金融審議会金融分科会第一部会(第15回)議事録

日時:平成15年12月24日(水)10時00分~11時45分

場所:中央合同庁舎4号館9階 金融庁特別会議室

○神田部会長

おはようございます。それでは、予定の時間になりましたので、本日は第15回目の会合になりますけれども、金融審議会金融分科会第一部会を始めさせていただきます。

いつものことですが、皆様方にはご多忙のところをお集まりいただきまして、どうもありがとうございます。

さて、本日でございますが、前回の部会では、これまで審議を続けてまいりましたいわゆる3本柱、すなわち第1に市場監視機能・体制強化、第2に投資教育のあり方、そして第3に投資サービスにおける投資者保護のあり方という3つの論点、それから2つのワーキング・グループ、すなわち取引所のあり方に関するワーキング・グループとディスクロージャー・ワーキング・グループにおけるご審議、ご検討の内容につきまして、これらをすべて一つの報告の案文にしたものについてご説明し、皆様方にご確認いただきました。また、残っておりますというか、銀行・証券の連携強化という点につきましては、銀行界の方々からお話をいただいた上で、事務局の論点に基づいて議論を行っていただきまして、大まかな方向について合意をいただいたと理解しております。そこで、前回までの皆様方のご意見を踏まえまして、前回の報告書案に前回ご審議いただきました銀行・証券の連携強化も含めまして、私の方で事務局と報告書の案というものを再度取りまとめさせていただきました。まず本日の前半は、その部分についてご確認をいただいて、この第一部会としての報告を最終的に確定させていただきたいと思います。それから本日の後半部分ですが、これで仕事は終わりということにならなくて大変恐縮でございますが、さらに年明け以降にご審議いただかなければいけないことがらがございますので、自由討議ということにさせていただきまして、既にこれまでのご審議の中にも出ておりましたけれども、投資サービス保護のあり方とか、ディスクロージャーのあり方、それからインサイダー取引規制のあり方といった問題等、今後の課題について、将来さらにこの部会でご議論していただくいわば出発点としての自由討議を行わせていただきたいと思います。そういうことで進めさせていただきますので、よろしくお願い申し上げます。

なお、本日は竹中金融担当大臣に報告書をお渡しするということが予定されておりまして、カメラ撮りも予定されております。そのため、大臣のお時間に合わせる形になりますが、自由討議の間に15分程度になろうかと思いますけれども、形式的に申しますと、審議を中断させていただくということになりますので、どうかよろしくお願い申し上げます。

それでは、早速ですが、お手元にあります「市場機能を中核とする金融システムに向けて」第一部会報告(案)につきまして、事務局から説明をお願いいたします。

○大森市場課長

今回3つのテーマがございまして、共通する方向として、今、部会長からお話がありました「市場機能を中核とする金融システムに向けて」という将来ビジョンの言葉を引いてサブタイトルをつけさせていただいております。前回から内容が変わったところを「てにをは」を除いてご説明いたします。

まず、報告書案の7ページでございますが、下から4行目、西村先生、池尾先生のご意見を踏まえまして、「昨年、当審議会は、クロス・ボーダー取引の増加や国際的な市場間競争の高まりを踏まえ、取引所のクロス・メンバーシップなど、積極的な海外展開を可能とするための制度整備を提言した。今回提言する市場間競争の枠組みの整備は、国内市場の効率性・利便性向上や国際的な規制の調和を目指すものであり、昨年の提言と併せ、日本市場の国際的競争力の向上や国際的な資本市場の利便性につながるものであると考えられる。関係者の積極的取組みを期待したい」。ナスダックとNYSEなどという報道があってちょっとびっくりしましたけれども、そういう流れになっていく中でこういった文章をつけ加えさせていただきました。

次が15ページでございます。これも、この場所がいいのかどうかよくわかりませんが、西村先生からコンバージェンスのご意見をいただきまして、上のパラグラフの下から3行目、「また、証券市場の国際性に鑑みれば、日本における公正な市場を担保するためのルールは国際的なルールと調和していることが望ましい」という一文を入れさせていただきました。

次の次のページ、17ページでございますが、やや表現がわかりにくいというご指摘がございまして、上のパラグラフの下から4行目でございますが、「例えば、重要な不実開示がある場合について、不実開示を行った者と投資家との間で実質的な立証の負担のバランスを図るため」云々という形の修文をさせていただいております。

最後の銀行・証券の連携強化方策の部分につきましては、弊害防止措置以外のところは前回お示しした論点の「てにをは」を報告書らしい体裁に改めたものでございますが、弊害防止措置の部分は前回のご意見を踏まえて相当新しく書きおろしております。32ページでございます。まず、「現行法の枠組みでも、銀行業務により知り得た発行者に関する情報を利用して勧誘する行為や金銭を貸し付けることを条件に勧誘する行為などが禁止されることになる」。それ以降を読み上げさせていただきます。「加えて、利益相反などの可能性は、証券仲介業を行う銀行と、委任する証券会社が系列関係にある場合に、より高まることから、系列関係にある場合を外形基準により除外するといった提案があった。一方、利益相反などによる弊害のデメリットは定量的には明らかでないが、銀行が証券仲介業を行うことによる市場にとってのメリットが上回ることは歴然としているとして、外形基準による厳格な弊害防止措置には慎重な意見もあった。こうした意見を踏まえると、外形基準により一律に導入範囲を制限するよりも、例えば、銀行の貸出部門と証券仲介部門の人的・組織的分離や非公開情報の授受についての内部管理体制が整備されているかどうか、実情に応じて行政が認可する仕組みが適切である。その上で、市場調達資金の使途についての開示や、貸出と証券取引の抱き合わせ行為などについては、既に銀行本体と証券子会社の間に弊害防止」――「措置」が必要ですね。失礼しました。「措置が存在しているため、それを踏まえ、銀行本体が証券仲介業を行う場合の弊害防止措置について、そのコストにも配慮しながら、手当すべきである。なお、弊害防止措置の実効性の確保に関しては、これまでも監視委員会検査により弊害防止措置違反が把握されているが、市場監視機能・体制の強化により、更に実効性を担保していくべきである。

また、株式などのリスク商品性に鑑みれば、投資家保護のため、共同店舗の場合と同様、窓口区分などの誤認防止措置が必要ではある。また、金融分野における個人情報の取扱いについては、上記の弊害防止措置等の検討に加え、金融審議会特別部会において検討すべき課題であると考えられる」。

以上でございます。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

それでは、ただいま大森課長からご説明いただきました報告書の案につきまして、今直接言及のなかった点も含めてで結構でございますので、皆様方から最終的な時点でのご意見、ご注意等がありましたら、承りたいと思います。どなたからでも結構でございます。いかがでしょうか。斎藤委員、どうぞ。

○斎藤委員

15ページで今お話があったところです。マル2のすぐ上の3行です。「証券市場の国際性に鑑みれば、日本における公正な市場を担保するためのルールは」というところですが、この「公正な市場を担保するためのルール」の範囲というものが必ずしも明確ではないのですが、たまたま自分がかかわっておりますディスクロージャーのための会計基準という観点からいたしますと、これは理念としては非常に望ましい、恐らくだれも文句をつけようがない議論ではありますが、実際問題としてはどうもこの理念どおりにうまくいかないことが非常に多い。例えば、ごくごく最近、この10月末に金融庁の審議会でお決めいただきました企業結合の会計基準でも、これは明らかに国際ルールと違っているところがございます。仮に完全に同じにしようと思って調和を試みても、現実には全く通らないというのが事実でありまして、その状況を考えますと、これが単純な理念としてなら結構なのですが、場合によってはややもするとこれが実際の基準設定の場での桎梏になるということもあり得るという懸念が多少残ります。それをどのように修文したらいいかというのは私はわかりませんけれども、例えば「調和している」に「可能な限り」とか、そのような文言を付すことで、多少ともアローワンスを残しておいた方が安全なのかもしれないという感じがいたします。

○神田部会長

ありがとうございます。今のご指摘はもっともだと思います。つまり、筋が通るものであれば、そういうものとして説明可能である必要はあると思うのですけれども、そういう場合にはその限りにおいて調和している必要はないというご指摘だと思います。今の点につきまして、いかがでしょうか。西村先生は、よろしゅうございますか。

○西村委員

そういう趣旨ですから、そのとおりだと思います。ただし、私はここはディスクロージャーのこととは違うところを考えたものですから、すみません。修文して、何かちょっとつけ加えた方が多分よろしいと思いますが。

○神田部会長

そうしましたら、今日は確定させていただきたいと思いますので、最終的な「てにをは」はまた全般を含めて確認させていただくという形で最終的な確認をさせていただく機会をいただきたいと思いますが、「調和」というのは確かに強いですね。ですから、場合によっては「整合的」というような表現、「可能な限り整合的である」ぐらいでよろしゅうございますか。それだと、ちょっと意味が通じないですか。

○斎藤委員

もう最後は部会長にお任せします。

○神田部会長

そうですか。それでは、ちょっと「てにをは」の表現のつなぎはまたもう一度確認させていただくかもしれませんが、基本的には「国際的なルールと可能な限り整合的であることが望ましい」ということにとりあえずさせていただければと思います。ちょっと文章がおかしい場合には、もう一度全体とのバランスで多少の微修正を……。

