金融審議会金融分科会第二部会(第25回)・「信託に関するWG」(第12回)合同会合議事録

日時:平成17年11月16日(水)14時00分~16時00分

場所:中央合同庁舎第4号館 11階共用第一特別会議室

○ 岩原部会長

それでは、時間でございますので、ただいまから第25回金融審議会金融分科会第二部会と第12回信託に関するワーキンググループの合同会合を開催いたします。

皆様におかれましては、ご多忙のところお集まり頂きまして誠にありがとうございます。

会議に先立ちまして、本日の会議は公開ということになっておりますので、その点をまずご了承頂きたいと存じます。

本日は、第二部会につきましては本年2月、銀行法改正についての審議以来でございまして、信託に関するワーキンググループにつきましては平成15年7月、前回の信託業法改正についての審議以来の会合ということになります。

今回ご審議をお願いしたいと考えておりますのは、信託法の改正に伴う信託業法の改正についてでございます。これまで第二部会及び信託に関するワーキンググループにおきましては、信託を業として営む信託会社に対する規制・監督を規定する信託業法のあり方についてご議論を頂いておりましたが、別途信託に関する法制度として私法上の権利義務関係を規定する信託法があり、この信託法の改正に向けた議論が法務省の法制審議会において昨年の秋以降進められております。本年7月には、信託法改正要綱試案が公表されまして、平成18年、すなわち来年の通常国会への信託法改正案の提出に向けて審議を進められていると伺っております。

このような状況を踏まえまして、信託法と大変深い関係にございます信託業法についても前回の全面改正の施行から1年弱しか経過していないところではございますが、改めて見直す必要が生じているのではないかと考えているところでございます。

今回の信託法の改正では、信託業法にかかわる大きな改正点として、委託者と受託者が同一の信託宣言など新しい形態の信託の取り扱いや、当事者の私的自治を尊重する観点から忠実義務等の受託者の義務に関するルールの見直しなどが考えられておりますので、このような論点を中心に投資家保護の観点も十分に踏まえつつ、他の金融法令との関係も含め、幅広い視点から信託業法のあり方についてご議論頂ければと考えております。

また、今回の開催に当たりましては、前回の信託業法改正を精力的にご検討頂きました信託ワーキンググループのメンバーの皆様にもご参加頂いて、集中的にご議論頂くことがよりよい充実した審議になると考えられますので、当面は第二部会、信託に関するワーキンググループの合同会合という形で次回以降も進めさせて頂きたいと考えておりますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。

それでは、議事に入ります前に、本年2月の第24回第二部会以降の専門委員の方々にご異動がございますので、それをご報告いたします。

まず、交代された委員からご紹介いたします。奥野順委員、加藤貞男委員、種橋潤治委員、西川茂樹委員、宮山武津夫委員にかわりまして、岡内欣也委員、落合寛司委員、鈴木久仁委員、花岡浩二委員、町田充委員がご就任になられました。

次に、平成15年7月以降の信託に関するワーキンググループの専門委員の方のご異動についてご報告申し上げます。

まず、交代された委員からご紹介いたします。阿部泰久委員、池田卓也委員、甲斐崎康郎委員、小足一寿委員、佐竹康峰委員にかわられまして、土井宏文委員、鳥井一美委員、広井秀美委員、松谷信吉委員、若林孝俊委員がそれぞれご就任になりました。

なお、森田果委員は、来年9月まで海外においでですのでご出席なさいません。

それから、事務局の方でも異動がございましたので、それについて大森信用制度参事官からご紹介頂きたいと思います。

○ 大森信用制度参事官

第一部会から第二部会の担当に異動いたしました大森でございます。よろしくお願いいたします。

私どもも全員異動しておりますので、順次、金融庁総務企画局からご紹介いたしますと、三國谷局長でございます。

ちょっと遅れておりますが、中江総括審議官。

同じく畑中審議官でございます。

同じく、細溝審議官でございます。

同じく、知原参事官でございます。

同じく、八田企画課長でございます。

同じく、三井市場課長でございます。

同じく、保井信託法令準備室長でございます。

おくれておりますが、松尾投資サービス法令準備室長がおります。

監督局から、遠藤銀行第一課長でございます。

次に、財務省大臣官房、石原信用機構課長。

遅れておられますが、同じく金京機構業務室長でございます。

以上でございます。

○ 岩原部会長

どうもありがとうございます。

それでは、本日の予定でございますが、大きく分けて3つございます。第1は、法制審議会でご審議がなされております信託法の現代化について、法務省民事局の寺本参事官からご説明を頂きます。第2は、信託業法の基本的な枠組みと今回の信託法改正をめぐる信託業法の見直しに係る基本的な論点につきまして事務局からご説明を頂きます。最後に皆様からご自由なご意見を頂戴したいと存じております。

それでは、お手元の議事次第に従いまして、法務省民事局寺本参事官から信託法の現代化についてご説明を頂きたいと思います。どうかよろしくお願いします。

○ 寺本法務省民事局参事官

法務省民事局で信託法の改正を担当しております寺本と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

では、信託法の見直しに関する法制審の現在の議論の概要につきまして、お手元にございます資料に基づきまして30分ほど頂きましてご説明をさせて頂きたいと思います。

ただいま岩原部会長からお話がございましたように、信託法を80年余りにわたりまして実質的な改正がされていなかったわけでございますが、昨年10月1日から法制審議会で1か月に2回ほど精力的に審議を重ねてまいりまして、来年の通常国会に改正法案を提出することを目途として、現在作業中というところでございます。

今回の信託法の改正の細かなところはこれから資料に基づきましてご説明したいと思いますけれども、それに先立ちまして今回の改正のポイントともいうべきところを3点ほど申し上げますと、これも先ほど部会長からご紹介があった点でございますが、1つは、当事者の私的自治を尊重する観点から、現行法の過度に規制的なルールの見直しを図るという点でございます。例えば忠実義務に関する規定の合理化を図るというようなところでございます。

それから、第2点目といたしまして、受益者の権利行使におけるきめ細やかで合理的なルールの整備を図るということでございまして、信託のガバナンスを重視する観点から、利益を享受する受益者の受託者に対する監督が極めて重要であるという認識に基づきまして、受益者が必要な情報を入手する権利ですとか、受託者による権限違反行為の取消権、受託者の違法行為の差止請求権、その他、受益者が受託者の、あるいは信託の監視・監督をすることができる権利の充実を図るべく、種々の新たな制度を盛り込んでいるところでございます。

最後に、第3点目といたしまして、多用な信託の利用形態に対応するための制度の整備ということを目指しておりまして、例えば、高齢者とか障害のある方のための民事信託の制度の充実を図るということ、それから金融関係に直結する問題といたしましては、受益権の有価証券化を可能とするということ、いわゆる受益証券発行信託の制度も導入することを考えております。すなわち、金融、資産流動化、投資、事業経営などの商事信託分野のみならず、民事信託分野、公益信託分野など、さまざまなニーズにこたえ得る信託法制の整備というものを考えているというところでございます。

それでは、続きまして、この資料の第2というところに基づきまして、現時点における信託法の見直しの概要と、なお、法制審議会はあと4回ほど開催されますが、おおむねの現時点での方向性につきまして、順次ご説明をさせて頂きたいと思います。

まず、総論的なことでございますが、最初に信託の意義ということでございまして、信託というのは、一定の目的のために財産の管理または処分、その他当該目的の達成のために必要な行為をすべき法律関係を設定するということと考えております。その設定方法につきましては、マル1の信託契約とマル2の遺言というのは現行法でも認められているわけでございますが、マル3が先ほど部会長からご紹介ありましたように、委託者自らを受託者とする信託の設定の方法、いわゆる信託宣言というものでございます。このような方法も、それ相応の特殊な規律も同様に設けた上で導入するということを考えているわけでございます。

それから、(2)といたしまして、信託契約の効力が生ずるときに、受託者となる者が、委託者となる者が負担している債務を信託財産に属する債務として引き受けることができると考えております。これは、現行法のもとでも、積極財産を信託いたしましてから改めて債務を負担するということはできるわけでございますが、ここで申し上げたいのは、信託設定の当初から積極財産と消極財産を含む事業の信託のようなものも可能であるということを明文化するという方向で考えているわけでございます。

続きまして、2番目の信託の公示というところでございますが、これは不動産登記法上の信託の登記制度、あるいは物によっては信託の登録制度があるわけでございますが、このような信託の登記、登録をすることのできる財産につきましては、それをしないと第三者に対抗することができないとしております。例えば、受託者の債権者が信託財産に掛かってきたときに、信託の登記、登録をしておかないと、その債権者による執行を排除できないということになるわけで、登記、登録によって信託を対外的に公示するということになるわけでございます。

続きまして、2の信託財産関係というところでございますが、まず信託財産の範囲というところでございまして、これは現行法の14条に対応する規定を維持しているわけでございます。いわゆる信託財産の広い意味での物上代位、例えば信託財産を売却したことによって生じた代金債権も信託財産に属するということを示しているわけでございます。

続きまして、信託財産に対する強制執行ということでございますが、信託財産には独立性が認められるということになりますので、受託者の固有の債権者は信託財産に掛かってくることができないというのが、信託の最も本質的な効果というところでございます。そのような観点から、例えば信託行為の前に抵当権が設定されていた不動産を信託した場合における抵当権ですとか、あるいは受託者が正当な権限に基づいて借り入れた借金に基づいて信託財産に執行してくると、こういうものは認められるわけでございますが、受託者個人に対する債権者は信託財産に掛かってくることができないということの反面として、それでは、どのような債権であれば信託財産に掛かってこれるのかというところを明らかにしていきたいと考えているところでございます。

続きまして、3の受託者関係というところでございますけれども、まず最初は、これも現行法にございますが、受託者は善良な管理者の注意をもって信託事務を処理しなければならないものといたしております。これは、信託財産は法的には受託者の所有になるわけでございますが、実質的には受益者の財産と言えるわけでございますので、他人のものを預かる場合と同様に善良な管理者の注意をもって信託事務を処理しなければいけないとしているわけでございます。ただし、この注意義務の基準につきましては、現行法も同様に考えられているようでございますけれども、私的自治の尊重の観点から、信託行為の定めによりまして加重または軽減ができるとを考えているところでございます。

