金融審議会金融分科会第二部会(第5回)・「金融機能の向上に関するWG」(第4回)合同会合議事録

平成13年5月23日
金融庁総務企画局

○ 福井部会長

大変長らくお待たせをいたしました。

ただいまから金融審議会、金融分科会第二部会と金融機能の向上に関するワーキング・グループの合同会合を開催いたします。

悪天候の中、早朝から皆様お集まりいただきまして、まことにありがとうございます。

きょうは別添の資料にもございますとおり、前回の会合に引き続きまして、銀行の株式保有制限について有識者の方々からご意見を拝聴したいと思います。

また、その後は、前回の会合までに委員の皆様方からちょうだいしておりますご意見、その他を踏まえまして、事務局の方で「銀行の株式保有制限に関する主な検討事項にかかる意見等」と、ちょっと表題が長いですけれども、そういう表題のペーパーをまとめていただいておりますので、こちらにつきましてのご議論をお願いしたいというふうに考えております。

なお、ご案内のこととは存じますが、本日の合同会合につきましても、審議の透明化を図る観点から、公開とさせていただいております。

それでは、議事予定に従いまして、有識者からのご意見の発表に移らせていただきたいと思います。

きょうは、まず、福間委員から、「株式の持合いについて」、それに続きまして、川北委員から、「株式持合い状況調査及び株式銀行保有株式にかかるリスクの推計」につきまして、ご意見をご発表していただきたいと思います。お二人のご意見をうかがいましたところで一度質疑応答、あるいは自由討議の時間を設けたいと思います。それが終わりまして、その後は、本日のゲストスピーカーでございます大阪大学経済学部教授であられ、かつ経済財政諮問会議の議員でもあられます本間正明氏より「株式市場の現状と改革の方策について」と題してご意見をお伺いすることとなっております。

なお、本間教授は、まだお見えになっておりませんが、後ほどお越しいただく予定となっております。

それに続きまして、池尾委員から、「銀行経営の健全性と株式保有について」ご意見を発表していただきます。本間教授のご意見とあわせて質疑応答、自由討議の時間を設けたいと思っております。

きょうは、ちょっと長いセッションでお疲れになると思いますけれども、ひとつ審議にご協力賜れればというふうに思っております。

それでは、福間委員から、「株式持合いについて」ご意見のご発表をお願いいたします。

○ 福間委員

福間でございます。

お手元の資料に入る前に、今日では資本調達が極めて多様化しておりまして、少なくとも大手企業については増資、あるいは銀行借入という形をとらずに資金調達が自由にできるようになりました。しかし資金調達手段が極めて限定されてきた資金の傾斜配分の時代からこのような状態になるまでに、相当の時間、あるいは経緯があったということで、私も事業金融に携わって長いものですから、語部として、年代順に簡単に申し上げたいと思います。

1ページでございますけれども、60年代、この時代資金調達の特徴としては、基本は額面割当増資でございまして、額面割当であっても失権株が発生したというのがこの時代にございます。前回伊庭さんがお話になったように、海外で資金調達をやる会社もございました。当社も63年にADRを発行しましたが、これは極めて限られたチャレンジングな企業がそういうことをやったということであります。

したがって、株の発行も額面増資でございますから、既存株主への割当で行われるため、資料の1にございますように、個人の株主比率が高い時代でありましたから、個人株主比率が非常に高い。当時は預金を集めるのが大変な、蓄積がまだできていない資金の割当時代であり、銀行もそんなに資金をお持ちにならないということで、個人を中心に額面増資で資金調達をしていた。

実はこのごろの額面増資が今日の銀行との持合いのコアになっています。その後、もちろん時価発行増資などもありましたが、まずここで銀行と企業との間の持合いというものが形成され、銀行が筆頭株主になり、財閥系ならばグループ化、金融系列であればワンセット主義といわれたのがこの時代でございます。

資料3にもございますが、これは当社の場合で、一般化はできないのですが、下の方に三井物産発行済株式数の内訳というのがございます。これをごらんいただきますと、額面発行、それから広い意味での額面発行になる無償で発行した株式数の方が、時価発行で発行した株式数に比べて大きいということでございます。

70年代に入りますと、資料の3にも、あるいはその前の資料にもございますけれども、企業の資金調達が間接金融主体というのは変わりませんでしたけれども、72年から初めて時価転換社債、あるいは時価発行増資というものが始まりました。もう一つ外的要因として、67年、69年に資本自由化が始まった。ここでTOBに対する懸念が初めて企業並びに銀行に出てきて、これから安定的な株主ということで、持合いの関係が広がったということでございます。

それでもなおかつ、72年あたりから変わり始めますけれども、資料1にございますように、個人が主要株主であったということでございます。

2ページにまいりまして、80年代後半から90年代、というより91年以降はもう企業のファイナンスも大きく変わりましたので、90年と言った方がいいのかもしれませんけれども、この時期に企業金融は劇的に変わりました。資料の4で、最も極端に表れた年ということで89年の数字を示しておりますが、もちろん87年も88年も同じような傾向はありました。この時期は海外市場とEQUITY FINANCEを非常に活発に活用しました。時価発行増資についても、グラフの黒いところで有償増資というのがございますが、これも大きな調達手段で、銀行はBIS対策、企業からしたら今なら資本コストを考えると何を言っているんだということになるわけですが、当時は金利のつかない安い金ということでEQUITYリンクのファイナンスが行われたということでございます。ユーロ市場で日本企業のワラント債、SBが発行されて、ユーロ借腹論が出たのもこのときでございます。

けれども、ユーロの借腹も、日本市場に悪い影響ばかりあったわけではなくて、むしろユーロと日本の発行市場の慣行の差、あるいは法制面での違いというものを際立たせ、それが90年代の日本の資本市場改革に大きなインパクトがあったということです。

さらに80年代の大きな出来事は、短期金融手段として87年に国内CPが解禁されたことです。長い間、銀行界からは融手であるということで反対されていたCPが出されるようになったことによりまして、短期資金借入の銀行依存が減ってきた。この辺から大手企業が底積み借り入れの解消を行い始め、運転資金はCPに変わってきて、さらに金融機関との株式の持合いというものを徐々に徐々に変えさせて、流動化が始まったわけでございます。

ただ、さきほど申し上げましたように、ファイナンスの過程で持合いが一方では進んだという面もございます。当時はROEという概念よりは、株をお互いに持ち合って高株価経営といっていたわけですけれども、今からすれば錯覚だったわけですが、そういうことが事実としてありました。

すべての企業がやったわけではありませんが、EQUITY FINANCEの一部を銀行と企業が時差を伴いながら双方の株式購入代金に充てた。当時は打ち返し率という言葉がよく使われましたけれども、これが第二次の株主の持合い拡大だと思います。

そういう過程を経て、失われた10年の90年に入るわけです。90年の3月末には既に株も大分落ちてまいりました。90年の2月ごろが、この時期のEQUITY FINANCEの最後でございます。こうなると、いつでもできると思っていたワラント債、転換社債、時価発行というものができなくなり、過去に出したワラント債の償還資金の手当てのためにも、デットファイナンスに移らざるを得ないというニーズ、普通社債を日本で出さざる得ないというニーズが非常に高まりました。そこで96年には適債基準が撤廃され、格付けに基づく発行条件格差が定着し、国内においても大型起債が可能になった。今まではユーロしかなかったわけですけれども、国内資本市場の整備に伴ってDEBT FINANCEが定着した。銀行からの短期借入金がCPに代わり、企業の長期資金借入が普通社債に代わっていったということで、ここでも資金調達面の銀行との株の持合いニーズ。あるいは必要性がだんだんと落ちてきたということでございます。

これは川北委員がお作りになったものだと思いますけれども、資料5にございますように、こういう形の持合いがどんどん減ってきたということであります。資料6にございますのが、当社、トヨタさん、新日鉄さんの数字で、公表されている有価証券報告書で分かる範囲で書いております。バブルの始まる1985年3月の銀行が保有する株数につきまして、まず三井物産の場合19.9、ピークの90年で21.56、現在が15.66ということでございます。

トヨタさんの場合は、非常に高収益の会社で、株式のキャピタルゲインも狙える。あるいは、今後のROEもさらに上がるということで、銀行も持合いというよりも、資産としてお持ちになっている部分が多いんだと思いますけれども、ほとんど比率は変わっていません。新日鉄さんの場合は当社とよく似ていて、85年から90年にかけて比率が上がり、今は下がってきている。逆に企業が保有する銀行の株式、三井物産は1985年はその表にございますように24行であった。トヨタさんは、17行である。新日鉄さんも17行であった。90年からは株も下がり始めましたから、保有するリスクというのがこの辺から意識され始めまして、当社の場合は、極端に減っていますけれども、24行から17行になっている。さらに2001年になりますと5行に減っている。新日鉄さんも5行になっているというような格好で、銀行もそうですけれども、企業についてもこのあたりから株式保有のリスクというものが90年代の中間、特に96年、98年の金融危機の時代に非常にはっきりと出てきたということでございます。

それでは、借り入れはどうなっているかと言いますと、資料6の一番下にございますように、有利子負債、間接金融と直接金融の比率の推移でございますけれども、三井物産の場合は35%の間接金融比率でございます。これは多くはproject financeにかかわる市中協融部分でございまして、先ほども申し上げましたように、運転資金として借り入れしている部分はほとんどございません。プロジェクトタイドでセルフリクィデーティングできる長期の借り入れを行っているということです。一方、直接調達比率は65%で、資本市場の整備、あるいはCPの発行などの資金調達の多様化が企業金融、さらには、企業と銀行に大きな影響を与えたかがこの表でもお分かりいただけるかなと思います。

本紙の2ページの一番下の90年代のところにもございますように、92、3年頃は財テク損失の解消等に株式売却益が利用される場合もございましたけれども、96年以降になりますと、金融ビックバンがあり、時価会計が導入されるといった矢先にアジア危機、金融システム危機も起き、企業の方も保有リスクに加えて、リストラ費用捻出、銀行さんにとっても償却財源の捻出ということが、この辺から本格的に始まりました。この辺から、企業間の持ち合いも含めまして、持合い解消が始まり、時価会計の導入の動きがこれを促進したということでございます。

現在、外人株主比率、これも資料の6に出ていますけれども、大体日本企業全体で平均すると2割前後と言われています。こうなりますと、企業経営者もROEを意識して、向上を図り、持合いではなく、ROEを上げることによって高株価経営を継続したいという本来の考え方に立ち始めます。保有リスクのある株式を企業もあまり持てないというような形になってきたのは、このROE概念の浸透の結果でございます。80年代の後半から90年代へ、こういう変遷を経まして、現在は企業と銀行の関係もMAIN BANKSからCORE BANKSへという感覚を企業側は持っております。

