金融審議会金融分科会第二部会会合(第10回)議事録

平成14年3月19日
金融庁総務企画局

○ 福井部会長

大変お待たせをいたしました。今日は風邪をひいておりまして、声が悪いかと思いますがよろしくお願いします。

大変お忙しいところをお集まりいただきまして、本当にありがとうございます。今日の議事でございますけれども、最初に銀行等における保険商品の窓口販売、この点につきまして事務局よりご説明を賜りたいと思っております。その後、皆様方からご意見をいただきたいということでございます。

続きまして、この審議会の審議事項ではございませんけれども、今、通常国会に金融庁より提出しておられます法律案のその内容につきまして、事務局よりご説明を頂戴したいと考えております。

今日の会議は公開とさせていただいております。また専門委員の松浦委員にご出席をお願いしておりましたけれども、ご都合がつかずご出席になれません。今回は松浦委員の代理といたしまして前川明治生命調査部長にご出席をいただいております。

それでは、早速でございますけれども第一の議題、「銀行等における保険商品の窓口販売について」に移りたいと思います。この件につきましては先月の2月28日、保険の基本問題に関するワーキンググループを開催して、検討の考え方についてご議論を頂戴いたしました。その議論を踏まえて事務局においてさらに検討が重ねられたと伺っております。今日はその検討結果につきまして事務局からご説明を頂戴したいと思います。

それでは、よろしくお願い申し上げます。

○ 仲保険企画室長

それでは、銀行等における保険商品の窓口販売につきまして、検討をいろいろさせていただきましたので、その検討結果をご説明させていただきたいと思います。お手元の第二部会10-1という資料をごらんいただきたいと思います。

銀行等におきます保険商品の窓口販売は次の商品を対象にしまして昨年の4月1日から開始されたところでございます。商品としましては住宅ローンに関連しました3つの商品として長期火災保険、債務返済支援保険、それから生命保険の商品ですが信用生命保険、それと海外旅行傷害保険、これらの品目で昨年4月から開始されております。なお、注にありますように住宅ローン関連の信用生命保険は窓口販売を行う銀行等の子会社、兄弟会社である保険会社の商品に限定されております。

この解禁を決めました際には対象保険商品の拡大等について、実施状況を見ながらさらに検討を行ない、平成13年度中に改めて結論を得ることとされていたところでございます。これを踏まえまして昨月28日に保険の基本問題に関するワーキンググループにおきまして、この問題についていろいろご議論をいただいております。その場でどういったご議論があったかを紹介させていただきたいと思います。

まず、この問題につきまして弊害ということで、いろいろなご意見がございまして、まず銀行の影響力というものが銀行には与信決済機能があるので、他の事業者とは異なり影響力がある。特に中小企業などに対しては資金繰りに絡んで銀行の影響力があるのではないか。圧力を銀行からかけられた場合、普通泣き寝入り状態になってしまうというような影響力行使の特質がある。例えば当行と取引するなら保険も任せてほしいと言われた例があったというようなご紹介がございました。

こういった影響力が行使された場合に、契約者保護上想定される問題としましてご指摘をいただいている点は、保険商品については再加入の困難性というのが存在し、あるいはニーズが顕在化していないという特殊性がある。こういったことから契約者保護が重要である。

それから、自由な商品選択が狭められる恐れがあるのではないか。あるいは、契約者保護上の問題としてアフターケアが不十分になるのではないか。こういったご指摘がございました。

他方でこの問題についてより積極的に考えていくべきではないかという立場からは、これまでは弊害の可能性を前提にして論じてきましたが、いつまでも弊害の恐れがあるだけで行わないというのはどうだろうか。実際に弊害が起こったならば個別に対応していくべきではないかというご意見がございました。

あるいは、積極的な議論としては窓販は全面解禁すべきではないか。ただし、消費者のほうに向いた枠組みを設けるべきである。窓販を商品限定的に行うのは疑問である。だれが何を販売するかは市場が決めることであり、消費者保護はそれに従って行うべきという議論がございます。

あるいは行政が線引きをするのではなく、抜け駆けを促進するようなことを考えないといけない。保険契約者保護の法制を整えて、新しい動きがどんどん出てくるような仕組みを考えるべきではないかというご意見もございました。

また、すべての商品を解禁するという前提で、スケジュール感を持って解禁してはどうかというご意見もございました。

やや中立的な観点からのご意見としましては、あるいは慎重論としましては銀行が販売する保険商品につきましては消費者保護が確保され、かつ競争条件の公平性が確保される商品に限定して慎重に検討すべきという意見がございまして、現在の保険業法 275条に銀行の窓口販売の根拠規定がございますが、そこには保険契約者保護に欠ける恐れが少ない範囲で範囲で考えていくという考え方があるので、それに従って検討してはどうかといったご意見がございました。

進め方につきましては、契約者保護につきましてきちんとした弊害防止措置を講ずるべきではないかという観点のご議論がいくつかございまして、一つは契約者保護は商品を限定することにより行うのではなく、販売方法に対する規制、行為規制により行われるべきではないか。あるいは、現行の保険業法の行為規制で十分だろうか。どの程度の行為規制をかけるべきかを検討すべきではないか。

また、より広い視野から個別業界ごとの規制ではなく、横断的な規制をすべき。トラブルを横断的に処理するためのルールが必要である。最近、銀行による保険商品の販売を通じてトラブルが発生した場合には、銀行から保険業界に依存するような取り決めがなされたと聞いた。これではトラブルが起きたときに保険会社、銀行、契約者の三者でテーブルに着くことはなくなる。生保・損保話し合いの場に銀行を呼び出せるのかといったご意見がございました。

またアメリカの事例をご紹介された例がありまして、アメリカも規制緩和されておりますが、例えば保険業務に携わる銀行は適切に経営がなされていなければならないこと。抱き合わせ販売、優越的地位の乱用の禁止。リスクの説明をきちんと行うこと。銀行商品と保険商品の販売窓口の分離。非公開情報に対する規制等がなされているというアメリカの例のご紹介がございます。

また子会社、兄弟会社限定につきましては銀行のような極めて影響力の強い販売チャネルは引受リスクを顧みずに保険販売を行う恐れが依然として残っており、引受保険会社の経営の健全性を脅かす恐れがあるという意見。それから、子会社、兄弟会社限定というものによるのではなく、何らかの別途の措置を設けるべき。販売だけを行う銀行があっても消費者は歓迎するのではないかといったようなご意見がございました。

以上、ワーキンググループの意見をざっとご紹介させていただきました。こういったワーキンググループのご議論を踏まえまして、その後、私どもで検討させていただきました結果をお手元の第二部会10-1の紙の2.以下に書かせていただいております。今般、検討に当たりましては利用者利便の向上、販売チャネル間の競争の促進、保険契約者保護等の観点から検討を行ったところでございますが、以下のとおり見直すこととし、今後パブリックコメント等の手続きを経て所要の規定の整備を行いたいと考えております。

