金融審議会「金融システム安定等に資する銀行規制等の在り方に関するワーキング・グループ」(第12回)議事録

1.日時:

平成24年12月13日(木)15時30分~17時30分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 共用第一特別会議室

○岩原座長

ただいまより「金融システム安定等に資する銀行規制等の在り方に関するワーキング・グループ」第12回会合を開催いたします。皆様、お忙しいところをお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。

それでは、本日の議事に移らせていただきたいと存じます。本日第12回は、これまでご議論をいただいてまいりました各種のテーマについて、取りまとめに向けて議論を行っていきたいと思います。

まず、銀行等による議決権保有規制5%ルールにつきまして議論をしたいと思います。事務局からご説明をお願いいたします。

○藤本信用制度参事官

事務局説明資料マル1というものの表紙をおめくりいただきたいと思います。金融機関による議決権保有規制の見直しについてでございます。前回ご提出した資料を少し具体化するというような趣旨の資料でございます。基本的な考え方でございますが、見直しに当たっては、他業禁止の趣旨を十分に踏まえることが重要である。

また、我が国においては、いわゆる母体行責任を負うということが社会的に求められたというようなことがあったということにも留意する必要がある。

それから、他方で、地域経済に資本性資金の出し手が不足しているという状況に鑑みて、資本性資金の供給主体としての金融機関の役割が発揮される環境を整備することも、また重要な政策課題ということでございます。

今般の見直しに当たっては、2つに分けて書いておりまして、現行規制の枠組みを基本的に維持しつつ、地域経済において資本性資金の供給が真に必要とされる場合に、金融機関がそういったものを柔軟に行い得るようにすることが適当ではないかとしています。

協同組織金融機関についても、同様の措置をとることが適当ではないかとしています。

議決権保有の上限、5%という原則をどうするかということですが、上記の基本的な考え方に照らして、企業の事業内容等を問わずに一律に一定限度引き上げるのではなくて、健全性への影響も勘案して、地域経済の再活性化や企業の再生に資する効果が見込めるもの等に限定して緩和することが重要ではないか。5%という原則は維持することが適当ではないかとしております。

2ページ目です。事業再生の途上にある会社の議決権の取得・保有ということで、条件変更や債権放棄だけでは再生できずに事業を再構築する必要があるケースが増えている。金融機関が一定の株式を保有した上で、再生に関与することが有効になる場合もある。自分の貸付先の再生というのもありますでしょうし、他の金融機関が貸付を行っていたものの整理が進んで、その後、他の金融機関が関与することもあるでしょうということです。このため、金融機関本体による事業再生会社の議決権保有を認めることに合理性はあるということです。ただし、本体の場合は対象企業の要件を、投資専門子会社を通じたものよりも限定する必要があるのではないかということです。

矢印のところですが、事業再生会社の議決権については、本体においても10年間という期限を設けて、出資比率にかかわらず保有することを認めることが適当ではないかとしています。

ただし、その対象となる会社については、例えば金融機関以外の第三者が関与する案件で、金融機関の出資を織り込んだ事業再生計画が策定されているものとしてはどうかということでございます。

次に、地域経済の面的再生(再活性化)事業会社の議決権についてでございますが、地域経済が低迷する状況において、個々の企業の再生だけではなくて、地域における企業を面的に捉えて再生していく重要性というのがある。資本性資金の出し手は、そういうところには特に不足している状況にある。こうした企業への資本性資金の供給を柔軟に行えるようにすることに合理性があるのではないか。

ただし、この場合でも金融機関の健全性確保には十分留意する必要があるということでございまして、対象企業の属性を一定限度に限定する。当局による検査・監督を通じてリスク管理の状況を適切にモニタリングしていくことが重要であるということです。矢印のところでございますが、地域経済の面的再生事業会社、これは低迷する地域経済を面的に再生するための事業を行う会社であって、事業の集約や再構築を伴うものでございますが、その議決権については、本体で取得・保有する場合は10年間は15%まで、それから投資専門子会社を通じて取得する場合には10年間で40%までということが適当ではないかとしております。

米印の1のところですが、金融機関本体による保有の場合には、中堅・中小企業に限定するということでいいのではないかとしております。

3ページ目でございます。ベンチャービジネス会社でございますが、その対象範囲を拡大することには合理性があって、期間が10年ということになっているのですが、それも延長することに合理性があるのではないか。対象範囲を拡大するとともに、例外とする期間を15年に延長することが適当ではないかとしています。

事業承継関係でございますが、地域金融機関が中堅・中小企業の事業承継を支援する際の選択肢として、一定期間保有することに合理性があるのではないか。その保有にあたっては、健全性確保に十分留意する必要があるということで、それから投資専門子会社を通じる場合に限定して5年間ということで保有することを認めることが適当ではないかとしています。

その他は、投資事業有限責任組合の期間が10年となっているのも撤廃する。あるいはデット・エクイティ・スワップについて、速やかに売りなさい、1年以内に売りなさいというたてつけになっているのですが、そういうものを10年に延長するということを認めてはどうか。

次、4ページ目ですが、信託勘定で保有しているものについては、受益者のために議決権を行使することを前提として5%ルールの対象から除外することが適当ではないかとしています。

以上、申し上げたものを5ページに表にまとめてみましたというのが、これでございます。改正案と書いていますが、現行制度ではないという程度のものでございますが、真ん中に銀行がおりまして、真ん中に矢印が下におりていますが、これが原則の5%。その左側に矢印がございますが、本体保有の例外ということで、今申し上げたようなものを並べております。それから真ん中の太い矢印の右側に投資専門子会社というのがありまして、それを通じて持つといったものを下に点線の四角の中に入れております。

信託勘定は期間の制限はない、あるいは左側の投資事業有限責任組合は期間制限がないとしています。

こういったことをまとめてみましたということでございます。

以上でございます。

○岩原座長

どうもありがとうございました。

続きまして、監督局の小野参事官からもご説明をお願いします。

○小野監督局参事官

それでは、続きまして私から、今回の5%ルールの見直しに係るリスクへの対応、検査・監督のあり方につきまして、ご説明させていただきたいと思います。お手元の事務局説明資料マル2をごらんいただければと思います。

まず、一番上のボックスは、現行法制下の対応について書いてございます。これについてご説明させていただきます。金融機関は既に現行の5%ルールのもとで、一定の株式の保有を行っておりますが、株式の下落による資産価格の減少といった市場リスクや、出資先の財務状況の悪化等により保有株式の価値が減少し、銀行が損失をこうむるといった信用リスクへの対応といたしまして、このようなリスクにかかる内部管理態勢を整備いたしまして、財務の健全性の確保に努めているところでございます。

そして、検査・監督におきましては、このような金融機関の態勢整備の状況について検証しております。具体的には、このボックスの2つのマルに書いてございますけれども、まず市場リスク管理の観点からは、各金融機関におきまして、投資会社の出資に際して適切な投資判断を行っているのか、また、保有する株式の価格等に影響を与える情報を収集・分析し、活用しているかなどを検証しているところでございます。

また、金融機関におきましては、このような出資先への追加資金策として資本性資金を供給しているケースが多いところ、こうした与信に関する信用リスク管理の観点からは、各金融機関におきまして、この2つ目のマルでございますけれども、与信先の財務状況、それから資金使途、返済財源等を的確に把握し、適切な審査・管理が行われているかとか、もう一つは、与信先の業況推移の状況につきまして適切に与信管理が行われているかなどにつきまして検証しているところでございます。

今回の5%ルールの見直しにつきましては、先ほど藤本参事官から説明がございましたように、対象となる企業の事業内容等を問わず、一律に議決権保有の上限を上げるというものではなく、金融機関の健全性への影響も勘案しながら、地域経済の再活性化や企業の再生に資する等の効果が見込まれるものなどに限定して規制を緩和することが適当という考え方が、説明されたところでございます。

また、規制緩和を認めるケースとしましては、ベンチャービジネス会社の議決権とか、事業承継に伴って取得・保有する議決権につきましては、先ほどの一番最後のページの表にもありますように、あくまでも投資専門子会社を通じて取得・保有する場合に限って認めるとなっております。

また、金融機関本体による保有につきましては、事業再生の途上にある会社の議決権の取得等については、例えば金融機関以外の第三者が関与する案件で、金融機関の出資を織り込んだ事業再生計画が策定されるものに限定するですとか、地域経済の面的再生事業会社の議決権の取得・保有については、中堅・中小企業に限定するなど、対象企業の規模や属性を限定することとしています。また、それぞれのケースにつきまして、保有割合の上限や保有期間も設定されているのは、資料1の一番最後のページに書いておるところでございます。

