金融制度ワーキング・グループ(第5回)議事録

 
1. 日時:

  平成28年12月21日(水)17時30分~19時30分

2. 場所:

  中央合同庁舎第7号館13階 金融庁共用第一特別会議室
 
 
【岩原座長】 
 それでは、予定の時刻になりましたので、ただいまより「金融制度ワーキング・グループ」第5回会合を開催いたします。皆様、お忙しいところお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。また、本日は遅い時間からの開催でございますので、皆様のお手元に軽食を用意させていただきました。ご自由にお召し上がりください。
 
 それでは、議事に移らせていただきます。本日は、事務局より本ワーキング・グループの報告案について説明をいただき、討議を行いたいと思います。また、その際、報告案には銀行代理業規制の取扱いについての記述も盛り込まれておりますので、その点についての説明もあわせて行っていただくようお願い申し上げます。
 
 それでは、事務局から説明を、よろしくお願いします。
 
【井上信用制度参事官】 
 それでは、私のほうからご説明申し上げます。皆様方のお手元に、資料1といたしまして、金融審議会「金融制度ワーキング・グループ」報告(案)をお配りさせていただいております。これまでの議論を踏まえまして、事務局にて取りまとめの案として作成したものでございます。本日は、時間の制約もございますので、できるだけポイントをかいつまんでご説明申し上げたいと思います。
 
 表紙を1枚おめくりください。最初に目次のページがございます。まず全体の構成についてご説明申し上げます。最初に「はじめに」ということで、本ワーキング・グループにおいて議論が行われるに至った経緯等について記載しております。第1章では、FinTechの進展と対応の方向性について記載しております。第2章では、オープン・イノベーションに向けた環境整備について記載しており、電子決済等代行業者をめぐる状況、オープン・イノベーションの観点からの課題、オープン・イノベーションに向けた環境整備、そして銀行代理業者規制の取扱いについて、具体的な方向性や論点について記述しております。最後に「おわりに」ということで、まとめの言葉としております。
 
 もう2ページほどおめくりいただきたいと思います。下に1ページ目というふうに書いてございます「はじめに」というところでございます。ここでは、本ワーキング・グループにおいて議論が行われるに至った経緯等について記述しております。平成27年の金融審議会「金融グループを巡る制度のあり方に関するワーキング・グループ」及び「決済業務等の高度化に関するワーキング・グループ」において、FinTechの進展等の最近の金融をめぐる環境変化への対応について議論が行われたところでございますけれども、これらのワーキング・グループの報告では、継続的な検討課題として、決済業務に係る横断的法制の整備等が挙げられているほか、今後のFinTechの進展等に対応して、制度面での対応について機動的に検討していく必要もあるとされたことから、金融審議会に新たに金融制度ワーキング・グループが設置され、これまで決済関連法制の整備等について審議を行っていただいたものでございます。最後の段落では、本ワーキング・グループにおいては、今後も決済関連法制その他の金融制度に関する審議を継続していくが、本報告書は、オープン・イノベーションに関連して、とりわけ早期の対応が求められる電子決済等代行業者の取扱い等について、本ワーキング・グループにおける審議結果を取りまとめたものであるということを記述させていただいております。
 
 次に、2ページ目でございます。「第1章 FinTechの進展と対応の方向性について」でございます。
 
 1ポツで、「FinTechの進展等」とありますが、最初の段落では、FinTechの動きが世界的規模で進展し、金融業に大きな変革をもたらしつつあり、これに伴ってFinTechの動きは単なる金融サービスのIT化にとどまらず、金融取引の仕組みを変革し、さらには金融サービスを提供する構造あるいはエコシステム自体を変えていく可能性が高いこと、
 
次の段落では、欧米の主要な金融機関ではFinTechの動きにも戦略的に対応する動きが活発化しており、我が国の金融機関においてもIT技術の取り込みにとどまらず、環境変化に適応したビジネスモデルの構築も含め、機動的な対応を進めていくことが重要な課題となっていること、
 
3つ目の段落で、近時のFinTechによる金融サービスのイノベーションが、主にIT企業をはじめとするノンバンクプレーヤーにより牽引されていることに鑑みれば、金融機関のみならず多様なプレーヤーが参加する中で、利用者保護等を確保しつつ、機動的に金融サービスのイノベーションが図られるようにすることが求められているということ、
 
最後の段落で、こうした金融サービスをめぐる構造的変化の中にあって、特に決済関連サービスの分野において、例えばFinTechの進展に伴い、ノンバンクプレーヤーが、従来金融機関が担ってきた業務を分化させつつサービスを提供する、いわゆるアンバンドリング化が進んでいるなど、構造的な変化が特に決済関連サービス分野において顕著となっているということを記載しております。
 
 3ページに移っていただきます。「2 対応の基本的方向性」ということでございます。ITの進展等に伴い、金融サービスをめぐる環境が変化する中にあって、利用者保護や不正の防止、システムの安定性等を適切に確保しつつ、FinTechによるイノベーションを通じ、利用者利便や企業の生産性向上、ひいては金融・経済の発展が図られるようにしていくことを目指すべきであるということを述べております。
 
 次の段落ですが、そのために、我が国の金融業等をめぐる状況を踏まえることが重要であり、例えば銀行システムによるネットワークが高度に発達していて、また電子マネー等のさまざまなIT関連の決済サービスが登場する中でも、そのファイナリティー付与には銀行預金の決済機能が広く利用されているということに鑑みまして、次の段落でございますけれども、我が国においては、FinTechの進展等の環境変化に対応していくためには、金融機関とFinTech企業とのオープン・イノベーションを進めていくことが重要であると考えられ、FinTechの動きを利用者利便や企業の生産性向上等につなげていく観点から、特に顧客の視点に立脚したイノベーションが重要な課題となるということを記載させていただいております。
 
 次に、3ページ目の真ん中以降は、第2章として、「オープン・イノベーションに向けた環境整備」について記載しております。この点につきましては、これまでのワーキング・グループでも取り上げてきた事項でございますので、内容をかいつまんでご説明申し上げます。
 
 1ポツの「電子決済等代行業者をめぐる状況等」でございますけれども、近年、決済関連分野において、金融機関と顧客との間に立ち、顧客からの委託を受けて、ITを活用した決済指図の伝達や金融機関における口座情報の取得・顧客への提供を業として行う電子決済等代行業者が登場し、拡大しているということでございます。
 
 ページをおめくりいただきまして4ページ目でございますけれども、他方、現行の銀行法におきましては、銀行等と顧客との間で、顧客から委託を受けて決済、預金、融資に関して仲介を行う者についての制度的な枠組みは存在しないということを記述してございます。
 
 4ページ真ん中から5ページにかけては、2ポツとして、「オープン・イノベーションの観点からの課題等」について記載しております。まず(1)の「オープンAPIをめぐる状況等」でございますけれども、最初の段落ですが、ITを活用しつつ金融機関とFinTech企業が、安心・安全を確保しつつ、機動的・戦略的なオープン・イノベーションを進めていくためには、APIを利用した方法がオープン・イノベーションの1つの核となる技術として考えられるということを記述してございます。
 
 次の段落ですが、特に我が国においてFinTechの動きを利用者利便の向上等につなげていくという観点に至った場合、各金融機関においてAPIの導入が広く進むとともに、それが外部企業との連携・協働のもとで、適格性や情報管理能力等の面で問題がある業者以外の業者に広く開放されること、いわゆるオープンAPIが重要であると考えられるとしています。
 
 4ページ目の一番下でございますけれども、他方、我が国におけるオープンAPIをめぐる状況については、幾つか指摘がなされているところでございます。5ページにお移りいただきまして、オープンAPIを実施している金融機関は少数にとどまっており、またオープンAPIを実施している金融機関においても、必ずしもAPIを電子決済等代行業者に対して広く開放するには至っておらず、普及・拡大を進めていく必要があるということ、電子決済等代行業者においても、そもそも多くの業者が、金融機関の連携・協働先として認知されていない、あるいは金融機関において認知されている業者であっても、オープンAPIにより接続できる金融機関は限られている状況であるということ、このため、多くの電子決済等代行業者が、顧客から預かったパスワード等を使って、金融機関との間で契約締結等の明確な法的関係を構築することなく銀行システムにアクセスする、いわゆるスクレイピングによる方法でサービスを提供する状態が解消されていないということが指摘されているところでございます。
 
