金融審議会「金融システム安定等に資する銀行規制等の在り方に関するワーキング・グループ」(第2回)議事録

1.日時:

平成24年6月25日(月)10時00分~12時00分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 共用第一特別会議室

○藤本信用制度参事官

ワーキング・グループの開催に先立ちまして、資料の確認をさせていただきます。今回は事務局資料を1つ配付させていただいております。ご確認をお願いいたします。

○岩原座長

それでは時間でございますので、ただいまより、金融システム安定等に資する銀行規制等の在り方に関するワーキング・グループの第2回会合を開催いたします。皆様、お忙しいところお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。

本日は、金融審議会会長兼金融分科会会長でいらっしゃいます吉野直行先生にもご出席いただいております。ありがとうございます。なお、前回ご欠席でいらっしゃいました委員の方々のご紹介を事務局からさせていただきます。よろしくお願いします。

○藤本信用制度参事官

ご紹介します。大崎貞和委員です。

○大崎委員

大崎でございます。よろしくお願いいたします。

○藤本信用制度参事官

もうお一方、川波洋一委員です。

○川波委員

川波でございます。よろしくお願いします。

○岩原座長

どうもありがとうございました。

引き続き、議事に入らせていただきたいと思います。

まず、事務局のほうから、配付資料に基づき、説明をお願いいたします。

○藤本信用制度参事官

表紙を1枚めくっていただきます。前回のワーキングで出された意見のうち、大口信用供与等規制関係について、まとめたものでございます。

まず、信用供与等の範囲でございますけれども、当分の間、適用除外としている項目がございます。こうしたものについて時間が経過しており、実態を確認しながら、取り扱いの合理性・整合性を含めて、改めて検討すべきという意見が出されております。

また、銀行の付随業務というのは増えてきているわけでございますが、こういうもののうち、本規制の対象とすべきものがあるかどうかを検討すべきということでございます。

デリバティブ取引を対象とすることに抵抗感はないが、その必要性について取引実態を十分踏まえ、説明を行っていくべきという意見も出されております。

あとは外国銀行支店関係でございますが、大口の関係でも規制のあり方について検討すべきである。あるいは、外国銀行支店が国内で受け入れた預金を本店に回金する場合の取り扱いについて検討すべきといった意見が出されています。

次に、算出方法でございます。全額カウントするのではなく、リスクの大小といったものを考慮すべきではないか、よりきめ細かい規制とすべきではないかという意見がございました。

合算でございますが、与信側の合算、受信側の合算のあり方について検討すべきであるという意見がございました。

その他といいますか、総括的なことでございますが、不要な部分と軽重にミスマッチが生じているケースがあるのではないか。

それから、銀行グループの再編を阻害している事例というのはどういうものがあるのかといった意見が出されております。

2ページ目でございます。規制目的の再確認でございます。

銀行等の資産の危険分散、それから、銀行等の信用の広く適切な配分ということは、我が国の場合、伝統的に規制目的とされてきたところでございます。

バーゼル委員会等では、個々の銀行の健全性、それから、金融システム全体の健全性に分けて議論がされてきたところでございます。

個々の銀行の健全性という観点からは、どの取引先であれ、単一の取引先や取引先グループが倒産した場合に起き得る最大のエクスポージャーを制限するためのbackstop、バックネットと位置付けられているということでございます。それも踏まえまして、推計等の不要な簡単な方式であること、一部の例外を除き、リスクウェイトなどは乗じずに、額面価格で測ること、保守的であること等が求められているということでございます。

金融システム全体の健全性の観点からは、監督上の対応といたしまして、大口与信の比率、特定業種への集中度等についてモニタリングを実施しているところでございます。

1ページめくっていただきまして、3ページでございます。まず、信用供与等の範囲でございます。

我が国の場合は、法令で限定列挙しているという方式をとっています。どういうものが限定列挙されているかといいますと、貸出金、債務保証、出資、社債、CP、デリバティブの信用リスク相当額、ファイナンス・リース等でございます。

ただし、社債のうち公募社債、トレーディング勘定のCP、デリバティブ取引に係る信用リスク相当額は、当分の間、適用しないということとしております。

前回も少し申し上げましたが、昨年の銀行法等の改正によりまして、銀行本体のファイナンス・リースを解禁したことに伴って、大口の規制対象に追加しております。

そして、バックネットとしての大口信用供与等規制の性格にかんがみますと、今は含まれていないもの、インターバンク取引、コミットメント、デリバティブ取引の信用リスク相当額というのを対象とすべきと考えますが、我が国では対象外でございます。

他の国を見てみますと、こうしたものも対象となっている場合が多いということでございますが、詳細は今、調査中であります。

4ページ目にいきます。今、対象とされていないもののうち、まず、コミットメントといったものでございます。コミットメントラインの融資未実行残高は、規制の対象外となっております。他のコミットメント、手数料を取らないものについても同様でございます。

理由ですが、大口信用供与等規制は平成10年に制定されたのですが、コミットメントライン法は翌年制定されておりまして、どうも対応ができていないのではないかという、理由と申しますか、経緯というようなものを書いております。

融資の枠が設定された先が破綻した場合、破綻してみると、その融資枠が使われているということがあるのではないか、そういうことをどう考えるのかということがございます。

主要国では規制対象となっております。ただ、主要国ではいろいろ、低リスクのものですとか、自動的に取り消しが可能といった限定つきで適用対象外となっているものもあるようでございます。

5ページ目にまいります。コミットメントライン契約額等の状況ということで、平成11年にこの法律ができたわけでございますが、その後、対象企業が拡大されてきております。

一定程度制度が定着してきて、増加傾向にあって、少し減少したものの、また増加に転じているということでございます。

23年の改正で、利用可能な借主というものの拡大を行いました。中堅企業などに拡大を行いました。今後、利用者の拡大等が見込まれるというところでございます。

6ページは、今の借主の範囲の拡大の沿革について触れているところでございまして、制定当時は大会社、平成13年で上場会社などを含んだということでございまして、昨年の改正で、中堅企業あるいは貸金業者、証券会社といったものを追加しております。

次は7ページでございます。インターバンク取引についてでございます。インターバンク取引(コールローン等)は、我が国では規制対象外となっております。

その理由ですが、大口信用供与等規制を課すと円滑な資金の融通が困難になるのではないか、金融機関の経営の健全性をかえって阻害する事態も生じ得るのではないかというのが理由となっております。

ただ、仮に借り手の金融機関が破綻した場合に、貸し手の銀行等に損失が発生し、健全性を損ねる事態も想定されるが、こうしたことについてどう考えるかということであります。

主要国では規制対象となっておりますが、日中エクスポージャーといったものは適用除外といったこととなっています。

8ページ目でございます。現在のコール取引等の状況でございます。リーマンショック以降、減少に転じているということでございます。

国内銀行のシェアは、コールローンについては85%ぐらい、レポなどについては67%ということとなっております。

9ページにまいります。金融機関が金融機関に預ける金といった預け金は規制対象外となっております。

その理由ですが、金融機関自体に経営の健全性確保のための規制が課されているということ、それから、規制の対象とすれば、債務者たる金融機関の資金繰りに悪影響を与えるということが理由となっております。

これについては、仮に預け先の金融機関が破綻した場合に、預け元の銀行等に損失が発生し、健全性を損ねる事態も想定されるが、どのように考えるかということでございます。

また、外国銀行支店の本支店勘定においても、経済効果としては同様の問題が生じ得ると想定されるが、どのように考えるかということがございます。

(参考)でございますが、欧州は預け金は規制対象、米国は預け金は規制対象外というふうになっております。ドッド・フランク法で銀行、持株会社等については規制対象とする予定と承知しております。

10ページでございます。金融機関の預け金等の状況ということで、まず、国内銀行について見てみました。総資産の約6%というものを占めております。

それから、総資産に占める預け金の割合ですが、10%以下のものが大半を占めておりまして、50%を超える銀行は5行となっています。

外国銀行支店について見てみますと、預け金というのが総資産の約24%となっております。

その総資産に占める預け金を個別外国銀行支店毎に見てみますと、10%以下のものが約半数、50%を超えるものは4行というような状況でございます。

11ページにまいります。外国銀行支店の本支店勘定の状況ということでございまして、預け金自体の数字というのが公表しているものではとれないということで、本支店勘定(資産)と本支店勘定(負債)をネットして、資産超過となっている外国銀行支店は15行ということでございます。

資産超となっている15行のうち、本店等への持出し額の対総資産比率が70%以上の外国銀行支店は2行ということとなっています。

下の表を見ていただきますと、本店から支店に流入しているものの額等もあるということもご留意いただければと思います。

12ページでございます。引き続き、規制対象外の信用供与等ということですが、ここは、デリバティブ取引の信用リスク相当額ということでございます。これは規制の対象に含まれているのですが、経過措置として、当分の間、適用しないということとされています。

