金融審議会金融分科会第一部会(第14回)議事録

日時:平成15年12月19日(金)10時00分~12時10分

場所:中央合同庁舎第4号館(9F)金融庁特別会議室

○ 神田部会長

おはようございます。

遅れていらっしゃる方もいらっしゃるようですけれども、時間になりましたので、始めさせていただきます。

本日は、金融審議会金融分科会第一部会の第14回目の会合ということになります。いつものことですけれども、皆様方にはご多忙のところをお集まりいただきましてどうもありがとうございます。これも毎回のことでございますが、議事は公開とさせていただいておりますので、報道機関の方々などのために後ろの方の席を用意させていただいております。

本日の予定ですが、お手元の議事次第に従って進めさせていただきますけれども、大きく分けますと2つということになろうかと思います。

1つ目の課題は、いわゆる銀行・証券の連携強化ということであります。前回の部会では、証券会社の方々にいらしていただきましてご意見を伺いました。そこで、本日は銀行界のご意見を伺うということで進めさせていただきたいと思います。

永易委員に、まずお話をいただきます。そして、続きましてゲストとしてお二人に来ていただいております。東邦銀行常務取締役の北村清士さん、それから京都信用金庫の常務理事の増田寿幸さんでございます。どうもお忙しいところありがとうございます。

そこで、3名の方にお話をいただければと思います。

そして事務局から、若干追加的な説明を、前回も踏まえてということですけれども、していただいて、皆様方にご審議をお願いしたいと思います。

これが大きな1つ目です。

大きな2つ目の議題ですが、これは今までのご議論を踏まえた報告書(案)というものについてご審議をいただきます。これは前回の部会まで、これまで審議を続けてまいりましたいわゆる3本柱ですね、市場監視機能の体制強化、これが第1、そして投資教育のあり方、これが第2、そして投資サービスにおける投資者保護のあり方、これが第3、これらの論点を報告書(案)の形で提示させていただいております。

それから前回ご報告いただきました取引所のあり方に関するワーキンググループ、それからディスクロージャーワーキング、これらの報告内容ですが、これらについて時間は十分あったとは言えないかもしれませんが、それなりにご審議をいただいたというふうに思います。

そこで、本日は、これらすべてをまとめた具体的な報告書の案文につきまして、これまで皆様方からいただきましたご意見を踏まえて、事務局と私の方で報告書(案)というものを提示させていただきます。逐一ということにはならないかもしれませんが、基本的にこの案につきましてのご確認をいただければと思います。

これが2つ目の議題ということになります。

また、前回の部会で議論していただきましたうちの幾つかについて、事務局の方から追加説明をしたいということが出ていますので、これもさせていただきます。

そんなことで、全体で3時間議論するとお昼を食べる時間がございませんので、12時半までお時間をいただいておりますけれども、それより前に終われればなおいいと思っております。

それでは早速ですが、まず最初に銀行・証券の連携強化ということの議論に入らせていただきたいと思います。

では、順番としましては、まず永易委員からお話を伺えればと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

○ 永易委員

それでは、私の方から説明させていただきます。

資料は資料の1-1というので配布されていると思います。その資料は金融7団体の意見であります。1枚開けていただきますと、今度は全銀協ベースで金融機関への証券仲介業の解禁に対する意見ということで、こちらの方は主に弊害防止措置関係についてこの資料で説明したいと思います。

最初に、7団体ベースの連名の意見書でございますけれども、これは本日付で取りまとめたものでございます。上の方からちらっと見ながら聞いていただきたいんですけれども、証券仲介業は投資家の証券市場へのアクセスの改善の観点から、来年4月に一般事業法人に解禁される予定となっているのはご承知のとおりでございます。ただ、銀行界にとりましては、自らの勘定で売買引き受けをするものでもございませんし、証券法第65条で指摘されている懸念もないことから、金融機関に対しても早期に解禁していただきたいということでございます。

法人、個人を問わず、利便性向上、ワンストップショッピング実現への期待、要請は非常に強いものがあるということでございます。また、これまで縷々申し上げておりますけれども、株式投信の販売実績を見ましても、投資経験のない顧客層を証券市場に呼び込むには、金融機関のチャネルの活用は極めて有効な手段と考えております。したがって、金融機関による証券仲介は、証券商品を身近な存在とし、個人投資家の育成に大きく貢献するものであると認識しております。

証券市場は一時の停滞から脱しつつあるように見えますけれども、このタイミングで金融機関と証券会社が協力いたしまして、証券仲介に関する提携を行うということは、特に証券会社の店舗数が少ない地域において、顧客への証券市場のアクセスを改善し、証券市場を活性化する起爆剤となる可能性が十分あるということでございます。

したがいまして、本審議会において迅速に検討を進め、一般事業会社と同様、金融機関にも証券仲介業を早期に解禁していただきたいというふうに結んでございます。

次に、1ページめくっていただきまして、ちょっと総論の部分がありますから、これはほとんど重複いたしますので、もう1ページあけていただきまして、弊害防止措置に関する考え方でございます。

前回の部会で弊害防止措置検討の必要性については、さまざまな意見をいただきました。私ども銀行界としての考え方をご説明いたします。昨年証券仲介業の導入を審議するに際しまして、弊害防止措置の必要性についても当然のことながら十分な検討が行われております。特に、証券仲介業以外の業務を営む場合には、当該業務により知り得た有価証券の発行体に対する情報を利用して勧誘する行為とか、貸し付けを条件に勧誘する行為などを禁止するなど、その枠組み自体は既に整備されていると私どもは理解しております。

したがいまして、金融機関への解禁時にさらに追加的な規制が必要となるのか否かということでございますけれども、結論から申し上げれば、追加的措置は不要であり、既に導入されている枠組みで十分導入可能と考えているというのがエッセンスでございます。

(2)個別の問題でございますけれども、銀行経営の健全性確保という視点がございました。

ただ、今回解禁を希望をしている業務は顧客と証券会社の間の仲介、顧客への関与ということでございまして、銀行自らの勘定で売買、引き受けを行うものではございません。したがって、銀行にとって価格変動リスクの大きい商品の保有割合が増加することではない。むしろ収益源の多様化を通じて、銀行経営の安定化に資するというふうに考えてございます。

(3)のところでございますけれども、預金との誤認防止につきましては、銀行法等で非預金商品への販売に関しましては、預金等でないこと、預金保険法の対象ではないこと等々、顧客に対して説明することを義務づけられております。また、各銀行におきましては社内規定の体制を整備いたしまして、現実には顧客に説明した上で、確認書に署名捺印を求めるなど、その対応は十分に徹底していると考えてございます。

4のところですけれども、利益相反の問題につきましては、典型的な事例として挙げておられます倒産寸前の企業に債券を発行させ、調達した資金を銀行借り入れの返済に充当させることで、倒産した場合のリスクを証券投資家に転嫁すると、これは古典的な例でございますけれども、こういう問題は業態別子会社の検討の際に、弊害防止措置を手当てすることで対応済であると考えております。

そこに、いろいろ下の方に書いてあると思いますけれども、もう十分なファイアーウォールは設けられているということでございます。

さらに、その上に申し上げたとおり、今度の改正証取法では、「証券仲介業以外の業務を営む場合には、当該業務によって知り得た有価証券の発行者に対する情報を利用して勧誘する行為は禁止する」という利益相反を防止するための措置もさらに講じられているということでございます。

(4)のマル2のところに書いてありますけれども、前回の部会で多くの指摘を受けました貸し出しとの抱き合わせ行為ということにつきましては、前述のとおり、改正証取法で既に貸し付けを条件に勧誘する行為は禁止されておりますし、貸し付けを条件とすることは、もう既にこの株式の問題だけではなくて、個人年金保険等々の販売においても保険会社、銀行の自主ルールとして禁止されておりますし、社内体制の構築・整備、これをびしっとやっておりまして経験も十分でございます。現実に問題も発生していないということでございます。

次に、(5)のところでございますけれども、金融機関による優越的地位の濫用についての論点でございますけれども、これはダイレクトには独禁法ですけれども、法令遵守体制の整備、役職員への教育・各種研修の実行等を通じた行内への浸透など、これは十分なされていると思います。貸し出しとの抱き合わせ行為につきましては、厳格に対応しているということが言えると思います。また、先ほど申し上げましたとおり、この証券仲介業務におきましては、貸し付けを条件に勧誘する行為自体が禁止されておりますし、優越的地位の濫用という懸念はない、そのように考えてございます。

そのマル2のところに書いてありますけれども、特に証券仲介の主なターゲットと考えられるのは個人なのですけれども、各行とも現状、金融機関というのはリテール業務を戦略分野と定めまして、競争は一段と激化しております。お客様との関係ないしは証券会社さんとの関係において、金融機関が競争条件上優位にあるというのは全くの誤解であろうというふうに考えてございます。

(6)のところでございますけれども、顧客情報の問題について一言申し上げたいと思います。

これまでの部会で銀行が預金情報を利用して勧誘する行為に制限を課すべきというご指摘を受けております。ただ、私どもは実際上はお客様に対してライフステージに応じた資産形成の総合的な支援、要は運用ポートフォリオの提案を行っていくわけでございまして、その一環に証券仲介というのも位置づけられると思います。この観点からいいますと、仮にお客様が預金情報を利用できないとなりますと、このビジネスモデル自体が構築できない。お客様からいっても、非常に不便であるという利便性からも問題があるというふうに考えてございます。

顧客情報の保護・管理の重要性というのは十分に認識してございますけれども、この問題自体は、本当は銀行固有の問題ではなく、一般事業会社においても起こる問題でございます。本理由をもちまして、金融機関を証券仲介業から除外する、ないしは加重な制限を課すということは適切でないというふうに考えてございます。

最後に、私どもはずっと申し上げているとおり、証取法第65条をめぐって、決して証券会社さんと対決しようと思っていないわけでございまして、逆でございまして、金融機関と証券会社が協力して、ぜひ個人投資家の育成、金融資本市場の活性化、ひいては日本経済のためにという発想で考えているということを最後に述べさせていただきまして、意見といたします。

以上でございます。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

それでは続きまして、今日おいでいただいておられます北村さんと増田さんからお話をいただければと思います。

まず、東邦銀行の北村さん、どうぞよろしくお願いいたします。

○ 北村常務取締役

東邦銀行の北村でございます。

こうした発言の場を設けていただきましたことを厚く御礼申し上げたいと思います。ありがとうございます。

さて、私ども地方銀行の立場から証券仲介業並びに市場誘導ビジネスの証券業界との連携強化に関しまして、意見を述べさせていただきたいと思います。なお、時間の関係もございますので、主として私ども地域金融機関に密接にかかわってくると思われます証券仲介業に関する事項を中心に述べさせていただきたいと存じます。

