金融審議会第二部会(第20回)会合議事録

日時: 平成12年10月3日(火)15時00分~17時08分

場所: 中央合同庁舎第四号館(4階)共用第一特別会議室

○ 有吉企画課長

それでは、まだ遅れてお見えになられる方もおられるようでございますが、ちょうど定刻になりましたので、ただいまから、金融審議会の第二部会を開催させていただきたいと存じます。

この第二部会、金融庁移管後としては初めてでございますが、通算ということでカウントいたしますと第20回ということになります。資料の肩では20という数字で使わせていただいております。

本日は、皆様、大変御多忙のところ御参集いただきまして、ありがとうございます。また、第二部会委員への御就任をお引き受けいただきましたこと、重ねて御礼申し上げます。

本日は、新しい体制になりましての初めての会合でありますので、部会長、部会長代理をお決めいただくことになりますが、それまでの間、私、企画課長の有吉、事務局でございますが、当面の議事の進行役を務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。

お手元に資料が幾つがございますが、二つ目に第二部会の委員の名簿をお手元にお配りいたしております。ほとんどの方は従前より引き続き委員をお受けいただいているところでございますが、このたび、第一部会より、島根県立大学総合政策学部教授であられまして、連合総合生活開発研究所理事でいらっしゃいます、井上委員にこちらの第二部会の方にお移りいただくことになりました。よろしくお願いいたします。

当の方々、改めてお一人お一人御紹介いたしませんが、本日御欠席されておりますのは、翁委員、斎藤委員、田島委員、深尾委員、堀内委員、松下委員、森本委員、八木委員でおられます。山下委員は、少し遅れて見えられるというふうに伺っております。

また、審議会の総会の委員の方は、部会にも御自由に御参加いただけるようになっておりまして、これも従来どおりでございますが、お含みおき願います。

本日は、貝塚金融審議会会長が出席、また、高橋委員もお出になられるというふうに伺っております。

また、関係機関として日本銀行より、鮫島企画室参事役に御参加いただくことになっておりまして、本日、所用で少し遅られるという話を伺っております。

続きまして、当審議会の事務局のメンバーを御紹介申し上げたいと思います。

皆様の方から向かいまして会長席の左側の方からでございますが、乾総務企画部長でございます。

○ 乾総務企画部長

乾でございます。よろしくお願い申し上げます。

○ 有吉企画課長

渡辺総務企画部審議官でございます。

○ 渡辺審議官

よろしくお願いします。

○ 有吉企画課長

三國谷東京証券取引所監理官でございます。

○ 三國谷東証監理官

よろしくお願い申し上げます。

○ 有吉企画課長

大久保総務企画部参事官でございます。

○ 大久保総務企画部参事官

よろしくお願いいたします。

○ 有吉企画課長

大藤参事官おられますが、まだでございます。

次が、大蔵省の方から、窪野大臣官房参事官でございます。

○ 窪野大蔵省参事官

よろしくお願いします。

○ 有吉企画課長

乙部信用機構課機構業務室長です。

○ 乙部大蔵省信用機構課機構業務室長

よろしくお願いします。

○ 有吉企画課長

次に、皆様方から向かいまして私の右側でございますが、棚橋企画課調査室長でございます。

○ 棚橋企画課調査室長

よろしくお願いします。

○ 有吉企画課長

それから、席一つ置きまして、池田信用課保険企画室長でございます。

○ 池田信用課保険企画室長

よろしくお願いします。

○ 有吉企画課長

また、本日、個人情報保護基本法制の検討状況について御説明いただくため、内閣官房内閣内政審議室の個人情報保護担当室の小川登美夫副室長をお招きしております。後ほどお部屋に入っていただくことになります。

また、本日の後半の議題といたしまして、当部会において去る6月14日にとりまとめました報告「保険会社のリスク管理について(保険会社会計を巡る論点整理)」でございますが、これに関し、実務的な検討状況について御説明をいただきます。この議題に関しましては、後ほど御紹介いたしますが、実務に関する専門家の方々をお招きいたしております。

次に、当部会の部会長の選任をお願いしなければならないわけですが、部会長は、金融審議会令第5条の規定によりまして、委員の互選によることとされておりますが、従前に引き続き、倉澤委員に部会長をお願いしてはどうかという皆様のお声のようでございますが、いかがでございましょうか。

〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○ 有吉企画課長

それでは、御異存ございませんようですので、倉澤委員の御承諾を待って部会長就任をお願いしたいと思いますが、倉澤委員、いかがでございましょうか。

○ 倉澤委員

謹んでお受けいたします。どうぞよろしくお願いいたします。

○ 有吉企画課長

ありがとうございます。

では、倉澤部会長、部会長席の方にお移りいただければと思います。

〔倉澤部会長、部会長席に着席〕

○ 倉澤部会長

ただいま部会長に御指名をいただきました倉澤でございます。改めてもう一度どうかよろしくお願いいたします。

まず、部会長代理を指名させていただきたいと存じます。

金融審議会令第5条によりますと、部会長代理は部会長から指名させていただくこととなっておりますので、江頭委員を引き続き部会長代理に指名させていただきたいと存じます。

江頭委員、どうぞお引き受けください。ありがとうございます。

ここで当部会の運営要領及び当部会における議事録の扱い等につきまして定めたいと思いますが、事務局の方からそれぞれ御説明をいただきたいと思います。

それでは、企画課長からお願いいたします。

○ 有吉企画課長

まず、部会の概要についてでございますが、既に御案内のとおり、8月4日の金融審議会総会におきまして、部会が二つ設置されております。第一部会では、異業種参入に伴う銀行法等の整備、他業禁止の緩和等についてでございまして、当第二部会におきましては、個人信用情報保護・利用に関する制度整備などについて御議論いただくということになっております。

次に、運営要領でございますが、お手元に1枚の紙でございますが、「金融審議会第二部会運営要領(案)」というのをお配りいたしております。ここに書いてあることは、基本的に従来どおりの運営になってございます。部会の委員以外の審議会の委員が出席でき、意見を述べること。あるいは部会としてオブザーバーを置くことができる、また、ワーキング・グループ等が設置できるといったこと。それ以外については、必要な事項は部会長がこれを定めるということになっております。

また、議事録の取扱いでございますが、これは審議会の総会の方と同じ考え方に立ちまして、部会長の御判断の下に節目節目で、適宜公表することとさせていただきます。節目節目と申しますのは、例えば、一定の報告がまとまった時点といったものを考えております。また、議事録の公表は発言者名を明記して行います一方、公表に先立ちまして、発言者のチェックをいただくことにいたしたいと存じます。また、議事要旨につきましては、会議後、大体1週間後程度を目処に、インターネットを通じて公表するということとさせていただきたいと思います。

○ 倉澤部会長

ただいま御説明のありました運営要領及び議事録の扱い等につきまして、御質問、御意見等ございましょうか。

それでは、この運営要領等を当部会として採択させていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。

〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○ 倉澤部会長

ありがとうございます。

ただいまの部会運営要領にありましたが、本部会では実務の観点等も踏まえた幅広い議論をいただくこととするため、次回よりオブザーバーといった形で実務家等の方々にも御参加をいただき、特段の制約なく自由に御発言をいただくこととしてはどうかと考えております。

そのオブザーバーの人選につきましては私に御一任いただければと思いますが、よろしゅうございましょうか。

〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○ 倉澤部会長

どうもありがとうございます。

なお、ただいまの部会運営要領でも御確認いただきましたが、部会においては実務的な検討の必要に応じてワーキング・グループを設置できることとされており、本部会につきましては、引き続き産業構造審議会及び割賦販売審議会と合同で、「個人信用情報保護・利用の在り方に関する作業部会」が設置されております。

それでは、議事次第によりまして、本日の議論に移らせていただきたいと思います。

〔内政室ゲストスピーカー入場〕

○ 倉澤部会長

初めに、内閣官房内閣内政審議室・個人情報保護担当室の小川副室長から、「個人情報保護基本法制に関する大綱案」について御説明をいただきたいと思います。本大綱案については、本年6月14日に開催された本部会において、同月に公表された「中間整理」の内容を御説明いただきましたが、つい先週末、個人情報保護法制化専門委員会における実質的な審議が終了したと伺っております。

それでは、小川副室長、よろしくお願いいたします。

○ 小川ゲストスピーカー

ただいま御紹介賜りました内政審議室の内閣審議官の小川でございます。よろしくお願い申し上げます。

今ほど御紹介ございましたように、私ども内政審議室の方では、個人情報保護に関します基本法制のあり方についてということで、この2月から専門委員会を設けまして、ずっと検討を進めてまいったところでございます。今ほどお話がございましたように実は来週、10月11日でございますけれども、最終回の委員会を開きまして、「個人情報保護基本法制に関する大綱」という形で最終結論を得る予定であります。

お手元に資料を配付させていただいております。「第二部会20-1-1」と「20-1-2」というのが関係の資料でございますが、これは先週金曜日の委員会で配付をさせていただいた資料でございます。ほぼ実質的な議論が終了に近づいておりまして、若干の字句とか、多少議論のあるところ、多少の修正はございますけれども、骨格はほぼ変わらないというふうに御理解をいただいてよろしいかと存じます。

中身の説明の前に、今後の予定を申し上げておきますと、11日に最終の委員会の後、すぐさま政府に御提出いただき、これを受けまして、来週中にも政府としての対応方針を、これはIT本部の下の委員会でございますので、IT本部で決定をいたしたいと考えております。また、来年の次期通常国会に法案を内閣官房より提出をさせていただきたいというふうに考えております。

なお、次期通常国会への法案提出につきましては、今年この専門委員会を設けましたときより、故小渕総理も、それを目標とするということを申し上げてきたところでございます。

それでは、お手元の資料の「個人情報保護基本法制に関する大綱案」というものを御覧いただきたいと存じます。

まず、目次が載っております。全体構成としては、「目的」が1で、2に「基本原則」というのがございます。後ほど御説明しますけれども、個人情報保護に関しますいろんな意味での基本となる考え方、行動規範と申しましょうか、行動の原理、そういったものを定めるものが基本原則でございます。それから、3のところが、IT社会での一定の事業者を対象とする、「取扱事業者」と仮称で呼んでおりますけれども、その義務等をここで定めております。さらに4では「政府の措置及び施策」、5が「地方公共団体の措置」、そして6が「その他」、こういう構造になっております。

それでは、早速でございます。1枚おめくりいただきたいと思います。前書き「はじめに」というのがございます。

ここは、当専門委員会のこれまでの経緯とか、あるいは全体の中身を簡単に触れているところでございます。この作業というのは、実は専門委員会の前に、昨年、検討部会というのが、当時は「高度情報通信社会推進本部」と言っておりましたけれども、その下に設けられまして、各界各層から委員にご参集いただき、いろんな議論して、昨年の11月に中間報告というのをお出しいただきました。その中で、「基本法」を作りましょうという大きな枠組みをお示しいただいたわけでございます。それに基づいて今年の2月から、専門委員会でその基本法制の中身の検討を始めた、こういう経緯がございます。

この「はじめに」の文章でその辺のことを書いてあるんですけれども、この文章からちょっと離れますが、昨年の検討部会及び今年ずっとやってまいりました専門委員会を通じての大綱に至る基本的な考え方を若干整理して、申し上げたいと思います。私なりの整理でございますから正確かどうかは別といたしまして、四つの考え方を基本に置いて作業を進めてきたつもりでございます。

