金融審議会金融分科会第一部会(第8回)議事録

日時:平成14年12月16日(月)10時00分~11時15分

場所:中央合同庁舎四号館(11階)共用第一特別会議室

○ 神田部会長

おはようございます。予定の時間になりましたので、まだお見えでない方もいらっしゃいますけれども、始めさせていただきたいと思います。

今日は金融審議会金融分科会の第一部会の第8回目の会合になります。

皆様方には、いつもお忙しいところお集まりいただきまして、ありがとうございます。

前回の部会でございますが、3つのワーキング・グループから、それぞれ報告書を提出していただきまして、ご審議をいただきました。

第一は、市場仲介者のあり方に関するワーキング・グループからのご報告で、その題名は、「証券会社・投資信託委託業者・投資顧問業者の最低資本金の引き下げ及び主要株主ルール、証券代理店制度の導入」についてであります。

第二は、取引所のあり方に関するワーキング・グループからご報告をいただきました「海外取引所の端末の国内設置」「国内取引所の海外展開」、これにはリモート・メンバーシップというのとクロス・メンバーシップの2つがありますけれども、そして「内外取引所の連携・統合」についてのご報告であります。

そして3つ目が、ディスクロージャー・ワーキング・グループからのご報告でありまして、その中身としては、「信頼される市場の確立に向けたディスクロージャーの充実・強化」、それから「経済の活性化に資するディスクロージャー・ルールの整備」、そして「ディスクロージャーに関する手続等の簡素化・迅速化」というものが内容であります。

これら3つの報告につきまして、時間もかなり限られてはおりましたけれども、この第一部会としてご議論をいただきましたので、本日はこれらをまとめました具体的な案文につきまして、その後、皆様方からも頂戴いたしましたご意見等も踏まえまして、私の方で報告書(案)の取りまとめをさせていただきましたので、それをご確認いただきます。そして、第一部会としての報告を、できれば今日確定させていただきたいと思います。

なお、本日は、いわゆる「証券市場の改革促進プログラム」で掲げられました事項のその後の進捗状況につきましても、事務局から報告をしていただくこととしておりますので、よろしくお願いいたします。

なお、本日は、金融審議会総会委員の方の田中さんにご出席いただいております。また、市場仲介者のあり方に関するワーキング・グループの座長をお願いしております吉野さんにもご出席いただいております。どうもお忙しいところありがとうございます。どうかよろしくお願いいたします。

それでは、早速、議事に入らせていただきたいと思います。

まず、第一部会報告の案の審議に移りたいと思いますが、その前に、この報告書に盛り込んでおります3つの事項につきまして、事務局から説明をお願いします。

第一は協同組織金融機関の有価証券売買書面取次ぎ業務、第二は証券会社の投資一任業務等の兼業に係る規制の見直し、そして第三は信託銀行の投資一任業務であります。これらについて、まず事務局から簡単な説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

○ 山崎市場課企画官

それでは、お手元に部会長からご紹介いただきました3点の論点のペーパーを配付させていただいておりますので、これに従いましてご説明させていただきたいと思います。

いずれも、今後、法律改正の検討が必要な項目でございまして、これまで証券構造改革プログラムや規制緩和推進計画で検討課題として挙がっていた項目でございますが、報告書の審議に移る前に、事前にご説明させていただきたいと思います。

まず1点目の「協同組織金融機関による有価証券の書面取次ぎの解禁について」でございます。

これは1.に書いてございますように、現行の法律におきましては、銀行のみに有価証券書面取次ぎは認められております。

改正点の第1点目ということでは、証券投資の販売チャネルを拡充・多様化するという観点から、現在こうした銀行だけに認められていた有価証券の書面取次ぎにつきまして、協同組織金融機関にも認めて、証券投資の販売チャネルを拡充・多様化しようというものでございます。これが第1点目の改正点でございます。

それから、続きまして第2点目でございますが、第2点目は、投資家の期待にこたえる証券会社の資産管理または運用サービスを円滑化するという観点から、証券会社による投資一任業務の兼業規制を見直すというものでございます。

具体的には、2枚目のセットになっております「証券会社の投資一任業務等の兼業に係る規制の見直しについて」のペーパーに詳細は書かせていただいておりますが、金融システム改革の際、いわゆる手数料獲得目的の短期売買の危険が少ないラップアカウント方式を例えば導入するといったような形で、証券会社が資産管理型の営業への移行を図ることを可能にするために、証券会社につきましては、投資一任契約に係る業務を兼業することが可能という形になったところでございます。

