金融審議会金融分科会第一部会(第10回)議事録

日時:平成15年10月17日(金)10時00分~12時00分

場所:中央合同庁舎四号館(9階)金融庁特別会議室

○ 神田部会長

おはようございます。それでは、予定の時間になりましたので、ただいまから金融審議会金融分科会第一部会、今日は第10回目の会合になりますけれども、を開催させていただきます。

皆様方には、いつもご多忙のところをお集まりいただきまして、どうもありがとうございます。

なお、いつものことでありますけれども、この部会の議事は公開となっておりますので、報道機関の皆さんのために後ろの方に席を用意してございます。

それでは、早速ですけれども、議事次第に従いまして、始めます。前回、これは9月25日ですけれども、開催されました第9回の会議における自由討議において皆様方からさまざまなご意見をいただきました。それを踏まえて事務局の方から、今後の当部会の進め方について簡単にご説明していただきます。

○ 大森市場課長

前回のご意見を踏まえて、当面重点的にご議論願いたい事項を議事次第に3つ掲げてございますが、もとよりこれに限るという趣旨ではございません。制度論が本来のミッションである金融審議会の冒頭に投資教育を掲げておりますのは、前回申し上げたように、制度を変えても、それだけで個人投資家の意識や行動が変わって、すそ野が拡大するわけではないとすれば、これまで比較的看過されがちだったこの分野において何か政策的に取り組む余地がないかということでございます。行政としては、文部科学省との連携を強化するとか、あるいはNPOを含めた投資教育の推進体制の支援をするといったことが常識的には考えられますけれども、常識にとらわれないご意見をいただければ幸いでございます。

それから、次の投資サービスにおける投資家保護というのは、今朝の日経に気の早い記事が出ておりましたけれども、前回申し上げたように、昔からある議論でございます。黒沼先生の資料2と当方の資料3の間に、ビッグバンのときの「投資対象ワーキング・パーティー報告書」と横長の1枚紙が挟まっていると思います。投資対象ワーキングの報告書、4.有価証券の定義の見直しの(2)に、金融商品の経済実態が同じであれば適用ルールも同じであるべきですし、それは海外からの持ち込み商品であっても同じであるし、そういったことは取引の開始前に明確に認識されていなければいかんという、いわば一般論としては当然の条件が掲げてございます。

次のページの(4)(5)では、海外における信託受益証券とか、日本の組合に類似するリミテッドパートナーシップの持ち分証券、その他の資産運用商品に対しまして、証取法のディスクロージャー、公正取引ルール、仲介者ルールなどの適用を検討すべきとされております。

こういった資産運用型商品といいますか、集団型投資スキームの制度の現状がもう一つの横長の紙でございまして、ここに5つ掲げております右の3つがいわゆる組合型のスキームでございます。

一番右の民法の任意組合は、最も基本的な仕組みですが、組合員は無限責任ですから、組合が資産額を超えて借金して返せなくなるとか、不法行為責任を負わされたりしますと、出資額を超えた負担が生じ得ます。事業を執行する者への組合員の信頼を前提に機能する仕組みだといってよいと思います。

その左側の商法の匿名組合は、これは組合員が有限責任ですから、小口の資金を幅広く集めることが可能でございます。

真ん中の投資事業組合は、会計監査と簡易なディスクロージャーを課して、ベンチャー企業向けの資金調達手段として考案されたものでありまして、前回も申しましたけれども、今後法改正により、中小企業に限らずすべての企業の株式などに投資対象を拡大する予定と聞いております。

こういった組合型のスキームあるいは信託受益証券など新たに登場する投資商品の投資家保護をどう整合的、横断的に図っていくかというのは、言葉を変えると、神田先生のおっしゃる日本版の金融サービス法の議論といってよろしいと思います。

それから、3番目、同じく日本版SECとでもといいますか、そういった議論が監視機能の強化でございまして、今日は時間の制約上、テーマを課徴金に限りますが、これが仮にアメリカのように機能するのであれば、単に金融界だけではなくて、あらゆる企業にとってのコンプライアンスといいますか、ガバナンスに欠陥があると、例えば雪印食品のような運命になりかねないという意味で、潜在的に極めて影響の大きな議論だと思います。

課徴金とか是正命令とかというのは、備えるべきツールの問題ですけれども、これまで不公正取引の事実認定を監視委員会が行って、証券会社の財務の健全性やコンプライアンスは金融庁検査局が検査をしてきたという体制の一元化という課題がございます。これは、客観情勢としては、ビッグバンを経て証券会社が登録制になって、顧客資産の分別管理を義務づけたことによりまして、分別管理を遵守している限りにおいては、仮に会社が破綻しても、投資家保護上、基本的には問題が生じなくなる。そういった客観情勢の変化を踏まえて私どもの体制の一元化ということも検討していく必要があるでしょうし、前回申し上げましたように、当局の体制が改革されるのであれば、それに呼応する形で証券業協会とか取引所の自主規制のあり方が検証されるのも自然な流れだと思います。

先般の取引所ワーキングにおきましても、ジャスダックの取引所化という紹介があった途端に、アメリカのNASDのような市場と自主規制機関の利益相反、分離の必要性といった意見が多くございました。加えて、日本の証券業協会は業界団体でもありまして、取引所ワーキングの守備範囲を超える部分もございますので、今後当部会においてもご議論願えればと思います。

それから、本日は所用で欠席しておられますが、島崎委員から、経団連としてインサイダー取引規制のあり方について検討しているので、今後当部会で議論をしたいという意見書をいただいております。これも、従来から経済界とはいろんな意見交換をしてきておりまして、バスケットクローズの問題などがあるわけですけれども、例えば自社で取り扱っている薬の副作用を知って売り抜けたというのを摘発できない仕組みは国民から許容されるはずはありませんが、一方であまりにも李下に冠を正さずというのが行き過ぎますと、正当な自社株買いもできない、グレーゾーンの扱いが不明確で、必要以上に躊躇してしまうというようなこともあるようでございますから、貯蓄から投資への流れというのに障害となることがないようなインサイダー取引規制、その他不公正取引規制のあり方というのは当部会でも今後ご議論いただかなければいけないことだと思っております。

以上ですけれども、事務局としては、今後の検討課題を固定的には考えておりませんので、議論に応じてまた必要な準備をさせていただきたいと思っております。

以上でございます。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

というわけで、ワーキンググループの方でご議論いただいている以外にもこの部会で直接ご議論いただくべき重要なテーマがたくさんありまして、本日から大変立て込んだ議事進行になると思いますけれども、どうぞよろしくお願い申し上げます。

そこで、この3つの柱につきまして、今日は若干の委員の方々のお手を煩わせましてご報告いただいて、ご議論いただきたいと思いますけれども、何分時間が限られておりますので、議論し切れなかった点は次回以降に引き続き議論するということで進めさせていただきたいと思います。

それでは、まず1つ目の柱であります「投資教育のあり方について」でありますけれども、今日は高橋委員と板谷委員からお話しいただけるということでご了解いただいています。大変恐縮ですがお一人10分ということで、まず高橋委員からどうかよろしくお願いいたします。

○ 高橋委員

ご発言の場を与えていただきまして、ありがとうございます。大森市場課長からお話がありましたように、制度の整備とあわせて、消費者といいますか、学校の生徒、学生を含めまして意識改革をどう進めていくかというのは大変重要なテーマだと思います。証券業界といたしましても、自社でいろいろな工夫をして対応していただいていると同時に、各団体でもそれぞれ証券知識の普及啓発あるいは投資教育というところに力を入れているところでございます。大変立て込んだ日程になっておりますので、できるだけ簡単にご報告したいと思います。

お手元に2つ資料がございまして、1つは「ポイント」と書いてあるもので、この「ポイント」に沿いましてご報告したいと思いますが、3枚目についております横長の「証券団体等における主要な投資教育・証券知識普及啓発活動」という資料をご覧いただきながらお聞きいただきたいと思います。

大きく2つに分けておりまして、1つは一般消費者に対する知識普及啓発活動というようなもの、もう一つは学校教育、2つに分けてございます。

初めに一般消費者でございますけれども、一般消費者に対する対応というところで、この表をご覧いただきたいと思います。団体としてどういう活動をしているかというふうに整理してありますので、ちょっと見にくいかと思いますが、一番左が証券知識普及プロジェクト、これは証券業協会のほかに東京証券取引所あるいは投信協会、参加者協会、広報センターというところが共同でプロジェクトとして対応している仕事でございます。真ん中のところは証券業協会が直接やっております仕事、あるいは証券業界が支援してつくっておりますNPOエイプロシスと書いてございますけれども、エイプロシスでやっている仕事、その右側は東京証券取引所、証券広報センターがそれぞれやっている仕事、そういう分類でございます。

社会人向けにやっております仕事を大きく分けますと、1つは、グループでの勉強会等に講師を派遣して説明会をしたりする仕事、それからセミナーを開催する仕事、相談窓口を設置する、証券知識を得たい、教えてもらいたい、あるいは相談したいという人に対して直接接触する形での普及活動でございます。

例えば、先ほどの分類で、右から3列目のNPOエイプロシスと書いてありますところに「講師派遣」と書いてございます。証券カウンセラー、投資クラブ相談員という制度でございます。これは、証券会社のOBの人を中心に200名を超すボランタリーで普及活動をするという人のリストをつくってございまして、全国どこでも、あるいは時間的にも、曜日的にも、いつでも、グループで話を聞きたい、あるいは相談をしたいというようなご要請をいただけば講師を派遣するという仕事でございます。もちろん無料で講師を派遣する、こういう仕事でございます。それは証券カウンセラーということでございますけれども、直接そういうニーズにこたえていくということを始めております。

その中でも、投資クラブをつくりたいというニーズに対しましては、投資クラブを設立するためのいろいろなご相談に応じています。投資クラブというのは、仲間で集まって共同で証券投資について学習したり、また少額ずつ出し合って、一定のまとまった金額として証券投資活動をする、こういうことをするのが投資クラブでございますが、投資クラブ設立のためのご相談に応じる、そういうような仕事をやっております。

セミナーにつきましては、証券業協会のところにあります株式投資等入門講座あるいは女性対象入門講座、それぞれテーマごとにセミナーを開催しております。東京証券取引所のところをご覧いただきますと、レディースセミナーであるとか、インサイダー取引規制のためのセミナー、オープンスクール等々、テーマごとにいろいろな工夫をしてセミナーを開催いたしております。東証でやりますときは、株式の報道でおなじみのアローズ、アローズといっているんですけれども、あそこでやるものですから大変人気があるセミナーとなっております。それから証券広報センター、ここでは、大規模なセミナーとか、あるいは企業のIRを兼ねたセミナーといったようなまた別な観点、切り口からセミナーを開催しているということでございます。

そのほか相談窓口は、初心者の投資入門相談が必要だということで、エイプロシスのところの3つ目に書いてございますように、相談窓口を常時開設しておくというようなことも始めております。