そのまず第1は、個人情報保護のシステムなり法制のあり方というのは、やはり国際的な議論との整合性が必要であろうというのが第1番でございます。

この「はじめに」の最初のあたりを見ていただきますと、5行目あたりでございますが、電子商取引の推進の環境整備の一環と、こういうことがございます。確かに電子商取引を推進しなければならない。その環境の一環としてプライバシーの保護が重要だということでアクションプラン等も策定された。これも事実でございます。

それから、昨年、検討部会がスタートしたときの経緯は、確かにそのアクションプランに基づいて設置をしたことは、ここに書いてあるとおりなんですが、これは皆様御案内のとおり、実は昨年の通常国会で、住民基本台帳法の一部改正法案が提出され、その議論の中で、行政が持っている情報がひとたび民間に流出した場合に保護法制が何も無いではないかという大変強い議論が起こったわけでございます。それを背景として、与党3党の方で、個人情報保護に関してシステム整備を図るべきだと、3年以内の法制化を図るべきだとの合意がなされたという、事実上こういった経緯もございます。

そういったいろんな経緯があって、昨年来から急速にと正直に申し上げてよろしいかと存じますけれども、急速にこういう議論が高まり、来週、何とか大綱という形でとりまとめができるところまで到達してきたというふうに思っているわけでございます。そこで、申し上げたいのは、実は個人情報保護の問題というのは、翻りますと、皆様、釈迦に説法になって大変恐縮でございますけれども、原点は1980年のOECDの理事会勧告でございます。1980年(昭和55年)に、OECDが理事会勧告でその附属文書の中に「OECD8原則」と呼ばれますけれども、これを示したことに端を発するというふうに思っております。

少々中身がここの文章から離れますが、1980年(昭和55年)にOECDの理事会勧告が出たときに、日本国政府としては、当時、行政管理庁を中心に、加藤一郎先生が委員長だったと確か承知しておりますけれども、研究会を作って、官民合わせた法律の必要性を研究会で研究した経緯がございます。さはさりながら、大変個人情報というのは幅広い分野にわたること。あらゆる業種に及ぶこと。それから、一方で利用方法とか形態とかがそういうものによって多種多様であるということ。なかなか難しいということで、当面はやはり行政機関に限ってその個人情報保護をまずは進めようと、こういう方針で第2次研究会、これは林修三先生だったと思いますけど、その研究会が始まりまして、その研究成果を得て、昭和63年(1988年)に国の行政機関の個人情報保護法、これは電子計算機処理に係るものに限っておりますけれども、それが成立した。その際にも実は、民間について、政府は法的措置を講ずるよう検討すべしという附帯決議も付いてございます。

したがって、この問題は20年来の課題であった。諸外国を見ましても、20年来の昔から法律があって、いろいろ試行錯誤を繰り返して、それなりの法制を整備されているというのが実情でございます。したがって、国際的な議論との整合性という観点から見ますと、個人情報保護の問題というのは最近降ってわいた問題ではなくて、20年来の課題であって、少し遅れた感はあるけれども、この際、良い制度を作りたい。いろんな経緯はありますが、住民基本台帳の話とか、そういうこともいろいろあるんですけれども、この際、国際水準にも十分遜色のない良い制度を作りたい。そういう基本認識で実は昨年来の作業を進めてきたということを御理解賜れば大変ありがたいということでございます。

すなわち、第1点の基本的考え方は、国際的な議論との整合性というのを常に念頭に作業を進めてきたし、今後ともその必要があるということでございます。

それから、第2点目の考え方でございますが、これはもう皆様方も御案内と存じますけれども、個人情報の保護が大変重要であるといっても、現実にその利用を通じた国民生活の向上だとか、利便性の向上だとかというのは大変な効果があるわけでございます。そういう有益性があるからこそ、利用される。利用されるからこそ、ルールなり保護の考え方が必要だ。こういう論理の循環になるんだろうと考えているわけでございまして、やはり保護と利用のバランスをとることが極めて重要であると考えております。これは昨年来、検討部会、専門委員会を通じた基本的な認識でございます。

もちろん、個人の権利を大変強く御主張される立場からは、これは人権そのものである。憲法13条に基づく基本的な人権であると、こういう御主張も大変強いところでもございます。

また、その現れ方として、自己情報コントロール権説というのがございまして、自分の情報はどこまでいっても自分がコントロールできるはずであると、それは憲法13条から導き出されるはずである、こういう御議論も多々なされているところでございます。

しかしながら、先ほど申しましたように個人情報は既に広く利用され、流通しているわけでございますし、国民生活の豊かさとか便利さのためにはその利用等は不可欠であり、また、今後ともなお必要である。

したがいまして、基本認識として、保護と利用のバランスが重要である。すなわち、どちらにも偏らない調和のとれたシステムが必要であるとの基本認識で作業を進めてきたということでございます。

なお、付言いたしますと、1980年の先ほど申しましたOECDの8原則そのものが、個人情報の国際流通と保護の調和を図るために作られた原則でございまして、各国が個別の法制でがちがちに保護を図ると、個人情報の流通が行われなくなるという危機感が一つ。それと、適正な個人情報の保護も図らなければならない。こういう調和という考え方が20年前に既に出ているわけでございまして、原点に返って、それぞれ委員会の先生方にも同じ認識を持っていただいて、今日まで作業を進めてきたということでございます。2番目は、保護と利用のバランス論であるということでございます。

第三点目は、柔軟な制度、システムが必要ではないかと考えたことでございます。これは先ほど申しましたように、個人情報と申しますのが、それぞれ情報の性質も、また、情報の利用の方法も、それから、その程度だとか、まさに分野によって多種多様でございます。そういう多様性への配慮というのは不可欠であります。

さらに、個人情報の利用については、その技術の進歩というのは大変目覚ましいところでございます。コンピュータだとか、通信ネットワークだとか、そういうもので利用の分野が著しく急速に拡大をする、あるいは高度化をする、そういう傾向がございます。そして、この傾向は将来に向けても、さらに加速することはあっても、遅くなることはない、そういう認識でございまして、そういう将来に向けての変化への対応というのも重要な論点だろう。こういう多様性の配慮、それから変化への対応、こういったことを念頭に置きますと、そのルールも、できるだけ柔軟なシステムの方がふさわしいのではないか。変化にも対応できるし、多様性にも配慮できる。こういったことを基本に考えてきた次第でございます。

その一つの解と申しますか、工夫が、これは昨年の中間報告の結論でございますけれども、基本的な保護システムは、中核となる基本法を作り、それにさらに分野別の利用の特性に応じた規制なり、自主規制等を進める個別法を組み合わせようと。さらには、民間事業者の自主規制の努力というのも正面から全面的に期待をする。そういった、例え話で言いますと、3階建のシステムみたいなのがいいんじゃないか。基本法、個別法、自主規制の組合せという、これが昨年の検討部会の中間報告の結論でございますけれども、実はこれはヨーロッパ型でもない、アメリカ型でもない、日本型の選択というふうに言ってもよろしいかと存じますけれども、そういう新しいシステムを目指したわけでございます。

ちなみに、これはもう皆様方御存知のとおり、ヨーロッパでは一つの法律で官民を通じて、しかもデータ保護庁でございますとか、コミッショナーとか、クニールとか、そういう独立の官庁を設けて、一見大変厳しい保護のための規制法が存在いたします。中には届出制とか、登録制とか、そういうのをとっているわけでございます。しかし、実態を調査いたしましたところ、必ずしも全部の個人情報を取り扱っている事業者が届出・登録をしてない。登録済みの方、届出済みの方の数を数えても全部に至ってない。だから、必ずしも十分機能してないのではないかという判断もありました。

それから、ヨーロッパの法律というのは、法文を読みますと、先ほどちらっと触れました自己情報コントロール権説そのものなんですね。大変厳しくなっております。情報を集めるときには、必ず本人の同意をとりなさいというのが原則になっております。ただ、これも実態をいろいろ聞きますと、例えば、同意が推定される場合だとか、みなされる場合だとか、その方法は大変厳しゅうございますが、法文と違った運用がなされているというのも見えてまいりました。したがって、必ずしもヨーロッパの法制度そのものを目指す必要もないのではないか。

一方で、では、アメリカ型というのは、これも御案内のとおりセクトラ方式ということで個別の法律しかございません。なおかつ、セーフハーバー原則というのは、これはもう御案内のとおりでございますけれども、自分で自己宣言をして、それを守っていればよろしい。それに反したときのみ、FTCがチェックを働かす。こういう基本構造のようでございますけれども、EUとの間で、それでもって十分な保護レベルかどうかという議論があったことは御案内のとおりでございます。

それから、見落としてならないのが、これは個人的な考え方でございますけれども、そういう法制度がかなり自由に任されているその結果なのか、代わりなのかわかりませんが、一方で大変多額の賠償金を伴う民事訴訟が頻発しているという実態もあろうかと存じます。果たして安定的制度で言えるかどうかというのは個人的な感想でございまして、それ以上立ち入りませんが、いずれにしても、先ほど申しましたように柔軟な制度、日本型の制度を作りたいということで基本法と個別法と自主規制の組合せという方式を選択し、その方向で専門委員会の結論も大体なってきたということでございます。

今ほど申しました三つは、実は昨年の検討部会の中間報告でも出ておるところでございます。そして、第四点目が、IT社会への対応ということでございます。

専門委員会でいろいろ御議論いただきますと、例えば、義務規定を書こうとすると、どの範囲だとか、いろいろなことを考えます。そうすると、やはりこれから必要となるIT社会でかなり大量の個人情報を取り扱っている方を念頭に、そういう義務規定等を考えていけばいいんじゃないか。そのことがIT社会の基本的なルール作りということになるでしょうし、言葉を換えますと、IT社会のソフトインフラを作っていくんだと、こういった色合いが端々ににじみ出ているということでございます。

最後のIT社会の対応の面、これは中身の話でございますけれども、前に申しました1、2、3の点は「はじめ」にも若干書いてあるところでございます。1ページの後ろから2ページの初めぐらいが大体バランス論の話でございますし、2ページ目の第2パラグラフあたりは、柔軟な制度ということを念頭に置いて検討した結果であるということでございます。

それから、御覧いただきたいんですけれども、2ページの下から8行目あたりでございます。「また、個人情報の性質や利用方法等によっては、」という文章がございます。「本大綱より厳しい保護が必要な場合等特別な規律が必要なものについては、個別の制度施策を整備すべきことを求めている。」とありますように、個別法の存在を前提とした基本法制であるという考え方を示しているところでございます。

3ページをお開きいただきたいと存じます。中身に入りたいと思います。

まず、「目的」でございますけれども、これは中間整理のときとそれほど変わってないんですが、繰り返しになろうかと存じますけれども、その四角の囲みの下2行を御覧いただきたいと存じます。「個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的とする」となっております。先ほど申しましたように有用性に配慮というのは、これはバランス論を正面から掲げたものでございます。さはさりながら、「個人の権利利益を保護することを目的」と書いている以上、主目的は権利利益の保護である。ここはなかなか外せないということでございます。これが特徴の第1点。

