金融審議会金融分科会第二部会会合(第三回)議事録

日時:平成13年4月25日(水)13時30分~15時42分

場所:中央合同庁舎第4号館(10階)共用第一特別会議室

○ 福井部会長

大変長らくお待たせいたしました。何人かの方遅刻していらっしゃるようでございますけれども、ただいまから金融審議会・金融分科会・第二部会、第3回目の会議を開催させていただきます。

本日は、天候必ずしも芳しからずでございますがお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。お手元の議事次第に従いまして、議事を進行させていただきます。

きょうは、3月に開催されました第1回目の第二部会におきましてご審議いただきました「生命保険会社に関する検討事項」、これについての審議をお願いしたいと思います。

この生命保険会社をめぐる問題につきましては、実務的、専門的な観点から調査検討を行っていただくために、第1回目の第二部会におきまして、保険の基本問題に関するワーキング・グループを設けることといたしました。過去1カ月間、大変精力的な審議をお願いしてまいった次第でございます。

きょうは、このワーキング・グループでの、これまでの検討状況につきまして、中間的なご報告をいただきます。それに基づいて皆様方にご議論をお願いしたいと考えております。

それでは、最初に、ワーキング・グループの座長でいらっしゃいます山下委員から、ご報告をちょうだいしたいと思います。よろしくお願い申し上げます。

○ 山下保険ワーキング・グループ座長

山下でございます。ワーキング・グループの進行状況につきまして、まず、私の方から簡単に説明させていただきます。

3月13日の当部会の決定によりまして設置されました保険ワーキング・グループは、委員10名及びオブザーバー6名、これは本日の資料の一番下に名簿がついておりますが、私を含めて17名でメンバーを決めて設置されまして、3月22日以来1カ月足らずの間に5回の会合を開催いたしまして、当部会から課題として与えられました「生命保険会社に関する主な検討事項」、これは第1回の部会で配られたペーパーでございます。そこに挙げられた事項につきまして、順次検討をしてまいりました。

ワーキング・グループの議論を進めるに当たりましては、ワーキング・グループの各委員間の問題意識の共有や実質的な審議の促進といった趣旨のもとに、毎回テーマごとに担当をメンバーの中から決めさせていただき、現行制度の概要や問題点などにつきまして、基調的なご説明をいただいた上で、これに基づいて議論を行いました。

具体的には、責任準備金等のあり方については田中委員、保険商品開発の促進については、村田、林、レイクの各委員、ディスクロージャーの改善については高橋委員、保険契約の契約条件の変更については岩原委員、保険会社の財務面のチェックのあり方等については深尾委員から、それから社員配当のあり方、基金制度の弾力化及び保険会社におけるガバナンスの強化につきましては私の方から、それぞれ基調的な説明をしてそれをもとに議論をさせていただきました。

本日、提出しております「ワーキング・グループの検討状況」第二部会3-1と番号が付してあるものでございます。それと3-2という横長の「生命保険に関する主な検討事項にかかる意見等」という2つのペーパーがお手元にあるかと存じますが、この2つはワーキング・グループの先ほど申し上げたような議論の結果を取りまとめたものでございます。

横長の方の意見等は各検討事項ごとに述べられたさまざまな意見の要旨をまとめたものでございます。

3-1の方の検討状況という方は、これをもとに現段階での意見を可及的に集約したものでございます。

本日は、この3-1の方の検討状況をもとにご議論いただくこととさせていただきたいわけですが、それぞれの事項ごとに難問は多くございまして、さまざまな意見があったことにつきましては、横長の方の意見等に詳しく出ておりますので、これをご参照いただければと思います。

検討状況の方のペーパーにつきましては、私の後、事務局よりご説明いただきますけれども、構成としては、総論として全体的な展望と各論として具体的な方策との二部構成となっております。

総論に関しましては、当部会において、ワーキング・グループ設置に当たり、生命保険についての将来ビジョンについても考えるようにと宿題をいただいたところでございます。ワーキング・グループでもその点は十分意識してきたわけではございますが、何分具体的、各論的な検討事項の議論だけでも大変な宿題をいただいております。このため、本日の検討状況というペーパーでは、総論的な宿題に対する答えとして十分なものが提出できているかどうか、これははなはだご批判の余地がまだあるんではないかと思いますけれども、本日も、さまざまな総論的な事項につきましてサジェスチョンをいただければありがたいと思っております。

各論につきましては、おおむね検討事項に挙げられた項目に沿って検討結果をとりまとめておりますが、その中身については必ずしも検討事項で明示されたというか、宿題としていただいた事項にとどまっておりません。例えば、検討事項では、必ずしも明示されていなかった責任準備金のあり方についても本日の検討状況のペーパーでは言及しております。

生命保険会社のおかれた現在の厳しい状況のもとでは、なお財務の健全性の確保のために現行の責任準備金やソルベンシーマージンなどのルールがこれで最善のものかについての不断の検証が必要ではないかという問題意識が委員の間で共有されたことによるものでございます。

各論全体のトーンといたしましては、保険監督が財務の健全性に対する監督を適正に進めていくということの重要性には変わりはないわけでございますが、それとともに、生命保険会社の経営及び財務基盤の充実のために取り得る方策について、その自由度を高めつつディスクロージャーの充実やガバナンス等による情報提供の充実を通じて、自律的に健全性の向上が促進されることが重要であるというふうな方向性が明らかにされております。

そういう全体的な立場のもとに、配当規制の緩和、基金の調達手続の弾力化、保険商品の認可の手続の簡素化などといった具体的な事項につきましては、基本的には検討事項で示唆されたような方向に向かうことについて、ワーキング・グループの中での了解が得られたというふうに思っておりますが、今後、なお細かい点を詰めることになるのではないかと思います。

委員の皆様方の関心が高いと思われます保険契約の契約条件の変更の問題につきましては、今回の検討状況と題する報告の中では、ワーキング・グループで述べられた幾つかの考え方を整理するにとどまっております。生命保険会社の置かれた状況が非常に厳しいものであることについての認識はすべてのワーキング・グループのメンバーで共有されていると思っておりますが、契約条件の変更ということにより対処すべきかどうかについては、積極論から消極論まで考えられる一通りの意見が出され、またそれぞれの意見についての問題点の指摘がなされたように思っております。詳しくは、3-2の横長のペーパーをご参照いただければと思います。

いずれにせよ、現在の破綻処理制度によらない、契約条件の変更が特別の制度的な手当なくできるものでないことは明らかでございます。

変更ということについて、積極、消極、いずれの結論をくだすにせよ、制度的な手当としてどういうものが可能であるのか、それぞれの長短、あるいはメリット、デメリット、そういうものを正確に詰めていく必要があるわけでございまして、本日の当部会でのご審議も踏まえまして、今後のワーキング・グループの作業でなお詰めていきたいというふうに思っております。

各意見の趣旨などについては、本日ワーキング・グループのメンバーでいらっしゃる委員の方もご出席になっておられますので、ご質問があれば適宜補足していただけるのではないかと思います。

私の方からの報告は以上ということにさせていただきます。

○ 福井部会長

それでは、具体的な検討状況について事務局の方からお願いします。

○ 池田保険企画室長

それでは、ただいま山下座長からご紹介のありました第二部会3-1という「ワーキング・グループでの検討状況」について、朗読をさせていただきまして説明に代えさせていただきたいと思います。

金融審議会金融分科会第二部会保険の基本問題に関するワーキング・グループの検討状況。

保険の基本問題に関するワーキング・グループにおいては、「生命保険をめぐる問題に適切に対応していくためには総合的な取組みが不可欠である」との認識のもとに、生命保険会社の財務基盤の充実、多様な保険商品開発の促進、契約者からの信頼の向上、監督手法の整備等の問題について多角的に検討を行ってきた。本「検討状況」は、ワーキング・グループにおいて出された意見の中間的かつ概括的な整理であり、ワーキング・グループにおける意見の詳細は、「生命保険に関する主な検討事項にかかる意見等」を参照いただきたいと思います。

まず初めに、A、全体的な展望(総論)ということでございます。

我が国の生命保険の普及率や国民所得に対する割合は、歴史的にも国際的にも相当程度、高い水準にある。これは生命保険が国民生活に深く根付いているということでもある。個人の自助努力による生活保障が一層、求められていく中、多様なライフステージに応じた生涯保障商品の提供等、生命保険業に期待される役割は引き続き大きい。