こういう形で、一般消費者の方に直接いろいろなルートで接触して、啓蒙啓発活動をするというのが大きな一つの仕事でございます。

もう一つは、広報活動を通じて啓蒙啓発活動をするということで、一番左側にございますように、「How To 資産運用」というビデオ教材をつくっております。女優さんに出演してもらいまして、なかなかおもろしく投資についての知識を得られるというようなビデオをつくっております。全国各地のライブラリーに置いていただきまして、一般の方にいつでも見ていただけるような仕組みにしております。

それから、真ん中の欄のところにありますパンフレットでございますけれども、これは広報パンフレットということで、そのときどきのテーマ、税制でありますとか、あるいは分別保管、インサイダー取引規制といったような問題ごとにパンフレットをつくって、広報活動をしております。

そういう活動の中心となるホームページといたしまして、証券業協会の下の方に書いてございます「わたしの街の証券会社」というホームページを開設いたしております。そのホームページを開きますと、自分の家の近くのどこに証券会社あるいは証券会社のお店があるかということがすぐわかる、一覧できるようなホームページでありますと同時に、いろいろなセミナー活動等が自分の家の近くではどこでやっているかが一覧できる、そういうホームページを開設いたしております。一般消費者についてはそういう活動をしております。

それから、学校教育でございますけれども、一番上の欄は先生に対するもの、それから大学等の高等教育、初等中等教育(中学、高校)、そういうふうに分けて今のような活動をしているわけでございますが、中心になりますのは株式学習ゲームというものであります。これは、中高が中心ですが、一部大学生も入っておりまして、学校の公民でありますとか政治経済の時間に、株式の模擬売買というものに参加してもらう。インターネットで参加していただけるようになっておりますけれども、まだ紙で参加していただいているのもございます。3ヵ月ぐらいの間、実際にいろいろな銘柄に投資していただく。チームでやってもらうんですけれども、1,000万円の元金を持ってもらって、それを運用、売ったり買ったりしていただくということで、3ヵ月たったところで成果を比較する、こういうことでございます。

これをやっております学校の先生あるいは生徒の感想を聞きますと、いろいろ社会問題等を勉強しなければいけないということで、大変株に対する興味も増えたし、また政治経済に対する関心も増えてきたというような評価をいただいておりますが、株式学習ゲームというのをやっております。

そのほか、先ほど申し上げました講師の派遣制度、あるいはセミナー等々、学生向け、中高生向けに対応いたしております。

広報教材といたしましてビデオ教材、一番左の証券知識普及プロジェクト、団体が共同でやっております中の下の方に書いてございます「かぶしき虎の巻き」というビデオ教材をつくっておりますが、学校に差し上げておりまして、学校で授業のときに見ていただくというようなことで使っていただいております。

それから、「証券クエスト」という基礎的な知識を習得できるようなホームページをつくっております。「証券クエスト」というホームページ、大変多いアクセスが行われているというふうに承知いたしております。

そのほか、例えば東証のところの一番下にありますように東証アローズ見学。修学旅行等で上京される方に東証アローズを見ていただくということで、大変評判がいいようでございます。そういうことを通じまして学校の生徒に対する啓蒙啓発活動をやっております。

これとあわせまして、学校の先生に対しまして、株式学習ゲームの説明会をやりますほか、教員に対するインターンシップあるいは教員向け夏期学習講座等々、いろんな言い方をしておりますけれども、先生方に証券会社のお店でありますとか、あるいは東京証券取引所でありますとか、そういう現場に来ていただいて、いろいろ見ていただく、勉強していただくというようなことも、先生の都合で夏休みとか、そういうときにしかできないんですけれども、精力的に取り組んでおります。これが今やっております主な普及啓蒙活動でございます。

サマリーの方をご覧いただきたいんですけれども、今後の活動として私どもが考えなければいけないことを整理させていだたいております。

1枚目の一般消費者に対する啓蒙活動の今後の課題として考えられますのは、今やっておりますような草の根の消費者と接触して行う広報活動をもっときめ細かく、あるいは重点的にニーズに合ったように展開していきたいということでございますが、その中で、特にこういう活動をしていることの周知がなかなか行われていないということで、こういう場があるということを、ピンポイント的な広報を通じて周知を図っていきたいというふうに思っております。

投資クラブの普及というところでは、今、投資クラブは日本で250ぐらいしかないんですけれども、だんだん増えてきてそれぐらいです。諸外国、アメリカでは4万以上あると言われておりますし、イギリスでも最近急速に増えて1万ある。投資クラブというものが証券知識の普及啓発に大変役に立っているということでございますので、投資クラブの普及というものも図ってまいりたいということでございます。

2枚目の学校教育につきましては、先ほど申し上げましたように中高あるいは大学というようなカテゴリーでとらえて、こういうことをやっているわけでございますけれども、先生方のお話などをいろいろ伺いますと、そこに書いてございますように、成長発達段階といいますか、小学校の低学年あるいは中学年、高学年、中学生、高校生、それぞれもっときめ細かいカリキュラムがあった方がいいのではないか、お金の話ということで小学校の低学年でも実施した方がいいような課題があるよ、ということを先生方からも伺っております。カリキュラムをつくる、それにふさわしい教材の制作、副読本といったようなものをつくる、あるいは学習方法のモデルをつくっていくというようなことを今後工夫していきたいと思いますし、学校の先生方にもう少し問題意識を持っていただくような機会をどうやってつくっていくかということも工夫していきたいというふうに思っております。

以上ご報告させていただきます。

○ 神田部会長

ありがとうございました。

それでは、続きまして板谷委員から、どうぞよろしくお願いいたします。

○ 板谷委員

それでは、私の方から投資教育のあり方ということでお話をさせていただきます。私ども野村証券で実際に行っております投資教育について主なものをご紹介しつつ、投資教育への取り組み方、課題などを述べさせていただきたいと思います。

ご存知の方も多いかと思いますけれども、平成14年5月に発表されました内閣府の世論調査では、77%の方が「証券投資を行うつもりがない」でありまして、「株式投資に関する知識を持っていないから」というのが理由のトップに上がっておりましたが、証券知識の普及、教育の重要性が高いということが示されているかと思います。また、現在、当審議会のディスクロージャーワーキングで目論見書の改善についての議論がされておりますが、証券投資の前提であります自己責任原則を広く実現するためには、開示の内容や方法を改善することはもちろん重要でございますが、これに加えて投資知識を広く普及させるといったことも肝要かというふうに考えております。

お手元のパンフレットでございますけれども、その3ページにもありますが、私どもは、証券市場のすそ野を広げるということが経済の発展、豊かな社会につながるというふうに考えておりまして、そのために必要である金融・証券市場に関する教育機会の拡充ということについて社会貢献、社会活動の一環として取り組んでまいりました。

パンフレットの4ページですが、少し細かいので、拡大したものがお手元にあろうかと思いますが、それをご覧いただければと思います。弊社では、さまざまな経済・証券教育に取り組んでおります。パンフレットの5ページから8ページにかけまして、大学向け講座、STOCKリーグ、経済学習サイト、小学生向けの漫画、ケーブルテレビ、地域コミュニティーでの活動、確定拠出年金などについて説明がございますが、このうち4点につきまして具体的に紹介したいと思います。

まず第1点目ですが、大学向けの証券教育講座でございまして、いわゆる冠講座です。今年度開講した大学は110を超えております。将来の日本経済を担っていく大学生に、企業実務などより実践的で生きた知識を提供して、将来の投資家や証券業を担う人材の育成を目指して平成13年に始めたものでございますが、現在は先ほど申し上げましたように110を超える講座が開かれています。講師は私どもの役職員が務めておりまして、昨年は延べ400人が講師として教壇に立ち、受講した学生の数は2万人を超えております。これは、1回だけの講演ということではなく、コースとして単位取得の対象としている大学が多くございます。

第2点目は、大学生、高校生、中学生を対象とするSTOCKリーグでございます。これは、日本経済新聞社の主催でございますが、金融庁、東京証券取引所、日本証券業協会、全国公民科社会科教育研究会、日本私学教育研究所、全国商業高等学校協会が後援しておられるんですけれども、私どもも特別協賛という形で参加させていただいております。

STOCKリーグは、学校教育の場における投資教育の一つのツールとして企画したものでございますが、コンテスト形式の株式投資学習プログラムでございます。学生が3人から5人で一つのチームをつくり、指導を行う先生のもとで、自由にテーマを設定し、それに基づいてポートフォリオを組成するということでございます。STOCKリーグでは、株式売買の運用成績を競うのではなく、ポートフォリオに組み入れた会社を選んだ理由についてレポートを提出してもらい、そのレポートを審査するということにしております。これは、株式売買のやり方を学ぶということに主眼があるのではなく、株式投資が持つ意味について学んでもらうというふうに考えているからでございます。

第4回目が始まっておりますけれども、これまで毎回レポートをまとめておりますが、例えば平成14年2月の予算委員会で当時の柳沢大臣が学生のレポートを紹介しておられますが、その中で、これから自分たちの投資は自分たちの役に立つ企業を育てるため、そういう先に自分たちは投資をしなければいけないという学生のレポートを紹介し、大臣の方から、健全な株式投資の考え方がそこでレポートされていたというようなコメントもございました。私どもも、株式を通じて企業や社会を見る目が育ってきているというふうに感じております。STOCKリーグの参加者は、毎年増加しておりまして、本年度第4回目でございますが、学校数が256、参加者が5,379名というふうになってきております。

3点目は、学習漫画への協賛ということですが、今後、義務教育における金融教育も広がっていくものと思われますが、社会人になったときに必要な経済や金融の仕組みを未来を担う子供たちに学んでいだたくことは重要であるというふうに考えております。

そこで、小学生対象でございますので漫画という形をとっておりますが、漫画でお金や銀行、証券会社の役割をやさしく解説した金融学習書、「お金のひみつ-証券会社の仕事」というものでございますが、このプロジェクトに協賛し、全国2万4,000の小学校、2,400ヵ所の公立図書館に学習漫画を寄贈いたしました。この学習漫画の編集に当たっては、金融広報中央委員会にもご協力いただいております。お手元のパンフレットの7ページに写真がございますけれども、ページ数にして130ページ程度のものでございますが、こういうものもつくっております。

この漫画は小学校高学年向けに制作したんですけれども、先生方の中には内容が難しくて理解できないのではないかという心配される声もございました。しかし、実際には、子供たちが夢中になって読んでおり、借りるのに順番待ちの状態だといったような声も寄せられておりますし、子供が借りた本を親が熱心に読んでいたというような予想外の効果もあったように聞いております。

最後に、確定拠出年金に関するものですけれども、確定拠出年金を導入する企業は、従業員に対しまして資産の運用に関する基礎的な資料の提供を行うなど投資教育を行うことが義務づけられておりまして、金融機関等にアウトソースする企業が多くなっておりますが、私どもの会社あるいはグループの会社でも投資教育のサポートをさせていただいております。今後多くの企業が年金の一部を確定拠出年金に移行することも予想され、確定拠出年金に伴う教育は一層重要性が高くなるというふうに思われます。また、この教育は、直接的には確定拠出年金で運用する資産を適切に選択していただくためのものでございますが、それにとどまらず経済や金融について改めて考えていただく、そういう機会にもなっております。

