金融審議会「金融システム安定等に資する銀行規制等の在り方に関するワーキング・グループ」(第11回)議事録

1.日時:

平成24年12月5日(水)10時00分~12時00分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 共用第一特別会議室

○藤本信用制度参事官

ワーキング・グループの開催に先立ちまして、お手元の資料の確認をさせていただきます。資料として、ホチキスどめで4つに分かれて配付させていただいております。最初にありますのが事務局説明資料と表紙に書かれたものです。それから、参考資料マル1というのがございます。これは議決権保有規制について前回ご議論いただいたときの資料を、そのままとしております。参考資料マル2というのがございます。これは金融機関の破綻処理の枠組みについての資料でありまして、基本的には前回これをご議論いただいたときの資料でございますが、そのときにいただいた意見などを中心に加筆をしております。附属資料というのがございまして、これは金融機関の破綻処理の枠組みについての参考資料ということで、今までの説明資料ですとか、それをリバイスしたものということでございます。ご確認をお願いします。

○岩原座長

よろしゅうございましょうか。

それでは、ただいまより「金融システム安定等に資する銀行規制等の在り方に関するワーキング・グループ」第11回会合を開催いたします。皆様、お忙しいところをお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。

それでは、本日の議事に入らせていただきたいと存じます。本日の第11回は、これまでご議論をいただいてまいりました各種のテーマについて、取りまとめに向けて議論を行っていきたいと存じます。

まず、銀行等による議決権保有規制5%ルールにつきまして議論をしたいと存じます。事務局から簡単に説明をお願いいたします。

○藤本信用制度参事官

事務局説明資料という表紙がある資料の表紙をおめくりいただきたいと思います。前回この出資規制についてご議論いただいたのは10月31日でございます。そのときに出た主なご意見を1枚にまとめました。

まず議決権保有の上限についてでございます。1990年代の我が国の金融危機は、銀行が経営を支配していた企業の負債の面倒を見なくてはならないということがきっかけになったのであり、5%ルールというのは、そういうことに対応する規制であることに留意が必要である。一方、現在の日本には資本性資金の出し手が不足しているという事実があります。ただ、銀行がこうした役割を担う場合には、大きなリスクを抱えることになるため、適切なリスク管理体制が必要ということです。

地域活性化を図る観点から、上限を中堅・中小企業については引き上げるという基本的な方向性には、異論はないという意見が出されました。また、中堅・中小企業に限ったとしても、さらに非上場企業に限定したほうがいいのではないかという意見がありました。

一方、金融機関が貸付のある企業に対して出資も行うと、その銀行等の企業に対するコミットメントが高まることになります。仮に事業が頓挫した場合に、どのタイミングで引き揚げるか、引き揚げることができるのかといった判断が難しくなる。このため、適切なリスク管理が重要となるという点が出されました。

それから、検討項目の1つで、事業再生会社、事業再生の途上にある会社などの議決権を、銀行等の本体によって保有を認めることについて意見が出されました。そういう方向性については異論はないが、深度ある検査・監督を実現するために、金融庁はどのような仕組みをつくるのかということも議論すべきである。

事業再生会社の株式を上限なく保有するということについては、その必要性は高い。一方で、銀行本体による事業再生会社ですとか、後で出てきますが、事業承継会社、地域活性化事業会社等の議決権保有を上限なく認めるということはどうかという問題提起がございました。議決権保有の上限や期間制限を設けるべきではないか、こういうことがシステミック・リスクの種とならないようにしなければならないという意見がありました。

それから、事業再生の途上にある会社については、大企業も対象にしてしまうと、もしその再生が頓挫するとダメージも大きいのではないかということでございます。

次に、地域活性化事業会社の議決権を銀行本体で持つということについてでございます。地域活性化事業というのは、一体どういうふうに定義されるものなのか、規制の抜け道とならないようにする必要があるのではないかというご意見がございました。

さらに、事業承継会社、事業の承継に伴って銀行等が議決権を保有する、中小企業の経営者がご高齢になられて、ところが承継をする人が決まっていない、あるいは決まっているけれども、その人がお金を持っていないといったようなケースでございます。これについては、こういったものを幅広く認めてしまうと、一般的なM&Aに利用される可能性があるのではないかという意見がございました。一定の条件や期間制限を設けるべきという意見が出されました。

前回の意見を受けまして、またいろいろな方のご意見も、関係者のご意見もお聞きして、さらに検討をして、2ページ以降でございますが、基本的な考え方といったものの整理をしております。

まず5%ルールの見直しに当たっては、他業禁止の趣旨を十分に踏まえることが重要である。他業禁止の趣旨というのは、金融機関が本業以外の事業を行うことによって健全性を損なうことがないようにするという趣旨でございます。

それからまた、我が国においては金融機関が経営を事実上支配していた会社、そういったものの負債について、金融機関が現に出資していた額、あるいは融資していた額を超えた責任を負うことが社会的に求められるということがあったのではないか。これが我が国の金融危機を引き起こす要因の1つとなったのではないか。そういうことも踏まえて、銀行法上の5%ルールが創設されたのではないかといったことにも十分留意する必要があるということです。

他方で、地域経済に資本性資金の出し手が不足しているという状況は否定できないということで、資本性資金の供給主体としての金融機関の役割が発揮され得る環境を整備することも政策課題となっている。

以上を踏まえまして、このため、今般の見直しに当たっては、2つに分けて書いておりますが、現行規制の枠組みを基本的に維持する、そうしつつ、地域経済において資本性資金の供給が真に必要とされる場合において、金融機関の健全性確保に留意しつつ、金融機関によるそういった資本性資金の供給をより柔軟に行い得るようにするということが適当ではないか。こういう基本的な考え方に沿って検討してはどうかと書いております。

そこで、テーマごとの話になりますが、議決権保有の上限ということですが、今言った基本的な考え方と重なる部分が大きいと思います。議決権保有の上限を対象となる企業の事業内容などを問わず、一律に一定限度引き上げることは、上記の考え方に照らして適当か。むしろ金融機関が議決権を取得・保有することによる健全性への影響を勘案して、地域経済の活性化や企業の再生に資する等の効果が見込めるもの等に限定して規制を緩和することが適当ではないかということでございます。

次に、前回かなりいろいろな議論が行われました事業再生の途上にある会社の議決権を、金融機関本体が取得することについてであります。これについては、金融機関がある企業に貸出を行っていて、その企業が困難に直面している。条件変更や債権放棄だけでは再生できず、事業を再構築する必要がある企業があるというのも現実でございます。こうしたケースで、金融機関が一定の株式を保有した上で、企業の再生に関与することが有効になることもある。括弧書きで書いていますのは、ある金融機関がそういう条件変更とか貸出をしていて、いろいろな改善のための措置をとって、それに対してほかの金融機関が出資という形で関与することも考えられるかということを書いております。

それから、前回上限を100%という言い方がいいのか、どういう言い方がよいのかというのはあるのですけれども、これを認めてもいいのではないかということがあります。それに対しては銀行が大きなリスクを負うのではないかという意見がありました。また、100%持たなければいけないのではないかという、若干誤解のようなものが生じたところもあったわけでございます。ここでは事業再生の途上にある企業は、いろいろな整理の過程で株式価値が希薄化している、エクイティが薄くなっていることが想定されて、そういう企業に対する出資というのは、仮に少額であっても、割合ということで言えば何十パーセントということになる場合もあるのではないか。このため、金融機関本体による事業再生の途上にある会社の議決権保有を認めることは、一定の合理性があるのではないか。

ただし、現在投資専門子会社を通じては、事業再生会社の株式を保有することができるようになっておりまして、それは100%まで認められております。本体による保有を認める場合には、この要件と同じでよいか。投資専門子会社を通じた場合には、いろいろな法的整理など、例えば、民事再生の再生計画があるものなどとされていますが、そういうものに加えて、合理的な経営改善のための計画があって、金融機関が債務の全部、または一部を免除する措置などがとられているものといったようなものも対象になっております。銀行本体で持つものについても、そういった限定の仕方でいいかどうかということを検討する必要があるのではないかとしています。