一方で、生命保険市場の成熟化及び近年の社会経済環境の変化は生命保険業に新たな課題を投げかけている。

我が国における生命保険商品の中核は確定拠出・確定給付の超長期商品となっている。

これに見合う長期の運用資産が乏しい中で、超低金利の継続によりいわゆる逆ざや問題が出現しており、不適切な資産運用と相まって生命保険会社の破綻が相次いでいる。

厳しい経営環境等を反映して、解約の増加、新規契約の伸び悩みに代表される「生保離れ」等が指摘される中、保険契約者からの信頼の向上が大きな課題となっている。従来の保障性商品については既に相当程度成熟しており、また、貯蓄性商品については、他の金融商品との競合が見られる。近年の生命保険会社の厳しい経営環境は一時的なものではなく構造的なものであると考えられる。

相互会社は生命保険事業の担い手として引き続き株式会社と並び大きな比重を占めているが、一方で保険契約者は、保険会社が株式会社か相互会社かの違いをほとんど認識していない。現状において、古典的な相互会社の理念と実態との間には乖離が見られ、その中で、保険会社は様々な経営上の課題に対処することが求められている。

このような状況にどのように対応していくかは、まずもって各生命保険会社の経営戦略にかかわる問題である。将来を展望しても、少子高齢化の進行により生存給付型商品に対するニーズが高まるなど、我が国が直面する社会経済構造の変化に対応して、生命保険業には、従来、主として注力してきた分野とは異なる新たな分野における活躍が求められている。これまでも、オーダーメイド商品の提供やインターネットを活用した商品販売等、新たな事業展開の胎動がみられ、また、会社形態の面においても、事業展開の自由度の向上と自己資本の充実等の観点から、相互会社の株式会社化の動きが出てきている。今後とも、更に各社の創意工夫を活かした事業展開とそれを支える財務基盤の充実が重要である。

保険業法及びこれに基づく行政の対応としては、これまで、ディスクロージャー規定の整備、保険商品・料率についての届出制の導入、早期是正措置の導入、生命保険契約者保護機構の創設、相互会社から株式会社への組織変更手続の改善、保険会社に係る倒産法制の整備、業務範囲の拡大等を図ってきた。

今後とも、生命保険市場において、マーケットメカニズムが十全に機能するような環境整備を図ることが求められている。この際には、ディスクロージャーの充実等を通じた契約者による適切な保険会社・保険商品の選択、生命保険会社の経営に対する適切な自己規律の確保、財務面での監督手法の整備等による適切な監督等が重要である。

B、具体的な方策(各論)。

生命保険会社の財務基盤の充実。

生命保険会社においては、昨今の厳しい経営環境に対応して安定的な保障の提供を確実なものとするとともに、各社の創意工夫を活かした事業展開を可能とするために、財務基盤の充実が求められている。このため、以下のような方策について検討すべきではないか。

相互会社における社員配当の実施に当たっては、社員間の公平制に留意しつつ、長期的な経営状況の見込みを十分に踏まえて行うことが望ましい。配当水準の自主的な決定を促すべく、法令上の配当比率規制(いわゆる80%ルール)について、その廃止の可能性も含め、見直しを行う。

保険金支払い等に備える責任準備金等について、財務基盤充実の観点から、平準純保険料方式による積立の促進や標準責任準備金対象範囲の拡大、将来収支分析の厳正な運用等を通じて、その充実を図る。また保険負債の時価評価が今後の重要な課題であり、IASC(国際会計基準委員会)、IAIS(保険監督者国際機構)における審議状況等を見つつ、中期的な検討課題として取り組む。

保険株式会社には、自己資本の充実が容易である、合併・提携等の動きにも柔軟な対応が可能である等のメリットがある。先般、相互会社の株式会社化を容易にするための制度整備が行われたところであるが、今後、こうした枠組みの積極的な活用が望まれる。

相互会社による自己資本調達手段のコアである基金について、その機動的な調達を可能とするべく、株式会社における授権資本制度に類似の制度の導入を行い、調達手続の弾力化を図る。

保険契約の契約条件の変更。

現行の保険業法等においては、既契約の条件変更は破綻処理の場合に限定されているが、これを破綻前に可能とすることの是非については以下のような意見があった。

過年度において契約者に高い利回りを保証した長期の生命保険契約については、いわゆる逆ざやが発生しており、運用環境が改善されない限り、この問題の解消には相当程度の時間を要するとの考えから、保険契約の条件変更を可能とする制度を整備すべきとの指摘があった。

これに対し、条件変更の途を開くことには契約者の保険業に対する信頼が失われること、経営状況の悪化した会社には、更生特例法等による早期の破綻処理を行うことにより、同様の対応が可能と考えられること、経営責任の追及があいまいになるおそれがあること、制度を導入しても解約の増加等により実際にワークしづらいと考えられること等から否定的な見解があった。

これに対し、経営責任の明確化や十分なディスクロージャーなどを通じて契約者の理解を得ながら、破綻処理に至る前に契約条件の変更を行うことは、保険会社の自助努力の途の一つとして、否定されるべきではないとの指摘があった。

なお、行政命令や特別立法による契約条件の変更については、実効性の観点からその有効性を指摘する見解があったものの、行政命令・特別立法により私権に制限を加えることは、契約法理や財産権との関係で問題があり、また、保険会社が契約者の十分な理解を得るとのプロセスなしに契約条件の変更が行われることでは、保険に対する信頼も損なわれる、等の指摘があった。

契約条件変更のための制度の整備の是非及び仮にこのような制度を整備するとした場合の法的構成や要件、手続等については、なお多岐に亘る論点が残されており、十分な検討が必要である。

多様な保険商品開発の促進。

今後、確定拠出年金制度の導入に向けた動きなどを踏まえ、変額型の商品の開発等、契約者のニーズに対応した多様な保険商品の開発が期待される。保険商品の仕組みが消費者にとって分かりにくいといった事情の下で、保険契約者等の保護を図るため、引き続き的確な商品認可の実施が求められるとともに、商品内容について契約者の十分な理解を得ることが欠かせない。他方、ニーズの変化に即応した迅速な商品開発を可能とするため、以下のような方策について検討すべきではないか。

保険に関する専門的知識や交渉力を有する企業を顧客とする保険商品については、速やかに届出制へ移行させる。ただし、家計向けの保険商品は、当面、消費者保護の観点から認可制を維持する。

商品内容の審査基準の明確化等により、商品審査手続の一層の効率化、透明性の向上を図るとともに、商品審査体制の充実等により、認可にかかる処理期間、届出にかかる審査期間の短縮を図る。

契約者保護等の面で問題が少ない商品については、届出後直ちに実施が可能なファイル・アンド・ユース(届出使用制)の導入について検討を開始する。

契約者からの信頼の向上。

ディスクロージャーの改善。

生命保険に対する契約者の信頼を向上させ、また、契約者に自己責任を問い得る環境を整えるためには、生命保険会社が、「会社の財務状況のディスクロージャー」及び「保険商品の内容のディスクロージャー」を適切に行っていくことが不可欠である。このため、以下のような方策について検討すべきではないか。

「会社の財務状況のディスクロージャー」については、金融再生法と同様の基準による不良債権の開示等、その改善が行われてきているが、これに加えて、責任準備金の詳細(契約時期別、予定利率別の内訳等)、ソルベンシーマージンの詳細(ソルベンシーマージン(分子)やリスク(分母)の内訳等)、逆ざやの状況の詳細(総額のみではなく、算出根拠等を含む)、等について開示を行う。なお、ディスクロージャーの問題は、保険契約の契約条件の変更の問題と密接な関連を有するため、今後、三利源の開示等について更に十分な検討が必要である。

専門家向けには、詳細な開示を行い一層の財務分析に資する一方で、一般の保険契約者向けには、ソルベンシーマージン比率や基礎利益などの代表的な経営指標等を一覧性を持った形でわかりやすく開示する等の方法を工夫する。

「保険商品の内容のディスクロージャー」については、保険商品の多様化等に対応して、契約者による商品選択の助けとなる情報を的確に提供することが求められている。

保険会社におけるガバナンスの強化。

保険会社の経営に対し適切な自己規律を確保していくためには、保険会社におけるガバナンスの仕組みの強化が不可欠である。特に相互会社については、その社員自治が現状において十分に機能しているとは言えない状況にある。現状の社員数等に鑑みれば、適切なガバナンスの仕組みの構築については、困難な面もあるが、可能な限りガバナンスを充実させるとの観点から、以下のような方策について検討すべきではないか。

