金融審議会金融分科会第二部会会合(第8回)議事録

平成13年9月21日
金融庁 総務企画局

○ 福井部会長

それでは、大変お待たせをいたしました。

今回は少しショートノーティスだったかもしれませんけれども、皆様方には大変お忙しい中お集まりいただきまして、本当にありがとうございます。

議事に入ります前に、一部専門委員の交代がございましたので、ご紹介を申し上げます。今までの専門委員の石橋委員、水谷委員にかわりまして、専門委員をお引き受けいただくことになりましたのは、まず皆様方の座席からごらんになって一番右端にいらっしゃいます上野委員でございます。

○ 上野委員

上野でございます。よろしくお願いいたします。

○ 福井部会長

それから、今度は左の方ですけれども、2番目にいらっしゃいます松浦委員でございます。

○ 松浦委員

松浦でございます。よろしくお願いいたします。

○ 福井部会長

それから、審議会の総会及び分科会の委員の方々にはこの部会にも自由にご参加いただけることになっております。きょうは倉澤委員にご出席を賜っております。ありがとうございます。

なお、関係機関として、日本銀行より和田企画室参事役にご参加いただいております。

次に、異動のありました事務局の方々を当局からご紹介していただきたいと思います。

○ 仲保険企画室長

それでは、7月の異動によりまして本日より新たに出席している事務局側の者を紹介いたします。

委員の皆様から向かいまして、福井部会長より右側からご紹介申し上げます。

まず最初は総務企画局長の原口でございますが、ちょっと所用があって遅れております。

佐藤審議官でございます。

三國谷監理官でございます。

大久保参事官でございます。

塚越国際課長でございます。

小手川財務省参事官でございます。

中江財務省機構業務室長でございます。

続きまして、皆様の方からごらんになりまして左側に移りたいと思います。

迫田信用機構室長でございます。

一人置きまして、吉村保険課長でございます。

大森調査室長でございます。

氷見野企画官でございます。

私、申し遅れましたが、保険企画室長の仲でございます。よろしくお願いします。

○ 福井部会長

どうもありがとうございました。

それでは、早速、本日の議事に移らせていただきたいと思います。

本日は、まず、前回6月26日の部会でとりまとめを行いました「銀行の株式保有に関する報告」を踏まえまして、金融庁が次期臨時国会に「銀行等の株式等の保有の制限等に関する法律案」の提出を予定されておりますので、その概要の説明を事務局よりお願いしたいと思います。その後で、同じく前回のこの第二部会でとりまとめを行いました「生命保険をめぐる総合的な検討に関する中間報告」について、パブリック・コメントのような形で広く一般から意見を求めてまいりましたけれども、その結果等を事務局よりご説明いただきたいと思います。その後で皆様にご議論をちょうだいしたいと思っております。

なお、本日のこの部会は非公開とさせていただいております。

それでは、最初に、「銀行等の株式等の保有の制限等に関する法律案」につきまして、ご説明をお願いいたします。

○ 迫田信用機構室長

それではまず最初の議題でございますけれども、皆様のお手元の資料の中で、右肩に「第二部会8-1」という5枚ほどの資料、その後に1枚紙のポンチ絵の資料、その後に「会議終了後返却」というスタンプが押してある2種類の資料、このあたりが最初の議題についての資料でございます。「会議終了後返却」というスタンプが押してありますものはまさに法律案そのものでございまして、現在、与党内の手続きを進めておるところでございます。したがいまして、最終版ではありませんし、そういう意味で会議終了後返却という取扱いをさせていただこうと思っておりますけれども、こちらは法律そのものでございますので、法律事項しかいわば書いてございませんので、むしろ右肩に「第二部会8-1」というふうに付してあります縦長の5枚ほどの紙で全体像をご説明した方がよろしいかと思いますので、これに則しましてご説明をさせていただきます。

それでは、この資料でございますが、一番上に四、五行考え方が簡単に書いてございまして、金融システムの構造改革という観点から、銀行等が抱える株価変動リスクを限定するため、株式保有制限を課す。併せて、これに伴う銀行等の株式処分が円滑に進められるよう、市場売却を補完するセーフティネットとして銀行等保有株式取得機構(仮称)を設立するということでございまして、レギュレーションとそれのセーフティネットという形であわせて1セットというふうなことで考えているわけでございまして、したがいまして、法律も一本の法律の中でパート1とパート2があるという仕立てになっているわけでございます。

それで、まず最初の「銀行等の株式等の保有制限」でございますけれども、(1)株式保有の上限ということでございますが、時価で評価した対象株式の保有総額、評価益が生じている場合にはこれを控除するということでございますが、これにつきまして、自己資本比率規制上の自己資本のうち基本的項目(Tier1)を上限とするということでございます。

対象となる金融機関はここに書いてあるとおりでございまして、銀行、長期信用銀行、銀行持株会社等々でございます。連結ベースということでございます。

対象となる株式等でございますけれども、保有制限の対象としてむしろ除くものがマル1マル3まで書いてあるわけでございまして、マル1子会社・関連会社株式、マル2未公開企業の株式、マル3ンデット・エクイティ・スワップにより取得した株式といったものを除くということでございます。また、一部の信託など、個別株式の保有と同等と考えられるものについては、制限対象に含めるものとする。

(4)適用開始時期等ということでございますが、平成16年から適用開始をするということでございますが、Tier1を超えて著しく大量の株式を保有している等、一定の要件に該当する者については、その申請に基づき、1年ないし2年の猶予期間を設けるということでございまして、おおむね審議会でちょうだいいたしました報告書のラインに沿って改めて整理をし、法律事項については法律で盛り込むように考えているということでございます。

さて、それと1セットとなりました「銀行等保有株式取得機構」でございますけれども、1ページ目の下からがそれのご説明でございます。

まず組織形態でございますけれども、法律に基づき銀行等からの拠出により設立される認可法人という組織形態をとろうというふうに考えております。

会員は、会員資格を有する者ということで、先ほど申し上げました銀行、長期信用銀行、農林中央金庫及び信金中央金庫ということでございますが、機構への参加は任意ということでございます。

また、当初拠出金、言ってみれば運営をするための基本的な財産ということになろうかと思いますが、100億円を下回らない額ということで法律にも明記をいたしております。

運営は、基本的には銀行界から選出した役職員ということでございますけれども、別途、運営委員会というものを設置いたしまして、機構の業務運営に関する重要事項を審議していただくという構成でございます。

経理、機構の運営経費は当初拠出金、先ほど申し上げたものでございますけれども、それで置きまして、勘定を2つに分けるという考え方でございます。一般勘定、特別勘定というふうに分けておりまして、一般勘定はETF等の組成等のための買取を行うための勘定、特別勘定はセーフティネットとしての買取を行うための勘定ということでございまして、後ほど申し上げますが、この特別勘定につきましては政府保証等を付するというふうな考え方でございます。

国の関与ということでございますが、機構の設立の認可、役員の選任・解任の認可等、所要の監督を行うということでございますが、所管省庁としては金融庁と財務省の共管という形で法律には書いております。

「株式の買取等」ということの買取機関でございますけれども、これは保有制限の期限にあわせまして18年9月30日までということでございます。おおむね向こう5年間ということでございます。買取価格は時価、手数料も徴収をするということでございます。

次に、先ほど申し上げました勘定を2つに分けてというお話の中の最初の「一般勘定による買取」でございますけれども、スキームといたしましては、ETF等を組成する証券会社または自己株式の取得を希望する事業会社の依頼に基づきまして、機構が会員に対して株式の売却を勧誘する、会員がそれに応じて機構に対して株式の売却を行うということでございます。

こちらの方の買取資金につきましては、政府保証は付さないということでございますが、(3)にございますように、基本的には非常に短期のオペレーションを考えているわけでございまして、機構に損益が発生しない形で処理をしたいというふうに考えております。

それから、「特別勘定による買取」というのがもう1つの勘定でございまして、「買取のスキーム等」というところを見ていただきますと、機構は会員の申込みに応じて、会員の保有する株式を買い取り、信託銀行に委託して保有する。そして、買取の開始につきましては、運営委員会というものが、会員のニーズ、会員の株式処分の進捗状況、市場動向等を勘案して議決するということでございます。また、その買い取った株式につきましては、信託銀行が処分を行うということでございます。

この際の買取対象株式ということにつきましては、国内上場株式または店頭登録株式でございまして、あらかじめ指定した格付機関からBBB-格相当以上の格付けを取得している企業、ただし、無格付であっても同様の信用力があると認められる企業の場合は結構だということになろうかと思いますが、そういうものにある種の限定を付した形で考えております。また、各会員が平成13年3月末時点で保有していた各銘柄の株式数を限度とするということでございます。

その買取資金につきましては、申し上げましたように、借入または債券の発行により調達するわけでございますけれども、ここには政府保証を付するということでございまして、その際の政府保証額につきましては、(4)にございますように、当面2兆円ということで考えてございます。もちろん機構設立後の銀行等の市場及び機構への株式売却動向等を踏まえ、必要があれば見直しを行うというのが基本的な考え方でございますが、既に8月の終わりに14年度の当初予算の要求といたしまして2兆円の政府保証額という要求をいたしております。

