金融審議会金融分科会第一部会(第29回)議事録

平成17年4月15日

金融庁 総務企画局

午前10時00分開会

○神田部会長

それでは、予定の時間になりましたので、まだお見えでない委員もいらっしゃいますが、始めさせて頂きます。

ただいまから、金融審議会金融分科会第一部会第29回目の会合を開催させて頂きます。

皆様方にはご多様のところお集まり頂きましてありがとうございます。

いつものことですが、会議に先だちまして、本日の会議も公開とさせて頂いておりますので、この点をご了解頂ければと思います。

当部会のメンバーにつきましては、お手元にお配りしております名簿をご参照頂ければと思いますが、今回新たにご就任された方々をご紹介させて頂きます。

お一方は古市健委員でございます。

○古市委員

よろしくお願いいたします。

○神田部会長

よろしくお願いいたします。

それから、もう一方は岡内欣也委員でございます。

○岡内委員

よろしくお願いいたします。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

どうぞよろしくお願いいたします。

また、本日は投資信託協会から金子義昭さん、それから、日本証券投資顧問業協会から辻雅夫さんのお二方にお越し頂いております。お2人にはこの後お話をして頂くことになっております。よろしくお願いいたします。

それでは、早速ですが、本日の議事に移らせて頂きます。

本日の議事の順番ですが、まず金子さんと辻さんからお話を頂きます。その後、「市場のあり方について(2)」というバージョンアップ版、それから、「集団投資スキーム(2)」、これもバージョンアップ版になりますけれども、これらについてご議論をお願いしたいと思います。

それでは、議事次第に従いまして、まず、投資信託協会副会長の金子義昭さんからお話を頂きたいと思います。

どうぞよろしくお願いいたします。

○金子投資信託協会副会長

投資信託協会の金子でございます。第一部会の委員の皆様におかれましては、日ごろから目論見書の改善をはじめさまざまな投資信託の制度面の問題についてご検討頂いておりまして、この場を借りまして感謝申し上げたいと思います。また、本日は意見陳述の場を設けて頂きましたことを、重ねてお礼申し上げたいと思います。

それでは、これより私どもの意見を述べさせて頂きます。

まず、この第一部会で審議されている投資サービス法の法制化に向けた検討につきましては、さまざまな投資商品や投資サービスについて法制度上適切な投資家保護策を講じ、国民が安心して利用できるようにするための大変重要な検討だと考えます。幅広い投資商品が一つの統一した法律の下で規制されるとするならば、投資信託及び投資法人についても類似の商品とともに、集団投資スキームの一つとしてこの制度の枠組みの中で措置されるべきだと考えます。

このご検討にあたっては、投資家にとって必要な保護策が講じられること。それから、民間によるイノベーションを創出する努力が阻害されることのないようできる限り自由な市場とすること。商品やサービス間の公平性を確保すること。規制の費用対効果を十分に検証すること。この4点についてバランスのとれた制度構築をお願いしたいと思います。

本日は主に3点について私どもの意見を述べさせて頂きます。

まず、横断的な法制を目指す以上、投資商品の範囲は広くカバーすべきであると考えます。そして、これら商品を投資家に販売する上での一定の投資家保護策を、基本的な考え方としては、どの商品も同じように課せられるべきだと考えます。投資家が投資する上での必要な情報が容易に入手でき、適切な販売が確保されて、はじめて投資家が安心して購入できるものと考えます。また、これらの商品を提供する側からしますと、同じ法規制という土俵の中で競争することにより、一層の品質向上が期待できるのではないかと思います。

現在、他の法律で規制されているものや、まだ、そうした法の規制が置かれていないもの、これから新しく登場してくるであろうものを含め、それらすべてが一つの規制の下で、基本的な考え方としては、一定の投資家保護策を同じように課すべきであると考えます。いずれ近い将来において金融サービス法として金融商品や金融サービス全般についての法整備が手当されるものと思っておりますが、少なくとも現時点では変額年金保険やデリバティブ預金など、投資商品としての性格が強いものは、すべてこの法律の対象として頂くようお願いいたします。

また、例えば商品先物取引のような他省庁が所管するもの、あるいは、商品ファンドのような金融庁と他省庁とが共管するものであっても、それが投資商品としての性格が強いものであれば、今回の措置として投資サービス法の対象とするのが望ましいと考えます。こうした商品についてできるものから順次、投資サービス法の対象に加えていくということにしますと、その過程で法の対象範囲が限定的なものになり、その改善効果もあまり期待できませんので、ぜひ横断的な法制づくりという初期の目的に沿った対応をお願いいたします。

次に、行為規制について述べさせて頂きます。投資サービス法の対象範囲はできるだけ広範囲なものとすべきですが、具体的な行為規制を考えていく場合には、類似のものには同じ規制がかかることを基本としつつも、ある程度、投資商品やその仕組みに応じた柔軟な規制構造がとられるものと思われます。その際の切り口といたしまして、リスクによる分類とか、プロアマといった考え方が議論されているということを聞いております。そのリスクに応じた分類についてですけれども、リスクというものを一つの判断の視点としてとらえることは観念としてはあり得るものと思われます。しかしながら、これを実際の商品に当てはめて考えるのはなかなか難しいことと思われます。

例えば、日本の国債とアルゼンチンの国債とがいずれも元本が保証されるものとして位置づけられるとは思われませんし、投資信託の中にも日本の国債だけに投資するものもあって、リスクによる分類は頭において整理するための手段の一つとして考えられるとしても、こうした個々の商品の特殊性もあって、果たしてきれいに区分できるかどうか疑問があると思われます。しかしながら、行為規制を考えていく際の方法として、こうした類型化が必要であるということであるならば、例えば投資元本を超えて損失が発生するものとそうでないものの2つに分類することも一つの案として考えられるのではないかと思われます。

もう1つの切り口であるプロとアマとで差をつけるということにつきましては、この2つの区分の中で実態に照らして、具体的な行為規制をそれぞれに当てはめていってはどうかと考えます。基本的には、十分な投資能力を持ち合わせていない一般の投資家については必要な行為規制を、他方、プロについては現在の適格機関投資家にある程度のリスクをとれる人を加え、規制についてはミニマムのものを置くといった形がよいのではないかと考えます。

しかし、プロの範囲が現状よりもかなり広がってくることになりますと、いろいろと注意が必要なのではないかと思います。十分な投資能力を持ち合わせていない人も、オプトインを宣言することでプロとしての認定を受け、規制が緩い分、コストが安くて、ハイリスク・ハイリターンの商品を購入しようとする投資家がどんどん増えていくということになりますと、一般投資家向け、つまり公募市場が空洞化しないかという心配であります。プロとアマとで規制の内容に差を設けるにしても、プロは一定のレベルを有する人に範囲を限定することと、一般投資家向けに対する行為規制についてもあまり過剰なものとはせず、投資を行う上で必要な規制を置くといった、プロとアマとである程度バランスをとることが必要なのではないかと思います。

また、アメリカでは従来はごく限られた人たちだけが購入し、規制もないに等しかったヘッジファンドが投資家層に広がってきたこともあり、これらの運用業者を登録制としたところであります。我が国においても事業型のファンドなどがインターネットなどを通じて一般の投資家に対し既に数多く販売されております。このようなまだ法令による規制の適用を受けていない商品があることを考えますと、投資商品について、少なくとも商品か、あるいは、運用業者を広く届け出制とし、実質的に公募と変わらないような形で一般の投資家にも購入されていないかどうか、必要な調査とその改善を求め得るような体制をとるべきではないでしょうか。

次に、どのような方法で分類、類型化を図るにせよ、具体的な規制を考える上で配慮して頂きたい点を幾つか述べさせて頂きます。一般投資家向けについては、あまり過剰なものとせず、投資を行う上で必要な規制を置くと申しましたが、実際に規制を考える際には、自己責任原則の考えを念頭に置きつつ、規制の目的・効果とコストとの比較考慮をよく行って、必要・妥当なものにすべきだと考えます。例えば、集団投資スキームの論点のところでは、投資サービス業者によるコンプライアンス強化として、業態の規模にかかわらず、内部統制も含めて、公認会計士による監査業務を課すことが挙げられております。しかし、これらに要する費用は、直接的にしろ間接的にしろ、投資家が負担する費用にはね返ってしまいますので、規制を置く目的と効果が費用に見合うものであるかを十分検討すべきと考えます。

また、投資信託では、投資対象が不動産にも広がった際に、取引所以外で取引されるものについて、第三者による価格調査と同種ファンドの受益者への報告が必要となり、その結果それまでは投資信託の中で利用されていた金利や通貨スワップ取引などを取り止める運用業者が出ているといった例があります。規制を置く目的は何か、それによってどういう効果が得られるのか、それだけの費用をかけてでも必要なものなのかどうかを十分検討した上で規制をかけませんと、取引を阻害する結果を招くとともに、費用が投資家の負担にはね返ってしまうこともあり、かえって市場の発展を損なうことになりかねません。

次に、集団投資スキームについてですが、これについてもそのビークルや法的仕組みのいかんを問わず、できるだけ幅広く対象とし、それらに対して横断的に最低限の規制として、商品または運用者の届け出と必要に応じた調査権や是正命令などを課すべきであり、その上で一部の事業型のファンドなどについて、他の商品とのバランスにも配慮した形で、実態に応じた適正な規制を課すことが望ましいのではないかと考えます。

次に、海外で設定し国内に持ち込まれる商品についても、行為規制を同様に適用すべきであると考えます。外国の法令に基づき設定されるものであって、国内の規制が及ばないとなると、ルールの形骸化につながるばかりか、国内産業の衰退にもつながります。また、マーケットは常に動いており、世の中も変化しておりますので、規制についても時代に応じて見直しを行っていく必要があると考えます。規制をかけたことが本来の趣旨から外れ、かえって取引の妨げとなるようなことがあれば、すぐにその見直しを行うような対応も必要と思われます。

3点目が、参入行為規制を担保するためのエンフォースメントのあり方についてであります。まず、資本市場行政の体制についてです。今後、行政の対象となる投資商品やサービスの範囲が大幅に増加していくため人員を増やしていく必要があると思われますが、守るべきルールが今のマーケットの変化に沿ったものとなっているか、諸外国の動きを含めて実態にかなったものとなっているかを検討し、ルールを見直すことも、ルールの実効性を担保するためには必要なことと考えますので、特に企画立案に携わる部門の人員強化もお願いしたいと考えております。