○斎藤委員

「可能な限り」がつけば、「調和」でもいいと思いますけれども。

○神田部会長

そうですか。「調和」という言葉がなかなか微妙なところでして、EUなどでは「調和」という言葉を避けているのです。ある時期から「harmonization」に変えまして、「調整」という言葉に変えている。今、斎藤先生がおっしゃったような理由でマーストリヒト条約以降、表現を変えたのです。その「harmonization」を「調和」と訳す人もいるかもしれませんけれども、「調和」よりは弱い「調整」という、ある種ミニマムな部分は調和する、その上の部分は各国の裁量というか、事情に応じた措置を認めるということですので、あるいは「調整」というと、ちょっと意味がこの文脈では変わってくると思いますので、それではどうしましょうか。大森さん、何か。

○大森市場課長

私の意見は、口頭でしゃべったときも「harmonization」という言葉を使ったと思いますので、「harmonization」なのです。そういう形で、日本語をうまくできればお願いいたします。

○神田部会長

そうすると、多分会計基準だけではなくて、エンフォースメントの部分についても、当然のことですけれども、日本には日本の事情がありますので、あまり私自身も厳密な日本語の言葉の意味をしっかり理解しているものではありませんけれども、では一応その原案としては「可能な限り整合的である」ということにさせていただいて、それで読んだときにきちんといくかどうかということは私の方で最終的に確認させていただくということで、よろしゅうございますでしょうか。

事務局もよろしゅうございますか。

○大森市場課長

はい。

○神田部会長

どうもありがとうございます。それでは、そういうことにさせていただきたいと思います。どうもありがとうございます。

ほかの点について、いかがでしょうか。特によろしゅうございますでしょうか。どうぞ、藤田委員。

○藤田委員

内容や論旨としては、まあこんなものかなと感じております。ただ、一読して感じますのは、片仮名英語が多過ぎやしないかという点であります。我々が進めてきたこうした作業が国民の理解を得るためにも、少々この点は気がかりです。適当な日本語がない場合もありますが、日本語で表現することが十分可能な文脈にもかかわらず片仮名英語が出ている。この傾向は近年政府の各種白書にも見られる片仮名英語のはんらんと共通するものがあるのではないか。行政の中に悪しきくせが広がっていることを私は感じております。私は所管大臣にこの報告案を提出することに異論を差し挟むものではありませんが、今後とも気をつけるべき点ではないかと思って発言いたしました。

○神田部会長

どうもありがとうございます。確かに、そう言われてみますと、それは毎ページにあるようですけれども、今回の報告書ではお許しいただけるというご発言だとは思います。確かに、私も昔は「ディスクロージャー制度」というと「開示制度」とか、「インサイダー取引規制」というと「内部者取引規制」とか、あるいはこの報告書では「ベネフィット・コスト」あるいは「コスト・ベネフィット」とありますけれども、「費用・便益」とか、そういう書き方をしていたのですけれども、最近は「開示制度」という人はあまりいなくなっていて、「ディスクロージャー制度」という書き方の方が多い。あるいは「内部者取引規制」より「インサイダー取引規制」という表現の方が、法律上の用語ではございませんけれども、増えつつあるということは言えそうですね。あと、ぱっと見ましたら、「ガバナンス」ですとか、「ジャスダック」とかはどうしようもないと思いますけれども、「システミック・リスク」とか、この辺も難しいかなと。「クロス・ボーダー取引」というのもよく使われている言葉ですけれども、日本語で書くこともできなくはないということで、今後留意すべき点かとは思います。どうもありがとうございました。

どうぞ、東委員。

○東委員

意見というよりは印象として申し上げたいのですが、27ページの最後の行に「未だ普通の個人が証券投資し、普通の中小企業が市場から」という文章があるのですが、中小企業に関しては、ごく一部しか公開していないという意味で、そのとおりだと思うのですが、普通の個人が証券投資していないということになると、今証券投資をしているのは普通の人ではないという印象を与えかねないという意味で、(笑)ややここの書きぶりが気になったという点だけ、印象として申し上げます。

○神田部会長

今ご指摘のところの趣旨は全部をカバーしていないという意味だと思いますので、多少文章を直しましょうか。例えばということで今、私の直観で申し上げますけれども、「未だ普通の個人が証券投資し、普通の中小企業が市場から資金調達するにはまだ十分な状況になっていない」とか、今の言い方はちょっと悪いと思いますけれども、そういう趣旨にした方がいいかもしれませんね。すっと読むと、だれもしていないと誤解する人がいるかもしれません。

はい、どうぞ。

○板谷委員

私も実はそれに違和感を感じておりまして、「普通の」というのが残ると、今投資されている方が普通ではないというのがどうしても残りますので、これは「より広範な」とか、少し言葉を変えていただいた方がいいのかなと思います。

○西村委員

単なる修文ですけれども、「多数」とか「大多数」とか、そのようなものにしておけば、マジョリティーはしていないということですよね。

○神田部会長

ありがとうございます。

2通りです。1つは、今ご指摘がありましたような「多数の」とか「多くの」とかという言葉に「普通の」を取りかえるということで、もう1つは、「普通の」という表現を取って「個人の証券投資や中小企業の市場からの資金調達に十分な状況にはなっていない」というどちらかかと思いますけれども、大森さんの方で選考はありますか。

○大森市場課長

いえ、別に……。

○神田部会長

そうですか。それでは、どちらかということでご承認していただくのもやや気が引けますけれども、ちょっと全体を読み直してみたときの雰囲気があると思いますので、今のご趣旨でどちらかの文章に修正させていただきたいと思います。どうもご指摘、ありがとうございます。

ほかの点について。どうぞ、淵田委員。

○淵田委員

同じ27ページでありますが、真ん中辺に「リスクを適正に値づけして機関投資家など他の主体に移転していくことが望ましい」とあるわけですが、そもそも移転するときに適正に値づけすると申しますよりも、本来貸出を実行するところでリスクに見合った貸出金利を設定するということが望まれているわけでございまして、そこは一応確認ということで指摘させていただきたいと思いますが、これは本論とあまり関係のない部分ようではありますけれども、結局今タイイングの問題で議論になっていることは、銀行が市場実勢よりもはるかに低い金利で貸出をすることによってMAFあるいは引受案件をとっていくという問題でもありますので、市場実勢に見合った貸出金利の設定というところは改めて確認されなければならないと思っております。

○神田部会長

どうもありがとうございました。今の点も、どうせ修正するのなら、多少は書けそうですね。(1)の3行目になるかと思いますが、もし一番簡単につけ加えるのであれば、簡単というのは文章的にという意味ですが、「銀行が貸出を組成するのは当然であるが」というところに、例えば「適正な条件で」とか、あるいは一番抽象的に書くなら「適切に」、「適切な条件で」ですか、「貸出を組成すべきことは当然であるが」と入れることによって、多分今の点は入れられると思います。そういう方向でよろしゅうございますか。どうぞ。

○池尾委員

そうすると、次の文章とおかしくなってきます。「そのリスクに見合ったリターンを確保しないまま、いつまでもバランスシートに抱えている」という現状認識と、あるべき論とが、理念は理念、現状認識は現状認識で書かないで書かないと、ちょっとおかしくなると思います。

○神田部会長

ありがとうございます。

そうすると、「深刻化につながっており」の先に今の点を入れるのが一番すっきりしますね。「貸出条件の適正化を図るとともに」とか、それでこのリスクをという、あとはいいと思いますけれども、そうすれば一番きちんとすると思います。それでは、今のような方向で、「リスクを適正に」のところに池尾先生からご指摘のあったような形でつけ加えるということにさせていただきます。よろしゅうございますでしょうか。

ありがとうございます。

さて、ほかの点でいかがでしょうか。どうぞ、板谷委員。

○板谷委員

弊害防止措置の方向性のところについて少し。32ページの一番下の行ですけれども、「弊害防止措置について、そのコストにも配慮しながら」と「コスト」というのが出ているのですけれども、私自身、制度一般について、その設計に当たって費用対効果を考慮することを否定する立場ではないのですけれども、弊害防止のところについて「コスト」というのが出てきているというのは少し違和感がございまして、制度一般としてそういうことを考えることは当然なのですが、弊害防止というのはコストがかかるからやらないという種類のものではないので、「コストにも配慮しながら」というのがここにだけ出てくるというのは少し違和感が強くございます。

それから、あと2点ほどあるので、続けてよろしゅうございますか。

○神田部会長

はい。

○板谷委員

あと、私は何度かいろいろ場合分けしてご議論いただければということを申し上げてきたわけです。その観点からいきますと、系列関係ということは書き分けていただいて、結論についてはともかくとして書き分けておられるわけですけれども、系列関係がある場合で、とりわけ募集・売出し・私募の取扱いといった業務を行う場合には、より厳格な弊害防止措置を設けるべきではないかと考えておりますので、その点を明記していただけるといいのかと思っています。

