金融審議会総会(第18回)・金融分科会(第6回)合同会合議事録

日時: 平成16年3月17日(水)11時02分~12時34分

場所: 中央合同庁舎第4号館(9階)金融庁特別会議室

○ 貝塚会長

それでは、時間がまいりましたので、第18回金融審議会総会及び第6回金融分科会会合の合同会合を開催いたします。

皆様ご多用のところ、ご参集くださいましてありがとうございます。委員の皆様におかれましては、日ごろから各部会、ワーキンググループ等におきましていろいろなご議論をいただいておりますが、本日の会合は所属の部会を超えたご意見をいただければと存じております。

なお、本日の議事は公開となっておりまして、報道機関の方などのための後ろの席を確保しております。

本日の議題につきましては、主として最近の金融審議会の活動状況及び金融検査マニュアル別冊について事務局から説明がなされる予定であります。

なお、ご都合により途中で退席される委員の方もいらっしゃることでありますので、皆様ご参集の間にお諮りしたい案件を先に行いたいと思います。

昨年の夏、分科会長の蝋山昌一さんが亡くなられまして、現在分科会長は空席のままということになっております。したがいまして、形式的な案件でございますが、分科会長の後任の選任を行う必要がありますので、暫時事務局に進行役をお願いしたいと思います。

それでは、お願いします。

○ 居戸企画課長

企画課長の居戸でございます。今、審議会長よりお話がございましたように、蝋山先生のご逝去によりまして分科会長が現在空席になっておりますので、金融審議会令第5条の規定にのっとりまして、後任の分科会長を分科会委員の互選により選出をしていただきたく存じます。事務局より事前に委員の先生方にお伺いしましたところ、審議会長と兼務にはなりますが、貝塚委員に分科会長をお願いしてはどうかというご意見をちょうだいしておりますけれども、いかがでございましょうか。

それでは、分科会の委員の皆様にはご異存ございませんようですので、貝塚委員にご承諾をいただければ分科会長就任をお願いしたいと思いますが、貝塚委員、いかがでございましょうか。

○ 貝塚委員

蝋山さんの代役は務まらないのでありますが(笑)、ちょっと冗談でございますが、蝋山さんが急遽亡くなられましたので、今の段階で兼務させていただきたいと存じます。お受けしたいと思います。

○ 居戸企画課長

どうもありがとうございます。

それでは、引き続き貝塚分科会長にこの後の議事をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○ 貝塚会長

それでは、2番目の、これは分科会の案件になりますが、最近金融にかかわる税制は、政府税制調査会において、中心にいろいろと議論がなされております。たしか金融税制の委員会というのは、小委員会というのがたしかあるはずであります。税制調査会。我々の金融審議会としても、非常に関心を持つべき金融取引にかかわる非常に重要な話でありますので、今金融税制にかかわる検討課題はどのようなものであるかを、事務局のほうからごく簡単に説明し、皆様にご相談させていただきたいと思います。それではよろしくお願いいたします。

○ 中村政策課企画官

金融庁におきまして税制担当の企画官をしております中村と申します。よろしくお願いいたします。

お手元の資料1というのに、金融税制についてという表紙のある資料がございまして、これに基づきまして、ここしばらくの間の金融と税制についてのかかわりについて、ざっと現状、ご説明させていただきたいと思います。

今、分科会長からもお話しがございましたが、金融と税制と申しますのは、いろいろな形で縁が深いものかなと思っております。例えば金融商品からの収益に一定の率で税金の負担がかかるとなれば、その商品の収益性にも影響がありますし、市場において税制がいろいろな価格形成に影響を与えてきたという面もあろうということで、そういった形でいろいろなかかわりがございました。

特に、金融と申しますと、非常に足が速いという特色がございまして、税制はその足の速い取引に、ダイレクトにキャッシュフローに影響があるということで、いろいろな数多くある経済取引の中でも、金融の分野というのは税制がかかわる部分が非常に大きいのかなという気がいたしております。したがいまして、今後の金融システムといったものを考えていく上でも、重要な構成要素として、税制も1つの要素として考えていくということは重要な観点かなという気がいたします。

私が申すまでもなく、この10年ほど、我が国の金融システムには大きな変化が生じておりまして、それに伴いまして税制についても大きな変化が生じていると言っていいかと思います。お手元の資料の表紙をおめくりいただきまして、1ページ目に、これは非常に古い文章ですが、ビッグバンのときの総理の指示というのがございまして、そのときに今後の金融システムの改革に向かって、大きな方向が打ち出されたわけですけれども、その一節の中にも、この2の(注)というところで、抜本的な金融市場改革にあわせ、金融関係税制について、公平、中立、簡素の基本理念及び課税の適正化の観点も踏まえ、税制全体の中で所要の検討を行うという、わざわざ注記した形で、当時の指示文書の中でも、大きな税制についての変化を予兆させるような一節が入っていたということでありまして、改めて読み直してみて、こういったところから少し予感があったのかなという気がいたします。

その後の流れでございますが、2ページ目をおめくりいただきまして、それ以降大きな動きとして、やはり株式関係の税制が大きく変化いたしました。それとあわせまして金融資本市場関係、これは特に利子に対する源泉徴収の問題ですけれども、その大きな2つが今までのこの10年ほど間での主要なテーマだったという気がいたします。

株式について言いますと、従来は有価証券取引税というのがございましたが、それが廃止になりまして、一方で株式のキャピタルゲイン課税については、順次適正化の試みが行われ、平成14年度に特定口座制度という制度が導入されまして、これをもとにして簡素で、年間の取引を一本化して課税するという仕組みも整備されました。それについて、順次改善を行いますとともに、今度は特定口座に基づきまして、株式だけでなく投資信託についても一体で課税するという仕組みと税制がつくられています。さらに加えまして、現行、税率が従来26%という税率でしたが、それを特にここ5年間の措置としては10%まで下げるといった、かなり大胆な取扱いも行われるという事態に至っております。

金融資本市場関係のほうにつきましては、ちょっとこれは技術的な面もございますが、国債の利子の源泉徴収を、今結果的には一定の内国法人、ある程度の規模の内国法人が受け取る利子についても源泉徴収を外す、あるいはTB・FBやCPについても税制の影響を受けないような市場がつくられているということで、かなりここを振り返りまして、金融に係る税制の姿も随分変わってきたといえるかと思います。

これ以外にもいろいろなことがございましたし、これから先もいろいろ改善すべき点は多々ございますけれども、大枠といたしまして見ますと、やはりビッグバン、当時問題として認識されていた点は、かなり実現されてきているという事態といってもいいかと思います。

繰り返しになりますが、その中で、特に一番大きなのは株式関係の税制でございまして、資料をおめくりいただきまして3ページ目に、15年度、16年度と、この2年間にわたって行われた税制改正をざっとまとめてみました。将来の課税の一体化に向けた措置ということを念頭にしまして、利子が従来20%の税率で課税といったところを、配当・譲渡益、そして株からの収益も同じ税率で取扱うこととされております。

それから2つ目の箱で、先ほど申しましたが、利子が源泉分離課税で支払いの時点で税負担が終わるという仕組みに倣いまして、株式についても簡素な課税方式、しかも実額で把握して課税するというような仕組みが取り入れられました。

それから3つ目の箱といたしまして、投資信託関係にいたしましては、15年度、16年度で2年間続けまして、ほぼ株式と同じ取り扱いができるような課税方式になりました。

そして最後の箱でございますが、非上場株式につきましても、譲渡益の税率が従来26%でありましたものが20%に引き下げられまして、したがいまして20%という税率が非上場株のところまで及ぶといった改正が行われております。これに加えまして、当面の貯蓄から投資への流れをつくるための優遇措置といたしまして、上場株式それから公募株式投信、それから生まれる収益につきましては、税率を原則20%を10%にするという扱いとなっております。こうした改正を経まして、株式それから投資信託につきまして、特にキャピタルゲイン課税、それから元本の解約するといった、そういった場面におきましては、ほぼ年間の取引、複数の取引、それから株式と投資信託との間での通算ができた上で、実額で課税するという仕組みが生まれております。

当然そうなりますと、こうした仕組み、こうした課税方式は個人投資の実態で、複数の金融商品間で収益を計算しているという、そういう個人投資の考え方からして、もう少し広げる余地はないだろうかとか、広げる場合にどういった問題があるかとか、そういうことは具体的な問題として、近い将来の課題として、やはり見えてきているわけでございまして、現在政府税調におかれましても、こうした問題意識から、金融商品課税の一体化という考えを提示されまして、金融税制の検討を始められております。