ただ、しかしながら、この2.の2つの○で書いてございますけれども、例えばお客さんに推奨した銘柄を自己売買した場合につきましては、自己売買に係る書面をお客さんに交付しなければいけないといったような、頻繁に自己売買を行っています証券会社にとりましては、実際には実現困難ともいえるような過大な事務負担を兼業に当たって課しているといった問題点や、投資一任業者につきましては、証券業等しかできないといったような厳しい専業義務を課しておりまして、証券業以外の業務を行っておりますような証券会社が兼業できないといったような制度になっておりますので、事実上、証券会社が投資一任契約に係る業務を兼業するということはかなり難しいという状況になっております。

したがいまして、今後、例えば投資顧問業務を行う部門と証券業の部門を分離しているといったように、投資者保護に支障のない範囲内で書面を顧客へ交付しないとすることを検討するほか、兼業規制を緩和いたしまして、資産管理型の営業への移行を促進するという方向で検討を行いたいというふうに考えております。

それから第3点目でございますが、「信託銀行に係る投資一任業務の解禁について」ということでございます。こちらは、資産運用手法が高度化しておりまして、資産管理のやり方が集約化、一元化していくということで、信託銀行も投資一任業務を営むようにすることができるようにするというものでございます。

具体的には、2ページ目の図をごらんいただければというふうに思いますが、従前の、古くからの信託銀行の年金信託のやり方というのは、信託銀行が実際、資産の運用と資産管理と、これがまさに一体で行われておった、この1番の形でございました。しかしながら、資産管理の効率化を図っていくという観点から、2番目で、B信託銀行と書いてありますが、例えば資産管理業務を専門とする資産管理専門信託銀行で行うようなスキームというのがつくられておりまして、これは12年の3月から、まずA信託と年金信託契約を結んで、そのうち資産管理の部分をB信託銀行に再信託するという形でのスキームができております。

ただ、この2番目のスキームは、ややこの契約関係が複雑だということもありまして、今回改正を考えておりますのは、信託銀行自体が投資一任業務を行えるように措置するということで、契約関係を簡潔化して、再信託によらないスキームが構成できるようにして、機動的なスキームの形成を可能にするというものでございます。

この解禁に当たりましては、例えば金銭の預託禁止といったような一部の行為規制を適用解除する。一方で、投資一任契約に係るお客さんの利益を害する行為を禁止するといったような弊害防止措置をとることを考えております。

以上、簡単でございますが、3点述べさせていただきました。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

それでは、いただきましたご説明について、ご質問等がありましたら、ここでお受けしたいと思います。もちろん、ご意見でも結構でございます。いかがでしょうか。

どうぞ、高橋委員。

○ 高橋委員

ご説明があった最初の点(協同組織金融機関に有価証券の書面取次ぎを認める。)で、今ご説明がありましたように、プログラムの全体を貫く考え方の販売チャネルをできるだけ多様化していくという流れに沿ったものだという今の山崎企画官からのご説明、そのことにつきましてはそういうものとして理解できるわけでありますから、意見というよりもお願いということになるかもしれません。

かなり広い範囲で協同組織金融機関というのはあるだろうと思います。この書面取次ぎという証券業務を実際に行っていく上では、それなりの実務体制とか、そういうものがしっかりしているということが、証券業務あるいは証券市場に対する信頼を毀損しないというもう1つの大きなテーマから見て必要なのではないかというふうに思います。協同組織金融機関に広げるということであれば、それなりの執行体制というものを十分考慮していただくということを、この法制化に当たって、あるいはその後の実際の運営に当たってご留意をいただきたいというふうに思います。

なお、2つ目のご説明にありました投資一任業務に関する兼業に係る規制の見直しにつきましては、これはまさに投資家の幅広い期待なりニーズというものにこたえる道を開いていただくということで、大変時宜を得た施策ではないかなというふうに思います。ありがとうございました。

