金融審議会「金融システム安定等に資する銀行規制等の在り方に関するワーキング・グループ」(第5回)議事録

1.日時:

平成24年9月10日(月)14時30分~16時30分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 共用第一特別会議室

○藤本信用制度参事官

ワーキング・グループの開催に先立ちまして、お手元の資料の確認をさせていただきます。

資料といたしまして、事務局説明資料と参考資料を配付させていただいております。

以上です。

○岩原座長

それでは、ただいまより、第5回会合を開催いたします。皆様お忙しいところ、なおかつお暑いところお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。

議事に先立ちまして、オブザーバーに異動がございましたので、事務局より紹介させていただきます。

○藤本信用制度参事官

今回から、日本証券業協会、生命保険協会、日本損害保険協会からオブザーバーとして参加していただくことになりましたので紹介させていただきます。

○岩原座長

どうもありがとうございました。

それでは、本日の議事に移らせていただきます。本日、第5回は、まず前回第4回に引き続き、金融機関の破綻処理の枠組みにつきまして、議論をいたしたいと存じます。事務局から、金融機関の破綻処理の枠組みに関する論点のご説明をお願いいたします。

○藤本信用制度参事官

事務局説明資料と書かれている資料の表紙をおめくりいただきたいと思います。論点(1)というものでございます。1つの紙の上3分の1に、FSBの主要な特性における内容を簡単に書いております。真ん中あたりに米国、英国、欧州での制度、あるいは提案されている制度というものを書いています。下のほうに参考ということで、基本的には我が国の預金保険制度における金融危機対応措置の内容について、概略を書いているというものでございます。

では、まず1ページ目でございます。主要な特性の目的でございます。以下を確保しながら金融機関を破綻処理することを可能とする。1番目が深刻な金融システムの混乱回避。納税者負担の回避。そして、3番目に株主に損失を吸収させる、担保で保護されない債権者に損失を吸収されるということを可能とするメカニズムを通じた重要な経済的機能の確保ということです。米国では、秩序だった破綻処理を可能とする制度を整備したドッド・フランク法が既に施行されております。英国では、2009年銀行法において実効的な破綻処理制度が整備されております。英国ではユニバーサルバンキング制の下であるということでございます。欧州では、本年6月にディレクティブ案が公表されておりまして、その対象は預金取扱金融機関・投資会社となっております。

次に参考のほうでございます。我が国の制度でございますが、預金取扱金融機関については、定額保護、金融整理管財人の制度、承継銀行制度(ブリッジバンク制度)に加え、預金保険法第102条において、次のようになっております。内閣総理大臣は金融危機対応措置、3つございますが、これが講じられなければ、我が国の信用秩序の維持又は当該金融機関が業務を行っている地域の信用秩序の維持に極めて重大な支障が生じるおそれがあると認めるときは、金融危機対応会議の議を経て、これは総理をヘッドとする会議でございますが、当該措置を講ずる必要がある旨の認定を行うことができるとされております。2行目にあります、金融危機対応措置といいますのは、括弧の中にございますが、資本増強・ペイオフコスト超の資金援助、国有化といった措置でございます。

お手元の参考資料という表紙がついているものを1枚めくっていただきますと、預金保険法の金融危機対応措置制度の概略が説明されております。左上に金融危機対応会議には、メンバーは誰かということが書いてありまして、その矢印から下に行っているところが、私が先ほど説明したものでございます。過少資本と債務超過に大きく分かれておりまして、過少資本ということであれば、1号措置、資本増強というものが行われる。債務超過ということであれば、ペイオフコストを超える額の資金援助を行って、預金を全額保護する。第2号措置でございます。これでは、システミックリスクを回避できない場合は、一時国有化という第3号措置と言われているものが発動される。1号措置は今までりそな銀行、それから、第3号措置、一時国有化は足利銀行に適用されているということございます。後から出てきますが、費用は金融機関の負担ということで、金融機関で負担できない場合は政府補助が可能ということです。

次の2ページ目を見ますと、左側に年が書いてあります。平成10年のときに長銀、日債銀の特別公的管理ということが書いてあります。その、右側に早期健全化法というのが資本増強制度の整備。金融再生法とあります。金融整理管財人制度ですとか、特別公的管理制度の整備ということで、時限の制度が設けられました。それが、平成12年に預金保険法の改正でこういった制度が恒久化されているということでございます。この1ページ目の金融危機対応制度もごらんになりながら説明を聞いていただければと思います。

次に2ページ目でございます。こちらの事務局説明資料のほうです。論点(2)。主要な特性における指摘。対象となる金融機関。主要な特性を備えた破綻処理制度は、あらゆるシステム上重要な金融機関に対し適用される。これについては、どのような範囲の金融機関を対象に秩序だった処理の枠組みを構築することが適当か。システム上の重要性は我が国のみならず国際的な観点から判断すべきか。国内外の金融市場や経済情勢への動向、金融機関相互の資金関係などの複合的な要因により、システム上重要な金融機関の範囲は変化するのではないかといった論点を上げております。米国でございますが、銀行持株会社、FRB監督ノンバンク金融会社、FRBが本源的金融業務等と判断した業務を支配的に行う会社等、これらの子会社が対象になっています。銀行などは、預金保険制度が適用されるということでございます。少し直した上で適用されるということでございます。英国でございますが、銀行、銀行の親会社等ということです。英国は特別な破綻処理制度の対象を拡大するかどうか、どういうところに拡大するか、投資会社・保険会社・清算機関にまで拡大するかどうかについて市中協議を実施しているところでございます。

欧州の指令案です。対象は預金取扱金融機関、投資会社、それから、これらの持株会社及びその金融子会社、EU域外に本店のある預金取扱金融機関・投資会社というふうになっております。※のところですが、欧州では一般に、ユニバーサルバンク制度が採られている。それから、英国の市中協議文書を読んでみたところ、欧州委員会というのは、今年の後半に保険会社等のノンバンク向けの破綻処理枠組みについて市中協議を行う予定ということでございます。下の参考ということで、我が国の金融危機対応措置の対象金融機関には、銀行、長信銀、信金、信組、労金、信金連合会、信組連合会、労金連合会、商中が含まれるということでございます。あとは、農水産業協同組合にも同様の制度があるということでございます。

3ページ目です。論点の(3)でございます。当局の権限。破綻処理を行う当局は以下を行う権限を含む、広範な権限を有するべき。経営陣の選解任、破綻金融機関を管理する者の任命。破綻金融機関の財産の管理処分(契約の解除・資産の売却等)。ブリッジ金融機関の設立、ベイルイン(無担保債券のカットまたは株式化)の実施等。金融機関がもはや存続が可能でない(viable)でない、またはもはや存続は可能でないと見込まれるときであって、かつ存続が可能となる合理的な見込みがないときに、破綻処理が開始されるべきということが書いてあります。

これについて、秩序だった処理のために、具体的にどのような措置が必要か(例えば、財産の管理処分、ブリッジ金融機関、流動性供給、資金援助等の仕組み)。秩序だった処理はどのようなときに開始することが適当か。何らかの破綻処理手続等の特例を設ける必要があるか(例えば、債権者による倒産手続の申し立てへの対応とか、強制執行等への対応)ということです。

米国ではFDICは管財人として、合併、資産・負債の移転、対象機関への貸付け等の措置をとることが可能ということであります。括弧書きになっていますのは、どういう時に発動するかということです。当該金融機関がデフォルトまたはデフォルトの危機にあること、かつ他の手続により処理される場合には米国の金融安定に深刻な影響を及ぼすこと等の要件を満たされる場合に発動ということです。一般の倒産手続によると金融安定上問題があるといったことを示しているようでございます。

4ページ目でございます。英国でございますが、事業の民間部門・ブリッジバンクへの移管、あるいは一時国有化等ということで銀行の親会社が一時国有化のみ措置可能。括弧書きの中ですが、当該金融機関が免許付与の要件を充足していないか、充足しない見込みであること、かつ、英国金融システムの安定のためには当該措置をとることが必要であること等の要件が満たされる場合に発動。

