金融審議会金融分科会第二部会(第28回)・「信託に関するWG」(第15回)合同会合議事録

日時:平成18年1月17日(火)10時00分~12時00分

場所:中央合同庁舎第4号館9階 金融庁特別会議室

○ 岩原部会長

それでは、時間でございますので始めさせて頂きたいと存じます。

皆様、新年あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。

さて、第28回金融審議会金融分科会第二部会と第15回信託に関するワーキンググループの合同会合を開催いたします。

皆様、お忙しいところをお集まり頂きまして誠にありがとうございます。

会議に先立ちまして、本日の会議は公開ということになっておりますので、その点ご了解をお願いいたしたいと思っています。

それでは議事に入ります。

本日の予定でございますが、前回の審議において事務局提出の主な論点をもとにご議論頂き、ご意見を多数頂いたところでございますが、その意見を整理した資料、「信託法改正に伴う信託業法の見直しについて(たたき台)」を事務局にご用意頂いておりますので、それを事務局からご説明頂き、それに基づきご議論をして頂ければと考えております。

それでは、「信託法改正に伴う信託業法の見直しについて(たたき台)」につき、保井信託法令準備室長からご説明をお願いしたいと思います。

○ 保井信託法令準備室長

お手元にございます「信託法改正に伴う信託業法の見直しについて(たたき台)」というペーパーをご覧頂ければと存じます。これは全体で7ページでございますけれども、4つのパートに分かれておりまして、1つ目が今回の業法の見直しの考え方についてまとめてございます。

2ページ目をご確認頂きまして、2.のところでございますけれども、これは新しい形態の信託が今回導入されるわけでございますけれども、これについての信託業規制の範囲・内容の整理ということでございます。

それから3ページ以下につきましては、3.といたしまして、それぞれ新しく入ってまいります信託形態について業法上考えられる措置を個別に信託宣言、それからいわゆるネットマイナス信託、事業信託、目的信託、限定責任信託について書いております。

5ページの4.受託者等の義務につきましては、受託者の義務について今回の整理をさせて頂いているところでございまして、コンサイスにまとめているペーパーでございますので、恐縮でございますが、早口で全文読み上げさせて頂きます。

○ 大沢課長補佐

それでは、読み上げさせて頂きます。

信託法改正に伴う信託業法の見直しについて(たたき台)。

1 .今回の信託業法見直しの考え方について。

金融審議会金融分科会第二部会・信託WG合同会合においては、法制審議会において検討が進められている信託法改正に伴う信託業法の見直しについて審議を行った。

現在、法制審議会において検討が進められている方向で信託法が改正された場合の、信託業法上の対応にかかる基本的な考え方については、以下のように整理することが適当と考えられる。

マル1 信託の一般ルールである信託法によって関係者に一定の保護がなされているのに加えて、信託業法を適用することの意味は、一般に業者と不特定多数の顧客が取引を行う際に情報力・交渉力に差があることを踏まえて、顧客(受益者等)を保護し、業者に対する信頼性を確保し、安定的な業務遂行を行わせるために、業者に一定の義務を課すものであり、これは今回の信託法改正後も同様である。

マル2 信託業法の基本的枠組みについては、昨年の抜本改正で信託業の担い手や信託財産対象を拡大した際に、信託業に対する信頼確保の観点から構築されたもの。

今回の改正においては、信託法改正に伴って追加される新しい信託類型等を信託業法上適切に位置付けるために必要な措置を早急に検討することが基本。その上で、新しい信託類型の活用状況やニーズを十分に見極め、更に信託業規制を見直す必要性を議論すべき。

マル3 信託宣言をはじめとする新しい信託類型を追加することに伴い、信託業規制の対象範囲を整理する。

現行の信託業規制の範囲については、信託の引受けの反復継続性・収支相償性を要件としているが、これは基本的には、業者と不特定多数の委託者ひいては受益者との取引が行われ得るかという考え方を反映した基準と考えられ、今後とも同様の考え方をとることが適当と考えられる。

これを踏まえ、今後、信託宣言を活用する場合の業規制の範囲については、不特定多数の受益者等を予定しているかどうかという考え方に基づいて判断し、受益者等が限定されている場合については信託業規制の範囲外とする。

マル4 信託宣言等の新しい信託類型について通常の信託と同様の考え方で信託業規制の対象とした上で、適切に参入が認められるように、現行の兼業規制等については必要な見直しを行う。ただし、業務運営上の行為規制等については、従来の信託形態との相違に基づいて、受益者等の保護の観点から必要であれば、通常の信託形態の場合に加えて適切な措置を講じる。

マル5 信託の一般ルールたる信託法において受託者等の義務が緩和されたとしても、業者対顧客の関係を前提とした信託業法上は、受益者等の保護のために必要な義務付けは維持する。ただし、実務上不都合が生じている部分については、受益者等の保護の要請を勘案しながら個別に検討する。

2 .新しい形態の信託の導入に対応した信託業規制の範囲・内容の整理。

(1) 一般的に、営業とは反復継続して収支相償うよう行うことを言うことから、現行信託業法上は、受託者としての業務に反復継続性が認められ、収支相償うよう行う場合は信託業に該当することとなるが、これは、委託者ひいては受益者が不特定多数の場合を信託業規制の対象とすべきことを反映したものと考えられる。

今後、特に信託宣言が導入されることにより、事業会社自らが自己の財産を信託設定する場合について、どういった場合を信託業規制の対象とすべきかが問題となる。

(2) 信託業法は業者対顧客の情報力・交渉力の格差を踏まえて、顧客(受益者等)を保護し、業者(信託会社)に対する信頼性を確保することを目的としていることから、信託宣言が活用される場合においても、不特定多数の受益者等を相手方とするときには信託業規制の対象とすることが考えられる。

こうした考え方に基づけば、企業における特定の事業部門や債権等を信託宣言により信託設定するときの当該企業がその受益権を不特定多数の投資家に販売することを前提に信託設定する場合には、信託業規制の対象とすることになる。

(3) このほか、弁護士の預かり金等、他の取引に伴って金銭等を預かることが信託と認められる場合であっても、予め当事者に信託設定の明確な意思がないときや、他取引に付随して決済用の金銭の管理を行うにとどまり受託者の裁量が小さいと認められるときには、信託業規制の対象外とすることが適当と考えられる。

(4) 信託宣言などの新しい信託類型を信託業として取り扱う場合、兼業規制が参入障壁となるとの指摘があるが、信託会社の兼業規制については、信託業規制の実効性確保のため、信託業への他業リスクの遮断、利益相反行為の防止、信託業務の安定的運営等の趣旨から課しているもの。

確かに、信託会社は、銀行・保険会社と異なり、破綻しても信託財産は制度上は倒産隔離されることとなっており、仮に信託会社が信託財産を費消したとしても、受益者は事後的に損失補填責任を追及することも可能である。しかし、信託会社は、銀行・保険会社と同様に、自己の名義・計算で顧客財産を管理運用しており、分別管理義務を怠り財産が混同されたまま金銭等が費消された場合には実態上は倒産隔離が完全には働かない。

これを踏まえれば、信託財産の流用等により受益者が被る損害を未然に防止し、信託業を営む者の健全性、安定的な業務運営を確保する観点から、今後も何らかの形で兼業に対する規制は必要と考えられる。

(5) また、兼業規制については、信託業のような本業とリスクの異なる事業を行う場合には、会社設立のコストはかかるものの、子会社形態で行えばよく、あえて事業会社本体に信託業を兼業させる必要はないので、兼業規制の緩和の必要はない場合が多いとの指摘もある。なお、同一法人で信託業と他業を行わせると、法人全体の健全性を保つため、他業の健全性まで監督する必要が生じることを考えれば、子会社形態を活用した方が全体として自由な事業運営ができるとの考え方もある。

(6) ただし、事業会社が信託業を兼営し、信託宣言を活用して、新規事業に参入する際に事業信託を通じて多数投資家から資金調達を行ったり、債権流動化を行ったりするニーズも想定されることから、それに対応して現行の兼業規制は見直すべきとの指摘があった。特に、事業会社が信託業を兼営して信託宣言を活用する場合については、現行の兼業規制をそのまま適用すると、事業会社本体が信託宣言を業として行うことは事実上難しくなるため、例えば、何らかの指標により信託業以外の他業の健全性が客観的に担保されていることを求めれば足りるとの指摘がある。

3 .それぞれの信託形態について信託業法上考えられる措置。

(1) 信託宣言。

マル1 信託宣言は、委託者と受託者が同一であることを除いては、受益者保護の必要性は通常の信託と同様であり、信託宣言により不特定多数の受益者と取引を行うような場合には、通常の信託と同様に信託業規制の対象とするべきである。

すなわち、信託宣言については、事業信託とあわせて資金調達目的で活用する場合など、一度の信託設定でも不特定多数の投資家が発生し得るため、そうした場合も含めて受益者保護のため適切な信託業規制が必要と考えられる。

マル2 また、信託宣言については、事業提携や資産流動化における活用可能性もある等の有用性が指摘されている一方で、事業目的で用いている海外事例も乏しく、通常の信託に比べて、委託者等の牽制効果が期待できず、信託財産の二重譲渡が容易に行われたり、第三者の検証がない信託の設定による信託受益権が販売される懸念があるとの指摘がある。

これらを踏まえれば、信託宣言については、受益者保護のために通常の信託形態の場合に加えて適切な措置を講じることが必要と考えられるが、その内容としては、・信託受益権販売業者の顧客への受益権販売に際して、信託宣言の内容について一定の説明義務を課す、・信託会社の内部で固有財産を信託財産とする信託の設定が真正になされたことの第三者のチェックを求めること、などが考えられる。

マル3 なお、この点、信託宣言については、改正信託法上、事後的に詐害行為取消権が認められ、受託者の義務に関するルールも整備されているので、通常の信託と同様の対応で十分であるとの意見もあった。一方、これについては、信託法上認められている措置は事後的救済にとどまり、業者対顧客の取引の場合には顧客保護のため信託業規制により十分な事前規制を置くべきとの意見があった。

(2) 信託設定時における消極財産(債務)の引受け・事業の信託。

マル1 信託法の改正により、設定時から消極財産(債務)が積極財産を上回るような信託の設定も可能となり、受益者が出資した元本の額以上の損失を被る可能性があるなどリスクの高い商品の販売も考えられることから、受益者保護のため、純資産額など信託財産の内容、事業計画、レバレッジ比率の説明義務などを受託者に求めることが必要と考えられる。

