金融審議会「金融システム安定等に資する銀行規制等の在り方に関するワーキング・グループ」(第10回)議事録

1.日時:

平成24年11月12日(月)10時00分~12時00分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 共用第一特別会議室

○藤本信用制度参事官

ワーキング・グループの開催に先立ちまして、お手元の資料の確認をさせていただきます。資料として、事務局説明資料というのが1つ。それから、これまでの事務局説明資料というものです。この中に参考資料なども織りまぜております。ご確認をお願いいたします。

○岩原座長

どうもありがとうございます。

それでは、ただいまより「金融システム安定等に資する銀行規制等の在り方に関するワーキング・グループ」第10回会合を開催いたします。皆様、お忙しいところをお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。

それでは、本日の議事に入らせていただきたいと存じます。本日第10回は、「金融機関の破綻処理の枠組み」につきまして、議論をしたいと存じます。事務局から説明をお願いいたします。

○藤本信用制度参事官

お手元の事務局説明資料というのをご覧いただきたいと思います。表紙をおめくりいただきます。1ページ目でございます。一番上に論点というものを書いてあります。ここでありますと破綻処理制度全般です。その下にFSBの主要な特性、Key Attributesの要約を書いております。左にいきまして、これまでの主なご意見、右側に議論の整理というものを出しております。一番下には、現行の預金保険法102条の金融危機対応措置を中心に、参考となるものを書いております。

まず、破綻処理制度全般でございます。FSBの主要な特性では、深刻な金融システムの混乱回避、納税者負担の回避、株主や債権者に損失を吸収させることを可能とするメカニズムを通じた重要な経済的機能の確保を図るということが課題となっております。

これまでの主なご意見でございます。銀行の破綻法制は、我が国の金融危機の経験もありまして、預金保険法において比較的整備されているが、改善の余地がある。リーマン・ブラザーズの破綻処理等の経験を踏まえて、新しいタイプのシステミック・リスクにどのように対応するのかという観点があり、縦割りの制度では十分なのかについて検討する必要がある。流動性の欠如というのが言われることが多いのですが、資産の劣化にも対応できるようにしていく必要がある。小口預金の保護という意味での信用秩序の維持に限られない目的、仕組みとする必要がある。具体的な制度設計にあたっては、各業界の特性を踏まえた議論が必要であるというような意見が出されております。

右側の議論の整理でございます。今回の制度の見直しは、リーマン・ブラザーズの破綻等に端を発した国際的な金融危機の中で、システム上重要な金融機関の破綻が市場を通じて伝播して、実体経済に深刻な影響を及ぼすおそれがあるということに対応したということが明らかになったことを踏まえたものである。国際的にもサミット等で合意されておりまして、諸外国においては新たな包括的な枠組みが整備されているところでございます。

次の丸ですが、我が国においても、こうした国際的な流れを踏まえて、資金決済といったものを通じた伝播する危機だけではなくて、市場等を通じて伝播するような危機に対して、金融機関の秩序ある処理に関する枠組みを整備することが必要ではないのか。

具体的には、金融危機時に金融機関について、預金保険機構による監視のもと、流動性供給・資金援助等を行いつつ、金融システムの安定を図るために不可欠な債務等の履行・継続を確保しながら、市場取引等の縮小・解消を図ることにより、市場の著しい混乱を回避し、その秩序だった処理を可能とする枠組みを整備すべきではないかとしています。ここの内容については、また後で少し敷衍したものが出てまいります。その枠組みの発動については、手続の話ですが、金融危機対応措置と同様に高度な判断を要するため、金融危機対応会議の議を経て、内閣総理大臣が必要性というのを認定することが適当ではないかとしております。

1ページをおめくりいただきまして、2ページ目でございます。対象となる金融機関、主要な特性では、あらゆるシステム上重要な金融機関に対し適用されるべきとされております。

これまでの主な意見でございます。銀行に限らず、持株会社等、証券会社、保険会社を含めて、システム上重要な金融機関について検討を行う必要がある。G-SIFIs、グローバルなSIFIsである金融機関に限らず、市場のセンチメントによっては、どういう金融機関がシステム上の波乱要因になるかわからないので、建設的な曖昧さがあってもよいのではないか。伝統的なシステミック・リスクはなくとも、マーケット型のシステミック・リスクにより連鎖的に金融市場の混乱をもたらすことはあり得る。金融商品を大量に保有している金融機関は、金融資産の市場価格の変動を通じて、市場において新しいシステミック・リスクを引き起こす可能性がある。特定の業種のみを制度の対象から排除するのは、システミック・リスクという観点から問題があるのではないか。一方で、金融庁の監督対象の範囲を基本的に考えていくべきではないか。単体としては重要性が低い金融機関であっても、集団的な動きによってはシステミック・リスクになり得るものがあるのではないか。投資運用業は、清算機関の機能強化等による対応というのも考えられるのではないかということです。

右側に参ります。議論の整理です。金融市場における急速な信認低下、破綻時における混乱、実体経済への影響を回避し、金融システムの強靭性を保持するために、金融市場、金融業全体についてセーフティーネットを構築することが重要である。特に、預金取扱金融機関以外の金融機関については、我が国においてもですが、その秩序ある処理が必ずしも制度的に担保される枠組みが整備されておらず、危機時に無秩序な処理が行われるおそれがある。これは新たな制度を新たに設ける必要がある。

預金取扱金融機関についても、現在の金融危機対応措置に加えて、金融システムの安定を図るために必要な債務等を保護することを可能とする制度を設けることで、事案に応じた柔軟な対応が可能となるのではないか。このため、今回の措置の対象は、金融業全体、ここでは預金取扱金融機関、保険会社、金商業者、持株会社等と書いておりますが、こうしたものとすることが適当ではないか。

なお、システミック・リスクの発生とか、その具体的な態様を見通すことはできないことを踏まえて、その適用範囲をあらかじめ線引きしておくことは適当ではないのではないかとしています。

3ページ目です。FSBの主要な特性は、当局の権限としてさまざまな、ここに書いてありますような広範な権限を有すべきとされております。

これまでの主なご意見ですが、我が国の金融危機の経験を踏まえれば、過小資本の段階で資本増強措置が講じられることは、モラルハザードの問題に留意する必要があるが、金融システムの安定にとって重要であると考えられる。

預金保険機構には預金取扱金融機関の破綻処理に関するノウハウが蓄積されている。システム上重要な金融機関のために、破綻処理を実行する主体について、大きな組織を新たにつくるのは避けるべきである。

破綻処理において、監督当局と連携しつつ迅速な処理を行う準備をすることと、実際の処理において迅速に破綻処理すること両方が重要である。体制整備が必要と。預金保険機構の機能を強化の対応が図られるべきである。その上で、保険契約者保護機構や投資者保護基金との連携を図っていく必要があるとしています。

右側でございますが、市場の著しい混乱の回避のために必要と認められる場合に、預金保険機構が破綻処理の体制、ノウハウを有するということで、預金保険機構が金融機関の財産の管理処分権を掌握することとし、金融機関に対して必要な命令を行うことが適当ではないか。その際、保険の保護機構とか投資者保護基金といったものとの連携を図っていくことが重要ではないか。

金融機関が債務超過でないことを前提とした話が次に出てきます。そういうことを前提に、市場取引等の縮小・解消を図りつつ、預金保険機構が流動性の供給をして、全債務を約定どおり履行させることを確保しながら、必要に応じて資本増強も可能とする措置が必要ではないか。

次の場合というのは、金融機関等が債務超過等の場合でございますが、そういう場合には、金融システムの安定を図るために必要な債務等を承継金融機関、ブリッジ金融機関でございますが、迅速に引き継ぎ、その際に資金援助をすることによって債務を履行させる。その他の債務等は基本的に清算するといった措置が必要ではないか。

金融機関の秩序ある処理においては、金融機関の債権者にも負担を求めるため、契約等に定められたベイルイン条項のようなものですが、そういうものは発動させることが適当ではないかとしています。

4ページ目でございます。引き続き、当局の権限でございまして、ちょっと違った観点の話でございますが、左側で、グループ単位での破綻処理に備えた施策を検討していくことが重要ではないか。制度上・運用上、グループ単位での処理に近づけるさまざまな方法があるのではないか。

再建計画の段階ではグループ単位で再建することになっているけれども、リゾリューション、処理計画の段階ではエンティティー単位で処理を行うということをどう考えるかという視点が重要である。

システム上重要な金融機関に対する管財人といった機能は、個別金融機関の処理というミクロな機能に加え、金融システム安定というマクロな機能を持っている。

債権者の破産手続の申し立てや強制執行等に対応していくということは、民事再生手続の中であれば、問題とならない。なお、我が国法制上、債権カットなどを行政手続のみで行うのは難しいのではないかとしております。

右側でございますが、グループのホールディング会社、グループを構成する金融機関のどちらに対しても、相手はホールディングであろうが、個別のグループを構成する金融機関のどちらに対しても、先ほど申し上げたような流動性供給、資金援助、資本増強を可能とすることが適当ではないか。

危機時に金融機関の企業価値の低下を防ぎながら、カウンターパーティ・リスクの発生や市場機能の喪失を回避しつつ、事業譲渡等を活用して迅速に秩序ある処理を行うために、次のような措置というのを検討する必要があるのではないか。後で絵を付けておりますけれども、こういう措置が必要ではないかというのを列挙しております。

債務超過でない場合における株主総会等の特別決議等にかわる許可による事業譲渡。債権回収の一時停止の要請。債権者からの倒産手続の申し立て、強制執行等への対応。対象金融機関からの資産の買い取り。債務移転に係る債権者の承諾等の不要化。金融機能を維持するため必要な弁済、あるいは金融商品取引業者や外国銀行支店に関する倒産手続申立権の当局への付与。契約等に定められたベイルインの発動の認定でございます。

5ページ目に絵がございまして、左側に危機に瀕した金融機関というのがございまして、その経営権・財産管理処分権に対し預金保険機構が何らかの関与をする。流動性供給を行う。金融システム維持のために必要な取引というのを、上のほうですが、事業譲渡によってブリッジ金融機関に移して、あるいは最終受皿金融機関に移す。移らなかったものについては、倒産処理手続等による清算等を行う。上の受皿金融機関といいますか、救済金融機関といいますか、そういうものに対して資金援助等を行うというようなイメージでございます。

