金融審議会金融分科会第一部会(第21回)議事録

日時:平成16年11月19日

金融庁 総務企画局

午前10時01分開会

○神田部会長

おはようございます。それでは、これからもいらっしゃる方もあるかもしれませんけれども、予定の時間になりましたので、始めさせていただきます。

本日は、金融審議会金融分科会第一部会の第21回目の会合になります。

これから開催させて頂きます。

いつも皆様方には、ご多忙のところをお集まり頂きまして、ありがとうございます。

いつものことでございますが、議事は公開とさせて頂いておりますので、報道機関の方々のために後ろの方の座席を確保しております。

本日も盛りだくさんの予定ですけれども、東京大学の神作裕之教授に、EUにおける投資サービス法制についてのお話をお伺いするために、特にお越し頂いております。どうもお忙しいところありがとうございます。よろしくお願いいたします。

本日の予定ですけれども、最初に事務局の方から、この国会に提出されました金融先物取引法の一部を改正する法律案等についてご説明を頂きます。そして、その次に、EU及び米国における投資サービス法制ということで、まず神作さんから、EUにおける投資サービス法制についてお話を頂いて、続いて黒沼委員から、米国における投資サービス法制についてお話し頂くということを考えております。時間的にどのぐらい余裕があるか分かりませんが、もし余裕があれば、一応資料は用意させて頂いておりますが、さらに投資サービスの範囲と定義、方法等についての自由討議までいければと思いますけれども、そこまでいけなければ、最後の部分は次回ということにさせて頂きたいと思います。

それでは、早速お手元の議事次第に従いまして、まず金融先物取引法の一部を改正する法律案等について、事務局の方からの説明をお願いします。

○大森市場課長

資料1につきましては、当部会の報告を立法化しただけのものでございますので、中身の説明は省略させて頂きます。

先月、国会に提出し、たまたま昨日、衆議院通過いたしましたが、まだ審議中ですので、成立後に審議経過についてご報告いたします。与党との調整の過程などでは、電話や訪問による不招請勧誘を禁止するのは厳しいのではないか、商品先物取引と同じ規制でよいのではないかといった意見も一部にはございましたが、無差別に電話や訪問をしますと大変人件費がかかりますので、たまたま興味を示した客を食い物にしないと経営が成り立たないと。したがって、そういう経営なら初めから断念してもらった方がいいという、この世界の現実にご理解頂けたのだろうと思っております。

次に、資料1-2でございます。銀行が国債を販売するようになって数年後、郵便局での販売が始まりましたが、投資信託についても銀行に数年遅れて郵便局での販売を可能にする法律案が先週国会に提出されましたので、金融庁の主管ではありませんが、ご報告いたします。

これは、郵便局にとっては民営化前のリスク商品習熟プロジェクトという性格がございますが、金融システム側から見ますと、当部会でも以前から議論してきた国民と市場との接点を拡充していく政策の延長線上に位置づけられると思います。資料1-3で、投信販売残高のグラフをご覧頂きますと、下の黒い方が銀行の販売分ですが、銀行販売分の増加に見合って残高が増加しておりまして、業態間でパイを奪い合うというよりも、銀行が新たな投資家を開拓したという姿になっております。恐らく郵便局でも、この法律の施行後、同じことが起こるのではないかと考えております。

現在、郵便局が国債を販売しておりますが、その根拠として国債窓販法という法律がございます。これは、リスクのない国の債務を国が販売するということですから、証取法とは無関係の体系になっております。総務省、旧郵政省ですが、当初今回も同じ方法をとりたいという意向でございましたが、私どもの基本的考え方は、今回の郵便局の業務拡大は民営化を前提として初めて許容されるものだということであります。したがって、投信を販売するのであれば、民間銀行などと同じように、登録金融機関として証取法の適用を受けるということにいたしました。この資料1-2の2(3)がその手当てでして、郵政公社は証取法の行為規制のもとで登録外務員が投信を販売し、証券業協会にも加入してもらうということになります。当然、監視委員会の検査を受け、金融庁の監督を受けるということにもなります。現在、郵政公社は総務省が監督しておりますので、金融庁を共管とするための郵政公社法の所要の読み替えなどを手当てしているのが、その上の(2)でございます。

この法律は、郵政公社が投信を販売するためのものですから、2007年の民営化以降はまた別の話でございます。純粋に銀行法上の銀行になるなら、当然銀行と同じ業務ができるということになりますが、移行期において業務を制約すると言うなら、別の法的手当てが必要だということもありうると思います。いずれにしても、公社である間は納税もしておりませんし、預金保険料も負担していないなど、民間とイコールフィッティングになっていませんから、とりわけ民業圧迫にならないような特別の義務づけが必要で、それが(4)での手当てでございます。この資料ではすべて書いておりませんけれども、郵政公社は、これまで投資経験のない郵便局の顧客に、リスクの低い入門的投信を提供したいという意向ですが、この場合に商品の選定に当たっては公募をしてくださいと。そして、その何ゆえにこの商品を選定したのか理由を開示してくださいと。そして、その商品は民間に比べて有利なものであってはならないということでございます。

最後の点は、これまでも郵貯金利の設定に当たっては民間準拠原則がありまして、民間より高い金利をつけてはならないということになっていますが、投信については、民間より安い手数料を設定してはならないということでございます。冒頭申しましたように、国債については国債窓販法という法律が残っておりますので、これまでどおりその法律に基づく取り扱いになって、投信については、今回証取法が適用されるというのは若干バランスを失しております。ただ、これは民営化を前提に、国債窓販法を廃止するという判断をこの民営化法に先んじて行うと、まだ民営化そのものに反対している方も大勢おられますので、そういった配慮に基づくものでございます。当然、将来は投信のみならず、国債についても証取法の登録金融機関として販売するようになると思いますが、そういった法的手当ては、今後の民営化法において行われるということでございます。

私からは簡単ですが、以上でございます。

○池田企業開示参事官

それでは、引き続きまして、資料の1-4について私の方から説明させて頂きたいと思います。

既に、新聞報道等にもいろいろ出ておりますけれども、本年の10月中旬以降、証券取引法上のディスクロージャーをめぐっては、さまざまな不適正な事例が判明し、公表されておるところでございます。株式の保有割合の記載が正しくなかったとか、あるいは粉飾決算の疑いというようなものが連日報道されておるという状況でございます。この点について金融庁としては、ディスクロージャー制度に対する国民の信頼を揺るがしかねない事態であるという認識に立ちまして、今週の11月16日にお手元にお配りしておるような形で、ディスクロージャー制度に対する信頼性の確保に向けた諸方策について取りまとめ、公表させて頂いたところでございます。

内容としましては、4つの柱が立てられておりまして、その1番目は、有価証券報告書の審査体制を整備するということでありまして、また2番目に、公認会計士等に対する監督の問題、それと併せまして、当審議会との関係の深い点として、3番目に開示制度の整備についても言及しております。この点については、既に第一部会からのご指示を頂いて、第一部会の下に設けられておりますディスクロージャー・ワーキング・グループでは、この10月の初めから、開示制度をめぐる論点について幅広い検討をしてきておりますが、その中には、例えば内部統制の健全性確保と適切な会計監査のあり方といった項目も掲げられているところでございますが、そのディスクロージャー・ワーキング・グループにおける検討の中で、以下に掲げてある4つの項目についても、入念な検討を頂くように要請をするということを記載させて頂いております。

具体的に見て頂きますと、1番目は、財務報告に係る内部統制の有効性に関する経営者による評価と、公認会計士等による監査という点でございます。今回の不適正な事例の中には、大変長期にわたって不正が発見されなかったというものや、あるいは会社ぐるみ、あるいは役員を中心とした粉飾決算の動きがあった等々のことがありまして、こういった不適正なディスクロージャーの背後には、企業における内部統制の不在といったことが、要因として大きくあるのではないかという指摘が多々されておるところでございます。

また、この9月の部会のときにもお示しいたしましたけれども、例えば日本公認会計士協会で行っている監査時間の調査等によれば、今申し上げたような内部統制の評価というものに対して、必ずしも十分なチェックが行われていないのではないかということを示唆するデータも出されているということでございまして、この点について、どういった対応策を考えていったらいいのか、建設的な議論をお願いしたいというふうに考えておるところでございます。

それから、2番目は継続開示義務違反に対する課徴金制度のあり方ということで、課徴金制度につきましては、さきの証取法の改正で、来年4月から証取法の世界にも課徴金制度が導入されるわけでございますが、ディスクロージャーの分野について申し上げますと、今回の課徴金制度の対象になっているのは、有価証券発行時の発行開示の部分だけでございまして、ここにあります継続開示の義務違反に対しては、課徴金の対象となっておりません。この背景には、発行開示については、虚偽の記載によって会社が得た利得というものを比較的容易に推定できる。一方で、継続開示義務違反の場合は、虚偽記載によって得た会社の利得というものが非常に観念的で、なかなか推計が難しいということで、そのあたりの詰めを要するということで、今回の改正では、発行開示だけが対象になっているというふうに理解しておりますが、この1カ月生じている事例は、いずれも継続開示義務との関係の事例でございまして、こういった点についてどう考えるか。英、米、独、仏、あるいはアジアの韓国とかを見ても、発行開示だけ課徴金があるという国はないところでございまして、いずれも発行開示・継続開示ともに課徴金の対象になっておるということで、法的な詰めの問題は十分検討する必要があると思いますが、証券市場の常識としては、発行開示だけというのはちょっといびつな形であるということは間違いないのかというふうに考えておるところでございます。

それから、3番目はコーポレート・ガバナンスに係る開示の充実のあり方ということで、今回公表されております事例の中では、例えば個人の会計監査人が大変長期にわたって関与してきたということが問題の一つとして指摘されておりまして、このあたりの会計監査人の監査体制あるいは監査継続年数について、有価証券報告書の中で開示を求めるといった方策についてどう考えるか。あるいは内部監査につきましても、1例では社外監査役に弁護士の方が就任していたけれども、その弁護士の方が、実は会社の顧問弁護士をやっておられる方だったということで、社外監査役の方の独立性あるいは利益相反的な問題が指摘されておるところで、そういった内部監査の体制の開示について、一層の充実が必要ではないかという問題意識でございます。

それから、最後は、親会社が継続開示会社でない場合の親会社情報の開示ということで、子会社が開示会社であった場合に、親会社が閉鎖会社であったときに、その親会社の情報の開示をどこまで求めていくべきかという議論だというふうに考えております。