以上、私どもが取り組んでいる証券投資教育についての実際をご報告いたしましたけれども、課題として考えていることを若干申し述べます。

以上述べたようにさまざまな投資教育に参加させていただいておりますけれども、一企業で行うことができることにはおのずと限界がございます。例えば大学向けの冠講座についてですが、現在でも多くの大学から講師派遣の依頼がございます。ただ、すべてのご要望に対応することは難しい状況となっています。小学校、中学校、高校になりますと、講師の派遣といった形はほぼ不可能と言えるかと思います。学習書の配布は行いましたが、これを先生方、さらに学生の方々にご理解いただくためには、金融教育、投資教育が教育制度の中に組み入れられる必要があるというふうに考えております。既にご存知の方も多いと思いますが、金融庁のご尽力により10月7日に副教材が完成し、文部科学省に対して金融教育への協力要請が行われるところでございますが、金融教育、証券教育がこういった形で大きく前進していくといいというふうに期待しておりますし、今回の副教材の完成というのはそれに大きく貢献するものであるというふうに考えております。

それから、前回の部会で証券市場のインフラ整備にもっとコストをかけるべきではないかというご趣旨の意見もあったかと思いますが、まさに投資教育はインフラ整備であるというふうに考えております。私どもとして、一企業でございますから限界はございますけれども、これからも学ぶことに意欲のある人々にこたえる仕組みとプログラムを提供して、未来を担う子供たちをはじめ金融知識を必要としている方々に、経済、金融、証券を幅広く学んでいただく機会を提供してまいりたい、そういうふうに考えております。いずれにせよ、いろんな関係者が証券教育、投資教育というものに取り組んで、それがだんだん進んできているというのが現状かと思います。

以上でございます。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

それでは、今お2人からお話をいただきましたので、そのお話についてのご質問、ご意見、あるいはこの部会でこの問題をどういう考え方で議論していったらいいかという点についてのご意見でも結構ですので、ご自由にお出しいただければと思います。どなたからでもどうぞお願いします。

○ 嘉治委員

ありがとうございます。板谷委員のお話の中に、学ぶ意欲のある方々に対する教育を積極的に進めていきたいというお話がありました。高橋委員と板谷委員のお話はいずれも、証券市場に参加する消費者を増やすための努力がいかになされているかよくわかり、大変勉強になりました。しかしいずれも、証券市場に参加し続けるレベルまでいっていない投資家を、参加し続けることのできるレベルまで引き上げるというお話です。現状を所与として、まだ知識のない投資家をどうやってそこまで引き上げるのかというお話であって、現状ちょっと高度な知識が必要とされている、そのレベルを下げるというお話ではないわけです。それが必ずしも良いとか悪いとかではなくて、事実としてそういうお話になっていると思われます。

小中学校から始めて、株式・債券への投資について学んで、日常的なものとしてそこに普通にあるものとして育ってきた子供たちが大人になれば、確かに必要とされるレベルの能力を持った投資家の厚い層が日本にもできてくるのかもしれません。しかし小中学校から始めれば、単純計算すれば15年か20年かかります。過渡的な措置かもしれませんが、既に大人になっていて、小中学校でそういう環境にさらされることがなかった世代も証券市場に参加することを促すのだとしたら、何か措置が必要なのかもしれません。投資家として必要とされているこのレベルまで上がってきてください、上がってこられない人は参加しなくて結構ですということでいくのか、それとも必要とされるレベルがより低く感じられる手助けのようなことをする必要があるのかという疑問がまだ残ると思われます。

つまり、一言で言ってしまえば証券市場に参加する投資家としてどのレベルの能力を要求するのかという質問に尽きると思います。そのあたりはどのように考えていったらいいのかということを伺いたいと思います。

○ 神田部会長

高橋さんから何かお答えいただければ。

○ 高橋委員

先ほど申し上げましたように、学校教育だけではなくて、いろいろなスクールをつくっております。こちらで用意するセミナーは、ご婦人の方とか、お年寄りの方とか、いろんな工夫をしながらやってニーズに合わせていきたいということであります。もう一つ、さっき申し上げました講師派遣は、仲間でつくっていただいて質問していただくとか、あるいはこういうお話をしてほしいと言われればするということで、できるだけニーズに合ったきめ細かい対応をしようということであります。

私どもが今やっているのはそういうことで、証券知識というのは一定のレベル以上でないとできないということは全く前提にしておりませんので、証券への投資はそんなに難しいものではないということは、参加していただけばおわかりいただけるのではないかなというふうに思います。

9月に電通が発表したアンケート調査でも、「知識を持ちたい」とか、あるいは「身近に教えてくれる人がいれば参加する」というような方が今やっていない人の半分ぐらいはいるということで、そういうニーズが非常に高いということがわかるんですが、同じ調査の中で、「まとまったお金がないから投資できない」あるいは「近くに証券会社がないからできない」とか、いろんなことがあるんだけれども、それは必ずしも実態と違うのではないかというようなことがアンケート調査の結果、出ております。詳しくは申し上げませんけれども、例えば、1回買うのに100万円以上なければいけないと思っている人が3分の1いるとか、自分の運用財産が1,000万から2,000万ぐらいないと株式あるいは証券取引に参加できない、というようなことがアンケート調査で出ているわけです。

そういうこと、例えばまとまったお金がないから参加できないことに結びついているというアンケート調査になっているんですけれども、実際はそうではないわけです。例えば、投信まで含めれば、あるいはミニ投資とか、いろんなルートがありまして、小さいお金でできるということでもありますし、今、先生がおっしゃったような非常に高度な知識というものを前提として市場が成り立っているのではないということもあわせてわかっていただくような啓蒙啓発活動、あるいは教育活動をやっているつもりです。まだまだ不十分なことがあれば、今おっしゃったようなことを踏まえて工夫していく必要があると思いますが、そんなつもりでやっております。

○ 嘉治委員

お話は良くわかりますが、今のお話もよく見てよく学んでさえくだされば難しくないというお話だと思います。証券投資を専門のお仕事とされてきた方は、ちょっと勉強すれば難しいことではない、誰でもできることだということを実感としてもっておられると思います。しかし全く別の世界で、銀行預金しか持たずに40歳、50歳まで来てしまった人間にとっては、ちょっと勉強すれば私にもできるということに、そうすぐはならないと思われます。

今やっておられることが不十分だとか、目的に到達するために役立っていないということは決して申しておりません。大変貴重なことだと思います。けれども、人を一定のレベルのところまで上に動かすのか、上にあるレベルを人の方向に下げるのか、その発想の転換も少なくとも過渡的には必要なのかもしれないというのが私の申し上げたいことです。

○ 高橋委員

板谷さんからもコメントがあるかと思いますが、その点については全くおっしゃるとおりでありまして、例えば投信の目論見書についていろんなご議論をいただいて、わかりやすい、簡素なものにしようということで、これはご当局もいろいろやっていただいて、またこの部会でもそういう議論がされています。あるいは手続的にも、もっと簡素化できるものがないだろうかということ、これは私どもの永遠の課題といいますか、わかりにくいようなもの、あるいは手続的に複雑なものの是正には、まさに今、先生がおっしゃったように絶えず努力していきたいと思っております。上のものを下げるという意識は全くないんですけれども、理解しやすいような仕組みという努力は大変大きな課題だと思っております。

○ 神田部会長

西村委員、どうぞ。

○ 西村委員

今の点に関係するんですけれども、いろいろ誤解があるのではないかという気がします。2点ほどありまして、1点は、半分の人が投資をしたいというふうに言っているということは、半分の人は投資したくないと言っているわけですね。これはかなり大きな数字だろう。私もアンケート調査とか、いろんなものをやっていますが、アンケート調査で「何かをしたいですか」と聞くと、「したいです」というのが大抵普通なんですね。それにもかかわらずそういうようなアパシーといいますか、そういうものがあるというのは十分に考えなければいけないのではないかなというふうに思います。

それはどうしてかというと、カジノ資本主義というような形で一般的に喧伝されたネガティブな要素というのが物凄くあるわけです。その要素は、例えば証券取引はいかに簡単ですということを幾ら言ったところで、恐らく変わらないだろう。問題は、リスクに対する教育、つまりどういうときにリスクをとるのか、またどういうときにリスクがとれるのかという教育と、もう一つは手数料なり何なりのコストの問題です。コストの問題に関しての明快な教育なり何なりがないと、こういうアパシーを乗り越えるというのは難しいのではないかというふうに思います。この件についていかがでしょうか、ちょっとお聞きしたいと思います。

○ 神田部会長

いかがでしょうか、高橋委員、それから板谷委員。

○ 高橋委員

アンケートのことを私がさっき申し上げましたのは、やりたい人が半分だと申し上げたのではなくて、この調査では、これは株式投資なんですけれども、今、株式投資をしていない人だけのアンケートで、「何らかの障害が取り除かれればやってみたい」という人は63%です。私が約50と申し上げましたのは、そのうち「投資の知識がないからやらない」という人が47.9ですが、それを約50と申し上げました。同じ調査で、「身近なところに教えてくれる人がいればやりたい」という人が47.8とか、約5割の人が障害として感じているのはそういうことだということで5割と申し上げたので、5割の人がやりたくないということではなく、この調査では、63%の人が少なくとも「やりたい」と言っているということでありまして、私のアンケートの引用が不十分だったかと思いますので、その点についてご説明させていただきたいと思います。

○ 西村委員

その点についてもう一点言いますと、普通、アンケート調査には必ずサンプルセレクションバイアスが生じますので、基本的にアンケートに応募すること自体、ある程度興味を持っているということになります。だから、その点についても考えてアンケートの数字は考えなければいけないですね。そういうことから考えると、その数字はさほど高いものだというふうには思えないということです。

○ 神田部会長

板谷さん、どうぞ。

○ 板谷委員

先ほどの嘉冶委員の質問もあわせて少し私の考えていることを申し上げますと、高橋委員の発言にありましたように、投資そのものをわかりやすくするという努力を同時にされるべきだと思うし、ディスクロージャー委員会等でそういうものが行われているというのが一つございます。

それから、残念なんですけれども、ドアを開けていただくと、そんなに高度な知識がなくても対応することは十分可能なものも随分あるわけですが、入り口のところでドアを叩かずに回れ右をしてしまうという方の数が多いのが現実としてあると思います。そういう意味で、先ほどのネガティブな評価等が世の中一般にあるという部分に関係すると思いますけれども、先ほど中学、高校、大学あるいは小学生向けの話をさせていただきましたが、これについては、まず中長期的な課題として取り組んでいます。それから、私どもがやっておりますけれども、私ども証券会社のビジネスとは全く切り離した形でやるということで、やっております。その要素を限りなくゼロにすることによって、入り口のドアを叩きやすくするということがあるのではないかなと思います。

