金融審議会総会(第10回)議事要旨

1. 日時:平成13年1月29日(月)10時00分~12時05分

2. 場所:中央合同庁舎4号館 共用第1特別会議室

3. 議題:

  • 中央省庁再編における金融庁の新たな体制及び審議会統合について

  • 新たな金融審議会での審議について

  • BIS規制の見直しについて

4. 議事内容

  • 委員の互選により、貝塚 啓明(かいづか けいめい)委員が会長に就任した。また、貝塚会長の指名により、片田 哲也(かただ てつや)委員が会長代理に就任した。

  • 柳澤(やなぎさわ)金融担当大臣より挨拶の後、昨年8月に行われた諮問に加え、公認会計士制度に関し新たに諮問が行われた。

    • <内閣総理大臣、金融庁長官及び財務大臣による諮問(昨年8月に金融再生委員会、金融庁及び大蔵大臣により行われた諮問を引き継ぎ)>

      「経済・金融を取り巻く環境の変化を見据え、安定的で活力ある金融システムの構築及び金融市場の効率性・公正性の確保に向けて、金融に関する制度の改善に関する事項について、審議を求める。」

    • <内閣総理大臣及び金融庁長官による諮問(今回、新たに諮問)>

      「公認会計士制度を取り巻く環境の変化を見据え、公認会計士監査の一層の充実強化及び環境の変化に適合した公認会計士制度の整備に向けて、公認会計士制度の改善に関する事項について、審議を求める。

  • 事務局より議事規則等について説明があり、今後の議事手続等について了承された。

    議事手続についての従来からの主要な変更点は以下のとおり。

    • 今後、原則として総会を公開することとする。ただし、率直な意見の交換、意思決定の中立性が不当に損なわれる恐れがある等、会長が特に必要と認めるときは非公開とする。分科会・部会についても、できるだけ公開する方向で検討する。公開の対象については、会場の都合等も勘案し、当面、金融庁を担当する記者クラブに所属する記者で各社1名とする。実施後の状況を見つつ、将来は、一般への公開も検討。

    • 議事録について、従来は節目節目に公表していたが、今後は会議の都度、事務作業が終わり次第公表する。

    • 会長は、審議事項、分科会又は部会の委員構成等に鑑み適当と認めるときは、分科会又は部会の議決をもって審議会の議決とすることができることとする。

    議事手続について以下のような発言があった。

    • 議事録について、会長が必要と認めるときは全部又は一部を非公表とすることは適切と考えるが、ある会合が開かれ、その内容を非公表とするという事実自体は公表されるのか。

    • 会合が行われたこと自体は公にされる。また、審議会関係の情報も、情報公開法に基づく開示請求の対象となるため、会長の判断で議事録を非公表とできるのは、実際上は、情報公開法上の不開示事由にあたると判断される場合に限られよう。

    • 議論の経過を国民と共有するために、分科会や部会でも、議事要旨等をできるだけ早く公表すべき。

  • 新たな金融審議会の当面の審議テーマ等について、事務局からの説明の後、自由討議が行われ、自動車損害賠償責任保険制度部会、公認会計士制度部会及び「金融の基本問題に関するスタディグループ」の設置について了承された。

    自由討議での主な発言は以下のとおり。

    • 「情報化社会の進展に対応した金融分野における利用者保護等の在り方」とあるが、利用者保護の側面にとどまらず、電子商取引等、情報化の進展について幅広く議論していくべき。

    • 金庫株の解禁について議論となっているが、株式消却のための自己株式取得が既に認められている中で、どれほど意味があるのか疑問。会計上、金庫株に資産性を認めることはできない。また、目的を特定しない自己株取得を許せば、株価操作の恐れがあるため、公正取引ルールを検討する必要があり、これにあたっては審議会で議論すべき。また、証券市場が価格形成・企業監視の役割を果たしていないという指摘もあり、こうした点についても審議会で議論すべき。

    • 審議会で、目先の問題を追いすぎている傾向がある。スタディグループで中長期的な観点からの議論が行われているということだが、その議論を分科会や部会にリンクさせていく仕組みが必要ではないか。

    • 利用者保護については、外資の参入やネット上の取引の進展等も踏まえ、既存の業界団体のみを念頭に置くのではなく、グローバルな観点からの議論をすべきではないか。

    • 金庫株の話が出たが、相場操縦等について、セーフハーバールールを作ることが重要。ビッグバンで間接金融から直接金融へのシフトを狙ったが、それが順調に進んでいるとはいえない。直接金融を支える制度的なインフラの整備が不十分であり、諸外国に比べて個人の直接金融への進出が遅れている。証券市場を活性化する施策について、金庫株もその一項目であるが、もっと幅広い観点から議論すべき。