マル2 また、今回の信託法改正において、信託の意思決定の仕組みが契約に委ねられ自由に設定できることが検討されているが、事業の信託が行われ、多数の受益者が発生する場合には、受益者と信託勘定との関係は、株主と株式会社との関係に類似するとも言える。

これを踏まえれば、信託業規制においては、受益者の保護の観点から、例えば、重要事項の意思決定については、受益者の多数決など、受益者の意見を十分に反映させる仕組みを求めるべきと考えられ、この点は事業の信託以外の信託も同様と考えられる。さらに、これについて、受益者に対して、意思決定に必要な情報が事前に受益者に開示されるようにすべきとの指摘があった。

なお、この点については、信託においては個々の受益者に詐害行為取消権など事後的に行使できる強い権限が与えられており、必ずしもガバナンスの水準を株式会社と単純に比較できないとの意見もあった。一方、これについては、信託法上認められている措置は事後的救済にとどまり、業者対顧客の取引の場合には顧客保護のため信託業規制により十分な事前規制を置くべとの意見があった。

マル3 さらに、事業の信託については、信託対象となる事業に属する労働者の地位(雇用関係、給与)や会計上の取扱いを明確にするべきとの意見があった。

(3) 目的信託。

目的信託については、受託者を監視する受益者がいないことを踏まえて、受益者が存在する通常の信託よりも、委託者の監督権限を強化すべきと考えられる。

(4) 限定責任信託。

信託会社が限定責任信託を設定する場合や、投資家がその信託受益権を購入する場合に、受益者保護の観点から、例えば、その信託が限定責任信託であり受益者への財産分配規制が課されることや、財産分配規制の内容について説明義務を課すことが適当である。

4 .受託者等の義務について。

(1) 善管注意義務。

マル1 信託会社の善管注意義務は顧客に管理運営を託される信託業の最低限かつ共通の義務である。また、信託会社と顧客の間の情報力・交渉力格差を考えれば、善管注意義務の水準を当事者間の契約に全て委ねると、信託会社に過度に有利な契約となり、顧客保護が確保されない可能性がある。従って、今後とも、善管注意義務については、現行規定どおり信託会社に課すことが適当と考えられる。

マル2 なお、善管注意義務に関しては、従来より実務上、信託契約において義務の具体的内容・範囲を規定することがあるが、これは信託業法上許容されるものと考えれらる。

(2) 分別管理義務。

マル1 分別管理義務は、信託財産の倒産隔離機能の確保や、受託者の忠実義務の履行を担保する観点からも重要であり、信託業法においても、現行どおり、信託会社に対して、信託財産の分別管理のための体制を整備する義務を課すことを維持すべきと考えられる。

マル2 他方、信託法上、受託コストの軽減等の観点から、動産・有価証券等については、物理的分別管理の代替として帳簿上の管理を認めることが検討されているが、帳簿上の管理による場合でも財産滅失の際には固有財産・信託財産で損失を按分することができ、物理的分別の場合と同様に倒産隔離機能が働くことを踏まえ、信託会社についてもこうした措置を認めることができるものと考えられる。

(3) 忠実義務。

マル1 信託会社の忠実義務は、受託者の権限乱用や利益相反行為を防止する観点から重要なものであるが、このうち、信託目的等に照らして不必要な取引や通常の条件と異なる条件で信託財産に損害を与える条件での取引の禁止については、今後も禁止を維持すべきと考えられる。

マル2 利益相反行為の禁止に関しては、免除要件(「信託財産に損害を与えるおそれがない」)について実務に支障をきたさないように要件の明確化が必要であるとの指摘、取引が制限される相手方である利害関係人の範囲が広すぎるとの指摘もあるが、受益者保護の観点から問題がない範囲で対応を検討するべきと考えられる。

(4) いわゆるプロ顧客との取引における取扱い。

これら信託会社の受託者としての管理運用上の義務については、プロ顧客との取引については一般的に軽減を認めるべきとの指摘もあるが、信託業の本質的な義務であって一般的に軽減を認めることは適当ではなく、むしろ、実務上支障をきたす点については個別の措置によって対応するべきと考えられる。

(注 )なお、「投資サービス法(仮称)の整備に向けて」(平成17年12月22日金融審議会金融分科会第一部会報告)においては、投資サービス法については、業者と特定投資家(いわゆるプロ顧客)との取引においては、説明義務、書面交付義務等について適用除外とすることが適当とされている。

(5) 信託業務の委託先。

マル1 現行信託業法では、信託業務の委託先についても受託者と同様、善管注意義務や忠実義務等を課しているが、これは、信託業については、顧客(委託者)が信託会社への信頼に基づいて財産を信託し、信託会社が財産の運用・管理を行って、顧客(受益者)に原則実績払いを行うものであることから、信託業務が委託された場合には、委託先は顧客との関係では実質的に信託会社同様の機能を果たし得ることに基づくものと考えられる。

一方で、委託先の行為については、受託者の損害賠償責任によって最終的に受益者等の保護は担保されており、委託先にも受託者同様の義務付けを一律に行うことにより委託コストも嵩むとの指摘もある。

マル2 これらを踏まえれば、今後とも、信託業務の委託先の義務については、現行の規定を維持しつつ、信託会社と同様の善管注意義務・忠実義務等を課すことを原則としつつ、委託先が信託財産の保管を委託されるにとどまる場合など、信託財産の運用・処分について実質的に受託者(信託会社)と同様の機能を果たしているとまでは考えられないような場合には、委託先に受託者と同様の義務を課す必要はないと考えれらる。

マル3 信託契約における委託先の明記を求める範囲も上記の整理と同様に考えれることが適当である。

マル4 委託先の行為に係る信託会社の損害賠償責任については、信託業務は委託者・受益者が信託会社への信頼に基づいて運用管理を行わせるものであることを踏まえ、現行においては、信託会社には委託先の行為について厳格な損害賠償責任が課されているが、今後とも、受益者等の保護を最終的に担保する観点からは、例えば委託者が自らの関係者を委託先に指名した場合や受益者の指図がある場合など限られた場合を除き、この枠組みは維持すべきと考えられる。

マル5 信託業務のアウトソース化が進んでいる現状にかんがみ、銀行・保険会社と同様に、信託会社の健全性確保のために必要な場合に限って、委託先に対する検査・監督を可能とするべきである。

マル6 なお、これらの措置について、委託の取引実態として再委託が相当程度利用されていることから、再委託先についても十分な措置が講じられることが適当と考えられる。

(注 )この点「投資サービス法(仮称)の整備に向けて」(平成17年12月22日金融審議会金融分科会第一部会報告)においては、投資サービス業(仮称)については、業務の外部委託を巡る内外の動向等を勘案し、業務委託先への監督について所要の整備を行うことが適当とされている。

以上でございます。

○ 岩原部会長

どうもありがとうございました。

それでは、ただいまのご説明について、皆様からご質問、ご意見を頂ければと存じます。

関委員、どうぞ。

○ 関委員

どうしてもわからない点が2つほどありますので、ぜひ皆さんに議論して頂きたいという意味も含めて、最初に問題を提起するわけです。

2つありまして、1つはこの信託宣言に係る話なんですけれども、信託宣言などの新しい信託類型を信託業として取扱う場合、この信託で出てきた受益権というものが限られた受益者の場合には、信託業法の規制対象にはしないということであるわけですが、これが一たん受益者が受益権を不特定多数の投資家に販売する場合には、信託を組成する段階までさかのぼって業規制の対象にしますよという筋立てになっていると思うんですね。

そこで、よくわからないというのは、それは信託の組成の段階までさかのぼって業規制の対象とするということではなくて、不特定多数に販売するということで新しいいろいろな不祥事が起こるとか、投資家をだますとかいうような問題があっては絶対にいけないですから、どういうふうに規制するかというニーズが出てくるのは、ごく当然のことではありますけれども、それはいきなり信託を組成する段階にまでさかのぼって業規制の対象にするということになるのかどうか。つまり、販売する段階で販売業法としてきちっと規制するとか、あるいは今の規制のあり方が多少生ぬるいので、いろいろな問題があるということであれば、上乗せ規制を検討するとかという選択肢があるわけでありまして、そういうことをやってもなおかつ不十分であるということが整理された段階で、信託を組成する段階までさかのぼって業規制にすると、こういうことではないかと、私は文脈からごく常識的に考えると、そういうことになるのだと思うんですね。

ですから、やはり業規制をやらなければいけないのだというところを、そういう販売業法では不十分だとか、あるいは多少上乗せ規制をしても不十分だということの中で、きちっと整理して頂きたいし、ぜひ皆さんこの辺どう考えるのかということを踏まえて、そこを整理して頂きたいなという、これはお願いであります。

それから2点目は、これが十分にこの文書の中で私は書き込まれていないのではないかと思うのですけれども、事業信託というスキームというのは、単なる債権だけではなくて、債務も含めて信託するスキームだという理解だということはよろしいわけですが、事業信託ができるようになるということは、実は事業─製造業でもいいと思いますが─を第三者に、自分が信託宣言して、信託をやるということだけではなくて、事業の専門的な能力がある会社に信託という形で事業資産等を引き受けて運営してもらう形態が新たに可能になるということだと思うのです。経営を委託するというケースが、十分に今回の信託法の改正で考えられるようになったというのは、私は大変画期的なことで、具体的にそれがどうなるのかということについてはイメージがわかないという議論がありまして、世界にも例がないという議論もありましたけれども、実は、製造業を、言うなれば製造業というもののサービス事業化といいますか、受託するという新しいビジネスモデルが出てくるのではないかという期待も一方ではあると思うんですね。

そのときに、信託の引き受けを主たる事業としない者が事業信託を引き受ける場合に、これは信託業法上の参入規制だとか、兼業規制を、私は前からこれは課すべきではないと思っていますが、本当にそれが課されないようになっているのかどうか。そういう受託業というものがビジネスモデルとして成立するということになってくれば、これは1回限りということにはならないわけでありまして、事業会社そのものが事業のノウハウをベースに信託という事業を行うわけで、いわゆる金融業のようなことにはならないと思います。つまり、受委託は特定の事業を遂行する能力を見込んで委託しますし、受託するということになるわけでございまして、そのときに本当に免許規制や兼業規制というのは適用されないということは、私ははっきりさせて頂かないといけないと思うわけです。