 5ページの真ん中からは、「オープン・イノベーションの観点からの課題等」として、次のようなものが考えられるのではないかということを記載しております。1つ目でございますけれども、利用者がサービスを利用するに当たり、顧客情報の漏えい、認証情報を悪用した不正送金等、セキュリティー上の問題が生じないか、電子決済等代行業者をめぐる法的な取扱いが不明確であり、利用者保護上十分な対応がとられているか不安を指摘する声があったということ。2つ目として、電子決済等代行業者による決済指図の不正な伝達等による決済リスク、あるいは電子決済等代行業者からのアクセスの増大に伴う銀行システムへの過剰な負担の可能性など、決済・銀行システムの安定性に影響を与えているということ。さらに、スクレイピングによることにより、業者のコストがAPIによる場合に比して増大する場合もあり、結果として社会全体のコストを増大させているといったような課題があることを記載してございます。
 
 6ページに移っていただきたいと思います。6ページから、3ポツの「オープン・イノベーションに向けた環境整備」でございます。まず、1の海外における状況等について記載をしております。主に欧州の制度について記載しておりますけれども、この部分については3回目にご覧いただいたことの要約でございますので、説明を省略させていただきたいと思います。
 
 7ページに移っていただきまして、7ページの真ん中から「(2)オープン・イノベーションに向けた制度的枠組みの整備」といたしまして、海外の例も参考としつつ、これまで述べてきた課題等を踏まえれば、我が国においても、利用者保護を図りながら、オープン・イノベーションを関係者において健全かつ適切に進めていくことができるようにするための制度的な枠組みとして、法制を整備することが考えられるということを記載してございます。具体的には、その下でございますけれども、電子決済等代行業者に登録制を導入して、当該業者が顧客から資金を預かることがないことに留意しつつ―ページをおめくりいただきまして8ページのほうでございますけれども―例えば適正な人的構成や、必要に応じた財務要件、情報の適切な管理、業務管理体制の整備等を求めることとしております。
 
 ここで一旦7ページにお戻りいただきまして、一番下の脚注の28をご覧いただきたいと思います。ここで、電子決済等代行業者に関しまして、前回のご議論を踏まえまして、いわゆる家賃や公共料金等の口座振替を代行する業者など、口座振替契約に基づき定期的に特定の口座のみに振替を行っている業者については、情報セキュリティー上のリスクが相対的に少ないと見込まれること等から、適切な要件を定めた上で登録制の対象としない方向で整理することが検討されるべきであるという記述を加えさせていただいております。
 
 再び8ページのほうにお戻りいただければと思います。上のポツでございますけれども、電子決済等代行業者が、金融機関と接続して顧客に対して電子決済等代行業サービスを提供する場合には金融機関との契約締結を求め、決済指図の伝達は行わず、口座情報の取得・顧客への提供のみを行う者については、金融機関がオープンAPIを導入するために必要な期間を勘案し、一定期間、契約締結を猶予することとし、こうしたオープン・イノベーションの取り組みに参加しようとする金融機関においては、一定期間内にオープンAPIに対応できる体制の整備に努めることを求めることとしております。さらに、金融機関は小規模業者等の接続を合理的理由なく拒否しないよう、契約締結の可否に係る判断の基準を策定・公表し、当該基準を満たす業者とは、原則として契約を締結するということとしております。
 
 8ページ真ん中の注の部分でございますけれども、この点に関しましても、前回までのご議論を踏まえて内容を追加した部分でございます。電子決済等代行業サービスにおきましては、多数の金融機関のシステムにアクセスする場合があり、こうした状況を踏まえますと、電子決済等代行業者と金融機関との契約締結については、過度な事務負担とならないよう適切な対応が図られる必要があると考えられるということを記載しております。この点に関しまして、下の脚注31をご覧いただければと思います。例えば協同組織金融機関につきましては、中央機関の子会社が共同システムを運営していることを踏まえまして、個別金融機関の許諾を前提に、中央機関が代表して契約を締結することを可能とすることが適当と考えられるということを記載しております。また、例えばオープンAPIのあり方に関する検討会、全銀協の検討会におきまして、複数の金融機関とAPI接続するFinTech企業の審査対応負担を軽減する観点から、銀行がAPI接続先の適格性を審査する際に使用するチェックリストの策定などについてご議論を行っていただいており、こうした取り組みが着実に進展していくことも重要であると考えられるということを記載してございます。
 
 本文にお戻りいただきまして、8ページの一番最後のポツのところでございますけれども、金融機関は、オープン・イノベーションの観点を踏まえたオープンAPIの導入に関する方針及び、オープンAPIを導入した場合には、契約を締結した業者との間で顧客に生じた損失の分担を定めて、公表することを記述しております。
 
 ページをおめくりいただきまして9ページでございますけれども、猶予期間経過後であっても、金融機関との契約に基づくものであれば、業者がスクレイピングによるサービスを提供することも可能とするが、金融機関は情報管理体制の整備等が十分である業者に対してのみ、これを認めることができるものとすることを制度的な枠組みとして整備することが考えられるということを記載してございます。
 
 なお、9ページの2つ目のポツでございますけれども、この点につきましても前回までのご議論を踏まえて追加した部分でございます。制度の実施に当たっては、電子決済等代行業者に係る登録制の導入等が、業者の機動的な事業展開等イノベーションをいたずらに阻害することのないよう、登録等の事務における迅速な対応等も含め、運用面においても、本制度の趣旨を踏まえた適切な対応が図られることが重要であると考えられるということを記載してございます。
 
 9ページの真ん中からは、(3)その他の環境整備等といたしまして、オープン・イノベーションを適切に進めていく観点から、関係者における適切な取り組み等が必要と考えられるという点について記載しております。例えば1つ目といたしまして、情報セキュリティーに係る基準として銀行・決済システムの安定性、また利用者保護等の観点から、電子決済等代行業サービスにおける情報セキュリティーの確保が特に重要となるが、金融機関によって区々の基準が設けられるような場合には、かえって業者における情報セキュリティーの確保のための措置が十分に図られないおそれもあることから、リスクベースの適切な情報セキュリティーに係る基準を、業界団体等の関係者がFISCを中心として自主的に形成されていくことが期待されるということを書かせていただいております。この点についても脚注の33、下のほうをご参照いただければと思いますけれども、本年の10月にFISCにおいて、金融機関におけるFinTechに関する有識者検討会が立ち上げられ、FinTech業務全般における情報セキュリティーの安全対策のあり方についての議論が進められ、この議論の結果を踏まえ、今後FISCの安全対策基準が改定される予定とされているものと承知しているところでございます。
 
 本文にお戻りいただきまして、2つ目としまして、オープン・イノベーションの着実な進展のための留意点といたしまして、金融機関と電子決済等代行業者がオープンAPIを活用して接続を行う際の利用料の有無・水準については、オープン・イノベーションを着実に進めていく観点を踏まえまして、金融機関や業者、ベンダーら関係者において、情報の内容等に応じて適切に設定されることが重要であるということを記述してございます。
 
 9ページの下から10ページにかけてでございますが、顧客情報の適切な取扱いとして、金融機関と電子決済等代行業者においては、電子決済等代行サービスの提供に関連して、個人情報保護法等の関連法令も踏まえまして、顧客情報の適切な取扱いが図られる必要があるということを記載してございます。
 
 10ページ目からは、「銀行代理者規制の取扱い」について、ご説明させていただきます。
 まず(1)といたしまして、「銀行代理業制度の概要等」についてでございますけれども、こちらは既存の銀行代理業制度についてのおさらいとなっております。平成18年の銀行法改正におきまして、従来銀行支店と同一視した規制体系とされてきた銀行代理店制度にかわりまして、顧客と銀行との間に立って取引を行う業者を制度上位置づけ、また、代理に加えまして、媒介行為も規制対象としたものでございます。具体的には、銀行代理業者に対しまして許可制、営業所ごとの実務経験者等の配置義務及び専門部署の設置、兼業についての承認制等の規定が設けられているほか、利用者保護の観点から、当該業者への規制に加えまして、所属銀行に対しても銀行代理業者の指導義務、銀行代理業者が顧客に加えた損害の賠償義務等の規制を設けているところでございます。
 
