金融審議会金融分科会第二部会会合(第2回)議事録

日時: 平成13年4月13日(金)15時03分~16時38分

場所: 中央合同庁舎第四号館9階 特別会議室

○福井部会長

それでは、大変お待たせをいたしました。ただいまから、金融審議会金融分科会第二部会の本日は第2回目でございますが、会議を開催させていただきます。

皆様、ご多忙のところご参集いただきまして本当にありがとうございます。特に保険のワーキンググループにご参加の委員の方、きのうに続きまして連続で大変ご苦労様でございます。

議事に入ります前に、新たに就任されました臨時委員、それから、異動のございました専門委員の方につきましてご紹介を申し上げます。

まず、臨時委員でございますが、大塚宗春委員でございます。

○大塚委員

大塚です。よろしくお願いいたします。

○福井部会長

それから、専門委員でございますが、浜田委員に替わりまして杉崎肇委員でございます。

○杉崎委員

杉崎でございます。よろしくお願いします。

○福井部会長

なお、前回の第二部会でご報告いたしましたとおり、審議の透明化の観点から、本日の会議も公開とさせていただいております。ご了承いただきたいと思います。

それでは、お手元の議事次第に従いまして議事を進めさせていただきます。

本日は2月の金融分科会におきまして、この第二部会の審議事項として掲げられました事項のうち、「金融機能の向上に関する諸問題」、それから、「国際的な観点も踏まえた金融機関監督」、この2つについてのご議論をお願いしたいと思っております。

最初に、乾総務企画局長よりこれらの審議事項につきまして、全般的なご説明をちょうだいしたいと思います。

○乾総務企画局長

総務企画局長の乾でございます。

2月22日の金融分科会におきまして、当第二部会について以下の4つの課題につきましての検討のお願いをしたところでございます。

お手元の資料2-1でございますけれども、「金融機能の向上に関する諸問題」ということで、ここでは銀行の資金調達、資産運用の両面にわたるルールの見直し。例えば銀行の資金調達手段としての社債について、金融債を参考としながら発行手続の改善の余地につき検討する、また、独禁法の検討状況を見ながら、銀行による事業会社の株式の取得制限、現行5%ルールというのがあるわけでございますけれども、そうした株式取得制限の見直しについても銀行法の立場からの検討を行うという点をお示ししながら、この第1の問題についての問題意識を申し上げたわけでございます。

2番目に、「国民のニーズに応えた金融インフラの整備」ということで、ここでは信託業法について、信託業における公益性をはじめとする信託取引の全般的なルール整備につき、じっくりと時間をかけた勉強を開始していただきたいと思っておりますということを申し上げたわけでございます。

第3に、「保険会社をめぐる総合的な検討」は、保険会社の経営をめぐる問題に適切に対処するために、資本基盤の充実手段であるとか、新商品の提供の促進、ディスクロージャーの改善やガバナンスのあり方など、総合的な取り組みを検討ということで、これは既にワーキンググループを設けて回数を重ねて検討を行っていただいているところでございます。

第4に、「国際的な観点も踏まえた金融機関監督」ということで、1月のバーゼル合意の見直しのパブリックコメントについて、この第二次規制案を国内規制や検査・監督の実務にどのように反映させるべきかを検討していきたいということを申し上げたわけでございます。

本日お集まりいただきましたのは、この第1の「金融機能の向上に関する諸問題」及び第4の「国際的な観点も踏まえた金融機関監督」について、審議のお願いをするためでございます。

ところで、去る4月6日に政府の緊急経済対策が決定されまして、お手元の資料2-2の中の「金融再生と産業再生」の項目におきまして、「金融機関の不良債権のオフバランス化の問題」と並びまして、「銀行の株式保有の制限について」という項目が盛り込まれたところでございます。

銀行の株式保有制限に関しましては、具体的には、銀行の株式保有額を銀行のリスク管理能力の範囲内にとどめるために、例えば自己資本の範囲内とする。これはマル1のところでございますけれども、といった株式保有制限のあり方に関する整備とともに、マル2はこれに伴う株式の放出について、「公的な枠組みを用いた一時的な株式買取スキームを設ける」ということがこの対策に盛り込まれたわけでございます。

マル3は、この株式保有制限の導入と株式買取スキームの2つにつきましては、「法的手当を含めた細目について可及的速やかに成案を得る」とされたところでございまして、金融庁といたしましては、銀行の株式保有制限に関するこの2つの問題を当面する重要な課題の1つとして位置づけまして、早急に取り組んでいくこととしたいというふうに考えております。

この2つの課題のうち銀行の株式保有の制限の問題につきましては、初めに申し上げましたように、これはかねてから金融庁として問題意識を持っておりまして、この第二部会におきまして、本年度、本格的な検討をお願いしたいというふうに思っていた問題でございます。

本件は我が国経済の基本的な構造にかかわってくる問題でして、銀行のリスク管理面での健全性、企業の資金調達における銀行の仲介機能ともかかわってまいりますし、また、株式の持合制度という観点から、いわゆるコーポレート・ガバナンスの問題にもかかわってまいります。また、国際的なBIS規制等の制度との整合性も見ていく必要がある等々、多面的な検討を要する重要な事柄であると認識をしています。

その際には、米国における最近の改正、すなわちグラム・リーチ・ブライリー法の制定など、外国の新しい動向の把握や銀行の株式保有の実態調査なども行う必要があると考えております。いずれにいたしましても、この第二部会の委員の皆様方のご意見を伺いながら早急に具体策を詰めてまいりたいと思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。

なお、対策の中の株式買取りスキームですが、この具体化につきましては民間サイドの考え方をお伺いしながら検討を進める必要があるほか、マル2の1)に書いてありますように、「政府保証等公的な支援を検討する」となっているわけですが、こうした公的な支援につきましては財政当局とも調整を図りながら検討する必要があることにも鑑みまして、この審議会における銀行の株式保有の制限の議論の状況も見ながら、買取りスキームの問題につきましては私ども行政当局において検討を進めてまいりたいと考えております。

今の問題とは直接は関連いたしませんけれども、金融庁といたしましては、個人投資家の株式市場への積極的な参加を促すことにより、欧米並みに個人投資家が直接金融市場を支えるようになることが望ましいとの認識のもとに、従来から証券関連税制、例えば株式の譲渡益課税の問題につきまして各方面に要請を行っているわけですが、この緊急経済対策で直接金融市場の育成の問題が取り上げられたことを踏まえまして、異例ではありますけれども、この時期に証券関連税制の見直しを税制当局を初めとする関係各方面に要望を行っているところでございます。

次に、国際的な観点も踏まえた金融機関監督、テーマの4番目の方でございますが、これにつきましては、現在、新BIS規制の議論が進められているところでございます。新しいルールの適用は2004年からとされているわけですが、国際的な議論を国内法制においてどのように受け止める、また、私どもの検査・監督実務をどうするかといったことにつきまして検討を行う必要があるわけでございまして、本件は今申しました株式の保有制限の問題といわゆる銀行のリスク管理の点で共通する要素が存在しているというふうに認識をしております。

以上、最近の経済対策の状況も含めてご説明したわけでございますけれども、本日は、この銀行の株式保有制限のあり方と、これに関します新BIS規制に関する点等につきましてご意見をいただき、その上で、銀行による株式保有のあり方等を検討する「金融機能の向上に関するワーキンググループ」、及び、新BIS規制の動きを踏まえた議論を行っていただく「自己資本比率規制の見直しに関するワーキンググループ」の設置をお願いをしたいというふうに思っています。

以上、冒頭申し上げましたが、よろしくご審議のほどお願いしたいと思います。ありがとうございました。

○福井部会長

ありがとうございました。それでは続きまして、皆様方のお手元にお届けしております参考資料がございますが、これにつきまして樋口信用課長、それから河野国際課長に続いてご説明をいただきたいと思います。

○樋口信用課長

信用課長の樋口でございます。

委員の皆様、お手元に、第二部会2-3の「銀行株式保有関連 参考資料」というのをお配りしてございます。こちらにしたがいまして、時間の関係がございますので、簡単にポイントのみご紹介したいと思います。