まず、規制の対象にしているというのは、デリバティブ取引の失敗などによって多額の損失が発生し、企業に悪影響を生じさせて、企業に対する信用リスクが高まっているという事例が見られたということでございます。

ただ、当分の間、適用除外とされております。前回、少しご紹介しましたが、(参考)のところで、金制の懇談会報告書で、今後、規制対象に含める方向で措置すべきであるが、そのためには技術的な問題を中心に検討を行っていく必要があるということとなっております。

これについては、取引先が破綻した場合、証拠金などで保全がなされていなければ、信用リスク分の損失が発生する点で貸出金と何ら変わることはないが、どのように考えるかということがございます。

主要国では規制対象とされておりまして、算出方法は、自己資本比率規制と同様の手法で計測するということでございます。

13ページにまいります。我が国のデリバティブ市場における──どういう状況かというのをざっくりイメージで、数字で示しているということでございます。OTCデリバティブ市場における取引残高は、増加傾向で推移しているということでございます。平成13年に比べて、22年では約2.5倍となっているということでございます。

14ページにまいります。このデリバティブ取引の信用リスク相当部分が規制対象外であることの弊害というものを、どういう実例があるかというものです。前回も紹介しましたが、他のものも調査いたしました。

真ん中に、銀行(西欧系)という銀行がございます。そこが西欧の顧客からルーブルを買って、ドルを売るという先渡取引をやっています。それをヘッジするために、真ん中の銀行がロシアの銀行にルーブルを売り、ドル買いのポジションを立てました。ところが、右側のロシアの銀行は破綻してしまいました。真ん中の西欧系の銀行はドルを市場から──下のほうですが──マーケットから調達しなければいけませんでした。非常に高くつきました。ルーブルは顧客から来ましたが、同じことで裏表の関係ですが、非常に価値のないものでありました。その結果、西欧系銀行は大きな損失を被ることになったということがあったようでございます。

次に、15ページです。右側に銀行があります。左側に事業会社がありまして、銀行から出資が行われています。また、貸付も行われています。デリバティブ取引も行っている例がございます。銀行が勝ちポジションのエクスポージャーを持っているとします。事業会社が負けポジションを持っているということでございます。この場合、事業会社側に多額の評価損が発生する、あるいは事業会社がそういう債務を負っているということで、ますます信用が悪化するというような事態もあり得るということでございます。

16ページです。社債は大口信用供与等規制の対象に含まれておりますが、公募社債は、経過措置として、当分の間、適用しないとされております。

その理由でございますが、社債の引受け、社債を持っているということは、実質的には発行会社に対する長期資金の貸付と同じ経済効果を有しているため、規制対象としています。

ただし、私募以外の社債の保有は、転売による信用リスクの回避が容易であるため、適用除外としているということでございます。

前回、株式は上場株だろうが、そうでなかろうが、両方とも対象になっているではないかというご指摘もいただきました。そこを経緯等も調べましたが、定かなことはわかりませんでした。株式が一番、劣後をするということもあるのかもしれません。

矢印の後ですが、社債発行会社が破綻した場合には、公募社債であっても短期間のうちに全て処分することは困難である。その場合、損失が発生する点で貸付金等と何ら変わることはないが、どのように考えるかということでございます。主要国では規制対象となっております。

次は、資料の向きが横になっておりますが、縦にしていただきまして17ページですが、我が国の場合、貸借対照表上の資産項目で、ポジで限定列挙するという方式となっております。上のほうにありますのが預け金ですとかインターバンク、それから、そこから下におりてトレーディング勘定、ところどころグレーのところがありますが、そこは一部対象となっていますが、当分の間、適用しないとなっているようなものが含まれているものでございます。

これはオンバランスの話でございますが、オフバランスは、白いところ、グレーなところというのが別途あるというイメージでございます。

次に、横向きにしていただきまして、18ページになります。ここからは次の論点で、合算対象が与信側、貸付側、貸すほうの合算対象ということでございます。我が国では、こういうものが合算されております。銀行等単体というのもございますが、それに加え、銀行持株会社、持株会社の連結子会社、関連会社が行う信用供与等を合算ベースで規制していることで、健全性の監督の連結の対象と同じになっているということです。

矢印ですけれども、後で受信側が出てくるんですが、受信側は資本関係という形式的な支配関係となっておりまして、そういう与信側、受信側の合算対象という中で、その潜脱防止といったような観点もあります。後で受信側で出てくるんですけれども、与信側としても、実質的なつながりのある先を合算対象とする必要があるかという論点があるということです。

(参考)でございますが、英・仏は銀行単体・連結ベース、フランスはそれに持株会社連結ベース、アメリカは銀行本体プラス子会社ベースといったようなことになっておりますが、ここでいう連結というのがどういったものの内容なのかということについては調査中でございます。

19ページです。今度は受信側です。借りるほうの合算の対象でございます。我が国では、受信者単体というのがあります。それから、受信者と、それから受信者の議決権50%超の支配関係にある子会社、親会社、親会社の子会社等への信用供与等を合算ベースで規制しております。

こういう合算対象にしたときの考え方は、与信側から受信側の合算対象範囲の把握可能性を勘案して、どこまでが合算対象なのかというのを把握できるようにする。当時の商法では議決権50%超ということであったので、これに倣って、そういう対象にしましたということでございます。

受信側の合算範囲を定めるに当たりまして、資本関係といった形式的な支配関係のみならず、実質的な支配関係や経済的相互依存関係を考慮すべきかというのがございます。

また、資本関係はないが、会社を介在させることにより大口規制を潜脱されることも考えられるが、どのような対応措置が考えられるかということがございます。

主要国を見てみますと、ここは我が国とは相当違った感じになっております。アメリカの場合は、お金が誰に使われるかという切り口のようでございます。それから、英、仏、独というのは、ある会社で財務上の問題が生じたときに、他の会社にその財務上の問題が生じるか、伝播するかとか、そういった切り口のようです。経済的相互依存関係といったことで、受信側の合算というものを考えているようでございます。具体的内容は調査中でございますが、そういうことであるようでございます。

次に、20ページです。今度は受信側、与信側の応用問題と申しましょうか、銀行のグループ内で、グループ内の金融機関、企業に貸す場合の取り扱いということでございます。

受信者が、信用供与を受ける側が銀行の子会社である場合は、受信者(単体)に対する規制のみとしております。受信側として合算はしません。ここでいう子会社というのは議決権ということで切っています。

それから、銀行持株会社が行う出資は適用除外ということになっております。

そういうことで、グループ内与信の取り扱いについて、グループの組織再編への影響にもかんがみ、見直しを行うことが必要な点はないかということでございます。

(参考)で外国でございますが、グループ内は各国さまざまな考え方がとられているようでございます。適用除外にしているもの、別のカウントの仕方をするものがございます。一方、イギリスなどは、100%出資子会社といったものに限定して、個別申請主義になっているようです。あるいは国内あるいはヨーロッパ域内ということであれば適用除外となっているけれども、そこから出ると適用されるといったものがあります。ここでいうグループというのも、※ですけれども、必ずしも我が国で考えられている連結グループといったものでもないようでございますが、引き続き調査が必要だということです。

21ページです。これは前回お示ししたものが載っております。与信合算、受信合算、グループ内というものの非常に難易度の高い応用問題です。左側にX銀行グループというのがございます。今まで関係なかったA社に出資をしました。そうすると、A社が銀行持株会社の関連会社になりました。そうしたところ、右側にありますA社グループ各社へのA社からの信用供与というのが大口信用の規制の対象になってしまうことになります。そういうことになると、このグループの組織再編のハードルになることがあるのではないかということです。

上記のような取り扱いになるのはというのを書いております。A社がA社グループ各社に行う信用供与というのが、A銀行グループの与信側としては合算されます。A社グループ各社は受信側として合算されます。もとのA社グループというのは、2つに分かれてしまうという扱いになっているということでございます。

このような取り扱いを避けるために、例えばA社グループが1つの金融グループとして、外国において我が国と同等の監督に服している場合には、A社を与信側の合算対象から除外することなどが考えられるが、どのような対応案が考えられるかということでございます。

22ページにまいります。信用供与等の算出方法ということで、先ほど資料の向きが縦になったもので、貸借対照表をお見せしましたが、オンバランス取引は、貸借対照表計上額(簿価)ということになっています。そこで、自分の銀行のみずからの預金担保になっているものは引きます。国債で担保がされているものは引きます。しかし、それ以外は、担保不動産であろうが、第三者による保証であろうが、一切考慮しないというものとなっております。

※のところですが、いわゆる以前言われていた含み益、今書くとこのような表現になるのですが、含み益といったものは信用供与の額から控除しているということでございます。オフバランス取引は、そもそもだったり、当分の間だったり、対象とされていないため、具体的に算出方法については定めを置いておりません。