最後に、これは確認でございますけれども、33ページの弊害防止措置の実効性のところで「更に実効性を担保していくべきである」と書いていただいておりますけれども、この点について、前々回の部会で参考人の方からも、現在行っている業務に関連するものについても現在の弊害防止措置は必ずしも有効に機能していないのではないかといったご指摘もあったかと思いますので、これは現在の措置についても、実効性の担保、必要があれば弊害防止措置の一層の整備ということも行われていくと理解してもよろしいのかという確認でございます。

○神田部会長

ありがとうございます。

ちょっと後ろからいきたいと思います。最後の点については、私の感じでは、今おっしゃったような趣旨も含めて現在の文章でさせていただければという気がいたします。現在行われていないという点については、別のご意見もあったものですから、ご指摘は私はよくわかるのですけれども、文章としてはこういうことにさせていただければと思います。

それから、終わりから2つ目は、系列関係の有無とは別にということですね。そうではなくて、それと関係して、これはダブルでかかるというご趣旨ですか。おっしゃるように、どういう行為が問題になるかということを類型に応じてというご指摘は確かに板谷委員からいただきましたので、系列関係とは別にということですと、新しい文章を書き足さなければいけないので非常に大変だと思うのですけれども、その趣旨を入れることはできますし、今の文章ですと、確かにちょっとわかりにくいかもしれませんね、その趣旨が含まれているかどうかということについては・・・・・。

どうぞ、永易委員。

○永易委員

板谷委員からそういうご意見があったというのは私もよく覚えておりますけれども、結局言われているのはプライマリーとセカンダリーの部分を書き分けろということだと思うのです。それを分けて書くと、結局市場誘導型が近いと思うのですけれども、仲介も、そういうことはあまりないような気はするのですけれども、それは一体でないと、本当の商売といいますか、ビジネスとしてやる場合には、要はパンチ力が非常に弱くなってしまうということがあるわけです。あのときにもちらっとそういう発言はしたと思うのです。ご意見はご意見としてわかりますけれども、先ほどのコストのこともそうなのですが、要は解禁するときに、ビジネスモデルとして成り立たないような形で入れても、入れた意味が限りなく小さくなってしまう。これが先ほどの1点目のコストという点にもあらわれているのですけれども、それは明らかでございますので、大勢の委員がそちらの方がいいと言われるのであれば、それはいつまでも頑張るつもりはございませんけれども、双方とも私としては修文は控えていただきたいという気がいたします。

以上です。

○神田部会長

どうもありがとうございます。

さて、池尾委員、お願いします。

○池尾委員

最初にご指摘のあった32ページの一番下のところは、文章の本来の趣旨としてもコスト・パフォーマンスのようなものを考えろということであって、ただただコストを削減しろという趣旨ではないと思うのです。だから、コストをかけても規制しなければいけないときがあるというのは、世の中にはそれだけのベネフィットないし規制に伴う社会的な利益・効果がある場合はコストをかけてもやらなければいけないということで、効果もない規制をコストをかけてやるべきであるという議論はないと思うのです。それで、甚だ教科書的、教条的で申しわけないのですけれども、ここは「費用と効果を考慮し」とかとすれば、別に趣旨は壊れないと思うのです。

○神田部会長

今の点ですけれども、私もどちらかにしたらどうかなと感じます。すなわち、今、池尾先生がご指摘のとおり、この報告書では先ほど藤田委員からのご注意にもかかわらず「コストとベネフィット」という片仮名をほかの場所でも使っておりますし、もしそれを使うなら「コストとベネフィットを考慮しながら」とかと両方を書くと、そこには、今、池尾委員のおっしゃった趣旨であるということであれば、多分違和感はないと思います。あるいは、もう「コスト」という表現をやめて、「弊害防止措置について、」何か別の、例えば「適切な手当をすべきである」という書き方にするか、それでも永易委員ご指摘に反して修文しているという趣旨ではいずれの選択肢でもないのですけれども、「コストとベネフィット」というのはこの報告書のほかでも使っていますので、今、池尾委員がご指摘いただいたような正しい意味での「コスト・ベネフィット」ということを理解していただく趣旨からいうと、ほかでも使っていますから、「コストとベネフィット」と両方を書いた方がいいような感じがいたしますけれども。

高橋委員、どうぞ。

○高橋委員

今、先生がお示しになった3つの選択肢だといたしますと、それから池尾先生のご趣旨は全くそのとおりだと思うのですけれども、弊害防止をするときにコストとベネフィットを考えてやりますよというと、板谷委員の説明された心配の点が印象としては非常に強くなるだろうと思うのです。要するに弊害防止というのは投資家保護ということであるわけですから、自分たちの利益を守るときに、コスト・ベネフィットの効果で守られるのだという印象は避けた方がいいかなと思うのです。先生が今おっしゃった、そういう意味での3つの選択肢の中では3つ目、あえて書かないという選択肢もあるのかなという感じがいたします。

○神田部会長

ありがとうございます。

さて、そうしますと、まだ時間は十分あるのですけれども、ここでさらに考えたところで名案が浮かぶわけでもないということで、どうしましょうか。それでは、一つの案として、ここは今、板谷委員及び高橋委員からのご指摘があったことも踏まえて、実際の趣旨を変えることでは全然ないと思いますけれども、「適切な手当」とでもさせていただいて。これは上を受けていますので。ちなみに一般的な考え方は、上の方にご意見の違いが若干あって、それが出されたけれども、その辺は一律にというよりは認可制をとりたいというのがこの報告書の考え方ですので、その中で先ほどの永易委員のお言葉で言うビジネスモデルとか、あるいは裏を返せば板谷委員の言う行為の類型とか、そういうものも判断して、そこは行政の方で判断する、そういう柔軟と言えば柔軟、違った言葉で言えば行政が責任を持ちますと、認可制というのはそういうものですので、そういう方向でスタートしましょうというところにあるのだと思うのです。したがいまして、最後の方は「適切な」とさせていただく一方で、板谷委員には大変申しわけないのですが、ご指摘の点はもちろん議事録にも残りますし、今日もきちんとご発言がありましたので、そういうお考えは私自身も十分あると思っておりますので、上の方については原文のままということで、その趣旨は十分生かされて、行政が認可するときにそういうことも総合的に判断していただき、他方、永易委員のご指摘も、行政の認可の中で十分配慮していただくということにさせていただいてはと感じます。何だか足して2で割ったような提案で大変恐縮ですけれども、あまり文章をいろいろやり始めますと、また全体を直さなければいけないことになってもどうかと思うものですから、そのような線でご了解いただくわけにはいきませんでしょうか。よろしゅうございますか。

西村委員、どうぞ。

○西村委員

了解することに関してはやぶさかではないのですが、一つ、実はここは、行政が認可するというときに、ただ単に行政が何も考えずに認可するべきだということではなくて、結局行政においてもコストとベネフィットも考えろという意味も入っているのです。だから、これは修文としては構わないと思いますけれども、その点はきちんとテークノートしておきたいと思います。

○神田部会長

わかりました。重要な点でして、私も賛成なのですけれども、それを文章に書くとまたコストを書かなければいけなくなりますので、テークノートとさせていただきます。

それでは、池尾先生、どうぞ。

○池尾委員

言わずもがなですけれども、これもテークノートですけれども、私とか多分西村さんもそうだと思いますけれども、コストとかベネフィットということを言うときは、ソーシャル・コスト、ソーシャル・ベネフィットという意味で常に申し上げておりますので、特定主体にとってという限定をつけたときはそうですけれども、つけないときはあくまでも社会全体にとってのコスト、社会全体にとっての利益ということですので、そこは言わずもがなですが。

○神田部会長

ありがとうございます。

その点がよく、確かに文章を読むときに誤解というのでしょうか、最初に池尾委員がご指摘のような意味でのコスト・ベネフィットというときは今おっしゃっているとおりなのですけれども、私も、雑談になって恐縮ですけれども、法学部で最近「法と経済学」という授業がありまして、コスト・ベネフィットをよく使うのですけれども、これをソーシャルなコスト・ベネフィットと言うと、全然法学部の学生さんに通じません、実は。(笑)特定の主体にとってのコストとベネフィットとどうしても思うようなのです。ですから、ちょっとそういう問題はありますけれども、今の点は当たり前のこととはいえテークノートということにさせていただけませんでしょうか。ありがとうございます。

ほかの点を含めて、いかがでございましょうか。よろしゅうございますでしょうか。

それでは、若干ご無理を申し上げたところもありまして大変恐縮でございますけれども、ただいまご指摘いただきました点を修文させていただきまして、それを含めて全体としての「てにをは」をもう一度私と事務局の方でよく確認させていただきましたものをもって最終的な報告書ということにさせていただきたいと思います。かなり明確に申し上げたと思いますので、修正すべき点はここで繰り返し確認はしませんけれども、よろしゅうございますでしょうか。