その直近の答申、税調の答申を4ページ目におつけさせていただきましたが、その2節目のところで、将来の金融・証券税制のあり方については、金融商品間の中立性を確保し、簡素かつ安定的な税制を構築するため、金融資産性所得に対する課税をできる限り一体化する方向を目指すべきであるといったお考えが示されております。そして昨年秋に、政府税調の新委員の任期が始まりました直後から、金融小委という小委員会を立ち上げておられまして、現在まで5回ほど開催されておりまして、さまざまな論点をご議論されているというふうに承知しております。

さて、そちらが税制調査会の動きでございまして、こちらの金融審としてこれをどう考えるかということでございますが、5ページ目をおめくりいただきまして、税制についての金融審としてのお考えは、平成14年の中期ビジョン答申の中に一節がございまして、その中で基本的な考え方は整理していただいているかと考えております。その中でありますことで、大きく言って3つございまして、下線を引いておりますけれども、金融商品に対する課税については、取引の実態等を踏まえつつ、課税方法や税率を簡素化するなど、簡素で投資家の立場から分かりやすいということが1つのキーワードでございます。それから2つ目のキーワードは、預貯金中心の貯蓄優遇から株式・投資信託等の投資優遇への転換の流れを政策的に促進する、これが2つ目のキーワードでございます。そして3つ目のキーワードは、国際的な視点からの検討も重要であるということでございまして、その具体的な中身は足の速い金融所得に過度の税負担を強いることのないよう、あまり過度な負担を強いると海外への資本投資を結果的に招くといった問題意識から、国際的な視点の検討が必要である。これが大きく3つの金融審としての検討の視点ということでございまして、この3つの基本的考え方については、恐らく今改めてこれを考え直すようなこと、必要ないかと思いますけれども、現実の足元の税制がかなりのペースで進んできている。そして税制調査会の方で今、金融商品課税の一体化という問題提起をされて、検討されているという状況でございますので、やはり金融インフラを考える金融審議会においても、税制について理解を深め、また考え方を持っていくということは必要な状況ではないかという認識を持っております。

以上でございます。

○ 貝塚会長

ただいまの中村企画官からの金融税制に関する税制調査会の動き、それから金融審議会における従来の考え方についてご説明ありまして、金融税制、改めてこの金融審議会でもワーキンググループをつくって議論したいということだと思いますが、何かご質問、あるいはご意見ございましたら、どうぞ、ご自由に。

私は財政学を専門にしておりまして、あれですが、最近簡単に申しますと、二元的所得税という考え方がありまして、金融的な所得は全部包括的に、いろいろな形があるんですが、それを課税するということで、給与所得ないしは普通の勤労所得と別にするという考え方がありまして、もちろん税率はあれなんですが、そういう考え方がかなり、たぶん税制調査会もそういう考え方に近い考え方をとっておられるというふうに了解しておりますが、そういう背景があるということです。

何か、ご質問あるいはご意見、ございませんでしょうか。

高橋委員、どうぞ。

○ 高橋委員

わかりやすく、という点について少し申し上げたいと思います。

今回の税制改革で、株式投資とか証券税制の軽減簡素化が、誰にとってわかりやすかったのか、誰にとって得だったのかということを考えた場合に、零細な個人投資家からしてみますと、疑問が何点かございます。

1つは配当課税も皆20%で、という方向ですけれども、一般の庶民にとっては、ここのところは逆に、今までは申告していれば安く済んだのに高くなるという面がありますし、そういうことを説明しないで20%定率で切り離しているから有利だというふうに言われてしまうと、一言申し上げたくなります。株の売却損益の当面の優遇税率に関しましても、一体課税になるときには20%になるというのが、何となくもう見えてしまっていて、これから投資する方にとっては、売ったときの話でございますので、本当に有利かどうかという点からいうとなかなか説明が難しいような気もしております。

それから、申告不要制度の導入の点も、証券会社を1つにすれば、そこが税務署の代行機関として損益通算等をしてくれますので、一般の利用者にとっては有利だといえるかもしれないけれども、複数の証券会社を活用している人にとっては、決して有利な制度ではないと感じております。

○○証券の特定口座というふうな言い方がされておりますけれども、例えば私個人の例で申し上げれば、中長期保有の株を取引しているところと、新規公開株を取引しているところと、それからインターネットでタイムリーに取引するところと、外債を取引しているところは、違う証券会社なので、特定口座にするメリットはない。でも特定口座を使わずに昔買った値段を証明するのは、難しい。自力で昨年やろうと思ったんですけれども、非常に面倒なことがわかりました。確定申告を楽にする手段として、各証券会社でとりあえず特定口座をつくって、一箇所に移行するしか方法がなく、変だ、と感じました。

ですので、簡素化といっても実際の手続的にどうかという点と、今後金融商品の一体課税になったときにおきる問題、例えば損益通算をしたりするのに、大きな金融グループに取引を集中していれば全部まとめてやってくれて便利だけれども、私みたいにそれぞれ金融消費者として使い分けていると、とても不便かもしれない。使い分ける、というのは金融消費者教育の現場で重視していることです。それぞれ商品も金融機関も比較衡量して選びましょうと、それからリスク分散もしましょうと。ところが、一体課税の手続を考えたときに、どこか一箇所にお任せしてしまったほうが楽でいいという考え方になるとすると、何か自由化の流れとそぐわないような気がいたします。

一体課税に関しては、どういう議論がされているのか詳細を知りませんけれども、特定口座の手続等で以上のようなことを感じましたので、その点についてお教えいただければと思います。

以上でございます。

○ 貝塚会長

今の点、中村企画官、いかがですか。

○ 中村政策課企画官

1つは前提で、例えば配当につきまして、原則税率20%で、現在投資優遇で10%にしてと。それはさらにもう少し留保がつきまして、基本は総合課税ですから、10%の税率よりさらに低い人は申告すれば源泉徴収分はお返ししますよとか、あるいはこれも技術的になりますけれども、配当控除という、法人段階で取っている税金を返してくれるという、そういう考えの仕組みも入っています。

ただ、細かく言うとそういう部分はありますけれども、おっしゃられたように、わかりやすく簡素にという形で説明しても、実は意外なところで使いにくいとか、それから思ったようにスムーズにいっていないとか、あるいはまだまだ考えるべき点が多いとか、そういったところは非常に多々あろうかと思います。税制側も、金融商品課税の一体化という言葉は、恐らく過重な負担を金融取引全体にかけるのではなく、個人のポートフォーリオを見て実質的な負担を求めていく、その基本的考え方は、決して我々が考えている方向と違うわけではないと思いますので、本当に今おっしゃられたような論点、その本当の声みたいなことをなるべく拾い上げて、税制当局に伝えて、なるべく今の方向を損ねず、よりよい形にしていくということは非常に重要な問題と思っております。

ですので、1つ1つにお答えする機会は別途細かくお時間をいただければ伺ってでもと思いますが、今のことに対して現実ちょっと違うとか実際こうだと、そういう反論よりは、むしろ本当に今の声を大変ありがたく承りまして、ぜひそういった観点で議論し、また我々も情報を集め、よりよい本当にこたえた形の税制をつくっていくような努力をしなければいけないなという、そういう感想を持ちました。

○ 貝塚会長

あと1点付け加えますと、たぶん今度のスタディグループでは、今おっしゃった点、税制の問題は非常に複雑でして、コンプライアンスといいますか、納税者がちゃんとうまくやれるかという話もありますし、いろいろな立場から税制調査会のご意見に対して、留意すべき問題点はそれなりに金融審議会としてはまとめて、向こうの場の議論にも反映するような努力をしたいというふうに思いますが、とりあえず、そういう。

ほかに何か、ご質問あるいはご意見ございませんでしょうか。

先ほどちょっと私、先走ったようですが、金融分科会の中にやはり金融税制に関するスタディグループを設けて、かなりある意味では専門的なことでもありますので、そういうスタディグループを設けたいと思いますが、いかがですか。その点、ご異存ございませんでしょうか。

それでは、スタディグループ等を設置したいと思います。座長の選任でございますが、私といたしましては、堀内先生にお願いしたいと思いますが、ご異存ございませんでしょうか。堀内さん、よろしく。