(1)には今回、新たに窓口販売の対象商品に加えるものを書いております。個人年金保険、これは定額、変額共にです。それと財形保険。ここまでが生命保険会社が現在取り扱っておられるものであります。それから、年金払い積立傷害保険。それから財形傷害保険、こちらの二つは損保会社が現在取り扱っておられるものであります。こういった商品について新たに銀行の窓口販売の対象にしたい。

併せて(2)にありますように、現在、銀行等が窓販できる住宅ローン関連の長期火災保険、債務返済支援保険、信用生命保険につきましては対象物件が専用住宅であるものに限られておりますが、これに店舗併用住宅を加えております。

それから、1枚お開きいただきまして、現在住宅ローン関連の信用生命保険は窓口販売を行う銀行等の子会社、兄弟会社である保険会社の商品に限定されておりますが、この規制を撤廃したい。

それから、ワーキングで行為規制などについてご議論がありましたことを踏まえまして、3にありますように今回の規制緩和に合わせまして、以下のような弊害防止措置等を充実させたいと考えております。一つは銀行等が保険商品を販売する際に保険商品を購入しないことが他の取引に影響を及ぼさないことについて顧客への説明がなされるための措置を講じる。

2つ目と3つ目は個別商品に着目した弊害防止措置でございますが、銀行等が変額個人年金保険を販売する際に融資を受けて保険料に充てた場合、当該商品が元本割れをすると借入金が残ることについて顧客への説明がなされるための措置を講じる。

3つ目は、銀行等が住宅ローン関連の信用生命保険を販売する際に住宅ローンの返済に困ったときの相談窓口、銀行の内部と外部の相談窓口について顧客への説明がなされるための措置を講じる。

4つ目といたしまして、銀行等の内部でマニュアルを策定して研修を実施するとともに、内部検査を行うなど適切な募集体制を整えることを求める。

5つ目としましては、銀行等による保険商品の窓口販売の際に発生したトラブルについて、保険業界に設けられた紛争処理の場で解決を図る場合には募集を行った銀行等にもその場への参加が義務づけられるようにするということでございます。

これらの措置の実施時期でございますが、4.にありますように平成14年10月1日からの実施を予定しております。これは今回、生命保険商品については実質初めて取り扱いが可能になるということで、販売を行う銀行の方に生命保険協会の資格試験を受けて資格を取得した上で対応していただく必要があるということや、コンピュータシステムへの対応に要する時間などを勘案して14年10月1日としたものでございます。

今回、対象商品を新たに加えるにあたりましては銀行業との親近性ということで、貯蓄性、投資性の強いものを選んでまいっておりますが、これは利用者利便という観点からは銀行がいろいろ取り扱っております金融商品と併せて売られれば、利用者にとっては選択肢が拡大するというメリットがあることから選んでいるものでございますけれど、残された商品というのがございまして、今回対象にならなかった商品というのは保障性が強いもので、保険契約者保護上の問題を見極める必要があるだろうということで、5.にありますように対象商品のさらなる拡大につきましては、平成14年10月1日以降の実施状況を見ながら引き続き検討を行ない、平成15年度中に結論を得ることとするということで、15年度中にさらに結論を得るよう検討を続けていきたいというふうに考えております。

簡単でございますが、以上私からの報告とさせていただきます。

○ 福井部会長

ありがとうございました。それでは、皆さんからご意見を頂戴したいと思います。議長の声が大変悪いのですけれども、どうぞご遠慮なくご発言をお願いいたします。

○ 羽田委員

トップバッターとして3つほど申し上げたいと思います。今回、いくつか新たに解禁するということですけれども、これは非常に好ましい前向きでよろしいかと思うんですが、これはいろいろな機会に私どもも申し上げておりますが、確かにいろいろな措置は講じなければいけないと思いますけれども、できる限り早急にいろいろな商品が扱えるように持って行くべきだろうと思っております。そういう中でここにもありますけれども、平成15年となっておりますけれども、仮に平成15年末にまた2年かけて、3年かけてということになりますと、さらにまた時間が延びるわけですから、できる限り前倒しにいろいろな商品が扱えるようにすべきだろうと思っております。

それから2番目ですけれども、もしステップ・バイ・ステップということであれば、これも前倒しにしていただくと同時にその概要のスケジュールと言うのでしょうか、見込みというようなものを前広にお話しいただければ非常に助かると思います。それが2番目ですけれども。

それから、3番目ですが、今回も個人年金保険等々個別の商品をだんだんに解禁という場合に、いわゆる一般名称というのでしょうか、その商品について個別の名称ではなくて、一般的な名称で指定していただければと思います。いろいろな保険会社がいろいろな商品を出しております。そういう中で個別名称に近いものですと、私が思うに限定的に解釈ということもあり得ると思います。例えばの例ですが、個人年金保険であれば個人年金に関わる保険というような広く解釈できるというんですか、その趣旨に合ったような商品であれば該当するというような、そういう方向で個別的な非常に細かいことですけれどもお願いできればと思います。以上、3つです。

○ 福井部会長

それでは、ほかにどうぞ。

○ 松浦委員(代理・前川)

今、事務局のほうからのご説明にもございましたけれども、銀行が保険販売をできる場合としまして銀行等が持っておりますところの強い影響力や信用力といった特殊性、あるいは生命保険商品の再加入が非常に難しいという、再加入の困難性や、あるいは危険選択の重要性、こういった特性があること、これらによって生じるところの弊害発生の蓋然性が高いことに鑑みまして、保険業法では保険契約者等保護に欠ける恐れが少ないことを条件としている規定があると理解しております。今回の販売対象商品の拡大につきましては、こういった観点から慎重に検討していただいた上での結論と認識しておりまして、そういう意味から申し上げますと、今回の解禁範囲が最大限のところではないかなと考えている次第でございます。

○ 福井部会長

ありがとうございました。どうぞ。

○ 高橋委員

私は消費者保護をきちんとした上での全面解禁ということを主張してきた者なんですが、今回、なぜ全面解禁でなく部分解禁なのか。そして、今列挙されている商品はよくて、ほかの商品はなぜだめなのかということについて、一般の方にわかりやすいご説明はいただけていないように思います。

総合規制改革会議の第1次答申では全面的な解禁を推し進めるべきであるとありまして、答申を最大限に尊重して、所要の施策に速やかに取り組むとの閣議決定がなされているわけですが、それに沿った方向性で所要の施策がとられたのかなというと、私はそうでないように思います。それをとるということはあくまでも消費者保護という立場に立たなければいけないと思います。まずそこのところをお伺いしてから個別の商品に関してお伺いしたいと思います。

