金融審議会金融分科会第一部会(第2回)議事録

平成13年11月29日
金融庁 総務企画局

○ 神田部会長

それでは、定刻よりまだ15秒ぐらい早いかもしれませんけれども、副大臣が若干遅れられるというふうに伺っておりますので、皆様大体おそろいでございますので、始めさせていただきます。

本日は、金融審議会・金融分科会第一部会の第2回目の会合ということで、これから開催させていただきます。

皆様方にはいつもご多忙のところお集まりいただきまして、厚く御礼申し上げます。

本日の進め方といたしましては、お手元の議事次第にございますように、2部構成というか、2つあります。まず前半では、ディスクロージャーWGからご報告をいただいて、それについて議論をしたいと思います。そして後半では、古賀委員から「ビッグバンの検証と今後の課題」ということでレポートをしていただきまして、それに基づいて議論をしたいと思っております。

本日は分科会長の蝋山先生にもご出席をいただいております。

それでは、早速ですけれども、議事に入らせていただきます。

まず最初に、ディスクロージャーWGでございますが、これは本第一部会の第1回目の会合で皆様方から設置をお認めいただきました。その後4回にわたり議論をしていただいております。その結果をお手元に「投資信託目論見書の記載内容の改善についての考え方」という形でおとりまとめいただきました。WGでは非常に短期間に集中的にご審議をいただきまして、厚く御礼を申し上げます。そこで、本日はこれについてご説明をいただきまして、その後、委員の皆様方からご質問とかご意見をいただければと思います。

それでは、WGで座長をお務めいただきました岩原委員、事務局双方からご報告をお願いできればと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

○ 岩原座長

それでは、ディスクロージャーWGの議論及び報告につきまして、まず、私、岩原の方から簡単に概要をご説明させていただきます。

10月3日の当部会の決定によりまして設置されましたディスクロージャーWGは、私を含め18人のメンバーで編成され、10月4日から2カ月間の間に4回の会合を開催し、投資信託目論見書の記載内容の改善等について検討してまいりました。

WGの議論を進めるに当たりましては、事務局から基本的なご説明をいただきまして、法律的な見地、目論見書の利用者の見地、作成者としての見地、そして消費者としての見地などから、各委員による目論見書の改善についてのご意見をいただいた上で議論を行ってまいりました。議論の結果、メンバーの意見が「投資信託目論見書の記載内容の改善についての考え方」として概ね集約されましたので、本日ご報告をさせていただきます。

改善内容は、基本的に、第1に、重要事項をよりわかりやすく、第2に、不要な情報の削除、第3に、グラフ等の使用や表現・表記の工夫でより読みやすくする、第4に、手数料引下げの環境整備、等の方向性でとりまとめられております。この第1の「重要項目をよりわかりやすく」というのは、投資家にとって重要であると考えられる事項のわかりやすいディスクロージャーの観点から、ファンドの目的、投資方針、リスク、運用体制等の重要事項の記載を明確化する。第2の「不要な情報の削除」という点は、全販売会社の固有名、委託会社の細かな情報等、ファンドの運用に直接的には関係のない事項については目論見書の記載事項からは削除するというものであります。第3の「グラフ等の使用や表現・表記の工夫でより読みやすくする」という点は、記載方法についてはわかりやすい表現・表記の使用、記載事項の配列等の工夫・見直し、グラフや図表の使用等により改善を図るというものでございます。第4の「手数料引下げの環境整備」というのは、手数料についてはその競争促進の妨げにならぬように上限を記載する方法に変更するというものでございます。

また、投資信託の継続募集における募集期間更新の際に、短期間のみ有効な定性目論見書が作成されている現状についても改善を図ることが提言されております。

なお、「投資信託目論見書の記載内容の改善についての考え方」において、目論見書の記載内容の改善に当たっては、当局による制度の改正に並んで、目論見書の作成者による工夫が大切であるとの点を指摘しているところでございますが、この点に関連しまして、記載方法の改善等に係る自主ガイドラインについては投資信託協会における整備を期待したいと考えております。

あわせて提出しております「投資信託目論見書の記載内容の改善に関する主な検討事項に係る意見等」については、集約にまで至らなかったものを含めて、WGの議論の過程で出されました各委員のご意見の要旨を内容によって整理したものでございます。

報告につきましては事務局の方から読み上げさせていただきたいと思います。私からは以上でございます。

○ 細田企業開示参事官

事務局を務めました企業開示参事官の細田でございます。お手元に報告であります「投資信託目論見書の記載内容の改善についての考え方」という縦長の紙と、各個別の意見を集約しました横長の「投資信託目論見書の記載内容改善に関する主な検討事項に係る意見等」の紙と2つございますが、その縦長の「考え方」の方を読み上げさせていただきます。表紙をおめくりいただいて、最初のページの「目次」をおめくりいただいて本文に入りたいと存じます。

(「投資信託目論見書の記載内容の改善についての考え方」を読み上げ。)

以上でございます。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

それでは、ただいまのご報告につきまして、ご質問、ご意見を皆様方からお出しいただければと思います。どなたからでも、よろしくお願いいたします。

○ 東委員

私も投資信託の目論見書を全部読んだことのない人間の1人として大変この考え方は大賛成なのですが、その上で幾つかお伺いしたいと思います。

1つは、4ページのところで、定量的な数値は誤解を招く中で、定説的な説明というときに、どういうような説明の仕方をご議論の中でイメージされているのかというのをお伺いできればと思います。

2つ目は、確かに、今、投資信託そのものをリスク度ということで5段階に分けていると思うのですが、そこで言うリスク度とここで言うリスクとの整合性をとる必要があるのかないのかというのが2つ目です。

3つ目は、これは質問ということではないのですが、私も考えていて知恵がないのですが、「リスク」という単語がもう少しいい言葉にならないかなというふうに常々思っておりまして、すぐに「危険」という単語に置き換わってしまうということで、何かうまい言い方があるとより広く投資家に訴える際に有効なのではないかなと、これは何かお知恵があればということでございます。

以上でございます。

○ 神田部会長

ありがとうございました。

○ 細田企業開示参事官

私の方からご説明をさせていただきます。

初めに、リスクということは、あるいは定性的なということで、どういうことをイメージしているかというお話でございました。これは、やはりファンドによりましてそのリスクの内容は違うので、それぞれファンドのまさに特性に見合ったリスクを個々に書いてもらうのが適当ではないかというような議論が多かったと存じます。パターン化すると、例えば信用リスクですとか、あるいは価格変動リスクですとか、あるいは外国為替リスクと、幾つかのパターンがあって、もちろんそういうものを排除するわけではありませんけれども、ある程度パターン化するということになると、逆にそのパターンだけ書けばいいのでしょうかということになるものですから、ある程度そのファンドのまさにリスクの特色ということを作成者の方でよく考えられて、そこを適格にむしろ個性に応じて書いていただいたらいかがかという議論が多かったように思います。

それから2つ目のリスクのランク分けでございますが、これはかつて、おっしゃるとおり、リスクを5段階ぐらいに分けてといいますか、リスクと安全との関係を5段階ぐらいに分けて投資信託協会の方で整理されておられて、それを使っていたという時期があったのですが、これは目論見書に入りましてからややそういうパターン的なものは今はやめてございます。それはこの場で特に議論したわけではございませんけれども、なかなかそういうパターン化ということがここで書かれていることに直結しているということでも、そういうものを直結させて今度はそれをまた復活させるとか、そういうような具体的な議論ではなかったというふうに承知してございます。

それから、最後の、「リスク」という言葉は議論の過程でもなかなか知恵も、この形になったということでございます。

○ 神田部会長

よろしゅうございますでしょうか。

「リスク」というのは、日本語としてはネガティブですかね、どうなんでしょうか。

○ 東委員

余談ですけれども、ある個人投資家の方に、これはリスクが高いですと言ったときに、利息が高いですと聞こえましたという1つの事例がありまして。それは極端な例なのですけれども、もう少しわかりやすい日本語で言えたらいいなというのを常々思っていて、私もアイデアがなくて、ただボールを投げただけなので、結構でございます。

○ 神田部会長

ほかにいかがでしょうか。

○ 蝋山分科会長

幾つかこの文章の中でも指摘があるのですが、内閣府令で記載されていることは、書けばいいのですか、書かなければいいのですか、それ以上書いてはいけないものなのですか。その辺がどうもこれを読んでいてよくわからないし、法律をよく知っている人はわかるのかもしれないけれども、恐らく普通の――そこにおられる新聞記者の皆さんも、これを読んで、何を言おうとしているのかというのがよくわからないのではないかというふうに思うのです、メッセージとして。