次に、前回は地域活性化事業会社について、金融機関の本体による保有が可能となるといった規制緩和を行っていいかどうかということでした。今回、ここでは地域経済の面的再生(再活性化)事業会社といったコンセプトで書いております。地域経済がますます厳しくなる中で、個々の企業の再生を図るだけではなくて、地域経済を面的に再生・再活性化していく必要がある。その一方で、地域においては資本性資金の出し手が不足している状況にある。このため、こうした地域における企業を面的に捉えて再生・再活性化していくためには、健全性確保に十分配慮しつつ、一定の場合には資本性資金の供給を金融機関が柔軟に行い得るようにすることが適当な場合があるのではないか。

具体的には、そういった低迷する地域経済の面的再生・再活性化されるための事業を行う企業であって、漫然と出資をする、企業を生き長らえさせるというのではなくて、そこの事業の集約や再構築を伴うものについて、株式の形で資本性資金を供給することが考えられるのではないかということです。

次にベンチャービジネス会社の議決権の取得・保有ですが、これは投資専門子会社のもとでの話を書いておりまして、ただ現在の定義ではサービス業等が含まれていないという問題がある。あるいは10年という期間があって、それをより柔軟化するべきではないかということでございます。

事業承継に伴う議決権の取得・保有ということですが、これは現場においては種々のそういうニーズがあると伺っております。この場合も本体が持つというよりも、投資専門子会社を通じて、しかも一定の期間保有するということで、中堅・中小企業の事業承継が円滑に進むことが期待されるという合理性はあるのではないかということでございます。

その他のところは、投資事業有限責任組合の組合財産に議決権が入っているのだけれど、それを行使しない場合に、今は10年という期限がありますが、それを撤廃してはどうか。信託勘定で持っている場合には、規制の適用除外にしてはどうか。デット・エクイティ・スワップは、今、法律のたてつけは、速やかに売りなさいということになっているのですが、実態に合わせて期間を延長してはどうかといったことでございます。

以上でございます。

○岩原座長

どうもありがとうございました。

それでは、ただいまのご説明についてご質問、ご意見があれば、お伺いしたいと存じます。どなたからでも結構でございますので、ご発言をお願いいたします。いかがでしょうか。

大崎委員。

○大崎委員

私、せんだっての議論では5%ルールの見直しについては、かなり積極的というか、聞く人によってはやや軽率だとでもいうか、踏み込んだ対応をしてもいいのではないかという意見を述べたわけですが、もちろんその日もいろいろ議論がありましたとおり、金融機関の他業禁止の趣旨というものを十分踏まえて対応しないと、問題を起こしかねないという、それもよくわかっているつもりでございます。

私が一番持っております問題意識は、例えば企業の再生あるいは地域経済の再生ということで、何らか金融機関が対応をとろうとしたときに、結果的に考えた最善の方策が、この5%ルールに抵触してしまうために、円滑に進まないという、それをとにかく事前に排除しておかなければいけないという、その問題意識だけでございまして、別に、とにかく金融機関がより多くの株を持つことはいいことだなんていうことを言うつもりは全くございませんので、ここに書いていただいているような考え方で、基本的によろしいのではないかという気がいたします。

若干気になる点があるとすると、保有期間を事前に厳格に定めるということについては、状況が変わってきたときに、結果的に保有期間が過ぎてしまったのでという問題が出てくるというのが、ちょっと気になるということと、もう1つは、投資専門子会社の場合と、本体による保有の場合で、要件等についても区別する必要があるかどうか、ここもあまりテクニカルに決め過ぎて、どっちで持っていいのかわからないみたいな話になるのも、あまり益のない議論かなという気がする、それだけでございます。

○岩原座長

それでは、藤本さん。

○藤本信用制度参事官

保有期間のことですが、仮に何年と定めまして、それを過ぎた場合は原則にのって速やかに売りなさいということになります。多分そこでは1年間ぐらい猶予は与えられるということだろうと思います。

現在の実務を見てみますと、例えば今の実務は1年ごとの承認の更新制といったようなものになっておりまして、そこですぐ売らないと法令違反になりますよといったたてつけになっているわけでは必ずしもないということです。

○大崎委員

よろしいですか。その点は理解しているつもりなのですが、例えば順調にいっていればこのぐらいで売れると思って保有していたのだけれども、経済が思わぬ悪い状態になって、なかなかうまくいかない、そういう状態で期限が来てしまうから、やっぱり売らなければいけないというのは、何かある種プロシクリカルな影響を及ぼしかねないという面もあるので、保有期間の最初から全くずっと持ち続けて支配するぞという強い決意を持っているようなものを認めてしまうのは、確かに問題なのですが、あくまで原則とするとか何とかするような何か配慮があってもいいのかなと思う次第です。

○岩原座長

よろしいでしょうか。確かに、もう1点ご指摘がありました、銀行本体で持つ場合と、投資専門子会社で持つ場合と、一体どう違うのか、どういう差異を設けるべきかというのは、なかなか難しい問題だと思います。なぜ違うのかということもあると思います。

いかがでしょうか。小野委員、どうぞ。

○小野委員

ありがとうございます。2点、ちょっと細かいお話を。ご質問というか、質問兼ご意見を申し上げたいと思います。

1つは、今議論になりました銀行本体による保有と、投資専門子会社のようなグループ会社を通じた保有を区別する意味がどの程度あるのかということなのですけれども、前回あるいは前々回のご議論の中で、今日の資料の中にも、そういった文言が多少ありますけれども、銀行が出資をしてしまうと、その出資の範囲にとどまらず、昔の母体行責任のようなことが起こって、リスクが出資の範囲にとどまらないリスクというのが、日本の場合はあるのではないかというご意見がありました。

それは、その懸念はそれなりに理解はできるのですけれど、そういうことを前提としたときに、果たして本体とグループ会社で、本体と子会社の間では一応リスク遮断ができますという法律的なというか、エンティティーの識別をすることにいかほどの意味があるのかというのは、やや疑問です。

ですので、私としては、投資専門子会社に認めている範囲を本体で認めることについては、特に問題はないのではないのかと認識しています。

それからもう1つは、これは規制緩和というか、議決権保有制限をどうするかという話とはちょっとずれるのですけれど、いわゆる地域活性化に関する事業会社、地域の面的な再生が必要だということで、こういった議論になっていると理解していますけれども、この場合は、より普通の企業に対して出資をして、その企業の事業を活性化するというよりも、より一層ハードルが、ある意味で高くて、つまり個別企業の事業を活性化するだけではなくて、地域全体を活性化しなければいけない。

ところが、出資をする金融機関にとってみると、そのときに地域がうまく活性化したときの便益は誰に行くかというと、それは地域のステークホルダーみんなが受けるわけで、そうすると典型的な外部経済の問題になるので、そうであればみんなフリーライドしようという話になるのだろうと思うのです。

その意味では、もしこういうことを行政的に積極的に推進する必要があると考えるのであれば、単に規制緩和しただけでも、普通に規制を緩和して事業会社への出資がある程度できるようになったからといって、それが活発化するかというと、あまりそうも思えないのですけれど、地域の面的な再生については、さらにハードルが高い以上、より一層の何かインセンティブづけというのが必要にならないのかなというのが、ちょっと気になりました。かといって具体的なアイデアがあるわけでもないのですけれども、例えば出資が毀損したときの損金の取り扱いを税務上どうするかとか、その程度の話なのだろうとは思うのですけれども。

ちょっとこれは本筋とはずれるのですけれど、1点コメントまで申し上げます。

○岩原座長

藤本さん。

○藤本信用制度参事官

本体で保有するのか、それとも投資専門子会社で持つのかという論点がありまして、金融機関に聞いてみますと多様な意見があるのですけれども、例えばベンチャーなんかについて言えば、やや銀行の本業とは異なったことをやっていて、しかもそこにいろいろなリスク管理上の1つの子会社という法人で管理をしているので、リスク管理がしやすいという面はあるようであります。

一方で、本体で持つのがどうかというのは、やはり銀行が今やっているビジネスの延長線として事業再生ですとか、そういったものを連続的に考えるという要請もあるみたいでありまして、本体でそういうことをやるといったニーズはあるようでございます。

そこは結局制度に落とし込むときに、投資専門子会社でやるのだから、本体でやってもいいという考え方もあれば、本体でやるのは心配だから、全部やめてしまったらといった考え方もあると思います。そこは今回は現在の制度でも一応投資専門子会社を通じると、リスクの管理が一定のものはできるのではないかという現行の制度もあるものですから、そういうやや中間的だと映られるかもしれませんが、そういうことで規制緩和をしていくというのもあるのかということでお出ししているところです。