それから、売却時拠出金ということでございますけれども、特別勘定に株式を売却をした会員は、売却額の8%に相当する金額を、これは先ほどの当初拠出金100億とは別途、売却の都度、機構に拠出をしていただくということを考えております。

4ページ目でございますけれども、株式の保有等ということでございまして、先ほど申し上げたように、信託銀行に委託というスタンスでございますが、当該株式の議決権につきましては、機構が議決権行使に関する基本的考え方を示し、それに基づいて信託銀行が策定するガイドラインに従って、信託銀行が行使するということでございます。なお、信託銀行は機構に対して議決権の行使状況を報告することとする。機構が議決権を行使するという形態はとらないということでございます。

最後に、「機構の解散等」ということでございますけれども、機構の存続期間は設立後マックスで10年ということでございまして、ただ、買取期間経過後、買い取った株式をすべて処分した場合においても10年たたずとも解散をするということでございまして、この辺は法律にも明記をしている形になっております。

その際の残余財産の分配でございますけれども、機構の解散時において、その債務を弁済してなお残余財産がある場合には、当初拠出金の額と売却時拠出金の額の合計額の2倍を上限といたしまして分配を行うということでございまして、当初拠出金、売却時拠出金というふうに返還をいたしていきまして、なお剰余がある場合には、当初拠出金の拠出者に対する配当、売却時拠出金拠出者に対する配当という順番で、順次分配をしていくということでございます。なお余剰があります場合には、国庫に納付をしていただくということでございます。

(3)債務超過の際の取扱いということでございますが、解散時におきまして、その財産をもって債務を完済することができないときは、その不足額を政府が補填するという形でございました。機構の解散時に損が出た場合、益が出た場合をそれぞれ想定いたしますと、大体、国、民間との関係はミラースキームのような形になっている、左右対称というふうな形になっているということでございます。

また、それ以外、税制上の措置ということで、機構に係る欠損金の繰越し等の措置というふうなことを講じる。

それから、商法の特例ということで、事業会社が機構から市場価格のある自社株を買い受ける場合には、株主総会の特別決議に代えて普通決議で足りることとする、といったラインで法務省とも話をしているということでございます。

最後、「今後の予定」ということでございますが、先ほどのお話にもございましたが、間もなく召集されることになっております次期国会に、一本の法律になっておりますが、この法律案を提出いたしまして、来年1月の機構設立を目指すということで考えているということでございます。

ただいま申し上げましたことのいわば法律事項が先ほど申し上げた法律の中身の構成をしておりますが、基本的な考え方はこの5枚紙に示してあるようなものについての考え方で今後もやっていきたいということでございます。

以上でございます。

○ 福井部会長

ありがとうございました。

ただいまのご説明についてご質問等がございましたら、どうぞご遠慮なくおっしゃってください。

どうぞ、成川委員。

○ 成川委員

ちょっと、質問で、教えていただきたいのですが。

特別勘定による買取で、対象株式につきましては、あらかじめ指定した格付機関でBBB-ということですが、指定した格付機関というのは複数を考えておられるのかどうか、それから、その後の括弧にある、無格付であっても同様の信用力があると認められるという、この「認められる」というのはだれが認める形を考えておられるのかというのが第1点です。

2つ目は、売却時の拠出金につきまして、8%に相当する金額を拠出すると提案されていますが、この8%というのはいろいろ考えた上での数字なのかどうか、教えていただきたいと思います。

以上です。

○ 迫田信用機構室長

まず最初の、特別勘定による買取の点でございますけれども、あらかじめ指定した格付機関というのは、これから恐らく政令・府省令の世界で考えていくことになろうかと思いますが、既に現在の証取法の体系の中で幾つかの格付機関を指定しておるものでございますので、そういうものを参考にして、あるいは念頭に置きまして、決めていくということになろうかと思います。必ずしも1つか複数かと決めておるわけではございませんけれども、その辺を参考にしながら、今後、府省令で定めていくということになろうかと思います。

それから、無格付であっても同様の信用力があると認められる企業、これも政令ないしは府省令のレベルで考えていくということになろうかと思いますが、ある種非常に客観性のある基準で決めるというふうなことが求められると思いますので、そこはよく研究をしていきたいというふうに思っております。

それから、大きな2番目のお尋ねの、拠出金の8%でございますけれども、これは、非常に端的に申し上げますと、いわゆるBIS基準の8%を念頭に置いているわけでございまして、要するに、BIS基準の分母と分子を考えた場合に、分母の方がいわゆるリスクアセットなわけでございまして、株式を売却するということはその分母が小さくなるということを意味しますが、一方、8%の売却時拠出金というものは、逆に言うとある種のリスクがありますので、分子の方からも引かれるというふうな考え方が一般的であろうと思います。そういたしますと、8%を超える割合の売却時拠出金というふうなものを求めました場合に、8%の自己資本比率にあるその銀行は8%以上の売却時拠出金を納めることによって自己資本比率が下がるというふうなことになると、それは恐らく機構への売却というものを非常に積極化しない方向に働くであろうし、考え方として適当でなかろうという意味で、今申し上げたような分母・分子の関係を念頭に置きますと、8%というBISの国際基準を考えれば売却時拠出金というのは8%というふうなことで決めるのが適当ではないかという考え方でございます。

以上でございます。

○ 成川委員

第1点目の、「認められる」という、「認められる」の主語といいますか、場所はどこが認めるんですか。基準はつけられるということですけれども、その基準の中でそれがそれに合っているかどうかという判断はどなたがされるんでしょうか。

○ 迫田信用機構室長

基準を府令ないし省令に明示をするという形になろうかと思います。それは客観性を持ったものを定めるというふうなことになりましょうから、それでおのずとわかってくるということだろうと思います。余り裁量をもってだれかが判断をするということのないような方向で考えたいというふうに思っております。

○ 福井部会長

成川委員、よろしゅうございますか。

ほかにご質問はございませんでしょうか。

もしほかにございませんようでしたら、この件はこれで質疑を終了させていただいてよろしゅうございますか。

それでは、この件の質疑は終了させていただきます。

次に、「生命保険をめぐる総合的な検討」に移りたいと思います。この問題につきましては、去る6月にこの部会の報告書として、「生命保険をめぐる総合的な検討に関する中間報告」を公表いたしました。8月末を目処としてパブリック・コメントとして幅広く一般からのご意見を求めていたところでございます。今般、事務局において報告書に寄せられました意見を整理していただきましたので、まずその整理の内容につきまして、事務局からご説明を願いたいというふうに思います。

○ 仲保険企画室長

それでは、お手元の資料の「第二部会8-2」という資料をごらんいただきたいと思います。「『生命保険をめぐる総合的な検討に関する中間報告』に寄せられた主な意見」と表題をつけた資料でございます。

これは8月末をめどに金融審議会第二部会で募集された意見を整理したものでございまして、意見といたしましては、総数で328件の意見が届いております。一般の契約者の方のほか、保険に関する専門家、あるいは各種団体、あるいは個別の保険会社といったところからご意見をいただいておりまして、いただきましたご意見は中間報告にございますすべての項目にわたっておりました。このまとめは項目別に主な意見と思われるものをできるだけ忠実的にピックアップしたものでございます。整理に当たりましてはそういう点を注意したつもりでございますが、何分総数が多いものですから、必ずしも整理し切れていない面もあるかと思いますが、ご容赦いただきたいと思います。

それでは、資料の中身の説明に移らせていただきますが、中間報告の項目順に意見をご紹介したいと思います。

まず1番は「生命保険会社の財務基盤の充実」ということで、その中の1つ目の項目として、社員配当ルールの弾力化、いわゆる80%ルールの弾力化という項目がございました。これについては右の欄の意見をごらんいただきたいのですが、上の2つが比較的積極論でございまして、財務基盤の充実を図り、社員配当ルールの弾力化について前向きに検討することが望まれるというのが1つ目の意見でございました。

それから、3つ目の○からは3つほどありますが、ここは積極論ではございますが、やる場合には一定の条件が必要だというご意見でございまして、まず最初は、相互会社の理念というのは維持すべきだということから、合理的な理由もなく配当比率下限を変更することを排除するための措置を設ける必要がある。2つ目につきましては、ディスクロージャーの改善やガバナンスの強化を条件とすべきである。3つ目は、配当ルールの決定過程の公表を義務づけるべきではないかといったご意見でございました。

社員配当ルールの弾力化につきまして慎重なご意見というのはこのページの一番下にございますが、実費原則というものを強調されまして、配当財源への繰入率を軽々に低めてよいものだろうかというご意見がございました。

次に2ページに移らせていただきまして、(2)の「責任準備金等の充実」でございますが、まず一番上の意見は、標準責任準備金制度につきまして、その整備が適当であるというご意見でございます。

次の2つの○は追加責任準備金の積立てについてご意見をちょうだいしておりまして、2つあるうちの下の方をご紹介しますと、財務基盤の充実を図るのであれば、税務との調整を行った上で逆ざやに対応できるような追加責任準備金を積立てる仕組みが自然なのではないかというご意見でございました。