まず、1ページでございます。ただいま局長の乾の方からご説明いたしましたが、この銀行の株式保有の問題ということを検討するに際して、私どもは、多面的な検討というのでしょうか、それが必要であるというように認識をしております。1ページにありますのが、もちろん多面性の全部は網羅し切れてはいないと思っておりますけれども、この問題がどういうところでそれぞれ相互に関係しているかといったようなことをまとめてみたものでございます。

真ん中に二重の線で囲ってありますのが3つございますけれども、これはいわゆる銀行法といった世界で決められていることでございます。それぞれについていろいろ関連する事柄があるといった趣旨でございます。

まず、真ん中の3つのうちの上にあります「他業(異業)リスクの排除」と書いてありますけれども、ご存じのように銀行法におきまして、「銀行は、国内会社の株式について、原則、当該会社の発行済株式の5%を超えて保有してはならない」というようなルールが、この他業禁止の趣旨を貫徹するというようなことからも置かれているわけでございます。

実はこれには、そこの上にありますように、ご存じの独占禁止法にほぼ類似の規定が置かれてございます。こちらは、銀行による産業、事業支配力の抑止という趣旨で置かれておりまして、これについては、先般の規制緩和3カ年計画におきまして、現在の規制が現時点でも適切かという観点から見直すというようにされているわけでございます。

それから、銀行法におきまして、この左側の方に行きますと、「融資と併せた銀行の健全性確保」と書いてございますが、これはいわゆる大口信用供与規制、大口融資規制でございますが、銀行の場合、同一に企業に対する貸出や株式保有について、「原則、自己資本の一定割合(単体の場合は25%等)に制限をする」という規制がございますが、これによって投資リスクの抑制が図られているということでございます。いわば、今は融資と出資を併せた管理が行われているということであります。

これにつきましては、下にございますように、「銀行の融資機能と企業金融」といったような事柄もありまして、「銀行と企業のかかわりにおいて、起業支援(事業を始めるときの支援)などは、銀行による出資と融資が一体となって実施されている」といったような状況もあるわけです。そういう意味で、この話は資本市場へのかかわりの観点から銀行機能をどう考えるかといったような問題があるということです。

それから、右側に回りますと「自己資本比率の計算ルール」ということで、現行の自己資本比率規制におきまして、株式は 100%のリスクを持つアセットというようなことになっているということであります。これについてはまた後ほど順次ご紹介しますが、「新たなバーゼル合意」というところを見ますと、「銀行が投資先企業の発行済株式の一定比率を超えて保有する株式の残高が銀行の自己資本の一定比率を超える場合には、当該銀行の自己資本から控除する」といったようなルールについて、現在、各国のそれぞれの意見を聞いている状況でございます。

このようにこれですべて網羅されているとはもちろん申し上げませんけれども、いろいろな関係があるということでございます。

そこで、2ページ目であります。「株式保有制限についての国際比較」ということで、一番左側に日本がございますが、これは省略いたします。

米国につきまして、1、2と書いてございますけれども、1が、皆様ご存じのグラス・スティーガル法でございまして、「国法銀行は、原則として如何なる法人の株式も自己の計算により購入してはならない」というような法でございましたが、それがその後、いろいろな経緯もあるのですが、資料にありますように、「金融持株会社の子会社はマーチャント・バンキング業務(投資家への販売または自己の資産運用のために一般事業会社の株式を保有すること)に従事することができる」というのが99年の12月に成立をしましたグラム・リーチ・ブライリー法で定められたということであります。

ただし、その法律の施行のためのレギュレーションにおきまして、「マーチャント・バンキング業務における投資額は、金融持株会社のTier1の30%とする」ということ。それからもう1つ、これは現在まだパブリックコメントを求めていると聞いておりますけれども、「マーチャント・バンキング業務による投資額に応じて当該投資額の8%~25%を金融持株会社のTier1から控除する」というような仕組みが考えられているということでございます。これは金融持株会社が持っている株式というものにつきましてTier1に占める比率を考えて、その比率が高くなればなるほどTier1からの控除額を上げていくというような形のルールになっているということであります。

それから右側に、英国、ドイツ、フランスと書いてございますが、ヨーロッパの国につきましてはEUの共通ルールがございますので大体同じでございます。よく、ドイツ、ドイツというふうなことが言われておりますので、ドイツについて若干ご紹介します。

・ 一社に対する出資額(資本または議決権の10%以上の直接または間接の保有等)は、当該金融機関の自己資本の額の15%を超えてはならない。この場合の自己資本はTier1プラスTier2ということのようですが、これは1つの会社に対して10%以上持っているケース、これについてそれが今度は銀行側の自己資本から見ると15%を超えてはいけないということであります。

・ 一の出資額(資本または議決権の10%以上の直接または間接の保有等)の総額は当該金融機関の自己資本の額の60%を超えてはならないこれは一の対象の出資、つまり10%以上持っているものについて、これを合計したものについては、銀行側から見た場合に自己資本の額の60%を超えてはならないというような、総量規制的なルールが置かれているというようなことでございます。

このような形で、いずれの国におきましても、株式保有についてのルールというのが置かれているということであります。

3ページ目でございます。「日本の銀行の保有している株式の状況」、これは12年3月末でございますが、左側が「日銀統計月報ベース」、右側が全国証券取引所協議会というところで調べました「株式分布状況調査ベース」ということでございます。それぞれの相違は、下側に書いてございますが、日銀月報の方は、非上場株式も含む、そして12年3月末の簿価ということでありますので、原価法または低価法を採用している銀行が混在しているということであります。全国証券取引所側は、上場の株式というのが対象で、時価をベースに推計を行っている調査というふうに承知しております。

そうしますと、信託も含めましたトータルで申しますと、左側(日銀統計月報)で 100兆円強、右側で( 全国証券取引所協議会) で 115兆円強と、この辺は簿価、時価、それから株式対象の違いというようなことであろうと思います。

少し内訳を見てまいりますと、信託のところは、信託勘定等、若干複雑な出入りがございますが、そこから上にまいりますと、例えば都銀、地銀、第2地銀、長信銀というあたりで申しますと、それぞれ資本勘定との比較を書いてございます。都銀が28兆、資本勘定で申しますと17兆、地銀が 4.9兆、資本勘定が 8.6兆と、それぞれそういふうな形で見ていただければと思います。

それから右側( 全国証券取引所協議会) の方で申し上げますと、下の方に上場株式時価総額 461兆とあります。このうち銀行の保有する株式は信託も含めまして 115兆ということでございますので、大体4分の1がこの時点で銀行が持っているというようなことでございます。

4ページ目でございます。「銀行の総資産に占める株式の保有割合」です。これは今ご紹介したものをグラフにしたというような意味合いでございまして、資産に占める株式の保有比率が高いところ、例えば信託銀行あるいは都市銀行、そして比較的低いというのが地方銀行、第二地方銀行といった感じになっているということでございます。

5ページ目でございます。「投資部門別株式保有比率の推移」ということで、日米の比較でございます。上側が日本、下側が米国でございます。端的なポイントを申し上げますと、日本の場合は個人が18%、金融機関が30%程度です。下側の米国では、個人が保有している比率は高くて43%、金融機関が8%というようなことでございます。

6ページ目です。この辺も既にご承知の事柄でございましょうが、日米につきまして家計の資産構成、それから、事業会社の負債構成、資金調達というようなことから見ますと、やはり日本の場合は現・預金を持っている比率が高く、米国の場合は株式の比率が高いと。それから負債構成、つまり資金調達云々といったことについては、日本の場合は借入の比率が高く、米国の方は株式のウエートが高いという、まさにそういう構造になっています。この辺の問題意識というのは、先ほど局長よりご紹介しましたが、私どもとしてもろもろの観点から税制改正の要望を行っているような状況でございます。