○岩原座長

法制度上は、原則としては子会社の持っている株と、親銀行の持っている株を合算して5%ルールを適用することになっており、原則は親で持とうが、子で持とうが同じという原則なのですけれど、政策的な考慮から、投資専門子会社については別ということに現在はなっています。アメリカにおいてもマーチャントバンクについて、そのような株式保有の特則が設けられています。

ほんとうにそれでよいのか、ご指摘のような問題はありうると存じます。

あと、もう1つご指摘になった、外部経済があるのだから、より広いインセンティブ等を考えるべきかということについては、企業再生支援機構等の公的な企業再生の支援の仕組みは既にあるわけですから、そういうのと連携してどこまでやっていくかとか、企業再生等に国の制度全体として対応していく一環として銀行がどこまでのことができるのかというのが、ここでの課題かと思います。

和仁委員、どうぞ。

○和仁委員

私も、特に前回私が言ったことが新聞に載って、ちょっとねじ曲げられたような感じがして、読んだ方が別の印象を持たれたようなので、記事の内容自身については、そうとられたのだろうなと思うのですが。

1点、申し上げたのは、やはりこういうふうな5%ルールを超えた保有をすることのできる銀行について、やはり一定のグルーピング分けをして、ここの銀行はできない、ここからはやってもいいでしょうという区分をすべきではないかということです、要するに今回提案されているのは、病気になった地域経済を立て直すために、いろいろな処置方法があります、だからその武器を、多分地銀になるのでしょうけれども、そういう金融機関に与えてあげましょうということなのだろうと私は理解しております。

ですから、その意味では構わないのですが、やはり前回も申しましたように、一律あなた方はできますよということになると、やれる資格がないような、そもそも能力を欠いているような銀行が、そういう危ないところにお金を突っ込んでしまって、なおかつ地域というのはなかなか銀行も種々のしがらみを抜け出せない世界ですから、逆にずぶずぶとなってしまい、カブトデコムのようなことを起こしてしまうということが起こり得ます。

そういう意味で、やはりどういう銀行がやれるのかという資格の明確化、資本金で切るのか何なのか、いろいろ考えられると思いますが、そういうことで区分したほうがいいと思います。

それから、今ここで議論しているのは地銀さんにやってもらおうということですけれども、北海道拓殖銀行なき後の北海道なんかを見ていると、やはり地銀の力だけではちょっと無理だろうなという感じもします。やはりそういう意味では、メガにも出てきていただきたい。それで彼らの持っているノウハウを使ってやって成功例を出せば、みんなほかの中小の銀行も、できる限りのところでやられるのだろうなと思います。

私も、それから座長もいろいろ保守的なことを申し上げてきましたけれども、それでルールをいっぱい作ってしまうと、今度は逆に事業再生であるとか、そういうことについて機動性のある対応ができなくなりかねませんので、そこのところをどうするのかなということもあります。

それから、前回事業承継の定義がひどすぎるので、M&Aに利用されてしまう可能性があるということは指摘しましたけれども、よくよく考えると、一遍これは利用されてどれだけみんなやれるのか見てみようじゃないかという気も、私はしてきております。要するに元気があって、そこでもうけて成功例をつくってもらえば、多分証券会社とか保険会社だって、新規分野として出ていくことも考えられます。ファイナル・リスク・テイカーですから。いろいろな制限はかかりますが、そういうことを考えて、意図的に穴をあけておくのも1つの手かなという気がしてきております。

最後に、やっぱり今回の改正に当たっては、この間もご指摘があったところですけれど、金融機関による議決権保有というのは、今回の2ページ目以降に書いてあるように、金融機関が融資先の活動に振り回されるということがないようにということで、システミック・リスクを防いで、きちんと国民経済上サービスを提供するという、そういう目的のためにつくられている制度なので、銀行による企業支配ということとはちょっと趣旨が違いますよということを、やはりどこかに明確に規定上あるいは監督指針でもいいですけれども、お書きいただいたほうがいいのではないかと思います。

以上です。

○岩原座長

私も保守的なことを申し上げ過ぎたのかもしれません。確かにおっしゃるとおり、少しでも地域経済等の活性化のために金融機関等、何よりも証券会社ですとか、場合によっては保険会社も考えられると思いますけれども、力を発揮できれば望ましいと思います。

ただ一方で、和仁さんのおっしゃる5%ルールの例外となりうる金融機関等をグルーピング化をするというのは、どうやってそれを行うのか難問かと思います。機動性もあわせ考えますと、形式基準でどこまでグルーピングができるのか、あるいは検査監督等の体制の中で行政が一定の裁量でもってグルーピングするのか、非常に悩ましいところだと思います。こういうことを認めた場合の検査監督の体制をどうするかという問題と併せて難問です。前にここで議論したことともあわせて、多分検査監督の体制のほうも、それに対応したものにならないと、なかなかそういう柔軟かつ機動的なことはやりにくいのではないかと思うのですけれども。

何か遠藤さんありますか。

○遠藤監督局審議官

前にも検査監督の体制どうするかということで、少し発言させていただきましたけれども、今、岩原座長からございましたように、なかなか事前にグルーピング化して、ここの銀行はまさに新しい5%ルールのもとに、これを活用する資格がないという形では難しいと思うのです。そこはやはり銀行全体に適用される新しいルールというものを、どういう形で設定するかという、まさに今、先生方に議論していただいている制度的な枠組みをどこまで決めるのか。あまりにも制約がない状態ということになると、やはり銀行の健全性ということで問題になるだろうと。しかし、あまりにもぎちぎちやってしまうと、結局、地域経済の活性化という目的のために今回5%ルールというものを少し改善しよう、改革しようとしている、その趣旨にそぐわなくなるということなので、いかにそこのバランスをとるかという、まず制度的な議論をやっていただくのが第一だと思いますし、それから5%ルールという中で、既にあるルールでございますので、銀行は出資しているわけです。出資の道をもう少し拡大していこうということでございますので、我々は既に5%ルールが活用されている中で、今までも監督検査をやってまいりましたから、今回の制度的な改正において、それがどこまで広がるのかということを見据えて、我々はさらにプラスアルファとして検査監督としてどこを見なければいけないのかなということを、この間発言させていただきましたように、我々は引き続き内部で検討させていただきたいと思っております。

やっぱり検査監督の要点は、できるだけ金融機関の規模とか特性とか特徴に応じて、我々としては機動的に見ていく、個別に見ていくということでございますので、まさに制度的なルールというのは、これは一律に適用されるわけですけれども、その中で個別に各金融機関はどういったポートフォリオをつくろうとしているのかということを見据えて、その金融機関の能力といいますか、規模、特性、体制を踏まえて、どういったリスク管理を行っているのかという形で、できるだけ和仁委員がおっしゃるような機動性を、決してあまり潰してしまわないように、そこら辺は我々検査監督する者も心してやっていかなければならないかなということは考えております。

何にしても、どういった体制をつくるのかということに関しては、引き続き検討させていただければと思います。

○岩原座長

どうもありがとうございます。そういう検査監督サイドの慎重に考慮された姿勢が重要だと思っております。こういう制度ができた以上、実績を上げないといけないというような検査監督等が行われるとしますと、これは金融機関にかえって悪い圧力をかけることになりますので、検査監督の体制がしっかりしていることが非常に重要ではないかという感じがします。

ほかにございますでしょうか。川口委員、その後、翁委員。

○川口委員

先ほどの子会社でできるものが、本体でできないのはなぜかというのは、非常に悩ましい問題だと私も思っています。特に100%子会社の場合に、両者は何が差があるのかと言われると、なかなか難しいかと思います。

ただ、ほかにも子会社でできるけれども、本体でできないというのもありまして、例えば証券業務なんかは本体ではできないのですけれど、子会社だったらできるというようなものになっています。制度を全体的に見直すというのであれば、それはそういうこともあり得るのでしょうけれども、現行の枠組みを前提にするのであれば、ご提案されているような形は現行制度とは整合的なのかなと思いました。