事務局の方はよろしゅうございますか。

○大森市場課長

はい。

○神田部会長

そうしましたら、今のようなことで、したがって後で大臣にお渡しするものをまた差しかえをしなければいけませんが、いずれにしましても、今の幾つかの点の修正、そして全体の「てにをは」については、事務局と、最終的には私が責任をとるということになりますけれども、そういう形でこの報告書を確定させていただきたいと思います。そういうことでよろしゅうございますでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

どうもありがとうございます。それでは、そういうことで最終的に確定して公表させていただきます。どうもありがとうございました。

なお、正式な報告書は、そのようにして確定したものに添付資料として2つのワーキング・グループの報告書を添付するという形にさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

それでは、これまで毎回3時間に及ぶご議論に積極的にご参加いただきまして、また意見の異なる論点もございましたけれども、日本のために前向きのご議論をいただきましたことについて、私といたしましても厚く御礼申し上げます。

これで仕事が終わればいいのですけれども、まだ引き続きこの部会等でご審議いただかなければいけない議題がございます。そこで、冒頭にも申し上げましたように、次の議題に移らせていただきます。投資サービス法のあり方、ディスクロージャーのあり方、そしてインサイダー取引規制のあり方、その他の課題につきまして、まず事務局からお手元の資料についての説明をお願いいたします。

○大森市場課長

今後の検討課題と考えられるものを4つ提案させていただいております。4つとも中に片仮名が入っていて申しわけないと思いますけれども、市場にかかわる行政に従事している中で感じていることを整理しないまま申し上げますが、もとよりこれに限るものではございませんで、後ほどまたご提案いただければと思います。

最初に、投資サービス法といったことを今回の報告でも書かせていただいたのは、神田先生の示唆をいただいて、準備もないまま大きく構えてしまったという感じもするのですけれども、報告でまとめていただきましたように、投資家にとって経済効果が同じ商品サービスは同じように保護されるべきでしょうし、そうした商品サービスの提供者は同じように規制に服するべきだということは言えるのだろうと思います。そういう意味で、この一番下に書いてございます外為証拠金取引のように、為替が1割変動すると投資額が倍になったりゼロになったりするようなもの、あまり普通の国民に進めるのはどうかと思われるようなものがだれでも何のルールもなく行えるという現状は、かなり気持ちの悪い状況です。

こういった場合に、行政としては、前回企画課長からご説明しましたように、所管している業界、所管している法律で何ができるかをまず考えるということになりますので、金融庁としては証券業界に対する監督と金融商品販売法による手当ということになるわけでございます。それを超えて商品先物業者とか一般の事業者まで網をかぶせていこうとしますと、当然、金融庁以外の役所の問題にもなって時間がかかるということが一つございますのと、もう一つは、司法の問題として、外為証拠金取引の経済効果は金融先物取引と極めて共通性が高いものですから、金融先物取引は現在金融先物取引法で規定されているということでございます。証券取引と金融先物取引を根拠法とか取引上別にしているのは、これは以前にも申し上げましたけれども、大蔵省で証券局と銀行局が分かれていたということを反映しておりまして、この点は現在では両方とも私の課で所管する法律ですから、体制としては一歩前進している。ただ、いずれにせよ、問題が起こって、それに制度的に対処しようとすれば、これまでの法改正の歴史が示しておりますように、パッチワークの積み重ねにならざるを得ないということでございます。

今回ご議論いただきました組合型の投資スキームについても、広く一般投資家から資金調達するのであれば、投資信託やSPCと同じ投資家保護ルールを適用すべきだということになるわけですけれども、具体的には証券取引法の有価証券に追加するいということになりますので、そうすると既存の規制体系がついてきて、これまで規制の少ない世界でサービスを提供してきた事業者の方は勘弁してほしいというメンタリティーになりますし、それを応援してきた役所、この場合は経済産業省ですけれども、相当に議論しなければならない。こういった問題の構図は、ここに例示として挙げている信託受益権のようなスキームあるいは各種の投資ファンドの場合も同じであります。そうでありますと、これも何度か申し上げましたように、名称のいかんを問わず、およそリスクのある投資商品サービスの提供であれば、何人も服すべきミニマムの規制があって、具体的な商品サービスのリスク特性に応じて、規制といいますか、投資家保護の手だてが追加されるといった仕組みがいいような気は一般論としてはするわけでございます。簡単に言っていますけれども、簡単にそういうことができればこれまでやっているはずでしょうというぐらいの歴史を引きずっておりますから、そろりとこういう議論を年明けから、今日からでも結構なのですけれども、始めてはどうでしょうかということでございます。

それから、ディスクロージャーにつきましては、とりわけアジア経済圏と最近言われますけれども、アジアの企業が東京を素通りしてニューヨークに上場する背景に、開示のコストというのがよく挙げられるわけです。投資教育はまだ文部科学省はあまり本腰を入れておりませんけれども、英語教育というのはあれだけのエネルギーを投入しておいて、まさにコスト・パフォーマンスが非常に悪いわけで、アジアの行政官が集まっても英語がしゃべれないのが私だけだったりするものですから、本当に金融証券取引の標準語というのは英語だと観念しなければいけない時代になっているのだなと私個人は感じております。

それから、四半期開示の制度化も、去年あたりまでは、投資家の短期志向を強めるとか、仕事が倍になるとかという反対論が結構強かったのですが、東証のご努力もあって相当コンセンサスが広がってきたと思いますし、四半期開示によって、開示後に後出しじゃんけんみたいに価格を決めるという不正常な慣行も是正されるといったよい副作用もあるようでございます。今回の報告にもありますけれども、投資家が本当に何を求めているかを重視した、形式に流れない形でのディスクロージャーの議論が引き続き重要だと思います。

インサイダー取引規制につきましては、島崎委員にご提案いただいてからずっと気になっていたのですけれども、これは規制する側とされる側あるいはそれを客観的に見ておられる学界やマスコミの方々にも極めて多様な意見があって一筋縄ではいきそうにないものですから、若干後ろに回させていただきます。現行制度は、形式犯的構成をとっておりますので、形式に該当しないようにしようとする結果、株式投資を抑制していることは間違いないと認識しております。一方で、かつて実質的に悪くもないのに形式に該当したから摘発されたというケースはございません。バスケット条項をめぐる議論がありますけれども、過去9年間この条項は適用されておりませんで、9年前にあったのが、自社で扱う新薬の投与による副作用死亡例を知って、それが世間にばれる前に自社株を売り抜けたという、有名な日本商事事件でございます。さらにその3年前には、自社に多額の架空売上があって、早晩資金ショートするということを知って、やはり世間にばれる前に自社株を売り抜けたという、マクロスという会社の役員の事件がございました。いずれも相当にとんでもない人たちであって、バスケット条項を使わないとどう考えても正義にもとるのではないかというこの2つのケースにしか発動例がございません。

例えば、監視委員会が日々仕事をしている中で、決算情報というのは重要事実ですけれども、半期の決算情報は重要事実に現在はなっておりませんから、それを知ってその株の取引をするというのは、実質的には不正ですが、こうした場合にバスケット条項で類推適用しようというメンタリティーは監視委員会にはないわけで、非常に罪刑法定主義というものを厳しく受けとめております。一方、であれば今後に備えて半期の決算情報を重要事実に追加するといった選択肢は当然あるのですけれども、先ほどの日本商事とかマクロスに対応しようとしますと、あらゆる業種のあらゆる状況を網羅しなければなりませんので、物理的に相当困難であります。例えば、自社で製造する自動車のブレーキの欠陥による死亡事故例を知ったとか、自社で販売する牛肉の生産地の虚偽表示を知ったとか、そういうことを列挙しても切りがないので、一般条項的なものをなくしてしまうというのは、予想もしなかったようなことがあらわれた場合に摘発できないということで、国民になかなか許容されにくいことではないかと感じております。そうであれば、重要事実とか重要事実ごとの軽微基準を増やしていけばいいかというと、これも先ほど申し上げた形式犯的な構成を助長するものであって、悩ましいところでございます。

先般、経団連から提言をいただきまして、そこにある適用除外、セーフ・ハーバーの拡充というのも、例えば資料2の3ページの(2)、投資顧問会社に一任運用するような場合は問題がないように見えますけれども、先日もたまたま私は知り合いの弁護士から、自社株以外に資産のない創業者オーナーがお金に困っているので、投資顧問会社に一定期間内の売却を一任するのは差し支えないでしょうという相談を受けまして、一般論としてはこれは問題なさそうだと思いますけれども、その会社がかなり業績不振になっているような場合にはなかなか太鼓判を押すというわけにもまいらないですし、ましてや創業者オーナーが、特定の重要事実というわけではないけれども、総合的に判断してその会社は早晩つぶれそうだから早目に自社株を手放しておきたいと思っているのであれば、そんなことはできない方がいいと考える方が普通の感覚のような気もするわけでございます。前回島崎委員からそのノー・アクションレターのご質問を受けて、それにちょっと明確な回答ができませんでしたのは、今申し上げたような現実に接しているからというところもあって、やましいことがなければおやりになればいいけれども、後から捕まらない保障はありませんという当たり前のことしか言えないというのが現状でございます。