次に、自主規制機関のあり方についてです。イギリスではFSAが一元的にこれに当たっておりますが、実態的には国から相当程度の授権を受けて、監督官庁としての役割を果たす形で行われているのではないかと思いますし、アメリカでは国、すなわちSECによる規制が中心となっております。投資サービス法がさまざまな投資対象商品を横断的に一つの法制の下で規制していこうとしているのですから、その規制は国として基本的にどこか一つの省庁の下で一律の規制により行うのが、公平性やルールの実効性を担保する意味からも望ましいものと考えます。

しかしながら、自主規制にもまたメリットがあり、法律と違ってルールを定めることは、手続きの面からも容易であり、迅速な対応ができますし、法律よりも細かいレベルのルールをマーケットの実態に照らして決めることも可能です。法律は厳格な適用が必要ですので、国が必要不可欠な点を定め、自主規制機関がこれを補完する形で、業界自身により市場の実態に即したルールを適切に、また弾力的に決めていくといった棲み分けが現実的な対応であると考えます。

その際に、単一の自主規制機関を置くべきとの議論がありますが、国から自主規制機関に対して必要な規制を全面的に授権して行うのであれば、それも意味があるものの、そうでないとすれば、むしろ、ある業種の自主規制機関それぞれが実態に即したルールを自主的に定める方が、自主規制機関としてのメリットを生かせるものと思います。ただし、業者を対象とする自主規制と違って、投資家を対象とする苦情相談については、担当窓口がすぐに見つからないといったような批判があるとすれば、場合によってはこれを一つにするというのも一案かと考えられます。

最後に、その他の点を一、二つけ加えて述べさせて頂きます。まず、クーリングオフですけれども、クーリングオフについては、投資信託の場合、既に証取法の誤認勧誘として、これに関するトラブルの処理や救済の道が手当されておりますので、クーリングオフを適用する必要はないと考えます。また、投資信託以外の商品についても、価格が変動する金融商品にはなかなかなじまず、価格が値下がりしたときのこの制度の適用については問題が残るのではないかと思います。仮に投資信託にも適用するということになれば信託財産から返済することとなり、価格が値下がりした時点での運用は信託財産を傷め、残された受益者の負担となる恐れもありますので、この導入は望ましくないと考えます。

また、集団投資スキームの論点では、信託法改正に伴う法制の見直しとして、受益者が複数の信託の意思決定方法について多数決を導入することや、ガバナンスについての仕組みが整備された場合に、投資信託の適用についてどう考えるかといったことが提示されております。信託法の改正は法制審議会で議論されており、そこでは一般的な信託を念頭に検討されているものと思います。投資信託は集団的投資スキームとして、委託業者が受益者の利益のために行うものとして投資信託法という特別法に規定されているわけですから、一般法である信託法の規定をそのまま投資信託に当てはめるのではなく、特別法に十分な規定があるのであれば、特別法の規定をもって運営されるべきであると考えます。

信託の意思決定方法の一つとして挙げられている受益者集会については、コストに比してそれを行うだけの実効性があるかという点で疑義があることや、投資信託法では既に、約款を変更する場合であって、その内容が重大なものに該当する場合には、書面により受益者の賛否を問うことが規定されておりますので、受益者集会を開かずとも受益者の意思は担保されていると考えます。また、信託の併合については、投資信託協会としてかねてよりファンドとファンドの統合が可能となるよう要望しておりましたので、信託法の改正を待たずともこれが可能になるようお願いしたいと思います。

以上が私どもの意見陳述の内容でございます。ご静聴ありがとうございました。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

それでは、続きまして、日本証券投資顧問業協会会長の辻雅夫さんからもお話を頂きたいと思います。

どうぞよろしくお願いいたします。

○辻日本証券投資顧問業協会会長

日本証券投資顧問業協会の辻でございます。本日は、審議会の席にお招き頂き、また意見表明の機会を頂きありがとうございました。

一般大衆を相手にしております投資信託と比べますと、投資顧問業というのは一般的になじみが薄いと思いますので、最初に投資顧問業務とはどのようなものかというところから始めさせて頂きたいと思います。お手元の資料の1ページをおめくりください。

投資顧問業務は、顧客との直接のコミュニケーションを通じ、顧客の特性、ニーズを踏まえたテーラーメードで、かつ専門的な資産運用サービスとして、投資助言、投資一任業務を提供することを特徴としております。

また、顧客に対して忠実に専門家としての注意深さをもって業務を行う「受託者責任」が強く求められており、各種の自主規制ルールを自ら課し、遵守することによって、顧客の側に立ったサービスを提供しております。

投資一任業務を行う投資一任会社に関しては、独自の運用スタイルや運用手法を持つ会社が勢力を伸ばしつつあります。最近では、顧客が国内外のコンサルタント会社からのパフォーマンス評価や定性評価を踏まえ委託先を選定するケースが一般的でございまして、投資一任会社は常に市場からの評価にさらされており、このような中で競争を続けていることが業界全体の質的向上につながっていると考えております。

2ページには、投資一任会社の契約資産残高の推移をグラフに示しております。主として年金資金など機関投資家の資金を中心に残高は順調に増えておりまして、ここ数年、株式市場の低迷や厚生年金基金の代行返上等といった逆風の時期もございましたが、昨年12月には初めて残高が100兆円の大台を突破しております。

3ページでございます。今、申し上げましたように、投資一任会社の顧客は年金など機関投資家が中心でございまして、高度な資産運用ニーズに沿ったテーラーメードの商品提供が求められております。前のページに100兆円を突破したとありましたが、下の表に契約資産の内訳を示しております。顧客は年金や金融機関など、いわゆるプロと言える機関投資家の比率の高さが見てとれるかと思います。

4ページをご覧ください。こちらには登録状況の推移を示しております。昨年12月現在、全体で695の業者が登録し、内訳としては、助言業者が561、投資一任会社が134となっております。右側の表にはご参考として投資一任会社の系列別の内訳が載っております。この表からもおわかりのとおり、さまざまな業態から構成されており、最近では外資系や独立系が増えております。とりわけ契約資産残高で外資系が5割を占めておりまして、一大勢力となっているのが当業界の特徴でございます。また、昨年4月からは、証券会社と信託銀行が兼業で投資一任業務に参入するようになっております。

5ページをご覧ください。投資顧問業法について簡単にご説明いたします。正式名称は「有価証券に係る投資顧問業の規制等に関する法律」でございまして、昭和61年(1986年)11月に施行されております。当時、悪質業者によるさまざまな投資家被害の事件が発生したことが契機となって制定されたもので、投資者保護のためさまざまな行為規制が設けられております。

6ページをご覧ください。先ほども触れましたが、投資顧問業務には投資助言と投資一任の2種類がございます。投資助言は、顧客から報酬を得て有価証券投資の助言を行うもので、顧客は助言に基づき実際に投資するかを自身で判断するということでございます。これに対しまして、投資一任は、顧客から有価証券の価値等の分析に基づく投資判断の全部または一部を一任されるとともに、当該投資判断に基づき当該顧客のため投資を行うのに必要な権限を委任され、顧客に代わって投資を行うものでございます。それぞれのスキームの図の説明は省きますが、左下に投資者保護に係る主な規制がございます。過去の投資者保護の反省を踏まえ、例えば2番目にあるとおり、助言にしろ一任にしろ顧客のお金や有価証券を直接預かることは禁止される等の投資者保護が規定されております。

7ページをご覧ください。投資顧問業務を始める際の手続でございますが、投資助言を営む場合は、登録を受ければ可能ですが、別途、営業保証金が必要でございます。さらに、投資一任業務を営む場合は、顧客の財産に直接関与することになり、重い受託者責任を負うことになりますので、一段とバーが高くなり、登録に加えて認可を受ける必要がありまして、営業保証金もさらに上積みされるということになっております。

8ページをご覧ください。こちらには主な投資者保護にかかわる規制が記載されております。個々の説明は省略いたしますが、これら一連の投資者保護の枠組みが機能し、業法制定以来登録業者による悪質な刑事事件は発生しておりません。ときどき、顧客の資金の不正利用や持ち逃げといった事件が報道されておりますが、これらは無登録業者等によるものでございます。

9ページをご覧ください。投資者保護にかかわる規制の続きでございますが、こちらは投資一任業者のみに課される規制でございます。投資一任会社は、顧客との高い信頼関係に基づき業務を行うために、専業義務が課せられているほか、主要株主規定や最低資本金規制などが盛り込まれております。

10ページをご覧ください。投資者保護につきましては、法律では規制されない細かな実務面における手続やディスクローズ等について自主規制ルールを定めております。

11ページをご覧ください。ここまで投資顧問ビジネスの現状と投資顧問業法における投資者保護の枠組みを概略ご説明いたしました。次に、現行法上の問題点について私どもの考えをご説明いたします。

投資顧問業法で投資対象は証券取引法上の有価証券に限定されております。顧客のニーズにこたえられる商品設計にそれが大きな制約となっております。

また、兼業を行うにしても承認が下りるまでの手続やコスト、時間的ロスを考えますと、なかなかワークしないのが実情と思われます。

昨年から信託銀行も投資一任業務を行うことが可能となったわけでございますが、信託銀行が投資一任業務を行うことになりますと、投資商品について今まで特段の規制がなかったのが、有価証券に限定されてしまうということになるわけでございます。

一方、投信委託業者につきましては、主として特定資産に投資するのであれば、投資対象の制限は特にございませんが、投信と投資顧問を併営している会社は数多く、同じ社内で投信と投資顧問では投資対象の制約が全く異なるのが実情でございます。

12ページをご覧ください。次に、投資顧問業者が行うことのできる業務・取引についてでございます。資産運用に付随する、必要不可欠である有価証券の貸付、あるいは、為替オーバーレイ、議決権行使の助言などの業務の法律的位置づけが明確ではないという問題がございます。また、ファイナンシャル・プランナーの位置づけについても、整理する必要があると考えております。

これらの問題点につきまして、審議会における議論が進み、投資サービス法においてこれら投資対象の制約が行われる業務・取引が明確になり、資産運用の自由度が高められることを希望しております。