○ 福井部会長

では、もう少しご意見を伺いましょう。

○ 原委員

ワーキングに出席できなかったので、冒頭ワーキングでの議論を紹介していただきまして、大変参考になりました。すごくたくさんの意見が出されたのだということを改めて感じまして、事前に少し用意もしてきたのですが、今のお話も聞きながら意見と質問という形になると思います。

まず銀行で保険商品を販売するという、この流れについては私自身は基本的に賛成をしております。それは一つは販売方法は多様化していくと思うからです。いま生命保険は基本的には営業職員を通じて販売をされる形態となっていますけれども、インターネットの登場とか、外資系企業が入ってきたりという形で今までの販売方法というところに固執した形というのは、これからの世の中というのでしょうか、多様化の中では少し違和感があるというか、消費者はいろいろな販売方法から選んでいきたいと思っております。

それから、今回、商品限定という形で新たに積み重ねる形でおやりになりますけれども、先ほどご意見が出たように一般名称でやってほしいというご意見がありました。実際に今の保険商品そのものも多様化していて、こういうふうに保障性の強いものと貯蓄性の強いものというふうに分けられても、けっこうリンクするような形の商品も出てきて、本当にうまく切り分けることができるのだろうかという点も疑問に思っております。

私自身としては流れとしてはできるだけ早い段階での全面解禁というところに行くのだろうと思っております。それは別に銀行だけで販売してほしいということではなくて、全体としてもうちょっといろいろな販売方法があっていいのだろうということが消費者側の意見です。

ただ、ご意見の中にも出ていましたように、銀行の力が強いための圧力販売の話ですとか、説明が不十分なために特に変額保険ですけれども、融資が絡んだ形でのトラブルということは過去にも経験しておりますので、そういうことが起こらないための施策というのは考えていくべきだろうと思っております。

ただ、それは保険を銀行で扱わないということで解決するのではなくて、高橋委員もおっしゃられているように、それは金融に関わる消費者保護政策全体の中で考えていくべきことではないかと思っております。ワーキングの議論を踏まえて、今回も具体的な措置ということがかなり書き込まれたとは見ているのですが、措置を講じるということが具体的には何を指すのかということのご説明をいただきたいということ、含めて現在の金融商品販売法に確かに重要事項に関わる、特にリスクですけれども、それに関わる説明義務を果たさなければいけないということは義務規定で入ってはいますけれども、それが本当に果たされるのかという点では非常に懸念を持っております。また、実際に金融商品販売法が施行されたときに、法律の条文に「勧誘方針の策定、公表」というのがあったものですから、各銀行を回って実際に勧誘方針がどのように策定され、それが銀行員にどう徹底されているのかというのを私ども消費者グループで調査をしたのですが、非常に惨憺たる結果で全然徹底していないということがありましたので、その意味では金融商品販売法をもう少し膨らませた金融サービス法という形で、きちんと仕組みをつくるべきではないかと思います。

それから、トラブルについては今回の措置のところにも3.のマル4のところで移送することで責任を逃れたことにはしないというふうには書かれているのですが、このADRの議論も金融商品トラブル連絡協議会のほうで議論していますけとれども膠着状態みたいなところがあって、モデルはできるけれども、どれだけ実効性が上がるかということも思っておりますので、これも重要事項の説明義務と併せて金融サービス法というところでの議論にくっつけていただきたいと思います。

それからもう一つ、この中には出ていないのですが、個人信用情報保護の関連も気になっております。銀行はかなり個人信用情報を持っておりますので、それと保険販売が結びつくということも考えられますので、そこもある程度の措置ということが考えられるべきではないかというふうに思っておりまして、それは追加として申し上げたいと思います。

意見と質問とが混在しておりますけれども、取り上げていただければ、また私のほうでも補足の質問ということでお願いしたいと思います。

○ 福井部会長

ありがとうございました。ここでやはり行政当局からお答えいただきたいと思います。いままでのご意見で非常に重要な論点が出ていると思います。一つは消費者にサービスを提供する側から見て、商品設計の自由性ということがきちんと考えられなければならないということだと思います。

第二に、消費者のほうから見て、消費者ニーズというのはこういう時代環境の中では早く見出されて満たされるということが非常に大事であり、結果的に見出されても時間がかかり過ぎるということでは問題ではないか。多分そういうご指摘だろうと思います。

三つ目は消費者保護政策と金融機関業務の規制との関係で、これをわかりやすく言えば、消費者保護と業際問題は別問題として取扱うべきではないか。多分、そういうご指摘だろうと思います。

それともう一つは個人信用情報の話です。非常に重要な論点が四つ出されたと思いますので、とりあえずここでひととおり当局のお考えを出していただきたいと思います。

○ 仲保険企画室長

まず個別名称でなく一般名称という形で対象商品を規定して、その中でいろいろな商品が開発されるような自由度を確保すべきではないかというご議論がございましたが、この点については今後は内閣府令を書いていかなければいけないのですが、そういった際にできる限り工夫できないかということで検討してまいりたいと思っております。

それから、対象にならなかったものについてはなぜ対象になっていないのかということでございますが、今回新たに追加したもの、それからこれまで認められていたものというのは、基本的に銀行業務等の親近性という観点で考えてきたものでありまして、これまで認めてきているものについては銀行が行っている融資業務などと一体として取り扱うことが、利用者の側から見て自然なものであるといったようなものかと思います。

例えば住宅ローンを借りられた際に長期の火災保険に併せて入られるというのはごく自然なこととして受け止められておりまして、それを銀行の窓口で取り扱うというのが、ワンストップという観点から利用者のニーズに合致するであろうということであろうと思います。

また、今回対象にするものにつきましては、先ほどもちょっと申し上げましたが、やはり銀行業務との親近性というのが認められておりまして、貯蓄性あるいは投資性が明確なものを今回対象にしております。これはやはり銀行ではすでに預金商品、それから国債、投資信託など、各種の金融商品を取り扱っておりまして、顧客の資産運用の多様なニーズにこたえるといううえで貯蓄性、投資性の明確な保険商品が新たに対象に加わるというのは利用者利便の観点からも非常に利便性の向上ということで好ましいことではないかということを考えたことによります。

これらの二つの類型でございますが、いずれも銀行の業務との親近性があって、片方は住宅ローンを受けて同時に保険に入るということがごく自然なものということですので、そういった意味で銀行の影響力の問題が生じにくいものではないかと考えられます。

また、今回の対象商品については貯蓄性、投資性が高いものということで、選択肢が利用者の側にとってみれば広がるわけですので、これも銀行の影響力の下で販売が行われる恐れというのが比較的少ないのではないかということを念頭に置いて決めております。