この2点について、ぜひ議論して頂きたいと思いますし、整理して頂きたいということであります。

以上です。

○ 岩原部会長

では、保井さんお願いします。

○ 保井信託法令準備室長

事務局から2点補足をさせて頂きます。

関先生がお問い合わせになりました2点、1点目はいわば信託宣言で受益権が発生する場合、さかのぼって不特定多数に販売されるということで業規制の対象になるのかということなんですが、実は必ずしもそういうことではなくて、実際は信託宣言であろうと通常の信託であろうと、どちらでも不特定多数の受託者が背後にいるということに着目いたしまして、それを予定して信託の組成を行うというところで、業の規制の対象とするという考え方になっているわけでございます。

それから、2点目の事業信託についている参入規制、それから兼業規制でありますけれども、これも実は信託宣言あるいは事業信託だからということではなくて、これはあくまでも受益者保護のために必要な規制はさせて頂くということは基本でございますので、それは何ら通常の信託とは変わらないと。ただし、信託宣言プラス事業信託の場合典型でございますけれども、兼業制限、特に言われていますのは付随性の要件ですけれども、これがまともにかかってきますと、信託宣言プラス事業信託の仕組み自体がワークしないということにもなりますので、必要な受益者保護のための規制はかけるんですけれども、そこのところは何らかの見直しを行って、その仕組みがワークするようにしたいということでございます。

○ 岩原部会長

よろしいですか。

池尾委員どうぞ。

○ 池尾委員

今の関委員のご意見なんかが出る背景として、不特定多数に受益権を販売するようなケースにおいては一定の上乗せ規定は必要だという議論は私もしてきたわけで、したがって定性的な話として、要るか要らないかということで言えば要るという議論はしてきたわけですけれども、定量的な議論というのは必ずしもないわけで、要るとしたって、どういう程度のものがどれぐらい要るのかという点についての、詰めた議論というのは残念ながらしてきていない。

今回、この1ページにもありますけれども、今回はこの位置づけが中間的というのか何といえばいいのか、必要な措置を早急に検討するためにだけやると。後でまたゆっくり考えましょうみたいな感じになっているせいもあるのだと思いますけれども、定量的にどれぐらいのものが本当に必要なのかというところが詰まっていないので、信託宣言の場合で業規制の対象とされるとなると、何かもうフルセットでがちがちのものが全部かかってくるのではないかという心配が当然あるわけです。私もそんなことになるんだったら、それは反対だということで、上乗せ規制が必要だということで、要るでしょうけれども、要るものの中身というのは、ケースによって随分差があるのではないかということで、そこら辺のところ、本来的にはもっと詰めた議論をしなければいけないと思うのですけれども、残された時間でちょっと整理をしておかないと、要るという議論だけで、これも要る、あれ要ると、全部認めたという話には行くべきではないと思うんですね。

それに関連して、私自身としての納得感がないところが1つありまして、それは前回申し上げたのですけれども、兼業規制が要るというところの説明が、やっぱり納得感がなくて、2ページの下の(4)ですが、私は信託業への他業リスクの遮断は必要だし、利益相反行為の防止も必要だし、信託業務の安定的運営等も必要だと思うんですが、このことは必要だと思っているんです。でも、このことをインプリメントするために兼業規制しか手段がないというのは、前回も申し上げましたけれども、やっぱりロジックとして飛躍しているのではないか。

こういうことはぜひ必要なのだけれども、兼業規制というのは、言ってみると最後の手段みたいなもので、もうそれ以外にやりようがないときに適用するものです。というのは、最後の手段という意味は、裏返して言うと副作用というか、非常にコストの大きい規制手段だということなので、できる限りこのリスク遮断、利益相反の防止等は確保しなければいけない。

これは何度も申し上げているように、絶対そうで、受託者責任等は絶対確保しなければいけないのだけれども、そのために必要な措置がほかにないのかというところが、冒頭で申し上げたように、とにかく定性的には要るというのはもちろんわかるので、私もそう主張してきたんだけれども、定量的にどういう内容のものがそれぞれのケースで要るのかというところについて、必ずしも議論が詰まらないまま来ているのではないかというのがあって、そういう意味で関委員がおっしゃったような点については、少し限られた時間しかないとしても議論すべきではないかと私も思いました。

○ 岩原部会長

それでは、今の点につき、ご意見があれば承りたいと思います。

川本委員どうぞ。

○ 川本委員

自分の意見というよりは、今のに絡みまして事務局にちょっと質問させて頂きたいのですけれども。

不特定多数という言葉が出ているのですけれども、その場合に逆といいますか、特定というのはどういう範囲を特定というふうにイメージしてここで書いていらっしゃるのかというのを、今の池尾先生の定量的なということと近い話だと思うのですけれども、教えて頂きたいと思います。

○ 保井信託法令準備室長

特定と不特定の関係なのですけれども、実はここで不特定多数と申し上げているのは、「多数」のところに実は比較的重い意味があって。それは多数であれば、受益者に対して不特定であることが多いということがあって、特定多数という言葉を使っているわけです。例えば、特定が何かという議論はあるとは思うのですが、これは今後検討させて頂きたいと思っていますけれども、例えば100人の会員から信託の引き受けを、それだけしか行わないという業者がいたとして、実際にそれは信託宣言であれ、これまでの通常の信託でも同様のケースであって、実際には100人を超えて、例えば1,000名、1万人という不特定多数の方に売り得る体制を整えているかどうかで、外見的に判断してきたということでございます。

例えば川本先生、恐らくご念頭にあるのは証取法上の私募売り出しですね、2条の3項。それで政令で50人で定めているとかいうこともありますし、あるいは保険業法改正の前には「不特定の者に」というのがありましたけれども、実はそれはそれぞれ業法の中で、それぞれの概念が構築されているわけでございますので、信託業法の中でどのように特定、不特定が分けられる仕組みが考えられるのかというのを検討させて頂ければと思っております。

○ 岩原部会長

それでは高橋委員、それから金丸委員お願いします。

○ 高橋委員

関委員の1点目の論点についてです。

これはたたき台のペーパーの1ページ目のマル3の2つ目のパラグラフの、「不特定多数の受益者等を予定しているかどうかという考え方に基づいて判断し」と、そこの解釈だと思うのですけれども、関委員おっしゃいましたのは、組成の時点までさかのぼるのかと。それに対して先ほど事務局の方から、不特定多数を想定するかどうかというお答えでした。信託宣言時の受益者は1人で、その後に受益権を分配するパターンというのが考えられると思うのですけれども、それに関しては業規制の対象だというふうに考えたたたき台になっているのかどうか、そこについて確認させてください。

○ 岩原部会長

保井さん。

○ 保井信託法令準備室長

手短に。

その考え方で結構でございます。そこは、あくまでもそれを前提として引き受けがなされているかどうかという考え方であります。

○ 岩原部会長

それでは金丸委員、お願いします。

○ 金丸委員

私も経営者の立場で考えますと、新しいマーケットがひょっとするとこういう新しい法律の改正によってできるかもしれない。そのことによって、もっともっと富が増えればいいのではないかと、思うのです。

そうやって考えたときに、自分は経営者ですけれども、新規事業で自分が参入しようとしたときに、形式的な規制であるとかイニシャルの規制は低ければ低い方がいいと思います。一方で、受益者保護という観点がございますので、当然ながらプロセスが大切ですね。ですから運用基準だとか、走らなければいけないレールとしてのルールはあっても構わないと思います。それからそれを外して何かをやったときに結果責任を問われるのも構わないと思うのですけれども、無意味な参入規制というのはない方がいいと思うのです。

今、話題のヒューザーだとか姉歯建築士は全部国家試験を持っていて、国から委託をされている。そういう意味では形式的な基準は全部満たしているわけですね。でも、プロセスとか、結果責任についてはむしろ緩くて、余り詳しくないのですが、50万円の罰金だとか聞いています。建築基準法違反だとか、そっちの方がむしろ問題で、それはどんなに形を整えてもだめではないかなと。

それは会社運営においても、例えばある新規事業に参入しようとしたときに、まだインキュベーション的なフェーズであれば、本社の中にコストも含めて、間接部門も含めて、それはあった方がいいと考えるか、考えないかという判断も、それは経営者の裁量だと思うんですね。ですから、善なる新規参入者にとってむしろやりやすくすべきです。悪い人に対しては初期段階でどんなにカバーしようと思ってもそれは無理で、だからプロセスの責任と結果責任を問うという方に、もっと変えた方がいいのでなはいかと思います。

そういう意味では、参入規制でいろいろな資格がなければいけないとかいう中で、過去に信託何とかの経験が3年ないといけないでしたっけ、何かありましたが、あんなの無意味だと思うんです。何か新しいことが起きるときに、もっと新しい発想でできる人がいればいいだけで、それも新規参入者の自己判断ですよね。そんな資格を入れた方がいいと考えるかどうかは、国がどうのこうの言う話ではないのではないかなと思います。だけど、結果責任をもっと問うべきだと思います。

以上です。

○ 岩原部会長

根本委員どうぞ。

○ 根本委員

兼業規制に関して1点申し上げたいのですが、前回の委員のご発言の中に、例えば信託宣言を使う場合、格付会社も兼業を認めないだろうというお話があって、そこを若干修正させて頂きたいと思います。

要は、格付け会社が見ておりますのは、兼業しているかどうかということよりも、受託者が期待される役割を安定的、継続的に機能できるかというところでございまして、また、それが当然財務基盤とか経営体制がしっかりしているかということに結びついてくるとは思います。多分、兼業化というよりも、むしろ他の事業のリスクを負うかどうかというところだと思います。

必ずしも受託者が倒産をしないということを前提にしているわけではなくて、倒産もするかもしれないと。ただ、その信託のスキーム自体、安定的に継続して受益者に不便を与えないというところを注意しています。

例えば、受託者が非常に経験が浅いとか規模が小さいという場合は、やはりリスクはそれなりにありますので、バックアップのような体制を契約上組み入れるとか、そういうことを要請するということになると思います。

先ほどのご議論を伺っていると、やはり事業会社さんが新しい形態の信託を使う場合に一番大きな制約が兼業規制の問題かと思うのですが、このペーパーの3ページ目の(6)にあるのですけれども、ここに例えば何らかの指標で健全性が担保されていることがあれば足りるということがありまして、こういったところは一つの解決案ではないのかと思います。経営リスクの遮断という意味で、何らかのより重くないような形での健全性の担保というのができれば、必ずしも兼業規制をそのまま当てはめなくてもいいということは、成り立つ考えなのではないかと思いました。

以上です。

○ 岩原部会長

ほかに。

翁委員どうぞ。

○ 翁委員

私も、せっかく今回信託法改正によってさまざまな信託の活用を解禁するということを標榜していますので、その活用を事実上制限することのないような方向で考えていく必要があると思っております。