欧州ですが、民間部門への事業譲渡、ブリッジ金融機関への事業譲渡。それから、資産運用会社への、ビークルといったものですが、資産運用ビークルへの不良資産への移転、債務の削減・株式化(ベイルイン)、対象機関への貸付け等。事前徴収した資金では不足が生じるときは中央銀行・他国の基金から借り入れる。トリガーといいますか、どういうときに発動されるかということですが、当該金融機関が破綻しているか破綻する可能性が高いこと、かつ、破綻処理権限の行使が公益の観点から必要であること等の要件が満たされる場合に発動ということでございます。

我が国の制度ですが、金融危機対措置を講ずる場合には、資本増強時には経営陣が引き続き業務執行等を維持するということです。ただ、経営改善計画の中で経営責任の明確化、責任ある経営体制の確立のための方策が必要とされています。それから、2号措置というペイオフコスト超の資金援助時には金融整理管財人が業務執行等を掌握する。金融整理管財人が経営者の責任を追及する措置を講ずる。国有化時には、預金保険機構が株主権を行使する。金融機関が、経営者の責任を追及する措置を講ずるということになっています。発動要件ですが、こうした措置が講じられなければ、我が国の信用秩序の維持、あるいは当該金融機関が業務を行っている地域の信用秩序の維持に極めて重要な影響があるおそれがあると認められ、かつ、1号措置の場合には債務超過ではない、破綻金融機関ではないということです。破綻金融機関の定義というのは、この預金の払い戻しを停止、または停止のおそれがあるということです。ペイオフコスト超の資金援助の場合は、債務超過、または破綻金融機関であること、国有化の場合は債務超過かつ、破綻金融機関であるということでございます。

5ページ目です。論点(4)ということで、早期解約条項の発動の停止、破綻処理を行う当局は、デリバティブ契約等の早期解約条項の発動を一時的に(例えば、2営業日以内)停止する権限を有するべき。この主要な特性には幾つか、アネックスといいますか、付属文書がついておりますが、SIFIsの場合、破綻処理の開始と同時に大量の金融契約が解除されれば、無秩序に契約終了が殺到し、市場にさらなる不安定化をもたらしかねず、持続性を実現することを目指している破綻処理措置の実施を妨げる旨が指摘されています。これに対しては、金融機関が当事者となっている多数のデリバティブ契約等が一斉に解約されると、金融市場の混乱につながる可能性があるが、これについてどのような手当てが考えられるか。

米国では、FDICが管財人として任命された翌営業日の午後5時まで、金曜日に始まると月曜日の午後5時までということです。また、契約の移転後は、解約・清算・ネッティングの権利行使は不可という規定があります。英国は移管・一時国有化の命令に、デフォルト条項の発動の判断は当該措置がなかったものとみなして行うものを定めることが可能というような、擬制のような規定振りになっています。欧州ですけれども、当局は早期解約権の行使を短時間禁止することが可能というふうな規定があります。

参考ですが、我が国の金融危機対応措置を講ずる場合には、資本増強時や国有化時には、早期解約条項を発動させずに同措置を講ずることは可能である一方、ペイオフコスト超の資金援助時には、早期解約条項を発動させることになるのかなということでございます。※ですが、早期解約条項については、一括清算法・破産法などの法律におきまして、こういう条項は有効であるとされつつ、その法的効果、ネッティングをして、清算しなさいといった規定があります。

6ページ目です。論点(5)で費用負担でございます。秩序だった破綻処理のためになされる一時的な資金提供のコストを賄うため、民間資金で賄われる預金保険、破綻処理基金、または業界から事後徴収するメカニズムが設けられるべき。当局による一時的な資金供給は、モラルハザードを防止するため、厳格な要件の下でなされるべきとあります。これについては、秩序だった処理のために必要となった費用は誰がどのように負担することが適当か。

米国ですが、連結総資産500億ドル以上の銀行持株会社、FRB監督ノンバンク金融会社等による事後負担(リスクベース)。英国ですが、株主・債権者のほか、他の銀行等による事後負担。欧州ですが、事前徴収。事前徴収した資金では生じた費用を賄うことができないときは預金取扱金融機関・投資会社による事後負担となっています。

参考ですが、我が国の金融危機対応措置に要する費用は、預金取扱金融機関から負債の額に応じて事後徴収するとされております。事後徴収によると、預金取扱金融機関の財務状況を著しく悪化させ、信用秩序に極めて重要な支障を生じさせるおそれがある場合には政府補助が可能とされております。

以上が論点5つでございます。7ページ以降は、参考あるいは論点の1つと考えていただいてもいいんですが、参考としてつけております。G-SIFIsというグローバルにシステム上重要な金融機関についてでございます。FSBの主要な特性はG-SIFIsに限らず、あらゆるシステム上重要な金融機関を対象にしていますが、G-SIFIsについての記述、記載、規律というのもございます。グローバルな活動、規模、相互連関性、代替可能性/金融インフラ及び複雑性の5つのリスク要因に対応した指標で判断し、G-SIFIsを選定し公表されています。これは毎年11月に更新するとこういうことになっています。2011年11月公表のものでは、29行、日本からは3メガバンクがG-SIFIsに選定されておりまして、そのときの29行というのはここに書いているものでございます。

注1ですが、FSBはIAIS保険監督者国際機構と協議の上、グローバルなシステム上重要な保険会社の特定及び政策措置に関する作業を2013年4月までに完成させる。注2ですけれども、FSBはIOSCOと協議の上、本年末までにその他のシステム上重要なノンバンク金融主体を特定するための手法を用意ということで、上のG-SIFIsと書いてますが、これは何といいますか、バンクについてのリストということでございます。

8ページです。G-SIFIsになりますと、主要な特性にはどう書いているかといいますと、債権処理計画の策定が求められます。債権計画というのは金融機関が策定します。厳しい状況のもとに、その存続可能性を回復するためのオプションを特定するための計画です。それから、処理計画というのは当局が策定します。システム上重要な機能を保護しながら、金融システムの混乱や納税者による負担を回避しつつ、金融機関の処理を実行可能なものにするための計画ということでございます。それも踏まえまして、金融庁の監督方針で、こういった債権処理計画の策定に向けた取り組みを引き続き進めていくこととするとされているわけです。

9ページですが、途中で出てきました自動解約条項です。ここでは、自動的期限前終了特約となっております。左側にいろいろ期限の利益喪失事由が書いてありますが、この点線で囲まれた部分、解散した場合ですとか倒産手続を申し立てた、申し立てられた場合、あるいは管財人の選任を申し立てた場合、選任を行われた場合といったときには、即時に自動解約してネッティングして清算しなさいという契約が一般的に使われているということでございます。過去の事例ですと、リーマンブラザーズの破綻のときには、こういうものが発動しまして、長銀とかAIGでは、発動しなかったということでございます。

10ページ目です。国際的な協調ということで、主要な特性にはクロスボーダーの協力のための法的枠組み、破綻処理を行う当局は、他国の当局と協調しながら破綻処理を行う権限を有するべきと書いています。我が国の当局は他国の当局とどのように協調することが考えられるか。ドッド・フランク法なかには、昨日見つけたんですが、3行ぐらいを費やして、FDICは管財人として秩序だった清算のために、外国の金融当局と最大限協調しなげればならないという規定がございます。英国の銀行法にはちょっと今のところ見つかっておりません。欧州の場合には、EU域内において、まず制度を共通なものにするということが第一歩でしょうということになっております。また、EU域外の国でとられた破綻処理手続を承認する枠組みを規定しておりまして、一定の配慮がなされている。

参考ですが、我が国の破産法・民事再生法・会社更生法においては、ある債権者については我が国の倒産処理手続と外国倒産処理手続が併存する場合には、我が国の管財人・債務者は外国手続の管財人に対し、必要な協力・情報提供をするよう努めるものとされているなど、幾つかの協調についての規定が設けられているところでございます。

私からの説明は以上でございます。

○岩原座長

どうもありがとうございました。それでは、議論に移りたいと思います。ただいまの事務局からのご説明に関しましてのご質問、ご意見、いずれでも結構でございますので、お願いしたいと思います。委員の皆様どなたからでも結構ですのでご発言をお願いいたします。井上委員。