一方で、担保価格の変動リスク、規制の実効性というのもあります。それを踏まえる必要もあります。他方で、自行預金、国債等以外の担保による信用リスクの削減効果を考慮する必要性というのがありますが、どう考えるのかということがございます。

(参考)ですが、主要国では、オンバランス取引は簿価となっております。オフバランス取引は自己資本比率規制におけるリスクアセットの算出手法を基準としているということでございます。フランスは、もう少し掛目を掛けたりする場合があるようでございます。

あと、欧州では、金融資産担保の他、担保不動産の評価額の2分の1を控除したり、第三者による保証を受けている場合に、与信先ではなく保証の提供者に対するエクスポージャーとして取り扱うことも認められているということでございます。

23ページです。限度額の話をします。これも前回お見せしましたが、基本となるのは銀行(単体)、受信側(単体)25%、与信側が銀行(グループ)の場合も単体、受信側が単体だと25%ですが、受信側がグループの場合、40%ということになっております。なお、分母はTier1+Tier2ということになっております。我が国の受信側グループに対する信用供与等限度額は、主要国やバーゼル・コア・プリンシプルの自己資本の25%に比し高いことについて、どのように考えるかということでございます。

IMF対日四条協議において、大口信用供与の残高条件の引き下げが望ましいといったようなことが指摘されているところです。

国際基準行には、バーゼルIIIの自己資本比率規制が適用される予定でございます。また、この問題を考えるに当たって、我が国の現行規制は、諸外国と異なり不動産担保や第三者保証(保証人に対する与信としてカウント)を一切考慮していない点ということも、対外的には主張しているという状況ではあります。

24ページですが、IMFからの指摘事項ということで、上のほうは、対日四条協議というのはどういうものかというのが書かれております。

大口信用供与等規制の強化が望ましいとされているところでございます。

25ページにまいります。(参考)ということですが、やむを得ない理由により一時的に限度額を超過した場合の例外措置等について書いているところでございます。

我が国では、受信側が合併しました、A社にも貸していました、B社にも貸しました、それは今までは関係がなかった会社なので規制はクリアしていました。ところが、合併しました。超えました。こういったやむを得ない事由が法律上、例示されているところでございます。その他、やむを得ない事由を法令で限定列挙しております。例えば、緊急の理由が生じたときに、その企業に対して貸さないと、この企業が破綻してしまって、かえって銀行の健全性を損なうといったようなものが限定列挙されております。これらの場合にも、監督当局の事前承認ということとなっております。

なお、違反行為には罰則は科せられず、必要に応じ、行政処分が行われることとなっております。

(参考)、外国でございますが、受信者の合併等の場合は、violationというのとnonconformingというもの違いで区別しているというのがアメリカでございます。イギリスではケース・バイ・ケースで対応、どうするのかというのは担当者と連絡を取り合って、当局が確認をする。フランスでは、超過したら届け出なさいとなっている。その後、当局との話し合いに入る。ドイツも同じような届け出をして、モニタリングを進めていくということです。

(※)のところですが、これはイギリスの関係の※なんですけれども、エクスポージャーは、どうも10日間ぐらい大目に見てくれるみたいなんです。ところが、10日というものを設定すると、その10日をまた潜脱しようということが心配されたようでございます。そうすると、10日のチェックポイントごとにどこかにポジションを移して、11日目に入るとどこかからまた戻すとか、そういった潜脱防止はしないようにというようなことが書いてあります。

最後のページですが、26ページでございます。外国銀行支店に対する大口信用供与等規制ということで、我が国では、外国銀行支店に対し、外国銀行本体の自己資本を基準として、大口信用供与等規制(与信側単体規制のみ)を課すこととしております。それが法律、政令、規則の構えということになっております。ただし、基準となる自己資本に係る告示が定められておらず、実際には未適用ということになっております。なお、我が国の場合は、持込み資本金規制を採用されておらず、外国銀行支店に係る自己資本という概念は存在しないということでございます。

大口信用供与等規制の趣旨を踏まえ、母国当局との関係も含め、外国銀行支店に対する規制をどのように考えるかということです。

(参考)で外国の例でございますが、前回、かかっていないんじゃないかというようなことを申し上げたんですが、その後、調査が進みまして、どうもかかっているらしいということでございます。アメリカの場合は、まず、分母が外国銀行本体の自己資本ということになっています。分子として、どういうものを対象とするかといいますと、米国内の全支店における与信を合算したものを大口信用供与等規制の対象とするということです。英・仏・独は、原則、規制の対象です。ただし、EEA域内の国ですとかヨーロッパの国と同等の監督に服している国に本店が所在する外国銀行の支店は規制対象外となっております。

以上でございます。

○岩原座長

どうもありがとうございました。それでは、これから自由討議に移りたいと思います。これまでの事務局からのご説明に関しましてのご質問、ご意見があれば承りたいと思います。委員の皆様どなたからでも結構でございますので、ご発言をお願いします。翁委員、どうぞ。

○翁委員

まず一つ、ご質問させていただきたいんですけれども、25ページで、やむを得ない理由による一時的な超過の例外措置ということでご紹介いただいたんですが、今、現状ではどのような頻度で、運用はどういうふうになっているのかということを教えていただきたいです。

あと、仮に事前承認を受けた場合はどのぐらいの期間それが供与されているのかということも含めて、教えていただければと思います。

○岩原座長

藤本さん。

○藤本信用制度参事官

個別の事案の運用については、今回お話しできるものをそろえておりません。そういうものをどういう形でお出しできるのかというのは、検討したいと思います。

○岩原座長

よろしいですか。遠藤さん。

○遠藤監督局審議官

手元にございませんので、私が銀行一課に在席していたときはあまりなかったんですけれども、どちらにしても、過去の実績も調べてみまして、どういう形で皆様方にご報告するかについても検討して、何らかの形でご報告いたしたいと思います。

○岩原座長

ありがとうございました。他に。大崎委員、どうぞ。

○大崎委員

私も似たような、実態について教えていただきたいという質問が1点ございまして、23ページでご紹介のあった信用供与等限度額についての基準が、IMFからも高過ぎるんではないかという指摘があるということなんですが、現状で、受信サイドのグループで、25%から40%の範囲ぐらいになっているケースというのは多々あるんでしょうか、それともめったにないのか、その辺、ざくっとしたご認識を教えていただければと思うんですが。

○岩原座長

藤本さん。

○藤本信用制度参事官

基本的には、仮に25%だとしても、それをすぐに超えそうな金融機関があるとは承知しておりません。総じて金融機関が遵守できるような状況ではないかと思われます。ただ、この規制というのは、やはり若干、よりリスクが高いのがあって、苦しくなってきたときに未然にそういうリスクの集中というのを防ぐということもありますので、総じて、全てがクリアしているからという捉え方がよいかどうかという点はあります。

○岩原座長

よろしいでしょうか。小野委員、どうぞ。

○小野委員

2点、質問させていただきます。

資料7ページ、インターバンク取引について、仮に借り手の金融機関が破綻した場合には、貸し手の銀行等の健全性を損ねる事態も想定されるということなんですけれども、これまでは規制対象外だったということですので、過去に、例えば90年代の後半に幾つかの大手の金融機関が破綻した際に、大口信用供与規制がかかっていなかったがゆえに問題となるような事態が生じたのかということを教えてください。これが、1点目です。

それから、資料の19ページ、受信側の合算対象範囲についてですが、証券化をしてSPCとかを設立するようなケースについては、この規制というのがどういう形で引っかかるのか、あるいは引っかからないのかという点を教えてくださいというのが2点目です。

○岩原座長

藤本さん。

○藤本信用制度参事官

90年代に、インターバンク取引が規制対象外であったから、そのリスクが高まったとか、連鎖的な破綻が生じたかどうかということについてですが、それについては、それがそうだというものを我々として把握しているわけではありません。インターバンク取引の話に関連してですが、特にリーマンショックの後、欧州において、インターバンク取引に対する大口信用供与について2008年、2009年ごろ議論になったようであります。なるべく加盟国が整合性のある規制を入れようというような議論になったという流れであると聞いております。

それから、19ページのSPCについてでございまして、確かに金融制度調査会の懇談会報告においては、SPCといったもの等の特別な会社に対する信用供与については、その特殊性や資産流動化の促進等の観点から取り扱いを検討することは必要ですとなされているんですが、現状では、SPCも普通の会社と同じような規律になっている。与信側、受信側、グループ内ということで、SPCであろうが、そうでなかろうが、同じ規律になっていて、SPCだからこういう違った取り扱いをするとはなっていないということでございます。