それから、4番目は各証券取引所に対しても上場規則の見直しなどの対応を要請したものでございます。金融庁としましては今後、この諸方策を強力に推進することによって、ディスクロージャー制度の信頼性確保に努めてまいりたいというふうに考えております。

また、開示企業、監査人あるいは市場開設者の方々、そういった市場関係者の方々にも、いろいろと要請というものをこの中に織り込ませて頂いております。各市場関係者の方々にも現在の状況を重く受けとめて頂いて、それぞれの立場から最大限の取り組みをして頂くということを強く期待しておるところでございます。

以上でございます。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

それでは、今、大森課長と池田さんからご説明頂いた点に関連して、ここでご質問、ご意見等がございましたらお出し頂ければと思います。いかがでございましょうか。

原委員、それから吉野委員の順番でお願いします。

○原委員

すみません、質問というか確認なのですが、私は金融先物取引法の改正、衆議院の財務委員会で、おととい可決されるところを傍聴に入りました。当日の朝、採決をするという情報だったので、ほかの方に声をかけることはできなくて、午後1時間40分ぐらいですね、採決の場面まで見させて頂きまして、こちらの部会、それから事務局の方の頑張りで、大きな一報になったのではないかというふうに思っております。大変感謝申し上げたいというふうに思っております。

ただ、そのときに出ていた質疑は結構辛口でありまして、実は、金融庁はもう少し早くに取り上げることができなかったのだろうかというようなご意見と、それからちょっと気になった2点ですが、1つは、やはり賭博性があるということで、この外国為替証拠金取引は非常に賭博性がある商品なのに、それをそのまま認めるというようなことになってよかったのかどうかという、そもそも論の話も出されておりました。これは、投資サービス法の中でも検討して頂きたいというふうに思っております。

それから、もう一点は、認可制ではなくて登録制をとったことについての質問というのも出されておりまして、これは増井局長の方から、全体的なところで平仄を合わせたというご発言があったんですけれども、そのあたりについても質疑がなされておりましたことを、追加ということで報告をさせて頂きたいというふうに思います。大変ありがとうございました。

○神田部会長

貴重なご指摘ありがとうございました。

それでは、吉野委員、どうぞ。

○吉野委員

今、池田参事官からディスクロージャー制度の信頼性確保に向けた対応についてというお話がございましたけれども、4番目に市場関係者への要請ということがございましたので、私どもも既に手がけている部分がございますので、ここでちょっとお時間を借りまして、お話をさせて頂きたいと思っております。

市場に対する信頼性確保というのは大変大きな課題でございますので、私どもとして16日に、改善策につきまして発表いたしております。大きく分けますと、池田参事官の話と重複する部分もございますけれども、2つございまして、1つは会社情報の、いわゆる誠実な開示に向けての経営者の意識を向上して頂きたいというふうな点でございまして、上場規則で、私どもでは上場会社の誠実な業務執行に関する基本理念というものを上場規則にまずうたおうではないかということと併せまして、会社情報の投資者への適宜・適切な締結について、真摯な姿勢で臨む旨の宣誓書を提出して頂こうと、こういうふうなことで考えております。

それから、さらには既に昨年法制化された部分でございますけれども、いわゆる有価証券報告書との記載内容の適切に関する確認書、これは法では任意というふうになっておりますけれども、上場規則上は義務化というふうなことにしたいというふうな方向で、今発表いたしたところでございます。

それから、もう一つは、池田参事官のご説明にございましたけれども、親会社情報の適切な開示というふうな点では、大きく2つポイントがございまして、1つは、非上場会社の親会社がある場合ですが、この会社情報開示の適用を拡大しようというものでございます。

それから、もう一つは、親会社などとの取引に関する開示の制度化ということをうたっておりまして、こういった面で今、池田参事官からお話がございました親会社情報の充実というものを、この2つの側面から充実させていきたいと。

それから、公認会計士の個人の部分でございますが、確かに上場会社でも個人の公認会計士が監査をやっている部分がございますが、これは1人ではなく2人にする制度化も図り、監査内容の充実に向けての対応を図りたいということで、今日は、時間は関係ございませんので、主なポイントだけこういう形で、既に充実策へ向けて発表いたしておるということをちょっとご紹介させて頂きたいと思います。

○神田部会長

ありがとうございました。

それでは、高橋委員、どうぞ。

○高橋委員

今、吉野さんからご説明のあった点につきましては、東証とも相談をして、ジャスダック市場においても、同様の対応をしようということで今準備を進めておりますので、一言だけそのことを申し上げておきます。

○神田部会長

ありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。よろしゅうございますでしょうか。

それでは、ディスクロージャー・ワーキングの皆様方におかれましては、また次々と、ただでさえ忙しいところを大変恐縮なのですけれども、またこの部会でも、引き続き詰めたご審議を頂きたいと思います。

ディスクロージャー制度というのは、当部会が議論している証券市場というか、資本市場の制度の中でも根幹にかかわるものですので、非常に重要な話だと私は感じております。引き続き皆様方のご意見を承れればと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

それでは、先に進ませて頂きたいと思います。今までの点につきましても、なおご意見等がございましたら、また随時事務局の方にお出し頂ければありがたく思います。

それでは、今日ゲストとしてお越し頂いております東京大学の神作さんから、EUにおける投資サービス法制についてお話を頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。

○神作東大教授

東京大学の神作でございます。本日はEUにおける投資サービス法制についてお話をさせて頂く機会を与えて頂き、大変光栄に存じます。どうぞよろしくお願いいたします。

本日の報告では、本年4月30日に公布されましたEUの新投資サービス指令が、投資サービス及び金融商品の範囲を拡大したことについてご紹介し、併せてEU加盟国でありますドイツの現行証券取引法の適用範囲についても適宜触れたいと思います。ドイツ法をも取り上げるのは、次の3つの理由からであります。

第1に、指令が各加盟国において直接適用されるということはなく、EU法はそもそも国内法と協働して初めて効力を有することになるわけですから、ディレクティブだけを紹介するのは不十分であること。

第2に、EU法は、特に資本市場法の領域では急速に整備が進んでいるものの、法の体系性・一体性という観点から見ると不備が多いことが否めないこと。したがいまして、法の体系性・一体性を重視する国内法において、どのように扱われているのかというのを具体的な国を取り上げて見ることが有益と思われます。

第3に、ドイツの現行証券取引法は、既に商品デリバティブを金融商品として定義し、財務分析ないし証券分析についても、利益相反規制を中心に一定の規制を置いております。すなわち、新投資サービス指令はドイツ証券取引法に追随している面がございます。EUにおけるドイツの一定の影響力にもかんがみ、ドイツ法を概観しておくことには一定の意義があるように思われるからであります。

EUは、金融サービス市場の統合及びその前提であります資本移動の自由、業務提供の自由、これを実現するためにレジュメに掲げましたように、1979年の取引所上場許可指令を嚆矢として数多くの指令を制定し、改正を重ねてまいりました。特に、ユーロ導入の前後から、EUは2005年の域内投資サービス市場の完全統合を目指し、立法措置を加速しており、現在その作業は最終段階に入っております。すなわち、2000年3月にリスボンで開催されました欧州理事会において、ヨーロッパ資本市場の統合がヨーロッパの経済改革の核心であること、及び2005年の欧州域内資本市場の統合を目指し、タイトなタイムスケジュールに従って、精力的に作業を進めていくべきことが決定されました。このようなEUの動向の背景として、次の事情を指摘できると思われます。

まず第1は、資本市場の重要性に対する認識の高まりです。EU資本市場の完全統合により、大きな経済的・社会的メリットを得られるであろうという思惑、見通しがございます。現に最近の研究によりますと、EUの域内資本市場の統合に向けた現段階においても、既に株式資本コストは0.5%減少する一方、雇用は0.5%改善し、実質GDPは1.1%上昇したとの試算が公表されております。効率的なEU資本市場の統合に対する期待は極めて大きいと見受けられます。

第2は、これまでの考え方では、投資サービス業の現代的展開にうまく対応できないことが次第に明らかになってきたことであります。投資サービス業の現代的展開の特徴は、端的に言えば、市場参加者及び取引手法の多様化が急速に進展している点に認められます。証券市場が複雑になり、扱われる商品も多様化し、仲介業者自身が市場代替的な流動性機能を提供するようになりつつある現在、取引業者、取次業者と市場との区別がそもそも曖昧になってきております。証券業及び規制市場に係る規制において、金融商品や仲介業者の果たしている機能に即したアプローチを採用する必要性が強調されております。

第3は、EUのレベルでは、EU法の第一の原則である補充性の原則に則り、いわば最低レベルの基準のみを加盟国に課し、各加盟国はそれを遵守した上で、それより高い基準を設けることは差し支えないとされてきました。そうやって法システム、法規制を競争させることが、これまでのEUの有力な規制手法でした。ところが近年、このような手法の限界が、特に金融の分野で強く認識されるようになってきております。と申しますのは、この最低限の基準アプローチのもとでは、結局加盟国間の規制は収斂せず、その結果、業者はせっかくヨーロッパ・パスポートを持っていても、EUの域内で自由に活動を行うことができないということになるわけであります。したがって、むしろ規制をより高いレベルで揃え、画一化する方向に転換していこうといった傾向が看取されます。投資家保護のレベルが収斂すれば、投資家が国境を越えて投資活動を行う可能性が高まり、ひいては域内市場の統合に資するというわけであります。

EUにおける投資サービス分野の立法を貫く規制理念は2つでございまして、第1は投資家保護、第2は取引所、資本市場及び経済の機能保護であると言われております。資本市場の機能保護は、資本市場の立地をめぐる激しい競争の時代を迎え、特に強調されておりますけれども、この第1の投資家保護と第2の資本市場の機能保護は、いわばメダルの表と裏の関係にあり、資本市場の機能が十分に果たされているところでは、一般的には投資家保護もよく実現しているはずであります。最も注意しなければならないことは、EUレベルで行われている投資家保護に関する措置というのは、域内の資本市場の統合を積極的に促進する限りにおいてのみ、法的行為の対象となっているという点であります。要するに、EUレベルでの投資家保護というのは、社会政策として論じられているのではなく、市場政策として論じられているということであります。したがって、従来、加盟国が指令よりも高いレベルの投資家保護水準を導入するということは全く否定されてこなかったわけですけれども、これについてやや変化の兆しがあること、むしろ高いレベルで揃えるべきではないかという議論が起こっていることは前述したとおりでございます。