民事再生手続の中で事業譲渡を行うとなると、これは早い場合もあるのですが、一般的に金融機関の場合は債権数などが多いということで、最低でも半年から1年程度かかっているというのが、これまでの経験でございます。こういった手続によらない迅速な処理を行う必要があるということで、下でございますが、デリバティブ契約等の早期自動解約条項が発動されると、カウンターパーティ・リスクの発生、市場機能の喪失というおそれもあるということで、こういった条項が発動されないようにする必要がある。

それから、金融機関から資産が流出すると、企業価値の低下ということがございますので、債権者からの倒産手続の申し立て、強制執行等への対応が必要となる。

債務超過でないと、株主総会決議を省略して事業譲渡は不可ということでありますと、迅速な破綻処理が困難な場合もあるということで、資産超過でない場合における株主総会の特別決議等にかわる許可による事業譲渡等を可能とする必要がある。自動解約条項をとめている間に、ブリッジ金融機関に事業譲渡を何らかの許可によって、株主総会にかわる代替許可によって行う。その重要な取引は履行させて、残ったものは清算するというようなイメージであります。

6ページです。今の早期解約条項の発動の停止ということで、FSBでは、この条項の発動を一時的に停止する権限を有するべきということです。これまでの主のご意見でございますが、金融システムの安定の観点から、デリバティブ取引等の一斉な巻き戻しやドミノ倒しのようなデフォルトの連鎖を防ぐために、一定程度停止する必要がある場合があるのではないか。これは私法上の合意ではあるのだけれども、そういう場合があるのではないか。

こういった条項について制限をかけるのであれば、破産法、民事再生法、会社更生法の規律を排除するということも必要になるのではないか。そういう条項について制限をかけるのであれば、倒産法制の特例を規定するといった方法もあるのではないかといったご意見でございます。

議論の整理のほうですが、デリバティブ取引等が一斉に解約されると、カウンター・パーティにも影響が及び、金融市場の不安定化につながる可能性がある。

また、デリバティブ取引等の早期解約によって、資産価値が急速に毀損してしまうことを通じて、秩序ある措置が困難になる可能性もある。

当局の権限で一定程度こうした条項の発動を制限することについて、国際的な合意もなされているところであって、主要国においてはそういう立法化もなされているところがある。

こうした点を踏まえて、金融機関の秩序ある処理、あるいはこれに付随する事由を原因とする解約の効力、これがトリガーになるような自動解約の効力について、市場の著しい混乱を回避するために必要な範囲において、その効力の変更・停止を可能とすることも適当ではないか。米印ですが、預金保険法の102条の金融危機対応措置にも、同じことが当てはまるのではないか。その場合、デリバティブ取引等を強制的に終了させ、ネッティングして清算するとの一括清算法・破産法・民事再生法・会社更生法等の法的効果は生じないものとすることが適当ではないかとしています。

7ページ目でございます。破綻処理のための費用ということで、FSBの主要な特性では、一時的な資金提供のコストを賄うため、民間資金で賄われる預金保険、破綻処理基金、または業界から事後徴収するメカニズムが設けられるべき。一時的な資金供給はモラルハザードを防止するため、厳格な要件のもとでなされるべきとされています。

これまでの主なご意見でございます。納税者負担を回避することは現実的には難しく、納税者負担を最小化するという観点が重要。金融業界からの徴収では足りない部分については、公的資金による手当てが必要である。この点、現行の預金保険法は参考になり、これを維持する方向で考えていく必要がある。

ベイルインをする場合でも、損失を吸収されない可能性があるので、負担をどうするかという視点が重要である。

費用負担については、外部不経済の問題があり、そのコストを内部化するという観点からも議論をする必要がある。

誰を制度の対象とするかという点と、誰から費用を取るかという点をバランスをとりながら検討する必要がある。

費用負担については、預金保険等との関係を考慮する必要がある。

費用負担については、モラルハザードの問題やプロシクリカリティの問題を回避するためには事前負担が適当である。一方、事前負担とする場合には、あらかじめ制度化して拠出された資金をどのように運用するのかなど、現実的には問題がある。また、費用負担を事前負担にすると、必要額の算定が難しいということに加えて、預金保険等に加えて、通常の営業に対する負担という観点も重要である。

費用負担については、リスクベースとした場合に、どのように算定するのかという問題があるというような意見が出されています。

右側でございます。議論の整理でございますが、金融機関の流動性が枯渇すると、営業が継続できず、企業価値も毀損するほか、カウンター・パーティにも影響が出る。それを防ぐため、預金保険機構が速やかに流動性供給できるようにするために、政府保証を付した上で資金調達できるようにすることが適当ではないか。

金融機関の秩序ある処理に伴う費用負担については、金融市場・金融業全体でセーフティーネットを構築するという考えのもと、現在の金融危機対応措置と同様に、万一損失が生じた場合の負担は、金融業界の事後負担を原則とするか。ただし、事後負担の徴求により、金融システムの安定に極めて重大な支障を生じさせるおそれがあるといった例外的な場合には、政府補助も可能とする必要があるのではないか。

金融機関の秩序ある処理については、危機対応という性格に鑑みれば、預金保険機構の危機対応勘定で経理することが適当ではないかとしています。

8ページです。その他ということで、国際的な連携の話、あるいは再建・処理計画についてのご意見、議論ということでございます。これまでのご意見でございますが、再建・処理計画の策定など、事前の制度をどうするかとあわせて検討を行う必要がある。

グループで国際的に活動する大規模な金融機関の活動について、クロスボーダーでの破綻処理を実務上どうしていくのかについてシミュレーションするなど、あらかじめ検討しておく必要があるというご意見でございます。

右側の議論の整理でございます。金融機関の秩序ある処理を可能とする制度が整備された場合には、それを踏まえつつ、大規模で複雑な業務を行う金融機関の再建・処理計画の策定を引き続き進めていくとともに、あらかじめ円滑な処理の実施のため、金融機関のグループ内外との取引状況の適時の把握や、そのための必要な態勢整備を進めておく必要があるのではないか。

クロスボーダーの話ですが、特に外国金融機関の現地法人や支店の処理については、FSB等における監督当局間の議論や、処理実施機関相互の対話等を通じて、国際協調を確保して、金融システムの安定を維持しながら、グループで国際的に活動する大規模な金融機関の秩序ある処理を検討する中で、情報共有等を図っていくべきではないかとしています。

以上でございます。

○岩原座長

どうもありがとうございました。

それでは、議論に移りたいと存じます。ただいまの説明に関しましてのご質問、ご意見を承りたいと思います。どなたからでも結構でございますので、ご発言をお願いいたします。

和仁委員どうぞ。

○和仁委員

最初にこれは全然内容、議論とは関係ないのですけれども、2ページ目のところの、これまでの主なご意見のところの2つ目の丸のところで、コンストラクティブ・アンビギュイティというのを建設的曖昧さというふうにおっしゃっているけれど、これは解釈論の曖昧さが正しい訳だと思います。

○岩原座長

藤本さん、いかがですか。

○藤本信用制度参事官

解釈論ですか。

○和仁委員

解釈論。コンストラクションを、法律の解釈。よろしいでしょうか。

それから次に、ちょっと分けて議論されたほうがいいのではないかと思うのですが、論点1のところの議論の整理のところで、2つ目の丸ですが、我が国においても、こうした国際的な流れを踏まえて、資金決済だけでなく云々というのがあります。枠組みを整備する必要があるということなのですが、今回はファイナリティの話も入れられたほうがいいのではないかと思うのです。セトルメント・ファイナリティ、ペイメント・ファイナリティ、日本ではその辺の議論を全然きちんとやっていなくて、解釈論でかなりカバーしていますけれども、要するに、例えば決済機関に支払インストラクションが来た。しかしながら、その直後に金融機関が破綻してしまった場合に否認権との関係を一体どうとらえるのか、そこのところの整備が全然できていない。EUはダイレクティブを出しておりますし、アメリカも立法による解決をしていますが、そういう形でのファイナリティということに関して、我々は今まで極めて鈍感だったわけですけれども、そこのところの規定を設けることも一緒にやられたほうが、私はシステムの安定性ということからは、よろしいのではないかと思います。

続けてコメントさせていただきますと、次の2ページ目のところで、議論の整理の下から2つ目のところでは、今回の措置の対象は、金融業全体とすることが適当ではないかという所ですが、ご趣旨は全くそのとおりだと思うのですけれども、これは金融業の下に入っている子会社も入れるというご趣旨でよろしいのでしょうか。何を言いたいかというと、連結倒産させるための手続を今回導入するのか、どうなのか。連結倒産させないと、多分目的とされているところは達成できないのではないだろうかということをご質問しておきます。

それから次が、3ページのところの、やはり議論の整理で4つ目なのですが、金融機関の秩序ある処理においては、金融機関の債権者にも負担を求めるため、契約等に定められたベイルインを発動することが適当ではないかとされています。でも、契約には書きたがらないのです。だから、これはやはり法律上の要件として一定の債権はベイルインさせるぞということを記述せざるを得なくなる。難しいというのはわかるのですけれども、やはりそういう立法をしておかないと、債権者を抑え込めないというところがありますので、その意味では、例えば保険業法なんかも事実上一種のベイルインを採用していますけれども、あれも別に契約で定めているかという話ではないです。契約の段階でベイルインなんか書いたら、みんな契約しなくなります。やはりそこのところを、法律による措置ということで規定されるのがいいのではないかと思います。

それから、申しわけありません、4ページにいきまして、やはり2つ目の丸の黒ポツの下から2つ目なのですが、金融商品取引業者・外国銀行支店に係る倒産手続の申立権の当局への付与、これは必要だというのはよくわかります。ただ、これは似たような状況なのですけれども、銀行等の海外における支店、こういうのに対しての申立権はどうなるのか。

それからもう1つは、海外支店の資産、海外子会社も対象になるのか、そういうものの資産が、自動的に例えば承継銀行に移るとか、そういう場合のことをどうすべきか考えておいていただきたいと思います。例えば、ドイツの銀行では、本店レベルでは承継銀行、バッドバンクとグッドバンクのほうに資産を移しました、日本でも当然移りましたという主張を向こうのレギュレーターはされるわけですけれど、とても日本の銀行法では、そういうことは対応できないのは当然です。