相互会社において一般社員の意思を総代会に一層反映させるため、総代の選考方法の多様化、総代数や選抜範囲の拡大等の改善を図る。総代会提案権などの少数社員権の実効性を確保するため、必要とされる社員数の引下げを行う。相互会社の保険募集に当たって、社員としての権利義務に関する的確な説明義務を課す。

総代会の議事について、ディスクロージャー誌やインターネット等を活用し公開を進める等、社員に対するガバナンスに係る情報提供を拡充する。

監査役・会計監査人等を参考として、保険計理人の地位向上を図るとともに、将来収支分析等の保険計理人が関与する事項について総代会・株主総会への報告を義務付ける等、相応の責任を求める。その際、保険計理人による分析の前提を会計監査人が検証するなど、両者の連携を図る。また、行政によるチェック機能を高めていくため、当局におけるアクチュアリーの任用や当局への報告義務の整備等を図る。

以上に加え、社外取締役の拡充等、他の機関の強化についても、商法改正に向けた議論を踏まえて検討する。

監督手法の整備。

市場規律と自己責任の原則を基軸とした、明確なルールに基づく透明かつ公正な金融行政の確立が求められている中で、保険会社の監督においては、保険会社の個別の商品開発等についての事前的な規制から、契約者保護に配慮しつつ、保険会社に対するマクロ的な財務面での監督に重点を移していくことが一層重要になっている。このため、以下のような方策について検討すべきではないか。

保険会社の財務面の監督の中核となるソルベンシーマージン基準については、今般、金融商品に係る時価会計の導入等を踏まえた見直しが行われたところである。今後、連結ベースの基準の導入につき、検討を開始するとともに、昨今の金利・資産価格の変動等の実態を踏まえた基準のあり方について、引き続き検討を行う。

金融コングロマリットのグループ全体の健全性評価を充実させるため、保険会社、銀行、証券会社における自己資本比率規制の調和を図ることが重要な課題であり、国際的な場における検討の状況をも踏まえつつ、中期的な検討課題として取り組む。

保険会社の財務状況を適時に把握するため、現在、事業年度毎に年1回の作成・提出が義務付けられている業務報告書に加え、中間業務報告書の作成・提出を義務付ける。

保険会社自身のリスク管理能力の向上や財務面での監督手法の充実等の状況に応じ、資産運用規制のあり方について検討を行う。

以上でございます。

○ 福井部会長

ご報告ありがとうございました。

それでは、ただいまお二方のご報告がございましたけれども、主として、これらに基づきまして、皆様方からご意見をちょうだいしたり、あるいはご議論をいただきたいというふうに思います。

どなたからでもどうぞご自由にご発言いただきたいと思います。

いかがでしょうか。

田中委員よろしゅうございますか。

○ 田中委員

今読み上げていただいた中で、生保の抱えている問題がどの程度深刻なものなのか、私は理解しにくいんですが、既に私は国民の消費生活に生保の財務状況が影響を与えているのではないかという仮説を従来より持っております。

先回の総裁選において、橋本さんは「財政構造改革をやったことが失敗だった」と言われたんですが、本当にそう思っておられたかどうかは知りませんがそう言われたんです。私は明らかに違っていると思っていまして、97年4月に日産生命が破綻して以降、いろいろな指標で見ても、消費者の支出意欲というんですかね、消費性向ととれますけれども――低下してますね。たまたま消費税率が3%から5%に上がったからだと言う人もいますけれども、今までのそういう一時、1回こっきりのやつはしばらくするとその影響がとれるんですけれども、日産生命の破綻があった後、これは日産生命だけが特別に何か資産運用においてでたらめをやっているというわけではなくて、少なくとも、この逆ざやといいましょうか、あるいは自分が将来受け取るものについて値切られるんじゃないかというのはあったと考えた方がいいと思うんです。

そういう意味からいきますと、私的契約にかかわって成立しているものですが、どこかでやっぱり値切られるんだろうと、状況は相当悪化はしているんだというのは思っているんだと思います、契約者が。まさに家計のほとんどが生命保険の契約関係にあるということからいいますと、その後も幾つか生命保険会社の破綻が続いているわけですが、どこで線引きができるのかというのは、総体的な問題でありまして、逆ざや解消という話はまさに値切られるという話なんですから、そこについて、何かもう少し尺度というのが要るんじゃないか。

今、一体どの程度のことが起きていて、今後、中長期にわたって保険契約者がどの程度のことを覚悟しなければいけないのかというのはメッセージとして要るだろうと。恐らく金融庁の役割の中に、この程度であって、この程度以上ではないというのが、先行きについての消費者の確信を回復する上においても、私は要ると思っておるんですが、少なくとも、我々の業界においても、97年4月以降の財政構造改革が不景気の原因だったという検証なきことを今でも言いつのっている人がいまして、私はそれは誤りだというふうにずっと言っています。97年の秋からはシステムリスクが始まりました、これは全く別の要因なんですけれども。

そこのところは、何かやっぱり大きな尺度が要るんじゃないかと。法務的には、私的に処理できる話かどうかと議論あるんですが、私はマクロフレームワークの上でも、これはとにかく計算して、こんなところだというのは、やっぱり出す必要があると。個別にそれは生命保険契約の中で、また何らかの形で反映するものだろうとは思いますが、私は、そんなの要ると思っているんですが、皆様の意見はどうでしょうか。

○ 福井部会長

皆様の意見どうでしょうか。

○ 樋口信用課長

今田中委員から生保の経営状況なりと、マクロ的な消費みたいなご指摘がございまして、実は、ワーキングの場で、私は毎回出席しておりましたけれども、そういうようなアプローチからの議論というのはたしか余りなかったように思っております。それで、あえて田中委員の方から、どの程度起きていてどうなるのかと、どのくらいの覚悟なのかというようなお言葉がございましたので、あえてそれとやや無理無理なのかもしれませんけれども、関連づけてあえて考えますと、例えば、今回の議論の中で、ディスクロージャーとかの絡みで、やっぱり保険契約者の方に、それぞれが自分の入っている保険会社の経営状況というのをもっとよく知ってもらう必要があるんじゃないかというような議論が1つございまして、また、さらに相互会社ですと、会社の意思決定機関として、総代会というのがあるんですけれども、そこがもっと機能して、その場でいろいろな資料というんでしょうか、出されて議論が行われる方がいいんではないかというような議論もありました。

そうした中で、最近、保険会社の世界に導入されました「将来収支分析」という手法がございます。これは保険会社には保険計理人というエキスパートの方がいて、そういった方が保険会社の将来、例えば5年後には、こういう前提を置くとこうなりますよというようなものをつくるという仕組みが新たに始まっているんでありますけれども、ワーキングの場ではこういったものをもっと広く使うべきではないかと、そういったことをやっていくことによって、保険会社の将来像というのが、もう少しコンクリートにわかるようになるんじゃないかというような議論も行われております。

その辺、非常に集約して申しますと、例えば、先ほど事務局よりご紹介しました資料の4ページ目でございますけれども、ディスクロージャーの部分で、そこにありますようにいろいろな、これまでなかったような項目についてもっとディスクローズすべきではないかというような議論ですとか、それから、保険契約者、すなわち消費者のコンフィデンス、消費に対するコンフィデンスの問題という切り口で端的にそういう切り口からの議論じゃなかったにせよ、4ページの下の方の保険会社におけるガバナンスというようなことのところをざっと見ていただきますと、5ページの方で、将来収支分析等の保険計理人が関与する事項についての総代会、株主総会の報告の義務付けといったような議論が行われておりまして、恐らく今回の議論をお願いしているフレームというんでしょうか、それとやっぱり保険事業、保険会社からというアプローチなんでこういうことだと思いますけれども、恐らく、この議論というのは、田中委員がおっしゃったところにもつながっていく可能性というんでしょうか、それは、道筋としてはあるとは思いますけれども……