その意味では、例えば信託宣言の場合についても、今回の信託法の改正でも何が具体的に受益者保護で不十分なのかということをまず具体的に特定し、その上で、それはまず行為規制でどこまで確保できるのかを考えた上で、最終的にそれよりも上の規制をどう考えるかという議論をしていくということが必要なのではないかと思います。

兼業規制については、例えば他業との関連性といったことも一つの観点になってくると思うのですけれども、これもやはり事業会社に関しては、恐らく何をもって他業との関連性をというのを議論するかというのは相当解釈によって異なってくると思いますし、また事業会社がこの信託宣言を活用しようとする場合に、その事業提携とか、信託宣言によって事業再生とか、そういったことに活用しようという場合に、そのほかの部分との健全性というのを余りにもがちがちに見ていくと、そういったものに全く使えないものになってしまうという可能性もあると思います。

そういった意味でも、やはり兼業規制にかかわるような部分というのは、十分他業についての情報開示をきちんとするということで応えていくことにして、できるだけ受益者保護というのを参入規制でやるのではなくて、いわば行為規制で情報開示という組み合わせで考えていくという方向でいく必要があるのではないかと思っております。

もう一つ質問なのですけれども、1ページのマル3の3行目で、今後、信託宣言については、信託業とどうかということについて、不特定多数の受益者がいる場合に信託業と見るという概念が示されているわけですけれども、従来の信託業というのは委託者からの信託引き受けの反復継続性を概念としていて、必ずしも今回のような考え方がとられていたというわけではないように思うのですが。ここでは、基本的には従来の考え方と、ちょっとあいまいな表現で、どういうふうに読み取れればいいのかなと思っているのですけれども。

これは基本的には従来の考え方を踏襲していて、今後も同様の考え方をとることが適当と考えられるというような記述は、ちょっとよくわからないのですが、具体的に信託宣言にだけこういった不特定多数の受益者がいる場合に、信託業というふうに見るという考え方を適用するのか。それとも、従来の信託譲渡を行う信託業についても、こういった考え方を反映させていくということをここでは読み取るべきなのか、そこについてもちょっと教えて頂きたいのですが。

○ 岩原部会長

保井さん、どうぞ。

○ 保井信託法令準備室長

ご質問ですので、事務局からご説明させて頂きます。

実は、この1ページのマル3なのですけれども、前回の信託業法の改正のときの考え方をそのまま踏襲しております。と申しますのは、業法上、信託の引き受けの営業というのが概念としてありまして、その営業という概念の中に、商法なんか典型的ですが、反復継続性なり、収支相償性なりということが含まれているわけです。実は何のために信託の引き受けを営業としてやるのかということを考えていくと、それは当然のことながら、後ろに不特定多数の方に受益権を販売する営業をやっているんだということでして、そこが従来であれば、他者に引き受けさせるものですから、そこはいわばカッコ書きの中に埋め込まれていたんだと。

ところが、それが信託宣言といえば新しいもの、これは自分で自分に信託するという新しい類型が生まれたので、そういったいわば1回こっきりの設定でも、不特定多数の方に受益権を販売するようなことができるような信託ができてしまったと。さあ、どうするのかというときに、それは従来の業概念を変えるのではなくて、いわばカッコの中に埋め込まれているところの不特定多数の方に受益権を販売するということを信託宣言についても貫いて考えていこうという、こういう考え方でございます。

それから1点補足なのですけれども、兼業規制について何人かの先生方からご指摘がございまして、実は兼業規制の考え方は、縷々ここの2ページ目に述べているわけでございますけれども、その考え方の整理としては、やはり他の金融法令でも同じように、金融業という、あるいは信託の場合は信託業ですが、その本業と関連性のあるところでやっていることで、その周辺情報も集まり、したがってリスクが高まることがないという、よく知っているフィールドで戦っているんだということがあると思うのですが。「その心は」ということなんですが、要するに現行の信託業法上の兼業規制で、その関連性要件については、確かに実務上もかなり広く見ているところがございまして、例えば新規参入した信託会社の一例で見ますと、例えば広告代理店業を兼営されていたりとか、貸金業を兼営されていたりと、そういったこともございますので、これはかなり関連性については、実態としては広く見る傾向にあるということでございます。

ただ、信託宣言の場合、先生方がおっしゃっているように、兼業規制を確かにがちがちにかけてしまうとワークしないということでありますので、そこで必要な範囲で見直しをしていこうと。ただ、そこで信託宣言については兼業規制がゼロということでは通常の信託と異ならないということになりませんので、それではよくないということです。したがって、信託宣言については、他業リスクをきちっと客観的に推しはかれる何かの指標を考えてみようと、こういう考え方でございます。すみません、長くなりました。

○ 岩原部会長

それでは、土井委員から。

○ 土井委員

どうも、私の方は具体的に考えないとわからないので、ちょっと教えて頂きたいのですが、製造業さんの場合で、例えば共同精錬をどこかと一緒にやりますとか、この製造ラインをどなたかに委託しますと、こういうケースというのは非常に事業展開上重要であろうと、先ほど関委員からお話がございましたが、これは1回で済むわけではなくて何回かそういうことをやると。

でも、この場合というのは、委託者と受益者というのは大体一緒でございまして、受益者がほかに出ない、要するに投資家が出ないわけでございますね。こういうケースは、2回やっても3回やっても反復継続に当たらないのでしょうか。その方が、私は今後の製造業さん、こういった事業形態をいろいろ展開される上では非常に資するのではないかと思うのですが、いかがでございましょうか。

○ 保井信託法令準備室長

不特定多数に受益権を販売するかどうかということでメルクマールと考えています。したがって、いわばその三者、委託者、受託者、受益者が、お身内の中で限定された中で何かやられているということであれば、それは別に業として考えないわけですから、もとより反復継続性は問題とならないと考えております。

○ 岩原部会長

それでは、次に広井さん、それから松谷さんお願いします。

○ 広井委員

信託宣言に関して銀行の立場からちょっと申し上げたいと思うのですが、信託宣言に関しましては、銀行の場合は必ずしも一枚岩ではございません。ただ、多数意見としては、貸出債権の流動化とか、そういったものに資するという観点から、導入について賛成であるということなのでございますけれども、それに関して業規制という観点で申し上げますと、やはりスキーム上の有効性とか、あるいは柔軟性が担保できるような業規制をお願いしたい。これは要望事項ということでございますけれども、ぜひその辺をお願いしたいということでございます。

○ 岩原部会長

それでは松谷さん。

○ 松谷委員

信託宣言のところについて、兼業規制と絡めてお話をさせて頂きたいと思います。

信託宣言につきましては、今日のこの場でもいろいろとお話が出ておりますように、主たるニーズは、投資家から広く資金を調達するということであろうと思っております。したがいまして、受益者保護が目的である信託業法の規制の対象に当然すべきであろうと考えております。特に信託宣言による資金調達につきましては、前も申し上げましたけれども、詐害的な行為であるとか二重譲渡が行われやすいという指摘があるところでございまして、1回限りの信託宣言であっても、やはり資金調達型のものについては適切な業規制が必要であろうと思っております。

これは懸念として申し上げますが、委託者の信用リスクが低下したような場合を想定いたしますと、通常の借り入れであるとか、あるいは通常の信託による資金調達が難しくなってきたときに、信託宣言によって資金調達を行いたいというインセンティブがどうしても働きやすいのではないかという懸念を持っております。

そういたしますと、先ほどから出ております兼業規制という考え方、他業の健全性をどう担保するかという基本的な考え方はぜひ維持をして頂きたいと思いますし、現行、通常の信託会社の兼業は、監督官庁による承認を得て行っているものでございまして、その枠組みについても、ぜひ維持をお願いしたいと思っております。

以上です。

○ 岩原部会長

ほかに何か。

和仁委員どうぞ。

○ 和仁委員

幾つかございまして、今日、非常に明快なご説明を頂きましてよくわかった点も多いですが、信託業法を一体どこまで適用するのかということで、不特定多数の受益者を想定した場合に初めて業法が入ってくるのであって、それ以外の場合は適用されない。恐らくこの考え方というのは、ほかの業法の解釈についても幅広い影響力を持つのではないかと思います。その意味では、これはご英断だと思います。今まで反復継続だとか、収支相償性とか、あるいは不特定多数とか、その辺の議論を裁判所は適当に使い分けていたので、何を言っているのかよくわからないということがあったのですが、これはいいと思います。

次の兼業規制のところなのですが、確かに兼業規制をかければ参入に障害になるということを縷々述べていらっしゃるのですけれども、やはり信託宣言をすればどういう義務が課せられるのかを考えるべきではないでしょうか。殊に財産の管理に関する義務がいろいろ課せられるわけでありまして、そこから、いわゆる他業リスクというのは遮断されるのではないか。

信託宣言をしたらそれで終わりではなくて、そこからいろいろな義務が発生してきて、それ等を守らないとどうしようもないということですから、そこから考えれば、別に兼業規制についてかなり厳しいことを言う必要はないのではないかなという感じがします。殊に、何を信託のアンダーライティングアセッツにするのかということで、やはりいろいろ濃淡が出てくるはずですので、一律に兼業規制をかけるべきだ、いやそうではないという議論をしていくというのは余り建設的な話ではない。池尾先生の定量的な話につながるのかもしれません。以上が私の第二点です。

それから、ちょっと細かいことを申しますけれども、受託者の義務のところについて、5ページ以降なのですけれども、忠実義務のところで6ページの頭に、「信託目的等に照らして不必要な取引」をやることが忠実義務違反だというふうに書いていますが、これはそもそも善管注意義務違反の話ではないでしょうか。

それからもう一つ、兼業規制に関しては維持するんだということをおっしゃって、プロの場合もそうなんだとおっしゃっています。むしろ実務上支障を来す点については個別の措置によって対応するとも書かれています。それも一つの手なのかもしれませんけれども。そもそも信託の関係で忠実義務というのは、委託者と受託者との関係で軽減することは可能なものだと思います。もちろん業法の規制をかけるという場合には違った対応が必要だとは思いますけれども、プロが相手のときであっても、忠実義務のところに手を触れるのは余りやりたくないと、許すべきではないという立場から、一般的に軽減を認めるべきではないというお考えを書いていらっしゃいます。投資サービス法を引いておられますけれども、投資サービス法はむしろ説明義務の関係で行為規制の話をしていました。プロに関しては、マーケットを破壊するような反市場的な行為、いわゆる虚偽情報の提供とか、そういうことに関しては、それはプロが相手だったとしても、業者に行為規制をかけましょうという話はしていましたけれども、別に忠実義務を軽減するということは、マーケットを破壊する話とは全然違うと思いますので、ここでこういう書き方をされるというのはどうなのでしょうかということです。