○井上委員

まず、1つだけ、資料に関してご説明いただきたいのですが、更生特例法の概要のところで、これは参考資料の、各預金取扱金融機関、証券会社、保険会社ごとに手続の特例が定められているところですが、証券会社だけについては、監督庁による手続開始の申し立てが、破産手続に限られています。こういった監督当局による申し立てというのは、昔なかったものが法改正により順次入ってきたと理解していますけれども、大きな金融機関ですと、実際には、突然破産というより再建型の手続が選択されることが十分考えられると思うので、監督当局の選択できる手段として破産手続開始の申立権だけでは足りない感じもあります。証券会社については、銀行、保険に比べますと、システミックリスクの問題が相対的には小さいという見方があるのかもわかりませんが、ここはどのような理由で破産手続に限定されているのかというのがご質問の第1点です。

次に、感想のようなものですけれども、大きな金融機関の破綻となりますと、クロスボーダーで問題が生じ、最後のほうの説明で触れていただきましたけれども、当局間の協調が必要になると思います。その前提として、クロスボーダーで破綻処理関連の法律がどのように適用されるかということ自体、一定程度前もって検討しておく必要があるんじゃないかと思います。例えば、大きな金融機関同士のデリバティブ取引がクロスボーダーで行われて、一方の当事者が破綻した場合に、一括清算ネッティング法は日本の法律ですけれども、これが適用されるかどうか自体から、そもそも問題になり得るだろうと思います。また、グループでグローバルに活動している金融機関ですと、ニューヨーク、東京、ロンドンで並行倒産、すなわちグループ会社が各国で同時に破綻することもあり得るわけでしょうから、そういう破綻が突然起こったときに、多数の多様な取引関係・権利義務関係の処理につい、そもそもどういった準拠法選択がなされて、どういうルールが適用されるのか、日本で整備されているルールがどういう場合に適用されて、外国で整備されているルールがどのように適用されるのかなどについても、一定のシミュレーションといいますか、その場になって何を確認すべきかを事前に検証していく必要があるのではないかと感じております。以上です。

○岩原座長

それでは、藤本さんお願いします。

○藤本信用制度参事官

まず、参考資料の8ページの更生特例法の概要というのがございます。証券会社については、真ん中に監督庁による手続開始の申し立てというのがありまして、括弧書きで、但し書きというのがあって、破産手続開始の申し立てのみとなっています。これは、証券会社につきましては、まず顧客の資産を分別管理します。それで、問題が生じた場合には早く退出していただく、あるいは、清算してもらう。倒産手続でいいますと、破産法という手続で早く退出していただいて、顧客資産は返していくという考え方がとられてきたということであります。システミックなものというものが、決済機能を担っていない証券会社といったものには必ずしもないのではないかという考え方のもとにこのような制度になっているというふうに考えております。これが、リーマンショックなどを経て、この考え方が今維持されるべきかどうかというのは、議論される1つの論点ではないかというふうに思っております。

クロスボーダー、あれはご意見ですか。

○岩原座長

準拠法の問題点のご指摘ということですね。ほかに。和仁委員どうぞ。

○和仁委員

井上委員のおっしゃったクロスボーダーのところについてもう一つ申し上げますと、例えば、現在ドイツの銀行を清算していますけれども、彼らは設立準拠法であるドイツの法律でこう決めたらそれ以上の手続なしに、全世界で承継銀行に全部資産がドイツにおけるのと同じように移ると発想しています。日本でも、銀行業務は全部承継銀行の存在もしていない支店に移るという解釈をドイツ人は振りかざしてくるんです。要するに、準拠法というよりは、法域毎の業法の問題としての発想がない。そこをどうするのかということだと思います。これは解決しなくてはならない問題であって、日本では、外国の倒産手続を日本でもある程度尊重して手続を進めようという法律ありますけれども、その後、実際どういう形で外国の倒産手続を日本の債権、債務関係に適用するのかという話になると、実ははっきりしていない。それと同じ状況が発生しています。ですから、ここはきちんと議論をして法律をつくっておいたほうがいいんじゃないかと思います。それが第1点です。

それから、もう一つ、くどいのですけれども、自動終了条項について、お話しさせていただきます。資料に書いてありますけれども、自動終了条項が問題になったのは1998年の長銀の倒産のときでして、あのころは1987年版のISDAマスター契約を使っていまして、その契約では、倒産事由は全部自動終了になっていたわけです。長銀が金融再生法の手続の申請を申請したときに、これはそもそも倒産なのか、あるいはそうじゃないのか、ISDAの終了事由に該るのかそうではないのかということで、議論になりました。しかし、長銀は債務超過でしたが、国がすぐにそこで入ってくるということで、債務超過状態が解消されるのではないか、そうなると、イベント・オブ・デフォルトに該らないのではないかという議論。あるいは、金融再生法の100%減資による国有化手続、今の預金保険法の3号措置ですけれども、その手続が倒産手続に該当するのか、しないのかという議論もなされました。井上委員と私がメンバーになっている研究会でも検討したのですが、結論が見出せませんでした。自動終了をするというのは、システミックリックスを引き起こす可能性があるから、しばらく猶予期間を設ければいいじゃないかということは、確かに理屈としてはわかるんですけれども、日本の場合、これも最初のときに申し上げたと思いますけれども、破産法58条という問題があります。そこに反映されている考え方、即ち日本のマーケットにおいて、契約の相手方当時者が倒産手続の申し立てをしたら、そこで契約を終わらせてしまうということが確立した市場慣行になっている、その中でこれをどう考えるんですかっていう問題だと思うんです。ですから、これは、金融機関に限るということで制限をかけたとしても、一括清算法以外に、破産法58条が重畳適用される関係になっていますので、この問題をいじるのであれば、むしろ破産法のほうも直す。あるいは、破産法の効力を排除するような形での立法を考える必要があるだろうと思います。

但し、日本の金融庁は、金融機関の実態を非常に正確にとらえておられますし、長銀のときでも、当時の金融監督庁ですが、金融監督庁がお持ちになっていた数字と、実際の債務額ってそんなにずれてはいなかったと記憶しております。そこから考えると、そこまで大規模な手術をすることをここで考えなくちゃいけないのかどうなのかと、そこも利益考慮の問題ではないかなというふうに思います。したがいまして、5ページに書いてあります、国有化時には早期解約条項発動させずに同措置を講ずることは可能である一方と書いてるところでは必ずしもそうとは言えない、どっちとも言えないねということだろうと考えています。ですので、必ずしもここに書いてあるのが通説だということではないと思います。以上です。

○岩原座長

どうも、それでは、川波委員どうぞ。

○川波委員

我が国でどうすべきかということについて、今少しご説明いただければと思います。リーマンのときに見られたような非常に大規模な金融機関が破綻して、そのときまではベイルアウトという考え方が非常に強くて、そのことによってその危機は回避されたんだけれども、非常に納税者に負担がかかったということかと思います。財政の負担が非常に大きかったということで、それをできるだけ、国家財政に対する負担を極力少なくするという意味で、ベイルインという考え方が、今回の破綻処理の枠組みにおいては、非常に大きなウエートを持ってきているということかと思います。これは非常によくわかりますし、大変重要なことだと思うんですけれども、その場合に、今の参事官の説明、もう少し補足していただければと思います。例えば、ベイルインする場合でも、債権者、あるいは株主にベイルインするという場合でも、どこまで損失を吸収できるのかという問題があると思うんです。現実にはさまざまな、もし損失が吸収できないということになった場合に、いろいろなファイナンスの手段がいるだろうと思うんです。例えば、ブリッジ金融機関をつくる場合でも、あるいは破綻した金融機関から資産を買い取るであるとか、あるいは資産を管理するそういう機関の運営経費であるとか、あるいは資産や負債の保証をするとか、いろいろな形でのファイナンスの手段が必要になると思うんですけれども、欧米では例えば、破綻処理基金ですか、6ページにはそういう文言がございます。この点線の枠の中に、破綻処理基金という仕組みがあるんですが、我が国の場合には、ベイルインしてもそれで吸収できなかった場合に、破綻処理に伴うファイナンスをどうするか、あるいはその機構をどういうふうに考えるか、預金保険機構で対応していくのかというあたりの関係をどう整理しておくかということが非常に重要だろうと思うんです。特に、費用負担という観点から見るとそこらあたりが重要じゃないかなと思うんですけれども、その点についてどう考えたらいいか、もう少し、補足的にご説明をいただけるとありがたいと思いますけれども。