これまでのワーキングの議論というのは、今ちょっと私がご紹介したような感じであるということでございます。

○ 福井部会長

どうぞ。

○ 高橋委員

私はディスクロージャーの議論のところで言わせていただいたつもりではあったのですけれども、インパクトがなかったのかなと、今反省しております。

やはり逆ざやが大変だと言っても、逆ざや額さえ公表されていないし、公表というか、記者の質問に答えてマスコミに出るような、逆ざやの計算根拠もちゃんと示されていないというような状況です。それで条件変更の論議をするのは非常に難しいということを言わせていただきました。

業界の対応を見ていますと、逆ざやで大変だということはアピールしていらっしゃるんですけれども、例えば、昨年、生命保険協会の名前で「逆ざやで破綻することはないんですよ」とか、「逆ざやが累積しているということはないんですよ」とか、そういうような表現をなさっているんですけれども、一向に中身が出てこない。中身のことを議論すると、そういうことを議論しただけで破綻が起きてしまうからできないんですよというような説明を受けているのですけれども、それじゃあちょっともう話にならない状況ではないかというふうに私は思っております。

ディスクロージャーを改善する中で経営状況のわかりにくすぎるものをいかにするかということも重要なのですけれども、今の問題というのを業界なり、アクチュアリーなどの専門の方々がきちんと一般論として、一般の方もわかりやすい形でお示しいただくということも非常に重要なんだと思うんです。ですから、条件変更、既契約の予定利率の引下げを個別にできるような途を仮に開いたとしても、保険会社が説明するというような状況になったのでは、多分その時点で破綻が起きてしまうということになりかねません。一般的に逆ざやとは何で、それがどういうふうな影響を及ぼして、こういう会社はこういう状況になる可能性があるというふうなことも具体的に検討する必要があると申し上げたつもりでございます。

○ 福井部会長

はいどうぞ。

○ 石橋委員

石橋でございます。

業界に身を置く者といたしまして、今までワーキング・グループで、真摯にご検討いただいたことについて、まずお礼を申し上げたいというふうに思っておりますが、その中で、今の高橋委員のディスクロージャーの改善でございますけれども、我々もやはり当然個社、そして業界としても、ディスクロージャー問題については努力をしていかなければいけないということについては、基本的な認識としては変わってはいないというふうに思っております。

そして、ここでご指摘をいただいておりますとおり、責任準備金の問題、あるいはソルベンシーマージン、さらには、今度行政の方でご指導いただいております基礎利益ということが新たに入ってまいりますと、ストックということでのソルベンシーマージンに加えまして、フローでの基礎利益という概念が入ってまいりますし、またご契約者へのソルベンシーがきちんとできているだろうかどうかということでの責任準備金の積み方ということで、やはり基本のところについては、一歩前進をしていくんではないんだろうかというふうに、私ども業界にいる者としては認識をしております。

○ 福井部会長

はいどうぞ。

○ 山下ワーキング・グループ座長

今までのご意見を伺いまして、確かに契約条件の変更のところについて申しますと、これを完全に破綻の問題として処理する、これは1つの割り切り方であると、そういう意見も1つあるわけですけれども、そのほかに破綻に至らない前に何か改善するような手だてがないかと、そういうふうなご意見も1つあるわけでございます。

国際的には、なかなかそういう後者のような制度は、ほかの国でもほとんどないわけで、仮に日本の今の生命保険の状況に照らして非常に深刻だから、やはり田中委員がおっしゃるように、広く契約者に不利益を甘受していただかなくてはいけないという制度を仮に提案するとしますと、それは今の生命保険業界がどういう状況になっているのかということについて、国民的にコンセンサスを得ないとできない話ですから、そういう説明はいずれ必要になってくるかと思います。

ワーキングなんかでも、今、逆ざやがどういう程度にあるんだろうか、例えば利率を下げるにしてもどういう下げ方というものが考えられるんだろうか、そういう議論は少しはしているわけですけれども、なお、おっしゃったようなご趣旨のことは検討する必要もありますし、部会として何か提案するときには、そうしたような国民に対する説明が当然必要になるだろうとは思っております。

○ 福井部会長

どうぞ。

○ 羽田委員

羽田と申します。業界にいる者として若干ちょっとコメントというんですか、お話をしたいと思います。

2つありまして、今、お話しになられている契約条件の変更、これはさらに十分な検討が必要であるということで検討されると思うんですが、若干瑣末なことかもしれませんけれども、もし実施する場合に、対象となる例えば保険会社であるとか、対象となる保険の種類であるとか、そういうものについて、差別的な取り扱いがないようにイコール・フッティングということにも配慮をしつつ検討すべきではないかと思います。

具体的に申し上げますと、例えば生命保険会社でいえば、ミューチュアルつまり、相互会社もありますし株式会社もあります。一方、たまたま私が勤めております外国系の保険会社には、ブランチという支店形式のものでオペレーションをしております。そういうことにおいてイコール・フッティングというものを横に見ながら検討すべきではないかということを感じております。それが1つですけれども。

別なことで、よろしゅうございますか。

○ 福井部会長

どうぞ。

○ 羽田委員

届出制について、方向性がある程度出ておりますけれども、方向性としては非常に好ましいことだと感じております。ただ、できるならば、この方向性の実施をできる限り早めて、前倒しにして行っていくという、時間をかけずに行っていくという、そういう姿勢というんですか、そういうことが必要かなと、思います。私が申し上げていますのは企業を対象にする保険、こういうものについては、当局の保険会社および企業契約者に対する保護、保護というとちょっと言い過ぎなのかもしれませんけれども、いわばケアというんですか、そういうものをできる限り早期に減らす、またはなくして、保険を購入する方の企業も、自己責任というものをもう少し強めに要求してもいいんじゃないかなという気がいたします。

以上です。

○ 石橋委員

すみません。業界の方ばかりお話しして恐縮ですが、業界の中で意見が割れるような結果になる場合、お許しをいただければと思いますが、今の保険商品の開発と、それから審査といいますか、そこのところについては、ここできちんと整理をいただいて、相手が法人である、バーゲニングパワーを持ったところと、それから単なる一国民というところをきちんと使い分けていくという方向を、基本的に私はそれは正しいんだというふうに思っておりますが、やはり、損保と生保との比較だけをした場合でも、繰り返しになりますが、やはり生保の場合には長期性ということが我々、お客様にとっても、そして、マネージメントにとっても、大きなところでございまして、そういうところからしてまいりますと、事後的な救済ですべてカバーがされるということになってこないケースが多々あろうかと思いますので、そういう面では、監督官庁がきちんと商品の審査、期間を短くしていただきたいとか、そういうことについての要望は同様にさせていただきますけれども、審査についてすべて外してということについては、後々のことを考えていく場合には、一概には言い切れないんではないかと、基本的な形で今言いましたように、リーテイルと法人との考え方はわかりますが、法人については一切と言いますか、極端な話、オープンにと、当事者間で任せるというところまでは行き切れない要素もあるということが、生保のほかの商品との違いであるということもあわせてご理解をいただければというふうに思っております。

○ 岩原委員

一番最初の田中委員のご指摘にちょっと戻って考えてみたいと思います。あのご指摘は一番根本的に非常に重要なご指摘だと思います。

生命保険の保険会社の状況に関する不安が今日の消費低迷の原因になったかどうか、それはちょっとわかりませんけれども、ただ、生命保険契約者の将来に対する不安を解消するというか、見通しをちゃんと持てるようにするというのは、一番基本的な課題だろうと思います。

それについて、恐らく大きく2つの問題があると思います。

1つは、まず事実関係として、現在の逆ざや等の問題、あるいは保険会社の財務がどんな状況にあって問題がどれくらい深刻か、特に将来がどうなっていくかという見通しを明らかにしていくという、まさに先ほどからご指摘のあるディスクロージャーの問題。恐らく田中委員は、問題はこれだけではなくて、見通しを求めるとき、その見通しを前提にそういった問題がどう処理されるかという、その見通しに基づく将来の処理の明確な方針というか、それを明らかにすること、その2つがないとなかなか契約者の不安が解消できない。多分そういう2つのご指摘を含んでいるご意見だったのではないのかなと思います。

まず前者の改善については、確かにさっき高橋委員がおっしゃったように、現状の開示は非常に不備な点が多いと私も思いますので、これは大いに改善していただきたいし、改善の余地もあるし、また、現在のワーキング・グループの検討の過程でいろいろそういう方向も出てきていると思います。ただ、これには技術的な問題があり、何しろ将来の予想の問題でございますので、いろいろシナリオテストみたいなものをやって、いろいろな仮定をおいた上での予測をしていかなければならないので、技術的にも非常に難しい問題があるということは十分承知しておりますが、なお一層の努力が必要だろうというふうに思っております。