それと1点ご質問というか、確認なのですけれど、前回ご提案されていた中に、5%ルールについて、中小企業と大企業を分けて、大企業の場合には規制は緩めないけれども、中小企業一般に規制を緩めてはどうかというものがあったかと思います。そのときに申し上げたのですけれど、今日のペーパーでいきますと2ページの真ん中あたりの記述ですが、地域経済において資本性資金の供給が真に必要とされているのか、そういう需要がどれほどあるのか疑問で、これを理由として、安易に進めるべきではないと思っています。今回、中小企業について5%ルールを緩めるという記述が見当たらないのですけれども、やっぱりそれは継続して検討するということなのか、あるいは、緩和の対象をぐっと絞って、事業再生とベンチャー企業などに限って緩めるという方向性なのか、その辺をお伺いできればと思います。

○岩原座長

それでは藤本さん、お願いします。

○藤本信用制度参事官

前回は5%ルールという原則を中堅・中小企業に限って一定限度引き上げるということでご議論いただきました。今回出しているものでは、2ページの議決権保有の上限というように、一律に一定限度、一律にというところは中小企業であろうが、中堅企業であろうが、一律に引き上げることは適当ではないのではないかということであります。

では、中小企業、中堅企業といったような仕切りのものが、今回の出しているところにほかにどこかに残っているかといいますと、例えば3ページの事業承継を伴うものといったところに、中堅・中小企業といったものに限定するといったような思想が、そこに少し残っています。事業承継については、前回は広かったのですが、中堅・中小企業に絞っているというところはございます。

あとは、そういう中堅・中小ということで線を引いているものでは必ずしもありません。

○岩原座長

よろしいですか。

それでは翁委員、お願いします。

○翁委員

今日お示しいただいた提案については、基本的にはこの方向でいいのではないかと思うのですけれども、まず議決権保有の上限についてでございますけれども、この5%ルールというのが金融機関の健全性確保のために洗練された規制であるとは思わないわけですけれども、それはそれなりの役割を果たしてきているわけでございますので、これを一律に引き上げるということについては、やはり慎重であるべきではないかと思います。

銀行以外の一般的な投資家であれば、例えば持分法の何パーセント、例えば3割とか5割とか、そういったところまで引き上げれば、筆頭株主との関係で対立しているときとか、そういったときに、意味があるわけですけれども、銀行は筆頭株主と対立して経営権をとるということが役割ではありませんし、その意味でも、例えば中小企業の議決権株式保有を少し引き上げても、銀行にとってはあまりメリットのある話ではないし、むしろリスクだけが増えてしまうのではないかという印象がございます。

それから事業再生企業の株式の銀行本体保有については、ちょっと企業再生支援機構とか産業再生支援機構で私が感じてきたことについて、少しお話をしたいと思うのですけれども、やはり銀行本体でデットだけでなくて、議決権株式の大半を持つということになると、その銀行は全面的にその企業の経営を掌握して再生を主導するということが必要になってくるわけです。

ただ、現在やっている事業再生というのは、環境変化が激変しておりますので、そういう意味でビジネスモデルの抜本的な改革が必要で、ほんとうにわりと大胆な選択と集中というのをやって事業再構築をしないと、なかなか先が見通せないという場合も結構あります。

そういう意味で、投資専門子会社をつくることが難しいような銀行、中小の金融機関が1人本体でできるかというと、なかなか手に負えないのではないかなというのが感想としてございます。

中小企業の株式が流動性が乏しくて塩漬けになるのではないかという指摘はございましたけれども、ほんとうに再生企業が傾いてきてしまった場合というのは、ここでもご指摘がまさにあるのですけれども、やっぱりそこの地域の金融機関は全面的に支援し続けなければならない、それ以外の道がないという感じになりかねなくて、支援の歯どめがなくなっていくという感じになってしまうのではないかという感じがいたします。

そういう意味でも、銀行本体もそうですし、地域の取引先にも影響を与えることになりかねないというところに少し注意をしておく必要があるのではないかと思います。これは既に前回ご指摘があったようなのですけれども。

それから、産業再生機構なんかで感じたことですけれども、再生可能性が見えている企業というのは、関心のある事業スポンサーなどが再生企業の周辺で関心を持っているケースが多いという感じがいたします。だから銀行が大半の株式を長く保有しなければならなくなる企業というのは、相当再生の難度が高い企業が多いのではないかなという印象があります。

産業再生機構の場合の中小企業のエグジットというのは、多くの場合は企業で、事業スポンサーだったわけです。もちろん中堅企業でIPOの場合も1件ありましたし、フィナンシャルスポンサーの場合もあったのですけれども、フィナンシャルスポンサーというのは一時的なリエゾンという感じの位置づけで、なぜ中小企業の多くのエグジット先が事業スポンサーなのかというと、スポンサーが入ることによって、ビジネスモデルの変革が完成するということが多いということなのです。例えば化粧品卸の再生に入ったところが、健康器具会社がスポンサーになって水平の統合が完成したり、玩具卸の企業の再生に当たって、玩具会社が入ってうまくビジネスモデルの変化が行われたりというケースがありましたし、同じ化粧品卸の再生でも、ほかの地域で非常に在庫管理を効率的にやっている化粧品卸がいて、そこがスポンサーになることによって面的に再編が進むということもあったわけで、地域の中小企業の再生を促すには、銀行はむしろそういう企業スポンサーを見つけてくるということが、これから求められるのではないかと思っています。

もちろん、すぐに事業スポンサーが見つからない場合でも、例えば今、すごく地域再生ファンドがたくさん増えてきていますし、また、投資専門子会社というのも明確な投資基準とか、例えば独立した第三者委員会とか、そういったところが出資の可否をきちんと判断するという規律を持って進めれば、それなりの体制を整えてやっていく意味があるのかなという感じがいたします。

今、企業再生支援機構で相談しているのは、円高と空洞化によって非常に困ってしまっている中堅・中小企業、それから、やっぱりすごく地域は少子高齢化と人口減少で困ってしまっている学校法人とか病院、それからやっぱり、従来型の印刷業とか、そういったところは過剰供給ということがすごく課題になっていて、マクロ環境の変化というのがここ数年でもすごく進んでいて、過剰供給というのが背景にあって、ますますこれから地域をまたがった連携とか、場合によっては廃業ということも含めて、どういうことが必要なのかということを考えていかなければいけない状況だと思うので、銀行は出資という手段も持っているということも、1つの有効な再生の手段だとは思うのですけれども、やはり過剰供給体制などを解消していくために、どういうふうに産業再編をアドバイスできるかということを考えていくということが、ここを長期的に見てもすごく大事なのではないかという感想を持っています。

そういういろいろな意味で、銀行本体での再生企業への出資というのは、わりと限られた場合にするべきだと思いますし、例えば有力な事業スポンサーがいるのだと、プロフィタブルな事業再生計画も描けそうだと。だけども、ちょっと出資額が足りない、今、地域再生ファンドもできていないし、投資子会社もない、だから一時的にリエゾンとして銀行本体としては出してつないでいくとか、そういうようなケースであれば考えられるかなという感じがいたします。

ちょっと感想ばかりですけれども、以上でございます。

○岩原座長

大変貴重なご指摘ありがとうございます。そういう企業再生の実務を踏まえて、この銀行による株式保有を通じた再生ということも考えなければいけないと感じます。

そういう意味で今のご意見は、大変重いのではないかと思います。ほかにいかがでしょうか。

それでは小野さん。

○小野監督局参事官

ただいまの翁委員のご意見について補足説明させて頂きたいのですけれども、まず投資専門子会社を持てないような金融機関が本体でやるのはどうかというお話でございます。もっともな面もございますけれども、前回も申し上げたかもしれませんが、なかなか金融機関によっては自分では子会社を持つというのは、設立・運営にはコストもかかりますし、当然一定の人材も子会社に派遣しなくてはいけませんので、そのような資金面、人材面で相当、特に規模の小さい金融機関にとっては負担になるということがございます。

ただ、そのような金融機関がほんとうに能力がないかというのは、必ずしもそのようなことはない場合もございまして、小さい金融機関であっても、地域密着型の金融機関として、しっかりと借り手である企業の状況を把握して支援を行っており、一定のノウハウを持っております。

ただ、やはり今、一番問題なのは、まさに翁委員が先ほどもご指摘されましたように、そういう再生のノウハウというものは首都圏を中心にはあるのですけれども、地域には必ずしも十分にはないというところが非常に悩みでございます。ここをどうしていくかということは大きな課題でございまして、これにつきましては、ご承知のとおり、今年の4月に私ども金融庁、それから中小企業庁、内閣府が政策パッケージという中小企業の再生支援の政策パッケージを打ち出しまして、そこでノウハウを如何にどうやって地域に均てんしていくかということについて、現在、様々な施策に取り組んでおります。。