特に典型的なのは、ずっとお聞きして、8ページの「目論見書作成者における創意工夫」というところで、結論は、創意工夫を発揮できるようなものにしましょうと、これはよくメッセージとしては伝わるわけですが、パラグラフが分かれていて、前段のところは内閣府令の書き方について触れているんですね、それと後半の委託会社は頑張ってくださいよというのとどうつながるのか、1行空いているので何か文章が抜けているのかなと邪推したいぐらいなわけです。そういう点で、問題は、基本的に、目論見書というものは法律上で書くことを規定されている、義務付けられている、そのことがどういう意味を持っているのかということを書けばいいのか、書かなければならないのか、それ以上書いてはいけないのか、いろいろな内容のものがあって、その辺のところをはっきりさせないといけないのではないかなという印象を持ったのですけれども、僕の質問は間違えているでしょうか。

○ 細田企業開示参事官

済みません、第1問の目論見書の記載事項で、府令事項と実際に記載する事項との関係でございますが、府令事項は記載していただきたいということでございます。記載してもらわなければいけない、義務付けでございます。

それから、それと実際書くことの違いでございますが、これは6ページ目の下の方に、虚偽、誇張、重要な事項が欠けている記載、これはいかんということでございます。

○ 蝋山分科会長

それは当然でしょう。しかし、それ以外のことについて書いてはいけないのですか。

○ 細田企業開示参事官

こういう事柄でない事項については、まず届出書に追加してこれを書きますよということをお書きいただいた上で。つまり、届出書にもこういう追加的事項を書きますよということをお書きいただいた上で目論見書に記載することができるということでございます。

○ 蝋山分科会長

投資家にとってみると、どういうことなんですかね。投資家から見れば、目論見書だけを見て投資ができますかということです。

○ 細田企業開示参事官

ですから、目論見書の記載事項はまさに府令でこれだけ書けというふうに書かれておって、それにプラスして記載する場合には届出書においてその各記載項目に関連した記載事項を追加して記載することができるということでございます。したがって、目論見書に書いて、届出書の記載事項に関連する事項は追加して書くことができるということでございます。

○ 蝋山分科会長

ですから、ある種の大きな環境の変化があったと、それをどうしても書きたい、しかし届出書には書くとは書かなかったと、ずっと続いているファンドですね。

○ 細田企業開示参事官

それはまず届出書に追加していただいた上でということでございます。

○ 蝋山分科会長

何でそういうふうになっているのかさっぱりわからないのですが。では、目論見書だけを見て投資をしてはいかんのですな。

○ 細田企業開示参事官

そういう場合には、必要なことであれば届出書で訂正していただき、とともに目論見書も直していただくということになります。

○ 蝋山分科会長

何のためにこういうことをしているのかということが非常にわかりにくいんですね。そういう法律の構造はわかりました。しかし、売り手の側も非常に投資家指向型で、投資家に適切な情報をぴんぴん出そうと、時々刻々と。そういう観点からすると、非常にやりにくい仕組みにはなっていないんですか、それでいいんですか。そういう仕組みになっているということはわかりました。しかし、その仕組み自体の是非というのが僕にはちょっとわかりにくいのですが。

○ 細田企業開示参事官

目論見書はある程度定期的に出すものでございますので……。

○ 蝋山分科会長

だからこそ時々刻々定期的に出していただくものは必ず見ておいて、これを見れば基本的な情報は手に入るというふうになっていることが望ましいのだけれども、今のお話ですと必ずしもそうではないというふうに理解できるのですが、そうではないのですか。

○ 細田企業開示参事官

そこが7ページ目の一番下のところになるのですが、目論見書は定期的に出されるという性格のものでございますので、まさにおっしゃるように、いろいろその間における追加情報等の点につきましてはなかなか目論見書という世界では整理できないことがあって、それは、ここの下から2行目に、「投資家が追加的に情報が必要になったときに投資家が作成者側に容易にアクセスが行われるよう、投資信託協会等を通じた環境整備が必要であるとの指摘があった」ということで……。

○ 蝋山分科会長

これは投資家がオリジネーションを、イニシアティブを持っている投資家側のことを言っているわけですね。

○ 細田企業開示参事官

それで、環境整備というのは、投資信託会社、情報提供者側が、インターネットなり、あるいはその他の方法を通じて情報を提供するような環境整備をすべきであると、こういうようなご指摘でございました。

○ 蝋山分科会長

これだと僕だったら投資信託は買いませんね。なかなか買いにくいのではないかな。もう少し何とかならないのですか。

僕の理解するところは、僕が望ましいと考えるのは、届出書にしても目論見書にしても、これは必ず書くべき情報は必ず入っている、しかし、それに加えてそれぞれの売り手の側が投資家にとって大切だと思う情報も入っている、そういう性格のものではないかと。要するに、目論見書だけを見れば投資家は判断できるという性格のものであることが基本的に必要なのではないかというふうに思いますが、必ずしもそういう仕組みにはなっていないというふうに今の細田さんからの説明だと理解できるのですが、その私の理解が間違っているということですか。

○ 細田企業開示参事官

そういう意味で、投資家にとって重要だろうと思われる、ファンドの目的、基本方針、ファンドの仕組み等について、まさにそれは義務付けとして記載を充実していただきたいということで整理されているというふうに理解してございます。つまり、そういう投資家にとって重要な情報についてはより詳しく書きなさいということが、府令上も義務付けるようにという報告になっているというふうに理解しております。

○ 蝋山分科会長

ちょっと僕が言っていることと受け取り方が違うらしいので。

○ 神田部会長

私がしゃべるのがいいかどうかは……、岩原先生に。

私の理解では、蝋山先生のおっしゃるとおりです。ただ、話がやや複雑なのは、まず、届出書と目論見書というのは最初に募集するときの書類ですね。ですから、それを買った人は、あとの追加情報等は報告書ということで別の制度になっているのですけれども。しかし、オープン・エンド型で継続募集をしてというような場合には初めて買うわけですからそこで届出書を使うわけですけれども、基本的な考え方は、法律は最小限を決めて、それから、書いてはいけないことも別途ありますけれども、先ほどご説明があったように、最小限を超える部分を書くことはおっしゃるようにそれぞれの創意工夫なんですね。ただ、二重になっているものですから、届出書と目論見書という二重構造になっていて、届出書は間接開示ですから公衆縦覧で、目論見書は直接渡しますね。従来は両方ほとんど同じ内容にしていたのですね。今回それは……、届出書というのは正式の書類でレポートみたいなもので、目論見書は、エグゼクティブサマリーとは言いませんけれども、そんなに簡単なものではないのですけれども、届出書は届出書で従来は詳細なものであって、それを、直接渡す目論見書はもう少しわかりやすいふうにしましょうというふうに変えたわけですね。

ですから、エグゼクティブサマリー等の学術論文というような読んでもよくわからない--読んでもよくわからないと言っては失礼なのですけれども、その性格、目的に応じて目論見書の方はわかりやすいものにしましょうということであって、その結果、ただ、両者の関係であって、次に募集するときに状況が変化していれば当然内容は変えなければいけないのですけれども、それは目論見書だけを変えてはいけないので、やはりその場合は届出書もちゃんと変えて、その枠内で目論見書も変えるという。したがって、両方書類があるからちょっと両者の関係を、先ほどご説明されたように、簡単に言うと、届出書に書いてあることを目論見書に書いてくださいという関係になっているのだと思うのですけれども。ただ、基本的な思想は先生がおっしゃったとおりで、届出書にせよ、目論見書にせよ、法律がこれは書かなければいけないということは一律に決めていますけれども、それを超える部分についてわかりやすく書くというのですか、特に目論見書についてはより柔軟にしましょうというのが今回のフィロソフィーだと思いますけれども。

○ 岩原座長

私もよく理解しているかどうかわかりませんけれども、基本的な性格は今神田さんがご説明されたとおりですけれども。この届出書にしろ、目論見書にしろ、必ず出すときには当局のチェックを受けることになっておりまして、かつ、誤解を与えるといけませんので、余計に書くということは一方で誤解を与える危険も出てくるものですから、それで一応大枠は法律で決めている。しかし、一切余計なことを書いてはいけないとか、決められていることだけしか書けないというものではなくて、それは一定のアローアンスが与えられた上で、まさにそれは内閣府令の書き方によると思うのですけれども、一定の枠内でそれを書くということは当然可能なことだと。それを期待しているがゆえに、投資信託協会に自主的な努力をお願いしたいということも書いているというふうに私は理解しています。

