金融審議会「金融システム安定等に資する銀行規制等の在り方に関するワーキング・グループ」(第4回)議事録

1.日時:

平成24年8月28日(火)10時00分~12時00分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 共用第一特別会議室

○藤本信用制度参事官

ワーキング・グループの開催に先立ちまして、お手元の資料の確認をさせていただきます。

事務局説明資料を1つ配付させていただいております。ご確認をお願いいたします。

○岩原座長

よろしいでしょうか。

それでは、ただいまより、金融システム安定等に資する銀行規制等の在り方に関するワーキング・グループ第4回会合を開催いたします。皆様、暑くて、大変お忙しいところ、お集まりいただきまして、まことにありがとうございます。

議事に先立ちまして、事務局に異動がございましたので、ご紹介していただきます。

○藤本信用制度参事官

紹介いたします。

総務企画局、三井参事官でございます。

○三井総務企画局参事官

三井です。よろしくお願いいたします。

○藤本信用制度参事官

監督局、小野参事官でございます。

○小野監督局参事官

小野でございます。よろしくお願いします。

○岩原座長

どうもありがとうございました。

それでは、本日の議事に移らせていただきます。

本日、第4回は、まず、前回第3回に引き続き外国銀行支店に対する規制につきまして、議論をしたいと存じます。

事務局から説明をお願いいたします。

○藤本信用制度参事官

まず、表紙をおめくりいただきたいと思います。外国銀行支店に対する規制についてでございます。

もう1枚、おめくりいただきます。2ページ目でございます。左上に論点を掲げております。参入形態と業務範囲。我が国への外国銀行の参入につきましては、リテール、ホールセールといったものの区別をしておりません。現地法人形態、支店形態、いずれの形態も認められております。参入形態の違いによる業務範囲規制は課しておりません。

一方で、WTOの協定におきましては、我が国は、支店形態での預金保険制度の加入のみを留保しているところでございます。ただし、信用秩序維持のためのプルーデンシャルな規制というものは妨げられないとされているところでございます。

右上、これまでの主な意見等ということでございます。現行規制で預金者保護を図ることが担保できないというのであれば、支店形態でリテール預金の受入れを認めない等の方向性で検討すべきという意見が出されております。

また、日本の金融システムの安定を図るという観点からは、リテール預金の受入れを現地法人形態のみで可能とするのが論理的には理想ではないかという意見が出されております。

一方で、支店形態で進出している外国銀行に現地法人化を求めることは、現実的には困難ではないかとされているところでございます。

備考でございますが、諸外国の状況でございます。例えば、現地法人に限定、支店形態を認めるものの預金の受入れを制限、支店形態でも預金保険制度の対象といったふうになっておりまして、外国銀行に対する規制は総じて厳格と言えるのではないかと考えております。

3ページ目でございます。左上、論点でございますが、自己資本比率規制・早期是正措置ということです。我が国の規制でございますけれども、法律・政令上は自己資本比率規制を支店に対しても求めることとされておりますが、自己資本比率基準が定められておらず、未適用ということでございます。早期是正措置についても同様でございます。

一方、外国保険会社に対しましては、ソルベンシーマージン比率と同様の規制が課されております。また、外国証券会社の在日支店についても同様の自己資本規制比率というものが課されております。

これまでの主な意見でございます。支店で受け入れる預金も預金保険の対象とするのではあれば、自己資本比率規制を適用すべきではないか。一方で、支店に自己資本比率規制を守らせることで、実際上どれだけ日本の預金者を守ることができるのか精査すべきではないかとされております。

諸外国では、調べたところ、支店単位で自己資本比率規制を課すのは一般的ではない模様ということでございます。私の調べた限りでは、タイではそういうものが導入されているということを幾つかの金融機関が開示をしているみたいでございます。引き続き調査中ということでございますが、あまり一般的ではないということでございます。

4ページ目でございます。左上、資産の国内保有規制・流動性規制ということでございます。我が国の規制でございますが、国内銀行・外国銀行支店に対して、預金者等の保護を図るため、資産のうち一定部分を国内において保有することを命令することができるという権限はございます。一方で、外国保険会社・外国証券会社の在日支店に対しましては、常日ごろから資産の国内保有が義務付けられている。

流動性規制につきましては、国内銀行・外銀支店、いずれも法令上そういうものは課していないというところでございます。

右上でございます。流動性規制、国内の資産保有規制もない中で、外国銀行が破綻したとき、どれだけ回収できるかといった問題があるのではないか。実際にどれぐらい国内に資産があるかは、国際的な破綻処理における交渉において、事実上、大きな力になるのではないか。本国の状況も見ながらモニタリングし、破綻時の早期対応により、預金を海外に流出させないようにするなどの監督強化が必要ではないか。外国銀行支店に対し、国内の資産保有を義務付けるのは、外国銀行のビジネスモデルを阻害し、利用者ニーズに対応できなくなる懸念があるのではないかということでございます。

参考でございますが、現在、20億円に達するまでは、利益の10分の1を準備金として計上することを義務付けておりまして、その額につきましては、資産の国内保有を義務付けているところでございます。これに対しましては、20億円という金額の是非も含めて実効的な規制ではないのではないかという意見が出されております。20億円といいますのは、国内の銀行の最低資本金の額ということで、これを一挙に積ませるというよりも、利益が上がる度に20億円に達するまで徐々に積み上げさせるというような趣旨の規制ではないかというふうに考えております。

5ページでございます。外国ではどうかといいますと、外銀支店に対しては、総負債の5%と、国内銀行の最低資本金のいずれか大きい額というものをほかの銀行預金口座に預け入れなければならないという規制がございます。カナダについても同様の規制でございます。フランス、ドイツは、銀行の最低資本金の資本金を持ち込むことが必要とされているところでございます。アメリカなどの総負債の5%といいますのは、アメリカの国内銀行に対してもレバレッジ比率規制というのがございまして、3%とか4%というのがございます。あるいは早期是正措置のトリガーとなるのが5%を切るといったようなこともございます。そういう国内規制等の関係もあるのではないかと思っていますが、引き続き調査中ということでございます。

6ページでございます。預金者等に対する情報提供義務でございます。我が国の現行規制は、預金者の保護に資するため、預金等に係る契約の内容その他預金者に参考となるべき情報の提供を義務付けております。これは国内銀行・外銀支店問わずでございます。具体的には、金利を表示しなさい、手数料一覧を掲示しなさい、備え置きなさい、預金保険の対象であるものを明示しなさいという義務付けをしております。

一方、外貨預金とか外銀支店の預金など預金保険の対象でないということを明示することは義務付けていないということでございます。

これまでの意見が右側でございます。預金者に対するリスク情報の開示をより徹底する必要がある。仮に他の規制について現状を維持するとしても、開示の強化はぜひ必要というのがあります。一方で、外銀支店は、既に自発的に預金保険の対象でない旨を記載した書面を交付しているのではないかといった意見が出されているところでございます。

7ページでございます。外国銀行支店の特別清算といいますか、清算の話でございます。我が国の現行規制でございますが、外銀支店は、免許の取消し等の事由に該当するときには、国内にある財産全部について清算をしなければならないという義務がかかっております。

一方で、会社法上の特別清算という仕組みがあるのでございますが、それを監督当局が申立てができるというようなことになっております。

一方で、外国銀行支店には更生特例法は適用されておりませんで、監督当局には更生手続、再生手続、破産手続の開始の申立権はないといった状況でございます。

右側でございます。日本にある財産について清算を行うという特別清算を中心に考えていくという考え方があるのであれば、それを今後も維持していくかどうか検討する必要があるということでございます。特別清算というのは、柔軟な手続である一方で、否認権がない、あるいは行き詰まると破産手続に移行せざるを得ないといった枠組みであるということに留意が必要だということです。

それから、民事再生、会社更生といった再生型、継続型の手続についても検討すべきという意見が出されております。また、一般の預金者がそういった外国での破産処理に参加するのは困難であるので、そのための対応は最低限必要であるという意見が出されています。

預金保険の義務付けを前提とすれば、更生特例法のように預金保険機構が外国の倒産手続においても預金者の手続代理権を行使する仕組みをつくることが考えられるとされております。

8ページ、引き続き右側に行きます。その続きでございますが、預金保険を義務付けないのであれば、これはどういうことかといいますと、預金保険機構が活躍しないのであればということですが、国内の倒産手続機関、管財人等の倒産手続を行う主体が、外国倒産手続に参加する、国内の債権者を代理して参加するといったクロスファイリング・システムが考えられる。

それから、国際協調主義をとれば、基本的には並行倒産、日本でも手続が進む、外国でも手続が進むといった中で、それぞれの手続が協力しながらいくというのが基本的な考え方ではないか、こういう延長線上で考えるのが適当ではないかという意見が出ております。

クロスボーダーで破綻が起きたときに、外国倒産手続の承認手続というのがあるわけでございますが、それでは不十分であって、国際的な管財人の取りまとめに当局として何らかの関与をしていく必要があるのではないかという意見が出されております。

それから、外国銀行の国内にある資産、それはいろいろな名義のものがあるわけでございます。支店名義、本店名義、他の支店名義がございますが、どこまで国内の手続に取り込むのかという論点があるということでございます。

それで、左側でございますが、参考までということで、8ページの左側ですが、外国保険会社、支店形態で出てきているものについての規律です。これは外銀支店と同じように免許の取消し等の事由に該当するときには、日本にある財産の全部について清算しなければならないという、同様な規律になっております。