しかしながら、現在の日本の銀行法で対応はできないけれど、ドイツではそういうことが対応できるという形にして、海外の資産についても、国内の金融整理管財人なりが権限を持っているということであるならば、日本の金融機関の場合でも、海外では海外資産についてどういう権限を与えるのかということも議論をしておく必要があるのではないかと思います。海外のことは、そのときになってからと思われているとすると、ちょっとそれは問題なのではないかなと思います。

6ページのところで、私は一応デリバのほうの人間なので、申し上げておきますと、自動終了というのは、何もデリバティブに限った話ではないわけです。金融機関がほかの金融機関との間で結んでいるファンディング・アグリーメントとか、そういうのもみんな倒産になったら自動終了という形で、我が国の金融機関が相手になっている場合には、そういうことになっております。いざおかしくなってきたときには、銀行はお金を調達できない。コミットメントラインを使えない。枠を使えないということで、そういう状況になってしまうことを予定しているわけで、自動終了禁止の処分をされるということは、これは別に金融庁がやられるということであるならば、それはそれで構わないのですけれども、その場合には別にデリバだけの話ではない、同様の規定を置いているほかの契約も対象とすべきなのでしょう。

要するに、自動終了条項を持っている契約については全部、3日間なり2日間なりその効力を止めるという形での話にされたほうがよろしいのではないかと思います。

あとは、有効なネッティング契約をバーゼル上、自己資本規制で要求しているわけですけれども、こういうふうに猶予期間を置いたということで、有効なネッティング契約にならないということには、そもそもならないのではないかと思いますけれども、これはむしろ金融庁のお考え方次第ですが、自動終了になっていないから有効なネッティング契約ではないということではなくて、政府が介入する場合は別で、それ以外の場合は有効に契約が切れるのだから、有効なネッティング契約として自己資本計算上、カレントエクスポージャーでやってしまっていいという、そういう点をきちんと押さえた上での立法をお願いしたいということでございます。

私からは以上です。

○岩原座長

かなり多くの論点がありましたが、事務局から何か。

○藤本信用制度参事官

対象機関で、資料ですと2ページ目の下から2つで、金融業全体となっているけれども、子会社は入るのかということです。持株会社をベースに見ますとその下にある兄弟会社とか、あるいは金融機関の下のものも対象とするということを考えています。

対象とするという意味は、このページの最初の丸が3つありますけれども、こういった措置の対象にするということです。それをグループの中でどのようにグループ全体として捉えるのかどうなのかという論点が、当然のことながらございまして、それを4ページ目に書いてございまして、ここでは制度上はグループのホールディングと、グループを構成する金融機関のどちらに対しても、どのような形であっても、どのような組み合わせであっても対応できるようにしようということを考えております。

では、グループ全部で倒産手続というのを今回見ているかどうかについては、そこまで対応は、ちょっと今のところ考えておりませんが、まずこういう措置を、どの組み合わせでもできるようにしようと考えているところであります。

○岩原座長

今のお答えですが、子会社も対象とする措置を考えているけれども、グループ全体の倒産手続とすることは考えていない、それは具体的にどういうことになるのですか。この管財人の権限というのは、一体どこまで及ぶことになるのですか。

○藤本信用制度参事官

管財人の権限は、基本的にエンティティーに及びます。管財人という名前がいいのかどうかわかりませんが、ここでは預金保険機構の側、必要な命令を行うといったようなものですが、それはホールディングに対しても措置を打つことは可能ですし、子会社に対しても措置を打つことが可能だということで、グループ内にいる者であれば、どれに対しても措置を打つことが可能であるような仕組みにしたいと思っております。

○岩原座長

何らかの措置を行うことができるが、経営権などは管財人に移行するわけではない、そういうことですか。

○藤本信用制度参事官

3ページですと、預金保険機構が金融機関の財産の処分管理権を掌握するというのは、一番上ですが、これはホールディングであろうが、金融機関の子会社であろうが、そういうことが可能となるような措置にしようということでございます。

○岩原座長

そうすると、子会社等についても管理権は預金保険機構に移管されるということですか。

○藤本信用制度参事官

それが可能となるような仕組みにしようと考えているところです。

○岩原座長

それはさっきの倒産手続には入らないということとはどう違うのですか。

○藤本信用制度参事官

対象を、グループを全体として倒産手続に入れるというのは、我が国の倒産手続法でも、そこまでは至っていませんということを申し上げたまでです。

○岩原座長

そうすると、新しく設けられる行政的な手続の対象にはなるけれども、司法的な倒産手続の対象にはならないというような理解なのでしょうか。それとも違うのでしょうか。

○藤本信用制度参事官

ご質問が、グループ倒産手続ではないかというご質問だったものですから、グループを対象として、グループを倒産させるという手続を考えているわけではないのですけれども、グループを構成するエンティティーは全て対象となって、エンティティーごとに管理処分権を預金保険機構なりが掌握するということの組み合わせでやっていくということです。

○岩原座長

和仁さん、よろしいですか。どうぞ。

○和仁委員

すみません、私は質問したのではなくて、やっぱりグループも倒産させないとだめなんじゃないですかということを申し上げたいのです。イメージ的には藤本さんのおっしゃっているやり方は、今の銀行の倒産のさせ方と一緒であって、要するに、預保が入ってきます。でも、会社更生法なり、破産法は、また別の手続として認識しますという形でおやりになっているわけですけれど、でもグループになってしまうと、やはり資産が子会社の中、あるいは関係会社の方へ動いていってしまうということがあり、それも対象としなくてはいけないということになると、そこのところでの管理権をどうされるのでしょうか。倒産していない子会社に対して、この預金保険保護なりの権限で事実上倒産しているのと同じような権限を預金保険機構が持つということをイメージされているのか。その場合には、倒産法との関係はすべからく無視というか、あまり考えないでやるというご趣旨なのかどうなのか、それがよくわからない。

なぜかと言うと、4ページでそういうことを言いながらも、金融商品取引業者・外国銀行支店に係る倒産手続の申立権の当局への付与と書いてありますから、この2つのシステムをどういうふうに整理されるのかというところがよくわからない。保険業法では、確かに会社更生法と保険業法で手に手をとって走るようなシステムになっていますけれども、こちらではどうお考えになられるのか、それがちょっとイメージとしてよくわからないということでご質問し、なおかつ私の立場としては連結倒産をさせたほうがいいんじゃないですかということを申し上げているのです。

○岩原座長

藤本さん、どうぞ。

○藤本信用制度参事官

今の点は、例えば、資料で言いますと5ページをごらんいただきたいと思いますが、金融商品取引業者とか、外国銀行支店に係る倒産手続という話の流れですと、例えばそういうものが左の危機に瀕した金融機関だとします。そうすると、まず倒産処理手続外でブリッジ金融機関に重要な取引を移すということがあって、その後、残ったものについては倒産処理手続による清算等というのが考えられると思っていまして、そういうところで当局の申立権というのが出てくるというようなイメージでございます。

○岩原座長

三井さん、どうぞ。

○三井総務企画局参事官

ご質問の趣旨が、例えば金融機関の下にSPCとかペーパーカンパニーとか信託勘定とかがあって、それが多くの場合、今は金商業法の定義が広がっているので、金商業者になる可能性は高いですけれども、そうでないエンティティーもたくさん現実には含まれているという場合、それらについて、金商業者ではないので、金商業者に対する当局の申立権の対象に必ずしもするつもりがあるのか、ないのかというご質問があって、かつ、仮にするつもりがあったとしても、どこまで更生特例法で広げられるのかという法制的な問題があるのではないか。

理想的に言えば、まず今回の破綻法制の中で、行政的に金融機関の破綻に向けたさまざまな行政上の措置、金融整理管財人であるとか、資金援助等の仕組みを、持株会社に一発打てば、グループ全体に自動的に効果が波及するような仕組みにするかしないかという点があります。

意図としては、グループ全体で何らかの処理をしていかなければいけないと私どもは思っていまして、それは法技術的に法制的にどう温めていくかというのを今、検討しております。したがって条文作成も含めた法制的なところも、現時点ではまだ完成できてはいないということで、気持ちはここにありますようにグループ全体、あるいは一部の子銀行なり、子証券、子保険の単体でも、いかなる形でも対応できるようにしたいと、まず1つの骨格となる考え方をお示ししてございます。

その上で、実際に、例えば100ある関連会社、子会社について、危機認定をする時点で、具体的にどのような措置を講じていくのかといった、その技術的なやり方については、この骨格についてある程度コンセンサスを得られた後、さらに詰めていく必要があります。

それからもう1つは、倒産法制上、連結破産手続とか、連結会社更生手続というのを現時点でお願いできるかどうかということについても、大きな課題だと思っていますが、これは子法人100あった中に、金融機関、証券、保険、金商業、さまざまな金融庁の所管にある金融機関と認識できない子法人も多々存在いたしますので、それが直ちにこの法制で実現するかどうかというのはなかなか難しい課題でして、いずれにしましても、実際上あるいは現実的に、グループ全体という観点から適切な処理等が行われるような方策を検討していきたい。

場合によっては子法人それぞれについては、その大半については破産、清算手続や売却などを粛々と進めていく中で、ここの5ページにあるような承継させて承継させるべきものについては承継金融機関に承継させて、そして金融機能を維持していくという処理ができるようにする必要があるかもしれません。

○岩原座長

大崎委員、どうぞ。

○大崎委員

1点だけ、ちょっと意見を申し上げたいと思うのですが、ここの議論の整理と書いていただいていること、私は基本的にこういう方向でいいのではないかと思っておるのですけれども、対象範囲と費用負担の関係について一言申し上げたいのですが、2ページでその措置の対象は金融業全体ということが書いてあって、7ページで金融業界の事後負担ということを書いてあるわけですけれども、このときに、具体的に措置の対象となった金融業者が、金融業界全体のどこに属するかということで、事後負担の範囲が大きく変わってくるようなといいますか。

例えば、ここの業態のものがなると、ここの業態しか事後負担してはいけないとか、しなくてはいけないとかいうようなことを事前に限定するような仕組みには、できればしないでいただきたいということがちょっと気になりました。

事後徴収については、何らかの基準で、誰が幾ら負担するということを最終的に決めていかなければいかんわけですけれども、ここの参考のところに書いていただいているように、現行の預金取扱金融機関については、負債の額に応じてということで、かなり明確に事前に示されているわけですが、なかなか、いろいろな業者をとってきたときに、何の額がいいのかというのは一義的に決めにくいと思うのです。しかも、どういう形でリスクが顕在化するかというのは、この時点では、ある意味想定できないものもあるわけで、想定できないことが起きても対応できるようにというのが今回の趣旨だと思いますので、事前の算式とかというのは決めにくいでしょうし、決めるべきでもないと思っております。