○ 蝋山分科会長

済みません、ちょっとしつこいようで。

そうすると、8ページの先ほど指摘させていただいた(2)は、「したがって」というよりも、一層努める必要があるということではありますが、そういう努めることができるような内閣府令にしましょうと、こういうことですか。

○ 岩原座長

そのようにご理解いただければよろしいかと思います。

○ 蝋山分科会長

それならわかるのですが。

それからもう1つ、投資信託協会が云々というのは、どうも僕は余り気に食わないのですけれども。僕は自主規制論者ですけれども、こういう情報の提供とかそういうところについては、やはりそれぞれの創意工夫というのはもっとストレートに実現させた方がいいと。例えば目論見書のデザイン1つとってみても、日本のデザインのレベルというのは、一般的には高いけれども、こういう書類のデザインについては極めてレベルが低いですよね。そういうようなことを考えてみれば、余り投資信託協会で統一のルールをというのはまずいのではないですか。

○ 岩原座長

私も基本的にはそのとおりだと思うのですけれども、1つ懸念されるのは、どうしてもディスクロージャーの場合には、さっき言いましたように、誤解を与えるような内容になったり、保険業法などが定めておりますけれども、まさにいわば他を誹謗中傷するような内容にわたるようになったり、いわば不公正な競争に至るようなディスクローズがなされることは望ましくないと。そこで、独禁法的には公正競争規約というものを定めて、公正な競争がなされるようなディスクローズをしましょうということになっております。本当は私はそれと同じようなことが投資信託協会その他で行われることが望ましいと思っているのですけれども、なかなかどうも現状ではそこまでいかないようですので、その一歩手前として、そういう形で、不適性な開示、いわば競争上好ましくないような開示がなされないようにするということで、投資信託協会というところが一応一定の役割を果たすということが期待されているというふうに私は理解しております。

○ 神田部会長

よろしいですか。

○ 蝋山分科会長

もうやめます。

○ 神田部会長

やめていただく必要はないですから。まだ時間的余裕はございますから。

それでは、古賀委員、お願いいたします。

○ 古賀委員

今のに少し関連して、最後に少しお願いしようと思っていたのですけれども。

確かに内閣府令のつくり方というのはあると思うのですが、もう1つあるのは、非常に実務的ではありますけれども、目論見書の作成過程を考えますと、結局はファイリングという形をしますけれども、これは恐らく財務局に対してファイリングする。そのときに、今、岩原先生がおっしゃいましたけれども、余分なことをどこまで書いていいかというのは、これは実は非常に主観的な判断でありまして、最低要件だけ具備した形に、ということは、投資家にわかりやすくという工夫のつもりでやったことが余分なことを書いて誤解を与えるかどうかというのは非常に主観的な判断でありまして、恐らくそこのところ、どちらかというとこういう流れを促進するためには、どっちに行った方が本当にそういう流れになるのか私もちょっと逡巡する部分があるのですが。

したがって、フロントのところをリジットに縛ってくださいというのがいいのか、縛らないでくださいというのがこの流れを加速するのか、正直言うとちょっとわからない部分があるのですが、いずれにしてもその最前線のところでこういう自由な工夫の余地を残す工夫というのをよろしくお願いしたいなと。現実に言いますと、やはり今までの事例を見ていましても、この改正前ではありますけれども、この内閣府令等々に書かれているのに加えて、という動作をするときに、実は非常に実務上はスタックするケースがあったという事例も散見されますので、せっかくこういう動作をするわけですから、ぜひそういう実務のところの、端的に言うとしつけ方とでも言うんでしょうか、そこらあたりをひとつよろしくお願いしたいなと思います。

○ 神田部会長

ありがとうございました。非常に重要なご指摘で、証券取引法の強制ディスクロージャー制度の根本に係る部分なのですけれども、相当部分が運用にも依存しますので、おっしゃるとおり難問なのですが。

○ 首藤委員

私もWGのメンバーなものですから、ちょっと事務局の方にお伺いしたいのですが。

具体的な目論見書の内容――前の古いタイプと新しいタイプですが、項目や何かを具体的に組み替えたB4版の紙があったと思うのですけれども、あれは非常にわかりやすくて、古いタイプ、新しいタイプというので、私はいいと思ったのですが、あれをきょうは配布されていないというのは何か理由があるのでしょうか。

○ 細田企業開示参事官

済みません、あれは、ほかの方もいらっしゃるのでちょっと解説いたしますと、WGでこの報告を検討していただく過程で、この報告書の中にも府令という文言についてこうしろああしろというふうにご意見を賜っておるのですが、そういうご意見をいただく際に参考にするものということで、その時点において私どもがどういう府令のイメージを持っているかということを表の形でお示ししたのでございます。きょうそれをお示ししなかったのには別に深い理由はないのですけれども、きょうは報告書の仕上げということで、その府令自体のご説明でないということでそれを省略したわけでございますが、基本的にその流れが変わったということではなくて、きょうご承認いただければ近々府令案そのものをパブリックコメントにかけたいと思っておるものですから、きょうは時間の関係もあってそこは省略させていただいたというだけでございます。

○ 首藤委員

それから、さっきの投資信託協会による自主ガイドラインのところで一言つけ加えさせていただきたいのですけれども。

なぜこういうことをここに取り入れたかというと、私の考えは、同じ内容のものを違う言葉で表現しているので非常にわかりにくいと、投資家が比較しにくいというようなケースが出てくるのではないかと、現実にそうだと思いますけれども、ですから、何かそういう比較しにくさというものを投資協会でガイドラインという形でお考えいただきたいと、そして、商品の比較可能性というものをなるべく投資家の側が容易にできるようなそういう意図でやっていただきたいということでございます。

○ 神田部会長

ありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。

よろしゅうございますでしょうか。

そうしましたら、どうもありがとうございました。

それでは、ただいまのディスクロージャーWGからのご報告でございますけれども、これをここで第一部会としてご承認いただければ大変ありがたいと考えておりますけれども、ご承認いただけますでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。岩原座長を初め、WGの皆様方には大変ありがとうございました。

それでは、次の議題に移らせていただきたいと思います。

冒頭にも申し上げましたけれども、本日はあらかじめ古賀委員にお願いをして、レポートをしていただくことになっております。証券業に携わっておられる実務の観点から、証券ビッグバンとでも言うのでしょうか、それで講じられました各種の改革を振り返りつつ、今後の課題とか展望などを含めて、「ビッグバンの検証と今後の課題」というテーマでレポートをしていただきまして、その後、委員の皆様方からご自由にご議論をいただければと思います。

なお、事務局でも若干資料を用意しているということですので、これについても簡単にコメントしていただきたいと思います。

順番としては、まず事務局に簡単にご説明していただいて、その後に古賀委員にレポートをお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○ 大森調査室長

お手元の「証券取引審議会報告の実施状況等」、この資料はいわば目録のようなものでございまして、この証取審時代からお願いをしている委員の皆様はよくご案内のことでございますが、いわゆる日本版ビッグバンの中核となったこの9年6月の報告は、改革の全体像を3つに分けております。魅力ある投資対象、信頼できる効率的な市場、顧客ニーズに対応した市場仲介者という形で提示をされております。法律の施行時期は基本的に平成10年12月といたしておりまして、法改正を要しないものはもちろん前倒しで実施をいたしましたし、手数料の完全自由化とか銀行の証券子会社業務の完全自由化などは若干の経過期間を設ける形で実施をされております。また、その後の、ETFとかREITとか金庫株とか、あるいは今臨時国会でもストックオプション拡充といった動きも皆様ご承知のとおりでありまして、こうした一連の動きを踏まえて今何ができるかといった観点で並べてみたものが、前回ご説明いたしました、証券市場の構造改革プログラムでございます。

ちなみに、この平成9年6月の報告で、ディスクロについては、まさに今蝋山先生がおっしゃいましたように、ルールに書いてあることだけ書けばいいというものではないと、おのおのが創意工夫して商品の魅力なりを積極的にアピールしていくことが望ましいという考え方が示されていたわけでございます。もう当時からそういう考え方で証券取引審議会では蝋山先生におまとめいただいたので、先生が先ほどのようなご質問をされるのは非常によくわかるのでございますが、ただ、これ自体が法律事項でないものですから、やはり現場で実際につくっておられる方は、古賀委員のおっしゃったような、書いていないことを書くということに対する躊躇みたいなものがどうしても出てきてしまうのではないかということかと思います。そういった精神のようなものもルールの見直しにあわせて私どもとしてもアピールをしていく必要があるのではないかと思います。