次に、規制の種類という観点から分類いたしますと、新たな規制は投資家及び業者の選択肢を拡大するという方向で行われることが多く、その際、従来の品質規制に置きかわる規制として、情報に係る規制と金融仲介業者に対する規制、この2つが圧倒的に重要性を増してきております。本日取り上げます本年4月の「新投資サービス指令」は、EU資本市場法の中で、ディスクロージャーに係る規制とともに最も重要な指令と言われておりますけれども、投資サービス業者に対する業者規制を中心とするものであります。

次に、本日お話いたします投資サービス関連の指令、ないしドイツ証券取引法の大きな方向性をまとめてみたいと存じます。EUにおける投資サービス指令及びドイツ証券取引法は、基本的には伝統的な有価証券概念を基礎としつつ、代替性という観念に着目し、さらには資本市場という観念を法律の中に導入して、金融商品の範囲を定めております。しかしながら、有価証券に限らず、有価証券以外の資産を現資産とする各種デリバティブにも、その適用範囲を及ぼしております。「新投資サービス指令」では、商品デリバティブやクレジット・デリバティブなどが新たに金融商品の定義に追加されました。しかし、銀行預金であるとか保険に対しては、投資サービス指令の適用はありません。保険法の分野で、EUでは資本市場と異なり、保険市場の保護といったことはあまり言われません。資本市場との違いは、保険分野における市場のプロセスに対する介入の程度が、銀行証券分野に比較すると著しく大きい点にあると言われております。そのため、中心が市場保護から保険契約者の個別的保護に移っているというわけであります。

また、銀行預金についても、極めて特殊な投資商品であるといった理解がヨーロッパでは強いように思われます。より一般化して申しますと、例えば特定の、商品設計の禁止のような、市場プロセスに介入する法規制と、情報規制に基づく投資家保護の有効性との間には、マイナスの相関関係があると考えられるわけであります。すなわち、適切な法規制が欠けているために生じている市場の失敗を除去する手段としては、情報規制というのは非常に優位性を持っているわけですけれども、反対から言いますと、法規制に基づかない市場の失敗への対応策としては、情報規制は必ずしも有効でないと考えられるわけであります。したがって、情報規制の中には単なる情報の開示のみならず、業者の側の積極的な説明義務、あるいは助言義務ないしは適合性原則、こういった補完的な情報規制ですとか、投資家保護のメカニズムを含めて検討する必要があると考えられるわけであります。投資家に合理的な情報解析能力や合理的な分散投資を行う能力が欠けているといったケースを想定しておく必要があるからであります。

「投資サービス指令」では、当指令の認める、いわゆるヨーロッパ・パスポートが、業者側の支店開設の自由を中心とする経済活動の自由を促進するものとして非常に重視されております。本年4月の改正が必要とされた第一の理由は、ヨーロッパ・パスポートが十分に機能していないという問題意識があったわけであります。ところが、これを投資家の側から見ますと、投資選択の自由につながります。投資家から見ますと、例えば企業が株式を発行していようが、社債を発行していようが、投資家の投資選択の自由という観点からは、いわば同レベルのものでありまして、この自由の適用範囲については、裁定的な機能がどこまで発揮されているかという観点が、投資サービス法の範囲を画するに当たって決定的に重要であると言われております。

「新投資サービス指令」の方向性を大まかに申しますと、投資サービス業及び金融商品の範囲をそれらの多様化に合わせて、いわば金融商品とみなすべき事項に限って拡大する一方、それとのバランスをとる形で過剰規制、不適切な規制とならないよう、相当に詳細な適用除外規定を設けるほか、業者の行為規制につきましては、投資家がプロかアマかにより、きめの細かい規律を設け、プロとアマの区別については詳細な要件、手続規定を設けるというものでございます。以下、「新投資サービス指令」における金融商品の範囲の拡大についてご説明申し上げます。

これにつきましては、事務局が資料2-2といたしまして、該当条文を翻訳してくださっておりますので、こちらも適宜ご参照頂ければと存じます。

「新投資サービス指令」では、商品デリバティブを対象とする定型化された取引及びその媒介行為に対し、同指令を適用するために、商品デリバティブが金融商品に追加されました。最も現物に係る商品市場は本指令の適用外であります。その理由は、第1に、現物商品には十分な代替性があるとは言えないこと。第2に、現物の場合には問題となっている商品ごとに、当該商品に係る市場のミクロ構造が極めて多様であるからであります。ここからも明らかなように、商品デリバティブにおける商品においては、次の2点がポイントとなります。

まず第1は代替性、すなわち資産の一部を残部から区別することができないという、完全な交換可能性を有しているかどうか。第2に、「物」であるかどうか。この2点がポイントとなるわけであります。まず前者、すなわち代替性について一言申し上げますと、代替性の程度は当該資産に関する債務の条件が何かということに依存します。例えば、家畜が代替物になることもあれば、そうでないこともあり得る。それは取引の条件、いわば契約上のアレンジメントにかかっているわけであります。

第2の「物」について一言申し上げますと、議論となり得ますのは、無体物が含まれ得るかという論点であります。例えば、電気などのエネルギーは無体物であるにもかかわらず、商品に含まれることについては、ヨーロッパではコンセンサスが形成されていると言われております。すなわち、ここで言う「物」とは、必ずしも有体物に限られません。両者に共通する論点といたしまして取引可能性を軸として、代替可能な物と広義に定義するか、それとも引渡可能性という概念を中心に代替性のある物という、より狭い定義をするか、こういう争点が残っておりますけれども、ヨーロッパにおきましては現時点では後者、すなわち引渡可能性を要件とする考え方が有力なようであります。もっとも、ここに言う引渡しは、極めて緩やかにとらえられており、商品の物理的な移転はもちろん、適切な需要にこたえることができる限りにおいて、引渡可能性を認め得ると理解されております。例えば、BLのような有価証券による引渡しはもちろん、エネルギー供給ネットワークのオペレーターに対し、取引通知をすることによって契約を決済するといったアレンジメントも、引渡可能性が認められ得ると言われております。

また、商品デリバティブの元となっております商品には、根源的価値がなければならないのか、それとも根源的価値がなくてもいいのかといった、といった論点についても、現在ヨーロッパでは議論が闘わされております。いずれにいたしましても、以上のご説明から明らかなように、商品の範囲、種類というのは、限定列挙し得るような性質のものではなく、相当に広く解釈されることになると予想されます。したがって反対に、商品に含まれないのはどういうものかということを明らかにした方が生産的ではないかと思われますけれども、商品に含まれないのはサービスや不動産、通貨など、そもそも物に該当しないもの、また完全なる無体物、あるいはパイプライン地上権のような権利しか含まれないような場合であります。もっとも商品に含まれない場合でも、付表1のC節8号から10号までの規定によって、金融商品とされる場合があることには注意を要します。

商品デリバティブを本指令における金融商品の概念規定から外していた旧指令のもとでは、次のような問題点があると指摘されておりました。まず第1に、両者が商品デリバティブを対象にする投資サービス業務を、国境を越えて行う場合に、ヨーロッパ・パスポートを利用することができないといった業務活動の自由に対する制約になっているという点であります。第2に、投資サービス指令の定める権利・義務に係る規律の適用を特定の業者が免れる結果になっていること。第3に、商品デリバティブを扱う取引所及びその他の取引システムは、遠隔地から参加する構成員に係る規律ですとか、画像取引の認可等に係る規律について、投資サービス指令の適用を求めることができないといった制約が、むしろこれらの業務を健全に発展させるための妨げになっているという面も指摘されていたところです。

域内市場でなされる商品デリバティブ取引については、EUでは何ら法規制がなされておらず、他方で原資産である商品やエネルギーについては自由化が急速に進んでいる。このアンバランスが懸念されています。そこで、市場の濫用を防止し、秩序あるEU域内市場を確保するために、商品デリバティブを規制対象に含めることとされたというのが理由書の説明でございます。

商品デリバティブの領域では、主としてプロの市場参加者が大口の取引を行っております。それにもかかわらず、商品デリバティブに特化した業者が自己資本比率規制に服することなく活動することが問題視されているのは、これらの業者が、反対当事者となって倒産した場合のリスクを排除できない点が重視されているからであります。主たる業務が商品ないし商品デリバティブ取引である企業に対し、どのような監督規制を置くべきかについては、一定の条件のもとでは、本指令に言う投資サービス業者には当たらないものとするなど、相当に広範な適用除外規定が設けられております。

なお、その場合に企業の主たる業務が商品デリバティブかどうかという判断は、当該企業に着目するのではなく、企業グループないし連結ベースで行われることになります。商品デリバティブを本指令の目的とするために、どのように定義するかについては慎重な吟味がなされました。なぜなら冒頭にお話しいたしましたように、新投資サービス指令の適用範囲を、伝統的な金融商品と同程度に監督法上の問題を提起している商品デリバティブに限定すれば、必要にして十分であるからであります。

そういたしますと、金融商品としての特徴を示す商品デリバティブとは何かということが問題となるわけであります。第1に、規制市場またはMTFで取引されるときは、例え現物の引渡しがなされ得る場合であっても、商品デリバティブ取引は金融商品として定義されております。どこで取引されるか、あるいはどういうルールで取引されるかといったアレンジメントが重視されているわけであります。

第2に、認可された清算機関を通じて清算決済されるかどうか、先ほどの決済リスクにかかわる問題であります。第3に、差金決済がなされるかどうか。第4に、個別取引とは異なり、規則的に公表される相場を参照して取引条件、あるいは取引するかどうかが決定されているかどうか。こういった事情が金融商品としての表章を示す要因であると考えられております。

加盟国は、規制市場が明確かつ透明な規則に従って金融商品を取引の対象にすることを認可制のもとに置かなければならず、当該規則において取引することができる金融商品は公正、正規かつ効率的に取引し得るものでなければなりません。では、デリバティブについて、このような金融商品の品質保持に対する要請を、どのような基準によって確保するかということが立法過程では大きな問題となりました。この点は、新指令の40条の2項で解決を見ておりますけれども、デリバティブ取引の形成が正規の価格づけ及び実効的な決済を可能とする規則に従ってなされるべきものとするといった規定が置かれております。