また、外国の例を申し上げるのも何なんですけれども、最近、イギリスの当局が、パブリックコメントといいますか、コンサルテーションをしておりまして、SPCといっても、いろんなものがあるのではないか言っています。やはり、経済的に相互関連性がある、一方が倒れれば一方も倒れるとか、そういうものであれば合算の対象にすべきではないか。特に受信側の話ですが、個々の、一方が危なくなれば他方も危なくなるとかといった、実質的に考えるべきではないかというような考え方も世の中に問うているようでありまして、そこは各国とも、いろいろ悩んでいるところではないかと承知しております。

○岩原座長

他に。川口委員。

○川口委員

今のインターバンク取引や金融機関の預け金の話ですけれども、大口信用供与規制の目的が、先ほど事務局からありましたように、信用供与側の健全性の維持にあると考えるのであれば、基本的に、信用供与を受ける側の事情は考慮されるべきではないと思います。金融機関が相手である取引については、一般企業と比べて、金融機関が破綻しにくいという事情があったのかもしれませんが、現在は、先ほど言われたように、破綻を前提に考える時代になっているのではないかと思います。

他方で、バーゼルのほうでは、金融システム全体の健全性というのも大口信用供与規制の目的としているようです。そうすると、大口信用供与規制を適用した結果、借り手の金融機関がつぶれたらどうするのだという話にもなるのかもしれません。ただ、その場合、別の金融機関から分散して借り入れるということもできないわけではないわけで、やはり、信用供与側の事情を重視して、大口信用供与規制に含めるという方向で議論してはどうかと思っております。

規制対象外の信用供与の部分で、コミットメントのところは、先ほどのご説明で、後から法律ができて追いついていないということが理由であるならば、改めてそれは規制すべきという話になるのかなと思います。

それと、もう1点質問がありまして、デリバティブのところで、12ページなんですが、この懇談会の報告では、技術的な理由で今後の課題にするということなんですが、その技術的な課題というのはどういうものが考えられるのでしょうか。現在では解決可能なのでしょうか、教えていただければと思います。

長くなりましたけれども、公募社債につきましては、前回も議論になりましたが、株式についての規制との整合性がいま一つわかりませんね。株式の中にも、社債に非常に似たようなものが出ております。公募債の場合には売却可能であるということなんですが、インサイダー取引を除いて、破綻前に売り抜けるというようなことは現実は難しいので、やはり銀行等に与える危険性というのは、かなり高いのではないでしょうか。

○岩原座長

藤本さん。

○藤本信用制度参事官

12ページのデリバティブ取引に係る技術的な問題ということです。その後、調べてみました。定かなことは、確証は得られていないのですが、12ページの(参考)に書いておりますように、デリバティブ取引は各国とも、欧州なんかでは、自己資本比率規制のリスクアセットと同様な方法で算出するということになっています。現在は、カレント・エクスポージャー方式という方式で算出するのが、調べたところ標準になっているようであります。しかし、当時は、13年前ですが、そういう算出の仕方自体について、どうやって算出したらいいのかということすら、まだ不明確であったということではないかと思います。それについては、コミットメントラインのところでご指摘も受けましたけれど、その後、算出の仕方もわかってきているのだから、どうにかすべきではないかというご意見はあろうかと考えております。

○岩原座長

今の点、前回も申し上げましたが、大体この時点では、国際的にはカレント・エクスポージャー方式で信用リスク相当額の算定をしていたわけですけれども、当時の日本の金融機関の中で、カレント・エクスポージャー方式を実行できていたのは確か3行だけで、それ以外のところはカレント・エクスポージャーによる算定ができませんでした。日本の金融機関には、そういう技術的な蓄積がなかったのです。そこで、オリジナル・エクスポージャー方式でbis規制のほうには対応したわけですけれども、信用リスクを正確に測定するのにふさわしくないオリジナル・エクスポージャー方式で大口信用供与規制に係る信用リスク相当額を算定するということは好ましくないということから、カレント・エクスポージャー方式に移るまではしばらく待つということで、こういうことになったのではないかと理解しております。よろしいでしょうか。他に。井上委員、どうぞ。

○井上委員

先ほどは、わかりやすくご説明いただきまして、どうもありがとうございました。

バーゼルではいろんな議論があるようですけれども、基本的には大口信用供与規制というのは、信用供与先の信用不安が銀行の側に与えるインパクトを考えるということで、バックネットというご説明がありました。確かに、いかに信用力が高い与信先であっても、万が一のときに銀行に与えるインパクトを一定程度に抑えるという意味からすれば、自己資本比率の算定のような形でリスクウェイトをあまり考慮すべきじゃないというのはそのとおりかなと思いました。そういう観点からは、公募債であれデリバティブであれ、信用供与手段として代替性のある信用供与方式を広く対象とすべきであって、あまりいろいろな例外を設けるべきではないのかなと、一般論としては感じた次第です。

もっとも、主債務者との間に全く信用相関のない独立の保証人がいる場合、あるいは担保物が独立の価値を持っている場合などについては、信用供与先が破綻した場合であっても、一定の回収が見込めるわけですので、全く無担保、無保証の債権と同様に扱うのがほんとうによいのかについては、きめ細かく規制することのフィージビリティーとの相関で考慮するべきかなと思いまして、その点では、担保、保証については別途、信用の減額を認めてもいいのかなと感じました。

あと、コミットメントについてもご説明いただいたわけですけれども、これについて、一応、確認としては、もちろんコミットメントラインが発動されて、信用供与すれば、これは貸し付けになるわけですからカウントされるということですね。したがって、現行法上も、枠を超える、あるいは超えそうになれば、銀行としては、当然対処するわけですので、その債権あるいは既存の貸付債権を譲渡したり、何らかの方法で大口信用供与等規制に抵触しないようにモニタリングすることはできると思いますが、コミットした段階でつかまえるべきだという議論は、やはり、コミットした以上は、常に対処できるわけではないということを考えているせいなのでしょうか。つまり、貸付を実行して初めて信用供与リスクを追うわけなので、別途の手当てをする余地もあるのではないかなと思いましたので、その点について考え方を確認させていただきたいというのがもう1点です。

それから、先ほど原則論として、信用供与手段として代替性のあるものを広く対象とすべきではないかと申し上げたのですけれど、その中に、現在、外れている典型的なものとして、コールローンとか預け金などが例として挙げられました。このあたりになりますと、実務的にこういったものを規制の対象に取り込んだときのインパクトというのがちょっと気になりまして、考え方自体はわからないではないのですけれども、実務的にどのような影響が金融機関に現実にあるのかというのも、慎重に考えなければいけないと思います。

あと、長くなりますが、クレジットデリバティブについては、13ページの説明によると、他のデリバティブと比べても大変に急激な勢いで増加しているわけでございまして、これについては、少し特殊な面もあろうかと思います。

すなわち、今回、14ページ、15ページあたりでご説明いただいたデリバティブ取引は、基本的にはカウンターパーティー・リスクについての信用供与の問題が取り上げられていると思います。クレジットデリバティブにおいても、デリバティブ取引の相手方から第三者企業が破綻した場合にお金をもらう側に立っている場合は、同じ問題があると思います。しかし、それとは別に、クレジットデリバティブの場合は、当該参照企業が破綻した場合に、いわば損害保険を売っている側の金融機関は、当該参照企業のリスクをとっていることになりますので、そういう意味での信用供与も規制の対象とすべきか否かを考えなければいけないのかなと感じました。

あと、公募債については、現在、外されている理由として、短期間のうちに処分することができるというのが挙げられていますが、既にご指摘いただいたとおり、そういった場合に短期間で処分することは難しい場合もございます。上場株であっても短期間で大きなブロックの株を売ることは容易ではないので、そう考えると、大口信用供与規制の対象となるほどの大きなブロックの社債については、公募社債についても、やはりリスクはあるのかなと感じました。

以上です。

○岩原座長

ご質問事項について、藤本さん。

○藤本信用制度参事官

まず、信用リスクの削減についてですが、資料は22ページになっています。これについては、担保価格の変動リスクとか規制の実効性を踏まえるというのが一方であって、他方で信用リスクの削減効果を考慮する必要性があると申し上げたところでございます。井上委員がおっしゃるように、規制としてどれだけシンプルなものとするのか、あるいはどれだけ精緻なもの、あるいは複雑なものにするのかという点を踏まえて、検討する必要があると思っています。

もう一つは、自己資本規制では認められている信用リスク削減効果というものを、直ちに大口信用で取り上げていいかどうかという論点もあろうかと思っています。1つの考え方は、自己資本は全体として自己資本の8%なり4%なりを上回っていればよくて、しかも、例外はあるんですけれども、おおむね事実上決算期における健全性の基準になっているということなんですが、大口規制の場合は、常にそれを超過してはならないという義務をかけている規制であります。自己資本規制と同じようなものにすると、かえっていろいろ管理のコストといいますか、そういったコンプライアンスのコストというのがかかるということも論点としてあるのではないかと思っています。