注のところですが、特別清算の申立権というのはありません。これは会社法ができたときに銀行法のほうは対応したんですが、保険業法のほうは対応していない。これはどういうことかといいますと、次の丸になるんですけれども、会社法ができたころには既に更生特例法の手続というのが整備されておりまして、監督当局が更生手続、破産手続の開始の申立権があるというのが更生特例法で規定されておりまして、こういうものを中心に考えていたということではないかと思います。

そうした場合、保険契約者保護機構が更生手続、破産手続において保険契約者に係る権利を代理することとされておりまして、保険業法上の破綻処理手続において保険管理人となることもできるというふうにされているところでございます。

9ページに参ります。預金保険制度についての話でございます。外国銀行支店は、預金保険制度の対象外というふうになっております。平成11年の金融審答申におきましては、将来的な制度のあり方としては、預金保険の対象とすることは望ましいとしつつも、その前提として管轄権の問題ですとか、迅速な対応ができるかといったことも書かれております。引き続き検討を進めた上で結論を得ることが適当というふうに11年のときにされております。

右側でございます。少なくとも日本の国内銀行が付保対象になっているものと同じ商品については、外国銀行支店であっても付保対象とすべき。その場合は強制加入という意見がございます。

預金受入れは現地法人形態のみ(支店形態のリテール預金の受入れ禁止)とするのが論理的には理想であるが、現実的には困難であり、預金保険の対象とすることが適当。外銀支店の本体に日本の監督当局の規制が及ばないことから、例えば、国内の資産保有義務、持込資本規制等をセットで義務付ける必要がある。

外国銀行支店について、更生特例法において監督当局による申立権を認める場合には、外国銀行支店の預金を預金保険の対象とすることを考える必要がある。外国銀行支店の預金を預金保険の対象とする場合、決済性預金が全額保護とされていることに留意が必要。

まだ続きますが、10ページです。ビジネスモデルというのがさまざまなので、一律の規制というのは適当ではないのではないか。それから、預金保険を適用する趣旨として、預金者保護というのもあるんですが、それにとどまらず、そういうものがないと、預金を保護しないと銀行に預金が集まらず、金融が回っていかないといったような趣旨があるのであれば、日本の銀行と外国銀行を区別することも考えられるのではないかという意見でございます。

それから、預金保険の対象でないことを明示すればいいのではないか、取引を行った預金者をそれ以上保護する必要があるのだろうかという意見でございます。

預金保険機構が預金者に保険金を支払った後、預金保険機構はどうするのかという点も重要で、破綻処理手続ですとか、預金保険、事前の資本規制等、全体を考えないと結果的に機能しないのではないか。外国銀行支店の預金について、預金保険の加入を選択制とすることは考えられないか。

11ページでございますが、リテール預金を受け入れている場合は、例えば強制、そうでない場合は任意といった区別をして議論をする必要があるのではないか。外国銀行に対しビジネスモデル、リテール預金等によって違いを設けるのであれば、そういうことをするのであれば、邦銀も同様にしないと整合性がとれなくなるのではないか。現在はそういうふうにはされていない。

G-SIFIsのようなものについては預金保険の対象、それ以外は任意という考え方もあるのではないかという意見が出されています。

諸外国の制度でございますが、アメリカ、カナダは、外国銀行は、原則、支店形態で預金業務ができない。アメリカについてはグランド・ファーザーがある。国内に本店を有する銀行の国外に所在する支店の預金は、預金保険制度の対象外。

欧州でございますが、ちょっと場合分けが複雑なんですけれども、EEA内に本店を有する銀行がありますと。そのEEA内に所在する支店があります。そういうものは母国の預金保険の対象。EEA内に本店を有する銀行があります。EEA外に所在する支店の預金は対象外です。今度は、EEA外に本店を有する銀行があります。それがEEA内に所在する支店の預金は預金保険の対象ですということになっています。

参考ですが、前回、アメリカの州法銀行というのは、預金保険制度、FDICに任意加盟ではないのかとか、以前は欧州においては預金保護制度は任意加入適用だったのではないかという話がありました。これについて少し調査したところでございますが、確かにアメリカの国内銀行のうち、州法銀行は連邦法では加入義務はございません。ただ、各州法すべての州でございますが、現在は原則、連邦預金保険制度の加入を州のほうから義務付けている。これはどうしてかといいますと、各州で以前は預金保護制度があったんですが、なかなか州単位でやっていると維持が困難であったということのようでございます。

それから、欧州は1994年のEU預金保険指令で強制加入とされました。それ以前は任意加入というところもあったようでございます。ところが、健全性に問題がある銀行が加入を選択する。一方で、優良な銀行が預金保険料を払うのはどうかということで非加入を選択する。いわゆる逆選択というのが生じて強制加入にしたということでございます。

以上でございます。

○岩原座長

どうもありがとうございます。

それでは、議論に移りたいと思います。ただいまの事務局からのご説明に関しましてのご質問、ご意見がございましたら、お願いしたいと存じます。委員の皆様、どなたからでも結構でございますので、ご発言をお願いいたします。いかがでしょうか。ご質問、ご意見ございませんでしょうか。

鳥海さん。

○鳥海オブザーバー

国際銀行協会の鳥海でございます。私ども当然この諮問事項に重大な関心を持っておりまして、これまで3回のワーキング・グループのご議論を聞かせていただいているわけですけれども、よりワーキング・グループの皆様としてバランスのとれた方向性でご議論をしていただけるべく、2、3コメントを申し上げさせていただければと思っております。

まず1点目ですが、先般8月1日付の日経新聞でもごらんいただけたかと思うんですが、CFO調査という我が国の時価総額上位300社対象にアンケートをとったようですけれども、この300社の多くが外銀支店と取引があると。具体的には外貨建ての融資とか決済、それから海外の法務とか税務、M&Aの情報提供といったサービスでございます。

国内の市場が、成長が見込みにくい中で、日本経済が、日本の企業が海外の成長の成果を取り込んでいくという点で、外銀支店の果たす役割というのは少なくないのかなというふうに考えております。その意味で、外銀支店に対する規制というのが今回テーマになっておりますので、これを見てみますと、邦銀に比べて規制が、あるいは海外の規制に比べて外銀支店に対する規制が緩いのではないかというところが強調されているようにお聞きしたんですけれども、必ずしもそういう点ばかりではないと。逆に厳しい面というのもございまして、2つだけ申し上げますと、今申し上げましたようなクロスボーダーのバンキングサービスを提供するために銀行法上認可が必要だと、銀行免許に加えて認可が必要だという点がありますし、もう1つは、外銀支店については信託業務の兼営が認められていないという点がございます。邦銀は当然兼営が認められております。2つだけ申し上げさせていただきます。

次に預金です。話題になっている外銀支店に集まる預金についてなんですけれども、預金額の顧客タイプ別に分けますと、法人が約8割、個人が2割。逆に邦銀さんの場合は個人が7割、法人が3割です。法人顧客と申しましても、日本の主要企業も多く入っておりますし、そういった企業のグローバルなビジネスの展開のニーズから外銀支店との取引を選んでいただいているケースも多いと。したがいまして、何か金融知識が不十分なお客様から専ら預金を集めているというわけではないということは、ぜひご理解いただきたいなというふうに思います。

そういった点から預金保険制度について申し上げますと、私どもも、今ご説明がありましたとおり、諸外国の多くで外銀支店が保険に加入していることは承知しておりますし、顧客保護という観点からも重要な意義のある制度だということは重々承知しております。もっとも、当然ながら日本の預金保険制度というのは邦銀さんを、典型的に見られるように、実態としては非常に多くの小口の預金を抱える業態を念頭に置いた制度設計となっておりますので、これが外銀支店にそのまま適用されますと、当然ビジネスモデルの大きな見直しというのが余儀なくされるということになります。

例えば、大口の定期預金が主体の銀行ですと、保険が実際に掛かる正味の付保預金という部分が課金される対象預金に比べてかなり小さくなっておりますので、課金される保険料の負担感というのが無視できないものになるということでございます。ぜひそういった点も勘案していただきながら、ご議論していただければなというふうに思います。

最後に1点、今回の諮問事項が金融システムの安定に資する銀行法等の在り方というお題でございますので、そういった点から、今まで俎上に上っていない論点を1つだけ提起させていただきたいと思うんですが、これはすなわち昨年の東日本大震災の経験などを踏まえますと、広域被災の場合に、特に外資系の場合は関東近辺にしか拠点がないところが多うございますので、日本の重要なお客様をサポートするという意味で、香港とかシンガポールの拠点からこういったお客様のサポートが行えるということが非常に重要だなと考えておりまして、短期的な緊急避難的な措置で結構ですので、こういったサポートが問題なく行えるように業法上の明確化をぜひ希望したいなというふうに考えております。これは決して業界の我田引水的なあれではございませんで、申し上げましたとおり、お客様重視の一環として、ぜひそういったご対応を希望したいというふうに思っております。

