金融審議会「保険商品・サービスの提供等の在り方に関するワーキング・グループ」(第2回)議事録

1.日時:

平成24年6月27日(水曜日)10時00分~12時00分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室

○洲崎座長

それでは、ただいまより保険商品・サービスの提供等の在り方に関するワーキング・グループ第2回会合を開催いたします。皆様、ご多忙のところ、ご参集いただきまして、まことにありがとうございます。

議事に入ります前に、前回ご欠席の委員を紹介させていただきます。川島千裕様でございます。

○川島委員

連合の川島です。よろしくお願いします。

○洲崎座長

また、本日は吉野金融審議会会長、そして参考人といたしまして同志社大学大学院司法研究科教授の木下孝治様にもご出席いただいております。

なお、本日は山下委員がご欠席となっております。

それでは議事に移らせていただきます。お手元の議事次第にもございますように、本日はまず加藤委員、水口委員から諮問事項に関するご見解等についてご説明を伺い、その後、丹野委員、木下参考人から同様に諮問事項に関するご見解等についてご説明を伺うこととしたいと存じます。

それではまず加藤委員からご説明をお願いいたします。

○加藤委員

ありがとうございます。本ワーキングのメンバーを務めますボストン・コンサルティングの加藤です。よろしくお願い申し上げます。

今回は一歩引いた目線での保険市場の概観、全体像を15分程度で説明してほしいとの要望を事務局よりいただきました。その意味で、今回の審議項目と直接関係をしない部分もございますが、検討を進めていくに際しての背景、文脈理解ということでお聞きいただければと思います。ではまず、1ページのところに本日お話をさせていただきます項目を挙げております。最初に市場の全体像を申し上げた上で、3つのキーワードに触れてまいりたいと思います。では、2ページ目にお進みをいただければと思います。

2ページ目のグラフですが、日本の生保市場の新規契約保険料、ANPというベースで過去10年を示したものでございます。市場全体の数字を見ていただきますと、規模はほぼ横ばい、堅調。ただその中でいろいろな動き、チャネル構成が大きく変わってきたことがおわかりいただけると思います。具体的には、銀行窓販もしくは代理店の個人向けが成長し、一般に生保レディーと言われているチャネルが縮小しています。

これを受けまして次の3ページにお進みいただければと思います。これは弊社の試算ですが、5年後、2016年度の姿を示しています。市場全体の規模は約2.3兆円と堅調な姿を見込んでいます。ただこの堅調な市場規模が実現できるかどうかは過去同様のセグメントシフト、いろいろな形での消費者ニーズにこたえていけるような市場活力が保たれるかどうかにかかっていると考えています。

実際、次の4ページをごらんいただきますと、私どもが将来市場規模を予測するに当たって見込んだ変化の要因、ドライバーというものを挙げています。ここに挙げたような環境変化、もしくは消費者自身の年齢構成、ニーズの変化といったことに対応した商品・サービスの提供を5年後も保険会社がきちんとできているかどうかが、先ほど申し上げたような堅調な市場規模を実現するための前提と考えます。

そういった意味でこのような環境変化に対応した創意工夫、保険会社の経営努力がこれまで以上に重要と私どもは考えており、本ワーキング・グループ諮問の第1項目であります「多様なニーズにこたえるための保険商品、サービスの提供及び保険会社等の業務範囲のあり方」は市場の活性化を担保し、国民経済の向上に貢献するという観点から非常に重要な検討事項と考えます。

続きまして先ほど申し上げました3つのキーワードという話をさせていただきたいと思います。次の5ページにお進みをいただければと思います。1つ目のキーワードは、「家族のための保険」から「自分のための保険」へという変化です。この表自体は世帯数ベースで今後5年間の変化を見たものです。少子高齢化ということに加え、単身世帯化という要因も非常に強く効いていることがわかると思います。そんな中どんな保険が求められているのか。昔ながらの世帯主が亡くなったら家族の生活が大変だから、家族のために大型の死亡保障をかけておこうというニーズを持つ消費者は減ってまいります。

