金融審議会金融分科会第二部会(第4回)議事要旨
1. 日時:
平成13年5月16日(水)10時00分~12時00分
2. 場所:
中央合同庁舎第4号館9階 特別会議室
3. 議題:
○有識者からのヒアリング
○自由討議
4. 議事内容
○以下のテーマについて有識者からヒアリングが行われた後、自由討議が行われた。
- 「ソニーにおける銀行の役割」
伊庭 保 氏(ソニー株式会社 取締役副会長) - 「株式持合いとコーポレート・ガバナンス」
伊藤 邦雄 氏(一橋大学商学部教授) - 「株式市場環境について」
淵田 康之 氏(野村総合研究所 資本市場研究部長) - 「銀行の株式保有の制限の是非およびあり方」
神田 秀樹 氏(東京大学法学部教授)
- 「ソニーにおける銀行の役割」
(主な意見等)
銀行からは融資や株保有も含めて、様々な面で企業創業時に、ベンチャーの育成のための資金的なバックアップを受けてきた。しかしながら、最近では直接金融のウエイトが相当高まってきていると思われる。
取引の都度相手を探しているようでは取引コストがかかるので、持ち合いによる長期的な取引関係を結ぶことで取引コストが削減されているといった、持ち合いの経済的効果のようなものは認められる。
日本企業では所有と経営は不分離だったのではないか。株式持ち合いにより議決権はお互いに行使しないとすれば、いわば自分の会社の株式を持っているような状態になり、所有と経営が分離しているとは言えない。
銀行は、融資先(顧客)利益を重視すべきか、銀行の株主の価値最大化を重視すべきかという2つのジレンマの中で、まだ当分、融資先(顧客)利益を重視するという行動が、今後も続くのではないかと思う。
国際的に事業展開している会社は、急速に外人株主比率が高まってきており、結果としては、株主としての銀行の影響力は相当に下がってきている。
日本は日本としてのガバナンスがあったからこそ経済大国第2位まで来たのではないか。戦後から一貫して、銀行を通じての資金調達が主流であったことが、持ち合いが生じた大きな側面だと思う。
持ち合い株は、今どうして売れないのかと言えば、含み益を償却財源に使っていることから、株が下がっている今売ってもあまり償却財源にならないからであろう。株が上がれば、資本の論理により、保有しているメリットがない持ち合い株は売却するというトレンドは全く変わらないのではないかと思う。
持ち合いでは、なかなか資金の効率を上げるようには働かない。キャッシュフロー重視の経営が進めば、持ち合いのようなあまり意味のない行動は、経済合理性から行わなくなるのではないかとも考えられる。
銀行の株式売却は非常に進んでいるが、この間の株式市場指数の動きを見ると、売却があったから下がるとか、あるいは売却が少ないから上がるとか、そういった一定の関係は見られない。
貯蓄の選択基準で「将来の値上がりが期待できるから」という理由を挙げる人がここ数年増えてきたが、これはビックバン等の成果だと思う。投信の販売チャネルが広がり、例えば銀行の窓販による株式投信が着実に増えている。株式投信全体に占める比率も増えているということも、裾野の広がりに貢献しているのではないかと思われる。
株価というのは企業価値であって、銀行に何らかの形で保有規制が入るといった要因で売りが出るとしても、これが本来の企業価値より割安になっていれば買いが入るというのがマーケットであって、「日本はそうではない」と言うことは「日本はマーケットメカニズムが機能しない国である」と主張するのと同義であると思う。
個人金融資産、1,400兆円の5割以上は預貯金に行く。そういう選択を国民がしている日本は、株式市場への国民の信頼がない国であると言っていいと思う。個人投資家の株式市場への信頼を回復する必要はある。
直接金融、この中にはいわゆる市場型間接金融を含むが、こうしたルートをできるだけ多数整備すべきであると思う。日本の将来の金融資本市場の姿という観点からは、直接金融の比重増大が望ましく、先進諸外国の流れにも合致する方向だと思う。
資本コストを考えると、持ち合いは経済的にあまりメリットがないということで、解消が進むのであれば、あまり規制にこだわる必要はないと思う。しかし、持ち合い解消がなかなか進まないのであれば、やはり何らかの保有制限を課す必要がある。
金融市場のルールづくりというのは、基本的にグローバルな潮流とどう整合性をとるかが非常に重要だと思う。今まで日本は、どちらかというと後追いというか、対応型で来たわけだが、これからは、むしろそれを先取りするようなルールづくりをやっていく必要があるのではないか。
持ち合いによってその経営の安定性が図られている状態にあるのであれば、経営者が、わざわざ自分の経営権を不安定化させるような持ち合い解消を喜んでやるというのは、経済学的には考え難い。解消にはある程度のプレッシャーが必要ではないか。
問い合わせ先
金融庁総務企画局信用課
電話 03(3506)6000(内線 3562,3566 )
本議事要旨は暫定版であるため、今後修正があり得ます。