以上でございます。

○岩原座長

ほかにいかがでしょうか。質問、ご意見ございませんか。

翁委員。その後、森委員、お願いします。

○翁委員

ご説明ありがとうございました。特に外銀支店の預金保険制度をどう考えるかというようなこととか、規制をどう考えるかというようなことはピースミールで議論するのではなくて、全体として関連づけて議論していくことが望ましいと思っております。やはり経営が悪化した金融機関に対しては、債務超過ぎりぎりの段階で早期処理を行い、かつ迅速に処理を行うという体制ができていれば、債権者のロスは少なくて済むはずですから、セーフティネットは基本的に大きくしなくて済むという考え方だと思います。その意味で、今、国際的な金融機関の破綻処理をどういうふうにしていくか。体制をどういうふうに実効的なものにしていくか。混乱を回避しながら破綻処理ができる体制を築いていくために、これから議論を国際的にもしていこうとしている状況でございますので、そうした議論とリンクさせながら、セーフティネットのあり方などについても議論していくという必要があるのではないかというふうに思っております。

○岩原座長

それでは、森委員、どうぞ。

○森委員

今、ちょうど国際銀行協会の方のご発言がありましたけれども、外国銀行も日本のマーケットにおいてある程度存在を示しているとともに、日本の金融マーケットにおいて一定の役割を果たしているということだと思います。そうしますと、現状の規制というのがあって、そこから著しく厳しい規制になる必要があるのかどうかという視点で検討してみなければならないのかなということだと思います。

それと、規制のあり方ですが、支店での規制と本国での規制、この連携をどうやって図っていくのかということがある意味での銀行自体の健全性の確保、あるいは銀行にかかわる金融システムの安定性の確保につながってくると考えていまして、これらの規制についていいますと、例えば自己資本規制、これは国内にも支店に対する自己資本規制の考え方が出ているわけですが、これはまだ適用されていないということで、適用されていないこと自体どうなのかなという問題点はあるのだろうと思いますが、これもほんとうに実効性があるのかどうかという面で見直すことが必要ですし、大口信用規制もそうですが、大口信用規制も支店だけで見ていると、これはなかなかわからないと。国内で預金を集めて、本支店勘定で海外で運用していて、そこにもしかしたら日本の企業もたくさんいるのかもしれませんし、そういった面もありますので、本国の監督との連携、これが非常に大事と考えております。

ただ、その中で、大事だなと思っているのが預金者保護、国内の債権者保護ですね。そこをどういうふうに整理をするのかということで、現状のままで果たして預金者が確実に保護できるのかどうか。そこを検討するべきだというふうに考えていまして、1つは、預金者保護でありますので、預金保険を義務付けるかどうかというのは次の段階でありまして、まず、破綻時にどういう処理が行われることになるのかどうかということをもう一度整理してみる必要があると思います。その際に、国内の預金者、あるいは債権者がいかに自己の債権を回収できるのかという問題ですから、これはなかなか海外に資産があるという状況では回収が十分にできない可能性があるという場合もあり、何回か議論が出ているところでありますけれども、国内の資産保有の規制ですね、そういったものについてはきちっと考えていく必要があるのではないかと考えています。

それと、破綻時の海外での破綻処理の手続への参加、これもどのように参加していくのか。この参加のために預金保険が必要だということであるのであれば、預金保険の義務化というのも検討することも考えられると考えております。やはり現状もあるわけでありますので、その中で、今後の金融システムの安定も考えた上で、銀行自体の健全性、それと金融システムの健全性、これはグローバルの健全性と国内での金融システムの安定ということがあると思いますが、そういった視点と最終的な預金者保護の視点でそれぞれを検討してみる必要があると考えています。

以上です。

○岩原座長

ほかにございますか。

小野委員、どうぞ。

○小野委員

2点コメントを申し上げます。1点目が預金者保護、あるいは預金者保護と絡めて外銀の参入形態をどう考えるかということですけれども、この点については、基本的には国内銀行の預金者と同程度の預金者保護の仕組みは必要だと考えております。その意味で参入形態についても、これは選択制で構わないのではないかと思うんですけれども、現地法人、あるいは支店形態のいずれの場合も預金保険制度の対象とするのが内外無差別という観点からもよいのではないのかというふうに考えております。

2点目として、預金者保護の仕組みを設けた上で、万が一外銀の破綻があったときに、その処理コストをだれがどう負担するのかという観点での議論ですが、1つの考え方としては、先ほど翁委員がおっしゃったように、早期是正措置の枠組みをきちんとつくって、時間をかけてリクイゼーションしていけば、ちゃんとプラスの資産が残るような形で破綻処理をするということが考えられます。その場合、特段厳しい資産の国内保有規制ですとか、流動性規制をかけて外銀、あるいは外銀に限らず金融機関のビジネスモデルに過分に立ち入る必要はないのかなという気がします。

ただ、他方で、早期介入によって債務超過を避けるような枠組みをつくるのがなかなか難しいと判断するのであれば、あとは、国と国との間での、処理コストをだれがどう分担するのかという問題になります。今までの事務局の話を伺っていますと、これは私が受けた印象ですので、間違っていたら訂正していただきたいんですけれども、国際的な議論の流れとしては、お互い協調して粛々とやれるような体制をつくりましょうと。ただ、他方で、現状、諸外国における規制がどうなっているかというと、そういう体制にはなっていなくて、万が一協調的な破綻処理の枠組みがうまくいかないときには、一定の破綻処理コストが賄えるだけの資産自分たちの国のなかに残るような形での規制枠組みが存在しているというふうに理解しました。ですので、そこは若干選択の問題があって、国際交渉の場で協調的な仕組みをつくりましょうということで合意できるのであれば、やはり過分に金融機関のビジネスモデルに立ち入る必要はないでしょうし、協調解がきちんと導けるかよくわからないということであれば、バックアップとして、一定程度の資産の国内保有規制、あるいは流動性に関する規制というのを諸外国並みに設けるという選択肢もあるのかなという気がいたします。

そういうふうに整理した上で、私自身としては、できるだけビジネスモデルを阻害するような形にはしたくないので、そういった方向での議論ができればよいと思うのですが、さはさりながら早期介入・早期処理が難しい、あるいは国際的な破綻処理の枠組みにおいて、残余財産の分配についてなかなか協調的な解が導けないということであれば、次善の解として何らかの資産保有規制をかけるのもやむを得ないのかなというふうに理解しております。

○岩原座長

家森委員、どうぞ。

○家森委員

幾つか、質問させていただきたいんですけれども、今、我が国に支店形態で進出されることを認可されるに当たっては、当然、母国の監督レベルというか、それぞれの外国の銀行監督について信頼があって対応されているということでしょうか。支店を認可するときに、外国の監督レベル、あるいは預金者保護のレベルについて、どのように評価をされながら決めておられるのかを教えていただきたいというのが第1点です。

2点目は、前回か、それ以前だったかもしれませんけれども、ご説明いただいた金融監督の国際的な考え方としては、あくまで本店のある母国が金融機関の全体を監督するのが大原則であるということだと理解しているんですけど、そうすると、外国支店についても、母国の預金保険に入れてもらえるように、国際的にそういう方向に持っていくというのが本来あるべき姿ではないのかなと素朴には思うんですけれども、そういうような議論は国際的には起こっていないのでしょうか。例えば、日本に来ている外国の支店について、母国の預金保険制度でカバーしてもらえるような制度は、一部はあるというふうに理解しているんですが、そういうことには国際的な協調としてはならないのでしょうか。先ほどの小野先生の国際的な議論のことに関するご質問にも関連しますが。

3点目は、この議論を始めるもともとのきっかけは、もちろん信用システムや金融システムの安定ですけれども、同時に、金融のイノベーションを促進するとか、これから新しい資金の流れを起こしていく、あるいは金融そのものが雇用の受け皿になるという点も大事な論点だというふうなことでありました。その観点では、同じような銀行をこれ以上増やしてもしようがないような気もするんですね。やはり特徴のある金融機関を日本市場においてどのように維持するかということを考えたい。私自身は、外国銀行については預金者にある程度責任をとっていただければいいのではないかというふうに思うんです。もちろん、金融システムに問題が出てくるほどの規模があれば、当然、今まで出ているような何らかの規制が必要であるというふうな感じを持っています。

以上です。

○岩原座長

ただいまのご質問について、藤本さん。

○藤本信用制度参事官

2番目の母国の監督というのが中心かということですけれども、それは基本的にはそうです。ただ、世界的な金融危機を踏まえて、母国、あるいは現地といったことをあまり強く言わず、両方が連携して危機対応などには当たりましょうという方向にあります。

それから、母国が大原則ということで、じゃあ、預金保険についてはどうかということなんですが、資料の11ページをごらんいただこうと思います。下の備考のところですが、アメリカ・カナダ、欧州ということで、これらも母国監督中心主義ということでは基本的に共通していると思うんですが、預金保険については、どうも国外に出ていっている支店の預金までは、アメリカの場合は、FDICは面倒見ないよというふうに言っている。欧州の場合もEEA内に本店があって、EEA外になると預金保険の対象外だというふうに言っている。日本の場合はどうかといいますと、日本の場合も同じで、どうも外に出ていっているところは対象外ということになっておりまして、必ずしも監督の母国主義というものと預金保険のカバレッジというものが対応している関係には今はありませんし、それを統一しようという方向で議論が進んでいるわけでもないという状況にあります。

第1番目の外国銀行に免許を与えるときに、母国でどのような監督をされているかということですが、多分そこは加味して、いろいろなことも加味していると思うんですが、免許を与えているということではないかと考えております。

○岩原座長

今、藤本さんからお答えいただいたとおりだと思います。バーゼルコンコルダットで金融監督は国際的にはそれぞれ母国主義をとっていますけれども、預金保険というのは、どちらかというと消費者保護的な視点が強いということで、海外支店の分を本国の預金保険の対象にしているという国はあまりない。日本もしていない、というようなことであります。