第2点目は、主体に関して何ら限定が置いてないということでございます。裏返して言いますと、官民を通じた原則なり法規範である。すなわち、官民を通じた基本法を念頭にこういうふうに書いたということでございます。

4ページをお開きいただきたいと思います。次に、「基本原則」でございます。

実は諸外国の立法にはこういう基本原則を置くという立法例はあまりないわけでございますけれども、いろいろ専門委員会で御議論がございました。限られた事業者に義務等を課していく、その部分だけというわけにもいかないし、基本法と言った以上は、全体の考え方をお示しする、そういうシステムの中核となるべき部分というのもやはり絶対必要だろうと。様々な議論の末、中間整理と若干書き方が変わっているわけでございますけれども、ここにございますように、そもそも論をしたためております。すなわち、「個人情報は、個人の人格尊重の理念の下に慎重に取り扱われるべきものである」と。まさに個人情報はそもそもこういうものだと、慎重に取り扱ってほしいということでございますから、こういう理念を提示している部分でございます。したがって、これはもうあらゆる方にぜひこの理念は理解していただきたい、こういう姿勢でございます。

具体的にはその2行目以降でございますが、「個人情報を取り扱う者は、次に掲げる原則にのっとって個人情報の適切な取扱いに努めなければならない」と。要するに基本原則というのは、抽象的なことを書いております。その次のページ、後で御覧いただきますが、基本的には行動原理ないし目標であるというふうに理解しておりまして、裏返しますと、特段の適用除外というのを考えずに、あらゆる方がこういうものの目標に向かって、それぞれの立場で自主的に努力をしていただきたい、そういう立場でこの「基本原則」を掲げているわけでございます。

5ページをお開きいただきたいと思います。その中身でございます。

まず、第1は「利用目的による制限」ということでございます。この並べ方にも実は議論の経過がございまして、OECDの8原則は、個人情報の取扱いの段階別に大体書いてあります。必ずしもよく並んでないんですが、収集の制限というのが第1原則なんですね、8原則では。そういうことではなくて、論理的に考えるとどこが基本かなということを考えますと、出発点はその目的による拘束だろう、目的による制限だろうと、こういうふうに考えたわけでございます。実はヨーロッパの国は確かに収集が出発点に書いてあるケースが多うございます。それは収集のときに本人同意を取るということを非常に重視しています。自己情報コントロール権説に基づく部分なのかなというふうに私は理解しておりまして、先ほど申しましたように必ずしもコントロール権説にくみするわけではない。やはりバランス論でルールを考えたいというふうに先ほど申し上げたとおりでございまして、出発点は、事業者が自分で定める目的であって、その目的にきちんと拘束される、制限を受ける。そこを出発点に置きたいということであります。

なお、ちょっと横にそれてしまいますが、本人同意を出発点に置きますと、どういうことになるかといいますと、およそ他人の個人情報を取り扱うということ自体に何らかのよくないといいますか、違法性みたいなのがあって、本人が同意すればその違法性が阻却されるという論理に非常に近くなるんじゃないかということを事務局内なり、専門委員会の起草委員会グループでも多少懸念をしたような経緯がございます。やはりそういう考え方はストレートにはなかなか採れない。したがって、本人同意というのを最初に掲げるのでなく、やはり目的による制限を正面に掲げようということでございます。お読みいただきますとそのとおりでございまして、その目的は明確にしなさい。それから、その達成に必要な範囲で取り扱いなさい。これはOECDの3番目の原則、目的明確化の原則と4番目の利用制限の原則に一応は対応しているということでございます。

無論、先ほど基本原則の性質論で若干触れましたように、これは目標なりその方向性を示すわけでございまして、その囲みの下に解説を書いておりますけど、最後の3行を御覧いただきたいと存じますが、「利用目的の具体性の程度や目的明確化の方法、利用目的の達成に必要な範囲等については、個人情報の性質、利用方法、取扱者の適正な業務の実施の必要性等が勘案された上で判断されるべきものである。」

すなわち、個人の保護の必要性も当然念頭にはございますが、事業者側のいろいろな正当な利益だと、それから、それぞれの分野の特徴だとかを踏まえて、具体的な程度とか範囲は、そういった全体の利益衡量の結果として判断されるべきものではないかということを示したものでありまして、ある種、基本原則の性質の裏返しの部分を書いた部分でございます。

したがって、これの文章が書かれたから、法律になったからといって、法的な何か強制が即座に生じるとか、拘束力が生じるとかというふうには考えていないわけでございますが、さはさりながら、正面からこれに反対してもらっては困る。この方向で全ての方がやはり自主的に努力していただきたいという、そこは共通だという考え方でございます。

ただ、こういう法文が本当に法律に書けるかどうかというのは、これから政府部内の法制局との議論になりますが、ぜひともこういう方向で立法化を図りたいなというのが現段階での事務担当室の考え方でございます。

(2)が「適正な方法よる取得」でございまして、これはお読みいただければ、そのとおりでございまして、また、何が適正かということについては、今ほど申し上げたとおりでございます。

ただ、ここは1点、先ほど長々と御説明申し上げました本人同意みたいなことの延長でございますけれども、適正な方法ということについて、本人から取得することを原則とするということが実はあえて入れてありません。これは中間整理では、いろいろ除外を書きながら、原則として本人という言葉がございました。しかし、いろいろ議論しますと、余りにもいろいろな例外が多過ぎて、果たして本当に原則なのかどうかという御議論がございましたし、取得の方はむしろ柔らか目に考えてみてはどうかなということで、ここは8原則に正確に比べますと、若干緩くなっております。ただ、先ほど申しましたように8原則をそのまま法律にした欧州諸国でも、第三者取得、第三者収集については例外みたいなのが現実には存在するわけでございまして、確かに書き方が、本人取得原則というのは外れているわけでございますけど、実態はそう変わらないというふうに思っているところでございます。具体的に本人取得原則がないというのは、後ほど事業者の義務のところで、また御覧いただきたいと思います。

OECD原則でも、ここは”lawful and fair means”としか書いてないわけでございまして、仮にこの基本法制が立法化されますと、具体的にはそれぞれの分野のガイドラインなり何なりの積み上げで精緻になっていくところであるし、また、判例だとか、いろんな事例の積み上げで何が適正かという判断がなされるべき部分ではないかと考えております。また、時代によっても動くかもしれません。そういう可能性のあるところでもございます。

次に、(3)の「内容の正確性の確保」でございますけれども、ここはデータ内容の原則に対応する部分でございまして、中間整理に比べ若干言葉が足し算になっております。「利用目的の達成に」という言葉と、「最新の」という言葉が足し算になっております。「目的の達成に」という頭がかぶって、であれば、中身は正確だけでなくて最新のものに保たれてほしいと、これも方向性を示しているわけでございまして、したがいまして、(4)の囲みのすぐ上でございますけれども、例え話が書いてございます。利用目的そのものが過去の事実の記録というような場合には、これはまさに利用目的の達成という観点からは、記録が大事であるということでありまして、必ずしも正確かつ最新でなくても、一律にそれがこの条文で是正が求められるものではないということを念のために書いているわけでございます。

次に、囲みの(4)でございますけれども、「安全保護措置の実施」ということで、これは安全保護の原則に対応したものでございます。これは当然のことでございます。

それから、次に、(5)の「透明性の確保」ということでございます。中間整理でも透明性の確保というワーディングは使用していたわけでございますけれども、この透明性というワーディングには若干いろいろ背景となる議論がございます。と申しますのは、OECD8原則では、「公開の原則及び個人参加の原則」と言っております。実は開示とか訂正とか後ほど義務で出てまいりますその前提となる本人への公開という色合いが8原則では濃いわけでございますけれども、わざわざ「透明性」と使ったことには、本人への透明性の確保のみならず、やはり公正さを担保する。個人情報の取扱いに関して、公正さを担保するための社会的な責任論といいますか、若干そういうのをにじませているところでございます。要するに、個人情報の本人だけではなくて、世間一般に対して透明性を確保してくださいという意味合いが多少含まれております。

後ほど申しますけれども、これを持ち込んだ裏側といいますか、逆に通知、公表という規定が後ろに出てまいりますけれども、通知、公表していれば第三者収集も可という建前になっておりまして、これは本人同意原則は外したこととの裏腹でございますけれども、そのあたりとの整合性を念頭に置いて、社会一般に、かつ、本人も知り得る状態に置くことが最低限かつそれで十分の原則といいますか、そういう考え方を示しているということでございます。無論、個人情報に対しては、その後段にございます適切な関与等の透明性も必要だということでございます。

次に、7ページにまいりまして、「3.個人情報取扱事業者(仮称)の義務等」でございます。

これは冒頭にも若干触れましたように、IT社会の中での法律であるということで、IT社会で問題となる取扱事業者という定義でございますから、その3.の1行目でございますけれども、「大量の個人情報を取得し、保有し、蓄積している」ということをやはり問題といいますか、これが問題の中核であるという捉え方をしております。したがいまして、その段落のずっと下の方でございますけれども、7ページの下から5行目あたり、個人情報の集合物ということで、個人情報データベースということを書いておりますが、「一定の事業者」と書いてあります。ある程度絞り込みをしようということを考えておりまして、一定の事業者に対してのみ法制度の整備の緊要度が高い者として位置づけて、様々な義務を課すというのが、まず基本的な考え方でございます。1番目。

それから、2番目の考え方は、最後の2行あたりでございますけれども、基本法制でございますので、その性格上、義務は必要最小限度。ミニマムの規制とするということが二つ目の基本的な考え方でございます。

したがいまして、書いてないことはやらなくていいということでなくて、最低限これだけはやってください、それ以外は自主的な努力をやってくださいと、8ページの頭からその趣旨が書いてあるところでございます。

一定の者の解説でございますけれども、8ページの上から5~6行目あたりでございますけれども、例えば、単にアクセスすることのみが許されている人、要するに中身に責任が必ずしも持てないような事業者、こういった者は開示とか訂正とか、いろいろな義務を課しても、余り利益のないことだろうということで、そういうのを除く方向でございますし、それから、その次の行でございますけれども、「専ら小規模の個人情報データベース等のみを取り扱う事業者」。これはどんな法律でも、規制法でもそうでございますけど、やはり足切りというのは当然必然的に生じてくるのではないかということでございます。

8ページの囲みの(1)は「利用目的による制限及び適正な取得」ということでございます。

この辺の特徴を幾つか申し上げますと、ウのところを見ていただきたいのですが、「個人情報取扱事業者は、個人情報を取得する場合には、利用目的を本人に通知し、又は公表等を行わなければならない」となっております。要するに通知、公表の義務を課しております。ただ、先ほどの繰り返しになりますが、第三者からの取得も同じでございますから、本人取得を必ずしも原則としてないという考え方でございます。

ただし、本人から直接取得する場合が「このうち、」以下でございまして、これは中間整理になかったところでございますけれども、要するに契約締結等に伴って直接取得する場合は、そのとき示せばいいんじゃないかということで、原則として利用目的を明示してほしいということを原則論として書いてあります。

ただ、その最後の2行でございますが、但書がございまして、やはり事業者側の正当な利益とか、事業の適正な実施に支障を及ぼす、そういった場合には当然通知、公表できない場合もあるでしょうということで、これは保護と利用のバランスを図るということでございます。