 次に、(2)の「電子決済等代行業者をめぐる銀行代理業制度上の課題等」でございますが、ここでは、顧客から委託を受けて決済関連サービスを提供する電子決済等代行業者が、ITの進展等の環境変化に対応して、適切かつ機動的にサービスを展開できるためには、銀行代理業制度について幾つか課題があるということを記述してございます。
 
 次のページにお移りいただく前に、その下の10ページの脚注34をご覧いただければと思います。ここでは、決済関連分野だけではなくて、融資及び預金の分野でも金融機関と顧客との間に立ち、顧客からの委託を受けて、オープンAPIを通じて電子的な仲介サービスを提供する業態が発展していく可能性も指摘されており、将来的には、そうしたサービスの発展の状況も踏まえて機動的な環境整備が図られていくことが重要であるということを、前回のご議論も踏まえて記載させていただいております。
 
 11ページにお移りいただければと思います。ここでは銀行代理業制度に係る課題として、電子決済等代行業者においては、顧客のために業を行うと同時に、銀行のためにも業を行うということがあり得るために、各電子決済等代行業者の業務が銀行のための行為として銀行代理業規制の対象に該当するかを判断する必要があると記載してございます。
 
 ここで、別刷でお配りしていると思いますけれども、資料2、A4横の資料をご覧いただければと思います。1ページでございますが、こちらでは、本ワーキング・グループの第2回でもお示しした図を再度つけさせていただいております。銀行代理業は、この図の左側のイという、縦の長い部分に該当するものでございます。他方、電子決済等代行業者は右側の決済に関する中間的業者に位置するものの、その業務が時には左側のAと重複することが考えられるということでございます。
 
 本文の11ページにお戻りいただければと思います。2つ目のポツのところでございますけれども、現行では一般に、法制定時のパブリックコメントを踏まえまして、契約の条件の確定または締結に関与する対価として金銭等を受領すれば、銀行代理業規制に該当することと解されていると見られます。他方、法制定時に想定されていなかったようなITを活用した多様なサービスが登場していることにより、従来の基準によると適用関係が必ずしも明確でないという指摘もあるということを記載してございます。
 
 例えばといたしまして、業者のシステムを利用して顧客が口座にアクセスできる状態を作成・維持した対価としてのシステム利用料である場合ですとか、あるいは、業者がそのウェブサイト上に銀行のサービスを広告したことの対価としての広告料である場合ですとか、業者が顧客の承諾を得て、サービスに関して作成された会計情報等を銀行に提供する対価、情報提供料等の場合ですとか、業者に対する利用者からの手数料収入を、利用者利便の観点から銀行がまとめて徴収した場合のレベニューシェアの場合等が存在するようになっております。さらに、それらの対価の算出方法が成約高に連動しない場合もあるという記述をさせていただいています。
 
 さらにその下でございますけれども、FinTechの動きの中でさまざまなサービスが登場、拡大することが想定される中にありまして、これまで述べてきたような事例が登場しているということも踏まえまして、銀行代理業該当性についての明確化が図られるべきであると考えられるということを記載してございます。
 
 次に、11ページの一番下から12ページにかけまして、その他銀行代理業制度上の課題について記載しております。例えば、銀行代理業者の営業所の所在地を一時的に変更した場合の届け出義務等についてでございますけれども、再び、横刷の資料2の2ページの上の図をご覧いただければと思います。営業所を変更した場合の届出に係る規定というのは、恒久的な位置変更の場合は、銀行の場合も銀行代理業者の場合も必要なのでございますけれども、右側のように一時的に位置を変更した場合は、銀行は届出不要となっているのに対して、銀行代理業者は必要となっているという違いがございます。
 
 本文の11ページの下にお戻りいただきまして、こうした届出義務等については、実務上、対応コストに比して十分な必要性が認められないという指摘もございますことから、その見直しについて検討を進めるべきであると考えられるというふうに記載してございます。
 
 また、12ページの一番上の横棒でございますけれども、例えば地方において、過疎化が進み、銀行支店網の維持が困難となる中で、その解決策の1つとして銀行代理業者の活用が考えられ、さらに今後、顧客ニーズの多様化等にも対応して、銀行代理業者を活用した多様なサービス形態の登場も予想されるところでございます。その際ですけれども、再び資料2をご覧いただければと思います。2ページの下の図をご覧いただければと思いますが、実務経験者の配置の義務について書かせていただいております。
 
 この図は、当座預金業務、貸し付け業務の代理・媒介を営む場合の実務経験者等の配置義務を示したものでございます。1段目の規格化された貸付商品を除く貸付業務の代理・媒介を行う場合には、右側のとおり、貸付業務経験3年以上の者を営業店ごとに配置することが必要とされています。2段目のように、規格化された貸付商品に限って事業用貸付を行う場合には、貸付業務経験1年以上の者を営業店ごとに配置することとされています。3段目のように当座預金業務の代理・媒介を行う場合には、当座預金業務または貸付業務経験3年以上の者を営業店ごとに配置することが義務づけられているところでございます。さらに、一番下でございますが、法人や、2つ以上の営業所を営む個人の代理業者の場合には、上記のほか、主たる営業所ごとに、銀行法、会社法等の代理業務の法令等遵守に係る専門的な知識を持つ統括責任者を配置することが義務づけられております。
 
 再度本文の12ページのほうにお戻りいただきまして、上のパラグラフの真ん中からでございますけれども、こうした状況を踏まえまして、例えば十分な知識を有する者の営業店ごとの配置義務ですとか、専門部署の設置義務等の見直しについて検討を進めるべきであると考えられるという点について記載をさせていただいております。
 
 最後に、12ページの真ん中でございますが、「おわりに」という結びの記載をさせていただいております。以上が本ワーキング・グループにおける審議の結果であり、今後関係者において、本報告に示された考え方を踏まえ適正な制度整備が進められ、関連する課題についても適切に取り組みが進められることを期待するということを結びの言葉とさせていただいております。
 
 説明が長くなりましたが、事務局からは以上でございます。
 
【岩原座長】
 どうもありがとうございました。それでは、討議に移りたいと思います。事務局からご説明のあった報告案についてご意見等がございましたら、どなたからでも結構でございますので、ご発言をいただきたいと思います。ご質問でもご意見でも結構ですが、いかがでしょうか。
 
【岩倉委員】 
 ご説明ありがとうございました。ITを活用した新サービスの発展につながる方向感というのは賛同させていただきたいと思っております。前回までの議論と重複する部分もあるかと思うのですが、確認をさせていただきたい点が2点ほどございます。
 
 まず1点目が、7ページ目の注釈の28で、先ほどお話をいただいたかと思うのですが、いわゆる旧来の口座振替の事業者は、今回の電子決済等代行業者の範疇から外す方向でご検討されているというところなのですが、ここで書かれております適切な要件というのが、具体的に何か今イメージされているものがおありでしたら、お教えいただきたいというのが1点目でございます。
 
 2点目が、これも前回ご説明あったかと思いますが、電子決済等代行業者が接続する金融機関は、預金取扱の金融機関と認識しております。ですので、ここの認識がそのとおりかどうか、もう一度確認させていただければと思います。お願いいたします。
 
【岩原座長】 
 それでは、井上さん。
 
【井上信用制度参事官】 
 ご質問ありがとうございます。1点目の脚注28の適切な要件については、ご指摘のとおり、いわゆる伝統的な口座振替代行業者については、ここで書かせていただきましたとおり、定期的に特定の口座のみに振替を行っているということから情報セキュリティー上のリスクが相対的に少ないという評価で、登録制の対象としない方向で整理してはどうかと考えてございます。現在のところ、この定期的に特定の口座のみにというところを1つのメルクマールの軸としては考えたいと思っておりますけれども、その残余の部分については法制化の中で、関係する業者の方とも調整しながら、適切に対処していきたいと思います。
 
 2つ目の金融機関の具体的な範囲ということですけれども、ご指摘のとおり、今回決済に関するというようなところで議論を絞らせていただいたということも踏まえまして、決済システムに関与するという意味で預金取扱金融機関ということを念頭に置いてございます。
 