続きまして、公平義務でございますが、これは受託者が受託している1つの信託において、その中に受益者が複数いると、例えば2人いるという場合には両者を公平に扱わなければいけないという義務でございまして、解釈上はこれが認められることは争いがないものと言われておりますが、現行法上は特に規定がございませんので、規定を設けるという方向で検討してはどうかと現時点では考えているところでございます。

続きまして、忠実義務でございますが、ここに書いてございますように、受託者は、受益者のために忠実に信託事務を処理しなければならないわけでございまして、いわゆる自己取引、例えば信託財産を自分のものにしてしまうことですとか、それから競合取引といいますと、例えば同じ貸しつけ先に信託財産で貸しつけるべきところを固有の財産で貸しつけてしまうとか、あるいは有価証券を信託財産で購入すべきところを固有財産で買ってしまうと、そのような行為というのは受託者が受益者の利益を害するおそれがあるという観点から、原則として禁止するということを考えております。

ところで、現行法によりますと、この受託者の忠実義務というのは強行規定であって、およそ免除することができないというふうに考えられているわけでございますが、この忠実義務はあくまでも受益者の方を向いている、受益者の利益のための義務でございますので、保護されるべき受益者が例えば真実に同意をしている場合ですとか、あらかじめこのような行為が許容されることが信託契約に書いてあって受益者が十分認識できるという場合であれば、むしろこれを禁止しない方が受益者の利益のためにもかなうのではないかと思われるわけでございます。

例えば、信託財産を売却したいわけですが、買い手が見つからないというときには、とりあえず受託者に買ってもらってそれを転売する方が受益者の利益になると考えられることもございますし、それから、例えば、受託したビルに受託者がテナントとして入ると、これは現行法では、受託者が信託財産につき賃借権を取得するということになりますので一律に禁止されているわけでございますが、テナントとして入った方がむしろ市場価値が上がったり賃料が入ってくるということで受益者にとっても有利ではないかと考えられるわけでございまして、このような観点から、受益者の利益を害しないときには忠実義務は解除されると、広く禁止した上で、しかし正当な場合には解除するというような方向性の規律に改めていきたいと考えているわけでございます。

続きまして、分別管理義務でございますが、これは、受託者が信託財産と固有財産、それから複数の信託を受託している場合の信託財産間の分別の管理義務を課すというものでございまして、その具体的な方法につきましては3ページのマル1からマル4のように、登記ができるものであれば登記をする、動産であれば物理的な分離保管をする、金銭や債権であれば帳簿管理をすると考えているところでございます。

現行法との違いでございますけれども、現行法では、分別管理というのはやはり信託の非常に本質的な義務であるということで、信託財産と固有財産を混ぜるということはいけないと、禁止されると考えているわけでございますが、審議会における現在の検討状況としては、別段の定めをもってこの義務を解除するということができるという方向で考えているわけでございます。ただ、別段の定めをもって解除することができるといいましても、例えば、全く信託の登記、登録をしないとか、帳簿上の計算管理もしないということまでは許されないわけでございまして、信託の登記、登録、帳簿上の計算管理というのは不可欠ということになると考えておりますが、例えば、金銭の物理的な分別というようなことは必要ないと考えているわけでございます。

続きまして、信託事務処理の委託というところでございますが、現行法のもとにおきましては、信頼を受けて委託を受けている以上は自ら事務処理をしなければいけないという自己執行義務が受託者には課されているわけでございますが、現実の世の中の状況を考えますと、受託者が全部自分で処理することを原則とするというのは実情にそぐわないわけでございまして、むしろ、しかるべく他人に委託する方が受益者の利益にもかなうわけでございます。そういう観点から、現行法の規律を緩めまして、信託行為に定めのある場合と信託の目的に照らして相当である場合には他人に委託することができるという方向に方針を転換しているということでございます。

マル1マル2というのは、この規律に従って正当に委託した場合と違反した場合の効果について記述したものでございまして、正当に委託している場合には、受託者は選任監督責任を負うにとどまると、原則としてそのような責任を負うにとどまると考えているわけでございますが、違反した場合には、因果関係のある損害はすべて弁償しなければならないという規律を設けることを考えておりましる。

続きまして、帳簿作成義務でございますけれども、受託者が受益者のために帳簿その他の書類を作成しなければならないということ、それから信託財産の状況に関し、B/SとかP/Lというような書類を作成しなければならないとすることによりまして、受益者が信託財産の運用管理に関する受託者の事務処理の適正を監督するに資するという方向性を考えているところでございます。

それから、この書類についての保存期間についても、現行法上規律がございませんが、原則として10年間というふうに保存期間を明定していきたいということで考えております。

続きまして、受託者の損失てん補責任というところでございますが、受託者が先ほど申しました善良な管理者の注意義務に違反して、例えば信託財産に損害を被らせたというような場合におきましては、一種の債務不履行責任といたしまして、信託財産に対する損失のてん補責任等を負わなければいけないというものでございまして、基本的に現行法の27条に対応する規律を設けたいと考えているところでございます。

それから、受託者の違法行為の差止請求権でございますけれども、現行法には、少なくともこの権利に関する明文の規定はございませんで、解釈上、受益者にはこのような権利が認められるという考え方もあれば、やはり明文の規定が必要だという考え方もあるところでございます。信託法部会におきましては、受益者の権利を強化するという観点から、差止請求権を明文の規律をもって定めることを考えておりまして、ただ、受益者の保護と信託事務処理の円滑のバランスという観点から、著しい損害が生ずるおそれがあるときに限って差止請求権が認められるという規律としてはどうかと考えているとろでございます。

次のページに移りまして、受託者の権限違反行為の取消しというところでございますが、これは現行法をかなり改める予定でございます。現在の信託法部会での審議の状況といいますと、受託者が信託財産のためにした行為が権限違反であるという場合につきましては、受益者を保護するという観点から、その取引の相手方においてその受託者の行為が権限外であることを知っていたか、または知らなかったことに重過失があるときには、受益者がこれを取り消すことができるという規律を設ける予定で考えているところでございます。これも、本来、受益者というのは、受託者と第三者の契約の当事者ではないわけでございますが、保護されるべき受益者の利益が害されるというときには、受益者が落下傘のようにおりてまいりまして、その第三者間の行為を取り消すという権利を、特に受益者の保護の観点から認めたいと考えているわけでございます。

ただ、現行法の規律によりますと、例えば、不動産について信託の登記がされていれば、その登記がされた不動産について信託の本旨に反する処分がされているときには、相手方がどのように考えていようと、有無を言わさず取り消されるという規律になっておりまして、相手方の保護に若干薄いという懸念があるわけでございます。そこで、修正案におきましては、登記、登録があるだけでは常に取り消せるというわけではなくて、あくまで取引の相手方において権限違反につき悪意または重過失があるときに取り消されるということで、受益者の権利保護と、それから第三者の取引の安全とのバランスを図る規律を設けてはどうかと考えているところでございます。

続きまして、4の受益者と受益権の関係の方に移らせて頂きますが、まず第一に、信託管理人・信託監督人・受益者代理というふうに3つ並べておりまして、信託管理人というのは受益者が現に存しない信託、例えば胎児を受益者とするような信託におきましては、受益者の権利を保護する観点から信託管理人を選ぶことができるという規律を設けることを考えておりまして、これは現行法の8条と基本的に同じ考えでいるわけでございます。

改正案では、この信託管理人のほかに、特に民事信託などで重要になってくるかと存じますが、受益者を保護する観点から、信託監督人、あるいは受益者代理という制度を新たに導入いたしまして、このような人を信託行為で選ぶ、または裁判所によって選んでもらうということによりまして、受益者の権利の十分な保護を図るということを考えているところでございます。

続きまして、受益者が複数の場合の意思決定の方法というところでございますが、現行法のもとにおきましては、受益者が複数の場合の規律というのが極めて乏しく、基本的には受益者が複数いれば、100人いれば100人が全員一致しなければいけないと考えられているようでございます。もともとも80年前なので受益者が多数の信託というのはなかったせいかもしれませんが、少なくとも現行法の規律を見る限り、全員一致が前提となるのではないかと考えられるわけでございますが、それでは機動的な信託の管理が困難になるわけでございます。

そこで、今回の信託法部会では、あくまでも原則は全員一致でございますけれども、信託契約で受益者の多数決によることができると書いてあれば、これは多数決制度が導入されるということでいいのではないかと考えております。これによりまして、機動的な信託の運営と受益者の保護のバランスが図られるのではないかと考えているところでございます。

それから、これに関連いたしますが、受益権取得請求権というところでございまして、これは株式買取請求権と同様な趣旨でございまして、合理的な対価を得てその信託から離脱する機会を与えることが受益者の保護の観点から相当と認められる場合には、このような請求権を強行法的に受益者に認めたいと考えております。どのような場合にこれを認めるかというのが問題になるわけでございまして、現在まだ法制審議会の方で審議中でございますが、基本的に、信託の目的を変更する場合、例えばこれまで公益を目的としていたのが明日から営利を目的とするというふうに変えるような場合ですとか、株式の譲渡制限と同じように受益権の譲渡性を制限するというように、受益者の利益に重大な影響を与える可能性のある変更がなされた場合には、このような取得請求権を認めてはどうかと考えているところでございます。これは現行法には規律がございませんが、先ほど言いましたように多数決制度などを導入することに伴いまして、受益者の権利の十分な保護を図るための新たな制度の導入という位置づけと考えて頂ければと思います。

それから、受益債権についての物的有限責任、典型的には信託配当のようなものでございますが、これは信託財産のみが責任財産となる、したがいまして、信託財産が減れば信託配当も減るということになるわけでございまして、現行法19条につき規定の文言上、信託財産のみが責任財産となるんだと、いわゆる物的有限責任だということを明らかにした趣旨でございます。