こういう形で、90年代に入りまして、最後の3ページでございます。

今後の展望につきましては、もうこれまで意見も申し上げていますので、あまりつけ加えることはございませんけれども、銀行、企業経営の目標は、株価、格付けを指標とするROEの向上、あるいは株式価値の最大化というもので、市場規律を意識しない経営は少なくとも上場企業につきましては今はないと言ってもいいと思います。株価が低いと市場が会社を倒産に追い込む、あるいは格付けが低いと水が引くように融資が減っていくというようなことは、今や日常的な現象という意識を持っております。

このような状況を受け、この前も申し上げましたけれども、BIS二次規制とか、時価会計の導入というようなものがある中で、株式保有を一律に規制するというのはいかがかなと思っています。むしろ資本の論理に基づいて持合いは市場メカニズムを通じて調整されるべきものは調整されると思っております。

それでは株式持合いがなくなるのかということになりますと、2番目に書いてありますように経済合理性の薄いものは、先ほど申し上げましたROE経営、リスクマネジメントの観点からも維持することは難しいと思いますけれども、CORE BANKSとの保有関係は維持されるのではないかなと思っています。

経済合理性の確保とはどういうことかといいますと、あいまいではないかと言われるかもしれませんけれども、総合取り引きのメリットということが相互にございます。今は連結経営でございますから、連結子会社の資金を本社がすべて賄うというような格好に徐々にはなっていくと思いますが、それでも現在銀行借り入れに依存している子会社というのはございますし、特にアジア地域に子会社を通じてグローバル展開していきますと、金融機関取引は必要であるということ。いわんやGLOBAL CASH MANAGEMENTをやる場合には、SYSTEMの中核となるCORE BANKSが必要となるということ。外為業務というのは、これはTREASURY OPERATIONですけれども、これを取り扱うメリット、INVESTMENT BANK、この辺はもうここでは細かく申し上げませんが、これらの総合取り引きでございます。株式保有というのは、この様な安定的な取引関係へのコミットメントをあわらすアライアンスの一形態で、これらの取引につながるCATALYST効果を企業と銀行との間に生んでいるということでございます。もちろん先ほどからお話している通り、総合取引と株式保有、メリット、デメリットを計算の上、メリットがあれば、経済的な合理性があればお互いにやっていくということでございます。

当社の財務の前線では、これがイナーシャがどうかは別にしまして、若い人達のDNAにも分からないこと、新しい取り引きのプライシングはCORE BANKSを中心にとっていくという習慣がついている。あるいは信用照会もそうです。あるいはジョイントプロジェクトをやる場合もそうです。

そういうことで、私は株式保有というのは一概にノーだという考え方は、経営者としては持っておりません。株式保有がトータルのROE向上を阻害するというような関係になれば、銀行も企業も見直しが入るということだと思います。

むしろ解け合い、解け合いと言われれば、言われるほど、本質を問うと、本質を問うて残っている部分が本当の持合いといいますか、企業にとっても、CORE BANKSにとっても重要なものではないかと思います。98年、99年、前回も申し上げましたけれども、金融危機の時には、当社でもCORE BANKSの増資、優先株の引き受け等をやるというのも、これを行うメリットがあるからということでございます。

最後に、株式持合いのマクロ株価形成の影響につきましては、前回、野村総研さんでしたか、ご説明いただきましたように、一挙に株価を崩すという目的で売るんだったらともかく、今の程度の持合い解消が、マーケットの状況を見ながら行われる場合には、大きな影響はないのではないかなと、それよりも、株価を決定するのはROEなど、別のファクターであると思っております。

以上です。

○ 福井部会長

福間委員、ありがとうございました。

それでは、続きまして、川北委員から、「株式持合い状況調査及び銀行保有株式にかかるリスクの推計」についてご意見の発表をお願いしたいと思います。

○ 川北委員

日本生命の川北です。

まず最初に、株式の持合いの状況をご報告させていただいて、あと、銀行の保有株式にかかるリスクについて報告させていただきたいと思います。

まず最初の資料、株式持合い状況調査、ニッセイ基礎研究所の99年度版、去年の秋に公表したものから抜粋し、多少つけ加えた資料をごらんいただきたいと思います。

1ページ目、持合いの算出方法を簡単にご紹介しております。

日経から有価証券報告書の明細表ベースを買っており、こちらで事業会社さんが保有している株式の明細を把握して、それを一つベースにしております。もう一つのベースは、東洋経済から買っております大株主データで、これは東洋経済さんの調査データです。この2つに基づきまして各企業の基準日での株主名簿を作成し、それによって上場会社がお互いに株式を保有しているかどうかをデータベース的にチェックしているという、そういう加工データになっております。つまり、ここでの株式の持合いの定義は、データからお互いに持っているということが確認できたものです。ですから、ここには企業が持ち合いということを意識されているかどうか、その観点は入っていません。

それから、もう1点、安定保有という定義をしていますが、これは持合いに加えまして、銀行とか、生命保険会社という金融機関が絡んでおる片持ち、この片持ちは従来ではあまり株式の売却がみられなかったという、その事実認識に基づいていますが、それを加えたものを安定保有株式というふうに定義しています。

以上に基づきまして、実際の調査データを見ていただきたいと思います。

2ページ目の表1です。

これは、市場全体の安定保有比率と、そのうち銀行と事業会社の安定保有や持合いの数値を書いております。

先ほどの安定保有のところを1点、言い漏らしましたが、関係会社が保有している株式も安定保有に含んでおります。そういう意味で、どういう株式が上場されているのか、例えばイトーヨーカ堂とか、NTTとか、非常に大きな関連会社をお持ちのところの株価が上昇したときには事業会社の安定保有比率が振れる、そういう性質があるということに少し留意が必要です。

それと、注4に書かせていただいておりますけれども、有価証券報告書の明細表での保有株式のディスクロの範囲が簡素化されております。そういう意味で、98年以降、データが不連続になっております。その不連続性を修正したものを我々の研究所の方は独自に算出し、それを試算値として発表しています。一方、データそのものから得られたものが観測値です。観測値には最初に申しましたように不連続性があるということで、以下その不連続性を修正した試算値で見ていきたいと思います。

この表1を少しグラフ化させてただいたものが次の3ページのグラフ1、安定保有比率の推移のところです。これを見ていただきますと、市場全体は94、95年あたりから少しずつ安定保有比率が低下しています。市場全体では45%程度だったものが現在、37、38%のところまで低下しているということです。それを銀行と事業会社別に見ております。銀行の方が四角いマーカーの入った折れ線ですけれども、こちらの方は97、98年ぐらいから低下傾向です。その一方事業会社の方は、95年ぐらいから低下しいますけれども、先ほど申しました関連会社の影響から少し足元は上昇ぎみということですけれども、これは少しイレギュラーな数字ではないのかなというふうに思っています。

次の4ページの表2、これは持合い比率の内訳を見ている表です。主要なところをグラフにしたのが5ページ目のグラフの2です。

安定保有と同じように、市場全体では94年前後から持合い比率が低下しているわけですけれども、それを事業会社、銀行別に見ますと、事業会社の方はやはり94年ぐらいから低下しておるり、足元も低下が続いているということで、関連会社を入れた安定保有と持合いとでは状況が違っています。この持合いの数値の方が事業会社の現状をよく表現していると思います。

一方、銀行の方ですけれども、96年あたりまではそんなに大きな変化はなかった。むしろ少し上昇ぎみだったわけですけれども、97、98年位から低下しています。推測するに97年あたりの金融システム不安の影響が出ているのかなというふうに思っています。

以上が市場全体の持合いと安定保有の状況です。

6ページ目、表3、これは公正取引委員会がフォローしている6大企業グループの持合いの状況を分析したものです。この表は以下の3つのグラフで示しています。

まず、7ページ目、企業グループ別の持合い比率の変化を単純にグラフ化したものです。それぞれのグループでは、水準の差はあるものの低下傾向が押しなべて見られます。

それはともあれ、8ページですけれども、グラフの3-1、6大企業グループの持合い比率と、それ以外の、6大企業グループに入っていない企業の持合い比率に差があるのかどうかを見ております。明らかに水準の差がある(企業グループの持合い比率が高い)ということですが、ただし6大企業グループ、非6大企業グループにかかわらず持合い比率の低下が見られ、また、両者の低下幅にそんなに大きな差はないと思っております。

ということで、この表で言いたいことは、6大企業グループに属しているのかいないのかで、かなり持合いの状況が違うんだろうということです。非6大企業グループの中にも、持合い比率の高いところはあると思うんですけれども、そういう市場全体とそれを少し群団別に分けると状況が異なってくることに留意が必要なのかなと思います。

それと、今回図表でおつけしなかったんですけれども、群団別という意味では、銀行の持合い、もしくは安定保有比率と、銀行以外の持合い、もしくは安定保有比率にも、この企業グループに属しているかいないかと同じような差があります。銀行の持合いや安定保有比率が高いという状況が見てとれます。

99年を参考に申し上げますと、銀行株の45.6%がここで定義しています安定保有として認識されるのに対しまして、事業会社の方は27.9%となっています。ただし、安定保有の解消の速度という観点からいたしますと、銀行の解消の速度の方が大きいく、また、企業グループと比べても少し解消の速度が速いという面では差が見られるということですが、これは一つの参考として申し上げた次第です。

次の9ページ、グラフの3-2ですけれども、これは6大企業グループに属している企業の持合いの内訳を見たものです。要は6大企業グループの持合いといっても、グループ内での持合いと、グループの外側の企業との持合いの両方があるわけですが、そのグループの内と外の持合いの状況がどういうふうに変化してきたのか、それを見てみようということです。

一番上の△のマーカーのついたのが6大企業グループ全体の平均的な持合いの状況です。◇のマーカーがついているもの、これがグループ外企業との持合いの比率です。それから、□のマーカーのついたもの、これはグループ内の企業と相互に持合っている比率です。見ていただきますと、グループ外企業との持合いの比率の低下の方が、グループ内相互での持合いの比率の低下よりも速度が大きいということです。そういう意味では、グループに属している企業というのは先ほどの福間委員からのご説明にも少しあったように、そもそもの持合いの発端だったということで、そういうそもそもの持合いというものが比較的堅固に保たれてきているようです。シナジー効果というんですか、お互いのアライアントというんですか、そのあたりの強さが少しうかがえるのかなというふうに思います。

以上が持合いの調査のデータの報告ですが、一番最後の表4、これは、持合い解消の背景を少しだけ探ってみようということで、株式の投資収益率をみています。ここではTOPIX上昇率、つまりキャピタルゲインと、それから東証一部の平均配当利回り、つまりインカムゲインとの2つを足して株式の投資利回りというものを定義しているのですが、それと金利、つまり国債の流通レートなんですけれども、その比較をしています。この表4をグラフにしたのが最後のページのグラフの4です。大きく変化しておるのが株式の投資利回り、それから余り変化してない、□のマーカーのついているのが国債の流通利回りです。これを見ていただきますと、1990年までとそれ以降ではかなり状況が変わってきています。