問題は後者の方です。そのような予測が出てきたときに、それを前提に、その状態をどう評価し、それに対してどういう政策的な対応をするか。多分、これの大きい方向性を示さないと、やっぱり契約者の人は不安が残るのではないか。むろん現状、あるいは、現在の構成のもとでこういう対応することで、問題をこういった形で対処できるということをはっきり示せればもうそれも1つの政策対応でありますけれども、そういったことも含めて、国の側のそういう見通しとその対応策、そして、その結果についての確たる態度等を示していくことが、多分、今後重要になってくるのではないかと思います。一般論です。

以上です。

○ 福井部会長

どうぞ。

○ 成川委員

今、ご指摘がありましたように、やはりこのペーパーも私も参加しながら議論をしてきたわけですが、これで今の保険契約者の不安が解消するかと、こういうふうに読んでみますと、率直にこれで解消するかどうか、ちょっとおぼつかないというところがあると思います。

それは、1つは、今出ておりますけれども、今の持っている問題をこれでどのくらい改善をしていくのかというその改善の度合いが必ずしもこれが今の提言の中では見えないということがあると思います。私は、1つは経営努力の中で今の逆ざやに対してどこまで、逆ざやと呼ばれている状況が持っている問題点に対してどこまで解決できるのか、その解決策はしっかりやれているのかどうかという判断チェックをしてあげることが保険契約者にとって、今後の保険契約をしていくときにここは大丈夫だなと、あるいは、今契約している人がどういうアクションをとれば、将来的にも自分も資産のある生命保険をしっかり保持できるかという判断ができるんじゃないか、こう思うんですが、残念ながら、そこまでちょっとまだ作業ができていないんじゃないか、こういう印象を持っております。

そして、そういう経営の努力でどこまでできるのだというところをしっかり詰めた上で、また国なら国レベルで、それでは何か特別な措置をやらなければならないのかどうかという判断をそこでまたする必要があるのではないか、こういうふうに今皆さんの意見を拝聴しながら考えたところであります。

○ 福井部会長

ほかにいかがでしょうか。

きょうのワーキング・グループのレポートは、総論もついておりますけれども、主として各論のいろいろな項目について、かなり精緻に議論をしていただいたものであります。項目によってはある方向性が出ておりますし、項目によっては、まださらに議論を煮詰めて方向性を見出していくというようなものも含まれておりますけれども、この席で田中委員始め出されましたご意見は、そうした項目の全体を通してみて、今の生命保険、ないしは生命保険会社が抱えている本当の問題というのが、どの程度国民にうまく伝わり、そして、将来に向って問題解決の処方せんという形でうまく浮かび上がってくるものになっているかどうか、その点も十分の検討がなされなければ最終的なレポートが正しいインパクトを持たないものになるリスクがある、恐らく、そういうご指摘じゃないかなというふうに思いました……

ワーキング・グループでは、きょうのこの部会の議論のあと、また、続いてさらに詰めの段階の議論をしていだただく予定になっておりますので、座長さんのご意見をちょっとここでお伺いしておきますけれども、ワーキング・グループの議論の組み立て方として、これから少しそういう各アイテムに糸を通しながら、全体を組み立てていくというふうにうまくもっていけるかどうか。あるいはそれだけの材料をワーキング・グループとしてお持ちかどうか、大まかなお感じをちょっとご披露いただければと思います。よろしくお願いいたします。

○ 田中委員

読み上げていただきました一番最後の監督手法の整備でございますが、その総括的なところで、まさにあるべき論が書いてありまして、事前規制ではないんだと、そして、保険会社の資産運用にかかわるところは、20年、30年という長いやつだからこれは監督機関がちゃんと調べた上で、もし運用におかしなところがあれば、それはどう追い込んでいくんだ、これが監督の監督行政のあるべきものだと書いてある。

事実、私が知る限り、ヨーロッパでもこういう手法になっているし、アメリカでもそうなっている。日本だけだ、ここにとどまることができずに、非常に個別な話まできょうまさに保険にかかわって、議論にせざるを得ないというところに追い込まれている。それだけ先進国の中において、日本だけが異常な状況に置かれているから、ここに書いてあるような、事後的に事前にしてはしませんと、そして、アセットのサイドについてのみチェックするのが公的な機関ですとできないということになっているんです。じゃあいつになったらその辺、本来あるべき論に戻れるんだというのが、いつまで、業界の中のいろいろ苦情がありそうだとか何とかという話に、それも当局はつき合っているのかと、いつになったら切れるのかということが問題なんです。

どうも国民の多くは、銀行が全国銀行ベースで4兆円とか何とかという業務利益が出ているのは処理するだからだと。だけれども、そのときには、何か逆ざやと言っているなと。今度は銀行に業務利益が余り上がらない、要するに預金金利は上がるような状況になると、今度は銀行が困る。あるいは、資産運用にいってポンド価格が下落しているし、アセットサイドでもヒットされると、でもそのときは生保は多少よくなるらしいと、だから、どっちにおいてもなかなかうまくいかないんじゃないかと、何か変な所に入っちゃったなという感じまでかなりの人が思っているわけです。

ですから、まさか金融庁ですから、それはそこのところはやっぱりきちんとした絵をかいて、役割を果していると、それがなきゃあなかなか乾さんだってつらいよね。どういう仕事をしているのかということになるわけで。そこのところを何としてでも……、だからもしそこに普通の手段ではうまくいかない、どこかでみなロスを覚悟しなければいけないというと、いわゆる金融資産 1,400兆円と言っているのも、その一部は少なくとも迷走の失望ということを明らかにすべきで、一応アセットサイドで 1,000何兆円近く家計はあると言っているけれども、本当は傷んでいるんだよというふうに、それが今追い込まれている日本における政府セクターの役割ではないかと。だから一応審議会に出ているものだからちょっと、そこんところを何としても絵をかかないと、何となくならんでとりわけ出てきて勝手なことを言って……なっちゃうです。そこはやっぱりきちんとしていただかないといけないと思いますがね。

○ 山下ワーキング・グループ座長

どうやって具体性を図っていくかということ、いかにこれかくのが難しいかというのが今の生命保険事業の置かれている状況なんです。我々が何かワーキング・グループで契約者の権利のカットまで考えて、それがすぐ具体化できるという話ではなくて、やっぱりワーキング以外の局面でも総動員して対策を考えなくちゃいけないと思いますけれども、それだけとにかく問題は深刻だということです。ワーキングとしては、宿題としていただいているのは、制度的な面の検討ですから、全体としてこういう方向に向かっていけば再生が図れるよということがあって、そういうときに制度的にはどういうことをこれから整えていかなければならないかということですが、そのためには何か目指していく丈夫な方策のことも当然に考えなければなりません。

そういう大きな処方せんを頭に置きながら、それに使えるようなツールをいろいろチェックしていくというのが大体のワーキングの課題ではないかと思いますけれども、ただ、実際にどういう状況にあって、どういう処方せんを目指していくのかというそこの認識がないと恐らく制度を勝手につくれるものでもありませんので、実態に即した方策とは何かを部会長とご相談しながらワーキングでは検討すべきことは検討するというふうになっていくんだろうと思います。

○ 福井部会長

はい。

○ 乾総務企画局長

今の田中委員のおっしゃった非常に大きなところの話というのは、これは、日本の経済政策の根幹にかかってくる話で、そういう議論というのをしなければいけないんでしょうけれども、それが金融者だかどうか私もそこは自信がなくて、そこは経済審議会とか、そういうところなのかもしれません。そうした中で、これは前回のワーキングで、福井部会長が少しサジェストされたんですけれども、そうした大きな議論というのは、別途必要なんだろうと思いますけれども、保険会社、あるいは逆の局面では銀行の経営というものを考えますときに、大きなものだけに物事を全部希釈させてしまっていいかというふうに私自身も思っていまして、この歴史的な低金利ということが、ここにも書いてありますし、生保会社もよくおっしゃるんですけれども、この低金利も一本調子で来たわけではなくて、この10年間かけていろいろな形で来たわけなんでありますけれども、そのときに、例えば保険会社のボートないしはALMの面でも、いろいろな局地的かもしれませんけれども、耐用というのは可能であったんだろうと思うんです。