最後の7ページでございます。「銀行が保有する事業法人株式の『BIS規制』上の取り扱い」ということであります。左側の下にございますが、「現行のBIS規制」というのは、先ほどもご紹介しましたが、「株式について 100%のリスクウエートを適用」ということでありますから、自己資本比率を8%といたしますと、株式保有残高 100に対して自己資本が最低8あることが必要ということであります。

右側に「第2次市中協議案」というのがございます。これはことしの1月に公表されたものでございまして、今後さらに検討を行い、本年末ごろに最終案かということですので、まだ内容は必ずしも詰まっているわけではないというような状況がございますが、ざっとご紹介します。

2つの軸を設けておりまして、「投資先事業法人から見た銀行の持株比率」というような「物差し」という言葉がいいかどうかはとにかく、そういったもので1つ考えています。例えば日本の先ほどのいわゆる5%ルールというのはまさに事業法人から見た銀行の持株比率に当たるわけですが、これについては「重大でない少数持分投資」、「重大な少数持分投資」、「過半数を超える投資」といった切り分けが行われているということでございます。

では、この辺はどうなると重大かどうかというあたりは現時点で申しますと、例えば各国の会計基準ですとか規制慣行により決めていくような事柄だというように置かれているということであります。

それから左側に縦の物差しがございますが、これは銀行から見た投資の額でございます。そこにありますように、「個別の会社の株式保有」、「個社宛で銀行資本の15%以上、あるいは投資合計で60%以上」というようなあたりで2つに分けられるということでございます。

そしてそれぞれに従いまして、その座標軸から「重大な少数持分投資」以上になり、かつ、左側の座標軸で上の方にいきますと「銀行の自己資本から控除」をしていくと。そこまで至らないというような場合には、「標準的手法」、「内部格付手法」というのがございまして、 100%を下回らないリスクウエートを標準的手法でかけています。あるいはベンチャーなどについては、各国の裁量で高いリスクウエートを、例えば 150とかなりを置くことも可能であるというようにされております。

また、いわゆる「内部格付手法」というのもございますして、これはご承知のように、それぞれ株価のいろんなリスクを各自が積算してリスクを評価していくというやり方がここでは置かれているということでございます。これにつきましては、これからさらにいろんな調整が行われていくというようなことでございます。つまり、この表で申し上げますことは、一番初めの表でもご紹介しましたが、銀行の株式保有の問題というのはいろんな切り口があるのだろうと思っています。つまり、産業と銀行のリスク間の接点ですとか、そういったものと並びまして、まさにBISとのつながりもあるということでございますので、今般この2つのワーキングを置いて、それぞれで、初めの金融機能向上に関するワーキングの方は今ご紹介しましたもろもろの観点から株式保有のことをまず考えていく。一方で、自己資本比率のワーキングというのは2004年の目標がございますので、そちらの方の切り口から考えていくというようなことで、両者よく調整もとりながらやっていく必要があるというように考えています。

とりあえず、私からは以上でございます。

○河野国際課長

国際課長の河野でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

時間の関係がございますのでほんの一言だけ、横長の資料2-4につきまして申し上げたいと思います。

今、信用課長の方からご説明をさせていただきましたように、このBIS規制の問題につきましては、まず1枚おめくりいただきまして、資料では1ページでございます。「BIS規制:経緯と今後の日程」ということで、ことしの初めに第2次市中協議文書というものが公表になっておりますけれども、これに対するコメント期限というものは5月末となっておりまして、さらにこの年末に向けまして最終案の詰めという作業がございますが、実際に適用に及びますのは2004年ということでございます。ただ、2004年と申しますと少し時間があるように見えますけれども、遅くとも1年ほど前には内容を明らかにして金融機関の方で十分な準備をしていただかなければならない、あるいはその前にさらにきちんとした検討を行う必要があるということになりますと、やはり来年の半ば、あるいは、どんなに遅くとも来年の末ごろまでにはある程度きちんとした国内へのいろいろな適用の関係、考え方の整理といったようなものが必要となってまいるかと思われます。

次にもう1枚おめくりいただきますと、BIS規制見直しの3つの柱というものがございます。第1の柱というのが「リスク計測の精緻化」ということで、今回は、ここにもございますけれども、自己資本比率の計算の上で分母の計算を精緻化する、ここをより丁寧なものにしていくということになります。

第2の柱におきまして、銀行自身が自己資本戦略を練られた上で当局はそれをレビューしていくと、いろいろリスクの測定の仕方などにつきましては銀行の方でまずおやりをいただくわけですけれども、当局はこれをしっかりとレビューをしていくということです。

そして第3の柱で、今度はマーケットの方でディスクロージャーを通じまして、銀行のマネジメント、特にリスク管理のあり方を評価していきまして、そこで規律が働くと、こういうような3つの柱の考え方に立っているのが今回の見直しでございます。

このときにどういう論点があり得るかということになりますけれども、もちろん、計算をどのように具体的に行っていくか、国内法令上どうきちんと定式化していくかという問題もございますけれども、さらに、自己資本比率というものがよりリスクに感応的になると申しますか、リスクに敏感に反応するようになりますので、これを監督上今度はどう生かして、当局としてそれにどう対応していくかということをしっかりと考えてみる必要がございます。検査あるいはその監督の日々の行政の上でそういった比率をどう見ていくかと。

そして第3の柱のもとでは、やはりこのディスクロージャーの中身が問題となります。計算そのものが複雑化する上に、各銀行ごとの自己管理というものを重視いたしますので、内容が一般投資家なり預金者に見えにくくなってはいけないと。そういう意味で、今回はディスクロージャーの充実ということが求められていることになりますけれども、これを国内にどう適用していくかといったような論点がございます。

最後のページではちょっとキャッチフレーズ的に今回の流れを申し上げておりますけれども、一言で申しますと、当局管理型の監督から自己管理と市場規律を中心とした監督へと。ただ、このことによって当局の役割が減ぜられるわけではございませんけれども、こういう1つの流れがあるということのご紹介でございます。

以上でございます。

○福井部会長

ありがとうございました。それでは、ただいまいろいろご説明を賜りましたけれども、そうした説明に対するご質問も含めまして、ご議論をしていただきたいと思います。

テーマは「金融機能の向上に関する諸問題」。この部会の議題を堅く言いますと、「金融機能の向上に関する諸問題」、それから、「国際的な観点も踏まえた金融機関監督」ということになるわけですが、より具体的には、「金融機関の株式保有制限とそのあり方」ということについて、ご議論をいただきたいということでございます。

株式の買入れ機構につきましては直接的にはこの部会の議論の対象とはしないということでありますけれども、当然その辺についてのいろいろなご見解のご披露は自由でございますので、そこまで含めてやっていただいていいわけですが、議題としては株式保有制限如何ということでございます。そういうことでよろしくお願いいたしたいと思います。

どなたからでも自由にご発言を賜りたいと思います。

○蝋山分科会長

時間が無駄ですから私からいいですか。

○福井部会長

どうぞ。

○蝋山分科会長

銀行の株式保有制限についてですけれども、樋口さんが、多面的な検討を要する問題で、資料2-2で書かれていることはその1つであると、全部をカバーしたものではないと言われたわけですが、そうだと思うのです。振り返ってみますと、私が関与しただけでも、かつて大蔵省時代の証券局で小川さんが証券局長のときに研究会がありまして、この問題を取り上げています。それから、証券取引審議会のいわゆるビッグバン答申の中でもこの問題を取り上げています。

これは金融機能、特に銀行の問題を扱っているのだからいいじゃないかと言われるかもしれないけれども、日本の株式市場のいわば健全化のためにもこういう銀行による株式保有というのは問題だと。あるいは、さらには持合いというのもこうした日本の株式市場の発展を妨げてきた1つの要因であるという視点をつけ加えていただきたいというふうに思います。これは正面から取り上げれば第一部会のものだということで、第二部会はそうじゃないなどと言われるかもしれませんけれども、やはり私は必要なのではないかというふうに思うわけであります。