以上述べました商品デリバティブの対象は、物に限定されているために、商品デリバティブ取引に機能的には類似しており、それと同等の規律に服すべきデリバティブ取引が残されてしまうことになります。この問題に対する対策がクレジット・デリバティブや天候デリバティブ等を金融商品として定義した付表1C節第8号から第10号までの規定であります。すなわち、単なる権利の移転や排出権割当等の移転が問題となっていても、差金決済がなされる以上、規制市場またはMTFで取引されるかどうか、認可された清算機関を通じて清算及び決済がなされるかどうか、追加証拠金の支払いが求められるかどうか等の諸般の事情にかんがみ、金融商品としての特徴を示す場合には、商品デリバティブと同等の規律に服すべきであると考えられたところであります。

続きまして、ドイツの現行証券取引法を見てまいりたいと思いますけれども、現行のドイツ証券取引法は既にデリバティブを広範に射程におさめ、金利通貨デリバティブなどの、いわゆる金融デリバティブに加え、商品デリバティブもその対象にしております。我が国との対比という観点から興味深い特徴を中心に、以下簡単に概観いたします。

なお、ドイツ証券取引法は有価証券、短期金融市場商品、デリバティブ及びデリバティブの一部として金融期限取引、この4種類を定義し、この4つの概念を軸に証券取引法の適用範囲を画しております。どの類型に属する取引かによって、証券取引法上の各種ルールの適用関係が変わってまいります。例えば、内部者取引の禁止は有価証券及び有価証券デリバティブだけを対象とするのに対し、相場操縦等の禁止は有価証券、短期金融市場商品、デリバティブ全般について基本的に適用されます。

これら4つを他人の計算で売買し、あるいは媒介するということは、証券業として認可を要することになるわけですけれども、金融期限取引については、さらに特殊な規制がなされております。すなわち業者に特別の情報提供義務を課した上で、その違反に対する効果も証券取引法の中で定めています。金融期限取引という概念は、2002年の第4次資本市場振興法によって新設されたものですが、やや特殊なドイツの議論、制度を前提としておりますので、大変興味深いところはございますけれども、本日のご報告では省略させて頂きます。

適時開示等の義務はドイツ国内の取引所に有価証券を上場している発行者に対してのみ課される等、規制の内容に応じて適用範囲が異なり、いわば柔軟な規制の構造がとられております。

ドイツ証取法は、2条1項本文において各号に掲げるものについて、証券化されているかどうかを問わず有価証券とすると定め、1号では、株式及び債務証書等、2号では市場で取引し得る株式または債務証券に類似するその他の有価証券を掲げております。ドイツにおきましてはこの債務証書という概念は非常に広く、債務証券については民法典により一般的な規律がなされておりますので、いわば個人でもだれでも法人格ないし人格を有していれば、債務証券を発行することが可能です。このように、債務証券という概念は大変広いもので、社債に限らず、ほぼすべての債務を表章する有価証券はカバーされます。むしろ問題は、同条同項1号では、持分を表章するものの幾つかが落ちてしまう可能性がある点ですけれども、それを2号で拾っています。「市場で取引し得る株式に類似するその他の有価証券」という文言です。そこでこれがどう解されているかということですけれども、ドイツにおきましては、組織形態・法形態のいかんを問わず、社員権を表章したものすべてを指すと解されており、したがって、市場で取引し得る以上は、有限会社、合資会社の有限責任社員たる地位、こういったものを含むと解されております。他方、無限責任社員たる地位はどうも定型的に代替性を欠くと解されており、有価証券の定義からは外されているようであります。

なお、投資会社及び外国投資会社の持分は、有価証券であることが明定されております。すなわち、集団的投資スキームに対する持分権は国内外を問わず、またそのファンドが金融商品に投資しているかどうかにはかかわりなく、一律に金融商品となるわけであります。例えば不動産ですとか、貸付債権に投資するファンドであっても、金融商品になるわけであります。不動産や貸付債権に投資するファンド、こういった集団的投資スキームを含めて、ドイツでは投資会社法を全面改正しました昨年12月の「投資法」によって、仕組み規制及び運用規制等がなされております。

次に、証券取引法上のデリバティブ概念についてお話いたしますけれども、これについてはレジュメで条文を仮訳しております。4ページでございます。ドイツ証券取引法のデリバティブの定義は非常に一般的な定義でして、基準となる原資産の価格変動に応じ、当該デリバティブの価格が変動するものと一般的な定義づけをすることにより、包括的に定義し、技術の進歩に適用し得るようにしております。我が国の証券取引法と異なり、金利やその他の指標、商品、外国通貨等を現資産とするデリバティブも証券取引法上のデリバティブとして定義され、それらを他人の計算で売買し、あるいは媒介することと等は証券業にあたります。特に商品または貴金属を原資産とするデリバティブは、ドイツ独自の判断で1997年の改正によってデリバティブに含められたものであります。

ただ、その背景事情をご説明しておく必要があると思うのですけれども、これによって商品デリバティブの提供者に対しても、証取法上の行為規制が課せられ、不当行為が排除されるということになるわけですが、実は、ドイツでは穀物等の商品を対象とする取引所期限取引が長らく一般的に禁止されていて、第2次資本市場振興法によって久しぶりに解禁されたという沿革がございます。

そして、こういった1997年の証取法改正は、当時ハノーバーに設置されようとしておりましたドイツの商品先物取引所の設置を、いわば法的に後押しするという事情があったということは、その背景としてご説明しておく必要があろうかと存じます。すなわち、商品先物取引というのは、ドイツでは昔は行われていたわけですけれども、長らく中断していたという事情があるわけです。実は先ほど省略すると申し上げました取引所期限取引という概念、及びそれに対する規律と非常に密接な関連があります。

「新投資サービス指令」により、新たに投資助言業務及びMTFの運営が投資サービス業のコア業務として追加され、財務分析業務が付随業務として追加されました。本日は、MTFについては省略させて頂き、投資助言業務と、それから財務分析業務の2点について簡単に論点を指摘させて頂きたいと存じます。

投資助言業務は、旧指令では非中核業務とされておりましたが、今回の改正により独立のコア業務とされました。投資助言の定義は次のようなものであります。「顧客の要請に基づき、または投資サービス業者のイニシアティブに基づき、顧客に対し金融商品に係る取引に関する属人的な助言を行うこと」。もっぱら一般投資家に対し、各投資家の諸般の事情、状況に適合した合目的的な投資に関する投資助言を行うことにより、顧客の獲得を目指す業務であると言われております。提供されるサービスが属人的性格を有する点に着目すれば、投資助言業務は、既にコア業務とされておりますポートフォリオ管理業務に接近してくるわけであります。

なお、制定過程では独立の投資助言、「独立の」という文言が入っていたのですが、最終的には「独立の」という文言は削除されました。「独立の」というのは何を意味しているかと申しますと、当該サービスの対価を顧客が直接支払わなければならない。こういう制約を課すものですけれども、なぜ「独立の」という文言が最終的に削除されたかと申しますと、結局のところ、EUでもこのような業者の数は多くはなく、またこういう定義をしてしまうと、投資サービス業者等から報酬を得て、投資助言を行う業者の法的地位が極めて不明確になってしまう。そこで、「独立の」という文言を削除したわけであります。本改正の背景には、投資家がますます投資助言に頼るようになってきているという状況があります。投資助言業務が証券の本来業務とされたのは、当該業務により、投資家に生ずるリスクを的確、かつ柔軟に考慮するための法的枠組みを創設しやすくするためであると考えられております。すなわち第1に、開業に当たっては認可を要し、業務継続中には行為規制に服することとなる。そして、不適切な助言に基づく投資家のリスクの増大、あるいは職業倫理に反するような行動、これを抑制するために監督規定が適用されるということになるわけであります。

第2に、このような認可及び監督を受けた投資助言業者は、逆にヨーロッパ・パスポートの恩恵を受け、一国で認可を得れば、どの国でも業務活動を展開できるということになるわけであります。投資助言業者は英国では4,000社、イタリアでは7,000社、ドイツではイタリア以上の数の投資助言業者が既に存在していると言われております。投資助言業務を他の証券業務と合わせて営むことはもちろん認められますけれども、その際、利益相反の厳格な管理及びそれについての開示並びに投資家の利益が優先されることが確実になるような手当て、これらが重要なポイントとなるわけで、現在ヨーロッパで盛んに議論されているところです。さらに現在、ヨーロッパでホットな問題となっておりますのは、投資助言が「属人的推奨」とという文言を入れたために、「一般的推奨」とどこが違うのか、及びいわゆるマーケティング・コミュニケーションとどの部分で重なっており、どこから区別されるのか、こういった論点が議論されているところでございます。

次に、財務分析業務について一言申し上げます。

顧客または公衆に対する財務分析や投資研究等の形で、金融取引に対する一般的な推奨を行うことについては、これら情報の受け手の利益が害されないよう、厳格な職業上及び倫理上の基準を適用する必要があると考えられました。そこで、財務分析業務が投資サービス付随業務として掲げられたわけであります。付表1第B節第5号でございます。

他方、財務分析や研究を非中核業務のリストに掲げることによって、専門性及び独立性の高い研究が規制の対象とされることがないよう、監督当局は他の投資業務と研究ないし分析等、利益相反の誘因をもたらし得るような形で結びつけている企業だけをコントロールの対象とするよう注意すべきであるといった勧告がなされております。

なお、ドイツでは、現行の証券取引法が、既に財務分析ないし証券分析業務を証券付随業務という形では規定しておりませんけれども、注意義務や利益相反規制等の一定の行為規制だけを課すという形で規制を行っております。証券分析についての定義規定は、ドイツ証取法上はございません。しかし、解釈上、次のように解されております。すなわち証券分析に対する投資家の特別の信頼を保護するという規制目的から、投資家の観点から証券分析の意義が定義づけられるべきであると言われ、有価証券の発行に係る当該企業の発展・展開ですとか状況、あるいは経済の一般環境等も含めた包括的に深められた検討であると、一般に解釈されております。

