これに関し、銀行を中核とする金融グループは、預金を用いた決済機能の提供や、信用創造・金融仲介を営むなど、社会・経済上の重要なインフラ機能を担っている。このため、これら金融グループにおいては、まずもって銀行が担うべき本来的な役割の発揮に注力することが求められており、その行い得る業務については、他業禁止の規制が課された上で、その子会社・兄弟会社の行い得る業務と併せ、関係法令等において個別に定められている。

銀行を中核とする金融グループにおける業務範囲のあり方を考えるに当たっては、まず、上記の他業禁止が課されている趣旨、すなわち、本業専念による効率性の発揮、他業リスクの回避、利益相反の防止、優越的地位の濫用の防止を踏まえ、更に今日的な視点としては、多様な業務を営むことで組織構造の単純性が損なわれ、グループの実効的な経営管理が困難になることがないかといった点を考慮する必要がある。その上で、新たな業務を追加する場合に、グループ内のいずれのエンティティ――すなわち銀行本体か子会社、兄弟会社か――に認めることが適当かについては、従来、当該業務と銀行の本来的業務との機能的な親近性、当該業務のリスクと既に銀行が負っているリスクとの同質性、銀行本体へのリスクの波及の程度等を勘案し決定するものとされてきている。

2としまして、具体的なテーマを幾つか書いております。まず(1)が、金融関連IT企業等への出資の容易化。近年、FinTechと呼ばれるIT技術を活用した独創的な金融サービス事業が急速に拡大しつつある。例えばスマートフォンを用いた新たな決済サービスや、携帯電話番号等を用いた送金サービスなどが、主にIT企業、またはそれとの連携によって、新たな形で利便性高く提供されている。欧米金融機関では、こうした技術の取込みを目的に、決済関連をはじめとするIT企業への出資・買収を通じ、自身の金融サービスを拡充している。

また、欧米金融機関や国内外の事業会社においては、IT技術を活用し、インターネット上で出店者及びその提供商品に関する情報を集約・提供し、それを通じ出店者と購入者が取引を行う場を提供する、いわゆるECモール運営会社への出資等を行う動きが見られるところである。ECモールには、資金の流れと不可分の商流情報が集約されるため、例えばこうした情報を融資審査等に活用するなどにより、新たな金融サービスの提供が可能になるとの見方がある。また、ECモールは、都心部に店舗を構えることのできない地方の中小業者にとって、新たな成長インフラとしての選択肢となり得るとの声もある。こうした中、日本の金融グループにおいても、これらの企業等への出資を通じ、IT技術の革新の成果を銀行業務に取り込みたいとの要請が高まりを見せている。

金融グループとしてFinTechの動きに対応した出資を行う場合、出資対象となる企業の業務には様々なものが想定され得る。例えば当該企業の業務が、銀行自らの業務に従属するものとなることが明確に認められるものであれば、「従属業務」となり、また、それが、金融関連のサービスに結実していくものと認められるものであれば、「金融関連業務」となる余地もある。他方、出資の時点では、出資先企業における技術・サービス開発の将来性は見込めるものの、その成果がどのような分野で活用されていくか、十分な確実性をもって見込めないものもあり得る。こうした観点からは、従来の整理である「従属業務」や「金融関連業務」に必ずしも該当しない領域が想定される。

この点について、FinTechへの対応は、それ自体、将来の可能性への戦略的な対応が必要となるものであり、その取扱いを柔軟に考えていくことが適当と考えられる。また、上記のECモール運営会社への出資の例に見られるとおり、従来、他業と整理されてきている分野の中にも、銀行業との間で強い親近性を有し、銀行業と組み合わせることで利用者利便の高い金融サービスの提供につながることが期待される分野も、今後、増大していくことが予想される。以上のことを考えると、金融グループが行うことができる業務を法令上あらかじめ全て列挙しておくのではなく、それらに加えて、将来的に様々な展開が予想される中で、より柔軟に業務展開ができるような枠組みを設けることが考えられる。