一方で自分のための保険、例えば自分が病気になったとき、例えば自分が動けなくなったとき、そんなときに備える保険を求める消費者が増えていきます。死亡保障という同じ商品であっても家族を守るという目的と自分のお葬式代として使ってほしいという目的では、おのずと保障額ですとか商品性が変わってまいります。

では2番目のキーワードであります「情報の受け手」から「情報を選択する消費者」へということを6ページでご説明申し上げたいと思います。まず左のグラフですが、2004年には38%の人が2カ所以上から保険購入のための情報を得た、入手したということを示しております。それが2009年になりますと47%と大幅に上がってまいります。つまり昔のようにある1社の営業職員さんから説明を聞いて、どこも商品は同じようなものだから他は比べなくてもいいやという形で契約する消費者は半分以下になりつつあるということが見てとれるかと思います。

下に点線で囲みましたが、これは私どもがインタビューした中の1人、消費者Aさんの保険購入プロセスを図示しております。この方はウエブでの検索を皮切りに、口コミサイトで評判をチェックし、その後来店型ショップに3回行った上で、最終的には友人が紹介してくれたB社さんで契約をしています。このAさん、典型的な専業主婦の方で、必ずしも金融リテラシーといったものがもともと高い人ではありませんでした。ただ4カ所の異なる情報ソースからいろいろなことを学ぶ中で、かなり的確に自分のニーズと商品内容を理解して保険を購入されたという例でございます。Aさんを見ますと、金融リテラシーが低いので、規制・監督を厳しくして、害のある情報から守ってあげるべき情報弱者の消費者という見方が必ずしも当てはまらないように思います。ウエブでの口コミや知人のアドバイスなど、ある程度は信頼できる情報ソースを複数比べながら、情報を単に受け取るのではなく取捨選択する消費者像というのが見てとれると思います。このように情報を取捨選択するAさんにとっては、情報品質を厳しく規制してもらうより、一定品質の情報であればより多く流通するように促進してもらうことが重要になってきます。規制、監督という語感からしますと、情報発信は100%正確な必要最小限なものしか認めないといったように聞こえますが、一定品質を担保した情報をより積極的に発信し、消費者が取捨選択できるような環境整備といった側面も大事であることを忘れてはいけないように思います。

次の7ページをご説明申し上げたいと思います。前のページに、保険のアドバイスをもらう先として代理店と答える人が増えているということが表示をされていました。ただ現在の代理店がこういった消費者ニーズにきちんとこたえられているかと問いますと、限定的な代理店だけしか対応できていないといった状況と思います。例えばですが保険商品にはアフターメンテナンスというのが欠かせません。左のグラフを見ていただきますと、17%、2割弱の消費者しか代理店からきちんとコミュニケーションを受けていると認識をしておりません。契約時だけではなく、アフターメンテナンスもしくは契約時であってもより公正、透明な形で説明を行うなど代理店に求められる責任というのは、今後ますます重くなってきていると考えてございます。

では最後に、3つ目のキーワード、「私助と公助が共働・連携」する社会へというポイントについて説明をさせてください。お手元8ページでございます。先ほど1つ目のキーワードで自分のための保険ということを説明申し上げました。具体的には医療ですとか介護保険ということでございます。ここに示しましたグラフは、その1つであります医療分野での負担割合を示しております。見ていただいたらわかりますように、日本では公的な保険が他国に比べても充実をしており、結果、現在の民間の役割というのはまだまだ限定的だということがわかるかと思います。ただ少子高齢化が進む中で民間の保険の役割は今後ますます日本においても重要になってくると考えております。これら自分のための保険、医療や介護といった領域を考えてみますと、公と民の連携の必要性というのは非常に重要だと考えます。従来主力でありました死亡保障では、公と民がオーバーラップするという部分は非常に限定的で、連携性の必要というのは低かったと言えます。ただ医療や介護といった分野では基礎的な部分を公的保険がカバーし、その不足部分を民間が担うという設計になってまいります。そうなりますと、公的保険での守備範囲もしくは疾病そのものの認定基準といったものが民間の保険設計をかなり左右してきます。つまりこういった民と公が一定オーバーラップをするような領域におきましては、公と民がばらばらに動くより、公と民の間で対話をしながらそれぞれの守備範囲などを了解しながら進めていくことが、国民経済全体のプラスになっていくのではないかと考えております。