言い忘れましたけれども、ここで5年の移動平均を使っています。そういう意味では、持合いのように、安定的というか、長期的に投資をしたときの株式の利回りというふうに考えていただいていいと思うんですけれども、90年以前は株式を安定的に持つことが持合いの功罪はともあれ、投資収益率的にも企業に貢献したといえます。それが90年以降、株式を持っていることが金利の水準にも達しない状況になっているということで、株式を持つことの合理性が問われてきています。その株式の投資収益率が5年平均でボトムだったのが九十四、五年あたりなわけですが、事業会社がこのあたりから持合いの解消をしているということで、年代的に符合しています。このあたりから事業会社が株式を安定的に保有することに耐えられなくなってきたのではないかと推測できます。

それと、銀行の場合は、97年の金融システム不安に直面して、銀行自身の収益、ないしはそのリスク管理が問われてきた。それが銀行の株式の持合いの解消に寄与しているというふうに考えていいのではと思います。

次に、2つ目の資料、その銀行の株式保有に関しまして、バリュー・アット・リスクの観点からリスク値を推計したものをお示ししておりますので、それを簡単に説明させていただきます。ワーキングの方で説明させていただいた資料とほとんど同じです。

表紙を開けていただいて1ページ目、都銀9行ベースのリスク値を推計しております。

一番上の表が昨年9月末現在での簿価、時価ベースで都銀のポートフォリオの構成比を示したものです。このうちの時価ベースの数値を使いましてリスクの推計をしています。いわゆるバリュー・アット・リスクの推計をしておるわけですけれども、このときに、係数としてバリュー・アット・リスクの量に影響するものが幾つかございます。

一つは都銀が保有している株式の価格の変動性です。市場全体の価格変動と比べて、どの程度の連動性があるのか、いわゆるβ値が1つ問題になってきます。それと、同時に市場全体、ここではTOPIXを用いていますが、TOPIXの価格変動性、いわゆるボラティリティが次に問題になってきます。それから、バリュー・アット・リスクですから、信頼性といいますか、信頼区間をどの程度に置くのか、非常に厳しい区間を設定するのか、比較的軽めの信頼区間を設定するのかです。最後に、どの程度の保有期間を想定してリスクを推計するのか。ここでは1年と半年の2つのベースで計算しているわけですけれども、それによっても割り当てリスクの大きさが変わってくるということです。

それで、係数を推計するに際しまして、1つは、銀行さんの保有株式のβ値を推計しようということなんですけれども、資料では5年、3年、1年、3つのベースでβ値を計算しておりますけれども、どの期間を推計期間にするのかによって、β値が変わってきます。直近5年ではβ値が0.85、直近1年ですとβ値が0.71ということで、TOPIXが1変動することに対して8掛けないしは7掛け程度の変動性が最近あるということです。

ちなみに、日本生命の場合も、直近5年のベースでは0.86で、銀行とそんなに変わらない変動性をが算出されますので、この程度のβ値でいいと思います。

以上のβ値を参考にしつつ、かつTOPIXのボラティリティの計測期間を10年間として、それと保有期間を1年と0.5年、それから信頼区間を99、98、95%の3つでもってリスク量を推計しております。それによりますと、保有期間1年、それからβ値をとりあえず1にして、信頼区間を99にしたときが一番大きくて13.9兆円。それからβ値が0.6、保有期間を0.5、信頼区間を95%にしたときには4.1兆円ということで、係数をどうするかでかなり差がある。ただしこの程度のリスクはあるという結果をお示ししています。

それから、注でつけておりますけれども、この推定は株式だけを抜き出したものです。本来的には、一番上でお示ししたようなポートフォリオに基づいて、かつ各アセットクラスの相関性も考慮して、割り当てリスクを計算しないといけないということと、銀行さんの場合は貸出金の比率が6割を超えているわけですから、そもそもの自己資本という意味では、信用リスクに使われる部分もあるということ、そういう考慮が必要だと思います。

資料の2枚目にはボラティリティの推移を示しておりますけれども、先ほど申しましたように、ボラティリティもかなり変化するというふうにお考えいただいて、以上はあくまでも試算ということでご認識いただければ幸いかと存じます。

私からは以上でございます。

○ 福井部会長

まことにありがとうございました。

それでは、福間委員、川北委員、ご両者からお話をいただきましたので、その内容等につきまして、ご質問、あるいはご自由にご発言をいただければというふうに思います。

どなたからでもどうぞ。

○ 蝋山分科会長

福間委員が経済、合理性のある持合いというのは続くだろうと、それらはそのとおりだと思いますし、川北委員が説明された、レイトリターンでいえば、要するに儲からなかったから出したんだということにつきる面があると思いますけれども、経済合理性という場合に、2つあると思うんです。

1つは、いわば株式投資の投資として合理的かどうか。しかし、その場合には、川北委員が示されたように、インカムゲインとキャピタルゲインがどうであるか。その点での収益性というのは、一般の投資家も協議できる収益性であるわけです。それについての判断に基づいて株式を持つというのは当然考えられるだろうというふうに思いますし、リスクを負担すると、ただ株式には支配証券としての意味があり、同時にそのことからさまざまな持合いといいますか、あるいは株主であるということのメリットを例えば営業とか、そういうところで活用することができる。それも経済合理性だというふうに広い意味では思うわけです。しかし、それは一般の投資家には享受できないメリットなんです。

今までの日本の持合いとか、あるいは安定株主とか、そういう名称というのは、こうした企業同士が株式を持ち合い、銀行が介在する。それによってそうした直接の関係者だけに享受できるメリットを相互に分かち合っていたという側面があって、一般の投資家、あるいは機関投資家にはそういうメリットは享受できない、そういうところが株式市場に登場してきて、株式市場の価格形成を弱めてきたのではないかというふうに私は思うんですけれども、そういう面は今後どうなるというふうにお考えですか。言いかえれば、競争条件は厳しくなり、公取の政策を初め市場の監視というのが貫徹するようになれば、市場規律が支配するようになれば、そういうメリットがなくなってくるということは確かなわけです。しかし、それには限界がありますので、どうしても一般の投資家には利用可能でない、収益を持ち合いを通して享受できるという面での合理性は残るとすれば、それに対しては何らかのパブリックウォールシイとしての対応が必要ではないかというふうな意見も言えるかと思いますけれども、どうなんでしょうか。

○ 福井部会長

福間委員お願いします。

○ 福間委員

先ほどから申し上げていますように、最終的な経営目標はROEの向上であり、そのために資本コストの考え方を貫徹させていっているわけです。持合いがROEの向上を削ぐような持合いは、もうお願いするというようなことはありませんし、実際になくなってきている。

今の銀行と企業、少なくとも大企業との関係というのは、資金調達面では大きく変わっている。先生にも長年ご苦労いただいたように、直接金融がこれだけ発達しましたから、銀行借入はほとんどやっていません。借り入れの残高はありますが、これはプロジェクトファイナンスで、銀行さんがリスクもとる代りに高いリターンをとられている案件です。このような案件でも、オープンビットの形で、有利な場合にメインバンク、あるいはCORE BANKSと取引するというように、実態はそうなっております。ただCORE BANKSであれば様々な取引を通じてお互いの状況をよく知っていますから、そこに付帯メリットが生まれるかもしれませんが、それは企業にとってもメリットとなります。例えば、プロジェクトのリスクをシェアーするとか、新しい成長分野、例えば情報産業分野に銀行さんにも一部参加いただいて進出するとか、これらのことを多数の銀行にサウンドした上でやるには機会費用が多額になりすぎる。情報がある程度共有できているCORE BANKSから条件をとる方が費用もセーブできるし、条件もいいのが出る。彼らがリスクを全部とれなければ、幹事としてマーケットでシンジケーションを組む。

そういうリスクリターンの関係で、借り入れ、あるいはプロジェクトの資本参加をお願いしているということです。100%の貫徹はまだしていないかも知れませんが、これは原理原則として非常にはっきりしていて、前線でのプリンシプルになっています。

○ 福井部会長

ほかにございませんでしょうか。

どうぞ。

○ 島上委員

追加して企業側から申し上げたいと思いますけれども、きょう出していただいた持合い比率のトレンドのグラフなんかも99年度まで入っておりますけれども、これが2000年度、2001年度になると、このトレンドがさらに加速されて減少してきておるだろうと思います。背景に何があるかというと大きく2つございますけれども、1つは福間委員もおっしゃっているように、金融側も、あるいは銀行側も企業側も、ROE経営、市場を見た経営というものをもっともっと加速させておりますし、もう一つの理由は、退職給付債務の処理の問題で、これは事業会社側が大きいわけでありますけれども、退職給付信託ということで、持っております株を信託に手放してきております。それがまた銀行側にもリアクションがありまして、信託設定に相応した銀行の持合分を落とさせていただきますというような動きがありますから、2つ目の退職給付信託設定ということもあって、お互いの持合いというものはかなり減ってきておるというのが実情だろうと思います。したがって、持合い問題というのを今それほど大きく取り上げて、ここでやるニーズというのがかなり薄れてきておるんではないかという感触を持っております。

以上です。

○ 福井部会長

どうぞ。

○ 貝塚会長

福間委員にご質問したいのは、CORE BANKSという概念とメインバンクというのがある。、メインバンクというのはかなり学者はいろいろ議論してきて、それよりもかなり限定された意味合いがあって、それが中心になっているということは日本のシステムが、ある意味では銀行と企業の関係で変化が起きているとというふうに理解してよろしいんでしょうか。

○ 福間委員

一つはさっき言いましたように企業の資金調達に大きな変化が生じてきたということ。もう一つは銀行さん自体もメインバンクだから云々という論理で動いていては、コスト・リターンからだんだん採算が合わないというのが実情になっていまして、恐らく今後の形は、日本での融資形態も、我々はプロジェクトのファイナンスではそうしているんですが、あらかじめリスクの限界を明確に定めたシンジケートローンというような格好に変わってくるのではないかなと思っています。

かつての底積み資金、あるいは運転資金的なものはCPと社債に代替されてきたので、そうなると、リスクのはっきりした個別のプロジェクトのシンジケーションを銀行ではやられる。この場合もシンジケーションの幹事行はかつてのメインバンクがおやりになることが多い。というのは、やはり企業が取り組んでいるプロジェクトをより理解されていることだろうと思います。繰り返しになりますが、企業の資金調達の多様化ということが、銀行と企業との関係の変質、つまりややアメリカ型のCORE BANKSというような形に変わってきていると思います。

○ 島上委員

私どももCORE BANKSというコンセプトで今やっておりますけれども、追加してCORE BANKSということに我々が持っていった理由を申し上げますと、メインバンクというのは比較的非常に限られた、場合によっては1行がメインという1行メインというのもございますから、そこでの我々が受けるサービスに競争関係が出てまいりません。入りにくくなります。したがって、銀行と企業との関係をある意味で競争状態の中で我々としては取り引きしたいということで、複数の銀行をコアとして、その中での競争状態をつくりたい、いいサービスを受けたいということがありました。ご指摘のとおり、メインバンクとCORE BANKSとの間にどういう関係の差があるかと申し上げると、私どもにとりまして、ある競争条件をつくると、そこで非常にいいサービスを受けるというところに大きな我々にとっての考え方の差がある。そういう時代になってきておるという具合にご理解いただきたいと思います。