続きまして、受益権の有価証券化というところに移りますが、これは先ほど申しましたとおり、多様な信託類型を認めるための一つの大きな柱と考えているところでございます。もちろん、信託には、いろいろな類型がございまして、例えば子供のための信託の受益権を一々有価証券化するというのはナンセンスかと思われますので、あくまで信託行為に定めた場合には、有価証券を発行できるという規律にしてはどうかと考えているところでございます。現行法におきましては、この有価証券化の規定がございませんので、実務上は資産流動化法ですとか、あるいは投信法のように、受益権を有価証券化しなければならないという規定があるものに限って有価証券化されているようでございますけれども、私法の基本法たる信託法において、信託行為で定めれば受益権を有価証券化できるという規律を設けることが、受益権の流動化などにも資するのではないかと考えて、このように規律を導入したいと考えているところでございます。

続きまして、委託者の関係に移りますけれども、現行法におきましては、委託者の権利というのはいろいろと認められているわけでございますが、このように委託者が種々の権利を持っているといたしますと、委託者と受益者との意思が衝突して受託者が事務処理に困窮するという懸念があるわけでございます。今回の信託法の改正に当たりましては、諸外国の法制の状況ですとか、あるいはただいま申しましたように法律関係の錯綜を避けるというような観点から、委託者の権利を基本的に後退させる方向で委託者の権利義務に関する規定を整備していきたいと考えているところでございます。信託が成立した後におきましては、委託者は一歩背後に退いて、その権利義務関係は受託者と受益者の間で形成、発展されていくものであると考えているわけでございます。

続きまして、信託の変更の関係で、変更、併合、分割と書いてございますが、信託の変更につきましては、現行法では信託財産の管理方法の変更の規律、裁判所による変更ができるという規律のみしかないわけでございまして、機動性に欠けるという懸念がございますので、委託者、受託者、受益者の三者の同意があれば信託の変更ができるということを原則とした規律の整備をしていきたいというところを考えているわけでございます。

その亜流といいますのが、信託の併合と分割というところでございまして、信託の併合といいますのは複数の信託を1つの信託にすると。言ってみれば会社の合併に類似するわけでございますが、例えば複数の年金信託を1つに統合して運用することによりまして、信託の投資効率を上げるということが受益者の利益に資するというような場合が考えられるわけでございます。

それから、信託の分割といいますのは、これは新規信託分割、吸収信託分割と書いてございますけれども、会社法におけます分割の規律と同様にお考え頂ければいいわけでございまして、新規信託分割といいますと、現在運用されている信託を2つに分けて複数の信託として運用するという場合でございます。例えば、受益者が将来共同事業するための資産として信託財産を管理していたわけでございますが、事情が変わって1つの信託として運用するのが煩わしくなったというときには、信託を2つに分けて運用をすることが受益者の利益にかなうのではないかと考えるわけでございます。

それから、吸収信託分割といいますのも会社における吸収分割と似たようなことでございまして、当初2つの信託がある場合に片方の信託を分けましてもう一方にくっつけるということでございまして、例えば一方の年金信託を分割して他方の年金信託と併合すると、それによりましてより運用の効率が増すというような場合もあるのではないかと考えるわけでございます。

現行法におきましては、信託の併合や分割に関する規律というのは全くございませんので、この手続、例えば債権者保護措置の要否とか、併合、分割後の債権債務関係のような点につきまして規律を整備していきたいと考えているところでございます。

続きまして、7番目の限定責任信託(仮称)でございます。ご承知のとおり、信託の原則的な形態といたしましては、受託者の固有財産と信託財産がともに責任を負うということになるわけでございまして、ただ、例外的に責任財産限定特約が結ばれていれば信託財産だけが責任財産となるというふうに実務では運用されているわけでございますけれども、今般の改正案におきましては、一定の債権者保護措置を講ずることを前提に、その信託に入ってきた場合には当然に信託財産のみが責任財産となるという限定責任信託の制度を導入することを考えているところでございます。

そうしますと、例えば貸金債権者がこの信託財産に対して貸しつけをしてきたと、この信託財産を預かる受託者に対して貸しつけをした場合には、受託者の固有財産は責任財産とならずに、信託財産だけが責任財産となるというような類型の信託制度を導入することになるわけでございます。その観点からは、会社に類似した面もあるわけでございますので、当然、債権者保護措置というものもあわせて整備していきたいと考えているところでございます。

それから、8番目、最後になりますけれども、受益者の定めのない信託関係というところでございます。現行法におきましては、受益者の確定可能性というのが信託の不可欠の要件と考えられておりまして、ただ公益信託についてのみ受益者がいなくてもいいとなっているわけでございますけれども、今般の改正案におきましては、受益者の定めのない信託、これは英米法の用語などをとりまして目的信託という名称をつけているわけでございますが、このような制度を導入していきたいと考えているわけでございます。

このような制度を導入することによりまして、例えば公益信託の受け皿的な機能を果たす場合も考えられますし、資産流動化目的のためにも有益ではないかという指摘がされておりまして、今般の改正で、受益者の定めのない信託というものについても新たに導入してはどうかと、これは実は明後日の法制審議会の場で正式にご審議頂くわけでございますが、基本的にそのような方向があり得るのではないかというのが現時点での状況ということでございます。

冒頭に申し上げましたとおり、信託法部会の審議は1月までにあと4回予定されているわけでございまして、その結果を踏まえて2月に最終答申を上げ、次期通常国会に改正法案を提出していきたいと思っておりますが、このペーパーで大体の現在の改正のイメージというものをとらえて頂ければと考えているところでございます。

とりあえず、以上をもちまして法制審議会の審議の現状につきましてのご報告とさせて頂きます。

○ 岩原部会長

どうもありがとうございました。

それでは、次に信託業法の基本的な枠組みと今回の信託法改正をめぐる信託業法の見直しに係る基本的な論点について、保井信託法令準備室長よりご説明を頂きたいと思います。よろしくお願いします。

○ 保井信託法令準備室長

保井でございます。よろしくお願いいたします。それでは、座ってご説明させて頂きます。

お手元にございます2種類の資料に基づきまして事務局から説明をさせて頂きます。

最初のご説明でございますけれども、横長の紙で、表に信託法改正に伴う信託業法の見直しについてというタイトルがあるものでございます。

2枚おめくり頂きまして、1ページ目、右下にページがございますが、最初が信託の基本的な仕組みでございます。最初に「信託とは」ということでございますけれども、信託とは、委託者が、信託行為により、受託者に財産権を移転させ、信託目的に従い、委託者本人又は受益者のために、その財産を管理・処分させる制度という定義でございます。さらに信託の基本型でございますけれども、1ページ目の下半分でございます。これは委託者が受託者に財産を移転し、収益の分配を受けるわけでございますが、委託者が受益者となる者、そういう意味で自益信託でございます。

それから、1枚おめくり頂きまして2ページ目でございますけれども、さらに他益信託と申しまして受益者が収益の分配を受けるわけでございますが、これが自分ではない第三者である者を他益信託と申しております。さらに資産流動化の信託スキームでございますけれども、これは委託者が受託者に対しまして財産を移転するとともに委託者が信託受益権等の販売を行いまして、この受益権を買った投資家が受益者として収益の配分を受けるという形のものでございます。

1ページおめくり頂きまして3ページでございます。

こちらは、信託に関する主な法制度等でございます。法制度といたしましては3つの法律がございまして、先ほど法務省の寺本参事官からご説明がございました信託法、これは信託に関する私法上の権利義務関係等を規定するものでございます。さらに信託業法、これは信託を業として営む信託会社に対する規制・監督のあり方を規定するものでございます。それから3番目に兼営法、これは金融機関が信託業を営む場合の規制・監督のあり方を規定したものでございます。

それから、信託の実態でございますけれども、日本では商事信託がほとんどであると。これに対してアメリカではファミリー・トラストや非営業信託も多いという記述が見られるわけでございます。

一番下の○でございますけれども、昨年、平成16年の信託業法改正前は、兼営法上の金融機関のみが信託業の担い手でありましたけれども、業法の改正によりまして金融機関以外の信託業への参入が可能となったわけでございまして、ここに列記をいたしました5つの信託会社が新規に参入しております。

1枚おめくり頂きまして4ページでございます。

信託に関する制度の変遷でございます。最初に、信託法・信託業法が制定されたのが大正11年でございまして、当時といたしましては経営基盤の弱い信託業者が存在しておりまして、これを信用力のある健全な業者に免許を与えるという目的がございまして信託業法が制定されたという経緯がございます。昭和18年には兼営法が制定されまして、銀行が認可により信託業務を兼営できることになりました。ただし、戦後間もなく信託会社が銀行に吸収合併されましたり、あるいは銀行業への転換が行われたということもございまして、戦後は信託業法に基づく免許を受けた信託会社はすべて銀行となったわけでございます。さらに平成16年でございますが、昨年信託業法を全面改正いたしまして、例えば受託財産の可能な拡大でございますとか、信託会社制度の創設等が行われたところでございます。今回ご説明頂きましたように、法制制度審議会におきまして信託法改正に向けた検討がされておりまして、これに伴い信託業法の整備をどうするかということでご審議をお願いしているわけでございます。

1枚おめくり頂きまして5ページでございます。

これは最近の信託業に関する規制緩和の流れでございます。平成5年に信託銀行以外の金融機関による信託銀行子会社方式での信託業への参入解禁というのがなされていますとともに、地域金融機関本体での信託業への参入解禁がなされたわけでございますけれども、平成14年に至りまして、すべての金融機関について本体による信託業への参入解禁が行われたわけでございます。平成16年には信託業法の全面改正が行われたところでございます。

1枚おめくり頂きまして6ページでございます。

こちらは信託の主な種類ということでございまして、金銭信託、金銭信託以外の信託、金銭以外の信託がございますけれども、詳しい説明は時間の都合で割愛させて頂きます。

1ページおめくり頂きまして7ページです。

これは信託勘定残高の推移ということでございまして、一番右、2004年でございますけれども、残高ベースで500兆円を超えるという信託勘定の推移となっておりまして、資産流動化スキーム等における信託の活用により着実に増加しているというふうに言われております。