それから、さきほどから早期是正措置がうまく働けばという御議論がなされておりますけれども、今回のリーマン危機を受けてのアメリカ、その他海外での議論を見ていますと、早期是正措置、あるいは自己資本比率規制等、伝統的な金融監督の規制の手法はうまく機能しなかったという評価が割と多いようです。

ほかに何かありますでしょうか。

山本委員、どうぞ。

○山本委員

2点ご質問です。第1点は、論点(5)のところで、外国銀行支店に対する規制と外国保険会社に対する規制が異なると。外国保険会社については、その本体についてだと思いますが、更生特例法が適用されて、更生手続、再生手続、破産手続の申立権が認められているけれども、外国銀行支店については、それは認められていなくて、基本的には特別清算で扱うことに。その考え方の違い、規律の違いがどういう考え方の違いに基づいているのかということについて、おわかりの範囲で教えていただければというのが第1点です。

第2点は、海外に資産があって、日本で倒産手続を開始、海外でも倒産手続を開始しているときに、日本の預金者が外国の倒産手続に実際に参加することができれば、ある程度外国に財産があったとしても、国内預金者の保護というのは達成できるということになるんだと思うんですけれども、その前提として、こういう預金保険機構が代理するとか、国内の管財人等が代理するということが考えられるということだと思うんですけれども、ただ、その大前提としては、外国の手続で日本の預金者が手続に入ってくるということを認めてくれるということが必要で、かつ、その預金者をこういう人たちが代理するということも認めてくれるということが前提になると思うんですが、そういう前提が果たしてあるのかということです。外国の債権者を差別してはいけないというのは、外国の債権者だからという理由だけで差別してはいけないというのは、例えばUNCITRALの国際倒産のモデル法という国連がつくったモデル法がありますが、そのモデル法の中には規定をされていて、そして、それを採用している国、例えばアメリカの連邦倒産法はそれを採用していますけれども、の中ではそういう明示的な規律があると思うんですが、こういう金融機関の破綻のときにも同じような規律が妥当しているのか。それが諸外国において明確になっているのかどうか。

それから、こういう預金保険機構その他のものが、その預金者を代理して入ってくるという代理権みたいなものも尊重されているのか。日本法はクロスファイリングという規定を設けた。私が承知している限りでは、これはかなり国際的には異例なというか、画期的な規定で、明文でクロスファイリングの規定を設けている国というのは、その当時は私の記憶ではそんなになかった。ただ、運用では認めている国もあったと思いますけれども、そういうような基盤が整っているのかどうかということについて、もしおわかりであれば、おわかりの範囲でお教えいただければと思います。

○岩原座長

藤本さん、お願いします。

○藤本信用制度参事官

まず、第1点目の銀行と保険でどうして違うのかということについてです。これは前回の議論と少し関連するのですけれども、例えば更生特例法の対象に外国保険会社支店はなっている。しかし、外国銀行支店はなっていない。これはどうしてかという議論になります。どうも経緯的な話だったり担当者の考えだったりするのですが、預金保険機構との結び付きが外銀支店にはない。預金保険制度に入っているかどうかは別として、預金保険機構との結び付きが外国銀行支店のほうはありません。

一方、保険契約のほうは保険契約者保護機構に外国保険会社も強制的に加入することになっています。そこが分岐点になっていて、外国保険会社支店のほうについては更生特例法のほうの制度が整備されてきました。そもそも、昔々は国内にある財産を全部清算しなければいけないというのが銀行法にできました。その後、それをまねして保険業法にできました。保険業法のほうは更生特例法の手続の整備が進みました。外国保険会社についても保護機構に入っているからスムーズに進みました。外銀支店のほうは預金保険機構との関連もないからちょっとためらわれているうちに10何年たってしまった。こういうのが正直なところではないかと思いまして、この場でそういうことについてどうすべきかということをご議論いただくこともお願いしたいと思っているところです。

2番目です。UNCITRALといいますか、国際的なモデル法の世界でも金融機関の破綻についてはちょっと別物でもいいというふうに書いてあります。それは多分、アメリカなどでは金融機関の破綻については、連邦倒産法とは違うFDICのもとの手続、あるいは投資サービスも別の手続というように、一般の倒産手続とは別物になっているということを反映しているのではないかと思います。

ご質問のとおり、一般の倒産法の世界では我が国は非常に先進的で、外国でもそれは我が国に追いつくような協調的な仕組みが整ってきている段階だというふうに承知しております。そうした中で、金融機関の破綻処理について、一般倒産法が適用されない外国で今どのように考えられているのか、現状はどうなのかということがあります。また、後で議論になるかもしれませんけれども、国際的な破綻処理の協調の枠組みの中で、例えばFDICの手続と日本の手続との連携をどうしていくのかというのは、この場も含めて考えていかなければいけない課題の1つだというふうに考えております。

以上です。

○岩原座長

よろしいですか。

ほかにいかがでしょうか。非常に課題が多過ぎるというのが正直なところです。いかがでしょう。

どうぞ、松井さん。

○松井委員

今までのお話を伺っていて、事前の早期是正措置等を充実した場合に、ほかの規制を極力少なくすることができて、ビジネスの負担が減るというふうなお話があったんですけれども、ただ、そのようにしていくと、現在の法律の制度というのが、リテールを支店でやるというのを認めているという形なわけで、外銀がリテールに参入してこようと思ったときに、ほかの銀行との兼ね合いで不公平が生じるので、そういったことに関してはなるべくやらないでほしいというふうな形で、逆にビジネスモデルを拡大することを監督官庁が抑えるというようなことにならないかなというふうに思いまして、個人的には事後的に破綻した場合のことも考えて、預金保険等を入れるというような、そういう制度があるのは仕方がないのかなというふうに思うのですが、先ほど伺いましたとおり、外銀については、預保の負担が通常の保銀と随分違うということでしたので、もしそういったことになった場合に、合理的な負担になるような預保の制度の見直しといいますか、そういったことを考える必要があるのではないかというふうに個人的に印象を持ちました。

○岩原座長

何か事務局のほうからありますか、その点について。預保の負担、外銀について。

○藤本信用制度参事官

ほかの国の制度を見てみますと、そういう外銀支店と国内銀行で分けているとか、何か制度を区別しているとかというのは、今のところ見当たらないということでございます。一方、国内の制度については、各国、多様な制度がございまして、これが標準だというものがあるわけではありません。いろいろ金銭負担を伴う話でありますので、いろいろな調整のもと、各国の制度ができ上がっているというふうに理解しております。いただいたご意見は参考にしたいというふうに考えております。

○岩原座長

ほかにございますでしょうか。今までの御議論の中で、資産の国内保有の問題が出ましたが、銀行法29条の国内保有の規定というのは、別に外銀支店に限らず、国内銀行と共通の制度でありまして、この制度が実際どういうふうに運用されて、ほんとうに金融機関の破綻が起きたときに、どういう意味を持ってくるのかということにつき、検証が必要ではないかと思っています。そもそも国内保有しているということはどういうことか。どういうようにしてあれば、国内保有していると言えるのか、いろいろ見てもあまりよくわからないところがあって、とりわけ破綻処理をするようなぎりぎりの場面において、どれだけ意味を持つような制度になっているのか、制度にすることができるのかというのは、検証が必要ではないかと感じております。

特にございませんでしょうか。もしなければ、次のテーマに進みたいと思いますが。

それでは、次のテーマに進ませていただきたいと思います。

大変活発なご議論をいただきまして、ありがとうございました。外国銀行支店に対する規制につきましては、前回第3回及び今回第4回と委員の皆様よりご指摘いただいた論点を踏まえ、主要な論点について、どのような選択肢が考えられるのかにつき、事務局にメリット、デメリットを含め整理していただきたいと思います。

なお、外国銀行支店に対する規制の在り方に関しまして、金融庁は、海外における外国銀行支店形態と現地法人形態の双方に対する監督規制及び外国銀行の破綻法制の国際比較等の調査研究を行うため、金融研究センター特別研究員の公募を行いまして、当ワーキング・グループの森下委員がこの特別研究員に選任されたということでございます。この点、ご紹介申し上げます。よろしくお願いいたします。

引き続きまして、本日2つ目の議事に移らせていただきたいと思います。金融規制をめぐる国際的な議論につきまして、事務局から説明をお願いします。

○藤本信用制度参事官

資料の12ページでございます。これまでワーキング・グループにおきましては、大口信用供与規制についてご議論いただきました。それから、外国銀行支店に対する規制の在り方についてご議論をいただきました。その他の金融システム安定のために必要な措置といったものについても議論を行う必要があるというふうに考えております。

資料、ページを1枚おめくりいただきまして、13ページでございます。去年のカンヌ・サミットのコミュニケの、最初の行と次の行でございますけれども、我々はというのはサミット首脳ですけれども、いかなる金融機関も「大きすぎて潰せない」とはみなされないよう、また納税者が破綻処理のコストを負担することから保護されるよう、包括的な措置に合意した。この合意したというのが何に合意したかといいますと、FSBの主要な特性、Key Attributesといったものに合意したわけでございます。それが今年のロスカボス・サミットの6月の首脳宣言では明示的に引用されておりまして、我々は、いかなる銀行又はその他の金融機関も「大きすぎて潰せない」ことがないよう、我々の国内の破綻処理枠組みを、FSBの「実効的な破綻処理枠組みの主要な特性」と整合的なものとするとの我々のコミットメントを再確認するということです。主要な特性に合意した、自分の国の制度をこれと整合的なものにするということにコミットしたというふうに首脳レベルで宣言しております。