実務上支障を来す点については別途対応とされていますが、それは具体的に何を意味されるのかよくわからないのです。やはり業者にとって非常にコストがかかります実務上支障を来す場合は忠実義務の軽減を認めましょうというのではなくて、経済的に合理性があるときには忠実義務の軽減を積極的に認めていくという考えにして頂いた方が、よりよくこの信託業法というのは回るのではないかと私は思います。

以上でございます。

○ 岩原部会長

保井さんお願いします。

○ 保井信託法令準備室長

受託者義務に関するご質問でございました。和仁先生から2点ございました。

この不必要な取引のところなのですけれども、これは信託業法の29条の2項でございまして、これはご指摘のとおり善管注意義務という考え方もございますし、忠実義務という考え方もございますが、資料の方では忠実義務の方を中心に記述させて頂いたところであります。

それからいわゆるプロについては、いわゆる受託者の義務については緩めてもいいのではないかというご指摘でありまして、確かに投資サービス法の議論を我々横で見ていたものですから、それに影響されているかもしれないのですけれども、確かにプロ向けのファンドについて、金融イノベーションを阻害するような過剰な規制にならないように、十分に配慮する必要があると言われているところでございます。

確かにそういったことで投サ法では、一般向けのファンドに比べて規制を相当程度簡素化するということを検討されているというのは承知しております。ただし、信託といたしましては、善管注意義務、忠実義務を前提とした受託者に対する非常に高い信認を基礎にして関係が構築されておりまして、非常に社会的な信認も高いという現状があるということ。

それから、さまざまな信託目的あるいは信託財産の信託が想定されておりますので、一概にプロの範囲をこうと決めることが困難であると考えておりますので、恐らくプロだからということで軽減するというよりは、まさしくおっしゃったように、経済的な実態に即して、どこが困っているのか。殊に実務の世界で、プロというのはほとんどの場合信託会社でありましょうから、信託会社の実務としてどこが回らなくなっているかということをとらえて、明確化あるいは見直しをしていければいいと思っております。

以上です。

○ 岩原部会長

この6ページの一番上の「信託目的に照らして不必要な取引」これはいわば、信託会社が自分の関連会社等に取引手数料何かが入るようにするために、必ずしもやらなくてもいいような証券の売買をやるとか、そういったことがいわば忠実義務違反になるということで書かれているのではないかと思います。

○ 和仁委員

多分そうなのでしょう。そうすると単に無能で不必要な取引をやっている場合はどうなんだという話が出てきます。だから、やっぱり日本の考え方としても忠実義務、善管注意義務というものを区別してきちんと議論すべきですよね。

デューティ・オブ・ロイヤリティーとデューテ・オブ・ケアという形できれいに分けた議論は、日本は余りしません。結局、それがここまで流れ込んできて、忠実義務というのはそもそも善管注意義務の中にあるのではないですかという議論まで行われます。せっかく法律を整理されるのだったら、やっぱりそこの概念もきちんと分けられた方が宜しいのではないでしょうか。

○ 岩原部会長

不必要というときに2つの場合があることはおっしゃるとおりですね。

それからもう一つの指摘された、プロに対してはという話ですけれども、委託者がプロであるというだけではなくて、むしろ受益者保護が問題なわけですから、受益者もプロであるときにそういうことが問題になっていて。まさにマル2で最後に書いているように、「受益者保護の観点から問題がない範囲で」規制の例外を認めていきましょうという考え方は、多分書かれているのではないかという気はいたします。

○ 和仁委員

すみません、どこですか。

○ 岩原部会長

今の上から4行目以下のマル2の最後ですね。「受益者保護の観点から問題がない範囲で対応を検討するべき」だというのは、まさにおっしゃるように、そういう客観的に問題がない場合は外していきましょうということだと理解しています。

藤田さんどうぞ。

○ 藤田委員

すみません、今、和仁先生の方から、これは最初に議論するべきかどうかわからなかったのですが。受託者の善管注意義務、忠実義務の話がありましたので、ここでの記載と信託法の関係が十分によくわからないものですから、若干質問させて頂ければと思います。

忠実義務の中身が、ここで書かれているのが忠実義務ではないのではないかという、和仁先生のご意見は全くそのとおりだと思うのですが、これはむしろ表題が、行為準則として現在業法で書かれたことをここに書いているのであって、実は、信託法の忠実義務と対応することが書いていないことだけの問題だというふうな気がしますので、言葉としてはそれは結構です。

むしろ中身として伺いたいのは善管注意義務について記述がございます。これはよくわからないのですが、善管注意義務は信託法上は完全な任意規定なのですが、業法上は強行規定であるということを前提に、しかし具体化するのは構わないという書き方をしているようにも読めるのですけれども、そうなってきますと、例えば、軽過失免責というのは業法上はだめということに、もうインプラントしてしまいまして、軽過失免責というのは、ここで具体化ではありませんので。しかし、例えばそれが先ほどのプロを相手の─受益者も含めてですよ─およそ許されないアレンジメントかということになってきますと、内容としてもかなり疑問も出てき得るのではないかという気もしないではありません。

それに加えて、さらに信託法上は明文で認めている幾つかの事由がありまして、例えば事後免責ですとか、あるいはを責任を事前に上限を決めるようなアレンジメントといったものも、あるいはここの善管注意義務は強行法規であって、具体化だけが許されるという、ここからは許されないというインプリケーションが出てくるのかどうか。何にも射程外の話なのかもしこれないのですけれども、ちょっと関係がよくわからないものですから質問させて頂きたいのが1点です。

忠実義務ではない、行為準則の方の話なのですけれども、これも実は今の信託業法と信託法の関係が維持されているのかどうか。特に強行法的な話で、今後、こういう規定を維持したとして、どういう関係にあるのかがよくわからない点がございます。

といいますのは、現在の信託業法は、忠実義務に関して単純に上乗せ規制をしているのではないのですね。一方で、信託法が事後取引を全面禁止しているので、こういう条件ならいいですと言っている面も一方ではあったりして、他方、これは守らなければいけないということも言っているのですね。そういう関係というのが、新しい信託法との関係ではどう整理されるのか。新しい信託法は基本的には任意法規ではないのですけれども、ある程度の自由は認める形で忠実義務を一定の手続を開示、その他を守ってやりなさいと言っているのですが、新しく行為準則を信託業法に従来に近いものを、多少は直したものを残すとして、守ればよろしい。守れば、信託法上の忠実義務違反にはならないという含みがあるような行為準則として残すのか。それとも、いや、それは全く信託法上の忠実義務違反の責任とは無関係に、とにかく業者には守れと言っている話で、それが最終的に守ったら、あるいは守らなかったら、信託法上の忠実義務違反になるかどうかは別問題ですという整理で、あくまで別立てでこれは整理されているのか。そこの整理の仕方によって、ここの中身の議論の仕方も変わってき得るような気がするので、教えて頂ければと思います。

これが忠実義務の話だったのですが、最初の方でいろいろ議論された点について、中身がまたわからなくなってきましたので、質問を兼ねて教えて頂きたいのですけれども、2ページの、先ほど業の概念なのですが、一番最初に商法の昔からある反復継続、収支相償うというのを掲げて、ただ、それを言いかえられるような形で不特定多数というふうにされているのですが、別にこれでも厳密に言いかえているのではなくて、背後にある発想として、多分言及されていると思うのですが、そうなると反復継続、収支相償うというのは、要件そのものとしては生きているという整理なのかなとも思うのですが、どうも(1)、(2)、(3)の3つの論理関係がよくわからないまま来ている。

(1)で反復継続性、しかし背後には不特定多数があるから、信託宣言であっても不特定多数が出てくればカバーする。でも、不特定多数の受益者に売る場合だけをカバーしているのではなくて、反復継続、収支相償うという要件があれば、信託宣言の1回切りのような場合は多数でなければいいのでしょうけれども、それ以外の一般を考えると、受益者の不特定多数に受益権を販売する以外の場合も、潜在的にはまだカバーするという前提は残っているのでは。さっきからの説明だと、それが抜けているかのように聞こえた、つまり言いかえた。不特定多数に販売するということと、この要件を言いかえたようにも説明が聞こえたのですが、必ずしも書き方はそうなっていないし、そうではない趣旨ではないかと思ったのですが。それは確認なのですが。

整理がどうも(1)、(2)、(3)とどういうふうになってきているのかがよくわからない。特に(3)は全く別のロジックで、明確な意思がないからいいんだとか、裁量が小さいから業に当たらないんだといった別の要件なので、もうちょっとこの(1)の出だしの要件を整理し直して説明して頂かないと、これは今後混乱を引き起こすのではないか。実際に、前回の信託法の法制審の部会でも、業の解釈との関係で非常に懸念が示されたこともありますので。何かちょっとこの一番最初の収支相償う、反復継続をそのまま維持して、何か付加的に不特定多数ならいいみたいな形で拾うものを拾ったりして、全くアドホックな理屈で、(3)のような形で外すといったストラクチャーを考え直して頂けないかなと思います。

その場合、業というのをどうとらえるかというのは、いろいろあると思うのですが、信託業というのを、つまり一定のフォームにすぎないものをなぜ業として規制するのかという、前回、ここでも議論になった発想を背景に考えて頂きたいと思うのですけれども。

一つは、言うまでもなく不特定多数の受益者に販売するような投資家保護的な観点ですし、もう一つは、恐らくは受託者をプロとしてやって、プロとしての受託者への信頼、プロとして受託をやっている人に受託することについての信頼の維持といったのが、恐らく業法的な規制を加える背後にあると思うのですけれども。そういう観点からいくと、(3)みたいなものが外れたり、あるいは企業同士でビジネスについて受託したような場合というのも、それは受託者としての専門性への信頼でないのだとすれば、もちろん反復継続がないのであれば外れるといった整理ができると思うので。ちょっとこの(1)をこのままの形で残すような整理で、その後、足したり引いたりするような整理は、もし考える余地があるんだったら考え直して頂けないかと思うのですけれども。

○ 岩原部会長

保井さんどうぞ。

○ 保井信託法令準備室長

藤田先生からご質問頂いた中で、信託法との関係なのですけれども、確かに私ども、一昨年の業法改正が、いわば今回の信託法全面改正を先んじましたので。そういう意味では、私どもの方で、例えば善管注意義務なり行為準則という形で入れたものが、果たして今回の信託法の見直しの中でどう整合していくかというのは、非常に重要な論点ですので、これは法務省さんともいろいろとお話をさせて頂いているところではあります。