1枚おめくり頂きまして8ページでございます。

これは信託業法の概要でございまして、受託可能財産としては財産権一般、それから信託会社につきましては、参入基準といたしまして免許制である一般の信託会社、2番目の類型といたしまして管理型信託会社、これは登録制でございますけれどもこの2つの類型が設けられております。信託会社は、基本的には株式会社による参入とれさております。

それから、行為規制等でございますが、説明義務、不当勧誘の禁止、あるいは善管注意義務、忠実義務、分別管理義務といった受託者責任、それから業務の第三者委託に関するルール等が定められております。

それから、兼業制限、営業保証金の供託、情報開示、さらに立入検査・業務改善命令・免許(登録)の取り消しといった規定がございます。

1枚おめくり頂きまして9ページでございます。

これは先般の業法改正で取り入れられた制度でございますけれども、信託契約代理店制度、信託契約の締結の代理または媒介をするものでございますが、登録制ということでこの制度が創設されております。さらに右側でございますけれども、信託受益権販売業者制度ということで、信託受益権の販売、またはその代理、媒介を行う業者の制度というのが創設されております。

1枚おめくり頂きまして10ページでございます。

これはさまざまな整理がある中での一つの試みでございますけれども、信託会社とほかの金融業態の仕組みのポンチ絵でございまして、銀行、保険会社、それから運用型の信託会社につきましては、お客様から資産をお預かりするということでございますので、免許制と、他方、証券会社につきましては有価証券と売買の取り次ぎということでございますので登録制とさせて頂いているところでございます。

1枚おめくり頂きまして11ページでございます。

こちらは、各金融業態における制度の概要でございまして、信託会社、銀行、保険会社、証券会社というふうに並んでおりまして、最低資本金でございますとか兼業規制、商号規制等の規制についての規定が並べられております。時間の都合でご説明は割愛させて頂きます。

1枚おめくり頂きまして12ページ、これは資産運用ということでございまして、信託会社投資顧問業、それから投資信託委託業者ということで、それぞれの法令の比較をさせて頂いております。これが12ページでございます。

1枚おめくり頂きまして13ページでございます。

先ほど寺本参事官からもご説明ございましたとおり、今回の信託法改正で検討されている新しい信託のイメージでございます。1つ目の○が事業の信託でございまして、これは事業そのものを信託財産とする信託でございます。それから2番目の新しい類型といたしましては信託宣言、委託者が自ら受託者となる、そういった信託の形態でございます。

1枚おめくり頂きまして14ページでございますけれども、目的信託、これは受益者の定めのない信託でございます。それから2番目の○でございまして限定責任信託、これは信託事務に関する取引の責任財産が信託財産に限定されているといった信託の形態でございます。

1枚おめくり頂きまして15ページでございます。

これらの新しい信託の活用方法として指摘されている例をここに抽出させて頂きました。まず事業信託につきましては、例えばゴルフ場事業といったものの事業再生の可能性、こういった例が挙げられております。それから信託宣言につきましては、金融機関が貸付債権を流動化する、こういったニーズがあると言われております。それから目的信託につきましては、例えば自らの出身大学に研究のためにある特定の財産を信託すると、こういったことが活用方法として挙げられております。それから限定責任信託につきましては、資金運用のために信託においてデリバティブ取引などのハイリスク、ハイリターンで運用を行う場合等が事実として挙げられております。

1枚おめくり頂きまして16ページでございます。

これは、現在の信託法改正の作業の中で検討されている受託者義務の類型でございます。1番目は善管注意義務、これは、受託者は信託事務の処理に当たりまして、善良な管理者の注意をもってしなければならないという規定でございまして、現在の信託業法では信託会社に善管注意義務を課しているとろでございます。

それから、2番目に忠実義務でございますが、受託者は受益者のために忠実に信託事務を処理しなければならないという規定でございまして、主な類型といたしまして、まず最初に利益相反行為、それから1枚おめくり頂きまして17ページでございますけれども競合行為、こういった類型でございます。現在の信託業法では信託会社に忠実義務を課しておりまして、また自己取引等につきましては信託契約に定めがあり、信託財産に損害を与えるおそれがないものについて原則許容しているところでございます。

それから、1枚おめくり頂きまして18ページ目でございますが、公平義務でございまして、受託者は、受益者を公平に扱わなければならないという規定でございまして、現行信託業法上明文上の規定はございませんが、解釈上、信託会社は公平義務を負うとされているところでございます。

それから、マル4といたしまして分別管理義務でございまして、受託者は、自己の財産等と分別して信託財産を預からなければならないと、管理しなければならないという規定でございまして、現行信託業法では、信託会社に分別管理体制を整備する義務を課しているところでございます。

それから、1枚おめくり頂きまして19ページでございます。

マル5といたしまして、信託事務の委託(自己執行義務)でございますけれども、受託者は、信託行為の定めによる場合、その他他人に信託事務の処理を委託することが信託の目的に照らして相当である場合は、他人に処理を委託することができるということでございまして、現行信託業法では、あらかじめ信託契約において定めがある場合に限定して可能というふうにしておりまして、信託業務の委託先は信託会社と同様の義務を負うと、さらに委託元である信託会社は、委託先が受益者に与えた損害について損害賠償責任を負うというふうに定められているところでございます。

それから最後のページ、20ページ目でございます。

諸外国におけます信託制度の状況でございます。アメリカにおきましては、我が国の信託法に相当するものとしては各州に信託法が定められております。また補足でございますけれども、ユニフォームトラストコード、すなわち統一信託法典など、各種の規制のハーモナイゼーションの試みもあるところでございます。

また、信託業法に相当するものといたしましては、これは財務省のOCC、通貨監督局が定めておりますレギュレーション9と申します規則がございまして、ここからOCCから免許を受けることで信託業務を兼営することが可能となっておりまして、銀行法の規制の結果として他業は制限されているということでございます。それから、州によりましては銀行以外の信託会社を認める州もございますが、免許により信託会社の設立が可能となっているところでございます。

また、イギリスにつきましては、我が国の信託法に相当するものとしてトラスティーアクト、すなわち受託者法が存在しております。また、投資信託の一部の類型などにつきましては、これを業として行う場合には金融サービス市場法の対象となるところでございます。

また、フランス・ドイツでは、信託は法律上、明確に位置づけられていないということでございます。

恐縮でございますが、主な論点と書いております縦紙2枚紙に即して今度はご説明をさせて頂きたいと思います。

これは、事務局といたしまして今度のご審議の一つの材料としてお出しさせて頂いているものでございます。

まず主な論点の最初でございますけれども、今回の信託制度見直しの考え方についてでございます。今般、信託法につきましては、多用なニーズに柔軟に対応できるよう、新しい形態の信託の導入、あるいは受託者の義務の任意規定化が検討されているところでございますけれども、信託の引き受けを業として行った場合には信託業法が適用され、ほかの金融業態と同様に取引の公正を確保し、顧客保護を図るため、信託業について参入条件や業務運営上のさまざまな義務が課されているところでございますが、信託法の見直しにあわせて信託業法の中でどういった点を見直していくべきかというのが第1の論点でございます。

それから、先ほどご説明させて頂きました新しい形態の信託でございますけれども、1つ目の点は、信託設定時における消極財産(債務)の引き受けについてでございます。信託法につきましては、信託の設定時から委託者となる者が負担している債務を信託財産に属する債務として引き受けることを可能とし、いわゆる積極財産と消極財産、すなわち債務の集合体である事業の信託も可能とすることが検討されております。他方、信託業法においては信託設定時からの消極財産、すなわち債務の引き受けを業として行うことについて今後どのように取り扱うのかという論点がございます。例でございますが、借入金が資産を大幅に上回るような事業について信託を設定したり受益権を販売することも可能となるわけでございますが、これを投資家保護の観点からどう考えるべきかという論点でございます。

2番目でございますが、信託宣言についてでございます。この信託宣言につきましては、事業提携や資産流動化における活用の可能性もある等の有用性が指摘されているわけでございますけれども、他方、通常の信託に比べて信託財産の二重譲渡が容易に行われる、あるいは第三者の検証がない信託の設定による信託受益権が販売されるといった懸念があるとの指摘もございます。したがいまして、信託業法におきまして、いわゆる信託宣言による信託設定を業として行うことについては、今後どのように取り扱うのかというのが論点でございます。

それから、3番目の類型といたしまして目的信託でございます。目的信託につきましては、現在、受益者の定めのない信託は公益目的の信託のみが認められておりますけれども、公益目的以外でも受益者の定めのない目的信託を認めることが検討されているところでございます。これにつきましては、公益に近い目的で受益者の存在しない信託に対するニーズに対応できると、こういった指摘があるところでございますけれども、信託業法におきまして公益目的以外の目的信託について業として行うということについて、今後どのように取り扱うべきかという論点でございます。

1ページ目の最後でございますが、限定責任信託についてでございます。限定責任信託につきましては、これは受託リスク軽減の観点から信託の利用可能性が広がるとの指摘がございますが、信託業法において限定責任信託について業として行うということについて、今後どのように取り扱うべきかという論点でございます。

1枚おめくり頂きまして2ページでございます。

こちらの論点、受託者等の義務についてでございますが、善管注意義務につきましては、先ほどご説明ございましたように任意規定化を可能とすることが検討されているわけでございますけれども、現行信託業法では受託者、すなわち信託会社と顧客の交渉力格差などにかんがみまして、顧客保護の観点から善管注意義務を一律に課しているわけでございますけれども、これをどうするかという論点でございます。

それから、分別管理義務でございますけれども、信託法については、委託者・受託者間の契約によりまして、動産・有価証券等について帳簿上の記載のみによる管理を認めることが検討されておりますが、信託業法上はどのように取り扱うかという論点がございます。これは注でございますが、現行信託業法では、現行信託法において一律に分別管理義務が課されているということを前提といたしまして、受託者に分別管理義務を適正に遂行するために体制整備といったものを求めているところでございます。