まず、本題に入ります前に、福島県を基盤としております私どもの銀行の概況について若干説明させていただきたいと思います。

総預金が約2兆6,000億円、総貸出金が約1兆7,000億円と、いわゆる第一地銀64行の中でほぼ中位に位置しておるところでございまして、一方で県の指定金融機関であること、あるいは県内最大のネットワークを構築しているといったことから、まさに典型的な地方銀行だと言えるかと思います。そういった背景をもとにして本題に入らせていただきます。

まず、証券仲介業と私ども地域金融機関とのかかわりで、特に皆様方にご参考になると思われます、いわゆる証券投資的色彩の強い投資信託販売について、弊行としてのこれまでの取り組みの経緯とか、あるいは実績等から説明に入らせていただきたいというふうに思っております。

ご承知のとおり、銀行本体による投資信託の販売が解禁されましたのは平成10年12月でございます。私どもは、これに遅れること約2年後の平成12年10月から、投資信託の窓口販売に参入いたしまして、今日に至っております。その結果でございますが、直近、平成15年9月末現在でございます。販売開始からわずか3年という短い期間と言っていいかと思いますが、投資信託全体の預かり資産残高は約350億円、直近で385億円まで伸びております。うち、その中で株式投資信託のみですと、約250億円、直近では280億円ぐらいまで伸びております。そういった意味では、極めて順調な足どりをたどっているのではないかというふうに見ておるところでございます。

さらに、直近1年間の年間増加額を、昨年と今年の9月対比で見てみましても、投資信託全体で年間増加額が200億円強、うち株式投資信託のみですと、年間増加額がほぼそのすべてに近いということで、相当に順調な伸びを示しておるかなという感じがしております。

こうした投資信託の窓口販売を開始いたしまして丸3年。今申し上げました弊行の実績をどう見るかといった点につきましては、種々ご意見があろうかと思いますが、一方で私ども国債の窓口販売も従来からかかわっておりますが、その直近の預かり残高が1,000億円を超えていると。結果として保険商品なども含めて預金以外の預かり商品は約1,500億円ぐらいになっているという現状と考えあわせますと、弊行といたしましては投資信託という商品を含め、福島県のお客様を従来の主力商品でありました預金商品から、さらに運用の幅を広げまして、いわゆる投資商品的市場、とりわけ証券市場に目を向けていただいて動機づけさせていただいたと。結果として資産運用の幅を広げるお手伝いをできたという点では、いささかなりとも貢献できたのではないかというふうに評価しているところでございます。

それでは、地方銀行の強みといいますか、ストロングポイントについて若干申し上げたいと思います。

私ども地方銀行が、どのような点で地方における証券市場への潜在的ニーズ発掘に貢献できるかということを、述べさせていただきたいと思います。

まず、地方における証券投資活性化のためは、どちらかというと地方のお客様は決して活発と言えないと言っていいかと思うんですが、そういった方の証券投資に対する認識をより適正な方向に向けていただくかということが、まず何といっても肝要になってくるのではないかというふうに考えるところでございます。

そのために、日頃から地域のお客様に密着した中での啓蒙あるいは教育活動というのが大変重要な要素となってくるわけだと思いますけれども、私ども地域の現状を見た場合、お客さまの接点としての最前線としての証券会社の店舗数は、やはりどう見ても少ないのではないかというのが我々の実感でございます。

こうした点について、私ども福島県の事例で申し上げますと、今年の9月現在、福島県内の証券会社の店舗数は13店舗でございます。それも福島県で言われますいわゆる四大都市、福島市、郡山市、会津若松市、いわき市に偏在しているということでございます。それに対しまして、第二地方銀行以上のいわゆる普通銀行の店舗数は約230カ店舗、信用金庫さんを入れますと合計で約364店舗網ということでございます。ちなみに県内には90市町村ありますが、弊行はその約半分弱の41市町村に106店舗の店舗網を有しておりまして、大体1日当たりの平均来店客数が4万人弱、1カ月単位で申し上げますと実に80万人もの来店客があるわけでございまして、福島県の人口が210万人であることを考えあわせますと、非常に来店されるお客様との接点というのは、相当数の頻度であろうと言うことができるかと思います。

そういった意味で、今申し上げましたように、私ども地域金融機関は証券会社さんの約30倍程度のネットワーク網を有しているわけでございまして、お客様との接点の多さといった点ではかなりのレベルにあると言うことができるのではないかというふうに考えているところでございます。

当然ながら、私どもも少人数の店舗を抱えておりますので、すべての店舗でそういった証券仲介業的な業務ができるかというと、やや躊躇せざるを得ない面もあろうかと思いますが、私ども銀行の大多数の行員が既に証券外務員資格あるいは生命保険募集人資格も有しておりまして、かつこれまでの営業体制とか、あるいは法令遵守体制といったものを着実に築き上げているという実績を考えるとき、お客様への啓蒙、教育の接点として、私ども地域金融機関の店舗ネットワーク、すなわち言い換えるならば、地域金融機関が有する地域のお客様との極めて高い親近性を、証券市場活性化策の新たなアクセスとして活用していただくということは、地方における新たな証券市場の開拓を目指す上で十分に有効性が認められるのではないかと考えているところでございます。

ご参考までに私どもの行員は約2,000名強でございますが、証券外務員資格保有者はほとんどその100%に近い数でございまして、生命保険募集人の資格も約1,900名弱ぐらいになっているところでございます。

ただいま地域金融機関の店舗ネットワーク活用というのが、証券市場活性化に大変有効であるということを申し上げたわけですが、それとの関連で、もう一つこれまで約3年間、投資信託の販売を行ってきたことで、改めて我々が感じたところがございます。それは私ども投資信託をお勧めしたお客様というのは、これまで各証券会社様との取引がほとんどない方が占めていらっしゃるというふうに言えると思います。そういった意味では、新たな投資信託ユーザーであるということが、実際の窓口販売のニーズ把握の中で浮かび上がってきているということが言えると思います。

具体的な数字で申し上げますと、福島に南会津地方といって、奥只見周辺の地域あたりを言うわけでございますが、この辺にも私ども約4店舗ぐらい配置しておりますが、その中での投資信託の残高が直近で8億円ぐらいになっているとか、あるいは原子力発電地域でよくクローズアップされております相馬地域、これは相馬市とか原町市などという市を抱えているのですけれども、全く証券さんの店舗網という意味では空白地帯でございますが、こういった一帯の店舗網でも、約25億円ぐらいの投資信託残高を抱えているといったことからも、そういう意味でも新たなユーザーの発掘にも十分貢献しているかなという感じがしております。

また、新たに投資信託を購入されたお客様の中には、そうした中から、株式への関心を深めていらっしゃる方もいらっしゃると聞いておりますし、こういった実績や冒頭申し上げました投資信託の中で株式投資信託の実績推移からも十分裏付けられるのではないかというふうに思っているところでございます。

そういったことで、我々地域金融機関が新たに証券仲介業務のお手伝いをさせていただくことによって、すなわち新たなアクセスポイントとして仲間入りさせていただければ、こうした地方における潜在的なニーズの発掘がさらに進むと考えられまして、結果的に株式市場における投資家のすそ野を広げることに十分寄与できると。これまで皆様方議論されておられます、いわゆる政策目的等にも十分合致するのではないかと考えるところでございます。

お客様とのニーズのかかわりでございますが、現在、銀行窓口においては投資信託、国債あるいは保険商品等の購入が可能になってきているわけでありますが、そうした流れの中にあって、着実に私どものいわゆる資産運用相談といった業務は拡大しております。言い換えるならば、お客様のワンストップショッピングニーズというのは高まっているということが言えるかと思います。こうしたお客様のニーズに対応すべく、弊行でも本店所在地であります福島市の駅前に、「お金運用プラザ」というアンテナショップ的な性格の専担店舗を約2年前に設置しているところでございます。

この営業活動の中でも、いわゆる各種投資商品を専門に扱っていらっしゃる証券会社、あるいは投資信託会社様のご協力、あるいはタイアップを得ながら、各種セミナーなんかも行っております。今年度に入りましても、約15回のセミナー等を行って、1,000名を超えるお客様にご参加いただいておりますけれども、そういった活動の中にあっても、有価証券投資のニーズというのは着実に高まっているというのも裏付けられるかと思います。

以上、地域金融機関が証券仲介業務を行うことによって、証券市場のいわゆる底辺拡大に貢献できるといった点からお話をさせていただきましたが、私ども地域金融機関の今後の経営といった観点からも、こうした仲介業の解禁というのは大きな意味を持つものかなというふうに考えております。

ご承知のとおり、別途金融審議会の中でもこれまで私ども地域金融機関とのかかわりでは、いわゆるリレーションシップバンキングの機能強化といった命題があるわけでございまして、いわゆる従来からの預貸業務を核とした収益のみならず、フィービジネスを中心とした新たなビジネスモデルの構築というものも問題提起されているわけでございますが、我々の保有している様々な経営資源の活用、あるいは証券関連の各業態、あるいは各社さんとのより強いパートナーシップを確立することによって、新分野への参入というのは、私ども地域金融機関、銀行経営にとっても一つのビジネスチャンスになってくるのだろうと思っている次第でございます。

最後にもう一つ、論点であります市場誘導ビジネスでございますけれども、一言だけ申し上げさせていただきます。

地域の中小企業の現況あるいは財務内容、さらには経営者の人となり、考え方なりを身近にかつ十二分に知り得る立場にある私ども地方銀行が、お客様が直接金融への道筋を目指しておられる地元企業さんに対して、幅広くコンサルティング業務でかかわってお手伝いをさせていただくということは、その意味でも潜在的なニーズの発掘、あるいはひいては地元企業、地域企業の育成のためのパートナーとして、最もふさわしい存在であるというふうに自負しております。

私ども、そういったかかわりでは平成12年からの約3年間の私募債の発行も、県内で約30先ぐらいかかわらせていただいています。そうした意味からも、先ほど申し上げましたリレーションシップバンキングの機能強化といった観点からも、極めて私ども地域金融機関が果たしていくべき役割の一つであるのではないかなと考えているところでございます。

以上、地域金融機関がいかにして証券関連との協力、あるいは協調体制の中で証券仲介業あるいは市場誘導ビジネスにかかわらせていただくかということ、思いの一端を述べさせていただきました。地方における証券市場を活性化するための最も重要視すべきことは、先ほど来申し上げましたとおり、これまで証券市場へのアクセスに目を向けることのできなかった地域のお客様を、様々な手だてによってニーズを掘り起こし、証券市場に目を向けていただくことからのスタートになるだろうというふうに思っております。