4つ目の○は平準純保や標準責任準備金につきましてご意見をちょうだいしておりまして、平準純保険料式による積立てを一律に促進することには違和感がある、保険負債の時価評価を含め責任準備金の積立方式のあり方について今後さらに検討していくべき、また、標準責任準備金制度の拡大につきましては商品設計の自由度を奪うことがないようにしていただきたいというご意見がありました。

下の2つは負債の時価評価や国際会計基準に関するご意見でございます。1つ目は、負債の時価評価については早期導入が必要とするものであります。下の方は、保険負債の時価評価については、そのまま導入された場合には、生命保険会社の経営に大きな影響を与えるということから、国際的な審議状況を踏まえつつ、我が国においても早急に検討を行うべきであるというご意見でございました。

次に3ページに移らせていただきまして、(3)の「株式会社化の枠組みの積極的な活用」についてでございます。

3つある意見のうち2つは、株式会社化の促進を前提に改善点として指摘しているものでございます。1つご紹介いたしますと、実際の株式会社化に当たっては、会社の恣意が働く余地を最小化するよう、とりわけ寄与分計算の検証には外部のアクチュアリーを用いた検証を義務づけるべきではないかというご意見であります。

それから、3つ目のところをご紹介しますが、株式会社化の選択については、各社において自主的に決定されるべきというご意見がございました。

続いて、(4)の「基金の調達手続の弾力化等」でございますが、積極的に進めるべきという意見が最初の意見でございまして、早急な制度手当てをお願いしたい、その際には授権期間について複数年にわたる設定が可能になるよう検討をいただきたいというご意見でございます。

真ん中は、弾力化を必要としつつ、重要な点は、基金を償却し得る剰余の見通しがきちんとした手続きにより確認されることであるというご指摘であります。

一番下はこの基金の調達手続の弾力化にやや消極的な意見でございまして、一番下にありますように、再募集の必要が生じたときには、総代会を臨時であっても開催し、その必要性、負担の妥当性について十分な説明が行われることが必要だと指摘されております。

次に、4ページに移らせていただきます。2の「保険契約者からの信頼の向上」でございますが、1番は「ディスクロージャーの改善」ということで、ここはかなりいろいろなご意見が出ておるところでございます。

まず総論として2つの意見を紹介させていただきますが、最初のは、ディスクロージャーの水準及び内容・質が精査されるべきであり、現行のディスクロージャーは不十分とするご意見であります。

1つ飛ばしまして、ここから3つほどは開示に伴う問題の指摘ということで、ご意見をご紹介させていただきます。1つ目は、ディスクロージャーの充実は重要な課題ではあるものの、それによって自動的に契約者の理解が急激に高まり、適切な選択力を持つに至るなどということはあり得ないという理解に基づいて、契約者保護と自己責任のあり方についての検討をしていただきたい。2つ目は、開示により事業者が被る不利益への配慮も必要ではないか。詳細な開示項目や内容については、法令で一律に定めるのではなく、自主的な開示あるいは業界自主ルールに委ねることが適当。3つ目は、商品の特性を無視した一律の基準で開示の詳細を定めるのは妥当ではないと考えるというご意見であります。

その下2つから、7つほど、開示項目に関するご意見がございます。

最初は、損益状況を詳細に開示してほしい。2つ目は、死差、費差、利差、いわゆる三利源の公表を行うべきではないかというものでございます。5ページの一番頭は、逆ざやの算出基準などを明らかにし、定義の明確化を図るべきではないか。続いて、事業費の明細の開示が必要。それから、リストラの状況や給与、福利厚生等を公開すべき。さらに、責任準備金の詳細の開示は早急に行うべきというご意見がございました。

この項目の下の2つは、1つはわかりやすい開示に関する意見でございます。消費者向け、専門家向けなど、4段階程度に分けて工夫を図ることが必要。それからもう1つは、商品内容の開示に関するものでございます。なかなか複雑でわかりにくく、他社の商品との比較も非常に困難である。また、契約時の情報提供も不十分であるというご指摘がこの一番下のご意見であります。

続きまして、(2)の「保険会社におけるガバナンスの強化」について、意見を紹介したいと思います。1つは、総代会について、契約者の意思を反映させるようにすべきとの観点からのご意見でございまして、3つほど掲げさせていただいております。1つは、一般契約者を主人公にした総代会にすべきではないか。今のままでは契約者の意思など入る余地はないというご意見。2つ目は、総代の選び方は透明性があるとは言いがたいというご意見であります。1つ飛ばして次の6ページに移らせていただきますが、6ページの一番上の○は、総代会制度の充実に関する問題点の指摘でございます。立候補制あるいは総代の選抜範囲の拡大につきましては、一般社員の意思を総代会に一層反映させるための努力が重要であると認識しておりますが、画一的なルール化によるのではなく、各社の創意工夫によるべきではないかというご意見。あわせて、総代数の拡充については、その適正数は各社が判断すべきというご意見でございます。

以下は、保険計理人、アクチュアリーに関するご意見でありまして、最初の4つはその機能強化を図るべきとするご意見であります。

1つ目は、保険計理人の機能強化を図ることは極めて重要で、責任範囲の明確化、外部からの選任の推進等を図るべきというご意見であります。続いて2つ目をご紹介いたしますが、ここではディスクロージャーを補完するものとして公平な目によるチェックということで、保険計理人の機能の一層の強化が必要という指摘が出されております。1つ飛ばしていただきまして、4つ目のところには、将来収支分析の開示、あるいは、総代会でアクチュアリーから説明することを求めたいというご意見であります。

一番下は保険計理人の機能強化に関する留意点を指摘したものでございます。保険計理人は、会社の健全性や契約者間の衡平性等について、会社に事前に提言していくことが本来の姿である。こういった本来の姿から考えますと、まずマル1の将来収支分析につきましては、次のページに飛んでいただきまして、7ページの3行目にありますように、総代会にそのまま説明することは適当でない、したがって、将来収支分析を踏まえた経営者の将来の見通しを総代会、株主総会で説明することとし、各社の自主的な取り組み、工夫に委ねることが適当。2つ目として、現行の保険計理人の位置づけから、行政当局との連携が重要であるというご意見。3つ目として、外部からの保険計理人の選任は、その位置づけから考えると、実効性は疑問である、むしろ保険計理人の分析の前提等を会計監査人が検証するなど、会計監査人との連携を行うことが重要であるというご指摘でございます。

1つ置きまして、この項目の一番下、最後の意見は少数社員権の行使要件の緩和に関するご意見でありまして、その緩和については、8年の保険業法改正時に大幅な要件緩和が図られたこと、今後の商法改正に向けた議論等を踏まえれば、あえて相互会社のみを取り上げて法改正を行う意義は乏しいのではないかというご意見をちょうだいしております。

次に、中間報告の3つ目の大きな項目である「多様な保険商品開発の促進」についてでございますが、(1)は「保険商品の審査手続の見直し」に関するご意見でございます。

最初の2つは審査期間の短縮に関するものでございまして、審査期間の短縮を図るべき、審査期間60日のさらなる短縮を望みたいというご意見でございます。

このページの一番下の意見は届出対象の拡大に関するご意見でございまして、届出制度の対象を企業向け及び家計向けの全商品に拡大してほしいというご意見がございました。

次に、8ページをごらんいただきたいと思います。8ページの一番上はファイル・アンド・ユースの導入に関するご意見でございまして、保険の購入に当たり、高い判断能力を有する企業顧客に対して提供される保険商品の認可については、ファイル・アンド・ユースを導入することが必要であるというご意見がございました。

続いて、審査基準等に関するご意見として、届出制の拡大は一歩前進ではありますが、現行の届出制は制約条件付きの届出制であり、望んでいる届出制にはほど遠い、マル2のところにありますように、審査基準の内容をもっと具体的にしてほしい、マル3にありますように、審査する側の担当官の人数をふやすだけではなく、質的側面の充足を図る必要があるというご意見がございました。

一方、認可制を維持すべきという考え方が3つほどございました。3つほど取り上げておりますが、1つは、一般消費者向け商品で長期・高額、あるいは変額となるものについては、認可制を維持すべき、2つ目は、企業向け商品であっても、保障性商品については認可制を維持することが適当、3つ目は、家計向け商品については、将来にわたり認可制を維持することが適当というご意見でございました。

続きまして、9ページをごらんいただきたいと思います。「特別勘定の見直し」の項目についてのご意見ですが、これにつきまして2つ取り上げてございますが、いずれも優先的な検討が速やかに行われるべきというご意見でございます。

中間報告の項目の4番目の「監督手法の整備」の中の、「ソルベンシーマージン基準の不断の見直し」についてのご意見を紹介したいと思います。

まず最初は、不断の見直しを行い、指標の信頼性を確保し、契約者に安心をもたらすものにすべきだというご意見でございます。

その下2つはリスク水準に関するご意見でございまして、上の方は、リスク水準は昨今の実情にあっていないなどの問題があることから、リスク算出方法を米国基準並みに厳格化すべきというご意見でございます。下の方は、損害保険会社における巨大災害リスクが予想最大損害額全額であって他のリスクとバランスを欠く面があるということから、リスク水準の検討の際にはあわせて検討する必要があるというご意見であります。