3番目の類型といたしまして忠実義務でございますが、信託法については、利益相反行為を防ぐための忠実義務を解除することを認めることが検討されておりますが、現行信託業法では、信託業者と顧客の交渉力の格差等にかんがみまして、顧客保護の観点から受託者に忠実義務を一律に課しているところでございます。これをどうするかという論点でございます。

最後に信託業務の委託についてでございますけれども、信託法については、信託契約に定めがなくとも、受託者が信託事務を第三者に委託することが信託目的に照らして相当であるというふうな場合には第三者への委託を認めることが検討されております。他方、現行信託業法では、受託者による業務の第三者への委託につきましては、顧客が不測の損害を被ることを防ぐため、あらかじめ信託契約上、委託する業務内容、委託先、委託先の選定基準等を明らかにすることを求めておりますが、これをどうするかという論点でございます。

さらに、信託法につきましては、信託事務を委託された第三者は、原則として受託者と同様の義務・責任を負わずに委託契約上の取り扱いに委ねられることが検討されているとろでございますけれども、現行信託業法では、受託者から義務を委託された第三者についても業務の適正な遂行を確保するため、受託者と同様、善管注意義務や忠実義務等を課しておりますけれども、これをどう考えるかといった論点でございます。

事務局からは以上でございます。

○ 岩原部会長

どうもありがとうございました。大変スピーディーにご説明頂きましてありがとうございます。

ただいまの法務省寺本参事官及び事務局からのご説明内容につきまして、皆様からご自由にご質問、ご意見等を頂きたいと存じます。いかがでございましょうか。

どうぞ、

○ 松谷委員

合同会合の開始に際しまして、長年信託業務を担ってまいりました者としまして総論的なことを申し上げたいと思います。

まず、信託業法の位置づけにつきまして、今後の我が国の信託業のさらなる発展のために重要と思われるポイントについてまず申し上げたいと思います。

まず、信託業法の位置づけでございますけれども、銀行法や、あるいは証取法と異なりまして、基本法である信託法が別途あるというところでございます。信託の場合では受託者の義務、受益者の権利といった基本的な関係が信託法で定められておりまして、信託業法では受益者保護上、追加で補完的に規制すべき規律、あるいは担い手に関する規律を規定するというのが基本的なたてつけではないかと理解しております。したがいまして、信託法と信託業法は、基本的な考え方について整合性がとれている必要があるということをまず申し上げておきたいと思います。

次に、今後の信託業の発展のために重要と思われる点について申し上げさせて頂きます。

これは、前回平成15年の信託に関するワーキング等でも我が信託業界から申し上げてきたことでございますけれども、2点でございます。1点は、信託制度の健全性の確保、2点目は、信託スキームの柔軟性の確保、この2点でございます。

1点目の信託制度の健全性の確保、これは、要は受益者保護ということでございまして、例えば受益者にとりまして同等の信託サービスについて、一方が信託業法の対象となって、もう一方が信託業法の対象にならないといったようなことはあり得ないというふうに思っております。そのようなケースではどちらも信託業法の対象とするのが当然であろうと考えております。

また、健全性の確保という意味では、信託スキームの濫用の防止という観点もあろうかと思います。前回のワーキングの場でも他の規制、例えば貸金業法であるとか、あるいは会社法と、こういったものを迂回するために信託を利用したいということがあるのではないかといった懸念の声が出ておりましたが、信託制度がそのような目的で使われますのは、制度そのものの信用にかかわるという意味で好ましくないというふうに考えております。

2点目の信託スキームの柔軟性の確保についてでございますが、委託者の意向を反映させた制度設計の自由度を向上させるということでございます。詳細は省きますけれども、私どもが実際に行っております信託業務は、お客様の多用なニーズに合わせまして運用目的、管理目的、資金調達目的、贈与目的、あるいは公益目的というように極めて多様でございます。受託者の裁量の程度も契約によりまして様々でございます。今回の改正におきましては、社会の多様なニーズに効率的に応えていくために信託スキームの柔軟性がより向上するような改正をぜひお願いしたいと考えております。

今回の信託法の改正の趣旨は、先ほどご説明ありましたように受益者による権利行使、すなわちガバナンスの仕組みを整備すると同時に受託者の義務を任意規定化し、当事者間の私的自治を尊重する、ということで、基本法である信託法におきまして私的自治が有効に行われるための受益者の権利行使に関する規定が整備されているわけでございます。ぜひ信託業法におきましても、私的自治の尊重という基本方針についてはその方向での改正をお願いしたいと存じます。

受託者の義務の任意規定だけにフォーカスを当てますと、受益者保護上、後退ではないかというイメージもあるかもしれませんけれども、これは決してそうではないと思います。受託者を過度に規制することで私的自治が損なわれたり、あるいはコストが増加したり、あるいは制度の硬直化を招いたり、こういったことのないようにぜひお願いをしたい。

繰り返しになりますけれども、受益者のニーズに応じてスキームや当事者の役割分担を柔軟に決定できるということがコストを抑えるという効果もあり、信託スキームの健全な発展に不可欠なものであり、ひいては金融技術のイノベーション、あるいは新たな金融サービスの提供を即すことができると考えております。

長くなって恐縮でございますけれども、各論部分で1点だけ申し上げさせて頂きます。

法務省、あるいは事務局からの説明にもありました信託宣言についてでございます。これは従来から悪用の懸念、具体的には財産の隠匿、債権者からの執行免脱といった目的で使われる可能性が高いとして我が国では認められないとされてきた制度であります。事務局の論点ペーパーにもありますが、資産流動化の局面で二重譲渡が容易になるのではないかといった指摘もございます。海外では行われているという意見もございますけれども、例えばアメリカにおきましては制度としては否定されておりませんが、民事的な目的で利用されているケースが多く、商事、特に資産の流動化では会計上のオフバランスの問題、あるいは倒産隔離効果の問題等でほとんど使われていないと聞いております。

こうした観点もあり、信託宣言につきましてはこの場で申し上げることではないかもしれませんけれども、制度として導入されることには反対の立場であることを申し述べさせて頂きます。

以上でございます。

○ 岩原部会長

ほかに、木村委員、どうぞ。

○ 木村委員

労働組合の立場でなかなか意見を言いづらいんですけれども、いろいろな信託に対して多用なニーズがあるということは理解をしております。ただ、いろいろな信託が出てきますと、より多くの一般の消費者などが信託を利用するということも想定をされるわけでありまして、第一部会では投資サービス法の議論も進められているわけでありますから、そのことも踏まえますとやはりこの信託についても信じて託すに足るしっかりとした参入条件とか、あるいは業務運営上の義務も課していくべきではないかというふうに考えます。

それからもう一つ、ちょっとこれは意見というよりも懸念事項でございますけれども、新しい形態の信託の活用方法として指摘をされている事項というのがこの横長の15ページにございますが、この中の事業信託、この事業信託というのは例えば委託者の事業に従事している労働者はどうなってしまうのかということがございます。事業とともにこの働いている人も委託先に移管をされてしまうのかと。仮にそうだとすると、例えば営業譲渡の場合などに適用されます労働契約承継法の適用を受けるのかとか、労働法上の観点からどうなのかという懸念がございます。今のところはこの程度で。

○ 岩原部会長

どうも。ほかに何か、原委員、どうぞ。

○ 原委員

消費者の立場からということで意見を述べさせて頂きます、私ども金融オンブズネットという消費者グループで活動しているのですが、毎年7月に金融保険商品の新聞広告の調査をしていて、今ちょうど今年のができたばかりなのですが、定点観測をしておりまして、今年の特徴として信託銀行の広告が非常に増えたというのが、この5年間との比較で大変目につく状況になってきているという感想を持っております。

そういう意味では、今回法制審で信託法の改正が検討されているということは聞き及んでおりましたけれども、やはり消費者側の意見を聞く場がなかなか設けられてこなかったことについては不本意な感じを持っておりますが、今回金融審の第二部会の場で短期間ですけれども私は検討を尽くして頂きたいと思っておりまして、特に参入の部分、それから今金融審議会で検討しております(仮称)投資サービス法となっておりますが、私は金融サービス市場法ということで検討を進めるべきだと思っておりますので、金融サービス市場法の検討と平仄を合わせる形で参入規制、それから勧誘、販売のルール、それから契約締結後のルール、特に契約締結後のルールのところでは善管注意義務と分別管理と、それから忠実義務があるわけなのですけれども、善管注意義務と忠実義務で少し柔軟化の話が出ておりますけれども、一般の消費者というところを対面というんでしょうか、なさるところでは、やはり私はあまり過度に規制はかけないで頂きたいというお話ではありましたけれども、特に信託銀行は高齢者が利用しているということも多いことも大変懸念しておりますので、現場の実態に即した形でのルールを決めていって頂きたいと思います。それから、苦情とか紛争のスキームについても、銀行業界の中に所属をしていらっしゃるということにはなりますけれども、ここの充実もぜひ図って頂きたいと考えております。

それから、1点ちょっと質問があったのですが、法制審議会で信託法の改正を審議していらっしゃる中で差し止めのことについてちょっと触れられていたのですが、3ページに受託者の違法行為の差止請求権というのがあるのですが、これは差し止めを請求できる人というのはどういう形になっているのかというのがもうちょっと説明頂けたらと思っております。今、消費者契約法で消費者団体への団体訴権の付与の検討を進めておりまして、これが差止請求ということで来年、年明け国会に法案を上程をする予定にしておりますので、ここについてもう少し仕組みを教えて頂けたらと思っております。

意見と、それから質問ということで、よろしくお願いします。

○ 岩原部会長

どうも。それでは、ただいまの後半の質問の点について、寺本さん、お願いします。

○ 寺本法務省民事局参事官

差止請求権につきましては、基本的には各受益者が、1人ずつが受託者に対して請求できる権利として考えておりまして、かつこれを信託契約、受託者と委託者の契約で奪うことはできない権利であると、非常に強力な権利であると考えているところでございます。ただ、受託者が極めて多数に及ぶような信託、典型的には受益証券が発行されている信託については、濫用的な権利行使のおそれもあり得るという点にかんがみまして、現在審議中ではございますけれども、例えば会社法の規律などを参考にいたしまして、一定期間の受益権の保有を要件とするというような方向性もあり得るのではないかというのが議論になっているところでございます。