○ 堀内委員

税金の専門ではありませんが、勉強させていただきます。

○ 貝塚会長

スタディグループのメンバーにつきましては、私と堀内座長に一任させていただきたいと思いますが、よろしゅうございますでしょうか。

以上で金融税制に関する話は終わらせていただきまして、以上が正確に言うと金融分科会の議題ということになります。

あとは、総会と分科会の合同会議ということの議事予定になっておりまして、最近の金融審議会の活動状況について、事務局のほうからご説明願いたいと思います。

○ 三井調査室長

それでは、私の方から、最近の金融審議会の部会、あるいはワーキンググループでの状況について、簡単にご報告させていただきたいと存じます。

資料2という、最近の金融審議会の活動状況についての縦長の紙でございます。次1枚めくっていただきまして、1ページの資料2の1というところで、全体の鳥瞰図を樹形図的に掲げさせていただきました。金融分科会の下には、第一部会、第二部会、特別部会の3つの部会がございます。それぞれにつきまして、ごく一言ご報告したいと存じます。

第一部会でございますが、昨年9月に審議を再開しまして、12月に一応のまとめられるテーマについての結論をまとめ、それ以外のテーマについては引き続き春以降、いずれかの段階で議論するということになっております。秋に審議いたしました、その審議のコンセプトといたしましては、日本版ビッグバンの成果を検証しながら、例えば一昨年9月の当審議会の答申であります中期ビジョン、中期的に展望した我が国金融システムの将来ビジョンでありますとか、あるいは14年8月に、これは金融庁としてとりまとめさせていただきました証券市場の改革促進プログラムなどを踏まえまして、この資料でいきますと15ページ、その項目ごとにはご説明を省かせていただきますが、幅広い検討テーマのたたき台を示させていただきまして、ただこれには限られず、委員の皆様方から提起された幅広い問題点について議論をするということで、議論を始めさせていただきました。7回にわたり部会を開催いたしましたが、そこで年末までにとりあえず結論で出たものにつきましては、報告としてとりまとめる。また、引き続き審議をすべきものについては、また引き続き審議をするということになっておりまして、第一部会についてはさらに今後審議が行われるということでございます。

とりあえず、12月段階で報告としてとりまとめたというものを、この資料でいいますと3ページと書いてある資料2-2以下、これは報告書の全文でございます。若干字が小さくございますということと、それから細かいことがたくさん書いてございますので、ごくポイントだけかいつまんでご説明させていただきます。

大きく分けて、3つの柱がございまして、1つ目は、だれもが投資しやすい市場の整備、多様な投資家の幅広い市場参加の促進という観点からの柱でございまして、具体的には目玉といたしまして、銀行等によります証券取引の勧誘、あるいは証券会社への取次という業務を行う証券仲介業を、これは一昨年に一般の業務、一般の銀行以外の方々に解禁しているわけでございますが、この答申では銀行にも解禁するということを提言してございます。

それから、2番目の柱といたしましては、これは投資家の信頼を得るという、市場の公正性、透明性を確保ということでございまして、まず第1に課徴金制度を導入する。それから、それとあわせまして、証券取引、特にディスクロージャー違反によって被害を受けた投資家の民事上の救済をしやすくするための規定の整備であるとか、あるいは証券取引等監視委員会の検査範囲を拡大して、基本的には監視委員会に検査を一元化する方向での検討を行うこと、あるいは証券業協会、あるいは証券取引所などの自主規制機関について、相互の役割分担を明確にして、市場監視体制を強化するといったことを提言しております。

さらに、投資信託の目論見書について、投資家にとってわかりやすいものとするために合理化する。あるいは、組合型投資スキーム、投資事業有限責任組合法を念頭に置いておりますが、こういったものについても、一般投資家から資金調達をする場合には、その証券取引所の投資家保護を及ぼしていくといったことを提言しております。

3つ目の柱でございますけれども、市場の効率性、競争力を向上させるという柱でございます。具体的には、取引所と、それから私設取引システム、いわゆるPTSと呼ばれている私設取引システムの競争条件のイコールフッティングを徹底するということといたしまして、例えば取引所取引原則を廃止しまして、証券会社の顧客に対する最良執行義務、ベスト・エクゼキューションの義務を導入するといったこと、あるいはPTSの価格形成機能としての取引所同様のオークション方式を導入するといったことを提言しております。

その報告書の最後のところを、このページで言いますと13ページでございますが、今後の審議テーマとしてということで、これは例えばでありまして、これに限られるものではございませんけれども、例えば新たな投資サービスを含めた投資家保護のあり方であるとか、あるいは不公正取引規制についての今後のあり方、さらには、英文開示・四半期開示等のディスクロージャーのあり方について検討を続けるということになっております。

最初のページに戻っていただきまして、次に、第二部会についてご報告させていただきます。

第二部会におきましては、昨年3月にリレーションシップバンキングのあり方に関するワーキンググループの報告をいただいております。それから、7月に信託に関するワーキンググループ、それから、公的資金制度ワーキンググループについて、それぞれ報告をとりまとめていただいております。また、自己資本比率規制ワーキンググループからは、その経過報告を昨夏にいただいております。

現状でございますが、ここにあります保険基本問題ワーキンググループ、それから自己資本比率規制ワーキンググループという、ワーキンググループのレベルで審議が行われております。

保険ワーキンググループにつきましては、ここにありますとおり、保険商品の販売のあり方、それから保険会社のガバナンスのあり方、それから、3番目、保険契約者の保護のあり方について、検討が行われています。

それから、その上にあります自己資本比率規制ワーキンググループにおきましては、昨年夏の経過報告以降、自己資本比率規制における繰り延べ税金資産に関する算入の適正化と、それから、銀行の自己資本のあり方について引き続き議論が続けられております。いずれにいたしましても、この自己資本比率規制ワーキンググループ、それから保険基本問題ワーキンググループについては、現在そのワーキンググループでの検討途上にございます。ある程度議論をまとめたところで、第二部会において議論が行われますと予想されますので、まずはその第二部会での議論を待ちたいというふうに考えているところでございます。

それから、3番目の特別部会でございます。ここは、金融分野における個人情報保護のあり方を検討しております。金融分野における個人情報保護につきましては、平成13年3月から金融審議会の金融分科会特別部会において検討を行っており、また個人信用情報については、経済産業省の産業構造審議会の割賦販売分科会・個人情報信用小委員会と合同で検討を行っております。

平成13年10月以降に、金融分野を含む包括的な個人情報保護の基本法制であります「個人情報の保護に関する法律」というのが国会に提出されまして、いろいろな経緯がありまして、成立しております。そして、全面施行が平成17年4月ということになっております。さらに、昨年その基本法に加えて、関係政令が決まりまして、今年の4月初旬に基本方針を策定するという方向で、政府全体として作業中でございます。

こういったことから、今年の1月に特別部会、それから個人信用情報小委員会の合同で審議を再開しまして、これまでの基本法に向けた取り組みなどを事務方からご説明すると同時に、今後は基本法に加えた追加的な措置の必要性などについて、審議が行われるという予定になっております。

簡単でございますが、以上、金融分科会の下にあります3つの部会、及びその下にありますワーキンググループについての審議状況について、ご報告させていただきました。

○ 貝塚会長

それでは、1つは、金融検査マニュアル別冊というのがございますが、それについてご説明いただきたいと思います。

○ 厚木検査局総務課長

検査局総務課長の厚木でございますが、私の方から、今回改訂いたしました金融検査マニュアル別冊〔中小企業融資編〕の内容につきまして、ご報告させていただきます。お手元に、資料3といたしまして、3種類の資料をご配布させていただいております。1つは、今回の改訂の主な内容。それから、今回つくりました色刷りのパンフレット。それから、今回のマニュアル別冊本体、改訂後のものでございます。

まず、この色刷りのパンフレットを見ていただきまして、開いていただきますと、これまでの金融検査マニュアル策定から、この別冊の策定、改訂の流れについて、大まかな流れが書いてございます。これに基づきまして、これまでの経緯等につきまして、まずご説明させていただきます。

ご案内のように、平成11年7月に金融検査マニュアルが策定されたわけでございます。その中でも、金融機関の規模や特性を十分踏まえ、機械的、画一的な運用に陥らないよう配慮する必要があるということが明記されており、特に中小・零細企業等については、当該企業の財務状況のみならず、当該企業の技術力、販売力や成長性、代表者等の役員に対する報酬の支払い状況等々を総合的に勘案し、当該企業の経営実態を踏まえて判断するものとするという記載がされていたわけでございますが、このこうした記述が抽象的でわかりにくい、あるいは検査において金融検査マニュアルが機械的、画一的に適用されているのではないかというような意見が聞かれたわけでございます。

こういうことを踏まえまして、平成14年6月に、金融検査マニュアルの中小・零細企業等の債務者区分の判断にかかる検証ポイント、及び検証ポイントにかかる運用例からなる、この金融検査マニュアル別冊〔中小企業融資編〕を作成し、公表したところでございます。その中には、このパンフレットの中にありますように、代表者等々の一体性とか、企業の成長性とか、その他さまざまな検証ポイントが述べられていたわけでございます。