【岩原座長】 
 関委員、どうぞ。
 
【関委員】 
 ありがとうございます。幾つかコメントがあります。まず、今もご質問ありました口座振替の関係です。7ページの脚注28のところで、今念頭に置かれているものは、毎月特定の口座に振り替えるというようなものだと思うのですけれども、全体としてどういうものが対象になるのか、まだよくわからないところもありますので、そのあたりは今後の議論の中でも明確にしていただきたいと思います。特に、この電子決済等代行業者の定義を広げた上で、その一部を適用除外とするというような考え方ではなくて、この対象となる電子決済等代行業者の定義そのものをある程度きちんと、スリム化するというか、明確に絞った形で定義すべきだろうと思います。
 
 それから、次に6ページの脚注13について、この脚注を読みますと、米国でも危ないから規制も視野に検討されているというような感じなのですが、ここでスクレイピングを用いて云々とあって、トラブル事例が報告されているとありますが、スクレイピングによって具体的なセキュリティーの事故等のトラブルは発生していないと理解しております。もし違っていたらご指摘いただきたいのですけれども、若干ミスリードな表現になっていると思います。
 
 また、これは前回も申し上げたのですけれども、全体的にEUの規制を参考にしておりますが、イノベーション促進という観点からいうと、必ずしもEUが参考になるとは限らないと思っていまして、現時点では米国には具体的な法規制がないということなので、今後しっかりと見守りながら、イノベーション促進という視点で、必要に応じ見直しも検討いただきたいというのが2点目でございます。
 
 続けてよろしいでしょうか。4つほどあるのですが。
 
【岩原座長】 
 はい、どうぞ。
 
【関委員】 
 あと、8ページ、契約締結基準の策定・公表のところなのですが、これも前回申し上げたのですけれども、最終的には民―民の契約になりますので、交渉によって詳細な契約内容や契約締結の可否が決まるべきだと思います。基準の内容というのがどの程度のレベルで細かく書くことになるのかわかりませんけれども、あまり細かいものまで規定を求めるというのは適当ではないと思います。柔軟性が確保されるということが必要かと思いますし、また、マーケティング等のビジネス戦略上の判断というものも許容されるべきだと考えています。
 
 あと1個だけなので、ついでに申し上げてしまいます。11ページ、銀行代理業との関係ですけれども、事例としては幾つかあるのですが、これ以外にも、例えば成約高に応じた形での料金設定だったとしても、実質的には銀行代理業ではなくて、今回の電子決済等代理業者に分類すべきものがあるかもしれない感じがしますので、ぜひ事務局で事業者にしっかりヒアリングをして、確認の上、制度設計していただきたいと思います。また、その際、電子決済等代理業者として登録されるべきビジネスモデルが銀行代理業と判断されるということのないように、両者の区別、適用関係についての整理を慎重に行っていただきたいと思います。以上でございます。
 
【岩原座長】 
 井上さん、何か。
 
【井上信用制度参事官】 
 コメントありがとうございます。1点目の電子決済等代行業者の定義のところについては、先ほど岩倉委員にお答えしたのと同じでございますので、関委員のご意見も踏まえまして、適切に実態を見て、技術的な点については当方の責任で対応させていただきたいと思います。
 
 2点目のアメリカのところについては、確かに一部のご指摘ということかもしれませんし、ここではあくまで報道を引かせていただいているということで、そのファクトのご紹介ということではございます。我々もスクレイピングについて具体的な事故が起こっているということは承知しておりませんけれども、そのようなことも踏まえて、アメリカのほうで動きがあるということについては前回もご説明したとおりでございます。
 
 3点目の契約締結の可否に係る基準の策定・公表のところでございますけれども、これもヨーロッパでは、3回目のときにご紹介いたしましたように、銀行側に契約の事実上の受諾義務が置かれているということに比べまして、契約を締結して、その締結に当たりまして、あらかじめその基準をみずから策定、公表していただくということで、ある程度の柔軟性は確保したものであるというふうに考えております。他方、ここで記述させていただきましたように、小規模事業者の接続を合理的理由なく拒否しないようという観点も一方であるかと思いますので、そのあたりのバランスを考えていただく必要があるかとは考えております。
 
 あと、11ページ目の成約高に応じたものというところの実態については、引き続き事務局のほうでもヒアリングを続けてまいりたいと思いますけれども、基本的に、もともとの銀行代理業規制の法文が契約の締結の代理・媒介というようなことになってございますので、例えば口座の獲得の数に応じた対価の支払いというようなものになっている場合には、この銀行代理業の概念に当たる可能性は高いというふうに考えております。ただ、ここでお示ししていますように、そうでない場合もあるというようなことだと思いますので、それは具体的に今後、該当性について明確化を図る過程の中で引き続き検討してまいりたいと思います。
 
【岩原座長】 
 よろしいですか。ほかにいかがでしょうか。森下委員、どうぞ。
 
【森下委員】 
 ありがとうございます。質問と意見がございます。
 
 まず1点、質問なんですけれども、11ページで、銀行代理業に関する事項ですけれども、一番最初のポツのところで、顧客のために業を行うと同時に、銀行のためにも業を行うことがあり得るというような記載がございますけれども、もし可能であれば、具体的にFinTechビジネス、ここで検討されているような決済ビジネスとの関係で、銀行のためにも業を行うことがあるといった際の、その銀行のために行う業としてイメージされているものを、何か教えていただけますでしょうか。それとの関係で、果たしてそれが銀行代理業として、従来規制の対象とする必要があると考えられていたようなものに該当するのかどうかということが考えられると思いますので、何か具体的にイメージされているものがあれば、教えていただければというのが1点目の質問でございます。
 
 2点目は、11ページの下に、その他銀行代理業制度上の課題というところがございますけれども、ここの以下の部分を拝見しますと、これは必ずしも電子決済に限らないという理解でございますけれども、そのように理解させていただいていいのかという2点、まず質問させていただければと思います。
 
【岩原座長】 
 井上さん。
 
【井上信用制度参事官】 
 1点目でございますが、先ほどちょっと関委員へのお答えの中でも触れさせていただきましたけれども、仮にということでございますが、この電子決済等代行業者がお客さんのために、例えば口座情報の提供のようなサービスを行っていらっしゃるときに、他方、銀行とも委託契約を結ばれて、お客さんの口座獲得の紹介をする、媒介をするというようなビジネスモデルはあり得るかと思っております。その場合に、銀行代理業該当性の問題が生じ得るというようなことは1つ考えられるかと思っております。
 
 2点目でございますけれども、ご指摘のとおり、基本的にこれは、今回電子決済等代行業者との関連でご提示させていただきましたけれども、一般的に法令改正を必要とする事項でもございますので、電子決済等代行業者との関係だけではなくて、一般的な規制緩和とも考えられるというふうに考えております。
 
【森下委員】 
 ありがとうございました。
 
【岩原座長】 
 よろしいですか。
 
【森下委員】 
 はい。2点目のほうは大変よくわかりました。
 
 1点目につきましては、1つの業者さんであったとしても、その中で電子決済代行業をやっている部分は電子決済代行業として規制をするだろうし、例えば専ら銀行のために宣伝をするという部分があれば、それは依然として銀行代理業の規制の対象にもなる部分があるという話なのか、そうではなく、電子決済代行業として規制の対象とする以上、その中で、従来銀行代理業として規制の対象とする必要があったかどうかよくわからないプラスアルファのビジネスを多少していたとしても、新たにプラスアルファで銀行代理業として規制をする必要まではない場合もあり得ると、そういったことも含めて明確化を図る。これは明確化を図るというふうな形でお書きになられているのですけれども、その明確化を図る方向というのが、ここからだけではちょっとよくわからなかったので、今のような質問をさせていただいた次第です。
 
【岩原座長】 
 よろしいでしょうか。ほかに何か。古閑さん、どうぞ。
 
【古閑委員】 
 いずれも意見になりますが、4点ございます。
 
 まず1点目ですけれども、電子決済等代行業者の定義が、やはりかなり広いなという印象を持っておりまして、いろいろなサービスがこの対象になってくるんだろうなというふうに思います。注の28、先ほど来何人かからご指摘ありましたけれども、これはあくまでも1つのメルクマールということで先ほどご回答もありましたが、何が今後適用除外になっていくのかというのは、多分、一旦定義が、広範なのでいろいろなサービスがその対象になってくるということで、相当注目されてくるところになると思いますので、ここは慎重にやっていく必要があるのだろうなというふうに思っています。
 