では、この主要な特性、Key Attributesというのはどういうものかというのが14ページ以降に書かれております。これは、第1回目の資料でも同様の資料は出しておりますが、2011年10月に合意されたものでございます。先般の金融危機を踏まえて、金融機関が万一破綻に至るような場合においても、秩序ある処理を可能とする枠組みを整備するという内容でございます。

目的というのがございまして、金融機関の破綻処理を可能とするということでございますが、以下を確保しながらということが書かれています。深刻な金融システムの混乱回避というのがあります。納税者負担の回避というのがございます。株主に損失を吸収させる、それから、担保で保護されない債権者に損失を吸収させるといったことを可能とするメカニズムを構築する。それで重要な経済的機能を確保するというのが目的となっています。

対象となる金融機関でございますが、あらゆるシステム上重要な金融機関に対して適用されるべきとされております。

当局の権限でございますが、広範な権限を有するべきとされておりまして、経営陣を選ぶ権限、解任する権限、管理する者の任命をする権限といった権限を有するべきとされております。それから、破綻した金融機関の財産の管理処分をする権限、ブリッジ金融機関を設立する権限、それから、ベイルインと申しまして、無担保債権をカットする、あるいは無担保債権を株式化するといった権限を有するべきとされております。

15ページでございます。デリバティブ契約の基本契約などでは、破綻処理の際に自動的に解約がなされて、ネッティングをするという条項が含まれているものがございます。そういったものを一時的に停止する権限を当局は持つべきであるとされております。それから、そういった処理のためになされる一時的な資金供給のコストが生じることがありますが、それは民間資金で賄われる預金保険、基金、業界からの事後徴収といったメカニズムが設けられるべきとされております。

また、当局による一時的な資金供給は、モラルハザードを防止するため、厳格な要件のもとでなされるべきとされております。

それから、クロスボーダーで協調しながら破綻処理を行う権限を有するべきとされております。

グローバルなシステム上重要な金融機関については、再建・処理計画を策定しなさいとなっております。これについては、点線の四角囲みでございますけれども、FSBは本年、この8月頭からピア・レビューというのを始めております。お互いに検証・評価するということでございます。対象となりますのは、現在ある各国の破綻処理の枠組み。それからもう1つは、改正を予定しているのであれば、その改正案というものを対象として評価がなされるということとされております。

では、我が国の制度はこれとの関係でどんな位置付けにあるかということが16ページ以降でございます。左側に書いていますのが、今申し上げたKey Attributes、主要な特性の内容ということでございます。右側を見ていただきますと、あえてどちらかといえば利用者保護に重点がある措置と、どちらかといえば金融システムの安定に重点がある措置というふうに分けております。預金取扱金融機関については定額保護制度というのがあります。それから金融システムの安定に重点ということであれば、金融危機対応措置というのがございます。内容は、資本増強・ペイオフコスト超の資金援助・国有化ということで、先ほど述べたKey Attributesに書いていることとはちょっとずれがある感じもいたします。枠の外でございますが、外銀支店は、何回も議論になっているところですが、預金保険制度の対象となっておりませんし、金融危機対応措置の対象にもなっていません。

保険会社について見ますと、保険契約者保護の仕組みはございますが、必ずしもシステミック・リスクを有するものというふうには考えられてこなかったことなのかもしれませんが、金融システム安定に重点を置いた措置というものはございません。

証券会社については、基本的に早期に退出して顧客財産をきちんと戻すといった仕組みはございますが、システミック・リスクといった観点からのものは定められていないということです。

持株会社、あるいはグループ会社、兄弟会社といったものについての仕組みというのは、今のところないという状況でございます。

今のが対象となる金融機関ということで、17ページで、今度は当局の権限ということです。経営陣を選ぶ権限、解任する権限といったようなものですが、預金取扱金融機関については金融整理管財人制度というものがございまして、代表権などが専属するということになっております。それから、ブリッジ金融機関の設立といったこともできることになっております。ベイルインといったものについては、これといったものはありませんが、当然のことながら、倒産手続、民事再生手続等において権利者の権利を変更することは可能となっています。

保険会社でございますが、預金取扱金融機関と同様な制度になっております。保険管理人制度というのは、更生特例法というのを最近使うものですから、最近はあまり利用されていないんですけれども、一応制度としてはございます。ブリッジ金融機関の設立ということはできることになっています。

証券会社については、こういった制度というのはない。破産、あるいは清算して顧客財産を返すというような志向ということでございます。持株会社、グループ会社についてもこうした制度はありません。

次の早期解約条項の発動の停止ということで、例えば、上の金融整理管財人というのを任命する、これが、いろいろな解釈はあると思うんですが、契約によってはデリバティブ取引の自動解約というのが発動して強制終了する。ネッティングされたものの受け渡しが行われるということになっているんですが、それをとめるというものについては、今、そういう法令は存在しません。先ほどの預金取扱金融機関の危機対応業務の中の資本増強とか国有化によっては早期解約条項を発動させないということもあるんですが、こうした資本増強、国有化というのは、必ずしもKey Attributesに書いてあることとはちょっと離れている感じもするということでもあります。

18ページに行きます。一時的な資金提供のコストをどうやって賄うかということで、預金取扱金融機関は、定額保護部分は預金保険料の事前徴収。それから危機対応業務、左下でございますけれども、それは金融機関から事後徴収ということになっています。これは債務の額に比例して事後徴収ということでございます。なお、そういう事後徴収をすると著しく信用秩序に支障を生じる場合には政府補助が可能となっております。

保険会社でございますが、保険契約者保護の観点からは保険会社から事前徴収ということになっておりまして、これも負担金の徴収が財務状況を悪化させて重大な支障を生じるという場合には、政府補助が可能とされております。これは、時限の措置で、これまで何回か延長されてきて、本年5年間延長され、29年までとされております。

証券会社につきましては、証券会社から事前徴収ということで、分別管理がなされていなかった証券会社について基金が1,000万円まで保護するものですけれども、事前徴収をしています。下のほうに横棒が入っているのは、そもそもそういう措置がないものですから、お金を徴収する仕組みもないと、そういうことです。

今のがKey Attributesを見た場合、我が国の制度はどんな位置付けにあるかということでございますが、19ページに諸外国ではどういうような状況にあるのでしょうという表がございます。米国がドッド・フランク法ということで、対象機関が銀行持株会社ですとか、FRBが監督するノンバンク──ノンバンクというのは銀行以外の金融機関という意味ですけれども、そういったものがございます。

FDICが管財人としていろいろな権限を持っていて、次の早期自動解約条項の発動の停止といったこともできるようになっています。これは実はドッド・フランク法の前からFDICに預金取扱金融機関に対しては与えられていた権限みたいでございます。費用負担については、ここに書いてありますように、大きなところ、銀行持株会社ですとか、FRB監督している金融機関から事後的にリスクベースで賦課すると。

英国、2009年銀行法とあります。これは、英国は預金取扱金融機関で混乱が起こったものですから、それを特別法、あるいはそれを一般法に直して、2009年銀行法になりまして、我が国の制度にようやく2009年で近づいたということですが、ただ、我が国を追い越している面もありまして、例えば早期自動解約条項の発動の停止といったようなものについては一応規定が置かれている。ただ、※で書いたように、EU指令とのそごがあるみたいで、今そごを解消しないとうまく使えないらしいんですけど、そういうのを調整すると使えるようになるといったようなことでございます。

EUは、FSBのKey Attributesを受けて、メンバーの国が協議の上、パブコメなども経て、今年の6月に指令案というのを出しました。これは相当部分、Key Attributesに沿ったものになっております。預金取扱金融機関、投資会社といったものが、あるいは持株会社といったものが対象になっております。当局の権限としても、Key Attributesに書いてあるようなことができるといったことになっております。早期自動解約条項発動の停止といった規定もアメリカと同様な規定が入れられております。費用負担についてもあります。

英国は最近、パブリックコメント手続を始めました。今は、2009年銀行法で、銀行とか銀行の親会社が対象になっています。なお、、我が国は銀行の持株会社や親会社は対象ではありません。英国では、現行では銀行・親会社を対象としているものをKey Attributesに従って、あるいはEUの指令案に従ってどこまで広げるのかについてのコンサルテーションを発しています。インベストメント・ファーム、投資会社ですかね、あるいは保険会社といったものに広げていくことについてパブコメ手続を開始しているところであります。そういう動きにあります。

これが外国の動きでございまして、次、20ページでございまして、我が国の制度はどのように評価されているかということで、IMFが今月公表した2つの文章がありまして、対日4条協議報告書、これは毎年やるものでございますが、FSSAとか、いきなり4文字熟語が出てきて恐縮ですが、これはFinancial System Stability Assessmentというものであります。アンダーラインを引いているところですが、システム上重要なノンバンクに関する秩序だった破綻処理を確保すべく、危機時の破綻処理枠組みの改善を探索すべき。これに我が国はコミットした。