他方、ソルベンシーマージン基準の不断の見直しについて、4つ目の○では、当面は3月に行いました見直しの定着状況を見ることも、基準として維持すべき継続性の観点からは重要ではないかというご意見でございました。

続きまして、一番下の○と10ページの1つ目の○は連結ベースのソルベンシーマージン基準に関するご意見でございます。10ページの方のご意見を紹介したいと思いますが、保険事業以外の一般事業を含めたリスク通算の技術的困難性がこの連結ベースのソルベンシーマージン基準の導入にはあると。あるいは、保険会社は連単倍率が低く、連結財務諸表に基づき算出する意義が小さいといったようなことから、慎重な検討をお願いしたいというご意見がございました。

この項目の最後のご意見は、銀行、証券の自己資本比率規制との調和の問題でございますが、これについて、いたずらに形式的な統一を図ることなく、各業態の特性を考慮した適切な指標とすることに留意する必要があるというご意見をちょうだいしております。

次に、(2)の「中間業務報告書の導入」でございますが、現在、自主的に開示を行っている上半期報告を充実し、工夫していくことでの対応が望ましい。あるいは、費用対効果の観点から検討を行う必要があるというご意見がございました。

次に、(3)の「資産運用規制のあり方」でございますが、実効性に乏しいことから、撤廃することが望まれるというご意見がありました。

最後の「保険契約の契約条件の変更」の項目でございますが、左に掲げてありますように、便宜上、事務局の方で、賛成意見、反対意見、その他の意見と分けてございますが、全体で321件ございましたうち賛成意見は24件でございました、うち、生命保険会社個社は1件でありました。

まず、賛成意見をご紹介したいと思いますが、一般からのご意見としては、1つ目ですが、残念ながら仕方がないことだ、ただし契約者への十分な説明が必要であり、解約の自由を確保すべき。2つ目ですが、これは契約者間の公平に関する問題ですが、加入した時点での金利格差を少なくしてほしいという観点から、賛成の意見でございます。

11ページでございますが、一番上は、現下の状況は世界史上例を見ない異常事態であるということから、逆ざやを解消するために既契約の予定利率を引き下げることが効果的であるというご意見であります。

2つ目は、消去法ではあるが条件付き賛成とするものでございますが、中間報告のスキームでは機能しないということから、何らかの基準に応じて強制発動する方が現実的ではないかというご意見でございました。

4つ目は更生手続に関するものとの比較でございますが、更生手続では清算価値で資産評価を行うため債務超過額が膨らむといったようなことがありますので、そういったことから考えますと、更生手続にはデメリットがあるため、契約条件の変更という選択肢を設け、いずれの方策がより契約者の利益に資するかを経営者に判断させる制度を設けることは肯定すべきとされております。また、一定の条件を満たした場合は条件変更を容認してもよい。変更の対象となった契約者は、将来その会社に利益が出た場合には、契約者配当や株式という形で埋め合わされるべきであると考えるというご意見もいただいております。

生命保険会社からの意見としましては、破綻前の契約条件変更を可能とする手続きであれば、契約者の負担を軽減することができるとともに、経営の自己規律を確保する観点からもぜひとも必要であるというご意見でございました。

続きまして12ページでございますが、こちらは反対意見を整理させていただいております。全体で280件の反対意見がございまして、生命保険会社からの反対意見は10件ございました。

一般からの意見につきましては、事務局の方でいただいた反対の理由を項目として整理させていただいておりますが、最初の理由としては、リストラやディスクロージャーの不足などを指摘する意見でございます。いろいろ反対理由がある中では、ここが一番多い理由になっております。この点で少し意見をご紹介いたしますと、まず1つ目の○は、生保は黒字産業で、費差益、死差益で利差損を穴埋めできる形になっているということで、まだ余力があるではないかというご意見でございます。

それから、ディスクロージャーが不十分とするご意見を3つほどご紹介したいと思いますが、この紙では3つ紹介してございますが、私の方からは3つあるうちの一番下、ディスクロージャーが不十分では、超長期の契約である生命保険契約について消費者に責任を問うのは過酷であるというご意見を紹介させていただきます。

続いて、リストラ等の経営努力が不十分というご意見に関してでございますが、営業職員や内勤の正社員の高額報酬、莫大な宣伝広告費、現場のでたらめなお金の使い方など、改革なくして大手生保に将来なしというご意見がございました。

続いて、ガバナンスが不十分ということで、総代は実質的には会社側の人選で、会社側に都合のよい結論しか出ないというご意見をちょうだいしております。

反対の理由として2番目に整理されるものは、契約社会の原理に反するとする意見でございます。2つ目の一番下の○をご紹介したいと思いますが、成立した契約に基づいて債務の履行を求めるのは当然であるということで、契約社会の原理に反するという理由から反対をなさっております。

続いて、理由の3つ目として、経営の失敗を契約者に帰するのは問題というご意見がございまして、不利益分を契約者のみに押しつけ、経営者の責任が明確になりにくい。あるいは、投資のプロが見通しを誤ったつけをどうして国民が取らされなくてはならないのかというご意見をちょうだいしております。

続いて、4つ目でございますが、契約者に負担を求めるのは一番最後であるべきというご意見であります。保険会社の損失を契約者に負わせるのは最後の手段。保険会社の破綻はまず保険会社が責任を負い、次に銀行等の劣後債権者が、最後にやむなく消費者が一定の負担をするというのが順序であろうというご意見でございます。

続いて、制度導入は生命保険事業や金融機関への信頼を失わせるものであるということで、1つご紹介しますが、生保への信頼低下から保険離れが進み弱い保険会社の経営破綻につながるのではないかというご意見がございました。また、14ページの一番上にございますように、生保だけではく、固定利率をうたっている金融機関がすべて怪しいものに感じられるというご意見。あるいは、1つ置いて、引き下げたいと手を挙げている社が1社もない中で、このような議論が続くことが生保業界全体の信用不安を増幅させている。個社の延命よりも業界全体の信頼回復を目指すべきというご意見がございました。

次の理由としては、更生手続等の破綻処理の方がよい、あるいは、破綻した場合に契約条件が変更されるのなら仕方がないとする意見でございます。3つあるうちの1つ目ですが、破綻処理によって粛々と公正に手続きを進めるべきで、その方が契約者としても納得できる。3つ目でございますが、契約条件の変更は更生手続と比べて大したメリットもなく、契約社会の大原則を曲げてまで制度の導入を図る必要はない、早期の更生特例法にて処理すればよいというご意見でございます。

次の理由としては、契約条件の変更が実行されるときには解約するという意見がございました。15ページの上から2つ目の○をご紹介させていただきますが、予定利率が引き下げられるとなれば、契約を解約するのは当然のことであるというご意見です。

続いて、将来設計が狂ってしまうので困るという意見も数多くありまして、特に貯蓄性の保険では契約者の人生設計に大きな狂いを生じさせてしまうと。

あと、生命保険会社からの反対意見としましては、1つ目にありますように、保険事業に対する国民・契約者の信頼を失うことになる。それから、3つ目の○にありますように、契約条件変更を議論することも、今年度に入っての解約増加の一因と思われる。それから、次のページに移っていただきまして、上から2つ目でございますが、更生手続であれば、手続きの公平性・透明性等が十分に確保されている。次の○にありますように、現行の更生手続においてもうまくいっている、更生手続がさらに適時・迅速に行われるようになれば、今以上に保険契約者の負担を軽減できる。それから、この項目の下から2つ目の○ですが、現実には機能しない可能性が高い、手続きを開始した途端に解約が急増し、結果的に破綻に追い込まれることも考えられる。最後の反対意見の理由としては、国際的に見ても、破綻時以外に契約条件変更を認める制度を有する国はない、日本の生保業界に対する諸外国からの評価は著しく低下する恐れがあるというご意見がございました。

その他のご意見は17件でございますが、これについてはご紹介を割愛させていただきます。

以上、駆け足でございましたが、中間報告に寄せられた主な意見をご紹介させていただきました。

○ 福井部会長

ありがとうございました。

パブリック・コメントにつきましてかなり詳細にご説明をいただきました。これに対しまして皆様方から、まずご質問とか、あるいはご質問に限らず、中間報告の中身を振り返ってパブリック・コメントを考慮した上で改めてどうお考えになられるかというふうな点とか、あるいは中間報告後、この先我々はどういう対応をすべきかというふうなことまであわせてご意見を出していただければと思います。

どうぞ、倉澤委員。

○ 倉澤委員

私、この中間報告の準備作業を委ねられました作業部会の中で、保険契約の契約条件の変更については、制度としてそういう選択肢が存在する方が将来的に明るさが見られる制度になるということをやや声高に言い続けてきた者でございますけれども、その考えは私は今もって変わらないのですけれども、言うまでもなく、この制度というものは社会的なコンセンサスがなければ妥当性もなければ実行性もないわけで、本日、ただいまのご説明によりまして、大方の保険契約の条件変更についての意見というものがよくわかりました。したがって、今部会長からもお話がありましたように、将来この中間報告をどう扱うかというときに、今後、生命保険をめぐる総合的な検討項目としては、保険契約の契約条件の変更というのは、この際、これは割愛してもいいのではないかと思います。