 ここに「定期的に」とかという言葉も入っておりますけれども、これはあくまでも情報セキュリティ上のリスクが相対的に少ないと見込まれること等からこの言葉を入れているということですが、定期的ではなくても、相対的にリスクが少ないものというのは当然ある。例えば今、ふるさと納税が大分はやっていますけれども、これは当然定期的ではなくて、思いついたときにやるものになりますが、ではそれをどういう業者がやっているのかというと、基本的には自治体と契約関係にあって、相手は自治体ということで特定の口座自体も怪しいところではないですし、そういったものもそんなにリスクが高いとも思えないですし、高くないものはこのほかにもいろいろあると思うので、ここの議論は、先ほど関委員からご指摘があったとおり、定義をどうするのかという形にするのか、適用除外をどうするのかという形になるのか、今後の議論の仕方はわからないですけれども、いずれにしろ慎重にやっていく必要があるのかなというふうに思っています。
 
 それから2点目ですけれども、すでにここに書いていただいているところですが、9ページの2番目の箇条書きのほうに「登録等の事務における迅速な対応等を含め、運用面においても、本制度の趣旨を踏まえた適切な対応が図られることが重要」というふうに書いていただいていて、これはほんとうに重要だなと思っています。この制度の趣旨は、このペーパーに書き込んでいただいていますけれども、その趣旨に沿う形でどういうふうに今後なっていくのか、そこが担保されるのかというのは非常に気になっております。
 
 運用面のところについては、前回の会合含め、私も幾つかご紹介させていただいているとおりですけれども、法令、政省令に記載のない事項についてまで報告、説明が求められるであるとか、あるいは、登録審査時はもちろんそうですし、あるいはその後も当局からの照会や当局への相談というのが発生し得ますけれども、それについて回答にやはり時間がかかってしまうこともありますし、そもそも、いつ回答がもらえるのかということも全くわからない中で待たなければいけないというのは、特にベンチャー企業なんかはキャッシュフローとかも厳しいと思うので、そういう時間的なところは結構重要なポイントになってくると思います。運用面のところはこの後もほんとうに重要になってくると思うので、制度の趣旨がきちんと運用にも反映されるように、ぜひお願いしたいなというふうに思います。
 
 それから3点目ですけれども、これも先ほどほかの委員からご指摘があったところですが、8ページです。金融機関が接続を合理的理由なく拒否しないように「判断の基準を策定・公表し」というところですけれども、これもある程度やっていく必要はあると思うのですが、例えば不正取引を防ぐために設けている基準というのがあったりする場合に、それを完全に公表してしまうということになると、それをかいくぐって不正がなされるということもあり、どういうことを気にして、どういうところと取引をするのかというのは、やはりそれぞれ工夫されている点もありますので、ここの運用、これも運用の話ですけれども、どの程度が適切なのかというのをよくよく考えて運用が進んでいくべきかなというふうに思っております。
 
 それから最後、4点目、代理業制度のところです。これは11ページの下から2番目のポツのところで「銀行代理業該当性について明確化が図られるべきである」と書いていただいているので、今後議論がされていくのかなというふうに期待をしています。今、媒介というものがやはり非常に広く該当してくるのかなというふうに思われていて、これの該当性がやはり不明瞭で、代理業に当たってしまうのでこういった取引はできないのではないかとか、萎縮が生じたり、スピード感を落としたりしてしまっているというのがあると思いますので、ここを明確にしていくというのはぜひ、オープン・イノベーションという意味では重要な課題だと思うので、お願いしたいところです。
 
 せっかく代理業の話が出ているので、ちょっとほかにも、すみません、この場で意見させいただきますと、金融機関にどういう影響を与えてしまうかという、毀損の度合いとかを考えると、代理と媒介は今は区別されることなく一律の規制になっていますけれども、そこがほんとうに一律である必要があるのかという点であるとか、あるいは預金、為替、融資、これも今一律ですけれども、そこもほんとうに一律である必要があるのかというところも1つ議論としてあるかと思っています。ここでもちょっと触れていただいていますけれども、変更届出の項目とかも、これであれば必要かもしれないけど、これであればそこまで必要ないかもしれないというふうに区別し得るというのはあるかなと思っています。それから、成果連動の対価の条件の取引というのも、何の成果に連動させて対価を決めるかというのはいろいろなものがあり得て、これがすなわち全部代理業だという整理もなかなか厳しいなと思うので、その辺も実態を踏まえて一緒に議論をしていただけると大変ありがたいなと思います。以上です。
 
【岩原座長】 
 よろしいですか。ほかに。田村さん、その後、松井さん。
 
【田村委員】 
 我々銀行界としてもオープンAPIは、オープン・イノベーションを実現するための重要な取り組みの1つと考えておりまして、今回お示しいただいた報告書案も、その方向性に沿って取りまとめられたものだと理解しております。実際に現在、各銀行ではさまざまなFinTech事業者さんと、API連携に向けた打ち合わせが行われていますが、こうした制度整備が行われることが、ある意味で民間の動きを後押しするという面もあり、大きな意義を持つというふうに考えております。
 
 オープン・イノベーションは、金融機関が外部のFinTech事業者さんとのパートナーシップのもとで新しい付加価値を連携して生み出していこうという取組みで、銀行としても、そうした有力なパートナーと連携することで差別化を図っていく、優れて戦略的な取組みとして行われるものと考えております。そういった観点で申し上げますと、このオープンAPIの導入に関する方針や契約締結の可否に係る判断の基準についても、イノベーションに向けた戦略が金融機関によって区々であることを前提としつつ、各金融機関において、経営戦略やビジネスモデルを踏まえて主体的に定められる仕組みとしていくことが、オープン・イノベーションの実現あるいは促進といった観点からは非常に重要ではないかと考えております。
 
 こういう観点に立って各行が方針や基準を策定していくなかにおいて、パートナー候補となるFinTech事業者さんが、たとえ小規模の事業者であったとしても、すぐれた技術や付加価値をお持ちであって、今申し上げたような接続基準に合致する場合には、8ページの3ポツのとおり、合理的な理由なく拒否することは考えられないというふうに思いますので、報告書案には異論はございません。したがいまして、これは報告書の中身についてではありませんが、今後制度の運用に当たりましては、今申し上げたような観点を踏まえていただくよう、よろしくお願いをしたいと考えております。私からは以上です。
 
【岩原座長】 
 それでは、松井委員、お願いします。
 
【松井委員】 
 報告書案の取りまとめ、ほんとうにありがとうございました。拝読いたしまして、基本的な方向性に異論はございません。この報告書案の考え方についてだけ、2点確認をさせていただければと存じます。
 
 1点目ですが、前回のワーキングで池田局長からも、さまざまな政策手段を今回工夫して使っているというようなご説明をいただいたかと思います。今回その政策手段の使い方について、どう説明を与えていくかということを改めて考えたのですが、まず前提になっているのが5ページの、3つほどポツがある課題の部分なのですけれども、第1に利用者保護という観点から制度設計をするということ、第2に、決済・銀行システムの安定性への影響が問題になるということ、そして第3に、社会全体のコストの増大の可能性を考慮するということになりますでしょうか。第3の点はやや抽象度が上がることを考えますと、個人的には第1、第2の点が特に重要ではないかと判断しております。これを踏まえまして、7ページの下から8ページにかけて、具体的な制度的あるいは非制度的な提案をしてくださっていると見ています。その提案の中心になるのは、利用者保護と関連する点として、登録制を業者に対してとるということ、それから決済・銀行システムの安定性への影響と関連する点として、金融機関と契約を締結させて、金融機関にある種のゲートキーパー的な役割を担わせようとしていることかと読みました。
 
