金融審議会金融分科会第二部会(第5回)議事要旨

1. 日時:

平成13年5月23日(水)9時30分~12時00分

2. 場所:

中央合同庁舎第4号館9階 特別会議室

3. 議題:

  • 有識者からのヒアリング

  • 自由討議

  • 事務局説明

4. 議事内容

  • 以下のテーマについて有識者からヒアリングが行われた後、自由討議が行われた。

    • 「株式持合いについて」
      福間 年勝 氏(三井物産株式会社 代表取締役副社長)
    • 「株式持合状況調査及び銀行保有株式にかかるリスクの推計」
      川北 英隆 氏(日本生命保険相互会社 財務企画部長)
    • 「株式市場の現状と改革の方策について」
      本間 正明 氏(大阪大学経済学部教授(経済財政諮問会議議員))
    • 「銀行経営の健全性と株式保有」
      池尾 和人 氏(慶應義塾大学経済学部教授)
  • 事務局より「銀行の株式保有制限に関する主な検討事項にかかる意見等」について説明を行った。

(主な意見等)

  • 日本の株式持合いの要因はいくつかあるが、最も大きな要因として資金調達手段が極めて限定されてきたことが挙げられる。1987年にコマーシャル・ペーパーが解禁され、短期借入資金が銀行依存ではなくなり、金融機関からの資金調達に絡む株式の持合いも流動化が始まったと思う。

  • BISの二次規制、時価会計の導入といったものがある中で、一律の規制を行うことは適当でないと思われる。持合い株式は、資本の論理に基づき市場メカニズムを通じて調整されると思う。

  • 経済合理性の薄い持合いは、ROE経営、リスク・マネジメントの観点から維持することは難しいと思うが、コア・バンクとの保有関係は維持されるのではないか。

  • 株式持合いのマクロ株価形成の影響については、現在の程度の株式持合いでは、マーケットを見ながら売却する場合には、大きな影響はないのではないかと思われる。株価を決定するのはむしろROE等の別の要因ではないか。

  • 今までの日本の株式持合いは、株式を持合う企業同士やそこに介在する銀行を含めて、直接の関係者だけに享受できるメリットを相互に分け合っていた面がある。本来、それに対しては、何らかのパブリック・ポリシーとしての対応が必要ではないか。

  • 株式持合いが減少している背景として、金融機関側も企業側もROE経営、市場を睨んだ経営に移行していることが考えられる。持合い問題を現時点で大きく取り上げて議論するニーズは薄れてきているのではないか。

  • 今後の日本の融資形態は、シンジケートローンのような形で、あらかじめリスクを決める形に変わっていくと思う。

  • コアバンク制に今日的な意義が認められるとしても、企業が銀行と安定的な関係をつくることと株式持合いとは、必然的なつながりがあるのであろうか。

  • 今回のリスクの推計は、株式だけを抜き出してVaRを計算しているが、本来はポートフォリオ全体について、資産間の相関も考慮して計算する必要がある。また、銀行の資産は、貸出金の比率が6割を超えており、自己資本という意味では、信用リスクに使われる部分もあるということを考慮する必要もある。

  • ガバナンスの問題として、株式持合いが、いわば間接金融における資金の担保として使われてきたという面がある。

  • 金融機関の株式持合いは、最終的には貸し渋りの問題等も背後にあるわけであり、金融機関の経営上の安定性、あるいはマネージメントの向上に対して、持合い制度というものをどのように理解しておくかということは、もう一度原点に帰って考えなければならないと思う。

  • 株式には、企業所得の受け取りに関する特定の権利を与えるというキャッシュフローにかかわる利潤証券としての側面と、発行企業経営に対する参加の権利を与えるというコントロールにかかわる支配証券としての側面がある。

  • 国際的な規制の見直しの潮流から考えても、ポートフォリオアプローチに基づくリスクの測定のような方向で問題を考えていくのが順当ではないかと思うが、統合的リスク管理体制が十分に確立していない現状では、ある程度資産カテゴリーごとにリスク量を計算して、若干の修正を加えるというような二段階のアプローチを採らざる得ないのではないか。

  • 株式持合いについては、コーポレートガバナンスの観点から、メリット・デメリットを含め再検討されるべきであるが、持合いをなくせば健全なコーポレートガバナンスが確立されるというような単純なことではない。

  • 銀行の株式保有問題の本質は、日本の銀行部門の自己資本ベースが脆弱だということであり、いかに自己資本ベースを拡充するかという問題として考えなければならない。自己資本ベースの大きさが前提になるとすれば、株式の保有制限だけでなく、資産全般の圧縮を考えなければならない。

  • 株式市場の活性化、特に投資家の参加を求めるという意味では、市場の信頼性を増すのは基本であるが、国の政策として、税制等を含め市場への参加を促していく施策を具体的にとっていく必要がある。

  • 銀行経営の立場から言えば、株式の抱えるリスク量や経済合理性の観点から、ある意味では自己の責任において、市場への影響を十分配慮しながら、株式持合いの円滑な解消を行ってきた。

問い合わせ先

金融庁総務企画局信用課
電話 03(3506)6000(内線 3562,3566 )
本議事要旨は暫定版であるため、今後修正があり得ます。


(資料)

サイトマップ

ページの先頭に戻る