○ 福井部会長

ほかにございませんか。

どうぞ。

○ 道垣内委員

CORE BANKS制度というのはわかりました。そして、別にそれが悪いとか、いいとかという話を申し上げるつもりはありません。しかし、CORE BANKS制度と株式保有の触媒機能との間に必然的なつながりがあるのかというのが私にはよくわからないのです。つまりAという企業がB、Cという銀行をCORE BANKSとして長年いろいろな関係を持って、さっきのコンサルティングを受けながら取引を行うということのために、なぜ株式保有を触媒として介在させなければならない必然性はあるのか、ということです。もちろん、そういうふうなことがあったからだんだん関係ができたんだよということは歴史的にはわかるのですが、今現在そういうことはどのような意味があるのかということをお教え願えればと思います。

○ 福井部会長

部会長としてどこまで質問していいのか疑問はございますが、ちょっと福間委員にお許しいただきたいと思います。今のご質問を聞き、私もちょっと同じような意味の疑問を持っております。メインバンクからCORE BANKにかわったというお話で、メインバンクというのが、融資、つまり間接金融のルートで強い絆があったときの銀行と企業との関係であったのに対し、CORE BANKというのは、それは薄れたけれども、いろいろな新しいフィナンシャルサービスについて企業が安定的なサービスを期待しているという意味での絆だと理解されますが、そういうふうに変わった場合においてもなお、持合い的な関係を維持することに何か効用があるのかと、その点は本当にそうかという質問で、これはかなり本質的な質問ではないかと私も思います。

なぜならば、融資という形で非常に強い絆がある場合には、銀行が企業に対し多額の融資をしながら一方でその企業の株を持っているということは明らかにエージェンシー問題がります。株主の立場からは、非常に高いリスクを取って、うんとプロフィットを上げろという要請をするのことになりますが、融資をしている立場からは融資のバックは預金ですから、安定的にビジネスをしてくれという要請になる訳で、この間相互に矛盾があり、結局、銀行としては太いパイプでお金を貸している以上、株主利益の追求はむしろ抑えるということになります。企業の方も融資を太いルートで受けていると、余り過度のリスクをとると倒産リスクにさらされるわけですから、そういう意味では、株主の立場から強い要請を受けるという度合いが少ない方がいいので、したがって、銀行が株を持ってくれている方がメリットがあるということになります。そういうエージェンシー問題との関係ではそれなりの理屈があっただろうと思いますけれども、それがなくなってしまったら、一般的なフィナンシャルサービスについて安定的な関係を作りたいというときに、必ずしも株の持合い的な関係でなくても、様々な形でのきずなが築けるんではないかと、そういう問題ではないかというふうに思います。

○ 福間委員

さきほど、イナーシャというあいまいな言葉を申し上げましたけれども、純粋にアームスレングスで、オープンビットで一件一件取引をやれば、それが一番いいのかもしれませんが、取引コストがあまりにも高すぎる。上は上同士、下は下同士、組織の各階層で情報を共有して、会社のファイナンシャルポジション、新たなプロジェクト、あるいは会社の経営戦略を理解してくれている先に依頼する方が、トータルコストが、手間の問題も含めて安くなるという現実があります。

それでは、どうして株式を持つんだということなんですが、銀行の場合は株式保有制限がありますから、一行当たりは5%未満です。これが5行程度集まってもさきほど申し上げたような数字ですから、株主としてどうこうというよりも、一緒に戦略的なプロジェクトのリスクテーキングをやるリスクシェアリングパートナーとしてのシンボリックな意味あいがあります。特にそれが新しい産業の場合、全く関係のない銀行に丁寧に一から説明して参加していただくよりは、経営戦略、事業戦略をより理解していただいている先の方がスムーズに行くと。けれども、先ほど申し上げたように、リスク分散のためにシンジケーションをおやりになるということもあります。

もう一つ、先ほどから申し上げている通り、安定的な株主比率が少なくなっており、株主総会の定足数の確保という実務的な問題があります。こちらは商法の改正の問題で、岩原先生にお願いしなければならない。銀行の持ち株が多いという中には、私はこれはよく分かりませんけれども、恐らく信託勘定、つまり機関投資家としての比率が入っているのではないか。これを入れますと高いのは当たり前で、実際には解け合いが進んでいて、そんなに高いとは思えない。

○ 福井部会長

ありがとうございました。

自分で質問しながら大変申しわけなかったんですけれども、時間を大分使用いたしました。もしご質問が残っておれば、また後でお願いすることにいたしまして、次に移らせていただきたいというふうに思います。

本日のゲストスピーカーであられます大阪大学経済学部教授の本間正明様にご出席いただいておりますので、ご意見を賜りたいというふうに思います。よろしくお願い申し上げます。

○ 本間教授

きょうはお邪魔いたしまして、株式市場、とりわけ持合いに関しまして意見を述べさせていただく機会を得ましたことをありがたく思っております。

私は実はどちらかといいますと財政税制を専門にいたしておりまして、なぜこの金融の問題に私が話しをするかという経緯からお話しをさせていただきたいと思っております。

ご承知のとおり、経済財政諮問会議が1月6日から発足をいたしまして、その後のこの動きの中で一番大きな問題が株式市場の不安定化と株価低迷という問題でございました。これが景気の立ち直り等に対しても非常に影響が強いというようなこともございまして、我々は「これは何がしかの意見をまとめなければならないな」と思っていた矢先に、与党3党の側から非常に大胆な、ご意見が出てまいりました。そして、どのように我々が経済財政諮問会議としての知性を発揮し得るかどうかということが宿題となりました。4議員の中で最もこの分野に、大体財政と金融というのはペアリングされておりまして、私が一番近いんだろうということで私にやれと、こういうようなご下命がございまして、この経済財政諮問会議に、この問題に対する報告書をまとめたのが、お手元にお示ししております経済財政諮問会議提出資料、私の名前で出た文書でございます。

私どもはその当時非常にPKO的な形でこの問題が出てきたということに対して極めて危惧を持っていたということでございます。41年の山一証券の際につくられました保有機構の二の舞をしてはいけないという認識が強く作用したわけでありますが、さりとて、与党がより積極的なご議論をなさっているときに、水をかけるだけではどうかということもございまして、その点でどのような理屈づけをしたら良いのかというナローパスをいわば追求したのがこのペーパーであるという具合にご理解をいただきたいと思います。

その意味で、我々はもともとPKO的な問題に対して、あるいは株式持合いに対しての積極的な施策的な関与というものを妥当だとしてまとめていない。したがって、やる必要がなければやらないでいいという具合に私は個人的には思っている部分もございます。しかし、考えてみますと、金融株式市場に対して、世の中から極めてうさんくさいという、そういう風評があるということも事実であります。そのことの意味は、我々非常に反省をすべき点があるのだろうと、これは金融機関、証券会社等々との中核的な部分のところ、あるいは投資家的な部分のところ、あるいは起業家としての行動、こういうようなものが全く無反省にこのまま推移したときに、21世紀型の資金の供給システムとしていいかどうかという問題はまた別個な問題であろうというふうに私は判断をし、そのような観点からまとめております。

実は、金融審議会の貝塚会長、蝋山分科会長は、私に金融の学問的な指導をいただいた方でございまして、私がこういうプレゼンテーションをするということに恐らく心配しながら見守っているのではないかという感想を持ちますし、合格点がつけられるかどうか、恐らくクールな目で見ていらっしゃるんではないかと思いますが、そういうことを前振りにいたしまして、少し理屈の方からこの問題に入り、具体的な問題に言及するというような形でお話をさせていただきたいと思います。

株式市場というものが、私は、機能として3つ持っていなければならないのだろうと思っておりまして、一つは十分性の問題であります。

この十分性というのはリスクマネー、これが実物経済に対して設備投資という形で十分に担保できているかと、こういう問題であります。これは金融市場の普遍性という問題、将来市場、あるいはリスクマーケットというものが完備していない状況の中では、この株式市場というものがそれをどのように補正をしながらリスクマネーというものを十分担保するかと、こういう問題は実は市場の失敗というと長く言われてきた問題でございまして、ユニバーサリティーオブザマーケットと、市場の普遍性という観点からこの市場機構の限界というものを十分認識し、かつ政策の中で、この十分性というものをどのように担保していくかということを我々は議論しなければならない。この点で言いますと、我が国におきましては、金融全体におきます3つの特徴がこの十分性を担保していない可能性がある。

1つは、これは公と民との資金のバランスの問題でありまして、非常に公共的な資金需要が大きいと。民間の部門に対して、国債、町債、あるいは生保、社債合わせますと666兆円というような巨額な部分のところがございまして、公と民の問題、もう一つは公的金融と民間金融の問題は、この中にオーバーラップしながらもう少し広い範囲の中で、公的な需要というものが非常に強いと、こういう特徴がございます。

それから、3番目には、その総体的に小さな民間金融のウエイトというものが間接金融と直接金融という観点でいえば間接金融のウエイトが非常に高い。したがって、資金市場に流れる直接金融的なる部分のところは、これは十分性を担保できるかどうかということになりますと、構造的にはなかなかこれが担保できない、これをどういう形で十分性を発揮させていくかということが非常に大きなテーマになるということであります。

この十分性を担保するために、日本的な仕組みとして出てきたのが、いわゆる持合いであると。直接的に家計部門が資本市場に対して登場できない要因というものがあるときに、これを受け皿として金融機関というものが一方では間接金融の資金供給の主体であると同時に、プリンシプルエージェント関係の中で、エージェントとして間接的に株式保有をすると、こういう二重構造が日本の中で定着をし、そして、その持合いが、いわば間接金融における資金の担保として使われてきたという、そういう側面がございます。つまりガバナンスの問題であります。

直接的な金融を家計部門にかわってやるという、そういう直接的な金融の側面における金融の役割よりも、むしろ間接金融というものを作用させるために、相互信頼関係というものを構築しながら、そこで担保をするというような構図というものが非常に日本的な関係というものを複雑化をしてきたというのが現実だろうと思います。その上におきまして、この問題は持合い制度の問題と深くリンクする問題であるということであります。

そして、第2番目の問題、これは、効率性という言い方をする必要があるんだろうと思いますが、株式市場、資本市場というものが、実物経済の生産性を反映し、オーダリングをし、資金がモディフィシェントの部分のところにダイナミックな意味も含めて誘導できるかどうかという問題がこの資金市場の効率化のいわば要請であるわけであります。この資金市場の価格形成メカニズムによる効率化のメカニズムというものが日本的な特徴の中でどのように発揮されてきたかということが問題になるわけですが、この点から言っても、持合い制度というものは非常にこれに関係をしてきたというのが実態だろうと思います。戦後の高度成長期から一貫して資金需要が非常に強うございましたので、民間部門は担保を株式の持合いという形で働かせながら、メインバンク制度の中でカウベルヘクトを用いながら融資団を形成し、必ずしもマッチングの状況の中では、相対的な要素を残しながら、グループで資金供給をすると、こういうような構図がございました。