13ページをご覧ください。次に、投資顧問業者の受託者責任についてでございます。資産運用業務を営む者は顧客のために忠実に業務を行わなければならないとする忠実義務が課せられております。これは顧客の側に立って業務を行う投資顧問会社にとっては極めて重要な概念であります。

14ページをご覧ください。最近の審議会における投資サービス法の議論をホームページ等で拝見しておりますと、証券業と投資顧問業務を一体化する方向が示されております。投資顧問業務の重要性が高まる中、投資サービスの本業と位置づけることは大変重要なことと考えますが、顧客と市場の仲介者として、顧客の相手方となる証券業と顧客の側に立つ投資顧問業務との間には利益相反の発生する恐れがございます。これら利益相反防止の枠組みとそのエンフォースメントが効果的に行われるのかどうか、十分ご議論頂きたいと考えております。

以上でございます。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

短い時間の中でお二方にはポイントをお話頂きまして、ありがとうございました。

それでは、今頂きましたお話につきまして、委員の皆様方からご質問、ご意見等をお出し頂きたいと思います。どちらのゲストのお話でも結構ですが、いかがでしょうか。

上柳委員、どうぞ。

○上柳委員

お2人ともに質問があるのですけれども、まず、辻さんのプレゼンテーションの中で、3ページに今の時点では個人が顧客にする例が少ないというご指摘があったのですが、これからは、信託銀行の参入等がありまして、個人へのアプローチも増えてくるのではないかと思うのですね。プロを相手にやっておられた皆さん方が個人なりアマチュア的な人たちにアプローチするときにどうするかということについて、現行法制の問題点等についても検討されていることがあったら教えて頂きたいというのが1点です。

もう1つは、8ページのところで無登録業者が問題を起こしているというご指摘があるのですけれども、協会から見てこのようなことを防止するためにはどうしたらいいのか、もしお考えがあれば教えて頂きたいと思います。

それから、金子さんに対しては、協会で一般顧客からの苦情相談を受ける窓口のようなことが今どの程度ワークしているか。私どもから言いますと、実際に販売されるのはその他の業界の方が多いので、なかなかそこまでいっていないのではないかという懸念を持っていて、例えば今日の分析の中でも投資信託についての被害例が、裁判例も若干はあるのですけれども、そのようなことについての分析と、その上に立ったご紹介がなかったということに反映してくるのではないかと。これも懸念ですけれども、もしお考えがあれば教えて頂きたいと思います。

以上でございます。

○神田部会長

それでは、順次よろしくお願いいたします。

○辻日本証券投資顧問業協会会長

個人、特に富裕層を対象とする投資顧問業のあり方については、それぞれ経営のあり方の問題だと思いますが、経営上の問題としてはかなりのサイズがないと一任業者としては採算上難しいというのが現状だと思います。それに替わるものとして昨年導入されました証券会社のラップ口座、こういうものが活用されるのではないか。

あるいは、助言業者の質のいいところはこういうのを既にやっておりますが、そういう形で進むのかなと。投資一任業者が直接、個人と契約するというケースは現状では非常に少ないし、将来的にもなかなか難しいのですが、会社の経営判断としてこれを取り入れていこうというところは出てくるかもしれません。プロアマの議論で言いますと、個人でもプロフェッショナルに近いような人でないとなかなか難しいかなと。一任でございますから、個別の銘柄についてああだこうだ言われると大変なことになりますし、一任業者としては個人はあまり向かないのではないかというふうに考えております。

それから、無登録業者の問題でございますが、その前に、登録しておりましても、投資顧問業協会に入っているのが非常に少ないのですね、500社のうち80ですか。まずその問題があるわけでございます。登録をしているんだけれども、協会に入らない。これはいろいろな事情がございまして、コスト的に厳しいとか、わずかな年会費でございますが、そういうところに入ってもらって、自主ルールに従ってもらうということを今、協会ではやっておりますが、無登録のところまでは協会としてはなかなか手が届かないというのが現状でございます。

以上でございます。

○金子投資信託協会副会長

投資信託協会の苦情処理あるいは相談窓口の件ですけれども、私どもは投資家からの相談あるいは苦情に応じておりますが、端的に言って投資信託協会が何かやらなければいけないというようなものは少ないというのが現状です。四半期に一度、苦情相談の件数、その概要等を公表しております。数字は今、手元にないのですが、さほど多くはないと。大部分が相談に関することで、この商品はどういうふうになっているのかとか、基準価格はどう計算されるのかとか、あるいは、銀行が倒産したらどうなるのかとか、そういう仕組みに関する相談がほとんどであります。

それに加えて、苦情ということになりますと、大部分は運用に関すること、あるいは、販売に関すること、この2つですが件数は非常に少ないです。特に運用に関することは、例えば株式に投資していれば、株価が下落すれば基準価格が下がってしまう、これはひどいではないかというような話はありますけれども、これが法令に違反した、あるいは、目論見書、約款に違反した運用が行われているというものになりませんで、経済環境に応じて出た結果でございますので、確かに申しわけないという感じはしますけれども、それ自体はやむを得ないところもありまして、何か処理をしなければならない苦情というものはほとんどないと思います。ほとんどというかゼロだと思います。

それから、販売に関する苦情は比較的多いですが、販売をしたところ、銀行や証券、いろいろなところがありまして、そこで説明が不十分だったとか。これも投資家の言い分ですので、本当に販売した方が悪いのか、聞く方が悪いのかはっきりしません。販売に対する苦情、あるいは、勧誘に対する苦情はありますけれども、これはもっぱら日本証券業協会、あるいは、銀行協会の関係でございますので、そちらの方にお話くださるよう依頼しているということであります。

いずれにしましても、投信協会の関係の苦情というのは、不満はあるんだと思いますが、いわゆる法令上の問題になる苦情はほとんどありませんし、相談が大部分を占めております。

○神田部会長

よろしゅうございますでしょうか。

原委員、どうぞ。

○原委員

幾つかあるのですけれども、今のご回答について一言だけ。投資信託の販売に伴って、消費者側からは相談も苦情も増えているということです。投資信託協会のホームページを見せて頂くと非常に静かな感じがして、あまり波風が立っていないように見えるのですね。今おっしゃられたように販売トラブルがきていて、証券業協会や銀行協会に回していらっしゃるというお話でしたけれども、例えば銀行協会のよろず相談所の事例を見てもあまり返ってきていなくて、どこか宙に浮いているというか、証券業協会にいっているのであれば、そこである程度の解決ということがやられているのかもしれませんが、私としては紹介の方でもきちんとした窓口を明示すべきだと考えております。

質問は3点ありまして、いずれも投資信託協会の金子さんへのご質問になりますけれども、1つは、コストの話が出てきまして、ここで検討を重ねてきている中では法律の話が中心で、コストはどういうふうにしたらいいかということは、もちろんそれにくっつけて話として出ているのですが、今日も一般投資家向けには自己責任を念頭に起きつつ一定の目的効果とコストの比較考慮が必要たというご発言がありましたので、こういう規制がかかるとこのようなコストがかかってというような、具体的な事例を考えていらっしゃるのであれば教えて頂きたいと思います。

2つ目は、海外で設定して国内で販売されるものも規制対象に及ぼしてほしいということがあって、確かにそのように思うのですけれども、そういうふうに法律で決めてしまえば、簡単にできることなのか、それとも把握はしにくいということになるのかどうか。

3点目は、信託業法の改正があって、それから信託法の改正が進んできておりますけれども、先ほどのお話だと投資信託法はそういう改正とは別枠で、投資信託法の世界の中で完結させてほしいというように聞こえたのですね。それは受益者集会とかガバナンスのところというふうにお聞きしましたが、全体に信託業法、信託法の改正と投資信託法で同じように考えてもいいよというところと、ここは違うというところをもう少し明確に、なぜそういうふうにお考えになるのか、受益者集会のところだけなのかというようなあたりをもう少しお話頂きたいと思います。

○神田部会長

それでは、金子さん、よろしゅうございますか。

○金子投資信託協会副会長

最初の銀行関係の販売の話ですが、実際問題、銀行窓販が始まったのは1998年なのですね。そして、急速にシェアが伸びておりまして、公募の投信で言えば34%、35%に近づいているという意味で大きなウエートを占めております。ただ、日が浅いということもありますし、銀行で売られているものについて、投資家が大きく値下がりしたということでもないということもあって、私たちが聞いている限りでは銀行のトラブルは少ないのではないかと思われます。私のところへ苦情でまいりますのは、昔売られたものというか、バブル崩壊前という話もありますので、日本証券業協会の関係にお願いすることが多いと思います。日本証券業協会はしっかりした苦情相談体制をとっておりますので、そちらの方で適切に対応しているのではないかと思われます。

1番目の窓口の関係ですが、私たちはいつでも窓口を開いて、説明書にも窓口の電話番号その他を書いておりますけれども、実際問題としてかかってくることはほとんどないという感じでしょうか。

2番目は目論見書とか何とかのコストの話で、先ほどお話した中でコストの比較で具体例があるかということですけれども、先ほどご説明しましたコストと効果の問題、あるいは、海外の商品の問題についても、具体的にこうしてほしいというものが直ちにあるわけではありません。投資信託についてはいろいろご配慮頂いておりまして、原委員ご承知のとおり目論見書の関係は非常なコスト負担になっておりまして、分冊化するということで法律も改正して頂いて非常によかったと思っているのですが、結果的には合冊になってしまって、負担がかえって増えたというような問題もありました。その辺は金融庁もいろいろ助力頂きまして、ご相談をしながら解決したいと思っています。

いずれにしましても、たまたま目論見書の場合は開示規制ですけれども、コストを考えるときには、一般的にいってこれから導入する規制、もちろん投資信託以外の問題も入っていると思いますが、そういうときにはそのあたりを十分考えないと、結果において厳しい規制だけが残るようなことになりますと、市場の発展というのが基本にありますので、そこをベースに考えて頂きたいという趣旨です。

どういう規制を導入するにせよ、新しく導入するときは目的と手段、効果、コストがバランスのとれたものなのかどうか、そのあたりを考えていきませんと、結果において規制の非常に強い市場になって、市場が死んでしまうということになりかねない。とかく規制というのは、導入するときはそれなりの理由があって合理的なのですけれども、一たん導入しちゃいますと、状況が変わっても積み重なっていく傾向にありまして、その結果、規制の非常に強い市場になってきている。ここ十数年にわたって規制緩和をしておりますので、かなり自由な市場になっていると思いますけれども、そのあたりを解決する必要があるのではないかという趣旨でございます。