○ 神田部会長

ありがとうございました。ご意見として伺わせていただいてよろしゅうございましょうか。ありがとうございます。

ほかにいかがでしょうか。どうぞ、上柳委員。

○ 上柳委員

上柳です。2番目の証券会社投資一任業務の規制の緩和の問題について1点なんですけれども、もともと投資顧問業者に対して、特に自己売買の書面交付について、ある意味では厳しい規制だと思うんです。これは多分、投資顧問業者に対する、事故も含めて合理づける立法事実が当時はあったんだろうというふうに私なんかは認識しているんですけれども、自己売買についての書面交付の、できれば理由というか、なぜこれが必要だったのかということと、それに準ずるような体制整備というのは、例えばで結構ですけれども、どういうことを想定されているのかという点だけ伺えればと思います。

○ 山崎市場企画官

投資顧問業者が自己売買を行った場合に、顧客に書面で交付を義務づけているという趣旨は、一般的に申し上げますと、やはり投資顧問業者が客に推奨した銘柄と同一の銘柄について自己売買を行うというのは、利益相反となるおそれが高いということから、これを顧客に開示させるということによって、このような利益相反が生じるおそれが高い自己売買を抑制するということがあったのかというふうに思います。

ただ、日常的に、有価証券の自己売買を行っております証券会社につきましては、そもそもこれを自己売買の開示によって抑制させるということは実際上できませんし、このようなものに対して、開示を通じた自己売買の抑制を図るというよりも、むしろ顧客の利益を害するような行為が発生しないような体制の整備を義務づける方が実際的であり、適当であるというふうに考えております。

それで、具体的な措置の内容ということでございますが、これはまだ現在、検討させていただいておりますが、例えば先ほど申し上げましたように、投資顧問業と投資一任業務との部門を明確に分断するとか、さらに、この部門間の情報が遮断されているような体制となっていることといったような形で、投資者保護の支障のない範囲内で一定の基準を設けて、承認制にするというような形を考えております。

○ 神田部会長

よろしいでしょうか。

○ 上柳委員

具体的なところが大事だと思って。

○ 神田部会長

ありがとうございます。今後ご意見等も、できればよく伺って進めたいと思います。

ほかにいかがでしょうか。よろしゅうございますでしょうか。

それでは、先に進ませていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

それでは次に、今日の一番重要な部分ですけれども、第一部会の報告(案)としての「証券市場の改革促進」、これにつきまして、これは今日初めてお示しする形になりますので、事務局の方からの読み上げをお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

(事務局 「証券市場の改革促進」読み上げ)

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

それでは、今読み上げていただきました報告の案につきまして、ご質問、ご意見等がございましたら、お出しいただきたいと思います。どなたからでも結構ですが、いかがでしょうか。

関連してのご意見でも結構ですけれども、いかがでしょうか。

上柳委員、どうぞ。

○ 上柳委員

内容的には、前回もありましたので、ちょっと形式的かもしれませんけれども、このワーキング・グループの報告で、3つのワーキング・グループの報告があって、あとの2つは、今後の検討課題というのがあるんですが、最初の市場仲介者の関係については、特にそのご指摘がないので、もちろんワーキング・グループはなるべく早く任務を終えた方がいいわけですけれども、というのはもちろんそうなんですけれども、私が一言申し上げるとすれば、特に投資家の信頼を得るためには、同じことばっかりいって申しわけありませんけれども、いわゆる金融サービス法ということでいわれたような、金融商品を横断的、あるいは業態横断的に、包括的に市場を整備する。あるいは、投資家の信頼を得るような体制をパッケージとして取引所関係者あるいは投資家、消費者に示すことというのは大きな課題だと思いますので、そこに向けてのいろいろなモザイクがあるわけですけれども、大きなうねりということは、引き続き第一部会としてもやっていくんだということを、これもいうまでもないことかもしれませんけれども、ぜひ確認する必要があるんじゃないかというふうに思います。

以上です。

○ 神田部会長

ありがとうございました。おっしゃったことはそのとおりだと思いますけれども、仲介者についてのワーキング・グループは今回お仕事をしていただいたということで、引き続きさらにまたお願いするのもご負担かと思いますけれども、その辺は、事務局としてはどうお考えですか。

○ 乙部市場課長

このワーキングは当初、委嘱された事項について、取引所とディスクロを除けば今回で仕事を終えたと思います。金融サービス法については、引き続き金融審議会としてどういうふうに取り上げていくかという問題だと思いますけれども、このワーキングということではなくて、あるいは第一部会に限らず横断的ということでありますので、宿題としていただかせていただきたいと思います。