ただ、その点で何か未練がましいことを申し上げるようで恐縮でございますけれども、この保険契約の契約条件の変更制度というもの、殊に、保険契約者であるとともに、相互会社のステークホルダーたる有限責任社員でもある人たちの社団法的な合意によって変更を認めるべきであるという意見というのは、今のような逆ざやの状況を一過性の特殊的な事情で乗り越えるというような発想法は全くありませんで、構造的にユニラテラルな長期のリスクの商品というもの、殊にそれが高齢化社会では保障性よりは金融商品性というようなものを持つように機能が変化してきているということと、それから、事業を営んでいる会社の組織というものが競争条件の上で一体どうあるべきかといったようなことの問題の上でこの契約条件の変更制度はあるべしと主張したわけですが、パブリック・コメントとして大方のコンセンサスがはっきりしている限りこの項目自体は検討項目から外れるべきですが、こういう選択肢を抜きにしてさらに検討を進めるとすれば、今言ったような構造的な問題について問題はさらに先鋭化してくるというか顕在化してくるものだというふうに考えております。

以上が私の意見でございます。どうもありがとうございました。

○ 福井部会長

ありがとうございました。

ほかに、どうぞ。

○ 松浦委員

保険業に携わる者として、大事な点でございますので何点か申し上げたいというふうに思っております。

まず、保険契約の契約条件の変更についてでございますけれども、中間報告には、保険会社、保険契約者自身の意思決定による方法の制度化には、国民、保険契約者の理解・認知が前提であるというふうに書かれてございます。事務局よりご紹介いただきました一般から寄せられたご意見は、非常に厳しいものがあるという印象を受けてございます。生命保険会社の意見については事務局の方からご紹介がございましたが、弊社としましては、業界の信用低下を考慮して、反対意見を提示させていただいている次第でございます。

次に、ディスクロージャーについては、中間報告にございますとおり、生命保険会社に対する契約者の信頼を向上させるためにその充実が必要であるという認識は持ってございます。当社においては従来よりその方向で鋭意取り組んでいるところではありまして、これは各社とも共通というふうに認識してございます。

ディスクロージャーの充実についてでございますけれども、一般のご契約者に真に必要な情報をわかりやすく開示することが重要であるという考え方に基づきまして、生命保険協会におきましては『生命保険会社のディスクロージャー虎の巻』というものを発行しまして、ご契約者が各社のディスクロージャー誌をごらんいただく際の一助となるように努力を従来から続けてきてございます。しかしながら寄せられた一般のご意見を伺っておりますと、今後よりよいディスクロージャーに向けて一層の努力が必要ということを感じまして、一層の努力を継続していくという必要性を認識してございます。

それから、ガバナンスでございますけれども、中間報告にありますとおり、さまざまな改善努力が重要であると認識してございます。当社におきましてさまざまな工夫をしているところでございます。今後とも各社の創意工夫による事実的なガバナンスの充実というものが図られていくことが重要であるというふうに考えてございます。

なお、中間報告におけるディスクロージャーやガバナンスにつきましては、生命保険会社一般についての議論と契約条件変更が仮に制度化された場合における実施会社についての議論というものが明確に区分されているというふうに認識しております。生命保険会社一般についての議論は、制度化を前提にしたものではないというふうに理解してございます。

それから、生命保険会社には今後より一層の創意工夫を生かした事業展開が求められてございますが、中間報告には、基金の調達手段の弾力化でございますとか、特別勘定の資産保全など、生命保険会社の活性化に資する手立てが盛り込まれてございます。これらの早急な制度整備をぜひお願いしたいということが保険業者としての意見でございます。

どうもありがとうございました。

○ 福井部会長

いかがでしょうか、ほかにご意見はございませんでしょうか。

どうぞ、山下委員。

○ 山下委員

中間報告のもとになりましたワーキンググループの司会をしていた者として、1点だけ申し上げたいと思います。

もともとこういう提案は我々法律家の目から見ても相当無理筋の提案であったわけで、福井部会長が当時盛んに言われていたように、非常にナローパスもいいところで、これはあらゆる方面のご理解をいただくと同時に、それなりの強いリーダーシップを持っていかないと実現できないような案であったわけでございました。そういうものを、無理だということはわかっていても、やはり提案せざるを得ない状況というのも一方にあったわけでございます。ただ、それはそう簡単には実現できないだろうということで、国民の意見をあおぐということになったわけでございます。その意見がきょう整理していただいたとおりでございました。こういう状況結果が出たところで、これを強行するかどうかということについては、先ほど倉澤委員がおっしゃいましたように、なかなか難しい点があるということは一方でわかるわけでございます。

他方で、反対意見が強いというところで、これを実現する方向へ向かっていかないということにつきましては、それはそれで1つの選択肢かもしれませんが、結局、何もしないという選択肢でもあるわけで、そのときに何が起きるかということのメッセージをどうやって発信するかが重要かと思うわけでございました。この案を退けるということはひとつ簡単ではございます。そういう選択肢を採る場合に、これから何が起きるのか、また、そういうときに危機対応としてどういうことをする必要があるのか、そういうふうな点の検討を十分慎重に関係の方面でお願いしたいと思っております。

○ 福井部会長

ありがとうございました。

翁委員、何かご意見はございますか。

○ 翁委員

私も契約条件の変更の件につきましては、倉澤委員や山下委員がおっしゃったように、これだけ一般の理解がなかなか得にくい状況でこうした案を実現していくのはなかなか難しいというような印象を受けました。とは言っても、やはり今の生命保険会社をめぐる環境というのは非常に厳しいものがございますので、そうした中で今後どういうふうにこの案を進めない場合のですね、今、山下委員がおっしゃったことと関連しますけれども、どういった対応をこれからしていくのかということが生命保険会社のリストラクチュアリングということと同時に、セーフティネットとしてどういったものを今後さらにいろいろ整備していく必要があるのかという議論をしていく必要があるのではないかというように思います。

また、ディスクロージャーに関しましても、ここで出てきているように、さらなるディスクロージャーの充実は非常に重要でございますが、特に今こういった議論が出てきていることによって契約者がいろいろな不安を感じている面がございまして、そういった契約者が本当に理解できるような情報開示の仕方というのを検討しておく必要があるというふうに感じております。

○ 福井部会長

ありがとうございました。

田中委員、何かございますか。

○ 田中委員

経済分析する上である時期まで有効であったといいますか、そんな形で立論すればいいだろうと言っていたのが、今はそういう前提が成り立たないのに、代表的個人とか、代表的企業というものを想定しまして、そういう企業とか個人のビヘイビアを前提としてそれを足し上げるような形で社会システムを考えるということなんですが、それは現実にはもうほとんど意味がなくて、個々のミクロレベルにおける多様化した思いなり、いろいろな特徴のある個々のサプライサイドを使ってやるということなんですが。

ここでの議論は、代表的契約者とでもいうものがあるんだという想定になっているわけです。ところが、実際には、今、個々に破綻あるいは破綻にかかわるある種確率分布が存在しているという中において、代表的契約者というものを想定して議論するのは私は無理だと思います。そういう意味では、ゲーム理論的に言っても、現実の生保のこの逆ざや問題を解消するのにこうした手法が適用可能であるというのは、議論としてはそもそも成り立たないと思うんです。現実は、先ほど翁さんが言われたように、非常に厳しいものですし、もう1つ極めて重要なことは、古いシステムとこれから行き着こうとする新しいシステム、新しいシステムというのは……、公的当局は監視・監督にかかわる古いシステムは捨てたわけですが、しかし実際の個々の生保は古いシステムのもとで存置されてきた、しかし新しいシステムのもとに移行するにはこの溝を飛び越えられないでいるということだと思います。

古いシステムというのは、恐るべきことですけれども、私は行政改革委員会の委員をやっていたときに、当時の保険の担当者というか担当課長というか室長というかその人が来られまして、3・3・2規制を撤廃すると、だめなといいますか、力量のない企業が大慌てになると、そんなことをやってもらっては困りますというのが96年~97年にかけての議論ですから、ほんの5年前は、そういう本来はマーケットを通じてイグジットさせられなければならないものが、実体があるがごとく当局は見繕って保険契約者をずっとふやし続けることを認めていたというのが実態であります。ですから、マーケットの力を通じてイグジットさせないということで、現実にはもう退出しなければいけない生保がその後も契約者をふやしていったという実態があるわけです。それと今日とは違うシステムなんですが、そこはじゃあどうやって責任を、古い体制の責任は一体だれがどうやって負うのかという問題が実際にはあるんだというふうに思います。