このような状況の中では、持合い制度というものが極めて株式市場の根雪として存在をすると。流動的な取り引きの部分のところが非常に少なく、根雪の部分のところが大きなウエイトを占めますので、価格形成というものが必ずしも効率的な資金配分という観点では機能をしてこなかったと、あるいはそれを当初から目的にしてこなかったというような部分がございまして、これが市場の希薄性というものを生み出した。プレーヤーが、一般の投資家が非常に少ないという問題と、銀行がエージェントとしたことによって、家計部門の多様なリスクアティチュードというものがこの持合い制度による金融機関の協調融資なる部分のところで、非常に同質的な金融に変換をされたと、こういう問題でございます。

この問題は実は株価形成にとりますとゆゆしき問題が出てくる可能性があります。つまり、かなりプレーヤーとしての金融機関が同士的であるということがボラティリゼーションを生み出している、変動性を生み出す。つまり、一方においては、バブルのときのようにみんなが貸し出せばみんなが貸すと、そして一方で今のような状況になりますと非常に収縮をさせると、こういうような状況がございまして、据え置きと要求を交錯するというような形におけるリスクヘッジ機能もまたそのような状況の中で弱くなっていくというのが、これが現実に起こっておるわけであります。したがって、このエフィシェントプライシングの問題からいっても、この問題について、我々は何がしかの検討というものが必要になってくるのではないかという具合に判断をいたしました。

それから、3番目の問題でございます。

3番目の問題は、十分性あるいは効率性の問題と非常に密接に関係をするわけでありますけれども、一口に言えば、安定性の問題であります。この安定性の問題は効率化のときにも少し言及をいたしましたけれども、先ほどの期待形成がどうしても株式の取得等に対して影響するような状況の中では、この株式取得における予想形成が悲観色一色になっていくケースと、それから非常に強気なケースと中間的なケースで、投資家がどのようなマーピックな予想形成も含めて起こるかによって、複数の市場均衡が出てくる可能性があると。市場が非常にハイヤーな均衡を到達する場合と劣位な銀行を到達するケースというものがこれが株式市場の状況によって起こり得る。それがまさに2月、3月における3月危機が起こるのではないかというシステミックリスクの問題に実は投影をしていく危険性があったということでございまして、こういうようなシステミックリスクが予測されるような状況のときに、初期値を変えることによって劣位な均衡に終息するパスを避けて、上位の均衡に向けての再構成をするという、そういう考え方というのは論理的にあり得るのではないかということでございます。その点で、持合い解消が市場のいわば株価の下落に拍車をかけるのではないかという、その当時の議論の中では、それが劣位な均衡に終息するであろうという予測のもとに公的な資金の投入も含めて極めて大胆な議論が出てきたというのは、そのような事情があったということでございます。

そういうような状況を克服していくために我々は公的な形で資金を投入し、持合いという若干筋の悪い機構の設立に対してこれを正当化できるということがあるとすれば、持合いが解消をしていく中間的な受け皿としてこういうようなものを設定し、それが一時的に起こってくるところの劣位な均衡への終息の危険性というものをそこで持たせることによって初期値の変換均衡としてこれを作用し、そしてなだらかな形で上位の均衡にこれを誘導することができないかという考え方がこのペーパーの背後にはあるわけでります。

その辺の部分のところから出発をいたしまして、我々は与党のご議論に対して、極めて限定的な形で議論を誘導したいという狙いがこのペーパーにはあったと。一般的に株式の保有機構というようなものが行われたり、あるいは金融機関以外のところまでそれが波及をするというようなことは決して望ましいことではないと。したがって、いわば非常に対象を持ち合い的なるところに限定をしましたのは、そのような実は我々の苦肉の策であったということをご理解をいただきたいというぐあいに考えております。

この問題、株価が少し戻しておりますし、実務上の問題というものは非常に難しい問題であるということも我々は認識をしております。しかし、緊急経済対策の中におきまして、この問題が取り上げられているという、そういう経緯もございますし、新政権の成立の状況の中でも、この問題に対して、あいまいではございましたけれども、少なくともこれを否定するというような方向はなかったわけでありまして、これは現実的には実現に向けての動きというものが今後も強まっていくのではないかというぐあいに予測をしておりますけれども、そういう流れの中で私はこの問題は背後にある資金の供給の主体の問題等も含めて複雑な問題があるということはありますけれども、できるだけ規模を大きくせずに、小規模で済ませていくのがいいのではないかという認識であります。

しかし、私は正直に申し上げまして、今のような後づけの理屈をつけたということでございまして、決して私自身がこの問題に積極的にこれを推進すべきだという意見ではないということを強調した上で、もともとプレーヤーとしての問題が株式市場の根底にあるのではないかという気がいたします。株式市場形成における最近の理論というのは、まさに企業価値の最大化でございまして、この企業価値の最大化が資本コストというものに結びつき、それがROE等の指標の中で株式の効率化機能というものを追求するということが、これが寛容なことでございますが、実物のメーカー等におきましても、この意識が果たしてどれだけ日本の中で定着をしているかどうかということは最も本質的な問題であろうと思いますし、それから中間的な金融機関におきましても、こういうような問題がどのように認識されているかどうか、これは先ほどのご議論の中では、最近はかなり変わってきつつあるということでございますけれども、それは先端的な業界、あるいはマーケットの先端に位置づけられる方々の部分のところでございまして、これからイグジットも含めて不良債権等の問題も解決しなければならないような状況の部分のところには依然として日本的な特徴というものが作用しているということも事実であります。

そういう点で、金融機関の持合い、最終的には今の中間的な性格におきます貸し渋り等の問題等も背後にあるわけでありまして、金融機関のいわば経営上の安定性、あるいはマネジメントの向上に対して、持合い制度というものをどのように理解をしておくかということは、もう一度原点に帰って考えなければならないと思いますし、そのプリンシプルであります預貯金のいわば主体であります家計部門の資金の安定性、これはペイオフというものが実現される状況になりつつありますけれども、この辺のところもプリシプルエージェント関係の中で、もう一度考えなければならないテーマになってくるのだろうと思います。

最初に私はどの程度の時間をいただけるか聞いておりませでしたが、もし続けろというのであれば続けますが、やめろというのであればやめますが、いかがでございましょうか。

○ 池尾委員

大体時間です。

○ 本間教授

そうですか。池尾委員に教えていただきましたので、私の話はこれぐらいにさせていただきます。

○ 福井部会長

ありがとうございきました。

それでは、池尾委員願いします。

○ 池尾委員

20分ほどというふうに私は伺っておりましたので、それでこれまで主として株式市場のあり方という観点から銀行の株式保有について議論がなされてきたと思いますが、それに対してまして、私は銀行経営の健全性維持という観点から銀行の株式保有の問題について若干の意見を述べさせていただきたいと思います。ただし私はお三方と異なりまして、先週の段階で急に意見報告をしろというふうに仰せつかりまして、十分な資料を準備する時間的余裕がなかったものですから、申しわけないんですが、大学の授業で使っております資料を2ページ以下はそのまま持ってきております。時間がなくなかったというのと、もう一つは前回ソニーの伊庭副会長が講義資料をつけておられましたから、ソニーの副会長がつけておられるんですから、私は一応大学の教師ですから、大学の教師が講義資料をつけてもおかしくないだろうと思いましてつけております。

2ページ、3ページが昨年の秋学期、実際には今年の1月ですが、金融論の講義で銀行の健全性と自己資本率規制に関して講義をしたときの資料であります。

4ページ目と5ページ目が先週の火曜日に日本経済論で株式の持合いについて講義をしたときの資料をつけております。

それで、ちょっとそれらも参照していただくことになるかと思いますが、1ページ目のレジュメに戻っていただきまして、出発点として株式というものに関して、株式に限定はされないわけですけれども、企業証券には2つの側面があるということを改めて確認しておく必要があるかと思います。

一つは株式の場合ですと、企業所得の受け取りに関する特定の権利を与えるという、キャッシュフローにかかわる側面があるということであります。この側面から株式をとらえますと、利潤証券というふうな呼び方がされたりいたします。やや昔風の表現ですが、そういう言い方がされたりいたします。

それと、もう一つ大きな側面として、発行企業の経営に対する参加の権利を与えて、具体的には株主総会での投票権が付与されるという、コントロールにかかわる側面というのがあるわけであります。そうした側面に着目して株式をとらえるならば、支配証券というふうな言い方がされたりいたします。利潤証券としての株式を考えているのか、支配証券としての株式を考えているのかということを、議論の際にある程度明示的に意識しておく必要があるかと思います。

それで、とりあえず後者の方の企業コントロールにかかわる側面というのを少しわきに置きまして、もっぱら企業所得の受け取りに関するキャッシュフローにかかわる側面を中心に株式というのを考えますと、株式は利潤に対する請求権ですから、企業の利潤は変動する。したがって、請求権の株式の価格もそれに応じて変動すると、そういう形で株式の保有者、株主は企業のビジネスリスクを負担するということになるわけであります。したがって、当然株式はリスキーな金融商品だということになるわけですけれども、リスキーな金融商品は株式だけではないわけでありまして、株式は確かにリスキーな商品ではありますが、ほかにもたくさんのリスキーな商品はあると。そういう意味では、リスキーな商品のワン・オブ・ゼムに過ぎないということになります。

したがって、銀行の健全性維持という観点から考えますと、当然に株式だけを単体で取り出して云々するということは論理的にかなり無理があるという話になりまして、当然に国際的な規制の見直しの潮流から考えましても、ポートフォリオアプローチに基づくリスク量の測定という、そういうふうな方向で問題を考えていくのが順当ではないかというふうに思っております。

お手数ですが、2ページのところちょっと見ていただきますと、金融機関の健全性というのをどのように理解できるかということですが、一つのとらえ方としては1年後なり、特定の期間が経った後を考えたときに、当該の金融機関が債務超過に陥らないで支払い能力を維持できている確率というもので健全性というのを考えることができるかと思います。そうした確率をSというふうに書かせていただくとすると、それが99%とか、99%では小さ過ぎるという議論も当然あるわけでありまして、1年後、債務超過に陥らない確率,支払い能力を維持している確率は99.5%ぐらいないといけないのではないかというふうなことになるわけですが、その確率を規定する要因はざっくりと申し上げますと3つのファクター、3つのパラメータになります。

一つは当該の金融機関の資産ポートフォリオ、全体の収益率の期待値、リターンであります。そこにμというふうに書いておりますが。それと当該の収益率の標準偏差のリスクです。当然のことですが、銀行のポートフォリオ全体のリターンとリスクの相対的な比率のようなものが一つきいております。