それから、信託法と投信法の関係ですけれども、投信も信託を使っているものでございますので、基本的に信託法の考え方は投信法にも反映されるというのがベースとしてはあると思います。ただ、投信法は枠組みとして、一般の信託とは若干異なる性格のものもあると。最近、信託でも多数の受益者がいるというケースもありますけれども、投資信託みたいに受益者が非常に多数の者を対象にしている、あるいは、受益者が毎日のように出たり入ったりしている、受益者が常に変動しているという特徴。それから、受託者と委託者の関係だけではなくて、委託者・受益者、それから、受託者・受益者という、委託業者が受益者のために行動しているということ。

そういう特殊性がありますので、その特殊性も勘案して特別法の中ではそれなりの配慮をしてほしいと。ですから、一般法と違う性格を持つ点を配慮しながら、特別法の規制を考えてほしいという趣旨であります。例がいいかどうかわかりませんけれども、今、受益者集会の話を申し上げましたが、例えば受益者の意思確認のために多数決でやってはどうかという議論が行われていまして、受益者名簿をつくるべきであるという議論があるわけです。

委託者が受益者名簿を持つことになりますと、投資信託の場合は販売会社が受益者を管理しておりまして、委託者が受益者を管理するのは実際問題非常に難しいという状況があります。それは小さな例ですけれども、投資信託は不特定多数を対象にした集団投資スキームでありますので、そのあたりを十分勘案した上で一般法の原則を、一部、特別法の中で修正しながら対応してほしいという趣旨でございます。

○神田部会長

よろしいでしょうか。

○原委員

はい。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

それでは、ほかの委員の皆様方、いかがでしょうか。

東委員、それから、お隣の高橋委員。

○東委員

金子さんに教えて頂きたいのですけれども、先ほど投信商品をリスクで分類するのは難しいというお話があったわけですが、かつて投資信託をリスクリターンで5つに分類していた時期があったと思うのですね。それをやめた理由として、おっしゃった分類の難しさによるものなのか、それ以外の問題点があったのか。また、当時5つに分類したことによる効果があったのかということを教えて頂ければと思います。

○金子投資信託協会副会長

リスクによる分類が難しいと申し上げたのは、規制を類型化して考えていく上で、リスクによってきれいに分けていくのは難しいんじゃないかという趣旨であります。ですから、リスクを考えていろいろな商品についての規制を考えていくというのはもちろんあり得ることだと思いますけれども、ボックスに入れてリスクに応じて、例えば2つにせよ3つにせよきちんと分けていくのは、さまざまな商品がある中で難しいのではないかという趣旨で申し上げたわけです。

今、お話のあったリスクリターンの分類は、投資家にとっては非常にわかりやすい分類であったと思います。投資信託の中で比較的リスクの少ないもの、比較的リスクが大きいもの、これを5つに分けまして、それをそれぞれのファンドについて示したということで、投資家には目論見書をきちんと読んでもらわなければいけないのですけれども、概略として感じがわかるという意味で非常に有用な分類であったと。かつ、その分類を今でも維持してほしいといった声も多数あります。

それでは、なぜこれが廃止されたのかということですが、背景は2つあります。1つは、評価機関が出てきたので、評価機関の評価を尊重しようということ。もう1つは、投資家にとってわかりやすいリスクリターンの分類であっても、委託業者がこれを判断するということで客観性がないということから、目論見書に載せることができないということになったわけです。そういうことで、目論見書に使えないような分類ということでこれが利用されなくなってきた。この2つがその要因であります。もちろん、投資信託をリスクに応じて分類というのは観念的には可能だと思います。

問題は第三者がきちんとやれるかどうか、あるいは、客観的にできるかどうかという話でありまして、今のいろいろな規制の類型を考えるリスクリターンの話とはちょっと違うのではないかと思います。規制の場合は、基本的な規制があって、そのうちリスクが非常に少ないものがあれば、それは例外にする。例えば、日本の国債は開示規制の関係で別な取扱いをされていますけれども、そういうものを例外的に外していくとか、あるいは、リスクが高すぎるので問題があるということであれば、それは規制を加重するというようなことはあり得るのではないかと思いますが、類型化した規制を当てはめるのはちょっとどうかなという感じでございます。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

それでは、高橋委員、どうぞ。

○高橋(伸)委員

同じく金子さんに2点ご質問させて頂きます。

1つは相談苦情に関することですけれども、投資信託はもともと製販分離が進んでいる商品ということで、数パーセントぐらいしかないと思われます直販以外は、原則として投信協会では苦情受付を行っていない。表現は悪いですけれども、門前払いと言いますか、販売会社に行ってくださいと、こういう状況になっているんだと思います。販売会社に行った場合には、日証協の会員会社であれば消費者が斡旋を申し出た場合に話し合いのテーブルに着く、こういう枠組みだと理解しております。

そこで1点目の質問ですけれども、数パーセントであっても、投信の委託会社が直販しているケースで、斡旋の対象にならないケースがあるのかどうか。つまり、有価証券ではあるのだけれども、日証協の会員会社じゃないケースがあるのかどうかお伺いしたいと思います。

2点目は、先ほど苦情相談に関しては一元化も一つの案ではないかというご意見があったのですけれども、全投信委託会社が斡旋のテーブルに着くのであれば、投信に関してだけ言えばそういうご提案は出てこないだろうと思いました。したがいまして、そのご提案が出た理由は何なのかを教えて頂きたいと思います。私の問題意識としましては、変額年金保険は投信とかファンド・オブ・ファンズとかもろもろ組み込まれているわけですけれども、変額年金保険自体は有価証券とみなさないということで、日証協の斡旋が利用できず、生保協会の相談所が受け入れるということになっていると思います。

ただ、保険会社が組み込んでいる投信が目論見書どおりに運用されているかどうかということに関してのチェックがきちんとされているかどうかに関しては、契約者からは見えないわけで、問題が起こったときに、投信委託会社と言いますか、投信協会に持ち込むべき問題なのか生保協会に持ち込むべき問題なのかわからないところが出てくるのかなと思っております。その点を含めてお答え頂けたらと思います。

大きな2つ目の質問はクーリングオフについてでございます。投資に関してはなじまないというご説明がありまして、なじまない理由の一つに信託財産からの返却になるとほかの投資家に迷惑がかかるということでございました。投信のトラブルを見た場合、販売勧誘の問題がかなりあり、販売勧誘時の問題で解約をしたいというか契約の取消をしたい、クーリングオフしたいとなった場合には、販売業者に責任があるはずです。法律上どうかわかりませんけれども、販売会社が補てんすべきではないかとも感じられるわけですが、その点を教えて頂きたいと思います。

最後に、投信協会への質問ではなく、意見になるのですけれども、クーリングオフがないものとして、今、トラブルになっているのが変額年金保険でございます。クーリングオフがないだけではなくて、保険商品だということで解約控除がかかってしまいますので、販売勧誘されたものが自分の思ったような商品でなかったことに、保険証券が届いてから気づく事態が起きています。保険に入った覚えがなくて、銀行の窓口で預金のようなものを買ったと思っていたのに、保険だったと。こういうケースが今かなりトラブルになっているわけです。

そういうケースで、今の投信と同じように、販売勧誘に問題があるのであれば、特に高齢者が被害に遭っておりますので、一定期間、クーリングオフと同様に解約控除を適用しないのが妥当で、そういう制度を持つ保険会社があるのは承知しています。ただ、その場合も運用がマイナスになっている場合には、解約控除は適用されなくても、投信のマイナスの被害を被ってしまうわけです。投信と同じような問題があると思っておりますので、こちらの部会の検討テーマに加えて頂きたいと思います。

以上です。

○神田部会長

ありがとうございます。

金子さん、よろしくお願いします。

○金子投資信託協会副会長

最初の直販の話ですけれども、直販をやっているところも結構多かったのですが、だんだん直販をやめる傾向にあります。ただ、今もって、例えば独立系のさわかみファンドみたいな直販を中心にしているところもありますので、そういうところは委託会社が苦情の対象になるわけですが、直販については私ども投信協会が引き受けております。したがいまして、昨年から弁護士の仲裁センターを利用できるようにするための手続きも決めました。

いずれにしましても、直販をやっているところは委託会社でして、証券業協会には入っておりません。したがって、それにかかる苦情は投信協会で受けていますが、今のところは1件もありません。今後出てくればその解決にできるだけ努力したいと思いますし、それでできない場合には弁護士会の仲裁センターへつなぎたいと思っております。

それから、変額保険の中に投信が組み込まれている場合の投信が目論見書に違反している場合という話ですけれども、これはどう考えていいのか、私もお答えしにくいのですが、委託会社が目論見書に反して運用を行うことは考えられないのではないかと思っております。

それから、苦情相談窓口を1つにしてはどうかという話ですけれども、私どもがそうした方がいいということではなくて、ここで自主規制機関を1つにした方がいいのではないかという議論があるとすれば、業者に対する規制と投資家に対応する窓口とはちょっと違うので、どうしても1つにしていかなければいけないと意見が強いのであれば、そういうことも考えられるという趣旨で、今のところ問題がないのであれば、それぞれがうまく対応すればいいのではないかと思っております。

それから、2点目のクーリングオフですけれども、問題が販売会社にあるのであれば、これはファンドの負担ではなくて販売会社の負担だというのは、そのとおりだと思います。ただ、先ほどちょっとご説明しましたように、証券事故という制度がありまして、法令に反するようなもの、あるいは、誤認勧誘というものがあった場合には、証券事故として販売会社が補てんしている。これは法律の損失補てんの対象外として法律上認められている措置であります。そういうものは今でも処理できるわけであります。そうすると、残るものは、買ったけれども、そのうちに基準価格が下がってきちゃって、できれば解約したいというのを許すかどうかという話になるのではないかということで、ファンドの負担になる恐れがあるということを申し上げたということでございます。