ですから、恐らく銀行については21行体制というものがあっという間に4メガバンクプラス幾つという状態になって、その先にもさらに展開が予想される局面からいくと、この間起きたことは、いわば貸出資産の質において、事後的に見るとすそ的なといいますか、貸出資産の質の劣化したところからこぼれていったという歴史が現実にございます。保険会社にも同等のというか、既に起きているわけですが、今後もさらにその問題が起きるということならば、これはやはり従来のそういう行政を持続してきたのは政治責任といいますか政府の責任ですから、これはもうごめんなさいと、本来、市場から退出すべきものを退出させないでいたおかげでいろいろな形でご迷惑をおかけしていますと、これ以上続けるわけにはいきませんからというので、基準をつくって、すそと言っては何ですが、線を引いたビロー・ザ・ラインのところはあるときに一括してその保険契約者を扱うという形を通じて、その中でまた、少し早めに解約した人は何とか逃れたけれども、損失は最小限で免れたけれども、少し疎かった人はいっぱい切られてしまったというようなことをこれ以上続けるわけにはいかないということだったら、これはやはり内閣が責任を持ってアバブ・ザ・ラインとビロー・ザ・ラインの線を引くと。

例えば、福井部会長にはその線を引く基準をつくってもらうと。それは余り公開の席ではどんどんやるような話ではないでしょうから、できるだけ短期間に基準をつくって、基準を発表して、アバブ・ザ・ラインとビロー・ザ・ラインの区別をして、その後の負担は、一部は納税者負担ですし、アバブ・ザ・ラインの生保契約者も一部は負担する。だから、納税者の負担とサバイブする生保会社の契約者と、一部損失を被るビロー・ザ・ラインの契約者という形で着地して、これは政治責任といいますか、だれかがとらなければいけないわけですから、それは内閣がとると、そういうことでないとより問題は厳しくなると思いますし、従来の行政の失敗のつけを特定の人が受けるというのは社会公正に反するんだろうと思います。

ですから、代表的契約者があるという前提で立論するのではなくて、やはりこれは実態に則して、いろいろなケースがあるから、その中でのコンフリクト・ミニマムが必要なのではないかと、そういうふうに私は感じております。

○ 福井部会長

ありがとうございました。

どうぞ。

○ 高橋委員

私は保険契約の条件変更の法制化の反対をずっと主張いたしてまいりました。その立場から見ますと、今回のパブリック・コメントというのはおおむね想像の範囲の意見が広く国民の方々から寄せられたというふうに感じました。ただし、逆ざやによる破綻の危機というのは遠のいたわけではなくて、昨今の株価の下落による含み益の枯渇によりまして逆ざやを埋める原資が急激に減少していることもありまして、この議論を開始した当初よりも事態は深刻化しているというふうに考えております。したがいまして、生保の健全化を促す方策をこの契約条件の変更抜きにして各社が真摯に検討を実施するということは当然のことではございますが、即効性のあるものではありません。こうした現状を審議会として見守るというような悠長なことを言っていられる状態ではないというふうに認識しております。

私は、当初より、更生特例法の見直し、預金者保護で検討されましたP&A的な手法の導入の検討、保護機構の制度及び財源問題の早期の検討、この3点を主張してまいりましたけれども、早急にその検討を始めるべきだというふうに考えております。また、それに加えまして、監督体制の強化を行って、早期処理で国民負担、契約者負担、業界負担を減らすべきで、その努力は重ねていく必要があると思います。

それから、少々申し上げにくいことではあるのですけれども、ただいまの田中委員の意見とも関係しておりますが、今回、金融審に提出したパブリック・コメントを、ご自身のホームページですとか、そういう関連のホームページで公開されておられる専門家の方々がおられます。格付アナリストですとか、アクチュアリーの方の全文を読ませていただいておりますけれども、やはりそこには監督責任であるとか、行政責任であるとかということについてのご意見が書かれておりました。きょうのまとめでは16ページのところに個人の意見として1行だけ触れられておりますけれども、実際には監督責任の不在ということも含めて、かなり厳しい意見があったものというふうに想像されるわけでございます。ですので、それは当局に向けられたものではなくて、当審議会に対して、運営方法も含めて考えなさいと、そういうメッセージであったというふうに思われますので、監督責任、行政責任、その他の問題につきましては審議会の検討マターとするべきではないかというふうに私は考えます。

以上です。

○ 福井部会長

ありがとうございます。

ほかにございませんでしょうか。

神田委員、どうぞ。

○ 神田委員

専門ではないのですけれども、ちょっと感想めいたことを述べさせていただきます。

私もこの審議会で深刻に事を考えると何ができるかというと非常に悩ましいと思っております。それで、予定利率の引き下げの話につきまして、今回のご提案について、ご紹介のありましたような意見があったことを踏まえますと、正論としてはディスクロージャーの強化、ガバナンスの改善ということを粛々と続けるということに恐らくなるんだと思うのですけれども、先ほどもご発言がありましたけれども、よりよいディスクロージャーとは、一体これ以上何をディスクローズ、どうしていくのかというその各論のところは、やはりそう簡単ではないと思うのですね。うちの会社は債務超過ですと言ってディスクローズする会社はないと思いますので、ワーキンググループのメンバーでいらっしゃったと思いますけれども、ある経済学の先生の研究等によって、一般のディスクロージャーを信じている人はいなくて、そちらの研究の方が信憑性が高いというのが現状でして、このまま待っていれば破綻する会社が恐らく出てくるであろう。これは確率の問題ですから余り軽々と申し上げるべきことではなく、それはもちろん株価の状況、いろいろな状況に依存しますけれども、そちらの方が一般には信じられているという、客観的な事実があるということは認めないわけにはいかないと思います。

これは田中さんがおっしゃったことですけれども、そういう意味では非常事態であって、それではこのままそういうところが出てくるのを待つのかと、何か手が打てるのかといいますと、恐らく筋は、一方で、繰り返しになりますけれども、ディスクロージャー制度あるいはガバナンス制度というものの改善をしながら、他方において更生手続というものを適用するということだと思うのですけれども、今関係者のインセンティブは更生手続を自分から申し立てるという構造になっていないと思うのですね。

例えば、言うまでもないことですけれども、生命保険会社の例で言いますと、昔、生命保険会社は金融機関というか銀行に対して劣後ローン等を持っていたように、今、今度は銀行が生命保険会社に対して劣後貸付あるいは基金というものをかなりの額持っているわけです。したがいまして、形式的にはこれは持ち合いになっているのですけれども、銀行の方も生命保険会社の方もBIS上の自己資本比率あるいはソルベンシーマージンとの関係ではカウントされていますので、そういう意味ではそちらの方では形式的には余り心配する必要はないのですけれども、実質的には、もし例えばある生命保険会社が更生手続を開始ということになりますと、当然、基金も劣後ローンも飛ぶことになりますから、今度はそれを持っている銀行の方も結局おかしくなるという意味においては、やはりどうしてもそこは連鎖しているわけですね。これは、田中さんがおっしゃった、昔を引きずったままの実態があるということは素直に認めざるを得ないわけです。

ですから、もっと抽象的に申しますと、更生手続で処理すべきだというのは私も個人としては全くそう思うのですけれども、しかし、更生手続は本当に悪くなってどうにもならなくならない限り開始しないし、経営者を含めてできるだけ申し立てないようにしようというインセンティブがあるわけですね、これは金融機関も銀行も同じですけれども。そこで、余り後ろ向きの話は私はきょうはしたくないし、もともと余り好きではないのですけれども、今の現実をどうするかという話は、やはり今の株式市場あるいは逆ざや問題一般を含めてそうかもしれませんけれども、決してこの第二部会のワーキンググループが夏前に議論したときよりもよくなっているとは到底思えないわけです。夏前に苦心の策として、そのときの状況もあって、こういう提言をされて、それに対して世の中の意見というものは、やるならちゃんと更生手続でやりなさい、そういう話であるということだと私は理解するわけです。他方、ディスクロージャーとかガバナンスということをきちんとやりなさい、それはまことにごもっともだと思うのですけれども、そういう意見を受けてこの第二部会として今後双方を進めていくときにどうやって進めていくのか。先ほどこれもご指摘がありましたけれども、更生手続の方については何もしない、ディスクロージャーやガバナンスについては、よりよいディスクロージャー、よりよいガバナンスと、それは言葉は非常にいいんですけれども、何をどうディスクローズしていくのかということの具体的なメッセージが出せない限りは、結局、放置というか、何もしないうちに最悪の事態が起き得ることを…、最悪というか、悪い事態が起きることを認めているんだと、そういうふうにとられかねないと思うのですね。

そうだとしますと、やはり今は明らかに平時ではないわけですから、そういう状況の中でどういうメッセージを出すかということは非常に重要であって、私は、一方で、ちょっと長くなって恐縮ですけれども、ディスクロージャーとガバナンスの改善ということについては、具体的に何をどうするんだということを言う必要があると思うとともに、他方、やはり更生手続で処理すべきものはすべきであって、先ほどの田中さんの言葉によれば、市場から退出すべき会社は退出すべきであるというメッセージを強く発する必要があるし、それを妨げるような何か仕組みとかインセンティブの構造が存在している場合には、それを取り除くような、それを環境整備と呼ぶのかどうかはともかく、それを取り除くような施策というか、策をするという必要があるように思います。