こういった事柄をどこで割り切って線を引くかというのは、結構難しい問題だと思います。議論を喚起するためにあえて申し上げると、プラスの情報を知って買う場合と、マイナスの情報を知って売る場合とでは、前者はもうけてやろうという積極的な行為で、後者は損をしたくないという防衛的な行為なのですけれども、現実の摘発事例を見ますと、前者の方は、立場上出来心を起こしたのだなという気持ちになるのですが、後者は、先ほどバスケット条項を適用せざるを得なかったケースのように、相当人倫にもとる連中だなと感じさせることが多いです。他人に先駆けてもうけるのと、他人に損失を転嫁する違いで、だから今申し上げた投資顧問に一任するような場合は、買う場合と売る場合とを区別して考えた方がよいのかもしれません。一方で、こういった議論をやっていると切りがないし、しょせん割り切るのが難しいのであれば、極端に言えばバスケット条項しかないシンプルな仕組みの方がいいという選択肢もあるので、ぜひじっくりとご検討いただきたいと思います。この問題は、行政の内部でも全く意見がまとまっておりませんで、私個人はシンプルな仕組みに引かれますけれども、一方で日本企業、なかんずくコンプライアンス部門、総務部とか管理部とかというものでしょうが、その保守性にも留意する必要があると思います。経団連さんで過剰な自主規制はやめようと呼びかけておられますけれども、現行制度を上回る社内規則を持つ企業がたくさんありますし、中には一切自社株・関連会社株取引は自粛しようということに近いものまでございます。ルールがシンプル過ぎると、過剰な自主規制を招いてしまうのではないか。要は、悪くもないことが自然に行われるためにはどういうルールにしておくのがいいのだろうかということがポイントではないかと思います。

インサイダーを長くしゃべり過ぎましたけれども、最後は、将来ビジョンがまとめた複線的金融システムというか、市場型間接金融の世界であります。集団投資スキームとか資産運用業というのは、それ自体が1つのテーマですけれども、最初の投資サービス、「法」とはここに書いてありませんが、そういったものに至る過程で生じる事柄でもあると思います。貸出債権などの証券化、流動化は、金融再生プログラムでも取り上げられまして、全銀協でも論点をまとめていただきましたが、それ以降の目に見える進捗がないような気もしますので、第一部会サイドから何らかの提案はないか、また別に貸出債権に限らず、証券化一般でも結構でございます。

以上でございます。

○神田部会長

どうもありがとうございました。いつものように大森さんらしいご説明で、(笑)論点の所在が非常によくわかったようにも思います。

それでは、今日は残りの時間をこれらについてのフリーディスカッションということにさせていただきます。ここに挙がっていないテーマで、こういうテーマも大事だというご指摘も含めて、どなたからでもご自由にご意見、また、ご質問はあまりないと思いますけれども、ご質問も含めて、お出しいただければと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。島崎委員、お願いします。

○島崎委員

今、大森課長の方からお話のあったインサイダー取引規制でちょっと申し上げたいのです。ご指摘の点は私もよく理解できますし、これから我々日本経団連、産業界の主立った会社にアンケートを出して、こういう意見があったと。そもそもなぜこんなことをしたのかということについては、資本市場をもっと活性化させようと、企業そのものあるいは企業の役職員が株式に入ってくる。貯蓄から投資へということで、そういうことを促進していこうというときに、明確ではないところがあるということがそもそもの出発点ですので、先日のプレゼンテーションで申し上げましたけれども、規制を緩和してほしいということではなくて、むしろあいまいなところを明確にしていただきたいというのが趣旨でございますので、私どもの出した提言はそのたたき台ですので、またいろいろたたいていただければと思います。

それから、企業の法務なりコンプライアンス部隊がインサイダー取引ルールというものをつくって、私どもの会社でもこれだけ立派なものがありまして、これを守ってやっているわけですが、結果的には会社の役員はほとんど取引先の株については投資するなというのに等しいわけであります。どうも経団連の傘下会社はほとんどそのようなルールをつくってやっているようです。私どもとしても、各企業の法務担当なりコンプライアンス担当の方に、インサイダー取引ルールを見直しするようにというレターを先日も出しているのですが、一番のポイントは、セーフ・ハーバーというか、どこまでが許されて、どこからだめなのかというあたりがはっきりしないので、どうしてもコンサーバティブな、特に管理部門の方が法務部隊をやっていますから、どうしても水を漏らさずというか、そのようなルールになっています。そこのところを明確化していかないとなかなか手も足も出ないのかなという感じがしておりますので、この辺のところをいろいろ、ご批判なり、もっと先生方の中立なる意見もいただいて、この議論を深めていただければと思っております。

以上です。

○神田部会長

ありがとうございました。

まことにご指摘のとおりだと思いますので、これはきちんと議論しなければいけませんし、そう何年もかけて議論するのもまた長過ぎると思います。かといってすぐ1、2回で結論が出るような簡単な問題ではないと思いますので、今の島崎委員のご指摘をよく踏まえて議論したいと思います。

今の点でも結構ですし、ほかの点でも結構ですが。高橋委員、どうぞ。

○高橋委員

今の島崎委員のご発言の点について、私どももぜひご検討をお願いしたいと思います。大森課長のご説明にありましたように、包括規定を全部削除してしまっていいかという点については、なかなか難しい問題もあると思います。包括規定がなくなってしまえば、例えば刑法の詐欺罪で対応したらどうかとか、あるいは証取法の不公正取引の一般規定で対応するということを前提として対応いたしますと、かえって予見可能性が落ちてしまうという問題もあるので、なかなか難しい問題だと思いますので検討していただきたいと思います。ただ、いずれにしても、規定がはっきりするということが今何よりも求められていると思います。島崎委員がおっしゃった過剰な社内規制になっているというのは、全く私どもも、そこが非常に大きな問題だと思います。これは企業だけではなくて、公務員とか国会議員とかを含めて、日本全体として取り組む必要がある問題かなと思っております。そういう中で、前回のときに大森課長からも、事前相談とかノー・アクション・レターについて積極的な対応を検討するというお話がありました。この分野でそういう事前相談あるいはノー・アクション・レターのようなことがどの程度どこまで可能かということについてもご検討いただいたらと思います。

それから、適用除外とか軽微基準の見直しということもぜひ必要だと思います。適用除外という中で、例えば、これは買う場合なのですけれども、役員持株会あるいは従業員持株会で定期的に買う場合、あるいは今、累積投資とか、定時定額に買うようなスキームがあるわけです。これは、そういう事前に決まっている契約した形で定時定額に買うわけですから、当然インサイダーの適用除外になっているわけですけれども、1回の買付額が100万円未満ということになっているのです。なぜそこに金額の制限を置かなければいけないのかというところに私どもはやや疑問を感じておりまして、金額を引き上げるべきかという議論もあるのですけれども、そもそもインサイダーの適用除外ということで考えるなら、定時定額の買付の契約というのは当然事前に締結された契約でありますので、金額の制限というのは本当に必要なのかということも思います。

それから、さっき投資顧問会社に一任する点について大森課長からお話があったのですが、例えば今、これはこの審議会で決めたラップ口座というのが来年4月から動き出すということになっております。例えば、ラップ口座で運用を一任するという中で、自社株についての一任ができるわけですけれども、売買の別とか、あるいは売買の時期とか、そういうものは指図しないといった制約をつけた形で一任すれば可能なのかなという感じもいたします。いずれにしても、今の範囲内でも工夫できる余地がいろいろあるのかなと思いますので、そういう点も含めてご検討いただいたらと思います。

○神田部会長

どうもありがとうございます。

黒沼委員、どうぞ。

○黒沼委員

インサイダー取引規制について、幾つかの点についてコメントさせていただきます。インサイダー取引規制について、理論的に何がいけないのか、どの点でインサイダー取引が不公正であるかということについては、必ずしも明らかになっていない部分があると思います。そういうときに重要になってくるのは、投資家にとっての公平感といいますか、不公正に扱われていないという感覚ではないかと思います。実際に日本のインサイダー取引規制はかなり厳しく適用されているというご意見もありますけれども、規定の上から見て諸外国と比べて遜色のないものになっているかという点が、特に諸外国から日本の証券市場の信認が得られるかのポイントになると思いますので、その点を十分考慮して検討する必要があると考えております。

それから、日本では現在、重要事実の規定は個別列挙に包括条項を付加する形になっています。そして、経団連のご要望には包括条項を削除することも入っているわけですけれども、私は包括条項一本でいく方がかえって明確性が向上するのではないかと考えております。日本商事株事件の最高裁判決は、一つの事実が二つの側面を持っており、Aという側面について列挙事実に該当するときに、列挙されていないBという側面がAに包摂評価される面とは異なる別の重要な面を持っている場合には、包括条項を適用してよいと言っています。これは、現行法の構造からいって、仕方のない解釈だろうと思うのですが、そうすると、Aという面とBという面を区別していることになりますので、例えばAの面の重要性が50で、Bの面の重要性が50あるとすると、それぞれに法を適用した場合、Aについては重要基準をクリアしていない、Bについては投資判断に重要な影響を及ぼさないと認められる場合が出てくる可能性があります。もし個別条項がなければ、AとBという側面は一つの事実に備わっているものですから、AとBの事実を総合的に判断して、100という重要性がある。100の重要性があれば、投資判断に著しい影響を及ぼすと認められて、インサイダー取引規制が適用される可能性があるわけでして、個別列挙プラス包括条項となっているために、本来はインサイダー取引として規制されるべき行為が規制されないという可能性があるように思われます。