したがって、今回残された商品というのは保障性というものが比較的強いもので、銀行の業務との一体性、融資との一体性などが認めにくいものとなっておりまして、こういったものについてはやはり銀行の影響力が及ぶ形で無理に入らされるという恐れがなくはないだろう。無理に入らされた場合には、ある種一定の再加入が困難であるとか、あるいはモラルリスクを助長する恐れがあるといったような弊害もないわけではないだろうということで、それらについては今回までに対象になった商品を銀行がどのような形で売られて、どういった弊害が現実に生じるのか。あるいは今回、新たに設けました弊害防止措置というのがどのように有効に機能するのかといったような観点を踏まえて検討すべきではないかということで残された商品というのがあるわけでございます。

あと、原委員のほうからいろいろ措置を講じるとありますが、何を指すのかというのがございます。これは基本的には内閣府令ですとか、あるいはガイドラインという形で規定していきたいと思っておりまして、顧客への説明がなされるための措置については基本的には書面を持って説明するという形で考えております。必要なものについては書面での説明をきちんと受けたという顧客側の確認を求めて、場合によっては顧客の印鑑あるいはサインによってそういう説明を受けたということを確認するようなことで説明義務がきちんと果たされていくことを確保したいと考えております。

それから、個人信用情報の関係がございましたが、すでに去年の4月から銀行の保険商品の窓販を解禁しました際に、銀行の保険商品を販売する部門とその他の部門との間の情報の遮断措置を講ずることを求めております。これによりまして一定程度個人信用情報の保護というのは図られるものと考えております。以上でございます。

○ 高橋委員

今回、商品選定の理由として銀行商品との親近性ということから貯蓄性、投資性のあるものを選んだということに対して異論がございます。例えば、銀行の年金保険の販売を考えてみたいと思います。これは一つの保険会社専属ではなくて、複数社の商品が取り扱われることが考えられると思います。

それから、類似商品の投資信託も同じ店舗の中で取り扱われます。それから、銀行の預金商品、それから信託の商品、老後の資産運用と言ってもいろいろな選択肢が銀行の中に登場するわけなのですけれども、消費の立場からしますと、その中でどれがいいのかということに関して適切なアドバイスが得られるかということが一番重要なことだと思います。

その販売側の銀行にとってフィーの高い商品の推奨があってはいけないわけで、イギリスなどでは自ら取り扱える商品の範囲と販売手数料を開示して、なおかつなぜそれをあなたに勧めるかを明確にするベストアドバイスルールを業者に課しているわけです。ですから、私が消費者保護と申し上げましたのは、銀行に販売していただくのはけっこうですけれども、そういう売る側の責任ということをきちんとしていただきたいということです。

変額個人年金につきましてはもうすでに証券会社とか保険会社の直販とかで販売されてございますが、販売時の説明としては課税の繰り延べ効果とか、見なし相続財産による評価減とか、税制上のことをいろいろ言ったりしておりますけれども、そういう点では投信がいいのか、年金がいいのか、その一人ひとりによって違いますし、今後の税制が変わることによっても違ってくるものですから、その辺をどういう見極めをしたのかという、その売る側に対する規制といいますか、ルールというものはきちんと課していただきたいというふうに思います。

保険業法では 299条で、ブローカーに対してはベストアドバイス義務を課しているわけですが、銀行がいろいろな商品を扱うことに対しても当然、課すべきでしょう。これは保険業法でどうこうする問題ではないと思いますので、横断的な法規制というのが欠かせない段階に来ているのではないかということを私は申し上げてまいりました。

個人年金保険の中でも特に変額個人年金の問題を取り上げさせていただきたいのですが、ワーキングでも申し上げましたように、これは投資信託と性格が類似しておりまして、昨年あたりから類似していることで証券会社から販売されて、かなり活発化しているところですが、変額保険を認可した昭和60年の保険審の答申にすでにこのようにあるんです。変額保険というのは従来の保険商品とは多くの点で性格を異にする面を有することを考慮すると、消費者との間においてトラブルが生ずる恐れがなくはない。また、変額保険に関する資産運用規制、ディスクロージャー、募集体制については証券投資信託における諸規制との関係にも留意することが適当であると考える。実は変額年金も変額保険と同時期に解禁されたわけですが、同様の検討をしなければいけないと。アメリカではすでに20年もいろいろ検討が行われて、保険会社間での争いもあり、SECとの係争もあり、それで有価証券という取り扱いの下で証券諸法に従うということで解禁されたものを、日本の場合にはそれをしないうちに外圧で入ってきた商品を保険業法の中に当てはめて販売してしまったというわけですよね。それが一連の変額保険事件にもつながっていったわけなんですけれども、早く証券業法、諸法を適用されていたら、あんな事件は起こらなかったというふうには言えるわけです。ですから、銀行で変額年金を販売するということはかなりの拡大を見込んで銀行の経営安定もあれば、証券市場の活性化もあれば、保険業の利益に資するものあると思いますが、そこで消費者が犠牲になってはいけないと思うんです。

ですから、この解禁に当たっては慎重に消費者保護の立場から検討した上で解禁をしていただきたいと思っております。以上です。

○ 福井部会長

ただいまのご意見もなかなか重要な論点を含んでいると思います。要するに、金融機関の側で商品を見繕って提供するということではなくて、マーケッティングから入って消費者のニーズを探って、どちらかというとカスタマイズされたファイナンシャルアドバイスとかファイナンシャルサービスが提供されることを求めているのではないか。そこに銀行なり保険会社がサービスをしていくとすれば、得意なこともあれば不得意なこともある。あるいはすでに用意ができていることもあれば、できていないこともある。つまり、サービスする側でも新しい分野にチャレンジしていく場面が増えているわけであるから、消費者保護のためにはきちんとした横一線のルールは必要だろうけれど、商品を画一的にする必要はない。多分、そういうご意見だと思います。非常に本質的な問題を含んでおりますので、もう一度当局のご意見を出してみていただきたいと思います。

○ 仲保険企画室長

いろいろな論点がございましたが、まず変額個人年金保険を販売する場合に、現在どのような説明義務が販売する側に課されているかという点をご紹介いたします。まず、保険業法施行規則の53条に特別勘定で経理する商品について、説明義務を課した部分がございます。その53条の1号というところに書面を交付してまず説明を行うということが課されておりまして、説明の内容としましては特別勘定に属する資産の種類及びその評価の方法。

それから、次が重要な点でございますが、資産の運用方針、どういった方針で運用するのか。それから、資産の運用実績により将来における保険金等の額が不確実であるといった点をまずきちんと説明するというふうにされております。

併せて同じく施行規則の11条ですが、事業方法書の審査基準におきまして、この書面については書面を受領した旨の署名または押印を得る措置が明確に定められていることということで、その説明を受けた旨をきちんと確認することになっております。このような説明義務がありまして、これは変額保険の問題などいろいろな問題が生じたことを踏まえてつくったものでございますが、基本的に個人変額年金につきましてもこういった説明義務をきちんと果たしていただくことにより、対応可能な部分というのがあるのではないかと思っております。