すなわち、エに書いてあります同意がある場合とか、生命、身体、財産の保護のために緊急に必要である場合、これは当然抜けるわけですが、これ以外にもそういう利益衡量概念で、ケース・バイ・ケースで判断されるという原則であります。これはこの但書、8ページの下の2行から次のページにかけた但書みたいなのは、ほとんど全ての原則に入っております。

次に、10ページの「適正な管理」は、お読みいただければわかります。飛ばします。

一番大事な11ページの「第三者提供の制限」のところを見ていただきたいと存じます。

第三者提供の制限というのを書き起こしているわけでございますけれども、ここは理論的には本来は目的拘束、利用目的の範囲内でやってくださいという、その範囲の問題と考えられるところですが、今回の専門委員会では、やはり第三者提供というのは、非常に個人の権利利益を不安におとしめる、あるいは侵害を引き起こす可能性の非常に高いケースであるということで、ここは特に取り出して厳しい規定を置いております。すなわち、取得のときは割に柔らかな制度ですけれども、出所はきちんと厳しく押さえると、こういう発想でございまして、実はこれは各国の法制で第三者提供の禁止とか制限という規定は余り見られないというふうに理解しております。

考え方といたしましては、やはりこの法制全体として、取扱いについて個人に開示とか訂正とか利用停止等の権限なり、そういう対抗措置を与え、一方で、事業者側には正当な利益とか業務の支障ということでバランスさせようということなんですけれども、主体がどんどん変わっていく、第三者提供でどんどん流通していった場合にはそういうことが無意味になる。だから、ここだけは厳しく押さえたい、こういう発想でございます。したがって、正当な利益、業務の適正な実施という但書は、ここだけには書いてございません。かなり厳しい規定でございます。

ただし、そのイについてですが、当然これはルールでございますから、ルールが明確でなければならんということで、その例外はきちんと書いておこうというものです。ここは法制的にこれからもっと精緻にしなければならない部分でございますが、簡単に説明いたしますと、マル1マル2は基本的に第三者と認識するには若干かわいそうなケースという発想でございます。すなわち、営業譲渡とか分社とか、そういう場合のデータを引き継ぐ場合。

マル2は、例えば、特に後段ですね。その委託の場合などは、これは最初の事業者に監督責任があるわけでございますので、委託を受けた人とか、その人とのやりとりというのは特に制限をかける必要はなかろうと。その前段、「共同し、」というのは、この委託に近い例。ちょっと言葉が足りないのですが、ここは要するに最初の事業者の監督責任が及ぶ範囲の共同事業、共同して行っている者というふうに理解していただいた方が、より正確かなと思っております。

それから、マル3は少し違う場合でありまして、これは要するにグループ企業だとか、あるいは業界だとか、そういう場合に相互に利用する場合ということを念頭に置いております。この場合は要するに、その利用目的及び提供先等があらかじめ通知、公表されているということを条件にこれは認めようという例外でございます。

さらにマル4は、また別の例外でございまして、世の中、第三者に提供すること自体を業務の目的とされている方がいらっしゃいます。データベース業者とかそういう感じでございますけれども、その場合は、2行目以降でございますけれども、「あらかじめその旨」というのは第三者提供を目的としていますよということ。それから、その方法、こういったことをきちんと通知、公表する。それから、本人からの提供の停止等の申出があった場合は原則として情報の提供の停止その他適切な措置を講ずること。要するにこれはオプトアウトと言っておるんですけれども、第三者提供の場合は、集めてそれを提供は、基本的にやってはいいんだけれども、公表義務の中身を加重にしておくということと、本人から申出があった場合は提供停止をする、このことを条件として例外として、特例として認めていってはどうかと、こういう工夫でございます。このあたりが、これから法制化を進めていく場合には、現実の実態として問題になろうかというふうに思うわけでございます。

あと12ページの「公表等」は、こういう項目が公表になるということでございまして、この公表の規定というのも諸外国にはストレートに余りないところでございますけれども、これはお互いの利便性のためにも必要な部分ではないかと思うわけですね。

例えば、13ページの方に書いてありますけれども、やはり本人の開示、訂正とか、そういう手続が出てきますと、その真ん中のちょっと上なんですけれども、(5)(6)(7)における本人関与の実施に当たって必要となる事項で、例えば、本人の確認方法だとか期間、それから手数料、こういったものもやはりきちんとお互いのためには明らかにしておく必要があるんじゃないか、こういったことも盛り込んでいるところでございます。

それから、特に大事な、その先に苦情等の受付窓口の所在、これは本人に対する利便性でございまして、その次、個人情報の取扱方針、これは企業のプライバシーポリシーと俗に言われるものを念頭に置いているわけでございますが、そういったものをぜひ自主的にどんどん公開をしていただきたいという考え方でございます。

あと14ページ以降、「開示」、「訂正等」、「利用停止等」いろいろございます。開示、訂正、利用停止、いずれも「ねばならない」との規定でございます。義務で書いております。義務で書いた以上は、本人に当然権利が何がしか発生しているという考え方でございますけど、ただ、これだけで裁判が起こせるかどうかというのは別問題である。訴訟的な権利を与えたわけではないというふうに考えております。

開示は応答義務もございますし、開示しなければならんと書いておりますけれども、訂正、利用停止は、当然、対応にも若干の幅があろうかということで、「適切な措置を講じる」という考え方になっております。

それから、16ページの「利用停止等」でございますけれども、これは全ての場合に利用停止が認められるわけではなくて、後で注意深く読んでいただきたいのですが、その囲みの中の下ほどでございますけど、マル1というのは、これは要するに目的外利用をしているケース。マル2というのは、違法あるいは不正な手段によって収集されたケース。マル3というのは、違法に提供しているケースということで、いずれも持ってはいけないというふうにこの法律で義務を課しているところのその違反の場合でございますから、そういう違反があった場合のみ、認めるという考え方でございます。

あと「苦情の処理」とかありますけれども、18ページに飛びます。御覧いただきたいと思います。

「(9) 苦情の処理等を行う団体の認定」ということでございまして、これは中間整理になかった部分でございまして、自主的にやってほしいというのは企業単位だけでなく、業界単位とか、そういう単位でやっていただきたいなということで、申請により主務大臣の認定を受けることができる。ADR(裁判外紛争処理)の一部と考えておりますけれども、そういう業界団体の取組みをぜひ促進してまいりたいという考え方を示しているところでございます。

あと18ページの下からは、政府の関係の措置でございますけれども、この辺は国の行政機関の個人情報保護法等を改正するという話、特殊法人の話、いろいろございます。

1点だけ触れますと、20ページの(3)、下の方でございますけれども、「法制上の措置等」というのがございまして、「政府は、個人情報であって、その性質、利用方法等に照らし、特に厳重な保護を要する等、別途の措置が必要なものについては、法制上の措置その他の施策等の措置を講ずるものとする」とあります。これは何を言っているかというと、個別法を必要に応じてちゃんと整備してくださいということをこの基本法の中に書き込むということでございます。その中身には言及はしておりませんけれども、個別法の整備をやってくださいということです。

ただ1点、21ページの囲みのすぐ上ですけれども、ぜひ個別法を検討される際は、その分野の多様性による対応というのは当然のこととして、下から2行目でございますけれども、実態等に即して罰則の創設等を含む法制上の措置を講ずべきとしております。やはり基本法制ではなかなか構成要件が書けないので罰則が置けないという結論になりました。一番後ろに行政命令も置いておりますので、命令違反に対する罰則は置くということになっておりますが、直罰の規定はなかなか置けない。したがって、これはやはりぜひ個別法でお願いをしたい。もちろん必要に応じてでございますけれども、必要であれば、個別法で直罰の規定等の御検討もお願いしたいということでございます。

あとは23ページ、ちょっと飛びますが、「主務大臣の指示等」というのを、これは中間報告では調査にとどまっていたのが、最終的に、中止命令等まで書き込むという方向になりました。かなりメリハリの効いたものになっております。

ということで、あとちょっと割愛したいんですけれども、最後に、基本法制、中間整理の段階、あるいは昨年あたりから若干変わってきた点を付け加えます。最初は、基本法と申しておりました。その理念とか基本原則を定めるというのは当初からも想定していたんですけれども、やはりいろいろ議論しておりますと、事業者が一般的に服すべき規律もある程度は盛り込んだ方がいいんじゃないか。したがって、基本と言いつつも、事業者一般法の部分もかなり取り込んでおります。そういう意味では、当初の想定よりは割にメリハリの効いた、しっかりしたものになってきた。当初は個別法で対応しようと思っていた相当部分を一応は取り込んだということが言えるのではないかというふうに思う次第でございまして、そういう意味では各省庁における個別法の検討も一からということよりは、本当に残る部分、どの辺があるかということを御検討いただければ済むような格好に、一応は専門委員会での議論が方向としてそういうふうになってきたということを御理解賜れば、大変ありがたいと存じます。

以上、大変早口でお聞き取りづらかったかと存じますけれども、私からの御説明を終えさせていただきます。どうも御清聴ありがとうございました。

○ 倉澤部会長

どうもありがとうございました。

ただいまの御説明につきまして、何か御質問がございましょうか。

江頭委員、どうか。

○ 江頭委員

どうもありがとうございました。1点質問ですが、第三者提供の制限のところでございますが、例えば、個人情報取扱事業者が倒産して、それで、財産が競売されるというような場合については、これはどういうことになるんでしょうか。

○ 小川ゲストスピーカー

その詳細な部分は法制化のときに本当に検討しなければいけないいろんな課題がたくさん残っておりまして、その一つだろうというふうに思うんですが、基本的に倒産前に資金繰りのためにお売り渡しになるというようなケースは、当然禁止になってしまうということでございますね。主体が残っている限りはだめだということですね。そうすると、清算になるのか、破産なのか、いろんなその辺の手続的な整合はちょっと考えなければいけないと思いますけれども、実質的にはそれがばらばらにならないようにしたいなと、こういうふうには思っているところでございまして、何らかの措置は必要ではないかなと直観的に感じます。

○ 江頭委員

営業とくっつけて競売されるのは、ここでも許されていると思うのですが、必ずしもそう処理されるとは限らないですね。関係ない業者が競売で買い取るということだってあり得るわけですから。

○ 小川ゲストスピーカー

そうですね。だから、不特定の者に渡ってしまうことについては大変厳しく考えているわけですね。相手に、本人とか一般の人にわかる、誰に行くかがわかることについて、かなりの程度緩く考えている。そういうことで区分していくことになるのかなというふうに思っております。

○ 倉澤部会長

ほかによろしゅうございますか。

坪井委員、どうぞ。

○ 坪井委員

先ほど罰則の話がありましたけれども、私どもも商工会議所等の関係では、これは非常に早く制定していただきたいという気持ちが強いわけですね。問題は、その罰則がどういう形で法制化されたときに付くのか、この話についてはまだ煮詰まってないわけでしょうか。

○ 小川ゲストスピーカー

失礼しました。ちょっと説明を割愛してしまったんですけれども、今の資料の25ページに「罰則について」という部分がございまして、読むとなかなかすぐに意味が読み取れないというか、なかなか難しいという意味でづらづら書いているものですから、要は、直罰といいましても、最大のポイントは、基本法制では個人情報の質だとか、利用方法というのを区分できなかったということなんですね。そうしますと構成要件が非常に書きづらい。