ただし確かに、では、業者に対する規制と、一般的な信託に対する義務、類型の関係がどうなのだと問われると、そこはやはり根本に立ち戻れば、受益者保護に資する業者規制としては、どういうものが上乗せ規制として考えられるかということでありますので。したがって、例えば受託者の義務でありますと、これは信託会社が行うものについては、この部分についてはぜひ守って頂きたいと。この義務の範囲についても、こういう限定がかかりますと。明確にするのはよろしいが、これは義務ということで、強行規定に近い形で課しますということで置いてあるわけでございます。

あと、もう一つは2ページの2.の(1)から(3)の考え方がよくわからないというご指摘で、ちょっと整理をさせて頂こうとは思いますけれども。ここで、私どもが述べたかったのは、(1)については、確かに従来からの業概念というのは変わらないのですけれども、その中で、裏側にインプリシットに含まれている概念があって、そこが不特定多数の受益者を想定している場合なんだということで、(1)で書いているのが、それでは今回新しい信託宣言というものが入ってくる。これはどう考えるのかという、要は設問でありまして、(2)から、通常の信託であれ、信託宣言であれ、受益者保護に資するという観点から見れば、それは信託設定が1回か反復かはインディファレントでありますので、そういったことを考えて信託宣言の場合についても、投資者保護と業者の信頼性確保のために必要な参入規制、信託業法上の規制、善管注意義務、忠実義務等を課すべきと考えていくと、こういう考え方でございます。

それから(3)については、この審議会のご議論でも、弁護士の預かり金等について議論がありましたので、いわばフットノート的に書いていると。ただ、神田先生からもご指摘ありましたように、業だからということでなく議論をしてほしいということでございましたので、信託業の規制の対象外と考えることについて、どういうメルクマールがあるかということで、試みに置かせて頂いたという点でございます。

以上、補足です。

○ 岩原部会長

藤田さんの御指摘は、3点あったのでしょうか。第一は善管注意義務に関し業法の中に規定を置いて、強行規定にしていることの意味。第ニには、業法が設けている行為準則が、従来どおり信託法上の忠実義務の内容を限定する意味を有することになるのかという問題。第三が、2頁、2.(1)、(2)、(3)の信託業法の適用範囲に関する基本的な考え方の整理がよくついてないのではないかということですね。第三点については、私ももう少し分かりやすく整理する必要があるように思います。第一、第二点は、いずれも非常に難しい問題で、恐らくこれを詰める作業は、今後していかなければいけないと思います。

それでは、根本委員お願いします。

○ 根本委員

今、藤田委員のおっしゃった業規制の範囲というのにも関係するのですが、信託宣言の新しい活用として1つあるということを申し上げたいと思います。それに関して、もしご回答が頂ければありがたいです。

2ページの(3)ですね。フットノートとおっしゃったのですが、弁護士の預かり金というのが挙げられているのですが、ほかにも類似した案件があります。具体的に資産流動化、証券化で、サービサーが委託を受けて債権を回収する。その回収金の扱いということです。典型的なのは、例えば金融会社が─金融会社に限らないのですけれども、金銭債権を証券化して、債権は信託会社に譲渡するとします。ただ、回収に関しては、さらに委託されて回収を行い、その回収金を引き渡すわけですけれども、回収しているもとの金融会社が倒産してしまうと、まさにリスクにさらされるので、これが証券化の上では、コミングリングリスクとして負担になっているところだと思います。そのコストは、今発行体が負っているということです。

信託宣言を活用すれば、倒産隔離が実現されますので、非常に投資家にとってメリットは大きいですし、証券化でも、これまでできなかった金銭債権の証券化ができるということで、非常に大きな意義があるかと思います。

このペーパーをもとに、これを自分なりに考えますと、受託者が非常に少数で、特に情報の非対称性がないということ、金銭の管理だけであるということから、弁護士の預かり金等と同様に、業規制から外しても問題はないのではないのかという気がいたしました。ほかにも、保険代理店の預かり保険金とか、こういったメリットがいろいろあり得るような実例というのはあるのかなと思いまして、今後もこうしたニーズについて念頭に置いて頂ければと思います。

ちょっと気になった点は、1ページ目のマル3で、今もご議論があったのですが、反復継続性と、さらに不特定多数というのが、アンド・オアの関係なのかどうなのかというところでして、こういう回収金などに関しては継続はするわけですね。ただ、特定であるということなので、それがさらに定義が拡大されるとその活用がしにくくなるおそれもあるかと思います。そのあたり明確にして頂いた方がいいかと思いました。

○ 岩原部会長

保井さん。

○ 保井信託法令準備室長

根本さん、まだ続きが。

○ 根本委員

あともう1点だけすみません。

あと6ページ目のプロ顧客のところなのですが、確かに信託業としての本来の善管注意義務とか、こうしたものを負うことはいいのかもしれないのですけれども、ここにありますような説明義務とか書面交付義務については、かなり合理化する余地があると思いますので、これは投資サービス法の問題なのかもしれませんが、対応が望まれます。

あと信託業務の委託なのですが、これはここに整理されているように、信託業務の性質に応じて非常に定型的なものであるとか、運用業務ではないというような場合は、委託者に対して同様の義務を課さないというのも、現状には合っていると思います。実際、受益者にとっても、いろいろな業務に関して専門家に委ねた方がいいということも多いと思います。

小さいことなのですけれども、マル3のところで、委託先の明記を求める範囲というのがありまして、委託先が決まっていない場合、委託先選定の基準というのも結構たくさん書かなくてはいけないところもありますので、同様に考えて頂いた方がいいかと思いました。

以上です。

○ 岩原部会長

それでは、まず保井さんから。

○ 保井信託法令準備室長

1点、弁護士等の預かり金のところの補足でございます。

2ページの(3)については、弁護士預かり金等について書かせて頂いておりますけれども、これは倒産隔離の明確な意思がない場合、受託者の裁量が極めて低い場合には、受益者等の保護の必要性が低いため、規制の対象外としても受益者保護に欠けるおそが小さいと考えられることから、業規制の対象外とするということで書いておりまして、具体的に根本先生がおっしゃいました回収金の話ですけれども、そういたしますと、根本には受益者の保護でありますので、さまざまなケースが考えられるわけですけれども、受益者の保護の見地から考えて、果たして弁護士の預かり金と同様に考えられるかということを慎重に勘案してまいりたいと思っております。

○ 岩原部会長

今の点は、恐らく信託業法でいう信託が、信託法上の信託とそのままイコールかというという問題と関わってくるかと思います。それは多分違って、まさにさっきから議論が出ている信託業法として特に上乗せ規制をするのに必要な範囲の信託として、どの範囲のものを考えたらいいかと、多分そういう問題になっているのではないかと思います。

では、吉野委員。

○ 吉野委員

3ページの信託宣言のところにちょっと戻るのですけれども、参入をなるべく容易にするということは、先ほどからご議論ある新ビジネスとか、新しい商品とか、そういうものがたくさん出てくるわけです。一つの考え方は、それで罰則規定をきちんとして見ればいいということと同時に、この3ページの下から2行目、3行目にありますように、第三者によるチェックをきちんとすることによって、やっぱり参入を少し自由にした場合には、悪い行為をしている業者なり、そういうものを継続的にチェックできるというシステムがあれば、ある程度参入を容易にすることができるのではないかと思いまして。

3ページの下から2行目、3行目のところは、「信託の設定が真正になされた」ということをチェックすると書いてあるんですが、これと同時に、継続性ですね。信託がきちんと継続的にうまく行われているかどうかということもチェックする必要があると思いますし、それから検査、監督という、こういうものがうまくマッチできれば、参入を少し緩くして自由にするということが可能ではないかと思います。

○ 保井信託法令準備室長

おっしゃるとおり免許制をとるというのは、単に入り口で最初のところで審査して、あとは自由というものではなくて、むしろその後、まさに今ご指摘がありましたように、監督、そして検査を行って、問題があれば、むしろ免許を取り消すという形で、事後的なチェックも行えるようにするというのが、この免許制の意味だと思うんですね。

先ほど金丸委員がおっしゃった、事件が起きた後、きちんと処理ができるようにするという体制をつくるためにも、むしろ免許制等が設けられているということで、単に入り口で参入規制をするために規制を設けているだけではない。むしろ全体としてきちんとした業務が行われていくことを担保するための仕組みだというふうに理解するものであるわけです。

○ 岩原部会長

先ほどから何人から手を挙げられているのですけれども、では、山田さんからですね。

○ 山田委員

ありがとうございます。

意見の実質は、最初の方の池尾委員、それから先ほどの和仁委員、それから今の吉野委員と同じなんですけれども、その理由を一つ述べたいと思います。

具体的には、1.の見直しの考え方というところに加えて頂くことができるならば、頂きたい意見であります。それは、信託というのは受託者における倒産に対する倒産隔離機能を民事法上、可能にするという特徴を有していて、言うまでもないことですが、その意味では、信託であることがすなわち受益者保護の制度であるという点は強調すべきであると思います。そういう特徴のある信託を利用することについて参入規制があると。その参入規制もさまざまな要件がハードルの高いものとして残りますと、そのために信託というスキームを利用することが回避されてしまうということが生ずるのだろうと思います。それは、弁護士の預かり金から始まって、今、ここまでに出てきた、先ほどの根本委員の話などが、その代表例だろうと思います。

そうすると、どうなるかというと、結局、ほかの方法が使われると。そうしますと、受益者に当たるもの、信託ではありませんから受益者ではありませんけれども、実質的に受益者と同じ地位に当たるものの保護が低下すると、倒産隔離機能という非常に重要な点でですね。そういうことを生じさせると。どうもそういう結果を信託業法見直しの考え方について挙げられているものは、どれもいろいろな観点からそちらの方向に押しやろうとしているのではないか。ですから、そういう点もあるけれども、ここに書かれているようなことももちろんあるけれども、それとバランスをとるためにというか、カウンターになるような、今申し上げたような、信託という法をもっと広く使ってもらうことが受益者保護に当たるんだという考え方を追加されるべき視点としてご提案したいと思います。

以上です。

○ 岩原部会長

先ほどから何人かの方が、前後の順番がちょっとわからないんですけれども、では、道垣内さんお願いします。

○ 道垣内委員

後の方かもしれません、申し訳ございません。

山田委員のおっしゃったことにも関連するんですが、和仁委員のおっしゃったことについて、ちょっと細かな点でかみつくということになるわけであります。

どういうことかといいますと、他業リスクの遮断という話があって、これは信託ですと、先ほどの倒産隔離機能ではございませんけれども、他業リスクと遮断されるのだから、それを独立の規制のメルクマールとして挙げるのは、本当はおかしいのではないかという話があったような気がします。それが、実は忠実義務とか善管注意義務の任意法規化みたい問題と、それを信託業法でどこまで強行法規化するのかということに、何か密接に関係してくるように思うわけであります。