それで、これは目録でございますので、目録を平板になぞっても貴重な時間がもったいないですから、むしろこういった改革の中で市場のメインプレーヤーとしてどう取組み、そして今何が課題なのかという古賀委員の報告をいただきまして、それを踏まえてまたご議論いただければと存じます。よろしくお願いいたします。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

それでは、古賀委員、よろしくお願いいたします。

○ 古賀委員

それでは、平板な文字よりは若干グラフの方が見やすいかと思いますので、この資料に沿いまして若干お話しさせていただきたいと思います。

まず最初に、この日本版ビッグバンというのは何かということについての確認でございますけれども、これはもう皆様方ご承知のとおり、96年の11月、当時の橋本総理が発表されました「我が国金融システムの改革」、ちょうど「2001年東京市場の再生に向けて」と副題がついていたと思いますが、いわゆるビッグバン構想を契機として動き出しました改革の総称でございます。この構想は日本の金融市場をニューヨーク、ロンドン並みの金融市場として再生させるという目標に向けて、市場全体の構造改革を成し遂げ東京市場の活性化を図ろうというもので、目標実現のための課題として、市場の改革と不良債権処理の2つが挙げられていたと思います。この市場の改革につきましては、フリー・フェアー・グローバル、この3原則に基づいて取り組むということが明示されておりました。

お手元の資料の1ページにございますように、この日本版ビッグバンは、その目的として、利用者の利便性の向上、日本市場の活性化、日本の金融業の機能強化の3点を挙げておりました。国民に魅力ある多様な投資商品を提供するとともに、リスクマネーを効率的かつ積極的に供給して、日本企業の発展を金融面からサポートしようというものであり、直接金融の機能を強化することが大きな柱であったと思います。そのために、証券市場に関する規制を緩和し、競争を促進することによって証券市場の魅力を拡大させようと、こういうふうにしようとしたものであると私は理解しております。

ビッグバンによる制度改革、これは先ほどの副題にもありましたように、2001年3月末までをターゲットにということで縷々実施されてきたわけですけれども、この間、現象面で具体的にどんな変化が起こったかというのをざっと外観してみたいと思います。

まず、金融商品の多様化であります。資料2ページ目にございますように、外貨建て預金、外貨建てMMF、上場型投信でありますETF、私募投信、各種デリバティブズ、J-REITなどの証券化・流動化商品の登場、これが示しますように、一連の規制緩和が運用商品の多様化を進め、顧客の多様なニーズに合った商品提供が可能となった、このように言えようかと思います。それらのボリュームを示しましたのが資料の3ページ目、4ページ目、5ページ目、このあたりでございます。

ビッグバン後の変化の2点目といたしまして、6ページに示しましたように、取引手法の多様化が進みました。7ページ目にございますように、98年12月に市場集中義務が撤廃されましたために株式の取引所外取引が拡大し、東証の売買高の1割前後が取引所外で行われております。また、8ページ目にあります「貸株市場の拡大」というのも、取引手法の多様化をもたらした1つの要因であるというふうに思います。

ビッグバン後の変化の3点目といたしまして、9ページ目以降で、証券ビジネスにおける競争の活発化の状況を見てみたいと思います。10ページをごらんください。98年12月に証券会社は免許制から登録制に変わりましたが、この制度変更の前後から証券業界には新規参入が相次いだことがおわかりいただけると思います。その一方で、既存の会社の退出も進んだことから、証券会社数は全体としてはほぼ横ばいで推移しております。また、競争の激化と厳しい環境があいまって、証券業界ではリストラが進展いたしました。11ページにお示しいたしておりますが、証券会社の店舗数・従業員数は、いずれも90年代初頭のピーク時と比較いたしまして大幅に減少いたしております。また、12ページにございますように、証券業界の再編も進みました。

次に、手数料の自由化に伴って手数料が低下したことも大きな変化の1つであろうかと思います。13ページでございますけれども、個人分野では、手数料自由化後、従来の固定手数料率に比べ、手数料率が対面取引で1~2割、通信取引で3~4割、オンライン取引で6割強低下いたしております。中には、オンライン取引で、従来の手数料率の1割以下の水準に設定している証券会社もございます。14ページ目には、機関投資家向けの手数料を示しております。手数料自由化によりまして、利用者にとってはみずからの望むサービスをそれに適したコストで享受することができるようになったというふうに言えようかと思います。

新しいサービスに関しましては、オンライン取引の急速な拡大も挙げられると思います。

15ページ目で確認してみたいと思います。オンライン取引口座数は250万口座を突破する規模にまでなりました。また、16ページ目にございますように、個人の株式売買代金に占めるオンライン取引の比率は、2001年9月にはおよそ5割――これはアメリカの水準よりも高いと思いますが、こういう水準になっております。また、17ページ目でございますけれども、 銀行の投信窓販の大幅な増加の状況、これもビッグバンの大きな所産の1つであるというふうに思います。

次に、市場間競争の活発化という点について簡単に見てみたいと思います。18ページをごらんください。これはビッグバンによる制度改革が直接もたらしたものではございませんが、ビッグバンの背景、なかんずくグローバル化の進展が大いに後押しした所産であるというふうに考えます。19ページ目にありますように、新興企業向けの株式市場がぞくぞくと新設されまして、ベンチャー企業にとり選択肢は大いに広がりました。また、皆様方はご承知のとおり、本年に入りまして大阪証券取引所、東京証券取引所が相次いで株式会社に組織変更を行っております。広い意味でのビッグバンの結果としての競争が、証券会社間にとどまらず、取引所の市場間競争も活発化した、このように言えようかと思います。

以上、ビッグバン以降の変化をいろいろな角度からごらんいただいたわけですけれども、制度面では規制緩和、自由化が進み、確かに新たな商品、新たな取引手法の登場、証券ビジネスにおける競争の活発化などなど、目に見える形で変化を起こしつつあると言えようかと思います。しかしながら、20ページにございますように、日本版ビッグバンが目指した大目的、すなわち、冒頭申し上げました、個人金融資産を有効活用し、新しいマネーフロー構造の変革をもたらすという点について言えば、まだまだ道半ばというのが実感でございます。

資料の21ページ~23ページは、東京市場の時価総額、株式売買代金、上場企業数を他の主要取引所と比較したものでありますが、ニューヨーク、ロンドン市場との差は縮まるどころか、残念ながらかえって拡大してしまったという状況にございます。資料24ページ~27ページは、個人の資産構成に関する資料でございますが、これをごらんいただくと、個人の株式投資は低調に推移し、90年代を通じて、個人金融資産の商品別構成には大きな変化がないということがおわかりいただけるかと思います。

金融ビッグバンによる制度改革はことしの3月末で一応の区切りをつけております。フリー・フェアー・グローバルの理念、とりわけフリーについては大きな成果を上げまして、証券市場における競争の促進は大いに進んだというふうに思います。しかしながら、間接金融に過度に依存する金融構造からの脱却という目標については、達成にほど遠い状況にあると言えます。市場の拡大、特に個人投資家の市場への参加は余り進んでいないというのが実情であります。相場が低迷しているといった要因もありますが、個人金融資産の過半が預貯金にとどまり、企業の資金調達構造も銀行借入中心という状況はビッグバンの前後でほとんど変化していない、この事実は真正面から認識しておく必要があると思います。

なぜビッグバンにより大幅な制度改革を行ったにもかかわらず市場構造に大きな変化が生じなかったのか、これは非常に難題でございまして、現時点、私自身は明確な答えを持っているわけではございません。銀行が信用リスクに見合った貸出スプレッドを要求するといった経済合理的な行動をとらないケースがしばしば見受けられ、企業側から見て間接金融に依存するメリットが大きいという指摘をされる方もいらっしゃいます。また、銀行の不良債権問題への対応のために公的資金が投入されているわけですが、その結果として市場メカニズムが有効に機能せず、オーバーバンキングがなかなか是正されないことが原因であると指摘されることもあります。

しかし、以上のようなことだけでは十分に説明できないようにも思います。昨年4月以降、郵便貯金が大量満期を迎えたわけでございますが、結果的には大部分の資金がそのまま継続され、資金シフトは余り起こっておりません。国民の大部分は現状に満足しており、リスクをとって運用することを望んでいないのかもしれません。このように、実にさまざまな意見があり得るわけですが、以下、3点だけ私の意見を述べさせていただきます。