足元の話ということで言いますと、4番目の点でご説明いたしました確定拠出にかかわる投資教育は大人が対象でございますし、現実に自分の資産のポートフォリオをどうやってつくっていくかということでございますので、ここは個々の方が真剣に考えざるを得ないという状況だと思います。それは、単に確定拠出年金、自分のポートフォリオだけではなくて、年々の金融資産の増加というのは、その仕組みだけではなくて、別の財布の資産も増えているわけですから、その機会に自分の全体の金融資産をどう運営していくのかというのは現実の問題として出てきておるというふうに思いますので、これがだんだん進んでいくのではないかなというふうに期待しております。

それから、パンフレットの中にあるんですけれども、地域コミュニティーにおける証券学習活動ということも始めておりますが、これなどは関心をお持ちの地域コミュニティーの人たち、中高年齢層の方々も積極的に参加しておられまして、そういうのがだんだん増えてきているという意味では、証券知識の普及が現実の行動に結びつくというのもだんだん出てきているのではないか。だから、ここはそれをさらに後押し、促進していく時期ではなかろうかなというふうに思います。

○ 神田部会長

ありがとうございます。なかなか難しい問題で、まだまだ議論を深めたいのですけれども、時間の関係もあってこの問題は引き続き議論したいと思っておりますが、いかがでしょうか、先へ進ませていただいてよろしゅうございますでしょうか。

どうもありがとうございます。それでは、先へ進ませていただきます。次に黒沼委員から、「投資サービスにおける投資者保護のあり方」についてお話をしていただきたいと思います。大変恐縮ですが、20分以内ということで、ひとつよろしくお願いします。

○ 黒沼委員

それでは、「投資サービスにおける投資者保護のあり方」ということで、お手元にレジュメを配布させていただいておりますので、それに沿って話をさせていただきます。

具体的には、そのレジュメの表題に掲げましたように、日米欧における有価証券・投資サービスの定義と規制をパートナーシップ、集団投資スキームを中心として紹介するというものであります。その問題意識は、最初に大森課長が話されたとおりであります。

まず日本ですけれども、我が国の証券取引法における有価証券の定義は、権利について証券・証書が発行されるべきものとそうでないものとに分けた上で、それぞれ限定列挙プラス政令指定の方式を採用しています。

そこで、営利企業の持ち分のうち、株式を標章する株券は有価証券ですが、有限会社・合名会社・合資会社の持ち分・匿名組合への出資は有価証券とされておりません。民法上の組合の持ち分・投資事業有限責任組合等の特別法上の組合の持ち分も、有価証券として列挙も指定もされていないため、有価証券ではありません。このように、証券取引法の有価証券の定義は、いわば閉じていると言えます。

これに対し、平成3年の証券取引審議会報告書は、アメリカの判例に倣った幅広い有価証券概念の導入を提唱しましたが、これは平成4年の改正時には導入されず、個別列挙規定が整備されたにとどまりました。他方で、投資先の事業に応じて個別立法による手当てが進められ、リース債権、クレジット債権の証券化については特定債権規制法、不動産取引に対する出資については不動産特定共同事業法が制定されましたが、個別立法による手当てがなされたものについては、証券取引法上の有価証券としての指定が見送られています。

ただし、資産の流動化に関しましては、投資先の事業によって規制内容を変えない方式がとられました。すなわち、資産流動化法は、流動化の手段として特定目的会社と特定目的信託の制度を用意し、証券取引法は、特定目的会社の証券や特定目的信託の受益証券を証券取引法上の有価証券としましたので、これらの仕組みを利用する限り、投資者が取得する権利について証券取引法による保護が与えられます。

集団投資スキームについては、平成12年の改正で投資信託、投資法人の投資対象が不動産、その他の資産に拡大されました。しかし、集団投資スキームの媒体については、同法上の投資信託と投資法人に限定しており、例えば匿名組合・民法上の組合・投資事業有限責任組合を利用した集団投資スキームは同法の適用対象となっておりません。

このような問題点につきましては、1998年の「新しい金融の流れに関する懇談会」の論点整理において、投資対象や投資ビークルの形態にかかわらず、横断的に適用されるべきルールについて検討していく必要と、幅広い集団投資スキームをカバーできる包括的な金融商品の定義のあり方について考える必要が指摘されていたところであります。

ある証券や権利が証券取引法上の有価証券とされますと、その証券や発行者について開示規制が適用され、その証券の売買や媒介をすることは証券業として規制されます。また、その取引について証券取引法上の不公正取引規制が適用され、さらに、取引所における取引については取引所の自主規制ルール、証券会社と投資家との関係については証券業協会の自主規制ルールも適用されます。

このように有価証券概念を介した3つの規制の同時発動、特に開示規制と営業規制との結びつきが従来、有価証券の定義を難しくしてきたと言われています。しかし、平成4年の証取法改正は、ある証券を有価証券としても、その取り扱いを証券会社以外の金融機関に認め得ることを法律上、明らかにしました。開示規制と営業規制をリンクさせることは必然ではありませんので、法律に規定さえおけば、ある証券を有価証券としつつ、その取り扱いを証券業の定義から除外し、金融機関のみならず金融機関以外の者にもその取り扱いを認めることも可能であろうと思われます。ただし、その場合、何らかの営業規制は必要になってくると思われます。

次に米国ですが、米国の1933年証券法2条は、株式、社債などの伝統的証券のほかに、投資契約(インベストメント・コントラクト)を証券(セキュリティーズ)の定義に掲げており、この投資契約が一種の包括条項の役割を果たしています。1934年取引所法3条による証券の定義もほぼ同じであります。

判例によると、投資契約とは、ある者が主として他者の努力によって収益を得ることを期待して、共同事業に資金を出資する契約である、とされています。すなわち、ここでは、資金の出資、共同事業、収益の期待、他者の努力の4つの要素が基準とされており、この基準はハウィー基準と呼ばれています。

そして、リミテッド・パートナーシップの持ち分は、投資契約に該当し、証券であるとする裁判例が多いようです。ただし、これはケース・バイ・ケースで判断されます。不動産に対する投資契約も、ハウィー基準を満たせば証券に該当することになります。しかし、逆に、制定法に列挙された証券であっても、解釈により証券法・取引所法による証券でないと判断される場合もあります。例えば預金証書は、連邦法により預金者が十分保護されていることを理由に、取引所法上の証券に該当しないとした判例があります。

投資信託の受益証券や投資会社の持ち分も、証券法及び取引所法の証券に該当し、証券法下の登録、取引所法下の登録・強制開示制度の適用対象となります。さらに、1940年投資会社法は、投資会社の登録を求め(8条)、さまざまな開示や報告要件を定めています。ここにいう投資会社とは、機能面から一般的に定義されており、株式会社や信託といった私法上の形態をとりません。パートナーシップを用いた集団投資も、投資会社の概念に当てはまると考えられます。投資会社の投資対象は証券なのですが、その証券の定義は、証券法・取引所法の証券の定義とほぼ一致しており、その範囲は広いものであります。ただし、一定の条件を満たす資産担保証券の発行者は、SEC規則により投資会社の定義から除外されています。

投資会社法では、投資会社の投資構造のほか投資会社持ち分の販売規制を行っています。ある投資契約上の権利が証券に該当しますと、その権利を公募する場合には、証券法による発行開示規制が適用されます。ただし、SECが公益及び投資者保護にとって必要ないと認めるときは、小規模事業投資会社の発行する証券を適用除外とすることができ、これに従ってレギュレーションEが定められています。その小規模事業投資会社は投資会社法の規制を受けることになります。また、証券を公募した場合、証券を上場した場合など一定の要件を満たす場合には、証券の発行者は取引所法による継続開示規制に服することになります。

投資信託については、投資会社法上の開示規制が適用されます。そこで、開示規制については、証券法・取引所法のものと重複が生じることになるため、できるだけ開示書類、開示内容を一致させるよう規制の調整が行われているわけであります。

次に営業規制ですが、他人の勘定で証券を売買することを業とする者はブローカーとして、自己の勘定で売買することを業とする者はディーラーとしてSECに登録しなければなりません。したがって、証券の売買、仲介の営業規制は、ブローカー・ディーラーの規制を通じて行われます。ただし、もっぱら開示の適用除外証券を扱う業者はブローカー・ディーラー規制に服さなくてよい、とされています。ブローカー・ディーラーの規制は、SECと自主規制機関が分担して行っています。

投資勧誘の規制については、証券業協会の規則が詳細な規定を置くほか、SEC規則10b-5が適用され、規則10b-5について関連法が形成されています。ブローカー・ディーラーの規制としては、自己資本比率規制等の財務規制も当然のことながらございます。

集団投資スキームのユニットの販売については、先ほど申したように投資会社法上の販売規制も適用されます。また、集団投資スキームでは、投資顧問を利用することが多いのですが、投資顧問とユニット保有者との利害が相反し得ることから、投資会社法では投資会社と利害関係人の間の取引を規制しています。また、投資顧問業の規制のために、1940年投資顧問法が制定されております。

次に、不公正取引規制についてですが、投資契約上の権利が証券に該当しますと、その取引について一般的な詐欺禁止規定である規則10b-5が適用されます。この10b-5は、上場証券についての不公正取引だけでなく、非上場証券の不公正取引にも適用されます。

EUでは、1993年に投資サービス指令を採択し、同指令は96年より発効しています。投資サービス指令は、投資サービスを提供する企業が加盟国のいずれかで認可を受け、当該国(ホーム・カントリー)の監督に服している場合に、他の加盟国(ホスト・カントリー)において投資サービス業務を営むことができる、としています。この考え方をヨーロッパ・パスポートと呼ぶことがあります。

ここにいう投資サービスとは、特定の商品について行う売買注文の受付・伝達・執行、自己勘定での売買、個別のポートフォリオ管理及び引受業務をいい、特定の商品とは、譲渡可能証券、集団投資計画のユニット、マネー・マーケット商品、金融先物契約、金利先渡契約、金利・通貨・エクイティのスワップ、上記商品のオプションをいう、とされています。

集団投資計画についてのEUレベルの規制としては、1985年のUCITS指令があります。同指令では、UCITSを公衆から集めた資金を、リスク分散の原則に基づいて、譲渡可能証券、その他流動性の高い金融資産へ集団的に投資するもので、そのユニットが、保有者の請求により、集団投資計画の資産から直接または間接的に払い戻されるものをいうと定義し、当該計画が契約に基づくか、信託法に基づくか、制定法上の投資会社形態をとるかを問わない(1条)、としています。流動性の高い金融資産という点は、2002年の改正により付加された投資対象であります。したがって、パートナーシップを利用した集団投資計画もUCITSに該当するものと考えられます。

次に各種の規制ですけれども、証券の上場と公募に際しての開示については従来からEC指令が出されていたところですが、現在、この2つのEC指令を欧州単一目論見書指令というものに統一するという案が公表されております。UCITSについてはUCITS指令が目論見書の開示項目と定期的報告の内容を定めておりますので、UCITSのユニットは目論見書指令の適用除外とされています。