その後、15年3月に公表されました、リレーションシップバンキングの機能強化にかかるアクションプログラムにおきまして、当該別冊の定着状況等をモニタリングし、その内容が中小企業の実態により即したものとなるよう改訂するとされたわけでございます。これを受けまして、改訂作業を昨年から進めまして、昨年12月にパブリックコメントに付しまして、いただいたパブリックコメントを精査の上、2月26日に改訂公表させていただきました。

今回の改訂にあたりましては、約4,000先のアンケート調査や、約250先のヒアリングによりまして、金融機関のみならず、中小企業サイドからも幅広く意見を聴取し、それらをきめ細かく反映させていただいたところでございます。

それでは、改訂の具体的な内容につきまして、この3枚紙の資料の方でご説明させていただきます。

いくつか大きなポイントがあるわけでございますが、まず1つ目のポイントといたしまして、債務者との意思疎通という観点からの改訂でございます。ご案内のように、金融機関が的確な金融仲介機能を発揮していくためには、その前提として、金融機関自らがいろいろな債務者との間の密度の高いコミュニケーションを通じて、債務者の経営実態の適切な把握など、的確な債務者管理に努めていくことが不可欠なわけでございます。こうしたことから、検査にあたりまして、金融機関の中小・零細企業に対する企業訪問、経営指導等の実施状況について検証いたしまして、それらが良好であると認められる場合には、以下の取り扱いを行うこととしております。

まず、1点目といたしまして、債務者区分の判断において、企業の技術力、販売力、経営者の資質等や、これらを踏まえた成長性、こういった定性的な評価をする場合に、企業訪問・経営指導等といったリレーションシップバンキングを通じまして、収集した情報に基づく当該金融機関の評価を尊重するというものでございます。

2点目が、要管理先の中小・零細企業のうち、金融機関が企業・事業再生支援を実施し、その実績データが存在している債務者については、それ以外の債務者と区別してグルーピングし、引当率に格差を設けることを可能とするというものでございます。

引き続きまして、2番目の大きなポイントが、この擬似エクイティへの対応ということでございます。ここに書かれてありますように、資本調達手段が限られている中小・零細企業におきましては、事業の基盤となっている資本的性格の資金が債務の形で調達されていくこと多いわけでございます。これが擬似エクイティ的融資とか、あるいは根雪的融資というふうに呼ばれているわけでございます。

昨年、15年7月に監督局におきまして、新しい中小企業金融の法務に関する研究会報告が出されまして、その中でこうした擬似エクイティの法律構成が実態に即していないことから、当事者の権利義務関係を明確化することが当事者双方にとって有益であるという考え方のもとに、その1つの解決策として、資本的劣後ローンによるデッド・デッド・スワップという考え方が提示されました。これを踏まえまして、民営機関、金融機関のほうでも、これに対応する動きが出てまいりまして、私たち検査局のほうにも、そうしたデッド・デッド・スワップが金融検査マニュアル上、どういう扱いなのかという問い合わせがございました。

このような状況を踏まえまして、今般、今回の改訂におきまして、金融機関が中小・零細企業向けの要注意先債権、これは要管理先への債権を含むわけでございますが、を債務者の経営改善計画の一環として資本的劣後論に転換している場合には、債務者区分等の判断において、当該資本的劣後ローンを資本とみなすことができるとさせていただいたところでございます。

この改訂を踏まえまして、先般3月11日に、商工中金が第1号案件を公表いたしております。

続きまして、次のページに移らせていただきまして、3番目のポイントといたしまして、小口多数の債権のリスク分散効果といった観点からの改訂でございます。1点目といたしましては、現在の金融検査マニュアルにおきまして、資産内容に特に問題がなく、前回検査の経過が良好と認められる金融機関については、与信額が2,000万円、または資本の部の合計の1%のいずれか小さい額未満の債務者については、自己査定の正確性の検証を省略することができるとされているわけでございますが、今回この金額抽出基準を現行改訂前の2,000万円から5,000万円に引き上げさせていただいております。これに際しましては、実際の検査結果を踏まえまして、検証いたしまして、それが自己資本比率にどの程度影響を与えるかということを検証した上で、それがごくわずかであるという結果を踏まえて、この改訂をさせていただいております。

その他、2番目といたしまして、最近中小企業者向けの小口定型化ローンが出てきておりますので、そういったものについての取り扱いを明確化させていただいております。

それから、4番目のポイントとしまして、運用の改善としてさまざまなことを挙げさせていただいております。これは今回公開いたしました金融機関あるいは中小企業サイドの意見をきめ細かく丁寧に、1つ1つ検討いたしまして、それを反映させているものでございます。

まず1つといたしまして、キャッシュフロー重視の明確化。それから、2番目に、経営者の資質等に関する検証ポイントを追加した。あるいは、3番目に、法律等に基づき承認された計画等の活用。あるいは、4番目に、疎明資料の範囲の明確化といったことを改訂してございます。

それから、次のページをめくっていただきまして、もう1つ事例の大幅な拡充をさせていただいておりまして、これも金融機関あるいは中小企業サイドのほうから要望の強かったものでございまして、その要望のあったものを踏まえまして、その検証ポイントの改訂にあわせて事例を追加、改正し、その事例集を大幅に拡充。従来16事例であったものを27事例に増やしてございます。その主な内容といたしましては、経営改善計画等の進捗状況が計画を下回る場合の取り扱いとか、あるいは昨年貸出条件緩和債権の事務ガイドラインが改正されましたので、それを踏まえまして、貸出条件緩和債権の取り扱いについての事例。この中には、都道府県で行っております中小企業再生支援協議会の事例等も追加してございます。

といった内容の事例を拡充させていただいたということでございます。

私のほうからは、以上の説明でございます。

○ 貝塚会長

どうもありがとうございました。

ただいまの2つ、最近の金融審議会の活動の状況、及び新しい金融検査マニュアル、中小企業融資に関するご説明があったんですが、どうぞご自由にご意見、ご質問がありましたら、どなたからでもご発言ください。

どうぞ。

○ 原委員

今日、時間があるということでしたので、私のほうで少し用意してきたお話をちょっとさせていただきたいというふうに思います。

今日のお話の中で、大きく2つということになるかと思いますけれども、今日のご報告の中で、第一部会のほうで昨年12月24日にまとめられた報告のご紹介があったわけですけれども、こちらのほうでは投資サービス法の検討というんでしょうか、検討に進むべきだというようなことが、いろんなところで仄聞しているところなんですが、投資サービス法ですとか、それから信託業法の改正というところで、信託の中に知財が入ってくるというようなお話も出てきております。

それから、銀行での保険商品の窓口販売ということは、変額個人年金保険などがもうスタートしているわけなんですけれども、このようにさまざまな金融商品が消費者に販売される状況になってきているというところなんですが、投資サービス法という形で証券の概念を広げられるというところは支持したいというふうに考えているんですが、消費者側のほうからすると、その受け皿としての販売勧誘ルールというところが非常に不十分だというふうに考えておりまして、横断的包括的な金融サービス法の検討に着手していただきたいというふうに申し上げたいと思います。

これは、何で私この場で申し上げていて、蝋山先生がまとめられた、一昨年7月ですか、まとめられたときの報告書のときも、私蝋山先生のご報告の後、やはりこういった横断的包括的金融サービス法の検討をしてほしいというふうに申し上げましたら、蝋山先生としては、鶏が先か卵が先かみたいなことを言われて、そのときの限りになってしまったわけですけれども、ぜひ投資サービス法の検討と、同時並行的に進めていただきたいと。

2つちょっと理由を持っておりまして、1つは金融商品販売法があるわけですけれども、これは非常に不十分です。特に、適合性の原則などは、勧誘方針にゆだねるというふうになっていますが、勧誘方針について、これは生命保険編ですけれども、銀行と証券と保険とに調べました。非常に抽象的で、実質的な意味はあまり持っていない。それから、不招請勧誘のところも、ぜひ気をつけていただきたいんですが、広告調査ということも、もう4回、毎年7月に調査をしているわけですけれども、広告調査を見ても、非常に不十分であるというふうに考えています。

今、私金融オンブズネットという消費者グループ活動を展開しているわけですけれども、こちらの金融オンブズネットのほうでも、金融庁がなかなか腰を上げないものですから、私たち自身でこの金融サービス法の検討を昨年からスタートしております。昨年は外国為替証拠金取引の被害ですとか、無認可共済のトラブルとかというのも、大変消費者のトラブルというのは各消費者センターに寄せられていて、外国為替証拠金取引については、金融商品販売法の中には入れられましたけれども、やっぱり新たな業法というんでしょうか、新たなやっぱり次のステップというのが必要で、それが業法という形をとるのか、金融サービス法になるのかというところは検討すべきだというふうに思っておりますけれども、金融商品販売法の狭間に落ちてしまうような商品群の登場というところを懸念をしております。