例えば、現行の法制でも、金商法の清算機関の規制のところで、清算基金が全部枯渇してしまった場合には、清算会員に負担してもらうということが法律に書いてあるわけですけれども、あれはたしか具体的な算式というのは、特に規定されていないと理解しておりまして、そういうようなやり方で法令はつくっていくのがいいんじゃないかと思います。

○岩原座長

川波委員、どうぞ。

○川波委員

今、大崎委員がおっしゃったことと、ほぼ同じような感想を持っておりましたので、私も一言つけ加えさせていただきますけれども、費用負担ということについて、これまで事前か事後かという議論があって、それをどうバランスさせるかという議論があったと思います。

今の大崎委員のご意見は、金融業といってもさまざまな業界、あるいは金融業者の間でのバランスをどうとるかということで、ご意見を述べられたと思うのですけれども、事前の負担ということについて言えば、前にお配りくださった金融機関の利用者保護のための機構、基金ということで、21ページにおまとめになっている、預金保険機構と、それから保険契約者保護機構と、それから投資者保護基金ですか、こういう、一応枠組みがあるわけです。おそらくこれがベースになって、事前の負担ということが考えられると思うのですけれども、事後負担となった場合に、それぞれ金融業の性格も、その中身が違うわけですし、預金取扱金融機関の場合は、非常にペイメントシステムに深くかかわっているということでありますし、負債の額に応じた負担ということもありましょう。

ただ、保険会社、それから証券会社等々の場合には業態が違いますし、それをどういうふうに事後負担となった場合にバランスさせていくかというところが極めて重要で、算式をつくるということまでは、なかなか難しいと思いますけれども、どういう基本的な考え方で、その業界の間のバランスをとっていくかということは、少なくとも理念的な考え方程度のものはしっかりさせておいたほうがよろしいのではないかということを私も申し上げておきたいと思います。

○岩原座長

ほかにございますか。

翁委員。その後、小野委員にお願いします。

○翁委員

3ページのところで1つ申し上げたいのですけれども、預金保険機構がかなりの権限を持って進めていくということになっておりまして、債務超過でない場合、債務超過の場合ということで、こういった措置を考えているわけですが、そのためには、やはり今の体制は十分かなという感じがいたしまして、と申しますのも、FDICなんかは事前に立ち入りするということが預金保険はできるわけでございますけれども、日本の場合は、そういった権限がないということで、やはりこういうふうに瞬時にいろいろな判断を求められて、また事前にいろいろな対応で準備をしておくということになりますと、もちろん金融庁や日本銀行との連携というのをますます強化していくことは大事だと思うのですけれども、例えば一緒に立入検査ができるとか、そういったような権限も認めていかないと、なかなか事前に周到な準備をすることが難しいのではないか。そういう意味では、預金保険機構の機能も、もう一度検討することが必要ではないかと思います。

○岩原座長

よろしいですか。それでは、小野委員、どうぞ。

○小野委員

すいません。費用負担について幾つかお伺いしたいんですけれども、まず最初に、Key Attributesの最初のところで、まず損失を吸収するのは株主や担保で保護されない債権者であるということなんですけれども、今回ご提示いただいたものでいうと、おそらく3ページになるかと思うんですが、まず、債務超過の場合には、基本的には株主や債権者は原則として法律どおりのロスをこうむるという理解でいいのかというのが1点です。

それから2点目として、債務超過でないときに介入したときの株主や債権者による損失負担というのはどういうことを考えていらっしゃるのでしょうかというのが、もう一つの質問になります。ちょっと最初にそれを教えていただいて。

○岩原座長

藤本さん。

○藤本信用制度参事官

3ページで、まず後のほうの、債務超過でない場合の話ですが、そのときは流動性を供給すれば、契約がそのまま履行されるということでありますので、それについては基本的に負担というものが、生ずることは考えにくいと思っています。

それから債務超過の場合はどうなるかということですけれども、5ページ目の図で申し上げますと、経済上重要な取引というのは、ほかのところ――ブリッジ金融機関などに移って、そこに資金援助等が行われて、そこで損失が生じていて、流動性だけでは足りないとなると、そこで一定の資金援助に伴う負担が生じます。

一方で、倒産処理手続のほうにいった場合に、残った部分は倒産処理手続で債権カットなどがなされて、株主、債権者などが負担をするといった全般的なイメージであります。

○小野委員

そうしますと、最初のケースなんですけれども、債務超過でないケースで例えばベイルインのような何かが発動することは想定されていらっしゃらない。

○藤本信用制度参事官

そこで3ページの一番下の、契約等に定められたベイルインというものがあれば、それは発動させるということです。そういうものは発行されにくいのではないかとかというご指摘が和仁委員からもあったんですが、一定の部分については自己資本規制などに組み入れられていて、そういうものをその他Tier1とかに算入するといった取り組みもあります。外国の例を見ますと、自己資本規制対応とは別にそういうものを発行している金融機関も幾つかあるようでございます。そういうものがあれば発動させるということでうs。どういう具体的な場合かということについては、いろいろ技術的な問題があると思うんですけれども、発動させるということでございます。

○小野委員

すいません。それを伺った上での意見なんですけれども、今回、Key Attributesの中で債権者なり株主なりがロスをこうむれるような仕組みにしなければいけないというのは、もちろん事後的な費用負担の公平性という問題もあるんでしょうけれども、それ以上に金融危機を起こさないような仕組みをつくるためには、それぞれの金融機関の株主なり債権者なりが、自分が負ったリスクに対して、ちゃんとそのリスク認識をしなければいけないという前提があるんだろうと思うんです。

今おっしゃったように、例えば債務超過でない場合には、特段、ベイルイン等を除けばないということだと、なかなかそこで費用負担の認識をするのはちょっと難しいのではないのかという印象があります。なおかつ、万が一ロスが生じたときには、業界で事後負担でやりますということになると、これも危機を起こした張本人のところでは何もロスが生じないことになってしまうので、そこはやはり、何らかの形で事前の費用負担、生じたロスは当然確定できないので、そこの足りない部分は事後的に考えざるを得ないと思うんですけれども、以前にいただいた資料ですと、EUは何か事前徴収と事後徴収と組み合わせた形になっているということでしたけれども、そこの部分である程度、それぞれの金融機関が事前の意味で負っているリスクに対して、それに見合った、その部分はシステムに対して負荷をかけているわけですから、システムに対して負荷をかけている部分の徴収というメカ二ズムが何らかあったほうがいいのではないかというのが私の意見です。

したがいまして、事後負担でということは理解できるんですけれども、何らかの形でシステムに対する負荷を算出して、その上でその金融機関から徴収するような枠組みがあったほうがいいのではないかという意見です。

○岩原座長

事務局から何かありますか。

○藤本信用制度参事官

1点。7ページのこれまでいただいた主なご意見で、事前徴収には利点があるというご意見はいただいております。そういうご意見があるのを理解できますし、ある意味では理想的なものだとは思います。ただし、今回の検討の対象にしている場合は、市場を伝って伝播するという点については大体共通していると思うんですけれども、何が引き金になって、どうやって損失が生じて、その危機がどういうふうに伝播して、一体幾ら損失が生ずるのか生じないのかはわからない。損失額はいつ確定するのかもわからないといったものです。こうした前提のもとで、自分が負担するのだからこういうふうに行動を変えるといったインセンティブシステムというのがどれだけ働くのかなという難題もありまして、ここでは事後負担ということで整理させていただいたらというところではあります。

それから、EUの場合も事前なんですが、目標は今後10年かけて預金取扱金融機関の預金の1%まで積むことであります。必ずしも目標がどうも預金ベースになっているようです。EU各国のいろいろな状況を踏まえたものだと思いますが、そういうものとなっております。

○岩原座長

大崎委員、どうぞ。

○大崎委員

今の点なんですけれども、やはり事前にとっといたらというんですが、いわば応益負担を徹底するような考え方をとり始めると、例えば、途中で廃業したら積み立てた分は返すのかという話だって出てくるかもしれません。というのは、いっぱい廃業してたくさん積み上がっていると、もしほんとうに事前負担の重い、低いがインセンティブに大きな影響を与えるとすると、その基金が積み上がれば積み上がるほど、リスクを無視した行動をとるという理屈になってしまうわけですよね。そうすると、その分は返しておいて、今いるメンバーからとっただけでやったほうがいいのではないかということにもなりかねないと思うわけです。

やはり預金保険は、保険事故というのが何であるかが明確だから、ちゃんとお金も計算できて、積み立てることができるという、ある意味では危機対応のツールとしては、私は非常に特殊なものなのではないかと思っていまして、そうでない、何が起きるかわからないけれども備えをしておこうというのが今の議論なので、何か下手に中途半端なものを積み立てることをすると、余計ゆがんだインセンティブを当事者に与えてしまうのではないかなという気が率直にします。

○岩原座長

いかがでしょうか。川口委員、どうぞ。

○川口委員

ほかのところなんてすけれども、4ページ、5ページで、債務超過でない場合における株主総会等の特別決議等にかわる許可による事業譲渡等の必要があるのではないかという点についてですが、会社法で事業の全部とか、あるいは重要な譲渡をする際に、株主総会の特別決議が必要とされているのは、株主の利益に大きな影響があるからだと思います。ただ、民事再生手続において、会社が債務超過である場合は、裁判所の許可を得て、株主総会の決議を経ずに、事業譲渡を可能とする立法があります。このような立法がなされた趣旨は、一般的に、債務超過になっている場合には株主の利益はほとんどないのだから、株主の意見を聞く必要がないのではないか、さらにそういう会社であれば株主はそもそも株主総会に出てくることもないので、決議を経ることが難しいと説明されていると思います。

銀行についても、預金保険法で迅速な破綻処理を行うための緊急措置として、株主総会の特別決議を裁判所の許可で代えることを許容しています。本日提案されましたスキームでは、債務超過に至らない場合でも同様の対応を可能にする必要があるということです。ただ、債務超過のおそれのみあるという状況では、まだ株主の利益が存在すると言えますので、債務超過の場合と全く同じに解してよいのかという点については、意見が分かれるのではないかと思います。