直罰の規定は、同じ情報であっても、使われ方によって人権侵害とか、そういう程度が全く異なってくる。そういうことを念頭に置きますと、その行為自体が、例えば、第三者提供の禁止に違反したからって、即、直罰というわけになかなかいかないだろうと考えております。その代わり、26ページの4行目からですけれども、必要な場合には主務大臣が改善中止命令を発し、それが守られない場合について罰則が適用される仕組みを設けることが適当であるとしております。要するに、改善中止命令の違反に対する罰則までは基本法で設けましょうと。ただ、その後ろの5行でございますけれども、それぞれ「質」とか「侵害の態様」に応じた個人情報保護の観点から、個別法で必要であれば御検討をお願いしたい。基本法と個別法の役割分担をここでお願いしたい。こういう考え方に立っておるということでございます。

法制化委員会でも直罰の規定を置くべきだという議論がございまして、いろんな検討を重ねた経緯がございます。例えば、個人の秘密に属するものは罰則の対象としたらどうかとか、それでもやっぱりいろんなケースがあり得ると。では、例えば、守秘義務違反と知っていて取得した人とか、いろんな検討資料まで出しまして御議論いただいたんですけれども、やはり基本は個人情報の質とか、利用方法をこの基本法制上は区分してないというところから、その帰結として、なかなかに直罰の規定は難しいとの結論になりました。やっぱりここは個別法に譲らざるを得ない。そういう判断になったということでございます。

○ 坪井委員

もう一点よろしいですか。

○ 倉澤部会長

はい。

○ 坪井委員

よくわかりました。ただ、非常にこの運用に関しましては、既にいろんな事件がどんどん起きているわけでして、罰則がほとんどない状態で今大変な損害を被る人がたくさんおるわけですが、ですから、なるべく早く、罰則が個別に改正がされることになりますと、法制化した形の意義は薄れるんじゃないか。やっぱりきちっと1項目ある程度の決まりを付けていただく、レベルを付けてですね、そういう形ができないかと一つ。

それから、もう一つは、地方において今一番問題になっている裁判がどんどん起きていますのは、特に地方自治ですね。警察、それから検察庁、そういうところのいわゆる情報開示について、各県等自治体が情報公開条例を持っていますけれども、それよりも踏み込んだ形のいわゆる市民運動なんかありまして、そういう部分での裁判がどんどん続いている。その裁判の結果は各県まちまちなんですよ。まだ地方裁判所、それから高裁、最高裁があるんでしょうけれども、高裁までの関係では。そうなりますと、地方公共団体が持っている情報をどの辺まで要求できるかというその基準、これも個別にやれということになるんでしょうけれども、最終的には。その辺の政府の感覚をちょっとお聞かせいただきたいと思います。

○ 小川ゲストスピーカー

両方とも大変難しい問題ですけど、罰則について、そういう議論で何とか御理解賜りたいんですけれども。

それから、地方との関係も、これは条例を持っている団体もありますし、そうでもない団体もある。中身ばらばらと。そういった意味で、先ほどの御説明、ちょっと割愛いたしましたが、この基本法制の中でも、全体にこういう個人情報保護の施策が統一的、総合的に講じられるように基本方針を政府で決めましょうという条文が起こしてあります。こういったものをてこにして、これは閣議決定あたりを念頭に置いているんですけれども、そういうものに従って、できるだけ全体の統一性といいますか、そういうことを確保していきたいという考えは入っているということでございます。

○ 倉澤部会長

どうもありがとうございました。

ほかにもこの機会に御意見、御質問あるかもしれませんけれども──では、池尾委員に最後に簡明にお願いいたします。恐縮ですが。

○ 池尾委員

ごく本当に単純な質問なんですけれども、8ページのところの一番下の但書がどういうことを想定しているのかがよくわからない。公共目的か何かが別途あって、公共の利益のために目的を明示しないで集めるということはあり得るかなとは思うんですが、個別事業者の利益で但書があるというのはちょっとわからないんですが、どういうケースを想定されているんでしょうか。

○ 小川ゲストスピーカー

まさに大変鋭い御指摘でございまして、ただ、これは基本思想として、保護と利用のバランスというところからきておりますので、単に公益だけでなくて、事業者の事業の正当な利益を当然考えてあげる必要がある。ただ、細かな部分は、確かにこれから法制化段階で詰めていかなければならないと思っておりますし、さらには、やはり先ほど申しました基本方針に基づいて各省がガイドライン等でしっかりその辺の細部を各業界ごとに明らかにしていく作業というのが当然不可欠になるのかなというふうに考えている次第でございます。ここはこれだけ読むと本当にわからないという御指摘は、そのとおりでございまして、これから詰めていかなければならない部分であるというふうに認識しております。

○ 倉澤部会長

よろしゅうございますか。

それでは、次の議題に進めていただくために、このテーマについては、これで終わらせていただいてよろしゅうございましょうか。申し訳ございませんが。

小川副室長、本当にありがとうございました。

○ 小川ゲストスピーカー

どうもありがとうございました。

〔内政室ゲストスピーカー退場〕

〔保険関係ゲストスピーカー入場〕

○ 倉澤部会長

それでは、次のテーマである保険会社における金融商品の時価評価の導入についてに議題を進めさせていただきます。

本日は、ゲストスピーカーとして、公認会計士の山田辰巳さんにお越しいただいております。それから、保険会社会計の実務に関する専門家として、日本生命保険相互会社主計部の清水課長、それから、東京海上保険株式会社経理部の藤田課長にお越しいただいております。

この問題につきましては、本年6月に当部会の報告書として、「保険会社のリスク管理について(保険会社会計を巡る論点整理)」を公表し、幅広く一般からの意見を求めていたところでございます。今般、事務局におきまして、報告書に寄せられた意見をとりまとめていただいたところでございますので、事務局から御説明をお願いしたいと思います。

企画室長、お願いいたします。

○ 池田信用課保険企画室長

保険企画室長の池田でございます。

それでは、6月の報告書に対して寄せられました意見について、御説明をさせていただきたいと思いますが、その前に、6月の報告書のポイントをごく簡単に触れさせていただく方が適当かと思いますので、資料20-2「保険会社会計に関する論点」というのを御覧いただきたいのですが、ここでは報告書のポイントの部分を整理しております。報告書では、まず、保険会社の資産・負債構造の特殊性ということを論じております。

そのポイントはここにありますように、負債については大宗を責任準備金が占めている。この責任準備金は、長期の保険契約に基づく将来の債務の履行のために積み立てられるものであって、契約時に固定された予定利率に基づき計算されている。

iiの方に資産面のことを整理していますが、負債の長期性に対応して、資産面でも長期の運用(特に債券保有)の割合が高い。ここで資産・負債のデュレーション・マッチング(期間対応)が図られていれば、金利変動リスクは回避されると考えられる。

マル2の方に移りまして、このような財務特性があるところに一般企業への適用を前提とした金融商品の時価評価の基準をそのまま適用した場合には、その下にありますように負債が時価評価されない一方で、資産(債券)のみが時価評価をされ、資本の額が変動してしまう。資産・負債のデュレーション・マッチングが図られ、金利変動リスクが回避されていると考えられる場合においても、財務諸表上、それが適切に反映されないという問題が指摘をされていたところでございます。

おめくりいただきまして、報告書ではこのような問題への対応策としまして、三つの選択肢を提示しておりました。

以下に掲げてございますが、1番目の案は、保険会社にも「金融商品の時価評価」を原則どおり導入をする。同時に、財務諸表の利用者に対して、保険会社の財務構造に照らして注意すべき点があることについて周知を図るという方法でございます。

2番目の案が、時価評価の導入は見送りまして、従来の評価方法を継続するということで、原価法あるいは低価法の従来の方法を継続する。

3番目の案が、金融商品の時価評価を導入した上で、長期の負債の金利変動リスクを減殺する効果に関する「明確な規準」の策定を前提に、以下、技術的に二つ選択肢が掲げてございましたが、そういった当該規準に該当する債券については、償却原価法による評価を認める。

あるいは、マル2の方になりますけれども、こういった債券については、時価評価した上で、評価差額を資本の部ではなくて、資産・負債の部に計上するということで、いわゆる繰延ヘッジに準じた会計処理を行うということでございます。

(注)にございます、いずれにしても、時価評価しない部分について、時価に関する情報は、注記等の形で開示をするということであったかと思います。

以上の報告書の内容を6月に公表しまして、広く一般から意見を求めておったわけでございますが、この報告書に対しましては全部で7件の意見が寄せられてございます。

その全体につきましては、委員の方々のお手元に配付をしてございます。表にリストも出ておりますので、ここに掲げております7件の意見が寄せられております。その概要につきましては、別途、資料20-3ということで整理をさせていただいておりますので、本日はこれに基づいて御説明をさせていただきたいと思います。この意見の概要の整理では、三つの切り口で意見を整理させていただいております。

1番目が、「保険会社の財務の特性」、ただいま御説明した財務の特性について論じている部分についてのコメントでございます。ここでは、ここに掲げてございますように四つのコメントが出されておりますが、これらは基本的にいずれも報告書の問題意識について御理解をいただいた内容になっております。

一つ目の生命保険協会からのコメントを見ていただきますと、生命保険会社においては、契約時の予定利率を長期にわたり、毎年保証する必要があるという負債特性がある。この負債特性に応じて、安定的な利息収入の得られる円金利資産、とりわけ円建債券を中心とした資産運用を行っている。こういった他事業には見られない資産・負債特性を持っている。

今回、資産の評価方法にのみ、時価評価をそのまま導入した場合、資産・負債の評価方法のミスマッチにより生ずる評価差額が資本の部に計上されることになってしまうということで、誤った業績表示になりかねないというコメントでございます。

次の日本損害保険協会、在日米国商工会議所も、基本的に同旨のコメントでございます。

また、四つ目に、個人のアクチュアリーの方からのコメントがございますが、読ませていただきますと、保険の目的が「安定の追求」であることから、その資産運用においても安定性が求められ、現在の保険会社の会計はこれを前提とした取扱いとなっている。変動性が急増した現在の金融・資本市場にあって、保険会社だけが依然として安定性を追求する資産運用を行っていると、そのための過大な負担を保険会社が背負い込むことになる。したがって、商品設計を含めてこの点に関する基本的見直しは、別途の重要な経営課題となるが、このような見直しを実施したとしても、安定性を求める保険事業の特性は当然に残るわけで、保険会社が一般的な会計議論とは同列に扱えないことに変わりはないということで、結論的には、財務の特性があって、一般的な会計議論とは同列に扱えないという結論になっております。

次に、2.のところですが、このような財務の特性を前提として、いかなる会計処理がよいかという、その部分のコメントでございます。一つ目は生命保険協会からのコメントですが、ポイントは2ページ目の方になりますが、債券については償却原価法が妥当であるということで、先ほどの整理で申しますと、第2番目の案が妥当であるというコメントをいただいております。

次に、在日米国商工会議所からのコメントでは、保険会社が時価会計基準をそのまま適用し、決算報告を行うことは合理的でない。保険会社において、資産と負債の評価のミスマッチを防ぐ合理的な会計的手当が行われること、合理的な会計的手当が行われるまで、当会計基準の適用については、不適用とすること、ということをコメントをいただいていまして、結論的には第2番目の案であるわけですが、細かく見ていきますと、資産と負債の評価のミスマッチを防ぐ合理的な会計的手当ということもおっしゃっておりまして、第3番目の案による解決の可能性も示唆をしておられるのかなというふうに考えております。