それからもう一つが自己資本比率ということでありまして、ここで申し上げております自己資本比率はリスクアセットレシオのような話ではなくて、純粋な単なるギアリングレシオの意味での自己資本比率です。もちろん厳密に言いますと負債の約定金利の水準とか、そういうファクターもありますが、大きくはポートフォリオのリスクとリターンの相対的な比率と自己資本比率ということになります。

従来は、規制当局が金融機関のアセットアロケーションそのものにかなりかかわった形で規制を行っており、その結果、銀行の資産のリスクとリターンの組み合わせをコントロールする形で健全性を維持するというふうなやり方がとられていたために、自己資本比率に関しては、余り着目されてこなかったという歴史があるかと思います。

しかしながら、1980年代以降、銀行業の変容と申しますか、銀行活動の高度化、複雑化が一挙的に進行する中で、規制当局が銀行の資産選択をコントロールしようとするような形の介入を行うと、かえって非常に非効率性を招きかねないということで、考え方の転換という話がありましたが、そういう規制に関するフィロソフィーの転換のようなものが起こったと思います。

資産選択そのものに関しては金融機関の経営判断に委ねるかわりにリスクに見合った自己資本の保有を求めるんだと、逆に言うと自己資本さえきっちり持っていれば、自己責任で資産選択をしてもよいという考え方に移ってきたのではないかというふうに思います。

ただ、この段階、最初こういう規制に移ったのが88年のBIS規制の導入ですが、その時点でのリスクの評価は個々の資産項目ごとにリスクウエイトを掛けて合計するというやり方です。アセット・スペシフィック・アプローチというふうな呼び方をしたりしておりますが、そういう形でやってきたわけですが、それが一番冒頭に申し上げました健全性の考え方からすれば、決して十分な評価の仕方ではないということは意識されているわけでありまして、それで、今後実施は2004年というふうなことが見込まれているようですが、現在見直し作業が進んでいて、その中でリスク量の測定に関しても、アセット・スペシフィック・アプローチからポートフォリオ・アプローチへ移行する形になってきているんではないか。そういう規制の大きな流れがあるということを踏まえて銀行の株式保有、あるいは株式保有制限ということについても考えていく必要があると思います。

こういう大きな国際的な規制の流れとかなり違う方向で突出した規制を導入するというのはいかにもまずいと、2004年にもう一度BIS規制を見直して、それを国内的にも実施するというときに、何か二、三年で規制を大きくフィロソフィー的にも変えるというふうなことになりかねないということで、その点を考える必要があると思います。

それで、1ページ目にお手数ですが戻っていただきまして、今申し上げた意味で金融機関関係者の方々が貸し出しとか、債券の部分も含めて、全体としてのリスクを考えるべきだというふうに主張されるのはもっともなわけですが、ただそれは非常にもっともなんですが、それを裏づけるだけの統合的リスク管理体制が十全にあるのかという問題がもう一つあるわけでありまして、これはおまえの認識不足であって、もう既に統合的リスク管理体制は構築されており、経営のレベルでもそれは十分にインプリメントされているんだということであれば、文字どおり貸出債権、株式、全部合わせたポートフォリオでリスクを考えてくださいという主張でいいと思うんですが、現状ではそれはもっともな主張なんですけれども、それを裏づけるだけの統合リスク管理体制は十全に確立していなんではないかというふうな判断を私はしております。そうだとすると、現状ではある程度資産カテゴリーごとにリスク量を計算して、その後、ポートフォリオの分散の程度等を勘案して、若干の調整を加えるというふうな2段階のアプローチをとらざるを得ないんではないかと。

そして、そのアプローチのステップとして、株式保有のリスク量を先ほど川北委員がご報告されたようなバリュー・アット・リスク的な手法で測定をして評価していくということが必要になるんではないか。そうすると、先ほどの試算の数字からも見ても、現行のような水準の自己資本の割り当てでは決して十分ではないという、そういう話になって、結果的に株式保有に対してはかなりのブレーキがかかるような話になっていくんではないか。銀行による株式保有については、それが難しいという状況が想定されることになるのではないかというふうに考えております。

以上が冒頭に申し上げました2つの側面のうち、コントロールにかかわる側面をちょっと棚上げにした上で考えた話であります。だから、コントロールにかかわる側面を棚上げにして考える限りは、株式は繰り返しになりますが、リスキーな資産、ワン・オブ・ゼムに過ぎないわけですから、株式だけを取り出すということに積極的ないい意味はないという話になります。逆に言いますと、株式だけを特別に取り上げて論じる必要があるということになりますと、それは2番目の企業コントロールにかかわる側面があるからこそであるという話になります。

それで、ここの第二部会でも先週の分も含めまして、株式の相互持合いというような話が取り上げられてきているということになるわけです。私も確かに日本の企業統治といいますか、日本のコーポレートガバナンスに関して、現在、再構築が必要であるというふうな認識は持っております。しかしながら、問題はそれほど簡単ではなくて、株式の持合いを制限すれば、それで片がつくほど日本のコーポレートガバナンスにかかわる問題は、やわではないというふうに思っております。その点に関しましては、時間も限られておりますし、持合いについてはいろいろと既に議論が出ておりますので、コーポレートガバナンスの観点から、持合いは確かにメリット、デメリットを含めて再検討されるべきであるが、持合いをなくせばそれで健全なコーポレートガバナンスが確立されるという単純な話ではないということだけを申し上げて、そこはそれだけにさせていただきたいと思います。

ただ、こうしたコントロール権にかかわる側面があることから銀行の株式保有制限を考えるとすれば、それはインベストメント目的の株式保有についての規制ではなくて、コントロール目的の株式保有についての規制ということにならざるを得ないはずだと思います。我が国では、政策投資、純投資というふうな区分が一般的でありますが、国際的には株式保有については、投資目的なのか、コントロール目的なのかという区分が通常であるというふうに考えております。

ただ、目的とか、意図というのは心の中にあるものですから、それは投資目的で保有しているのか、コントロール目的で保有しているのかという意図を外側から見抜くというのはなかなか難しいですから、通常は外形基準でそれを判断していると、例えば、10%を超えて保有している場合はコントロール目的であるとか、10%未満であればそれは投資目的だという、ある程度外形基準で区別せざるを得ないわけです。

したがって、この部会でもご紹介ありましたが、EUにおける銀行株式保有制限については10%以上持っている部分について、自己資本の6割ということをやっているわけで、10%以上持っているということは、ここで言うコントロール目的での保有分に関しては、ある程度制限を受けるということで、逆に申し上げますと、10%を下回る単なるインベスメント目的での保有については前者の話になるわけで、私が申し上げた1の側面だけから考える話になるわけで、それはトータルの自己資本比率規制の中で処理されるべき問題だという話になるかと思います。

この点で申し上げますと、我が国では5%ルールが存在すると、外形基準で5%ということで、それ以下に抑えているということになりますと、通常の米国とか、ヨーロッパで採用されている外形基準の数字から言うと5%はかなり低い数字ということになりますので、これは全部インベストメント目的だという話になりかねないわけです。ただ実態をもうちょっと見たときに、本当に投資目的なのか、コントロール目的の要素がかなり入っているんではないかという、そういう議論は十分あり得るかなというふうに思っております。

最後に、まだ5分残っておりますので、付録的なことで申し上げますが、こういう議論が出てきた銀行の株式保有ということに焦点が当たってきた経緯は先ほど本間先生からもご紹介のあったようなことがあるわけですが、それで要するに銀行が株式を保有していることがプロシクといいますか、むしろ景気変動を増幅するような効果を持っていると。だから、銀行に株を持たせるべきではないんだ。景気安定化という観点からもそうなんだという議論が一般によくあるわけであります。

ただ、私はそういう議論はかなり表面的といいますか、やや問題を皮相的にしかとらえていないというふうに思っておりまして、ざっくりと言わせていただきますと、問題の本質は日本の銀行部門の自己資本ベースが脆弱だということに尽きるわけでありまして、別に株を持っているからどうではなくて、要するにこういう問題が表面化するようになったのも、銀行保有株の簿価が切り上がって、簿価と時価の差がほとんどなくなったと、時価に比べて簿価が低くて、含みの部分が十分あって、99%の確率で残り1%の確率で予想されるような株価の下落があっても、その低い簿価まで時価が達しない。ということであれば、株を持っていても何の問題もないわけですね。

ところが、今は要するに時価に近いところまで簿価が切り上がってきているために、1%どころではなくて、もっと高い確率で起こり得る株価下落も吸収できないということで、それでほかのところにしわ寄せが来るということでありまして、結局自己資本のベースが非常に脆弱だということが問題なのでありまして、だからそれを株式保有制限というふうに問題を立てるのは、本質からちょっとずれた問題の立て方になっているような気がいたしまして、正面から問題を考えるとすれば、日本の銀行部門の自己資本ベースをいかにして拡充するかという、そういう問題として考えられなければいけないわけだと思います。

あるいは日本の銀行部門の自己資本ベース自体が現状のものか、むしろ自己資本ベースの大きさが前提になるとすれば、資産全般の圧縮ということが考えられなければいけないわけでありまして、なぜ株式だけの保有を削減すべきなのか、貸し出し残高自体非常に大きくなっているのではないかと。先ほど持合いの株式は根雪となって残っているという話がありましたが、バブルのときに、拡大した信用膨張のかなりの部分が根雪となってまだ残っているんではないかという問題があるわけであって、自己資本ベースが所与とすると、貸し出し残高を含めて、むしろ大きいのは貸し出しなわけですから、それを含めて銀行のアセットをいかに圧縮するかということを議論すべきではないかと。あるいは、現状のアセットのレベルを所与とするならば、銀行の自己資本をいかに拡充できるかということを議論すべきで、今銀行の自己資本ベースの拡充が容易でない。つまり増資ができないというのは、要するに銀行の収益性が低いということに尽きるわけでありまして、したがって銀行の収益性をいかに改善するかというようなことがむしろ本質的な問題であって、幾ら頑張ってもこれ以上収益性が改善できないという状況にもし日本の銀行部門があるとすれば、そうするとやはりアセットが大き過ぎるんだという話であって、銀行部門のかかえるアセット、株式だけではなくて全体としてのアセットをいかにして適正なレベルまで押し込んで行くかという、そういう問題を検討することが本質的であって、かなり本質的な部分の一部を構成する問題ではありますけれども、株式保有の問題だけを一部をもって全体の議論にかえるということは無理があるんではないかというふうに考えております。

一応以上です。

○ 福井部会長

ありがとうございました。

それでは、本間教授、池尾委員のご意見に対してご発言を皆様方からいただきたいと思います。

どなたからでもどうぞ発言ください。

○ 若林委員

本間先生に少しお伺いさせていただきたいんでございますが、先ほどおっしゃいましたように、日本の株式市場は持合いという形でそれが根雪になっているというご指摘がございましたが、そのことによって市場が不安定性も増しているだということでございまして、まさに私もそのように思うわけでございます。