以上、本年4月に制定されましたEUの新投資サービス指令の適用範囲を中心に、ドイツ法にも適宜言及しながらご報告をしてまいりました。EU及びドイツにおいては、有価証券、短期金融市場及び短期金融指定商品及びデリバティブという3つの概念を機軸としながら、デリバティブについては金融商品以外の資産を原資産とする場合であっても、金融商品としての表章を示す場合には金融商品として扱うこととし、その特徴を提示して、単なる商品や権利に係る取引と区別する基準を明示しようとしています。しかし、注意すべきは、定義自体としては一般的な開かれた定義規定を設け、金融市場、金融技術と急速な変化に対応しようとしているわけであります。

また、証券仲介業者と市場の境界自体が曖昧になりつつあるという現状を踏まえ、両者に対する規制を根本的に整理し直す一方、投資判断に重大な影響を及ぼし得る、投資助言ですとか財務分析、証券分析を投資サービス業務に加えるものとした点などは、私には興味深く思われました。これらのヨーロッパの動向が本部会における議論にとって、何かしらの参考になりましたら、望外の幸せと存じます。

○神田部会長

詳細なご報告を頂きまして、どうもありがとうございました。

EUでは1993年に、パスポート制度を導入したのですけれども、今回、11年ぶりに大改正を行ったことになります。ただ意外と日本では知られていないのではないかということもありまして、神作先生に詳細に改正EU指令のお話を頂きました。ここで、今頂きましたお話につきまして、皆様方からご質問、ご意見等を自由にお出し頂ければと思います。今のEUの動きを踏まえて日本も、例えばこういうふうに考え方を整理したらどうかというご意見でも、もちろん結構でございます。それから、純粋なご質問でももちろん結構でございます。どなたからでも。

嘉治委員。

○嘉治委員

ありがとうございました。

2ページの(4)の見出しの後に、「最低限の調和」アプローチという言葉がございますが、これは要するにサブシティアリティ原理のことでしょうか。違うとしたらどう違うかをお聞きしたいと思います。

それから、新・旧の指令についてご説明頂いたのですが、新しい指令が出た理由は、カバーしていない金融商品、カバーしていない取引主体があったので、新しい指令を出してこそ、いわゆるヨーロッパ・パスポートが意味を持つということが分かったからと、そういう理解で正しいのでしょうか。またサブシティアリティの原理に従えば、現場で決めることができることは現場で決め、決めることのできないものだけより上のレベルで決めるということになりますけれども、少なくともこの投資サービス指令という点においては、むしろそれとは逆行する方向に進んでいて、いわゆる介入を増やす方向に動いているのかというのが、関連した質問です。

そして、3番目に、ディレクティブが出ても、国レベルでの法整備がないと動き始めないということを注意すべきだということを、一番最初におっしゃったと思いますが、ヨーロッパレベルの投資サービス市場法がちょっとドイツの法整備と似ている面もあるとおっしゃったかと思います。ヨーロッパレベルの指令がドイツでの動きを後追いしているということでしょうか。もしそうだとすると、このディレクティブを各加盟国レベルで適用できるような法整備をしていく段階において、ドイツがほかの国よりも有利だということはあるのでしょうか。その3点を、お伺いしたいと思います。

○神田部会長

ありがとうございました。

それでは、お答えをよろしくお願いします。

○神作東大教授

大きく3点のご質問を頂きましたけれども、まず第1点は、「最低限の調和」アプローチとは一体何か。「補充性の原則」とどういう関係に立つのか、同じか違うか、そのようなご質問お話であったかと存じますけれども、EU法の一般原則と言われております「補充性の原則」は、ここで申しております「最低限の調和」アプローチとはまったく関連がないとは言えないかもしれませんが、違うものと理解しております。「最低限の調和」アプローチについて、一つだけ例を挙げながらご説明させて頂きますと、例えば投資家保護に関して、EU資本市場法レベルで一定の投資家保護の水準を定める場合、ご報告の中でも申し上げましたように、EU法というのは投資家保護を直接的な法的課題としているわけではございませんで、それによってヨーロッパ域内の資本市場の統合を促進するという市場政策上の目的のために行われるわけです。ですから、ある国が、いや、うちの国ではそんな低いレベルの投資家保護では不十分だと、もっと高いレベルの投資家保護の規定を設けると判断することは全く妨げられないわけであります。これは第2のご質問と絡んでくるのですが、そうするとどういうことになるかと言うと、せっかくヨーロッパ・パスポートをもらっても、国ごとにルールが違うということになりますので、結局のところ各国の法規制がどうなっているのかということを詳細に調査しないと、パスポートは持っていても、実際の業務を展開できないということになるわけであります。これが、なぜ旧指令から新指令に改正されたのかというご質問に対するお答えの1つであります。ただ、これはもっぱら業者側からの理由でございまして、より内在的な理由もございます。それは何よりも証券仲介業者の働き、機能が随分ヨーロッパでは変わってきている、これはヨーロッパの金融機関が、いわゆるユニバーサル・バンキングシステムをとっていることと、ひょっとしたら無関係ではないのかもしれませんけれども、いずれにしてもメガバンクと言われる巨大な証券仲介業者が市場代替的な機能、流動性機能をかなり果たすようになってきたという事情があります。そうすると、業者と市場の果たしている機能に共通している面があるのではないか。これまでの旧指令は、業者に対する規律と市場に対する規律とを峻別し、きれいに分けていたわけですけれども、それではうまくいかないのではないか、こういった内在的な理由もございます。

それから、3番目の理由は、嘉治委員ご自身がご指摘されましたように、確かに機能的に見れば金融商品あるいは投資商品と同等の機能を果たしているし、投資家の側もそう見ている。それにもかかわらず、投資サービス指令の適用がない。こういったものを拾い上げていくという面は確かにございまして、商品デリバティブやクレジット・デリバティブ等を含めたのは、まさにそのためであります。今回、ただ後追い的に拾っただけではなくて、一般的な規定を設けて対処したので、今後はこの規定の解釈によって、かなりの部分が解決されるのではないかと予想しております。

それから、この点にも関連しまして、政策的な介入の度合いが強まっているのではないかというご指摘がございましたが、まさにヨーロッパは単一の資本市場への統合を目指しており、その実現こそがEUの経済改革の核心であるという考え方に基づいておりますので、そういう意味では、政策的な観点が非常に強いというのは事実であろうかと思います。私が法の一体性・体系性の観点から、デレクティブだけ見ていたのではややバランスを欠くと申し上げましたのは、一方でそのような政策的性質がデレクティブにはきわめて強いという特徴に配慮したためであることも確かでございます。

ただ、投資家保護という観点からいたしますと、むしろ投資家保護のレベルを最低限で定めるものではなく、より高いところに揃えようという方向になっておりますので、単に市場の統合といった政策だけではなく、いわば市場の機能の確保と表と裏の関係として、投資家保護の観点も必然的に出てこざるを得ないということになるのではないかと理解しております。

最後に、ドイツ資本市場法との関連で、これは私のご報告がミスリーディングであったと反省しているのですが、ドイツの資本市場法は、一言で申しますと、EUレベルより遅れているものが多く、デレクティブを国内法化するためにデレクティブに従って法改正をし、または新法をつくるという場合が通常であります。ただ、たまたま本日ご報告した事項については、ドイツが、いわばEUの新指令に先駆けて既に国内法化していた、つまり最低限の指令より上のレベルの規定を既にドイツ法は設けていたということです。ただ、1点だけちょっと補足させて頂きたいのですが、実は、ドイツには古くから取引所法という法律がございまして、これは日本の取引所法の規範となったものですが、取引所法の中で、有価証券、商品、どのような商品が扱われているかを問わず、取引所という施設自体を規律するという法を持っておりました。

逆に、非常に古くからある取引所法こそがドイツ資本市場法の中核となり得るわけですけれども、「取引所」概念が非常にドイツ特殊的なものであって、経済的な観点あるいは機能的な観点に着目するものではなくて、これはまた法律家にしか分からないと言われてしまうと思いますけれども、「公的な営造物」という特殊な概念で取引所を構成しておりました。したがって、取引所に関する規律については、ドイツはもう100年近く前から独特の規律を持っていたわけですが、おととし抜本的な改正がなされるに至っております。

第4次資本市場振興法で取引所法から、いわゆる先物取引、ドイツでは期限取引と申しますけれども、期限取引に係る規定をすべて削除いたしまして、証券取引法の中で一体的に記述することにしました。EUのデレクティブは、例えば目論見書あるいは投資ファンド、あるいは内部者取引の禁止等々、分野ごとに、いわばアドホックと申しますか、個別的に出てきておりますので、カオスの中から今現在体系が生れようとしている。各種のデレクティブを統合したり、あるいは再編したりしている点においては、むしろ体系の生成過程であるという面で非常に面白いわけですけれども、ドイツ法は逆に、割りかしきちんとした体系があったところに、デレクティブの影響でその体系がややゆがんできているというか、破壊されてきている面がある。両方を見ると面白いのではないかというふうな本日のご報告の趣旨でございました。

○神田部会長

よろしいでしょうか。

どうぞ、原委員。

○原委員

大変興味深いお話をありがとうございました。

神作先生のお話を私は久しぶりに聞きまして、大改正に合わせて大変興味深く思いました。では、簡単にですが、4点なんですけれども、1つは、ドイツの場合、投資家というふうに呼ばれる層はどういう方たちを指しているのかという、例えば日本はほとんど6割方預金で今持っている、あと保険と、こういった投資機関では、本人はわずかになるわけですけれども、ドイツにおける投資家と呼ばれている人たちというのの個人と、それからそうではない機関投資家と呼ばれる方があると思いますけれども、前提として、そのお話が1つです。

それから、3ページの説明のときに、私の聞き違いでなかったらいいんですが、認可制をとったというふうなお話になったのは、先ほどの金先法では国会の答弁の中でも、登録制か認可制かというような話が出ていたわけですが、これはやはりどういう考え方のもとで認可制をとるということになったのかということが2点目です。

それから、3点目は同じところで、保険を除外するということで、保険というものはそれぞれの契約者保護というところに重心を置くということで、外しているということなんですが、保険についてはかなり多くの種別、今非常に多様化しているというふうに思っておりまして、例えば変額個人年金保険のようなタイプもありますし、保険全般ということではなくて、やはり内容的な精査が行われているのかどうかということが3点目です。

それから、このEUのデレクティブと、ドイツの個別法とのかかわる点は、神作先生のお話でよく分かったんですが、日本ではイギリスの金融サービス市場法が非常によく紹介をされているということになるわけですけれども、このEUの指令、デレクティブと、それからイギリスの金融サービス市場法とのかかわりというのは、EUの中ではどのように考えられているのかということをちょっとお聞きしたい。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