○ 神田部会長

ありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。どうぞ、淵田委員。

○ 淵田委員

全体的な感想と雑駁な意見を申し上げますと、3つのワーキングのまとめになっているわけですけれども、仲介者と取引所の分野というのは、制度面では米国など他の先進国と比べてもかなり思い切った考えが取り入れられている部分が多いのではないかと思います。もはや、この分野はキャッチアップというよりも最先端の領域に踏み込んできているのではないかという感じがいたします。

もちろん、こうした改革をするとすぐ、証券投資の普及ですとか、あるいは流動性の向上といったことにつながるとは限らないと思いますけれども、株価が上がるとか下がるとかにかかわらず、こういうふうに制度面で思い切ったチャレンジが必要な時代ではないかというふうに思っております。

あとは、問題があれば柔軟に対応していくといった運用の方をしっかりやっていくという考えなのではないかと思います。

これに比べますと、ディスクロージャーの分野の改革ですけれども、従来の日本の状況に比べますと、これは画期的な進歩が盛り込まれているのではないかと思うんですが、ただ、他の先進国の動向に比べますと、まだまだキャッチアップ型の議論が多いのではないかという印象を受けました。

仲介者の信頼ですとか、あるいは市場の改革も重要ですけれども、何よりも、もとの証券の信頼性やそれに関する情報が、投資家に迅速に提供されるということが、まずは出発点だと思いますので、来年はディスクロージャー分野も最先端の領域に踏み込んでいけば、非常によりよくなるのではないかというふうな感想を持ちました。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。今のような感想もぜひいただければありがたいと思いますけれども。

特によろしゅうございますでしょうか。

それでは、ただいまの報告(案)について、これを本部会、すなわち第一部会としてご承認をいただきたいというふうに思いますが、よろしゅうございますでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

それでは、ただいまご承認いただきました報告書につきまして、これを今週の金曜日、20日になりますけれども、開催を予定されております金融審議会の総会で報告をさせていただきます。

それでは、議事次第に従いまして、次の議題に移らせていただきます。

最初にもちょっと申し上げましたけれども、「証券市場の改革促進プログラム」につきまして、これに掲げられた事項の進捗状況につきまして、事務局の方からご報告をしていただきます。よろしくお願いします。

○ 乙部市場課長

お手元の資料、「『証券市場の改革促進プログラム』の進捗状況」というのがございます。

8月6日にプログラムを発表いたしまして、今までかなり制度整備を進めてまいりました。主なものに限って説明させていただきますけれども、「誰もが投資しやすい市場の整備」という項目につきましてでございますが、まず証券会社関係でございますけれども、信頼性の向上に向けた業務のあり方の検証ということで、秋口から証券会社に対してヒアリングを行ってまいりました。その結果として、以下の施策を実施したいと思っております。

1ページ目の(1)の2つ目の括弧でございます。1つは、顧客情報の漏洩事件がございました。顧客情報の管理の徹底を図る必要がございますので、事務ガイドラインを作成いたしまして、この徹底を図ってまいりたいと思います。

それから、顧客とのトラブルでございますけれども、なかなかトラブルが絶えませんで、検査に入ってもいろんな体制の問題も指摘されております。

1つは、顧客の取引状況を支店幹部が迅速に把握してトラブルを未然に防止するという観点から、今、証券会社が顧客との面談を行う制度というのがございますけれども、これが必ずしも期待されたように運用されていない。形骸化されているというような面もございますので、これは、制度としてしっかり運用されるように、事務ガイドラインを整備するとともに、私どもの検査・監督の中においても、的確なチェックを図ってまいりたいと思っております。

もう1つは、インターネット関係でございます。インターネットを通じた個人投資家の株式取引は非常に増えておりまして、全体の5割を超えております。既に開始したところでございますけれども、個人のインターネット取引の実態把握を行いまして、投資家保護あるいは取引の公正性の確保の観点から、必要な対応を行ってまいりたいと思います。

実態把握を行った上での話でございますけれども、口座開設に当たってどういうチェックが行われているのか。あるいは、取引の開始基準とか、信用取引を行う場合の基準とか、どういうふうになっているのか。あるいは、ネット証券会社が、顧客からの注文について、不公正な取引を事前にチェックするような売買審査をどういうふうにやっているのか、実態把握をした上で、必要な対応を行ってまいりたいと思います。