営業規制のうち、投資サービス業者一般に関するものは、投資サービス指令、適正資本金指令によって定められています。具体的には、投資サービス業者の行為規制については、投資サービス指令は原則のみを定め(11条)、その原則に沿った行為規制を加盟国が定めることを求めています。ただ、このようなやり方ですと、行為規制が各国でまちまちになるため、新たに新たな枠組みを模索する投資サービス指令の改正案が現在公表されているところであります。他方、UCITS指令では、UCITSを認可の対象とすることを求め、運用会社・保管会社の義務についてかなり詳しい規定を置いています。

不公正取引規制については、既にインサイダー取引規制指令が出されておりますが、これと相場操縦規制とを合わせた市場濫用規制指令というものが現在提案されています。ただ、これは、原則として規制市場に上場されているか、上場を予定している証券または金融商品についての規制にとどまっています。

最後に英国ですが、2000年金融サービス市場法のもとで、ある者が規制業務を営むためには、同法パート4の1つまたは複数の許可を受けることによって認可業者とならなければならない(19条、31条)、とされています。パート4の許可は、法人、個人のほか、パートナーシップや法人格なき社団も受けることができます。

規制業務とは、投資物件(インベストメント)の取引、投資物件の取引のアレンジ(証券発行の引き受けなどはこれに該当します)、投資物件の管理、投資助言、集団投資スキームの設立・運営・解散等(付属規定2)でありまして、投資物件の内容としては、証券、社債、債務証書、預金、保険契約、集団投資スキームのユニット、オプション、先物取引等が列挙されています。

パートナーシップの持ち分は、投資物件としての証券の定義には該当しませんが、投資物件である集団投資スキームのユニットとして、オープン・エンド型投資会社の株式または証券及び集団投資スキームに参加する権利が挙げられています。

さらに、集団投資スキームとは、次のように一般的に定義されており、その形態は信託、会社、契約であるとを問わないとされています(235条)。すなわち、その定義というのは、何らかの種類の財産に関する取り決めであって、その目的または効果は、参加者が対象となる財産の取得・運用・処分から生じる利益に参加できるようにすることであり、参加者が財産の管理について日常的なコントロールを有さず、参加者の出資金及び参加者へ支払いがなされる利益がプールされる、財産は全体としてスキームの運営者により管理されている、のいずれかまたは双方の特徴を有するもの、とされています。この定義は、米国の判例における投資契約の定義とほぼ同じであり、証券または投資物件に対する集団投資に限定されない点で、アメリカの投資会社の概念よりは広いということがわかります。

このように集団投資スキームの定義は、媒体の保護形式を問いませんので、パートナーシップを媒体とする投資スキームもこの定義に該当し、集団投資スキームのユニットたるパートナーシップの持ち分は投資物件となると考えられます。したがって、集団投資スキームの設立、運営、解散を行う者はパート4の許可を受けなければならず、集団投資スキームのユニットの発行のアレンジやその売買の媒介を行う者もパート4の許可を受けなければならないということになります。

なお、クローズド・エンド型の投資会社は、命令により集団投資スキームの定義から除外されておりますが、その株式は投資物件の方には該当しますので、その限りで金融サービス市場法の適用を受けます。

次に、開示規制・営業規制・不公正行為規制ですが、まず証券ないし投資サービスの規制について述べておきたいと思います。

証券について初めて公衆に申し込みを行おうとするときは、上場規則に従い目論見書を適格機関(金融サービス機構)に提出し、承認を受けなければなりません(87条)。上場規則では、目論見書の記載事項、公表の時期及び方法について定めています。証券を取引所に上場する際には、発行者は上場明細書による開示をしなければならず、上場後は上場規則に従い、継続開示義務を負います。

営業規制について、金融サービス機構は、認可業者の規制について11項目からなる業務原則を制定するとともに、金融サービス市場法の諸規定に基づき業者と顧客との取引に関する規則、販売促進に関する規則、顧客資産の管理規則、財務規則、財務報告規則などの諸規則を制定し、執行しております。これらの規則の中には、従来、自主規制機関の規則だったものが、金融サービス機構のルールとして格上げされたものもあります。

不公正取引規制についてですが、今述べた認可業者に適用される規則の多くは、顧客との間で顧客を害するような不公正取引を規制するものであると言えます。それから、何人に対しても禁止される金融サービス市場法上の不正行為としては、市場濫用行為(マーケット・アビューズ)の禁止(118条)、風説の流布の禁止(397条)、さらに1993年刑事司法法によるものとしてインサイダー取引の禁止があります。これらのうち、市場濫用行為の禁止は公認投資取引所で取引される投資物件に関し適用され、風説の流布の禁止は投資物件一般に関して適用され、インサイダー取引の禁止は上場証券、ただしこの証券の定義にはオプションや先物が含まれるのですが、そういったものについて適用されます。

それから、集団投資スキームの場合の規制ですが、認可業者は、認可ユニット・トラスト、認可オープン・エンド型投資会社により構成されるスキーム、または公認スキーム(海外のスキームで公認されたもの)でなければ、販売促進(プロモーション)を行うことを禁止されています(238条)。すなわち、集団投資スキームについては、認可制がとられ、しかもユニット・トラストかオープン・エンド型投資会社でなければ認可を受けられないことになります。認可業者以外の者は、投資サービスに該当する集団投資スキームのユニットの販売促進をすること自体が禁止されます。そして、ユニット・トラストについては金融サービス機構が信託スキーム規則を、オープン・エンド型投資会社については、大蔵省がレギュレーションを定めて、スキームの仕組み、投資対象、内容の規制、参加者に対する情報開示等について詳細な規制を行っています。

最後に、若干のまとめをしておきたいと思います。

今ざっと報告しましたように、多様な投資形態について投資者保護のための法規制を及ぼすために、米国では、証券の一つである投資契約の定義を開かれたものにすること、それによって連邦の証券法・取引所法を適用する、それから法形式を問わず投資会社法を適用することで対処していることがわかります。

英国では、集団投資スキームの定義を開かれたものにすることで対処していると言えます。ただし、英国の場合、集団投資スキームの法形式は問われませんが、信託と会社型以外は、海外で組成されたものを除き、実際上販売は不可能と思われます。ですから、一定の法形式を有しない集団投資スキームの組成を阻止するために、集団投資スキームの定義を一般的なものにしているのではないかとも疑われるところであります。

我が国では、政令指定はありますが、指定には要件が課されています。すなわち、流通性、その他の事情を勘案して政令で定める証券または証書とか、流通の状況が有価証券に準ずるものと認められ、かつ有価証券と同様の経済的性質を有すること、その他の事情を勘案し、政令で定める金銭債権といった要件が課されており、かなり窮屈になっています。

組合型の集団投資スキームに証券取引法上の規制を及ぼすべきかどうかということをまず検討すべきでありましょうけれども、及ぼすとする場合の及ぼし方としては、有価証券概念を幅広いものにするという方法と、集団投資スキームを幅広く定義した上で、そのユニットを有価証券とするという方法があるように思われます。

極めて雑駁な報告で時間を消化しましたけれども、私からは以上です。

○ 神田部会長

盛りだくさんの内容を簡潔にご報告いただきまして、どうもありがとうございました。

それでは、ちょっと難しい面もあるように思いますけれども、ここで今、黒沼委員からご報告いただきました点につきまして皆様方からご質問やご意見をご自由にお出しいただきたいと思います。

この問題もまた次回以降引き続き議論させていただきたいと思いますが、それでは嘉治委員、どうぞ。

○ 嘉治委員

すみません。本日の議題の本質的な部分からはちょっとそれてしまうかもしれませんが、英国はEUに加盟しておりますので、英国についてのご説明とEUについてのご説明の整合性についてもし簡単にご説明いただけるのでしたらお願いしたいと思いますが。

○ 黒沼委員

EUは、指令を出しまして、その指令に沿った国内法化を要求しています。ですから、EUの指令というのはそのままでは適用されないので、実際には各国が制定した法令が適用されるということで、矛盾があってもそれはそのままになっているということであります。

○ 神田部会長

補足させていただきますと、ルールの上では、EUの指令というのは最低基準なのですね。したがって、少なくとも金融・証券の分野については、黒沼さんがおっしゃったとおり、直接適用ではないのですけれども、各国はそれよりもより高いルールを国内法化することは自由という構造になっているというのが一つ。

それから、ことイギリスに関する限りは、歴史的に見ると、1986年に証券分野の横断的な法律、金融サービス法と訳しているので紛らわしいのですけれども、簡単に言うと銀行と保険を除く全分野ですが、そこをファイナンシャル・サービスィズと呼んで、法律をつくった。しかし、EUはその後、ご紹介がありましたように、投資サービス指令というのが93年にできていますので、歴史的にはイギリスが先行して、EUのモデルとまで言っていいのかどうかはわかりませんが、そういう伝統があります。したがって、イギリス法というのは、独立してEUとは別に紹介され、参照される機会が多かったということがあると思います。

どの点についてでもいかがでしょうか。どうぞ、田島委員。

○ 田島委員

一般投資家のすそ野を広げるためには、投資者保護のための法規制が充実していなければいけないというふうに思うところなんですけれども、今の社会では、新しい投資スキームというのが次々に出現していく方向にありまして、それに対して有価証券の概念を限定列挙して、証券取引法の適用範囲が限定されているのは好ましい姿ではないというふうに思います。

それで、個々の新しい投資スキームに対して後追いの形で投資者保護の規定を設けていくというのは好ましいことではないので、この際、有価証券概念をもっと幅広い開かれたものとして、少なくとも開示規制あるいは不公正取引規制といったような投資スキームについても投資者保護の保護規制が及ぶようにしていくべきではないかというふうに考えます。

○ 神田部会長

ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

淵田委員、どうぞ。

○ 淵田委員

以前の幅広い有価証券の考え方というのは、今お話もありましたように大変重要な課題だと思います。今回のお話はどちらかというと集団投資スキームというところに焦点が当たっているんですが、昨今、証券市場の活用ということで、例えば大学債ですとか、医療法人債ですとか、新しいタイプの債券発行が構想されているようです。SPCを使う形態や信託受益権を使う形態以外に、直接発行も考えたいという声も聞かれます。いろいろな方々が証券市場に関心を持っていただいている、それは大変いいことだと思いますが、こうした証券と証取法上の有価証券で規制の内容が違ったりしては投資家保護上、問題だと思います。ので、今回の集団投資スキームの議論以外にもう少し、それこそ幅広い議論が必要な部分があるのではないかと思っております。

○ 神田部会長

ありがとうございます。

高橋委員、どうぞ。

○ 高橋委員

確かに匿名組合とか、ご提示いただいたものに対して何らかの投資家保護の規制が必要ではないかということ、そのとおりだと思いますし、田島委員のおっしゃった後追いではいけない、全くそのとおりで、基本的にはそういう方向だと思います。

ただ、そのまま有価証券の定義に入れてしまっていいのか。今は割合自由につくれる、そういう特長を生かした形で、かつ一方、投資家保護に欠けることのないようにしていくという工夫が要るのかなと思います。有価証券の定義に入れるにしても、単に入れるのではなくて、今ある特長との組み合わせというようなことも考えてみる必要があるのかなというふうに思います。