このため、例えば銀行持株会社や銀行は、認可を受けて「銀行が提供するサービスの向上に資する業務またはその可能性のある業務」を行うための子会社等への出資を行うことができることとし、その認可に際しては、上記のような銀行を中核とする金融グループにおける他業禁止の趣旨等を踏まえ、例えば、グループの財務の健全性に問題がないこと、銀行業務のリスクとの親近性があること、その他銀行本体へのリスク波及の程度が高くないと見込まれること、優越的地位の濫用や利益相反による弊害のおそれがないこと、当該出資が、グループが提供する金融サービスの拡大またはその機会の拡大に寄与するものであると見込まれること等を勘案することが考えられる。なお、具体的な出資の割合については、子会社と兄弟会社とでリスク遮断の有効性が異なること等を踏まえると、持株会社による保有と銀行による保有とで、出資割合の上限に差が生じることも考えられよう。

続きまして、グループ内外での決済関連事務等の受託の容易化でございます。現行、銀行の子会社・兄弟会社であって、決済関連のシステム事務などの業務、すなわち従属業務を営む会社については、親銀行グループからの収入が総収入の50%以上であること、加えて、この銀行グループに属する銀行からの収入があることが求められている。この点について、金融グループでは、決済関連事務の合理化等を通じたコスト構造の見直しや、IT投資を戦略的に実施していく必要性が高まりを見せる中、グループ内での、または他のグループからの決済関連事務の受託等を容易にして欲しいとの声がある。

「従属業務」について「収入依存度規制」が設けられている趣旨は、「従属業務」は銀行業から見れば他業であるため、無制限にこれを銀行グループ内で営むことは、健全性確保の観点から適切でないと考えられる一方で、銀行業務の遂行に必要となる業務であることから、銀行業務との一体性を確保することができる範囲に限定し、その取扱いを許容する点にあると考えられる。

この点、「従属業務」には、ITシステムの開発のように、初期コストは高額であるが、その後、規模の経済が働き、追加的費用が逓減していくといったものも存在する。こうしたものについても同様に収入依存度規制を当てはめると、戦略的IT投資が求められる中、コストが過大なものとなり、結果として戦略的なIT投資が損なわれるおそれがあり得るとの指摘がある。

こうした点に照らして、「従属業務」のうち、銀行のシステム管理やATM保守など、業務のITの進展に伴い、銀行グループ内での業務効率化、あるいはIT投資の戦略的な実施に際し、複数の金融グループ間での連携・協働が強く求められる業務については、現在一律に50%以上とされている収入依存度を引き下げるなど、規制を柔軟化することが適当と考えられる。

続きまして、異業種からの参入との関係でございます。我が国においては、2000年代初頭以降、事業会社等のいわゆる異業種による銀行業への参入が本格化し、当該異業種グループが、自らの事業とグループ内の銀行との間で、その店舗ネットワークや顧客基盤などの共通化を通じてシナジー効果を発揮するなど、銀行を活用した新たな形態でのビジネスモデルが構築されている。伝統的な銀行を中核とする金融グループのあり方を考える上では、こうした異業種グループとのイコール・フッティングも視野に入れつつ検討を行っていくことが重要ではないかとの指摘もある。

この点については、異業種からの参入の増加や、異業種グループ内の銀行の業務量の増加等が進む可能性もある中、異業種グループに対する監督権限が現状で十分か。例えば異業種グループの銀行の親会社には主要株主としての規制が課されるのみであるところ、仮に異業種から参入した金融グループの行動に問題がある場合、十分な監督を行うことができるか。一方で、今後のイノベーションの進展を視野に入れれば、異業種からの銀行業への参入を過度に抑制することには慎重であるべきではないかといった観点を踏まえ、今後、更に検討を深めていくことが適当であると考えられる。

最後に、おわりにとしまして、以上が本ワーキング・グループにおける審議の結果である。今後、関係者において、本報告書に示された考え方を踏まえ、適切な制度整備が進められることを期待する。今回の結論は、我が国金融グループの経営管理の充実を図るとともに、グループ内の共通・重複業務の集約や金融関連IT企業等への出資を容易化することにより、金融グループ全体の業務運営におけるシナジー効果・コスト削減効果の発揮やイノベーションの取込み、ひいては、金融グループが提供するサービスの向上や、それを享受する利用者利便の向上につながることを期待してのものである。当局及び金融グループにおいては、こうした趣旨を十分に踏まえ、適切な対応がなされることを望みたい、ということで、報告書(案)の全文でございます。