IMF、FSAPレポートなんですが、これはFinancial Sector Assesment programということで、IMFの人が我が国にやってきて、ファイナンシャルセクターについて調べていくというプログラムでございます。そのレポートで、実効的な破綻処理枠組みは、銀行同様システム上重要なノンバンクにも拡張されるべきである。ノンバンクというのは銀行以外の金融機関という意味ですが、こうしたものに拡張されるべきという指摘がなされています。こうした中で、日本としてもこういうKey Attributesにかかわる国際的な動向にかんがみまして、諸外国の制度整備の進捗状況もにらみつつ、我が国の現行制度を改めて検証して、追加的な対応が必要か検討する必要があるというふうに考えておりまして、この場でご議論いただければというふうに考えております。

○岩原座長

どうもありがとうございました。

それでは、議論に移りたいと思います。ただいまの事務局説明に関しましてのご質問、ご意見をお願いしたいと思います。どなたからでも結構でございますので、ご発言をお願いします。

大崎委員、どうぞ。

○大崎委員

1点、まず質問をしたいんですが、このシステム上重要なノンバンクという話で、後ろのほうにつくっていただいている我が国の現行制度という表からしますと、事務局としては、当面、保険会社と、それから証券会社、要は第一種金融商品取引業者のうち有価証券関連業を行うものというような感じになるのかと思いますが、を検討の対象にするというようなお考えのように感じられるのですが、他方で、例えば過去LTCMというものが市場の、あるいは金融システムの大きな混乱につながりかけたというような経験も歴史的にあるわけで、システム上重要なという話をすると、投資運用業者であるとか、あるいはデリバティブ取引、有価証券関連業はやっていないんだけれども、デリバティブ取引を非常に活発に行っているものとか、というようなものも関係してくるのかなという気がするんですが、この辺、現時点で事務局としてどうお考えなのかというのをちょっと伺いたいんです。これが質問です。

質問のお答えを聞かないで自分の意見を言うのもちょっと変なんですが、この点について、私個人の意見を申し上げますと、今、投資運用業がシステム上重要かもしれないというようなことを言ったようにも聞こえるかもしれないんですが、私は、本体の破綻処理ということに限定して考えた場合に、そういう業者がほんとうにシステム上重大な影響を及ぼすのかどうかは、やや疑問に思っております。つまり、顧客勘定での取引の残りを破綻時にどう処理するのかというのが、そういった業者の場合、一番大きな問題になるのだろうと思っておりまして、その点については、例えば清算機関の機能強化、あるいは店頭でのOTC取引に対する清算機関の影響力を広げていくというようなことで対処できるのではないかなというふうに思っておりまして、業者そのものに対する顧客以外の債権者に影響が及んでシステミックに全体に問題が波及していくという観点から、破綻処理制度を特別に考えておかなきゃいけないという対象ではないのかなというふうに私は思っております。ただ、その辺どうお考えかお聞かせいただければと思います。

○岩原座長

それでは、藤本さん。

○藤本信用制度参事官

Key Attributes、主要な特性ではどういう書き方がされているかといいますと、システム上重要な金融機関を対象とするというふうに書かれております。つぶさに見てみますと、預金者というのが出てくるので、預金取扱金融機関は入るのかなというふうに思っていまして、あと、インシュランス・ポリシーホルダーというのも出てくるので、保険も入るのかなとか、インベスターというのも入ってくるので、証券会社みたいなものかな。そこら辺は主要な特性を見ていると出てきています。検討していくに当たって、先ほどもちょっと申し上げましたが、諸外国の制度整備の進捗状況もにらみつつということで、どこまでやるのかということはあると思います。理想的には非常に広くするというのが理想的だとの考え方もあると思いますが、一方で広くすれば調整コストといったものもまたかかるかもしれないということがあります。

ちなみに、19ページの各国で、諸外国の制度整備の進捗状況をちょっとにらんだところ、右端のヨーロッパでは預金取扱金融機関と投資会社というのが出てきていています。投資会社というのは証券会社とはちょっとずれがあるのかもしれません。保険会社というのは出てこないんですが、これは近々またパブコメといいますかコンサルテーションがあるというふうに聞いております。

英国は、先ほど言いましたように、これを一体銀行以外のものにどうやって広げていくかといったコンサルテーションペーパーが最近出ました。1つは、インベストメント・ファームというものに対するものと、それからインシュランスはどうするのか。それから、今言われましたけれども、清算集中なんかをしていきますと、今度は清算集中するところにまたリスクがたまるんじゃないかということで、そういうものも対象にするのか。何かぐるぐる回っているような気もしますが、そういう方向になっています。どうも当局の一応監督下にあるようなものについて対応するという方向にあるのではないかと思うのですが、他方、アメリカなどは新たに対象にしていくべきものは対象にしていくんだみたいなアプローチでございます。いずれにしろ諸外国をにらみつつ検討する必要はあるんですが、当面はEUなどの動きもにらみながら、預金取扱機関、それから有価証券業を行う金融商品取引業者と保険会社、あるいはその親といいますか、持株会社、兄弟会社というもの、まず、それから議論を出発するということが適切じゃないかなと考えたところでございます。

○岩原座長

三井さん、どうぞ。

○三井総務企画局参事官

説明、ちょっと補足させていただきます。システミック・リスク、実際金融システム上重大なトラブルが起きるというのは、銀行か、あるいは預金を受け入れているかどうかとか、保険契約をしているかどうかとかいう、そういう形式面はもちろん大変重要ですけれども、そこには限られないところも悩みがございます。保険会社であっても、インターコネクトネスというんでしょうか、相互依存性なり、ある意味でハブになっているような取引機関であったとか、それを取り巻く金融市場とか経済状況が非常に悪かったとか、それから流動性なり、資金の循環状況が非常に詰まっていたとか、複合的な要因で預金取扱金融機関でない金融機関であったとしても、金融システム、金融機関、あるいは金融市場全体に大きなパニックを起こしてしまったという、そういうことを踏まえて、あえて具体的に、保険会社ならばとか、日本でいう第一種金融商品取引業者のうち有価証券関連業者という個別の業態そのものに着目するというよりは、むしろもう少し広く、あるいは、あえて建設的に曖昧にしている部分があるかと思いますし、環境に依存性もある。環境依存性というんでしょうか、取り巻くマーケットの状況にも依存しているところがあるのではないかと推測しております。

ですから、この資料はある意味、初回でもありまして、オーバーシンプリフィケーションというんですか、あえて単純化して見やすい資料をつくらせていただきましたけれども、今後、議論を詰めていくに当たりましては、あえて銀行、保険会社、証券会社というカテゴリーにとらわれ過ぎることなく、むしろ国際的な金融市場の現実を皆様方からいただいて、いかに将来的ないろいろな危機に柔軟に、かつ、迅速に機動的に対応できるかという観点でご議論いただければありがたいと思います。

○岩原座長

アメリカのドッド・フランク法を見ますと、非常に広く適用対象の可能性を広げた上で、FSOC (Financial Stability Council Board) が裁量的にシステム上重要な金融機関を指定して、それについて特別の規制をかけるという行き方をしているわけですね。ただ、それについてもアメリカ国内では批判もあるようでありまして、学問的に言えば、例えばコー・バリュー・アット・リスク(CoVaR)ではかったインターコネクテッドネスで影響の大きさをはかって指定すべきだというような批判。さらには、そういうようなシステム上、単体の機関としてはシステム上重要と言えないようなものであっても、まさにさっき例に挙げられた、ヘッジファンドなんかを例に挙げられていますけれども、一つ一つとしては規模が小さく重要性が低いものであっても、全体として、いわば集団として行動することによって、変動が相関してシステマティックになり得るようなものもあり得るのであって、そういうものに対してはある種のマクロプルーデンス的な規制が必要なのではないかというような議論もされているようでありまして、ここはかなり広く柔軟に考えていく必要があるのかなと思います。これは私個人の感想でありますけれども、いろいろな議論が世界中で行われているようであります。

ほかにいかがでしょうか。

家森委員、どうぞ。

○家森委員

また質問なんですけれども、IMFの最後の指摘、20ページなんですが、この最後のところに銀行同様に拡張されるべきであるというふうに書いているということは、IMFから見ると、日本の銀行の破綻処理については合格で、残りのノンバンクについて何らかの対応をとれというふうに要請をしているということなのかというのが第1点目です。

第2点目は、14ページにある主要な特性のマル1の目的の中で、納税者負担を回避しなさいとあります。あるいは2つ目は、担保で保護されない債権者に損失を吸収させるようなメカニズムというのが指摘されています。すると、先ほど整理していただいた中でいうと、納税者が特別に負担するというような例が入っていることや、あるいは逆に劣後債なんかを強制化していませんというようなことが問題だということなのでしょうか。どういうところをこれから議論しようというふうに考えられているのか教えていただけますか。

○岩原座長

それじゃ、藤本さん、お願いします。

○藤本信用制度参事官

20ページのIMFのほうについてです。向こうから評価しにきているわけですから、我々がといいますか、我々の国際部門がといいますか、一致団結して、我が国の制度はいかにすばらしいかというのを説明したところ、いろいろなやりとりの上、一応銀行についてはある程度の評価をしてもらっているということだろうと思います。これがFSBのピア・レビューといった段階になったときには、これはKey Attributesとの整合性というものをチェックするという段階に入りますので、そこでも合格点がいただけるかどうかというのは、またちょっと別物だというふうに考えております。