前回、部会長がそうした局面、局面のものが、果して適切であったのかということを問題事項にされたんですけれども、私自身もそういう感がないでもないわけでありまして、全部マクロ的な金利上昇局面、あるいは低額局面でゼロサムゲームみたいなものが生じるというところに帰着するんではなくて、やはり生保なら生保のこの問題の局面で考えることも大事なのかなと、田中委員のおっしゃったことも非常に大事な点であれだと思いますけれども、それとこれとは、両方とも考えるべきなのだなというふうに思っていまして、そういう観点から、ここではやや生保を取り巻く環境に限定して議論しているのかもしれませんけれども、これはこれで実際には非常に具体的な面では有用なのかなというふうには思っておるわけです。

○ 石橋委員

今いろいろご指摘をいただいているところでは業界としても反省すべきことは反省してまいりたいというふうに思っておりますが、逆ざやといっても、単純な数字だけでも、釈迦に説法でございますが、このほとんど金利がない状態の中での 200ベイシスの逆ざやが10年近く続いているということ、これによっての経営圧迫といいますか、我々は経営圧迫以上のものだというふうに思っておりますが、それが経営努力の範囲を超えたものであるということについてはご認識をいただいているのではないかというふうに私どもは思っております。最初に申しましたように、個社の経営として、あるいは業界として努力すべきこと、これは皆さんのご批判をいただきながら、またサジェスチョン、アドバイスをいただきながらやってまいりたいというふうに思っておりますし、この部会、あるいはワーキング・グループでご審議をいただいている中身自身がそういうものだというふうに私ども受けとめさせていただいております。

そういう中で、生保会社の健全性のために制度的な手だて、あるいは健全性とともに財務体質の強化のために、制度的な手当が必要であるということについては一致をしているというふうに私どもは思っておりまして、そこから次のステップとして、具体的にこれまで破綻した会社があるわけなんですけれども、それ以前に、破綻以前に手が打てていれば、やはりより軽度の条件変更で済んだんではないだろうかということ、ここについても、ほぼ実証ができるんではないかというふうに思っております。

言いかえれば、倒産に至る前に再建する途を開くということ、これがあれば、真の意味での契約者保護につながって、破綻によっての予定利率変更その他の条件変更よりも、より軽い状態での移行が行われたんではないかということは申し上げられるんではないかというふうに思いますし、それが、ひいては、生保業界の信頼の回復にもつながってくるんではないかというふうに私は考えてございます。

具体的な話になって恐縮ですが、そうすると業法の過去の10条3項的なもの、あるいは46条的なもの、それぞれどういうふうな立法が要るんだろうかということになってくるわけなんですが、要るかどうかということになってくると思いますが、それぞれに特徴があるところでありますし、ここはワーキング・グループでも今まで十分議論をいただいております。いただいていながら、やはり方向、先ほど座長の方からお言葉をいただいたとおり、我々自身もどうしていくべきか、どういう具体策、ソリューションを見つけていくべきかということを必死に考えているつもりでございますけれども、これからそこについては、この場で、あるいはワーキング・グループの場で詰めていただければというふうに思っておりますが、私見でございますが、会社が既契約の条件変更を自主的に選択できる途をつくっていただければということが1つやはり浮かんでまいります。というのは、その前提となるのは、先ほどの繰り返しになりますが、それがご契約者にとっての負担が現実破綻になるよりも軽いということというのは、多分経験的な形での実証ができるんではないかというふうに思っております。そういうふうになってまいりますと、その場合には、総代会あるいは契約者からの異議申立という形をとるか、何らかの形での契約者意思の確認という必要性が出てこようというふうに思いますが、このあたりの具体化につきましては、ぜひぜひまたご議論をいただいて、途が開けるということについてご努力をぜひいただきたいというふうに思っております。

大変あつかましいお願いでございますけれども、そういうふうに考えてございます。

○ 高橋委員

ワーキング・グループの議論では、更生特例法の方がフェアではないかという意見が非常に強かったというふうに私は思っております。

それは、デフォルトでございますので、破綻というフィルターを通さないと、なかなか強要される側も納得がいかないんではないかという議論でございました。

そうなりますと、問題をちょっと複雑にして申しわけないですが、更生特例法について幾つかの適用例が出てきていますけれども、まずこの問題をどうするのかということが必要だと思います。なぜかといいますと、我々がここで議論するのは、契約者保護の観点から見て何が一番いいのかということであるべきだからです。これが第一優先課題だと思うのですけれども、今の更生特例法の中では、公的資金が入らないという形でなっておりますので、契約者の代理人を業界団体といいますか、契約者保護機構がするということで何ら問題が起きてきていないわけなんですけれども、お金をだれが出すかという問題で業界負担という問題がもし出てきますと、その業界がその契約者の代理人をするということは矛盾してしまうので非常に難しいのではないかと思います。この問題、一般の方も、業界が今後お金を出すのか、あるいは公的資金が本当に出てくるのか、ここが実は田中先生がおっしゃったような不安の大きな種になっていることも事実ではないかなというふうに思うんです。ですから、ここもオブラートに包まず、業界負担というのが競争上はおかしいということなのであれば、ここできちんと議論するべきだと思いますし、公的資金が本当に出にくい状況なのであれば、それについても議論すべきでしょうし、以前にも申し上げたかもしれませんけれども、現在のものが、平成15年3月末でなくなってしまうと――公的政府保証の方ですね――それに関しても、一般の方々の不安というのは、今後募ってくるわけですから、業界負担なり、公的負担なり、保護をどういう形でするのかということを明確に議論すべきではないかなということが一点目でございます。

それから、仮に更生特例法よりも条件変更の方が契約者にとっていいと、今石橋委員がおっしゃったようなことがあるのだとすれば、その数字をいつ、どなたに出していただけるのか、それは業界なのか、アクチュアリー会なのか、これも明確にしないといつまでも議論が空回りするような気がしております。どういう形で出していただけるのか、どなたかお答えいただけたらというふうに思います。

契約者保護の見地に立って更生特例法と比べた場合の懸念というのは、先ほど読み上げていただいたペーパーの3枚目に「経営責任の明確化」というふうな言葉で書かれております。ワーキングの議論の中で、更生特例法であったら契約者が一番矢面に立たされることはないんですけれども、条件変更というときに、予定利率の問題だけに触れられるのであれば何で契約者が一番責任を問われるのか、もちろん順番としては、経営責任の明確化が一番でしょう。それから基金の拠出者とか、劣後ローン、劣後債権。そうした債権者の責任が不明確になってしまうんじゃないですか。一般債権者の責任を問うた次に契約者という順序で試算していただきたいということをお願いしたいと思います。

最後になりますけれども、本日某経済新聞に、条件変更、業法改正の方向性というのが観測記事として書かれておりましたけれども、私の私見では、ああいう早期法制化論ということが、例えばきょうのことでかなり議論されたとか、それが出るだけでも多くの契約者にとっては、やはりそうですねと思うようになるぐらい保険に関しては一般の理解がないということを考えておく必要があるのではないかと思います。

以上でございます。

○ 福井部会長

はい、どうぞ。

○ 山下ワーキング・グループ座長

今の高橋委員のご指摘について一言だけ言っておきますと、ワーキングでは、まだ何らの結論も出ていないということが正確な情報でございます。くれぐれぐれもご確認いただきたいと思います。

それぞれ、高橋委員がおっしゃったような問題点があるということも、意見等のペーパーに出ておりますのでご参照いただきたいと思います。

○ 福井部会長

どうぞ。

○ 大塚委員

皆さんがおっしゃったことの繰り返しになるような気がしていますけれども、一言意見を述べさせてください。以前、日本生命のディスクロージャー誌が配られまして、拝見させていただいたんですけれども、比較的どうでもいいような内容がたくさん書いてあるように思いました。我々が一番知りたいのは保険会社について普通の会社と違う部分です。その辺についての情報が少ない気がしました。

例えば、ちょうど4ページの責任準備金の詳細とか、ソルベンシーマージンについても比率が示されているだけで、出てくる数字が例えば具体的に不動産の含み益だとか、そういう具体的なところまで書いてあるような保険会社というものは、1社か2社ぐらいだという気がするんですけれども、非常に少ないんです。逆ざやの状況は先ほど来ありますけれども、質問でもって答えられていますので、言ってみれば、余り知られたくないところは知らせないような、そのような何となくディスクロージャーの姿勢があるのではないかという、そういう疑問をさえ持つような点が、まず改善されなければいけないんじゃないかと思います。もう少し中身をきちんと、本当にディスクローズするという、その姿勢が一番私は求められているんじゃないかと。そういう中で、どこにどの程度の問題点があるのかということが明らかになっていくのではないかというふうにまず私は考えました。