まず、事務局からのご説明は以上でございます。

【岩原座長】

どうもありがとうございました。それでは、これから討議に移りたいと思います。本ワーキング・グループの報告書(案)につきまして、委員の皆様、どなたからでも結構でございますので、ご意見をいただきたいと思います。いかがでしょうか。

吉崎委員、どうぞ。

【吉崎委員】

FinTechに関してでございますが、この中で、スマートフォンでの決済と記述が出ております。私どもとしましても、スマホの決済とか、あと特にセキュリティーに絡む認証、こういうところについては注力しているところでございます。個人的にも、その分野には非常に注力していかなければいけないと思っていますが、日本全体を見渡すと、やはり西海岸とかイスラエルとか、ああいうところの技術の取込みというのは相当遅れていると思うんですね。

そういう観点で、この記載自体、全く大賛成なんですが、もしルールを変更するのであれば、スピード感といいますか、時間軸を相当早くやっていかないと、今はかなり遅れている状況にあると思っておりますので、スピード感を持ってやられたほうがよろしいかと思っております。

あと、ECモールの例が記載されております。銀行とこういうモールの親和性というのは、アリババの例を見てもアマゾンの例を見ても明確なので、その点は違和感全くございませんが、過去の議論で、いろいろな法律上の縛りなどもあって、業務のエリアを規制といいますか、絞ったほうがいいのではないかというお話もあったように記憶しています。私ども、eコマースをやっている経験から申し上げますと、業務範囲を一部だけに絞ると、シナジーというのはあまり出てこないのではないかという危惧もしています。やはりお客様のデータの分析とか物流とか、全体を眺めた上で金融サービスというのは構築されていると思いますので、その辺、すみません、この報告の中には具体的にどうこうとは書かれておりませんが、あまり規制はしないほうがいいのではないかなと、個人的には経験上思っております。

以上でございます。

【岩原座長】

他にいかがでしょうか。

中村委員、どうぞ。

【中村委員】

ありがとうございます。大変よくまとめられていると思うんですけれども、2点ほど申し上げたいと思います。

まず、会社法との関係ということで、何回目かの審議会で、外資系金融機関のマトリクス・マネジメントについてご説明申し上げ、欧米においては、マトリクス・マネジメントは、会社法で求められるエンティティガバナンスと、金融グループとしての経営管理の両方に整合的であると認識されており、一般的な経営管理手法であるとご紹介させていただきました。一方、日本においては、非常に厳格な会社法の解釈に基づいて、金融グループの経営管理が議論されており、マトリクス・マネジメントの適用は、未だ、ごく一部に限られていることも理解させていただきました。また、審議会の議論の中では、日本では、いろいろな形で役員の兼務等が行われて、経営管理が行われているというご紹介もあったのではございますけれども、欧米の経営管理について、ぜひもう少し、その有効性・実効性についても検討していただいて、更に議論を深めていただくのもよいかと思います。確かに、経営委任契約等を使うような日本独自のやり方も、一つの解決方法だとは思いますが、グローバル・スタンダード的なやり方についても、積極的に検討されながら、グループ全体の経営管理を行っていくのが有効ではないかということで、意見を申し上げたいと思いました。

もう一つは、情報の共有に関して、9月18日のワーキング・グループで、今回については、銀証間の情報共有については、趣旨からいって取り上げないということでご整理をいただきまして、今回の報告書には入れていただくことは非常に難しいかと思いますが、外資系金融機関、それから銀行等の方々からも強い要望があるということで、是非この点に関しては、金融商品取引業者も入れながら、今後、もし検討の機会を与えていただければ幸甚の至りかということで、入らないとは思うんですけれども、もう一度ご要望させていただきたく存じます。

以上でございます。

【岩原座長】

いかがでしょうか。確かに、今後の検討課題とされている幾つかの問題には、非常に重要な問題が多く含まれていまして、今回は具体的な提言には至らないものではありますけれども、そういったものを、今後時間をかけて、今回のワーキング・グループだけで終わらせるのではなくて、検討を更に進めていただきたいと私も思います。

他に何かございますでしょうか。藤井委員、どうぞ。

【藤井委員】

全体を通じて、地域金融機関としての観点からご要望ということになるかと思いますが、今回、大変これまでの議論を整理しておまとめいただきまして、大変わかりやすい報告書になっていると思います。