このような制度的な枠組みを前提といたしますと、今回の見直しが金融機関の財務の健全性に与える影響は限定的なものになると考えております。ただし、やはり事業再生計画等が当初の想定どおりに進捗せず、保有時における価格の下落リスク、真ん中のボックスでございますけれども、事業再生計画等が当初の想定通りに進捗しない場合には、保有時における価格下落リスクや減損リスクが発生する可能性や、また、株式を処分する際の損失リスク、さらには未上場株式のように、容易に株式の売却ができないといったような、そのようなエグジットにおけるリスクなどが発生することが想定されます。

そのために、先ほどご説明しましたように、従前より各金融機関におきましては、与信先に対する審査や、定期的なモニタリング等の実施によりまして、適切な信用リスク、市場リスク管理に努めているところでございますが、こうしたリスク管理態勢の機能を十全に発揮させるために、検査・監督による検証を引き続き推進していきたいと思いますし、今回の5%ルールの見直しに即した形で、例えばということでございますが、この一番下のボックスに書きましたように、1つの例示でございますが、各金融機関に事業再生計画等を適切に審査し、進捗状況の適切なモニタリングを行う態勢の整備を求める。これとあわせまして、検査・監督におきましては、もちろん金融機関の規模・特性を踏まえる必要はございますが、それを踏まえつつ、事業再生計画等を適切に審査する態勢を整備しているか、あるいは、入り口の段階で事業再生計画等が適切かどうかということにつきまして審査する態勢、また、期中、それから出口に向けた対応といたしまして、当該計画の進捗状況等を的確に評価・分析する態勢というものが整備されているかなど、株式の保有にかかる、先ほど申しました価格下落リスク、減損リスク、損失リスク、株式を処分できないリスク、このようなリスクを適切にコントロールするために、各金融機関が行います市場リスク管理、信用リスク管理の態勢、さらには利益相反管理態勢などが整備されているかにつきまして検証していくことが考えられると思っております。

現状のご報告としては、以上方向性だけでございますが、この点につきましては、最終的に5%ルールの見直しの内容の案とあわせまして、引き続き金融庁内で具体的に検討を進めまして、最終的には監督指針、検査マニュアルにその内容を盛り込んでまいりたいと考えております。

私からは以上でございます。

○岩原座長

どうもありがとうございました。

それでは、ただいまのご説明等につきまして、ご質問、ご意見があればお願いしたいと思います。いかがでしょうか。ございませんか。

井上委員、どうぞ。

○井上委員

確認だけですけれど、事業再生会社の場合の、金融機関以外の第三者が関与する案件とは、最後の図によると、企業再生支援機構や中小企業再生支援協議会などの例が挙げられていますが、例えば事業再生ADRとか、そういったものを比較的広く捉えるようなイメージでよろしいのでしょうか。

○岩原座長

藤本さん。

○藤本信用制度参事官

5ページでは例示をしております。企業再生支援機構や中小企業再生支援協議会となっていますが、事業再生ADRといったようなものも入るのではないかと思っています。どこまで広くかというのはあるとは思いますが、第三者的なものということでございます。

○岩原座長

よろしいですか。ほかに何かございますか。特にご質問、ご意見ございませんか。小野委員がいらっしゃったら、おそらく本体保有と投資専門子会社を通じる場合で、どうしてこう違うのかというようなご質問があったところかと思いますが。

井上委員、どうぞ。

○井上委員

地域経済の面的再生事業会社に関する5%ルールの例外について、これは読んだとおりなのかもしれませんけれど、もう少し具体的に表現していただくとすると、どういうイメージの会社を捉まえようとされているのでしょうか。

○藤本信用制度参事官

例えばこういうものは入るのではないかというのを申し上げますと、例えば市街地活性化といったものが1つあるのではないか。その市街地に来る人が減少しているとか、あるいは商店街の高齢化が進展しているといった課題がある。それで地方公共団体などが中心となって市街地活性化計画といったようなものを策定する。そのためのまちづくりのための会社のようなものが設立されて、それに地方公共団体とか商工会議所とか、あるいは地元の企業などが出資をする。そういったものに地元の、あるいはそこで業務をしている金融機関が出資をするといったようなものが1つ考えられるのではないかと思います。

もう一つは、例えばスキー場のようなものがあって、幾つかのゲレンデに分かれていました。ところがゲレンデ間の競争とかスキー人口が減少して経営が悪化しました。その地域では重要な観光資源で、農閑期の雇用の場としての機能も果たしていたのだけれども、そうなっていました。そういったものに金融機関が、そのスキー場の運営会社とか、地方公共団体と連携してスキー場の事業再生に取り組むということはあるのではないか。そういう幾つかのゲレンデの運営を統合して、老朽化した食堂の解体をしたり、何かいろいろな設備を共有したりするということがあって、魅力向上に取り組むということもあるのではないか。そういったところに金融機関が出資を行うということもあるのではないかといったようなイメージであります。

○岩原座長

よろしいですか。

秋池委員、どうぞ。

○秋池委員

今お話のありました面的再生のことと、それから事業再生会社のことなのですけれども、投資専門子会社を通してということではあるのですが、特に面的再生といいますのは、地方の状況は非常に難しい状況になっておりまして、40%株式を保有しますと、おそらくは最大の株主になる可能性もあるのではないかと思われます。

地域において、資金の供給主体がいないというのは理解をするものの、お金だけ出しても、多分、活性化していなかった町が急に取りまとめてやったからといって、その形をつくっただけで活性化するわけではございませんので、やはり人材でありますとか、知恵だとか、そういったものを出していかないと、10年たったときにも資金が返ってこないような状況になるということはあり得ると思いますので、繰り返しになりますが、40%というときはおそらくは最大株主になってしまうのではないのかと思いますので、そのあたりを気をつけておかないと、金融機関側が傷んでしまうのではないか。

○岩原座長

翁委員、どうぞ。

○翁委員

今の秋池委員のご意見とちょっと関連いたしますけれども、リスク管理、検査・監督上の対応のところで、最後の四角のところで例示で幾つかの、審査する態勢を整備しているか、また進捗を評価・分析する態勢を整備しているかというようなことが挙がっておりますけれども、やはり大きな最大株主になったりとか、そういうことになっていきますと、再生計画に現実にコミットして実行していく態勢ができることが重要になっていくと思います。実際に経営者に対して影響力を与えて、再生に取り組ませるような、そういった態勢がとれるのかどうなのか、そこが非常に重要になってくるのではないかと思いますので、例示だということでございましたけれども、オプションとして例外的に認めるにせよ、そういった最大とか100%ということになりますと、ほんとうにそれをやっていかないとエグジットが見えてこなくなりますので、そういった態勢のチェックというのも、ぜひ行っていただきたいと思います。

○岩原座長

小野さん。

○小野監督局参事官

貴重なご意見ありがとうございます。まさにここの再生計画等の適切な審査というのは、ご指摘のような点を含めてノウハウとか、当然金融機関が主体的に取り組んでいただくということが大前提になると思います。

私もいろいろと金融機関の方とお話ししましてヒアリングしたところによりますと、まさに金融機関も、ある程度の議決権を持つことにより、ガバナンスを自分が効かせて計画を運営していかなければいけないので、だから5%ルールをある程度見直していただいて、そこでこういう面的再生や事業再生をしていきたいというご意見があったところでございます。

いずれにいたしましても、当然そのような金融機関の主体的な関与、それから計画、エグジット等を見据えた計画というものがきちっとできるかどうかを審査する態勢、そのような態勢を整備していただくことは大事でございまして、事業再生計画等を適切に審査する態勢というのは、そういうことを含むとご理解いただければと思います。

○岩原座長

小出委員、どうぞ。

○小出委員

先ほど岩原座長から、小野委員がもしいらっしゃったら、本体保有と投資専門子会社を通じた場合と何が違うのかとお聞きになるだろうという話を伺って、自分で考えてみたのですが、これは投資専門子会社を通じた場合に若干基準が違うというのは、やはり法人格が金融機関本体とは異なるので、一定程度リスクの遮断が図られるからというお考えということでよろしいのでしょうか。

仮にそうだとしまして、そうしますと今度は監督のほうなのですけれども、投資専門子会社に対する一定程度の監督態勢の強化というものもお考えなのでしょうか。

以上、質問でございます。

○岩原座長

小野さんか、遠藤さんか。では、藤本さん。

○藤本信用制度参事官

子会社が抱えているリスクが顕在化すると、銀行本体にも影響が及ぶということはあるとは思います。

一方、投資専門子会社を通じてということですが、現行制度でも投資専門子会社を通じた場合に限って、ベンチャービジネスですとか、事業再生会社の保有を認めているということもあります。

また、おっしゃったように、別の法人格であれば一定のリスク遮断が図られるということで、今の銀行の子会社規制ということにしても、銀行に業務範囲規制がありますが、子会社であれば、自分ができないような業務もできるといった位置づけもあります。それから、投資専門子会社には投資業務専担の人材・リソース等があって、いろいろなノウハウなどが蓄積されていくことが期待されているということでもあるということでございます。