一言で言えば、一般の投資家、ポートフォリオ投資を行う投資家の期待できる収益と政策投資と言われるような銀行を中心とした株式保有による投資というのは、やはり銀行であるがゆえに、あるいは取引先であるがゆえにという形で、非貨幣的な収益が期待される形で保有されている。そういう2つの企業の評価というものに基づかない形で株式が保有されるがゆえにどうしても株価形成は歪んでしまう、こういうのが趣旨なのですが、そういう観点をぜひどこかでメジャーな問題ではないかもしれないけれども、日本の企業全体にとってみれば非常に大きな問題なので、つけ加えていただきたいというふうに私は思います。

○樋口信用課長

今、蝋山分科会長からお言葉がございましたけれども、私どもとしましても、先ほど局長からご説明しましたように、この問題、株式の持合いは1つの重要なファクターであるというようなことで、先ほどの対策の中で「株式持合いの縮小を通じて我が国株式市場の構造改革と活性化を促すとともに、コーポーレート・ガバナンスの改善などに通じ」云々というふうにしていますが、まさにそういうふうな気持ちを持ってやっていきたいということでございます。

それから、そのことに関連しまして、証券市場というお言葉が今ございました。これについても先ほど局長の方から簡単にご紹介しましたが、私どもは今回の一連の議論の中で、直接金融市場育成のための税制というようなことが重要であるというように思っておりまして、先ほど個人金融資産に占める株式の割合が日本は低いというのを資料でご紹介しましたが、それについて目標を掲げていくと。例えば個人金融資産に占める株式の割合をドイツは十二、三パーセントということでございますけれども、ドイツ並みの10%台にまでもっていくというような目標を示しながらいろいろなことを考えていきたいというように思っております。

そして、そういう総論的な認識のもとに、税制改正としましても、株式等譲渡益の申告分離課税制度の改善に関係する税の問題等々について、関係方面に要望なりをしているということでございます。

○田中委員

蝋山さんにご紹介いただいたように、銀行の株式保有については昔から議論があると思いますが、しかし、現在の時価会計とか減損会計が実際に導入されようとしたとき、そして早期是正措置という形で自己資本比率との関係で銀行の資産内容について直接監視の目が行きとどく時代になったという今日から考えてみますと、銀行が信用仲介機能の不全を通じてシステミックリスクの源泉になることを避けようとするということは、この早期是正措置、そしてこの会計の新しい基準での措置が本来できている、あるいはできようとしているわけですから、それを超えることを銀行が株式保有していることにおっかぶせる理由は私はないと思っているのです。

個々の銀行についてはいろんなパターンがあるわけですし、これからはさらにパターンが増えていくわけです。ベンチャービジネスが多い地域においては地元の銀行はスタートアップ段階から株式保有をも通じて個々の事業会社に対するガバナンスを及ぼしているというケースも現実にあるわけですし、未公開企業について株式保有を通じて銀行にとってのビジネスモデルとでも言うべきものを現実につくり上げてきておられるところもあるわけでして、一律の規制でもって金融機関の個別の対応を抑制するということは、私はこれからの時代にふさわしくはないと。

ただし、システミックリスクの源泉に個々の銀行の資産内容のリスクが余りにも多いためにそうなるということは、他の手段でもって既に問題がアサインされている、問題に対して手段が割り当てられているはずですから、そこのところを手を抜くという話なら別ですけれども、一方で会計を、この時価会計制度を入れ、その他のディスクロージャーを徹底して、資産内容が投資家にとって明らかになる段階を迎えようとしているときに、さらにシステミックリスクを避けるためにという目的で銀行の株式保有制限を入れるというのは、私は目的に対して手段を重ね合わせ過ぎていると、結果として日本社会の今後の多様性を損なう可能性があると、そちらの方を懸念すべきではないかと思っております。

○福井部会長

ありがとうございました。どうぞ、池尾委員。

○池尾委員

今、田中委員から出された論点ですけれども、私も、経済学者としては、一律に統制するというふうなやり方に対してはそれこそ皮膚感覚的に余り好きじゃないというところがあって、ちゃんとした自己責任をとる体制があるならば株式保有を認めてもいいと。具体的に言うと、株式保有に伴うリスクをカバーできるだけ自己資本を割り当てる能力があるならば持てばいいし、自己資本を割り当てる能力がないならば持つべきではないというふうな考え方をとるべきだと思うのです。

そういうふうな趣旨で銀行のリスク管理能力の範囲内に収めるというふうな表現ぶりがされているのだと思うのですが、そうしたときに具体的に株式保有に伴うリスク量というのはどれぐらいの大きさなのだろうかというのを考える必要があると思うんですね。

それは、この間の状況を考えますと、例えば株式の一定のポートフォリオを1年間保有したときに最悪発生するであろう最大損失額、バリューアットリスクのようなものを考えますと、これは到底リスクウェート 100%では収まらないリスク量に多分株式はなって、今申し上げたリスク量に見合う自己資本が持てれば持っていいという自己責任ルールでやると、実は結果的に自己資本いっぱいまでは保有を認めるという一律規制よりも厳しい規制に実態としてはなるのではないかという、そういう感覚を持っております。

したがって、現実的に預金金融機関が株式を保有するというのは、株式の持つリスク量から言って、事実上かなり難しいのではないか。田中委員がおっしゃったように、ベンチャー等について資金を提供していく必要は言うまでもなく強く存在するわけですけれども、その資金がやはり預金で、しかも今のところ今もっとも来年度からまた条件が変わりますが、全額政府保証のついた預金によってファイナンスされるという、そこの構造をあわせて見直さないと、当たり前のことですが、金融機関ですから入口と出口と両方のバランスを考えて、そこは議論すべき視点ではないかというふうに思います。

ちょっと長くなりますが、今の論点に対してと、もう1つ申し上げたいところがあります。株式というのは、これも教科書的で申しわけありませんが、1つは、支配証券でコントロールという問題があって、企業経営にかかわるという側面があり、それからもう1つは、今申し上げていたようなリスクを伴う金融商品だという側面があると思うのです。ですから、ご紹介のあったBISの二次協議案でも2つの軸を考えているのは、やはりそういう支配証券という側面とリスクを伴う金融商品という2つの側面が株式にはあるから考えていると思うのですが。 支配証券というところを抜いて、リスクを伴う金融商品として考えて持合いの経済効果というのを考えますと、要するに、両立てで自己資本総額を膨らます効果を持っているわけですね。それは、銀行と企業の間で持合いが行われているとすれば、企業部門の自己資本も見かけ上膨らませるし、銀行部門の自己資本も見かけ上膨らませるということになっているわけです。ですから、逆に言うと、そういう持合いをやめればこれまで見かけ上あったはずの自己資本がなくなるという事態になるわけでありまして、銀行部門の自己資本の不足という問題ももちろん懸念されるわけですが、日本の企業部門の方の過少資本状態という問題も同時にそれはあらわにする可能性があります。

ご紹介いただいた資料2-3の6ページに「家計の資産構成」と並んで「非銀行法人部門の負債構成」も出ていますが、そうでなくても、これを見ただけでも日本の法人企業部門のイクイティーベースは非常に弱いということがわかって、それがしかも持合いで膨らまされているイクイティーベースだということになると、現実のイクイティーベースは非常に小さいということで、日本の企業部門は開発途上国にありがちのパターンですけれども、非常にハイレバレッジで実は今なおあるんだという、そういう問題点を露呈させるような効果があるということは、やはり考えておかなければいけないのではないかと思います。

以上です。

○福井部会長

どうぞ、島上委員。

○島上委員

一言だけ。事業会社と言いましょうか。発行体側からの意見として、(2)のところでお願いがあります(資料2-2)。

買取りスキームのところで、3)で「一定のルールにより決定する」ということなのですが、そのルールをつくるときに発行会社の総発行株式の一定範囲内というルールを考えていただきたい。つまり、銀行保有株式買取り機構が筆頭株主というような株主構成というのはどうも発行体としては何となく好まないという感じがありまして、やはり各銀行さんから相当数のものが、しかも、もっぱら特定の株式がそこに出て行くということのないようなルールづくりをぜひお願いしたいと思います。