つまり、現在法制審議会で信託法の改正作業というのが行われているわけですが、ここにおいては、確かに忠実義務として挙げられているものとか善管注意義務として挙げられているものというものは、いろいろ別個の特約を結ぶことによって、任意法規として別のスタンダードにできるんだと言われているわけであります。

しかしながら、それでは忠実義務というのはほとんど完全に骨抜きにしてしまって、信託財産であっても常に自己の債務の弁済に用いることができるとかいうふうにしたらどうなるのかとなりますと、これはやはり財産が隔離されているということ自体が失われてしまいますので、やはり信託たる性質を失うということになりまして、倒産隔離という効果は生じないということになってしまうわけですね。

無責任なようですが、実は信託法という私法においては、それはそれで構わないんですね。つまり、現実に受託者が倒産したときに、本当にこれは倒産隔離を認めるだけの要件が満たされているのかという観点で、事後的に判断をして決めるというのが私法の立場なわけであります。

しかるに、業法ということになりますと、忠実義務はいろいろ任意法規化されたので、それを妨げないように業法においても余り厳しくしないでやりましたと。そうなりますと、後々裁判所に受託者倒産のときに持ち込まれたら、これは信託としての基本的なメルクマールが失われているので、倒産隔離という効果も生じませんねということが事後的になってしまったら、これはもう受益者保護というのが根本的に崩れてしまうわけである。そうなりますと信託の信託たる本質を失わしめないという形の最低限のラインを信託業法というのは確保しておくということが必要になる。これは信託法が無責任なのが悪いと言われてしまいますと、私は別に信託法について責任を持っているわけではございませんけれども、一員としては返す言葉もないわけでございますけれども、やっぱり私法と業法というのもの性格の違いからそういうものが出てくるのではないか。

そうなりますと、その忠実義務について任意法規なんだから、プロ対プロの場合はとりわけ規制を余りかけるなということになりますと、今度は逆に他業リスクというものを厳しくメルクマールとして、そこをきちんと管理せよということになりますし、ちょっと両方とも外すというのは恐らく難しくて。私は和仁委員がおっしゃっていることは、半分以上賛成なのは、他業リスクというのは本当は余り強く持たないで、信託であるということの最低限が確保されると、倒産隔離が確保されるというところの忠実義務の方で対処すべきではないかと思うわけであります。

ちょっと長かったのですが、それが1点目です。

2点目は、短い話なのですが、先ほどから弁護士の預かり金等の話が出ておりますが、2ページの(3)の予め当事者に信託設定の明確な意思がないときだというのは、気持ちとしてはわかるんですね。つまり、やったところ、後からこれは信託ですよと言われて、業法で、あなた業法違反ですよと言われたら、それはたまらないではないかということだと思うのですが。

しかし、弁護士の預かり金について、例えば1回最高裁が出たりしますと、これは明らかに当事者が幾ら私は信託だとは思いませんでしたと言っても通らないわけでありまして、信託だと性質決定されると。公共工事の前払い金なんてまさにそうなわけですが。

そうなりますと、余りこのことを書くというのはどうかという気がいたします。それよりも、なぜこれを信託業規制の対象外とすることが適当なのかという観点からだけの叙述にすべきなのではないかと。そうすると、やっぱり受益者が不特定多数ではないというところにあるような気もいたしますが。こういうふうなことを言うと弁護士さんに怒られるかもしれませんが、ただ、よく預かって債務整理をしていると。私は規制対象にしてもおかしくはないと個人的には思いますけれども。それはあれでございます。

以上でございます。

○ 岩原部会長

信託業法が信託法に上乗せ規制するときに、どういう考え方で、どこまでの範囲を信託業法が規制する信託業としてカバーしていくかという問題に、道垣内委員のご指摘もかかわってくるのだと思います。

では、次に神作委員。

○ 神作委員

最も根本的な問題は、信託業法の規制が必要とされる根拠だと思います。本日お配り頂いたたたき台の2ページに、信託業法は業者対顧客の情報力・交渉力の格差を踏まえてという記述がございまして,情報力と交渉力の格差ということを強調されておられます。その点は,確かにそうだと思うのですけれども、しかしこれだけでしたら、例えば情報開示を中心とした規制で足りるという議論にもつながりかねないと思います。むしろ信託は、いわゆる情報モデルでは足りない規制の根拠があると考えておりまして、それは信託という法形式が受託者の下に名義があって、実質的な所有者でありながら受益者には名義がないと。逆に言いますと、受益者が持っているものというのは、受益権という抽象的な権利にすぎず,法構造的に害され易い地位にいるという点は、受益者を保護すべき重要な根拠ではないかと思います。

これは受託者の立場から見ますと、いわゆるフィデュシャリパワーと言われる、そういった権限を有しているということになります。自己の名義で信託目的に従って財産を管理、運用、処分するという権限すなわちフィデュシャリパワーこそが、この信託業の規制の根拠であると思われます。

したがいまして、信託宣言であろうと、不特定多数のものに受益権が将来分配されるということが前提とされている以上、フィデュシャリパワーが生じたときから、業法上の規制に服さしめるというのは合理的なことではないかと思われます。

確かに、バンクラプシーリモートで、信託財産は受託者の倒産のときに受託者の固有財産の債権者から隔離されるという法的効果はございますが、ふたをあけたときに信託財産が著しく棄損していたり、あるいは中身がないというのでは話になりませんので、そういう意味では、バンクラプシーリモートという効果があるだけでは不十分で、行為規制あるいは組成のところに着目した規律を行う必要があると思われます。

そして他方で、しかし、それだったら信託法の方で、私法の方で十分ではないかというお話が当然起こってくると思いますけれども、この点につきましては、私は信託受益権がまさに抽象的な権利であるゆえに、自由に譲渡できる,まして、今般の信託法改正では有価証券化も自由にできるということを前提としており、そういう意味ではマーケットにつながってくる。1本1本の契約であれば、本当に不幸な契約を締結させられてしまった人は、不幸だったねという話になるだけかもしれませんけれども、マーケットにつながっている以上は、その一つの信託の過ちがいろいろなところに伝播するいう危険性はあるのではないかと考えております。

このような信託の性格からして、信託業法で信託宣言も含めて規律をするということは、十分に合理的な効果があると思います。もちろん、これは将来的には受託者が具体的にどのような機能をしているかということによって、きめ細かく業法的な規律を分化していくということも、十分将来的には考えられるかと思いますが、まだビジネストラストのようなものがどういう使われ方をするのか不明であるという段階のもとでは、なかなか受託者の実際に発揮する機能に応じた業法的な規律というのは、現段階では難しいものがある思っております。

もし、以上のような議論で、業法上あるいは監督的な規制の必要性が認められるということになりますと、今度は、その実効性の確保、および実効的な監督な確保という観点も非常に重要になってまいりまして、例えば兼業規制なども、実効的な監督が可能な規制としての兼業規制という観点から検討する必要もあるのではないかと思っております。

また、先ほどのように法的な性質から規制の根拠を導きますと、それ以外の信託、たとえば弁護士の預かり金を初めとして、業法の適用範囲が非常に広がるということがあると思いますが、その点については、道垣内委員も指摘されたように、信託設定の明確な意思がないから規制の必要がないというのではなくて、例えば弁護士の預かり金であれば、ほかにもっと有効な実効的な規制が、何も法だけに限らず、自主規制等々も含めて、受益者の保護を実現すべきより適切な規制があると、こういう観点なり説明がなされる必要があるのではないかと考えております。そのような意味では、受益者保護の必要性というのは信託一般に、それこそ業として行われる以上は生ずると考えております。

以上でございます。

○ 岩原部会長

今松委員どうぞ。

○ 今松委員

大体今まで出たところと同じような考え方で、基本的にはやはり新しい形の信託というものをどうやって実際に使ってもらうのか、あるいはそれに参入がよりできるようなものに持っていくのか。そこのところが、まず根本のところにあると思います。その上で、ではそれ自体、具体的な規制なり何なりをかけるというところについてどう考えるかというところなわけですけれども、このたたき台で言えば、2.のところで(4)、(5)、(6)と、このところでは子会社形態ということで一つの考え方。(6)のところで、これはむしろより自由なところみたいなんですけれども。やっぱり(6)のところで、先ほども出ましたが、「何らかの指標により」と、つまり具体的な健全性の担保と。恐らくこの文章で、何らかの指標というのはなかなか普通一般の人が読んだ場合、どういうものかというのはわかりづらいところがあるので、恐らくこれは少しブレークダウンして頂くかした方が実態としてわかりやすいというか、理解を得られるのではないかと思います。

それと、信託の受託者の場合、この中の特に消極財産引き受け、事業の信託のところのマル1にもありますけれども、場合によっては非常に元本額以上の損失を被る可能性のあるリスクの高い商品販売もあり得ると。恐らくこのあたりというのは、受益者というよりは明らかに投資商品になっているわけです。そうであるとすれば、今、これから並行的にやっている投資サービス法の全面的なカバーされますし、そこでのところとの兼ね合いが必要だろうと思います。したがって、信託特有の措置ですね。ここでありますけれども、信託法上認められる措置は事後的救済にとどまっているというような表現が2カ所ほどあるんですけれども、そうである場合でも、つまり実効性ある形で信託業法の中でそういう措置をとるということと、もう一つは投資サービス法の中で実態としてそれが有効に機能するというところが確認できるのであるとすれば、そこは必ずしも信託業法の中でがちがちにやるという、そういうのではない選択肢というのもあるではないかという、若干そのあたりを考えましたので、以上です。

○ 岩原部会長

それでは、池尾委員どうぞ。

○ 池尾委員

今までの議論を伺った上で、冒頭近くで申し上げたことの補足というか、続きをちょっと述べたいのですけれども。

信託業法的な規制が適用される範囲の整理ということが大きな論点としてなっているのですけれども、やっぱり範囲を考える際にも、内容というものと、全く独立に範囲の確定というのはなかなか難しいという感じがするんですね。たたき台の2ページも「範囲・内容の整理」というふうに書かれているので関連していて、投資サービス法のときに柔構造化ということを言っていたわけですけれども、ただ、どこまで柔構造化してくれるのかということについて、懸念が業者サイドには随分あったみたいで、したがって結果的に範囲に入りたくないというふうな対応が非常に出たというところがあると思うんです。