 このように読んだときに、まず、金融機関にある種のゲートキーパー的な役割を期待してこの制度ができているという理解をしてよいのかどうかを、改めて確認したいと思います。仮にこのような理解が可能だとすると、では金融機関は、なぜ今回そのような役割を担うことになるのか。つまり、それはどのような観点から説明ができるかということになるかと思いますが、それは金融機関の持っているある種の公共性――銀行法にも規定がありますけれども――のようなところから説明がされるのかどうか。この点についても仮にそのとおりだとすると、この公共性とは何ぞやという話になり、1つには決済システムの安定につながる話かとも思うのですけれども、そのような観点から説明がされるのだとすると、利用者保護というのはどこに位置づけられるのかが少し気になりましたので、この点についてお伺いできればと思っております。
 
 それから2点目なのですけれども、ある種のシステム保護であったり利用者保護といったりしたことから考えたときに、行政庁の側で、これこれこういう要件がなければ参入できないといった厳格な規制を設けるということは、もちろんあり得るのだと思います。ただ、そのような直接の参入規制、入口規制をするというのはある種のコストを伴うので、今回のご提案は、そういった直接的な規制のコストをいかに回避するかという観点からつくっておられるのかなというふうに見ました。この規制のコストというのは、例えば今回で言えば、やはりさまざまな業者に入っていただくことそれ自体の優先順位が非常に高いので、そこを何とか確保したいという配慮があるのだろう、と。また、行政庁が直接規制をするというのは、それ自体に規制のコストというか、執行のコストがかかりますので、それも回避しようとしているのかなというふうに感じました。
 
 そこで、このような理解でよいかということになるのですが、行政庁が何らかの規制をかけることのコストの高さと、それから金融機関を通じて、契約締結を前提としてそのための基準を公表させるという形での規制手法をとったほうが明らかにコストが低い、規制運用のコストが低いという理解をされているのでしょうか。以上2点になりますけれども、お伺いできればと思います。
 
【岩原座長】 
 井上さん、お願いします。
 
【井上信用制度参事官】 
 前回松井先生のご質問にお答えさせていただいたときにも申し上げたことですけれども、今回、おっしゃるとおり利用者保護、あるいは銀行決済システムの安定性、さらにはオープン・イノベーションの促進ということも踏まえて、制度の設計に当たらせていただいたところでございます。
 
 その観点で、多分1つ目の質問と2つ目の質問とあわせてお答えすべきなのだと思いますけれども、この電子決済等代行業者と銀行とのオープン・イノベーションを進めるという観点から、契約という手段が1つの選択肢としてあると。そのときに、銀行の担っていただく役割として、もちろん銀行決済システムの安定性という意味から一翼を担っていただくということもあるんですけれども、2つ目のご質問に関連するのですが、電子決済等代行業者に直接規制をかけた場合の規制負担ということを軽減するという意味でも、そのパートナーである銀行に対して一定程度のご負担をお願いするということが合理的な選択肢だと考えられたから、このようなあわせた形で制度設計をさせていただいたということでございます。すなわち、決済システムの安定性と利用者保護、双方において、銀行の補完的役割というのは認識した上で、このような制度設計にさせていただきました。
 
【岩原座長】 
 よろしいですか、松井さん。
 
【松井委員】 
 どうもありがとうございました。そういたしますと、8ページの真ん中あたりのポツにあります、金融機関が小規模事業者の接続を合理的理由なく拒否しないよう、契約締結の可否に係る判断の基準を策定・公表し、基準を満たす業者とは原則として契約を締結するという際の基準の中には、利用者保護のための仕組みがどれくらいその業者でとられているか、あるいは金融システム、銀行システムへの負荷のかかり方の観点から問題がないかといった、そういったことが基準の中に入ってき得るというような理解でよろしいでしょうか。
 
【岩原座長】 
 井上さん。
 
【井上信用制度参事官】 
 ご指摘のとおりかと思います。9ページのところに書かせていただいています情報セキュリティーに係る基準とか、最低限満たしていただくべきところというのは、その中に入り得ると考えております。
 
【岩原座長】 
 それでは、永沢さん、お願いします。
 
【永沢委員】 
 ありがとうございます。このたび報告書を取りまとめいただきまして、ありがとうございました。基本的な方向性については私も賛成でございます。仲介業者といいますか、中間的な事業者のところに登録制というものを導入するという方向性は、利用者保護の点からも非常に重要であると考えます。また、今回の登録制は、従来私が見てきた登録制に比べますと、かなり異質なものであると理解しました。(この分野への参入意欲を削ぐことのないよう)工夫いただいていると思います。
 
 ただし、この中間的業者、どのように呼んだらいいのでしょうか、この形態というのがまだはっきり、どういうものなのかというのがまだよく見えません。銀行協会の検討会のほうには参加させていただいておりまして、中間的事業者の方々と銀行業界の方々が積極的に協働してオープン・イノベーションに向けて進まれているということは、素人ながらにも感じており、高く評価しておりますが、今後、(オープンAPIの)ほかに新しいものが出てくると思います。この登録制のところ、現時点では要件がはっきりは書いていないんですけれども、さまざまな類型がこれから出てくるのだと思います。状況に応じてルールを、過度にならないように、具体化いただくことを希望します。
 
 それから、利用者保護の形というのが実のところ、言葉はたくさん出てきているのですけれども、まだよく見えておりません。例えば何かがあったときの保険につきましても、先行する欧州のほうでさえまだ実際のところ始まっていないというお話もありましたし、日本でも、検討はされているのだと思いますけれども、具体化には至っていないのではないでしょうか。そういう意味では、これからというところもありますので、どのような方針で利用者保護を図られるのかというところは、中間的事業者の方々と、パートナーになられる金融機関との間で定めてこれから公表されることになるのだと思いますけれども、方針を公表すればいいというものでもなく、金融庁も含め、また専門的な第三者の方も含めて、その基準というものを策定いただくと同時に、どのような責任分担のあり方というものが妥当なものなのかというところのチェックは、ぜひお願いしたいと思います。
 
 最後に、やはり利用者保護の観点ではございますが、ベンチャー企業が多いようですからなかなか難しいとは思うのですけれども、自主規制機関というものをつくっていただいて、消費者からの問い合わせや苦情に中立的かつ専門的に答えてくださるような機関が、この技術の普及には必要であろうと思います。銀行協会様には、過度なご負担をお願いすることはできませんが、利用者からの問い合わせなり、トラブル対応にはご協力をいただきたいという要望を、この場を借りて申し上げさせていただきたいと思います。以上でございます。
 
【岩原座長】 
 加毛委員、どうぞ。
 
【加毛委員】 
 ありがとうございます。前回も多少話題になりましたが、電子決済等代行業者と銀行代理業との関係について意見を申し述べたいと思います。短期的なものと長期的なものがございます。
 
 本日の資料にも適切にまとめられているとおり、銀行代理業の該当性の判断には、3つのメルクマールがあるのだろうと思います。①銀行の固有業務の全部または一部について、②銀行のために、③代理または媒介をすること、の3つです。電子決済等代行業者のうち、特に決済指図を伝達するものについて考えてみると、その特徴は、銀行の固有業務のうち為替・決済のみを行うことと、銀行のためではなく顧客のために行為することにあるのだろうと思います。
 
 なお余談なのですが、「顧客の委託を受けて」と「顧客のために」、あるいは「銀行の委託を受けて」と「銀行のために」は、概念的には区別されるべきもののように思われます。報告書をまとめる際には、少し概念整理が必要ではないでしょうか。いずれにせよ、電子決済等代行業者については、対象業務と、誰のために行為するのかという2つの点が特徴なのだろうと思います。
 
 そしてこれら2つの点は、電子決済等代行業者が銀行代理業に該当しないという立論を基礎づけうるように思われます。まず1つ目の対象業務が為替・決済に限られるという点は、預金の受入れと貸付けを行わないので、銀行代理業に課される重い規制は必要ないという考え方を導きうるように思われます。もっともこの点は、前回の参考人のお話や報告書案の脚注34で述べられているとおり、今後、電子決済等代行業者の業務範囲の拡張が見込まれるとすれば、銀行代理業との区別を正当化する根拠としては不十分かもしれません。ただ、ここで為替・決済のみを行う業者についての規制を考えることは、これまで銀行が行ってきた様々な業務について、その内容ごとに規制の根拠や必要性を検討する道を開くのではないかと思われます。
 