次のページ、9ページでございますけれども、実際の例として介護保険市場の推移を示しています。左側のグラフですが、これは特約部分を除いた主契約部分だけの介護保険の件数推移です。2004年度から2010年度までは市場があまり伸びていないという状況が見てとれると思います。今年になりまして、介護保険料控除といった対策がとられており、介護保険市場は成長に転じるのではないかと期待して見ていますが、こういった例をとりましても公と民の対話、共働というのがいかに重要かということを示しているかなと感じております。

さて、いただきました10分強というお時間過ぎつつありますので、最後の10ページでまとめを申し上げたいと思います。第1に申し上げましたのは市場活力の活性化という文脈で本ワーキング・グループ諮問事項第1番目であります多様なニーズにこたえるための保険商品やサービスの提供、保険会社等の業務範囲のあり方が非常に重要な論点であるというポイントです。第2に申し上げたかったのは3つのキーワードを踏まえる中で、いわゆる限定列挙ですとか限定・制約をベースにした規制の枠組みから、公私の共働・連携、各社の創造性・市場開発力を活性化するより柔軟なプリンシプル・ベースの規制枠組みへの一層の進化が必要ではないかというポイントです。

以上で私の説明を終わらせていただきます。ご静聴ありがとうございます。

○洲崎座長

どうもありがとうございました。

それでは続きまして水口委員、お願いいたします。

○水口委員

同じく本ワーキングのメンバーを務めさせていただいております水口でございます。私のほうからは「我が国の保険市場の現状と課題」といった題をつけさせていただいておりますが、問題意識というか、今、私の持っております問題意識を共有化させていただきたいと考えております。

2ページのほうでトピックスとしてあげさせていただいておりますが、まず第1番目には保険業界を取り巻く国内の事業環境の変化の認識、2番目には健全性の確保を前提とした保険会社の事業基盤または収益基盤の強化に向けたシナリオ例ということで、変化しております事業環境への対応施策はどのようなものがあるかということに触れさせていただきたいと考えております。3番目にこうした諸施策の1つとして考えられます介護関連商品、事業・サービスについての考察、4番目にはやはりこうした先ほど申し上げた事業基盤強化等の一シナリオとなり得る新興チャネルの活用についての考察、それから最後にはすべて総括した上で、さらなる制度整備の検討余地のある分野例として考えさせていただいていることを述べさせていただきたいと思います。

3ページをごらんください。前回のワーキングにおきまして申し上げましたように、急速に進行いたしております少子高齢化を背景とした保険会社にとっての事業環境の変化のもと、業界が従前からの商品・サービスの延長線上で事業展開していくということには限界があると常々思っておりまして、制度を含めた体制整備が望まれるところだと考えております。こうした考え方の背景となる保険業界の事業環境の認識について述べさせていただきます。ここのスライドについては主に生命保険業界について言及しております。