○ 神田部会長

ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

基本的な問題と多少技術的な問題とあるように感じるのですけれども。基本的な問題は、田島委員がおっしゃったように、いろいろな投資商品がこれから出てくる。出てくるのは大変結構なことであるとして、高橋委員がおっしゃったように、そういうものに対する投資家の保護という法的なインフラストラクチャーは横断的な方がいいのか、ちょっと表現は悪いかもしれませんが、ばらばらでやっていていいのかというような問題は基本的な問題ですよね。

それからもう一つの問題は、黒沼委員の最後の改善の方向性というところにあらわれているように、私も大学で授業をするときに挙げる例ですが、よくわからないというのは、淵田委員がおっしゃった点でもあるのですけれども、集団投資スキームのようなアプローチがいいのか、もっと漠然とした有価証券アプローチがいいのかということなのですね。

例えば、Aという企業がBという金融機関から1億円借金をした。翌日、Bという金融機関はその1億円を100口に分けて、100万円ずつ100人に譲渡したとしたときに、何か投資家保護が要るだろうというのは根本論としてあるのですが、そのときにどう見るかですよね。これは、100万円が有価証券です、したがってBという金融機関がそういう証券を発行したのですというと、今の体系でいうと100万円は集団投資スキームのユニットである、100人の資金を集団して1億円貸しています、これは貸付スキームです。

そういう見方になるのですけれども、しかしもともとAが借りているわけですから、最初からAが100万円の社債を100口出していれば、Aが発行者であり、Aの財務状態のディスクロージャーが求められるはずのものですね。そうだとすると、法学者だけがやっている議論なのかもしれませんが、最初からの1億円という借り入れ自体がいわば有価証券であって、ただ最初は比喩的に言えば私募みたいな形態で、Bから100口に分かれたときに公募になる。そこでディスクロージャーが必要になるというふうに整理していくか。これらは技術的な問題ですけれども、要するに、黒沼さんの言葉や淵田さんの問題意識で言えば、集団投資スキームのようなルールでいくのがいいのか、もうちょっとより一般的な有価証券でいくのがいいのかというところはこれまでは考え方のうえではあまり解決してはいないと思うのですね。

これまでは、日本の歴史もそうで、諸外国もそうですけれども、個別の商品ごとに対応してきておりますので、非常に典型的なものははっきりしているんですが、いろんな仕組み型のものとか応用編が最近また出てきますと、その辺も道筋をつけなければいけないという問題が基本的な問題に加えてあるように思います。

この問題もそう簡単には煮詰まりませんけれども、どうぞ、板谷委員。

○ 板谷委員

有価証券概念ということで、それに該当することによって証取法の規制が働く、そのことによって投資者保護をより確実にしていくという目的はそれでいいと思いますが、典型的に想定されている以外のものがだんだんできてくるということですから、そのときに証券取引法上の規制をすべてそのままの形で当てはめることが適切かどうか議論が必要かと思います。若干のバリエーションが必要なものも出てくるのではないのかなという気がいたしますので、広く網をかぶせるのはいいかと思いますけれども、その中の証取法上の規制の及ぼし方というのは少し柔軟な対応が出てくるのではないかなというような気がいたします。

○ 神田部会長

ありがとうございます。

平成4年のときも、証券取引法を適用すると、今の表現を使わせていただくと、規制の網をかぶせて、新しい商品開発を阻害するのではないかという反対論が非常にありまして、当時は、盛んに証券化関連商品という言葉で表現していたのですけれども、規制してやりにくくするのではなくて、今やれないことをやれるようにするために有価証券概念を適用するなどというやや詭弁めいた言い方をしていたことを思い出します。難しいですね。

確かに投資者保護というインフラはある方が使いやすくなるというのが本当のねらいですけれども、他方、営業規制とか、そういうところをどういうふうに整理していくのかという大きな課題がありますので、その辺はよく整理していかなければいけない問題ですね。平成4年のときもその辺が非常に苦労した点だと思います。

ほかに今日の時点でお気づきの点やご注意いただくべき点等、ありませんでしょうか。よろしいですか。

それでは、この問題も大きな問題ですので、引き続き議論させていただきたいと思います。黒沼さんには今日はどうもありがとうございました。

それでは、もう一つ、今日の最後のテーマになりますけれども、市場監視機能強化。これも今日1日では到底やり切れない話ですけれども、今日はまず事務局の方からご説明をお願いしたいと思います。三井さんと、あと証券取引等監視委員会の方からご説明いただけるということですので、よろしくお願いします。

○ 三井調査室長

調査室長の三井でございます。

資料でございますが、横長の「諸外国における証券取引規制違反行為に対する民事・行政制裁金制度」、それとパワーポイントを打ち出したようなもの、両方を参照しながらご説明をしたいと思います。

全体像は表にあるとおりでございまして、2枚目、3枚目は民事責任であるとか排除命令で、次回以降のテーマでございますので、今日のところは1枚目のものでございます。

それでは、パワーポイントの字の大きなものを1枚おめくりいただきまして、アメリカの民事制裁金制度からご説明したいと存じます。

ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、執行機関は証券取引委員会。対象行為は、証券規制全般、あらゆる違反行為でございます。手続は、2種類ありまして、SECが裁判所に申し立てて、裁判所が賦課の判決をするというものと、SECが行政手続で賦課を決定するものがあります。

行政手続で賦課するものは規制業者に対するものということになっておりますが、現在、改正案が出ておりまして、上院を通過しまして、下院は、銀行委員会を通過しまして、本会議にかかっています。次のページ以下にあります制裁金の金額を引き上げることと並んで、規制業者に限らず、すべての違反者、マーケット参加者に対して、SECが行政手続において民事制裁金、行政制裁金をかけるようにすることができるというものでございます。

次のページにまいらせていだたきます。民事制裁金の賦課限度額、上限でございます。違反1件につき、全くベーシックなテクニカルバイオレーション(技術的違反)が5,000ドル、法人5万ドル。これに詐欺的な要素が加わりますと、それぞれ5万ドル、25万ドル。それに社会あるいは投資家に損害を与えた場合は10万ドル、50万ドルということでございますが、これも先ほど申しました改正案におきまして、自然人100万ドル、法人200万ドルに引き上げる法案が途中まで来ておるという状況であります。

なお、違反行為が不正な利得を得ている場合には、上記の金額、今申しました金額を超えて不正に得た利得額までということになります。したがいまして、新聞などで出ています違反行為にSECがかけたペナルティーというときには、例えば不正行為による利得が10億ドルあるという場合には、ディスゴージメント(不正利得)の吐き出し10億ドルにプラスペナルティーが10億ドルという形になります。ただし、インサイダー取引の場合には3倍までですから、今のケースですと、10億ドルの不正利得に対して30億ドルということになるわけでございます。

次のページでございますが、民事制裁金の算定方法でございます。これは個別事案ごとにSECなり裁判所の裁量で判断するということでございます。SECの担当官の言葉によりますと、「これはロジックではなく、アート(芸術)である」というふうなコメントもございます。幾つかの例を掲げております。

最初のシティグループ・インクというものは、エンロンでございまして、エンロン部分で5,750万ドルのペナルティーということでございます。

投資銀行10社、これはアナリスト部門とセリング(販売)部門との不当な連携等々でございますが、詳細については割愛させていただきます。

日本では、行政上の制裁金あるいは民事上の制裁金ということがあまり使われていないというか、ほとんど使われていないわけですが、それは刑事罰が制裁というもので現に存在するので、それとの関係が問題であるというふうな議論が一部にございます。アメリカではその点をどのように整理しているかということでございますが、これは確立した判例がございまして、同一の行為に対して民事制裁と刑事罰を同時に課することは許される、可能である。

実際上の実務としましては、罰金や没収など刑事罰の状況を考慮しながら、民事制裁金の賦課額が決定されております。

先ほど申しましたものですが、二重の危険、ダブルジェオパディーと言うそうでございますが、同一の行為に対して民事制裁金と刑事処分を課することは二重の危険には当たらないというふうな判例が確立しております。

次に、イギリスに進みたいと存じます。イギリスの民事制裁金でございますが、執行機関はFSA、対象行為は、ここにありますとおり証券関係の不公正取引でございます。

次のページでございますが、イギリスはユニークでありまして、上限額の定めが法律上ございません。算定方法については、アメリカと同様、個別事例、違反の度合いであるとか、程度の悪質さであるとか、違反者のその後の状況、前後の状況、計画性があるかないかとか、そういったことを考慮して決めるということでございます。

次のページ、先ほどのアメリカでも高額なものだけ列挙しましたが、イギリスでも高額な民事制裁金として新聞に載ったようなものについて、またおさらい的に掲げてあります。

興味深いものとしましては、3つ目のクレディスイス・ファーストボストン・インターナショナル、2002年12月の案件でございますが、在日子会社の日本での検査忌避、これは新聞にも出ました。これについて日本では、例えば業務停止であるとか行政処分が課されて、当然のことながら、民事制裁金あるいは課徴金のようなものは、制度自体がございませんのでかけておりませんが、イギリスにおいては7億数千万円の民事制裁金がかけられているということでございます。

次のページに移りまして、これまた民事制裁金と刑事罰の関係でございますが、これもアメリカと同様、刑事罰と民事制裁が並列的に存在しています。ただし、実際の運用としましては、重いものについては刑事罰、そうでないものについては民事制裁金、いずれかの一方をとるようにFSAのポリシーとしてやっているということでございました。

ドイツに進ませていただきます。執行機関は連邦金融監督庁、昨年の5月に金融、証券、保険とばらばらだったものが統合された業態横断的なバフィンと呼ばれている金融監督機関でございます。対象行為は、同様に証券関係の不公正取引であります。これについては、ゲルトブッセ、秩序違反行為に関する行政上の制裁金というふうに翻訳できるそうですが、こういう類型として規定されているそうでございます。これについての上限額は、ここにございますような定めがございます。

ドイツでは行政制裁金と刑事罰がどのように整理されているかということでございますが、相場操縦等の不公正取引につきましては、ドイツにおきましても刑事罰と行政制裁金、いずれもかけることになっているんですが、法律上、刑事罰か行政制裁金かいずれかしかかけないという仕組みになっています。刑事罰については重大な違反、相対的に軽微な違反については――相対的に軽微だというのは、極めて軽微という意味ではなくて、かなりの違反なんだけれども、刑事罰ほど値しないというものについては行政制裁金を適用するということになっております。

その次のページでございますが、法律上いずれかの方にいくというふうに書いてあることで、テクニカルなことが含まれますので詳細は割愛いたしますが、最初は行政上の制裁金に値すると思っていたものだったところ、裁判が進んでいくうちに、正確に言いますと、まず行政庁が一方的に行政制裁金の処分を打ちます。その内容に不服がなければ、そこで支払って終わりですが、もし不服がありますと、裁判所に不服申し立てをする、日本でいう公告訴訟、行政訴訟のようなものが行われます。その過程で、中味が行政制裁金に相当するような中くらいのものではなくて、極めて悪質だということが途中でわかりますと、裁判所がそこで「ここから刑事手続に移行します」と宣言して刑事罰手続に移行できる、逆もあり得るというふうな柔軟な制度を導入しているようでございます。