あとは、次のページをお開けいただきたいと思いますけれども、真ん中あたりに「(3)信頼される投資信託・投資顧問サービスの確立」というのがございます。

証券会社と同じように、投資信託委託業者、投資顧問業者について実態把握を行ってまいりまして、その結果、信頼されるサービスの確立を図るという観点から、次のようなことを行いたいと思っております。

1つは、各社の運用体制あるいは具体的な運用方針をどういうプロセスで決定しているのか、投資家にわかりやすく開示していただこうと思います。

それからもう1つ、マル2でございますけれども、これらの業者が具体的に取引を発注する証券会社をどういうふうに選んでいるのか。それから、投資信託を販売する会社をどういうふうに選んでいるのか。単に漫然と選んでいるということでは、投資家に対する受託者責任を果たしているということになりませんので、投資家のためになるようなことできちっと選んでいるのか。それから、それらの業者のサービスを事後的に検証して、必要な業者の入れかえを行っているのかというのが大事になると思います。まず、その観点から、選択基準を開示していただくということを行いたいと思います。

それから、投資家に対する説明責任でございますけれども、運用報告書の開示項目を拡充いたしたいと思います。

運用方針と運用結果が乖離しているようなとき、これをきちっと説明していただく。特に、最近のような市場環境ですと、損失が結果として生じるというようなことも多いわけでございますけれども、どうしてそうなったのかというのは、投資家として大変知りたいところだと思いますので、それを開示していただく。あるいは、顧客がどこに問い合わせたらいいのかという開示窓口ですね。これも開示させる必要があろうかと思います。

それから、運用状況に関する適時開示。法律上は年1回でいいのでありますけれども、もう少し自主ルールとか何かで適時開示をしていただく必要があるのではないかということで、こういった項目について、内閣府令、事務ガイドライン、あるいは自主ルールできちっとやっていただきたいと思っております。

それから、3ページ目をお開けいただきたいと思いますが、証券税制でございます。投資家の参加を促進する税制改正要望を行ってまいりましたけれども、先週金曜日の与党3党の税制改正大綱で、上場株式に係る譲渡益、それと配当所得、それから公募型の株式投資信託の分配金、これにつきましては、今までの複雑ばらばらな税制を簡素化いたしまして、一律に5年間は税率を10%とする。そして、源泉徴収で課税を基本的に完結させるというふうな新しい証券税制が決定されたところでございます。

次に、2つ目のプログラムの柱でございました「投資家の信頼が得られる市場の確立」に関しまして、いろいろ行ってまいりましたが、4ページをお開けいただきたいと思います。

「(3)市場における公正な取引の確保」でございますけれども、2つ目の固まり、「店頭登録市場における顧客注文の最良執行の義務付け」とございます。

店頭市場で、マーケットメイク銘柄がございますけれども、これにつきましては、小口注文につきまして、顧客の注文の最良執行を担保する観点から、注文を受けた証券会社が自分のところの気配値で取引を成立させるということをせずに、各マーケットメーカーの中の最もよい条件で取引を成立させるJASDAQのマーケットメイクシステムへ発注するよう、証券会社に義務づける規則改正を行っておりまして、来年の5月から施行される予定でございます。

それから、「機関投資家の受託者責任の実効性の検証」でございます。これも、証券会社とか投信会社と同じような観点から、特別勘定に係る保険会社、それと信託銀行について検証を行いまして、これらのまず運用体制の充実を図っていただくために、事務ガイドラインの見直し、それから、必要に応じて検査マニュアルの見直しを行いたいと思っております。

投資信託委託業者、投資顧問業者につきましては、今までの制度改正で、法律とか自主ルールでかなり詳細なものができておりますが、これに比べまして、保険会社の特別勘定、あるいは信託銀行については、若干それに比べれば簡素なものにとどまっておりますので、先に進んでおります投資信託委託業者等の対応を参考にしながらきちっとしたものをつくりたいと思います。

それから、信託業務の受託者責任のあり方につきましては、金融審議会の第二部会で検討を今後行っていただく予定でございます。それとあわせまして、信託協会に対しまして、運用状況のディスクロージャーあるいは運用体制に係る対応を行うよう要請をいたしたいと思います。

さらに、保険会社の特別勘定の運用状況に関するディスクロージャーの充実という点でも、事務ガイドラインあるいは関係団体において必要な対応をお願いしたいと思っています。