○岩原座長

藤本さんお願いします。

○藤本信用制度参事官

今、ご指摘いただいた点を全て含めてご議論していただこうということで、資料をご説明しているところであります。今、ベイルインについてお話がありました。各国ともベイルインと各種の例えばブリッジバンクの制度ですとか、あるいは経営権を掌握する仕組みですとか、契約を移転する仕組みといったものを組み合わせて金融危機の拡大が発生しないようにしようということを考えているようであります。各国ともこういうツールをそろえましょう。そのツールを一体どうやってどういう順番でどの金融機関にどうやって使うか、どういう組み合わせで使うかについては、そのときの状況に応じて対応して使いましょう。もしそのときに費用というものが必要となったときには、それは民間部門を中心として事前徴収、あるいは事後徴収といった枠組みで費用というものは調達しましょう。それから、どういう主体がこういった手続の中心になってやるかということがありました。アメリカの場合はFDICというところが預金保険に入っていようがいまいが、そこがそういう手続を進めていくということとされています。イギリスの場合はここで言うように、バンク・オブ・イングランドだったり財務省がそういう手続を進めていくとされています。EUの場合は各国の事情があるようでありまして、それぞれの国が今後デリバティブというのはEU内の手続を終えて、各国で法制化されるときに、一体どういう主体がどうやって進めていくのかというのは、例えば、各国の国内倒産法制との関係などを考えて決めていくことになるのではないかと思います。我が国も一体どういう主体がこういうのを進めていくのか、あるいはどのようなツールが必要なのかといったことが、まさしく議論の論点になっているということだと思います。

○岩原座長

川口委員、どうぞ。

○川口委員

今、お話にありました費用の件ですけれども、要するに、金融業界の話なのだから、税金は使わずに業界で処理しなさいということですよね。他方で金融機関の業務というのが一種のインフラであると考えるならば、国民経済に直接に影響するというので、政府の関与、税金の投入というのはあり得る話ではないかと思うのです。この点を別として、この制度の導入を検討する上においては、今ここにありますように、事前に積み立てをするのか、事後的に支払うのかという2つの方法があります。ヨーロッパとアメリカで意見が分かれているようで、統一的なものにはなっていないようなのですが、ヨーロッパは結局、事前積立の方式を採用しました。そこでは、リスクプロファイルを考慮するということで、リスクベースの考え方がとられています。正確に言いますと、債務の額を基準にプロラタでやっておいて、後で必要な場合にリスクプロファイルといういろいろな考慮要素を入れて、アジャストする方法となっており、結果としてリスクベースとなっています。日本でも、リスクベースにする場合、その考慮要素をどのようにしていくのかというのは非常に大きな論点かと思います。それと、私も、預金保険との関係が重要だと思っていまして、預金保険基金と統合していくのか、あるいは別なものとして考えていくのか、あるいは預金保険基金を流用するというようなことを可能にするのか、いろいろと論点があります。例えば、税金はなるべく使わないでということのようですので、預金保険基金がかなり余っているというものであれば、その積み立て分の半分ぐらいは流用できるという仕組みは、税金負担という点では有益なものと言えます。

ただし、預金保険料は今、日本ではリスクベースではないのですが、仮に破綻処理基金をリスクベースにすると、そこのバランスが問題になりそうです。特に、預金保険基金を流用するという話になったりすると、話は複雑になります。その場合は、預金保険料についても、可変保険料率を採用すれば良いのかもしれません。

長くなりましたが、支払い方式についてですが、日本は基本的には今のところ定額で、アメリカはリスクベースのようです。リスクベースにしますと、財務内容の悪い金融機関の拠出額が増えていくという話になって、さらにその金融機関の財務内容を悪化させるのではないか、そういうような懸念もあります。ただし、その適用を大規模金融機関に限定すれば、この懸念も少しは薄まるのかもしれません。以上です。

○岩原座長

大崎委員どうぞ。

○大崎委員

ちょっと、今の川口委員のご発言との関係で確認をしたいんですけれども、欧州では預金保険はたしか欧州レベルでは、統一されていなかったんではないかと思うんですが、それはいかがでしたでしょうか。

○藤本信用制度参事官

統一はされていません。ただ、統一に向けた動きというのはあります。

○大崎委員

ただ、ここでご紹介いただいている指令案と預金保険は直接関係ないわけですよね。

○藤本信用制度参事官

指令案には預金保険のお金を使ってもいいし、使わなくてもいい、各国で決めるようにということになっています。

○大崎委員

私がそういうことを申し上げたのは、6ページの比較ですと、欧州は事前徴収で、アメリカは事前徴収はしないという、何か違う枠組みのように一見見えるんですけれども、これ欧州では預金保険制度が統一されていないということが、この指令案の段階で事前徴収が若干言及されているということと関係しているんじゃないかなと、個人的に思ったもんですから、そういうことをちょっと申し上げたんです。

○藤本信用制度参事官

欧州の場合は、これは指令案ですので、各国で法律なり法制化がなされて、各国の仕組みとして導入されることになります。ここでいう事前徴収は、預金保険制度が各国にあるんですが、それと同じような方式で事前徴収をしなさいというふうに書いていまして、預金保険料とは別ものとして、同じ方式で事前徴収をしなさいというふうに書いているところです。

別途集めている預金保険料を使うかどうかについては、国によって使ってもいいし、使わない制度でもいいですよ。そこは各国で考えなさいとされています。

○大崎委員

ついでに、もう1つよろしいですか。

○岩原座長

はい、大崎委員、どうぞ。

○大崎委員

これから細かい議論していく上での全体的な考え方としての私の私見なんですけれども、1つは日本の場合、預金取扱金融機関については破綻処理について、制度もできていて、かつ実際の経験もあるということで、いわばノウハウが蓄積しているわけです。その上で、今度ノンバンク、預金取扱じゃないところをどうしようかという議論であるわけなんですが、せっかくこの蓄積されたノウハウを生かさない手はないというふうに思っておりまして、前回も業態ということにそんなとらわれるものではないのではないかという、三井さんのお話もあったように記憶しておるんですけれども、私は基本的に、この破綻処理を実行する主体について、新しく大きな組織を幾つもつくるみたいなことは極力避ける方向でまず検討するべきなんではないかというのを1つ思います。

それから、もう一つは、さっきの費用負担の件でありますけれども、もちろん税金をどんどん投入しなさいというのでは、Key Attributesからも外れるわけですし、そんなこと言うわけじゃないんですけれども、他方で事前に大きなファンドを積み立てるというのも、現状、預金保険のほかにも投資者保護基金とか、契約者保護機構とか、いろいろなファンドがあるということを踏まえると、果たしていかがなものかというのもありまして、これは、基本的な考え方は、できるだけ事後に国民負担を求めない形で処理していくというような発想で検討すべきじゃないかなと、こんなことを今思っております。

○岩原座長

ほかに。

○小野委員

2点、ご質問とコメントがあります。まず1点目は先ほどから出ております論点の5番目、費用負担の話なんですけれども、最初に、これはご質問なんですけれども、Key Attributesの中ではモラルハザードを防止するために当局による資金供給は厳格な要件のもとでなされるべきと指摘されているということなんですが、この場合のモラルハザードというのは、誰のモラルハザードなのでしょうか。この質問の背景なんですけれども、もしこれが破綻金融機関の株主ですとか、あるいは債権者のことを指すのであれば、それはまさにベイルインの話をしていることになると思うんです。他方で、アメリカですとか、イギリスですとか、欧州の取り組みを見ますと、株主・債権者に加えて、金融業界の間で奉加帳方式で負担する仕組みのように見受けられるんですけれども、そうだとすると、それは他の破綻していない金融機関にもモラルハザードがあって、したがって、そういった金融機関が負担しなければいけないというロジックなのでしょうか。