第1に、我が国では間接金融中心のシステムが長く続いたこともあり、銀行等の金融機関に比べると証券会社や株式市場が一般の個人にとってまだまだなじみにくい存在であるといった事情があると思います。私どもといたしましては、営業姿勢の転換、すなわち、顧客の資金、性格、ご意向に沿うような適切なアドバイスを行い、資産管理型の営業を推進していくですとか、先ほどもございました、ディスクロージャーをより一層充実させるですとか、投資教育を推進するといったことを通じて、証券市場に対する投資家のご理解を深めていただき、直接金融と間接金融のバランスのとれた市場構造への転換を図るべく努力をしているところでございますが、その意味ではまだまだ努力が足りないのかもしれません。

証券取引審議会の前の報告書で、市場の再生において最も基本的なことは、我が国の仲介者、企業、投資家、この3つが新たに獲得した自由をどう活用するかである、自由で効率的な市場の枠組みが真の活性化をもたらすかどうかは最終的には市場参加者の行動にかかっている、こういう指摘がございました。自分たちでできることは今後も継続して努力してまいる所存でございます。しかし、証券市場に対する国民の意識を変えていくこと、言葉を変えますと、やはり根強い偏見を取り除いていくということはなかなか難しい作業であるというのも正直な実感でございます。例えば、昨今も議論が若干出ていますが、株をやっていない、もっと言えば、株を持っていないことがクリーンであることの象徴のような発言を公的なお立場の方が折々に触れてなさることがございます。このような事実がまさに直接金融市場の機能についての社会的認知が進んでいないことを示しているのではないかと思います。こういう基本的なところの意識改革を進めるための具体的な努力というのを継続していく必要があろうかと思います。

第2に、金融システムを直接金融と間接金融のバランスのとれた市場構造に転換していくというためには、制度改革や規制緩和を行う際、単に制度上の手当てを行うだけではなくて、それに関するインフラ整備を平仄を合わせた形で図るということが重要だと思います。例えば、株券・債券のペーパーレス化の早期実現など、これは証券市場関係者の諸施策が実効性を上げるための重要な前提であるようにも思います。また、その観点から申し上げると、制度の手当てと平仄を合わせた形で税制面での手当てを行うことが極めて重要だと思います。やはり個々人の行動というのは、マクロの政策的目的のためには個々人は動かないというのが私の実感でございます。正直申し上げて、どうも我が国の場合こういうところが不得手だなという感じがいたしております。例えば、グローバル化の進展は不可欠だというのは認めながらも、非居住者との間の現先取引の源泉徴収が今も問題の俎上に上がっているという現実を見るにつけ、その感を否めません。マクロベースでの資金シフトの転換を本気で図るのであれば、その意思をもっとわかりやすく税制においても示す必要があるのではないかと思います。

最後に、3点目でございますが、市場育成と透明度向上のために市場を効果的に監督する仕組みづくりについても、この機会に検討していただいてもよいのではないかなと思います。最近、日本版SECの創設といった議論も行われております。この議論に対しましても、こういうコングロマリット化する時代に証券だけを取り出した監督体制を採用しても、必ずしも十分に機能するのかという議論も片方にあろうかと思います。市場の公正さを担保するためには監督体制を強化する必要があるわけですが、1つの考え方としても、その際、イギリスのように、自主規制機関の検査・監督機能をむしろ金融庁、監視委員会に統合するといったことも1つの方法だという見方もあろうかと思います。

それから、そういうことに対する姿勢として最近感じましたのは、SECが最近セルフ・エンフォースメントとかリアル・タイム・エンフォースメントということで、問題を起こさないような体制を整え、問題を迅速に是正、報告する業者に対しては、むしろ罰則を緩和していくというような方針を打ち出していることも参考になるのではないかと思います。SECのピット委員長は、こうした体制はより少ない人数でより迅速なエンフォースメントをすることに資すると説明しているそうでありますが、日本も現状の人員の強化を検討すると同時に、そうした工夫を導入することを通じて公正な市場の確立を目指すといったことも1つの検討課題ではないかというふうに思っております。

本日はこの日本版ビッグバンの検証ということでざっとさせていただきまして、大変とりとめのない話になって恐縮ではございますが、いずれにいたしましても、先ほど来申し上げているような現状の中で、市場の構造改革が進まないのは何が原因なのだろうかという議論をした上で、それに対応していくにはどうしたらいいのだろうかというのをこの時点でこういう場でご審議していただけるというのは、そのこと自体が非常に重要なのだと私は思います。本日は問題提起みたいな形で大変恐縮ですが、以上でございます。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

それでは、ただいまレポートいただきましたご説明といいますかご報告を踏まえまして、皆様方からご自由に、ご質問でも結構ですけれども、どちらかというとご意見になると思いますけれども、残りの時間はそれをお出しいただいて議論をさせていただきたいと思います。どなたからでも、どうぞよろしくお願いいたします。

○ 福間委員

直接金融、間接金融のバランスがとれた金融・資本市場へと転換するという話に関連して少々お話申し上げます。日本の直接金融は一昔前と比べて、相当に進んだと思っています。現在の間接金融、すなわち銀行システムそのものが必ずしもスムーズに動いていない中で、企業金融が何とか動いているのは、コマーシャル・ペーパーや社債の発行による直接金融があるからだと思います。直接金融が、そのままイコール、エクイティファイナンスではありません。現在のエクイティファイナンスの動きとしては、過去の清算ということもあるかもしれませんが、金庫株を用いてトレジャリー・ストック・オペレーションを行うというむしろ逆方向に進んでいます。従って、これは“ディスファイナンス”と言った方がよいかもしれません。この動きに対して、企業サイドも80年代後半期エクイティ・ファイナンスに偏りすぎたことを反省をしなければいけないと思いますが、一方で、証券会社もエクイティファイナンスを必要以上に煽りすぎたということもあるかと思います。いずれにしても、現在のエクイティ・ファイナンスの状況は、市場参加者全体で解決しなければならない問題だと思います。

私のような市場を利用する立場から言うと、平成8年の「適債基準と財務条項の撤廃」が直接金融に与えたインパクトが非常に大きく、ビッグバンを始めた時と比べると、企業金融が随分変わったと思っています。もしこれらの撤廃がなされていなかったら、BIS規制下における企業金融は非常に難しい状況になったと思われます。だからこそ、現在の発行残高を見ると、社債発行額が非常に大きな金額になっているわけです。直接調達といった場合にその手段としては、社債やコマーシャル・ペーパーなど、また、エクイティ・ファイナンスということでは、時価発行、転換社債、ワラント債などもある中で、エクイティ関連が、企業業績が悪いこともあり、それほど活性化していないということは誠に残念だと思います。企業の状況によってそれぞれ異なることと思いますし、レシオから見て今の株価が安すぎるとは一概に言えないのですが、平均的には、現在のような状況ではエクイティファイナンスが活発に行われるとは思いません。従って、やはり市場のインフラ整備をやらなければならないのですが、市場参加者が、それぞれに努力しないとエクイティファイナンスの復活というのはなかなか難しいと考えます。企業価値の拡大は企業の責任であり、株式の需給バランスを保つことも考慮に入れ、株数を減らすというのも必要なことの一つでしょう直接金融の状況がかなり改善されてきたといっても、今の状況に必ずしも満足しているわけではないということかと思います。

「ビッグバンの功罪」の「功」として言えることに、一つ目の点として「オフバランス取引の発達」を促したことが大きいと思います。と申しますのは、例えば金利スワップを活用することで、固定金利の社債を出した後に、金利が下がると思った場合でも、それを固定から変動に切り替えることが出来るわけですが、社債が発行できるからこそこのような取引も大きく発達させることが出来たわけです。そのような中では、短期調達とか長期調達という区別をすることなく、LIBORベースに集約され、非常に使い勝手のよい状況になっていると思います。

二つ目の点は、来年の「ペイオフ解禁」の件ですが、延期なく実行されることは確実だと思っています。これによりリスクがより明確になってくるわけですが、今の日本にはあまりに「リスク・プロファイル」というものがありません。最近ではマイカルの問題に代表されることですが、格付けとリスク・リターンが不明確で、誤ったプライシング設定や業績見通しの誤りなどということが起こっており、その結果投資家が被害を受けたケースが出ています。特に今週に入って、いわゆる信用リスクが非常に高まってきておりますが、そういったリスクに対する考え方は市場の中、すなわち直接調達を通じてとか、格付けをベースにしてのリスク・リターンの考え方の定着、ペイオフを実行すること等から育ってくる考え方だと思います。もちろん一切の事故なしに“賢い一般投資家”が育ってくることが一番いいわけですが、各々自己責任の下に、事前にリスクをコントロールしながら金融資産運用を行うということが必要だと思います。