これらの点につきましては、検査・監督を通じても十分チェックを行っていきたいと思います。

それから、証券アナリストの関係でございますけれども、日本証券業協会におかれまして、アナリストの意見の独立性の確保、アナリストレポートの対象企業とアナリスト・証券会社との利益相反状況の開示、社内管理体制の一層の整備のための自主ルールを今検討中でございまして、来年1月に理事会決議の予定と聞いております。

「外務員のコンプライアンスの強化」につきましても、日本証券業協会におきまして、外務員資格更新制度の導入あるいは外務員資格の停止処分の導入、それから典型的な事例をまとめたコンプライアンス・レターの作成・周知などを行う予定でございまして、今週中に理事会決議の予定と聞いております。

それから5ページでございますけれども、(4)のディスクロージャー関係でございます。

2つ目の固まりに、四半期開示がございます。まず、15年4月以降に開始する事業年度から、上場会社に四半期業績の概況の開示を義務づけることとしておりまして、取引所がその要綱を年内に公表する予定と聞いております。

次の段階として、四半期財務・業績情報の開示の義務づけでございますが、これは16年4月以降に開始する事業年度からの実施をめどといたしまして、その作成要領について検討する検討委員会を東証が年内に立ち上げる予定と聞いております。

それから、最後になりますけれども、「効率的で競争力のある市場の構築」。細かい事項が並んでおりますが、最後のページ、7ページでございますが、「(3)証券決済システムの整備」でございますけれども、12月6日に証券決済システム改革法の政省令の整備を行いまして、セーフティネットである加入者保護信託に係る手続とか、清算機関における手続の具体化を図っております。

簡単でございますが、以上です。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

それでは、ただいまのご説明につきまして、ご質問、ご意見等がありましたら、お出しいただきたいと思います。

はい、どうぞ。

○ 宮川委員

ただいまご説明のありました進捗状況のメモの4ページですけれども、4ページの「機関投資家の受託者責任の実効性の検証」という項目ですが、そのマル2の真ん中辺ですけれども、信託協会に対して運用状況等に関するディスクロージャー、運用体制等にかかわる対応を行うよう要請するという文言がございます。これにつきましては、証券市場の活性化や、一層の公正性の確保という観点から、どのように貢献できるかという視点で、信託として検討をしてまいりたいと思っております。

マル1についてですが、私どもは兼営法の枠組みのもとで社内規定を整備するよう求められ、また、かつ努力しております。したがいまして、努力している部分につきましては、十分ご理解の上、ガイドラインの見直し等を行っていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

以上です。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

それでは、首藤委員、それから高橋委員の順番でお願いします。

○ 首藤委員

また質問です。実務が全く不案内なもので、皆様は当然かと思われているかもしれませんけれども、事務ガイドラインというのがよく出てまいります。例えば1ページ目の「取引一任勘定取引の範囲の見直し」ということで事務ガイドラインの改正が出てまいりますが、具体的にどういうことなのか。

と申しますのは、証券会社に対して、事務の仕方に対してまでガイドラインがあるというのは、私には非常に驚きだったものですから具体的にはどういうことがガイドラインとして導入されているのかを、ご説明をいただきたいと思います。

○ 乙部市場課長

事務ガイドラインは、業者の事務のガイドラインというわけでもございませんで、法律があって、政令があって、規則がありまして、その規則の解釈とか適用について、行政としてこう考えておりますというのをあらかじめ明示することによって、行政の透明性、それから業者にとっては事前予測性を高めようという観点から、導入されているものでございます。

ずっと前であれば、行政指導という形で、あまりはっきりしたルールを事前に公表しないで、相談を受けて対応していたものを、そういう個別対応ということではなくて、事前に行政の考え方をはっきりさせようという観点から取り入れている行政手法でございまして、ここ数年、ある意味で多用してきております。

取引一任勘定に関する事務ガイドラインは公表されておりますけれども、例えば取引一任勘定取引は基本的に禁止されているわけですけれども、内閣府令で、特定の、例えば顧客から同意を得ている場合は禁止の対象外となっております。事務ガイドラインは、どういうことを定めているか、特定の同意とは何かという具体例を挙げておりまして、特定の価格(あらかじめ定める方式により決定される価格を含む)以上での売り注文、または、それ以下での買い注文というふうに具体的に書いております。あるいは、特定の価格を基準値として一定の値幅をもって特定したもの。具体的に法令の解釈として、こういうことであれば、この法律、政令、省令の定める適用除外に該当しますよというのを定めたものでございます。