その中には、例えば、まさに翁委員が委員を務められておられます企業再生支援機構、それから中小企業再生支援協議会という各県にある協議会、そしてこの両機関の連携や機能強化、さらには今お話がございました各地域に事業再生ファンドをつくるとか、あと、今年の11月までに全て全都道府県に設立いたしましたが、中小企業支援ネットワークという、中小企業の再生支援を応援していくネットワークを各都道府県に整備したところでございます。

このようなさまざまな再生ノウハウを地域に蓄積しようとしておりますし、ご承知のとおり、本年先月11月30日の経済対策におきましても、中小企業金融円滑化法の期限等を見据えて、地域における中小企業の事業再生支援を強化していくための対策が打ち出されています。したがいまして、金融機関が場合によってどうしても本体でやらなくてはいけない場合には、このように整備されてきております様々の外部の再生ノウハウを使いながら、事業再生の支援を行っていくということが考えられます。

それから、その過程では、今まさに翁委員がおっしゃったように、スポンサーの招聘というものも、外部のノウハウをうまく使いながら行っていくということが今後必要なのではないかと考えていますし、我々としても、今後さらに再生ノウハウというものをいかに地域に均てんしていくか、さらに検討し、推進していきたいと考えております。

○岩原座長

ほかにいかがでしょうか。

森下委員、どうぞ。

○森下委員

大企業などについても、こういった制度が利用できる場合には、絶対値としてかなり巨額の出資がなされる余地があるのかなという気がいたします。

別途、大口信用供与規制のような枠組みでの縛りというものはあるとは思いますけれども、それ以外に、大企業などにおいても使えるようなツールとして考えた場合に、何らかの上限額の設定が必要なのかどうか。実際にどれぐらいの規模感を想定しておられるのかが、いま一つよく分からないのですが、そのような規制の要否について何かお考えはありますでしょうか。

○岩原座長

では、藤本さん。

○藤本信用制度参事官

今日は前回から枠組みを少し変えたものでご議論いただいていることもありまして、こういう枠組みでより検討するという方法となれば、今いただいたご意見についてもどうするかを考えた上で、またお諮りしたいと思います。

○岩原座長

はい。山本委員。

○山本委員

事業再生についての取り扱いは、事業再生のあり方の柔軟性を進める意味からは、意義があることであると思います。ただ他方では、当然、事業再生途上の企業ですから再破綻のおそれがあって、そのリスクの問題があると思われますので、やはり少なくとも、この事業再生会社の要件については、事業再生計画の合理性や実行可能性を専門家の目で客観的に審査する、第三者的な目で審査することを前提として考えるのがよろしいのではないかという印象を持っています。

そういう意味では、先ほど来お話が出ております、この10年ぐらい、そういう裁判所の外での事業再生の仕組みが非常に発達してきていると思われます。私的整理ガイドライン以来、産業再生機構、あるいは事業再生ADR、企業再生支援機構、中小企業再生支援協議会といったさまざまな枠組みができていて、それらを総称して、制度化された私的整理という言い方がされることがありますけれども、そういう第三者的な観点が入った、チェックの入ったようなものに限定していくのが合理的かなと。そういった仕組みについても、例えば中小企業再生支援協議会であれば、地域ごとのかなりばらつきがあるのではないかということとか、今あるもので全てのニーズをカバーできているのかという批判もあるとは思いますけれども、必要性、十分性を精査しながら、しかし出発点はそういう第三者的な観点が入ったものでやっていくことが、合理的かと思います。

○岩原座長

どうもありがとうございます。

ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。

それでは、今日はそれ以外にも、金融機関の破綻処理の枠組みにつきまして、ご議論をいただきたいと存じております。

事務局から簡単に説明をお願いいたします。

○藤本信用制度参事官

お手元の資料の参考資料マル2がございます。「金融機関の破綻処理の枠組みについて」でございます。表紙をめくっていただきまして、基本は前回ご議論をいただいた資料をそのままお出ししておりまして、さらにご議論いただきたいということですが、下線を引いているものがございます。前回出た意見のうち幾つかを載せているものでございまして、下線を引いているから重要だというものではございません。

前回に出た意見を少しおさらいしてみますと、1ページの左上に、「FSBにおける国際的な合意等を踏まえれば、金融システムの混乱を回避するための処理の枠組みは必要である」という総論的な話がございました。

2ページ目、対象となる金融機関は特にありませんで、3ページ目ですが、当局の権限ということで、右側ですが、主なご意見でもございましたが、預金保険機構がこの新たな措置で重要な役割を果たすということであれば、その機能を強化することも必要ではないか、より情報収集の手段も実態把握等の手段も必要ではないかということでございます。

4ページ目に行きまして、当局の権限ということで、流動性供給のための借り入れは、民間金融機関や中央銀行から行うことが考えられるかというご意見があります。真ん中にグループの話がございまして、グループでの倒産処理は、グループ企業間でのサービスの継続的提供義務についても検討してはどうかという意見が出されました。左下でございますが、危機時に、金融機関の秩序ある処理を行うためには、手続の迅速性が求められること、公益性、信用秩序維持といった高次の目的を踏まえれば、債務超過でない場合にも、代替許可により、事業譲渡等ができるようにしてもよいのではないかという意見が出されました。

5ページ目でございます。契約等に定められたベイルインを発動することは適当であるが、法律の措置としても規定することも検討してはどうかという意見がありました。また管理処分権・移転等の効果は、日本法上、外国にも及ぶのかということでしたが、及ぶと解されるというご意見がございました。

6ページは、ポンチ絵でございますので、飛ばしていただきまして、7ページ、早期解約条項の発動を一時的にとめるという話でございますが、デリバティブ契約等に限らず、早期解約条項を有する他の取引についても対象にすべきではないか。左下でございますが、早期解約条項の発動を一時的に停止するとしても、バーゼル規制上は、有効なネッティング契約として計算されることになる。

8ページ目、破綻処理のための費用の話でございますが、金融システムの混乱を防ぐことによる便益は、市場参加者全体が享受することを踏まえる必要があるという意見が出されましたし、預金保険等の既往のセーフティーネットとの関係を考慮する必要があるのではないかという意見がございました。

9ページでございまして、特に費用負担を事前で求めるのか、事後で求めるかというご意見の中で、一つのポイントとしますと、インセンティブの問題というか、事前であれば、インセンティブを的確に与えればリスクの高い取引を減らすようなインセンティブが与えられるのではないかという意見があります。他方で、そういうインセンティブを的確に与えることは可能なのかどうかという疑問の声もありました。費用負担について、業態ごとに負担する方式は、業態の区分けが難しくなっている中で適切ではないのではないかといった意見があった一方、リスクに見合った負担とすべきではないかという意見もありました。他方で、前からありますけれども、リスクベースとした場合に、現実にどのように算定するかという問題があるということでございました。

10ページでございまして、国際的なクロスボーダーの処理等でございます。右側ですが、我が国金融機関の海外現地法人や海外支店の処理の双方について、海外当局等の連携をよくとっていく必要がある、情報共有等をする必要があるという意見が多数ございました。

以上でございます。

○岩原座長

どうもありがとうございます。

それでは、ただいまのご説明を伺いまして、ご質問、ご意見等があれば、お願いしたいと思います。いかがでしょうか。

大崎委員、どうぞ。

○大崎委員

破綻処理のための費用の負担についての議論が、随分これまでより進んだということだと思うのですが、一方で、対象となる金融機関については、2ページの整理で、今のところ、あらかじめ線引きは困難ではないかというところになっているわけですよね。そうすると、あらかじめ線引きが困難なのに、負担する人だけはっきりしているというのも、困難なような気がするのですが、そこはどう、今のところ事務局として理解されているのか、少しお伺いできればと思うのですが。

○岩原座長

藤本さん。

○藤本信用制度参事官

今まで出た意見で、2ページの対象となる金融機関ですが、こうは書いてあるものの、一応、金融庁の監督が及ぶような金融機関が対象になるのが基本なのではないかというのが、一つのくくりでした。 ではその中で、ほんとうに何を対象にするのかという議論は、またあると思います。それとは別の観点で、持ち株会社グループというのですか、ホールディンググループ、グループに入っているグループ企業であれば対象にするという考え方も、一方あるのではないかと考えています。