読み方というか、理解の仕方でございますけれども、第1章につきましては、冒頭で持株会社方式の金融グループということで報告書自体ができ上がっているので、全般としては持株会社に関する記述と読めますけれども、ここの経営管理のあり方につきましては、これまでも、議論の中身、それから報告書の内容を含めて、銀行を親会社とする地域金融機関では、現状、多数の金融グループが採用している経営管理の形態、こちらにも共通する内容だと理解しておりますので、銀行親会社としてその下に幾つかの子会社がぶら下がる形の類型のものも含めて、共通の報告書という理解をさせていただきたいと思っております。

それから2点目は、第3章のところで、IT・決済関連業務の取扱い、こちらにつきましては、報告書の中でも、今申し上げました、私ども地域金融機関の銀行を親会社とする金融グループにも共通の内容と理解をしていますが、1点だけ、ページで申し上げますと13ページ後段になりますけれども、「このため、例えば」というところから始まって、4つほどポツがあって、グループの財務の健全性に問題がないこと、以下4点ほど勘案するポイントが整理されております。

その後に、なお書きで「子会社と兄弟会社でリスク遮断の有効性が異なること等を踏まえる」結果、「出資割合の上限に差が」という記述がありますが、ここは若干違和感を感じておりまして、議論の中でも、子会社と兄弟会社とでリスクの遮断の有効性が異なることということは十分考慮する必要があるという議論があったと思いますが、この辺につきましても、上の4つのポツの2つ目のところで、こういった遮断の有効性の違いも踏まえて、銀行本体へのリスク波及の程度が高くないと見込まれる場合には、こういったことを勘案して個別に許容いただけるような、そういった形になっていただけると大変ありがたいと思っています。

ここのところは、前回、川村委員からもご発言ありましたけれども、新しい事業の取込みに当たって、当然、事業リスクの評価、それからその結果、事業リスクの大きさ、こういったものも重要な要素となるかと思います。これも含めて、適切な経営管理体制のもとで、その事業リスクをコントロールできるのであれば、したがって、結果としてリスク波及の程度が高くないと見込めるのであれば、柔軟に取扱いできる方向で制度的な枠組みをご用意いただければとの要望でございます。

最後に、ちょっと抽象的になりますけれども、ローカルエリアにおきましても、地域金融機関は、地域のユーザーのニーズに対応して、地域のユーザーの利便性向上のために、やはりここで記載されましたFinTechの利活用が、極めて有効かつ必要だと考えております。今後も、こういったFinTechを利活用したサービスの高度化に努めてまいりたいと考えておりますので、この制度化に当たりましては、こうしたローカルの金融機関の意欲も背中から強力に後押ししていただけるような、こういった制度的な枠組みでご検討を進められることを要望させていただきます。

以上でございます。

【岩原座長】

他にいかがでしょうか。

佐藤信用制度参事官。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

今の藤井委員のご発言について、一言だけ事務局からコメントをさせていただければと思います。

13ページの出資割合の上限のところでございますが、このリスク遮断の有効性が子会社と兄弟会社で異なることというのは、一つ事実としてあろうかなと思います。現行の銀行法の中でも、いわゆる5%ルール、銀行が出資するのは5%が上限であって、一方で持株会社として出資する場合には15%が上限と、やはりそこでもリスク遮断効果の有効性ということを踏まえた上での差が出ているところでございます。

あとは具体的に、認可を行うときにどういう視点でやっていくかというのは、ここでも幾つか箇条書きに書いておりますが、おそらく具体的な個別のケースに応じての判断が求められるのだろうと思います。更に、今後、例えばいろいろな業務が登場してくるような場合に、それをどれだけ明確化していって、例えば審査の目線などを明確化するという要請も生じてくる可能性があり、従いまして、やはりリスク遮断の有効性というところには注目する必要があると思っておりまして、その上で、個別のケースに応じて判断が求められていくということであろうかと思っております。

【岩原座長】

よろしいでしょうか。他にいかがでしょうか。ご意見、あるいは……小鈴委員、どうぞ。

【小鈴委員】

報告書(案)をとりまとめていただき、ありがとうございました。私からは、報告書(案)を拝読した上で感じた点につきまして、個別の論点に関するコメントと全体を通じてのコメントを1点ずつ、お話しさせていただきたいと思います。