それから、コミットメントラインなんですが、これは、仮にそういう枠を与えていて、それが契約どおり実行されると超えるというのがわかっていながら、規制がまだ実行されていないから規制をかけなくていいのかどうかという点があります。適切なたとえではないと思いますが、ファールボールが飛んできてからバックネットをつくればいいじゃないかということでよいのか、どの時点で事前に予防的にそういうリスクを管理するかということと密接に関連しているのではないかと思っています。

クレジットデリバティブをめぐる複雑な論点、例えば誰に対する信用供与なのかというのは、私どもも非常に悩ましい問題だと考えているところです。

以上です。

○岩原座長

よろしゅうございますか、井上さん。

それでは、秋池委員、お願いします。

○秋池委員

大口信用供与の規制のところで、18ページ以降に海外の事例をそれぞれの論点についてお示しくださっているんですけれども、これ、まだ調査中のものもあるようですので、お答えは本日でなくても結構なんですけれども、当然、各国がいろいろな規制を取り入れると、銀行側にいろんな変化、影響があって、修正したりしたことなどもあるのかと思うんですけれども、もしもそういうことがあれば、どういう理由で今ここに落ち着いているのかというのをお教えいただくと、今後の参考になると思っております。

それからもう一つ、おのおのの論点について事例が書いてあるんですけれども、もしも、こちらの論点でこういう仕組み、規制になっているから、こちら側ではこうなんだという、ひもづく関係があるのであれば、そちらもあわせてご提示いただければと思います。

○岩原座長

藤本さんのほうから。

○藤本信用制度参事官

海外の状況については今調査中でございまして、今ご指摘いただいたところも踏まえまして、調査を進めていきたいと思っています。やはり、どうもヨーロッパにおいては、リーマンショックの後、この規制というのをより重視していこう、あるいはちょっと変えていこうというような動きがあって、現在の規制になっているようでありますので、そういうこともよく調査してまいりたいというふうに思っております。

○岩原座長

家森委員、どうぞ。

○家森委員

歴史を見ると、機関銀行などがあって、特定の貸し出し先に過度に貸したために金融機関が破綻するというような例があったということを考えると、このような大口規制というのが導入されて、適用されているというのは自然なことだろうと思います。最低限の基準として、こういうものが要るだろうということについては、私もそう思うんですけれども、同時に、例えば自由にさせた場合に、民間金融機関がこの規制水準よりも高い大口融資をやりたいと思っているかもしれません。あるビジネスモデルでは、この規制が制約になっているかもしれないということで、規制することにコストがかかるわけです。したがって、どの程度、この規制によってコストがかかるかを知りたいと思うわけです。

そこで、先ほど、大崎委員からご質問があったこととも関連するんですが、2ページの説明によると、現在、既に大口与信で、Tier1で10%以上のところについてはヒアリング等々されているということなので、これに基づいて、例えば大手金融機関にこういう事例が多いのか、中小金融機関に事例が多く起こっているのか、を教えてください。要するに、大口融資規制を仮に強化というか厳しくしたときに、どのような金融機関に影響が起こるのかについて、今日でなくて結構ですので、教えていただければというのが1つ目です。

それから、2つ目は、金融機関の預け金というものを対象にしたとき、これは純粋に制度の問題としてなんですけれども、協同組織金融機関は中央機関に多額の預け金をしています。預け金を規制対象にしている外国では、中央組織の金融機関への預け金への対応はどうなっているのでしょうか。預け金をもし我が国が対象にしたときに、中央金融機関について、我が国でも規制対象になり得るような法制度があり得るのかというのを教えていただきたいということです。

それから、10ページのところで、調査をしていただいたら、金融機関預け金が50%を超えるような金融機関が5行あるということなんですが、こういう金融機関は、多分、何か特殊なビジネスモデルがあって、実践されているのではないだろうかと思うんです。かなり変わった数値のような気がするんですが、個別には結構なので、何かこういうものについての特定のビジネスモデルがあるのかどうかという点を、念のために教えていただければと思います。

最後ですが、23ページによると、信用供与等限度額ということで、受信サイドが単体なら25%で、受信サイドをグループとして見るときは40%であると、こういうふうに違いがあるということなんですね。もちろん、これはやはり単体がつぶれてもグループはつぶれない可能性が結構あるという、そういうふうな規制の考え方なんでしょうか。素朴に考えれば、グループで見るということは、前提として、単体がつぶれるというのは、グループがつぶれるということを意味するような気がして、これをわざわざ分けられている理由について教えていただければという点です。以上です。

○岩原座長

藤本さん、お願いします。

○藤本信用制度参事官

まず、預け金について、何か特定のビジネスモデルがあるかということです。例えば、以前は、主たるグループの本拠地は日本以外のところにあります。日本で預金を集めている現法です。そういったところが、日本に貸し出しをするというよりは、海外に回金しているというビジネスモデルはあると認識しております。

もう一つは、協同組織金融機関の関係でございますが、これはご紹介ですが、ヨーロッパにおいては、同じような中央組織のもと、協同組織金融機関というものがあるわけですが、それについては適用除外となっています。どうもその考え方は、条文を読んだだけなので正確に把握しているところではないんですが、何かあったときに相互に補助し合うということが前提とされている。相互扶助の考え方であるとか、あるいは1つの同じ形態の金融機関の性格を有しているものであるとか、幾つかの前提条件というのはあるようでございますが、そういうものを満たせば適用除外になっていると承知しております。

○岩原座長

私のほうで補足させていただきますと、最初のほうでご質問のあった、実際、こういう大口信用供与規制違反が問題になっているのは、中小金融機関に多いか、大規模な金融機関にもあるかという問題ですけれども、少なくとも、裁判であらわれた例を見ますと、数が多いのは中小金融機関であります。三福信用金庫の事件、その他、大口信用供与規制違反で破綻した金融機関の経営者の責任が問われた裁判がかなりございます。ただ、大きい金融機関ではないかというと、ございまして、私の知っている範囲では、北海道拓殖銀行がそうでございました。カブトデコムに対する信用供与、あれは大口信用供与規制違反になるものですから、関連ノンバンク等を使って迂回して信用供与して、当時、大口信用供与規制を逃れようとしていた。結果的に、カブトデコムは北海道拓殖銀行の破綻の大きい原因の一つになりました。そういう例もございますので、大きいところでも実際に問題は起こっているということだと思います。

協同組織金融機関における中央組織への預け金の問題は、これはかなり性格の違う問題で、はっきり言えば、各単位の組織では資金を運用する能力が十分でないものですから、中央機関に預けて運用してもらっているという側面等がありますので、単純な問題ではないと思います。ヨーロッパ等については調べていませんが、別の配慮から例外を認めているのではないかと、推測しております。

よろしいでしょうか。

あと何人かの方が手を挙げられましたが、順番が。たしか森さんが先、その後、和仁さんでしたかな?よろしいですか。じゃあ、森さん。

○森委員

18ページの与信側の合算対象範囲について、連結ベースという考え方が出ています。(参考)のところに、主要国における「連結」の具体的な内容・定義は調査中ということでありますが、先ほど、対象範囲について、貸借対照表の資産の部の科目をご説明いただきましたが、連結財務諸表をベースにするということになると、関連会社の部分は、連結財務諸表の例えば貸出金だとか有価証券だとか、そういった科目には計上されませんので、その辺の取り扱いについては確認されたほうがよいと考えております。

次に、19ページの受信側の合算対象範囲でありますけれども、先ほどご説明で、平成10年の当時の商法の親子関係に基づきということでありますが、おそらくこれは金融機関の把握可能性を検討されて、こうされたのかなと考えています。当然、今の会社法では、連結計算書類が求められていますので、これは有価証券報告書提出会社ですが、連結ベースということも考えられますが、必ずしも全てが連結計算書類をつくっているわけではありませんし、実際の実務でどのようになっているのかというところが重要と考えています。

1つは、各金融機関、資産算定を実施していますので、その際の企業グループへの対応、いわゆるグループ査定といった実務対応というのが参考になると思います。ただし、各金融機関によって査定の──基本的なやり方は同じですけれども、どこまでを範囲としてやるのかというところが異なる面がありますので、実態を把握されたほうが、ここはよいと思います。各金融機関の把握可能性という視点だと思います。

次に、20ページのグループ内与信の取り扱いですが、基本的には、金融機関はそのグループ全体でリスク管理を実施していますので、グループ内与信については、各国いろいろな考え方がありますけれども、規制対象外というのも1つの考え方と考えています。当然、そのリスク管理が健全に機能しているというのが前提にはなります。

次に、22ページの信用供与等の算出方法の控除のところですが、対象範囲が広くなることによって、例えば現先やレポ取引が入ってきますが、これらは担保を前提とする取引です。この控除については、そういう取引ごとに、その性格等を分析をしながら決めていく必要があると考えております。