抽象的ですけれども、以上です。

○ 福井部会長

ありがとうございました。

ほかにございますか。

成川委員、いかがですか。

○ 成川委員

皆さんの意見を伺って、平時ではないと、こういう認識を持っております。と同時に、今は契約者を含め、また、保険業界で働いている人も大変不安の中にあって、そういう中で契約もふえない、あるいは解約もふえているという中で、やはりこれをどう解決していくのか、改善していくのかという、解決策を出していく必要があると思っていますが。そうすると、私、個人として、具体的にどうすればいいかと、こういうところまでは残念ながら案はないのですが、こういった意見をただ受けた形だけで、更生手続で個々の、こういう状況がますます悪くなる中で、確率的に破綻が起きるというのはやむなしというふうには判断はできない。私、個人としては、それを避けるような手立てを知恵を出して何か出せないかと、こういう気持ちでおります。

○ 福井部会長

あと、専門委員の方も含め、ご意見はございませんでしょうか。

岩原委員、いかがでしょうか。

○ 岩原委員

予定利率引き下げ問題を中心にこういうふうなたくさんのコメントをいただいたわけで、予定利率引き下げ問題については、山下委員ほか多くの委員がおっしゃったように、こういったパブリック・コメントを受けて中間報告で提案していたような方向は断念せざるを得ないという結論は私もそのように考えざるを得ないというふうに思います。

ただ、多くの委員がご指摘になったように、ではそれで何もやらないということでいいのかということはやはり非常に大きな問題で、まさに環境はもっと悪くなっているわけでありますので、本当の意味での危機管理を本当に考えていかなければいけないというふうに思っています。ワーキンググループなんかで申し上げた今後の見通しよりも現在は非常に厳しくなっているように思いますので、中期的には当面はそれほど心配はしなくてもいいかもしれないけれども、中期的な課題として制度面を考えなければいけないというふうにはワーキンググループあるいは部会で申し上げたんですけれども、必ずしもそうも言い切れない状況になる可能性が出てきておりますので、本当の意味での危機管理を考える必要があると思います。

パブリック・コメントで反対意見が大きい理由に、更生特例法の手続きがうまくいっているではないかと、確かにそのとおりでありまして、最近の東京生命等を見ても、契約者の負担をかなり少ない形で、かなりスムーズに処理ができるようにはなってきております。ただ、正直申しまして、これは東京生命クラスの規模の会社であったがゆえに何とかやれているということでありまして、今後、もっと大きい規模の破綻が起き、かつ、それが複数になったようなときに、更生特例法で本当にうまくやれるのかという大きい課題が残っているように思います。はっきり申しまして、今までありました破綻は中規模クラス以下の会社で起きているわけでありまして、より大きい規模の破綻等が起きた場合、果たして更生特例法のスキームでうまくいけるかというのは、実はまだ答えは出ていないというふうに思っております。そういった従来とは違ったレベルの問題が起きたときにも対処できるように、やはり審議会、金融庁で本当に真剣に考える必要があると思います。

そのためには、何人かの委員の方がご指摘になりましたように、いろいろなことを考える必要がありまして、例えば、さっきちょっと触れられた問題でもあるんですが、財政措置の問題もあると思います。現在、生命保険契約者保護機構はほとんど財布は空っぽになっておりまして、ごくわずかしか残っておりません。今後より大きい破綻が起き、かつ、それが保護機構に負担を求めざるを得ないようになったときに、果たして現在の体制でいいのか。財政資金についてはたしか期限が来てこれを更新するという問題が出ているわけですので、そこら辺は万全の措置をとる必要があるというふうに思いますし、さらに言えば、制度的にも、そういうレベルがもう1つ上の事態が起きたときに一体どういった手当てができるのかということを真剣に考えておく必要があると、細かいことは申し上げませんけれども、そういうふうに考えております。

あとは、パブリック・コメントを求めましたのは別に予定利率引き下げの問題だけではなくてそれ以外にもいろいろあり、かつ、拝見しておりますとなかなかいいご意見も多く入っているように思います。さっき、そういった予定利率引き下げ以外の問題についても予定利率引き下げを前提に検討しているのかというご発言もありましたけれども、予定利率引き下げを仮に今回やらないとしても、それ以外のところでできることはどんどん進めるべきだと、ディスクロージャーについて多くの方が指摘をされましたけれども、それ以外の面でも最初のところで言えば、標準責準の制度をさらによく見る、その他、神田委員がちょっとご指摘になりました、更生特例法の申立のインセンティブをいかに確保するかといった問題にもかかわってきますので、そこら辺もあります。それから、細かい問題で言えば、外国保険会社の協会などから、金融庁はもっとアクチュアリーとかあるいはリーガルの専門家をもっと備えろとかいったご意見が、これはまことにもっともなご意見で、そういった点は必ず実現していく必要があるように思いますし、外部アクチュアリーを活用するような制度を考えろといったご意見なども非常に参考になるところがありますので、この問題はとりあえず今回はこれ以上進めないにしても、それ以外のところは審議会としても全力でやっていく必要があるというふうに考えております。

以上です。

○ 福井部会長

ほかにございませんでしょうか。

私の感想としては、皆様方からきょうは大変率直なコメントをちょうだいしたと思っております。私自身も、かねてから申し上げておりますとおり、我々が提案した予定利率引き下げ案なるものが何か魔法の杖のようにこちらの岸から向こうの岸に渡る道具になるかというと、必ずしもそういう発想で物事を考えたわけではない。あくまでも生命保険会社自身の経営刷新努力、その強力な推進ということが大前提でしょうし、加えてディスクロージャーの変更、ガバナンスの強化、セーフティーネットの一層の整備、更には更生手続をもっとワーカブルなものにするというふうに、制度的な枠組みについてもこれを固めながら前進していく、これが基本であることは間違いのないところです。しかし、そうした生命保険会社の自助努力が進展していく過程で、最後に本当に川を渡るときの1つの道具立てにはなるかもしれない。要は、生命保険会社が自らの努力に信認を得なければ、この道具は持ち出せない、持ち出した途端にむしろ逆効果になる。それ故、これは非常に狭い道だと申し上げ続けてきたわけでして、そういう性格をよく見抜いたパブリック・コメントをいただいたと私は思っております。

今、皆様方から出されましたご意見をうかがっていても、この審議会の役割としては、この新しい道具を導入するか、あるいは引き続きこの道具抜きにいくか、いずれの場合であっても基本のコンセプトは変わっていないのであって、何としても保険会社は向こう岸へ渡って新しい保険機能を展開してもらわなければ困る、そのプロセスはどんなに苦しくてもみんなで協力してやっていきましょうということだろうと思います。あくまでも生命保険会社の経営努力を促す、そして道具建てはできる限り整えて粛々と進んでいくんだと。しかし、ついに川が渡れないという判断をしなければならない時期が来るのかどうか、来るとすればいつ来るのか。そのときに田中委員のおっしゃったような大きな線引き作業が要るのかどうか、こういう深刻な話は、とてもこのオープンな審議会の場での議論には馴染まないような気がいたします。しかし、そういう心配をもシェアしながら、この審議会としてはさらに真剣に議論をしていくべきではないか。かつ、また、契約条件変更以外の部分についてはパブリック・コメントでも相当アプリシエートされた部分もありますので、そうしたところはどんどん前倒しに実現していく、それが保険会社の自助努力をサポートすることになれば我々としてはより良く成果を上げていくことができるというふうに考える次第でございます。

したがいまして、今後は状況がますます悪くなるかもしれないという認識のもとに、この非常時をどう乗り切るかという意識をより強めながら我々は議論をしていかなければなりませんが、危機意識を伴うメッセージを中身なしに審議会が発信していきますとかえって世の中の危機感を増幅してしまうという難しい問題があります。したがって、危機意識を持つことは大切だが、下手にそれを発散させない、むしろ実体を整えながら前進する、加減の取り方の難しさはございますが、その辺りの認識をそろえながら我々は作業をしていかなければならないと思います。今後の進め方と申しますかこの審議会の方向性等につきまして、一応たたき台として事務局から紙を用意していただいておりますので、ちょっとごらんいただきまして、それについてまたコメントをちょうだいできればと思います。

○ 仲保険企画室長

今、福井部会長からご紹介がありました、事務局の方で部会長とも相談しながら用意させていただいた紙をちょっと読み上げさせていただきます。

生命保険をめぐる諸問題への対応(案)。

今後の進め方。

1.近年の生命保険市場の成熟化や我が国の社会経済環境の変化は、生命保険業に多くの課題を投げかけている。金融審議会金融分科会第二部会は、こうした生命保険をめぐる問題に適切に対応するためには、総合的な取組みが不可欠であるとの認識のもと、生命保険会社の財務基盤の充実、保険契約者からの信頼の向上、多様な保険商品開発の促進、監督手法の整備、保険契約の契約条件の変更等の問題について多角的な検討を行い、本年6月に中間報告をとりまとめた。