そういった証券各社さんとのよりよき関係の中で、そうした役割を担うのにだれがふさわしいのかということを考えました場合、日常の営業活動を通して、地域のお客様と密着度の高い私ども地域金融機関が、そうした期待に十二分にこたえられる存在であるということを改めて申し上げまして、話の締めくくりとさせていただきたいと思います。

ご清聴ありがとうございました。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

それでは続きまして、京都信用金庫の増田さんからお話を賜りたいと思います。よろしくお願いいたします。

○ 増田常務理事

京都信用金庫の増田でございます。

私の方からは、今、北村常務の方からご報告のあったことに、できるだけかぶさらないように、私どもの現状から感じる点を申し上げます。その前に、私ども京都信用金庫について申し上げます。

京都信用金庫というのは、そもそも前身は信用組合でありまして、戦前、大正12年に設立された信用組合がスタートになっておるんですが、実はこの信用組合は京都証券取引所の証券仲介業人の仲間でつくった職域信用組合でありまして、従いまして簡単に言うと地場の証券会社がつくった信用金庫でありまして、私どもの昭和26年に信用金庫法で信用金庫になったときの初代の理事長は榊田証券という京都の地場の証券会社の社長が初代の理事長を務めたという経緯を持つ信用金庫でございます。

日本の金融機関の中で証券取引所から生まれた金融機関というのは、他に幾つあるのか不勉強でよく存じ上げませんが、希有な例ではないかと思っております。また、少し古くなるんですが、今から20年ほど前の1984年に大和證券と提携をいたしまして、中期国債ファンドと私どもの普通預金を結ぶことによって、事実上の証券仲介のようなことをできないかという──証券仲介というと問題なのでしょうけれども──ようなことも随分古くから手がけてまいった信用金庫のつもりでありまして、銀行・証券の連携強化ということが非常に重要であるということ、これは我々のビジネス、あるいは我々の地域にとって重要であるということで仕事をしてまいった信用金庫でございます。

規模は、預金量で約1兆9,000億円ほど、貸出金で1兆4,000億円ほどの信用金庫でございまして、今の北村常務さんのところの東邦銀行よりも二回りほど小さい金融機関でございますが、おおよそこの間の国債の窓販ですとか、投信に関する事情というのは、常務からのご報告にあったとおりでございます。重複しますので、その点については割愛させていただきます。

私の方から、2点申し上げます。

1点は、先ほどもありましたように、こうした話をする場合に我々からお話を申し上げると、例えば店舗数が多いですよということを申し上げますが、その上に重ねて、それと裏腹の関係かもしれませんけれども、例えば、私,今1兆9,000億円の預金と申しまして、そのうち個人預金は約1兆2,000億円なのでありますけれども、その個人預金のおよそ高齢者──高齢者を幾つからやるかというのは、いろいろ議論があるところかもしれませんが、例えば60歳以上とすれば、私どもの預金は、実は6割近くが高齢者の預金であります。これは恐らく地方へ行けば行くほど、あるいは我々のような下位とみずから言うのは、いかがなものかと思いますが、小さな信用金庫、身近なところに行けば行くほど、その傾向は顕著になるのではないかというふうに思っております。

簡単にいいますと、信用金庫というのはおじいちゃん、おばあちゃんのメインバンクであるというところが特徴でございまして、現実に私どもの今、1年間にふえます個人預金は、年間800億円ほど伸びますが、その800億円のうち、60歳以上のお客様の預金が幾ら伸びているんだろうと見たら、600億円を超えておりました。したがいまして、まだシェアが増えておるわけであります。

現に店頭で、私どもも例えばATMというものは出し入れには随分使われますし、私どもはインターネットを通じた預金の受け入れもしておりますので、若い人はそっちに行くのですけれども、店頭に見える方というのは、ほとんどが高齢者であります。したがいまして、私どもが申し上げたいのは、高齢者というのは概して保守的であります。したがいまして、なかなか証券会社の窓口なんかには行かれない。現に私どもの本店の目の前には大和証券さんも日興証券さんも野村證券さんもありますけれども、なかなかいらっしゃらない。

そういう中で、我々がここに、先ほど委員から報告のありました投資家の証券市場へのアクセスを一層容易にするというところでは、店舗数以上に我々として力を出せるところがあるのではないかというのが論点の第一であります。つまり、北村常務からご報告がありましたように、私どもは店舗数が多いですという上に、さらに加えて、ご利用される顧客属性といいますか、そうしたところが日本の千数百兆円と言われる個人資産の中の最も保守的な部分というのを、我々地域金融機関というのは担っておると思いますので、そうした地域金融機関にこうした証券仲介業務を解禁していただくという意義は、相当に大きいのではないかというふうに思っております。

2つ目は、一方、信用金庫というのは、これもほとんど北村常務からの報告と同じ観点からの報告になるのでありますけれども、さらに加えて信用金庫というのは、法律で中小企業取引に集中するということを義務づけられております。具体的に申しますと、従業員が300人以下、資本金は9億円以下と。そうした縛りがあるだけに、私どものお取引は、実はほとんどが零細企業であります。

零細企業との取引が多いということはどういうことを意味するかというと、スタートアップ企業、新たに会社をつくられた方も、実は多分入りやすいんでしょう。私どもの窓口、信用金庫や地方銀行の窓口に見える率が非常に高うございます。

最近、京都では非常に力強く感じておる風潮がございまして、大学も随分変わってまいりまして、開業率がひょっとしたら基礎的に上がっていくのではないかなということを実感しております。そうした企業は非常に忙しいです。つくって、例えば5年ほどで上場しようというような勢いのある企業もたくさんあります。しかし、そうした企業は証券市場へアクセスする時間的な余裕も十分にはありません。ただ、信用金庫は売り上げ代金の入金ですとか、あるいは手形割引ですとか、どうしたって接点が生じます。したがいまして、そういったところでの証券仲介あるいは市場誘導というのは、数字にあらわれる以上に重要ではないか。とりわけて、日本経済が根本的に力強く立ち上がっていくためにも必要ではないかということを日々実感しておる次第でございます。その点が論点として北村常務が先ほどおっしゃったことを、信用金庫の立場から補足申し上げるところでございます。

以上、甚だ簡単ではありますけれども、できるだけ東京三菱さんあるいは東邦銀行さんからの報告にかぶさらないように報告を申し上げたつもりでございます。

○ 神田部会長

どうも貴重なお話をいただきましてありがとうございました。

それでは、続きまして事務局から「銀行・証券の連携強化」についてお話をしていただきたいと思います。大森さん、お願いします。

○ 大森市場課長

資料1-2でございます。基本認識のところは、前回、金融システムの将来ビジョンを引用して申し上げたことでございまして、銀行は一たん貸したら最後まで抱え込むのではなく、市場を活用したリスクシェアリングを図っていく必要があるでしょうし、証券会社のビジネスは普通の国民、普通の中小企業をカバーするには至っていないので、銀行に連れてきてもらったらよろしいのではないでしょうかということが書いてございます。

2番目に、現行制度の今日的意味として、次のページになりますけれども、銀行発のシステミックリスクというのは、防止するためのセーフティネットが格段に整備されてまいりましたので、業務の範囲を広げて大丈夫かと、他人が心配する必要性は低下しているということだろうと思います。

一方で、2つ目のパラグラフにございますように、利益相反や銀行の優越的地位濫用といった可能性は今なお重要な論点ですし、金融分野における個人情報保護の要請も高まってきております。

米国の制度をどう紹介するのが公平な紹介になるのか、なかなか難しいのですけれども、グラス・スティーガル法の規制に対して銀行にニーズがあれば、FRBが既成事実を積み重ねて風穴を開けてきた。そしてそのニーズというのは、米国では200を超える銀行の証券子会社がありますから、その子会社業務の自由化であり、それが完成したのがグラム・リーチ・ブライリー法だと認識をしております。

銀行本体で証券業務を行いたい強いニーズがあるのにとめてきたというよりは、証券子会社で自由にやりたいというニーズだったということではないかと思いますが、その結果、銀行本体の業務に今なお制度的制約があるというのは、前々回淵田委員からご指摘があったとおりでございます。

そんなわけで、次の○で日本では銀行にとって不良債権問題の解消が最重要課題になっている中で、業務範囲の根幹にかかわるような見直しを行う時期にはないのではないか。一方、米国と違って、大きな銀行しか証券子会社を持っていない日本では、地域銀行や信用金庫における顧客サービスということも考えるべきではないのかというのが、本日、地銀さんあるいは信用金庫さんからプレゼンをいただいた趣旨でもございます。

証券仲介業のメリットと考えられる点については、もうお三方からお話がありましたので省略させていただきまして、最後のページの弊害防止措置の方向性ということについてお話をさせていただきます。

板谷委員から前回いただきましたペーパーは示唆的なものでありまして、利益相反のおそれがあって、その弊害の立証が困難であれば、ある程度外形的な理由で制約を課す必要があるというのは、一つの考え方であろうと思います。銀行と証券会社の関係を厳密に審査をして、問題がある場合には登録を認めないというご意見でございましたが、ここではさらに一歩進めて、銀行による証券仲介業は当局の認可にかからしめるという提案をさせていただいております。

他方、私も弊害防止措置というものを長く見てまいりましたけれども、有能な営業マンであるなと言っているようなところがどうしてもございまして、あまり外形的な基準として初めから導入の範囲を限定するとか、別会社に近いような措置を義務づけのるは、やはり制度導入の趣旨にもとるのではないかと思います。具体的な弊害の可能性に応じて、認可という形で行政に判断させていただきたいということでございます。

「投資家保護のためには」と、その下の○で書いてありますけれども、預金者保護と言った方がいいかもしれませんけれども、共同店舗の場合と同様、窓口区分といいますか、表示と言った方がよろしいと思いますが、そういった誤認防止措置が必要ではないかと思いますし、個人情報の目的外利用の範囲というのは国際的な課題になっております。

前回来ていただきました高橋伸子さんなどと一緒に、諸外国の調査出張に行ったことがあるのですけれども、EUが最も個人のプライバシーに厳格でありまして、日本の感覚ではなかなか考えにくいのですけれども、そもそも銀行が預金者の人種とか性格、キャラクターについて情報を記録すること自体が禁じられていると。

米国では、先ほど申し上げたグラム・リーチ・ブライリー法で個人情報の目的外利用に、本人の同意が義務づけられましたけれども、ボックスにチェックするという同意の方法で、本当にわかって同意しているのかとか、表現が難し過ぎるのではないかといった、一見、実務的な議論を議会の公聴会で、消費者団体や金融機関が激しくやり合っておりまして、恐らくその日本の金融機関の意識はそこまで行っておりませんので、こういった問題も近く再開される金融審議会の特別部会で十分に検討していただきたいというふうに考えております。以上でございます。