そういう観点から、ちょっと違いを設けているということでございます。

○岩原座長

小野さん。

○小野監督局参事官

投資専門会社につきましては、当然その会社の規模とか特性とか、どういうガバナンスストラクチャーになっているかという、そのケース・バイ・ケースではございますが、基本的には、当然その会社がどのようなリスク管理をしているかとか、そういうことについては当然見ていくことになると考えてございます。

○岩原座長

川口委員。

○川口委員

今の点なのですけれども、銀行の場合は15%まで持てて、投資専門子会社の場合40%なのですけれど、これは同じ会社に対して、銀行と投資専門会社がそれぞれ持てるということでよろしいのでしょうか。そうだとすると、合計で55%と過半数を超えてしまうということになってしまいます。これは従来の銀行の子会社規制というものから、逸脱することにならないかというのが懸念されますけれど、いかがでしょうか。

○岩原座長

藤本さん。

○藤本信用制度参事官

現行の規制でも銀行本体とは呼んでいますが、銀行と、その子会社合算で規制を設けているところでありまして、この部分については合算して40までといいますか、そういうことにはしようと思っています。なお、ちょっと技術的に法律にどのように落とし込めるかというのはありますが、そうすることにしていきたいと思っています。

○川口委員

過半数を超えないほうがよいのではないかと思います。

○岩原座長

和仁委員、どうぞ。

○和仁委員

5%のルールが一応堅持できたのはよかったなと思っていますけれども、1つ疑問というか、小野さんに対するご質問なのでしょうけれども、事業再生会社の場合に100%まで持たせてもいいんじゃないのということなのですが、そういうことで、この前のご説明でも、こういうことはなぜ必要かというと、大株主としての銀行が会社の支配権を行使するということが期待されている。

他方で、ここでお書きになっているのは、そうは言っても、やっぱり不安だから、金融機関以外の第三者が関与する案件で金融機関の出資を織り込んだ事業再生計画が策定されているものとしてはどうかと、ちょっと一遍腰が引けているのです。銀行がリーダーシップをとって商売のやり方、インベストメントバンキングのやり方をちゃんと導入できるのか、そういうことがやれるのかということについては、そこは第三者、多分事業再生機構とか、その辺にお願いするというお考えなのか。

やっぱりそれがどこへはね返ってくるかと言うと、やはり検査のときに何を調べるのかということで、株主としての議決権の行使の仕方、あるいは派遣役員の行動の仕方、そういうものについてモニタリングをやらなければいけない。要するに、事業の適法性だけではなくて、妥当性その他についても監督・検査しなければいけないということになりそうなのですが、後は質問ですけれど、できますでしょうかという。

今までの金融庁のスタンスと違って、要するに手続としてこういうふうにやっているから、これでいいですよと。だから、後は判断はあなた方がやれば、どういう判断がされてもいいんですよというところではなくて、やっぱり妥当性のところまで全部踏み込んだ監督・検査をやらなければいけないことになるのではないか。それは非常に今までとは監督・検査のやり方が変わってくるのではないか。

なおかつ、最初にも申しましたけれども、企業再生支援機構でも何でもいいですけれども、そういう第三者が入っているということで、それに頼るというのは、やっぱりちょっと危ないなという感じもしますので、その辺をどういうふうにさばいていかれる予定なのか、ちょっとその辺をお聞かせいただきたいと思います。別に方針について異を唱えているものではございません。

○岩原座長

藤本さん、どうぞ。

○藤本信用制度参事官

事業再生の途上にある会社で、本体が持つときに、第三者が関与する案件としている趣旨でございます。これは、議決権保有規制をこの場でご議論いただいたときに、計画が途中で頓挫した場合には、銀行が損失を大きくこうむるのではないかというようなご指摘がありまして、再生計画などの実現可能性をより高めるものとして、こういう第三者が関与したといったようなことを入れているという趣旨でございます。それを腰が引けていると考えるかどうかというのはあるのですが、そういう趣旨でございます。

○岩原座長

大崎さん。

○大崎委員

そういう趣旨なんですか。私は、事業再生の場合は要件が、要するに5%ルールが緩和されるということになるので、事業再生と称して、そうとは言えないようなものに出資するのを抑止する趣旨かなと思ったのです。

ですから、第三者が計画をつくり、それに基づいて出資する。要するに、それが再生計画であるということを第三者がある意味では保証する、そこで金融機関の出資が再生計画を円滑に進めるために必要だと、いわばお墨つきを与えるから、5%ルールの本来の銀行の経営を危うくしないとか、あるいは支配権を産業に対して及ぼさないという、そういう弊害を招く可能性が低いという意味なのかなと思ったのですが、それは違うのですか。

○岩原座長

藤本さん。

○藤本信用制度参事官

それほど何か違っていることを申し上げているのかどうかという気はいたします。ここで投資専門子会社は、そういうものを求めておらず、その本体では求めているのですが、それが計画の実現可能性と呼ぶのか、あるいは何か規制を免れるためと呼ぶのかというのは重なっている部分もあるかと思います。言ってみれば両方あるのかもしれませんが、そういう趣旨でございます。

○岩原座長

三井さん。

○三井総務企画局参事官

確かに同じ言葉をどう見るかは難しいのですけれど、例えば仮に50年間のリスケ計画を考えてみますと、現在価値にすれば相当な債権放棄になるのかもしれませんけれども、実効的な再生計画なのか、延命にすぎないのか、ある程度、再生投資専門子会社におけるガバナンスに委ねることもあり得るかと存じますが、いろいろな事業の形によって、そういったものも合理的に正当化される場合もあるのでしょうけれども、ケース・バイ・ケースで専門的な判断を要するものと思われます。本体で保有する場合には、そういう再生の手法について、第三者であり、かつ専門家であるような人たちから見て、プロフェッショナルのスタンダードで見て、プロフェッショナルのスタンダードらしい計画になっているかどうかというのをチェックしていただくという趣旨でございます。

そういうことで、確かに脱法的な事業再生の名をかりた単なる塩漬けとか、そういうことを防ぐという効果は強く期待されますし、それとともに再生計画なり、再建計画の合理性というものについて、専門家の目を入れる。しかも第三者の専門家の目を入れるということで、当事者としての金融機関という立場から一旦離れて、第三者の目を入れて、専門家のスタンダードから見た合理的な計画であるということが、ある程度担保されたりしていくということを期待しております。このような専門家の目でチェックする結果、結果的に再生可能性を高めることになるかもしれませんけれど、再生可能性を高めることを目的にしているというよりは、むしろプロフェッショナル・スタンダードで見るというところにウエイトがあるのかなと思います。

○岩原座長

ほかに何かそちらからありますか。検査・監督のほうから。小野さん。

○小野監督局参事官

和仁先生のおっしゃった意味が、私によく理解できていないのだと思うのですけれども、まさに今、三井参事官がおっしゃったように、入り口の段階では、第三者を絡ませることによりまして、計画のある程度の妥当性をプロフェッショナルが見て、ちゃんとチェックしていただける。それをさらに金融機関においても、きちっと計画の妥当性等につきまして、自分なりにちゃんとチェックするということもありますし、それをさらにプロフェッショナルの目から見た第三者でのチェックもやるという、二重のチェックが行えるということで、入り口の段階でチェックしますし、さっき申し上げましたように、期中管理という点におきましては、当然計画の進捗状況というものを金融機関として主体的に評価・分析して、それが計画どおり進捗しているかどうかということについてチェックしていただくということもやっていただく。それから、ほんとうにそのような態勢となっているかどうかという点も検査・監督していくということをやっていけば、別にこれまでやっています手法から、そう大きく乖離するものではないと私どもは認識しております。

○岩原座長

いいですか。和仁さん。

○和仁委員

それでやれるというのであれば、それで結構なのですけれども、やっぱり判断の要素としては、業務執行における妥当性という判断が入ってくるのではないか。だから数字に書いて、ここで数字がこれだけ達成できたじゃないか、できてないじゃないかという話から外れてくる話。例えば取締役会でこういう決議を通してしまったこと自身はどうなのだとか、ここを取引先に選んだのはどうなのだとか、そういうところまで銀行が関与しているという形になりますよね。人を派遣して、なおかつマジョリティーの株主になられて。そういうことについて、検査・監督というのは、どういうふうな考え方でやっていかれるのかなというのが、私にはちょっとよくわからない。

要するに、ガバナンスのところの業務執行の妥当性を金融庁が見ていかれるということを、ここでお約束されているように読めたのですけれども、それだったら、どういうふうにおやりになるのかなというのが私の疑問です。