ちょっと話が前後いたしましたけれども、金融サービス法の検討の中では、4つポイントを持っておりまして、1つは不招請勧誘の部分の手当て。それから2つ目は適合性の原則の徹底。それから3つ目が不適正、それから不公正な取引方法についての規定。それから、4つ目が苦情とか紛争解決についての仕組みづくりを盛り込むべきだというふうに考えております。ぜひこれを検討着手ということをお願いして、なかなか総会が開かれないものですから、ぜひお願いしたいと思っております。

あわせて、統一消費者信用法についての提言というのも、これは弁護士グループですとか、消費者団体としては、これも5年ぐらい提案をしてきております。これは、金融庁と財務省と経済産業省にまたがる課題になってくるということなんですけれども、統一消費者信用法についても、内容的には、書面交付義務とか、広告規制とか、契約条件ですとか、金利、違約、それから保証とか、このあたりについて、各個別の業法があるわけですけれども、やっぱりここも横断的な統一的な法体系を取るべきだというふうに考えております。それが大きい1つ目です。

それから、2つ目は、金融庁の中に消費者問題を担当するセクションとか窓口をぜひ設置していただきたいということです。各省庁には、消費者を担当するセクションですね。課であったり、室であったり、さまざまですけれども、存在しております。金融庁はまだないですね。何か、外国為替証拠金取引のときは、企画課を何度もお訪ねして、企画課の中で話を進めさせていただきましたけれども、消費者からのとか、それから契約者とか投資家からの苦情とか相談とか、そういったものを、それから金融にかかわる消費者政策をきちんと考えていくというようなセクションが必要だというふうに思っています。

これは、総務省が、こういった高度情報通信社会ということをにらんで、総務省の中にこういったセクションを設置して、非常に今先進的にいろんな政策に取り組んできているというようなところがありまして、実際にトラブルですとか、消費者が抱える問題とかの中には、たくさんのヒントがありますので、先ほど金融検査マニュアルのほうを、4,000のアンケートをとられて、200ヒアリングをなさったということなんですけれども、やはり現場にこそいろんな生きた声があるというふうに思っておりますので、その設置を求めたいというふうに思っております。

それから、補足的な、追加的にですけれども、1人であまり発言時間をとっても恐縮なんですが、保険ワーキングがスタートしておりますが、私はワーキングのメンバーではないのですけれども、今回はオブザーバーで参加をしてもいいということなので、今飛び飛びですけれども、参加をさせていただいています。昨日7回目ということで、出席をさせていただいたんですが、飛び飛びであっても、何ら困ることがないというか、全然話が進展しておらず、ぐるぐると回っておりまして、保険業界とか金融業界とか銀行業界とか、そのかかわる方々たちのバトルというか、意見の応酬になっておりまして、先へ議論とか検討が進んでいない。

一方で、新聞報道なんかを見ると、政党のほうで反対であるというような、一致して反対であるというようなことが新聞報道で出て、金融審の第二部会の議論はどうなっているんだとか、どうなるのかというようなお話が出ているわけですけれども、私としては、やはり基本的に、きちんとやっぱりルールを定めるということでの検討を尽くしていただきたいと思っておりまして、自民党の経済金融委員会でしたかしら、ちょっと正式な名前を覚えていなくて恐縮ですけれども、そちらのほうでは一致して反対ということが出ているわけですけれども、一致して反対のところにとどまるのではなくて、やはり銀行も保険業界も、私はそれぞれに問題があるというふうに考えていますので、それらの問題点を解決する形でのルールづくり。先ほどの金融サービス法もそうなんですけれども、そちらの検討にやはり着手をすべきだというふうに思っておりまして、その辺にこそ金融審議会の意義があるのではないかというふうに考えておりますので、ここについては、昨日のことは、それが今日の新聞というようなこともありますので、意見として述べさせていただきたいと思います。

以上です。

○ 貝塚会長

ただいま、かなり広範な問題提起があって、これ一言でこちらの側で答えていただくのもあれですが、局長、全体の方向性として、今のご発言に関して何か。

○ 増井総務企画局長

恐縮ですが、ちょっと途中から入ったものですから、すべてをお聞きしていなかったかもしれません。

最後の保険ワーキングのほうは、今ご承知のように何回か議論を重ねておりまして、一生懸命議論していきたいと思います。ただ、おっしゃるように、いろんなまだご議論があるものですから、1つ1つ丁寧な議論をしていきたいと思って、そういうことで、時間がかかっていると思いますけれども、いずれにいたしましても、しっかり議論をするように、私ども事務方としても努力をしていきたいというふうに思っております。

○ 貝塚会長

ちょっとよろしいですか。大臣がお見えになったので、あとちょっと多少中断させていただきます。

それでは、ちょっと議論を中断させていただきまして、竹中金融担当大臣、伊藤金融担当副大臣が見えましたので、それぞれごあいさつをいただきたいと思います。

それでは、竹中大臣、お願いします。

○ 竹中大臣

委員の皆様方におかれましては、日ごろ本当にお忙しい中、金融審の活動にご参加、ご尽力をいただきまして、厚く御礼を申し上げる次第でございます。本日、せっかくの機会でございますので、現下の金融行政について一言申し述べさせていただきたいと思います。

最近の経済情勢を見ますと、企業収益が改善しまして、設備投資が増加するなど、総じて経済には明るい兆しが見られると考えております。政府としては、こうした明るい兆しが日本経済のすみずみにまで浸透するように、改革の芽がようやく出始めた今こそ、断固たる決意をもって改革を推進し、民需主導の持続的な経済成長の実現を目指しているところでございます。

金融の分野におきましては、この審議会におけるこれまでのご審議、ご提言等も踏まえ、金融システムの安定強化、金融資本市場の基盤整備に強力に取り組んでいるところでございます。金融システムの安定強化に関しましては、構造改革を支えるより強固な新金融システムを構築するために、金融再生プログラムの諸施策の推進に全力を尽くしているところでございます。不良債権問題については、引き続き平成18年度の問題終結を目指して取り組みを進めております。また、中小地域金融機関についても、昨年3月に策定しましたリレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプランの諸施策を推進しております。さらに、金融機能の強化のための新たな公的資金制度の整備等を行うこととしておりまして、2月にこの関連法案を国会に既に提出しております。

我が国におけます資金仲介機能を強化して、経済の活性化を図るためには、金融資本市場の利用者の保護を図りながら、資金仲介チャンネルの多様化、それと利用者の利便性向上を通じて、間接金融のみに依存しない、信頼される効率的で国際競争力のある金融資本市場の基盤整備を図る必要があると考えます。このために、必要な制度整備を行うということから、先日、3月5日でございますけれども、証券取引法の一部改正案、株式等の決済合理化法案、これいわゆるペーパーレス法案でございますけれども、それと信託業法案の3法案を国会に提出したところでございます。昨年の金融審議会総会においても申し上げたことでございますけれども、これらの取り組みに当たりましては、高い見識を有していらっしゃる委員の皆様のご理解、ご協力が、これは不可欠でございます。引き続いて、金融行政についてご指導、ご鞭撻をお願いしまして、簡単でございますけれども、ごあいさつとさせていただきます。

ありがとうございます。

○ 貝塚会長

どうもありがとうございました。

続きまして、伊藤金融担当副大臣からごあいさつをお願いします。

○ 伊藤副大臣

委員の皆様方におかれましては、平素より金融審議会へのご理解、ご協力を賜りまして、厚く御礼を申し上げます。昨年はワーキンググループを含めますと、述べ70回を超える審議会が開催されるなど、極めて活発、積極的にご議論をいただきました。提出をいただいた報告も、答申を含め8件に上り、非常に精力的に活動をいただいた1年でございました。金融庁といたしましても、こうしたご議論を真摯に受け止めて、今後の金融行政に生かしてまいりたいと存じます。

先ほど大臣のお話にもありましたが、現在金融システムの安定強化と、金融資本市場の基盤整備に取り組んでおります。私のほうからは、こうした私どもの取り組みの状況について申し上げたいと思います。