    • 金融分野における消費者教育を推進するための作業部会等を設けてほしい。金融庁のホームページや、財務局でのパンフレット配布など、消費者教育についての対応が進んできているが、肝心の消費者に十分認知されていない。様々な機関が個別的に対応するのではなく、アメリカやイギリスのように、政府が体系的な消費者教育を実施すべき。個人、家計に金融知識が浸透しなければ、ビッグバンは実現できない。

    • 保険契約者保護機構の制度を見直すべき。最近、保険会社の破綻処理のルールが整備されたところであるが、損保については生保の制度に倣っており、不備が目立つ。生保では契約の継続性を重視し、高齢者、疾病者等の保護を中心に制度設計されているが、損保では事情が異なる。他方、損保特有の問題である共同保険の契約者保護が図られていない。

    • 現在我が国が直面している重要な政策課題については、審議会として機動的に取り上げ、一定の見解を示すべきではないか。

    • 新しい金融審議会において、事後的に流れに対応するのではなく、一部の分野でもよいから、時代を先取りして提言できるよう、戦略的にテーマを絞って議論すべき。最大の問題は、日本の今後の経済、産業の在り方と、金融の在り方にミスマッチがあること。預金、貸出が中心で、リスクマネーが十分に供給されておらず、これを変えるメッセージが必要。グローバル化が進展する中での国際的な金融のルールについても、積極的に提案していくことが必要。

    • 日本の証券市場、コーポレートガバナンスの状況についてはアメリカ等と事情が違うところがあり、こうした点についてはスタディグループでもある程度議論されている。

  • 事務局より、「BIS規制」の見直しについて、先日公表された第2次市中協議案を中心に説明がなされ、質疑応答が行われた。

    質疑応答は大要以下のとおり。

    • 標準的手法というのは、これまでの銀行のプラクティスを否定することになるのではないか。格付け会社の提供する格付けは一般投資家向けのものであり、銀行の貸出のリスク評価にそれを利用することは、銀行にモニタリング能力がないということではないか。株価下落により自己資本が下落する、といった観点からのみBIS規制を論じるべきではない。アジアでは全体的に債券市場が未整備で、アジア危機の際には、グローバルスタンダードはアジアを封じ込めるものだとの声もあったが、間接金融が中心的である日本の銀行がプラクティスを通じて培ってきたリスクテイクの能力、事業会社のリスクを管理するノウハウを活かし貢献していくべきではないのか。

    • 格付けの利用とは、いわゆる「格付会社」のものに限る趣旨ではない。民間会社だけなく、公の機関のものも含まれる。見直しの背景として、現行の規制では企業への貸付のリスクウェイトは一律100%となっているが、いかなる銀行でも貸出先のリスクを区別しないことはありえない。そこで、複雑化を回避しつつ、規制に信用の指標を取り入れ、精緻化するために外部格付けの利用が提案されたものである。多くの金融機関と対話を行った結果、国際的に活動する銀行については、既に内部格付けの仕組みを有していることが判明した。そこで、銀行自身のリスク管理を強化する方向で、進んだ銀行については、その手法を規制に取り込むこととなった。また、国による競争条件や活動環境の違いについても規制に取込むよう働きかけてきており、単に国際的な議論に「対応」してきただけではなく、積極的に「提案」をしているところ。

    • このBIS規制の見直しについて、政府として、あるいは金融庁として今後どう取り組み、金融審議会としてどう議論していくことを考えているのか。また、オペレーショナル・リスク(以下、「オペリスク」と略す)計測の導入とで、自己資本規制との関係はどのようなものになるのか。

    • オペリスクを自己資本規制に盛り込むのは、(1)業務の高度化等によりオペリスク自体が増大している(2)銀行ごとに信用リスク・市場リスク・オペリスクの比重が異なっている(3)信用リスクの計測の精緻化に伴い、それまで信用リスクに含めていたオペリスクも精緻に計測する必要がでてきているためである。具体的に如何にオペリスクを測量するかについては、(資料10-5-3中「オペレーショナル・リスクの計量化」参照)、各銀行の特性に配慮して選択肢を用意している。総合的にみて、自己資本の負担水準を現行より重くも軽くもしないようにしている。