○ 神田部会長

ありがとうございました。

資料の1-3というのもあるのすが、特によろしゅうございますか。

では、資料1-3というのは、前回までご指摘いただいた、銀行が証券仲介業を仮に営むということになった場合に生じ得る利益相反等について、項目別に現行制度と、前回までご指摘あったことを踏まえて、一番右側の欄になりますけれども、考え方を整理したということで、今、大森課長からご説明があった話のうちの利益相反に対する措置ということでの整理だと思います。

それでは以上につきまして、最初の方の永易委員、それから北村常務、増田常務からのお話、そして今の大森課長からのご説明、すべて一括して、どの点でも結構ですから、委員の皆様方からご自由にご意見、ご質問をお出しいただきたいと思います。どなたからでも結構です。どうぞよろしくお願いいたします。

板谷委員どうぞ。

○ 板谷委員

今、大森課長のお話の中で、私の意見も一部ご参考いただいたということでございますが、重要なことでございますので、弊害防止に関連することを中心に少し申し述べたいと思います。

資料1-2でございますが、論点整理していただいているわけですけれども、その3ページでございますが、「有効な弊害防止を条件に、証券仲介業の業種制約を撤廃」すべきではないかといった整理があるわけでございますけれども、前回の当部会でも申し上げましたが、銀行が同じ金融持ち株会社、傘下の証券会社のために証券仲介業を営むといった場合には、弊害はとりわけ大きいのではないかと考えております。

これは前回、東委員の方でしたか、銀行が顧客と証券の間に入っている図についてコメントされていましたが、同じグループの場合は、銀行と証券会社とはくっついている、あるいは銀行と証券会社を囲む大きな枠ができるのではないかなというふうにも思っております。

この論点整理の中にも、65条についての今日的意義は失っていないという趣旨の説明もあるというふうに理解しておりまして、私もそのとおりだと考えておるのですけれども、同じ系列下の銀行と証券会社が一体的に動いた場合には、65条の脱法的なことが十分起こるのではないかということが危惧されると思います。

それから証券仲介業ということで言われますけれども、証券仲介業の中も、売買や委託取引の媒介ということと、募集売り出し私募の取り扱いというふうに、行為形態が違ってくるのではないか、それに応じて弊害の種類、影響も異なるのではないかなというふうにも思いますので、金融持ち株会社傘下という視点と合わせて、こういう仲介業の種類ごとにも整理して、さらに弊害の検証を行うべきではないかなというふうに思います。

それから、こういうふうに場合分けして、ですから弊害に関してはいろいろと状況が違うかもしれませんが、その場合には、ある場合については仲介業を認めることについてより厳しい状況、あるいは認めないというような結論が出る場合もあるのではないかなというふうに思います。

それから有効な弊害防止措置の導入ということが前提となっているわけですけれども、本当に実効性のある措置が可能なのかどうかということもポイントであろうと思います。前回、当部会でも参考人の方から、親法人、子法人間の禁止行為を定めた45条に違反している例、あるいは社債管理会社の例というのは紹介されておりましたけれども、私からも例を一つだけご紹介させていただきますと、昨年8月にブルームバーグの記事として、ある銀行系証券会社のMAの責任者の方の発言ということで次のようなものがございました。

「MAのマンデートを取るには、親銀行に一本電話して頼むだけでいい。」「マンデートを取るために銀行の幹部にいつでもお願いすることができる。」「取引関係の面でも、与信ができるという面でも我々はすぐれている。」といったようなことが引用されておるわけでございます。これは氷山の一角と思いますが、いずれにせよ、こうしたことが堂々と記事になっているということは、やはり銀行の影響力がいかに大きいかということを示していると思いますし、私どもの営業の現場の実感にも近いかと思います。

したがいまして、弊害防止措置につきましては、そもそも現在の親子法人に係る弊害防止措置が機能しているかどうかといったことの検証から行っていただきたいなという希望を持っております。

アメリカでもタイイングの問題が取り上げられ、調査が行われたというふうに聞いておりますが、アメリカのようにドライなビジネスライクな国でもそういったことが問題となるわけでございますから、日本的な風土の中では、タイイングの問題が表面に出ない形で、より日常的に起こり、資本市場というものがゆがめられるのではないかということを危惧しております。しかも問題の性格から言って、タイイングが行われたといっても立証が困難な場合もありましょうし、弊害防止が設けられたとしても、それが絵に描いた餅に終わることが懸念されるということでございます。

いずれにいたしましても、弊害についてよく整理・検証した上、弊害防止の実効性についても審議を行った上、報告書等おまとめいただく必要があるのではないかなというふうに思っております。

○ 神田部会長

ありがとうございました。

高橋委員、どうぞ。

○ 高橋委員

今の板谷委員の意見とほぼ同じことを申し上げたいと思います。

前回、証券業界の状況はどうだという座長の問いに対しましてお答えしたとおりでありますけれども、その後も重要な問題でありますので、随分いろいろな場で証券界の中で議論がされております。個人投資家の参入していくという目的のために、ぜひ進めてほしいという意見もございます一方、多数の意見は反対意見でありまして、弊害といいますか、預金者、投資家に対しまして、不測の損失を生じるというようなことが起こってしまうという問題があることであります。そのほか、65条の基本につながるのではないかとか、時期尚早ではないかという議論だったと思います。

65条の基本につながるという問題につきましては、先ほど大森課長のご説明にありましたように、当面そういうことはやらないというようなご説明だったと思います。その点の懸念については確認をさせていただいたということになろうと思います。

弊害につきましては、前回までにいろいろな論点として出ているとおりであろうかと思います。特に、今も板谷委員が触れられた点なんですけれども、例えば証券子会社が引き受けをして、それを関連の金融機関で募集・売り出しの取り扱いをするというような状況を考えてみますと、これはその金融機関が全体として引き受け業務をやるということそのものではないかということです。だとすれば、そこに典型的なコンフリクトが生じる可能性があるということではないかなというふうに思います。

先ほど、永易委員の方から新たな弊害防止は必要ないんだと、社内教育あるいは社内規制によって十分対応しているというお話しがありました。そういうことがそうではないということを申し上げるつもりもありませんし、また3人の金融機関の方が、証券市場の活性化ということに大変心を配っていただいているということは感謝申し上げる次第でありますけれども、ただそういう可能性に対して、投資家、預金者というものの最終的な損失にならないような何らかの弊害防止というのは、引き続き必要であろうかというふうに思います。

そういう意味では、先ほど大森課長の説明された、あるいは資料1-3に書かれておりますような弊害防止措置というのが、実効性のあるような形で確保されるということが何よりも大切なことではないかなというふうに思います。

特に、先ほど大森課長が触れられました認可を要件とするという点につきましては、ここに書かれておりますような弊害防止措置の実効確保の体制を踏まえて認可をするというように伺ったわけでございますけれども、そういうことであれば、その点について実効性のあるような運用をしていただきたいということをお願いをしたいと思います。

最後に1点だけ質問させていただきたいんですが、この弊害防止について、仲介業関係での弊害防止というご説明だったんですが、市場誘導ビジネスということにつきましても、幾つかの懸念というのが前回までに示されていたかと思います。そういう市場誘導ビジネスも含めた弊害防止ということでご説明になったのかどうか、その点についてご質問させていただきたいと思います。

○ 大森市場課長

ここでは、証券仲介業に関する弊害防止措置についてご説明をさせていただいたわけでございまして、市場誘導ビジネスと名付けましたものは、貸出先に対する公開に向けたアドバイスあるいは引き受け証券会社に対する公開可能企業の紹介という事実行為が、法律で禁止されていないということを明確化したと。それを今後ガイドラインで明確化したいということでございますので、今後、どういうガイドラインの書き方がよろしいのか検討してまいりたいと考えております。

○ 高橋委員

法律との関係は今のご説明のとおりだし、前回もそういうご説明だったかと思います。ガイドラインという形でそのことを確認されるのであれば、今出た懸念についても触れていただくようにしていただいたらいいのではないかということだけ申し上げたいと思います。

○ 神田部会長

ありがとうございます。

田島委員、お願いします。

○ 田島委員

東邦銀行の北村常務にお尋ねしたいのですけれども、ただいま個人投資家を証券市場に呼び込むために銀行が貢献していらっしゃるという、そういう方向でのプラスのお話をいろいろご紹介いただいたのですけれども、それとはまた違う、逆の方向での顧客の反応がないかどうかということについてお尋ねしたいのですけれども。

新しく投信などを買う顧客というのは、現状非常に銀行預金が低金利なので、もう少し有利な投資先を求めて銀行のアドバイスに従って、では投信を買ってみようということで買いはしたものの、株式投資などの場合、かなり元本割れしているケースもあると思いますので、その結果、やはりこれは懲りたと、二度と投信を買うようなことはしない、株も買わないと、そういうマイナスの方向の反応というのは全然ないものなのでしょうか。

○ 北村常務取締役

お答えさせていただきます。勧誘そのものでございますが、これについてはあくまでお客様のニーズが優先するということでございまして、当然、資産運用の多様化の中で、我々品ぞろえとしてそろえさせていただく中で、ある程度ご説明はさせていただくというようなレベルでございまして、積極的なあれというふうなスタンスではないかなという感じがしております。

そうした中で、元本割れとか何かで非常に拒否反応を示されるかどうかというようなご質問であろうかと思いますけれども、私ども証券業界さんの販売スタンスなどを十分承知しているわけでございませんので、何とも申し上げられませんけれども、我々は既にお客様との接点の場、窓口とか何かでしっかりアカウンタビリティ(説明責任)をしっかりとやらせていただいていると。

例えば、今日も持ってきておりますけれども、投信販売のチェックリストというのを、その都度チェック項目が20項目ぐらいあるのですけれども、適合性の原則あるいは預金との誤認防止、当然のことながら商品説明などをしっかりやらせていただく中で、十分ご納得いただいた上で、投資信託をご購入いただくというスタンスでやっておりますので、今のところ私ども、さまざまなクレームだとか、あるいはいろいろなご批判を受けたというようなものは、特に際立ったものはございません。

私の記憶している限り、今年若干のクレームがあったと。大変具体的なお答えで申しわけございませんけれども、あれは80歳を超える女性の方に、十分ご納得いただいた上で販売させていただいたわけですけれども、たまたまご家族の方で、過去にちょっと投資信託でご損をなされたご経験から、クレームが寄せられたというようなことが1件だけありましたけれども。総販売件数、我々6万件ぐらいある中では、極めて我々としては少ない方かなという感じで評価しているところでございます。