○高橋(伸)委員

ありがとうございます。今の件で1点だけ、意見として申し上げたいのは、投信の直販の苦情は投信協会で受け付けるとしても、紛争になった場合は弁護士会の仲裁に送るということですよね。弁護士会利用の初期費用の負担のみをして、あとは、はっきり言えば知らないということになると思うのですが、その場合には日証協の斡旋制度との差が大きすぎると思うのですね。ですから、直販会社に準会員なり特別会員というような形で日証協の斡旋を受けられるようになるというのも一つでしょうし、先ほどの一元化論で言えばまさに同種の苦情・紛争であるから、同じような処理をしてほしいということで、変額年金も含めて苦情・紛争処理の一本化を検討する必要があるのではないかと思いました。

以上です。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

どうぞ、藤沢委員。

○藤沢委員

プロとアマのことに関して、先ほどもご質問があったのですけれども、もう一度伺いたいと思います。1つは、投資顧問協会さんにですが、プロとアマを判別するときの目線として、アドバイスというかご意見を頂きたいと思うのです。先ほどのお話ですと、ロットが一つの基準になっていたように思いますが、ロット以外でプロとアマを判別する基準のようなものをお考えとしてお持ちでしたら、伺いたいと思います。

それから、同様にプロアマの議論において金子さんに伺いたいのですが、先ほどプロアマの部分の中で「公募の空洞化」というお話が出てきたかと思うのですけれども、投資信託の中で私募が大分膨らんできて、公募よりも私募の伸びの大きさが目立っているように思うのですけれども、実際に投資信託の業界においてこの公募の空洞化をどんなふうにお考えになっているのかをお伺いしたいというのが1つ目です。

2番目に、一任業務の範囲の件につきまして、辻さんの方からお話があったのですけれども、投資家のニーズによってもっと広げていかなければいけないのではないかというところで、確かにアメリカのカルパ-スなんかを拝見していると、ワインをつくっているような畑に投資をしていたりするわけですけれども、どこら辺までその範囲を広げていくことが現実的なのかということ。それから、投資家のニーズがどういうニーズなのか、具体的な例があれば伺いたいと思っております。

3番目は、再び金子さんにですけれども、ファンドの統合を最後におっしゃいまして、私も業界においては運用会社の信頼性を高めるという意味でも統合という法制度は必要なのかと思うのですが、このあたりをもう少し詳しく伺いたいと思います。

4つ目は、ガバナンスに関してです。ガバナンスというのはディスクロージャー等含めていろいろな考え方があると思うのですけれども、お客様になって頂いてから情報開示していくということも大切なのですが、お客様になって頂く前にいかに情報を提供していくかということで、辻さんは「投資顧問の方はコンサルタントや評価会社からパフォーマンスとか定性評価の情報がもう提供されて、その判断の下に投資一任会社が選ばれている」という話をされました。そういう事前の情報に対する規制はあるのかどうかを伺いたい。

金子さんにも同じ観点で。投資信託は、評価会社の情報はありますけれども、一般の方が販売会社、運用会社から過去のパフォーマンスを比較しながら伺うことはなかなか難しいですし、広告の規制もありまして、パフォーマンスはただで見れる情報の中にはなかなかないのですね。そういった事前の情報の必要性について伺いたいと思います。

○神田部会長

それでは、よろしくお願いします。

○辻日本証券投資顧問業協会会長

先ほどちょっと誤解があったかもしれません。プロとアマをどこで線引きするかというのは難しいのですが、基本的には法人、事業会社も含めてある程度の規模を持っているものをプロというのかなと。どこで線引きするかというのははっきりとできないのですが、今の投資顧問業界で一任業者として対象としているのはプロを対象にしていると。概念的に言えば、事業会社を含め、機関投資家と言われるものをプロと考えております。富裕層も含めて個人的なもの、会社でも非常に小さな会社はアマというのかなと。知識のレベルとか、顧客が組織として運用に対する知識があるかどうかというような。ちょっと曖昧でございますが、そういうふうに考えて、サイズで考えているということではございません。

2番目の投資対象の範囲をどこまで広げるかというのは、顧客のニーズがどこまであるかということでございます。ワイナリーとかどんどん広がっているのは事実でございますが、年金で言いますと、常に時価評価をしなければいけないということがありまして、それができないようなものは難しいのではないかと。ですから、投資対象を広げる場合、できるだけ広い方がいいと思いましても、年金もそうですし、その他、生保、地銀もそうですが、時価会計にできるようなものでないと、コモディティーなんかは入ると思いますが、無限に広げていくということは考えてない。不動産もちょっと難しい面はありますけれども、不動産のようなものは入るかなと考えています。

3番目の評価会社というのはどういうご質問でしたか。

○藤沢委員

運用をした後にお客様に対して情報を提供するのではなくて、受託される前に事前情報として出してもよい情報、出してはいけない情報というような区別はあるのでしょうか。

○辻日本証券投資顧問業協会会長

それはありません。評価というのはあくまでも過去の実績、パフォーマンスの評価でありまして、将来を予測するものではないわけで、トラックレコードを出して、それをいろいろな面でリスク分析しながら評価するということであります。新しく運用会社を採用する際には主として過去のトラックレコードで採用するわけですが、これは将来を予測するものではない。それを3カ月ごとに実績を評価していく、そういう仕組みになっております。

○金子投資信託協会副会長

できるだけ簡潔に努力いたします。

第1点目の公募の空洞化ですけれども、確かに私募は急増しておりまして、一昨年が10兆円、昨年末が15兆円、今や17兆円というふうに急増しています。ただ、私募投信の増加は機関投資家が中心になっておりますので、公募の空洞化という問題は起こらないと思いますが、これからプロの範囲に個人投資家を広く、例えばオプトインみたいな形でやっていくと、時の流れとして規制の緩い方へみんな流れていく。それは本当にいいのかというのを留意してもらいたいという趣旨でございます。

2点目はファンドの統合ですが、ファンドの中を見てみますと、資産残高の少ないファンドが相当数に上っています。その結果、運用に適していない規模になっている。そういう場合にはどうするかというと、現在では期限前償還しかない。事実、期限前償還は100件から200件、毎年行われているわけです。投資家の中には、うまく運用してほしい、期限前償還されて不満だという声が非常に大きいので、そういう声にこたえて投信のファンドを統合することによって、より効率的な運用を実現していった方が投資家のためになるのではないかという趣旨でございます。

3点目は過去のパフォーマンスですけれども、販売用資料の取扱いが緩やかになりましたので、当然のことながら過去のパフォーマンスは販売の際には利用されていると思います。ただ、私もちょっと自信がないのですけれども、協会のルールガイドラインで、広告で過去のパフォーマンスを示す場合には、将来の運用成果等を約束するものではないことを表示することにしております。どういう趣旨かわかりませんけれども、誤解を与えないような配慮が必要だということで決めているものと思います。ちょっとはっきりしないのですが。いずれにしましても、過去のパフォーマンスを投資家に示すのは当然のことでありますが、それが誤解を与えないようにして使うということではないかと思います。

○藤沢委員

ありがとうございました。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

○原委員

簡単に。10秒ずつ、意見だけです。

○神田部会長

では、簡単にお願いします。

○原委員

1つは、投資顧問業協会に加入していらっしゃる率が非常に低いというところが気になりまして、今回、投資サービス法の検討で自主規制機関がかなりグレードアップしてきますので、加入率の低さをどのように考えていったらいいかということが検討の中に出てくると思います。

もう1つは、最後の発言の中で出ていましたファンドとファンドの統合の話です。さっきは質問が多くなるので控えたのですけれども、大変気になっているところで、今またご回答を聞きましてなおさら気になりました。確かに運用に適していないものは期限前償還しかないということで、ほかと一緒にするというのはありますけれども、悪い果実は退場して頂きたいという思いもあるので、一緒くたになっていくというのは大変気になるのです。これについては金融庁の側でどういうことが考えられているのか、検討を尽くして頂きたいと思います。

○神田部会長

ありがとうございます。

池尾先生、お願いします。

○池尾委員

時間が過ぎているのにすみません。投資顧問協会の資料の最後のページに出されている論点、利益相反防止の枠組みをどう考えるかと。この論点に関して、質問になるのか意見になるのかわかりませんが、バイサイドとセールサイドは明らかに利害関係は対立するわけですから、両方の立場に同時に立つ、あるいは、両方の代理者を同時に務めるということをすれば、利益相反の恐れが生じるわけですけれども、そもそも両方に与するというのは受託者責任が果たせないポジションに自らを置くということのはずなのですね。

これは私の誤解かもしれませんが、最後の3番目の「利益相反防止の枠組みが構築され、そのエンフォースメントは」というところは、公的規制としてこういう枠組みを用意しなければいけないというニュアンスで読めるのですね。しかし、受託者責任を全うできないようなポジションをとることは、業者側の問題であって、仮に兼業したとしても、セクションごとにファイアウォールでかっちり分けるとか、そういう形で利益相反を起こさないようにするというのはコンプライアンスの問題というか、公的規制で要求されることではなくて、投資サービス法のレベルで受託者責任ルールが明確化されていれば、それの実行化の問題として別途規制が要るという話なのかというのが疑問に思われたので。意見に近いですが。

○神田部会長

どうもありがとうございます。

非常に重要な点だと思います。

淵田委員、お願いします。

○淵田委員

長くなっているのにすみません。今の池尾委員のコメントに関連するところですが、必ずしもコンプライアンスとか公的規制を持ち出さないと利益相反の問題が解決できないわけではないと思います。残高手数料制を採用し、取引1件ごとに手数料をとらないとか、あるいは、成功報酬の形態をとることが考えられます。そういうインセンティブシステムの工夫で利益相反が回避されるような枠組みをとることも可能であるということです。この他、基本的な契約を取り交わした後、1件1件の売買においては、完全な任せではなくて、顧客にこれでいいかどうかという確認をとったりするようなことも工夫されているようであります。したがいまして、一任勘定か投資助言かという一刀両断のアプローチをとるべきではないと思います。今、重要なことは、現実に一般大衆に対して投資アドバイスが行き届いていなくて、これを行き届かせることが求められるし、一般大衆にとって投資商品、投資サービスを購入したり、注文執行したりする場とアドバイスを受ける場がバラバラでいいのか、いわゆるワンストップショッピングを実現すべきではないか、ということだと思います。そういうことも考えますと、顧客のニーズに合った多様なサービス、いろいろなレベルのサービスが円滑に提供されるということがポイントであって、そのとき生じ得る利益相反の問題は、規制やコンプライアンスもさることながら、手数料構造などいろいろな工夫で回避していこうというスタンスが必要ではないかと思っています。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