Key Attributesでいろいろな合意をされているんですけれども、この場においては、今言及されたものも含めて、預金取扱金融機関についても対応することはあるのか、あるとしたらどうすべきかといったことをご議論いただければというふうに思っております。

○岩原座長

確かに日本の銀行破綻に対する法制というのは、平成10年のころの危機の経験もあり、預金保険法102条等、世界の中では比較的整備されているほうではないかと思います。それは率直に評価していいところではないでしょうか。ただ、それで完全かというと、なお改善の余地があり得るのではないか。まさに、この表の中でも、17ページの表以下、18ページ、19ページ等を見ても、なお、問題点が残っているところはある。尤も、早期自動解約条項の発動停止などは多分非常に議論のあるところだろうと思いますけど。

さらに言えば、14ページのところの国際的な議論の目的、最初マル1の目的として3つ並んでいますけれども、金融システムの混乱回避、納税者負担の回避、そしてベイルイン等、これ実は、矛盾した要求を含んでいるのですね。それをいかにうまく最も問題の少ない形の制度にしていくかというのは、これからブラッシュアップしていかなければならない課題だろうと思います。

ほかに何かございますでしょうか。

森下委員、どうぞ。

○森下委員

Key Attributesについて比較していただいた表で、一番右側の持株会社、グループ会社のところというのは、我が国との関連では特段今のところないということだと思うのですけれども、やはり過去の破綻事例などを見ていますと、グループとしていろいろな問題が発生しているということがあろうかと思いますので、今後の検討の中におきましては、なかなか法的に難しい部分があるとは思うのですけれども、できる範囲でグループの破綻処理に備えた何らかの可能な施策ということも検討していくのが重要ではないかと感じております。

以上でございます。

○岩原座長

翁委員、どうぞ。

○翁委員

私も今、森下委員と同じ意見を持っておりますが、質問なんですけれども、具体的に、今、欧米の検討の過程で、親会社、持株会社と、それから例えば子銀行との関係などについて、どういう議論が行われているか。特に国際的にグローバルに展開している銀行グループ、または証券会社グループが多い中で、どういうふうな議論が行われているのかについて、ちょっと教えていただければというふうに思いますが。

○岩原座長

藤本さん。

○藤本信用制度参事官

そもそも何で持株会社とか、親についてを対象にするのかというのがまずあります。それはどうもやはり子供である金融機関の資金調達に重要な役割を果たしているとか、あるいは契約上保証しているとか、そういうことでインターコネクテッドネスみたいなものがあるというふうな観点から、親というものを対象にすべきではないかという議論がなされております。

それから、EUなどではグループたるもの、いざというときにお互いに助け合いなさいといった義務を課すというような方向のことも指令案では出ております。お互いに助けるという義務を課すと、結び付きも更に強くなって、それはそれでリスクが拡大する方向にもなるとは思うんですけれども、まずグループの中で処理をしなさい、自力で処理をしなさいといったような議論があるようでございます。

ただ、実際に破綻処理での扱い、先ほど森下委員もおっしゃったように、破綻処理といった法的なものを使う場合には、法人格といったものがコアとならざるを得ない点もあるのかなというところも悩ましいところでありまして、各国とも悩んでいるみたいでございます。

○岩原座長

実際アメリカでは、FIREA (Financial Institutions Reform, Recovery andEnforcement Act of 1989)とか、FDICIA (Federal Deposit Insurance Corporation Improvement Act of 1991)という法律によってグループ金融機関の間での相互補助を法律上要求しています。そのような要求の適切さや憲法が禁じる私有財産の収用に該当しないかということが連邦最高裁等の判例で争われて、有効と認められた判決もございまして(MCorp Financial Inc. v. Board of Governors, 900 F.2d 852 (5th Cir.1995), rev'd in part on other grounds, 502 U. S. 32, 112 S. Ct. 459 (1991); Meriden Trust & Safe Deposit Co. v. FDIC, 62 F.3d 449 (2d Cir. 1995), aff'g 868 F. Supp.29 (D. Conn. 1994), cert. denied, 117 S. Ct.55 (1996))、世界的にそういう問題はあるわけです。さらに、当然グループで破綻したりすると、グループとしての破綻処理を倒産法上どうするか。これは山本委員のご専門のところですが、非常に大きい問題になると思います。

大崎委員、どうぞ。

○大崎委員

最初の段階でなるべく妙なことは言っておいたほうがいいのかなと思って、ちょっと妙な質問をさせていただきたいんですが、破綻した場合に金融システムに大きな影響を及ぼすというと、先ほどの議論にもちょっと出てきましたけれども、清算機関というのは、私はものすごく大きな影響を及ぼすのだろうなと思っておるんですが、日本の場合、清算機関についての規制というのは最低資本金があるぐらいですかね。ほとんど監督の細かいことは決まっていないような状況じゃないかと思うんですが、海外の清算機関の中には、免許上は銀行として設立されていて、清算機関的業務を営んでいるというのが、特に店頭取引なんかに関しては多いように私は思うんですけれども、清算機関の破綻を特に対象とた議論が国際的にあるのかどうかというのを教えていただきたいのと、私個人は清算機関に対する何らかの制度的な整備をする必要はあると思う一方で、清算機関について、例えばトゥー・ビッグ・トゥー・フェイルの発想はいかんのだとかいうような、Key Attributesの考え方を機械的に適用すると、とんでもない結果になるんじゃないかという気がしています。正直なところ、中央銀行と清算機関は、これは金融システムインフラそのものだから、そこに参加している人たちとは区別して扱うべきなんじゃないのかと思っておるんですが、その辺について、何か感触を教えていただければと思います。

○岩原座長

藤本さん、どうぞ。

○藤本信用制度参事官

Key Attributesの中で、清算機関についても対象となるようなことが少し言及されているんですが、注書きで清算機関についてはもっとよくいろいろ考える必要があるということで別扱いにされていまして、別途国際的に議論が行われているようであります。

リーマン・ショックの後、我が国の清算機関の制度がほんとうに強権なものかどうかという議論もありましたが、それを関係者の努力によって体制面の充実ですとか、強化・整備が行われてきているというふうに認識しております。そういう状態にありまして、ほかの各国のものを見ていただければわかりますが、まだ清算機関まで具体案まで至っていないというのが正直なところではないかと思います。

○岩原座長

海外での議論を見ますと、例えば、ドッド・フランク法などのように、デリバティブ取引なども清算機関を経由させるようにするということは、結果的に清算機関自体がシステム上重要な機関になってしまって、それの破綻したときの影響が非常に深刻になるのではないかとか、かなり議論されているようであります。日本も清算機関として考えれば、まず銀行の資金決済の機関がそうでありまして、それについては資金決済法で監督規定を入れたわけでありまして、そういう問題意識は既にあるわけです。当然のことながら、そういう清算機関、決済機関に、結果的にリスクが集中するとなる場合は、それに対するリスクの手当てということも当然考えていく必要があると個人的には考えております。

ほかにありますでしょうか。

小野委員、どうぞ。

○小野委員

1点、不勉強な質問で恐縮なんですけれど、先ほどシステム上重要な預金取扱金融機関以外の金融機関のカバレッジがどうなのかというご議論があったんですけれども、FSB等の議論で、システム上重要なノンバンクについて、具体的にはどのような議論が進められているのでしょうか。あるいはどういう特性を持ったものをシステム上重要なノンバンクだというふうに定義しているのでしょうか。

○岩原座長

藤本さん、どうぞ。

○藤本信用制度参事官

そこは具体的に、特に国内のシステム上重要な金融機関について、どういうものがシステム上重要だということについて具体的なクライテリアが示されているわけではありません。破綻した場合に、システミカリにシグニフィカントかということが書いてあるだけです。そこはそれで置いておいて、仮にそういうものが存在したときにどうやって処理していきましょうかということのほうにエネルギーを費やして、Key Attributesなどが取りまとめられたということだろうと思います。そこはやはり、各国のいろいろな法制度ですとか、ビジネスモデルですとかがあり、統一的なものがKey Attributesで示されているわけではないというふうに認識しています。

○岩原座長

まず、ノンバンクの方の定義を、参考までにご紹介しますと、ドッド・フランク法の場合ですと、連結ベースの収益の85%以上が銀行持株会社法で定める、銀行持株会社やその子会社が営むことができる金融の性質を持つ業務であること、または連結ベースの総資産の85%が同業務に関連しているものであって、銀行や銀行持株会社以外のものをノンバンク金融会社と定義しているようであります。かなり広い定義ですね。「システム上重要」の方の定義は、「それが深刻な財務困難に陥った場合、又はその性質、業務範囲、規模、集中度、相関度、アメリカのノンバンク金融会社としての活動の複雑さからアメリカの金融の安定性への脅威となりうる」というように規定されています。

○小野委員

間違っていたら訂正していただきたいんですけど。銀行については、グローバルに重要な金融機関というのはこういう特性を持っていて、既に指定もされていると思います。それから、ドメスティカルに、国内において重要な金融機関というのもFSBの場で議論がされているという理解でいます。それと同じような意味でファイナンシャル・インスティテューションズというふうにカバレッジを銀行から広げたときの議論というのは進められているのでしょうか。

○岩原座長

藤本さん。

○藤本信用制度参事官

SIFIsの前にGがつくというものですね。

○小野委員

ええ。

○藤本信用制度参事官

それは銀行についてはその作業が一応終わっているんですが、ほかのものについては作業が継続中だというふうに聞いております。ほかのものについて何かそういうものがないかというと、そういうわけではないということだと思います。