それでは、お願いします。

○神作東大教授

まず、第1点のドイツにおける投資家層についてのご質問ですけれども、私にはお答えする能力がないのですが、ただ、ドイツの状況は我が国と非常によく似ておりまして、1990年代の初めあたりから、ドイツも銀行中心の間接金融に非常にウエートがかかったものですけれども、やはり少し金融市場の構造を変えていく必要がある、直接金融をもう少し広げていかなければいけない、このような観点から、例えば一般の投資家に株主になってもらうといった政策が国を挙げてとられておりますので、随分最近では個人の投資家、しかも株式等にも投資するような投資家が増えてきているのは認識しております。けれども、正確な実態については、私にはお答えする能力がございません。

それから、第2点でございますけれども、なぜ登録制ではなくて認可制にされているかということでございますが、ヨーロッパ、またドイツにおいてもそうですけれども、投資サービス業者等が開業するに当たりましては、開業するに当たって適切な要件を備えているか、すなわち人的要素、物的要素、あるいは開業に当たって保持しておくべき最低資本金の要件を満たしているか等々、さまざまな要件についてチェックする必要がございますので、単なる登録制ではなくて、やはりきちんと監督官庁によるコントロールがなされることが前提とされております。

3番目の、なぜ保険が投資サービス法制から外されているのかということでございますけれども、これはご報告の中でも申し上げましたように、保険契約については個別性が高く、市場保護規制よりも契約者保護規制に重点を置かざるを得ない。逆にいいますと、保険市場というものがあまり強く意識されていないということではないかと存じます。

それから、第4点についてですけれども、ご質問の趣旨をもう一度おっしゃって頂けますでしょうか。

○原委員

EUのこの指令を受けて、ドイツのこれまでの法体系との整合性というのはどういうふうなところにあるかという嘉治委員からのご質問にご回答があって、ドイツとしては、全体的にはかっちりしていたけれども、ちょっと遅れ気味で、今それが非常に揺さぶられている状況にあると。大変興味深いお話だったわけですけれども、一方でイギリスは、1985年から金融サービス法を制定し、それから2000年にも改定をしているというところで、日本にもイギリスの状況については、よく紹介されているということになりますね。そうすると、ドイツとEUの指令とのかかわりは、そういう状況に整理されるとして、イギリスの状況とこのEUの指令とは、どういうふうに整理されるような構図になるのでしょうかという質問です。

○神作東大教授

どうもありがとうございます。

イギリスについては、実はあまり勉強が進んでおりませんで、十分なお答えはできないのですけれども、ドイツとの対比において1点だけ、ご質問とはずれてしまっているのですが、コメントさせて頂ければと思います。

ドイツにおきましては、EUの各種デレクティブの影響もあって、資本市場法と言われている分野において、多くの立法あるいは改正がなされております。そこで1点だけ、ご指摘させて頂きたい点というのは、ドイツでは公法と私法という2つに法律は二種類に分類分離されるという考え方がございます。できるんだと。この公法・私法の二分割論というのは、日本にも多大な影響を与えていると思いますけれども、しかし、ドイツの最近の議論は、この資本市場法というのは公法・私法にきれいに分けられない分野ではないか。これは非常に現代的な分野で、環境法とか労働法とかとともに、単純に公法・私法の2つには分けられない。そこで、ドイツで資本市場法という分野においては、一定の規制目的のために、私法的な規律、それから刑事法的な規律および、あるいは行政法的な規律、これらを総動員して、エンフォースメントを高めていく必要があるという問題意識が強いように思われます。このように資本市場法という概念が、公法・私法を打ち破るとかまでいくのかどうか分かりませんけれども、少なくとも理論的に、それに対する大きな波紋を投げかけていることは確かでございます。他方、イギリス法というのは、従来より私法と公法との区分が明確になされてこなかった国でございますので、恐らく1985年の金融サービス法の中にも、公法的な規制と私法的な規制が渾然としており、特に、それが問題とはならなかった。逆に言うと、20年も前からこういう法律を用意することができた一つの理由だったのではないかというふうにも思いますけれども、ちょっとご質問に直接お答えすることができず、申し訳ございません。

○神田部会長

どうもありがとうございました。ちょっと時間も押しておりますが、西村委員、どうぞ。

○西村委員

1点だけお伺いしたいのですが、先ほど投資家保護原則のところで、これは基本的に社会政策である、市場政策であるというふうなお話がございました。これは非常に重要な論点なので、例えば社会政策、ちょっと私はあまり法律のことをよく知らないものですから、社会政策としての投資家保護原則と投資家保護の例と、市場政策としての例というのは、どこがどういうふうに違ってくるのかというのをお聞きしたいということがあります。

それと関連するのですが、配布資料にはなかったのですが、EUではプロとアマに明確に区別して、それにおいて、さらに厳密なかなりのルールが加わる。この点についても社会政策というご説明があったのですけれども、これは多分、社会政策、市場政策と関係すると思うのですが、それについて具体的な例でもよろしいのですけれども、教えて頂ければと思います。

○神田部会長

ありがとうございます。

では、お願いします。

○神作東大教授

ご報告の中で社会政策・市場政策としての投資家保護と弱者保護と申しますかそれ自体としての投資家保護の2つに分けてしまったのですけれども、実際には資本市場法の分野で言うと、社会政策、市場政策としての投資家保護と、それ自体としての投資家保護というのは、きわめて接近してくるのではないかと考えております。その理由は、先ほど来申し上げていますように、結局のところ資本市場の保護というのは、投資家保護とほぼ一体のものであると考えられるためです。ただ、EU資本市場法の直接の目的が投資家でないと申しますのは、むしろEUの資本市場に関するデレクティブの権限が、あくまでも資本市場の統合に関するものに限定されていますので、消費者保護にまではいわば越権できないということでございます。こういった理由もあって、やや社会政策としての投資家保護と、それ自体としての投資家保護ということが区別されますけれども、日本においては、そういう議論はする必要はないのではないかと私は考えており、他方ご報告の中でも申し上げましたように、情報規制、すなわちディスクロージャーだけではどうしても限界がある部分があり、そういう部分については、業者側の説明義務あるいは助言義務、適合性原則、こういった広い意味での補完的な情報規制を含めて考えていかなければいけないし、ヨーロッパも、基本的にはそういう方向であると認識しております。

それから、第2点のプロとアマの区別についてですけれども、プロとアマの区別については、付表の2で、非常に詳細な規定が置かれております。そして、プロの中でも、当然プロとされる類型と、それからいわば申し出によってプロとされるというような類型、さらに当然プロにされても、アマとして扱ってくれと申し出することのできる類型があり、それらに関する手続的な規定も置かれています。付表の2でございますけれども、まず第1として、プロの顧客とみなされる顧客のカテゴリーとして、これまた4つの大きな類型に分けまして、第1類型が金融機関、第2類型が大規模な企業、それから第3類型が国家関連あるいはEUの例えば中央銀行ですとか国際機関、それから第4類型が主要な業務が金融商品への投資であるその他の機関と、この4つの類型に分けて、小分類を設けております。

そして、第2番目のさらなる大きな類型として、今度申請によってプロとして扱うことができる顧客というのを設けまして、ここでは個人を含み、顧客は、指令が与えている一定の保護水準を放棄するということが認められることとなっております。ただ、この水準を放棄するためには、やはり合理的な判断に基づく必要がございますので、申し出によりプロ顧客となろうとしている者を保護するためのさまざまな手続的な規律が置かれており、それから場合によっては、放棄をまたもとに戻すというようなことについても一定の手当てがなされております。これは結局、投資家保護についても、一律な投資家保護、抽象的・観念的な投資家保護ではなくて、投資家保護の具体的・実質的な理由、これに即して考えていく必要があるという観点から議論がなされた結果ではないかと思います。私は、投資家保護については、社会政策か投資家保護かという議論よりも、むしろ投資家保護の実質的な根拠が何かに着目して、それに応じて規律を分化していくことが合理的な方向であり、EUの指令はまさにそのような方向に立っているものではないかと理解しております。

○西村委員

付表の何とかというのが入ってないな。もし頂ければ。

○神田部会長

そうですね。主として今の論点はディスクロージャーWGの方で、まず検討頂くことなのかもしれませんけれども、次回の部会にも指令そのものと付表を用意したいと思います。

いろいろ議論は尽きないのですけれども、時間が押しておりますので、この部会では各論を議論していくときに、EUの指令、それからドイツまたはイギリス法等も含めて、また個々にご参考にさせて頂くということで、先に進ませて頂きたいと思います。

神作さん、どうもありがとうございました。

それでは、黒沼委員から、米国における投資サービス法制ということでお話をして頂くことになっております。どうぞよろしくお願いします。

○黒沼委員

それでは、米国における投資サービス法制についてご報告申し上げます。

皆様御存じのように、アメリカには投資サービス法はございません。しかし、連邦証券規制がその役割の一端を担っていることはよく知られているところであります。1933年証券法、1934年証券取引所法の適用範囲を画する「証券(セキュリティーズ)」の範囲は極めて広いものであります。銀行・保険の分野を除きますと、アメリカにおいて、投資商品は証券と先物に分類でき、それらは連邦証券規制または連邦商品先物規制のいずれか、または双方の規制に服することになると思われます。

そこで、本日の報告では、証券規制と商品先物取引の規制を中心に、それらがどの範囲をカバーしているのか、業者規制がどうなっているかということについての概略を報告したいと思います。

まず、証券の定義ですが、これは証券法と証券取引所法にございますけれども、どちらもほとんど変わりません。証券法では2条(a)(1)項で列挙されております。これについては事務局の方で資料を用意して頂きました。この資料3.2というのも、あわせてご覧頂ければと思います。ここに列挙されているものが証券ということになるのですが、適用除外の規定があります。主なものを掲げておきましたけれども、政府証券、地方債証券、銀行証券。銀行・保険会社が管理する一定の共同信託基金・分離勘定の持分。コマーシャル・ペーパー、もっぱら宗教、教育、博愛、友愛、慈善または感化を目的とし、金銭的利益を目的とせず、かつその収益のいかなる部分もいずれかの者・個人の利益とならないように組織・運営されている者によって発行される証券。州または連邦の機関によって監督されている貯蓄貸付組合等の発行する証券。州または連邦の機関による監督に服する保険契約・年金契約、ただし投資会社が発行するものについては、投資会社法が適用されるということになっています。