まず少子高齢化が進む中で、先ほど加藤委員からもご指摘がありましたが家族の大黒柱が死亡したときに備える保障のニーズは引き続きあるというものの減少圧力は想定されます。その一方で長生きのリスクを抱える高齢者がさらに急速に増加することが見込まれます。こうした高齢者ニーズの具体的な形態といたしましては、長生きリスクに対応する商品とか、こうした商品と親和性のあるサービスに対するニーズも存在していると考えられます。また晩婚化・非婚化といった現象も見られ、共働きの夫婦が増えるなど世帯構成の変化、ライフスタイルの変化なども見られます。さらに消費者の可処分所得は伸び悩んでいる場合も多く、保険料負担の観点からの保険見直しのニーズもあると考えられます。こうしたさまざまな事象を背景に消費者のニーズは変化、また多様化してきていると考えております。こうした状況から訴求力のある保険商品やサービスのあり方は変化、多様化してきています。消費者は選別志向を高めており、引き続き保険加入時のアドバイスを望む層がある一方で、みずから商品特性、価格などを比較して、どの保険に加入するか判断したいといった消費者層も増加していると考えられます。伝統的な保険チャネルに加えて消費者の志向の変化に対する形で、新たに対応した販売チャネルが一定程度消費者の利便にかなう側面があると考えております。また価格・商品性などをめぐる競争が激化する中で、保険会社のリスク調整後リターンが圧迫されているという可能性もあると思っておりまして、環境変化に保険会社が十分対応しないと事業基盤の劣化につながりかねないと考えております。

4ページをごらんください。ではこうした事業環境のもとで保険会社の事業基盤の劣化を防ぎ、収益・事業基盤の強化を図るシナリオの例を保険会社が志向しているものもまじえ、ここに示しております。事業モデルの強化はリスク調整後リターンを得ることを裏づけとした保険会社の健全性の確保が前提であることが肝要であると考えております。

国内における死亡保障ニーズへの対応商品に加え、長生きリスク対応商品、周辺サービスのプロフィールの強化に力を入れてきている会社も見受けられます。そして第1回のワーキングで実務家からのご説明もありましたところの介護保険などの周辺事業ニーズにより幅広い対応をすることで事業基盤の強化につなげたいという実務家意向もあると認識しております。また消費者の選別志向の高まりに多様な販売形態が対応している中、多くの生保は顧客接点を求め伝統的な専属チャネルのみでなく、外部チャネルを活用してきています。多様なチャネル及び各チャネルに整合的な商品の選択肢を消費者に提供することが保険会社の競争力の強化につながるシナリオも想定されると考えております。

一方で、一定の交渉力のある代理店の意向のあり方によって、相対的に高い手数料なども含めた諸事項が、保険会社にとっての収益性の圧迫要因となったり、リスク管理が困難な商品の開発につながる懸念はあるかもしれません。こうした事象を裏返して見れば、消費者の視点からにも留意すべき事項があるかもしれないと考えてはおります。また競争が激化する中でも収益を確保するためには、事業効率化にかかわる諸施策を検討することも必要であると考えております。このスライドでは海外事業展開についても挙げさせていただいておりますが、例えば新興国において今後経済成長が見込まれ、人口動態の変化も含めた事業環境が変化すると想定されますが、我が国における少子高齢化に注目した諸施策が後々新興国で生かされ、保険業界の発展に寄与するケースも想定されると考えております。

では5ページから8ページにわたりましては、保険会社の事業基盤または収益基盤の強化のシナリオ例で述べさせていただいておりまして、介護関連商品、事業サービスについて考察させていただきたいと思います。先回のワーキングにおいては実務家から現物給付型介護保障保険の提示例とか介護関連事業の展開にかかわる子会社の業務範囲規制の緩和などが、少子高齢化に対する施策として今後の取り組みの方向性と示されておりますが、先回のワーキングでも申し上げましたように、保険会社の健全性の確保や真の消費者の利便の向上などの観点から、留意事項もあるものの、いろいろ工夫すればクリアできるものではあるのではないかと考えております。介護保障保険に限ってということではなくて、いろいろ施策はあるかと考えておるところでございます。