○岩原座長

ほかにいかがでしょうか。まさに世界中で今議論が始まったところの問題で、混沌としている状態ですけれども、いかがでしょうか。

小出委員、どうぞ。

○小出委員

両方とも感想なんですけども、1つ目は、先ほど藤本参事官からもお話がありましたとおり、アメリカではFDICは銀行に対してはもともと破産管財人としての作業をするという権限を持っておりまして、それがドッド・フランク法で銀行持株会社等にも広げられたという経緯があります。それぞれの考え方はもちろん共通する部分があるとは思うんですけれども、もともとあった、銀行に対する、つまり、預金取扱金融機関に対する破産管財人としての機能というのは基本的には預金保険に伴う国民の税金負担というようなものを最小限にするためのものということで、ある意味、ミクロプルーデンスを考えた機能であるということだと思いますが、新しくできたドッド・フランク法のもとで考えられているものというのは、システム上重要な金融機関の破産処理がきちんと行われないと金融システム全体に影響するため、破産管財人としての機能をFDICに任せるということで、マクロプルーデンスを考えた機能を持っているということであると思います。

日本の既に現在ある金融整理管財人の制度というものは、これはどちらなのかというと、もちろん両方考えられているのだと思いますけれども、あるいは今回アメリカでなされたように、もう少し金融システムの維持といったところに重点を持って見直すべきところがある可能性はあると思います。そういった意味では、銀行に限らず、銀行持株会社や、証券会社、保険会社も含めたようなシステム上重要な金融機関について総合的に破綻処理の検討をすることは必要だろうと思います。それが1点でございます。

もう1つは、これは次回以降なのかもしれませんけれども、今、Key Attributesのところをそれぞれいろいろな制度を紹介していただきましたけれども、14ページ、15ページのところを見ますと、マル1からマル8まであるわけでして、今回はマル5のところまでご紹介いただきましたけれども、おそらくマル6マル7マル8あたりのところというのもあわせて議論していく必要があるだろうと思います。特にマル7のところですけれども、再建処理計画の策定を求めるということについては、アメリカでもリビング・ウィルの提出の義務付けといったあたりのところで、かなり賛否両論いろいろあるところだと思いますので、事後的な破綻処理のしくみの話だけでなくて、こうした事前のところでいかなる制度を置くかというところも含めて議論が必要だろうというかと思います。次回以降、議論があるかと思います。

○岩原座長

ほかにございますでしょうか。

吉野さん、どうぞ。

○吉野金融審議会会長

少しご質問させて、14ページの納税者の負担の回避と、マル1の目的のところで、先ほど岩原先生から3つ、少し矛盾するところもあるというお話だったわけですけれども、納税者の負担の回避の場合も、例えば預保債のようなものを発行して現在の負担を減らして、将来にオーバーラップしながら長い時間をかけて処理するという、そういうことも1つの回避方法であると思いますので、現時点でのコストだけではないと思います。

それから、2番目はご質問ですけれども、日本の場合には、銀行の場合、いろいろ破綻した後、民事とか刑事で経営責任というのが、追及があったと思うんですが、グローバルな金融機関の場合にも相手国に対してそういう責任を追及することは今可能なのでしょうか。

○岩原座長

藤本さん。

○藤本信用制度参事官

まず、前者のほうなんですけれども、19ページの各国を見てみますと、当局の権限ということで一応資金繰りのようなものについては中央銀行ですとか、政府とかが資金繰りなどを見るというみたいなことは今ビルトインされているようではあります。刑事責任についてどうかということについて、Key Attributesには経営陣を解任して、高い報酬をもらっていたら、それを取り戻すべきだみたいな規律はあるんですけれども、刑事責任について、何か世界中追いかけていくというようなことについて具体的に議論はされていないんじゃないかというふうに思います。それは一般的に犯罪の捜査の共助ですとか、そういった枠組みの中で行われていくべきものじゃないかと思っております。

○岩原座長

よろしいでしょうか。吉野先生。

最初のこういう費用の負担の問題も非常に深刻な問題で、ドッド・フランク法はこの法律ができることによって、これから納税者に一切負担をさせないことになるであろうとオバマ大統領がそういうふうに宣言したのですけれども、それについて、ある論文は、これは記念碑的な政治的詐欺に終わるであろうというコメントを論文に書いています。日本法上は預金保険法の42条・42条の2・125条126条等によって日本銀行からの借り入れや政府の補助等の手段も用意しています。そういう意味では、最終的には納税者の負担もあり得るという前提で日本の預金保険法はできていると思います。それは平成10年のときの金融危機の非常に苦い経験がそういう負担も必要だという国民の理解となって、そういう規定になっているのだろうと思います。アメリカの論文等を見ましても、やはり公的資金による手当ては必要だろうという学者の意見は多いように思います。ただ、一方で、その公的資金による手当ての負担があまりにも大きくなると、アイスランドみたいに国自体の財政が破綻し、通貨が信用を失うというようなことになりかねないので、やはりシステム上重要な機関の破綻を事前に防ぐための手当ては十分やらなければいけないという議論がされているようであります。

ほかに何かございますでしょうか。

大崎委員、どうぞ。

○大崎委員

これ、質問で、今すぐわからなくても、後で教えていただければと思いますが、アメリカでFRBが監督しているものの破綻については枠組みが整備されているわけですが、例えば最近の事例でMFグローバルというのがありましたよね。あれは、私の記憶ではFRB監督じゃなかったんじゃないかと思うんですが、一時的とはいえ、市場では相当いろいろな際どいことが言われたわけですね。あれが破綻したことによってですね。その辺、アメリカで何か最近変わってきているのかというのを、もしご存じであれば教えていただきたいんですね。

というのは、日本でこれから議論していく場合に、さっきちょっと例えば有価証券関連業を1つターゲットに考えたらいいんじゃないか。私もそう思うんですが、そうすると、いわゆる地場証券会社とかまで全部入るのかみたいなことがあるわけで、そうすると、それはシステム上重要かどうかで区切るんだという議論になるんでしょうけど、そうすると、一体何を基準にシステム上重要とそうでないものを区別するのかという難しい問題が出てくるので、アメリカはそういうことを気にされているのかどうかというのがちょっと気になったものですから。

○岩原座長

藤本さん。

○藤本信用制度参事官

MFグローバル、個別の金融機関のことを言うのは適切かどうかという点はありますが、アメリカでこれがどう扱われているかについては、残念ながら承知しておりません。イギリスではMFグローバルを処理するときに、19ページの2009年銀行法の兄弟として、我が国でいうと破算・清算処理のなかで、顧客財産をきっちり返すという仕組みがようやく作られてきたので、この適用第1号だとかといって自慢していたということは承知しております。我々が少なくとも企画部門として知っている情報は、そこでとまっています。顧客財産を返すというところでそれがちゃんとなされているどうかも私は知りませんけれども、顧客財産の返還という内容・水準の議論がなされたようだということでございます。

○岩原座長

小出委員、どうぞ。

○小出委員

先ほど岩原先生がおっしゃられたことに賛成のコメントをさせていただきます。今回のKey Attributesをよく見ますと、納税者負担の回避という言葉がありますけれども、やはりこれを完全に回避するということは現実的には難しいであろう。特にある単独の金融機関だけが破綻するときであれば、納税者に負担を課さずにたとえば業界内の負担だけで処理することもできなくはないと思いますけれども、今回の世界的な金融危機などを見ますと、すべての金融機関が破綻に瀕するような状況があり得ないわけではないので、その場合について、納税者負担を回避して処理することはおそらく不可能であろう。これはアメリカでも言われていることだというのは、そのとおりだろうというふうに思います。したがいまして、もちろん納税者負担の最小化という観点で次善の策を講じることは重要かと思いますけれども、回避までを念頭に置いて議論することは難しいだろうというふうに思います。

以上です。

○岩原座長

ほかにございますでしょうか。よろしいですか。

松井さん、どうぞ。

○松井委員

すみません、とてもくだらない話なんですが、Key Attributesで解任して報酬を取り戻すべきという議論がされているというふうに言われたので、少し気になったのですが、これは金融整理管財人が民事訴訟することを義務付けている。そういうことになるのでしょうか。

○藤本信用制度参事官

我が国の現行の制度に当てはめてみると、そういうことで対応できる部分もあるのかなということではあるということです。

○岩原座長

先ほど吉野部会長からご指摘のあった点にもかかわりますけれども、そういうことも問題になってくると。ただ、国際的にそれをやるというのはきわめて困難なことだろうと思いますが。よろしいでしょうか。

本日は大変活発なご議論をいただきまして、大変ありがとうございました。そろそろ時間も参りますので、本日の審議は終了させていただきたいと思います。

本日の金融規制をめぐる国際的な議論に関しまして、さまざまなご議論をいただいたことを踏まえまして、次回、第5回は金融規制をめぐる国際的な議論を踏まえた我が国の制度の在り方につきまして、引き続きご議論をいただくことを考えております。

それでは、事務局のほうから連絡等がございましたら、お願い申し上げます。

○藤本信用制度参事官

次回の日程につきましては、皆様のご都合を踏まえながら、座長と相談の上、別途ご案内させていただきます。

事務局からは、以上でございます。

○岩原座長

どうもありがとうございます。

それでは、以上をもちまして本日の会議を終了させていただきます。

どうもありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企画課信用制度参事官室(内線3566)

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