次に、コミットメントラインですが、これは当然、対象にするとは思いますけれども、現状、各金融機関の実務も、おそらく、実行残と──実行残は当然対象になるわけですから、未実行残がどのように取り扱われるのかということも、当然、理解して、管理しているわけで、その辺を含めて、大口信用供与規制の対応を図っているのではないのかなと考えています。

以上でございます。

○岩原座長

それでは藤本さん、今のに何かあれば。

○藤本信用制度参事官

今いただいたものを参考にして、引き続き、調査を進めていきたいと思っています。

○岩原座長

よろしいですか。それでは、和仁委員、どうぞ。

○和仁委員

まず、コミットメントラインで、井上先生と藤本さんで理解に差があるのではないかなと思うのは、コミットメントラインというのは、約束したら必ず金を出さなくちゃいけない契約じゃなくて、コミットメントラインに基づいて支払ってくれといったときには、一定の条件、コンディションズプレシデントを満たさないといけない。大抵、相手方の銀行なりコミットメントラインの権利者のほうは、信用が劣化しているとか、そういう状況にあると、お金が出ない。これはコミットメントラインの趣旨には反するということも言えるのですけれども、そういうことから考えると、必ずしも、コミットメントライン全額に与信を与えているから、それについて全部カウントしろという考え方が正しいのか議論の余地があります。要するに、雨が降っているときに傘を貸してあげなくちゃいけない、でも一定の場合には傘を貸さないという、そういう仕組みになっていますので、それはよくないと言う人もあるでしょうけれども、それは、そこのところで性格づけをもう少し細かく分けてやられたほうがいいと思うし、規制がややこしくなるというコメントが出るかもしれませんが、ご留意ください。

もう一つは、やはりコミットメントラインで金額が大きくなってしまうというのは、金融機関が海外の金融機関との間でやる通貨を対象にした、例えばドル・ファンディングだとか円ファンディングのためのコミットメントライン、これをどういうふうに扱うのか。緊急時に備えて、緊急時になりかけたときの、今の金融危機の状況なんかもそうですけれども、そういうときに使うもの、こういうものは別の考え方をしたらいいのではないかなと思います。

それから、先ほど自己資本規制の考え方と大口信用規制の考え方は違うのだとおっしゃいましたけど、やはり担保については、マーケットでは担保で信用というのを考えていますので、担保つきのものと、そうでないものというのをきちんと峻別して考えるというやり方がよろしいのではないかなと思います。

それから、デリバティブはそもそも本来どおり規制を適用したほうがいいのではないかということはいえるのですが、ここに出ているように、想定元本ベースとか、そういうベースでやると非常にミスリーディングなことが起こってきますので、ご案内のように、今回、CDSについてCCPも稼働しており、IRSはこれからですけれども、稼働しますので、どこまでCCPに対するエクスポージャーという形になって、どれぐらいエクスポージャーが下がるのかというのを見て考えるということも必要なのではないかと思います。

最後ですけれど、大口信用規制というのは、誰に金を貸すかということで規制を考えていられますけれども、過去の金融危機を見ていると、個社ではなくどのセクターに金を貸すのかということが問題だったので、そこのところも考えられたほうがいいのではないかなと思います。セクターの記述が難しいと思いますけれども、先ほど岩原座長がおっしゃっていた北拓だって、別にカブトデコムだけで貸してコケたのではなくて、他の不動産業にもいっぱい貸し込んで、それで倒れてしまっているわけで、そこのところのセクター別の大口信用供与規制というのを一度考えていただいたほうがいいのではないかなと思います。

それから、先ほど森委員のご説明のありました債権貸借とか減債とか、そういうのはやはり担保と一体として取引されているので、そこを考えて、数字をもう少し精緻に洗い出したほうがいいのではないかなというお考えには全く賛成です。

以上です。

○岩原座長

藤本さん。

○藤本信用制度参事官

まず、コミットメントラインについては、おっしゃるとおりでありまして、4ページをお開きいただきますと、主要国でも規制対象とはしておりますけれども、一定のものについては、例えば、任意の時期に無条件で取消可能とか、一定のものについては、一定の範囲内で適用除外としているといったこととなっておりまして、コミットメントラインを対象にすると、全てが対象になるかどうかというのは、また別途、議論が必要なところだと考えております。

それから、セクターの話は、2ページの下から2行目ですが、特定業種への集中度について、監督上の対応としてバーゼルIIの第2の柱という位置づけでモニタリングをしているところでございます。もちろん、特定の業種に信用供与が固まるということは、非常にリスクが高いということについては認識しているところでございます。

あと、CCP、清算機関などに対する取り扱いでございますが、我が国の場合は、CCPかどうかということで別に区別しているわけではございません。これも調査中でございますが、例えばイギリス、フランスなどにおきましては、こういったものに対する信用供与は適用除外になっていると伺っております。そういうのも参考にして検討される必要があると考えております。

○岩原座長

よろしいですか。何かあれば。他にいかがでしょうか。小出委員、どうぞ。

○小出委員

先ほど、既に和仁委員からのご指摘があったところで、あるいは私の実務の理解が誤っている可能性があるのですが、まず、コミットメントラインに関してなんですけれども、先ほど藤本参事官から、事前にリスク管理の対象にしたほうがわかりやすいんじゃないかというお話があったと思うんですけれども、そのとおりだと思っております。つまり、例えば現在、自己資本が100のところで、そうすると、例えば25が大口信用供与規制による上限になるんだと思いますけれども、仮にコミットメントラインの枠が25として、今、そのうち15を既に貸している、10の未貸出し枠残高があるという状況のときに、もし枠ではなく実残高で大口信用供与規制に抵触するかを判断するとしますと、コミットメントライン契約を締結した後に、例えば自己資本が60に毀損したというような状況があると、未貸出し枠残高の10については実行できないとなってしまいます。これは銀行からすれば契約違反という問題が出てきてしまうと思いますし、借入側からすれば銀行側の事情でせっかくのコミットメントラインが「コミットメント」ではなくなってしまうということにもなってしまいますので、こういったことはないほうがいいだろうと思います。そうしますと、やはりコミットメントライン契約締結時の枠を大口信用供与規制の対象としておいたほうが、むしろコミットメントラインを利用しやすくするという観点からはよろしいのかと思っております。

ただ、他方で、これは当然のことかもしれませんけれども、先ほど言ったような問題を防ぐためには、自己資本が毀損した後であったとしても、頭の段階、すなわち契約を締結した段階で枠で計算して大口信用供与規制に反しないものであれば、その後にその枠内で実際に貸出を実行する場合については、その時点で銀行が自己資本を毀損していたとしても、大口信用供与規制違反にはならないということを明確にする必要があるのかと思っております。

まとめて言いますと、すなわち、契約締結後に状況が変わった場合についても、コミットメントラインというものの実行が可能になるような手当てを置きながら、こういった規制を考えるべきであろうということでございます。

次に、担保のほうの、リスクウェイトに関する話でございまして、これも既に議論が出ておりますが、担保つきのものについてはリスクウェイトの計算をするべきかどうかというところで、これについては、やはり大口信用供与規制の目的というものが最大エクスポージャーの制限にあるということを考えますと、基本的には、かなり保守的に見積もるべきであろうと思っています。すなわち、最大エクスポージャーが実現してしまうような極端な経済や市場の状況であっても、なお、その現金化が容易な担保について、しかも、そのような状況でも常にマーケットなどで売却できるであろう金額に限って差し引くという形で、リスクウェイトの計算を認めるといったものでないと、やはりまずいのではないかと考えられますので、このリスクウェイトを計算するに当たっては、かなり保守的に考えるべきであろうと。例えば不動産担保のようなものについては、かなり慎重に考えておかなければいけないのではないかというのが個人的な意見でございます。

それからもう1点、21ページにあります、銀行・銀行持株会社グループの組織再編への影響という問題なんですけれども、その一番下のところのご提案として、この図でいうと、A社というところが外国において我が国と同等の監督に服しているような場合については、与信の合算対象から除外することなどが考えられるということなんですけれども、これもいいようにも思うのですけれども、X銀行グループ自体の個別の健全性というものを考えるときには、例えばですけれども、X銀行自体もA社やA社グループの中の連結子会社に対して融資をしているという状況があり得るかと思うのですが、この場合には、やはりX銀行グループ全体の大口信用供与規制を考えるというときに、このA社による与信も合算して考えていかないと、やはりX銀行グループについて大口信用供与規制が制限しようとしているリスクの顕在化が起きうるのではないかという感じがするんですけれども、このあたりはいかがでしょうかという、最後は質問でございます。

○岩原座長

藤本さん、いかがですか。

○藤本信用制度参事官

21ページの例で、例えば、図の中の左下にある銀行が仮にA社に貸し出しをしていたとしましょう。今の規制ではどうなるかといいますと、A社は関連会社ですので、これは受信側合算ということになりまして、A社グループ全体が受信側として合算されるということになっています。そういうものについて、やはり、この左下にある銀行のエクスポージャーとして、きちんとカウントすべきではないかということはあろうかと思います。