5ページはご参照までということで飛ばさせていただきまして、6ページ、7ページのところでちょっとざっとごらんになっていただきながらということですけれども、公的介護保険の枠組みの中での介護サービスのあり方のイメージ図ということをお示ししております。公的介護保険の給付は要介護認定を受けた利用者が利用料の一部を支払うことで介護サービスを受けることができますが、要介護度によって設定されている支払い限度単位を超えた分は、全額自己負担となります。要介護の5の方の介護も可能な特別養護老人ホームもあれば、予防給付を中心とした要支援1、2の方への対応としての在宅サービスなどもあるということであります。こうした公的な枠組みに加えて軽度の介護状態に対応するサービスなど公的な枠組みの支給限度単位を超えた上乗せサービスとか給付対象外サービスなどの提供を受けることに消費者は価値を見出すことも考えられると思っております。

では8ページのほうで、本ワーキングの第1回において実務家からご説明がありました介護施設への入居権、介護サービスなどを付与した介護保障保険などについては、消費者がそうした特性の商品を選考することも想定されますので、こうした商品の提供を可能とすることについて、十分に検討する意味があると考えております。一方で、留意事項があるということは前回もお話ししたところであります。実務家から現物給付の一例として挙げられました介護施設への入居権つき介護保障保険について、どのような留意点があるかということを考察したいと思っております。

まず20年とか30年先に給付が支払われるような事象が起こる商品特性を有する商品でございますと、介護施設への入居権にかかわるリスクについては、幾つかあるとは思いますが、思いつくもので1番目としては、インフレーションリスクということで保険会社の健全性の観点から考えますと、介護保険、保障保険の契約の締結時と金銭価値と実際加入段階での金銭価値が異なるリスクがあるということです。2番目には契約者の介護状態に適合したサービスが提供できるか否かということに不確実性があるようなケースも想定し得ると思います。例えば契約者が要介護状態になったときに、要介護1なのか要介護5となるのか、保険加入時には特定できないということです。介護施設の中には重度の介護状態の方を介護できる体制が整っていない施設もある。したがって介護施設の入居権を付与した保険に加入した契約者が重度の介護状態となった場合に、当該施設が契約者の要介護状態に適合したサービスを提供できないケースもあり得るかもしれないと考えております。いずれにしても入居権に限定せず、創意工夫して現物給付にかかわる諸リスクに対応する方法を考察することは有用だと考えております。実務家の方々もいろいろ工夫されるというお話があったところでありますので、さらなる考察の余地があるのではないかと考えております。

それから子会社の業務範囲の観点から申し上げます。先ほどもお話しましたが、軽度の介護状態に対するサービスなど、公的な枠組みの支給限度単位を超えた訪問介護の回数を増すなどの上乗せサービス、それから給付対象外のサービスなどの提供を受けることに消費者は価値を見出すことは考え得ますし、介護関連事業など保険商品と密接な関連範囲について、子会社の業務範囲規制のあり方を再考察する余地があると考えております。その一方で、一般的に介護事業について諸課題が認識されているところではありますので、介護関連サービスにかわるリスクを踏まえ収益リスク管理の枠組みをもって、事業リスクについて十分に留意する必要があるとは考えております。

9ページのほうをごらんください。ここで視点を変えまして次のトピックスといたしましては、保険会社の事業、収益基盤の強化のシナリオ例でも述べさせていただいたチャネルの多様化の一角となり、商品比較した上で保険に加入・見直しをするといった消費者のニーズにこたえる形で新たに台頭してきている来店型店舗などに目を向けたいと思います。ここでは、チャネルの多様化の状況についてお示ししております。伝統的なチャネルを好む消費者も多いものの、みずから進んでチャネルにアクセスすることを志向する消費者も存在し、こうした消費者の志向に対応するものも含め、チャネルが多様化していると考えております。