まず、金融システムの安定強化についてでありますが、不良債権処理につきましては、昨年9月末の主要行の不良債権比率が、平成14年3月末に比べて1.9ポイント低下するなど、着実に進捗しておりますが、引き続き平成16年度の不良債権問題終結を目指して取り組んでまいります。また、中小地域金融機関に関しては、リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラムの一環として、中小企業の実態により即した検査を確保する観点から、2月末に金融検査マニュアル別冊〔中小企業融資編〕を改訂をしております。今回の改訂においては、各金融機関が行う債務者の再生等に向けた真摯な取り組み状況なども踏まえた検査を実施していくことを明らかにしたところでございます。

他方、市場機能を中核とした金融システムへの再構築に向けた金融資本市場の基盤整備も、喫緊の課題です。金融庁でも、証券市場の改革促進プログラムを策定し、その実施に努めているところであります。

まず第1に、誰もが投資しやすい市場の整備。多様な投資家の幅広い市場参加の促進を図ることが重要であります。この観点から、本年4月に証券仲介業制度を施行しておりますが、さらに昨年の当審議会第一部会でご議論、ご提案をいただきましたように、中小企業の実情を最も熟知し、国民にとって最もなじみのある窓口である銀行で、証券取引の勧誘や証券会社への取次を解禁する方針であり、これから申し上げる課徴金制度の導入とあわせて、今国会に所要の改善法案を提出しております。

第2に、投資家の信頼が得られる市場確立をし、市場の公正性、透明性を確保することが重要であります。これまでも違反の調査を担当している証券取引等監視委員会の体制を、質、量ともに強化し、昨事務年度も、各最高の年間10件の告発を行っておりますが、加えて、違反抑止のための新たな仕組みとして、課徴金制度を導入し、またこれまでの検査局の証券担当が行っていた部分も含め、証券取引等監視委員会の検査範囲を拡大する等、市場監視機能、体制を強化することといたしております。

第3の柱として、効率的で競争力のある市場を構築し、市場の安定性、効率性を向上させるため、取引所とPTSの競争条件のイコールフッティングを徹底することとし、具体的には、取引所、取引原則を廃止し、証券会社の顧客に対する最良執行義務を導入する等、市場間で競争が働くような制度的枠組みを導入する方針であります。こうした取り組みに加え、CP、社債に加え、株式等についても、ペーパーレス化を図るための制度制定を図るとともに、信託業について、知的財産権を始めとする財産権一般の信託を可能とするとともに、信託業を金融機関以外の者が行うことを可能とするための所要の制度整備を行うことといたしております。

以上申し上げましたように、私ども金融庁では、現在金融行政におけるさまざまな課題に取り組んでいるところでございますが、金融審議会は多くの貴重なご意見を頂戴することのできる大変重要な場でございます。委員の皆様方におかれましては、引き続き活発なご議論をいただいて、高い見地からのご意見をいただきますようお願い申し上げまして、私のごあいさつに代えさせていただきたいと思います。

○ 貝塚会長

どうもありがとうございました。

大臣、副大臣は公務ご多忙のため、ここで退出されます。

○ 竹中大臣

今、予算委員会の真っただ中でありまして、我々のほうも国会行ったり来たりしております。皆さんとじっくりご議論できなくて大変申しわけありませんが、ぜひご審議のほどよろしくお願いいたします。ありがとうございます。

○ 伊藤副大臣

どうかよろしくお願いいたします。

○ 貝塚会長

それでは、先ほどのご質問の続きでありますが、投資サービス法、あるいは金融サービス法、それについて、最近の状況をご説明いただければ。

大久保審議官。

○ 大久保審議官

原委員から大変広範なご指摘をいただきまして、私どももよく考えてまいりたいというふうに思っておりますが、ご指摘のように第一部会で投資者保護のあり方の拡充というような観点から、さまざまなご議論もいただいておりまして、ご報告の中には、組合型の投資スキームにつきましても、証券法上の有価証券と位置付けて、証取法の規定いたします投資家保護の仕組みを適用するというようなご提言をいただいているわけでございまして、これに沿いまして、私どもも現在国会のほうに証取法の改正をお願いしているところでございます。

言うまでもなく、証取法の対象になるということになりますと、開示規制がきちっとかかる、あるいは、取扱い業者に対する規制がかかるとか、あるいは不公正取引に対する規制がかかるというような形になるわけでございます。しかし、部会でも例えば証券業といった概念は必ずしもなじみが薄いのではないかとか、あるいは証券取引法そのものが非常に読みにくくなっているのではないかとか、パッチワーク的になっているのではないかというようなご指摘もあったわけでございまして、今後、投資家保護の講じられていない投資サービスとか、あるいは新たに登場するであろう投資サービスにつきまして、証取法を中心としたこの有効な投資家保護のあり方について、さらに検討すべきではないかというようなご提言を得ているわけでございます。ご指摘のように、投資サービス法への改組の可能性も含めて検討していくべきであるというようなご提言があるわけなので、今のご指摘もあわせて、更によく考えてまいりたいというふうに思っております。

○ 貝塚会長

日本の場合は、ちょっと補足ですが、やっぱり証券取引法というのがあるわけで、それと日本の業法といいますか、あるいは広範な金融サービス業、ないしは投資サービス。ですから、証券取引法との関係は、非常にある意味で重要なところです。ですから、今日のご発言はたぶんあれですね。やっぱり証券取引法がある部分は、投資サービス法的に解釈をして変えていくという方向もあり得るというご発言ではないかと思います。

どうぞ。

○ 川本委員

私は保険基本問題のワーキンググループに委員として出席をさせていただいておりますけれども、原委員のほうからも今ご意見が出ましたので、それについて一言申し上げたいと思います。

本件は、1月にワーキンググループで検討が再開されて以来、毎週議論されています。しかし、論点はもう出尽くしていて、最近は業界の方、業界のオブザーバーの方の単なる陳情の場と化しているというのも言い過ぎではないというふうに思います。竹中大臣が目指しておられる審議会を業界の利権者の陳情と、利権調整の場としないというルールから、やはりかなり逸脱をしているのではないかと思います。一方、銀行の圧力販売のような議論は、生保が企業の株を持っていて圧力販売をするというようなことには言及されずに、想像上の議論に終始していたりですとか、圧力販売が起こるならば中小企業にはより負担の多いはずの個人年金では問題は生じていないということにはふれられていません。あるいは営業職員の方というのは、それもワーキンググループの議論で教えていただいたのですけれども、8割の方が2年以内にお辞めになるという回転率の高い業界で、雇用問題が大問題とは必ずしもいえないようでした。大手生保の方も、雇用の維持がポイントではないというふうに発言をされておられました。消費者団体の方は現在の保険会社の販売だけでさえ問題が多いのに、よりもっと面倒が広がるのではないかというような観点で意見を述べておられ、結局消費者保護の仕組みの充実を訴えておられます。つめるべき論点は議論としては出尽くしているというふうに思います。

ワーキンググループは、本来は大方針が決まった後に、専門的でテクニカルな問題を詰めるのが本来の趣旨だというふうに思いますのですけれども、業界の事情を長々と陳述される一方的な運営には、やはり疑問を呈せざるを得ない。メディアの報道も、ワーキンググループの議論が非公開でニュースソースが限られる中、業界の対立ばかりが報道されております。ワーキンググループの何人もの委員が客観的あるいは科学的な論拠を求め、あるいは弊害防止措置を詳しく書き込むことを求めているにもかかわらず、そこのところはメディア報道でも一切伝えられていないように思います。

前面この問題は、護送船団で守られてきたオールドジェネレーションの保険会社の古い業界体質の問題だというふうに拝見をいたします。経営責任に基づく企業の自立重視に金融行政が転換した現在これ以上この規制を続けられないのは火を見るより明らかだと思います。それにもかかわらず、保険業界のかたが「絶対反対」とかいう感じで、いつまでに何をするという議論に入っていけない現状を大変に懸念いたします。営業チャンネルでの販売が今激減している中、解禁が遅れることによって、生保は消耗戦に入るということを懸念なさっておられないのかということがかえって心配になったりします。保険会社の上位数社の寡占状態をこのままお続けになりたいようで、聞いていますと、業界での順位が変わると困るみたいなご発言もあったりします。、下位の保険会社にとってはむしろ競争が広がってプラスであるという観点もございますし、競争による保険業界のサービスがよくなることが、やはり消費者にとってよくなるという観点から議論をまとめていただきたいと思います。3月31日までに結論を一応出すことになっておりますので、これ以上不毛な議論を続けるというのは、委員の中にも不安と不満が募っているということを申し上げたいと思います。