一方、この例のような銀行持株会社が出資をしていて、出資といっても、関連会社、持分法適用会社程度の出資をしているという状況でどう考えるかというのは、また別途、検討の必要があるということです。この例が相当込み入った応用例になっていますので、小出先生のおっしゃるような銀行が貸し出しをしているときには、そういうことがあるかもしれません。ただ、もう一つ言えるのが、A社が子会社だったらどうなのかということでして、そうしますと、A社はグループ内子会社ということですね。すると、A社単体ということで見ることになります。

ついでにもうちょっと言うと、A社グループというのも、もし、子会社という関係にあるのであれば、すべてX銀行グループ内ということになってしまいます。そうすると、おさらいなんですが、グループ内は単体だけで見ます。受信側は合算しませんというようなことになっています。当時は、こうした規制の仕組みが、一方でグループ内の与信というのをあまり妨げず、他方で必要な規制はかけているという整理といいますか仕切りでした。しかし、当時考えもしなかったような状況で組織再編というのが生じているときに、今のツールというか考え方、与信側合算、受信側合算、グループ内の規制のかけ方ということで対応が十分にできているかどうかというのは、よく考える必要があるという趣旨で提出しているものでございます。

○岩原座長

他にいかがでしょうか。松井委員、どうぞ。

○松井委員

上智大学の松井でございます。

先ほど来問題となっておりますコミットメントラインの話なんですけれども、特に中小の金融機関、金庫等で問題になっているというお話でしたが、例えば地方などで、家族で、株式関係等はなくて、いろいろ別会社を持って、取引関係も非常に多くて、一大産業みたいなものを形成しているというようなところがあった場合、グループとはいえないのかもしれないけれども、非常に強い取引関係あるいは親族等で支配関係みたいなものがある。このときに、ここにまとめてお金を貸す、コミットメントラインを複数の株式会社と締結するというときに、冒頭、貸すところで40%などというのをつけますと、当初、貸したときには独立性が高いんだけれども、だんだん倒産が近くなってくると資金を融通し合ってしまうような場合には、この40%というのは掛けといてよかったということになると思うんですけれども、当初貸すときには、そもそも、そういったところでの今の日本の受信の計算の仕方では別会社になっているので、きつ過ぎるんじゃないかと言われるという関係にあるのではないかと思うんですけれども、こういう経済共同体的な関係にあるようなグループに貸すときのコミットメントラインのつくり方みたいなものについては、どのように考えればいいかというのが少しわからないところでございます。

○岩原座長

藤本さん。

○藤本信用制度参事官

信用供与というものがあったとしましょう。受信側としてどれだけ合算対象とするのでしょうというのがまず一つあります。それは19ページにありますように、今、松井委員がおっしゃったようなことは、特にヨーロッパにおいては、実質的な経済的相互依存関係というのを見ています。我が国の場合は、そこは議決権50%超ということで、非常に形式的にとらえています。まず、こうしたことが、あります。

次に進んで、信用供与の仕方が、それは貸し出しなのか、それともコミットメントラインなのかということが、あると思います。確かにおっしゃるように、コミットメントラインの場合は、コミットメントラインの枠を設定した段階と、実際に信用供与をする時期というのがずれるわけですから、その間に、受信側の経済的相互依存関係性というものが変貌を遂げている可能性もあると思っております。したがって、そういうコミットメントラインというものが、信用供与として入れるときに、そういうコミットするときと、実際に資金供与するときとで周りの環境が変わってくるんじゃないかというご指摘はそのとおりなんです。ただ、我々の考え方とすると、それぞれの部品ごとに考えていく。要素還元主義でいいのかどうかというのはあるんですが、一つ一つ片づけていって、最後に何か問題が生じていないかという思考経路で考えているところではあります。

○岩原座長

川波委員、どうぞ。

○川波委員

2点、コメントを申し上げたいと思います。

1点目は、先ほどから出ておりますインターバンク取引についてですけれども、提起されている問題は、要するに、大口信用供与規制、これを対象外にしていると、何か金融機関に破綻が生じた場合に、貸し手の銀行等に損失が発生するリスクが高まるので、それを初めから大口信用供与規制ということで規制しておこうという考え方で、連鎖的倒産であるとか、あるいは損失が他に波及していくということを未然に防いでおこうという考え方だと思うんですが、そのことはよく理解できるものだと思います。

他方で、インターバンクという短期貨幣市場の一番金融システムの中核のところにある流動性の調整という機能にどういう影響を与えるのかということ、つまり、大口規制をしたからといって、それが資金繰りに何か大きな影響を与えるということがなければ、規制を導入してもよろしいでしょうし、何かそのことに対して、特に金融システム不安が生じているときだけでなく、平時においても、何か機能に阻害をもたらす、あるいは不都合な問題をもたらすことがないのかどうか、そこのところをきちっと検証した上で、そのフィルターを通した上でどうするかということを、やはり、特に実務のレベルで考えておくべきではないかというのが私の考え方です。先ほど井上先生が、この点に関しておっしゃったことと基本的に同じ意見でございまして、特に実務のレベルで、ぜひ確認しておきたいということでございます。

それからもう1点、実は、このワーキングは、規制に対して、事前にどう枠をはめて、不安のような、そういう状態が生じるのを回避するかという視点からのワーキングなんですけれども、当初の諮問の中に、あわせて、金融審議会は我が国金融業の中長期的なあり方に関するワーキングにおける議論等を踏まえて、我が国金融業のさらなる機能強化のための方策について検討するということがございますので、そういうディフェンシブな議論だけでなくて、我が国の金融業、特に金融業の機能強化にとって、これを阻害することがないのかどうかという視点をどこかにかぶせておくべきかと考えます。規制が、とりわけ海外の金融機関との競争において、これをやや阻害するという側面がないかどうかということをきちんと検証しつつ、議論を進めるということも必要ではないかということです。具体的に、じゃあ、どの論点が競争力を阻害するのかということは今申せませんけれども、少なくともそういう視点は1つ持っておく必要があるのではないかと考えます。これが、2つ目でございます。

感想でございました。特にご返答は必要ありません。

○岩原座長

今の2点につきまして、吉野会長から、ご発言をお願いします。

○吉野金融審議会会長

では、私から、関連のところですけれども、経済学で見ると、金融業の重要なところは、いかにして借り手企業や地域に安定的な資金を提供するかというところであります。同時に、リスクを回避しなくてはいけないわけですけれども、そうすると、大口信用供与規制とかコミットメントラインによって、ほんとはもっと金融機関から借り入れをしたかった企業に資金が十分にいかないことになります。そういう場合に、他のどういうチャンネル(経路)を通じて、大口融資規制によって十分な借入ができない地域や企業にどのように必要な資金を提供するかは重要な論点になると思います。先ほど岩原先生からお話しのように、北拓が迂回でノンバンクを通じるといけないわけですけれども、例えば関連の地銀とか信金さんを通じて資金が不足する借手に対して資金を提供するというような方法があると思います。大口信用規制により十分な貸出が出来なくなった先に対してどういうふうに対処すれば、日本の金融がうまく流れるかは、考える必要があるように思います。

それから、インターバンクの場合には、流動性の危機といいますか、リクィディティー(Liquidity)の部分と、もう一つ、大口信用規制のようなアセットの部分のリスクと、両者はちょっと違う次元があるような気がいたします。

それから、先ほど和仁先生から業種というお話があって、それもそうだと思うんですけど、ある特定地域に特化するというリスクありまして、釜石信金などは、特定地域が鉄鋼業がだめになって非常に悪くなったわけですから、そうすると、どこまで大口信用規制の範囲を広げるかというのは非常に難しいなと思います。特定業種とか特定地域に貸し付けが多くなりすぎるとリスクを伴くということになると思います。

○岩原座長

どうもありがとうございます。森下委員、お願いします。

○森下委員

まず1点目、受信者側の合算の方法について、我が国の状況が海外の状況と大きく異なるというようなご指摘があったと思います。我が国が比較的形式的な把握の仕方をしてきたのは、把握可能性という点に問題があるというようなお話があったのですが、今までのご議論を伺っている限りでは、もうちょっと実質的に見てもらったほうがいいというようなご議論もあるようですし、他方で、海外では実質的な基準でもワークしているということであれば、この部分というのは、大きく方針を変えるかどうかという点で、かなり重要なところなのかなという理解でおります。海外の実質的な基準というものは、実際にどのような形で設定され、適用されているのかというのは、もう少し詳しく知りたいと感じておりますので、もし可能であれば、教えていただければと思います。