他方で、銀行の破綻処理が特に公益性を帯びている、迅速性が必要である点を強調できるのであれば、株主の利益を多少犠牲にしても迅速な処理をすべきだという話になるのではないかと思います。そういう点で会社法の特別法を預金保険法で定めることは不可能ではないと私自身は思います。現実にも、預金保険法で株主総会の特別決議の要件自体を緩和する規定も既に存在しているわけです。

ご質問なんですけれども、株主総会の特別決議等にかわる許可は裁判所の許可ということでよろしいでしょうか。あるいは、最初のほうで少し触れられておられましたが、金融危機対応会議の議を経て内閣総理大臣が判断するということを想定されているのでしょうか。もう少し詳しく教えていただければと思います。

○岩原座長

藤本さん。

○藤本信用制度参事官

許可の主体ですが、預金保険法ですとか倒産処理手続法にありますように裁判所の許可が基本ではないかなとは思っておりますが、よく政府内でも検討していく必要があります。その際の論点としますと、裁判所は今は債務超過かどうかという判断をしなければいけないので、そこの部分を判断して許可をしているのだと思いますが、債務超過要件を課さない場合において、何を判断したらいいのかという論点もあるかもしれません。いずれにしろ誰がどうやって判断するかというのを検討していかなくてはいけないと思います。

○川口委員

株主の利益を犠牲にして公益を守るということは例外的な措置だと思いますので、迅速性を重んじながらも慎重な手続をお願いしたいと思います。

○岩原座長

松井さんも、その件ですか、どうぞ。

○松井委員

いえ、ちょっと違います。

○岩原座長

そうですか。では、その件で小出さん。

○小出委員

先ほど川口委員がご質問された件に関しまして、川口委員のご説明のとおりで、会社法においては、事業譲渡に関しては株主総会特別決議が要求されるというのが原則ですが、民事再生、それから今の預保法の87条1項においては、裁判所による代替許可というものによって事業譲渡ができるということであります。会社更生や特別清算でも、同様に株主総会の決議なく裁判所の関与で事業譲渡ができる場合があります。これについては、一般的には民事再生の場面では既に株主の持ち分は実質的にはゼロになっていることを前提とした上で、株主に代わって裁判所の代替許可によって事業譲渡を認めるということだと思いますが、しかし民事再生の場面において、たとえば債務超過であったとしても、ほんとうは株主の持分がゼロではあるとは限らないわけで、会社が復活する可能性があることを考えれば、理論的には何らかの価値が存在する可能性はあるのだと思うのです。

では、こういった場合であっても、民事再生法などが事業譲渡について株主総会決議ではなく裁判所の代替許可で行えるとしているのはなぜか。おそらくは株主の持分の価値がゼロであるとはどういうことかというと、結局、株主はそういう状況になると、機会主義的な行動に走る。すなわち民事再生などの手続きでは、たとえば民事再生法第1条にもありますとおり、事業の再生という目的のために手続が進んでいるにもかかわらず、株主は既に自らの持分がゼロに近い状況があるものですから、自分の利益だけを考えたような行動をとる可能性があって、そういったことは民事再生などの手続の目的に反する、だから株主に事業譲渡の可否の判断をさせるのは望ましくないという考え方があるのだろうと思います。

そう考えますと、債務超過にまだ至っていなくても、債務超過のおそれがある状態であるということは、相対的にはやはり株主の持ち分が大変小さくなっている。そうすると、株主の機会主義的行動の危険性という点については、これは債務超過でも債務超過のおそれがある状態でも相対的な差異にすぎないのではないかと考えられますので、そのように考えますと、やはり同様に預金保険法の手続が金融危機対応会議等の決定に基づき始まったということであれば、預金保険法上の目的、すなわち信用秩序の維持というより高次な目的が優先されて、したがって、その実現のために株主総会決議を経ずに事業譲渡を行うことは説明可能なのではないかなと思います。

先ほど川口委員がおっしゃられましたとおり、こういった場合には株主の機会主義的決定ではない、公益性に沿った決定を行うということが求められると思いますので、その意味では裁判所という公正な判断を期待できる主体が、それについて決定する制度が望ましいのではないかなというのが私の意見でございます。

○岩原座長

それに関するご意見はほかにありますか。では、松井さん。

○松井委員

この件に関しましては、会社法の立場というのは、今、ご説明いただいたとおりのものだと思いまして、ただ債務超過というのはやはり小出委員がおっしゃたように一義に決まるものではなく、財があっても株主が、そのエンティティーの意思決定者としてふさわしくない場合というのもあるということでありますので、法律の目的に応じて決めの問題として存在するのかもしれないと思います。信用秩序の維持という観点から、もはやこの事業体には再生ではなくて、清算しか道がないと決められるのだと誰かが公正に認定できれば、それが特別決議を飛ばす正当事由になり得るのかなと思います。手続のほうも公正につくる必要があると思いますけれども、迅速に行うという要請の関係で、2日程度で行うことを想定していることですので、ある程度金融機関の安定、非常に特別な場合でありますので、ということも考えるべきではないかと思います。

ついでなんですけれども、今回の事業譲渡なのですが、先ほどご説明がありましたとおり、100社以上のようなグループにわたる事業をブリッジ金融機関に粛々と譲渡していくのを2日程度でやるということでございますので、この最初のとめている期間中に何をするのか、それができるのか、受ける機関が現実に全てうまく決まるのか。非常に大きな金融機関が破綻をするということで、ある子生保、あるいは子証券会社というところを何か別グループに移すときに、一緒に移したほうがよいとか、別グループに移したほうがよいとかいろいろなことを考えなくてはいけないと思いますので、2日程度でできる内容というのは細かいことを詰めていく上で、非常に厳格に考えてできるような制度をつくるのが大事ではないかなと思いました。これは感想です。

○岩原座長

森下委員、どうぞ。

○森下委員

今、松井委員がおっしゃられた点に関しましては、事前にリゾリューション・プランなどで、よく練っておくことによって対応できる部分もあるのではないかと思います。また、100社全部について事業譲渡するのではなくて、コアとなるホールディング・カンパニーの事業を移転した上で、そのあとはホールディング・カンパニーが経営管理権などを通じて子会社の営業を管理していくことを想定されているのではないかと思います。そういう点からしても、経営管理権について、しっかり事前にリゾリューション・プランなどで規律をしておくことが、こういったシステムを動かす上では大事なのではないかという気がいたします。

それで、質問させていただきたいのですけれども、3ページ目の一番上の丸のところに、注のマークで、保険契約者保護機構や投資者保護基金との連携を図っていくという記載があるのですけれども、これは、例えば1つの金融グループの中に銀行と証券会社があるというような場合において、銀行については預金保険の払い戻しが発動しているけれども、投資者保護基金は全く何も動いていないとか、そういう連携のとれないようなことはあまりふさわしくないというご趣旨であって、例えば、預金保険のほうは比較的余裕があるので、預金保険のお金を投資者保護基金に回すとか、そういった業態を超えた資金の行き来のようなものまではお考えになられていないというようなことで、これは確認なのですけれども、よろしいでしょうか。

○岩原座長

藤本さん。

○藤本信用制度参事官

現在、保険契約については保護機構で、それから、投資者の分別管理がなされていなかったことに対する損失については保護基金ということで、そういう役割については金銭的なものも含めて現行のものを有効利用していきましょうという意味でありまして、全部預金保険機構に一緒にするとかというようなことを考えているわけでは全くありません。

○岩原座長

和仁委員、どうぞ。

○和仁委員

先ほどの事業譲渡のところなんですけれども、4ページですか。それから5ページの図なんですけれども、2日ぐらいで事業譲渡をやらなくちゃいけないとなっています。公正な手続とかそういうふうにおっしゃっていますけれども、2日でそういうものをやるといったら、おそらく裁判官はできないと思います。普通の民事再生だったら、かなりの期間つき合っていますから大体の状況を把握して、それで処理をすることができますけれども、許可を出すというのは、裁判所は、これは普通の仮処分とか仮差押えと異なって、ちょっと類型化されづらいような案件なので、仕組みとして、例えば金融庁がまず許可を出して、それを後から株主に争わせるとか、そういうふうな仕組を、これは会社法の先生方にはいろいろご意見があるところだとは思いますけれども、そういう新しいシステムを考えられたほうがいいのではないかなと思います。

○岩原座長

はい。何か事務局のほうはありますか。

○藤本信用制度参事官

多分、それはやはり相当な準備が必要だというふうには思っておりまして、仮に裁判所が絡むという場合にも、裁判所も含めて相当な準備をするということになるんだと思いますが、ご指摘の点も踏まえて検討したいと思います。

○岩原座長

和仁委員。

○和仁委員

幾つか。確かに公正なんですけど、これは、事業を譲渡させてしまうというのは、実は政治的な判断であり、経営上の判断なので、裁判官がそれをやってくれるかということについて、実は私はすごく心配しているところです。

○岩原座長

確かに、裁判所は一体何を判断したらいいのか、何を基準に許可を出すのか、多分、非常に裁判所は悩まれるのではないかと思いますね。

さらには、債務超過がどうか、形式的な基準として裁判所の判断も可能なように見えるかもしれませんけれども、実際にこういうことが起きたときには債務超過だったかどうかというのは後になってみないとわからなくて、手続を始める段階では、深刻な財務状態であるということはわかっても、最終的にそれが債務超過ということになるかどうかは、やってみないとわからない。しかも、手続きをやっている間にどんどんマーケットなんかは変わってきますから、手続きに入ったときは債務超過でなかったのが、後から債務超過になっているということもありますし、いろいろ変わってきますので、非常にフレキシブルな手続を考えざるを得ないのではないかという気がいたします。

ほかに、どうでしょう。

森下委員、どうぞ。

○森下委員

費用の点に関してですけれども、この費用に関しましては、例えば、アメリカのドッド・フランク法ですと、なるべく税金負担を少なくしたいという観点から、流動性供給の観点から投入されるような公的資金については倒産法上の優先権を与えるというような考えがあったかと思います。倒産法上の優先権を変更するというのは債権者の権利にも影響があって難しい点もあるかと思うのですが、先ほど和仁委員からお話があった、例えば、法定ベイルインにしても、例えば、こういった場合の優先権付与にしても、国家の緊急事態であるというような場合に行われる手続という点に鑑みると、一歩踏み切る部分があってもいいのではないかなという気がいたします。そのような優先権を付与することによって事後的な徴収に対する負担というようなものも多少軽減されてくると思いますので、ご検討いただいたらいいのかなと思います。