それから、先ほど高橋委員がおっしゃったようなことを私はワーキングの方で申し上げたんですが、例えば予定利率の引き下げのスキームをつくったとしても、それを実際に、自主的に選択できるということで、本当に例えばそれに携わっている人が、ソルベンシーマージン比率が何%以下になる前に自分でこれは引き下げた方がいいというふうに契約者のために考えて、本当に行うだけの勇気はあるのかと、その辺まず疑問に思うわけです。要するに、これちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、要するにそういうスキームをつくっても、最終的には、今の更生特例法というところになってしまうんじゃないかと。ですから、私はむしろソルベンシーマージン比率の算定方法をもっと厳しく例えばリスクのウエートなんかもっと厳しくして、それでもってチェックをして、早期是正措置へ早目に持っていくというような方向性というものも考えられるんじゃないかということを、ワーキングのときは申し上げたつもりなんでございます。

○ 福井部会長

はい、原委員。

○ 原委員

おくれて来まして申しわけありません。ちょっと子供の三者面談があったもんですから。入ってきたときに、物すごく暗い、暗いというよりぞろっとした雰囲気がして、これはどういうことかなと思って座ってもしばらくちょっとご意見も出ないような状況で、資料をぱあっと読ませていただいたんですが、特に保険の契約条件の変更のところなんかを見ますと、本当に両方の意見が出てきて、非常にワーキングで苦労なさっていらっしゃるというのもわかりました。

私の感じとしては、ちょうど私が入ってきたときに田中委員がおっしゃられていたところなんですけれども、やっぱり保険はずいぶん積み残しの課題が多くて、どれも解決していないです。それがどんどんどんどん積み重なってきているというところがあって、やはりここの今のワーキングで当面やらなければいけない課題というのもありますけれども、消費者から見ると、生命保険全体の問題をどう解決していくのかというのもあわせて外にすぐの結論ということでなくてもいいですけれども、方向性というのは出していただきたいというのが1点です。

それから、2点目なんですが、予定利率の話、特に契約条件の変更の部分なんですが、先ほど石橋委員の方から自由に改変させていただきたいという、事業者側として、ちょっと私どもから聞くと、いや消費者からするとそんなに勝手に自由にという契約ではないはずだというのが率直な疑問で、総代会とか、それから異議申立というのがありましたけれども、総代会も私ども消費者側の意見の総意というふうには見てもおりませんし、それから異議申立というのもどういう同意の取り方をするかというところだと思うんですが、これも個人信用情報の方でもやっておりますけれども、大変難しい課題があるというふうに思っております。

先ほど高橋委員の方から出ましたけれども、まず損保会社で、そこはみんなに契約者という形でかかわってますけれども、そういう中で、なぜ私たちが一番最初に経営の大変だったと、今の金利の問題ももちろんありますけれども、私たちがその予定利率を引き下げるということで負担をしていくということが、まず第一に来てしまうのかという、経営者の責任、経営の責任というのは、金利のことはあったにしてもどうなんだろうかということが、あとの2の4、そこでの疑問として出てきます。

それから、今私の前、大塚委員の方からの発言でもありましたけれども、ディスクロージャーのあり方ですね。これはおっしゃるとおりです。見ていて本当によくわからない。理解しにくいというのもありますけれども、今回ディスクロージャーのところについては、ある程度具体化を図っていく、わかりやすい形を図っていくということが出ていますので、ぜひそれは私、消費者側の方としても申し上げたいと思います。ですから、はっきりしたディスクロージャーがないので、例えば早期に是正をしたいと思ってもいつが、どこがポイントになっているのかが見えないし、私どもとしても、ディスクロージャーがはっきりわからないから週刊誌の記事とか、それから新聞の記事とか、そういうわかりやすい記事に目が行ってしまうというのも私は確かだろうというふうに感じておりますので、特に経営責任とディスクロージャーのところがポイントだというふうに考えております。

以上です。

○ 福井部会長

ありがとうございました。

ほかにございませんでしょうか。

○ 石橋委員

自由にと言ったつもりはなくて、それだけは申しわけございません。自主的にというような言い方をしたつもりでございます。

○ 福井部会長

どうぞ、岩原委員。

○ 岩原委員

ワーキング・グループでは、この問題に関する議論のたたき台を書いたこともあって、ちょっと申し上げにくい形もあるんですけれども、さっき高橋委員、今は原委員等からのご指摘にいろいろございまして、あるいは大塚委員からもございまして、確かに法律の本来の趣旨からいうと、更生特例法で破綻に至ったときに初めて契約条件を変更するというのが、法律本来の原則であろうということはいえると思います。そういう手続をとれば、さっき原委員がご指摘になったような、あるいは高橋委員のご指摘になったように、まず最初に経営責任を問い、更生特例法ですと管財人が任命されて、経営者はその立場から離れます。それから、損失を最初に負担をするということになるのは、基金の拠出者やあるいは劣後債権などをやった人である。その後に契約者が負担するという順番になりますので、法律的な原則からいえば、更生特例法でいくのが本来の原則にあっているだろうということは指摘されております。

私も筋論としてはそうだろうと思います。恐らく問題として残るのは、最初の議論とかに戻りますけれども、そういうふうに破綻を待つのがいいのか、それとももっと早く手を打った方が社会全体のコスト、あるいは契約者にとっての負担も、どっちの方が重いのか、軽いのか。あるいは非常に広い目で見てどっちの方がフェアなのか、そこの判断なんだろうと思います。さっきの将来の、果たして保険会社の状況がどういうふうになるだろうかという予測、これは予測の問題なんで非常に難しいんですけれども、近未来に関しては、私はまあ心配する必要ないとは思います。ただ、中期的に考えると、相当深刻な状況であるというふうに認識しておりまして、中期的に考えると、悪いシナリオを考えますと、これから先従来起きたような破綻よりもはるかに規模の大きい破綻が順次起きて、更生特例法の適用を受けていくということも十分考えられると思います。

そこで、仮にそういうシナリオが――これ自体が予測の問題ですから間違っているかもしれませんが――正しいとした場合に、本来の筋を通す場合と、非常手段をとるのと、どっちの方が社会全体にとって、あるいは、契約者にとっても、契約者の中もいろいろな立場の人がいますからいろいろ利害の違いがございますが、それも考えなければなりませんから、どっちの方が最終的な負担なり損失が大きいか、あるいは軽くするかということを考えなければならないというふうに思います。これはもう予測の問題も入りますし、さらにいえば価値判断にかかわってきますので、非常に見方は分かれています。さっき申しましたように、本来の筋を通すべきだという意見があるいは多かったかもしれません。ただ一方で、何らかのそれ以外の方策の道もつくるべきだという意見があったことも確かでありまして、確かに更生特例法はフェアですし、現在のところは割とうまく運用されていると思っております。ただ、今後従来よりさらに大きい規模の破綻が相次ぐようなことになったときに、果たして現在の体制で今と同じようにうまくいくかどうか、これはちょっとわからないと思います。

そして、破綻手続というのは、それなりにコストがかかることは確かですので、したがって、状況によっては、破綻処理の手続をとらない方が全体のコストが安上がりになるところもあるかもしれません。さらに、破綻まで待っているということは、その間に当該会社の状況はどんどん悪くなっていくわけですから、当然少なくとも、現時点で処理した分と、破綻してから処理した部分では、破綻してから処理した方が負担が大きくなっている。これは争えないと思います。

そこで、そこら辺をどうするのか。総合的に考える必要があると思っております。

本当に難しいんですけれども、筋論として、本来法律家だったら筋を通すことが本当なんですけれども、私は法律家として失格の人間で、あるいは非常の手段も考えなきゃならないのかなというふうに私個人は考えております。ただその方法はいろいろありまして、石橋委員がご指摘になったように、会社が自主的にやるというやり方もあれば、あるいは、平成8年の新法で廃止されてしまいましたけれども、旧10条3項のように、行政的な措置で削減するという方法もあれば、あるいは、これは最後の方法ですけれども、まさに法律自体で状況が変わってしまう。これは戦後オーストリアがやったことですけれども、そういう方法もあるわけです。それぞれ一長一短があります。