これを超えまして、銀行がいろいろ窓口で扱っておられます商品について、なぜこれを推奨するのかということの理由の開示ですとか、そういったベストアドバイスの義務を課すべきかどうかです。確かに保険仲立人、ブローカーについてはこういったベストアドバイス義務が現在課されておりますが、そこまで保険の募集一般につきまして課す必要は現在のところはないであろうというのが今のところの保険業法の中の考え方ではないかと思います。

ただ、これはだからと言ってやらなくてもいいという話ではなくて、むしろいろいろな商品を扱われて、お客さんに安心して買っていただくように勧める理由だとか、そういったものをきちんと説明するというのは窓口で販売する銀行の責任でもあります。それから、保険募集人全般についてもそういった責任があるんだということで、その責任を怠った場合には、やはり顧客が離れていくということになるのではないかと考えております。

○ 高橋委員

関連なので、再度申し訳ありませんけれども、質問と意見を申し上げます。変額保険に関する措置というのは、旧来の変額保険に関する措置でございまして、これから売ろうとしております変額個人年金、証券会社ではすでに売っておりますけれども、これは複数のファンド乗り換え、いわゆるスイッチングというタイプの商品が多くなっています。十数本のファンドを乗り換えるようなものも出てきているのですが、発売当初は3本とか5本であったファンドがどんどん増えてもいるわけですよね。

そうしますと、消費者としては最初の説明とその後の商品性というのはかなり変わるということが考えられるわけです。私はこのあたりを危惧しております。販売時になかったハイリスクのファンドが契約後に選択肢に加えられていく。それをだれが説明するのか、こういうような危険性といいますか、消費者からしますと不安のある商品なんです。

そうしますと、当然ながら販売時の説明だけではなくて、販売業者とか保険会社にアフターケアの手当てまで義務づけていただかないと、せっかく販売しても消費者側の原さんとか私が「あれは危ない商品ですよ」と言ったら、これはもう売れなくなるわけで、非常につまらないことではないかと思っております。

現在、証券会社で販売されたというのは証券と類似性のある商品だということで販売されているわけですけれども、最初の説明は証券会社のアドバイザーが変額保険の販売資格を持って説明しています。契約するというときには媒介ですから、保険会社に契約書が送られて、保険会社のほうから承諾した段階で、それはもう保険会社のほうの取り扱いになるんです。そうしますと、保険会社は保全という業務の中でやっていくので、それが今後どういうふうになってくるかわかりませんが、新しいファンドに関していちいち目論見書を送るのかと言ったら、多分送らないでしょうし、現状、いま保険業法下ですから投資信託のファンドがたくさんあるんですけれども、投資信託のように目論見書が先に開示されることが義務づけられているわけでもありませんし、どういう運用がされるのかということに関しては消費者にとっては非常に不安のある商品であるということになると思います。

証券会社にもいろいろ取材してみたんですが、この後、私がもし契約して、いろいろな商品が出てきた場合に年金のファンドの評価機関というのがあるわけではないので、まずはファンドのほうから見ていくことになるのですが、そういうことに関して面倒みてもらえるんですかということを聞きますと、証券の取引があれば、それの流れの中で聞いたことには答えるけれども、本来的には証券会社は売るだけの業務だから、それ以降のことは保険会社さんに責任を持ってもらってください、こういうふうになっているんですよ。

でも、実際に契約した人は証券会社で当初説明を受けて、ずっとアフターケアもしてもらえるのではないかと思って入っているケースというのは結構ございます。銀行の場合にも投資信託も売っているし、そういう資格を持っていらっしゃる方が販売するわけですけれども、銀行で身近に入ったんだけれど、その後の新しい商品について聞きたいとかスイッチするときに、いろいろ手続きしたいというときには、もう銀行ではないという、そこの辺も考えたうえでこの変額年金の銀行販売というのは認可していただきたいと思います。長くなりましたが、以上です。

○ 福井部会長

ほかにございませんか。

それでは、本件に関しましては一応この席でご意見を頂戴したということにいたしまして、時間の関係もございますので、本件はこれでとり進めをいただくということになると思います。ただ、今日は非常に重要な論点をたくさん出していただきました。この次、さらに保険商品について窓販の問題でございますけれども、拡大していくというステップを具体的に踏み出す前に、できればワーキンググループのほうでもう一度基本問題をきちんと整理することも有用かなというふうな気がいたしております。

保険業だけではないのですが、日本の金融機関が本当にサービスインダストリーに転換できるかどうかという、そういう重要な境目に差しかかっているときでありますし、今日出されました問題はすべてそれに絡んでいるというふうに思います。したがって、もう1回よく整理をして、その都度個別に判断するというよりは、やはりもう1回きちんと基本的な考え方を整理して、ファイナンシャル・サービス・インダストリーに転換する必要はないと言ってしまえばそれまでですが、していかなければこれからの金融機関は国際的にも国内的にも十分なレーゾンデートルを得られないということであるとすると、今後の方向性、タイムスケジュール、そして消費者保護行政と金融機関の商品の許可行政というのはどこまでセパレートにできるのかということをしっかりとフィージブルなスタディを1回やってみる必要があるのかなと私自身は思いますので、ワーキンググループの座長と相談してみたいというふうに思います。

○ 原委員

一言だけ。すみません、1分だけですけれども。議論がいろいろと深まってきたので一言だけ発言させていただきたいのですが、実際に私自身は銀行で保険商品を販売していく流れに基本的に反対していないと言いましたけれども、一番最初にこの変額が入ってくるというあたりでは、やはり懸念をしているようなところがあります。過去の融資とセットした形の変額保険の販売などを考えると、消費者保護政策が充実した状況とは言えないなかで、まずこれが出てくるという点では、やはり懸念をしております。その途中でのリスクが変わっていくあたりとか、それから保険商品は長期にわたりますので、アフターケアというのでしょうか、そのあたりがどうなのかという点では疑問というのでしょうか、懸念を持つ部分があります。

今、部会長のほうでおっしゃられたように、保険商品に限らず、金融商品を一体どこでどういうふうに販売をするのかということについてのワーキングでの真剣な議論ということを望みたいと思います。

すごくたくさんの議論があるけれども、ではそれは銀行で保険商品を扱わないということで解決できるのと言ったら、そうではないので私は反対はしていない。そこを止めたら、すべての問題が解決するのかというと、決してそういう問題ではないから私自身としては多様な選択肢の中で消費者は選びたいんだからということでの賛成ですので、もっと本質的な実質的な議論をぜひワーキングで深めていただきたいと思います。