まだまだご意見もおありかと思いますが、この後も引き続き、「集団投資スキームについて」のメモについてご意見を頂くこともありますので、先へ進ませて頂きたいと思いますが、よろしゅうございますでしょうか。

ありがとうございます。

それでは、お手元の「集団投資スキーム(ファンド)について(2)」、それから、「市場のあり方について(2)」、この両方につきまして、事務局からご説明をお願いします。

○大森市場課長

本日は時間がなくて議論が途中になりましたら、次回に引き続きお願いするという前提で、資料2と資料3を適宜参照して頂きながらお話申し上げます。

ファンドについては、既にここまでのセッションで相当触れて頂きました。この議論も他の論点と同様、投資対象によって分立している法制を可能な限り横断化していくという方向性にこれまでご異論はなかったと思いますが、ファンドへの投資者の数とかリテラシー、プロアマ度合いによってどこで線を引くかが、各国共通の課題になっております。昨年改正した組合型ファンドも投資対象を広げていくなら、今日お話頂いた方々の業務と実質的に同じではないかというのが背景でしたが、零細過ぎるとディスクロージャーをはじめとする規制コストに耐えられなくなります。

これまで経済産業省が取り組んでこられたベンチャー振興策も、シリコンバレー的と言いますか、ガレージでやっている、アイデアはあるがお金がない人たちが、短期間で大きな会社になれるような社会が望ましいという価値判断があって、全くそのとおりだと思いますけれども、ベンチャー投資とかM&Aファンドというのは迅速に秘密裏に事を運ばねばなりませんので、全員で相談して事を運ぶ組合スキームというのは、元来一種のフリクションみたいな無理がございます。いずれにせよ、零細ベンチャーと脱法悪徳業者という区分は制度論としては成り立ちませんので、対象を広げるならミニマムの規制レベルも下げないと機能しないと言えるかと思います。

また、資料2の4ページの追加部分に「プロ相手のファンドなら規制はミニマムでよいのか、透明性という観点から他のファンド並みにすべきか」とあって、先ほど金子さんからお話を頂いたSECのヘッジファンド規制強化を(注)で紹介しております。ヘッジファンドがオフショアに立地しているのは明らかに自らを不透明にしておきたいのですが、プロの大金持ちだけを相手にしているならそんなに問題はなかったんだと思います。今回の規制は、行儀が悪いということもあるのでしょうが、基本的にはファンド・オブ・ファンズの形で小金持ちまで参加するようになったとか、年金資金の運用先になって、それだけヘッジファンドのプレゼンスが高まってきたという背景がございます。

この規制そのものが大変な賛否両論があって、SECの中でもかろうじて成立したと記憶しています。SECに登録しなければいけないとか、検査に来られたりすると考えただけで萎縮してしまうという面があるのだと思います。日本では投資信託とかSPCといったファンドはそれなりに確立しておりまして、そういうスキームを使わないベンチャー、あるいは、M&Aファンドといった、いわゆるオルタナティブ投資の規模そのものは、今のところアメリカと比較にならないほど小さいのですか、日本の資本主義にとってこうした動きが意味を持ってくるかもしれませんので、制度論として追加でご意見があれば頂きたいと思います。

次に、資料3の市場、典型的には取引所をめぐっては、現実にかかわっておられる委員以外からは意見が出にくいですし、現実にかかわっておられると、自動化された東証のオークションシステムは効率的であるという大前提がありますから、市場間競争に向けた私どもからの「ニワトリ・タマゴ」みたいな制度論は最初からやや腰が引けておりましたし、頑張って議論する実益には乏しいのではないかといった意見も頂きました。今週はNYSEのスペシャリストが顧客の利益を損なう規制取引で起訴されていましたが、確かに日本ではそういったことは起こりません。したがって、実益に乏しそうな論点は資料から落としましたが、マーケットメークについては、自分の利益が損なわれていると怒っている顧客がいるのも事実ですから、その将来像も含めて、あり方を考えていくべきという論点は残しております。

むしろ取引所と上場企業の関係についての議論が高まっているのではないかということでございます。上場企業の経営権移動のあり方については、各方面で相変わらず活発な検討が行われておりまして、前回、私が「興奮してバタバタ制度改正をすると往々にして過剰なものをつくってしまう」と言いましたのは、万国共通の経験を申し上げただけで、証取法サイドで考えるべき課題についての金融審議会の検討をことさらゆっくりお願いしたいという気持ちはございません。

資料3の7ページでは、公開買付制度などのあり方の後に追加で、経済産業省の企業価値研究会で検討しておられる防衛策の結論部分を引用しております。こちらも神田先生がまとめられておりますから、注意深くつくられておりまして、経営者の保身のための防衛策は認めないという前提に立ち、合理的な防衛策として株主がプロキシーファイトにより「ノー」と言える機会を確保することを基本に、さらにマル1社外取締役などの第三者がチェックするとか、マル2TOBに移行する要件などを明確にしておくとか、マル3すべてに株主総会の承認を必要とするといった合理性を高めるための類型が挙げられております。

マル1からマル2、さらにマル3にいくに従って、株主保護上は疑義の少ない類型になっていますので、アメリカでもこの方向で防衛策を修正するとか、廃止することによって株主に見識を示す企業が増えております。アメリカでは敵対的買収やポイゾンピルの典型的防衛策が減っているのとは逆に、日本では急激な持ち合い解消に伴う敵対的買収への経営者の懸念の高まりを背景に、「みんなで渡れば怖くない」みたいなガイドラインを求める声が強くなっております。かつてのビッグバン改革のころは、アメリカの市場は経営者を裁くので資本効率が高いという認識がありまして、収益性向上に努めて株主に還元しなければ、市場に裁かれてしまうし、取締役会も株主の代弁者として文字どおり経営を取り締まっている。持ち合いを解消しながらそういうシステムを目指した道半ばで今回の課題が発生しているということだと思います。

この防衛策の基本は、どちらの経営者が株主のためになるのか見極めることだと思いますが、株主全員の意向を直ちには確認できないので、取締役会として何ができるかということになって、アメリカで行われてきた防衛策は、経営から独立した取締役の存在や取締役会と経営者の緊張関係を背景に有効に機能してきたのでしょうから、日本におけるガイドラインづくりというのは一層微妙な仕事だと言えると思います。この国ではまだ一般に社員のうち偉くなった人たちが取締役で、そのうち一番偉くなった人が経営者ですから、取締役会だけでやろうとする防衛策は、アメリカ以上に経営者の保身ではないかという疑念を招きやすいと思います。

ニッポン放送もアメリカ流に対抗するなら、例えばライドドアに事業計画を出してもらって、社外取締役だけで検討した上で新株予約権の付与を検討するとか、あるいは、逆に解除するといったスキームになっていると、世間に与える印象も相当違ったのでしょうが、この国では社外取締役の独立性といっても、まだあまり信じられていないということもあって、初めから本音でぶつかって裁判で否認されるという展開になっております。

前回、この前段の公開買付制度の議論の出発点といたしまして、ヨーロッパ流の買収側にかなりの覚悟を求める入口のハードルの高い制度がいいのか、アメリカ流の買収側も防衛側もツールがいろいろあって、何をどう使うかで見識を問われるような制度がいいのかと申し上げました。公開買付制度と個々の企業の防衛策はもちろん両立しますが、公開買付制度をより包括的かつ柔軟に仕組めれば、例えば市場の内外の区分を見直すとか、仕掛けられた側に期間延長のオプションを与えると、それだけ個々の企業が株主保護上疑義のある防衛策を講じなくても済むようになるとか。この研究会のマル2にありますように、防衛策を解除して公開買付に移行し、株主の判断に委ねやすくなるという意味でトレードオフの側面がございます。このあたりについてご意見があれば頂きたいと思います。

また、この研究会のマル1にある社外取締役の第三者制をどう実効あらしめるのかという論点もございます。現在、アメリカではベライゾンとクエストという2つの通信会社がワールドコムの後身、MCIの争奪戦をしておりまして、現在のところ、MCIは双方を勘案して、クエスト--こちらがかなり高いオファーをしているわけですけれども--よりもかなり安い値段を提示しているベライゾンを選択しております。当然、文句を言うMCIの株主もいるようですけれども、MCIの経営陣が保身のためにあえて安い方を選択しているわけではないということを、この比較考慮を主導しているのが元SEC委員長の社外取締役であるという事実がわかりやすく示しているように見えます。この背景として、資料3-6はNYSEの規則でございますが、NYSE上場企業の取締役の過半は社外でなくてはならないとした上で、独立した社外取締役とは何かということをかなり事細かく取引所の自主規制規則で定めているということでございます。

一方、前回も申し上げましたように、取引所が同じことをしようとすると企業側の抵抗に遭遇するのがこの国で、神田先生も参加しておられたコーポレートガバナンス原則の検討の場では、「何で東証やその背後にいる金融庁に経営を干渉されなきゃいかん」とか「自分のことは自分たちで決められる」とか、「社外だから優れているとは限らない」とか、「東証だって人のことは言えんだろう」とか(笑)、かなりのレベルの主張がなされておりました。別の役所に横並びの防衛策をつくってもらうのがいいのかとも思いますけれども、そういう時代になったからこそ、防衛策が経営者の保身のためか、企業価値を維持するためかを、経営から独立した社外取締役が判断しなければならない客観的必要性が高まっていると思います。

取締役会が株主の代弁者として、失敗したCEOを首にして、よそから連れてくるというような経営者市場はまだ日本にないですけれども、株主を代弁できる社外取締役プールぐらいはあった方がよさそうで、それを促すのは取引所だろうと思います。資料が行ったり来たりして恐縮ですけれども、資料3の4ページ下の追加部分に、前回ご指摘頂きましたし、今申し上げたことが書いてございます。「取引所は、企業、国民に公開するための場を提供しているので、その結果、参加した株主に対し経営権の移動といった株主の利害に重大な影響を及ぼす事柄については、社外取締役の独立性に限らず、株主のために責任を果たすのが、公開の場の提供者として当然ではないかと思います。