そこから費用負担のほうに飛ぶ話になるのですが、費用負担の話は、対象となる金融機関が負担するのか、それとも、対象となる金融機関が秩序だって処理されることによって便益を受けるところが負担するのかという、また議論もあるのですが、負担するぐらいであれば対象にする余地があったほうがいいのではないかという、またもとに戻ってくるのですが、そういう何かパズルのようなものを解いて、いろいろ調整をしていきたいと思っております。

○岩原座長

どうぞ。

○大崎委員

ということだとすれば、今おっしゃったことで、私が大変もっともだと思うのは、例えばグループの企業で、その単体では金融庁の直接監督下にはないものであったとしても、それが金融庁の監督下にあるグループに影響を及ぼすような場合は、当然対象に入れないといけないのは、全くそのとおりだと思います。

逆に、例えばというと語弊があるので言いませんが、金融庁がふだん全然モニターしていない、全然関係ないところで起きたことが、何となく金融っぽいという理由でこういう枠組みに入ってくるのは非常に変だと思うので、これは対象外であるという整理は、全くそのとおりだと思います。かつ、さっきもおっしゃったように、こういう仕組みは、さっきの議論とも少し関連するのですが、私はやはり救済ということではなくて、あくまで危機に対する対応であり、かつ、原則としてはだめである場合は死んでいただくという破綻の処理であると理解しておりますので、それによる便益が措置の対象となった人に及ぶという考え方は、あまり正しくないのではないかと思っているのです。

つまり、むしろそうではなくて、その当事者にならなかった人たちに便益が及んだと考えるべきだと思いますので、そうであれば、金融庁の監督下にある人全員が便益を受ける人と、まず直接的には言えるのだろうと思うのです。もっと広く言えば国民全員になるのだと思うのですが、それまで言ったら世界の人とかいう話になりかねないので、とりあえず金融庁の監督下にある金融機関といいますか、全ての人たちに、便益が及ぶのだと考えるとすれば、費用負担についても、事前に言えることは、全員が負担する可能性があるという以上に、なかなか言えないのではないかと、正直思います。

○岩原座長

はい。いかがでしょうか。

山本委員、どうぞ。

○山本委員

前回欠席していたものですから、少しイメージをまず教えていただきたいのですが、6ページの図で、一定の破綻処理のイメージが書かれていますけれども、私の理解では、この経営権・財産管理処分権の把握は、現在の金融整理管財人による管理処分と、基本的に同じようなものである。その後、倒産手続に入る前に事業譲渡等が行われる。これは2日ぐらいで行われるので、基本的には、預金やシステムリスクを防止するために必要な取引等をブリッジバンク等に移転させる。それとともに事業の継続に必要な資産等についても、移転がされるということなのかと思うのですが、その後、倒産処理手続に入って、多分そこで優良な資産とか不良資産とかの区分けがなされて、場合によっては第二次の事業譲渡みたいなものが倒産手続の中で行われて、この受け皿金融機関等に対しての事業譲渡がなされ、最終的には不良な資産だけがそこに残って、そこで倒産処理、清算的な倒産処理手続が行われ、債権者に対して配当がされるというイメージを持ったのですが、そのようなイメージで正しいかどうか。

○藤本信用制度参事官

そのようなイメージです。

○山本委員

それで、あとは意見というかコメントですけれども、そうであるとすると、6ページの下から2つ目のポツにある、債権者からの倒産手続の申し立て、強制執行等への対応という問題ですが、倒産手続に移った後は、その倒産手続の内部の仕組みでこういう対応ができるわけですが、そこに移行するまでの2日とかの期間の間に、そういう破産申し立てとか強制執行の申し立てがあることによる混乱を防止する必要があるというご趣旨と伺っています。

1つは、原理的に言うと、そこで行われているのは行政手続で、現在の金融整理管財人等の手続であるとすると、最終的には債権者に対する公平平等の配当を前提としない手続が行われているとすると、そこで果たして破産申し立てとか強制執行の申し立てをとめられるのだろうか、疑問としてあるように思います。やはり強制執行とか破産の申し立ては、最終的には債権者の権利の救済、債権の実現を目的としているものでありまして、広い意味での裁判を受ける権利の保証にかかわるものでありますので、これをとめることは、かなり重大なことであろうと思っております。そういう意味で、ハードルがやや高いかと思っているわけです。

しかし他方で、しょせん2日ぐらいのことであれば、債権者が申し立ててきても、裁判所は果たしてその手続を開始するのだろうかということは、現実の問題として、あまり現実性がないような、破産手続の申し立てがあっても開始決定をするのか、強制執行の申し立てがあったからとして、開始決定をするかというと、それはさほど心配しなくてもいいような感じもする。どうしても心配であれば、場合によっては、例えば民事再生の手続が開始してしまうと、ここにあるようにいろいろな手続を経ないといけないので、事業譲渡を短期にできなくなるという問題があるわけですが、申し立てはしておいて、開始決定はその事業譲渡の後になるとすれば、必ずしもそういう債権者の意見を聞くなどの手続は要らないわけです。他方、申し立てをしておけば、民事再生法には包括的禁止命令その他、債権者の権利、実行を阻止できるような手続が備えられていますので、裁判所にそれだけ出してもらって、強制執行等を排除するというやり方も可能なような、ぎりぎりそういうことも可能なような気がします。

そういうことを考えると、あえてかなりハードルの高い行政手続の中で強制執行をとめることに取り組まなくても、現実には問題は生じないのではなかろうかという感想を持っています。

○岩原座長

はい。藤本さん。

○藤本信用制度参事官

債権者からの倒産手続の申し立て、強制執行との対応が必要という部分は、非常に重い話だと私どもも受けとめております。おっしゃるようなものと関連する話なのですが、現行の預金保険法で、金月処理のための事業譲渡の規定がありまして、その金月処理の間にこういうことが申し立てられたらどうなのかについては、あまり明確な対応の規定はありません。ただ今回の場合に、預金者とか、そのほかの債権者のほかに、より多様な債権者が今回入ってくることもあろうと予想されておりまして、ほんとうに混乱がなく処理が進むかどうか、やや不安があるということはございます。

民事再生の申し立てをしたらどうかということはあるとは思うのですが、そのときに法的な処理の申し立てが行われたことで、そこから民事再生の手続が進んでいくのではないかということが、また市場にどう受けとめられるのかということもありまして、この非常に重い話については、目的はスムーズに処理が行われることですので、今いただいたところも含めて、関係省庁ともよく相談して、具体的な制度をつくっていく必要があると思っております。

○岩原座長

はい。翁さん。

○翁委員

ご質問させていただきたいのですけれども、ベイルインですが、債務超過前でも契約等に定められていればベイルインが発動されるということなのか、そういう場合は、ややエクイティとの関係で逆転が起こるので、気持ち悪さがあるのですが、その辺は、今どんな整理になっているのか、教えていただければと思います。

○岩原座長

藤本さん。

○藤本信用制度参事官

契約等に定められたベイルインは、一般的に言えばいろいろなものが多分あると思います。どの段階でそれが発動されるかが契約に定められていて、それに従って発動されることがある。その発動のトリガーの中で、場合によっては当局が何か確認するなどの手続が契約上定められているものもあるかもしれません。基本的には、契約に定められているとおり発動されるということだろうと思います。その契約の内容によって、逆転が起こったりすることがあるのかもしれませんが、そこは契約上の話で、株主との関係の形がどうなるかは、また契約のときにいろいろ検討されていくことだろうと思います。

前回少し申し上げたところで、自己資本規制上のその他Tier1に入るものについては、ここでどう位置づけられるのかということはございますが、そこについては、一方で金融機関の資金調達の円滑化という要請もありますし、他方で実効的な処理がどうやって行われるかというのもございますが、よく実務上、支障がないように関係者の意見を聞いて対応していく必要があると思っております。

今ご議論いただいているものは、現在制度はないわけですが、一方で、現在102条について、その他Tier1とカウントされるような債権との関係はありますが、それはまた実務的にいろいろ関係者と相談しているところでありまして、それが定まったところでこちらの新たな措置もそれと整合的であり、実務に支障がないように考えていきたいと思っております。