個別列挙されている事実についても、日本の法律では、決定事実については、会社の業務執行決定機関がある事項について決定したかと否かいう構造になっています。日本織物加工株の最高裁判決は、新株発行を行うことについての決定をしたというのは、新株を発行するという決定をしたのではなくて、それに向けての作業を会社として行うことの決定をしたことを含んでおり、かつその場合に「当該株式の発行が確実に実行されるとの予測が成り立つことを要しない」という言い方をしているわけです。なぜかといいますと、個別列挙されている事項については、一般的にその事実が重要であるという要件がかかっていないのです。そのかわり重要基準や軽微基準がある。ところが、決定事実に係る軽微基準は、その決定事実が実際に実行されたときにどれくらい企業にとって影響があるかをはかっていますから、実行の可能性を考慮していないのです。例えば、100億円の株式を発行して100億円の資金を調達するというのは軽微基準をクリアしているとしても、その実現の可能性が1%しかないのであれば、市場に対するインパクトは1億円分しかないはずなわけです。ところが、そのような規定の仕方になっているために、規制すべきでないような事実であっても軽微基準をクリアしてしまって、不必要に規制の範囲が広がっていく可能性がある。もし個別条項を列挙して包括条項一本にすれば、投資判断にとって重要な影響を及ぼすことが要件になると思われますので、実質的な判断が加えられるようになるのではないかと考えております。

最後にもう1点、日本の場合、会社の法務部などの保守性も考慮していろいろと検討する必要があると課長はおっしゃいました。私もそのとおりだと思うのですけれども、昭和63年に立法化されたときに、未然防止体制が重要であるということがかなり強調されまして、それが引き続いて今日の事態を招いているのではないかと思います。しかし、法律論的に見ると、発行会社の役員や従業員がインサイダー取引を行ったとしても、それが会社の業務または財産に関連して行われたのでない限り、会社は処罰の対象にならないはずですし、基本的にはこれは個人の犯罪なわけです。ですから、未然防止体制が重要であるということは否定しませんけれども、株式の取引を制限するという方向で未然防止体制を確立するのではなくて、未公開情報の管理と公表、どの時点までは情報が漏洩しないように管理し、どの時点になったらきちんと公表するか、そういう体制をしっかりと整備すれば解決できるのではないかという印象を持ちました。

○神田部会長

どうもありがとうございました。なかなか難しいなと思いながらも、貴重なご指摘で。

島崎委員、どうぞ。

○島崎委員

この議論を今日やっていると終わらないと思うのですけれども、1点だけ申し上げたいのです。

今の先生の話は半分ぐらいしかわからなかったのですが、バスケット条項一本でいいのではないか云々というのは、このインサイダー取引規制を今後どうするかを議論するときに一つ大きなポイントになると思いますし、ここで黒白というか、つけられない大きな問題だと思いますけれども、一つちょっと我々企業の実務サイドから申し上げたいのは、確かに理屈の話とか、法理論の話とか、いろいろわかりますが、例えばアメリカと日本を比べた場合に、インフラというのは大分違うなと。我々企業がこういう取引をしたいとご相談にいったときに、例えばこういう証券取引法なりインサイダー取引に通じた弁護士が日本にどれだけいるのか。ほとんど相談してもまず明快な話はない。なぜないかというと、事例がないからであります。先ほどほとんどないと申し上げましたけれども、判例が積み上がっていない。だから、企業に対してリアルタイムのアドバイスができる状況になっていないのです。まずこれがいわゆる法曹界の弁護士の数が少ない云々という別の問題もありますし、判例も積み上がっていない。ですから、このような日米のインフラの違いというところもよく頭に置いた上でこの法制、規制というものを考えていかないと、机上の空論に終わってしまうのではないかと私は思いますので、一言だけ申し上げたいと思います。

○神田部会長

どうもありがとうございます。

どうぞ、上柳委員。

○上柳委員

今、島崎委員の方からお話がありました弁護士に対する批判はそのとおりだと思いますので、珍しく全部認めますが、(笑)ただ、資料2でいただいていますペーパーで一言だけ言わせていただきますと、2ページの上から3~4行目、「バスケット条項を削除すべきである」という論理のところですけれども、重要事実の明確化を図らなければいけないことは当然だと思います。これはおっしゃるように判例でアメリカのように充実していくのが一番だと私も思いますけれども、これはなかなか大変ですので、しばらくは、今の決め方がいいかどうかは別にして、ある程度法律なり、行政の方が一定の個別事実を示さざるを得ないのではないかと私は思っておりますが、まさにこの2ページに書いてありますように、個人・企業が安心して株式等に投資できるために、バスケット条項が必要なのだと思っています。要するに、これは言い過ぎかもわかりませんが、企業の中心で活躍されている方が日本の富のかなりの部分をお持ちですので、その方が投資される、あるいは証券に触れられるということは大事だと思いますけれども、聞いていますと、自分のよく知っている身内であるとか縁者であるとか、そういうところの株を買いたいけれども、買えないのが困ってしまうと聞こえて仕方がないのです。インサイダー取引を規制するというのは、まさにその重要な地位にいらっしゃる方が何か一般庶民にはわからないことで取引をされてしまっているのではないかと思われたら証券市場全体がつぶれてしまうということのために、広く、しかも厳しく決められているのだと思うのです。ですので、ぜひこのようなことで証券市場を活性化させるということであれば、自分たちが安心して他社のあるいは全然知らないところの株を買うためにはどうしたらいいのか、むしろそちらの方へ経団連としてもその提言を集中していただきたいなと思いました。

これはバスケット条項のところに重点があるのか、個別列挙の方の交渉に重点があるのかよくわかりませんが、4ページの方で一言だけ言いますと、子会社の解散については私はよくわかりませんけれども、(2)の新株発行とか、自己株式の問題は、パーセンテージの問題ではなくて会社の規模の問題だと思っていますので、私はむしろ現行のこの金額基準の方が適切なのではないかと思っています。

以上です。

○神田部会長

ありがとうございました。

島崎委員も冒頭おっしゃっていただいたように、ルールそのものの緩和というよりは、ルール違反がないのに株式取引が行われていないような環境にあるところは、少なくともそこはまず改めることによって株式市場の活性化をはかるという趣旨だと思いますので、今の上柳委員のご指摘とは整合的なように思います。

私も若干感想を一委員としてつけ加えさせていただくことをお許しいただければ、インフラの違いというのは確かに島崎委員がおっしゃるようにあって、アメリカでは166条のような規定はバスケット条項を含めてそういう規定はないのです。日本で言えば157条という不公正取引の一般規定、これは内部者取引に限りませんけれども、そういう規定プラスSECの規則のもとで先ほどご指摘のあった判例の積み重ねがあり、しかもその判例というのは刑事だけではありませんで、民事の判例が非常に多いということがあろうかと思います。ですから、日本でも判例を積み重ねろというのはそのとおりだとは思いますが、刑事をたくさん積み重ねるというのは、(笑)社会としても果たしてそういう社会がいいのかどうかということがありますし、容易ではありませんので、そうなってくると、やはり判例の積み重ねでおのずから要件が明確になるというのは、日本のインフラのもとでは限界があることも認めざるを得ないと思います。

他方、私も財界の方の前でお話をさせていただいたこともあるのですけれども、経済界の中にも意見はいろいろあって、中には一般条項一本の方がいいのだ、あとは何も要らない、やましいことがなければ堂々と株を買えばいいのだとおっしゃる方もいらっしゃって、まことに正論なのですけれども、ではそれでいきますかという道をとらないということを決めたのが昭和63年改正なのです。それまでもインサイダー取引は157条、今で言う一般条項に違反すると解されていたのですけれども、そのもとでインサイダー取引が摘発というのでしょうか、エンフォースされた例は1件もなかったものですから、当時ある具体的な事件をきっかけとしてではありますけれども、昭和63年に先ほど黒沼さんから詳しいご説明のあったような166条という、非常に手の込んだというか、形式的基準をつくっていったわけです。しかし、それから大分たつわけで、世の中の状況も違いますし、資本市場の規模も徐々にではありますが拡大していますので、現時点において要件をきちんと見直してその明確化を図るというのは極めて重要なことのように思います。

一般条項を言うのであれば、157条をどうするかということも本当は議論しなければいけない話で、ありがたいけれども、一般条項は神棚に飾っておきまして使いませんというのはないのも同じですので、そういうことで言うと、あまり間口を広げるのもどうかと思いますけれども、議論していく上では、157条というのはお守りだけでいいのか、使われない規定がただあるという状況をどう考えるのかということは、インサイダー取引規制だけの問題ではありませんけれども、本当は日本にとっては重要な問題のような気がいたします。