なお、資料のこの部分は上場企業のガバナンスという論点ですから、会社法と証取法上の自主規制規則の関係と書いてございますが、より一般的には会社法と証取法そのものの関係という論点もございます。アメリカだと会社法は州法ですから、自分の州に立地してもらうためには経営者にアピールしなければなりませんが、それが株主の利益を損なっていると連邦として判断すれば、連邦法たる証取法で規制して、州法が追いかけていくという力学になっているように見えます。日本では両方が並列になっておりまして、基本的役割分担はもちろんありますが、100パーセントどっちの話がクリアかというわけではないので、お互いに相手の仕事だと思っていたら必要なルールが抜けてしまったということがないようにしなければならないと、最近、特にそういう気持ちが感じられるようになっております。

以上でございます。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

今日は積み残しがあってはいけないのですか。

○大森市場課長

いえ、別によろしいです。

○神田部会長

では、論点の3というか、「集団投資スキーム(ファンド)」と「市場のあり方について」は別ですので、まず「集団投資スキーム(ファンド)について(2)」について、今日ゲストとして来て頂いた投信協会、顧問業協会の方との間でのご質問、ご議論とも関連しますので、特に追加でご発言があれば、それをお願いします。そして、その次に時間がある限り「市場のあり方について」についてご意見をお出し頂きたいと思います。

「集団投資スキーム」の方、いかがでございましょうか。

原委員、どうぞ。

○原委員

2点です。先ほどの発言はここで言えばよかったのかなと思いました。4ページに追加で書かれた部分ですけれども、投資顧問業の記載です。先ほども申しましたように、加入率が低いのはなぜかということと、無登録業者による持ち逃げ的なものもあるという感じもありまして、ここは規制の強化という方向でお願いしたいと思います。なぜ協会に加入していないかということで、登録料が払えないからとかおっしゃったのですけれども、そんなに財政が逼迫しているような業者がおやりになっているのかなというような感じもするのですね。どういう事業体が投資顧問業をやっていらっしゃるのかというあたりも大変気になりました。ですから、ここはぜひ規制の枠組みの中に入って頂きたいというのが1点です。

それから、全体的なところでもう少し踏み込んだ議論をお願いしたいと思っているのが、投資信託商品もどきのような、それから、証券化商品もどきのようなものが出回っていて、これが消費者センターにトラブルとして寄せられている状況です。どういうことをうたっているかというと、高利息、元本保証、確定利息ということをうたっています。組合だと言っていたり、匿名組合と言ったり、不動産投資と言ったり、私募社債と言ったり、海外投資と言ったりとかさまざまなのですね。これについては、初回のころに神田先生からもご発言があったように記憶しているのですけれども、出資法との整理をぜひもう一歩進めて頂きたいと思います。

以上です。

○神田部会長

ありがとうございました。

どうぞ、藤沢委員。

○藤沢委員

原委員の追加で。自主規制団体の件に関しましては、私も同感するところがあります。実際問題、投資顧問の助言業務を登録していらっしゃる方にどんな方がいらっしゃるかというと、単に本屋さんをやっている方たちで株が好きなので助言もとっておこうというようなレベルの方もいらっしゃるわけです。そうすると、大きな一つの自主規制団体に入ることは難しいところがあるかもしれませんので、何らかの自主規制団体に所属しなくてはいけないというような、自主規制団体も何種類かできてもいいのではないかと。ただし、どこかに必ず所属する必要性があるということをルールの中でご用意して頂くことは可能かどうか一度ご議論頂きたいなと思います。

以上です。

○神田部会長

ありがとうございます。

淵田委員、どうぞ。

○淵田委員

今の件については、イギリスのように自主規制機関が不要ではないかという考え方もあり得ると思います。業界団体として業界の水準向上を自主的に図るという意味での自主規制機関、それを自主規制機関と呼ぶのかどうかわかりませんが、それは結構なのですけれども、行政から委任されてやられるというのであれば、それは何らかの形で強制加入でなくてはいけないと思いますし、今の枠組みとは違うと思います。これは感想です。

資料2の5ページのディスクロージャー、「運用報告の内容についてどのように考えるべきか。例えば投資家が出資した資産の現状とその運用状況について報告すべきこととすることが考えられるがどうか」ということですが、およそ運用商品において運用状況の報告が要らないということはあり得ないと思うのです。不要という投資家もいないと思いますので、これは当然、必要だと思います。

資料2-2で、毎回、匿名組合契約を利用したファンドの表が出ているのですけれども、単にディスクロージャーをさせるのではなくて、その報告内容が正確かどうか、信頼に足るものかどうかというところも重要なところで、コンプライアンスとか会計監査の話かもしれませんが、匿名組合のケースを見ますと、情報開示のところが本当にバラバラで、会計監査がなされているところもあれば、売上本数をホームページで公開とか、そういうレベルもあります。こういう状況では問題があると思っております。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

池尾先生、どうぞ。

○池尾委員

今、淵田さんがおっしゃったことと関連しますが、何のために投資サービス法の議論をしているかという目的に関しては、私自身は市場機能の確保・強化こそ目的であると思っておりまして、広い意味での日本の資本市場の機能強化のためにやっていると思っているのですね。それでは資本市場の機能の命は何かというと、この場でわざわざ言う必要もないことですけれども、公平な価格形成と言っても効率的な価格形成と言ってもどちらでもいいと思うのですが、この場合、公平イコール効率的という世界だと思います。そういう情報効率的な価格形成の機能を高めるというのか大きな目的だと思うのです。

そういう情報効率的な価格形成機能の強化という観点からすると、4ページのシャドーを使っている部分とか、今、淵田さんが指摘された6ページの上の方のシャドーを使っている部分については、プロだけでやっているからといって、その結果の価格情報が開示されないというのは、本来の目的からするとそぐわないという感じを持っています。だから、できるだけ公正な価格形成機能の向上に資するような観点から規制を考えるという視点で整理することが必要ではないかと思います。

以上です。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。

それでは、田中委員、それから、古市委員の順番でお願いします。

○田中委員

何人かの委員が言われていますので、繰り返しになる部分もあるかと思いますが、ご了承頂きたいと思います。

ファンドについての考え方に関しましては、投資者保護のインフラを整備するという観点から、ファンドの規制に関しては、横断的、一律であるというのはこれまでの大原則として重要だと思います。それと同時に、ファンドの規制に関しまして、先ほど投信協会の金子副会長から、コスト、費用対効果の話がありました。これに関連して、先ほど原委員からも具体的にどういう例があるのかという質問が出たかと思いますが、私の理解しているところを申し上げますと、先ほど、ディスクロージャーをしなければいけないと、これは当然だよという話が出ていましたけれども、運用のディスクロージャーに関しても、運用者がディスクローズするだけでは不十分だと、外部の第三者が公表しなければいけないとか、いろいろな規制の部分で要件がどんどんついてくる。

ディスクローズするということをとっても、費用が何百万とか何千万かかるという規制になりますと、少額のファンドの運用を行っている運用者から見ますと、それだけでコストが年間数パーセントかかってしまうということが発生します。そうなりますと、パフォーマンスそのものが投資者の満足にかなわないということで、そういうビジネスが日本では行われなくなるという形が発生します。そうすると、同じような運用をするためには海外のファンドを購入しなければいけないという状況が発生する。こうなると、運用というところでの日本の市場の空洞化が発生するリスクがあると思います。一つの具体的な例としてはそういうことなのだと私は理解していますが、話がちょっと横道にそれてしまいました。

規制は間違いなく重要であるわけですけれども、規制のつくり方によっては機能しなくなってしまい、市場が潜在的には発展する可能性があっても、現実には発展しないということも生じてしまいます。したがいまして、規制の仕方に関しては、その効果とコストを十分考えなければいけないと思います。これはまたアマプロの議論にも結びつく話なのですが、すべて一律でということではなく、投資者のカテゴリーによって規制のあり方も明確に区別する必要があるのだと思います。

以上です。

○神田部会長

ありがとうございました。

それでは、古市委員、どうぞ。

○古市委員

初めての参加で、一言だけ。基本的に今と同じ趣旨の意見だと思います。

一律というところについては、機関投資家はどこまでがプロと区分するかというのは難しい話ですけれども、機関投資家は機関投資家として自分たちでの判断を持っております。登録されているといった一定のハードルがクリアされていても、我々の判断としてさまざまなデュー・ディリジェンス等をクリアする中で投資をしている。そのかわりに若干高い利回りを稼ぐということもございます。したがって、必要以上に規制コストをかけるということについては利回りの低下とか、先ほど課長からございました市場の活性化、新しいイノベーションといったことの阻害が懸念されると思いますので、一般論ですけれども、コストとのバランスをとりながらという規制をお願いしたいと思っております。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

淵田委員、どうぞ。

○淵田委員

先ほどバラバラになっているから問題というところを強調したような終わり方をしましたけれども、申し上げたかったことは、開示される情報が信頼に足るものかどうかということが、何らかの形で担保される必要があるのではないかということであります。例えばラーメンファンドで「入場者数に関する情報をホームページで公開」とありますが、入場者数ぐらい、いいかげんなデータはないので、そういうものを情報開示ということで投資家が信用していいものかどうかという気はいたします。当然のことながら、今、出されたように機関投資家、プロかアマかによって必要な情報のレベルは違ってしかるべきだと思います。

もちろんそれだけではなくて、例えば極めて流動性の高い商品ですと、時々刻々プライスは変わるわけであります。また毎日、基準価格が公表されるような投信の世界もあれば、一方でベンチャーキャピタルのように、流動性の低いものに投資されるケースは頻度の高い情報開示は必要ないと思います。それは単に投資家の性質だけではなくて、取引の実態、投資対象の実態に合わせて考えられる必要があると思っております。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

ファンドについて、ほかにいかがでしょうか。

東委員、それから、高橋委員の順番でお願いします。

○東委員

まず、プロとアマという分け方のところでは、私自身はプロを対象としたものについては限りなく自由度を高めておいた方がいいだろうと考えています。理由は、運用の世界がどんどん高度化してきているというところを考えますと、それに対応していかなければいけないということです。これは予想になりますけれども、ヘッジファンド等を代表としたオルタナティブという世界が相当大きくなっていくだろうという意味では、そこの自由度はかなり確保しておいた方がいいと思います。

その上で、アマチュアに対しては、ここにもございますファンドの届け出あるいはディスクロージャー等でも、一番気をつけなければいけないのはファンド・オブ・ファンズ、つまり、どこまで遡及してディスクローズさせるのかという点について、きちっとしたルールが必要なのではないかと思っています。