あと、質問を1点なのですが、和仁委員から国際的な局面についてのお話があったかと思いますが、日本国内で、例えば日本の金融機関について管理処分権の移転などの処分が行われた場合には、それは少なくとも日本の私法上は普及効を持ち、海外の事業や資産についても管理処分権は移転するというような考えが一般的であると思います。外国がそういった普及的な効果を承認してくれるかどうかというのはまた別問題だと思いますが、1つの法人についての管理処分権が日本法上移転した場合には、それは当然、日本法の立場としては海外の事業や財産についても移転している。逆に、先ほど和仁委員からご紹介のあったようなドイツの金融機関についてそのような管理処分権の移転がドイツ法上なされていれば、少なくとも私法上はドイツ法に基づきなされた管理処分権の移転を日本においても承認するという余地はあって、ただ、我が国が、行政法上それを認可するかどうかというのはまた別の問題として存在する。そのような整理でいいのかどうかを確認させていただければと思います。

○岩原座長

藤本さん。

○藤本信用制度参事官

基本的な考え方はそういう枠組みで考えておりますが、実務的にいろいろな問題が生ずることも認識しておりまして、実際にどうするかというのは海外当局ともよく連携して考えていく必要があると思っています。

○岩原座長

国際司法的な問題もあるところですね。

ほかに、どうですか。

小野委員、どうぞ。

○小野委員

すみません、先ほどの費用負担について、追加で意見なんですけれども、先ほど大崎委員からご指摘いただいたとおり、あまり細かい数式なり何なりを決めてやると、また逆の変なアービトラージが働くというのは、それはおっしゃるとおりだと思うんですね。ただ、さはさりながら、多分、今回対象としているのはあくまでシステミックなリスクがあるというような経営破綻処理のケースにおいてどうしましょうかという話であって、そうでないような金融機関であれば通常の処理をするというふうに理解していますけれども、そうすると、全く、変に細かく切り分け過ぎてもよくないのであろうとは思うんですけれども、じゃあ、全くシステミックな、重要な金融機関と認定されないような金融機関までこの費用負担の枠組みに入ってしまうことがいいことなのかどうなのかというのはあると思うんですね。さらに言えば、FSBの場において、グローバルであれ、ドメスティックであれ、今後、システミックに重要な金融機関を認定する作業というのが行われて、我が国もそれに巻き込まれていくということなんだろうと思いますので、その枠組みと連動するような形で事後的な費用負担のあり方についても、事前的な費用負担のあり方についても、大まかな、非常に荒っぽい切り分け方というのはあり得るのではないのかなというのが私の意見であります。

○岩原座長

藤本さん、どうぞ。

○藤本信用制度参事官

その対象となる……、コンストラクティブな話なんですけれども、事前にこの規模のものは対象にします、この規模のものは対象にしませんというものがいいかどうかというところがまずあります。それから、ちょっと費用負担の話をどこまで詳細に議論することが適当かというものがあります。前回申し上げたかもしれませんが、対象となるものが負担するという思考枠組みがいいのか、それとも、ある機関を秩序立てて処理することによって、市場の取引がストップせず、また、波及がどこかでとまるということの利益を誰が受けるのかというほうから考えるほうがいいのかということもありまして、今のような整理をさせていただいているところです。

○小野委員

ありがとうございました。

まず1点、誤解させてしまったかもしれないんですけれども、事後的に見てそもそも想定していないようなところが、実はシステミックに重要だったというときにそういう処理をしないことが望ましいと考えているわけではないです。事前のもくろみどおりにはいかないことというのは世の中、往々にしてありますので。

そう申し上げた上で「何らかの形で」と申し上げたのは、ちょっと適切なたとえかどうかわからないんですけれども、バブルの話で、例えば、金融政策はバブルに対応すべきかどうかというような議論があったかと思いますけれども、そのときにバブルかどうかなんていうのは事後的にしかわからないんだからやりようがないというふうに考える、事後的な対応でよくて、事前には何も考慮しなくていいんだと考えるのか、多少粗くてもマクロプルデンシャルなルールを入れたほうがいいと考えるべきなのかということなんだろうと思います。そこはおっしゃるとおり、考え方としては確かに2通りあり得て、私個人の意見としては、システミックな重要性というのを事前の意味で全く無視していいのかというのはややためらいがあるということであります。

○岩原座長

この費用負担の問題は一番難しい問題であって、両方の考えがあると思います。今、小野委員がご指摘されたように、インセンティブの問題等を考えて、ある程度きめの細かい負担のあり方のルールを考えておこうという考えもございますし、それに対して大崎委員がご指摘されたように、そういう細かいことを、業態の間で分けて負担のあり方を考えるのではなくて、業態横断的に全体として負担するようなやり方を考えるべきだという、考えもあると思います。そこら辺は非常に難しい問題だろうと思います。

何か、それについてご意見があれば承りますが。

梅﨑さん。

○梅﨑明治安田生命保険調査部長

明治安田生命の梅﨑でございます。費用負担のお話になりましたので、業界としての意見を述べさせていただきたいと思います。

やはり、制度として、金融業全体を対象とした場合でも、業務の特性に応じて、システミック・リスクとの関係度合いに違いがあるのではないかと我々は思っています。例えば、生命保険会社の話で恐縮ですけれども、生命保険契約は長期性の負債であり、保険金の請求が一時期に集中することはございません。また、何か問題があって解約が殺到するということになっても、継続した保険料収入がございますので、市場から資金を調達する必要性はあまりないと考えております。

こうした、国際的にも伝統的保険業務と区分されております、私どもの業務の特性に照らしますと、債務超過でない場合に流動性供給の受け手となったり、資本増強が必要となる場面等は想定しづらいところです。米国ドッド・フランク法の話が先ほど出ておりましたけれども、具体的なところはまだ明らかになっておりませんが、費用負担分につきましては、やはりリスクを考慮するという話も出ておりますので、我が国においてもリスクに見合った負担という観点が非常に重要と考えております。

今後、このあたりをご検討される際には、ぜひこうしたことを考慮いただければと存じます。よろしくお願いいたします。

以上です。

○岩原座長

はい、どうぞ。泰松さん。

○泰松みずほフィナンシャルグループ経営企画部参事役兼みずほ総合研究所調査本部金融調査部長

みずほフィナンシャルグループ、泰松です。まず、今回の議論について、ちょっと全体的なことから、費用負担の前にお話させていただきたいと思います。

今回の、あらゆるシステム上重要な金融機関を対象とした破綻処理制度の枠組みの整備、これにつきましてはFSBにおける国際的な合意等を踏まえたものであり、深刻な金融システムの混乱を回避するのに必要な破綻処理を行うものということで、その必要性については十分理解しております。

そうした中でこの具体的な制度の検討に当たりましては、危機発生時にいかに実効的な制度とするかということが最も重要な観点と考えています。本件制度の対象にはさまざまな業態の金融機関が含まれ、そこでの既往のセーフティーネットの枠組み、また、本件から受ける便益の大きさ等が異なることから、業態間での公平性の確保といった観点も重要と考えております。

本日の事務局の資料では、対象となる金融機関、当局の権限、破綻処理のための費用負担等について議論の方向性が示されておりますが、それぞれの論点についてさらに丁寧な議論を行い、制度の詳細を詰めていくことが必要だと認識しております。例えば、今、議論させていただいている費用負担の問題につきましては、事務局案では金融業界の事後負担を原則とするといった方向性が示されていますが、負担をどのように分担するかについては、単に負債額等を基準とするのではなく、各業態における既往のセーフティーネットの枠組みや、本制度から受ける便益の大きさ等を踏まえたものにするなど、十分な検討が必要と考えます。

今回整備する枠組みにつきましては、銀行を対象とした預金保険制度にも影響があるため、銀行界としても大きな関心を持っております。今後の具体的な制度設計に際しましては、民間金融機関の意見も踏まえた上で検討を進めていただきたく考えております。

以上でございます。

○岩原座長

大崎委員。その後、家森委員。

○大崎委員

今のオブザーバーのお話でちょっと気になったのが、業態間の公平ということをちょっとおっしゃったと思うんですが、私は、業態というのがほんとうにきれいに切り分けられていて、お互い全く関係ないみたいな昔の時代だったらともかく、今のホールディングスなんかまで対象にしたような議論の中では、ちょっと、それを言い出すと何も収拾がつかなくてなってしまうのではないかなというのが率直な印象です。

例えば、銀行を主としていると言われているファイナンシャルグループであっても、その中に属する、わかりませんけど、例えば、規制上では第二種金融商品取引業者となっている会社が基点となってシステムリスクを引き起こすということは絶対にあり得ないなんていうことはなかなかいえない話だと思うんですよね。

そういうことを考えたときに、いや、要するに、銀行界なるものがあってそれが幾ら持って、証券界なるものがあってそれが幾ら持つなんていうことをきれいに切り分けるということは、もう不可能じゃないかという気がしまして、当然、事後的な調整はまさにそのときの……、金融庁になるんですかね。ご担当の方々がいろいろ悩まれることだろうと思うんですが、考え方は、まず、できるだけ深刻な危機を起こさないようにするということと、その深刻な危機が万が一起きたときの国民負担を最小にするという、それに尽きるのではないかと思います。

○岩原座長

はい。

それでは、家森委員。

○家森委員

この問題ですけれども、やっぱり先ほど小野さんがおっしゃったのと一緒で、ある程度モラルハザード的な部分も考えておく必要があるのではないかと思います。その意味で言うと、業態というふうに切り分けるのがいいかどうかわかりませんけれども、やっぱり、これによって結局誰かがメリットは受けているわけですから、事後的には少なくとも誰がメリットを受けたかはわかるわけでしょう。証券業界にこれぐらいのお金が行ったということはわかる、保険業界に行ったとわかるわけですから、事前に、ここの文章で言えば、金融業界の自己負担を原則と言う前に、当該取引の参加者を含めてというような感じの注釈を入れて、特に当該取引の関係者に重目の負担がおわされるというのがあるべき姿ではないのかと思います。そうでないと、リスクがあるとわかっていても、これで助けてもらえるということで、ますますリスクのある取り引きに集中するということが起こりやすくなってしまいます。当然、事後的にそういう場合には、一時的に流動性を提供して、いわば後でその業態から返してもらうというぐらいの仕組みでもいいのではないかと思います。繰り返しになりますが、業態かどうかはわかりませんけれども、この制度で特別に保護といいますか、一時的に処理することになった場合に、その関係者に重く負担していただくというのが原則ではないかというふうに思います。