○小野監督局参事官

業務執行の妥当性というのは、どういう意味でしょうか。よくわからないのですけれども。それは結局、計画というものの進捗というのをきちっとフォローしていくということに尽きるのではないかと思いますけれども、そこがよくわからないのですが。

○和仁委員

だから業務を執行していって、計画案があって、そのとおりに全ていけばいいですけれど、うまくいかないということで、計画案を変えます、内容を変えます、それで例えば工場を閉めます、そういう決断をしました。そうすると逆に、そこで例えば争議が起こってしまって、逆に、もう全部の事業がとまってしまいましたと、そういう状況が発生したときに、例えば、そういう決断をしたことが正しかったのか、どうなのかということについてまで検査の対象にされるわけでしょう。

○小野監督局参事官

それは通常の融資でも行う話ですよね。つまり金融機関として融資の管理を行い、それでここでさらに追加融資をするかどうかというようなことは、当然経営陣として判断されます。それがどのような信用リスク管理態勢で行われていたかということを検証しています。それとどう違うのでしょうか。

○和仁委員

信用リスクの管理というよりは、むしろ会社の運営方針についての判断であって、信用リスク管理だけを、小野さんの場合はそれさえ見ていれば、もうよろしいということなのですね。会社をどういうふうに動かしていくか、要するにどういうふうに人員削減計画をやっていくか、あるいはどうやって事業を閉めていくかとか、そういうことについて、別にそこまでは見る必要はない。銀行の立場から見て、信用リスクとしてそこのところがちゃんとマネージできていると確信が持てれば、それでいいということでよろしいのでしょうか。

○小野監督局参事官

信用リスクというのは例示で出しただけであって、当然会社のキャッシュフローとか、会社がどういう状況にあるかということは、当然、金融機関は今でも与信管理の中でも見ています。それで会社がどういう判断を下して、どうやっていくのか、そういう中で金融機関として今後どういう支援をしていくのかというのは、当然決断します。それと私は違わないのではないかということを先ほどから申し上げているのですけれども。

○和仁委員

違わないなら、それでいいのですけれども。何か私は違うような感じがして。やはり、要するに100%の株主にしてしまうと、デイ・ツー・デイの会社のオペレーションにコミットしていけということになりますから、そこのところで、やはり銀行の果たす役割が違ってくると思うのです。そこをどういうふうに検査・監督されていくのかというのが、私はちょっと、大丈夫なのかな、できるのかなというのが懸念です。

○岩原座長

井上さん。

○井上委員

私自身、今の小野参事官のご説明はよくわかります。ただ、和仁委員の感じておられることを私が誤解しているのかもしれませんけれど、仮にあるとすれば、立場の違いだと思います。いろいろな経営情報をどう捉えて、状況が悪い会社をどう支援し再生させていくかということはほぼ同じだろうと思いますけれども、レンダーという立場で与信管理をするのと比べると、株式を持って、議決権を持って、役員を出して、会社の側、あるいは経営者の側に自分も相当程度立っていくというのは、違った面があるのかもしれません。例えば派遣している行員をどう守るのかということもあるかもしれません。

○小野監督局参事官

まさにレンダーと出資者、株主というのは立場が異なりますので、そこにつきましては、我々も当然、従来以上に気をつけなければいけないと思っていまして、そこがまさに資料の一番下のボックスで書いていますところの利益相反管理態勢というところでチェックしていくということとなるものと考えます。具体的にどのように仕組んでいくかということについては、これから考えていかなければいけませんけれども、そこは十分に認識して、そのような点もきちっとチェックポイントとして書き込んでいきたいと思っております。

○岩原座長

三井さん。

○三井総務企画局参事官

監督当局としてではなく、制度改正の担い手である企画部門の立場で若干一言申し上げます。事業再生と、そのコロラリーで事業再生をもう少し面的に広げたものだけを、本体保有の例外で提案させていただいております。倒産しますと、既存のエクイティの権能が縮減してゼロになる、その瞬間、今度は株主の手にあった会社の経営権に近い権能が債権者の方に移っていきます。

もちろん民事再生というのは破産しないで再生するためなので、実際にはそのポイントはもう少し前になるというのが民事再生法の趣旨でもあるでしょうし、今後の再生というのはそういうものを目指しているので、私の申し上げているのはやや乱暴な議論ですが、大雑把にそう仮定しますと、株主の地位は非常に低下して、貸し手が実際にはその会社の行く末を左右するような状態に立ち至っているというのが事業再生のプロセスに入っている会社であろうかと思いまして、そういうときに既存のエクイティホルダーは、その会社の再生に対して、必ずしも建設的なインセンティブを持たない可能性があるということが、この場でも議論になりましたし、巷間も言われております。リスクの高い行為を行うインセンティブにあって、再生がいざ実現しますと、既存のエクイティの権利者というのは確実に縮減されたり、ゼロにされてしまいますので、悪い言葉で言うと、再生を邪魔をするインセンティブがあるということで、既存のエクイティホルダーのインセンティブが必ずしも正しく働かないというところで、今の民事再生法や会社更生法なども、いろいろな法的な対応が構築されているかと存じます。

そういうところで、最大のレンダーである金融機関というのは、今の法制なり、あるいは現実のもとでも、その再生対象会社の行く末を大きく左右する立場にあるということなのですが、法的にはエクイティを持ってはならないと、今規制しております。持たないほうがいい場合が非常に多いというのは、私も全くそのとおりだと同意いたしますし、実際の現実の現場でも、金融機関が、今回銀行法改正したからといっても直ちに銀行が株式をたくさん持つようになるとは決して思ってはおらないのですが、過去のエクイティホルダーとレンダーはそういった利益対立状況に、ならざるを得ないですし、場合によってはレンダーの利害関係によって会社の行く末を左右したほうが再生できる場合があるというのも、再生の専門家からお話をお聞きしていることがありまして、そうであるならば、そういうケースに限ってエクイティホルダーにもなって、インセンティブが反対方向を向いているものを同じ方向に向けて強力に再生を行ったほうがいい。要するに、再生を銀行法が邪魔している場合があるのではないかという問題意識で、柔軟化するという趣旨でございます。

ですから、前々回には促進するという言葉が出てきましたけれど、ここでは「柔軟化する」と書かせていただいた趣旨は、そこにございます。

面的再生になりますと、面ですので、単一のレンダーが単一の債務者に対して100%というよりは、実際の状況は複数の会社に対して再生を行っていく人が複数のということになろうかと思います。その中の1つの、例えば商店街なのか、あるいは旅館街なのか、ほんとうに潰れかかっている会社の会社主は100%の利害関係を持っているかもしれませんけれど、その1件だけ再生しても、過剰供給構造は変わりませんので、そうすると、まとめて旅館街なのか商店街なのかを一体としてお客さんが集まるようになり、売り上げが上がるような形に再生しないといけないという場合には、一人ではできないので、複数の人たちに協力してもらって再生をしていくということになると、100%ではなくて、もっと低い率であろうと。そういう趣旨で、本体で15%、投資専門子会社で40%ということをご提案させていただいているということでございます。

○岩原座長

よろしいでしょうか。いいですか。

それでは、そろそろ予定した時刻ですので、次の論点に移らせていただきたいと思います。次に、外国銀行支店に対する規制につきまして議論をしたいと存じます。事務局から説明をお願いいたします。

○藤本信用制度参事官

事務局説明資料マル3というものを1枚めくっていただきます。外国銀行支店に対する規制についてということでございます。これは前回10月16日ご議論いただいたときに、資産の国内保有義務について宿題をいただいておりました。米印の2番目で、第8回事務局説明資料における、国内保有を求めるときの規模、何の何パーセントかとか、あるいは資産保有の方法といった、国内の会社に課すと、そこからまたどこか国外に流出するのではないかとか、いろいろなご指摘をいただきまして、外国銀行支店の実態を踏まえたものとすることが適当ではないかといったようなご意見をいただきました。

この上の、最初に戻っていただきますと、資産の国内保有義務ということで、外国銀行支店の実態把握をその後もしてきたわけですが、現在の国際的な環境に照らすと、現時点において外国銀行支店に対して、そういった義務を法令上一律に義務づけることは、必ずしも適切ではないのではないか。また、その実効性の確保、先ほど申し上げたように、国内に資産があるということの実効性の確保についても課題があるのではないかと考えるに至りました。

米印ですが、破綻処理に関する国際的協調が求められる中、外国銀行支店に対して法令上一律の規制を課すということで、今度は逆に、我が国銀行の海外での活動にも影響を与える可能性があるのではないか。

それから次の米印ですが、そういう実態把握に努めてきたわけですけれど、外国銀行支店の多様なビジネスモデルに対して、一律の水準・方法を決定することは困難ではないかということでございます。