2.当部会は、その際同時に中間報告を公表し、8月末を目処として、その内容について、広く一般から意見を求めることとした。その結果、保険契約者、業界団体、各生命保険会社をはじめとして、各層から多くの意見が寄せられた。それらの意見は、中間報告でとり上げられた全ての事項にわたっており、このことは生命保険業が今日抱える諸課題に対する関心の高さをうかがわせる。

3.このような中にあって、特に多くの意見が寄せられたのは、保険会社・保険契約者の意思決定により生命保険の既契約の条件変更を行う制度の整備に関してである。この制度の導入問題に対する意見としては、賛否が併存しているものの、反対論が多数を占めた。一般の保険契約者等は、各生命保険会社の経営努力の不足等を主たる理由に、その大多数が制度の導入に反対の意思表示をし、また、具体的にこの制度を用いることとなる生命保険会社も、そのほとんどが反対の立場を表明している。

4.中間報告でも指摘したように、このような制度の導入については、生命保険会社による自助努力の途の一つを開くものとして、その基本的な意義は否定されるべきものではないと考えられる。しかし、この制度は、国民・保険契約者の理解の上、社会的な認知が十分に得られてこそ初めてその導入が可能となるものであり、加えて、生命保険会社においてあらゆる経営努力が払われた上で用いられるべきものであって、これらの点については中間報告でも述べているところである。このような留意点及び上述の意見募集結果を踏まえれば、現時点では制度導入の前提となる環境が整っていないと判断せざるを得ず、まず先に取り組むべき多くの事項が存在していると考えられる。

5.そのような事項として、各生命保険会社がそれぞれに最適の経営戦略を選択し、経営刷新の道筋を提示すること、また、より具体的に、財務基盤の充実、経営合理化の推進、ディスクロージャーの改善、ガバナンスの強化等の対応に努力することが求められている。これらの事項は、もともと中間報告が重要課題としてとり上げ、その対応の方向性を示しているものであり、また、寄せられた多くの意見がその取組みへの期待を示しているものである。

6.以上を踏まえ、当部会としては、各保険会社が、保険契約者等の付託に応えつつ、生命保険をめぐる問題に的確に対応していくため、これらの事項に真摯に取り組んでいくことを期待するとともに、そのための制度整備として、行政当局が中間報告に盛り込まれた具体的な事項について、必要な検討を行い、適切な対応を図っていくことを期待したい。

○ 福井部会長

ありがとうございました。

いかがでしょうか。対応方針としては、一応、外にも正式に公表しながらやっていくことになります。その点も踏まえてコメントをちょうだいできればと思います。

○ 若林委員

ちょっと感想めいたもので恐縮でございますけれども、これを読ませていただくと、確かにこういうことだと私も感じるわけでございますけれども、全体としては、各生命保険会社にボールを投げるという感じに読み取れるのかなと。少し保険業界全体としても、やはり全体がやってきた中での今後の取り組みというのもあっていいのかなと、そこは全く書かれていないような気がしたんですが、そういったことは入る余地はないということでしょうか。

○ 佐藤審議官

このたたき台を用意する作業の中で、きょうのご議論の中にまさにございましたように、各生命保険会社がしっかりとした経営刷新等に取り組んでいくということがまず基本にあるという認識がありまして、それが中心に書かれているということでございますけれども、いわば共通的な枠組みというようなことは当然出てくると思いますし、そのことが6番の最後の方にございますように、行政の方で制度整備をしていくという仕事という中にも含まれているというふうに考えておりまして、業界全体としての取り組みというものを無視して、あるいは排除しているというものでは全くございません。

○ 若林委員

わかりました。ただちょっと読んだ感じでそこの部分が、行政といいますとどちらかというと国に期待する部分というふうに理解したものですから、ちょっとお聞きした次第でございます。

○ 福井部会長

ほかにございませんですか。

○ 高橋委員

今後の進め方ということでございますので、この中間報告に盛り込まれた具体的な事項について必要な検討というこの6つの事項だけでなくていいのではありませんか。例えばセーフティネットの財政措置の問題などはもう新聞に一部報道されていることもございますので、一般の人はいつ検討が開始されるのかに非常に関心を持っているわけでございます。更生特例法の見直しもパブリック・コメントにかなり寄せられていますので、パブリック・コメントも踏まえて、もう少し明確にメッセージを発信した方がよろしいかと思います。

以上です。

○ 福井部会長

おっしゃる意味は、中間報告に盛り込まれていない事項についても項目を指摘せよと。

○ 原口総務企画局長

確かに今いろいろ今後の課題というのはあると思いますが、ややこのペーパー自身が、中間報告をまとめていただいて、それに対する対応ということでご議論いただいたそのまとめという気持ちで書いております。確かにこういう状況なので、それを越えて何か新しくやるべきではないかということでございますが、これは、例えば財政措置1つをとっても、多少そういうご意見はあるにしても、そういうことを今すぐ審議会の議題とするかどうかということについては、さっき部会長がおっしゃったように、かえって緊急に今まで議論していないことを早速始めると、そんなに悪いのかということになってもあれでございますし、今後の審議会の運び方についてはまた部会長とよくご相談をしたいと思いますが。

とりあえずこの紙の性格として、そこはもう少しわかるようにということはあるかもしれませんが、一応中間報告に盛られたことについてパブリック・コメントをいただいて、それのとりあえず区切りをつけるということで、それ以上にいろいろと今後どうするんだというご議論になるとそれはまた今の時点でその影響等も考えなければいけないということもあるかと思いますので、少しそこはちょっと性格を切り離した上で、とりあえずこの区切りのものとして我々は考えたということでご説明をさせていただきたいと思います。これをこう書いたから今後はそういう議論をしないとか、あるいは、ということを決めてしまったということではないのですが、ちょっと今後の審議会の取り運びについてはまた別途ご相談をしながらやっていきたいというふうに考えております。

○ 福井部会長

高橋さんのおっしゃることは、私はよくわかります。ただし、具体的な項目については、ではこの審議会でこれをやりましょうというのはもう少し議論があってからの方がいいかなと思いますので、文章はとりあえずこれでご勘弁いただいて、記者会見等では、何もこの審議会というのは今までの中間報告の枠内でだけ方向性を持っているわけではないというふうな感じで私は対応させていただこうと思います。

ほかにございませんでしょうか。

もしございませんようでございましたら、一応この案をもちまして、この部会におけるこの問題に対する今後の方向づけとさせていただきたいというふうに思いますが、よろしゅうございますでしょうか。

ありがとうございました。

それでは、このお示ししましたたたき台が今後の方向性ということで正式なものにさせていただきますので、これを公表させていただきたいというふうに思います。その点についてもよろしゅうございますでしょうか。

ありがとうございました。

それでは、ほかにご意見がございませんようでしたら、さらに事務局の方からこの方向性についてコメントがもしございましたら、ひとつよろしくお願いいたします。

○ 原口総務企画局長

それでは、ちょっと遅れて参りましたが、最後にごあいさつをさせていただきたいと思います。

総務企画局長の原口でございます。

当部会におかれましては、本年の3月の発足以来、諸般の問題について熱心なご議論を積み重ねていただきまして、本当にありがとうございました。6月26日にご報告をいただきました第1の「銀行の株式保有に関する報告」につきましては、今、法律案が最終段階になっておりまして、次の臨時国会の冒頭に提出するよう準備を進めているところでございます。また、今活発なご意見をいただきました「生命保険をめぐる総合的な検討」につきましては、今、方向性を示していただいたように、各生命保険会社あるいは業界、行政、いろいろとやっていかなければいけないことを指摘していただきました。できるだけ早急に、こういう状況でもございますので、その具体化を図り、また、ご報告をしていく、あるいはご相談をしていくという所存でございます。

また、この問題にとどまらず、今いろいろご指摘をいただいた点、これはやはり昨今の環境の中で、行政当局としても常に念頭に置きながらいろいろな取り組みをしていかなければいけないものでございますし、その状況等、どういう対応をしていくかという場合に、また審議会とどういう連携をとっていただく、あるいはご意見を伺っていくという必要性も高まってくると思います。運び方についてはまた部会長とよくご相談しながらやっていきたいと思いますので、ひとつよろしくお願いをしたいと思います。

最後に、改めて、皆様方のご参加、ご尽力に対して、心から感謝を申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。

○ 福井部会長

局長、どうもありがとうございました。

それでは、本日の審議はこれをもちまして終了させていただきます。

なお、この後、午後の2時半から私が記者会見をさせていただきまして、きょうの部会の模様につきましてお話しをさせていただく予定でおります。

最後になりましたけれども、事務局の方でさらに追加的なご連絡事項がございましたらどうぞ。

○ 仲保険企画室長

連絡事項ということでございますが、第二部会の今後の日程等につきましては、また福井部会長ともご相談の上、改めてご連絡させていただきたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。

なお、本日お配りしました資料のうち「会議終了後返却」と表示があります資料につきましては、今の方向づけの紙も含めてでございますが、お帰りの際テーブルの上にお残しいただきますようお願いいたします。

事務局からは以上でございます。

○ 福井部会長

それでは、皆様、ありがとうございました。

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