この最後の点に関して判例は、一定の変額保険・変額年金を証券と解釈しております。そこで、SECはこれらについてセーフ・ハーバー・ルールを制定し、どういったものが、変額保険・変額年金であるにもかかわらず、証券にならないのかという点についてのルールを制定しています。証券の定義については、制定法に列挙された証券についての解釈ということと、列挙された項目の中に投資契約というのがございますので、投資契約の解釈という2つの点から、判例上、証券の定義がかなり広く解されてきているということであります。

この部会での議論に関係することのみ、ここでピックアップしてご紹介申し上げますと、株式については、基本的に証券になるのですが、伝統的株式の特徴である配当受領権、流通性、価値の上昇可能性を欠いていることを理由に、当該権利はストックという名称にかかわらず証券に当たらないとした判例もあります。

これに関連して、商品ファンド(コモディティ・プールズ)の持分については、商品ファンドは株式会社やパートナーシップの形式で運営されることが多いようでありますが、その持分は株式、ないしはパートナーシップ場合のリミテッド・パートナーシップ持分として、証券法の規制対象となると考えられております。

商品取引所法の4m条では、商品ファンドの持分について、証券取引所法が適用されるという可能性を明文化しております。

次に、預金証書についても最高裁判決がございまして、連邦法により規制されている銀行に対する預金証書であって、FDICによって付保されているなど、所持人が連邦銀行規制によって十分に保護されるものについては、証券に該当しないといったものがあります。これについては、州により規制された貯蓄銀行の預金証書を証券と解した下級審裁判例もございます。

それから、ノートというのも列挙されている証券の一つなのですが、これについては農業協同組合が資金調達の目的で募集した約束手形は、「ノート」に当たるといった最高裁判決があります。この判決でとられた基準はファミリー・リゼンブランス・テスト、類似性の基準と呼ばれるものでありまして、その後、判例上、制定法に列挙された証券についての解釈基準とされております。この基準では、制定法に列挙されているものは証券であると推定されるが、売主・買主の取引の動機が投資か商業取引か、分売の仕組みが投機または投資に通常用いられる方式であるかどうか、一般投資家の合理的期待、投資の危険を減じる他の法規制が存在するかどうか、といった4つの基準に照らして証券性を判断するということになっています。ノートに関しては、ローン・パーティシペーションはノートではなく、したがって証券ではないとした下級審判決もあります。

これらについて、日本法に相当するものを考えてみますと、我が国でも病院債、学校債のように、債権をペーパーである債券として売る動きがあるようですけれども、もしそういうことがあるとすれば、これはアメリカ法に引き直して考えてみますと、先ほど述べた公益目的の適用除外に当たらないのであれば、ノートに該当する可能性があると思われます。

次に、投資契約の解釈については、著名な最高裁判決のハウイ・テストいうのがあります。この基準は、投資契約は、ある者がもっぱら他者の努力によって収益を得ることを期待して共同事業に資金を出資することを勧誘される場合に存在するという定式を立てております。この「もっぱら」という部分が後の判例によって、「主として」というふうに修正されております。このハウイ・テストについては、「共同事業性」というのが水平的なものが必要とされるのか、垂直的なもので足りるのか、裁判上で争いがあります。水平的なものが必要とされるということになりますと、投資者の間で資金のプールがないと証券ということにならない。垂直的なもので足りるとすると、業者と顧客の間の契約が個別になされていても、それが証券とされる可能性が出てきます。垂直的共同事業性で足りると解しますと、証券であれ商品取引であれ、一任勘定取引や投資一任契約は、それ自体が証券ということになります。

その他、投資契約で過去に問題とされてきた主なものとしては不動産投資ですね。これは不動産の持分そのものは証券ではありませんが、利益を期待して契約するような運用契約とセットで不動産の持分を販売する場合には、投資契約に当たると解されています。

フランチャイズ契約については、肯定例と否定例があります。どこが違うのかというと、他者の努力をどういうふうに解するかということですね。フランチャイズ契約をした者の努力が大きい場合には証券に当たらないと。フランチャイザー側の努力が大きい場合には証券に該当すると解するものが多いようであります。

従業員年金計画については、任意拠出のものは証券、強制拠出のものは非証券と解されてきましたが、ERISAの制定によって、証券と解すべき実益は失われたと言われています。

パートナーシップの持分については、ゼネラル・パートナーシップは証券に当たらない、リミテッド・パートナーシップは証券と解する判例が多いようであります。これは、他者の努力の程度が、ゼネラル・パートナーシップとリミテッド・パートナーシップでは違うからであります。

それから、LLCの持分についても、判例は証券性を肯定したものと否定したものに分かれています。また、注目すべきものとして、LLCの持分は株式類似だが、制定法に列挙された株式ではないとしつつ、LLCの全持分の譲渡が投資契約に該当しないとした裁判例があります。これは全持分をある人が別の人に譲渡するとき、そういった全持分は証券の譲渡に該当しないというふうに解したものであります。こういったアメリカの判例に照らしますと、日本の商法改正によって、例えば旧有限会社を含む新株式会社の株式とか、新設されるであろう合同会社、合名・合資会社の出資持分が証券に該当するかどうかというのは、アメリカ法では今紹介しました株式ないし投資契約の解釈によって決まってくる。証券に当たるとか、当たらないとかということは一律に言えませんけれども、株式に列挙されているものに該当すると考えられるものについてはファミリー・リゼンブランス・テストによって、それから投資契約についてはハウイ・テストによって決まってくることになると思われます。

また、投資契約の解釈については、これ以外に危険資本テストという考え方も有力であります。この考え方は、次の4つの要素を基準に判断します。

第1は、被勧誘者が企業に出資すること。第2に、出資が企業のリスクにさらされること。第3に、出資は被勧誘者が出資を超えるリターンを実現するという了解に基づく表示によって勧誘されたものであること。第4に、被勧誘者が企業に対する実務上または経営上の支配権を行使するものでないこと、といった点であります。これらはハウイ・テストに似ているのですが、どこが違うのかと言うと、共同事業性が要求されていないわけで、その点でハウイ・テストへも広く投資契約を解釈するという意味であると言われています。

次に、米国の商品取引所法が適用される範囲は、先物契約、商品オプション、レバレッジ取引の3つであります。まず、先物契約というのは、将来の引き渡しを約する商品の売買契約であると考えられています。その対象は、法律に列挙されておりまして、小麦、木綿等々を列挙した後、その他すべての物品、サービス、利益であって、先渡契約が締結されるものという定義規定が置かれております。

商品オプションについては、先物契約に係るオプションと商品に係るオプションの両者が含まれます。第3のレバレッジ取引は、これは特殊な取引でありまして、その定義はレジュメに掲げたようなものになっています。従来からデリバティブ取引の扱いについて、SECと商品取引所法を所管するCFTCとの間で権限争いがありました。原則として先物取引、これは株価指数先物を含む先物取引の規制はCFTCによっていたのですが、新しいデリバティブ取引が生じてくると、その管轄がどちらにあるのかという争いが生じまして、1975年頃からそういった権限争いがありました。一旦1981年に協定が結ばれ、それが商品取引所法、証券取引所法、証券法の規定に反映されました。その後、インデックス・パーティシペーションの扱いをめぐり、争いが再燃しまして、この件については、先物であってCFTCに専属管轄があるという判例も出されています。

その後も何回か協定が結ばれて、最近の状況は次のように言えると思われます。SECは、証券指数を含む証券に係るオプション、上場されている通貨のオプションについて管轄を有する。CFTCは証券先物、証券指数先物を含む先物及び先物に係るオプション、それから非上場の通貨オプション、先物について管轄権を有する。従来、個別株先物は禁止されていたのですけれども、2000年の法改正によってこれが解禁されまして、SEC・CFTCの共管になっています。証券に対する先物が証券であると考えられてきたのは、実質的に証券オプションに等しいからであろうと思われます。個別株先物については、仲介業者はSEC・CFTCのいずれにも登録を要する。こういった商品が証券取引所、商品取引所のいずれかに上場される場合にも、SEC・CFTC両者への登録は必要で、かつ、その場合に証券業協会が定めると同等の適合性原則に服しなければならないとされています。

それから、証券ベースのスワップ取引については、2000年にCFTCに管轄があるということになりまして、証券法、証券取引所法の証券の定義から証券ベースのスワップが除外されております。

そこで、米国法からの示唆としてどういうものが考えられるのかということであります。まず第1に、商品取引と証券とを区別すべきかということでありますが、これは難しい問題ですので、個人的な感想しか言えないのですけれども、私は商品取引と証券の区分の基準を米国の経験に求めて、投資商品を証券に限定することは妥当ではないように思います。アメリカでも、先物と証券が理論的に区別できるものでないということは認識されております。

それから、アメリカの証券の定義やその解釈からは、法的形式よりも経済実態で判断するということが示唆されるように思われます。この場合、投資家の目にどのように映ったのか、あるいは投資家の期待がどのようなものであったのかということが重要でありまして、契約の内容はどうだったのかということよりも、投資家がどういう形で勧誘されたのかという点が重視されているわけであります。このような基準は不明確性は免れないと思われますが、投資家保護という規制の目的には整合的であると思われます。

さらに、投資契約のような定義が必要かといった問題が考えられます。これについては投資サービス法において、各会社や組合の持分を網羅的に定義し、それに適用を及ぼし、さらに金融先物取引を統合するとしますと、現在問題となっているような商品としては、すべてカバーできるとも考えられます。しかし、法形式で定義することが有効であるかどうかという点については疑問もあります。例えば、アメリカでは架空の会社の証券も証券として扱われています。その場合、厳密にどの法形式に合致するのかを当てはめるのは意味がないように思われるわけです。そうしますと、投資サービスを定義するのに、やはり経済的性質に応じた一般的な定義規定が必要になるように思われます。さらに、開示さえすれば売ってよいものを投資商品であると考えるのならば、それは米国の証券と先物の定義を合わせたものよりも広いものになるということに注意を要するように思います。