以上です。

○福井部会長

どうぞ、岡部委員。

○岡部委員

質問なんですけれども、グラス・スティーガルとかEUの共通ルールによる規制を採用した場合に、市場への影響を防ぐための措置みたいなものは何かとられたのかどうか、そういうものは自然に市場で吸収できたのかどうか、そういうルールを決めただけで後はマーケットに任せたのか、その辺はどうなんですか。

○樋口信用課長

例えばグラス・スティーガルにしましても随分昔の話でして、正直言ってよくわからない部分はございます。アメリカの場合、その時点で銀行がマーケットに対してどのくらいの株を持っていたかという、そのあたりから実は必ずしも私どもが理解しない部分もありますので、そういったことも……。先ほど局長の方から、外国のこともまた調べなければいかんといった趣旨はそこにございますので、少し勉強を。また、ワーキングでの議論もありますので、勉強しながら進めていきたいというように思っております。

○岡部委員

EUの場合はどうですか、もしわかれば。そういうものは余り聞いたことがないのですが。

○有吉企画課長

EUルールの中では10年間の経過規定がございまして、10年間内で処分しなさいという標準ルールにはなっております。ですから、そこはそれが自然とできるようにと。

これはやや又聞きなので不正確な情報かもしれませんが、ドイツあたりでもルールをつくったときに50にしようかという話があったらしいのですが、50だと随分引っかかるので、60だとまあまあ大丈夫だというので60にしたというような話が、これはどれほどの信憑性があるかちょっと私もわかりませんが、そういう話もあると。いずれにせよ、もう少し詳しく調べさせていただきたいと思います。

○福井部会長

ちょっと議長が質問するのも変なのですが、勉強不足なものですから1つだけ質問をお許しいただきたいのですが。

EUのルールで、先ほどご説明いただいたドイツの場合、銀行が株式を保有する場合に対象先の会社ごとに10%以内の保有であったら自由だと、何の制限もないというふうに何となく一見見えてしまうのですが。つまり、日本の5%ルールに相当するものが10%ルールでやって、それならば自由だというふうに何となく見えてしまうのですが、それが正しいのかどうか。

○樋口信用課長

口で言うのはなかなかわかりにくくなってしまうかもしれませんけれども、ここのルールというのは、例えば銀行がある会社の株式について当該事業会社の株の発行済株式数を例えば15%持っている場合、それから5%持っている場合あるいは3%持っている場合といろいろあるだろうと思いますが、そのときに、10%以上ですから、つまり今の3つのケースでいうと15%持っている会社の株式、その会社だけがこのルールの対象になるということになります。それについて2つのルールがあって、15%持っている会社、10%以上ですね、この株式が今度は銀行側から見ると、自己資本の額の15%を超えてはいけないと、つまり、それは根っこから高さがそうなっていると。

・の方は、相手側から見て10%以上を超えて持っている会社が、今の会社だけではなくてほかに何社かあるといった場合には、その会社に対する株式保有だけが対象となっている。つまり、5%持っている会社あるいは3%持っている会社といったものの株式保有については総額60の対象になっていないということであります。10を超えているものだけを合計してそれはもちろんゼロから当該高さまでの根っこからの合計でありますけれども、それを合計して60を超えてはいけないというようなことでありますので。つまり、銀行が持っている株式の全部を単純に合計して、それが60を超えてはいけないというルールではないと。

ちょっとなかなか言葉でご説明するのは難しいのですが、そういうふうなことになっていると理解しています。

○福井部会長

つまり、それはわかりやすく言うと、5%ルールよりは緩い部分があると理解していいですか。

○樋口信用課長

日本の場合、例えば銀行法で認められている子会社以外の場合は5%ルールというのがきいておりますので、原則として5%以上持っていることはないわけですから、そういう意味で「緩い」という言葉がいいかどうか、ともかく実態としてはまさに「緩い」というようなことだろうと思います。

○島上委員

今のことに関連してちょっと質問させてください。ある意味での総量規制をEUがやらなかったのには何か理由があるのですか。10%以上は6割をと言って総量規制はやらなかった、そこに何か背景、理由があるのかどうか、あったら教えてください。

○樋口信用課長

先ほどバーゼルの今検討中の案というのをご紹介しましたけれども、私、先ほど横軸、縦軸と言いましたでしょうか、そういうふうな2つの観点から見ていますよということを申し上げましたが、これはヨーロッパのルールと共通しているということでございます。それはつまり、1つは、一つ一つの会社に着目して、そこで先ほど池尾先生から「コントロール」というふうなお言葉もございましたけれども、そういう観点から一定比率以上のものを持っているものについて、ある意味で言うと重くウォッチをしていくというような切り口があると。それはこのまさにドイツでいう1社に対する出資額が15%云々というところと共通をしていると。

それからもう1つ、先ほどのEUの話で申しますと、トータルで60というのが出てまいりました。先ほどのバーゼルのところで60というのが出てまいりましたが、それはいわゆる総量として見るという発想つまり、銀行の資産に占める比率というような事柄でありますので、それはいわば銀行のトータルなアセットの中でどのくらいの株式保有まで考えていったらいいかという、そういうリスク管理的な発想、その2つの物差しがあると。それはドイツのこのルールにおいても基本的には同じような感じになっているというようなことがあると思います。ちょっとご説明がうまくないのですが。

○岩原委員

EUにおける銀行の株式保有の制限については、私もまだ調べている最中で詳しいことはわからないのですけれども。ただ、最初にEU全体として入ったのは89年の第二次銀行指令なのですが、それが2000年の金融機関の規制などに引き継がれているわけですけれども。その前に実はドイツやフランスなどでは先にそれに類似する規制が存在して、それをいわば両方が触れるような形でEU全体としてまとめたのは89年の銀行指令です。

ドイツもフランスもそれぞれいわゆるユニバーサルバンキングの国であって、銀行がそれぞれ主要企業の株式をかなり保有してきたと。むしろ最初に問題になったのは、銀行が個々の事業会社の株を保有しすぎて独禁政策の観点から妥当でないのではないかという問題監視が最初の出発点でありまして、ドイツなどもモノポルコミッションが、独占委員会がむしろ日本のような各事業会社の株式の5%までしか保有できないという制限を最初は提案したのです。ところが、銀行界あるいは産業界からの反発が強くてなかなか実現できなくて、それでも途中から80年そして85年というふうに、むしろ個別企業は10%までしか保有できないようにしたらどうかというのを最初に提案されて、最終的に85年にそういった10%を基準にした規制がまずドイツで始まりました。

フランスも似たような経緯をとっていまして、最初は、個別企業の20%までの保有に限定するというような規制が84年に入っていました。むしろ個別企業に対する株式保有制限が先になって、それに対してあとから、いわばリスクの観点から銀行の資産との関係での総量規制的なものが入ってきたということになっているわけで、単に銀行のリスク管理の観点から入った規制ではなくて、むしろ産業政策というか独禁政策的なものが先にあって、あとで銀行のリスク管理の視点も入れた現在のような規制になっているというふうに理解した方がよろしいのではないかと思います。

○福井部会長

いかがでしょうか。

○田中委員

ことしに入ってからの株価の下落の背景に株式持合いから解け合いに入っている大きな流れがある。そして銀行が持合いから解け合いに入って事業会社との間で合意をして、株価を見ながら銀行の持株を外していくということが背景にあるから株は下がるんだというのがマーケットに少なくとも流布したわけです、また、そういうコメントをするアナリストも多かった。これが株価下落の背景に日本ではあったと思うのです。

ということはどういうことかというと、先ほど池尾さんが言われたように、銀行の経営者自身が過剰な株式保有は好ましくないと。特に会計制度の大きな変化の中で短期間に銀行経営上大きなリスクを負う可能性があるから、解け合いに入らなければいけないという形で自主的な努力をすると言っているわけですね、というか、それが背景にあるわけです。