○ 福井部会長

ありがとうございました。それでは、ほかにございませんでしたら、次の議題に移らせていただきたいと思います。冒頭申し上げましたけれども、通常国会に金融庁より出しておられます法案の説明でございます。よろしくどうぞお願いいたします。

○ 有吉企画課長

今通常国会には金融庁から2本新しい法案を提出しております。それで、まず私のほうから第二部会資料10-2という右肩に番号がございます。「金融機関等による顧客等の本人確認等に関する法律案」、これは3月12日の閣議でこの提出が決まりましたが、それについてご説明を申し上げます。

3枚ほどの資料の下に横長で「テロ資金対策関連法案について」という表みたいなものと、それから法律案要綱という、こちらのほうはご説明しませんので、単に資料としてお配りしておりますが、それがございます。

まず背景ということで、テロ資金対策関連法案についてという横長の表のほう、1枚の表のほうを少しごらんいただければと思います。ご案内のとおり、9月11日のニューヨーク、ワシントンへのテロが一つの大きな出発点になるわけですけれども、まずテロ資金供与防止条約というのがあります。これは昨年の10月に日本は署名しております。それから、あと国連安全保障理事会、これはちょうど9月の終わりごろになりましたが、連続テロを受けまして各国にこういうことをやるようにという義務づけの決議がございまして、これは1373号、この二つ。その中でいくつか要請されていることがございます。

まず、テロ資金供与防止条約のほうでございますけれども、1から5まで書いてございますが、マル1でテロ資金の提供とか収集行為、こういったものを犯罪にしろということでございます。(2条)というのは条約の中の条文でございます。

次にそういったテロ資金に使われているような資金を没収、また没収のための凍結ができるようにしなさい。それから、マル3マル4マル5といいますのは、こういったテロ資金対策として、いわゆるマネーロンダリングに対してとられているような措置が有効であろう。そういったことをテロ資金についても似たような対応をとろうということでございまして、マル3がテロ資金に関しまして金融機関が疑わしい取引、テロ資金という疑いがある。そういったものについて当局に報告してもらう。そういった義務を課そうということ。

それから、マル4が金融機関の顧客の身元確認をしろ。それから、金融機関の取引記録を保存をしてもらう。こういったことによって事後的にもテロ資金のトレースができるようにしようということでございます。

1373号ではテロ資金の提供・収集の犯罪化、上と重なりますが、それから具体的なテロリストの資産の凍結等をやってくれというような話がありました。

これに対する今回、条約を批准すべく手続きを、これも国会を通るわけですが、国内法の整備ということでこういったことについて手当をしようというものでございます。まず、マル1については右にございますように、テロ資金の提供・収集を犯罪化する新法、注1にございますように公衆等脅迫目的の云々とございますが、法務省からこういった新しい法律を出す。

2番目と3番目、これらにつきましてもこの新法の附則で現在すでに組織的犯罪処罰法という中でいろいろな犯罪資金、麻薬資金とかそういったものの没収とか、そういったマネーロンダリングの疑わしい取引の報告義務というのがございますので、そういった対象にテロ資金を加えるということで手当てをしようというものでございます。

4、5が今日ご説明する我々が提出いたしております新しい法律の関係でございまして、金融機関の本人確認等に関する新法ということで手当てをしようとするものでございます。

なお括弧書きでございますが、これは対外取引についても実は外為法で現在、本人確認が努力規定として入っておりまして、これを義務化するというような手当てをいたしますので、ほぼパラレルな形で外為法も実は出ているということで、こういった法律がテロ資金供与防止条約の国内整備的な手当てということですでに全部提出はされております。

内容でございますが、元の3枚紙、資料10-2のほうにお戻りいただきたいと思います。要は本人確認をして記録を保存しろということで、内容的に極めてシンプルなのでございますが、制定の趣旨ということで、いまご説明したような背景を要請を踏まえまして、現在でも実は銀行、証券会社、保険会社と金融機関におきましてはちょうど平成2年、マネーロンダリングが国際的に問題になりましたときに、当時通達とかいろいろな形が出まして、現在、業界の自主ガイドラインあるいは規制といったような形で顧客の本人確認と記録の保存が行われておりますが、これを徹底するために法律上の義務として位置づけて、内容の明確化あるいは充実を図るといったことでございます。その際にも先ほど申しましたように、いわばマネーロンダリング対策と基本的に重なる部分がございますので、そことの整合性を考えながらやっていくということでございます。

法案の内容でございますが、まず本人確認というところで金融機関が顧客との間で預金口座の開設や大口の現金取引等を行う際に氏名・住所・生年月日といった本人を特定するような情報を運転免許等の公的書類の提示といった方法で確認するということでございます。

預金口座の開設とか大口現金取引等と書いてございますが、イメージとしては基本的に金融機関と顧客が継続的な取引に入るときに、一番最初でまず確認してもらうということが基本でございます。

大口現金取引というほうは要はそうではない、むしろ一見のお客さんが銀行に来ていきなり300万円をだれかに送金してくださいといったときに、そこは確認してもらおうということで、注に書いてございますが、本人確認未済の顧客ということで、金額的には 200万超の取引といったことで現在考えておりますが、いずれにせよこの辺あたりの本人確認の方法とかこういった大口現金取引、どういったところまでするかというところは省令で具体的には決めていくことになります。

また、金融機関だけにやってくれと言ってもお客さんに嘘を言われてしまいますと、制度として成り立たないので、顧客に対しても本人確認に当たって虚偽を申し立てることを禁止するという形のものになります。

金融機関本人確認に関する記録というものを作成してもらいまして、顧客との取引関係が終了時から7年間保存しなければならないこととするということでございます。

取引記録につきましてもこういった顧客との取引について7年間保存しなければならないということです。ちなみになぜ7年かと申しますと、先ほど話しましたテロ資金供与というもの。これが最高懲役10年でございまして、それの公訴時効との関係で7年に設定している。

次のページ、その他とございますけれども、郵便貯金、簡易生命保険等についても同じことをやっていただく。

それから、2で本人確認に応じない顧客との取引に応じないことができるといった旨の規定。それから、監督検査権限に関する規定を設けます。それぞれ各金融機関の業法上の主務大臣が行う。4でそういった虚偽報告検査忌避あるいは是正命令違反に対しての罰則、また本人確認の際、虚偽申立でございますが、隠蔽目的で虚偽を申し立てた顧客にも罰則といった形になります。

施行日でございますけれども、公布の日から起算して9月を超えないということで、来年度内にはということでございます。

なお金融機関の一覧ということで後ろに書いてございますが、全部で38ほど書いてございますが、基本的に現在、そういったマネーロンダリングの関係で疑わしい取引といったことについての報告義務が課されている機関ということで整理いたしております。以上でございます。