ということで、そのような制限の可能性も含みつつ、基本的には各受益者一人一人が強行的に付与されている権利という位置づけでございます。

○ 岩原部会長

以上のようなご説明ですが、よろしいですか、原さん。

○ 原委員

はい。

○ 岩原部会長

それでは、翁委員、どうぞ。

○ 翁委員

先ほどの横紙の15ページの例などを見ましても、今まで信託というのは金融業に特殊な、信託銀行というところが担っていたということもあって、金融業について利用されるものだという認識があったと思うんですけれども、ますます今回の信託法の改正ということで、金融のみならずいろいろなさまざまな事業について利用されていく制度になっていくんだろうというように思います。そのように考えますと、企業活動の活性化とか経済の活性化という観点からこういった信託というのをどういうふうに活用していくかという観点でいろいろ工夫されていくと、経済界においても工夫されていくのではないかというふうに思います。そういう視点も非常によく考えながら議論していくことが重要だと思います。そう考えますとやはり過剰な規制にならない、それからいろいろなイノベーションを喚起していくと、そういうような観点で考えていくことが重要ではないかというように思います。

あともう一つは、受益者保護という観点につきましては、現在投資サービス法についても横断的な観点から議論されておりますので、そことどういうふうに平仄をとって議論していくかという点も重要なのではないかというふうに思っております。

○ 岩原部会長

ほかに。土井委員、どうぞ。

○ 土井委員

先ほどもお話がございましたけれども、やはりスキームの柔軟性の確保、これはぜひお願いをしたいと思っております。私どものところのはちょっと狭い範囲で申しわけないんですけれども知的財産権の信託をやらせて頂いておりますが、例えば著作権、これをつくり上げていくとなると一々著作権をそのまま一つずつ登録していかなきゃいけないと、こういったことが起こります。これを例えば事業といいますか、プロジェクトというような形での信託ができれば非常に効率が上がるということもございまして、ちょっと労働法上の問題はよくわかりませんけれども、著作権に関しては結構こういうスキームというのも役に立つのかなというふうに考えております。

○ 岩原部会長

ほかに何かございますでしょうか。

どうぞ、池尾委員。

○ 池尾委員

初回ですので、感想的なことでよろしいんだというふうに勝手に解釈しているんですけれども……

○ 岩原部会長

どうぞ、遠慮なく。

○ 池尾委員

事務局からの資料の3番目で主な論点というのの案が出ておりますけれども、それで、信託の引き受けを業として行った場合には信託業法が適用されるということなんですが、先ほどの翁さんの発言等にも関連しますけれども、信託の使われ方が多様化してくるとすると、業として行うということ自体がどういうことなのかというのが以前ほどは明白ではなくなってくるということがあると思うんですね。繰り返しになりますけれども、専ら金融業に関連して使われるというときと、それ以外のいろいろな幅広いビジネスとのかかわりで使われるという場合だと何が業なんだということの定義が非常に難しくなってくると思うので、そこのところを、当たり前のことですけれどもあまりリジッドにすると制約的になり過ぎるし、かといって広げるといろいろ問題が起こりかねないということで、そもそもの前提である業として行った場合ということ自体論点としてまずあるんではないかという気がしておりまして、以下のことは業としてやっているというふうにされた人についてどう考えるかというのも重要な論点ですが、入り口のところで大きな論点が1つあるんではないかというふうに思いましたのでちょっと感想として指摘しておきたいと思います。

○ 岩原部会長

どうも。野村委員、どうぞ。

○ 野村委員

今の池尾委員のご意見とほぼ同じようなことなのかもしれないんですが、多用な信託の利用方法というのを想定して民事的な法規制としてそれを柔軟化していくというのは当然必要でありますし、その方向は大変私も尊重されるべきだというふうに思いますが、それらをすべて業としてやるのかといいますと、どのぐらいがビジネスとして念頭に置かれていて、どういうようなものを実際にやろうとしておられるのかということがやや逆に言うと見えなくなってくるという気がいたします。

先ほど、私どもの法律的な観点からいけば営利の目的をもって反復、継続してというような形のものを業としてと従来解釈してきたわけですが、そうなりますと当然先行投資がかなり必要になっていて、しかも大規模にそれを繰り返しやっていくというようなものを業としてのイメージとして考えますと、どのぐらいのビジネスを今後この新しいスキームを使って展開されようとしておられるのかということの認識ができないとなかなか規制がしづらないなと、規制を議論しづらないなというところがあるわけです。一般論、抽象論として対応性を認めてほしいということで漠然とすべて可能にしてほしいというのではなくて、大体どういうものが今後の展開のビジネスとして想定されているのかということを少し教えて頂けると大変ありがたいというふうに思います。もちろん将来のイノベーションのことがありますので、今の段階で考えられているものがすべてだということを私が申し上げるわけではもちろんありませんけれども、今の段階でどのようなことが想定されているのかということをちょっと業界の方々に少し教えて頂くという機会を設けないと議論がしづらいのかなというふうに思いますので、ぜひその点、今この場では結構ですけれども、いずれ機会があれば教えて頂ければと思います。

○ 岩原部会長

どうも。今この場で何かその点についてお答えになりたいというのがございましたら伺いますが、よろしいですか。じゃあ、ほかのご意見等いかがでしょうか。

今松さん、どうぞ。

○ 今松委員

大正11年にできた信託法が当然これだけ時代が激変している中で改正というのは、これはある意味当たり前のことだろうと思います。当然今の時代に合った形で今やっておられる、そこはそういう形でそのように評価しております。

問題としては、あとは先ほど池尾先生が大体言われたようなこととほぼ同じなんですけれども、基本的に何が、より多様なニーズに対応できる、これはそういう形でより社会そのものも活性化する、あるいは経済そのものがよりこういう仕組みを使っていけるという、そういう方向はよい、今の金融の自由化等々の中で望ましいことなわけですが、そこで実際により顧客保護であるとかいろいろな取引の公正というこういう観点、一般論的な形での論点としてはずっとこういうことを議論ということはわかりますが、やはり現実どのようにどう適用されるだろうか、どういうことが想定されるだろうか、ある程度そういうことを少し、これまた同じく実際いろいろな形で業をやっておられる方、あるいはそれをお使いにこれからなろうとする方等々に若干そういうところを少し想定しながら少し議論をしていった方がいいんではないかというふうな感じがします。先ほど土井さんがおっしゃられたような形もどういう枠組みとしてはめていった場合こういうものが出てくる、そうするとこういうところについては一定やはりそれなりの歯どめ等々必要である、そういう考え方になってくるんではないかというふうに思っております。

○ 岩原部会長

吉野委員、どうぞ。

○ 吉野委員

ほとんど同じ意見なんですが、こちらの論点整理以外にも多分現行で使い勝手の悪い部分というのがまだまだあるかもしれませんので、もう少し一度か二度いろいろな方々からヒアリングをして頂いて、スキームとしてどういうものがさらに必要かというのをもう少し幅広くとって頂ければと思います。

それから、その次に担い手としてどういう人たちがそれぞれのスキームにとっていいのかというのをもう一度考えて頂ければいいのではないかと思うんですけれども。

○ 岩原部会長

池尾委員に始まって大体やや類似したご意見を頂いたわけでありますが、何かその辺の具体的な問題としてどういうふうな場合に問題になり得るかというようなことについて、あるいは何か事務局の方で補足で説明して頂いてもいいかと思いますが、何かありますか。

○ 保井信託法令準備室長

この場でということでは必ずしもございませんけれども、また委員の先生方からご指摘の頂いた具体的な信託のニーズにつきまして、事務局といたしましてどのようなインプットができるかということを検討させて頂ければと思いますので、よろしくお願いいたします。

○ 岩原部会長

それでは、それ以外に何かご質問、ご意見、神作委員、お願いします。

○ 神作委員

受益者保護の観点から一言コメントさせて頂きたいと思います。

今回の信託法改正におきましては、特に私的自治の尊重ということで注意義務、忠実義務を初めとしてさまざまなところで任意法規化が進められていると承知しております。しかし他方、私的自治の尊重の前提といたしましては、当事者が十分な情報に基づいて合理的な意思決定ができることが前提となっていると思います。ところが、信託契約においてはそもそも真の利害関係人である受益者が当初の契約関係の当事者ではない場合があるという事情があります。すなわち,委託者と受託者間で信託契約が締結されますので、そもそも構造上受益者が最初から阻害されている場合があるという問題があろうかと思います。

さらに、集団的な意思決定、例えば受益者集会を初めとして集団的意思決定を認めることも信託法改正により予定されているようでございますけれども、集団的意思決定というのは私的自治、単純なる当事者間の意思の合致を超えた問題、すなわち多数者と少数派との間の利害関係の対立等々複雑な問題が出てまいりますので、形式的な私的自治の尊重のあまり実質的な受益者保護が図られないといったことがくれぐれも生じないような、そのような手当てを業法でして頂く必要が大きいのではないかと考えております。

特に問題が生じますと、事後的な救済、私法上の救済では実際にはほとんど救済にならないということは、これは大いに考えられることでございますので、先ほどの差し止めのような手段が認められるということもありますけれども、しかし私法上の救済というのは専ら主として事後的な救済になると思います。被害者がたくさん出てからでは遅いということもございますので、業法の議論におきましては,そういった実質的な私的自治の尊重,受益者保護が図られるような、そのような観点からの任意法規化の推進と信託の柔軟性の確保のバランスが追求される必要があると考えております。