まず、個別の論点についてのコメントですが、今回、最も目を引きましたのは、13ページのIT決済関連業務における個別認可方式の導入という点であり、これは非常に大きな前進であると認識しています。また、6ページ目以降ですが、共通・重複業務の集約につきましても、実際の金融グループのニーズを踏まえた内容になっているものと評価しております。

一方、14ページ以降の異業種からの参入との関係につきましては、報告書(案)でも継続検討としていただいておりますが、規制としてそもそも非対称になっており、前回の会合でも述べさせていただきましたが、イコール・フッティングの観点を踏まえて、早急に検討に着手する必要があると考えています。

また、冒頭の部分に、欧米の金融機関と伍して競争していくためにはといった記載がありますが、我が国の金融グループの国際競争力を更に高めて欧米金融機関との競争に打ち勝っていくという、もう一段高いレベルも、今後はぜひ視野に入れていくべきだと思っています。そうした観点からしますと、ITや決済以外の分野につきましても、13ページにある個別認可方式のような柔軟な枠組みの整備を検討していくべきではないかと思います。加えて、情報共有の問題につきましても、改めて議論していく必要があると認識しています。

続きまして、全体を通じてのコメントです。今回報告書(案)に示された方向性に従って法制度を見直していくことは、日本の金融業界にとって間違いなく大きな一歩になると思いますが、一方で、報告書(案)に明確な記載があるもの・ないものを含めまして、検討課題はまだまだ残っていると認識しています。従いまして、金融グループを巡る制度のあり方に関する見直しは、これで終わりだということにはならないのかなと。むしろ、環境変化のスピードが一層増していくことが見込まれる中では、今後もいろいろな角度からの不断の見直しが必要であると認識しております。それはコンセンサスだということかもしれませんが、そうしたニュアンスも報告書にぜひ盛り込んでいただきたいと思っている次第であります。

以上でございます。

【岩原座長】

よろしいでしょうか。他にいかがでしょうか。

川村委員、どうぞ。

【川村委員】

ただいまお話のありました、この報告案全般につきまして、非常にありがたい、賛意を表明いたします。私どもの地方銀行からは、6月の第3回のワーキング・グループでいろいろとご要望させていただきましたけれども、まさにここにありますように、IT関連をはじめとした業務範囲の拡大、それから業務の効率化に関しましては、資金運用ですとかシステム運用など共通業務の銀行持株会社への集約ですとか、傘下子会社の業務集約といったグループ経営の効率化、それからここにもありましたけれども、従属業務、子会社の収入依存度規制の緩和ですとか、あとは個別にもご説明させていただきましたけれども、グループ内での資金貸借におけるアームズ・レングス・ルールの見直しなど、そうした要望事項につきましては、ほぼカバーされている内容でありまして、大変ありがたく思っております。

これらの報告案にあります制度の見直しが、なるべく早く具体的に実現をいたしますれば、地方銀行の経営は今後ますます効率化が進展すると思いますし、また、新しい業務への取組みを通じて、地域・地方のお客様へのサービス向上と、顧客利便の迅速かつ飛躍的な向上に邁進してまいりたいと思います。

また、もう1点ですけれども、私どもの金融機関、あるいは金融サービスと広く捉えたほうがいいかもしれませんけれども、このFinTechをはじめとして、非常に環境が目まぐるしく変わってきております。このワーキング・グループが始まって以来、半年の間でも、おそらくこのFinTechという言葉は相当広く世の中に広まっています。今回、残された課題もございますけれども、そうした部分も含めて、世の中の変化に早く対応できるように、こうした検討・議論は、今後もできるだけ多く続けていただければと希望いたします。

先ほど藤井委員からもございましたけれども、13ページの記載の中で、子会社と兄弟会社でリスク遮断の有効性が異なるということから、出資割合の上限に差が出ることもあるというような記載がある点につきましては、実態面としてそういう機能があるということは十分理解をしているところであります。繰り返しにはなりますけれども、地方銀行の8割は持株会社形式ではなく、地域や地方において新しいサービスを浸透させ、お客様の利便性を上げていくという観点、あるいは極端な競争条件の格差にならないというような観点から、実際の認可をされるに当たっての検討については、先ほど来ありましたリスクの同質性ですとか波及度合を十分吟味した上で、兄弟会社、子会社の場合とで保有割合の差が不必要に過度に大きくなることがないようにご配慮いただければありがたいと思っております。