まさに、そうすれば解け合いは過少資本になる可能性がありますから、経営者は一般投資家に経営体としての自分が経営している銀行の利点をどうやって売り込むのか、どうやって一般投資家の理解を得て株主になってもらうかというところでもう競争を始めているわけですから、そういう大きな流れの中で考えれば、経済全体が異常な収縮をするということでなければ、こうした努力は個々の銀行経営者にとってはもうマストですから、これは避けて通れないところにきているわけです。

それを背景として考えれば、今大きな枠組みは銀行経営者に競争を迫り、ビジネスモデルの確立を通じて差異化した、他の銀行とは差異化した自己の経営方針というのを今まさに迫っているわけですから、それをまた別の形で持株保有について特定の比率を入れて規制をするというのは、私は今まさに起こそうと思っていることからいって筋が通らないのではないかというふうに思っているのですが、この点はどうなんでしょう。ほかの委員の方々のご認識を聞かせていただければと思います。

○福井部会長

どうぞ、片田委員。

○片田委員

私も田中先生と近いような認識を持っているわけです。実態的な数字から言いましても、この四、五年、銀行の株式売却売越額は毎年2兆ないし3兆と言われているわけでして、ずっとそういうベースで続いてきております。今回のこういうふうな緊急経済対策の雰囲気、そういうものでさらに加速されることはあっても停滞することはないと、銀行自身の自覚もあるというふうに思っております。

そして、この2兆ないし3兆円というのは年間の証券市場の売買総額 300兆弱の1%程度でしかないというふうなことを考えても、本当にこの持合い株の放出が株価に大きな影響を与えたのか、若干の影響を与えているけれども、大きな影響は与えたのかというのは少し疑問かと思います。私が申し上げたいのは、銀行の自主的な経営判断の中で解消をしていく、そういう流れに既にあるのではないかということを1つ申し上げたいわけです。

もう1つは、別の問題なのですけれども、今ここに2つの問題があります、1つは銀行の保有制限の問題、もう1つは買上げ機構の問題。冒頭の事務局側の説明によりますと、保有制限の問題はこの分科会で議論し、買上げ制限の問題は行政の責任で検討すると言われていますけれども、一体この保有制限の問題がどういうふうな決着になるのか、これからの議論ですからわかりませんけれども、何パーセントなのか、自己資本の 100%なのか60%なのか。 それからもう1つは、時間軸の問題があるわけですね。先ほど10年というヨーロッパの話が出ておりましたけれども、少なくとも5年ぐらいでやれば、あと10兆ぐらいが自己資本をオーバーしている部分ですから自然解消が期待できるわけで、買上げ機構というのはもともと要らないわけですね。その辺のことを、つまり相関関係があるというふうなお話だったのですが、やはり両にらみでやっていかないといけないと、なぜ買上げ機構なのかなという疑問が残るわけです。

○乾総務企画局長

先ほどの機構の方は、買取りスキームの方は行政の方でと申しましたけれども、ただ、行政の方でスキームを練っていくに当たりましては、今、片田委員もおっしゃいましたように、審議会における保有制限の議論というものをにらむといいますか、フィードバックしていくことは当然のことでありまして、保有制限を課すとした場合、どの程度のレベルのものを課していくのか、また、どの程度のテンポでやっていくかによって買取りスキームの方の内容もどういうふうなことでやっていくかで変わってくることはそのとおりでございまして、よくフィードバックしながらやってまいりたいというふうに思っています。

それから、先ほどから株式市場の動向についてのお話が出ましたけれども、これにつきましては私ども自民党の委員会に呼ばれたときにも申し上げておりますけれども、銀行はここ数年持合い解消の観点から年間二、三兆の株をネットで売却しておりますけれども、この12月以降に株価が急激な下落になったわけですけれども、その過程を見ますと、銀行はほとんど売越しになっておらず、売越しになった週というのはごくわずかでありまして、むしろ12月以降の株価の下落というのは米国経済、日本経済の先行きの不安から、いわば個人の投資家あるいは投資信託等が売っているということで、外国人は週によって出たり入ったりという感じでありますけれども、そういう要因が多いわけでございまして、12月以降は銀行は必ずしも売っていないと。

また、銀行は10年、11年と二、三兆売っておりますけれども、その過程ではむしろ日本の株価というのは上昇を続けていた時期でありまして、先ほど片田委員が銀行の二、三兆は全体の売買高の1%に過ぎないのだからどこまでのあれがあったのかと言われましたけれども、まさしくそうと思うわけでありまして、銀行の株の売却だけでは株価というのは決まらずに、あくまでも 300兆全体の需給の中で株価というのは決まってきたということでございます。

○蝋山分科会長

非常に変なシミュレーションをしてみようと思うのです。日本の銀行は預金が半分以上のシェアを占めているわけですけれども、本当に銀行らしいのは、貨幣を、取引決済のために使われる当座預金あるいは普通預金の要求払い預金を発行しているというところが銀行らしいところです。しかし、日本の銀行の非常に大きな部分というのは、それに加えて定期預金です。しかし、その定期預金をもしも投資信託だと考えたならば 株式を持っても国債を持ってもそれは構わないわけですが、しかし、定期預金は投資信託と違ってマーケーット・トゥ-・ザ・マーケットにいないわけで、元本保証がついている、それから、銀行は一部要求払い預金を発行している。システミックリスクとかそういうときに問題になるのは、基本的には、古めかしいかもしれませんけれども、貨幣を発行しているからなんですね。だから、今の銀行を分断して2つに分けてしまって、定期預金は発行して、それをマーケット・トゥー・ザ・マーケットに、しかし私のところはもう本当に限りなく元本保証に近いものを発行していますよというような形にすれば、それは自由だと思うのです。

そしてもう一方の決済性の預金を発行しているところは、やはりそれなりにシスミックリスクを守らなければいけないから株式を持つとか、あるいはそういうリスキーなポートフォリオ(資産運用)に対しては相当厳しい制限を加えなければいけないと。ですから、そういうような分断ができれば随分日本の金融も変わってくると思うのです。

これは夢物語かもしれませんけれども、今、我々が議論しようとする銀行の株式保有制限というのは、そういう夢物語に近づけようとしているのか、遠ざかるのか、その辺のところが1つの判断基準になるのではないかというふうに思うのですが、どうなんでしょうか。

それからもう1つは、いろんなことを言っても、ともかく銀行は小さくならなければいけないわけですね。預金を集め過ぎているわけでしょう。それは預金で集めた資金を運用するのを前提にして自己資本を充実するという発想もできるけれども、銀行の調達してきた自己資本を前提にしてどのぐらいまで縮まらせるかという発想もできるわけですね。

そうすると、例えば買上げ機構などもそうなのかもしれませんけれども、銀行は吐き出した資産をどういうふうにうまい形で個人の投資家に買ってもらうか。そういう点で将来の姿として個人のポートフォリトが健全な形でより多くの、先ほど樋口さんは10%というターゲットを示されたらしいですけれども、10%程度のシェアの株式を個人が持てるような形で、しかも持ち続けられるような形になるかどうか。そういうところを考えたときに、この買上げ機構も含めて銀行の株式保有制限というものをどう考えるか。

私は、結論的には株式保有制限ではなくて、株式保有禁止だというのが一番いいと個人的には思っていますが、それはちょっと極論かもしれません。

○福井部会長

もう今までのご議論で重要な論点が幾つか出されていると思います。田中先生からは、システミックリスクというところをポイントとして押さえるならば、それは政策のアサインメントとして早期是正措置等、今まで築いてきている政策ルートにどれぐらい信頼を置くか、あるいはさらに充実させるか、それとの関連をよく頭に置きながら、必要以上に銀行の自主性を縛らないように考えなければいけないと、そういう点が1つあったというふうに思います。

それから池尾先生と蝋山分科会長……。

○蝋山分科会長

いや、それはちょっと。委員の一人にしましょうよ(笑)。

○福井部会長

池尾先生と蝋山先生から発言のありましたことは、広く言えば、銀行を通じて見せかけのリスクマネーへの転換が行われている、したがって、見せかけの資本充実が行われている、これを恐らく解消していくべきだという方向で議論をしておらられるのだろうと思いますが、そういう観点をしっかり意識しながら、言ってみれば間接金融から直接金融への望ましいシフト、これを大きくバックグラウンドに置きながら議論しようと、多分そういうポイントにひとつになるかなというふに思います。