次は、アメリカンファミリー ライフ個社からのコメントでございますが、ここではコメントの2行目ですが、第マル2案が最も合理的であると述べておりますが、これについては原則として従来の評価方法の継続であるため、他業態等から理解が得られるかという懸念があるということをおっしゃっていまして、この点については従来の評価方法を採用できる資産(主に債券)を、保険会社の資産負債構造の特性に鑑み、明確な規準を設けて、ヘッジ効果のあるものに限定するという対応も考えられるということで、第マル2案が最も合理的とおっしゃった上で、それに理解を得られないということであれば、第マル3案の1番目の選択肢の考え方もあるのではないかというコメントでございます。

このコメントでは、さらに第2段落になりますけれども、そのヘッジ効果に関する規準についての一つの考え方として、資産と負債のデュレーション・マッチングの概念を利用し、保有資産から負債のデュレーションに概ね一致するポートフォリオを構築し、そのポートフォリオの対象となる資産のみをヘッジ効果のある資産とすることが考えられるということで、資産と負債と対応するポートフォリオを構築して、そのデュレーションの対応状況でチェックをしたらいいんじゃないかという考え方、アイデアを提示いただいております。

その次がプルデンシャル生命保険からのコメントですが、これも内容的にはアメリカンファミリーの内容と同旨でございます。こちらは具体的に第マル3案で処理する場合の選択肢として、繰延ヘッジのやり方が望ましいんじゃないかということで、そこは差がありますが、基本的な考え方については同じ内容になってございます。

それから、その次、個人のアクチュアリーの方の御意見ですが、安定性を求める保険事業の特性から、保険会計が一般的な会計議論とは同列に扱えないことに変わりはないが、国際会計基準の動きなども無視できない。たとえ保険会社の資産であったとしても、市場においては他の企業が所有する金融資産と何ら変わらないわけであり、その点からは資産の時価会計の導入などは当然のこととなる。したがって、保険会計の特性について主張するのは、負債の評価場面あるいは資産と負債をバランスさせる場面に限定すべきであるということで、これを見ますと、第マル2案のような時価会計を先送る、見合わせるという考えはとり得ない。むしろ資産と負債をバランスする場面に限定して、第マル3案のようなものを限定的に手当をすればよいのではないかという御意見だと理解をしております。

その次は、日本損害保険協会のコメントですが、結論は3ページ目の冒頭になりますが、第マル3案のiiあるいは第マル3案のiが適当であるということ。それから、7行目になりますけれども、第マル2案については、ALM管理の対象とならない有価証券についても新基準の適用外とすることは合理的な説明がつかないことから、諸方面の理解を得ることが困難という意見をいただいております。

最後は、アメリカン ライフインシュランスのコメントですが、これはややテクニカルなコメントになりますが、6月の報告書では、何らかの会計的な手当が必要となるとしても、その手当は円建の債券にだけ限るべきで、外貨建の債券は為替リスクの問題があるので、そのような手当をすることは適当でないという趣旨のくだりがございます。このコメントでは、保険契約が外貨建である場合に、同じ通貨建の債券を持っているのであれば、負債と同じリスク特性を有していると言えるのではないかということで、ややテクニカルですが、内容的には御指摘のとおりということかなというふうに思っております。

それから、3.のところで、検討のスケジュールについてコメントがございまして、これは生命保険協会、日本損害保険協会から出ておりますが、会計制度の変更に伴っては、経営面の対応あるいは事務・システム面の対応が必要なので、早急に結論を出してもらいたいという要望をいただいているところでございます。

以上、コメントを総括しますと、保険会社の財務の特性については概ね報告書の意見と一致したコメントをいただいている。それから、それを踏まえた具体的な会計処理の方法については、第マル2案と第マル3案の間でコメントにややニュアンスの差があるばらつきがあるということかと思います。

また、この点について考えてみますと、仮に例えば第マル3案というものをとった場合には、適切なそういう明確な基準、適切な会計実務ルールが作れるかどうか、作ったとした場合にどういう姿になるかということにつきさらなる検討が必要になるところかと思いますが、このあたりが現時点で姿が見えていないということで、第マル2案から第マル3案の間で、ややコメントにニュアンスの差があるということの一因にもなっているのかなと感じるところでございます。

このようなことから、仮にこの第マル3案をとった場合に、そもそも適切な会計実務ルールの策定が可能なのかどうか、それから、可能とした場合にどんなルールが考えられるのかといった点についての検討が重要になると判断をいたしておりまして、この点については、既に日本公認会計士協会に検討をお願いをしておるところでございまして、本日は、後ほど公認会計士の山田先生から、この点についても御報告をいただく予定にしておるところでございます。

私から、以上でございます。

○ 倉澤部会長

どうもありがとうございました。

ただいま事務局から紹介していただきました日本公認会計士協会における検討につきまして、その検討状況を御説明いただきたいと存じます。それでは、この6月まで本部会保険ワーキング・グループのメンバーを務められ、日本公認会計士協会における検討にも加わっていただいている山田辰巳公認会計士より、これまでの検討状況について御報告をいただきたいと思います。

では、山田さん、お願いいたします。

○ 山田公認会計士

公認会計士の山田でございます。お手元にあります「委員限り」と書かれた資料、「保険会社における金融商品の時価評価導入に関する検討について」これに基づきまして、これまでの公認会計士協会の有志による非公式な検討の状況について御報告をさせていただきたいと思います。

まず、1番目の有志による検討の背景でございますが、先ほど来出ております企業会計審議会から公表されております「金融商品に係る会計基準」が今年の4月から一般事業会社に対しましては適用がされております。ただし、その中の区分の中で「その他有価証券」という区分につきましては、これは来年の4月1日以降開始する事業年度から適用するということになっておりますが、早期適用もできる、こういう一つ規定が置かれてございます。

それから、2番目のところですが、一方、保険会社に金融商品会計基準をどのように適用するかについては、先ほど池田室長の方からこちらに御報告ありましたように三つの案が示されておりますが、これは代替案が示されているのみでございまして、具体的な会計処理が特定されていないという状況でございました。

このような状況を踏まえまして、早急に会計処理を明確にする必要があるという認識の下、金融庁からの要請を受けまして、生命保険協会、損害保険協会、さらに公認会計士協会の会員の中で保険業に通じている者、有志による勉強会を非公式な形で開始させていただきました。勉強会では、保険会社のリスク管理活動の特殊性ということを考慮した会計処理として、どういうものが考えられるかについて、平成12年の8月8日を第1回としまして、数回に及ぶ議論を行ってまいりまして、一応これから申し上げるような内容であれば妥当な会計処理と認められるのではないかという暫定的なコンセンサスになっております。

ただ、一つ御留意いただきたい点は、これは有志の話し合いでございまして、公認会計士協会は業種別監査委員会による審議と、公認会計士協会の理事会の決議を経ませんと正式の意見は出せないという仕組みになっておりますので、ここの点は一応御了解いただきまして、現段階における、公認会計士協会の中で保険の実務に通暁している専門家が、大体これでいいだろうというところに達したという内容であるということで、とりあえず御報告をさせていただきたいと思います。

それから、1点ちょっと補足したいのですが、この1の1)にあります企業会計審議会から出された「金融商品に関する会計基準」は、国際的には米国の有価証券に関する会計基準、SFAS115号というのがございますが、この考え方。それから、さらに国際会計基準の第39号「金融商品の認識と測定」という、会計処理を取り扱った基準を参考にしてできておりまして、これら国際的な基準におきましては、それらの基準というのは、資産側に対してのみ時価評価の考え方を導入しておりまして、負債側については基本的には取得原価で、つまり時価評価をしないということが前提になっております。

特に米国においては、究極的には金融資産、金融負債ともに時価評価ですべきではあるんですが、現在まだその段階に達していないということから、それらの基準は基本的には中間的な基準であるという位置づけになっておりまして、そういう意味において、資産側の時価評価、負債側は取得原価ということが前提になって、基準の枠組みがそういう枠組みで出来上がっている。

したがいまして、一般事業会社においては、負債側の影響というのは、ある意味ではそれほど顕著でないわけですが、負債の大宗を占める責任準備金という、いわば確定利付きの負債というようなものを抱えている保険業というこの業種の特殊性からいきまして、負債側、取得原価をベースにしている会計基準の考え方がすんなりとそのままいくのか、適用できるのかというのが基本的な基準の中にある矛盾点というか、問題点。そこが問題の根本的なところではないかと理解しております。

そういう理解をベースにしまして、また戻っていただきますと、2というところで、有志による検討の状況ということで、会計処理の方向性ということでございます。現在までのところ、次のような会計処理を保険会社のリスク管理活動の特殊性を考慮した会計処理として認めることは妥当であろうと考えられている。

まず、(1)としまして、金融商品会計基準、つまり企業会計審議会が出した基準そのものの適用に関しましては、これから述べます下記2に述べるような会計処理を選択する場合を除いて、保険会社が一般事業会社等に適用されている金融商品会計基準をそのまま適用することを妨げる理由は存在しないのではないか。したがって、金融商品会計基準をそのまま適用することは妥当と考えてよいのではないか。先ほど指摘させていただきましたように、資産側と負債側の会計処理が必ずしも首尾一貫していないわけですが、それをわかった上でも適用したいという場合については、それを認めてもいいのではないかというのが、まず第1点でございます。

それで、一つ特例的な場合でございますが、それが次の2ページのところで書いてございます。2ページのところは、「保険会社のリスク管理活動の特殊性を考慮した会計処理」ということで、保険会社は、次に示す会計処理基準をリスク管理活動の特殊性を考慮した会計処理として選択することができるものとすることが妥当ではないかという結論に至っております。

ここから少し細かいことをまず申し述べさせていただきたいのですが、マル1としまして、保険会社は、保険契約に由来する超長期の負債(責任準備金)を有するが、これを完全にマッチングさせる債券等の市場を有していないため、保険契約に係るリスクの全てを回避することはできない。そのため、保険会社は自らの負債の持つリスク特性に基づいたリスク管理方針を策定し、これに基づいて自己の責任においてリスクのコントロールを行っている。保険会社のリスク特性によって多様なリスク管理方針が策定されるのは当然であり、保険会社の金融商品に係る会計処理は、このような自主的に策定されたリスク管理方針を適切に反映するものとすることが必要である。

これは追加の説明の必要もないかと思いますが、個社が負っている保険契約に由来するリスクというのは、個社の保険の販売方針等によりまして個々に違っているものと考えられます。そういう中でむしろ画一的な処理方法ではなくて、自らがそのリスクをどのように管理するかという方針を持って会社の経営をしているはずでございますので、まず、それに則った、そういう考え方を反映した会計処理とすることが適切ではないか。

それを受けましてマル2でございますが、会計処理基準は、次の原則に則ったものとするということで、リスク管理方針が策定され、これに基づいてリスク管理体制が整備、かつ、運用されていることを前提として、保険会社の自主的なリスク管理方針を適切に反映できる会計処理基準とすることが妥当であろう。