私は範囲には入っていいし、信託業法の場合も神作委員おっしゃったように、範囲が広がること自体を懸念するというのは、やっぱりそれについてくる規制が画一的で重いものではないかという懸念があるから、範囲が広がることに対する懸念というのが、どうしても払拭できないのだと思うんです。範囲として入っても、事実上追加的な措置は何もとられないというケースも十分あり得るということだと論理的には思うのですけれども。そこのところが、やっぱり範囲に一たん入ってしまうと、ミニマムスタンダード自体がすごく重いものがぼんとかかってくるんだという前提了解があるがゆえに、範囲に入れるべきではないとかという話が出てくるんだと思うんですね。

だから、そのところで柔構造化みたいなことを、特に新しい形態の信託が入ってくるということに対応してやると言っている限りは、信託業法の規制内容自体が柔構造化するんだということを、やっぱり投資サービス法並びで、もっと強調すべきだと思うんですね。

柔構造化を考える際に、私はこれまでの議論の中でも出ている点を含めて、やっぱり4つぐらい軸があると思うんです。1つの軸は、信託される財産の性質というアンダーライティングアセットがどういうものかということです。

それからもう一つの軸は、受託者の裁量性がどれぐらい大きいか、受託者が裁量性が非常に大きい場合と、受託者にほとんど裁量がない場合では、当然、規制内容は大きく違ってくるはずだということで、これは何か弁護士のケースだけで論点が出ていますが、別に弁護士のケースだけではなくて、もっと規制内容を考える際に、大きな軸として受託者の裁量性がどうかというのがあると思うんです。

3番目が受益者の能力。それはプロかアマみたいな議論になりますけれども。受益者がどれだけの能力、知識を持っているのかという点が3番目。

最後の4番目が、受益者が不特定多数かどうか。あるいは言いかえると、受益権の流動性が高いか低いかという、そういう4つぐらいの軸で規制内容というのは違ってくるはずで、それによって事実上範囲だけれども、何の規制も受けないというケースもあり得ると思うんですね。だから形式論的に言うと、弁護士の預かり金のケースは範囲なのだろうけれども、実態としては何の規制も起こらないという整理になるのかもしれないし。

だから、ちょっと範囲の議論を一応するのだけれども、くどいですけれども、やっぱり範囲に入ったときに想定される規制内容についてイメージがないと、そこのところの議論がどうしても警戒的な議論になってしまうのではないかと思うので、そのあたりの整理をちょっとつけた方がいいだろうと思います。

○ 岩原部会長

川本委員、どうぞ。

○ 川本委員

ありがとうございます。

受益者保護を十分に配慮した上で、新しいチャンスを摘まずビジネスに制限を加えるような制度設計をお願いしたいというのは、ここの場でもずっと申し上げてきて、その範囲に参入制限とか兼業の制限ではない、形式要件ではないという内容で判断できるようにということも、ずっと主張してきたことなのですけれども。その観点から、2点事務局にお願いといいますか、もしイメージをお聞かせ願えればと思いますのは、3ページの下のところの第三者のチェックというのは、非常に正しい方向性だと思うのですけれども、これを形式要件ではなくて、デューデリジェンスをきちんとやればいいというようなことで、今後、政省令に書いていかれるのかどうかということが1点目。

それからもう1点は、6ページ目で忠実義務のところの利益相反行為の禁止は大事なことだと思うのですけれども、「免除要件について実務に支障を来さないように要件の明確化が必要である」というところを、「信託財産に損害を与えるおそれがない」を「おそれが少ない」とかというふうに書きかえても多分明確化にはならないので、その辺はどんなふうなイメージをお持ちかというのをお聞かせ願いたいと思います。

○ 岩原部会長

保井さんどうぞ。

○ 保井信託法令準備室長

大変重要な論点、ご指摘頂きましてありがとうございます。

1つ目の信託宣言の場合の適切な措置の部分でございますけれども、第三者のチェック、どういうイメージなのかということですが、イメージ的に申しますと、通常の信託であれば受託者が引き受ける際に、本当にこういう財産があるのかとか、あるいは不良債権が入っていないのかと、いろいろなことを調べます。それを信託宣言の場合は委託者と受託者が同一なので、これがそういったことはチェックする機能がなかなか働きにくいということから、これを第三者に任せてはどうかということで、例えば弁護士さんとか、あるいは公認会計士さんとか、そういったことによる第三者のチェックのイメージを持っているのですけれども、確かに川本先生おっしゃるとおりでございまして、ご指摘頂いた点も踏まえて検討してまいりたいと思っております。

それから2つ目の利益相反行為のところの「信託財産に損害を与えるおそれがない」というのを書きかえてもという話なのですけれども、ここで私どもが考えているのは、「おそれがない」ということで、非常に制限が広がりを持って実務の世界で受けとめられていて、これは相当実務では萎縮効果を呼んでいると。それを何とか見直していきたいということでございますので、確かにこの要件の明確化について、コンフィギュレーションということかもしれませんが、大事だという御指摘ももっともでございますので、これについても重く受けとめて検討してまいりたいと思っております。

○ 岩原部会長

大分時間も押し迫ってきまして、皆様から大変貴重なご意見を頂きましてありがとうございます。

基本的な問題については、かなり皆様からご意見頂いたように思います。確かに、特に最後の方で池尾委員がおっしゃった点は非常に重要で、規制のそもそもの必要性の整理と、そしてその場合規制内容をどこまで柔構造化していくかということが、今後、課題になっていくと思いますし、現にこの中にもある程度そういった発想は含まれてきていると思います。池尾委員がご指摘になりましたように、さっきの弁護士の場合の例のように、裁量性の低い業務については、ついては除くとされているわけです。まさに信託業法のいう信託というのは、必ずしも信託法上の信託と同じである必要はないという発想がこのペーパーには既に入ってきているわけであります。

それから、例えば信託宣言をした場合の兼業規制についても、非常に参入規制をするものであって、本来の自由な事業活動を阻害するという、そういうご懸念がいろいろと強いわけでありますけれども、一方で、これはある面で技術的な問題で、法人格をとりあえず別にする方が、例えば利益相反関係をチェックしたり、あるいは監督、あるいは財務規制等をかけるときに、その方がやりやすいという面が非常に大きいのではないかと、私はそういうふうに理解しています。むしろ一つの技術的な問題であると思うのです。

ただ、それでもなお、法人格を別にしないでやった方がよいという実務のニーズが強いのであれば、(6)に書いてありますように、法人格を別にしないでも、実質的に信託業以外の他の部門の健全性が客観的に担保される。はっきり言えば、実際上使われることが多いのは、ある事業部門を信託宣言して、それを受益証券化して証券化していくというようなことでしょうから、そういうような実務のニーズに合った形で、法人格を別にしないでも実質的に受益者保護が担保できるような最低限の仕組みをつくることによって、そういった問題を解決していきましょうという発想がここに書かれていると私は理解しております。そういう点から言えば、既に各委員からご指摘頂いた問題意識はこの中にかなり盛り込まれていますし、当面、まず出てくる問題については、それなりの対応がされて、実務の新しいビジネスニーズに対応するように考えて、この報告書は基本的には書かれていると考えております。

ただ、課題がいろいろ多いことは確かで、藤田委員おっしゃいましたように、基本的な考え方にしましても、2ページの(1)から(3)のところの基本的な考え方の整理等は、なおきちんと、もう一度今日のご指摘を踏まえて事務局に整理して頂きたいと思います。さらに藤田委員がご指摘になったような善管注意義務の強行法規性との関係等、これは今後も詰めていく必要があります。前回にも申し上げさせて頂きましたように、それをすべて、次の通常国会を目指した今回の作業の中で全部解決していくということは、これは非常に困難だと思われます。いろいろ問題を詰めていかなければいけませんので、それは今後なお、この審議会でご検討頂くことにいたしまして、解釈で対応できるところは解釈で対応していくということで、基本的には、今日ご指摘頂きました問題についてこの文章に手を入れることによって、何とか皆様のご了解を頂いていけるのではないかと考えております。

そこで、本日のご意見を踏まえまして、本日の事務局の資料に加筆、修正をすることで報告書を取りまとめるということをさせて頂きたいと考えておりますので、皆様にご理解のほどをよろしくお願い申し上げます。いろいろご指摘頂きながら、なお詰めきれないところが残っていることは承知しておりますが、先ほど申しましたような時間的な問題、それから何よりもまずニーズを受け入れて、少なくとも新しい信託法の可能性を受けとめて、新しいビジネスが始められるように、まず出発するということが大事だと思いますので、そのような方向で扱わせて頂きたいと考えております。

そこで、次回は、本日頂きました皆様のご意見を踏まえまして、事務局の方で整理をして頂き、信託法改正に伴う信託業法の見直しについての報告書の取りまとめ案をお示ししたいと考えております。

皆様の方で、特にご指摘頂くことがなければ、終了の時間も近づいてまいりましたので、本日の審議は以上で終了させて頂きたいと存じます。よろしゅうございましょうか。

それでは、この後記者レクを行いまして、本日の会合の模様につきましてお話をさせて頂きたいと考えております。

最後になりましたが、事務局の方からご連絡等がございましたら、お願い申し上げます。

○ 大森信用制度参事官

最後に事務局の気持ちを全部部会長が代弁してくださいまして、どういう言い訳をしようかなと思っていたのですけれども。

今回のプロジェクト、一昨年の信託業法では想定していなかった信託法の新しい類型に、業法として応急手当をしなければならないということでして、応急手当であるがゆえに、論理がすとんと委員の皆様の胸に落ちにくい面があったかと思いますけれども、来週、1月26日、あと1週間ございますので、次回までの間に整理できるところは極力整理をさせて頂きたいと思っております。

私ども制度に従事する者にとって、使われないということが一番悲しいことでありまして、転ばぬ先の杖みたいな発想というのは、もう10年以上前に卒業しておりまして、さまざまな異なる要請をどう最大限調和させていけばいいのかということで汗をかいているということは、どうか信頼して頂きたいと申し上げても、余り傲慢なことにはならないのではないかとも思うのですけれども。

正式には次回の開催通知を追ってご連絡を申し上げますので、ご多忙とは存じますが、よろしくお願いいたします。事務局からは以上でございます。

○ 岩原部会長

どうもありがとうございました。

それでは、以上をもちまして、本日の会合を終了させて頂きます。どうも長時間、ご熱心な討議ありがとうございました。

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