もう一つ、ノー・アクション・レター制度等については、これがうまく使われるということは非常に重要だと思いますけれども、ご存じのように、現在のノー・アクション・レター制度というのは、法律上の根拠に基づいている制度ではありませんで、閣議決定というものに基づいて運用されている制度であります。そこにはいろいろありますけれども、一つの類型は、行政が処分をする場合にその処分の根拠となる規定についての照会ということになっておりますので、いわゆる直罰規定、何かをすると刑罰を科されるというものについて照会することはできないことになっているわけです。しかし、他方、処分の根拠となる規定との関連があれば照会できるわけでして、実際に金融庁から出されている例は私もホームページで知ったのですけれども、その例で申しますと、あることをやるときに銀行業の免許が要るかという照会は可能であって、それに対する答えが公表されているわけです。これは、もしそれが銀行業の免許が要るとすると、それを得ないでやれば無免許営業ですから、これは刑罰の規定が銀行法にあるわけですけれども、そういう場合には免許という行政処分との関係で聞くことができるわけです。

しかし、そういう規定がなくて何かをやった場合に刑罰の規定になりますというものを俗に直罰規定などと言っているのですけれども、そういうものについては司法をつかさどる部署の直接の判断の問題になるという理由で、現在のノー・アクション・レター制度の対象には入っていない、すなわち行政に聞くことはできないという制度になっています。こういう問題をどう考えるかというのもあると思います。アメリカなどはそんなに厳格に考えていなくて、何でもありとまでは言いませんけれども、行政の回答はもちろん司法の判断を拘束しないわけですから、必要に応じてノー・アクション・レターを出すこともあれば、それからもちろん照会に対して出さない場合も多数ありますけれども、その辺、インフラの違いもありますけれども、ルールの明確化という観点から、どういうインフラを日本としてつくっていったらいいかということをきちんと議論する必要があるように思います。そういう意味では時期は十分熟しているように思います。どういう方向に整理したらいいか、私もさっぱりわかりませんけれども、いずれにしても、また黒沼委員からもより詳しい報告等もいただいた上で、議論を進めていければと思っております。

それでは、冒頭申し上げましたけれども、本日は先ほどご承認いただきました報告書を竹中金融担当大臣にお渡しするということになっておりますので、ここで審議を中断させていただきまして、今からカメラの方に入室していただき、その後大臣においでいただくということになります。

(竹中金融担当大臣入室)

○神田部会長

それでは、大臣がお見えですので、報告書を私の方から竹中大臣に提出させていただきたいと思います。

○竹中金融担当大臣

ありがとうございました。

○神田部会長

それでは、ここで大臣からごあいさつをいただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

○竹中金融担当大臣

この答申をいただくに当たりまして一言ごあいさつをさせていただきます。

委員の皆様におかれましては、まさしく日ごろお忙しい中でこの審議会の活動にご参加、ご尽力をいただきまして、本当に感謝しております。

今般答申をいただきました「市場機能を中核とする金融システムに向けて」の方策については、9月25日に審議が始まって、わずか3カ月という短期間のうちに非常に精力的、集中的にご議論をいただいて答申をおまとめいただいたと承知しております。言うまでもないことでありますけれども、日本の金融システムにおいて市場機能がますます重要性を増している。その中でいかに利用者の利便性向上と日本の金融システムの機能強化という大きな目標を達成するかについて、非常に有効でかつ画期的な施策を提言していただいた、まさに今後の金融システムのあり方についての議論に道筋をつけるという意味で、歴史的に意味のあるものであると私自身も受けとめております。答申をいただいて、利用者本位の力強い金融システムをつくり上げていかなければならないという決意を新たにしているところであります。これは早急に提言を実現するべく努力していきたいと思っております。

神田部会長を初め、第一部会委員の諸先生方、また今日この場にはいらっしゃいませんけれども、各ワーキング・グループの先生方のこれまでのご尽力に深く感謝申し上げたいと思います。今後とも引き続きご指導、ご協力を賜りますようお願い申し上げまして、大変簡単でありますけれども、御礼の言葉とさせていただきます。ありがとうございます。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

なお、大臣は公務ご多忙のため、これにて退席されます。

それでは、カメラの方はこれまでということで、よろしくお願いします。

(竹中金融担当大臣退室)

○神田部会長

それでは、審議を再開させていただきたいと思います。まだ若干時間がありますので、先ほど来インサイダー取引規制の見直しの部分について若干のご発言をいただきました委員の方々のご関心が集中しておりますけれども、ほかの論点等も含めまして、時間がたくさんあるわけではありませんけれども、ご指摘やご意見をいただければと思います。どなたからでも。上柳委員、どうぞ。

○上柳委員

自由討議テーマ案の1番目の投資サービスにおける投資者保護のあり方に関してですが、いつも同じようなことを申し上げているかもわかりませんけれども、ここのところは大変大事だというか、先ほど課長の方からは、言葉じりをとらえるわけではないですが、そろりそろりとおっしゃいましたけれども、これは直ちにやるべきところも多いのではないかと私は思っております。全部やれというとまたあれになりますけれども、特に外国為替証拠金取引については、今の範囲でそれなりに対応を始めていただいているところとは聞いているのですけれども、一番悪い業者がどの法律にもひっかかりそうにないという状況、出資法にはひっかかるのかもわかりませんけれども、そのような状況はやはりまずいと思います。そういう意味で、これをどのように名づけるのか、投資サービスと名づけるのか、あるいは黒沼先生の方から以前にペーパーが出ておりますけれども、法律的な整理の仕方はいろいろあるにせよ、早急な取組みが必要だというのは言うまでもないと思うのです。ただ、それをそこにとどめるのではなくて、今日も前半に議論がありましたように、ますますいわゆる金融サービス全体で、銀行と証券の間の問題であるとか、融合化といいますか、横断化といいますか、コングロマリット化が進んでいくわけで、それに対応した体制が見据えられなければいけないと思いますので、そこはひょっとしたら少しずつそろりそろりかもわかりませんけれども、そのようなスピード感を持ってやるべきではないかと思います。もしできれば、どういうスケジュールを考えておられるのか、ちょっとそのヒントを与えていただけるとありがたいのですが、よろしくお願いします。

○神田部会長

そろりそろりのスケジュールを。(笑)

○大森市場課長

審議会が報告をまとめるというのは、6月と12月が多いのです。(笑)6月にまとめるというのは、立法作業に半年ぐらいかかるので、12月というのは、そんなにはかからないということで、これは行政官の都合のようなことを申し上げて恐縮ですけれども、逆に言いますと、本日おまとめいただいた事柄というのは、投資教育を除きまして、次期通常国会の措置を想定して精力的にお願いしたということでございまして、一方で、例えば外為証拠金取引といったものをどうしていくかというと、上柳先生のおっしゃる最も悪い業者までということになりますと、それはこれまで、役人的な発言で恐縮ですけれども、金融庁とは何の縁もゆかりもなかった人まで取り込んでいくというその実態をどうするかという問題と、仮にある種業法のようなものをつくっていくということになるとしますと、そんなに短期間で業法が一丁上がりというわけにもまいりませんので、そういったことをまた来年の前半に議論していただいた上で結論を出していくということではないかと思います。さらに、例えばこういった取引が出てきて、一々手当をしなくても済むようなミニマムな手だてができているといった法律までつくるということになると、多分その法律をつくるのは恐らく私ではないのではないかという、これがぎりぎりの相場感ということかな思いますけれども。(笑)

○神田部会長

平成4年のときも、有価証券の概念の拡大ということで証券化関連商品という言葉を当時使って、そこまでは証券取引法の投資者保護ルールを適用してはどうかという議論をしていたのですけれども、当時、有価証券概念というと、黒沼さんや私がそうなのですけれども、アメリカはどうなっているかといいますと、例えば日本で言うねずみ講とかマルチ商法とか、ああいうものも証券に当たっているのです。Howey事件も、ちょっと違いますけれども、どちらかというとそういう系統である。そういうときに、当時盛んに言われた議論の一つに、当時はそれに当たる日本で新聞報道されていたものに原野商法ですとか観音竹というのがありまして、そういうものをアメリカで言うように証券取引法の証券にしたら、当時は大蔵省の証券局ですけれども、今で言えば金融庁が全国を駆けめぐって観音竹から原野商法とか全部を取り締まるのか、それはスタッフの数からいったって到底できることではないし、それはむちゃだというご指摘も一方であったのです。当時の整理は、いろいろなご議論がありました。一般条項の議論もありましたし、いろいろな角度のご議論がありましたけれども、私の理解では、少なくとも私は一委員として次のような議論をしました。それを大ざっぱに言うと、後ろ向きの話と前向きの話はどちらも重要だけれども、当時の証券化に関する限りは、インフラがないために証券化が進まないと、これはよくない。そこで、投資者保護のためのインフラを整備するというのは証券化を促進するために行うのだということで、観音竹や原野商法とは一応切り離して証券化関連商品というものを、当時の言葉で言えば銀証相乗りと呼んでいましたけれども、有価証券の対象にし、かつ65条の2項に列挙していくという形で実現して、投資者保護インフラというのをつくって、その後の証券化・流動化の進展をサポートしましょうという形で当時まとめたのです。