石橋委員がご指摘になったような、例えば総代会決議には異議申立でやるというやり方は比較的まだ法律の理屈にあわせやすいところがあるわけですけれども、理屈を貫くとなかなか苦しいところも出てくるところもありまして、とにかく、そんな総代会を開くと言っただけで、契約者の解約が殺到して、当該会社は破綻しかねない。さっきご指摘があったように、そんな勇気のある経営者がいるかという話も出てくるわけです。それを考えれば、一番ドラスティックかもしれないけれども、本当に効果を発揮するためには、特別法で契約条件を本当に変更してしまうというやり方があると思います。ただ、これは当然劇薬ですので、まず憲法違反だという議論が当然出てくると思いますし、まず政治の世界でも本当にそういう決断ができるのかという問題もあると思います。

ある意味で言えば、これは国民全体にとっての政治の問題ですので、本当に政治の世界が責任をとって、国民のために本当にどっちがだめなのかということを考えて、その上で決断するならそうしたのが一番だなというふうに思っています。

とりあえずですけれども以上です。

○ 福井部会長

ありがとうございました。

ほかにご意見をお持ちの方いらっしゃいますでしょうか。

いろいろ拝聴しておりまして、本当に皆様方に大変難しい議論をお願いしているという感をますます私自身深くしておりますし、私自身の悩みもまたきょう一日でさらに深まったということでございます。

先ほど、原委員から大変暗い話から始まっていたという感想でございましたけれども、本当は我々の議論は、私ビジョンという言い方をさせていただいておりますけれども、将来の環境に見合った望ましい制度設計をきちんとして、そして、今の制度がいかに陳腐化しているかということを確認して、将来のイメージにうまくブリッジしていくためのいろいろな仕組み、仕掛けをつくり出していくというのが我々の本当の役割でございます。ですから、本来の我々の役割は将来に向かって非常に明るいものであるべきはずであって、本来そう暗いものであるはずはないのでございますけれども、ただ、こういった制度の問題はあくまで現状を踏まえて、現状をいかに将来の望ましい姿にシフトさせていくかということですから、現状から目を離すわけにはいかない。その場合に、生保の問題につきましては、現状が生保としていかに時代環境の流れの変化との対比で陳腐化しているかという吟味だけでは足りない難しい問題を抱えている。つまり、制度、仕組みを支えている土台のところで現実に生命保険会社の財務基盤が著しく損なわれている。いわば、マグマを抱えているわけです。今まで、いろいろな問題が処理されないで積み残してきたという表現をなさいました、そのことがまさにこれに該当するわけで、我々の本来の役割はあくまで制度論だし、制度論的なアプローチに徹すべきなんですけれども、そのマグマの所在、あるいはその性格等々に目を背けたままでは、何ら新しい解決策は出ないというところにこの難しさがある。したがいまして、ときどき、大変暗いシーンを皆様方にも経験していただかざるを得ないのかなと、感じている次第でございます。

さてさてその場合に、大事なのはディスクロージャーの問題です。いかなる方向へ制度変更をしていくといった場合にも、田中委員が最初におっしゃいましたとおり、多くの保険契約者は、漠然とではあるが現に非常に大きな問題があり、これを乗り越えていく難しさを予感している。その予感に対してきちんとしたソリューションが与えられると感じてもらうこと。このプロセスを経ないと、将来いかに明るいイメージを描いても、だれもそこに信任を置かないということですので、我々の仕事は成功しないということだと思います。したがって、どうしても、この最初の大変難しい部分を審議会としても、そこを避けては通らないで、むしろかなり真っ正面から向かって行かざるを得ない課題だろうとは思うのですが、しかし、積み残してきた個々具体的な問題は、私はマグマと変な言葉で申し上げましたけれども、この問題の処理、直接処理の仕事、それ自身はあくまで経営者の問題であり、行政当局の問題であって、我々の仕事はそれに対して制度論的アプローチできちんと光を投げかけるということではないか。その辺のところはワーキング・グループでも大変悩んでいる。しかし先ほどの座長のお話では、制度論的アプローチで極限までやりましょうというような、そういう意味かなというふうに理解させていただいたわけでございます。そういう目で行きますと、やっぱり我々自身が相当現実の情報もたくさん当局からちょうだいした上で、正しい認識判断を一応持っている必要があるだろうというふうな感じはいたします。決して、議論が上滑りにならないようにしなければならないのは確かでございます。

そして、具体的には逆ざやの問題というのは、どうしても最後まで引っかかるし、かつ焦点になるわけですし、先ほど岩原委員からもこの問題がいかに難しいか、そして責任ある委員としていかにお悩みいただいているかという点のご披露があったわけです。制度論的なアプローチでいえば、将来のビジョンはこう、現状はこうであって、その過程でこの問題はこのように解決しなければならない、という、組立て方になる訳で、これを非常にクリアカットにいけばやはり更生特例法的なアプローチで対処していく、そうすれば制度論的には何も矛盾はなくていける、と多分なると思いますが、そこでやっぱり現実の問題の重さを絡めてみたときに、この更生特例法というプロセスを経るうちに一体現状のシステムというのはどこまで傷んでしまうのか、結局そこで、将来我々が描いた望ましい姿の最小限のものにまで行き着かない可能性があるのかどうかというところは、やはり制度論的立場からもちょっと吟味をしなければいけない部分じゃないかと、そこのところを多分岩原委員も苦吟しておられるところであると思います。相当程度途中でシステムが傷んでも、ぎりぎり芽が残って、将来の望ましい姿につながるよという確証が我々にあれば、それはかなり途中でショックセラピーを経てでもいけるじゃないかという確信を持っていいと思いますが、そこの吟味がやっぱりどうしても必要じゃないかというふうな感じでございます。

それから、仮に更生特例法的プロセスよりも、もうちょっと前の段階で契約者の納得を得ながら事前処理するやり方があるのかないのか、もしあるとして、仮にそういうアプローチが制度論的にも移行プロセスとして必要だとなった場合には、恐らく契約者の納得を得るためには、業界におられる方々がこれが最大限だという意識しておられる範囲のディスクロージャー以上のディスクロージャーがやはり必要じゃないかなという感じとか――これは感じでございます――であるとか、あるいは、それで契約者が納得できるのだろうか、やはり契約者の負担というだけではなくて、経営者の負担、責任、それから出資をした方々の責任と負担というふうな、そこのところをノータッチで通り過ぎていいのかどうかという問題は吟味する必要があるだろう。これをしかも、我々は個別具体的に処理するわけではない、あくまで制度論的アプローチとしてそこをきれいに整理できるかどうか、そういう仕事じゃないかなというふうに意識しておりまして、ワーキング・グループでまた引き続き作業をお願いいたしますけれども、この部会におきましても、さらなるワーキング・グループの研究成果をちょうだいした上で、私の申し上げましたことは、問題点のすべてに触れていないかもしれませんけれども、ポイント、ポイントをしっかり押さえながら整理していきたいと思っております。あくまで個別の行政に関与するわけではないが、我々が制度論的なアプローチをとる場合にも、現実には鋭い目を通しましょうというふうな感じでいきたいなと私は個人的には思っている次第でございます。

ほかにご意見がございませんでしたら、討議で一応きょうはこの辺で閉めさせていただきたいと思います。

今後の進め方でしょうか。

今申し上げましたとおり、もう少しワーキング・グループで詰めていただくということでございまして、その後で改めてこの第二部会を開催させていただきます。その際、別途またご案内を申し上げるということでございますので、引き続きよろしくお願い申し上げたいと思います。

それから、きょうの部会の模様につきましては、また記者会見を行います。きょうは高橋さんが言っておられたが日経新聞ですか。そういうことではないということも申し上げる必要がありますかね。極めて審議の状況を客観的、フェアに報告をいたすつもりでおります。

それから、事務局の方から何かご連絡ひとつ。

○ 樋口信用課長

もう特段ございません。

次回のこの部会の日程につきましては、ワーキング・グループでの検討を見ながらまた部会長ともご相談の上、決めまして、皆様にご連絡したいと思っております。よろしくお願いします。

以上でございます。

○ 福井部会長

大変ご苦労さまでございました。きょうの会議をこれで終了いたします。

ありがとうございました。

(以上)

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