○ 田島委員

お聞きしたかったのは、説明責任を果たしていないということでのクレームではなくて、それはもちろんご自分がリスクを負って購入はしたのだけれども、結果として期待したような投資効果が得られない、逆に元本割れをして損をこうむったので、もうこれは懲りたから、次の機会に何か投信の販売で勧められたときに、もうそれは買いません、私は凝りましたというような顧客の反応というのを聞かれたことがないかという趣旨でお尋ねしたつもりなのですけれども。

○ 北村常務取締役

それは少なくとも私どもの銀行に限っては、耳にしておりません。

○ 神田部会長

まだ歴史も浅いということもあるのかもしれませんね。

○ 北村常務取締役

そうですね、3年くらいですので。あと、株価もこういった局面で、あまりあれしないということも、あるいは背景にあるかと思いますけれども。とにかくネガティブな反応はあまりないということです。

○ 神田部会長

ありがとうございます。

ほかの委員の皆様方、いかがでしょうか。どうぞ、東委員。

○ 東委員

先ほど地域金融機関さんのお話を伺っていて、改めて金融機関さんのネットワークの深さですとか、あるいは影響力の大きさというのを大変感じたわけであります。そういう意味で、銀行と証券の連携を強化するということは、当然、プラスが大きいだろうというふうに思います。

ただ、この連携の強化というのは2つの形があって、先ほどからお話にあったのは、ある種独立した銀行と証券との横のネットワークと、証券子会社とりわけ連結子会社としての証券会社との縦のネットワークとの間の議論は、やはり分けるべきではないかというふうに思っています。

さまざまな弊害防止措置の議論はあるわけですが、例えば、既に証券子会社との間のファイアーウォールという措置はあるわけであります。したがって、情報共有は禁止されています。では、それが金融機関さんの店舗で仮に守ろうとするときに、窓口は一体どういう対応をすればいいのだろうか。当然、同意書を得るというようなことの必要性は出てくるものと思います。そういう意味で、横の連携については効果もあり、弊害防止措置を十分講ずることでそれなりの成果が出るというふうに考えますけれども、縦の連携については、やはりより慎重であるべきではないか、そういうふうに考えております。

○ 神田部会長

どうもありがとうございます。

淵田委員、どうぞ。

○ 淵田委員

証券会社の看板でしたら登録制でできるわけですし、また規制の枠組みもきっちりしたものが既にあるわけでして、あえて銀行が証券仲介業を認可制という形で行えるようにすることの必然性は、理屈としてやや割り切れないところがまだ残っておりますし、弊害の懸念もあると思うのですけれども、関係者に投資家のすそ野拡大といった非常な熱意を感じておりまして、これは一種敬意を感じている次第であります。

もちろん問題が抑止できるのであれば、事前的な規制というのは最小限である方が私もいいと思います。ただいろいろ懸念が出ている理由は、弊害が起きていても、問題が起きていても、それがなかなか発覚しにくい、表面化しにくいというところだと思います。こういう問題が起きていても、なかなか表面化しにくいような分野に対して、どのようなアプローチがあるかというと、2つあるのではなないかと思います。1つはそもそもそういう問題を起こすインセンティブが起きにくい構造をつくってしまうということで、例えば監査法人がコンサルティング業務をできないようにするですとか、投資銀行部門とアナリストを分けるとか、そういった意味で外形的な規制を強化するというのは、これは一つの流れとしてはあるなと思います。これは決して時代遅れの考え方ではないと思っているわけであります。

もう一つのアプローチというのは、事前規制を緩和するかわりに事後チェックをもっと厳しくしていくということでありまして、あるいは事後チェックを機能させやすくするという流れでありまして、例えば最近の談合問題に対する競争政策の考え方で、課徴金を大幅に上げていくといったこととか、いわゆるリーニェンシーですか、つまり問題があったということを申告する人に対して罪を軽くするとか、あるいは内部告発を奨励するといったような考え方をしていくことによって問題を抑止するとか、あるいは問題を発覚しやすくしていくというアプローチがあると思います。

この2つのアプローチの、今の議論ですと後者の方の重要度を高めた方がいいのではないかという考え方だと思います。今回の仲介業に関して幾つか反対論が出ておりますけれども、やはりそこには従来から証券界において利益相反、優越的な地位の利用が銀行に実はあるのだけれども、実際には摘発されていないのではないかという、これは事実か疑心暗鬼かわかりませんけれども、水面下で問題が起きているのではないかという、そういう懸念があるというふうに感じました。

永易委員の報告にも、既に弊害防止措置はあるではないかということがあったわけですけれども、ルールがあるということと、それがエンフォースされているかどうかということは全く別次元の問題であるということは、この第一部会でもルールがあってもエンフォースされないというケースが多々あると、だから課徴金といったことを考えましょうというふうな議論があるわけでありまして、これはルールがあればよいということではないと思いますね。

ですから、事前規制を緩和していくということであれば、今度の仲介業はもちろんですけれども、既存の相乗り分野も含めまして弊害防止措置の徹底に向けて新たな取り組みですとか、あるいは何か新しい工夫というものはあり得ないのかどうかということを、同じように熱意を持って検討していただかなければならないのではないかと思います。

○ 神田部会長

今の淵田委員の点は、非常に重要な点で、板谷委員の最後の点とも共通するのですけれども、やはり金融庁の方の認識を一言伺った方がいいと思うのですが……。

この分野の、確かにルールのエンフォースメントという話は、これまでこの部会ではエンフォースメントについてやや別の局面についてずっと議論をしてきたわけですけれども、今日の後半部分でまたご確認いただきます。板谷委員からもご紹介ありましたこの分野、今回、さらに証券仲介業というところに弊害防止措置を設ける、どういうルールを設けるか、これは非常にそれとして重要ですけれども。ルールはつくったけれどもエンフォースされないのでは、これは確かに困るわけでありまして、このあたりはどうなのでしょうか。私も非常にあいまいな質問かもしれないのですけれども。

どうぞ、永易委員

○ 永易委員

淵田さんが言われたこととか、板谷さんが言われたことは、ある面では理解できないこともありませんが、後半戦のファイアーウォール規制は十分にあるのだけれども、エンフォースメントがないではないか

ということですが、現実には私どもの内部管理のルールというのは本当に厳しいです。これ以上のものはないだろうと思うぐらいのこんな分厚いのがありまして、それは遵守しているというプライドはあります。

かつ、そういう内部監査だけではなくて、金融庁さんの検査、このときには現実に相当厳しくチェックされております。これは証券との間だけではなくて、いろいろなところの関係でファイアーウォール規制というのはあるのです。こちらは検査項目の相当大きいウエートを占めて、懸念があると、我々はそこまで思っていないところまででも相当の摘発を受けると。そうすると、それに対してどうするのだということを24条、へたをすると26条という非常に厳しい措置で対応されているということが事実としてあると思います。そのあたりはなかなかご存じないでしょうが、相当厳しい金融庁検査の監視・検証がされておるということは述べておきたいと思います。

板谷さんにちょっと申し上げると、証券子会社との間と分けるべきだという議論は、一つのアイデアとしてはあるのでしょうけれども、先ほど申し上げたファイアーウォールの項目を見ていただいたらわかると思いますけれども、これが本当の意味で守られているかどうかという問題は、今申し上げたのですけれども、この開示義務とか、非公開情報等の授受の禁止、抱き合わせ行為の禁止ですね、バックファイナンスは当然だめと。アームスレングスというのもかなりきつくて、通常だったら簡単に他証券さんとではできるものでもできないというような、非常に厳しい規制があるのですね。だから、さらにそれと分けて何を加えるのかというのは、禁止するぐらいしかないという感覚を受けるぐらいでありまして、それは大変逆方向から問題であろうという気がしております。

それと、せっかく発言しておりますので、一つだけ質問したいところがあります。それは先ほどの弊害防止措置の方向性の中で、先ほど私の方からちょっと縷々申し上げたのにも関連するのですが、2つ目の○のところに共同店舗の場合と同じように、窓口区分という表示があります。これは先ほど金融界から縷々説明したとおり、リスク商品というのは今回排除されたとしても、株だけではないわけでございます。外貨預金もしかり、保険もしかり、いろいろあるわけです。それをトータルとして、例えばFPとかが今のあなたのこの状態であれば、こういうものがよろしいのではないかと。もちろん納得していただいてやるわけですが。

これは窓口、表示かもしれないと言われたから、それならいいのですが、例えば保険だったらこれだけとか、こうやられますと実際問題はできません。それをやられるのだったら、現実にはそのために、例えば2人充てるとか、そういうことはとてもではないけれどもできないので、そこだけは大変気になりましたので、ちょっとコメントはされましたので大丈夫だとは思うのですけれども、そこだけ確認したいということであります。

○ 神田部会長

詳細にご説明いただきましてありがとうござます。若干認識の差は存在しているのかもしれませんけれども、ご発言のない委員の皆様方、いかがでしょうか。

高橋委員、どうぞ。

○ 高橋委員

今の窓口の話はよくわからなかったのですが、ここに書いてあることと違うというふうに私は理解しなかったのですが、どういうことなのかちょっと説明してほしいと思います。窓口区分をするということが顧客の混同防止のために必要だと、これは共同店舗などのときにもそうなっているのです。リスク商品、証券商品ということでありますので、必要なことであろうかと思いますので、ここに書いてあるとおりかなと思ったのですが、それが違うような説明であったのかという認識がなかったものですから、ちょっと教えていただきたいと思います。

○ 大森市場課長

共同店舗の場合も、その窓口は銀行内における証券会社であるという表示がされることによって、お客様に誤解がないような形にしているわけですから、銀行内で株式などのリスク商品を売る窓口であるということをきっちり表示をしていただいて、誤解がないようにしていただくということで、永易さんがおっしゃったのは、区分という言葉で、必ずそのための専用の窓口をそのために設けなければいけないということを義務づけると、ワークしないというようなことを考えているわけではなくて、株式の勧誘取り次ぎをする窓口ですよということが、そのお客様にわかるようなきちんとした表示をしていればいいのではないかという意味で申し上げたわけでございます。

○ 神田部会長

ありがとうございます。よろしゅうございますでしょうか。

いかがでしょうか、ほかの委員の方々の沈黙は何を意味しておられるのかがちょっと。(笑)なかなか私は推測できないのですが。島崎委員、お願いします。

○ 島崎委員

今日は金融機関の方からご説明ありましたが、基本的にはやはりこの証券市場に個人の投資家を呼び込むということで長年やってきたわけですし、この会のいろいろな議論もそういうことが基本だったと思います。私は産業界を代表して話をする立場なので、いろいろ微妙なのですが、、先日の永易委員のお話しでは、東京三菱銀行ですと1,000万人の顧客口座を持っている。恐らくみずほさんですともっと多いのでしょう。したがい、流れとしては、やはりそういう個人との接点があるというところが、そういう仲介等やっていくことについては、私は非常に意義があることだろうと思います。