それから、田中先生の観点から言いましても、マーケット変動というものがシステミックリスクの源として引き続きより大きなファクターとしてこれからとらえていかなければいけないということはあると思いますが、その場合に株式だけかという問題がやはりあると思います。現に銀行のバランスシートには国債が非常に累積している、これだって別の形での大きなシステミックリスクの集積要因になってきているわけです。さらに、将来は銀行の貸出という債権そのものもひよっとしたら時価評価というふうな展望もあり得るのかなというふうに思いますが。そこまで考えますと、マーケット変動に伴うシステミックリスクの評定、したがって、今まで築いてきているルールで十分かどうかというのは非常に幅を広げてひとわたりは議論しなければいけないのかなと、そんなふうに私は思います。

さらにもう1つは、銀行の信用供与機能というのが、自分の持っている資産の価値というものがマーット変動の中で変化するときにどう変わるか。特に株価について従来から言われておりますのは、プロシクリカルに動くと。景気がいいときにはますます銀行は信用供与能力を持ち、景気が悪くなったら信用供与能力が引っ込むというふうにプロシクリカルに動くと、こんな問題があるとも言われておりますけれども、そういう観点は今回は問題にする必要があるのかないのか。そういった基本的な論点も少し広げながら、そこを押さえながら検討していきたいなと議長としては思っております。

○岩原委員

それぞれのご指摘は非常にもっともだと思いますし、恐らく今の福井部会長の要約が全体に示唆を与えてくれるものだと私は思っております。

先ほど田中委員や片田委員がご指摘になったようなことは十分考えていかなければならないと思うんです。いろいろな要素を含む、単に銀行の株式保有を一定の数値で制限すればいいという先に結論がある問題ではなくて、もしくは、制限をしていくとしたらそれがどういうインプリーケションを使っていくのかとまず押さえることが一番大事だと思いますので、その検討をぜひすべきだと思います。

ただ、さっき、現に銀行が株主の保有を減らそうとしているのだからそこにさらにやる必要があるか、あるいは既に他の規制があるところでさらにそれに加えてやることはリダンタントではないかというご指摘の点に関しては、恐らくもっと検討の余地があるように私は思っています。

例えば時価会計等の導入で市場価格の変動リスクの問題、それだけで対応できるかというと、それはそうではないように思いますし。それから、銀行に対する信任が株価の変動で大きくすぐ揺らいでしまうような体制でいいかというと、それはやはり問題なのだろうと思います。

また、確かに銀行はなるべく持合いを解消しようとしてはおりますが、では、スムーズに進んでいるかというと、そうでないところもあるように私は思っていまして。はっきり言えば、持合い先との関係、その他いろんなしがらみがありますので、必ずしも容易に進んでいない。まさに先ほど乾局長がおっしゃったように、株価がちょっと落ちると対象が止まってしまうというような現実があるわけですので。あるいは、法律で一定の数字を示すということがいわば銀行が進めようとしてることに後ろからプッシュしてあげる意味を持つかも知れないという感じもしますので、そういう広い観点から検討する価値は私は十分にあるのではないかというふうに思っております。

○福井部会長

ありがとうございました。

○蝋山分科会長

今の岩原さんのご発言に関連して、岩原さんもおられたと思うのですが、証券取引委員会で株式の持合い、一般の銀行の株式保有も含めて議論が出たときに、ちょうど金融審議会のメンバーである福間さんが、「いや、この問題は放っておいても自然に解消するようになっているんだ」ということを九十六、七年に非常に強調されたのを記憶しています。それは要するに、市場構造の競争条件がものすごく変わってきて、株主だからどうかなんてもう言ってはおれないと。そこで企業の側で、株式を保有する側でのノンペキュニアリーなメリットというのはどんどんなくなってきて、株価の先行き等を考えると株を保有するのは損だから売っちゃいますよと、こういうことで事実、私は福間さんの議論は正しかったと思います。

ただそれの例外が。それだとすれば、銀行の側でもそういう点を察知して、もっと早くから株式の持合い解消の動きを示していればよかったのですが、なかなか粘着的で動いていなかったわけですね、一般企業とは違う形で。その辺のところをどんなふうに考えるかということで田中さんのような判断をとるか、岩原さんのような判断をとるか。私は個人的にはどちらかと言えば岩原さんのような判断に近いのですけれども。

○前田委員

前田でございます。規制される側からちょっと一言お話をさせていただきたいのですが。

今、持合いの解消のお話がございましたが、私ども自分の銀行のことしかわからないのですが、3年前に約3兆円の政策保有株式を持っていましたが、5年間で1兆円売却するということを計画致しまして、ここ3年ぐらいで約 6,000億、大体年間 2,000億の売り切りを実施してまいりました。現実にはお客さまとの交渉は大変難航いたしましたが、いろいろ今委員の方々のご指摘のとおり、かなりご理解もいただきましたし、私どももアンケートをいたしましたが、ある程度持合い解消はすべきだという認識を十分持っておりました。

ただ、私が一番懸念いたしますのは、ある時期までにある量を売却すべきだという規制を入れますと、当然期間の問題があるのですが、お客さまとの関係で売りやすいものから売っていくわけですから、だんだん売れにくいものが残っていきまして、最後になりますと投げ売るということに必ずなります。これは当たり前なのですが、やはり期間を短くするということで市場にものすごいひずみを与えるというのは間違いなく、規制が入れば必ずそうなりますので、この期間については十分配慮が必要であると思います。また、お客さまとの関係、それから持株の比率の問題等がございまして、すべてこれはお客さまとそれぞれの株式会社から見た持合いの関係で、すべて同じ構造になっているわけではございませんので、この部分を見ないでトータルで一律というのでは多分相当ひずむのではないかと思います。

私どもが売却する過程でぜひ売っていただきたいという会社がございまして、売ってくれないと場に株が出ないという、そういう会社も当然あるわけですから、売るとすべて下がるというようなことはなく、先ほど乾局長さんが言われたとおり株価は上がったり下がったりするということでございます。

もう1点、銀行が売るから株価が下がるとか、持合い解消だから株価が下がるという見方は大きな誤解だと思います。理由がわからないときは、大体、銀行と企業の持合い解消によるというのがほとんどでございまして、申しわけないのですが、これはほとんど問題をすり替えているだけでして、我々から見ますとほとんどこれは間違いだと思います。ただ、なかなかそういうことを申し上げられないのですが、それは全く事実に反していると思います。個々の株価と全体の市場の株価の動向は全く同じではございませんので、これは分けていただきたいと思います。

それからもう1点でございますが、先ほど蝋山先生からお話がございましたが、銀行が株を持つのをどうしたらいいか、まさに運用サイドのお話でありましたけれども、田中先生のお話にもありましたが、金融機関が、規制業種で、免許業種の一番大きなところは、むしろ預金を不特定多数から集めるということが免許の原点だと思っておりまして、運用だけでしたら届け出で貸金業をやればいいわけです。そこのところで、貸金業をやる人と銀行が預かったお金を運用するという、その差異をごちゃまぜにしない方がいいのではないかと思います。運用規制をたくさんかけることになれば、金融機関は、非常に変になるはずでございます。

そして、銀行は両方あるわけですから、預かったお金をちゃんと使えるかどうかというのを金融庁さんは見ておられるわけなので、そして資本金が十分あるかないかというそういう形になっていますので、ある部分の運用だけ、例えば国債を持ち過ぎたらいけないとか、部分的規制とやるのは問題が起こりそうな気もします。これはまさに、ここに書かれてありますように、自己資本の中で吸収できるかどうかという経営判断で、吸収できないのであれば銀行は破綻して早期是正をかければいいわけですから、そこのところの仕組みはできていますので、ある部分だけを極端にやるというのは世の中全体から見ていかにも変だなという気が致します。