以上でございます。

【岩原座長】

他にいかがでしょうか。

加藤委員、どうぞ。

【加藤委員】

報告書の内容については、全く異論はございません。1点、先ほど中村委員がおっしゃった、今後の課題として、銀証間の顧客の情報共有に関する論点について、私もコメントさせていただきます。

今回の報告書では、金融グループによるIT関連企業への投資を行いやすくすることが提言される予定ですが、次に課題となるのは、そういったIT関連の投資によって得た技術というものを、具体的な金融サービスに結びつけていくということになるかと思います。そういった段階では、今度は金融グループのガバナンスというよりも、要は個々の様々な行為規制の中に、そういった、せっかくIT関連技術に投資したことによって得た技術の使用を妨げるものがあるのではないかという点が、問題となる可能性があるように思います。ですから、これは将来的な検討課題であり、まだまだFinTechの内容自体が明確ではありませんけれども、IT技術の発展と金融サービスの結びつきを前提とした上で、行為規制のあり方についても継続的な検討が必要ではないかとの印象を持ちました。

【岩原座長】

他にありますでしょうか。特にございませんか。よろしいですか。

特にご発言がないようでございますので、皆様、この報告書(案)にご賛同いただけたかと思います。先ほども申し上げましたけれども、この報告書においては、具体的な幾つかの提言とともに、なお引き続き検討を深めていくことが適当と考えられるとされた問題が幾つかございます。これについては、何人かの委員の方からのご指摘もございましたように、この報告書は、あくまで現段階での報告書であって、今後も不断の見直し、制度の向上に努めていく必要があるかと思います。

そういう場合には、特に金融グループのあり方というのは、むしろこういった審議会のほうからこのような制度にしてはどうかという前に、金融界のほうからこのような改革をしたい、その上ではこういう点が規制等で問題があるので、制度を改めてほしいというように、金融界自身が金融グループのあり方を検討して、積極的に制度の改善への提言をしていただきたいと、存じます。今後の不断の見直しの上では、何よりも金融界ご自身のそういう努力を期待したいと思います。

よろしいでしょうか。大崎委員、どうぞ。

【大崎委員】

中身に関することじゃないので、一区切りついてから発言させていただきたいと思っていたんですが、非常につまらないことですが、この手の官庁文学とも言うべきもので、これまで「日本の」という言葉を見ることはあまりなかったような気がしまして、「我が国」という表現が非常に多いように記憶しております。今回は「日本の金融グループ」という表現がいろいろ出てくるのが非常に面白いなと思いまして、私は、そのほうが何かある種客観性が出てきて、いいことなんじゃないかと正直思いました。

そうやって読んでいくと、最後のところに1カ所だけ、9ページに「邦銀」という、わりと昔よく使われた表現が唐突に出てきたり、最後の14ページ、15ページには、なぜか「我が国においては」、「我が国金融グループの」という表現が出てきたりしていまして、この辺は、どっちにまとめるかはともかく、統一していただいたほうがいいかなと思った次第でございます。

非常につまらないことで恐縮でございます。

【岩原座長】

ありがとうございます。ただいまご指摘いただきましたように、最終的な修文については、もし何かございましたら事務局のほうにご連絡をいただきまして、表現ぶりについては私に一任していただいて、必要に応じて修正したものをもって、本ワーキング・グループとしての報告書とさせていただきたいと思っております。よろしゅうございましょうか。

それでは、そのようにとりまとめさせていただきたいと思います。どうもありがとうございます。あわせて、公表等の取り扱いについても一任をしていただきたく存じます。

本ワーキング・グループにつきましては、本年5月以降、9回の会合を重ねてまいりましたが、本日の審議をもちまして、一応の区切りとしたいと存じます。メンバーの皆様方には、大変お忙しいところ、精力的にご議論を賜りまして、誠にありがとうございました。この場をお借りしまして、厚く御礼を申し上げたいと存じます。どうもありがとうございました。

それでは、以上をもちまして、本日の会議を終了させていただきます。どうもありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企画課信用制度参事官室(内線3538、3582)

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