三つ目の点としましては、一般投資家の“自己責任”の時代に最も重要な「ディスクロージャーの問題」ですが、現状は改善すべき点が多いと思います。私が国際会計基準の委員をしているから言うわけではありませんが、金融ビッグバンの時は、会計ビッグバンが一つの大きな柱だったわけです。格付けや株価というのは基本的には適正な会計制度に基づき監査され、適正なディスクロージャーによって反映されるものであります。だからこそ、市場に規律が働くわけです。最近の金融機関を始め、日本企業全般のディスクロージャーの姿勢にいえることかと思いますが、時宜を得たディスクロージャー体制にはなっていないようで、大きな損失などが特別損失ということで突然にディスクローズされることが頻発しております。これはやはりディスクロージャー制度そのものに不適切な面があるわけですから、日本の会計のスタンダードに改善を要する点があるのだと思います。ただし、昨今ではかなりグローバルの制度に近づいてきており、日本における会計ビッグバンも、ややペースが遅いと言うことはあるものの、大体八合目ぐらいまで来ているのではないかと考えています。市場というのは、ディスクロージャーなしには成り立ちません。開かれた市場を作り、一般投資家を守るというのはディスクロージャーしかないということを、市場関係者全員、その仲介業者も含めて肝に銘じなければならないのでしょうか。現状、この精神がやや不足していると思います。

「監督規制の問題」に関してですが、現在経団連でも、その組織として英国FSA型か、米国SEC型かなど、いろいろと議論をしております。まだどちらがどうだとは申しませんが、一つだけはっきりしていることは、業界規制ということではなくて、市場で自己規律を働かせる仕組みが必要だということです。証券会社であろうが、銀行であろうが、一般企業であろうが、それぞれが適切にディスクロージャーを行い、それに基づき一般投資家の判断をあおぐということがポイントです。従って、業者規制的な機能と市場の監視・育成機能というのは分離したほうがよいということです。

そういった意味で、現在まだいろいろな考え方があり、正確に人数を数えたわけでもありませんが、経団連の内部での話においては、どうも米国SEC型を志向される人がやや多いという感じを受けています。市場監視のあり方の端的な例としては、今回アメリカで起きたエンロンのケースで、SECがディスクロージャーの不備を指摘して問題が表面に出てきたことです。会計基準に則ったディスクロージャーが適時・適切に行われていれば、投資家の8割ぐらいは事故から回避可能であろうと思います。従って、市場監視の担当部署がどのような組織になるかどうかなどという議論ではなく、市場監視する機能を市場参加者、とりわけ一般投資家の視点で、どのようにディスクロージャー体制を整備し、それを通じていかに市場監視し、結果投資家が安心して市場参加できるようにするかを議論することが重要です。市場監視の組織のあり方は、基本的にそれぞれの国の特性を勘案してベストチョイスをとればよいと思うので、ここで結論的な意見を申し上げるつもりも、また見識もありませんが、ただ、歴史的な背景や日本の市場の成熟度から考えると英国のFSA型というのはやや早すぎる感じがします。

最近よく銀行の方に、90年の初めと10年経った現在とで銀行業の収益構造がどのぐらい変わったかということを尋ねております。日本の銀行を比較すると、アセット・アキュミュレーションの重点の置き方が一番違っていると思われます。別の言い方をすれば、銀行のビジネスモデルを変えていかなければならないということです。銀行経営の基本は、資産の「多様化(Diversification)」と「流動化(Liquidity)」を如何にバランスをとりながら資産取得するかということではないでしょうか。手法としては、証券化があり、あるいはシンジケート・ローンなど、引き受けた後に部分的に譲渡する(パートアウト)というような方法もあり、結果ローン資産が金融商品に変わるということも起こり得るわけです。リスクリターンがはっきりしていれば、資産を市場から買うことと貸出しとは全く同じことです。日本の銀行でも、そのような対応をしている銀行が一部には出ています。企業とのローン交渉をする人件費がもったいないと考え、ローンを出す代わりに社債市場から当該企業の社債を買う、しかもセカンダリーを買うというような動きが起こるわけです。それが流動化の推進ということだと思います。従って、繰り返しますが、やはりビジネスモデルを変えていかなければいけないということです。

何故こんな話をするかというと、証券業でも同じだと思うからです。証券業のビジネスモデルをインベストメントバンク化するなどして収益の多様化を行わないと、現在の日本の証券会社の株式等の仲介手数料のみでは収益レベルが低迷するだけです。これは銀行とか証券とかいう問題ではなくて、日本の金融システムをどのように変革していくかという問題だと思います。何も海外の事例や制度をそのまま何でもかんでも日本に持ち込めばよいということではなく、少なくともそれらを比較対照してベスト・プラクティスは積極的に採り入れる必要があります。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。大変貴重なご指摘をいつもいただきましてどうもありがとうございます。

それでは、ほかにいかがでしょうか。今のご意見に関連してのご意見でももちろん大変結構かと思いますが。

○ 蝋山分科会長

ビッグバンの検証と今後の課題というようなことで、私は一言言わなければいけないのですが。全部網羅的には発言できませんけれども、しかし、幾つか今から振り返ってみると議論の中で欠けていた点があったと思うんですね、あるいは具体的な施策の提言という点でああすればよかったというのがなかったわけではない。

1つは、古賀さんと福間さんの間で、恐らく基本的な認識は同じなのでしょうけれども、株式市場における認識にややずれがあっているような感じがして。古賀さんの意見は、株式市場というものを非常に充実するニュアンスが、福間さんはもう少しそれがいろいろなタイプの証券にというふうに考えてくれというお考えを示したと。考えてみると、証券という概念を抽象的に広くとらえようという考えが当時――今でもそうだと思いますが、あったがゆえに、余り証券の中身についての戦略的位置づけをビッグバンにおいてやれなかったのではないかなという反省があるわけです。その1つの極端な例は、個人の金融資産の構成をいわば新しく変えていくときにどういう点を重視したらいいんだろうかというと、株を買ってもらうこと、どうもそこのところが、望みはそれはそれでいいかもしれないけれども、そう簡単な話ではないと。昔から株式市場がおかしいときには株を買ってもらいましょうと、個人に株をという話が何遍もあってうまくいかなかった、そういうことをもう少し冷静に考えて、少し中長期的にしっかりと個人のポートフォリオを変えていくような戦略というものを考えるべきだったのではないかなと。

改めて、つい最近になって財務省の国債懇談会が、個人向けの国債の商品設計を提示したという記事が昨日か今日の新聞に出ている、今ごろ何なのかという感じがするわけです。しかし、そういうことを余りきちんと議論しなかったわけです。そういうことを考えると、私は、もう一度証券概念というものを広くとらえるという基本的なスタンスは正しいけれども、さまざまな証券が考えられる中で、それをどんなふうに力点を置いて施策を展開していくのがいいのかという点を戦略的に位置づける、張り直すという必要があるのではないかなというような感じを持っております。そういう印象を僕は一言――ほかにもまだいろいろありますけれども、申し上げたいというふうに思います。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

○ 淵田委員

福間委員の方から、どちらかというと企業の資金調達サイドから見れば直接金融化は進んでいるというお話だったと思いますけれども、やはり金融ですから最終的にだれがお金を出しているかという観点を見ると、先ほどの古賀委員の図にもあったように、個人のポートフォリオの中で証券の占める割合が少ないままです。従って、やはり本当の意味での直接金融の拡大というところにはなっていないということは言えるのかなと思っております。

問題は、ビッグバンが目指した個人の金融資産の有効活用が実現しているかどうかというところですが、これは必ずしも直接金融の比率が高まることだけではなくて、間接金融の中身が有効活用の方向に向かっていればよろしいのですけれども、実際は、昔と預貯金の比率は同じですけれども、中身はもっと悪くなっているのではないかというところに本当の問題があるのではないかと思います。

まず、公的金融機関を通じて、非常に公的部門に向かった個人のお金というのが5年前に比べて果たして有効に活用されているのでしょうか。あるいは、銀行に向かった個人のお金というものがどうなっているのでしょうか。――今、民間銀行の国債の保有比率がどんどん高まっているわけですけれども、今の日本は国債ですら信用リスクを問われるような時代になっている。さらに、国債の価格変動リスクというのが必ずしも自己資本比率には反映されていないという問題もあるわけです。