スケジュールと議題について、サポート役、シェルパ役でいらっしゃる事務局、金融庁にお願いしたいのは、出された論点と大方針をいち早く整理・決定することと、その詰めの作業です。今の護送船団の保険業界の現状から、びた1文変えないということはありえないということを、今日はこの公開の場で確認をさせていただきたいと思いまして、発言をさせていただきました。建設的な結論を出すことがワーキングの主目的だと思っております。

○ 貝塚会長

ただいまのご意見は、ある意味で昔の私は業際問題を、その昔業際問題というのは大変でして、それと似たような側面が同じように残っているということは、私も何となく実感としてわかるという、個人的な感想を持っておりますが、なるべく建設的な方向で、結論はそれなりにはっきり出ることを望みたいと思います。

他に、どうぞご自由にご発言、あるいはご意見ありましたら、どなたからでも。

高橋委員、どうぞ。

○ 高橋委員

重ねての発言で恐縮ですけれども、消費者政策関連で意見を述べさせていただきます。

現在、大変重要な改革が進んでいるわけですけれども、国民、消費者にとりましては、ビッグバンという言葉、それから間接金融主体から直接金融へ軸足を移すとか、それでもわかりにくかったので貯蓄から投資へ、というふうに呼びかえられておりますけれども、こういう掛け声だけではなかなか理解できない現状があると常々感じております。そして、金融ビッグバンを始めとするこの金融分野の規制緩和というのは、大蔵省時代の金融審議会のときからかなり議論を重ねた問題で、心強いことに、当時98年、99年ぐらいにごいっしょに議論をした方々が長官とか審議官という立場になって、現在この場におそろいでいらっしゃるので、大変心強く思っております。しかし、当時第一部会に所属した者からしますと、今私は第二部会と特別部会と他の部会に所属していますが、久々に第一部会の会合に出席しましたら、当時の議論と断絶していると感じました。

それで、確認ですけれども、当時消費者政策として何が必要かの検討で3本柱がございまして、1つは法整備をやっていこうと。当時は金融サービス法という名前で高らかにうたい上げられておりまして、金融商品販売法がその第1弾ロケットとしてスタートしました。時機を見て、第2弾、第3弾を上げていく認識だったと思います。

先ほど原委員からも要求がありましたように、この金融商品販売法という第1弾から次に進めるための見直し等々がどうなっているのか。内閣府の国民生活審議会では、金融商品販売法と同じ時期に施行されました消費者契約法の見直しの必要性が昨年からいわれておりまして、今年の大きな検討課題に入っています。それと双子のように出た法律ですので、当然ながらこれは見直しを進めていただきたいと思っております。今回、第一部会のほうでは、投資サービス法という名称で証券市場における消費者保護、利用者保護ということを考えておられるようですけれども、金融サービス法との関連性がよくわからないので、ご説明をいただけたらと思います。以上が1点目でございます。

3本柱の2つ目は、消費者が規制緩和によって被害を被ったときの救済をすべて裁判にゆだねるのは難しいということで、ADR機能を充実しましょうということがございました。これに関しましては、諸般の事情から、金融庁自らがやることはなく、事務局として金融トラブル連絡調整協議会というのを発足させるという形になったのですが、こちらも2000年9月から3年半活動してまいりまして、協議会の活動が壁に今突き当たっていると、委員参加していて感じます。

金融審議会のほうでは、本来はこのADRというのは、統一的、横断的なADR設置を理想に掲げられていたのですけれども、協議会での検討では、業の谷間に落ちる商品のトラブルがあまりにも多くて、そこの参加者の問題ではないですねと。協議会でいかにネットワークを組んでも、消費者被害を防いだり、あるいは救済することができないというところに来ているわけなので、金融審議会のほうにもう一度、3年半もたったわけですから、お戻しして、本来ADRがどうあるべきかという議論に戻していただきたい。そういう要望が複数の委員から出ておりますので、ここで改めて申し上げたいと思います。

それから、3本柱の3点目は、消費者に対する教育ということでございます。これは金融審議会の議論に入る前にも、新しい金融の流れをつくる懇談会での議論のあたりから、投資教育か、金融経済教育か、基本的な消費者教育か、といった議論されて、2000年6月の報告書の段階では、金融分野の消費者教育をまず進めましょうという結論を見ていたと思います。当時、イギリスなど先進国の例からすれば、金融庁が本来はイニシアチブをとってやるのが消費者の信頼の上から一番望ましいと申し上げましたが、マンパワーとコストの点から、日銀に事務局があります金融広報中央委員会がリーダーシップをとって、そこにいろんな業界団体、各省庁、NPOなどがネットワークを組むという形で2001年4月からスタートしています。以来、活動を重ねているわけなのですけれども、第一部会に久々に出させていただきましたら、昔と同じような議論をまたやっていて、ネットワークが大事ではないかとか、何かデジャブの世界に陥ってしまいました。2001年4月からスタートしている教育に対しての何らの検証もされておらず、しかも当時、用語について、消費者を使うのか利用者を使うのか顧客を使うのかなど、かなりの議論があったのですけれども、もう投資教育、投資家で議論が進んでしまっていました。消費者保護、消費者政策の専門の方があまり出ておられないし、当時の検討状況を知っている人が出ていないので、かなりの断絶を私は感じました。

それが昨年12月でしたが、1月になりましたら、例の大臣ご参加の金融経済教育というフォーラムでしたでしょうか、が開かれて、私も一消費者として聞きに行きました。それに関しましても疑問がございまして、金融広報中央委員会を中心としたネットワークが既に消費者教育を金融庁から下ろされてやっているにもかかわらず、そことの関係を全く無視した形で、金融庁が教育をやりますよということを急に言い出したように、私は新聞報道や、インターネットでのメールマガジンを拝見して、感じました。

これついては金融広報中央委員会のほうのネットワークの人々からも不満を聞いております。調整がないではないかと。金融庁がおやりの催しは、ある証券会社がバックにある団体に丸投げをされておりまして、そこの団体は、昨年の夏にも金融広報中央委員会のネットワークとして、学校教育者等々を対象にした催しをバックアップしました。それが約半年後に同じような形で、同じ司会者で、今度は金融庁主宰なんですと。それに対して、かなりの疑問があったということです。金融広報中央委員会のほうでも、福井総裁はもちろん重要な地位を占めていらっしゃるんですけれども、金融庁の催しに特別参加された福井総裁のお立場に関して、単にその民間団体の顧問だから来てもらったということでした。金融広報中央委員会との関係であるとか、金融庁全体が担っている金融消費者教育との関係の説明がされていなくて、実はそういう教育に携わっている人の中に混乱を生じさせたということを申し上げたいと思います。

金融庁がそうした教育をやってはいけないということではないですけれども、2001年6月のときには、自分たちはできないからといって外にお出しになったわけですから、できるようになったからやるということなのであれば、関係団体との調整をしていただきたいと思います。第一部会の議事録等を拝見しても、やはり今の教育には無駄があるから、ネットワークを組んで体系的にやるべきだと。それは過去の検討時に私が出したのと全く同じ意見ですけれども、今回、金融庁の催しはその点からもダブリであり、不信感を持たざるを得ません。この点について、やはり消費者にも、それから金融消費者教育に携わる方々にも、納得のいくご説明をいただきたいと思います。

以上でございます。

○ 貝塚会長

時間が経過してまいりました。

他にちょっと。後でまた今の点。

翁委員、どうぞ。

○ 翁委員

先ほどの中小企業の金融検査マニュアルのことについて、一言だけちょっとコメントをさせていただきたいんですけれども、ここで今回見直されたのは、中小・零細企業等の債務者区分ということでお話を伺いましたが、企業の財務状況だけでなく、技術力、販売力、成長性、代表者等の状況を総合的に勘案して、その企業の経営実態を踏まえて判断するというのは、何も中小・零細だけでなくて、中堅企業もすべて、こういった形での債務者区分の考え方というのを考えていくのが筋ではないかというふうに思います。ですから、今回のマニュアルの方向自体は、もちろん評価をいたしますけれども、これはすべての企業に共通するものでございますし、そういう方向でやはり検査マニュアルというのを考えていく必要があるのではないかということが1点です。

それから、もう1つは、債務者区分を今回かなりきめ細かく見るようになってきているということは評価しているんですけれども、そういたしますと、この債務者区分から債権分類をして、それに基づいて引き当てをするという考え方よりも、むしろキャッシュフローできめ細かく見ていくのであれば、そのキャッシュフローと、予想される信用コストから引き当てをしていくという、DCF法の考え方をやはりより根付かせていって、そして金融機関の内部のリスク管理なんかとも整合的にしていくというような工夫もさらに必要なのではないかというふうに思います。