○ 神田部会長

よろしいですか。

○ 首藤委員

と申しますのは、ワーキング・グループの中でも、ガイドラインを行政に定めてほしいというような企業の方のご意見があったりしまして、私は、何もかもそういうガイドラインがなければ当事者ができないというような感覚といいますか、そういう考え方に非常に疑問を持ったものですから。

そういうガイドラインを導入して、それを一応クリアすれば問題ないとするというような考え方というのはやっぱり、この「証券改革促進プログラム」という大きな枠組みから見ますと、なにかそぐわないのではないかという気がいたします。事務ガイドラインということが非常に技術的なものにとどまるとすれば、必要なものなのかなという気もいたしますけれども。一応、意見として申しあげます。ありがとうございました。

○ 神田部会長

昔の通達に当たるものですね。

○ 首藤委員

そうですか。

○ 神田部会長

通達を全廃しましたので、それにかえて当時、事務ガイドラインというものを作りました。膨大な量ですけれども、これは金融庁のホームページから原則として全文ダウンロードできると思うのですけれども。

○ 首藤委員

そうですか。

○ 神田部会長

それから、今ご指摘の、ご質問のありました取引一任勘定についても、もうダウンロードはできる状態になっていると思います。1日ぐらいちょっとずれるかもしれませんが。法律の体系として制度を見ますと、証券取引法あるいは投資顧問業法とかがありまして、それでいわゆる政令、そして省令に当たる、内閣府令といっておりますけれども、そしてその下に事務ガイドライン、そういう体系になっています。

ですから、アメリカですと、規則に当たるのがルールといわれているもので、この事務ガイドラインに当たるものとしては、性格は若干違いますけれども、リリースと呼ばれているものがありますね。コンセプトリリースですとか、インタープリティブリリースですとか。うまく訳せなくて、日本語では解釈通達とかそんな訳をしたりしていますけれども、大体それに当たるものですね。制度としては。

それから、何をそういうもので定めたらいいかというのは内容の話で、これはそれぞれの事項ごとにきちんと議論しなければいけない話だとは思いますが。

よろしゅうございますでしょうか。

○ 首藤委員

はい、結構です。

○ 神田部会長

それでは高橋委員、お願いします。

○ 高橋委員

今の首藤先生のお話は、業者みずからガイドラインというのはつくるべきだというニュアンスでしょうか。

○ 首藤委員

そうです。

○ 高橋委員

それは、テクニカルには、今のご説明のとおりなんですが、業界側でも、これは証券業協会だけではなくて、投信でありますとか投資顧問、みんなそれぞれ、業界の自主ルールとして、規則があったり、あるいは理事会決議というのがあるんですけれども、やはりガイドラインとかそういう形で自主的につくっているものもたくさんございます。行政がつくってくれるだけではなくて、自分たちでやっているのもございますので、ご報告します。

それから、今ご説明のありました「『証券市場改革プログラム』の進捗状況」でございますが、プログラムができましたときにも、証券市場の活性化ということに関して、非常に幅広い観点からいろんなアプローチで市場活性化ということに向けた、大変コンプリヘンシブなプログラムをつくっていただいたということを申し上げた記憶がございますけれども、先ほどご報告のありました第一部会でご報告をまとめていただいた事柄も含めまして、さっき乙部課長からのご説明のあったことは、大変広範囲のことを短期間に、非常に困難な作業だったかと思いますけれども、全体をお取りまとめいただきましたことを大変感謝をいたしますし、市場活性化に、我々としても、業界としても役立てていかなければいけないと思います。

先ほどご報告の中にもありましたように、幾つか証券業協会として、あるいは証券界としてやるべき仕事がうたわれております。これらにつきましても、このプログラムの日程に沿って対応してきているつもりでございますし、また引き続き全力を挙げて対応をしていきたいと思います。

以上です。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。

○ 上柳委員

質問で、大体どのぐらいの時期がめどになっているのかなということで。これもきりがないのかもわかりませんけれども、できれば3項目について、簡単で結構です。教えてください。

2ページの真ん中の投資信託・投資顧問サービスのルールの強化そのほかの関係と、それから4ページの真ん中の、これは多岐にわたるのかもわかりませんけれども、いわゆる信託とか、あるいは特別勘定の受託者責任の問題と、それから5ページの上の方の金融商品販売法の勧誘方針についての改善要請。この3項目について、大体いつごろを目途とされているのかというのをお願いします。