このため、資産の国内保有のあり方等については、引き続き将来的に検討していくことが適当ではないかとしています。

次に、預金保険制度でございますが、外国銀行支店について実態把握を進めてきたところ、ビジネスモデルや内部管理態勢というものが相当程度多様である。相当程度というと、ちょっと控えめな言い方ですが、非常に多様である。それから国内資産保有義務とセットでということでご議論いただいていたわけですが、そういうものは、現時点で法令上一律に義務づけることは、必ずしも適切ではないのではないか。

このため、預金保険制度への加入についても、引き続き将来的に検討していくことが適当ではないか。

米印でございますけれども、預金者保護、特にリテール預金の預金者の保護の観点からは、将来的な制度のあり方として、預金保険の対象にすることが望ましいと考えられます。具体的な取り扱いについては、ビジネスモデルや内部管理態勢等の今後の動向等を踏まえつつ、資産の国内保有のあり方等の検討とあわせ、結論を得ることが適当ではないかとしています。

次に2ページ目でございます。現在、外国銀行支店は更生特例法の対象にはなっていないわけでございますが、更生特例法を適用して、当局による民事再生手続、会社更生手続、破産手続の開始の申立権や保全処分の申立権を付与することが適当ではないかとしております。

一方で、ご議論いただきました、注1でございますが、金融整理管財人制度や、それから預金保険機構が預金者のために外国の倒産手続に参加する措置といったようなものの導入というのは、やはり預金保険機構の関与が前提になっている面がありまして、預金保険制度への加入への検討とあわせて、引き続き将来的に検討していくことが適当ではないかとしております。

米印でございますが、預金保険に入っていない状況でありますと、預金保険機構というのは預金者及び預金等の内容をあらかじめ把握することができないものですから、いざ外国倒産手続に参加するといったときの前提となる預金者表というものをつくることは困難であるということがございます。

注2でございますが、別途、実効的な破綻処理制度ということでご議論いただいておりますが、FSBのKey Attributesでは、外国銀行支店もその対象とすべきとされていることでございますので、その新たな枠組みの対象としては、外国銀行支店も含めることが適当ではないかとしています。

その他、信用秩序維持のための措置と題しておりますが、外国銀行支店に対する監督ということで、日本の当局はホストカントリーとして、その監督を行っていて、当然のことですが、母国当局として監督を行うことはできないため、本店を含めたグループ全体の状況の把握については、一定の限界がございます。また、外国銀行支店がグループ内の取引を行うときには、本店への回金を含めて、外国支店側でリスクをコントロールするというのは、立場上難しい状況にあるということでございます。

このため、外国銀行支店の健全性確保のため、一定の規律は必要ではないかと考えられるところでございまして、一方、外資系現地法人については一定の金融グループ内取引に対して大口信用供与等規制を課す方向で検討しているということもございまして、これとのイコールフッティング、バランスといった観点も重要ではないか。

したがって、信用秩序維持の観点から、プルデンシャルな観点ということですが、規律を設けて、これに伴う必要な監督上の措置をとることができるようにすることが適当ではないか。

具体的には、免許付与の審査基準を明確化いたしまして、そういったものを日常監督へも応用していくといったことが考えられる。WTO協定上も一定のプルデンシャルな措置はとり得ることになっておりますので、その範囲内で外国銀行支店への監督を考えていくことが適当ではないかということです。

次、3ページ目でございますが、上記の整理を前提といたしますと、外国銀行支店の預金というのは、引き続き預金保険制度の対象外ということでございますので、預金者に対して預金保険制度の対象外であるということと、監督の第一義的責任はホームカントリーの当局であるということ等について、顧客に対し説明義務を課すことが適当ではないかとしています。

また、当期純利益、もうかればその10分の1を20億円に達するまで国内に保有するということが現行制度でございますけれども、それを国内の銀行の最低資本金と同じ額を国内に保有することを義務づけることが適当ではないかとしております。既存の支店に対しては経過措置を設けることが適当ではないかと思います。

また、国内資産保有命令という、必要があるときに個別の命令で国内に資産を保有しなさいという命令を発する権限が、現在、銀行法にあるわけですけれども、それに違反した場合の罰則が現在100万円以下の過料となっておりますが、これで実効性があるかという問題がございますので、それを引き上げることが適当ではないかとしています。

支店単位の自己資本比率規制、早期是正措置、大口信用供与等規制を課すということについてもご議論いただきましたが、現時点では現実的ではないのではないかとしております。諸外国でも、そういった例はほとんど見られないということでございます。

流動性規制については、バーゼルIIIの規制というのは支店レベルで適用されるものではなくて、グループ全体で見なさい、あるいはエンティティーで見なさいということになっているということと、あと、バーゼルIIIの施行は2015年で、国内銀行への適用のあり方ということも検討している段階にあるということでございますので、外銀支店については、流動性規制については引き続き検討することが適当ではないかとしております。

以上でございます。

○岩原座長

どうもありがとうございました。

それでは、ただいまのご説明について、ご意見等があれば伺いたいと存じます。どなたからでも結構でございますので。

大崎さん、どうぞ。

○大崎委員

ここに書いてある内容は、私、おおむねいいのではないかと思うのですが、ただ、ちょっと説明に不思議な点があるような気がしまして。まず、資産の国内保有義務について、これはいろいろな議論があったところであると記憶しておりまして、ここにも書いていただいているように、実態把握を進めていたと。実態把握をした結果、多様なビジネスモデルなので、あまり一律に強力な国内資産保有義務を課すのは、やっぱり現実的でないというご判断に至ったということだと思うのです。まさにそういうことだと思うわけです。

しかし、さはさりながら、何もなくていいのかというのがあるので、最後の3ページで最低資本金相当20億円の国内保有を義務づけるという、こういう流れなのだと思うのですが、1ページでは資産の国内保有のあり方について、引き続き将来的に検討というのは大変違和感を持ちまして、これは私は、実態を踏まえて一律に厳しい規制を課すのは適切でないから、しかし何もないのは問題なので、国内銀行の最低資本金相当を保有させるというので、論理的に一貫するのかなと思ったのです。

それともう一つ、すごく違和感を持ったのは、先ほど預金保険制度の問題について、国内保有とセットで検討していたというご説明があったように思ったのですが、たしか、それはセットではなかったですよね。前の資料だと、まさに論点の1のところと3のところですかとなっているような話で、これは別なのではないかと私は今でも思うのです。

それで、前回の預金保険制度についての議論では、特にリテールの預金については、預金保険への強制加入というのは、やっぱりかなり突っ込んで検討しないといけないのではないかという意見が多かったように思っておりまして、私もそれはそうだと思うのです。ただ、いろいろお話を伺いますと、現在の預金保険料率の計算方法に基づくと、必ずしも保護対象にならない預金をたくさん持っている銀行が、預金保険料を、いわば過大に負担しなければいけないというような現実が出てくるのではないかという指摘を私も聞きまして、それは問題だなと私も思うのです。

それが一番の問題なのであれば、これは別に国内資産保有義務を一律に義務づけることが適切でないから、預金保険制度への加入について、ここで結論が出せないという論理ではなくて、やっぱり預金保険制度に本来加入してもらうべきなのだけれども、預金保険料の計算方法等々をもう少し検討する必要があるのではないかというふうに、ちゃんとしていただいたほうがいいのではないかと思うのです。

そうしないと、この書き方だと、国内資産保有の義務ということを強化しないと、預金保険に入ってもらうべきではないと読めて、それは私は論理的に全然つながらないのではないかと思う次第です。

○岩原座長

藤本さん。

○藤本信用制度参事官

まず最初の点で、国内資産保有義務は課さなくて、そこから3ページに飛んで、最低資本金20億円になるという話ですが、そういう側面はあるのはあるのです。ただ、その前に2ページに外国銀行支店については規制がどうしても弱い面があるので、本店への回金などの問題も含めて、当該外国銀行支店の状況に応じて、監督上必要なことはやっていきましょうというのが真ん中にはさまっております。それに加えて3ページの最低資本金というのは、最低国内に置いていただくというものでございます。

もう一つは、預金保険の話ですが、1ページ目でございまして、ご指摘いただいたのは、預金保険制度の外国銀行支店については2つに分けて書いておりまして、1つはビジネスモデルや内部管理態勢が相当多様であるということで、こういうところに、委員ご指摘のところは大分重なっている部分もあるのではないかと思っております。

もう一つは、国内資産保有義務と預金保険制度の関係ですが、これは前回ご議論いただいたときも、多様な意見をいただいていたわけです。それは両様考えられるという意見もありまして、預金保険に入っていないからこそ、預金者のために国内資産保有義務をかけるという議論と、あるいは預金保険制度に入るからには、それは加入している金融機関のお金でもあり、最終的には国が責任を持つといったこともあるので、国内資産保有義務をかけるべきではないかという、両様の議論があったと思っております。