さらに、詐欺的な儲け話を開示義務違反及び詐欺防止条項で規制するのであれば、やはり投資契約のような定義は有用ではなかろうかと考えております。

次に、投資サービスの範囲に関する問題でありますが、金融投資サービスの類型については、新しい金融の流れに関する懇談会が8類型を示しておりました。それらは販売・勧誘、売買、仲介、引受・売出、資産運用、資産管理、助言、仕組み行為といった8つの類型であります。これについて、米国でどうなっているのかを見てみますと、証券については販売・勧誘、売買、仲介、引受・売出、資産管理については証券法、証券取引所法がカバーしており、資産運用、資産管理、助言については投資顧問法、仕組み行為については投資会社法がカバーしていると見ることができます。もっとも証券については、こういった連邦証券規制とは別に州証券法が適用される可能性があり、それとの関係が重要なのですが、これは1996年の改正によって、州証券法の管轄範囲が大幅に限定されております。内容については、もう時間がありませんので省略します。先物については、すべて商品取引所法がカバーしているというのが現状であります。

もう少し具体的にその内容を見ておきますと、業者の登録規制をどこが行っているのかということに関連するものですが、事務局の方で用意して頂いた、米国における規制業務のところに要領よく整理されている内容であります。ブローカー・ディーラーについてはSECへの登録を要する。政府証券・地方債証券のような適用除外証券を扱うブローカー・ディーラーも別の条文によるんですが、登録を要することになっております。アンダーライターについては、登録制度はございませんが、アンダーライターはその定義上、これを業として行うときにはブローカーまたはディーラーであるということが前提となっているために、特別の登録規制を設けていないのだと思われます。アンダーライターの行為に対する特別の規制はございます。

それから、店頭デリバティブ・ディーラーの規制というのがございまして、証券と認められるデリバティブ取引の店頭取引を業とするには、ブローカー・ディーラーの登録が必要とされています。ところが、ブローカーディーラーでない者がオフショアに設立した子会社にデリバティブ業務をさせる例が増加したために、1998年に、SECは店頭デリバティブ・ディーラー向けに簡易な登録制度を導入しております。

次に、投資顧問については、投資顧問法によってSECへの登録を要するわけでありますが、その定義と適用除外については、そこに別に掲げたとおりであります。よく問題となるのは、ファイナンシャル・プランナーなんですが、これはこの定義に従って、登録を要するものと、そうでないものがある。ファイナンシャル・プランナーの対応によって違ってくるということになります。

2000年に、投資顧問について商品取引顧問との調整規定が置かれまして、商品取引顧問として登録しており、主たる業務が投資顧問業でない者についてはSECへの登録を要しないこととされました。

次に、先物に関するものとしましては商品取引員、商品プール運用者、商品取引顧問といった業者について、それぞれCFTCへの登録を要するという規制になっております。

それから、仲介ブローカー、イントロデューシング・ブローカーについても登録を要するという規制になっております。これらのうち商品プール運用者については、投資会社との調整規定が置かれておりまして、CFTCの規則により登録投資会社、保険会社、預金機関と一定の年金計画が除外されています。

さらに、商品取引顧問については、投資顧問との調整規定がありまして、先ほどのものの裏側になるわけですけれども、2000年改正により、投資顧問として登録されており、主たる業務が商品取引顧問業でない者については、商品取引所法による登録を要しないこととされました。

こういった米国における業者規制から、何が示唆として得られるのかということも難しいのですが、考えられることを2つほど挙げてみました。1つは、他の業法によってきちんと規制されている権利については、投資商品としないことでよいか、そういった論点が考えられます。しかし、この点は、アメリカでは預金との関係でこういったことが論じられているのですが、発行者の弁済能力などは他の業法によって規制されているが、売り方の詐欺についての規制は欠けるのではないか。したがって、証券規制を及ぼすべきではないかという見方もあります。

それから、SECとCFTCの調整規定に見られるように、共管として同一ルールに服させる、あるいは一方の登録に服させるといった調整ということも考えられるところであります。

最後に、集団投資スキームのあり方について、米国を参考に少し考えてみたいと思います。集団投資スキームについては、米国では投資会社として、これをSECへ登録して投資会社法の規制を受けるということになっております。ただし、これは業者規制ではありませんで、投資会社の開示規制と実体規制を行うことを通じて投資者保護を図ろうとする法律であります。投資会社の定義というのは、そこに掲げておりますように、マル1主として証券の投資、再投資または証券の取引に従事している発行者。マル2分割払い型の額面証書の発行業務に従事している発行者。マル3証券の投資・再投資、または証券の取引に従事している発行者であって、資産総額の40%以上を投資証券が占めている者、こういった定義になっております。この証券の定義は、証券法と同様に広い範囲で定義規定が置かれていまして、投資契約が含まれています。投資会社と言っていますが、規制の対象は発行者でありまして、ビークルの法的形式は問われません。この点が、我が国の投資信託・投資法人法との大きな違いになっております。

よく問題となるのは、このマル3の資産総額の40%以上を投資証券が占めているものは、原則として、すべて投資会社法の適用対象になるという点でありますが、この点については、主として投資以外の業務に従事している者、投資以外の業務に従事しているとSECが認めた者、あるいは発行済み証券のすべてが非投資会社によって直接または間接に所有されている者は投資会社ではないという規定が置かれています。

さらに、適用除外の規定が置かれていまして、主なものとしましては、証券の持分の実質的所有者が100名以下である場合、適格購入者によってのみ所有されている場合、アンダーライター、ブローカー、銀行、銀行が管理する共同信託基金、保険会社、こういったものが適用除外とされています。ただし、変額保険を発行している保険会社の特別勘定は、保険会社とは別のエンティティーとみなされるため、適用除外とならないと判例上されています。そこで、この点についてもSECは規則を制定し、一定の変額年金・変額保険の特別勘定を適用除外としております。

こういった集団投資スキームの規制から、日本法への示唆を得るのであれば、何とかファンドと呼ばれるような集団的投資スキームは、すべて同様の規制に服させるのが適当ではないかということ。それから、何をもって集団投資スキームとするかということについてですけれども、定義を工夫し、かつ適用除外を設ければ、適切妥当な範囲に適用を及ぼすことができるのではないかといった点が挙げられます。

以上、極めて表面的な紹介に終わりましたけれども、私からの報告は以上であります。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

もう時間が来てしまいましたが、若干の延長を頂いて、今、黒沼委員からお話し頂きました点につきまして、ご質問、ご意見がありましたら手短にということでお願いできればと思います。いかがでしょうか。……(テープ交換)

○淵田委員

あるケースで、他の業法によって規制されている場合は、例えば、形としては共管として同一ルールに服させるというお話がありましたけれども、その一つの例が個別株式先物だと思います。それで、ちょっとお聞きしたかったのは、この場合、実際に問題があったという、不正行為のようなことがあった場合、一体SECが乗り出すのかCFTCが乗り出すのか。CFTCはよく分かりませんが、SECと比べまして、かなりエンフォースメントのレベル、人員等を含めまして差があったりするのではないかと思っておりまして、一体どちらが乗り出したのかという質問でございます。

○黒沼委員

端的にお答えしますと、私はよく把握しておりません。もし実務の方で御存じの方がいれば、お教え頂ければと思います。

○神田部会長

ありがとうございます。

どなたか御存じでしょうか。次回までに今の点は調べて分かればご報告するということでよろしゅうございますか。非常に重要なご指摘だと思いますけれども。ちょっと時間の関係もありますから、そうさせて頂きます。

それでは、原委員、どうぞ。手短に。

○原委員

1点だけですが、3ページで、危険資本テストという、投資契約の解説として紹介されたのですが、ハウイ・テストについては聞くこととかがあったんですけれども、この危険資本テストというのは、いつ、どのような段階で出てきて、どれぐらいの有力な解釈等をされているのかを補足でお願いしたいと思います。

○黒沼委員

これは、ハウイ判決以降の下級審裁判例で出てきた考え方で、幾つかの州の裁判所、それから幾つかの連邦の下級審裁判所が採用しているもので、ハウイ・テストよりも広いという点から、一部の学説の支持も得ているものです。

○神田部会長

どうもありがとうございます。

ほかにいかがでしょうか。どうぞ、嘉治委員。

○嘉治委員

すみません、最後に大判風呂敷を広げておしかりを受けるかもしれません。新聞を読んでいますと、エリオット・スピッツアというニューヨーク州の司法長官が、SECと全く独立に摘発を進め、株価にも影響が及んでいるといわれています。このこととSECの関係を一体どういうふうに説明できるのか、日々不思議に思っております。いつでも結構ですのでどなたかご説明を頂ければと思いました。

○神田部会長

ありがとうございます。

黒沼さん、何かコメントがありますか。よろしいですか。

○黒沼委員

私にはお答えできる能力はないのですが、連邦と州の関係については、先ほどご紹介しましたように、州の管轄権はかなり狭められているということと、特にブローカー・ディーラーの規制について、連邦で登録しているものについては、ほとんど州の権限が及ばなくなっているのですね。ただし、州法が適用される条項としましては、州がそれぞれ一般的な詐欺禁止規定を持っていますので、その詐欺禁止規定を用いて州の裁判所に申し立てて、証券の募集を差し止めることは可能です。

○神田部会長

それでは、ちょっと今の点も、また次回以降の宿題ということにさせて頂きたいてよろしゅうございましょうか。どうもありがとうございます。

時間の関係で、十分にご意見等も承れませんでしたけれども、今日は神作さんと黒沼委員から大変貴重なお話を伺えましたので、頂いたお話は、次回以降も引き続いてお話の内容を生かせるような形で審議に役立てたいと思います。今日はさらに、お手元に資料の4ですね、時間があれば事務局からのご説明を頂いて、議論を少しでもと思っていたのですが、それでは、資料4の話は次回まわしにさせて頂きます。ご覧頂いておいて、また次回に事務局からのご説明をさせて頂きたいと思います。私の不手際もありまして、予定の時間を過ぎ、また全部を消化し切れなくて申し訳ありませんでしたけれども、予定の時間を7、8分過ぎておりますので、今日はこれまでということにさせていただきます。事務局からのご連絡等がありましたらお願いいたします。

○大森市場課長

昨年は、12月は大変忙しい思いをして頂きまして申し訳ございませんでしたが、本年は、あと2回ぐらい年内にお願いできないかと考えております。次回は、最も多くの委員が集まれる日ということで、12月1日水曜日の午前10時で予定をしておりますので、よろしくお願いいたします。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

それでは、以上をもちまして本日の会議を終了させて頂きます。

どうもありがとうございました。

午前12時07分閉会

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