そこで、今議論をされておりますのは金融機関との持合いを解消、ないしは一般的に企業が持ち合いを解消ということで、市場から退出していく議論がもっぱらなされておるわけでございます。片や市場の不安定ということがもう一つ議論されて、そこで新しい参加者をどう求めていくのかという議論について、今持合いとか、そういうものの解消のスピードと見合ったものとして、もしそれがなされない場合には、市場が大きなバランスを欠くのではないかと心配するわけでございます。

そういう意味におきまして、市場を活性化といいますか、参加を求めるという意味では、投資家の信頼性を増すというのは基本であることは当然なわけでございますけれども、こういったものについてはある意味では言うはやすく時間が多分かかるんではないかと思うわけでございます。片や持合いの解消といったのはかなりのスピードで進んでいくと、さらにそれを法律的にも規制してはどうかという議論もなされているわけでありますが、そんな中でこれからどうしていけばいいか、確かに保有機構というようなものも先ほどおっしゃったようにある意味ではやむを得ない措置としてあり得るというご指摘ございましたけれども、それも一つであったと思うわけであります。

そんな中で、国の施策として何か市場への参加を導入するという施策を具体的にとっていく必要が今あるんではないかと思うわけでございます。そういう中で、税制については、実はこれは少し言い方はきついかもしれませんが、これまでもっぱら源泉分離制度を廃止するという一つのある意味ではマイナスメッセージとして市場に伝えられたままになっておりまして、国が施策として何か参加を促していくという方向について、具体的なものは何ら示されないままに今まで来ているんではないかと思うわけでございます。そんな中で、この税制も含めまして、長い目というよりも今とれるような、とらないといけない施策というのは一体どういうものがあるか、またそれが必要ではないかと思うわけでございますが、その点についてお伺いいたします。

○ 福井部会長

お願いできますか。

○ 本間教授

非常に重要なポイントだろうと思います。持合い機構を仮に作ったといたしましても、それを究極的に最終的な株主保有者にどのように割り当てていくか、あるいは持っていただくかということ、これはその後すぐ出てくる問題でございます。その点で究極的には家計部門の資産のポートフォリオ等に対してどのように我々が政策的な関与があり得るのかという問題と、それからもう一つは貯蓄と投資に対してのフローの意味における政策的な関与というものがどのようにあり得るかと、こういう問題が2つあるだろうと思います。

ご承知のとおり、間接金融が主体でございました日本の歴史的な経緯の中で、預貯金に対して極めて優遇措置がとられてきたと、貯蓄優遇税制が行われてきたということが一つの大きな特徴でございまして、これが現在の貯蓄過剰的な状況の中で果たして正当化できるかどうかという問題、ここの部分が制度改正、あるいは税制改正の一つのポイントになるわけですが、現在のところご承知のとおり、株式の譲渡益の一定限度まで非課税にすると、こういうような議論で推移しておるわけでありますけれども、私はより本質的な貯蓄投資税制全般の見直しというものが必要になってくると。いわば証券業界にフェーバーを与えるという矮小化された問題ではなく、日本の時代状況の変化の中で抜本的にこの部分のところについて見直していくということが恐らく求められていくのだろうと思います。これは税制調査会等におきましてもご議論があろうかと思いますし、それから経済財政諮問会議でもこのようなところについて問題意識を持っておりますので、いろいろなところでご議論をいただいて、金融審議会におかれましても、こういうような問題について、積極的にご議論をいただいて、どのように究極の受け皿をつくっていくかということをぜひご議論をいただきたいというふうに思っております。

○ 福井部会長

はい。

○ 前田委員

富士銀行の前田でございます。

今の池尾先生のお話を伺いまして、一つだけまずお答えしなければいけないのは、池尾先生には私どもの銀行のアドバイザーをやっていただいておりました。その中で総合リスク管理は確立しているのかというご質問がありましたが、実はここに総合リスク管理をやっている状況のペーパーを持ってきているんですけれども、これは企業秘密そのものでございまして、先生にも開示したことがございません。大変恐縮ですが、完全に確立したもので時系列で信用リスクと株式の投資リスク、それから市場リスクと出資等、それから本体の親会社自身と連結子会社のリスク量等も月次で把握しております。ご安心いただきたいと思います。

さて、ちょっと銀行経営の観点から、前回と今回多くの先生方のご意見をいただきましたので、私どもの方から若干そのご意見に対しての意見を言わせていただきたいと思います。池尾先生が私の先生ですと、この答案ですと不可になるかもしれないんですけれども、お許しいただきたいと思います。

まず最初に、株式持合い構造の変化についていろいろ資料等のご説明がございましたが、持合いの発生のロジックと、それから持合いを継続するロジックという切り口で、前回伊藤先生のお話がありましたけれども、要するにまさに質的な変化があるということについて、私どもは全くそのとおりだと思います。全く異論はございません。ただ、だから持合いがなくなるということではないと思いますが、間違いなく大きな流れは、持合いは緩和というか、解消の方向に行っていると思います。これは、先ほどの資料にもありましたとおり、データ的にも裏づけられておりますし、私どもも、それは望ましいと考えております。

それから、2番目ですが、銀行のマネジメント、この問題をどう位置づけて、何をしてきたのかと、今までと、という点について申し上げますと、まず1つは、解け合いにつきまして、しっかりと経営のレベルで認識を持っております。もちろん必要以上に解け合うというのは意味がない話ですが、これは福間委員のおっしゃったとおりでして、私どもお客さまとの取り引きの関係がありますので、取り引きを切るというのは全く経済合理的ではございませんのでそういうことはやりませんが、私ども1998年から5年間かけまして、簿価の約3分の1に当たります1兆円の株式の売却を公表しておりまして、ちょうど終わった3月、この約3年間で既に7,300億円の売却を完了いたしております。前回、持合いの解消が進まないのではないかというご意見ございましたが、私は経営の意思として、この部分を決めれば進まないということはないと思います。私どもは、銀行経営の立場から言いますと、その抱えるリスク量、それから経済合理性の観点から、ある意味では自己責任におきまして、かつ市場への影響を十分配慮しながら円滑な解消を行ってきたということでございます。そういう意味で、あとこれからもやりますが、そんなにめちゃくちゃにやるということではございません。自分でマネージできるリスク量のところまでなだらかにやるということでございます。

それから、リスク管理の観点から申し上げますと、有価証券が株だけでなくて、さっき申し上げましたけれども、すべてのリスクアセットを対象にしてこれを当然自己資本との関係で日時、月次のレベルでマネージしておりますので、有価証券の中で、特に持合い株式だけを特別にリスクモニターをするということについては若干違和感がございまして、すべてのリスク資産をマネージするのが銀行の役割でございます。前々回だと思いますが、国債の抱える金利リスクについてどうかという、これも我々は金利リスクも大変大きいと考えておりまして、同じようにコントロールしているということでございます。

それから、持合い解消が株式市場に与えてきた影響につきましては、前回またきょうもお話ございましたが、少なくとも私どもはニュートラルというところまでは申し上げられませんけれども、持合いの解消売りが市場に格別に大きな影響を与えたということはなかったと思います。前回申し上げましたが、株価が下がるとアナリストはどうしても持合い解消売りだというコメントがすぐ出てくるんですが、これはちょっと勉強不足ではないかと思います。

それから、銀行に対する株式の保有制限につきましては、前回、神田先生からのご指摘がございました。神田先生のご指摘は株式保有の視点については、銀行の健全性の観点からというのと、それから銀行の収益性の向上という観点、それから株式市場のあり方、この3つの観点から、十分検討する必要があるというご意見だと思いますが、その中で私どもから申し上げさせていただきたいのは、銀行の収益性の向上の観点という、先ほども池尾先生が収益力が弱いと言われたんですが、収益性向上の観点から申し上げる必要がございます。

民間の金融機関の競争力についてでございます。私どもはみずほホールディングをつくりまして、みずほフィナンシャルグループとして、世界のビック5に入ろうというような大きな目標を掲げて経営統合をやってまいりましたが、今、率直に申し上げまして、一番痛切に感じますのは、国際競争力がないということではなくて、むしろ国内の競争力が弱いという、こちらの方が大変気になるところでございまして、国際競争力、海外でのいろいろな競争で、そんなに負けているという認識はございませんで、むしろ国内の競争力のなさの点が実は一番の心配の種でございます。これだけ大きな銀行統合をやりまして、極めて高い合理化効果等を上げた上で、このバンキング業務を行っておりまして、フランチャイズであります国内のコアの収益部門、寝かし金業務で極めて低い収益性しか出せないという、ここの部分につきましては、大きな原因の一つには、こういうところで申し上げるとなかなかややこしいんですが、先進諸国にはない巨大な公的金融機関の存在がございます。いろいろなシェアのとり方がございますが、貸し出しだけとってみましても2割を超える公的金融機関の貸し出しの存在がございまして、この部分につきましては、市場金利のメカニズムを含めて、かなり歪んでいるということは否定できません。競争原理が違うところで、これだけ大きなロットの金融機関があるわけでございますので、これが同じ市場で競争するというのは大変きついということが実感でございます。世界全体が規制緩和ということと、経済合理性の追求、市場原理の尊重という具合になっていっているわけでございますが、この日本の独特の構造問題をトータルで議論をぜひいただきたいと思っております。民間の金融機関の守衛力を弱くしております部分、これも持合い解消と並ぶ大きな1つの構造問題でございますので、この部分を抜きにしてなかなか議論ができないと考えております。

それから、もう1点は同じような議論でございますが、金融機関が何故、集客力が弱いのかということでございますが、ここは福間委員がおいででございますが、大変申しわけないんですが、私どもは貸し出しの金利格付けが大変高い上場企業のところと中小企業で非常に信用力が弱いところで、そんなに大きなスプレットの差がつけられない状態でございます。これは裏返しますと、私どもは7割以上を有しています中小企業に対してある意味で優遇金利を適用しているのと同じことでございまして、残念ながらここも競争力をやや弱くしているという裏返しでございます。ただ、私どもは中小企業に対する融資は一つの日本経済全体の活力のもとだと思っておりまして、そういう意味で、必ずしも理論的に、もちろんスプレットをたくさんいただきたいんですけれども、理論どおりにはいかないというのは私の最大の悩みであります。

以上でございます。

○ 福井部会長

ありがとうございました。

ここでちょっと議長の不手際をおわびしますけれども、残り時間が大変厳しくなってまいりました。いろいろご意見おありだと思いますけれども、第3の議題に移らせていただきたいと思います。

「銀行の株式保有の制限に関する主な検討事項にかかる意見等」というのをお手元にお配りしていると思いますが、これは今までこの部会並びにワーキング・グループにおきまして、皆様方から出されましたご意見を基本的に問題提起の論調でまとめたものでございます。すべてのご意見を網羅したものではございません。