そういうことを総合的に勘案して、こういう資料にしているということでございます。

○岩原座長

大崎さん、いいですか。

○大崎委員

なるほど、そういうのは何となく理解できるような気もするのですが、それで今後の課題として残すということについても、リテール預金の預金者の保護という観点から、これはやっぱり重要であるということは、ここに書かれているので、そういう意味では、いいのかと思います。私はその点は非常に重要だと思いますので、引き続き将来的に検討ではあるのですけれども、まさに引き続き、「将来的に」より「引き続き」のほうが強調されるような意味で、引き続き将来的に検討していくべきではないかと思います。

○岩原座長

ほかに。井上委員どうぞ。

○井上委員

いまのご説明で、実態把握を進めた結果ということであれば、ご説明いただいたことには十分納得しました。それと違った規制になりますが、2ページの信用秩序維持のための措置のところの2つ目に、外銀支店ではなくて、外資系現地法人について、大口信用供与等規制を課す方向で検討しているということですけれども、こちらも同様に実態把握が重要ではないかと思っております。これも理屈はもちろんよくわかるところで、外資系現地法人についても、問題意識を持って取り組まなければいけないのでしょうけれども、規制をそのまま一律に持ち込んだときのインパクトも一応検証する必要があると思います。その意味で、この「検討していることから」の中身をもう少し伺いたいと思いました。

○岩原座長

藤本さん。

○藤本信用制度参事官

まさしく実態を把握しているところでありまして、大口信用供与等規制を課すとして、どういう規制を課すことが適当かといったものを、個別の銀行に即していろいろ検討しているところでございます。

また、その検討も踏まえて制度をつくっていきたいと思います。

○岩原座長

よろしいですか。

和仁委員、どうぞ。

○和仁委員

同じく信用秩序維持のための措置のところなのですけれども、1つ目のポチというのですか、外国銀行支店に対しては、母国当局として監督を行うことはできないため、本店を含めたグループ全体の状況の把握については一定の限界があるということですけれども、外国銀行支店がグループ内の取引を行う場合には、本店への回金を含め、取引に伴うリスクの所在を支店が適切にコントロールすることが十分にできるかとの問題もある。

結局、本店でやっていることが見えないということなのですけれども、でも、ここで回金についてどういう規制のかけ方をするのかということによっては、日本のマーケットでは、要するに外銀支店というのは日本法人の支店よりも不利益な扱いを受けてしまうことになると見えるのではないか。やっぱりそこのところが心配なのです。

ここのリスクの問題というのは、私もよく理解しているつもりですし、どういうふうに健全性を確保すればいいのか。アメリカが最近FEDが言いだしたように、もう外銀については地域の中間持ち株会社をつくれと、アメリカ国内で活動するなら、アメリカの国内で持ち株会社をつくって、そこを現地の銀行と同じようにスタンダードで監督する。リクイディティーとか、その辺も要件を課すということを言っているようで、どうも最近それが本気だということがわかって、みんな騒いでいるわけなのですけれども、日本の今のマーケットでそういう規制を入れるというのは、多分、必要性はあまりないのだろうとは思うのですけれども、さはさりながら、秩序を維持するのは必要だけれども、同時に、どうやって外銀が日本に出てくるのに魅力的なマーケットにするかということについて、ご配慮いただきたいと思うのです。

免許付与の審査基準を明確化する、それはそうなんでしょう。でも、実際には回金するというのは免許を付与してからの後の話になりますので、そこの段階できちんとしたルールが示せるかというのは、よくわからないと思うのです。そこのところがどうなのか、やはりこれは非常に難しい問題で、正解は今のところないとは思いますけれども、外銀にとって、日本の企業に対して不利益に扱われているという印象を今回の規制導入で与えるというのは、ちょっとまずいので、それはできるだけ避けるような方策を考えていただきたいと思います。

○岩原座長

遠藤さん、どうぞ。

○遠藤監督局審議官

外銀支店の本店への回金の問題に関しては、ここの資料にも触れておりますように、まずは監督でどこまできちっと対応できるかということではないかと思うのです。ですから、監督で我々通常外銀支店から任意にヒアリングしたり、場合によっては24条報告みたいな形でフォーマルな形でヒアリングするようなこともございますけれども、本支店間での資金のやりとりでありますとか、国内において資産の保有状況がどうなっているかといったことについて、これは数字の問題ですから、リアルタイムにとることができると思いますし、そういったことを踏まえて、結局、外銀のビジネスモデルがどうなのか、預金者の状況がどうかとか、実際にどういった預金を集めているのかとか、さまざまな実態がございますので、我々が監督上の何らかの対応をすることによって、本来彼らが目指しているビジネスモデルというものが、おかしなゆがみを生じることがないような、そういった監督対応をとっていかなければいけないのではないかと思っております。

現時点において、こういう方針に基づいて監督対応していくということに関しては、まさに外銀の実態というのを今、鋭意ヒアリングを続けているところでございますので、そういったことを踏まえて、和仁委員がおっしゃったようなことも配慮して考えていきたいと思いますけれども、我々とすると、まさにこういった本支店間の資金のやりとりでありますとか、国内の資産の保有ということについて把握し、それについてどうなのかということに関して、その金融機関とできるだけ協議していきたい、そういった方向で監督していきたいと思っていますので、その方向性に関してはトランスペアレンスの観点から、当然のことながら監督指針で明らかにするということで、きちっと我々がどういったことをやろうとしているのかということは、対外的に明らかにするという方向で行うのが監督の対応なのかと思っております。

○岩原座長

よろしいですか。ほかに外銀の支店について。

山本委員、どうぞ。

○山本委員

今回のご提案で、預金保険の対象には現時点ではしないということだとすれば、倒産手続の中で預金保険機構の関与というのは難しくなるというのはご指摘のとおりだと思うのですが、それで大丈夫なのかというのが、やはり気になるところで、結局、預金保険機構の関与がなくて、裁判所が倒産手続をやるということになったときに、裁判所の負担とか、管財人の負担というのはまだあれなのですけれども、預金者の権利というものがほんとうにしっかりと保護されるようなスキームというか、手続の進め方というのが可能になるのかなというところです。ほんとうに預金者が債権届け出を自分で行って、自分の権利を守ることができるのか、更生手続等で議決権を行使して、その権利を守ることができるのか、あるいは外国の本店等で倒産手続が継続している場合に、それにうまく参加することができるような仕組みにすることができるのか。また、それを前提とするように、平時においても、例えば名寄せとか、そういうような債権者を、もし倒産した場合にはきっちりと把握できるようなシステムを講じておく必要もあるような気がするのですが、そのあたりの見通しというか、何らかのシミュレーションみたいなものを事務当局としてお考えであれば、ちょっとお聞かせをいただきたいのですが。

○岩原座長

藤本さん。

○藤本信用制度参事官

資料でありますと2ページでございますが、おっしゃるように、預金保険機構の関与がないということを前提にしますと、預金者の保護という観点から、倒産手続等の関係でも引き続き問題があるということでありますので、そういうことも含めて、引き続き将来的か、将来的に引き続きかとの点があるようですが、検討していくということだろうと思います。

あとは3ページで、外国銀行の支店の預金者に対しては、一定の説明義務をするということでありまして、そういった中で、ここでは例示をしておりますが、どういったことを説明するのが適切なのかといったことも含めて、それは引き続き将来的ではないと思いますが、検討していきたいと思います。

○岩原座長

吉野さん。

○吉野金融審議会会長

質問させていただきたいのですけれど、3ページのところでも結構なのですけれど、外国銀行の預金に対しては、それぞれ各国の預金保険制度には入っている預金であると考えていいのでしょうか。

○岩原座長

藤本さん。

○藤本信用制度参事官

これは各国の預金保険のカバレッジというのは、同一ではありません。例えば、我が国の場合は、日本の金融機関の外国にある支店の預金者はどうかということは、法律には明確には書いていないのですけれど、対象にはなっていないものと考えられています。

最近、外国銀行支店等のヒアリングでいろいろなことがわかってきたのですけれども、国によっては、日本に来ている外国銀行支店で受け入れている円預金についても、本国での預金保険制度の対象になっている場合もあるようでございます。それは国によってやはりさまざまということではないかと思われます。

○岩原座長

大崎さん。

○大崎委員

そういった点を、まさに説明義務の内容にしていただけると非常にいいなと思います。日本の預金保険制度の対象外であるというだけで終わってしまうと、ほんとうの意味での預金者に必要な情報が伝わらないような気がしますので、そこはよろしくお願いいたします。