それから、あと投資教育等々の問題につきましても、先ほど北村さんあるいは増田さんからもお話しありましたけれども、そういう窓口でフェイス・トゥ・フェイスの教育をし、説明をしてということで、そういう資金を必要な人に誘導していくという意味からも、やはり証券仲介業等が銀行金融業が行っていくということについては、流れとしては私はそういう方向でいいのかなと思います。。

ただ、先ほど来、いろいろ懸念されておるいわゆる利益相反の問題等々ありますので、それについてはやはりきっちりした議論をして措置を講じていくと。しかし、いろいろな、こういうことがあったではないか、ああいうことがあったではないかということを言い出すと、逆の話、恐らく金融機関の方からもいろいろあるのだろうと思いますが、そういう個別の話は別に置きまして、大きな流れで判断していくべきではないかと思います。以上です。

○ 神田部会長

どうもありがとうございます。黒沼委員、どうぞ。

○ 黒沼委員

私も弊害防止措置を実効性のあるものとして構築できるのかが一番重要な点だと思うのですけれども、従来から親子会社間の弊害防止措置はあったわけですが、本体で兼業する場合に、実際の執行の面でうまくいくのかということが一つ問題となると思います。

確かに、現行法でも証券会社は他業の兼業は認められていまして、他業で知り得た情報を利用して取引とか勧誘をしてはならないという規定はあるのですが、この規定は現在どのくらい執行されているのか、実効性があるのかということも検証した上で、十分自信があるという体制が整っているならば、やって構わないのではないかと感じております。

それから、他業で知り得た発行者に関する未公開の情報を利用して取引したり、勧誘したりする行為は、一種のインサイダー取引でありまして、利益相反取引とか、あるいは公正な競争条件の確保というのとは別の、市場に対するインパクトもあります。インサイダー取引は課徴金の対象にはなるようですが、それに類するような、証券会社でも同じようにインサイダー取引を予防するための規制はありますけれども、そういう行為規制についても、課徴金の対象にすべきではないかと私自身は考えております。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。貴重なご指摘だと思います。

ほかにいかがでしょうか。よろしゅうございますでしょうか。ちょっと私としては、もう少しお聞きした方がいいのかもしれませんし、全員のご意見を伺った方がいいかもしれませんし、非常によくわからないところが正直言ってございますが、銀行界のお考え、それから証券界のお考え、全体を含めてこれは高橋委員からもご説明いただきました。大体出していただいたというふうに思います。それ以外の皆様方、特にこの部会の委員のお考えは前回、前々回もご指摘はありましたので、大体よく伺ったということだとは思います。

若干、ここであまりこういう方向でというのは、やや時期尚早なような気持ちも一方ではありますけれども、毎日部会を開くわけにもいきませんし。感触としては、今日、今、島崎委員、それから黒沼委員が言っていただきました、特に大きな流れというか、考え方としては島崎委員が言っていただいたような方向で、そして板谷委員、高橋委員、淵田委員からご注意がありました点に十分気をつけてということで、先へ進めてみるというような感じではないかなと、自信があって申し上げているわけではないのですけれども。そういうことで、特にご発言のない委員の方々も同じぐらいではないかとの──それは多少個々にはいろいろおありかと思いますけれども──感じを持ちますけれども、そんなような方向で事務局からの今日ありましたものを、今申し上げました点を十分踏まえて文章にしていくと。それでまた、さらに皆様方にご意見を伺うというようなことが現実的なように思うのですけれども。余り拙速である必要はないのかもしれませんが。

池尾委員、お願いします。

○ 池尾委員

私は基本的に今、神田座長がまとめられようとしている方向に賛成です。

弊害の可能性というのは、可能性があるか、ないかという定性的な議論をすれば、それはあるという話になると思うのです。利益相反の可能性もあるか、ないかという定性的な議論をすれば、それはあり得るという話になると思うのですが。ただ、今ここで問題になっている証券仲介業を金融機関に認めた場合に起こり得る弊害の定量的な大きさというのを想像したときに、それによってもたらされるメリットの定量的な大きさをはるかに上回る弊害が生じるというふうな印象は、どう考えても得がたいところがありまして。

だから、弊害防止措置についても、私は経済学者のせいだと思いますけれども、コスト・ベネフィット・アナリシスで、とにかくネット・ベネフィットが大きいことをやるべきだと思っておりますので、定性的にゼロを目指して、非常にコストの高い措置がとられるとか、そういうことはやはり角を矯めて牛を殺すような話になりかねないと思いますので、もちろんだからといって、少しでもベネフィットが多ければコストが絶対的に大きい施策でもやっていいのだという話をするつもりはもちろんありませんが、基本的にはこれだけ慎重に議論をしていれば、進めてしかるべき話ではないかというふうに思っておりますので、今、座長がおっしゃったような方向で、ぜひ進めていただきたいというふうに私としては思います。

○ 神田部会長

どうもありがとうございます。

西村委員、どうぞ。

○ 西村委員

今の点と絡むのですが、池尾委員と同じ意見です。それに加えて2つ、事前の認可というのと事後のものとのバランスが、ちょっと今、このいただいたところではわかりにくいので、そこのところが結構弊害防止の実効性と実効性を担保するための費用というのと絡みますので、もう少しご検討いただいた方がいいのではないかというふうに思います。以上です。

○ 神田部会長

重要なご指摘ですね。ありがとうございます。

ほかにいかがでしょうか。どうぞ、藤田委員。

○ 藤田委員

私の考えとしては、最終的にこれで行おうとしていることが消費者利益につながるのかどうか。金融の場合ですから、預金者とかあるいは取引先等の利益につながるかどうかということから考えてきますと、重要な要件は利便性ということであって、業態の区分にとらわれずに、いろいろな窓口が利用できるということは、最終的には消費者利益につながるのではないかと思います。方向性としては、それが正しいのではないかと思います。

弊害防止の措置に実効性を持たせることができるかどうかとなりますと、私の知識では、ちょっと今、判断ができないと。それで、いずれは65条は何のためにあったのかという問題に行き着くような感じもしてきますが、ちょっとその辺についても、今は判断ができないということを正直に申し上げたいと思います。

○ 神田部会長

ありがとうございました。65条の問題は、ちょっとここでは切り離して検討して、また将来議論することもあり得るのかもしれませんけれども、それはともかくとしまして、そういうことで整理させていただきたいと思います。ほかによろしゅうございますでしょうか。

それでは、もう大分時間もたっておりますので、ちょっとまとめはよくなかったかもしれませんが、先ほど申し上げました点を、その後ご発言いただきました委員の皆様方のご意見も踏まえて、事務局と私の方で文章化をさせていただくというステップに入らせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

今日、2人のゲストにはお忙しいところおいでいただきましてありがとうございました。

それでは、前半部分の審議はこれまでとさせていただきまして、後半部分のご審議に移らせていただきます。

まず最初に、前回議論いただきました論点のうちの若干のものにつきまして、事務局からの説明をいただきます。三井さんと居戸さん、よろしくお願いします。

○ 三井調査室長

前回、島崎委員からご質問がありました件で、私が口頭で説明したことが大変わかりにくいということで、おわびいたしまして、ちょっと図示させていただきました。資料2-2、アメリカにおける課徴金、民事制裁金と刑事罰との関係という図でございます。

アメリカのケースを例にとりまして、違反行為によって得た利得の吐き出しと、それを超えて抑止なり実効性確保のために必要なものを制裁として取るというふうな、大きく単純化して2つに分けて考えた場合、上の方は英語でdisgorgement(ディスゴジュメント)と言われているようでありまして、差止命令(injunction インジャンクション)の付随的命令(ancillary relief アンシリリー・リリーフ)として利得の吐き出し、これをディスゴジメントということなのですが、これを国に納付させるという命令が昔からございました。現在でもございます。

これと、民事制裁金(civil money penalty シビル・マネー・ペナルティー)、これは向こうは行政法がありませんので、刑事でないものはみんなシビルと言うそうでございますが、国に納付させるもの(ペナルティー)、これについて一定額以下という部分を脇において考えますと、原則として利得と同額。それからインサイダーの場合には、より悪質性が高いということで、利得の3倍以下というふうになっております。

このディスゴジメントとシビル・マネー・ペナルティーは、足し算ということになっております。それぞれについて、刑事罰あるいは没収・追徴との関係でございます。

いずれも判例がございまして、まずディスゴジメント、不当利得の吐き出しにつきましては、刑事上の没収・追徴から引き算するという扱いが、アメリカの判例によってはなされている。それから、下のペナルティーの方につきましては、刑事罰とは調整する必要はない。したがって、罰金と制裁金(ペナルティー)は足し算するということで、アメリカの憲法上の二重の危険(ダブル・ジョパティー)というものに反しないという判例が最高裁で確立しておるということでございます。

次のページは、実例といたしまして10月に配付いたしました高額の課徴金が課された例につきまして、制裁金(ペナルティー)の方だけ金額が書いてございましたが、そのものについて不当利得の吐き出し(ディスゴジメント)が一体幾らかかっていたのかということを、ご参考までに掲げたものでございます。

次は、そのベースとなる判例の出典等でございますので、割愛します。

それではということで、課徴金制度にそれを置き換えた場合にどうなるのか。この紙の前半は、これまで何度も論点等、お示ししてきたものと同じことが書いてございます。1、2はそういうことでございまして、3のところで金額、利得の吐き出し、それから利得の額の有無にかかわらず、一定の額、率を上乗せするかどうかというのが、それぞれ前回の論点の1つ目、2つ目に対応することになります。

利得の吐き出しのここのところを没収・追徴と調整するのかといった場合には、今のアメリカの制度と全くパラレルに考えれば、ディスゴジュメントに対応するものだと考えれば、没収・追徴と調整する。それからペナルティーの方に対応するものなのだと考えれば、調整しないということになる。

アメリカと同じ扱いをするならば、ペナルティーと位置づけた場合に、没収・追徴と調整しないだけではなくて、刑事罰、罰金とも調整しないという考え方もあり得るということであります。

それからマル2の方になると、没収・追徴とは関係ございません。ペナルティーとの関係も、アメリカと同じであれば調整しないということになります。ただ、それは日本の証券取引法、憲法ともにアメリカの影響を受けておりますので、憲法上は違反しないであろうということだけでありまして、立法政策としてそうでなければいけないということではございませんで、高過ぎない、低過ぎないという適切なバランスにつきまして、皆様のご意見を踏まえて、適切な水準を定めたいというふうに考えているわけでございます。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。では、続きまして居戸さんお願いします。