それでは、貸出の方はどうかというと、リスクに見合った貸出レートの設定というのは相当程度努力されてきた経緯はあるようですが、どうも最近になってまたそこが崩れているような話も聞きますし、実現信用コストまで含めると、昨今の不良債権処理等もあって、ますますリスクに見合わない貸出レートになっているという面はあるかもしれないと思っております。さらに、先ほどコマーシャルペーパーがふえているというご指摘がありましたけれども、それを相当程度保有しているのが銀行でありまして、これがマーケットの投資家になかなか保有されない最大の理由は、やはりリスクに見合ったリターンがついてこないこと、例えばMMFが買えるようなレート設定がなされていないというところでありまして、結局アメリカのようにMMFに個人のお金が流れ、MMFがCPを買うといった形での直接金融化というのも、そこが1つの原因となって進んでいないという面があると思います。したがって、先ほど古賀委員のお話に、個人の金融資産の有効活用というのは道半ばというようなご指摘がありましたけれども、中身を見ると、かえって道半ばどころか逆行してしまっているような部分もあるのかもしれないのではないかという危惧を若干抱く次第であります。

それからもう1つ、ちょっと長くなって恐縮ですが、手短に申しますと、先ほど監督の体制は各国の国情に応じてというご指摘が福間委員からもありましたけれども、その意味ではまさに日本という国は昔SECを入れてみてうまく機能しなかったという国であります。アメリカというのは規制機関同士が競争していくのが良いといった発想まであるちょっと変わった国でありまして、先物市場の監督だってCFTCとSECが分かれているとか、そういう一種独特な国です。日本は日本でまた考えればいいというのはまさにそのとおりであるかと思います。その意味で若干共感を抱きましたのは、証券業者あるいは銀行といった若干縦割りな監督がまだ何か残っているようなところがありやしないかというところでありまして、例えばインサイダー取引とか相場操縦とかさまざまな問題について、証券業者が取り締まられたという例はたくさんあるのですが、投資家が摘発されたというのは本当に数えるほどしかない、例えば機関投資家が問題に上がった例は余りないかもしれないと思っています。銀行も証券会社も保険会社もそれぞれの業態でありますけれども、同時にそれは投資家という横串で考えられるという側面も必要かと思いますので、これまでの縦の線と同時に、横串の投資家という立場でもう少し市場の監督というものが強化されていくという方向もあるのかなと思っている次第でございます。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。

○ 福間委員

ちょっと蝋山先生に誤解を与えたかもしれませんので、ちょっと言葉を加えておきますけれども。

申し上げたと思うのですけれども、直接金融、間接金融という場合の中の要するにデットファイナンスが非常に発達をしたと。エクイティファイナンスを私自体が軽んじているわけではなくて、この収益状況だったらやはりデットを有利に出して、収益が伸びると、あるいは経済成長が戻ってくると、あるいは差別化したビジネスモデルを持っているというものがない限り、やはりエクイティが分母になるというのはなかなか難しいのではないかと、値ごろ感というのはあると思いますけれども。エクイティファイナンスが返ってくることはあれなんですけれども、今それを言っても、今はエクイティファイナンスというのは新規上場以外はほとんどございませんし、そういう面では、やはり我々としてはROEを上げることが仕事だと、発行会社としてはそう思っております。だから、その上でエクイティファイナンスをやりたいと、こういうことです。

○ 神田部会長

ありがとうございました。

ほかの委員の方々はいかがでしょうか。

首藤委員、お願いいたします。

○ 首藤委員

先ほどのお話で、なぜ個人が証券投資を行わないかということで、個人が現状に満足しているのではないかということも考えられるというお話がありましたけれども、私は個人は決して現状に満足していないと思います。

重要なことは、先ほど福間委員もちょっと触れていましたけれども、リスクプロファイルが明確ではないと、私はここに尽きるのではないかと。例えばリスクに対するリターンといっても、リスクの大きさのはかりようがないと。例えば、1回目のときに蝋山先生がご指摘されていました、ベンチマークですよね。例えばリスクをはかるときに安全資産の収益率というものは何をもってとらえることができるのだろうか、それから、投資信託のところでも非常に問題になりましたけれども、リスクというものに関して明確な比較できるようなそういうディスクロージャーというものが働いていない、ということが私は最大の個人が証券投資に向かわない理由ではないかと思います。

もちろんそこには証券市場とか証券業に対します不信感といいますか信頼の欠如といった徹底的にそういう問題があるわけですので、それと、やはりきちんとして、もしもそれを解決しようと思うなら、それはいろいろな側面でリスクとリターンに対する情報というものを提供し、そしてそれを比較できるような形で出していくということだと思います。これについては、例えば証券業界では、少し個人投資家がふえたら非常にリスクの高い商品を個人に売るというようなことがしばしば出てきたと、これは非常に残念なことだと思いますけれども。そういう面で、私は、個人が現状に満足しているというような観点から議論されるというのは誤っているのではないかと思います。

○ 神田部会長

ありがとうございました。

いろいろな角度からの意見をいただいておりますけれども、いかがでしょうか。

○ 前田委員

ビッグバンの検証ということで古賀さんからお話があったのですけれども、私、銀行から見まして、ビッグバンそのものはかなり思い切った形でやられたと思います。ただ、不幸にして実施した時期が非常に景気が悪い時期に実施したということで、その効果が表になかなか出にくい状況があるということでございまして、失敗ではないと思いますけれども、普通ですと景気が少しよくなる過程でやるとスムーズにこれは移行するのですが、残念ながら逆行しているところでこれを実施しましたので、成果が表に出にくいと、もしくは、期待した成果があらわれないと、そういうのがあるのではないかと。ビッグバンそのものを否定的に見ることは全くないと思います。

それから、今も個人の資産選択の問題がありましたけれども、私は、個人というのは非常に賢明でございまして、さっき淵田さんが言われたように、公的な方に資金をシフトするとかというのは当然でございまして、このデフレのときにリスクの高い商品、土地を買うとかというのはよほど異常でございます。そういう意味では、さっき投信のバリエーションのやり方がありましたけれども、個人というのは自分でよく判断していくと、したがってお金が動かないと。デフレの状況のときに、デフレをどうするのか、そこのところをよく議論しないと、金利メカニズムが全くきかない。定期預金の金利と普通預金の金利がほとんど同じような異常事態です。要するに、ゼロに収斂していますと金利メカニズムがききませんので、これは資本主義ではないということですから、こういう状態のときに今何が起こっているのかというのを議論するのはやや不適切ではないかと、やはり正常な経済状態に持っていきませんと、今いろいろお話があった議論は多分生きてこないと。そういう意味では非常に異常な事態であるということを、異常な事態が長く続きすぎておりますので、どうも判断がずれてしまったのかなという感じがいたします。率直に申し上げてそういうことでございます。

それから、市場を自由化したということは非常に重要なことなのですが、さっきFSA型でやるかSEC型でやるかというのがあったのですが、日本の場合において一番世界で遅れているのは、やはり信用毀損を起こしたときの処罰のやり方が非常に甘いと。外国の例は詳しくは知らないのですけれども、少なくともかなり露骨に企業の信用を毀損しても、例えばインサイダーに引っかからなければ何の処罰もないと。今、週刊誌をごらんいただきますと、多くの企業が、ある先は要注意先とか、あらゆる記号がついて、 100円以下のところはつぶれるぞとか、実名入りでじゃんじゃん出るんです。実はだれも取り締まれないという非常に異常な事態です。こういう国が先進国では本当にどこにあるんだろうと。そういう意味で、ビッグバンでの市場を中心とした経済をつくっていくときの片方の市場を壊す人、もしくは必要以上に毀損する人に対しての処罰はやはりかなり厳しいものがあって当たり前ではないかと。テレビでいろんな人が固有名詞でじゃんじゃんしゃべるというのは本当に異常事態だと思います。固有名詞を言うというのは非常に私は重大な問題だと思います。