その上で、私は、基本的には破綻金融機関の株主や債権者のことだと考えるべきだろうという意見を持っておりますけれども、その場合、破綻してしまった後の事後負担というのは結構難しいので、事前徴収のほうがよいのではないかなというのが意見です。これが1点目です。

2点目として、論点の3番目として、介入のタイミングの話があったかと思うんですけれども、お話を伺っていく中で、最後に我が国の事例が参考としてあって、その中に(2)のマル1、破綻前の資本増強というのがあります。この破綻前の資本増強のケースというのが、上に書いてあるアメリカ、イギリス、欧州ではどのように整理されているのかというのが質問です。といいますのは、Key Attributesを素直に読むと、こういう事前の予防的な資本増強というのは想定外であり、金融機関がもはや存続が可能でないと見込まれるときに公的介入を開始するといっているのに対して、我が国では、債務超過ですとか、破綻するおそれのない金融機関にも資本増強しますといっているので、そこに若干ずれがあるように思います。ただ、他方で、今回の金融危機を振り返ると、欧米諸国も事前の予防的な資本増強、危機に対してバズーカを備えるんだというような表現がなされていたと思いますけれども、そういうことを実質的には行ってきたわけで、その点について、アメリカなり、イギリスなり、欧州は、今現在どういうふうに整理をしているのかというのがご質問になります。

○藤本信用制度参事官

まず、6ページの上のほうに書いてありますモラルハザードということについてです。ここで書いていますのは、「当局による一時的な資金供給は」となっておりまして、これは必ずしも損失を埋めるような資金供給を指しているものとは限らないと思います。例え一時的な流動性供給のようなものについてでも、モラルハザードを防止するため厳格な要件のもとで行いなさいと、こういうことではないかと思います。

したがいまして、誰のモラルハザードかということですけれども、それは当該資金供給が行われる相手方の金融機関の行動が何かそれによって変えられる、安易な方向に流れるとかといったことをモラルハザードというふうに呼んでいるのではないかと思います。

それから、資本増強についてでありますが、Key Attributesを読む限りにおいては、資本増強の話というものは、今のところ何回も読んでいますが出てきておりません。ただ、おっしゃるように、参考資料のほうですけれども、13ページの上の欄で、リーマンショック後のいろいろな事態に対応して公的資金の注入というのがなされていることはご指摘のとおりであります。ただ、外国はそういうことが必ずしも適当ではないのではないかということで、各国の制度は整備されているところであります。

他方、我が国の場合は、参考資料の2ページでございますが、平成10年に長銀、日債銀の特別公的管理のようなものをしたり、あるいは早期健全化法ということで資本増強をしました。それを我が国はどのように捉えたかといいますと、平成12年にそれを恒久化したということです。そういう資本増強ということで我が国の金融危機というものに対処したという結果、外国とは違った方向に政策の判断がなされてきているということだろうと思います。

○小野委員

すみません、今のご発言の確認なんですけれども、米英、欧州の場合には、過去においては予防的な資本増強をしたけれども、そういうことは二度と起きてほしくないという前提のもとで、今、制度なり仕組みの整備を進めている。これに対して、我が国の場合は、資本増強の枠組みを恒久的な措置としてやっていて、今回のKey Attributesを踏まえても、そこを見直す気はないという理解でいいんでしょうか。

○藤本信用制度参事官

必ずしも見直すことを前提に議論をしているわけではないということです。

○三井総務企画局参事官

難しい論点だと承知しています。もう少しかみ砕いて言いますと、この資料の12ページ、13ページに、ごらんいただきますと、実際に危機が起きたときには真っ先に資本注入をしたり、あるいは全金融機関間の取引を政府が保障したり、あるいは預金並びにそれ以外の債務の払い戻しも保障したというのが現実でございますし、Key Attributesがまとめられた後も、現実にヨーロッパでは政府による資本注入が行われている、あるいは求められている。現にそれが、対応が進んでいるという状況かと思います。

したがって、Key Attributesそのものには、資本注入はどんどんやるべきであるということは書いてありませんが、現実には、金融危機への対応として、それはどうしても避けられずに現実には世界各地で今進められているということも踏まえる必要があるのかなと。そういう意味では非常に単純ではない部分があるかと思います。

○藤本信用制度参事官

資本増強については、私ども、私と三井参事官が申し上げたとおりです。なお、補足ですが、Key Attributesには、いろいろなツールをもって秩序立って処理をしなさいとされているわけですが、どうしても必要というときには、一時国有化というものは1つの選択肢であるというふうに、排除されないというふうに書いているところでございますし、イギリスではそういう制度ができているということでございます。

○山本委員

1点、基本的な質問なんですけれども、3ページとかに「当局の権限」というふうに書かれていて、破綻処理を行う当局は、以下の権限を持つということになっていて、そのベイルインの実施というのもここに含まれているんですけれども、日本の制度は恐らく裁判所の法的な倒産処理の手続に行って、初めてこのベイルインというのが実現するというシステムになっているんだろうと理解していますけれども、そういうことであっても、この主要な特性の要件は満たしているということを前提として議論をしていいのかどうかということを、まず確認させていただきたいんですが。

○藤本信用制度参事官

まず、ここでいう破綻処理を行う当局と裁判所の関係がそもそもどうかということであります。Key Attributesを読みますと、なるべく破綻処理を行う当局のいろいろな意思決定が後で裁判所によって覆ることがないようにしようというようなことが書いてあります。清算価値みたいなものは保障した上で、あとは金銭で解決できることは解決しましょうということになっています。

次に、ベイルインについてです。ベイルインについては、Key Attributesで、ここに「無担保債権のカット又は株式化」と書いていますが、そういうことがぼやっと書いていて、必ずしも内容が明確であるというわけではありません。

2つ軸がありまして、1つは、契約上そういうことが定められていれば債権の株式化などというのがなされるのではないか、それもベイルインに含まれるのではないかという立場もあります。それから、もう一つは、いや、そうではなくて、契約でどう定められていようと、破綻処理を行う当局が何かを命じれば、債権の株式化とかカットというのが起こるようにするのだというような立場がもう1個あります。

それとは違う軸で、これは行政当局が何かやる話なのか、それとも裁判所がというか、倒産処理手続といった、世界を2つに大きく分けるとして、業法上の中のものでやるのか、裁判上の倒産処理手続でやるのかという論点がありまして、これも必ずしも明確ではないところであります。例えば、アメリカではFDICが裁判所と連携をとりながら手続を進めていくわけでありますけれども、それは倒産手続の中で債権がカットされていくととらえることができます。我が国の場合もいろいろな仕組みがあるかもしれませんが、例えば民事再生手続の中で債権カットが進められているということは、今、行われているわけです。

Key Attributesを見て、一体どういうベイルインが備わればこれを満たしたことになるのかというのは非常に各国悩んでいるところでありまして、欧州でも一応ディレクティブには書いているんですが、各国いろいろな国によって倒産法制が違うものですから、やっぱり多様な意見があるようです。今後いろいろ、FSBあるいはG20などの中で、その内容がどのように捉えられていくか、各国がどのように対応するのかというのを我々も見ながら議論を進めていくということなのではないかと思っております。

○山本委員

恐らくそれがどちらかによって、やるべき内容というのは相当大きく違って、あるいは、そもそもできるかどうかということが大きく違ってくるんだろうと思います。行政手続の枠組みの中だけで債権カットというか、要するに債権者の権利変更を行うことについて、恐らく憲法上の制約も日本では相当程度、会社更生法とかがなぜ憲法違反にならないのかということについて最高裁の大法廷の判決とかありますけれども、かなり大きな問題がそこにはあって、だから、恐らく今までの日本の法整備というのはそこを避けて、基本的にはそういう権利変更が必要になれば裁判所の手続に行くと、裁判所の手続と組み合わせてやっていくと。それは保険についても、あるいは預金取扱金融機関については、ペイオフの解禁のときもそういう考え方で来ていたんだろうと思います。