今後、この審議会の討議を深めていきます場合の一つの踏み台となる資料だというふうに私は思っておりまして、事務局の方からポイントをご説明いただきたいと思います。恐らくこれにつきまして、十分討議していただく時間がもう残っておりませんので、これに関するご意見は大変恐縮でございますが、この後事務局の方にそれぞれにお届けいただければというふうに思います。それでは、メールベースでお願いできればというふうに思います。

では、事務局よろしくお願いいたします。

○ 樋口信用課長

それでは、皆様お手元に第二部会5-1という資料をお配りしてございます。こちらに今、部会長からご紹介いただきましたけれども、これまでこの部会、あるいはワーキング・グループで提出された主な意見をまだ羅列というのでしょうか、置いているということでございます。ですから、相反する方向の意見も入っておりますし、もちろん全体として必ずしも何か方向性が出ているわけではないということでございますが、一応こういうふうな意見が出ているよということを取りまとめてみたものでございます。

1ページの1に経緯と書いてございます。

これは政府の緊急経済対策を引っ張っておりまして、今回議論をお願いするに至った一つのポイントでございます。細かなところは省略しますけれども、この問題を考えていくときには、真ん中にありますように、銀行のリスク管理能力の観点からの検討ですとか、それから株式持合い、コーポレート・ガバナンスといった観点、それから株式市場の活性化といったようなもろもろの事柄が関連しているということでございます。

そこで、先に全体像をご紹介しますと、1ページ目に2に銀行の財務面の健全性の観点と、これがリスク管理でございます。

それから、3ページ目に金融市場への影響の観点(企業の資金調達、個人の資産運用の観点)、これがいわゆる証券金融市場の絡みでございます。

4ページ目が株式持合い、コーポレート・ガバナンスの観点、実は6ページ目以降が具体的な株式保有制限について考えられているいろいろな意見というような全体の構図になっております。そういったことでポイントのみご紹介します。

1ページに戻っていただきまして、銀行のリスク管理の観点、最初にございますが、我が国の金融機関が相当程度株式を持っていると、これと銀行に対する信任、金融システムの安定性との関係を言っていると。次の黒いポツは、銀行のリスク管理に価格辺変動リスクが十分に反映されていないのではないかというような考え方、問題提起、それから先ほど来もご意見ございましたけれども、銀行の株式保有制限については、一律に設けるということよりも、自主的な経営判断にゆだねてよいのではないか。また株式のみに着目した制限というのは不適当ではないかという意見です。

それから、2ページ目でございます。大変はしょって恐縮でございますけれども、一方で一番上にありますように、リスク管理の観点から株式を保有しすぎているというのは事実である。また、持合いというようなことから、一定のルールを設けるということが適当ではないかという意見ですとか、銀行は個人の預金を受け入れると、それからシステミックリスクという関係があるというような事柄もよく考えていく必要があるというようなこと、自己資本の一定範囲を超える株式保有を禁止するといった一律の規制は過渡的な規制としてはともかく基本的には適切ではないのではないかというご意見、あるいは次は、きょう若干池尾委員の方からご発言ございましたけれども、景気との関係ということで、プロシクリカリティということがあるというようなことに気をつけるべきではないかということとか、一番下にありますのは、バーゼルのBIS規制の動向にも留意する必要があるという意見であります。

それから、3ページ目、ここが金融市場の影響ということでございます。

きょうもご意見ございましたけれども、持合いという株式保有が行われていると、一番上の意見でありますけれども、これが必ずしも企業評価に基づいていないということで、株価形成をゆがめて株式市場の健全な発展を妨げてきたというようなことから、保有制限が適当ではないかという意見。

それから、次の意見というのは、直接金融を拡充するための施策を幅広く実施することが必要ではないかと、これについて直接金融のシフトという観点から議論をするという意見でございます。

次の意見、これは前回確かソニーの伊庭副会長などもおっしゃっておりましたが、創業期の企業やベンチャー企業というのは、直接金融を活用することが難しい。企業が成長するためには銀行の出資、融資は大きな役割を果たしているというような感じのご意見。

それから、次の意見、これもきょう出ておりますけれども、銀行の株式保有を制限するとした場合、一体だれが、究極的に株式を保有することになるのかということで、そこで個人投資家の市場参加の仕組みを整理するというようなことで、市場の信頼回復のための環境整備、あるいは直接金融ルートの整備を行うべきではないかという意見。

それから、次が投信など、あるいは機関投資家といったような役割に期待しているというような意見。

それから、余り簡単過ぎるとなかな皆さんよくお目通しいただけないかと思いますけれども、4ページにまいりますと、これもきょうもご意見出ておりましたけれども、銀行について、財務の健全性を維持して機能を果たしていくということから、どのようにして収益源を確保していくかと、このビジョンが必要ではないかという意見。

それから、次の意見、これは前回確か神田委員おっしゃっていましたが、あるいは川北委員の分析もございましたけれども、株式売却額と株価動向との間の相関関係は余り大きくないのではないか。ただしインパクトというようなことも考える必要はあると。株式保有の取得機構というのについては、インパクトも考慮してやむを得ない場合だけにとどめるべきではないか。この辺はきょう本間先生からもご指摘ございました。

それから、次のくくりが株式持合いコーポレート・ガバナンスの観点ということであります。

福間委員からも、これまでの経緯といったことについて、ご説明をちょうだいしておりますけれども、持合いが今日に至ったことということで資本自由化、あるいはエクイティ・ファイナンスなどがあるのではないかという意見ですとか、それから株式持合いというのはもろもろのメリットというようなことであったということで、議決権の行使を前提としてはいなかったんではないかと、これがコーポレート・ガバナンスに影響をして産業の構造改革かおくれている原因ではないかというご意見、あるいは、キャッシュフローとの関係のご意見ということでございます。

それから、5ページ目に行きますと、このあたりは一橋の伊藤先生からの分析などもございましたけれども、株式持合い解消傾向にあるけれども、これからは持合い解消の売却が進まない場合もあるのではないかというようなご意見ですとか、それからむしろ現状を既に国際化の流れ、外国人持合い比率の上昇などというのが起きていて、企業はもろもろの努力をしているということからすると、さらに持合い解消が進んだとしても、そのこと事態に問題があるとは考えていないのではないか。

全般的なご意見をざっとご紹介すると以上のとおりかなと思っております。

それから、6ページ以下は株式保有制限の考え方について少し細かな論点を盛り込んでございます。

まず、6ページの上あたりにございますのは、株式の価格変動リスクというようなことに着目していくと、リスクに応じた自己資本を割り当てることができる銀行はその範囲で株式を持てる制度がいいんではないかと、あるいは、ベンチャー企業との関係と、これはさっきも出てまいりましたが、これについても指摘があると。それから、銀行の自己管理を重視すべきというようなご意見もございました。

それで、7ページは6ページとダブっておりますけれども、まず一番上にありますのは、現行の株式リスク評価というのが100%でリスクアセットに参入ということでございますが、これはリスクに応じた健全性育成とはなっていないのではないかというご意見、バリュー・アット・リスクを考慮していくことは適切ではないかということが適切ではないかというような意見、それから4番目のポツでまいりますと、実際の価格リスクというのは、各銀行のポートフォリオに応じて異なるということから標準的なリスクウエートを設定するとともに、自己モデルには査定方法を認めることも考えられるのではないですかというような意見ですとか、あるいはそこの一番下でもありますと、当面例えば自己資本額の一定範囲内に制限するといった方法をとることも考えられるかと、こんなような意見が出ているということでございます。

それから、一番下にまいりますと、いわゆる5%ルール、きょうも池尾委員ご指摘ございましたように、8ページの方から見ていただきますと、株式の二面性というのでしょうか、そういったような事柄に着目して考える必要があるのではないかというような意見が出ております。

それから、8ページの2番目の●というのは、特定の会社の株式を大量の保有しているこのリスクどう考えたらいいのかというようなこと。それから、その流れでございますけれども、現在大口信用供与等規制があって、同一企業に対する使用供与、これは融資及び株式保有その他もろもろ入ってございますけれども、この額というのが自己資本の一定比率になっている。この辺についてどのように考えたらいいかというような意見などが出ているわけであります。

それから、9ページ、このルールを設定するという場合のまず対象の金融機関はどう考えていったらいいかということで、上にございますのは預金等取扱金融機関については原則として対象とすべきではないかとか、そのほかそこにあるような意見が出ていると。

(2)の株式の範囲ということにつきましても、基本的には広く考えることが適当ではないかという意見、そうした中で価格変動リスクのある、むしろそこにより着目するということだと上場・店頭登録の株式が適当ではないかと、一方でベンチャー、あるいは地場というのはどちらかといえば信用リスクというようなことではないかというような整理、あるいは最後にありますが、デット・エクィティ・スワップによって取得した株式等については、その取り扱いを、また政策目的も考慮して考えるという意見。

それから、一番最後のページになりますが、移行期間ということを考えると、必要があるということで、株売却の市場インパクト、あるいは、事業会社との関係ということからしますと、ある程度の経過期間が必要ではないかと。一方で構造改革的な視点を考えると経過期間が余り長くなるというのも適切ではないかというような意見ですとか、さらには新BIS規制、これは2004年から適用予定ということで、そのタイミングをあわせ考えていくことが適当ではないかというような意見が出ているということで、まだ今ざっとご紹介しましたように、いろいろな意見が出ておりまして、やや向いている方向性というか、ベクトルが違う意見もございますけれども、一応今の時点でこれまでのご意見などをテーマごとに即してみると以上ご紹介したとおりだということでございます。

以上でございます。

○ 福井部会長

ありがとうございました。

駆け足でございましたけれども、ポイントは一応ご理解いただけたのかなというふうに思います。

時間の関係で審議を尽くせませんでしたが、このペーパーはやはり重要でございますので、恐縮でございますが、ぜひ目を通していただいて、ご意見を改めてお寄せいただきたい。その点をお願いいたしまして、本日の審議は一応終了させていただきたいと思います。

本間教授には、ご多忙の中、最後までおつき合いいただきまして、また貴重なご意見を賜りまして、本当にありがとうございました。

今後はワーキング・グループにおきまして、さらに実務的、専門的な観点から、掘り下げた検討をお願いしたいと思っております。したがいまして、この部会といたしましては、次はワーキング・グループでのさらなる検討を踏まえた上で、皆様方にご議論、ご検討をお願いしたいと考えております。

きょうはヒアリング中心でございましたけれども、若干の議論もございましたので、記者会見を行いまして、会議の模様についてブリーフィングをさせていただきたいと思っております。

最後になりましたけれども、事務局の方から、次の日程等につきましてご連絡があろうかと思います。よろしくお願いいたします。

○ 樋口信用課長

次回の部会につきましては、今お話のありましたように、ワーキング・グループの検討の時間をちょうだいしたいということで、その検討状況を踏まえながら、部会長ともご相談しまして、また皆様の日程も確認の上、具体的な日取りを置いていきたいというふうに思っておりますので、よろしくお願いをいたします。

以上でございます。

○ 福井部会長

それでは、これをもちまして本日は散会いたします。まことにありがとうございました。

(以上)

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