○ 岩原部会長

どうもありがとうございました。根本的な問題ですね。

藤田委員、お願いします。

○ 藤田委員

今の神作委員の意見に若干補足と、それとその議論をするときの注意点のようなものについて私の感想を述べさせて頂ければと思います。

確かに信託法の改正の方におきましては、私的自治を一般にかなり広げているのは確かだとは思います。信託のアレジメントを組むときに信託契約に定めることによってさまざまな信託法のもともと設定しているルール以外のアレジメントを組むことが認められていまして、その中には例えば受益者の意思決定等も,受益者集会といったものを設けるのは自由で、それで多数決をする場合に例えばいろいろな手続も自由に決められるといったことが書かれてします。そして,そういったものについて投資家保護といった観点から一定の保護を強行法的に与えるような仕組みがあるいは必要なのかもしれません。それは信託法のレベルではなくて業法レベルで行うべきことです。ただそういったことを考えるときに1つ注意しなくてはいけないことは、それをオファーする法律はどのような業法においてやるのが適切なのかということで、その担い手となる法律の棲み分けについては一度きっちり整理しておく必要があると思います。信託法にないから,投資家保護関連はなんでも信託業法だということでは当然ではないと思います。

信託に関する私法的な規律というのは信託業法にもございますけれども、その下にある例えば投信法にもございますし、流動化法にもございます。例えば多数当事者の投資家の多数決のようなものについてかちっとした固いスキーム、事前の開示に基づいた例えば受益者集会前に、何週間前にアジェンダが送られてきて、必要な資料が送られてきて多数決要件も厳格に定めたものは動かせないといったものは、例えば投信法上の多数決であれば、よく分かります。今はそもそも多数決というのが取り込まれていなくて,会社型の投信だけで認められているのですけれども、仮に信託法で受益者集会のものが認められて、それを受けて直すとすればそこで直すということも一つの仕切りかもしれません。それと土地信託なんかにおける多数決の規制の仕方とは,あるいは違ってくるかもしれません。ですから仮に業法で投資家保護のようなものを考えるにしても、その仕分けは信託業法とそのほかの信託に関するさまざまな個別的業法規制とのすみ分けもにらんだ上でしないと適切なことはできない。うっかり信託法では投資家保護のために不十分だから全部信託業法にぶち込むといったことをすると,かえって最大公約数的な不十分な規制になる危険もあるかと思います。

ですから、信託法が自由を強調している、だから信託業法では投資家保護のために必要だという、そういう二本立てだけで考えるのではなくて、その先に,業法的な規制法のうちのどこにおさめるのが一番適切なすみ分けになるのかということを考えた上でアジェンダ設定もして頂きたい。確かに受益者関係の話というのは今日のこれには入っていなくて、それは入っていないというのはおよそ議論する、いつまでも議論する必要がないという趣旨ではないと思うんですけれども、ここでするのか、あるいはそのさらに先でやるのかといったことを一度事務局の方できっちり問題を仕分けたした上でまた改めて提示して頂ければというふうに思います。

○ 岩原部会長

どうも。道垣内委員、どうぞ。

○ 道垣内委員

私も感想めいた話になるんですが、先ほどから投資家保護という話が出ているんですが、ちょっとそれとは違った形から信託業法というのが何をしなければならないのかということについて考えているところを述べさせて頂きたいと思うんですけれども、根本的には信託とは何かという問題にかかわってくるわけでありまして、信託というのは最低限何を満たしていなきゃいけないかということだと思うんです。信託と言えるためには、そして実は実態法の解釈、先ほど寺本参事官からお話があったときにいろいろ任意法規化はいたしますけれども、例えば完全に自分の財産と同じように使えるというふうな約束をしていると、それはそもそも信託ではないということになってくるという話が、いろいろなところでお話をしていますのでここで伺ったかどうかは忘れてしまいましたけれども、という話があったような気もいたしますけれども、実態法としての信託法の解釈としては、ある種の約定がなされたときに、確かにすべては任意法規なのでいろいろな約定はできると、やってみると、当事者は信託だという言葉を使っていると、しかしながらこれは信託としての最低限のメルクマールも満たしていないよね、だからこれは委任に過ぎませんとか、あるいは脱法信託であって無効でありますというふうに、実態法解釈というのはそういうふうにして行えば済む問題があるわけです。済むという側面があるわけなんですね。しかるに業法ということになりますと、まず幾らいろいろなものが任意法規化されていたとしても、最低限何を満たしているものを信託として補足して規制していくのかということがありますので、個別的な分別管理義務についてはこうだ、忠実義務についてはこうだというだけではなくて、トータルとしてどのような最低限な要素を満たしておかなければならないのかというふうな視点が必要なのではないかというふうに思うわけです。

2点ほどちょっと具体例を述べますと、先ほど松谷委員の方から信託宣言そのものに反対であるという話が出ましたけれども、その信託宣言そのものには仮に反対しないと仮定いたしましても、自分の財産を自分で受託者となって信託にするんだというふうにいうと、そして受益者というのをある程度外に持って行かなきゃいけないわけなんですが、全部の受益権を第三者に取得させるという必要はなくて、受益者の一人に受託者がなるということは現行の信託法のもとでも認められているわけですね。しかるに、それじゃ99%手元に残してよいのかというとこれはまずいんだと思うんですね。実態法の解釈としては信託そのものの設定の意思がないと、だから信託でないというふうに言ってしまえば済むんですけれども、業法で規制するときにそれをどういうふうにあらかじめ考えておくのかということがあるような気がいたします。

目的信託に関しましても、例えば受益者を定めない信託ということで信託を設定して例えば何年間か目的信託をすると、しかし実際には配当みたいなものが受益者、受益者ではありませんけれども受給者ですね、その定められたある人に対して分配されていくわけですが、その分配というのが事実上ほとんど起きないというふうなシステムを設計しておく、これは簡単な話で、ほとんどの投資の結果が信託財産として留保されていくという形に信託行為をつくっておけばそれでいいわけであります。

そして、10年後なら10年後にその目的信託が終了して帰属権利者としての委託者に戻っていくというふうなスキームをつくってしまいますと、それは完全に一時期外に置いておいて差し押さえ禁止にしておくというふうな効果を持つわけでありまして、これはやはり、繰り返しになりますが実態法としての解釈としてはいろいろいできるわけですけれども、業法としてはしかるべく何らかの処理が必要なのではないかというふうに思うわけです。

もう一点、今度は全然違う方向からなんですが、今は最低限満たしておくべき事柄は何かという話なんですが、池尾委員がおっしゃったことにも関係するんですが、満たしてしまっちゃうというのをどう評価するのかという問題が、実は前回の信託業法の改正のときからあったような気がするんですね。ここで出ていたのも、このワーキンググループで出ていたのも例えば弁護士預かり金というのについてどうするかということについて、その以前の信託、改正前の信託業法の解釈としては、投資をしないようなスキームについては信託業法が適用されないというふうな解釈もあり得たのかもしれないんですが、現在は運用型というのと管理型というのを分けてやっておりますので、管理だけをやるというのが信託業法から類型的に外れるということは解釈としてあり得ないということになったかというふうに思います。

そうすると、弁護士預かり金なんかも繰り返してやっておりますと確実に入ってくるわけなんですが、どうしてそのことが問題になるのかと言いますと、現在例えば弁護士預かり金に仮に判決が出たとすると、恐らく信託法の類推適用なんていうことを言うんだと思うんです、最高裁とか、わかりませんけれども裁判所とかが、それが何で類推適用とわざわざ言うかというとやはりこれは信託であると、信託の適用であるというところに業法上の問題が既に出てくる。実態法上、本当は信託であるというふうに言うべきなのに、信託法の適用であると言うべきなのに類推適用であるというふうにごまかす方向に信託業法がそういう足かせをはめるのはちょっと困るという感じがいたすわけでありまして、今度は満たしてしまうということに対してどういうふうに規律をするのかということもあわせて今回も検討をして頂ければというふうに思う次第であります。

以上です。

○ 岩原部会長

どうも。濱田委員、どうぞ。

○ 濱田委員

今弁護士の件が出ましたので、弁護士会でもそういう仕事をあまりしないのでよくわからないのですが、さっき池尾先生がおっしゃったとおり、私も二番目の業法としてというところをぜひきちっとすべきだと思います。ご承知のとおり、業法において行政はどうするのかということもあって、営利の目的をもって多数からとありますけれども、反復継続性がどれだけ要るのかとか、四、五回以上やったら宅建業になるのではないかというようなことが問題となります。お坊さんが屋根か本堂を直すために山林を一六回くらいに分けて売ったのが、それは営利目的ではないと言ったけれども認められなかったという、多分裁判例があったと思います。各業法によって各省庁、所管の業法によって営業のためとか業を目的としてというのが必ずしも一致しているのかどうか私は時々疑問に思うことがあります。これをこの金融審議会でやるかどうかというのは別の問題ですれども、やはりそこは少し整理をされる必要があるかもしれないと思います。

今の私どもの業界のことに関連して言うと、弁護士の預かり金をつくったときは私的な口座と一緒になっていると差し押さえの問題、いろいろな問題があるので分けましょうと言うことになりましたが、その後、他の弁護士が書いている解説を何年か後に見て、これは信託ではないかと書いている人もいるのですけれども、多分その制度をつくったときにはそんなことまで考えていなかったのではないかと思います。これはアメリカにその制度が既にありますが、大分前に調べたので忘れましたが、アメリカの場合は信託口座というのは信託でちゃんとやるわけです。それが日本の場合は信託という言葉や法律をよく知っているべき弁護士が使わないで預かり金というふうにしたわけですから、その性格を最高裁に預けてしまったというふうに私は思わないのでむしろ信託ではないのではないかと、本来は。したがって、類推適用というふうになるのではないかという気がするのですが。ずっと前から清算型の、例えば私的整理をするときに、債務者のところに財産を置いていると差し押さえとかが来るので整理ができないというので弁護士が自分のところに信託で名義を移すということは実際にありました。それについて業法違反だということで旧大蔵省とか金融庁からクレームがついたことはないと思うのです。それはなぜかというと多分その仕切りは報酬をもらっている、営業性、対価性の問題で、それは弁護士の業務として任意整理をすることによる対価であって、その手段として継続反復して何回も任意整理を行っている先生が、信託を利用して名義を移転すれば反復性はあるかもしれないけれども、そこは営利性がないからいいのではないかとか、何かそういうくくりをしていたのかどうか、それがもとにただせば営利性がなくても信託業法は、その規制の対象とするのだとすると、今道垣内先生がおっしゃったような問題は、ずっと前からあったと、しかし一度も問題にされることはなかったと、それはなぜかというような問題も含めて業の問題というのはやはり一度入り口の問題として議論をしておくべきではないかと考えます。