○岩原座長

いいですか、その点は。

ほかに何かございますでしょうか。外銀支店関係の問題については、よろしいですか。特にご質問、ご意見がないということでしたら、最後の、これまでワーキング・グループでご議論をいただきました各テーマについて、つまり、どのようなテーマであれ、ご質問、ご意見等があれば、お願いしたいと存じます。

お手元の参考資料を参考に、ご質問、ご意見等を承りたいと思います。すなわち、破綻処理等の問題から、全ての問題について何かこの際ご質問、ご意見があれば、承りたいと思います。いかがでしょうか。

和仁委員、どうぞ。

○和仁委員

すみません、破綻処理は、もうまとめはつくらないのですか。今、いただいているのは、過去の説明資料。

○藤本信用制度参事官

過去の説明資料で、前回ご議論いただいたのですけれども、それも踏まえて、いろいろ取りまとめに向けて作業していきたいと思っているのですけれど、さらに今日ご意見があれば、お伺いしようという趣旨でございます。

○岩原座長

いかがでしょうか。

大崎さん。

○大崎委員

質問ですが、今日のこの事務局説明資料マル3では、金融機関の破綻処理の新たな枠組みの対象として、外国銀行支店も含めることが適当ではないかと書いてあって、私、それには賛成なのですが、そうすると、外国の証券会社とか、外国保険会社の支店というのはないですか。

○藤本信用制度参事官

あります。

○大崎委員

あり得ますよね。そういったものは、破綻処理の枠組みは幅広くという話になったわけですけれど、外国のものについては銀行の支店だけということなのですか。

○藤本信用制度参事官

Key Attributes上は銀行というものに限っているわけではありません。ただ、ここは外国銀行支店の資料なので、そこの部分を切り取っているということでございまして、支店形態で進出してきているものについても、国内法人と同じような範囲で対象にするということだと思います。

○岩原座長

いかがでしょうか。

さっきの和仁委員のご発言にもありましたように、破綻処理のところなど、あまり細かい具体論までは、まだ今までの資料では書かれていないわけですけれども、この際こういう点について取りまとめに向けて明確にしてほしいとか、そういうことがあれば、ぜひ承りたいと思いますが、いかがでしょう。

川波委員、どうぞ。

○川波委員

破綻処理の問題につきましては、費用負担の論点が1つの重要な論点になると思うのですけれども、その際に、事前か事後かというその視点もございますし、今、次回の取りまとめに向けていろいろ議論をし、つくっていらっしゃると思うのですが、できれば事前負担の場合はどうだ、あるいは預金保険機構があり、それから保護機構があり、それから保護基金があるわけです。それぞれ業界に関連したものがございますので、できればある種のシミュレートしたような、可能な限りでよろしいですので、具体的なシミュレーションのような形の案が、あるいは議論のたたき台ができればありがたい。事前の場合にはどうか、あるいは事後の場合にはどうかという切り分けをして議論ができるとありがたいなと思います。

○岩原座長

藤本さん。

○藤本信用制度参事官

事前、事後の話は、本ワーキング・グループでもいろいろ突っ込んだ議論が行われまして、両方の考え方があるのですが、事前というのは理想的ではあるのですけれども、どのような危機が今後起こるかわからないといった状況で、どのような規模の負担があるかというのがなかなか見通せない中で、事前というのはなかなか難しいことがあるのではないかという提起はさせていただいているところであります。

なお、何らかのより具体的なイメージが湧くようなものがつくれるかどうかというのは、また考えていきたいと思います。

○岩原座長

和仁委員。

○和仁委員

次回の取りまとめというか、破綻処理のところの取りまとめに関してなのですけれども、前回どういうふうな形で金融機関が処理するかというので、6ページに事業譲渡等を活用した金融機関の処理というのを書いていただいたのですけれども、やっぱりこれだけのイメージがよくわかないのです。破綻するほうも、やっぱり思いがあって、どういうふうに破綻していきたいかというのもあるということで、リゾリューション・リカバリープランがあると思うのですけれど、何かサンプルになるようなリゾリューション・リカバリープランとか、そういうものはございませんか。やっぱりそういうものを見て、どういうふうに彼らは自分たちの金融機関の破綻というのを考えているのか。

要するに、ここでお話ししているのは、マーケット全部を市場横断的な破綻制度の話をしているわけですけれども、それではなくて、やっぱり対象となる企業がどういうふうな破綻の手続を考えているのか。まさにリゾリューション・アンド・リカバリープランだと思うのですが、そういう資料というのはお持ちではないですか。

○岩原座長

藤本さん、どうですか。あるいは三井さん。

○三井総務企画局参事官

まずRRPをつくる金融機関というのは、非常に限定的に、特にGの、グローバルにRRPをつくる金融機関というのは非常に限定的ですので、幾つかの金融機関はグローバルにシステム上重要な機関はつくっていると承知していますし、私どもも議論はしています。

FRBを含め、各国の当局はいずれもその詳細を現時点では世の中に明らかにはしておりませんし、また、それぞれの当局との関係でも、その詳細をそれぞれの当局が掌握していることについても、詳しくは他の当局にはさらしていないようでございます。

もちろん、事柄の性格上、例えば一例で申し上げますと、どの業務がクリティカルかノン・クリティカルか、コアかノンコアかというのを分類して、それを重層的に分類してクリティカル度の低いものを、重要度の低いものから売却、清算、切り離しをしていって、最後何がしてでも守りたい取引はこういうものであるという段階をつけるとか、その手順、それから金融機関グループの間の手続といったものをつくっていくということがたくさんある項目の中にございます。その最終的な決断というのは、多くの場合は、そのとき、そのときのマーケットの状況に応じて、例えばAという業務とBという業務があるとすれば、ある状況ではA業務を先に売却するという判断があるかもしれませんし、ある状況ではそれはB業務のほうを早く売却してA業務を守るのだと、こういうこともあるかと思いますので、あらかじめアプリオリにA部門は後まで残すとか、B部門は最後まで守るとか、そういうことが決まっているものでもないだろうと思われます。

それからもう一つは、今の優先順位をつける大前提として、金融機関のグループ内の取引が、グループと他のマーケットプレーヤーとの取引関係がどうなっているかというのを詳細に把握しておくというのがございます。これは今回の金融機関、リーマンショックでもグループ内で非常に複雑に網の目のような取引がされていまして、金融機関の経営幹部ですら、日々どういうポジションになっているか必ずしも正確に、的確に把握し切れていたとは言えなかったのではないかという反省もあります。とりわけ複雑な金融商品で、時価もよくわからなかった、グループの中にどういう時価があって、どういう不良債権なり、毀損した資産があるかよくわからなかったされております。そこをかなり早い段階で的確に整理をして、分類して、解明して、いざとなればその解明された取引なり、ポジションの姿を使って、ある部分は清算、ある部分は維持する、そんな判断ができるような、その大前提の仕組み、構造を把握するという部分があります。

これはこれで、実際そのGのSIFIsになった、かつRRPをつくるべきであるとされたところは、非常にご苦労されて、大変な労力をかけて把握・分析をされていると思いますが、そのことそのものも、日々、例えばエンティティー間のレポ取引の残高とか、それがプラスになっているか、マイナスになっているかというのは、ご案内のとおり変わります。ですから、そういうものを、いざとなったある段階でどういうふうに把握し、どういうふうに判断していくかという手順を定めた部分もあるというものでございます。

ということで、実は金融機関の内部でつくっているものを、金融機関もおそらくここに同席されている金融機関も、この場で詳しくお示しして、こうですということをご説明されるということは想定されていないと思いますし、また、当局もなかなか話しにくいことではあります。大ざっぱに言って、今申し上げたようなものを各金融機関ともつくっているということになりますし、マーケットの状況やビジネスモデルの変革というでしょうか、進化というのでしょうか、に応じてリバイズをしているという状況にあろうかと思います。

ここに掲げられているものは、確かにイメージが湧かないとおっしゃられることは、そのとおりでありまして、何らかの報告をしなければならないと思っているところもあるわけでございます。他方、もう一つここでの問題提起は、ここには幾つかの法律上、破産法制上なり会社法制上、チャレンジングな各項目もございますけれど、そういったツールを並べさせていただいております。危機というのはいろいろな形で起きまして、また過去の日本の金融危機においても多数の金融機関を対象に、いろいろな措置を講じてございますけれども、それぞれの金融機関に全くワン・フィット・オールで同じことをやったわけではありません。それぞれに対して、それぞれの金融機関の抱えた問題に応じて、少しずつ違った対応をしてきたのではないかと思います。

日本の場合は比較的、不良債権問題、融資が劣化して担保価値が不動産を中心に下がったというシンプルなものでございます。それに対してリーマンショックでは、その要因が信用保険であったり、あるいは証券化商品であったしましたけど、証券化商品でも様々なタイプのものがありまして、また、金融機関によってもさまざまな形で危機が発現しました。それぞれに対して対応の仕方においても相当なバリエーションがあったと思います。