もし裁判所の手続を組み合わせても、それでいいんだということであれば、かなり、前回出されていた表でもそうだったと思いますが、少なくとも預金取扱金融機関との関係では、かなりの程度Key Attributesを既に満たしているのではないかと。あと、それをどこまで、先ほど証券会社に対する再生手続等の申立権とかという問題がありました。あるいはノンバンク等にもそうかもしれませんけれども、そういったところまで拡大していくのかという問題になっていくのかなという印象を持っています。

それを前提として、3点、コメントあるいは意見ですけれども、1つは3ページのところで矢印のところの一番下で、「何らかの倒産処理手続等の特例を設ける必要があるか」ということですが、ちょっとここのご説明のとき、私、いなかったので、あるいは間違ったあれかもしれませんけれども、行政手続だけを前提としたときには、これはやはりかなり難しい問題になるということなんだろうと思いますが、逆に法的手続、今のように民事再生等と組み合わせてやるとすれば、これは強制執行は民事再生、当然、基本的にはとまるわけですし、債権者の破産手続の申し立て等もとまるので、これは恐らくそれほど大きな問題にはならないのではないかなという印象を、これも今の全体の枠組みに関係してくることかなと思っています。

それから、10ページの国際的な協調のところで、これも先ほど井上委員とか、和仁委員からご指摘があったように、準拠法等の問題があると思いますけれども、倒産手続を前提としてやるとすると、当局同士の協調だけでは話は済まなくて、それが倒産手続の中にどう反映されるのかという倒産手続の拘束の問題が生じてくるのかなと思います。私の理解では、恐らく日本の倒産手続の拘束のきつい度合いというのは、諸外国と、とりわけアメリカの手続なんかとはかなり違うんじゃないかという印象を持っておりまして、ですから、ここはある程度詰めてシミュレーションとかをしておかないと、いざやるときに全然話が違うということになる可能性が、おそれがあるのではないかと、一般的にはやはり日本のほうができる範囲という、自由に裁量的にできる範囲というのは限定されている可能性があるのではないかというところに注意をする必要があるのではないかということです。

最後に、和仁委員がご指摘になったデリバティブの問題ですけれども、これは前の会議でも和仁委員がご指摘になられたと思うんですけれども、ちょっと、私、よくわからないですけれども、確かに破産法とか民事再生法等にそういう規定が存在するわけですけれども、ただ、それについて、このような特則を設ける方法としては、倒産法の中にそれを書き込むとか、あるいは倒産手続の適用を回避するということで必ずしもなくても、基本的には更生特例法というのがあるので、その更生特例法の中で、一定の金融機関について、このような特則を設けるという形で法制的には対応できそうな感じがするということです。実質論として、私はこういうやり方が適切なのかどうかということについて定見は持っていませんけれども、処理の仕方としては、そのような形にして、倒産法をいじらずに、あるいは倒産手続の適用を前提にしてもこのような制度をつくるということは可能ではないかなという印象を持っているんですが。

○和仁委員

今の山本先生のご意見だと、それでも、やっぱり更生特例法はいじらないといけないですね。

○山本委員

もちろん。

○和仁委員

そうですよね。だから、やっぱりそこまでは手は伸ばさないといけないので、やはり法務省と話をしなくてはいけないということになります。それが私の問題提起であります。

○岩原座長

いいですか。今、山本委員がご指摘になったように、日本においては憲法上の要請があって、債権者等の権利を大きく変えるには裁判所の手続を経なければならないという考えが、アメリカなんかと比べると強いと思います。まさにそのようなことがあったので、保険業法の中の業務及び財産の管理等の手続だけでは保険会社の破綻に十分対応し切れないということで更生特例法の改正を行いました。それに対してアメリカは、リハビリテーションという裁判所の監督の下での行政的な手続の中で実際やってしまっているわけで、アメリカは裁判所でない行政機関がそういうことをやることにかなり寛容というか、柔軟な対応をしている。その違いが、まさに今、山本委員がご指摘になったような点になっているのかなという感じがいたします。

ほかに何かございますでしょうか。

○森下委員

裁判所の関与の点は、まさに、山本委員がおっしゃられたように大変重要な点であると私も認識しております。クロスボーダーの点に関してでございますけれども、国際協調ということは国際的な議論においても重視されていると思われますが、他方で、例えばアメリカの外国銀行の破綻処理手続というのはリングフェンスをしていると言われており、これについては、非難する見解もありますけれども、自国債権者保護の必要性や国際的な破綻処理の現実を考えると、ある程度やむを得ない面もあるのではないかというようなことも言われております。

前回、あるいは前々回などの会議の中でもありました、国内の資産保有をどこまで求めるかというようなご議論の中には、やはり破綻したときに国内の債権者をある程度保護したいというような意向が前提にあると思うのですが、国際的な破綻処理ということを考えた際に、国際的な協調というものを全面的に押し出すのか、ある程度、国内債権者の保護も重視していくのかという点は、よく整理しておかなければいけない重要な点なのではないかなと思います。

国際的なネッティングにせよ、あるいは外国で行われた資産の他銀行への継承措置にせよ、それらを日本法としてどう考えるかということについては、わが国の国際私法や国際民事訴訟法において、一応の議論というのは十分できると思いますし、議論の蓄積もあると思いますけれども、実際に破綻処理が行われる場面になりますと、各国それぞれがばらばらに法律を持っていますので、日本法ではこうだということを言っても、きれいごとでは済まない部分があると思います。そういった中で、実際にどういった実務的な判断を下していくのかというのは難しいところで、法律をつくったから完全にきれいになるというわけではないのは、国際的な破綻処理の難しいところではないかなと思います。

あともう1点、グループの破綻処理ということでございますけれども、EU指令の中では、グループ間の資金融通というのが非常に大きな目玉として挙げられていると思います。やはり今後、ある程度、特に大きな金融機関ということになりますと、グループ単位での破綻処理というのをどう考えるかというのは、避けては通れない問題なのかなと考えております。

リカバリー・プランの段階では、グループ単位でリカバリーしましょうということを考えていると思うのですけれども、破綻処理の段階になったら、急に、エンティティ・ベースで、法人毎にばらばらに破綻処理手続が行われ、グループに属する法人間で資産の奪い合いをすることもやむを得ないというのは、基本的に破綻処理を法人単位でしか考えていない現在の法律の欠点というか、限界であると思うのですけれども、そこを何らかの形で、多少なりとも進めることができればと考えております。

○翁委員

何点か申し上げたいと思うんですが、1つは2ページのところで、どのような範囲を、金融機関を対象にすべきかというような点に絡みまして、G-SIFIsについては既にリストも公表されていまして、そこでは5つのポイントに応じて判定をされているというような状況でございますけれども、我が国について考えた場合も、やはりこういった指標は確かに参考にはなると思っております。

ただ、一方で、私、97年の三洋証券のときなどを考えましても、やっぱり市場のセンチメントによってどういったところがシステムの大きな波乱要因になるかということは事前にはわかりませんので、ある程度こういった指標で考えておくということは大事だと思うんですが、コンストラクティブ・アンビギュイティの世界もあって、やっぱりそれはある程度、多少裁量の余地を持って考えておくことが必要なんではないかというのが1点目でございます。

それから、3ページ目のところにつきましては、やはりできるだけツールを準備しておくということは重要だと思うんですが、先ほど議論もありましたけれども、やはり過小資本の段階で資本増強の手段を持っているというのは、我が国の金融システムの安定化にとってメリットであると思っておりますので、それはKey Attributesのいかんにかかわらず、これは重視していく必要があると思います。もちろんモラルハザードとか、そういったことには十分注意する必要があると思うんですが。