○岩原座長

はい。小出委員、どうぞ。

○小出委員

費用負担、非常に難しい話なのは重々承知しているんですが、今、家森委員がおっしゃられたのは、にお金を注入された業態が実際に受けたお金がメリットなのであるというようなふうに聞こえてしまったのですが、今回議論しているものは、かつての預金保険、いわゆる銀行業界において決済の安全なんかを保つための預金保険とは若干違っていて、やはり金融システムに対する信任を守っていく、つまりマーケット全体の混乱をなるべく防いでいくということで、その意味では、メリットを受けているのは、やはり市場参加者全員なのではないかと私は考えています。最終的に足りない部分は国民負担もやむを得ないという説明がつくのは、マーケットが非常に混乱するという事態を防げれば国民全体がある意味で受益するというところがあるからだと思うんですね。ですので、もちろん各業界のお気持ちは大変よくわかりますし、事後的にその調整というのは十分あり得るかと思いますが、原則的な考え方としては受益者というのは金融市場に参加している者、つまり、一義的には金融機関であるけれども、ひいては国民全体も含めたところであると。そういった意味で、私は個人的にはやはり、あまり業態別に分けて負担を考えるというよりは、大崎委員の言われたような考え方のほうが望ましいのではないのかなというのが意見です。

○岩原座長

田島委員、どうぞ。

○田島委員

ただいまの費用負担の問題につきまして、この措置というのは非常に例外的、緊急避難的な措置であるということから考えますと、やはり事前徴収ではなくて事後負担にすべきだと思いますし、その事後負担の負担方法につきましても、負債額に応じて一律にというような計算式ではなく、やはりこのシステミック・リスクにどのぐらい責任があるか。その責任の所在、あるいはその受益の度合いによって負担割合を変えていくべきではないか。そうしないと、やはりモラルハザードの問題も大きいのではないかと考えます。

以上です。

○岩原座長

はい。

松井委員。

○松井委員

すみません。具体的な制度という点で考えると、危機対応勘定等については借入機構債の発行の限度額などが定まっていると。ほかの保護機構が基金について足りないときに資金調達をするのも限度額があるんですけれども、今のように設計の仕方にいろいろな議論があるということを踏まえると、ここの限度額なんかも考え直しが必要ではないかというふうに思うのですけれども、どのようにするのか決まらないとは思いますけれども、そのような意見です。

○岩原座長

はい。その点、事務局から何かあれば。

○藤本信用制度参事官

ここでは危機対応勘定を利用するということにしていますが、どのぐらいの借り入れ枠にするべきかというのは、財政当局ともよく相談していく必要があるとは思っています。

○岩原座長

これは、その勘定が、借り入れをする形で行うわけですかね。どこからどのような形で借り入れをするのですか。

○藤本信用制度参事官

基本は7ページの上に書いておりますが、政府保証を付した上で資金調達をする。それは債券の発行という形もあるかもしれませんし、金融機関等からの借り入れという形もあるかもしれません。そういうことで調達して、それを流動性供給というものに振り向けていくということです。

○岩原座長

その借り入れは民間金融機関からの借り入れもあれば、場合によれば中央銀行からの借り入れもあるし、債券を発行して引き受けてもらうことあり得るというというようなことですかね。

○藤本信用制度参事官

今の預金保険制度でもそういう枠組みができておりまして、そういうものを利用していくということなのかなと思っております。

○岩原座長

アメリカのドッド・フランク法もFDICが財務省に債券を発行するような形で当面の流動性を確保して供給するということを規定していますので、多分それと似たような仕組みになる。ただ、一旦そういう形で流動性を供給した後、それを事後的に弁済していくのに当たって、現在議論しているような負担のあり方の問題が出てくるということだろうと思います。その際、ドッド・フランク法の場合は、規定上は全て債権者と株主が負担するとして、一切国には負担をさせないというように規定しているのですけれども、多分、それでは終わるはずはないということがアメリカでも指摘されていますので、それで終わらない部分をどうするかということになる。その際には、今議論していただいているような、どういう負担の枠組みを考えているかということが非常に難しいし、重要であるというように思われます。

それぞれのご意見はかなり出たと思いますが、それ以外に何かあれば。

和仁委員、どうぞ。

○和仁委員

事前負担か、事後負担か、皆さんがおっしゃっていることはそんなにずれてはいないと思うんですけれども、事後負担のみでやるということは1つ考えられますけれども、はっきり言いまして、このシステムが発動されるということは、普通あってはいけないことでありまして、ただ、起こったらこのシステムが動いて、マーケットがちゃんとうまく動くらしいという安心感を皆様に与えるための制度であって、そこから言いますと、皆さんが事前にある程度負担をするということも、やはり必要なのではないかと。要するに、がたがたになってしまったところから事後負担とか言い出したというのは、なかなか、ない袖は振れないということも起こって、結局国が資金を投入するという形になってしまう可能性も高いわけで、そういう意味ではやはり事前負担はある程度はあるのではないでしょうか。それはやはり、大崎先生がおっしゃったように、市場参加者全員が負担すべきものだと思います。

そういう区分、システムとしては今の保険業法のシステムってよくできていますけれども、それで、資産も資金もそんなに要らないというお話もありましたけれども、リーマンショックのときのマーケットのシステミック・リスクというのは、まさに持っているものの価格がわからなくなってしまうと。フェアバリューが消えてしまうという恐ろしい状況でして、そうなるとみんなゼロかという話になってしまう。いや、世間常識的にはゼロではあり得ないんですけれども、理論的にはゼロかという話になってきてしまう。それで、そういう状況が防げるんだよと、それを防ぐようなためにこういうシステムがあって、そのために必要な費用は、一部はここから出てくる、一部はほかのところから出てくる、そういう安心感というか説得性を持つような資金負担のシステムを描いておけばいいのではないでしょうか。細かい式をつくって個別にやるというのはなかなか難しい話ではあると思います。さっき大崎先生がCCPの話をしておられましたけれども、一応JSCCでもルールは決めております。最終的に誰がひっかぶるのかというのは。

そういうことから考えるならば、大まかなガイドラインで、要するに、読んだ人が、このシステムなら何とか大丈夫だろう、絶対に大丈夫かどうかはわからないけれど、多分大丈夫だろうという安心感を市場参加者に与える、そういうものを作るべきであって、では、それを裏づけるための資金負担のルールというのはどの程度のものが現段階では必要なのかと考えるべきではないでしょうか。全部事後負担というのは、ちょっと危ないだろうなという感じを私は持っております。

以上です。

○岩原座長

はい。

ほかにご指摘いただくことはございますか。

翁委員、どうぞ。

○翁委員

費用負担の件ですけれども、やはりリスクベースで考えるというのは、なかなかやっぱりこういったシステミック・リスクでの対応というのは難しいと思います。

先ほど藤本参事官がおっしゃったように、どこから起こるかわからないということのほかに、何らかのリスクのガイドを示すと、その取引自体が縮小するという副作用が起こってくるということもあるので、そこが非常に難しいところだなと思います。

それと、あと、このコスト負担に関しては、やっぱりいろいろな規制の動きの中で、例えば、G-SIFIsについては、銀行については高いサーチャージを認められるとか、いろいろな制度が重層的にコストの負担を求める形になっているので、そういったところとの全体のバランス感も、この基金の話だけでなく、よく見ていく必要があるのではないかというのがコメントです。

それから、もう一つ、預保と、保険契約者保護機構と、投資者保護基金の連携が大事だということでありましたけれども、先ほど大崎さんからもお話があったように、どういう危機が起こるかわからないので、その時点、時点で大丈夫かどうかということについて、議論の場というか、ガバナンスというか、そういったものがきちんととれるように、この3つの機構がうまくワークするような仕組みを、あらかじめきちんと整えておくことがとても大事ではないかと思います。

○岩原座長

森下委員、どうぞ。

○森下委員

費用の事前積み立てについてですが、少なくとも、欧米では、事前に積み立てるといったとしても、安心感を与える程度の額というものを算定するのは非常に難しい。現実的に難しいということが、そういった事前徴収ということを非常に難しくしている原因の一つであると思います。

例えば、預金保険料を設定するにしても、どれぐらいまで耐えられる数字を示したら、みんなに安心してもらえるのかということを算定するのは至難のわざです。例えば、固く考えて多くの額を積み立てるということになれば、場合によっては金融機関の日常の業務にも影響するということもあります。事前負担は、一面では理想的なように聞こえますけれども、現実的に考えて、果たして安心感を与える程度のものが可能かどうかという観点からは、難しいという判断も十分あり得るのではないかと思います。

○岩原座長

よろしいですか。事前か事後か、非常に難しいですが、純粋にインセンティブシステムとして考えますと、さっき小野委員がご指摘になったような仕組みを構築しようとすれば、おそらくリスクベースで、負担も、それぞれ業態ごとになるのか、あるいは、もうちょっと違った形になるのか、考えなければいけないのでしょう。そういう方向が、実際、こういうタイプの基金につきどこまで可能なのか、それが考えどころではないかと思います。

そして、流動性について完全に安心を与えるだけのレベルの積み立てが難しいとすると、この勘定のために、さっき出ましたように、預保が債券を発行して、それを最終的に中央銀行などが引き受けるという形を含め、レンダー・オブ・ザ・ラストリゾート機能等を活用して、どこまで安心感を与えるような制度にするかということが、多分、実際上の検討課題なのかなという感じがします。

ほかに何かありますか。私はむしろ入り口を非常に心配しています。最初に議論をしたところですが、一体、どこまでの範囲をこの制度の対象とすることができて、預保なりが権限を持つことができる範囲をどこまでと定めることができるかという問題です。私法上の体系との関係で、どこまでそれを本当に構築できて、他省庁をきちんと説得できるだけの仕組みにできるかというのが、非常に難しいのではないかと思います。