そういう意味で、企業の再生を促すとすると、やはりこういった検査マニュアルについては、さらに改善していく余地というのがいろいろあるように思います。

以上でございます。

○ 貝塚会長

時間がございません。他にもし、この点だけはということがありましたら。

淵田委員、どうぞ。

○ 淵田委員

淵田でございます。先ほど大臣の話にもありましたが、不良債権比率は、着実に低下しておりまして、銀行株も上昇しております。何か楽観的な雰囲気が広がっているわけでありますけれども、昨年春の状況に比べて、もう180度転換したような感じがあるということは、私はむしろ、これは日本の構造問題の深刻さというのを示しているのではないかと思います。つまり、銀行が株価に振り回され、その銀行に経済全体が振り回されてしまうという問題です。ですから、銀行の動向、株価の動向がちょっと変わると、もう景況感が180度変わってしまう。そういうことは、わが国の経済構造の不安定性を示しているのではないかと思います。

株価というのは、上がりもすれば下がりもするわけでありますから、ここでまたいつか株価が変調したようなときに、また逆の方向に振れてしまうといったことが、当然懸念されるわけでありまして、やはり相対型の銀行取引、これに過度に依存したマネーフロー構造を変えるという、この改革の動きを着実に進めていかなくてはいけないと思うわけであります。

このマネーフロー構造の改革ということで、私は証券市場改革のほうは、本当に驚くほど、この1年だけとっても進展していると思うのですけれども、しかし現実に預貯金偏重というのはなかなか直らない。これは、やはり証券市場のほうをいくらよくしても、間接金融のほう、相対の銀行取引のほうのゆがみのようなものですね、これを直していかないと、なかなか貯蓄から投資への流れというのは実現しにくいということではないかと思っています。

このゆがみというのは、例えばでありますけれども、1つは非常に大きなセイフティネットがあるけれども、そのコストを受益者がきちっと明示的に意識しないで享受しているということがあるかと思います。例えば、いわゆるペイオフ解禁を巡る話題があるわけでありますけれども、このゼロ金利下で、決済用預金、これが手数料なしで導入されたり、どんどんしていきますと、これは事実上ペイオフを全面解禁したといっても、これはあまり意味のない話でありまして、そもそも解禁するかどうかといった議論自体があまり意味を持たないものになってしまいかねないと思っております。ですから、決済用預金がどういう形で導入されるかということは、私は注意する必要があると思います。

また、そもそもですけれども、決済用預金の全額保護が恒久的措置として必要かどうかとか、あるいは内国為替制度において、決済リスク削減の仕組みが民間の工夫としてあるわけですけれども、預金保険で全部面倒を見てくれるのだったら、それも要るのかといったような議論もあり得るわけでありまして、こういうことをまだまだ検討していかなくてはいけないのではないかと思っています。

今になりまして、2002年9月の金融審の議事録、これ見てみますと、やはりペイオフ解禁を延期しないために結論を急いだという感じがちょっとぬぐえないという印象で読み返されるわけでありますけれども、実際にはその1か月後にペイオフ解禁が延期されたという事情があるわけです。今この時点で決済用預金を云々するというのは時期尚早だというのが常識的な反応だとは思うのですけれども、少なくとも当時これが議論されてからもう1年半以上たっているわけでありますし、実務レベルでもよろしいですから、この議論というものをもう少し深めていくべきときではないかと私は思っております。

○ 貝塚会長

時間がもうほとんどなくなりましたので、先ほどご質問の中で、事務局のほうでお答えいただく、金融サービス法とか投資サービス法の話は、これは結構難しい話でありまして、私はちょっと冗談ですが、蝋山さんと意見が違います。それはともかくとして、先ほどの消費者教育のあたりの、どなたかあるでしょうか。

では、大久保審議官。

○ 大久保審議官

消費者教育の重要性ということにつきましては、かねがね高橋委員初め、当審議会の委員の方々からご指摘を受けているところですし、特に昨年の第一部会のご議論におきましては、この点も諸団体の連携の必要性も含め非常に重要な項目としてご議論いただきました。また、ご指摘のありましたように、金融庁もシンポジウムを主催する等の活動を行っているわけでございますけれども、当然のことながらこういう分野での活動につきましては、いろんな方々のご意見をお伺いしながら、ご協力を仰ぎながらやっていかなければいけないということで考えており、現在、関係者のご協力も得て本格的な取り組みが始まっている段階にあるんだろうと思います。今のご指摘も踏まえまして、どういった取り組みをさらにしていくべきかということをよく考えてみたいというふうに思っております。

○ 貝塚会長

他にあるいはご質問、ご意見があるかと存じますが……

○ 高橋委員

すみません、今の点で少しだけよろしいですか。

○ 貝塚会長

では、手短にお願いします。

○ 高橋委員

ご意見をということでしたので、申し上げたいというふうに思うんですが、役割分担で言えば、今金融庁さんがやっている金融投資家教育というのは、かなり他とダブっている部分があります。私個人はお願いしたいと思う点から言えば、消費者被害を防ぐ、あるいは投資家が違法な取引に巻き込まれたりしないように、警告情報をタイムリーに発信していただくとか、金融庁ならではの、他の機関ではできない教育があると思いますので、ぜひその辺を研究していただきたいというふうに思っております。

以上です。

○ 貝塚会長

わかりました。消費者教育のあり方に関する金融庁の役割を、今後どういうふうにしていくかということという問題提起だと思います。

他にもあるいはご意見、あるいはご質問があるかと思いますが、もう昼食の時間に元来なっているので、この辺で議論を切り上げさせて……

○ 佐藤検査局長

終わりかかっているのに申しわけありません。先ほど翁委員から、検査マニュアル別冊について貴重なコメントをいただきました。ありがとうございました。大企業についても、きめ細かく実態に即して見ていくというのは当然のことでございまして、その点にまったく私ども異論はないんですけれども、これ結局、債務者の企業のサイドにおける説明の余裕というか能力というか、そこの差が大きいというのは歴然たる事実でございまして、中小・零細企業の場合にはそんな理論と統計に基づいたきちんとした説明を銀行にしている時間があれば、本業のほうをやったほうがいいということが当然あると思います。大企業の場合には、公表されたデータ、ディスクロージャーも整っている、あるいは市場からの評価というのもあるので、そういったことも参考にしながら、いわゆるトランズアクションバンキングのような世界での評価も可能になると。

ただ、他方で、中小・零細企業の場合は、そういうことがなかなか難しいので、特に説明、債務者サイドの説明能力というふうなことも踏まえて、金融機関の側がよりきめ細かく見ていく必要があるのではないかと。金融機関の側が債務者とより密度の高いコミュニケーションをとっていく必要があるのではないか。こういうのが1つのメッセージでございます。

それから、きめ細かく見ていくという点に関して、キャッシュフローを見ていくということであれば、DCF法のやり方もあり得る。これは当然だろうと思いますけれども、私どもの検査の立場、各金融機関がそれぞれの裁量で、それぞれの能力を発揮して、いろんな手法を採用するというのは、全く自由だと思いますけれども、私ども金融機関の財務の健全性というのを見る立場からいたしますと、金融機関、膨大な数の債務者に融資をしていて、その債権の数も膨大でございますので、それらについてある程度効率的に、全体として金融機関が抱えている信用リスクがどれくらいかということをとらえるという趣旨でございますので、そういう意味では、ご指摘のありましたような債務者区分をとらえて、それに沿って債権分類をし、そのグルーピングした中で、統計的にそのグループの平均的な信用リスクというのを計測して、引き当てリスクというのを計算すると。こういうやり方もそれなりに有用ではないかというふうに思っているわけでございますけれども、可能なものについては、できるだけきめ細かく、さらなる進歩の余地というのは当然あると思いますので、検討していきたいと思います。

いずれにいたしましても、今回の別冊の改訂の1つの大きな趣旨というのは、金融機関に対して、債務者とのコミュニケーションをもっと高めてほしいと。あるいは債務者等の再建により真剣に取り組んでほしいと。こういうメッセージを発するというところが、いわば金融機関にインセンティブを与えるというところが1つのポイントでございました。

そういうことで、いずれにせよ、さらなる改善の余地があれば、また機会を見て検討していきたいというふうに思います。ありがとうございました。

○ 貝塚会長

それでは、時間が経過いたしましたので、大変いろんなご意見をお寄せいただきましてありがとうございました。本日の議論はこの辺で切り上げたいと思います。総会、分科会の会合を終了したいと思います。なお、議事の模様につきましては、この後で私のほうから記者会見で説明させていただきたいと思います。

本日はお忙しい中、ご出席いただきまして、大変ありがとうございました。これで閉会いたします。

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