 次に、電子決済等代行業者が顧客のために行為することを根拠として銀行代理業との区別をはかることが考えられます。それが今回のご提案の趣旨にそった理解なのかもしれません。ただこの点につきましては、現在の銀行代理業に対する規制の運用のあり方との関係が問題になるものと思います。報告書11ページ脚注35において、銀行法改正時のパブリックコメントに対する金融庁からの回答が紹介されていますが、銀行から名目のいかんにかかわらず経済的対価を受領すると、銀行のために行為するものとされてしまうとすれば、かなり厳格な運用であるような気がいたします。先ほども少し話題になりましたけれども、今回提案されている規制の内容は、電子決済等代行業者に金融機関との契約を要求しています。そうすると、電子決済等代行業者は金融機関と一定の関係を持つことになるので、厳格な運用のもとでは、銀行のために行為していないと言えるのかが疑わしくなります。たとえば報告書案11ページに挙げられたもののうち、レベニューシェアなどは、確かに銀行から電子決済等代行業者に対して金銭の支払いがあるものの、経済的実質としては利用者が業者に対して手数料を払っているものと考えられるので、そのようなものまで銀行のために行為する場合に該当すると判断されたのでは、今回提案されている制度がうまく機能するのか疑問に思います。
 
 この点に関連して、ある業者が銀行代理業に該当する場合には、先ほどご説明いただいたとおり、銀行法52条の59に基づき、金融機関に損害賠償責任が課されます。この制度が創設された際の立案担当者の説明等によれば、金融機関の責任は民法の使用者責任に類似するものであり、金融機関の免責はほとんど認められないとされています。仮にそうであるとすれば、電子決済等代行業者と金融機関との間で契約によって損失分担を決定するという今回の提案内容と前提を異にするように思われます。このような観点から、現在の銀行代理業の規制の運用において、銀行のために行為するということの意味をもう少しクリアにしていただく必要があるだろうと思います。
 
 以上は、この報告書が公表され、法制度が導入された場合に、短期的に必要になると考えるところなのですが、より長期的な視点からは、そもそも顧客のためか銀行のためかという基準がうまく機能するのかという点に疑問もあります。この点は先ほどの古閑委員のご指摘にも関連します。平成17年の銀行法改正によって代理のみならず媒介が銀行代理業に含まれるとされたのですが、媒介は両当事者のために尽力することが通常であるので、ある媒介行為がどちらの当事者のために行われたのかを判断するのが難しい場合もあるのではないかと思います。先ほど森下委員が「専ら」銀行のためにとおっしゃったのですが、その「専ら」という判断が難しいこともあるように思われます。
 
 そうであるとすれば、将来的には、銀行のために行為したか否かとは異なる判断基準を導入する必要があるのではないかと考えられます。その際考慮すべきは、問題となるサービスが銀行の固有業務のうちの何に該当するのかということと、当該業務について具体的にいかなる内容のサービスを提供しているのかということであるように思われます。固有業務の一部の媒介としてひとくくりに規制対象とするのではなく、業者が提供するサービスの内容に応じた規制のあり方を検討していく必要があるのではないかと思います。長くなってしまいましたが、今回の報告書案を拝見して考えたところを、意見として申し述べさせていただきました。
 
【岩原座長】 
 井上さん、何か。
 
【井上信用制度参事官】 
 ご指摘の銀行代理業の概念については、法制定時の整理はございますけれども、それから10年が経って、今ご覧いただいているように、実態に合わなくなっている点もあるかと思いますので、その中で実務上の必要性等も踏まえて、見直すべき点について将来的な課題として整理していくということはあり得るのだとは思います。ただ現時点で、もちろん、契約締結の代理・媒介という根本概念をさわらないという前提でお話しさせていただけるのであれば、今申し上げたような銀行代理業の該当性について明確化を図るというのが、スピード感という意味でも現実的な1つの解決策ではないかと考えてございます。ご指摘の点は将来的な課題として受けとめさせていただければと思います。
 
【岩原座長】 
 舩津さん。
 
【舩津委員】 
 ありがとうございます。私も報告書の案自体に、方向性自体に特に異議を唱えるものではございませんが、松井委員のお話をお伺いしておりまして、少しわからない点が出てまいりましたので、その点をお伺いさせていただければと思います。
 
 登録と契約の締結の二本柱という形になるかと思うのですが、この両者の関係はどのように考えたらいいのかということでございます。登録の要件として金融機関との契約の締結が必要なのだと考えるのか、それとも、登録した業者については、業者の行為規制として契約の締結が求められると考えるのかという点でございまして、もしかすると、つくり方によっては、この制度の政策の方向性が違ってくるのではないか、という気がいたしました。
 
 すなわち、例えば契約締結が登録の要件だという形であるとすると、例えば契約の中身を何か見るようなことをするのかといったあたりが出てくる、登録の際に何が出てくるのかということです。それから、この契約の中身に入るのか入らないのかはよくわからないのですが、金融機関の契約締結可否の判断基準という中に、情報の適切な管理とか業務体制の整備といった登録の要件の話というものもおそらく含まれてくるということになりますと、登録の要件としてのそういった情報管理等の体制を整えている限りにおいては、事実上その契約の締結の拒否ができないのだという形の制度になるのか、そうではなくて、ここに挙げている登録の要件というものはあくまで最低限度の話であって、そこから先、契約を締結するということについての基準というのはそれぞれの金融機関で制度設計するというようなことになるのかといったあたりが、契約の締結と登録との前後関係とやや関係してくるのかなという気がしておりましたので、お伺いさせていただければと思います。
 
【岩原座長】 
 井上さん。
 
【井上信用制度参事官】 
 8ページ目の上のほうのポツのところをご覧いただければと思いますけれども、「電子決済等代行業者が、金融機関と接続して顧客に対して電子決済等代行業サービスを提供する場合には、金融機関との契約締結を求める」とさせていただいています。登録はその前提条件になると考えておりまして、先に登録をしていただいた上で、金融機関との連携という形で契約を締結していただくと。逆に申し上げれば、契約の締結を業者の方に義務としてやっていただくために、登録という制度的な枠組みを用意しているということでもあるかと思います。従いまして、ある意味、登録要件として、8ページ目の一番上に書かせていただいたような最低限の要件を定めた上で、それについては当局としてスクリーニングをかける。それで登録された業者ということを前提に、金融機関のほうでも契約の締結の可否に係る判断の基準というのを考えていただいて策定していただくという建て付けかと理解しております。
 
【岩原座長】 
 森下さん。その後、翁さん。
 
【森下委員】 
 ありがとうございます。何点か意見がございます。まず今の8ページのところですけれども、1つ目の点のところで金融機関との契約締結を求めると書かれていますけれども、これが法令上の要件として何らかの契約を求めるという以上、契約といっても、どんな契約で、最低限これぐらいは、あるいはこういった要素が必要というものが全く何も示されないまま契約の締結を求めるということでは、おそらく求められたほうも困ると思いますので、例えばこういったものというような、あるいは最低限満たさなければならない要素というものを、どのレベルで規定するか、法令なのか政令なのかガイドラインなのかわかりませんけれども、何らかの形で一定の指針というものが示されていくことが必要なのではないのかなという感想を持っております。
 
 同じページの一番下のところで「契約を締結した業者との間で顧客に生じた損失の分担を定め」ということですが、脚注32には、なかなか一律にその損失の分担割合を決定することは難しいともお書きになられていますので、例えばこういう場合には業者さんが何割、こういう場合には銀行が何割ということを定めて公表せよということまでは求めておらず、むしろ何らかの損失が生じた場合の対応の仕方などについての指針、損失分配に関する方針を示すということなのかなと理解しましたけど、「損失の分担を定め」というと、読みようによっては少しきついような印象があります。
 
 あと、9ページのところですけれども、スクレイピングによるサービスについて、金融機関は情報管理体制の整備等が十分である業者に対してのみ、これを認めることができるというような記載ですけれども、これは、読みようによっては、スクレイピングサービスを提供する業者の情報管理体制の確保について、金融機関がかなり積極的な、重い責任を負うというようにも読めるのかなと思いますけれども、どこら辺のことを狙ってこういうことをお書きになられているのでしょうか。金融機関としても一定の、もともと契約で定められたモニタリングですとかチェックというのは当然行っていくということだと思いますし、その中には情報管理体制が十分整備されているというのは、おそらく標準的にチェックされているものだと思いますけれども、それを超えてさらに何らかのチェックを求められるということになると結構大変なのかなというような気がいたしまして、これはご質問させていただく次第であります。
 