    • 第二次市中協議案については、今後パブリックコメントとして、各界の意見をとりまとめ、最終的な意見調整を行なっていく予定である。銀行のリスク管理が全面に出てくる話であり、早期是正措置のメルクマールとしても結びついており、今後の監督上の重要な課題である。「当面の審議テーマ」に挙げられている「金融機関監督の国際的な潮流と我が国の対応」はこのような趣旨であり、BIS規制見直しが今後の銀行経営及び銀行監督に与える影響を審議会でもご議論いただきたい。

    • 我が国の銀行は、長期的貸付の慣習等、アングロサクソンとは自ずから違うノウハウが存在している。

    • 「進んだ計測手法を選択する銀行については、経営上のリスクの違いに応じて自己資本の充実が必要」(総会10-5―1)とあるが、先進的な銀行ほど負担が大きくなるということか。

    • 見直しによって銀行に選択肢を増やしており、進んだ選択肢を選べばより難しい対応が求められるようになるということである。

問い合わせ先

総務企画局企画課
電話 03(3506)6000(内線 3514、3515)
本議事要旨は暫定版であるため、今後修正がありえます。


第10回金融審議会総会議事次第

日時:平成13年1月29日(月) 10時00分~12時00分

場所:中央合同庁舎4号館 共用第1特別会議室

  • 1. 中央省庁再編における金融庁の新たな体制及び審議会統合による新たな金融審議会についての説明

  • 2. 委員等の紹介

  • 3. 会長の互選等

  • 4. 新たな金融審議会での審議について

  • 5. 自由討議

  • 6. BIS規制の見直しについて

  • 7. 金融担当大臣挨拶・諮問

  • 8. その他

以上


金融審議会委員等名簿

平成13年1月現在

会  長   貝塚 啓明   中央大学法学部教授
会長代理 片田 哲也 小松製作所(株)取締役会長
委  員 池尾 和人 慶応義塾大学経済学部教授
  岩原 紳作 東京大学法学部教授
江頭 憲治郎 東京大学法学部教授
太田  宏 読売新聞社編集局次長
岡部 直明 日本経済新聞社論説副主幹
加古 宜士 早稲田大学商学部教授
神田 秀樹 東京大学法学部教授
倉沢 康一郎 武蔵工業大学環境情報学部教授
斎藤 静樹 東京大学経済学部教授
首藤  恵 中央大学経済学部教授
関  哲夫 新日本製鉄(株)代表取締役副社長
高橋 伸子 生活経済ジャーナリスト
田中 直毅 21世紀政策研究所理事長
成川 秀明 日本労働組合総連合会総合政策局長
浜  矩子 三菱総合研究所主席研究員
原  早苗 消費科学連合会企画委員
福井 俊彦 富士通総研理事長
福間 年勝 三井物産(株)取締役副社長
松原 亘子 日本障害者雇用促進協会会長
山下 友信 東京大学法学部教授
蝋山 昌一 高岡短期大学長
脇田 良一 明治学院大学長
〔計24名〕  
幹  事 増渕  稔 日本銀行理事
    (敬称略・五十音順)

金融分科会所属委員名簿

平成13年1月現在

委  員   池尾 和人   慶応義塾大学経済学部教授
  岩原 紳作 東京大学法学部教授
太田  宏 読売新聞社編集局次長
岡部 直明 日本経済新聞社論説副主幹
片田 哲也 小松製作所(株)取締役会長
神田 秀樹 東京大学法学部教授
倉沢 康一郎 武蔵工業大学環境情報学部教授
斎藤 静樹 東京大学経済学部教授
首藤  恵 中央大学経済学部教授
高橋 伸子 生活経済ジャーナリスト
田中 直毅 21世紀政策研究所理事長
成川 秀明 日本労働組合総連合会総合政策局長
浜  矩子 三菱総合研究所主席研究員
原  早苗 消費科学連合会企画委員
福井 俊彦 富士通総研理事長
福間 年勝 三井物産(株)取締役副社長
山下 友信 東京大学法学部教授
蝋山 昌一 高岡短期大学長
〔計18名〕  
  (敬称略・五十音順)

金利調整分科会所属委員名簿

平成13年1月現在

委  員   池尾 和人   慶応義塾大学経済学部教授
  江頭 憲治郎 東京大学法学部教授
貝塚 啓明 中央大学法学部教授
関  哲夫 新日本製鉄(株)代表取締役副社長
成川 秀明 日本労働組合総連合会総合政策局長
原  早苗 消費科学連合会企画委員
松原 亘子 日本障害者雇用促進協会会長
〔計7名〕  
  (敬称略・五十音順)

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