同時に重要なのは、やはり監督当局と連携をしながら早期に準備をするということと、破綻処理のときに迅速処理をするということで、やっぱり早期の処理と迅速処理のできる体制というのが非常に重要だと思っております。その点につきましては先ほど大崎さんからもご発言あったんですけれども、今までのいろいろなノウハウなどを生かしながら、監督当局と連携をとりながら、今までの、少し預金保険機構の機能を強化するのか、そういう形になるのかわからないんですけれども、いずれにせよ、そういったもののノウハウを生かして機能を強化していくということで対応するのがいいのではないかと思いますし、やはり基本的には、破綻処理というのは債務超過ということを、もちろんですけれども、原則としてスタートするということではないかなと思っております。

コストのことについて、いろいろなご発言ありましたけれども、やっぱり破綻処理ということになりますと、その考え方として、やっぱり外部不経済の、金融システム上、大きな金融機関というのは社会的コストを内部化するということが大事で、そこについて多少そういったシステム上重要な金融機関についてのコスト負担を、どういうふうに考えていくかという議論が少し必要だということだろうと思うのと、あと、やっぱり事前と事後の話につきましては、事後についてですと、やはりプロシクリカリティの問題もあって、やっぱり景気、マクロ経済等の対応……、すごく長い期間でやっていけばいいかもしれないですが、それはそれで再生をすごく妨げるという面もあって、そういったプロシクリカリティの面とか、再生をどういうふうに早期に実現するかというような論点も非常に重要になってくるんじゃないかなと思います。

以上でございます。

○松井委員

今、主要な特性を備えた破綻処理制度をどの金融機関を対象に適用するべきかというお話の中で、広目に網をかけておく必要があるということのご指摘をいただいていたかと思うんですけれども、アメリカで本源的金融業務等と判断した業務を支配的に行う会社等というものを、いつのタイミングで判断しているのかというのが私の知りたいところであります。

といいますのは、やはり破綻処理が必要だということがわかってきたぎりぎりの段階で判断をせざるを得ないということになっていて、それまでは、恐らくこういった金融機関を破綻処理することはないだろうというふうに思って、それで破綻処理費用の積み立て等をしてこなかったと。あるいは、日本でいうならば更生特例法の適用対象として、どういうふうにやっていくのかということの検討もしてこなかったというような場合に、それを事後的にぎりぎり破綻というときに、これも対象に入れたいというふうになってくると大変になってくるというのがあるので、アメリカでは行政手続でもありますし、事後的にお金を取ってくるということでもありますので、アメリカはシステムとして完結しているのかもしれませんけれども、日本でもそういうふうに事後的に必要となる金融機関の範囲というのを柔軟に捉えていくということが導入できるのかどうかというようなことを考える上で、少し参考になるのではないかと思うからであります。

○藤本信用制度参事官

2ページ目のアメリカのドッド・フランク法ですが、銀行持ち株会社というのは決まっているわけです。FRB監督ノンバンク金融会社はどうやって選ぶかといいますと、金融安定監督評議会という、いろいろな監督当局が一緒につくっている協議会というのがあります。そういうところが一定の手続を定めて決めるということになっています。

その手続はどうかといいますと、今年の4月にこういう手続に沿って定めてはどうだろうという方針を公表したという段階でありまして、1ページにはもう施行されている、アメリカはとうの昔に施行されているんだと書いているんですが、実際の動きはそれほど素早く進んでいるわけではないようです。また、FRBが本源的金融業務と判断した業務を支配的に行う会社ということですが、本源的金融業務というのは、金融業務とは考えられないようなものを除いているということなんですが、FRBが判断をしたとは聞いてはおりませんので、まだどういうところを対象にするかの作業は引き続き進められているということではないかと思います。

○松井委員

いずれにしても、事前に対象は確定され、破綻時にアドホックに指定するのではないと。

○藤本信用制度参事官

事前にといいますか、今後定めていこうということだろうと思います。したがって、そこは事前と呼ぶのかどうか、そのうち決まるということだと思います。

○小出委員

前回の会合で申し上げたことの繰り返しにもなるんですけれども、資金負担の問題で先ほど来、事前徴収か事後徴収か、それから公的資金をいかに少ない金額で済ませるかということも含め議論があったかと思いますけれども、いずれにせよ、今回のKey Attributesの背景となったような金融危機のことを考えますと、事前にせよ、事後にせよ、民間の負担ということを考えるときには、多くの大規模な金融機関が同時に破綻するということや、先ほどお話がありましたとおり、銀行だけではなくて、証券会社、保険会社、このような各種の金融機関が同時に破綻するということもありうることを念頭に置く必要があると思います。仮に事後にその資金負担を業界から集めるとしますと、先ほどお話がありましたとおり、そういったものがプロクシカリティの問題を生むだろうということが1つあろうかと思いますし、他方で事前に集めるとしますと、一体どのような状況を想定した上で集める資金を考える必要があるのかということは相当難しい問題になるだろうと考えております。

特に、事前に集めることが必要ないわゆる破たん処理のためのファンドの大きさとして、どのぐらいの規模の破たん、どのぐらいの極端な状況を想定するのか。そうしますと、さまざまな金融機関の状況の把握ということについても、これまで以上にいろいろな情報なんかを出していただく必要があるだろうということがありまして、相当の負担になるだろうということは考えられるかと思います。

前回の繰り返しになるんですが、そういったことも考えますと、どこで線を引くにせよ、もちろん国民負担というものは最小限になることが望ましいとは思いますけれども、業界からの徴収では足りない部分については、やはり公的資金による手当というものについては残しておく必要があるだろうと。それについては、現状、日本にある公的資金を想定した破たん処理制度というものは、これを維持する方向で考えていく必要があるだろうと個人的には考えております。

以上、感想でございます。

○岩原座長

ほかにございますでしょうか。

○梅﨑明治安田生命保険調査部長

明治安田生命の梅﨑でございます。今日はこのような場に参加させていただきまして、どうもありがとうございます。今日からオブザーバーとして参加させていただいておりますが、先ほどから、2ページの「対象となる金融機関」のお話が続いておりましたので、一言だけ述べさせていただきたいと思います。

今回、制度の対象は、あらゆるシステム上重要な金融機関ということで、金融機関の範囲が幅広に議論されるということになっております。ただ、決済機能を有しない金融機関にはシステミックリスクがないというご意見もございますし、また、先ほどご当局の話も出ておりましたけれども、国際的な議論の中では、伝統的な保険業務を行う保険機関にはシステミックリスクがないというご意見も出ております。

今回、このような形で金融システムの安定にかかる制度のあり方について議論されることは、大変重要なことと思っておりますし、我々が参加させていただくことも、大変、よろしいかと思っております。ただし、今後、具体的な話を進めていく際、委員の皆様には、各業界の特性を踏まえた慎重な議論をお願いしたいと思っております。繰り返しになりますが、特に、伝統的保険業務を中心とした我が国の生命保険会社ということでいいますと、システミックリスクとの関係の点から慎重なご議論をいただければと思っております。どうぞ、よろしくお願いいたします

○岩原座長

確かに伝統的な保険業務というのは決済機能を持っていらっしゃいませんから、伝統的な意味でのシステミックリスクとは直接には関係されないということだと思います。ただ、今、新しい問題として意識されてきておりますのは、システミックリスクのあり方が変わってきているということです。いわば、マーケット型のシステミックリスクとでも申しますものが問題になってきました。具体的には、債券等の金融商品の価格が暴落することによって、それが時価会計による減損処理と市場連動型リスク管理システムの下において、高いヘアカット率等を呼んで、金融機関が自己資本比率維持のために保有する金融商品の売却を促進し、どんどんと金融商品の価格が落ちて、それによっていろいろな各種金融機関が持っている金融資産の内容が劣化していって、流動性の取り入れも困難になって、それがいわば連鎖的な問題を起こすのです。短期金融市場等の金融のマーケット自体がそういうふうに崩壊しするわけです特に現在では、流動性を確保する資金調達を、銀行からの借り入れによって行うのではなくて、短期金融市場等のマーケットから資金を調達したりする割合が非常に大きくなっている。そういう中で新しいタイプのシステミックリスクが起きるようになっているのです。そういう意味では、市場性のある金融商品を非常にたくさん保有しているような機関が破綻等を起こすと、それが保有している金融商品の価格の暴落を通じて、いわば金融商品、証券の市場における新しいタイプのシステミックリスクを起こすのではないかというようなことが海外では問題にされています。そういう点については、恐らく保険会社を含めた検討が必要になるのではないかという感じがしております。