あと、外国金融機関との関係での本支店間の資金のやりとりについても、今回、検討の対象として挙げていただいていると思うのですけれども、他方では、外国銀行支店についての大口信用規制を考える際の資本のベースが、米国などですと、本店の資本とされていることを考えますと、外銀の本店に対する資金の提供を外国銀行支店による本店に対する一種の与信のような形で考えたとしても、もととなる資本ベースが資金を提供する先である本店ということになりますので、どうも大口信用規制の枠組みとは、ちょっとマッチしないのかなと。むしろ、どちらかというと、この点は今後、後半で別途問題になる外国銀行支店の規制や破綻処理などとの関係で考えたほうが、すっきりするのではないかなというような気がいたします。

あと、大口信用規制を、例えば、担保付与信やコミットメントラインとの関係などで柔軟に考えるべきというお考えが示されておりましたけれども、冒頭に御説明がありましたように、大口信用規制がバックストップというか、非常に想定外の事態があった場合のための自己資本比率規制などとは別枠での措置ということで、国際的にも認識されているということを考えますと、例えば預金担保ですとか、国債担保などは既に除かれていると思うのですけれども、それ以上にどういった担保を除いていくのかという部分は、比較的保守的に考えていったほうがよろしいのではないかなというような印象を抱いております。

○岩原座長

川口委員。

○川口委員

受信側の合算対象という今出たお話に関連するのですけれども、森委員からも、もともとは会社法に合わせて50%超だという話がありました。現行の会社法は、ご存じのように実質的支配基準を採用しています。あるいは金商法の世界でも、財務諸表規則のもと、実質的支配基準を採用しています。銀行法上の大口信用供与規制について、そういう実質的支配基準を採用した場合に、把握可能性という点から問題があるのかどうかというのが一番知りたいところです。例えば、実質的支配基準では、40%の持株比率でも、取締役会を支配していれば子会社になります。そういうものについて銀行側が把握するということが難しいのでしょうか。貸し付けの審査過程で、そのような実態を把握することは可能なように思えるのですが、もしそれが可能であるならば、このような基準とすべきなのではないかと思います。

別の会社を介在させることによって大口信用供与規制を潜脱されるという、19ページに記載されている懸念についても、もし、そういう実質的支配基準を入れることが可能であれば、解決可能なように思います。すなわち、財務諸表規則のように、人事とか、資金面とか、技術上とかの密接な関係がある会社であれば合算することにすれば、大口信用供与規制を潜脱するということも防げるのではないかと思います。

○岩原座長

翁委員、どうぞ。

○翁委員

大口信用供与規制につきましては、今までご議論ありましたように、信用リスクに関して、整合的にこの規制をもう1回見直していくという方向で考えていくということで、その方向感には賛成をしております。

留意点として、私も2点申し上げたいんですけれども、1つは、先ほど吉野先生がおっしゃった点ですけれども、特にこれから人口が減って、地域経済が縮小していく中で、企業同士の合併というのが、かなり増えていくのではないかというような感じを持っております。そういたしますと、やっぱり中小金融機関については、M&Aとか合併において、一時的に大口信用供与規制がネックになってしまうというようなことがあると、再生または合併してより強くなっていくために、金融機関としての支援ができないということにならないように、よくそこを工夫していただく必要があるのではないかなと思っております。それが特に経済を支える金融としての重要な点だと思います。

あともう一つは、何人かの先生がおっしゃいましたけれども、やはり、この大口信用供与規制が大きな壁にぶつかるのは、流動性の部分ではないかと思っております。もちろんインターバンクの取引については考えていく必要があると思うんですけれども、例えば今度、信用供用限度額を引き上げるということも提案されていますけれども、そういった際に、やはり、この規制が流動性の問題を引き起こして、マクロプルーデンス全体の問題に波及しないように、その点を十分注意していただいて、規制を設計していただきたいと思っております。

○岩原座長

どうもありがとうございます。他にございますでしょうか。森下委員。

○森下委員

大口信用供与規制が、例えば流動性や資金の円滑な供給に影響を与える場合や企業が合併した場合にどうかというようなお話があったと思うのですけれども、たとえば、信用を受けているものが合併した場合については、個別に当局の認可を得ることで柔軟に対応するというのが、今もある程度、枠組みとして設定されているというような理解でおります。従って、大口信用供与規制があるために顧客との契約の履行が困難になるですとか、資金の円滑な供給が非常に困難になるというような例外的な場面については、ある程度柔軟な個別の認可というようなことで対応できる部分もあるのではないかなという気もいたしておりますし、現に部分的にはそのような制度的対応もされているのかなというような気がいたします。

○岩原座長

他にございますでしょうか。和仁委員、どうぞ。

○和仁委員

24ページのIMFのコメントなんですけど、Prudential Framework. Further improving the prudential framework is also desirable, including tightening large exposure limits on lending by banksと書いてあるんですけれども、これ、もっとスペシフィックにIMFのほうから、具体的にこうしろという指摘というのはあるんでしょうか。これだと一般的で、よくわからないんですけど。

○藤本信用制度参事官

確かに資料の24ページに、including tightening large exposure limits on lending by banksというのがございます。その前の23ページのところに、下から4行目ですが、大口信用供与の残高上限の引き下げを指摘と書いております。大口信用供与の残高上限の引き下げを指摘というのは、24ページの文章をIMFが自分で日本語訳したところ、残高上限の引き下げと訳されているところです。もしかしたら誤訳なのか、実は本心がここに露呈したのかどっちかわかりませんが、こういうことが重要なものの1つであると認識しておりますし、我々もIMFのFSAPの担当者等のやりとりでも、ここのところの指摘を受けているところであります。

○岩原座長

和仁さん。

○和仁委員

そうすると、IMFとの関係では、残高上限だけ下げれば、あとは文句は言わないと。

○藤本信用制度参事官

そこはどうでしょうか。もしかしたら、誤訳かもしれませんね。タイトニングしなければいけないということであります。

○岩原座長

先ほどご質問もありましたけれども、我が国の大口信用供与規制を他国の大口信用供与規制と比較した場合、非常に目立つのは、23ページにありますように、単体とグループで日本は上限を分けている。これは他の国では分けている例はないわけでありまして、やっぱり、なぜグループならば単体と違って40%まで許されるのかというのは、国際的に見ると、非常に目立つ点であります。おそらく、そういうことがIMFの審査においても、実質的な指摘の内容としてあったのではないかと推測しています。

○和仁委員

それはそうでしょうけど、だけど、じゃ、それでここ10年間コケているかというと、コケていないんですよね。だから、IMFの言うことが、本当に日本の銀行システムにとって正しい処方箋なのかどうなのか。低ければ低いほどいいというものでもないと思うんですけれども。リクィディティーの供与ということからいうと、このアプローチをとられた理由付けがあるわけでしょうから、その理由付けがIMFの言っている理由付けとどうずれているのか、やはり、その点の検討も必要なんじゃないのかな。世界が全く同じルールで規制できるっていうのは無理ですので、そういうことも議論できればいいかなと思います。

○岩原座長

藤本さん。

○藤本信用制度参事官

関連ですが、23ページ、※のところで引き下げを指摘されております。これに対して、一応言い返しているというのが(注2)のところです。我が国の規制には厳しいところはあるんですよ、担保はあまり見ていない、不動産なんか全然見ていないんですよというようなことを書いています。IMFに言われたままになっているというわけではないということは、ご理解いただきたいと思います。

○岩原座長

しかし、どっちが合理的なのか、よくわからないですけれどもね。

じゃあ、吉野さん。

○吉野金融審議会会長

和仁先生の25とか40ですけど、日本の場合、銀行中心ですから、社債とか、その他の市場が十分に発達している国々とは、この比率(25とか40)自身も違うかもしれません。さらに言えば、グループの考え方が日本と諸外国と違ってきてもいいのかもしれないです。単にIMFに言われたから、それをまねするというのはいいことではないような気がします。

○岩原座長

それは当然のことでありますが、他に何かございますでしょうか。

よろしゅうございますか。特にないようでございましたら、若干早目ではございますが、本日の議論は、これぐらいにさせていただきたいと思います。本日も活発なご議論をいただきまして、まことにありがとうございました。大口信用供与等規制のあり方につきましては、本日、委員の皆様よりご指摘いただいた論点、さらには現在、調査中でございます海外の状況等も踏まえまして、主要な論点について、どのような選択肢が考えられるかにつき、事務局に、メリット、デメリットを含め、整理していただきたいと思っております。大口信用供与等規制の問題については、こうした事務局の調査及び整理作業の進捗も見て議論をすることといたしまして、次回は、外国銀行支店に対する規制について取り上げたいと考えております。

それでは、事務局のほうから連絡等させていただきます。お願いします。

○藤本信用制度参事官

次回の日程につきましては、皆様のご都合を踏まえながら、座長とも相談の上、別途ご連絡させていただきます。

以上でございます。

○岩原座長

どうもありがとうございました。それでは以上をもちまして、本日の会議を終了させていただきます。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企画課信用制度参事官室(内線3566)

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