それから、2番目は、リスク管理方針等に関して、財務諸表の注記で一定の開示を求めることとする。

つまり、個社においてリスク管理方針がそれぞれ違うわけでございますので、そのリスク管理方針の要諦について注記等で自ら開示をしてもらうことが妥当ではないか。

それから、3点目でございますが、自ら策定したリスク管理方針に違反する行動が行われた場合には、会計処理上、厳しいペナルティを科すという形でリスク管理方針の遵守を担保することが妥当ではないか。

一応この3点の原則的な考え方を立てまして、これに基づいて、では、会計処理を具体的にどうしようかということで、3番目でございますが、「会計処理の概要」でございます。

まず、リスク管理方針に従いまして、負債、すなわち保険契約分ないしは責任準備金と言い換えてもよろしいかと思いますが、この負債と資産から構成されるポートフォリオを区分する。つまりこれを「小区分」と呼ぶことにしますけれども、責任準備金全体を一つのグループと考えることももちろん可能でございますが、例えば、一時払い商品とか、残存契約期間が10年から20年のものといったような、あるリスク管理をしようとする負債を幾つかの小区分に区分するという管理が行われているようでございまして、そういうことをしていただいた上で、それと見合う資産群、資産の方は債券、貸出金、株式等の幾つかのものからなるかと思いますが、本件で問題にしているのは、このうち債券の場合だけでございますけれども。

しかし、リスク管理ということから考えますと、負債に見合った資産というのは債券、貸出金、株式等からなるポートフォリオが、そういう一つのひも付けたポートフォリオを小区分として切り出していただこう。その上で、ポートフォリオに含まれる債券のうち、負債のデュレーションと見合うものとして特定されるための要件を満たした債券は、その他有価証券とは区分され、仮にこれを「責準見合い債券」と呼ぶことにいたしますと、このその他有価証券とは区分した上で、責準見合い債券に対しては償却原価法を適用する。

つまり、負債側がある一定の要件を満たした債券と見合う責準、負債でございますが、負債の方が基本的に取得原価でございますので、それと見合うことを担保されたある一定の責準見合い債券については償却原価法を適用するということで、原価と原価という形で見合せようというふうなことを考えてございます。

3番目でございますが、小区分ごとに設定される目標デュレーションを達成するための責準見合い債券の売買損益や金利収入は当該期の損益とする。そういう目標デュレーションの達成ということは、リスク管理方針において切り出された小区分の負債に対して、資産側がある一定のデュレーションで見合っていなければいけないわけですが、御存知のように債券というのは1年ごとにデュレーションが短くなっていきまして、常にデュレーションを見合わせるためには、ある種の定期的な入れ替えが必要になる。したがって、その入れ替えについては、これは目標デュレーションを設定し、その範囲で行われている入れ替えは一応合理的なリスク管理活動の一環であるという考え方で、ここから出てくる損益については、その発生期の認識と考えてはいかがであろうかというのが3番目でございます。

4番目は、リスク管理方針に従わない責準見合い債券の売買があった場合には、一定のペナルティを科すことにする。すなわち、リスク管理方針に見合わないわけですから、一種の益出しか何か、そういう行動であろうと思われますが、その場合に売却益を出した場合には、これは元の債券の残存期間にわたって繰延べ処理をする。

ただし、損の場合は、これを繰り延べてしまうと不健全ということになりますので、損についてはその発生期の損でいいのではないかと考えております。

さらに、最後の点でございますが、財務諸表の注記において、リスク管理方針の概要説明、どういう形でこの小区分を作っているのか。さらに、どういう形でその目標デュレーション等を設定し、配分をしているのかというようなリスク管理方針の概念について、これは余り厳しい開示を求めますと企業秘密という問題と絡みますので、この辺はもう少し先で検討しなければいけませんが、基本的には概要を説明していただく。

さらに、責準見合い債券につきましては、償却原価で会計処理を行うことから、時価の情報については注記で開示していただく。

その他幾つか若干開示事項について書いてございますけど、大枠としましては、ある種の開示を財務諸表で行っていただくことを考えています。これはかなり厳しい要求ではないかいうふうに考えてございます。

それから、2ページのマル4でございますが、「リスク管理方針の策定」でございますが、このリスク管理方針というのは、企業が必ず持っているものと考えられますが、このリスク管理方針の中でリスク管理単位、先ほど言いました小区分を特定するルールを設定する。資産と負債の一固まりの区分を設定していただく。

次のページでございますが、小区分ごとにリスク管理方針、その実行計画としての資金配分計画、これは半年ないしは1年、場合によっては3カ月等の単位で作られる具体的な基準があると思いますが、それが設定され、それによって小区分ごとに資産配分目標及び債券の目標デュレーションが設定されるであろう。これが明確にされませんと、監査や検査という段階で、この行動の合理性がうまく見れないことになりますが、したがいまして、前提としてこういうものをきちっと策定していただくということを考えております。

さらに、今度はリスク管理体制の整備・運用でございますが、今述べたようなリスク管理方針がきちっと実行され、さらにそれがチェックされるという仕組みを作っていただく必要があるだろう。ということで、まず、リスク管理方針運用手続は、基本的には文書化していただき、デュレーション計測システムを構築していただく。つまり、後ほどちょっと申し上げるのですが、負債のデュレーションと資産側のデュレーションを時価の代替値として、見合せていただこうと考えておりますので、これを計測するシステムをきちっと構築していただく。さらに、フロント部門やリスク管理部門から独立した部門によって、ある種の検証をしていただこう。これによって目標デュレーションの達成状況とか、資産配分計画の達成状況、手続違反の有無等について、会社御自身でチェックをしていただく体制を作っていただこうというふうに考えております。

6番目でございますが、ここが責準見合い債券の特定のための要件ということで考えているところでございますが、先ほど申し上げました小区分ごとに考えているんですが、保有している責準見合い債券が責任準備金と見合っているかどうかは、小区分ごとに両者のデュレーションがある一定幅の中にあるかどうかで判断する。下記算式を満たさない債券は責準見合い債券とすることはできず、ということは償却原価法を採用することはできず、その他有価証券としての会計処理が行われるということです。どういう算式かといいますと、責任準備金側のデュレーションがK×責準見合い債券のデュレーション。つまり持っている債券、このKを0.8から1.25の間におめさよう考えております。この0.8から1.25というのは、現在のアメリカないしは国際会計基準で採用されておりますが、ヘッジの基準の中でヘッジの有効性を判定するときに、この0.8から1.25の範囲内であればヘッジ会計は有効であるというような考え方が実は国際的には大体定着した考え方になっておりますので、その比率をここへ持ってきております。すなわち、責任準備金のデュレーションは、それに見合う債券のデュレーションとほぼ一致していなければいけないという考え方で制約をかけようと考えております。

しかも、この責準見合い債券のデュレーションというのは、ある小区分の中で考えますので、そのグループ全体としてのデュレーションというふうに考えております。個々の債券ではない。したがいまして、あるリスクを管理しようという単位でもって責任準備金のデュレーションと、それに見合う債券のデュレーションを合わせていただく。逆に言いますと、債券が見合っていると幾ら主張されても、この算式で制限される範囲内でなければ、基本的には責任準備金のデュレーションと見合ったものとはみないという判断をしようと考えております。

その次の7番は、ペナルティでございます。デュレーション調整以外の売買が行われた場合には、それ以降2年間にわたって責準見合い債券という区分を用いることはできない。つまり、例えば、ある小区分でデュレーション調整以外の理由で責準見合い債券を売るようなことをしますと、もうその区分において償却原価法の対象になる責準見合い債券という科目は使えない。したがって、保有する有価証券はその他有価証券として、時価評価をして評価損益を資本の部で認識していただくという形でペナルティを科そうかと。米国及び先ほど申し上げました国際会計基準の39号でも基本的にこういう考え方がとられていまして、さらに、日本の満期保有有価証券というのが日本の中でもございますが、その中でも同じ考え方が採用されており、それと軌を一にした制約を科そうと考えております。

さらにもう一点、売買損益。これは先ほど申し上げましたが、売買益については残存期間にわたって繰延計上し、売買損の場合は当該期で計上するということでございます。

それから、開示でございますが、先ほど上の二つだけ申し上げましたが、それ以外にもリスク管理方針の重大な変更を行った場合には、その変更の事実とその理由。それから保有区分の変更、すなわち、責準見合い債券から他の保有区分、例えばその他有価証券等への変更を行った場合は、変更の理由と振り替えた金額の開示。さらに、デュレーション調整以外の売買を行ったことにより保有区分変更を行った場合、その事実の有無、該当する小区分及び売買益で繰延べを行っているものがある場合には、当該金額というふうに、これだけの開示を求めますと、かなり恣意的な処理は難しくなるだろうということで、こういうような開示を追加することによりまして基準の実効性を高めることをしてはいかがか考えております。簡単でございますが、以上のような概要であれば、基本的に保険会社の特殊性を反映した会計処理という形で認めてもいいのではないかという暫定的なコンセンサスになっております。

以上でございます。

○ 倉澤部会長

どうもありがとうございました。

以上、報告書に寄せられた御意見及び日本公認会計士協会による検討状況について御報告をいただきました。一般からの御意見の中にもありましたように、本件につきましては、経営面あるいは会計事務・システム面の対応等が必要であることから、本部会として急に方向性を示しておく必要性があると考えられます。そこで、当部会としての考え方のとりまとめの文章を事務局に用意していただきましたので、まず、事務局より朗読をしていただいた後、これについて御審議をいただきたいと思います。

どうかお願いいたします。

○ 池田信用課保険企画室長

それでは、お手元資料の20-4というものでございます。読ませていただきます。


平成12年10月3日

金融審議会第二部会

保険会社における金融商品の時価評価の導入について(案)

金融審議会第二部会では、本年6月、保険会社会計に関する論点の整理を行い、金融審議会第二部会報告書「保険会社のリスク管理について(保険会社会計を巡る論点整理)」として公表し、幅広く一般の意見を求めたところである。今般、当部会に寄せられた意見を踏まえ、保険会社への金融商品の時価評価導入の在り方について検討を行ったところ、以下の結論に達した。

1.保険会社における金融商品の時価評価導入

平成11年1月に公表された企業会計審議会の「金融商品に係る会計基準の設定に関する意見書」に従い、金融商品の時価評価が導入されている。金融商品の時価評価は、金融取引の多様化・高度化等が進む中で、企業の財務の実態をより適切に財務諸表に反映することにより、企業会計の透明性・信頼性を高めようとするものであり、このことは、保険会社を含む金融機関に対して、より一層強く求められている。保険会社についても金融商品の時価評価を導入することの意義は大きく、時価評価の導入を先送りするという選択肢を採ることは適当でない。

2.保険会社の財務の特性

他方、保険会社のバランスシートをみると、一般の企業にはみられない財務上の特性があることも事実である。すなわち、保険会社では、負債の大宗を責任準備金が占めている。この責任準備金は、保険会社が保険契約者に対して負う極めて長期にわたる債務の履行を確実なものとするため、契約時に固定された予定利率に基づいて積み立てられることとなっている。また、このような負債面の特性に対応して、保険債務の支払能力の確保や経営の健全性確保の観点から、資産面においても、長期運用、とりわけ長期の債券を保有する割合が高いという特性がある。