○岩原座長

はい。小野委員、どうぞ。

○小野委員

今の点に関連してですけれども、費用負担の問題として、前回、私の意見としては、リスク負担をある程度、考慮する必要があると。その場合のリスク負担は、先ほど大崎さんが破綻処理として考えるべきだとおっしゃったのですが、資料でいうと3ページ、議論の整理の中で3つポツがある中で、後ろの2つとして、債務超過でないことを前提に資本増強するケースと、債務超過なので粛々と破綻処理するケースとがあります。後者の破綻処理のケースの場合ですと、株主あるいは債権者は何らかのロスをこうむるので、費用負担の問題というか、あるいはとったリスクに対してそれなりのロスが生じるという原理原則は守られるのですが、債務超過でないところに資本増強してしまうと、債権者にも出資者にもロスが生じていないという意味で、インセンティブのゆがみが生じるのではないかと申し上げました。

ただ、今、ベイルインのお話が出ましたけれども、ベイルインの話もそういったゆがみに対応する一つの手段ではありますので、仮にそのベイルインの話がもう少し煮詰まってきて、債権者であれ、出資者であれ、とったリスクに対してそれなりのロスが生じ得るという原則が維持されるのであれば、費用負担の話はよりクリアになって、むしろ生じてしまった負担を誰がどう分担するのかという話に整理できるのではないのかと、今お話を伺っていて思いました。

○岩原座長

藤本さん。

○藤本信用制度参事官

今の点は、翁委員からいただいたご質問とも関係することではあるのですが、金融機関が債務超過でないことを前提とした措置の場合に、契約上のベイルインが発動されるかどうかについては、それぞれの契約上、どの段階でトリガーが引かれるかということと密接に結びついているところであります。仮にそれが非常に債務超過に近いところで引かれるトリガーのような契約であれば、金融機関が債務超過でないことを前提にというところでは、必ずしもトリガーが引かれないようなものもあるかもしれませんし、そこはいろいろな契約に応じて実務上、支障が生じないように、現場の資金調達の場についてよく考えていく必要があると思っています。

○岩原座長

和仁委員、どうぞ。

○和仁委員

私が見落としているのかもしれませんが、以前、ここで申し上げたと思うのですが、ファイナリティーの話は、今回は取り上げられませんか。決済機関についてとの。

○藤本信用制度参事官

主な意見にファイナリティーの話を書こうかどうしようかと思っているうちに、今日書くのを忘れたのですが。もう少し、何かご説明をいただければ。

○和仁委員

結局、Continuous Link Settlementでの、あるいは今のJSCCのでもいいのですが、要するにメンバーが破綻し、破綻したときに、もう決済のシステムの中にオーダーは入ってしまっている場合ですが、否認行為の対象になるという考え方が一方にあります。他方、一つの考え方としては、支払い指示が出てしまっているのだったら、それが否認行為の対象になるかならないかは関係なしに、一旦システムにのってしまえば、そこで決済を粛々と進めていって決済の有効性を守ろうという考え方を法律上明確にするべきではないかということです。

ですから、ある意味ではそこで決済自体が、一つのメンバーがこけたことで全部の巻き戻しが起こってしまうことは避けるべきで、一定のカットオフの時間までに支払いの指示がなされてしまったものについては、その有効性を認めてしまうというやり方で、否認権などの問題を飛ばしてしまうという考え方です。それにより、金融の決済システムの安定性を図る。そして24時間ルールという例の巻き戻し、倒産申し立てが午前10時に行われたとしても、それをその日の午前0時に持ってくるというルールも排除し、できる限り決済機構の安定性を図るという考え方です。それをやはり一緒に議論していただいたほうがいいのではないかと思うのです。

多分、FSBに出てきていないのは、アメリカにしろ、ヨーロッパにしろ、法律上の措置があるので、彼らは十分だと考えているのかなと思うのです。日本も金商法の中に実は一部そういう規定の手がかりになるものが突っ込んであるのですが、必ずしもそういう趣旨で入れたのではないというご説明もありましたので、ちょっとペイメントファイナリティー、セトルメントファイナリティーについて、それを確認する規定をつくられたほうがいいのではないかというのが、私のコメントです。

○岩原座長

藤本さん。

○藤本信用制度参事官

おっしゃっているのは、清算機関がカウンターパーティーになるような取引でしょうか。

○和仁委員

そうですね。清算機関ですね。CLSは清算機関と言えるかどうか、ちょっと難しいのですけれども。はい。

○藤本信用制度参事官

私は、金商法や資金決済法に書いてある、そういう機関の業務規定に書かれているように、それが行われるというイメージでいたのですが、やはりそれでは足りないところがあるのですか。

○和仁委員

結局、ではそこで決済に回しますという指示が、清算機関にメンバーである金融機関から出た場合に、その指示はもうメンバー機関が倒産に瀕している状況でなされた場合に、否認行為の対象になるか。私は理論的にはならないと思っているのですが、そこははっきりしないのです。その問題を解決するということです。一旦オーダーが入ってしまえば、もうそこからは取り消すことができないというシステムの構築です。

○岩原座長

銀行の資金決済については、預金保険法69条の2により金融機関の資金決済に係る取引に関する債権は、預金保険法で原則として全額保護することになっておりますし、預金保険法69条の4に破産法等の特例が定められていますので、少なくとも国内の銀行間の決済については、否認等の対象にはならないことが多いのではないかと思うのですが、例外がありますし、CLSみたいに国際的な場合や証券決済等の場合にどうなのかは、問題として多分残っているでしょう。また銀行以外の決済、幅広い金融機関をこの破綻処理では考えていますので、そこまで考えますと、おっしゃるような問題があるのかという気がします。

○和仁委員

結局、CCPについては、金商法を変えられたときに、そう読めるのかなという規定が入ったのですが、金融庁に伺うとファイナリティーは考えていないというご回答が来ましたので、やはりそこを考えて、せっかくFSBの言うことに合わせるのであれば、そのあたりでも海外の基準と合わせておかれたほうがいいのではないか。そうすると海外に対しても、また法律的にも説明が、透明性が増すのではないかと私は思います。○岩原座長  藤本さん。

○藤本信用制度参事官

市場関連部局と相談して、検討いたしたいと思います。

○岩原座長

ほかにいかがでしょうか。井上委員、どうぞ。

○井上委員

先ほど山本委員が確認してくださった点に関連し、それを踏まえての質問ですが、6ページの図で、手続的な流れが書かれていて、危機に瀕した金融機関が事業譲渡などを民事再生手続に入ることなく行った上で、その後倒産処理に入るということだと思うのですが、こういった危機に瀕した状況で事業譲渡をなす場合には、特段の手当てがないと、いわゆる濫用的、あるいは詐害的な事業譲渡との区別が難しい場合も出てくる感じもします。倒産手続に残された債権者と、事業譲渡とともに受け皿に連れていってもらった債権者との間のアンバランスを問題にされた場合に、何らかの手当てなり防御なりが必要になってくる場合がないかについて、お聞かせいただければと思います。

○岩原座長

藤本さん。

○藤本信用制度参事官

6ページの図ですと、上の図ですが、ブリッジ金融機関とか最終受け皿金融機関に資金援助が行くことになっています。これは現行の預金保険制度を参考にして、図を書いているわけですが、預金保険制度の中には、資金援助が倒産処理手続により清算側に行く道筋もございまして、それは債権者間の衡平を図る観点から、現行の預金保険法ですと、破綻金融機関に対しても資金援助ができるという規定もございます。今回の措置についても、そういったものを設けることが可能かどうかについて、少し検討しておりまして、そういうものも踏まえて債権者間の一定の衡平が図られる措置を設けることができないかと考えております。

○岩原座長

はい。ほかにありますでしょうか。

私から質問させていただいてもいいですか。

先ほど、和仁委員からのご指摘もあったところだと思いますが、4ページにあります、グループでの倒産処理やグループ企業間でのサービス継続的提供義務についても、検討してはどうかという問題指摘がございました。さっき議論した、この制度の対象になるのは一体どこまでかということを含めて、グループとしての処理が必要だと思うのですが、グループの中で金融庁の監督下にないところを対象に含めていないと、そういう関連会社等を通じて資産がどんどん外に流出してしまうことになりかねません。そうしますと、グループとしての金融機関の破綻処理の仕組みとして、今のまさに井上委員がご指摘になったような濫用的な問題とか、いろいろなことが出てきてしまって、この制度に対する信頼が落ちますし、またうまく機能もしないと思うのです。そこら辺のところ、金融庁の監督下にないものを含めて、グループとしての破綻処理を行い、かつその中で不正な行為が行われないように手当てをするにはどのようにしたらいいのか、どのようにお考えなのかを教えていただければと思うのですが、いかがでしょうか。