ちょっとした感想でございます。

○ 神田部会長

ありがとうございました。

だんだん話が第一部会の所管を越えてきたようですけれども。ほかにいかがでしょうか。きょうはできるだけ多く多様な意見を出していただいてと思っておりますので。

○ 太田委員

ビッグバンの論議の中で、さっき蝋山先生が、証券というものをどうとらえるかと、その中身について戦略的な考え方が不足していたのではないかということをおっしゃったわけですけれども、私は、それと一緒に、やはりコストということについては手数料というのが大変大きなテーマになって、手数料の引下げというのは随分進んできているわけですけれども、そのほかの、さっき福間さんもおっしゃったように、証券市場に限らず、マーケットのインフラでもあり、そして最大のコストでもあり、そして個人の投資家に対して最も影響を持っているというふうに思われる税金というものに対して、このビッグバンあるいはこれから行われるであろう議論がどういうふうに影響力を持ち得るか、持っていけるのかということが大変大きなテーマになってくるだろうと、これは前回のビッグバンの論議の中で積み残されたかなり大きな問題ではなかろうかと、こういうふうに思っています。これがこの金融審議会で議論をしてどうなるという話であるのかないのか、そこもよくわかりませんけれども、しかし、少なくとも大きな声でアピールをしていくということ――当時は同じ役所の中だったのですが、今は役所が分かれてしまいましたけれども、それから、党の税制改正の話を見ていても、やはりどうも戦略的ではないし、メリハリがきかないし、長老の力が大変大きくて何も動かないという大変いらだたしい思いをしているわけですが、そういうところに何らかの形で大きな影響力を――毎回毎回同じようなことを言っているわけですけれども、これはもう本当にこれからの証券市場の命運を握っている非常に大きな要因だと思いますので、しつこいようですがまた言わせていただいております。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。

○ 成川委員

ビッグバンでいろいろな新しい商品なり金融界でいろいろな大きな新しい取引などができていると、その中で、それが経済の活性化なり、あるいは日本の金融の安定に資するというのが本来の目的ではないかと思うのですが。先ほどの議論の中にもありましたけれども、経済状況が悪かったのか、あるいは、やはりこのビッグバンの進め方自身の中に何らかのそういう金融の安定性に関する、十分なフィードバックするような点で、何らかのより考え抜かなければならない点でちょっと落ちていた点があったのかなど、我々一消費者でわずかな預貯金を持っている者から見ると、どうして努力が本当の金融の安定化、そして、またいまやもう資産価値自身を心配せざるを得ないような事態になってしまったのかと、こういうのが率直な気持ちであります。そういう中でどうやって金融資産自身の価値をしっかり安定化させる中でうまく回復なり、あるいは金融部門の活性化を目指すのかという点をぜひ議論をしなければならないのではないかと思っております。

そのときに、1つは、国債の発行残高がますますふえて、銀行なり、あるいは機関投資家が持っているわけですが、こういう国債なり政府の債務・債権について、どう金融市場の中で考えなければならないのかという点がちょっと余り――私は最近参加しただけなので余り前の議論を伺っていないのですけれども、私の勉強不足もあってどうも考え切れていないという気がありまして、公的な資産なり負債の問題と個人の金融資産、それから企業のファイナンス問題、これらを全体の中でぜひ金融システムの安定化と活性化を議論すると、こういう点についてよろしくまた皆さんのご見解等をお聞かせ願いたいと思っております。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

○ 高橋委員

ビッグバンの検証と今後の課題ということで、今まで、今後の課題ということで、蝋山先生におっしゃっていただいた点とか、非常に検討しなければいけない大きな課題があると思います。特に古賀さん、あるいは福間さんのご指摘のあった、証券のビジネスモデルをどういうふうに見ていくか、蝋山先生がおっしゃっていた証券の中身の問題、あるいは証券会社のビジネスモデルの問題というのは非常に大きな問題だろうと思います。多分ビッグバンのときに予想していたようなビジネスモデルへの転換がうまく進まなかったというのが、前田委員がおっしゃったように時期の問題とかあるだろうと思いますけれども、もう一回考えてみなければいけない問題だと思います。

それと並んで、このビッグバンの検証といったときに、多分ビッグバンで期待していたような、競争でありますとか新しい商品であるとかそういうものは確かに、古賀委員の冒頭のご説明にあったように、進んでいます。新しい参入もどんどん進んでいます。そういう意味では進んでいるのですが、それの影の部分というので出てきた点というのもやはり振り返って見る必要もあるのかなと思います。

例えば、きょうご議論がありました投信のディスクロージャーというのは非常にタイムリーな大事なご報告だったと思います。あれも、投信というのを目論見書という形でフルディスクロージャーするという方向に10年12月から施行された証取法でそういうふうになったわけでありますけれども、フルディスクロージャーしておけば投資家は非常に保護されると、投資家にとっていい制度になるという期待があったと思いますけれども、実際には、まさにさっきのご説明にあったように、決して投資家にとって十分な制度ではなかったという面があったのだろうと思うのです。そう意味で、一つ一つ制度が見直されていくのは非常にいいことだろうと思うのです。

また、前にも発言させていただいたので繰り返しませんけれども、例えば登録制で自由な参入がいいんだということで今の制度はできているわけですけれども、本当に自由な参入でよかったのかと、株主であるとか、経営者という者に対するチェックというものが必要なかったかということが、いわば今後の課題であり、ビッグバンの期待していた成果がより発揮できるためにもう少し手当てをしていく面もあるのではないかなというような気もいたします。そういう意味で、今後の課題ということで、非常に前向きな検討のほかに、今までのビッグバンについて予想したような結果となっていないような面がほかにもないのかというような点についての検討ということも必要ではないかなというふうに思います。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

○ 東委員

先ほど来、市場の活性化が十分でないという議論で、私も残念ながらビッグバンでもくろんだとおり成功しているという印象はございません。ただ、市場の活性化がなぜ必要か、あるいは効率的な市場がなぜ必要かというと、市場のメッセージが正しく伝わる機能を持つことだろうと思います。そのために参加者を多くしなければいけませんし、だからこその個人だろうというロジックだったと思うのですが。そういう意味で、先ほど来出ています商品設計、リスクリターンのバランスをどうするか、あるいはそれをどう徹底的にディスクローズするかというのはおっしゃるとおりで、その方向にすべての金融商品を持っていくということが大事なんだろうというふうに思います。ですから、エクイティだけの話をしていてもというのはそのとおりでありまして。ですから、例えば預金金利あるいは貸出金利にしても、いわゆる金利、普通の貸出レートと消費者金融と商工ローンという間はどうつなぐんでしょうかという議論は別のところで要るだろうというのが1点です。

もう1つは、意図したとおり行っていない理由として、どなたかがおっしゃっていましたが、環境が悪いというのはそのとおりだろうと思います。ただ、そこでやはり考えなければいけないのは、では仮に環境がよくなったときに、このプランを続けた場合に、期待どおりのスピードで資金シフトなりが起こるだろうか、あるいは参加者が多くなるだろうかというところだろうと思います。そういう意味では、やるべきことはやらなければいけないのですが、やっただけで待っていれば本当に期待した資金シフトが起こるのだろうかというと、どうもそこはややこれだけでは足りないのではないかなと、もっと国全体でと言うとこの審議会の範疇を出てしまうかもわかりませんが、もう少し大きな仕掛けとして、参加者をふやすなり、資金の流動性を高めるなりということを仕掛けとして考えていく必要もあるのではないかと、そんな印象を受けております。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

そろそろ時間が来ておりますので、もし何かどうしてもという方がいらっしゃいましたら伺いたいと思いますけれども。

よろしゅうございますでしょうか。

大変多様なご意見をいただきまして、この第一部会を今後どう進めていくのかというのはなかなか難しいところですけれども、せっかく意見をいただいてこれで終わりというわけにはいきませんので、いただいた意見をよく整理して本当に実のある議論を続けていかなければいけないというふうに思っておりますけれども、きょうは古賀委員のレポートを材料にしていろいろなご意見をいただいたということで、どうも古賀委員はお忙しいところありがとうございました。

それでは、本日の審議はこれで終了させていただきたいと思います。

なお、この後ですけれども、記者会見を行うことになっておりますので、私の方から本日の当部会の模様についてお話をさせていただきます。

今後の日程等について事務局の方からございますでしょうか。

○ 大森調査室長

この第一部会につきましては、今年度中はこの程度にさせていただきまして、来年の1月にはもう1つのWG、証券決済のWGからの報告をお願いしたいと考えております。

また、本日の後半にいただいたような議論で、確かにビッグバンのときには主として米国というモデルがございました。事務局としても現在よりはゴールを想定しやすい中で議論の素材を提供させていただいておったわけですが、なかなか当時以上に閉塞感が強いといいますか、方向性に不透明なところもあるような気がいたします。きょうは古賀委員にお願いいたしましたけれども、また今後とも委員の皆様から議論する、考えるヒントをちょうだいするような形でご議論いただき、事務局として論点を整理させていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

以上でございます。

○ 神田部会長

それでは、以上をもちまして本日の会合は終わりとさせていただきます。

どうもありがとうございました。

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