それでは、フランスに進ませていただきます。執行機関は証券取引委員会(COB)でございまして、対象行為は、インサイダー取引等々、ここにありますような不公正取引でございます。

次の行政制裁金の上限額でございますが、これも150万ユーロと法律上規定がありまして、算定方法も個々の状況を勘案して算定されるということでございます。

最後のページでございますが、刑事罰との関係でございます。これはドイツと違いまして、行政制裁金と刑事罰は併課され得るということになっています。したがって、悪質な違反をしますと、行政制裁金と刑事罰が両方かけられます。

その場合、手続にまた特色がありまして、同一の行為につきまして、刑事罰の決定に先立ち、COB(証券取引委員会)が行政制裁金賦課を決定した場合には、刑事罰をやっている方の判事は刑事罰の罰金にCOBで行われた行政制裁金を充当するように命令できる。行政当局及び司法当局は、均衡のとれた刑罰の原則に留意すべきであり、罰金及び行政制裁金の総額がいずれかの上限金額、法定刑の上限でございますが、それを超えてはいけないことを憲法裁判所が判例として示しているということでございます。

以上が諸外国の状況でございまして、あと韓国、香港等も制度がございます。韓国につきましては、基本的に日本の証券取引法に似た制度を持っていたんですが、1999年になりまして日本より先にいってしまっているという状況でございます。

それから、我が国でどうなっているかということで、これは具体的制度設計という技術的な問題も絡みますので、6件例を紹介させていただきます。「我が国における行政上の課徴金・制裁金の例」という横長の資料でございます。

まず、これに先立ちまして、日本では一般法としての行政制裁金法なるものは存在いたしません。すべて個別法で個別に定めているということでございます。

これは時系列で並べてございます。一番古いものは、明治33年に間接国税通告制度というものが導入されまして、例えば密造ということをしまして酒税を免れるとか、こういったものに対しまして刑事罰が定められているわけですが、刑事罰に問うほど重大でない、どぶろくをこっそりつくって自分で飲んで、あちこちにたらい回しをしたとか、そういうふうなものについては、刑事手続に入る前に税務署の方で、通告ということで、罰金相当額と没収・追徴、要するに税金に相当するようなものを払ったら刑事罰には問わないというふうな制度を導入しています。性格的には行政上の制裁ということでございます。

その次は、昭和29年でございますが、関税法上の通告制度。これも先ほどの通告制度と同様の制度でございますので、中味は省略いたします。

それから、戦後でございますが、税の世界では加算税というふうにいきまして、典型的には重加算税、不納付額とか、あるいは過小申告税額の35%等の率で、脱税をした場合、刑事罰に問われることもあるんですが、刑事罰がかかる場合であっても加算税をかける、すなわち併課するというふうな制度があります。

その次でございますが、昭和42年になりますと交通反則通告制度というものができまして、道路交通法違反というのは基本的に刑事罰がついておるわけでございますが、それに対して比較的軽微なものにつきましては、反則切符で通告を受けた者が一定金額、2万円とか3万円とか一定の金額は法令に定められておりますが、それを払えば刑事手続に移行しないで終わるという制度が入っております。

あと2つでございますが、昭和48年、国民生活安定緊急措置法というのがございまして、これは、オイルショックの狂乱物価のときに、売り惜しみで、高値で物を売って不当にもうけるということがマスコミ等世論の怒りを招き、導入された制度でございます。まず標準価格というのを役所が決めるんですが、主務大臣、例えばトイレットペーパーとかであれば通産大臣が決めて、それで売りなさいよという指導になるんですが、もっとしっかり規制しなければいけないということになりますと、特定標準価格というのを決める。それを超えて売った業者は、特定標準価格と実際に売った価格の差額、要するに不当なもうけですが、それを課徴金として徴収するという制度でございます。ちなみに、この法律には刑事罰はついておりません。

最後でございますが、独占禁止法、昭和52年に導入されておりまして、ご案内のとおりカルテル等で経済的に不当な利得を得た者に対して、それを行政上徴収するという制度でございます。現在、課徴金額はカルテルにかかる商品またはサービスの売上額の6%といった金額が法令上定められております。

駆け足で大変恐縮でございますが、欧米及び日本の制度の概要でございます。

○ 神田部会長

ありがとうございます。

それでは、新原さん、お願いします。

○ 新原監視委員会事務局長

証券取引等監視委員会事務局長の新原でございます。金融審議会において市場監視機能の強化についてご審議いただいておりますことに対しまして、監視委員会としてもありがたく存じております。今日は事務局長の私のほかに、事務局次長の木村、監視委員会の中で犯則事件の調査を担当しております特別調査課課長の遠藤、3人で参っております。

説明は、証券取引等監視委員会の現状ということで、犯則事件の調査を中心に遠藤課長から申し上げますが、後ほど委員の皆様からご質問があった場合には、私ども3人で適宜それぞれ手分けしてご返事を申し上げたいと思います。せっかくの機会でございますので、何についてでも遠慮なくご質問いただければ大変ありがたいと存じております。

○ 遠藤監視委員会特別調査課長

特別調査課長の遠藤でございます。私の方から説明させていただきます。

お手元に幾つか資料を置いているのでございますけれども、本日は「証券取引等監視委員会の現状」という3枚紙で、かいつまんで説明させていただきたいと思います。それ以外に付随的な資料、参考資料、あるいは我々のアニュアルレポートであります活動状況の報告書、それからパンフレットを置いております。これについては見ていただいて、質問等を本日あるいは次回以降にいただければと思います。

それでは、監視委員会の現状ということでございますが、1枚目でございますけれども、これは監視委員会の活動状況を1枚紙にまとめたものでございます。我々の仕事は3つの機能がございます。1つは犯則事件の調査・告発、2つ目は証券取引の公正確保のために証券会社等に検査に入る、3つ目は日常の市場動向の監視と情報収集というものでございます。

この表を見ていただきますと、真ん中あたりに証券会社でありますとか登録金融機関についての検査の件数が書かれております。14事務年度、14事務年度というのは昨年7月から本年6月までをいうわけでございますけれども、証券会社について118件、登録金融機関について13件の検査に入っております。それから取引審査、これは684件やっております。

一番上でございますけれども、犯則事件の告発ということで、特別調査課でございますが、私の課で犯則事件の調査を行い、その結果として検察当局の方に告発を行っております。10件という告発件数は、平成4年に監視委員会が発足して以来、最高の件数でございます。

検査は、証券会社でありますとか登録金融機関ということでございまして、登録業者が名あて人になっているわけでございます。しかし、犯則調査というのは何人も、すなわち証券市場にかかわるすべてのプレーヤーが対象になっています。逆に言えば、我々に与えられた権限、証券市場にかかわるすべてのプレーヤーに対する権限というのは、犯則事件の調査・告発の権限しかございません。

14年度は最高の10件という告発をしたわけでございますけれども、この10件という告発件数が多いか少ないかというのはいろいろとご批判があるかと思います。ただ、私、特別調査課の立場からいたしますと、我々に与えられたリソースの中ではいい線をいっている数字ではないかなというふうに思っております。現有の特別調査官、本格調査に従事させている人間は大体100人程度ございます。それを10班に分けて、1班10人くらいで活動しているわけでございますけれども、そういう班がそれぞれ事案を抱えております。

その事案でございますけれども、2枚目を見ていただきますと、これは過去数年における相場操縦案件あるいは有価証券虚偽記載案件、インサイダー取引案件について平均をとったものでございます。調査期間は、それぞれ10ヵ月、11ヵ月、7ヵ月という非常に長期、1年近くの期間がかかります。その間に証拠物件、527点、702点、93点、あるいは質問・調書等のさまざまなペーパーをそれぞれ533通、682通、130通といった仕事をしていかなければなりません。これだけの調査を重ねて証取法226条にいう犯則の心証を得るレベルに達したというふうに我々は判断して、告発しているわけでございます。

3枚目でございますけれども、よく我々の活動が米国のSECに比べると非常にシャビーであるという議論があるわけでございますが、SECの活動状況というものを調べるにはアニュアルレポートをよく読まなければいけない。ところが、アニュアルレポートを読んでみても、あまりその数字は出てこないです。左側に表をつけましたけれども、これはSECのアニュアルレポートの後ろ側についている数字でございます。

SECの活動をいろいろ調べてみますと、印象としては、今のSECと我々証券取引等監視委員会というのはかなり機能の違う組織ではないかなというふうに感じます。左側の表にありますように、SECの事案の処理というのは、先ほど三井室長の方から紹介がありましたように、民事裁判手続による処理と行政手続による処理、この2系列がございます。それにプラスアルファとして、非常に重大で悪質な事案と思われるものについては、検察当局の方にリファー(通報)しているということでございまして、リファーした以降の調査というのはあくまで連邦検察官の仕事であります。もちろんSECの職員が手伝うということはあるようでございますけれども、その仕事はあくまで検察の仕事ということでございます。

それに対して右側は、なるべく左側のSECの表に対応する形でつくってみたものでございますけれども、我々のやっている何人もに対する仕事というのは、犯則調査に基づく告発でございまして、これについては、アメリカであれば検察官が行うような調査について非常に多くの部分を我々が組織的に実施している、というようなものではないかなと思います。

付随的に少し数字を下の方に並べてみたものでございますけれども、先ほど申しましたSECが検察当局、司法省へ通報している件数は、件数ではございませんで、人・社で、259人・社。これに対応する我々の数字というのは、先ほど10件と申しましたけれども、これを人・社で勘定しますと、22人・社ということでございます。

こういう仕事を何人くらいの人間がやっているのかということでございますけれども、SEC法務執行局は、本部、地方を合わせて1,357人、本部には377人いるということでございます。それに対して監視委員会は、証券会社等に対する行政検査を行う総務検査課も入れますと、総務検査課、特別調査課合わせて本体においては217人、134人と83人を足しました。それから、地方財務局の職員なんかも入れて、全体で、ここに書いてある数字をすべて出すと415人で、SECと比較できるかと思います。

私どもは10人でチームをつくってやっているということでございますけれども、SECの実態というのは、377人の本部の大体7割から8割方が弁護士だと思いますが、弁護士が一人一人1件とか2件事案を抱えて、それを民事裁判手続やら行政手続による処理に向けていろいろ処理していく、ということをやっているようでございます。377人の8割は300人だといたしますと、300人が年に2件処理すれば、ここにあるような598件という数字に近いものが出るのかなというふうに感じております。

先ほど申しましたように、我々は、与えられた犯則調査に基づく告発ということでございまして、与えられた人員、機能のもとにおいて手いっぱいの仕事をやっているということで、その結果が10件の告発ということでございますので、それが証券市場の取引の公正性を確保する上でどれだけのインパクトを持っているのか。我々はそれなりにインパクトを持っていると思いますけれども、恐らく皆様方のご批判があるかと思います。