○ 福井部会長

ありがとうございました。何かご質問がございましたら、どうぞ。

○ 高橋委員

2点申し上げます。インターネットなどの通信取引開始時の本人確認はどういうふうにするのかを教えていただきたいと思います。多分コピーではだめだと思いますので、住民票でよいのか。あるいは、免許証とか重要書類を配達証明、書留で送るようなやっかいなことになっていると非常に困りますので、教えてください。

2点目ですが、政令案を見る機会があったのですが、気になる点がございました。それは保険契約ですが、満期返戻金を支払う特約のある契約と契約者貸付制度のある契約というのがすべて対象になるように読めたのですが、それらがすべてテロ資金の提供とかマネロンに悪用される危険性が高いとは思えません。

EU諸国では年間保険料とか、一時払い保険料とかで本人確認が必要という規定ぶりになっていますが、我が国のはそうではないようなので、保険会社、消費者に多大な負担をかけるような形になっているのでないかと思います。その点をもう一度お伺いしたいと思います。

○ 有吉企画課長

まず先ほど申しましたように具体的なやり方とか範囲については、今までに案というのをごらんになったというお話ですけれど、実はまだそういう意味での正式な案というのはございませんで、この法律を作るに際して少なくとも法律で書いたことを実行しようと思ったら、困ったことになるというようなことにならないことを確認するために具体的なイメージを固める中で、こういうふうにやったらどうでしょうかということで今お話をしているというところであります。

まず一つはインターネットを、もちろん最近銀行に限らず証券会社も多いですし、ご指摘の保険も対面ではない非対面の形でやったものはかなり多くなっています。現行も本人確認というのは実は要求されて、ガイドラインでありまして、何をやっているかと言いますと、住民票とか本人確認の書類あるいはそれのコピーを送ってもらって、そこに郵送して、郵便で届いた。戻ってこないことを確認して、そういう人がそこに確かにいるんだということを確認しているということをやっております。基本的にはそういったパターンがベースになって、どういった範囲での書類を認めるか。コピーもいいのか。どういう配達の仕方だったらいいのかというあたりを、今でも議論しておりますけれども今後議論し、そのあたりを悪用されないというところと、恐ろしく不便にならないという、このあたりのバランスをとりながら、どの辺あたりだったらいいのかということで考えていきたいというところでございます。

生命保険関係という具体的な話がありましたが、生命保険に限らずかなり相当幅広くとっておりまして、それぞれの関係、うちはテロリストに使われているなんて、こんなことはありませんという話もありますが、それで実際にどういう定め方をしているのか。各国、若干バラエティがあることは事実でございます。私どもは基本的にはこういうテロといいますか、マネーロンダリングの世界では、先ほどのお話ではないですが、こういう貯蓄性のものとかさまざまなものがございまして、1か所を絞るとそういういろいろな周辺の類似商品のところに逃げていくというところでありますので、ある程度共通的な商品性を有する、あるいは類似取引みたいなものはある程度カバーしなければいけないだろうと思っております。

ただ、その中で何でもかんでもという話になれば、そこは実態を見ながら、バランスを見ながら、どのあたりのどういった場面でそういうことが必要だろうかということは考えていきたいと思っております。

ですから、今後具体的なことは政省令の策定する段階で議論自体を伺いながら聞いていく。ただ、当然コアとなるような、例えば預金とかそういうのは当然やらなければいけないでしょうし、証券、いろいろな投資物件というのも基本的にやっていきます。生命保険なんかでも投資物件的なものはやはりカバーする必要があるのではないかというようなこともございますし、その辺、トータルのものとして今後、考えていきたいと思っております。

○ 福井部会長

どうぞ。

○ 松浦委員(代理・前川)

ただいまのご説明を受けましてお願いというような位置づけになろうかと思いますが、生命保険について申し上げますと、取引の形態ですとか、あるいは商品の特性などを考えますと、テロ組織への資金提供やマネーロンダリングのような犯罪に利用される可能性は低いものではないかと考えております。したがいまして、今後、政省令などにおいて具体的な規定をご検討される場面におきましては生命保険が犯罪に利用される可能性に応じて必要最小限の商品を規制対象とするなどの対応をお願いしたいと一つ考えてございます。

もう1点は新法が施行される際には新しいシステムの構築や体制整備にコストや時間も相当程度必要になるものと考えるところでございます。したがいまして、適用の開始時期や実務上の取り扱いなどについて、ぜひ柔軟な対応をお願いしたいと考えております。よろしくどうぞ。

○ 福井部会長

ほかにどなたか。どうぞ。

○ 池尾委員

先ほどの質問の続きのような、非常に素朴な質問ですが、口座開設時の手続きについては先ほどのご説明を含めてイメージがわかりますが、大口の現金取引等での本人確認というのはリモートバンキングの形でやる場合には、例えば暗証番号を入れたとか、カード等を所持しているということで本人確認という形で済むという理解でいいのか。ある種の書面提示が必要であるという話になると、リモートバンキングが全部成り立たなくなる可能性があるんですが、そこはどういう理解なんでしょう。

○ 有吉企画課長

まず、ここに先ほど申しました本人確認未済の顧客とのと申し上げたのがまさにそういうイメージでして、一旦顧客で、この人の口座ですというのがまず確定されますので、そこから後は基本的に通常の銀行が取引をされる、あるいは証券会社でも何でもいい。取引をされるときはまさにこの口座のお客さんだということは、通常は何らかの方法で確認されていますので、そこはこの人がこういう取引をしているということがずっと継続的にわかる。したがって、新たにまさにATMに行くたびに免許証をカメラに向かってかざさなければいけないとか、そういうことではないということで考えております。

ですから、それプラス、そういった大口現金取引でも本人確認が何らかの意味でなされていない、つまり基本的には一番多いケースは一見のお客さんだと思いますが、それの送金とかそういうときにやってください、こういうのが基本的なパターンでございます。

それから、あと先ほどお話がありました施行時期あるいは商品の問題で必要最小限というようなお話がございましたが、これは9月11日以降、国際的な協力をしてテロリスト、テロを絶つには資金源を絶つというのが極めて有効である。そういった中で世界的に足並みをそろえてやっていきましょうという話でございます。かつ、まさに資金があちこちに移動する中で一か国が緩いと、そこが経由基地で使われてしまうというところがありますので、そこはみんなで一生懸命にやってみましょう。

法律の形でやりますので、当然、最低限みたいな形にならざるを得ない部分もありますけれども、気持ちというのでしょうか、全体としてはむしろ実効が大事なので、そこは個々の金融機関がこういったテロあるいはマネーロンダリング、そういう不法な行為に使われないと、そういったための体制なりリスクというのは、こういう法律の枠を超えてしっかり構築していただかなければならないのだろうとは思っておりますので、そこはもちろん法律的にするので、本来別のやり方で、もっとちゃんとやれるのをわざわざ法律でガチッと変な形でつくって、無駄なことをやろうというつもりはないのですが、ただトータルとしてはそのあたり、むしろ実効ある仕組みというのをしっかりやっていただくということも併せてお願いしたいなと思っております。