○ 神田部会長

確かに日付が入っていないですね。全体として、できるものはできるだけ早くということだと思いますけれども。これはそれぞれ違うと思うのですけれども、山崎さんからお答えいただけるものはありますか。

○ 山崎市場企画官

投信・投資顧問の点については、ちょうどヒアリングを終わって大体、方向性を今年中には固めていきたいなと思っておりますが、実際、内閣府令等の改正については、今回、法律改正事項がございますので、政省令の改正とあわせてやろうかなというふうに考えております。

○ 乙部市場課長

4ページの機関投資家関連の事項は、来年の夏までにはやりたいと思います。

それから、金融商品販売法の関係で、マル2は業者に対する要請ですので、要請は直ちに行いますけれども、業者の人がどのぐらいのタイミングでやっていただくかということです。そういうタイミングでやらせていただきたいと思っています。

○ 神田部会長

よろしゅうございますでしょうか。

○ 上柳委員

わかりました。

○ 神田部会長

とにかくできるだけ早くということですね。一般論としていえば、このプログラム自体は、もう8月に公表しているわけですから。そのうち法律改正が必要になるようなものは、この第一部会でご議論いただきまして、きょう報告を取りまとめていただきましたので、年明けの通常国会には所要の法案を提出するということ。他方、府令レベルというんでしょうか、省令レベルで対応できるものは、もう済んでいるものもありますけれども、できるだけ早くやるというようなことで。その他、それぞれ証券業協会ですとか、あるいは取引所とかでやっていただくものについては、なお若干お時間が必要になるとは思いますけれども、そちらの方でご検討をいただくというような、大体そういうことかと思います。

いかがでしょうか。ほかにご意見、ご質問等ございませんでしょうか。

どうぞ、田島委員。よろしくお願いします。

○ 田島委員

証券税制のことについてお伺いしたいんですけれども、税制の改革というのはかなりインパクトの大きいもので、今回も「証券市場の改革促進プログラム」を一生懸命推進して何とか明るい方向に持っていこうとしていた矢先に、証券税制が非常にわかりにくいものとして示されまして、結局、投資家の証券離れというような危惧も感じたような状況があったんですけれども、一応、現時点では、ここに記載されているような形の税制に落ち着いて、そこの枠の中で税制が固まっていくと考えてよろしいのかどうか、その辺のところをお聞きしたいんですけれども。

○ 乙部市場課長

与党3党でお決めいただいたわけですので、そのとおりになると私どもは思っております。

○ 神田部会長

よろしいでしょうか。証券税制はいつも変化がめちゃくちゃですので二転三転しますが、今回少なくとも5年間はこれでいけそう…。

○ 田島委員

少なくとも5年間はこういう形のものを。

○ 神田部会長

ということじゃないでしょうかね。まあ、何が起きるかわからないということもありますけれども。何月何日からどうなるのか、確かにわけわからないですね。いや、どうも余計なことを申し上げました。証券市場を活性化してくれるといいのですけれども、なかなかうまくはいかないですね。

ほかにいかがでしょうか。

それでは、よろしゅうございますでしょうか。きょうは、予定した時間はまだ余裕がありますけれども、また来年以降もいろいろと難しい問題のご審議をお願いすることになろうかと思いますので、本日はこのあたりで終了させていただきたいと思います。

この後、私の方から記者会見を行いまして、本日の当部会の模様についてお話をしたいと思います。

当部会は、本年はこの秋、9月17日の会合以来、5回、会合を開かせていただきました。本日で年内の審議につきましては一応の区切りということにさせていただきます。これまで精力的なご議論をいただきまして、大変ありがとうございました。また、ワーキングにご参加していただきました委員の方々には、大変短期間に集中的なご議論をしていただきまして、御礼を申し上げます。

最後になりましたけれども、事務局の方から連絡等がありましたら、お願いします。

○ 乙部市場課長

ご多忙の中、ご議論いただきまして、ありがとうございました。事務局からもお礼申し上げます。

年明け以降の日程につきましては、神田部会長とご相談の上、改めて通知させていただきますので、よろしくお願いいたします。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。それでは、きょうはこれで散会させていただきます。

総会等にご出席の委員の方もいらっしゃると思いますけれども、そうでなければ、皆様方、どうかよいお年をお迎えください。

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