○藤本信用制度参事官

ここでいうグループは、今私などが考えているのは、例えば金融機関があります。金融機関の子会社等、影響力基準も含めて子会社等で、そこであれば一定の報告徴求、立入検査権等もありますので、そういうものが対象にならないか。その上に持ち株会社、あるいはホールディングがあれば、そこにぶら下がっている子会社等、直接的に監督している金融機関にとってみれば、兄弟といったものが、まず範囲だということです。そこは必ずしもいわゆる金融業を行っているものには限らないと考えております。

○岩原座長

そうすると金融業を行っていないノンバンクその他の事業会社等でも、少なくとも子会社等に含まれれば、この制度の中の適用対象になって、その間、金融機関との間での債権の処理等については、この制度の趣旨に従って適正に債権の扱い等が行われ、資産の流出等が起きないような手当てを、この制度の中で定めるということでしょうか。

○藤本信用制度参事官

そういうイメージでおります。

○岩原座長

それは監督権をベースに行うことだと思いますが、私法上の効力としてはどうですか。

○藤本信用制度参事官

それは前回、この隣同士で長々と議論した部分ですが、制度上は預金保険機構が何らかの財産処分管理権といったようなものを行使する。こうした措置の対象とすることによって、ここで3ページ以降に書いてあります措置をどのエンティティーに対しても打てるようにして、あとはそのグループなどの実態に合わせていろいろな組み合わせで適切な処理を行うことになるのではないかと考えております。

○岩原座長

ありがとうございます。山本先生にぜひコメントいただきたいのですけれども。

○山本委員

法的倒産手続でも、グループ企業の破綻処理はなかなか大きな問題で難しいところがありますが、そこは今、藤本さんが言われたように裁判所でかなりよろしくやっておられる。細かく言えば利害相反とか、いろいろ難しい問題はあるわけですが、同じ管財人等を選任して、その中で座長がおっしゃるような濫用的なこととか、一部の債権者が害されるようなことを防止しながらやっている。ただ、これは倒産法の改正のときも、座長はご存じのように、そういう何か仕組みをつくろうという議論もあったわけですけれども、なかなかそれは難しくて、藤本さんが言われるように、かなりグループの対応によって変わってくるところがあるのではないかという気がしますので、一般的なものをつくるのは、私も難しいのだろうなという印象は持ちます。

○岩原座長

どうもありがとうございます。

川波委員、どうぞ。

○川波委員

既に出た意見でもありますけれども、FSBの主要な特性の中に、迅速な処理がうたわれていると思いますが、その場合に、ベイルアウトからベイルインへという考え方の中で、ベイルインをいかに迅速かつ効果的に実行するかが、極めて重要だと思うのです。私の理解では、預金保険法あるいは更生特例法でも、ベイルインについて何か法的な規定と申しますか、これはないと理解しておりまして、例えば倒産あるいは破綻処理という過程は裁判所の手続の中で行われていくと思うのですが、既に6ページにご意見もまとめられているのですが、法的な措置で迅速なベイルインを行うことを検討してもいいのではないかというご意見が出ています。迅速なベイルインの実行、発動は、先ほどの費用負担の問題や、どの時点でベイルインを発動するかということと、かなり深くかかわっていると思うのですが、議論の方向性として法的な措置まで含めて考えるのか、それとも、行政的な手続の中で迅速なベイルインの実行をやれると考えるのか。議論の方向性はどの辺にあると考えたらよろしいのか、少しお尋ねしたいのですが。

○岩原座長

藤本さん。

○藤本信用制度参事官

ベイルインには、ここを分けていいかどうかはあるのですが、制度上のベイルインと契約上のベイルインという、ざっくり分けるとそういうものがあると認識しています。契約上のほうは、契約にそのように定められていて、一定のトリガーが契約上また定められていて、そのときにその債権は株式にかわるとか、あるいはカットされるということが定められている。制度上のベイルインは、例えば何か当局が、この債権は株式にかわりなさいといった命令を発するようなものだというのが、基本だと思っております。このワーキングの場でも、そういうことを例えば行政的な命令で我が国の法制上できるかどうかについては、相当難しいのではないかというご意見もございます。

そこで、ここの議論の整理の中では、制度的なベイルインについては、今回はとりあえず契約上のベイルインを明記することにして、制度上のものについては、まだ諸外国でも実際上きちんと制度化されて、実際に使われている段階にはないようでもありますし、諸外国においてもいろいろな議論があると承知しておりますので、そういうものも見ながら、引き続き調査検討していく事項にしてはどうかという考えでございます。

○岩原座長

わかりました。ありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。小野委員、どうぞ。

○小野委員

小さい質問ですけれども、先ほどグループというか、破綻手続の処理の対象ですが、グループといった場合に、例えば金融機関を子会社に持つような事業親会社や事業持ち株会社も対象になるという理解でよろしいでしょうか。

○岩原座長

藤本さん。

○藤本信用制度参事官

今回はそこまで考えているわけでは必ずしもありません。今の銀行法の枠組みをどれぐらい、いじるかということでもあるのですが、基本的に、前々回も長く議論しましたが、主要株主規制があって、主要株主が銀行に悪い影響を与えていないかという、フィット・アンド・プロパーというようなもの、チェックするような主要株主規制はあります。そこから進んで、持ち株会社になったときには、持ち株会社が経営管理などをするという一つの割り切りのもと、そこに認可制などを設けて直接監督している状況にあって、今回はそういう持ち株会社のような、経営管理あるいは資金調達のような一定の役割を果たすという位置づけにされているものについて、対象にするのが適当ではないかと考えております。

ただ小野委員が、事業持ち株会社について、もう少し銀行法の枠組みも含めて検討したほうがいいのではないかというご意見をお持ちだということは承知しておりますが、また今後、機会を見つけて検討していく課題の一つだとは思っております。

○岩原座長

はい。銀行持株会社あるいは保険持株会社などは入るのですね。それらはこの制度の対象になるけれども、主要株主規制を受ける主要株主のグループ全体はこの規制の対象にはならないという、今の藤本さんのお答えかと思います。それを含めて何かご意見があれば。

大崎委員。

○大崎委員

私はそういう理解でいいのではないかと思っていまして、何しろこれは、危機が起きて、危機が起きていることを判定した上で措置をとるのが基本的な考えというか、そういう仕組みですよね。ですから、仮に主要株主がおかしくなったことが原因で、子銀行がおかしくなっていても、現象としてはとにかく子銀行が金融システム危機を引き起こしていることが出発点のはずですから、どちらが対象だということを厳密に区別する意味はあまりないかと思いますし、そのときに、とにかくとめなくてはいけないのは、子銀行の、あるいは子金融機関の危機によって、それがほかの金融機関に伝播していってシステムの問題を生ずることを阻止しなければいけない話ですから、それによって例えば親の会社が一人でバタンと倒れるとしても、それは危機ではないという理解なのではないかと、私は思います。

○岩原座長

はい。ほかに何かありますか。

主要株主規制というのは、難しいですね。かなり日本に特有ないろいろな事情があって、こういうことになっているわけです。アメリカですと、銀行持株会社の概念自体が広いですから、日本の主要株主に当たるものは、かなりが銀行持ち株会社としての規制を受けることになるわけですね。

ほかに何かございますでしょうか。よろしいですか。

それでは、本日も活発なご議論をいただきまして、まことにありがとうございました。ほぼ時間になりますので、本日の審議は終了させていただきたいと存じます。本ワーキング・グループにおきましては、多岐にわたるテーマについて、これまで精力的にご議論いただいてきたところですが、取りまとめの時期も近づいてきておりますので、次回は、本日の議論も踏まえ、取りまとめに向けた議論を行いたいと考えております。

では、事務局から連絡等がございましたら、お願い申し上げます。

○藤本信用制度参事官

次回の日程につきましては、皆様のご都合を踏まえながら、座長と相談の上、別途ご案内させていただきます。

事務局からは以上でございます。

○岩原座長

どうもありがとうございました。

それでは、以上をもちまして、本日の会議を終了させていただきます。どうもありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企画課信用制度参事官室(内線3692、2753、3566)

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