ただ、そのときから今で言えば外国為替証拠金取引に当たるようなものが既にあったわけで、その中身等は全然違いますけれども、それからひょっとすると、悪質性とでもいうのでしょうか、悪徳商品性というものの次元や種類も違うのかもしれなせんけれども、そういう問題をどうするのかというのは、今、大森課長がおっしゃったように、非常に悩ましい問題があって、これはよくも悪くも先送りされてきたということはあると思います。恐らく今回の議論でも、一般的に証券取引法でこれまで、特に平成4年改正前につくり上げてきた世界というのは伝統的な世界で、あまり問題がなく、もちろんいろいろ改善は必要ですけれども、そして平成4年あたりから広がった世界と、今回以降広げていこうという世界のところ、そしてまた今、上柳委員にご指摘いただいたような、当時からなかなか大変だけれども何とかしなければいけないという世界というのは、全部一つで同じディスクロージャー法制などという話はないと思うのです。ですから、その辺を私は証券取引法なり投資サービス法の柔構造化と呼びたいのですけれども、それぞれのディスクロージャーの適用、あるいは不公正取引の適用、業者規制の適用、あるいは取引所規制の適用といったものをもうちょっと柔らかい構造にしていかないと、なかなか横断的な投資サービス法というものは実現しないように思うのです。

私ばかりしゃべり過ぎておりまして、すみません。いずれにしても、重要な課題だと思いますので、できるだけ早いテンポで可能な限り議論を進めたいとは感じております。

ほかにいかがでしょうか。それでは、斎藤委員、黒沼委員の順番でどうぞ。

○斎藤委員

念のための確認ですが、このディスクロージャーのところでの英文開示という意味です。これは、要するに日本のルールに従った情報開示を英語でやってもいいという話であって、英語圏で使っている国内向けの情報をそのまま日本で出させろという意味ではないのですね。

○羽藤企業開示参事官

前者の意味が中心であります。中心であるということは、後者の方は恐らく、例えば国際会計基準に従って処理されているといった会計基準の問題自身をどう取り扱うかということを前提として、その使用言語をどうするかといった将来的な課題としてはあり得ると思います。したがって、将来的な課題も一応見据えた上で論点としては整理したいと思いますけれども、ここでもっぱらご議論をお願いしたいと思っておりますのは、むしろ今ご指摘の前者の話でございます。

○斎藤委員

当面、例えば財務諸表上の表示通貨は日本円だという想定なのですね。(笑)

○羽藤企業開示参事官

そういう想定であります。ですから、これはツールとしての言語がそういうことであるということは先ほど大森からも申しましたように、ツールが制約されていることによって、日本を通り越して、つまり我が国のマーケットの全体としての利便性あるいは競争力というところにとっての制約要因になってはいないかという問題意識ですので、まずそこのところからどのように考えていくのかということを整理していただき、てご提言をお願いしたいという趣旨でございます。

○斎藤委員

基本的に多様性を認めて、評価を投資家にゆだねる、ただし投資家に評価の責任を求める以上、どうしても必要な統一性とか比較可能性は確保しようという趣旨だと思いますので、承って特に違和感は感じていません。それだけです。

○神田部会長

ありがとうございました。投資家が日本語のものを下さいといった場合は、もちろん日本語のものもあるという前提なのですか。

○羽藤企業開示参事官

ええ、そこはそのように。

○神田部会長

黒沼委員、どうぞ。

○黒沼委員

投資サービスのあり方についてなのですけれども、神田部会長が柔構造化とおっしゃられた点はまことにそのとおりだと思っておりまして、この問題を考えるときに2つの重要な方策があると思うのです。1つは、有価証券概念を拡大するのかどうかという話でありまして、もう1つは、金融商品販売法が扱っているような金融サービスあるいは投資サービスの範囲をどうしていくか、あるいはその内容をどうしていくかという問題だと思います。大森課長はミニマムな手だてはご自分のところでやられるような問題ではないとおっしゃったのですが、私はどちらもミニマムな手だてがあり得ると思っております。というのは、証券取引法の考え方は、ディスクロージャーさえすればどういう証券を発行しても構わないというのが基本になっているはずです。その際にディスクロージャーについて規制するということと、市場がある場合には市場型の不公正取引がそこにかかわってくるという話だろうと思います。つまり、証券取引法は、発行者を規制している。それに対して、一般的な投資サービス法という場合には、諸外国の例を見ても、どちらかというとこれは業者と顧客との関係を規律しているわけで、その限りで、横断的な投資サービス法をどの範囲で作るのか、そのときのルールをどうするかという問題があると思います。ですから、有価証券の概念を一般的なものにするかどうかということは、投資サービス法の制定に解消される問題ではないので、両方とも並行して議論していく必要があるのではないかと思います。

○神田部会長

どうもありがとうございます。

ほかにいかがでしょうか。西村先生、どうぞ。

○西村委員

その点とも関連するのですが、私のように経済学の方から見ていますと、いろいろなサービスが出てきて、そのサービスがまた分割されて、サブサービスがいろいろ出てくるわけです。例えば、投資サービスの中でも、今はどちらかというと、いわば顧客の投資に関していろいろなアドバイスをしたり、また顧客にかわって投信をやるといったことを考えていらっしゃるわけですけれども、そのほかに重層化とも絡むのですが、いろいろな証券やいろいろな性質の債券のようなものが出てきたときに、その証券やそういった投資の評価というものを逆に言えば顧客に対して提供して、それに対して顧客が一定の判断ができるようにするサービスは当然出てくるわけで、そして今、証券のアナリストといったところはそういうサービスを行っているわけです。これが実はさっき言いました投資サービス法といったものを考えるときに、その中の一つのサービスとして考えるのかどうかということを一つお聞きしたいということがあります。

なぜそういうことを申し上げるかといいますと、「その他(複線的金融システムに向けて)」というところで、非常にさまざまなものがこれからいろいろな形で証券化のスキームを使って考えられると思います。私が今ちょっと考えている社会投資ファンドみたいなものもそういうものなのですが、そういったときに、実は評価というのが非常に重要になってくるわけです。今まではどちらかというと、評価というのは逆に言えば自己責任で、失敗したらそれでいいでしょうという話だったわけですが、さまざまな形で公的なものが介在するような証券が出てくる可能性がある。いろいろなところでも地域のファンドといったことをいろいろやっていますけれども、そういうものには単純に民間が資金を提供して民間がそれに対して責任を負うということ以上の意味合いを持ってくる、つまり公的資金が導入される可能性があるということから考えると、その辺のところも含めてきちんとした評価をするということをどうやって担保するかということが恐らく重要になってくるのではないかと思います。

以上です。

○神田部会長

ありがとうございました。

私は今のお話を聞いて、ちょっと違うかもしれませんけれども、よく最近、地方公共団体で債券発行とか、あるいはそういうことが非常にブームになっているのですけれども、ああいうものは商法の適用もないし、証取法の適用もない、何もないというのでは、本当はちょっとどうかなと思うのですけれども……。

○西村委員

あれは、あまり言ってはいけないのだと思いますけれども、非常に大きな問題があります。(笑)

○神田部会長

官と民がうまくいろいろなことをやろうという話になったり、イコール・フッティングとか、いろいろな多様化が起きている中で、ルールは何十年か前のルールになっているものですから、やることは多いので、大森課長と羽藤さんのもとに特別チームか何かをつくっていただかないと。(笑) いずれにしましてもこれはなかなか大変かもしれませんけれども、そういう意気込みで先ほど課長さんから説明があったということだと思いますので、年明け以降の課題を進めていくときには十分注意していきたいと思います。

ほかにいかがでございましょうか。よろしゅうございますでしょうか。

それでは、今日は12時まで時間をいただいていたかとは思いますけれども、クリスマスでもございますし、(笑)もう十分ご審議いただいたと思いますので、これまでの若干延長した分をお返しさせていただきたいと思います。

この後、記者会見を行いまして、本日の当部会の模様について私から話をさせていただきます。

繰り返しになりますが、当部会は本年9月25日にお集まりいただいて以来、7回の会合を重ねてまいりました。そして、年内の審議という意味では、本日一応の区切りを迎えることができました。その間、3時間を超える会合を何度か開いていただきまして、またワーキング・グループの先生方には大変精力的にご審議をいただきました。そのおかげで、本日無事報告書を取りまとめ、大臣にお渡しすることができました。これはひとえにこの場にいらっしゃいます皆様方、そしてワーキング・グループの委員の皆様方のご協力、それから積極的な、また前向きなご審議の賜物でございます。厚く御礼申し上げます。

それでは、最後になりましたが、事務局からご連絡等がありましたら、お願いいたします。

○大森市場課長

それでは、年明け以降にまた本日の後半でご議論していただいたような課題についてよろしくお願いしたいと考えておりますが、次回のスケジュールと内容につきましては、神田部会長と相談の上、別途ご連絡させていただきますので、よろしくお願いいたします。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

それでは、皆様方にはよいクリスマスとよいお年をお迎えください。これで散会いたします。

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