○ 福井部会長

もう一つ法律案がございますので、お願いいたします。

○ 山崎企画官

それでは、先週の15日に証券決済システム改革法が閣議決定されまして、国会に提出させていただきましたので、ご報告させていただきたいと思います。

お手元に第二部会資料10-3という「証券決済システム改革法案」と題する資料と、それから先月の審議会でご了承いただきました証券決済システムの改革及びこれに伴う投資者保護策についてと題するワーキンググループの報告書をお配りさせていただいております。

証券決済システム改革につきましては、この審議会におきましても平成11年と、それから昨年平成13年と2度にわたって証券決済システム改革に関するワーキンググループを設置いただきまして、池尾先生を座長としてご審議をいただきました。まずもって池尾座長をはじめ委員の方々に厚く御礼を申し上げたいと思っております。

証券決済システム改革の意義、その背景につきましてのご説明はお手持ちの資料の2ページをごらんにいただきまして、省略させていただこうと考えておりますが、基本的に証券取引がグローバル化している中で証券市場の国際競争力を左右いたしますインフラであります証券決済システムをより安全で効率性の高いものにしていこう。そして、我が国の証券市場の国際競争力を高めていこうということがこの背景でございます。

その具体的な方向については(1)から(5)までに示しておりますとおりでございますが、この中でも特に決済リスクの削減とか、決済リスクの圧縮という観点から決済期間の短縮というのは大変重要な課題であると我々は認識しております。現在、証券取引は取引の3日後を決済日とする、いわゆるT+3と言っておりますが、これをT+3からT+1に持ち込みたいと考えております。

昨年のアメリカにおけますテロ事件の際にも、事故前の取引の決済が果たしてどれだけ順調に片づくかということが注目されましたが、まさに証券決済システムという観点から見ますと、こういった決済の短縮化がどれだけのリスク削減効果を持つかということが明らかになった事件と言えるかと思います。これまでの決済期間の短縮化というのは、例えばT+5からT+3というような移行につきましては、証券決済に関するいろいろなプロセスをスピードアップさせるといった形で行われてきました。ただ、今後T+1ということを実現するためには、証券決済の際の約定の照合とか、それから清算のシステムとか、そういったものをリアルタイム化して、さらにそれぞれの各参加者の事務フロー、見直し、またシステムをこれに合わせて変更し、それからたくさんの当事者間でプロセスをいわゆるSTP化する、約定から決済まで自動化していくような、そういった取引の処理プロセス全体を完全にリエンジニアにしなければいけない、そういった状況にあるかと思います。

今回の法整備というのはこういった観点からT+1に向けての必要な法的措置を盛り込んだものというふうに考えております。

それで、今回の法案の概略でございますが、1ページ目をごらんいただきますと、今回の証券決済システム改革法というのはいわば証券決済システム改革の第二弾というべき法律になるかと思います。昨年の通常国会におきまして短期社債等の振替に関する法律、いわゆるCP法とそれから株券等の保管及び振替に関する法律の改正法、この2本が成立いたしまして、コマーシャルペーパーにつきましてペーパーレスの振替法制が実現したほか、証券保管振替機構の組織形態の見直しが行われております。

今回の法律のポイントですが、まず第一に対象証券をコマーシャルペーパーに限定していたものから、社債、国債等に拡大することとしております。

それから、CP法におきましては振替機関に投資家が直接リンクした、いわゆる単層構造のシステムとして制度が構築されておりましたが、この制度をより利便性が高くて、また発展性のあるものにしていくというために振替機関、それから投資家の間に銀行・証券会社といった口座管理機関が介在するような多層構造のシステムを構築していくということとしております。単層構造、多層構造というのは5ページ目に簡単な概略図が書いてありますが、コマーシャルペーパー、CP法におきましては加入者はそのまま振替機関にぶら下がっているものが、一般投資家が証券会社、銀行に口座を持って発展性のある多層構造のシステム構築が可能にできるというふうにする改正を行っております。

それから、3番目に決済事務の標準化、それから決済事務量の削減を行うために清算機関法制を整備することとしておりまして、清算機関の定義や機能を明確化して、清算機関の十分なリスク管理能力と処理能力を確保するとともに、証券決済の基盤的サービスの提供者である清算機関の公共性を確保するために一定のルールの整備を行っております。

それから、そのほかの重要な論点といたしましては、主にワーキングでの主要な論点となりましたが、一般投資者保護のための仕組みを構築させていただいております。この新しい振替制度は現物を預かっている場合と異なっておりまして、一種の分別管理というようなことが言えるかと思いますので、基本的には極めて安全なシステムではないかと思います。

と申しますのも仮に口座機関が破綻しましても、投資家は直接発行体に対して権利を有しているという構成になっておりましたので、実際に権利を保持している投資家自身の発行体に対する権利というのは全く影響は受けないということになっております。

しかも現物と異なっておりまして、それぞれ口座の管理の仕方は個人ごと、それから銘柄ごとというふうに管理されておりますので、現物であればごっそりなくなってしまうというようなことがあり得るのですが、この場合、電子的な振替制度におきましては損害は生じたとしても波及は極めて限定的なものにならざるを得ない。

こういった事故は起きないようなシステムまでセーフティネットが必要か否かということにつきましてワーキンググループで主に議論いただきましたが、仮に限界的な事例であったとしても、システム全体の信頼性を高めるといった観点から一般投資家を対象としたセーフティネットを設けるということとしたものでございます。

詳細な議論内容につきましては、先ほどお配りいたしました報告書をごらんいただければ幸いだと存じます。

それから、このほか国債市場の効率性を高めるという観点から国債に関する措置といたしまして、ストリップス債の導入を可能とする措置や、それから譲渡性に制限を付した国債の導入等を図ることとしております。

法案の概要は以上でございます。

○ 福井部会長

ありがとうございました。何かご質問等はございませんでしょうか。

よろしゅうございますか。

それでは、お手元にもう1枚の紙が残っているかと思いますけれども、これは前回の会合におきましてご了承を得ました「金融機能の向上に関するワーキンググループ」のメンバーの名簿でございます。ご確認おきいただきたいと思います。

なお、本日の会合につきましてはこの後、事務局から記者レクを行わさせていただきたいと思っております。

そのほかに何かご連絡がございましたら、どうぞ。

○ 大藤信用課長

信用課長でございますが、次回の第二部会の日程等につきましては、福井部会長ともご相談のうえ、改めてご連絡させていただきたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。事務局からは以上でございます。

○ 福井部会長

ありがとうございました。それでは、本日の会合はこれをもって終了させていただきます。ありがとうございました。

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