10ページをごらんください。こうした新興チャネルの中でも、存在感が増しております来店型店舗、通称保険ショップと呼ばれる代理店の現状について触れてみます。新興チャネルとして認知され、さらなる設立の動きがあります。成否はスタッフの質、マーケティング戦略とか立地などに裏づけられた集客力が非常に重要であるということで、うまくいかないと店舗が存在すると思われる。なかなか安定的に事業展開を行い、どんどん事業拡大してきたものばかりではないといった現状があります。来店型店舗にはいろいろな形態がありますが、本部が人材育成などを担った支援機能を有したフランチャイズ展開をしているところもありますし、また来店型店舗を核とした融合チャネルを展開し、ネット比較サイトを活用することもありますし、訪問販売もするといったような融合チャネルの展開をしているところもあります。

ここまで述べさせていただいた来店型店舗と呼ばれる代理店のビジネスの展開の形態は必ずしも画一的でないということが言えます。また乗り合い代理店を本業とした事業の展開をしているこのような来店型店舗については、強固な財務力を有しているところばかりではないということは、先ほど統廃合が繰り返されるということからも言えると思います。このページでは生保による来店型ショップの展開についてもお示しさせていただいておりますが、説明は割愛させていただきます。

11ページをごらんください。ここでは新たに台頭した乗り合い代理店、来店型の店舗などについての特性を簡単に整理しております。すべての代理店というわけではないですが、来店型代理店の中には公平、中立な立場で保険募集をしているということを標榜しているということを明示的に消費者に伝えているところもあります。保険ショップごとに異なる販売方針を有しており、推奨する商品の選定の基準というのがいろいろあり得ると考えております。仮定の話ではありますが、ほんとうに素直に同一カテゴリーの商品の価格比較をたたき台としたコンサルティングを志向しているところもあるかもしれませんし、高い単価の保険を取り扱うことで手数料の絶対額が多いほうがいいなということを基軸に、販売方針を立てているところもあるかもしれません。販売手数料そのものにある程度力を入れ、それが販売方針の中に織り込まれている可能性もあるかもしれません。こうした場合に販売手数料という形態もありますけれども、先ほど申し上げたように本部がいろいろな形で指導料とかいうものを徴収している場合もあるかもしれません。保険販売をしたことによってどれだけ保険会社から手数料を取っているかについては、単純に比較をして掌握できないような形で手数料を徴収している可能性もあるかもしれません。

また、例えば一時給付金の額が多いとかというような商品特性で売りやすい商品を中心に売っているところもあるかもしれません。以上のように、保険ショップごとに異なる販売方針を有しているのではないかと推測しております。

こうした来店型店舗がみずからは中立的な立場であると明示している場合に、当該代理店によるアドバイスを受けた消費者の判断がゆがめられるリスクがあるかもしれないということに対する手当てがあってもよいかもしれないと思っております。チャネルの規制のあり方などを考察する際に販売チャネルごとの特性が異なることに留意する必要はあると思います。

また、昨今、ネット比較サイトも定着してきていると思っておりますが、これが果たして保険募集にどのような関連を持っているのかという観点から、様々な形態が存在するのではないかと推測しております。ネット比較サイトは消費者の保険を比較したいニーズに対応して顧客利便にかなっているという考え方もあると思います。しかしこうしたサイトが保険募集にどのように関係しているかについても精査して、消費者の視点から制度的に手当てすべきようなことがあるのであるかどうかというのは、検討する余地があるのではないかと考えております。

では12ページをごらんください。ここまでいろいろ申し上げてきましたが総括といたしまして、さらなる制度整備の検討の余地のある分野例、あくまで例ということですけれども、思いついたことを列挙させていただいております。消費者利便の向上とか保険会社が抱えるリスクを十分に認識した上での保険商品の認可、保険グループの業務範囲のあり方を整理するという意味で、介護施設とかサービスの給付つきの商品の認可とか監督のあり方とか、それから保険会社の子会社にかかわる業務範囲、認可、それから監督のあり方などについて枠組みを考え、考察するのに意義があるのではないかと思いますし、2点目には新興チャネルの特性に注目した保険募集にかかわる規制、特にチャネル特性により異なる留意事項に焦点を当てた、規制というのもあってもいいのではないかと思います。本ワーキングにおいては従来の保険募集規制に係る議論で想定されてこなかった新興チャネルを中心的に議論したらどうかと考えております。