ほかにもいろいろ感想ありますが、今日はそこにとどめておきます。

○ 岩原部会長

ほかに何か、田中委員、どうぞ。

○ 田中委員

私の理解はこういうことなんですが、法務省で信託法について任意法規化を初めとして私的自治の範囲で自由な設計を重んずるというのが今にして表面化したのは、お金の世界でこの20年秩序ができず、ごく最近で言えばゼロ金利と言われるように数年前までは銀行を一般的に言えば救済するため、昨今では政府債務の利払いが高騰したでは国がもたないという理由から結局お金の世界が封じ込められて普通の秩序、ゼロ金利が続くということはお金の秩序が極めて不安定、何か一つ起きれば大きく流動化するという可能性が既に出てきているわけです。それが背景にあるんではないかと。

11月に入ってから、為替レートがご存じのように円安に振れていますけれども、いろいろな人の意見を聞くと日本の中のお金がやはり海外に出ているわけですね。どうやらアメリカではバーナンキが登場するまでにさらに短期金利は0.75%引き上げられる、その状態になれば日米金利差というのは拡大するので、それを早く察知した人から、その時点になるとアメリカの高金利を享受しようとしてドルを買う人か出る、一番はすっこいやつが先に買い始めたということで、実は日本のお金が動き出しているということがあるわけですけれども、これはこの20年我が国でお金の世界の秩序ができなかった、これはまさに金融論の講義で池尾先生にやってもらうことなんですけれども、こういう状態が長く続くとどうやってブレイクスルーするのかというのが極めて重要なことになるわけです。信託は少なくとも教科書に書いてある限りでいうと、連邦政府が米国において連邦政府ができる前からコミュニティーの中で信託の敢行があったわけで、まさに私的自治の範囲内においていろいろな形で信託行為が行われたと。あるいはもっと歴史をさかのぼれば中世にまでさかのぼるという話もあるんだそうですけれども、いずれにしろ現在一般消費者を保護するための何か仕組みが要るという現代性の極めて強いものから一度開放して、この分野においてブレイクスルーを図る以外ないということだと思うんですね。

普通研究開発というのは時間がかかるし、金融商品についても景気の反感から始まって、その原油価格が上がったり下がったりとか、オルタナティブインベンストしても幾つかつくってみたっていろいろな状況の中に耐え得るかどうかというのは相当時間がかかわるわけで一般的に売り出すなんていう、商品で売り出すなんていう行為ができるのはよほどチェックがきいた後、液晶だって30年手がけてからブレイクするまでに30年かかっているというぐらいのものですから、一般的な商品として売り出す前に特定のいわば私的自治というんですか、はっきりお互いが認定できる範囲内において走り始める以外にこういうものは動き出さないわけだと思うんですね。

そうしたら、金融庁が所管する範囲とは別のところで、私的自治の範囲内において必要な研究開発も進めなければいけないし、損得はもちろん、お金の世界ですから起きるんだけれども、それは承知の上という世界を改めてつくり込むと、そういうことが必要なんだと。だから、その便益はやがてノウハウが高まれば一般の人にまでも行き渡るけれども、リスクをとってでもそこに挑戦する人を生かすためにというか、そういう空間をつくるために信託業法とは別の信託のスキームをつくって私的自治の範囲で任意法規化を進めるということだから、例えばここで消費者保護の見地からいってそれはけしからんというたぐいの話をすることではないんではないかと。そういう領域をつくっておく必要があるという、法務省がどういうふうに説明されているかわかりませんが、私はそういうこととして明確に説明された方がいいと。何でも現代国家、1億2,000万同じレギュレーションのもとにあるというふうに言っていたんでは話が始まらないところまで来ているわけで、むしろ昨今の財政は緊縮するときに金融は緩めておけという、永田町の声がこんなに大きくなってくるところを見ると、それで円安が進んでいるという状態を考えますと、今のお金の秩序は崩れっ放しですから、これえらい動きが起きるかもしれないという気さえしているんですけれども、そういうときにやはりこの特定の空間で当事者合意の上でいろいろな自由な試みができるという空間を明確につくるんだと法務省が言われたらいいんではないかというのが私の理解なんですが、もしコメントして頂ければ。

○ 岩原部会長

何か寺本さん、コメントされますか。

○ 寺本法務省民事局参事官

おっしゃる趣旨は全く我々も同感といいますか、今後この部会の方で議論させて頂ければというふうに思っているわけでございますが、法制審議会としても、改正信託法で任意法規化を含めた合理化を図っているとはいっても、受益者の権利保護にも意を十分配っているわけでございますし、先ほどご批判のあった信託宣言につきましても、委託者の債権者の保護とか、あるいは悪用を防ぐための終了命令の制度とか、いろいろな制度的手当てを講じてバランスを図っているところでございますので、信託法の精神も尊重しつつ、他方、金融監督の必要というのもあるとは思いますので、そのバランスのとれた制度の整備が図られていけばいいというのが現時点での感想でございます。

○ 岩原部会長

原委員、ごめんなさい、その後で今野委員。

○ 原委員

どうぞ先に。

○ 岩原部会長

そうですか。じゃあ、今野委員、お願いします。

○ 今野委員

今いろいろな方々のご意見を伺いながら私の立場、つまりニュービジネスとかベンチャーの立場からこのテーマを考えたときに、この80年ぶりの信託法改正というのはもしかしたらとてもすばらしいチャンスではないのかという気がいたしておりました。人々の暮らし方や家族関係、人間関係がすべてが変わっていく中で、いろいろな生活シーンの中で活用されるであろうというさまざまなニーズ、それにまたこたえるという形でいろいろなビジネスチャンスが生まれてくるのではないかと思っております。私も小さなサービスをたくさん生み出してきた者としていつも思うのは、設計したものの意図をはるかに越えて思いがけない方向にニーズとシーズが生まれていって、どんどん新しいものを生み出していくという可能性がここにもあるのではないかという気がいたしますので、初めから保護とか規制という発想でこの問題を考えるのではなく、できましたらこの大きなチャンスを思い切ってニーズの側からおおらかに設計して、さっきから皆さんがおっしゃっているように自己責任のもとに動かしてみる、使いながら、もし問題がありそうならば、それに関して具体的に保護とか規制のあり方を真剣に考えるということにしてはいかがかと思います。

○ 岩原部会長

それでは原委員、お願いします。

○ 原委員

いろいろなご意見お聞きしていて、少し自分でも言い足りなかったかなという感じがしているのですが、信託というこの仕組みを柔軟に利用していこうという、この仕組み自体の柔軟化とか、使い勝手のよさとか、そういうことについては私も同感というのでしょうか、そういうやわらかさというのはあってしかるべきだろうと思っております。

しかし、大変懸念をしているのが、保険分野についても同様な感じを持っているのですが、法制審の方で信託法を持っているわけですね。信託のスキームを検討していらっしゃる、金融庁の側にはこの信託業法というのがあるわけなのですが、これが業法なので業というふうに言った場合どこまでを業とするのかということで、どういう網のかけ方というとおかしいかもしれませんが、範囲までを含めるべきかということになると思うのですが、そういうときにどうしても一般の消費者の視点のようなところが落ちてしまっていると。保険も法制審でいけば商法の中に告知義務の規定が入っていると。では保険業法の中にあるかというと、保険業法の中には特にそういう規定はなくて、販売・勧誘のことが業法第300条でちょっと出ているだけという感じで、どうしても当事者の一方が何か抜けている金融政策になっていないかということが大変私としては気になっているところです。今回の信託法について言えば、いま、金融審議会で金融サービス市場法の検討をしているわけなので、金融サービス市場法の中に盛り込むべきこと、それから信託法の中で従前やはり考えておいて頂きたいことと、それから業法で何ができるかということでの整理の仕方が必要ではないのかという感じがしております。

そういう意味で消費者に対するというところは、私としては何か過剰な規制というよりかは市場の中での公正なルールということを考えたときに何が消費者の政策としてとられるのかという話になっていくのではないかと思いますので、対消費者へのルールのところについては全体の中での位置づけで検討を継続して頂きたいと思います。

以上です。

○ 岩原部会長

どうも。ほかに何かございますでしょうか。よろしゅうございましょうか。

それでは、ほぼ時間もまいりましたので、本日の審議はこれにて終了させて頂きたいと思います。多用なご意見を多数、貴重なご意見を頂きまして誠にありがとうございます。ただいま頂きましたご意見を整理し、事務局に論点を整理した資料を提出して頂きまして、次回はそれをもとにさらにご審議頂ければと考えております。

なお、この後記者会見を行いまして、本日の会合の模様につきまして私の方からお話をさせて頂きたいと存じます。

最後になりましたが、事務局の方からご連絡がございましたらお願いしたいと存じます。

○ 保井信託法令準備室長

かしこまりました。

皆様、本日は精力的なご議論を頂きましてまことにありがとうございました。委員の先生方におかれましては、本日のご議論を踏まえまして、今後多岐にわたるご審議をお願いするということになると存じますけれども、どうぞよろしくお願いいたします。

次回の会合につきましては、11月29日火曜日の午後4時から2時間程度の予定で開催させて頂ければと存じております。議事内容につきましては、追って開催通知とともにご連絡さしあげたく存じますので、よろしくお願いたします。ご多忙のこととは存じますが、何とぞよろしくお願いいたします。

事務局からは以上でございます。

○ 岩原部会長

どうもありがとうございました。

それでは、以上をもちまして本日の会合を終了させて頂きます。どうもありがとうございました。

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