○ 居戸企画課長

企画課長の居戸でございます。前回のご議論の中で、金融トラブル連絡協議会の座長をしていただいています岩原委員からご発言がありまして、その投資家保護とか、あるいは投資教育については、後ほど事務局が説明します報告の中にできるだけ盛り込ませていただいているのですけれども、1点各論で、外国為替証拠金取引の問題についてご指摘がありましたので、今の金融庁の対応について、簡単に1分程度でご説明をさせていただきたいと思います。資料2-3をご覧いただきたいと思います。

1の概要は省略させていただきまして、金融庁の対応、今こういう努力をしているということでございます。まずマル1でございますが、外国為替証拠金取引、世間でいろいろ問題事例も発生しているのですけれども、まず金融庁所管業種でやっておられる方はほとんど証券会社でございまして、その証券会社について既にガイドラインを策定して、きちんとしたルールづくりをさせていただきました。このルールづくりも踏まえて、証券会社が行うものについては、明確に金融商品販売法の適用対象になります。

それから2つ目として、上記ガイドラインの策定にあわせて一般の方に注意喚起の文書を金融庁のホームページで掲載をするということを行いました。

それから3つ目が、霞ケ関の縦割り、あるいは業態の縦割りでなく、もう少し何とか、現在我々金融庁ができる現行制度のぎりぎりのことをやろうということで、金融商品販売法の施行令を改正いたしまして、金融庁所管業種以外の商品先物業者であるとか、あるいは一般の事業法人等が行うものについても、金融商品販売法の対象とする方向で、今関係省庁と調整をしておりまして、調整が整い次第できるだけ早く実現をしたいというふうに考えております。以上でございます。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

それでは続きまして、お手元の資料2-1になると思いますけれども、前回までのご審議を踏まえて文章にしたたたき台のようなものを用意しておりますので、これにつきまして事務局からのご説明をお願いいたします。

○ 大森市場課長

全体を読み上げますと、恐らく30分以上かかってしまいますので、お目通しいただいているという前提で、なるべく簡潔にご説明をさせていただきます。今日、お時間が足りなければ、また事務局の方にご意見をお寄せいただければと思います。

5つのテーマ、2つのワーキング・グループと当部会本体で検討をしてきました三本柱について並べたものがこの資料でございます。2ページの、まず最初に市場間競争の制度的枠組みは取引所ワーキングでご検討をいただいていたものでありまして、制度改革の方向性といたしましては、4ページの(2)改革の方向性の5行目から書いてございますように、取引所取引原則を見直して、証券会社の最良執行義務を導入するとともに、PTSに取引所と同じオークションによる価格決定方法を認めることが望ましいというのが、一つの制度論としての結論になっております。その結果、どういった最良執行義務の内容か、あるいはPTSと取引所をどう区分していくのかということが、前回申し上げた5ページ以下に書いてございます。

もう一つは、6ページの上段の方に書いてございますように、証券業協会の規則に根拠を置いておりますグリーンシート、これを証券取引法に規定して国民の認知度を高め、不公正取引ルールを適用して信頼性を高めると。おかげさまで、少し3行、その税制のことを書かずもがなかもしれませんけれども、こういった措置が本年の税制大綱で認められているところでございます。市場間競争の担い手の姿というのは、前回読み上げさせていただいたものと全く同じでございます。

その次の柱、ディスクロージャー制度の整備は、ディスクロージャーワーキング・グループで、相当に緻密な議論を積み重ねていただきまして、おまとめいただいたものの要約でございます。若干、表現をかみ砕いて、何ゆえこういった投資信託の目論見書の三部構成化といった検討が必要になったのかという背景をつけ加えさせていただいております。そういった背景が7ページから8ページの前半の部分でございまして、中身としてはその下に書いてございます目論見書の三部構成化でありますとか、あるいは9ページの下から2行目に書いてございます業績予測などの将来情報、これが目論見書との間に矛盾や虚偽がなければ、民事責任を問われることなく販売用資料として活用できるように、ルールの明確化を図るべきであるといったところが目論見書についての主な結論でございました。

もう一つの柱でございます公開買付制度の見直しについては、強制的公開買付制度の適用の範囲を、適用除外を設けていくということで、具体的には11ページの中ほどあたりにございますように、営業譲受に伴って結果として他の会社の株式の所有割合が3分の1を超える場合、あるいは買付者と特別関係者をあわせて既に2分の1の支配権を取得している場合、こういったことを適用除外することが合理的であるということは、前回羽藤からご説明させていただいたとおりでございます。

さらに、今後引き続いて英文開示あるいは四半期開示の制度化といったことを、当ワーキング・グループとして検討していただくということを最後に付記させていただいております。

3つ目の柱が、12ページの下、市場監視機能と体制の強化でございまして、監視機能の強化につきましては、今、三井からご説明させていただきましたのが現状でありまして、もう少し具体的なケースに即した、わかりやすいイメージをお示しできればよかったと思うのですけれども、先ほど三井からお話しありましたように、どういう考え方に基づいて金銭的ペナルティーを課すのかというのは、霞ケ関では相当程度、法務省や法制局の問題でもあるものですから、当審議会としては違反行為の程度や対応にふさわしいそのサンクションの多様化を図るという一般的な方針を示していただいたということでいかがかということでございます。

ここでも何ゆえそういったツールの多様化が必要になったのかという背景的な説明を、若干書き加えさせていただいておりますが、14ページの下から4行目、詰まるところ監視委員会が刑事告発や行政処分勧告のように、オール・オア・ナッシングの判断ではなくて、違反行為の程度や対応に応じたさまざまなツールを活用していくことにより、実質的な監視能力の向上を通じた市場への信頼性向上が期待できるということではないかと思います。

それから、高橋委員、島崎委員から何度かご指摘をいただきましたが、15ページの下から2行目にありますように、こういったツールの多様化に伴って、当然ながらルールの適用に関する予見可能性を高めていかなければなりませんし、次のページに行きましてノーアクション・レターの一層の活用を図っていただき、行政としても可能な限り誠実かつ具体的に対応すべきである。また、インサイダー取引規制をはじめとする既存の不公正取引規制そのものについても、来年以降、時代の変化に対応した見直しを当審議会で審議をしていくということでいかがかということでございます。

次の市場監視体制につきましては、これも毎回同じことを申し上げておりますけれども、行政の二元化された体制を基本的には、下から4行目に書いてありますとおり、監視委員会に一元化をする、ディスクロージャーの審査、訂正命令といった業務の遂行体制もこれと整合性を持った形で見直しを行うと。

18ページの2番目のパラグラフに、金融のコングロマリット化などが進む中での一元的な金融に関する企画、立案、監督の必要性や、コーチとアンパイヤの分離という、監視委員会ができた当時からの客観的事実認定の必要性といった、日本の行政市場の実情を踏まえた体制強化として位置づけられるのではないかと。ここは一方で、処分権とかあるいはルール制定権まで含めた、米国のSECのような仕組みが望ましいのではないかといった議論が、かねてよりあるわけですけれども、今申し上げたような仕組みが、日本の実情に即した体制と言えるのではないかということでございます。

自主規制についても、何度も申し上げました自主規制部門の業務執行の独立性が担保されるべきでありましょうし、検査については19ページの2番目のパラグラフにありますように、行政の体制一元化を契機に役割分担を見直して効率化を図っていくべきだということであろうかと思います。

4つ目の柱が20ページの投資サービスにおける投資家保護のあり方でございまして、これも毎回同じことを申し上げておりますが、最初の基本認識に書いてありますように、投資家にとって経済効果が同じであれば、同じように保護されるべきであるということで、当面は組合型の投資スキームに証券取引法を投信やSPCと同じように適応するという方向性をいただいておりますが、前回もたくさんご議論がありました23ページ、この柱の最後に書いてありますように、これまで投資家保護策の講じられていない投資サービス、新たに登場するであろう投資サービスについて、証券取引法の投資サービス法への改組の可能性も含めた、より幅広い枠組みについて検討を継続していってはどうかということでございます。

5つ目、最後の投資教育のあり方につきましては、最初の方は、やや、なぜ投資教育というテーマを金融審議会で議論をしていただいたかといった理由が書かれてございます。中身は前回申し上げたとおりでございまして、各証券会社、団体、NPOなど、ばらばらに行われております。そういった活動や資源やノウハウを集約して、効率的に提供をしていく体制が求められますし、その過程で関係行政機関も適切に役割分担を果たしていくべきであるといった趣旨のまとめ方をさせていただいております。

非常に散漫な説明で申しわけございませんでしたが、この後、あるいはお気づきの点がありましたら、終了後でも結構ですので、事務局の方にご連絡いただければと思っております。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。時間の関係で、読み上げることはさせていただきませんでしたけれども、目で追っていただいて大体お読みいただければと思います。まだ細かい「てにをは」等の問題は別途あるかもしれませんけれども、基本的には前回までご審議いただきまして、また前回、○で段落のような形でお示しさせていただいたものを、前回いただきましたご議論等も踏まえて文章にさせていただいたという感じのものでございます。

なお、2つのワーキング・グループからの報告書の成果というものも取り入れさせていただいておりますし、トラブル協議会でのご審議の状況もこちらに入れさせていただいております。

それでは、残りました時間で皆様方からこの文章につきましてご意見、ご質問等をいただければと思います。その点でも結構ですので、お願いいたしたく存じます。どなたからでも結構でございます。いかがでしょうか。西村委員、お願いします。

○ 西村委員

前回休みましたので、その前回お話しできなかったことも含めてお話ししたいと思います。

私は基本的には2点ございます。1点は、質問にもなるのですが、市場間競争という場合の「市場」というのは、日本の中の市場間競争という印象が非常に強いのですが、ご案内のように証券市場といいますか、資本市場そのものは世界市場化しているという中で、この市場間競争は日本の市場間競争であると同時に、国際的な市場間競争という側面も非常に強いですので、そういった視点がちょっと入っていた方がインパクトがあるのではないかというふうに思います。

それと絡むのですが、課徴金のところも、その他のところもそうなのですが、特に課徴金のところがそういうところと関係するのですが、やはり市場間競争の中で、日本の市場というものと世界の市場、世界の市場も非常にばらばらな市場ではありますけれども、その世界の市場がこれから向かっていくと思われる方向についてのハーモナイゼーションという視点が、やはり必要なのではないかというふうに思います。