こうした財務上の特性を持つ保険会社に、一般企業への適用を前提とした金融商品の時価評価の基準をそのまま適用した場合、負債側の責任準備金等の時価評価が行われない一方、資産側の債券は時価評価されることとなる。このため、資産・負債のデュレーション・マッチングが図られ、資産・負債の金利変動リスクが回避されていると考えられる場合においても、資産と負債の評価方法にずれがある結果、財務諸表上、資本の額が変動し、保険会社の真の財務状況が適切に反映されないとの問題が生じることとなる。

3.保険会社の財務の特性を踏まえた会計処理

従って、保険会社に金融商品の時価評価を導入するに当たっては、上記の問題を解消するための実務的な対応が必要になる。

当部会としては、保険会社にも金融商品の時価評価を導入し、その上で、保険会社の保有する資産のうち、明確なリスク管理方針の下で資産・負債のデュレーション・マッチングが図られ、金利変動リスクを回避する効果を有すると認められる債券について、保険会社の財務の特性を踏まえた会計処理を行うことが適当であると考える。

4.実務的なルールの策定の要請

なお、当部会としては、債券のうち、明確なリスク管理方針の下で資産・負債のデュレーション・マッチングが図られ、金利変動リスクを回避する効果を有すると認められるものの判定基準及びこれらの債券に係る具体的な会計処理の方法については、会計理論や会計実務との整合性等を踏まえ、日本公認会計士協会において検討を行い、実務的なルールが示されることを要請する。


以上でございます。

○ 倉澤部会長

どうもありがとうございます。

それでは、御意見、御質問等がございましたら、自由に御発言をいただきたいと思います。

池尾委員、どうか。

○ 池尾委員

私はこの案自体については賛成で、特に異議はないんですが、折角、山田さんが来られているので一つ御質問をしたいんですが、責任準備金のデュレーションに関して、それを計測するシステムを構築してということになっていますが、ここで要求されている責任準備金、全体でなく、それを幾つかのサブグループに分けて、それぞれについてですけれども、どのぐらいの精度のものを想定されているのかというのが質問です。

というのは、本当に完全に厳格に正確なデュレーションが測定できるぐらいであれば、責任準備金の時価評価ができてしまうのではないかというふうに思いますので、デュレーションがマッチングしている部分は両方簿価評価でなくて、本当に測定できるんなら両方時価評価にしてしまうというのも論理的には考えられると思うんですね。したがって、そういうのを含めて、どの程度責任準備金についてのデュレーションの計測で精度を要求されるのか、想定されているのかというところをちょっと伺いたいんです。

○ 山田公認会計士

デュレーション計測の精度を具体的にどの程度かと特定するのは、かなり困難だと考えております。まず、ここでデュレーションを用いたのは、先ほどもちょっと申し上げました、いわゆる時価の代替値ということなんですが、その時価の代替値としてのデュレーションを、私どもは個社が自社においてリスク管理をするに必要な程度の詳細度をもつものと考えているんですけれども、一方で個社によって余りばらつきがありますと、これの実効性がないということも考えております。

ただ、もう一つ難しいのは、キャッシュフローの見込みと、それを割り引くことになるわけですが、キャッシュフローの見積り等々において、いろんなシナリオを考えて計算されるんでしょうけれども、それ自体がどの程度整合性を持つのか。つまり、どの程度まで詰めていただかなければいけないかということについては、もう少し検討してみないといけないと考えております。最低限、自社の中でリスク管理のために使っているレベルはクリアしていただく。ただし、それではちょっと個社にばらつきがあるのではないかといううらみもございますので、その辺についてはもう少し詰めさせていただきたいと考えております。

○ 倉澤部会長

ほかにどなたかございますか。

鮫島さん。

○ 鮫島日本銀行参事役

一つ山田さんに御質問がありまして、教えていただきたいんですが、6月のこの報告書のマル3案に二つの選択肢が示されておりますね。それで、それにつきましては、先ほど御紹介のあった意見の中でも、そのマル3のi案とii案をそれぞれ支持する意見があったようですけれども、御検討の中で、このi案、ii案の選択の得失についても多少御議論があったのかなと思うんですが、結果的にi案。ii案をとらずにi案に近いi案を選択されたということだと思いますけど、その辺の得失の御判断について一端でもお聞かせいただければありがたいと思うんです。

○ 倉澤部会長

どうかお願いいたします。

○ 山田公認会計士

まず、第マル3案のリスク管理のための規準という考え方でございますが、6月の報告書の中でもはっきり書いてありますが、金融商品の今の会計基準が持っているヘッジ会計のための規準は、そのまま保険会社に適用はできないとされています。それで、少し平たい言い方をしますと、少し緩い中でヘッジ的な考え方を採用できるような規準はないだろうかというのが報告書のマル3案の前提になっていた考え方だと思います。この辺を考えたとしましても、ヘッジという関係は、ヘッジの手段とヘッジの対象という、この2者の損益が見合わっているかどうかという関係を常に追いかけていかなければならなくなります。会計的に言いますとヘッジという考え方はこのような要素を持つわけです。

つまり、ヘッジされる側の損益がいつ出るかによって、ヘッジしている側の損益を繰り延べて見合わせることが会計的にはヘッジ会計というコンセプトになっております。6月の報告書の中では、必ずしもそういう意味での、すなわち会計的なヘッジということを明確に意識されていたかどうか。必ずしもそうではなかったのではないかと私は理解しております。現実にヘッジ対象である責任準備金の損益と債券側の損益を見合わせていくということは、ほとんど不可能ではないだろうかということで、責任準備金と債券との関係は、どの程度見合ったものを持っているかという判定だけに使いまして、以後、債券側の損益というのはそのまま負債側の損益と見合わせることは基本的にしない。ないしはひも付け関係を特定するのは実務的にも難しいという判断に立ちまして、ただし、負債のリスクを何らかの形で削減するために資産を持っているわけですので、その関係だけは入口のところで捕まえて、あとは償却原価法という中で損益を見合わせて出していくプロセスを確保しようと、そういう考え方をとらせていただきました。

○ 倉澤部会長

坪井委員、どうぞ。

○ 坪井委員

私は手続の問題なんですが、今日、山田さんがおっしゃられたこと、公式には発表はできないということであったんですが、今回この要請をするわけですね、公認会計士協会へ。そうすると、そのときに、まとまって出てくるお答えは、今日のこのお話であるというふうに理解してよろしいでしょうか。

○ 倉澤部会長

山田さん、どうぞ。

○ 山田公認会計士

私はそのように考えております。今日はラフなアイデアだけでございますが、これをもう少し、いわゆる公認会計士協会が出す報告書の体裁に落とし込む中で、もう少し内容に加わるかもしれませんが、大宗はこれで変わらないと信じております。

○ 坪井委員

はい、ありがとうございます。

○ 倉澤部会長

今日の我々の部会としてこれが決まるといたしますと、日本公認会計士協会への要請というか、お願いは、結局、こういう基準に基づく具体的な会計処理の方法についてどうか検討をお願いしたいという要請ということになりますが、よろしゅうございましょうか。

ほかにどなたかございましょうか。

杉田委員、どうぞ。

○ 杉田委員

一つだけ気になるのでお伺いしておきたいんです。これはむしろここにオブザーバーでいらっしゃる生保の関係の方にお伺いしたいんですが、今の山田さんのお話ですと、関係業界の方も参加されて議論されているようですから大丈夫だと思うんですが、先ほどから事務当局の御説明にもありますように、アメリカよりも一歩進んだ時価会計を生保に適用するということのようでありますので、それがどういうふうに生保経営に影響するのかなということがちょっと気になるところであるんですが、今、山田さんからお話があったようないろんなことをやれば、影響は最小限にとどまるだろうという判断なのかなと、こう思っているんですが、その辺をちょっとオブザーバーの方から一言お伺いできればと。

○ 倉澤部会長

清水参考人、何かございますか。

○ 清水参考人

全体的にもともと生命保険業界が主張しておりましたのは、長期の保険契約に基づく将来の債務の履行のために積む責準に対応するものと、それに対応する債券の評価がどうかという点を申し上げてございました。今回、責準との見合いというふうな厳格な会計基準が定められる中ではございますが、長期性といった観点から債券の評価が入ったという点におきましては、非常に全体として受入れ可能な、また、適当な会計処理というふうに考えてございますので、逆にこの場を借りまして、我々の資産・負債構造の特性に立脚した会計基準の議論をいただいたことを感謝申し上げたいと思います。

○ 倉澤部会長

よろしゅうございましょうか。

それでは、この本(案)、「保険会社における金融商品の時価会計の導入について(案)」をもって、当部会における意見とりまとめとさせていただくことにいたしたいと思いますが、よろしゅうございましょうか。

〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○ 倉澤部会長

どうもありがとうございました。それでは、この(案)を取りまして、とりまとめとさせていただきます。

なお、この後、記者会見が予定されており、その際には本とりまとめを公表させていただきたいと思います。その他、本とりまとめの取扱いについては私に御一任いただければと思いますが、いかがでございましょうか。

〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○ 倉澤部会長

どうもありがとうございます。

ゲストスピーカーの山田先生、それから、参考人のお二人、どうもありがとうございました。

〔保険関係ゲストスピーカー退場〕

○ 倉澤部会長

それでは、終了の時間も予定を過ぎてしまいました。大変恐縮でございましたが、本日の審議を終了させていただきたいと存じます。

なお、この後、記者会見を行いまして、私の方からマスコミ関係者の方々へ、本日の当部会の模様につきましてお話をさせていただきます。

次回でございますが、個人信用情報保護・利用に関する制度整備について、引き続き当第二部会で御議論いただくことといたします。そこでの審議の進め方につきまして、事務局から説明をお願いいたします。

○ 有吉企画課長

本日、内政審議室の方から御説明いただきました「個人情報保護基本法制に関する大綱案」につきましては、先ほどお話がございましたように、「案」が取れ、「大綱」としてとりまとめられる。10月11日という目標であるというふうにお話がございましたが、これが出ました次第、事務局の方から委員の皆様方に御送付をさせていただきます。次回の第二部会では、その大綱を踏まえ、さらに個人信用情報保護・利用に関する制度整備について御議論いただきたいというふうに考えてございます。

先ほどの内政審議室の方の御説明にございましたが、現時点の大綱案、6月公表時点では、やや理念法的な「中間整理」というもので考えられておったそれと比較いたしますと、例えば、改善命令といったものを含む主務大臣の監督権限が明記される。業者の規制に係る一般法的な部分というものが入ってきて、そういった性格を帯びたものになってきているということでございます。

次回の会合におきましては、そうした性格であるところの「基本法」を前提として、さらに個人信用情報保護・利用に関して、どのような追加的な措置を講ずる必要があるんだろうかといったような点につきまして御議論いただければというふうに存じます。

日程につきましては、現段階では未定でございます。大綱が出ました後に、日程の調整をして、御連絡させていただきたいと思います。また、次回は、先ほどお話がございましたように、必要に応じて部会長の方からオブザーバーを指名して、参加していただきたいというふうに考えております。

○ 倉澤部会長

次回の審議の進め方について、何か御質問ございましょうか。

それでは、本日はこれにて散会させていただきます。

お忙しい中、御出席いただきましてありがとうございました。

(以上)

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