以上です。

○神田部会長

ありがとうございます。

高橋委員、どうぞ。

○高橋(伸)委員

1つは、期限前償還の問題です。先ほど議論になっておりましたけれども、ファンドの統合について賛否両論があるわけですが、私としてはある種のものはファンドの統合で投資家の利益に資するようにしていくべきだと思います。ただ、最近余りにも途中償還が多くて、どんどん新しいものを発行してどんどんやめていく状況にあります。これで投資家が被害を受けているわけですので、例えば期限前償還に対しては、事業者に一定のペナルティーを科すというような規制が必要ではないか。償還や統合をしたらすぐには新しいものがつくれないとか、そういうルールも必要なのではないかと感じております。

それから、2点目は受託者責任に関してなのですが、法制審議会でアメリカのプルーデント・インベスタールールの内容と同様のものを入れるべきではないかという議論があったけれども、信託法では入れなかったというふうに伺っております。これはまさに投資サービス法で入れていくべきもので、例えば分散投資義務のようなものですね、当該信託に適した合理的なリスクリターンを考慮した投資を行うべきであると、そういったものを検討していく必要があるのではないかと思っております。

以上です。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

それでは、ファンドの話はそろそろよろしゅうございますでしょうか。

あと10分ちょっとなのですが、せっかく「市場のあり方について」、大森課長らしいご説明を頂いたので、その雰囲気が漂っているうちに皆様方からご質問、ご意見をお聞きしたいと思います。残った部分につきましては次回以降にさせて頂きたいと思います。

いかがでしょうか、どの点につきましても、どなたからでもよろしくお願いします。

原さん。

○原委員

今、ブームになっている社外取締役について、4ページに網かけで新しく入っているのですが、社外取締役という存在が第三者の目として入っていくことについて否定はしていないのですけれども、余りにもブームになっているところが気になっております。実際に社外取締役の任を全うできるような見識を持っていらっしゃる方はまだ日本では少ないのではないかと、人材不足というようなことを感じております。そういう見識を持っておられる方は大変忙しいというところもあって、実態としてどれだけ機能できるかのかということ。

それから、実際にそういうことをやっていらっしゃる方も私の周りにいらっしゃるのですけれども、本当にやろうと思えば情報を全部開示して頂いて、時間をかけて努力もしてやっていらっしゃるということで、それだけの能力を持ち、時間も割き、情報を全部開示して頂いてやれるのだろうかというところがあって。私は方向性としては賛成なのですけれども、ただ書き込むということだけではなくて、社外取締役をきちんと市場の中で機能させていくためには、どういう方策を考えていくべきかということもあわせて検討して頂きたいと考えております。

以上です。

○神田部会長

ありがとうございます。

難問が多いようですけれども、いかがでしょうか。急に静かになっちゃいましたが(笑)、ありませんでしょうか。

○黒沼委員

今の点に関連して質問なのですけれども、資料3の4ページの網かけ部分は、アメリカの例などを参考にして、日本においても証券取引法で取引所に一定のルールを設置することを義務づけるという形で、間接的に上場会社の社外取締役の設置とか、上場会社の機関構成について、証券取引法に規定を置くべきだという話と理解してよろしいんでしょうか。

○大森市場課長

まさにそれも含めてご意見を頂きたいと思っております。

○神田部会長

どうぞ続けて。

○黒沼委員

それでは、もう1つ質問を重ねますと、金融庁としてはそれだけの意欲と覚悟をお持ちだということでしょうか(笑)。

○大森市場課長

私が金融庁を代表するのですか(笑)。2月8日から起こっていることに、政府の側がどう対応していくのかというのは大事なことだと思いますし、敵対的買収に対する懸念はあるのでしょうけれども、現に敵対的買収が行われるとかえって企業価値が損なわれるということがアメリカなどで多かったのは確かなのですが、それが起こらないようにするために防衛するという中で、経営者の保身ではない、株主のためであるということを客観的に担保していくことは、証取法を所管する行政としても極めて重大ではないかということで、意見を募らせて頂いているということでございます。

○黒沼委員

この問題はアメリカでは粉飾決算や企業の不正経営を契機に出てきた対応策なのですね。日本でも同じようなことはあり得る話でして、証券取引法を大規模公開会社法にしようという考えを持っている研究者も多いと思います。ただ、少し疑問なのは、ここに書かれているように、あるいは、大森課長がおっしゃられたように、この問題を企業の敵対的買収と絡めて議論すると範囲が狭くなってしまうので、今回、これを契機に証取法で会社法的なことも決めたいというのは理解できるのですけれども、敵対的買収だけの問題ではないと思います。

○神田部会長

ありがとうございます。

田中委員、どうぞ。

○田中委員

この資料で今まで触れられていなかった点がありますので、簡単に触れておきたいと思います。6ページの(4)一部上場商品の認可制度のところで、ここに書かれておりますように、現在、認可制度になっているので、機動的に新しい商品が上場できないというのはあります。それに対して機動的に新しい商品を証券市場に生み出していくということを考えた場合、届出制度の導入は考えるべきだというふうに考えます。

それが1点目で、2点目は、(5)の地方証券取引所のあり方に関してなのですが、もともとたくさんの取引所が存在していたという背景を考えてみますと、通信手段がこの何十年か未整備だったということが一番大きな理由ではないかなと思います。通信手段がなかったということで、集中できなかったという面とか、情報がなかなか伝達しないということで、地域で経済活動を行っている企業は知名度が全国的にならない、経済活動の情報が伝わらないということで、地方証券取引所の果たす役割が大きかった。それが現在のように通信手段が発達し、なおかつITでいろいろな企業情報、投資情報が簡単に入手できる状況下においては、見直すことは必要なのではないか。

それから、取引所のあり方を考えた場合、投資構造を前提とした場合、取引所というのは業界インフラです。インフラそのもののコストがたくさんに分散していると、割高になってしまうという側面があると思います。具体的な例で言いますと、個人の投資家はインターネット、ネット証券を使うことがだんだん増えているわけですが、そこで最大手のeトレードの場合、株式の委託手数料が5ベーシス、万分の5、0.05%。それに対して取引所では運営コストを考えると、地方証券取引所のコストは計算したことがないのですが、例えばジャスダック証券取引所の場合ですと、万分の2.5ベーシスぐらいの手数料を証券会社から徴収する。証券会社は割高なものを最終的には投資家に負担させなければいけない。今言いましたジャスダックの万分の2.5というのは東証の約10倍に当たります。そういうふうに、業界インフラが分散していると割高になってしまい、その結果として投資家に負担をかけるという状況が発生しております。

そういうところもあわせて、この5番目の問題については考えなければいけないというふうに考えております。

以上です。

○神田部会長

ありがとうございます。

それでは、高橋委員、どうぞ。

○高橋(厚)委員

先ほどの社外取締役の議論で、原先生から「そうはいっても人材不足ではないか」というご指摘があったと思いますが、確かに現在そうだと思います。ただ、我が国の制度は徐々にコーポレートガバナンスの体制が変わってきたとしても、社外取締役を中心に考えていく、あるいは、経営と経営監視をきちっと分けているような仕組みにまだなっていないと思います。

一つの流れとして、そういう方向が望ましいんだということであれば、そういうことを前提として、さっき黒沼先生がおっしゃったように、敵対的買収というだけの問題ではなくて、もっと広くいろいろなところで社外取締役を前提としたコーポレートガバナンスに基づく体制にしていくということ、むしろ制度の方で社外取締役を重要な位置づけとして設定していくことが必要だと思います。そういうことがなくて社外取締役に適する方の人材のプールとして出てくるというのはなかなか難しいのだろうと思います。

むしろ社外取締役を前提としたいろいろな制度、体制の整備、そういうものが望ましいという判断がまず必要だと思いますけれども、もしそういう判断だとすれば、そういうものを前提としていろいろな分野で制度をもう一回見直していくということが必要で、そういうものの一環としてここに書いてあるようないろいろな施策が出てくるのかなと思います。コーポレートガバナンスについて、取引所でルールをつくるということも、そういうことができて、そういう全体の方向が示されているのであれば、それを促進する制度として取り入れていくことが必要ではないか。敵対的買収への対応策として神田先生が中間的にまとめられた中にも、社外取締役の位置づけというのは大きくなっているかと思いますけれども、いろいろな分野で社外取締役を中心とした制度にしていくことがないと、人材不足という状況はなかなか乗り越えられないのかと思います。

○神田部会長

ありがとうございます。

そろそろ時間になっているのですけれども。

では、手短に。

○原委員

手短に一言だけ。今日の後半の議論の感想なのですか、私がコストの話の口火を切ったために、コストの話がいろいろな委員から出ました。私としては、公正な市場のためにかかるコストは必要な経費だと考えておりますので、今より負担が増えるから過剰な規制を避けるべきだということにはならないと思います。どういう仕組みを組ませていくか、どういうやり方をしていくかというところがポイントであって、エンフォースメント、実効性の確保のところでいろいろなことがやれるのではないかと思っておりますので、意見として述べさせて頂きました。

○神田部会長

ありがとうございました。

私も一点だけ、手短な感想ですけれども、日本人は、私もそうなのかもしれませんが、要求水準が高いので、例えば社外取締役の議論で言えば見識と能力のある方などと言い出しますと、引き受ける方も大変だと思うのですね。見識と能力が求められるのではなくて、むしろ独立性だと思うのですね。もちろん1人は財務に明るい人がいるとか、そういうことはあると思いますし、見識と能力があればありがたいですが、独立性だと思いますね。制度の議論をするときには。同じような問題がほかの論点についてもあるのですけれども、少し整理して議論した方がいいかなと、若干、個人的な発想として感じました。

今日も大変活発なご議論を頂きましてありがとうございました。多様なご意見を頂きまして、これからまだ大変ですけれども、積み残した部分は次回のご議論にさせて頂きたいと思います。

それでは、最後に事務局からご連絡がありましたら、お願いします。

○大森市場課長

私どもが毎回次元の異なる論点を並べるので、かえって議論がしにくいということもあるのかなと反省しておりますが、それを踏まえて次回、4月28日(木)午前10時を予定しておりますので、よろしくお願いいたします。

○神田部会長

どうもありがとうございました。それでは、これで散会させて頂きます。

午後12時04分閉会

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