特に、さっきのお話ですと、子会社等についても、預保がそれについての管理処分権を持つということのようですけれども、私法の一般原則から言うと、これはなかなか大変なことです。しかも、子会社の中には、おそらく金融業と全く関係ないものが入っているわけであります。いわゆる従属業務をやっている子会社には、全く金融に関係ないことをやっているものもあるわけです。そういうものを含めて、預保が、一体どれだけ処分権等の権限を有して、以後の措置をスムーズに行い、そして、子会社等を含め、財産の流出や、不正な操作等がなされないように、きちんとスムーズにやっていけるか。

さっきも出ましたけれども、現行法のいろいろな制度とうまく接続して、現在のいろいろな機関、保険契約者保護機構ですとか、投資者保護基金等とうまく連携してやっていくような制度にできるかですね。法制上、考えますと、預保法と保険業法、金融商品取引法、更生特例法等との間の連携をどのようにつくって、全体としてうまくスムーズに進んでいって、こういう場合には、こういうふうな対応がスムーズにいけるようにするということまで、きちんとあらかじめ想定し、シミュレートして、制度をつくる必要がありますので、これは事務当局に大変なご努力をお願いしなければならないのではないかと思っております。

何かございますでしょうか。井上委員、どうぞ。

○井上委員

今の点ですけれども、法的な倒産手続きと、今回、提案・検討されている措置との関係について、きょうのご説明とか、各委員の先生方のご発言を聞いて、こういうことなのかなと理解した点を確認したいのですけれども、2ページの議論の整理の下から2つ目によると、今回の措置の対象は基本的には金融業全体とするということになっています。現在、預金取扱金融機関についての危機対応は、預金保険法の102条で措置されていますが、それと似た仕組みがかなり大きな範囲に広がると理解してよいでしょうか。そうすると、資金援助とか、場合によっては国有化のような措置が一応あり得て、その場合には、5ページの図で言えば、倒産手続きに入る前に、倒産手続きのような重い手続きを使わずに、迅速に資金を入れて、事業譲渡を通してブリッジ金融機関に受け継がれることになります。その受け継がれる中には、受け継ぐブリッジ金融機関に、ぶら下がる形か、切り離す形かはわかりませんけれども、金融業者でない子会社なり、事業なりも一部入ってくることがあり得るということでしょうか。

そこでは、倒産手続きの外ですから、今回提案されているような当局主導の措置がとられて、倒産法と違ってグループ処理が行われるというイメージでおります。これに対して、残された会社は、5ページの下の図の倒産手続きに行きますから、倒産法制の大改正をしない限り、単体ベースの清算になります。逆に言えば、それで問題のないようなものをここに残して単体で清算するということになりましょうか。

そうすると、クロスボーダーの問題については、図の上の部分はグループベースでの処理になりますから、主として当局間の協働が問題になり、図の下の部分は法的倒産処理になりますから、国際倒産法制の問題で解決していくということになるのでしょうか。

○岩原座長

はい。藤本さん、お願いします。

○藤本信用制度参事官

基本的にはそういう全体像のようなものだと思います。ちょっとグループ単位というのがどういう意味かというのはあるんですけれども、グループ単位に着目しつつ、ただ、個別の措置というのは、単体ベースで行うということにならざるを得ないと思います。

1点、現行の102条をほかに広げていくというイメージでも実はなくて、102条は102条で、今までどおりあって、それに加えて、金融業全体を対象とし、市場経由で危機が伝播していくようなおそれがあるものについて、今回の措置を構築するというようなイメージでございます。

○井上委員

最後の点は、預金保険法の102条を広げるということではないと私も思うのですけれども、例えば証券会社、あるいは保険会社について、それに対応するような別の、しかし、類似の措置が取られるということかと思ったのです。そこでの類似というのは、この5ページの図の上の部分をイメージするようなことでよろしいでしょうか。

○藤本信用制度参事官

5ページのものが1つのイメージとしてあり、もう一つは3ページの上から2番目の債務超過でないことを前提にとした措置があるという意味です。

○井上委員

ありがとうございました。

○岩原座長

ほかに。森下委員、どうぞ。

○森下委員

別な点なんですが、これは以前も申し上げたのですけれども、リーマンの破綻処理で問題になった点の中には、グループ企業がばらばらに破綻処理をしたために、健全なときには相互に依存し合って、提携をし合っていたようなビジネス、サービスが切断されてしまって困ったというようなこと。あるいは、記録をお互いに見せ合わなくなって、処理に困難を来したということがあったと思います。

海外の法制ですと、一定の企業については、サービスを継続して提供するような義務を立法の中に織り込んでいる例もあるようでございまして、そのようなことも、場合によってはご検討になられたらいいのではないかと思います。また、これは立法技術的にはなかなか難しいのかもしれませんけれども、グループとしての倒産処理をうまく行うための仕組み、たとえば、実態的な併合をしたり、グループの関連会社の債権を劣後させたりすることによって、グループの関連会社間がお互いに最大債権者になって、その結果、ほかの債権者に渡るものがなくなってしまうという事態を避けるといったことが可能かどうか、ぜひご検討いただければと思います。

○岩原座長

和仁委員、どうぞ。

○和仁委員

これは全然、もっと技術的な話なんですけれども、5ページのところ、6ページでも出てきますけれども、いわゆるデリバの早期終了を二、三日、猶予を置くというんですけれども、これは技術論ですよ、担保のところをどうするかというところ、これを慎重に考えていただきたいと思います。担保にフリーズかけることは、ちょっと難しいと思います。

ところが、こういうふうに、二、三日間、停止処分をかけるとすると、逆に、担保の掛け目がどんどん、担保をもっと入れろということで、掛け目が小さくなってくると思います。そこのところの処理をどうするのかということは重要だと考えます。多分、アメリカのレギュレーターは、それにまだ気づいていないと思いますので、そこのところを市場のルールに任せておくと危ないと思いますので、ご配慮いただければと思います。技術論ですが、申し上げました。

○岩原座長

非常に大事なことですね。先ほど、和仁委員がご指摘になったように、デリバ以外のデフォルト条項についてもどうするか、これも非常に大きい問題だと思いますが、そこら辺のところも、ぜひ検討していただきたいと思います。

ほかに何かございますでしょうか。山手委員、どうぞ。

○山手委員

最後の論点6のところで、1つコメントを申し上げたいと思います。

8ページの論点6の議論の整理のところの2段目でございますけれども、「金融機関のクロスボーダーの処理、特に外国金融機関の現地法人や支店の処理については、FSB等における監督当局間の議論や、処理実施機関相互の対話等を通じて、その国際的な協調を確保しつつ」云々とございますけれども、国際的に活動する大規模な金融機関についての国際的な協調というふうに言った場合には、ここで書かれている外国金融機関の日本における活動に関する日本としての対応という、いわゆるインバウンドの面と、同時に、アウトバウンド、つまり本邦金融機関でG-SIFIsに該当しているようなところが、外国当局に対して、現地で提出するようなものについての、いわゆる国際的な協調という面も両方あるということを、この議論の整理のところでは、両面、見ていく必要があるだろうと思います。

関連資料の同じページ、今までの事務局説明資料の8ページ、「平成24事務年度主要行向け監督方針」ということの中にも、「国際的に活動し、大規模で多様な業務を行う外国の金融機関のリスク管理態勢も十分に踏まえつつ、本邦の当該金融機関のリスク管理態勢の強化を促していく」というところがありますけれども、要するに、本邦の金融機関が海外でどのように対応していくのか、そういった体制について、どうなっているかということもあわせて見ていくことで、両方、整合のとれた協調を図っていくということもあるんじゃないかと思いますので、一つ、コメントをさせていただきます。

○岩原座長

ほかに、よろしいでしょうか。特になければ。

それでは、局長から御発言をお願いします。

○森本総務企画局長

先ほど、井上委員のほうから、現行の102条との関係について、ご質問というか、ご発言があったんですが、これは確かに、制度の個々の規定や、後の処理については、102条と、今回つくろうとしている制度は、類似しているものがあるわけですけれども、これは我々、これから、いろいろ説明していくときには、制度の目的、趣旨は、今の102条とは全く異なるんだということを強調しなければいけないと。言うまでもなく、102条はベイルアウトでございますので、今回は、平たく言ってしまえば、too big to failを防ぐための、実効的に破綻、市場への悪影響を緩和しながら、破綻処理できるようにするための制度ということでございますので、その辺、我々、そういうふうに説明していきたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。

○岩原座長

難しいところですね。

川波委員、どうぞ。

○川波委員

今おっしゃられたことについて、局長に1点確認させていただきたいんですが、公的資金というか、政府補助を入れるということと、ベイルアウトではないということとは矛盾しないと私は考えているんですが、それはどこで担保されているのかということを1点確認したいんですが。1つは、救済目的の資本注入はしないということと、それから、資金供給したら後で返してもらうというあたりなのかなと思うんですが、その点、いかがでしょうか。

○岩原座長

森本さん。

○川波委員

要するに、ベイルアウトではないとおっしゃったことの、どこで担保されているのかということです。

○森本総務企画局長

担保ということになるのかどうかわかりませんが、今回の措置は、破綻処理を基本としながら、しかし、マーケットへの影響をやはり考えなきゃいけないと。そこへの影響、市場の連鎖的混乱を防ぐために、当局が関与すると。その範囲内で、政府のお金が入り、その結果、最後の最後に業界負担や政府の援助というのがあり得るということでございまして、いずれにせよ、政府のお金や公的資金によって、ベイルアウト、救済するという趣旨ではないというたてつけというふうに我々は考えております。

○岩原座長

よろしいでしょうか。

それでは、時間でございますので、本日も大変活発にご議論いただきまして、まことにありがとうございました。時間がまいりましたので、本日の審議は終了させていただきたいと存じます。

ただいまご議論いただきました金融機関の破綻処理の枠組みについては、ある程度、意見が一致したところもあると考えられますので、そういった点については、今後、そのような方向で取りまとめを行っていきたいと思います。

ただ、完全に一致したわけでもございませんので、そういう点については、引き続き、議論をさせていただきたいと思います。次回、第11回は、引き続き、ご議論をいただく必要がある論点について、取りまとめに向けてさらにご議論いただくことを考えております。事務局のほうから、連絡等がございましたら、お願いします。

○藤本信用制度参事官

次回の日程につきましては、皆様のご都合を踏まえながら、座長とご相談の上、別途、ご案内させていただきます。以上でございます。

○岩原座長

どうもありがとうございました。

それでは、以上をもちまして、本日の会議を終了させていただきます。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企画課信用制度参事官室(内線2753)

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