 最後ですが、先ほど来の銀行代理業という点ですけれども、古閑委員ですとか加毛委員からもご指摘がありましたが、やはり当初つくられたときに、このようなITの利用を前提として銀行と顧客の間に入る人というのは、必ずしも十分に想定されていなかったような気がいたします。そういたしますと、IT化時代の銀行代理業のあり方というのを考えてもいいと思いますので、ぜひこの機会に、そういった方向での明確化を進めていただければと考えております。
 
それとの関係で、先ほど加毛委員からもお話がありましたけれども、電子決済代行業者は銀行と何らかの契約を結びますので、しかも銀行と顧客との間に立って、顧客に対していろいろな情報発信などをしていく立場に立ちますので、例えば銀行から依頼を受けて何かをするとか、お客さんに対して情報提供していくというような局面は当然出てくると思うのですけれども、そのような場合に、一々銀行代理業に当たるとして規制をする、あるいは銀行代理業に当たるかどうかの検討をしなければいけなくなるというのは、少し過剰なような気もいたします。おそらくそういったような部分というのは、従来からも、わざわざ銀行代理業として規制する必要までもないと思われていたような行為をしているのかもしれませんけれども、そのような部分も含めて、改めて電子決済等代行業者というものをわざわざ設けますので、それとの関係で、具体的に銀行代理業の規制が、どの範囲であればかかり、かからないのかというようなことを明確化していただくと、非常にいいのかなというような気がいたします。すみません、長くなりました。以上でございます。
 
【岩原座長】 
 井上さん。
 
【井上信用制度参事官】 
 3点目におっしゃられたご質問のところを回答させていただきます。9ページ目の一番上のポツのところだと思いますけれども、猶予期間経過後のスクレイピングのあり方ですが、これは現状でも、金融機関が外部委託ないし銀行代理業という形で第三者にお客さんの個人情報を渡すということはあり得るというふうに考えておりまして、そういうことも念頭に置いて、APIが整備されるということであれば通常はそちらのほうに移行していくということが考えられるわけですけれども、それにもかかわらずスクレイピングを許容するということであれば、パートナーの情報管理というのは、外部委託等の例にならってある程度しっかり見ていただく必要があるかということは、念頭に置いてございます。あとは、ご指摘の点については、今後検討の参考にさせていただければと思います。
 
【岩原座長】 
 よろしいですか。それでは、翁さん。
 
【翁委員】 
 銀行代理業のところについて少しコメントしたいのですが、ほとんど今、森下先生がおっしゃったことと私は近い意見を持っておりまして、やはり今回、こういったオープン・イノベーションを進めやすくするために、顧客からの委託に基づいてFinTechサービスを展開する事業者に対してこういった登録制を用意して、そして銀行にとっても、FinTech事業者にとってもオープン・イノベーションを推進するというような形にしていったわけでございます。そういうふうに考えますと、やはりこの銀行代理業の概念を非常に広く、例えば媒介という言葉とか、そういった形式的な基準のところを広く考えてしまうと、銀行代理業になる懸念が大きくなるということですと、非常に私はここについて、当初意図していた電子決済等代行業者としてFinTech事業者の活動の領域を広げられるようにしていく、または参入を増やしていくというところについて、ちょっと懸念が出てくるのではないかというように感じております。
 
 もともと銀行代理業というのは、先ほどからもご指摘ありましたけれども、郵政民営化とかそういったときに、いろいろな地域での銀行サービスを提供できるようにということで趣旨としてはつくられたものでありますし、その後のITの発展を見ますと、やはりこの銀行代理業というのは、形式的な面でもいろいろなところで、ここでもご指摘ございますけれども、該当しなくなってきている点というのがたくさんあるのではないかと感じております。そういう意味で、今回こういった電子決済代行業者に係る銀行代理業該当性というのは、限定的に考えて、明確にしていくということが非常に重要ではないかと思っております。
 
 やはりこういったFinTech業者は、どんどんビジネスモデルというのが多様化していきますので、業態という概念でいろいろやっていく規制のやり方というのが非常に難しくなってきているのではないかと思います。先ほど森下先生からアクティビティーというお話がありましたけれども、どういう行為をやっていることに対して、どういう規制とかを考えていくかというか、発想を少し変えながら、新しい規制体系を、FinTech時代には考えていく必要があるのではないかと思っております。
 
【岩原座長】 
 ほかにございますでしょうか。はい、松井さん。
 
【松井委員】 
 繰り返しで申しわけございません。先ほど加毛委員から非常に刺激的なご意見があったので、少し私も意見を申し上げたいと思います。
 
 加毛委員からは、この「何々のため」という概念が、そもそも委託とはイコールではないというお話がございましたが、私もそれはおっしゃるとおりだと思っておりまして、おそらく「ため」という概念のほうが広い。少なくとも私法上こういう概念が使われるときは、そうなのだろうと思います。また、この「ため」という概念が、非常に曖昧さを持っていて、将来的にこれによらない適用範囲の確定をするというのは、非常に刺激的で、おもしろい議論だと私もおもっております。ただ、ここでちょっと水をかけるような話で恐縮なのですけれども、代理や媒介を業とする者が誰かの「ため」に行為をするというときに、これは商法上使われてきた概念でありまして、代理商の規定でありますとか、あるいは商人の報酬の規定でありますとか、その場合に、この「ため」という概念が適用範囲の確定をしています。この概念については最高裁の判例が幾つもあって、基本は委託関係を非常に重視しているのだろうと思います。また、委託関係がない者に対して、この「ため」に該当するかどうかは極めて限定的に解してきたということがあり、そういう意味では非常に安定した適用範囲を画する概念ではないかと思っております。もちろん商法のこの解釈と、銀行代理業の解釈とで一致させる必然性はないですし、法律ごとの相対性というのはあってしかるべきだと思いますが、ただ、従前から、同様の文言の解釈があり、運用の実態があることを考えると、私は、案外これは意味のある概念だと思っております。かつ、今、翁委員からもありましたとおり、無用に銀行代理業の適用範囲が広がらないようにするという観点からは、十分機能し得るのではないかとも思います。つまり、委託を受けない者に対して単に反射的な利益が及ぶだけでは不十分であって、委託を受けていない者に対して最善の利益が図られている場合でなければ適用しないというのが最高裁の考え方ですから、そういった考え方をもとにすると、それなりに有意義な概念ではというふうに思っている次第でございます。
 
【岩原座長】 
 よろしいですか、松井さん。この議論を始めると大変ことになりますので。
 
【松井委員】 
 すみません。
 
【岩原座長】 
 いえいえ。ほかに何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。大体皆様のご意見いただいたと承知してよろしいでしょうか。
 
 それでは、皆様のご発言から判断いたしまして、事務局からお示しいただいた案についてはおおむねご賛同いただいたのではないかと承知しております。いろいろなご意見ございましたので、最終的な修正や表現ぶりについては私に一任していただき、必要に応じて修正したものをもって本ワーキング・グループとしての報告書とさせていただきたいと思いますが、よろしゅうございましょうか。
 
(「異議なし」の声あり)
 
【岩原座長】 
 ありがとうございます。あわせて、公表等の取扱いについても一任していただきたく存じます。
 
 本ワーキング・グループにつきましては、本年7月以来、これまで5回の会合を重ねてまいりました。メンバーの皆様方には、大変お忙しいところ精力的に、ご熱心なご議論を賜りまして、まことにありがとうございます。この場をおかりしまして厚く御礼を申し上げたいと思います。
 
 事務局より連絡事項がありましたら、お願いします。
 
【井上信用制度参事官】 
 事務局からも、委員の皆様方のこれまでのご貢献に大変感謝させていただきます。以上でございます。
 
【岩原座長】 
 それでは、少し早いようでございますが、以上をもちまして、本日の金融制度ワーキング・グループを終了させていただきます。どうも長時間ありがとうございました。
―― 了 ――

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