私の説明は以上で終わらせていただきます。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。この問題も大変大きな問題で、今日だけでどうこうなるものではありませんけれども、残りの時間、皆様方から今のご説明についてご意見あるいはご質問も含めてお出しいただければと思います。いかがでしょうか、どなたからでもよろしくお願いします。

田島委員。

○ 田島委員

ただいま平成14事務年度の告発件数10件というご紹介がございましたけれども、これが手いっぱいの仕事というお話につきまして、もし十分な人員が確保されていればもう少し告発対象とすべき案件はあったと考えるべきでしょうか。

○ 遠藤監視委員会特別調査課長

人員は、平成4年の発足当時に比べてかなり増強しております。ノウハウも、12年たちましてかなり蓄積してまいりました。我々なりに効率的な仕事を図っているのでございますけれども、まさに調査に入り、告発あるいは起訴相当の事案に仕上げるには、どうしてもそれなりの時間がかかります。ですから、10人で一つのチームをつくって、それがほぼ1年かけて1件仕上げるというような仕事でございますので、熟練した調査員を相当程度確保しないと、今の10件を超える非常に印象的な数字にはなかなかならないのではないかなというふうに感じております。

○ 新原監視委員会事務局長

私ども、定員の増強をお願いしておりまして、監視委員会全体で、本部だけですけれども、45人の要求を今年申し上げておりますが、そのかなりの部分が特別調査官ということでございます。

○ 神田部会長

よろしいでしょうか。私も田島委員と同じような感想を持ったのですけれども、つまり世の中に客観的にどのくらい証券取引法違反行為が行われているのであろうかということですよね。それは、10倍人数をふやしたら10倍も告発事件が出てくるほど行われているのでは大変だし、その辺は全くわからない。先ほどのご説明は極めて実務的なご説明だったので、それはそれとしてわかるのですけど。

ほかにいかがでしょうか。高橋委員、どうぞ。

○ 高橋委員

監視委員会のご感想を伺いたいんですけれども、大森市場課長の最初の問題提起は、直接勧告とか、あるいは告発も含めておっしゃったのかははっきりしないんですが、監視委員会で処分できるような機能の一元化というんですか、金融庁に勧告して、そっちで処分するのではないというようなことを示唆されたように伺いましたけれども、今の仕組みで物足りないというか、機敏性に欠けるとか、そういうようなことを感じておられるのかどうか。違えばあれですけど。

○ 大森市場課長

私が一元化と申し上げたのは、あくまで事実認定の部分で、証券会社の財務の健全性、コンプライアンス体制というのは検査局が認定しておりますし、取引の公正性という点は監視委員会、かつてのコーチとアンパイアの分離という議論を踏まえてそうなっているわけですけれども、事実認定については一元化の方向で考えるべきだということを申し上げただけでございます。

○ 新原監視委員会事務局長

検査につきましては、検査を受ける側からすれば、確かに財務の健全性の検査と取引の公正の検査が別々のところ、分かれて来るというようなことだと不便もあるかと思いますので、私どもといたしましては、基本的には検査局と相談いたしまして、同時検査ということで対応しているところでございます。

それから、先ほどの処分と事実関係の解明を一元化するかどうかということについては、大森課長からも言われましたように、できたときの経緯がコーチとアンパイアを分けるということでありましたので、そういった問題も含めて相当なご議論をいただく必要があるのではないかというふうに思います。

○ 神田部会長

ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

措置の内容をまず議論する必要があると思いますね。前の方で三井さんからご説明のあった行政的な措置というか、サンクションとしてどういようなものが望ましいのか。機動的にというか、効果のあるような形でやり、かつ、ちゃんとデュープロセスを踏んで公正なものでなければいけませんし、サンクションというものは、今、日本は非常に手段が限られていると思いますけれども、それが裁判所を通じての刑事的な措置あるいは民事的な措置、かつ行政的な措置として、今のような制度でいいというご意見もあるかもしれませんが、どう改善できるかというところがかなりポイントだと思いますが、これは次回以降また引き続きご議論いただく点であると思います。

どうぞ。

○ 高橋委員

神田先生のおっしゃるとおり、全くそうだと思います。ただ、そのこととあわせて機能論とかも多分一緒にご議論いただいた方がいいかなというふうに思います。

前回も申し上げたので繰り返すつもりはありませんけれども、機能強化というときに、これは証券会社にとってもそうですし、今のお話ですと、何人もという分野に入ってくるわけでありますので、どういう場合にどういう処分あるいはペナルティーか、もう少し予測できるというか、予見可能性のあるようなことが必要と思います。判例の積み上げがあれば、アメリカなんかは多分そういうことで相当判例が積み上がっていますから、だんだんはっきりしてきているだろうと思いますが、日本では残念ながらそれほどまだ判例が積み上がっていないだろうと思いますので、そういう世界で何らかの形で処分なりエンフォースメントの予見性というのが高められないかということをあわせてご検討いただきたい。

○ 神田部会長

ありがとうございます。今日最初に大森課長からご紹介があった島崎委員からの紙も、ルール自体の不明確さの問題が一つあり得ると思います。

次に、ルールは明確である、すなわち今の議論との関係で言えばルール違反は明らかである、そこに不確実性はない、それをどうエンフォースしていくのか。ルール違反はあるけれども、エンフォースされないという社会は安定した社会とは思えないので、エンフォースメント問題の中心部分だと思いますけれども、エンフォースメントの度合いがおっしゃるようにアンサートン(不確実)だということはあり得るわけですね。リソースの不足から一部しか告発されないとか、そういうことがあると不公平感も出てくるでしょうし、社会として安定しない。ルール自体の明確性ということとルールが実現されていく部分での不確実性、両方を整理して議論する必要があると思います。

ほかにいかがでしょうか。淵田さん、どうぞ。

○ 淵田委員

ただいまのご発表とは直接関係ないかもしれませんが、市場監視機能の強化というテーマから考えますと、いわゆる自主規制機関もこの機能を担っている部分があるわけであります。冒頭大森課長から取引所ワーキングにおいて自主規制のあり方について議論があったというご報告がありましたけれども、これは取引所固有の問題というより、第一部会で議論される市場監視機能の強化とも関連するわけです。また先ほどの投資者保護の話にありましたように、有価証券について法律で取り締まっている部分と自主規制が担っている部分もあるわけです。このように自主規制の問題は、第一部会のテーマに関連してきますので、第一部会において自主規制の問題について少し立ち入った議論を今後進めていく必要があるのではないかという印象を持ちました。

○ 神田部会長

どうもありがとうございます。重要な点ですね。私もアメリカに何度かこの部分を調べに行ったことがあるんですけれども、NYSDなんかへ行くと、SECエンフォースメントディビジョン、執行局と訳しているところとはしょっちゅう相談しながらやっている、連携が非常に図られています。日本でもこの分野を議論するとき、自主規制というのは非常に重要な役割を果たし得るところなので、どういうふうに制度をつくっていくかということも含めて考える必要があると思います。

どうぞ。

○ 新原監視委員会事務局長

課徴金等監視機能強化の議論をいただく場合、念のため一つだけその前提として申し上げておきたいことがあるんですが、それなりの新しい手段を導入していただければ成果は期待できると思いますけれども、実際にそれが行政上の処分である場合、不服がある場合には当然相手方から行政訴訟等も予想されるわけですから、そういう新しい制度を導入したとしても、相当程度に証拠を固めるなり事実関係を明らかにしておく必要があるわけでございます。

日本の司法制度を前提とする限り、アメリカのような和解とか、そういうことはあまり想定されないと思います。そういたしますと、先ほど申し上げた特別調査と同じぐらいの手数は覚悟していただかなければいけないというふうに思います。したがいまして、こういう制度を入れるときには、それに見合った新たな人員等の手当てを必ずしていただく必要がある。しかも、特調につきましても、最初の数年は年に1件できるかどうかというようなことでございましたので、制度に習熟するまでに相当な時間もかかるということもあろうかと思います。成果は期待できると思いますが、そういった手当ても前提としてお考えいただきたいということだけお願い申し上げておきます。

○ 神田部会長

ありがとうございます。どうぞ、藤田委員。

○ 藤田委員

証券取引等監視委員会の働きがますます充実するように願っております。というのは、今日の会議の冒頭に話があった投資教育のあり方の関連で、市場の入り口までどれぐらい人が来ているだろうかという話題がありましたけれども、市場の不透明さというのが残る限り市場の入り口まで来ない。証券市場というのはよくわからない、うさん臭いみたいな印象がどうしても残ってしまいます。我々メディアで働いていて特にショックだったのは、最近、監視委員会がなさった大阪証券取引所の事件でありまして、ああいうところでああいうことが行われるというのは常識では考えられないことであります。既に告発なさっていると聞いておりますが、ああいうばかなことをしてはいけないということが徹底するまでは、証券取引等監視委員会の機能がますます充実して、しっかり働いていただくことが必要ではないか。それが直接資本市場の充実のために一番ベースのところで効果をもたらすのではないか、そんな感想を持ちました。

○ 神田部会長

どうもありがとうございます。

そろそろ終わりの時間が近づきつつありますが、いかがでしょうか。この問題は難しい問題であると同時に非常に重要な問題ですので、今後引き続き議論させていただきたいと思います。ほかにご発言等、ございませんでしょうか。よろしいでしょうか。

どうもありがとうございました。それでは、ほぼ時間ですので、本日の審議はこれまでとさせていただきたいと思います。

なお、どうしても時間不足になりますし、また皆様方全員のご出席、日程の調整でなかなか合わないということもあろうかと思います。私としては、ぜひ今日の3つの柱について、また今日のご説明等を聞いて、お考えいただいて、次回以降積極的にご発言いただく、あるいはお気づきの点があれば事務局の方へどんどんご意見等を個別にお出しいただくことによって今後の議論をより深めて、また重要な点に絞って議論を積み重ねるというやり方をしたいと思います。毎週第一部会を開くというわけにもいきません。しかし、他方でこれらの問題については一定の方向性を出すことを求められている事項も多いと思いますので、どうか積極的に、またお考え等があれば個別にお出しいただきたいというふうに思います。

それでは、最後になりましたが、事務局の方からご連絡をお願いします。

○ 大森市場課長

今日の議論を伺っておりまして、集団投資スキームについては、二段構えといいますか、当面具体的に扱いを決めなければいけない話と、中期的な証券取引法といいますか、金融サービス法といいますか、そういった仕組みの話等があろうかと思いますし、また、これまで規制があまりない世界で活動してこられた方は、先ほどの言葉で言いますと、自分に網をかけようとするのは納得できないということもありましょうから、そういった方のご意見を伺うということも今後必要かと思います。

市場監視については、本日の続きと、淵田委員からありました少なくとも自主規制としてどういったことが行われているかということは事務局で整理させていただきたいと思います。

次回は11月4日午後1時から3時で予定しておりますので、よろしくお願いいたします。

○ 神田部会長

それでは、今日はこれまでとさせていただきます。どうもありがとうございました。

サイトマップ

ページの先頭に戻る