米国に収れんするかどうかということは全くわからない状況ですから、必ずしも米国がそのまま使えるということではありませんが、米国、EUといったような形で、核としてなってきているものとの整合性、もしくは考え方のコンシステンシーを明確にしておかないと、後で純粋にまたジャパノ・ジャパニーズといいますか、日本にしか通用しない議論でなってしまうと、こういう特に国際化している証券市場の場合には問題が生じるということになりますので、その点のご配慮をお願いしたいというふうに思います。

○ 神田部会長

どうもありがとうございます。事務局から意見はございますか。

○ 三井調査室長

そのとおりだと思います。

○ 神田部会長

ありがとうございます。私も詳しく考えていないところがあるのですが、基本的には今、両方の点とも国際的な流れとは整合的な方向になっているというふうに私は感じます。どうぞ、池尾先生。

○ 池尾委員

今の点ですけれども、私、取引所のあり方に関するワーキング・グループの座長をやっておりまして、ちょっとその関係で補足で申し上げたいと思いますが、国際的な市場間競争について考えていないわけではなくて、むしろ取引所ワーキングの議論としては、前回、取引所のグローバルな展開に関して主題として議論をしたということで、先にそれをしてしまったという感じで、今回は、国内のことだけを主として議論したので、結果として西村委員ご指摘のようなポイントが、明示的には述べられていない形になっているということですが。以前の報告書を見ていただければそういうところは書いてあるということです。

○ 神田部会長

どうもありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。島崎委員、どうぞ。

○ 島崎委員

16ページに書いてあることで2点、意見と質問なのですけれども、インサイダーの関係については、引き続き議論していただくということが書いてありまして、ありがとうございます。

1つ目は、「ノーアクション・レターの一層の活用を図るべきである」云々とありますけれども、これは前回のときにも意見を申し上げたのですが、現在の制度の枠内でそういうことを考えているのでしょうか?私は、前回はもう少し踏み込んで、例えば相談者の氏名も公開せずに、事例を積み上げていくような形での公開を考えていったらどうかという話もしたのですが、そういうようなことまで考えていただいているのでしょうか?私、ちょっとそこの書きぶりを見ると、その辺がはっきりしないので確認したいのが1点です。

それから、後段のこのページの下から5行目のところに、「不実開示がある場合に損害額を推定する規定を設ける」云々とありますけれども、これは以前に黒沼先生の方から訂正情報が反映された市場価格と取引時の市場価格の差額云々という前に話がありましたけれども、そういうことを頭に置いた書きぶりになっているのかどうかという点です。

それからここの下から3行目のところに、「不実開示を行ったとされる被告による反証は比較的容易である」とありますが、原告がだれで、被告がだれかということをある程度想定した書き方になっているのかなと。例えば、原告は個人であると。被告は法人だと、しかも大企業だということで、逆のケースもあるし、いろいろなケースがあるのかなと思うわけでございますが、ここのところはどういう前提で書かれたのかというあたりを確認させてください。以上です。

○ 大森市場課長

前段につきましては、ノーアクション・レターがあまり使われないことと、行政の対応というのは、かなり因果関係がございまして、具体的にこういうケースは大丈夫でしょうかというお墨付きを求めて来られますと、大丈夫ですと言うのは検察の仕事で、行政の仕事ではありませんので、そういう質問には一切お答えできないというような対応をしてまいりましたので、聞いても無駄だということで、あまり使われてこなかったという現状があろうかと思います。

お墨付きを与える権限がないというところは、今後とも違いはないわけですけれども、もう少しフランクにご相談に応じるようなことができれば、今の仕組みというのも活用されてくるのではないかというような気持ちを込めて、この文章を書かせていただきました。島崎委員がご提案されたような新たな相談の仕方というようなことは、今後インサイダー取引規制などの不公正取引規制の議論の中で、またご議論をいただきたいということでございます。

○ 三井調査室長

それでは民事責任規定のところでございます。現在の証券取引法の規制は昭和46年に、新たに会社が資金調達をする局面にディスクロージャー書類に虚偽、不実表示をしたと、開示をしたというときに挙証責任の推定規定が置かれております。

実は時価発行増資が始まったのは、その相前後して、実際には昭和40年代後半から活発化したということでありまして、このときの立法の背景というのは、発行市場と流通市場が分断していると。必ずしも流通市場で形成されたディスクロージャーに基づいて発行もされいないし、発行市場で配られているディスクロージャー書類が、いわば継続開示という形で流通市場に溶け込んでいるという形でもない、逆ですかね。相互に溶け込んでいるという形でもないというもとで立法されている。

その後、時価発行増資が一般化いたしまして、かつ継続開示ということで、継続開示で行われているディスクロージャー書類が発行市場において溶け込んでいったり、あるいは流通市場で形成されている情報なり価格なりが、発行市場において重要なというか、最も基本的な情報になっているというところで、今、流通市場について継続開示等における民事賠償については挙証責任規定が全然ないというふうな状況にございます。それに対して、黒沼先生のご発言もありましたし、それから地裁レベルでの証券取引法の判例あるいは学説からも法制上の不均衡、あるいは問題点などが指摘されているというところまでご説明させていただきました。

ということで、一般的に不公正取引全般について挙証責任を転換するといったら、かなりスイーピングな包括的な大胆なことをやることについては、そういうご意見もあったと思いますけれども、慎重なご意見もあったと思います。片や、黒沼先生のおっしゃっておられました継続開示、流通市場における虚偽のディスクロージャーについての挙証責任というところは、そこの部分についての何らかの対応もする必要があるということまでは、反論が強くはなかったのかと解釈いたしまして、そこについての何らかの対応はむしろ望ましいというふうな全体のムードではなかったかというふうに受けとめた次第であります。

片や具体的な損害額の推定規定の書き方については、黒沼先生のご提案は非常に重要なご提案ではありますけれども、また先ほど部会長からおっしゃいましたように、法務省の民事局であるとか法制局であるとか、推定の合理性あるいは推定が実際に裁判においてどのような機能を果たすのかという面からの検証が必要でございまして、現時点では必ずしもそのようなやり方でやるかどうかと決めたわけではございません。

それから後半の、確かに書きぶりのところはご指摘のようなこともございます。むしろ黒沼先生のご意見は、実質的な証拠を出せる能力というか、持っているかどうかということのバランスを考慮した場合に、ディスクロージャーに関する資料は投資家よりも発行企業の方が持っているのではないかというふうな、実質的なバランスということをおっしゃっていたのかもしれません。ちょっとここのところは文章を精査させていただいて、場合によっては修正させていただきたいと思います。

○ 神田部会長

ありがとうございました。

よろしゅうございますでしょうか。今の点は。確かに最後の3行はちょっとわかりにくくもありますよね。今、三井さんがおっしゃったような方向で書き直すことを検討していただいた方がわかりやすいと思います。

ほかにいかがでしょうか。ちょっと今の点は、確かに損害額の推定のところは、細かな議論はここでは必ずしも詰めた議論まではいただいていないかもしれませんが、かなり専門的という表現がいいかどうかわかりませんが、法律論にもかかわりますので、部会としては基本的な方向感でこういうような感じでよろしければ、そういうことでご確認いただければということにしたいと思います。また、文章の書き方もこの程度の抽象度という言い方が適切かどうかわからないのですけれども、あまりある部分だけ突出して細かい法律論に立ち入った報告書にするというのはどうかと思います。

ただ、逆にもちろんそれは不正確であったり、誤解を招くような文章であってはいけないと思いますので、その点はご確認が必要だと思います。

ほかの点も含めていかがでしょうか。

○ 前原幹事

部会長、すみませんが一言よろしいでしょうか。

報告書の案のところで、市場監視体制、自主規制のところに日本銀行について言及されている箇所があるので、一言だけ発言させていただきたいと思います。

日本銀行は決済システムの円滑かつ安定的な運行の確保を通じて、信用秩序の維持に資するというような役割を担っておりまして、必要であれば最後の貸し手としての機能発揮も期待されているところであります。また、日本銀行の金融政策の効果というのは、金融機関行動や金融システムを通じて発揮されるものであるということでございまして、このため個別金融機関の経営内容や業務の状況等を常に的確に把握している必要がありまして、そのための手段として日本銀行は考査を実施しているわけであります。

そういうことでございますので、本部会でもご意見がございましたけれども、日本銀行としましては、考査の実施に当たりましては、考査先金融機関の事務負担等については、引き続き十分に配慮していきたいと考えておりますので、一言だけ発言させていただきました。ありがとうございました。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。

よろしゅうございましょうかと言っていいのかどうか、ちょっとあれですけれども、もしご指摘が今ないようであればですが、ただいまお出しいただきましたご意見はさらに勘案して、この文章の改善というものを図らせていただきたいと思いますけれども。少なくとも本日この文章の前半、島崎委員からいただいた言葉で申しますと、基本的な方向性というか、方向感については、この部会として今日ご承認いただいたということにして、今日のご指摘も入れた上で、さらに文章の改善を図るという、そういうステップに移らせていただければという感じがいたしますけれども、そういうことにさせていただいてよろしゅうございますでしょうか。

どうもありがとうございます。それでは、基本的な方向感についてはご承認をいただいたというふうに考えさせていただきまして、今日のご意見を踏まえて、さらに文章の改善に進ませていただくという、そういう段階に進ませていただきます。

おかげさまで、今日は意外と後半戦が短く終わりまして、本日の審議をこのあたりで終了させていただくことが可能な段階になりました。そこで、この後私の方から記者会見をさせていただきまして、本日のこの部会の模様についてお話をさせていただきます。

なお、先ほど申し上げましたけれども、本日の前半部分でございますが、銀行・証券の連携強化につきましても、報告書の文章に後から溶け込ませたいと思いますので、先ほど申しましたとおり、事務局と私の方で先ほどのような方針で文章にさせていただくという作業をさせていただきます。その上で、皆様方にご確認をいただくと、こういう手順をとらせていただきたいと思います。

それでは、事務局の方からご連絡等をお願いします。

○ 大森市場課長

このところ毎週お願いをしておりまして誠に申しわけございません。この報告を仕上げる意味で、次回は予備日としてちょうだいしておりました来週12月24日水曜日の日程でお願いをいたします。最終的な方向確認とともに、来年以降の当審議会の運営などに関するご意見もちょうだいできればと考えております。よろしくお願いいたします。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

そういうことで、大変恐縮ですけれども、今日で終わりというわけにはいかないと思いますので、文章のご確認等は、またできるだけ早目にさせていただきますけれども、来週の水曜日に予備日としてお願いしてありました日にもう一度お集まりいただくということでお願いしたいと思います。

なお、さらにお気づきの「てにをは」を含めてご指摘等がありましたら、早目に事務局または私までお知らせいただけますと大変ありがたく存じます。

以上をもちまして本日の会議は終了させていただきます。どうもありがとうございました。

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