それから、銀行から見ますと、積極的に株でポートフォリオをたくさん持ちたいなどと実は我々は全く思っておりません。むしろ、全体の中でバランスをとりながら調整したいというのが我々の経営課題ですから、そう思っているところをさらに急速に加速した方がいいかというのはむしろ皆さんにご判断いただきたいと思います。

○蝋山分科会長

一言言わなければいけないのですが、私が申し上げたのは、一つ一つ株式を云々ということではなくて、銀行とは何かということを銀行の側からももう少しお考えいただきたいと。

やはり銀行が免許業種で非常に他の業種に比べて特別な扱いを受け、日本銀行からサポートを受け、さらに早期是正措置の中には公的資金というものも現実に入っている、こういうことの理由は貨幣を供給しているからですね、定期預金を供給しているからではないわけです。

その点をもう少し考えてみれば、例えば自分のところは通貨性の預金だけを、要求払い預金だけを発行しますという銀行があってもいいし、そうした現状から出発して、定期預金のところで運用に関して、自由な定期預金を投資信託化するような形のビジネスモデルというのが出てきてもいいと思うのです。そういう発想が基本的に必要なのではないでしょうかということを申し上げて、その流れの中で株式の保有というものをどちらに位置づけるのかと、こんなふうに私は考えているわけです。そして、前者の方の、規制があり、保護されているアクティビティーの中に株式というものが登場する余地はないはずだということを申し上げたわけです。

○福井部会長

翁委員どうぞ。

○翁委員

先ほど来、福井部会長がおまとめになった点でかなり論点は網羅されていると思うのですが、やはり今の規制の国際的な潮流ということを十分に踏まえる必要があるのではないかと。

先ほどBIS規制の具体的なお話もいただきましたけれども、まさに今規制のあり方というのはビジネスモデルがどんどん多様化して、その中で自己管理型、金融機関のインセンティブ、コンパティブルな規制のあり方というのがどんどん追求されている。そういう中にあって一律の規制をすることの弊害というのは非常に大きいのではないかと思います。

まさに先ほど福井部会長がおっしゃったように、価格変動リスクということに関しましても、広い意味で考えれば国債とかそういったものも金利の動向によって大きく変動するものですから、全体としてのバランスシートの動きによってリスクがどのくらいあって、それに対して本来銀行が、規制としての自己資本というよりも、エコノミックキャピタルと言われる本来自分自身が積むべき自己資本をどのぐらい積むかというようなリスク管理というのが追求されてしかるべきな方向だと思います。その意味では一律の規制による弊害というのを十分に認識しておく必要があると思います。

それから先ほど、プロシクリカルな点でマクロ経済的にかなり影響あるというお話をされていまして、これはまさに銀行が株を持っているということに伴う影響というのが根本的な要因なのですが、同時に、BIS規制の中で、分子の中に45%の含み益が入っているということ自体も見直していくという方向が展望されてしかるべきではないかというように思います。

○福井部会長

ありがとうございました。

○池尾委員

繰り返しになって恐縮なのですが、私も一番最初に申し上げた一律の規制はよくないと思うのですが、蝋山先生がおっしゃっていることを私なりに翻訳しますと、株式にもっぱら投資をするような投資信託で事実上元本保障を実現しようと思ったら、優先劣後構造を導入して、かなり大きな劣後部分を確保しなければ無理だと思います。それで優先部分に関して元本保証をすると。そのときに必要とされる割合はどれぐらいかというと、BIS規制上の8%とか通常のギアリングレイシオに直すと四、五パーセントですよね、そんなものでは到底ないだろうと、半分半分でも無理ぐらいではないかということです。

したがって、一律の規制、実際にどういう規制がいいかというのはこれから議論するわけですけれども、経済的には意味のあるリスク管理規制をやれば事実上持てないはずだということで、そういうことが一方であるのではないかということです。

同じことを繰り返して申しわけないのですが、株式保有に伴うリスク量というのは抽象的ではなくて、各銀行は多分計算されたりする機会はあると思うので、大体、株式を保有していて、本当にそれの割当リスクを一定の条件のもとで計算したらどれぐらいの最大損失が予想されるのかという、それに対応する自己資本の額というのはどれぐらい必要なのかというのを、せっかく専門委員の方も入っておられるのですから、そういう数字を出していただいて議論をした方が何か抽象的な議論をするよりは生産的ではないかと思いますので、そういうリクエストをしたいと思います。

○福井部会長

ありがとうございました。田中委員どうぞ。

○田中委員

先ほど蝋山先生が株式持合いをほぐすはずだったではないかと、それが正解だというのに少しも進んだようには、ある時期まで進んだようには見えないということを言われました。これは確かにそうなのですが、旧大蔵省の規制のもとにおいて、銀行もそうですし、保険会社もそうですけれども、彼らのビジネスモデルは営業用の株式保有を通じて契約を進めるとか、それで事業会社を何らかの意味で囲い込むということ以外に、ビジネスモデルを、そこから抜け出そうとして努力はされたと思いますが、その努力が成果を見る前に大きな変動がやってきたというのが現実だと思うのです。

ただし、ここまで行きましたので、従来の規制のもとにおいて、特定の営業形態、特定の経営方式しかとれなかった金融機関が、今はさらに広い枠のもとにおいて、新しいキャッシュフローを生み出す仕組み、経営資源の組み合わせをやっと工夫する段階になったと。その中で先ほど池尾さんが言われたように、そういう状態のもとで、資産の方にこれだけ見返りのない株式を保有しているのはどういうことなのかというところにやっときたというのが現実なんだと思います。

ですから、私が、なぜ進まないんだと、行くと言っていたじゃないかと言ったのは、経営資源の組み合わせに一工夫を重ねるのにいかに長時間を要したか。逆に言えば規制行政というものはいかに罪が深かったかということの反映だといふうに私は理解しています。

○福井部会長

よろしゅうございますでしょうか。

それでは、時間を大事にする趣旨から、きょうは第1回目でございますので討議はこの辺で打ち切らせていただきたいと思います。

冒頭、乾局長からご提案がありました2つのワーキンググループをつくるという提案でございますが。つまり、「金融機能の向上に関するワーキンググループ」、もう1つは「自己資本比率規制の見直しのワーキンググループ」、そういう提案でございますが、私も局長の提案を受けまして議長として皆様に提案をいたしたいと思いますが、いかがでございましょうか。

よろしゅうございますか。

(「異議なし」の声あり)

○ 福井部会長

それでは、ご賛同をちょうだいしたというふうに考えます。ありがとうございました。

2つワーキンググループの座長さんを決めなければいけないわけでございます。金融機能の行動に関するワーキンググループの座長さんとして、岩原委員にお願いしたいなと思います。それからもう1つ、自己資本比率規制見直しのワーキンググループの座長さんとして、池尾委員にお願いできればと思いますが、お二方いかがでございましょうか。

よろしゅうございますか。

(「はい」の声あり)

○ 福井部会長

ありがとうございました。

ワーキンググループの人選とか運営の細目がございますけれども、これにつきましては私と今ご承諾いただきました座長お二方と相談したいと思いますので、そこにご一任いただければと存じます。この点につきましてもよろしゅうございますでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

○ 福井部会長

ありがとうございます。

それでは、終了の時間も近づいてまいりましたので、本日の審議を終了させていただきたいと思います。この後、記者会見を行いまして、きょうの部会の模様についてお話を私からさせていただきたいと思います。

最後になりましたけれども、事務局の方からご連絡等が多分あると思いますが、もしございましたらお願いいたします。

○樋口信用課長

次回のこの第二部会ですけれども、次回はちょっときょうのテーマとは違いますが、保険の基本問題に関するワーキンググループ、この検討状況につきまして4月25日(水)、午後2時から、この建物の10階の共用第一特別会議室で開催を予定しています。よろしくお願いしたいと思います。

私からは以上でございます。

○福井部会長

特にご質問はございませんか。

それでは、以上をもちまして本日の会議を終了いたします。

まことにありがとうございました。

(以上)

サイトマップ

ページの先頭に戻る