○大崎委員

今の岩原先生のコメントにもあった点ですが、オブザーバーの方のご懸念についても何となく理解はできるんですけれども、私もこの検討の対象をある種の業態ですぱっと切って、ここは要らないというふうにしてしまうことは非常に危険なんではないかと思っております。ただ、このことは、先ほどから出ています費用負担をどうするのかという話とも非常に密接にかかわっていると私は思っておりまして、対象を幅広にするからといって幅広な人たちから事前にいろいろ徴収するんだという話にすればするほど、仕組みとしてはつくりにくくなるのかなと思います。また、事前徴収を原則としながら、費用を納めていない人たちは対象にしないからと言っていると、そこに大きな穴があってそこから本当に現段階では予想しなかったようなシステミックな大問題が起きてしまったら、これはまたせっかくこういう議論をした意味が全くなくなってしまうと思うんですね。ですから、この辺は、何も私は、だから全部事後でやりましょうとか、公的資金も用意しておきましょうとかいう結論に拙速に駆け込むつもりは全くないんですけれども、ただ、このことを、ここのバランスをとらなきゃいかんということは十分意識して議論しなきゃいかんなと改めて思った次第です。

○岩原座長

ほかにご意見等はございますでしょうか。

今、大崎委員もおっしゃいましたように、まさにリーマンの経験を経て、従来と違った形で起きてきている金融危機、新しいタイプのシステミックリスクにどのように対応するか、が課題です。現在の金融危機対応制度は縦割り、業界ごとの制度をつくっているわけで、金融機関についていえば預金保険法、保険会社についていえば保険業法というように、縦割りの制度になっているのですけれども、それだけで新しいタイプの金融危機に対する備えとして十分なのかということが、多分、このワーキング・グループで検討すべき課題の1つではないかと理解しております。違う見方等もあると思います。ぜひご指摘いただければと思います。いかがでしょうか。

例えば、大きい機関が保有している債券を処分するのではないかといううわさが市場に流れただけで、市場に大変な動揺を与えたことを我々は最近経験しているわけでありまして、そういった問題にいかに対応していくかということが検討課題として必要かと思っております。

いかがでしょうか。ほかに。

ご発言がないようですので、座長の権限を濫用して発言させていただきますと、さっき翁委員からご指摘があったように、SIFIs、システムにとって重要な機関をあらかじめ決定するというのは、これは大変難しいことであって、アメリカで今まさに苦闘しているということは、さっき藤本さんからご説明がございました。これに対し、EUのディレクティブの場合は、規模の大小にかかわりなく、すべて新しい破綻処理制度の対象として検討するようにということを言っております。そのように、こういう新しいタイプの金融システム安定等のための破綻処理等の仕組みを考える際に、対象をどう決めておくかというのは非常に大きい問題だと思います。

それから、費用を事前負担にするか、事後負担にするかというのは、確かにこれは理屈と実際と両方で大問題だと思っています。小野委員からご指摘がありましたように、理屈としては多分、事前負担が、そういうコストを内部化するという上で、筋が通っていると思うんですが、一方でそれの負担をあらかじめどのように制度化し、かつ拠出された資金をどうやって運用するのかというような、実際上のいろいろな問題が出ます。現行法でいえば、例えば保険業法は、保険契約者保護資金の負担金が制度上は事前負担になっていますが、実際には、今までずっと事後負担だったんです。先に破綻した保険会社がたくさん出てしまって、それの資金援助のために先に借入によって支出がなされ、各保険会社の拠出した負担金で、後からその借入金を払っていた。それがやっと今払い終わって、まさに、これから先、制度上の建前どおりの事前負担の制度として運用していくのがいいのかどうかというのが、まさに今、問題になってきています。現実の問題として、こういう事前負担、事後負担のどちらが望ましいやり方かということが突きつけられてみると、それは理屈の問題のほかに、今、申しましたように実際上の運用の問題があり、理屈と実際上の運用の両面を考える必要があるのではないかという感じがします。

○森下委員

預金保険に関しましては、昨年、保険料率に関する議論がありました。預金保険は事前徴収を実施しているわけですが、預金保険に関しても、今、岩原先生がおっしゃられたような様々な問題が議論されてきたと思います。事前積立をするといっても、想定の仕方によっては、途方もない金額を事前に積み立てねばならず、それが経営にとっての大変な負担になるというようなこともあろうかと思います。そうしますと、ある程度の割り切りも考えないといけないと思いますし、預金保険に加えて破綻処理のための費用の事前積立てということになりますと、日々の業務に対する負担が重くならないかどうかという点もかなり重要な問題として存在すると思います。

○小野委員

先ほどの私の質問に関連して、さらにお尋ねしたいんですけれども、先ほど藤本参事官から丁寧にご説明いただきまして、費用負担に関しては、P6で言っているのは一時的な資金供給、流動性供給のための費用だということで、そこは私ちょっと誤解していたんですけれども、だとすると、どこまでが一時的な資金提供のコストで、どこから先がそうじゃないパーマネントなコストなのかという問題があるように思います。私が誤解して、念頭にあったのは、日本の金融危機のときに預金保険で対応したコスト、つい最近までは債務超過が解消せず、回収まで長々とかかったコストの話でした。しかし、仮にリクイデーションのための一時的なブリッジファイナンスのようなコストであれば、それは、そんなに大した金額でもないので、そこは金融業界全体で賄う仕組みをつくりましょうという理屈もないのではないのかなと思います。逆にいうと、一時的な資金提供のコストは業界負担で、そうじゃない損失部分はベイルインの仕組みで、破綻した金融機関の株主なり債権者なりがちゃんと負担しましょうという合意が、Key Attributesにおいてできているという理解でよろしいですか。

○藤本信用制度参事官

そこのところは、必ずしもはっきりはしておらずに、かかったコストというものがあれば、それは民間部門で徴収するようなメカニズムが設けられるべきだということになっています。モラルハザードのところは、そこのところで若干この資料のつくり方がぼやっとしているのかもしれません。同じ言葉を違った意味で使っているのかもしれません。ただ、小野委員がおっしゃるように、なるべく最初は自分でベイルインなり何なりで、株主なり債権者が負担できるような仕組みをつくってみましょう、その間、必要であれば流動性を供給しましょうと基本的にはそうなんですが、やはり各国とも、何かそれ以上かかった損失が生じたときの仕組みというのを、EUのディレクティブでも、アメリカのドッド・フランク法でも定めているところであります。

○岩原座長

こういう費用の負担というのも流動性の供給だけといった一時的なものだけで済まない可能性がありますので、そうすると、まさにさっきご指摘のあったような、いわば外部経済を考えて、そういうものをいわば社会全体で負担することにするのかという問題がどうしても最後は出てきてしまうということになると思います。その負担のあり方をどうするのが一番いいのかというのは、まさにこのワーキング・グループで考えていただくということになるかと思います。

いかがでしょうか。ほかに何かございますでしょうか。

あまりにも重い問題なので、なかなか議論がしにくいのですが、いかがでしょう。

特になければ、かなり早いですけれども、これぐらいで本日の議論を終えさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。

それでは、活発なご議論をいただきまことにありがとうございました。若干時間は早いですけれども、一応ご議論が尽きたようでございますので、本日の審議は終了させていただきたいと存じます。

本日の金融機関の破綻処理の枠組みに関しまして、さまざまなご議論をいただいた、ご意見を整理しまして、次回、第6回は金融機関の破綻処理の枠組みにつきまして、引き続きご議論をいただくことを考えております。

それでは、事務局のほうからご連絡をさせていただきます。よろしくお願いします。

○藤本信用制度参事官

次回の日程につきましては、皆様のご都合を踏まえながら座長と相談の上、別途ご連絡させていただきます。

事務局からは以上でございます。

○岩原座長

どうもありがとうございました。

それでは、以上をもちまして本日の会議を終了させていただきます。

どうもありがとうございます。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企画課信用制度参事官室(内線3566)

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