今、私どもがここで今用意しているものの中には、法制的に関係当局とまだまだ議論中のところもございますが、これらの道具立てが、今後起こり得る、極めて予測困難ではあるけれども、多様なことが想定されるものに対して、ありとあらゆる事態に対応できるような道具立てがそろっているかということも、1つのテーマかと思います。

その意味では、今ここに幾つかかなりたくさんの道具立てを並べておりますけれども、これらをうまく組み合わせて将来の金融危機を処理できるか。こうした問題について、シミュレーションという宿題をいただいたので、どういった形でできるのか、改めて考えさせていただきますけれども。

もう一つは、シミュレーションをすると、多分次の危機は、シミュレーションはここで示したものと同じことをやる人はおそらくあまりいらっしゃらないと思うので、それではない。レギュラトリー・アービトラージという言葉は、よくないかもしれませんが、そういう取引で起きてくる。ここでテーブルに出したもの以外で起きるということを想定した場合に十分な道具立てがあるかということについても、ご議論なり、ご意見なり、ご示唆を賜りたいという気持ちがございます。

○岩原座長

大崎さん。

○大崎委員

今の三井さんのおっしゃることを受けてなのですけれども、私はやはり幅広い金融機関を対象にした破綻処理制度をつくる最大の目的は、日本の金融システムというのが、相当なことが起きても対応する準備をしているぞということを内外に示すというところにあるのだろうと思うのです。一番いいのは、そういう危機が起きないことで、それは日常的には監督・検査とかで対応するのでありましょうし、危機に至らないような破綻であったら、早期是正措置で処理していくということにあるんだと思うのです。ですから、どういう事態を想定しているのかとか費用をどのくらい見積もるのかということをあまりがちがちやっても、正直言って、意味がないのかなという気が私はしております。

だからこそ、異常事態だからこそ基本的には金融危機対応会議ですか、要するに総理大臣をヘッドとした会議を開いて決めるというようなことも念頭に置かれているわけなので、もちろん何ら備えなしにぼーっとしていればいいというものではないのは当然なのですけれども、あまりそこを細かく議論してもいかんのかなという気が甚だしております。とにかく大きな構えの制度を早目につくって、日本は備えがあるぞということを示すというのが一番重要なのではないかと思います。

○岩原座長

和仁委員、どうぞ。

○和仁委員

今、大崎委員のおっしゃったことは全く賛成なのですけれども、こういうふうなシステムを日本はちゃんと持っていますというのを示すのは大切なのですけれども、今の三井さんのお話を伺っていると、何かドッド・フランクと似たようにぼこぼこ穴があいた法律が出てくるという感じなのでしょうか。要するに出てきたけれども、具体的にどうやって動かすのか、よくわからない。何かいつまでたっても仕上げとかが出てこないとか、そういうふうことになって、わからないという状況になってしまうとまずいなと思いますけれども、やはりその辺はきちんとどういうふうな手続で金融機関の倒産が処理されていきますということが見えるような法律にしておかなくてはいけない。

昔の話ですけれども、長銀が倒れるときというのは、金融再生法の細かい間違いが結構あったそうですけれども、金融再生法案が出てくるまでは、みんなどうやってこれをさばこうかというので悩んでいたわけですけれども、それよりはいい準備ができている状況に日本を置いておきたい、それは全く賛成だと思うのですが、そのときに一体どういうふうに金融機関は破綻していくのか。一番複雑になっている銀行持ち株会社の下にいるグループは、そういうふうなのを考えた場合に、それらがどういうふうに破綻していくのだろうかということがある程度イメージができてないと、みんな議論できないのではないかなということで、先ほどRRPはどこかいいのありませんかとお願いした次第なのです。

そこのところが見えないとドッド・フランクのように何をやりたいのかよくわからない。極めて政治的にほかの国に振り回されるという状況は絶対に避けたいと思いますし、日本人は避けるだろうと思いますけれども、もう少し何か具体的にこういうふうにさばいていくのですという道筋を見せていただけるとすごくありがたいです。今まで過去の日本の金融機関は大体日銀特融なり金融再生法でリクイディティーをどんどん与えて、それで何とか状況をもたせるということをやったわけですけれども、それはそれで一つの方法だとは思いますけれども、そういうことを別に書いてもあまりしようがないので、むしろどういう道筋が見えるという、そういうふうな立法にしていただければなと思います。

非常に大変なのはよくわかります。国のためにつくるようなシステムですから、費用の分担がどうだとか、その辺は後で決めてもいいのだろうとは思いますけれども、ちょっとその辺が今までの議論を伺っていてもどういうふうにやっていくのか、よく見えない。それを何とかしていただけないでしょうかというのが、私からの願いです。

○岩原座長

三井さん、何かありますか。

○三井総務企画局参事官

ちょっと工夫をしたいと思います。特別監視から始まり、数多くの措置を後ろのページに字で列挙しておりますが、必ずしもこのポンチ絵の中に入っていないということもありまして、確かにこれをどう再構成して、手続の中に組み込んでいくのか、ビルトインしていくかというのが、確かにおっしゃるとおり、わかりにくいと思われますので、よく考えてみます。

○岩原座長

いずれにせよ憲法上要請される範囲ではちゃんと法律に書いて、憲法上、疑念のない形の法律にしなければいけないわけですから、当然、法案化していく過程ではより具体的なことが書かれなければいけないわけですので、それが書けるように、ここでもなるべく、それを可能にするような議論をワーキングが開かれている間にできるだけしたいと思います。いかがでしょうか。

ほんとうのシミュレーションをしようとしたら、ワーキングは秘密会でも開いて、やるしかないでしょうね。どうでしょう、何かありますでしょうか。鳥海さん。

○鳥海国際銀行協会ディレクター

参考資料4、第9回のトピックでございまして、外国銀行の代理・媒介というテーマなのですが、確か時間が必ずしも十分にとられていなかったかと思いますので、若干補足的に意見、要望を申し述べさせていただきたいと思うのですけれども、今般の制度の弾力化といいますか、柔軟化の主体は国内銀行と書かれているのでございますが、私どもとしましてはこれに外国銀行の在日支店というのもぜひ含める形で、今般の弾力化、柔軟化を利用できるようにさせていただきたいなと思っております。資本関係のない外国銀行と提携して、日本の企業の海外のお客様等に代理・媒介するといったパターンになっているのですが、ぜひよろしくお願いしたいと思います。

もう一つは、既存の制度と今般の弾力化との関係において、今回は資本関係のない外国銀行の業務の代理・媒介をするについては、認可が必要だということでございまして、これ自体は違和感はないのですけれども、現行の制度では私どものような在日支店と50%を超える資本関係のある海外のグループ銀行の業務を、日本のお客様に代理・媒介するときに認可が必要なのだとなっておるわけなのですが、要は資本関係の全くない第三者である外国銀行と私どものような銀行免許をいただいている外国銀行支店の身内である海外銀行とで全く審査の条件が同じだというのもややバランスがとれないかと思いますので、ぜひもし今般の柔軟化が成案を見るのであれば、私どものような外国銀行支店の代理・媒介のパターンについては、例えば審査基準を登録制にするとかいった形で見直しをご検討いただければ、非常にうれしく存じております。

以上です。

○岩原座長

はい。藤本さん。

○藤本信用制度参事官

今の件でありますけれど、現行規制の話ですが、日本の銀行が子会社を持つときには、基本的に認可制になっていて、日本の当局はその銀行グループ全体について必要な実態把握をしている。外国銀行が日本に支店を設けるときには、必ずしも外国銀行の全体を知っているわけではないということもありまして、こういう認可制、届け出制の段差を設けているところではありますが、いただいたところは、ご要望としてうけとめたいと思います。

○岩原座長

ほかに何かございますか。よろしゅうございますか。

それでは特にご発言がないようでございますので、本日の審議を終えたいと思います。活発なご議論をいただきまして、まことにありがとうございました。若干時間を残しておりますが、ご意見は特にないようでございますので、本日の審議は終了させていただきたいと存じます。

本ワーキング・グループにおきましては、多岐にわたるテーマについて、これまで精力的にご議論をいただいてきたところでございますが、取りまとめの時期が近づいているようでありますので、次回、第13回は、これまでの議論を踏まえ、取りまとめに向け、報告書の素案について、審議を行いたいと考えております。

事務局から連絡等ございましたら、お願いします。

○藤本信用制度参事官

次回の日程につきましては、皆様のご都合を踏まえながら、座長と相談の上、別途、ご案内させていただきます。

以上です。

○岩原座長

どうもありがとうございました。

それでは、以上をもちまして本日の会議を終了させていただきます。どうもありがとうございます。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企画課信用制度参事官室(内線3692、2753、3566)

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