最後で、これはもう絶対にということでなくということですけれども、損保協会が外部専門家を入れて議論する方向性にあるとされております募集文書などの共通化、標準化にかかわる検討の結果も踏まえて、消費者利便の向上と業務向上の両側面から費用対効果に関して、募集文書の再整理なども対象とする余地がもしかしてあるかもしれません。これはどのような結論が出てくるかもわかりませんので、ただちょっとそうした考え方もあるかなと思う程度でございます。

以上で、私からの発表は終わらせていただきます。ご静聴ありがとうございました。

○洲崎座長

どうもありがとうございました。それではただいまの加藤委員と水口委員からのご説明等に関しましてご質問、ご意見等ございましたら、どうぞよろしくお願いいたします。

○吉野会長

どなたもご質問がないので、私からそれぞれに質問させていただきたいんですけれども。経済で考える場合には消費と貯蓄に分けてその貯蓄の中身で保険を買ったり預金をしたりする。そういうことになると思うんですけれども、加藤委員のほうにはこういう保険のいろいろな商品が出てきたときに、利用者の人というのはやっぱりほかの商品からこういう保険を買うという、その全体の金融資産の中での配分という形になるのかどうか。で、そうだとすると、預貯金からこういう保険に来るのか、投信からこういうのに行くのか。もしそれがわかったら教えていただきたいということと、それから水口委員のほうには保険ショップの場合に投資信託でひとつ問題がありそうだったのは、手数料とか指導料がたくさんというか、手数料が非常に大きいところの商品を保険ショップの方が利用者の方に紹介する傾向があるとすると、ほんとうに必要な商品ではなくてその手数料のほうで販売されてしまうというようなことがあると困ると思うんですけれども。それぞれお聞きできればと思います。

○加藤委員

いいですか、じゃあ。

○水口委員

どうぞ。

○加藤委員

ありがとうございます。基本的には預貯金のほうから保険的な商品に移るというのが望ましい姿かなと思っています。と申しますのは、例えば投信や株式と比べますと、保険という商品は最低限の保証という部分がついています。そういう意味で、預金と、市場リスクにさらされている投信や株式といったものとの中間に位置する商品特性を保険は持つと考えております。つまり保険というのは他のリスク性資産からシェアを奪うというよりも、預金・貯蓄から一定の資産シフトが見込める商品ではないかなと思っています。

ただ、今のマーケットの実態、現状を見たときに果たしてそう言い切れるのかということですと、解釈が悩ましいデータがあるのも事実です。けれども、消費者のニーズという立場から考えると、預金・貯蓄といったものからの第1段階目のシフト先として、保険商品というのはいろいろな工夫の余地のある大切な商品カテゴリーではないかなと考えております。

○水口委員

加藤委員のご意見もありましたけれども、やはり保険商品というのは純粋な投資性商品ということではなく、保障部分もあります。保険商品が、投資商品の品ぞろえの中に入るということもあると思いますけれども、やはりその保障性の特性があるということもお客様にとってのニーズを満たしている可能性があると思います。特定チャネルにおいて、保険商品が、単なる投資性ということだけではなくて、そうした保障という特性もあるんだということはしっかりご認識いただいた上で消費者に選んでいただくということも必要なのかとは思っております。

今後、保険商品が、様々なチャネルで、しっかり消費者にほんとうの意味で受け入れられていくためには、投資性商品の特性を持ちながらも保障部分もあるのだということは、消費者によく認識していただくことがいいのではないかと思っております。

2番目のご質問の件ですが、断定的に名指しでここはこうしているという話はちょっと申し上げられませんが、一般論としては、代理店でも専属代理店ではなく、乗り合い代理店では、手数料の受け取り方は様々であることも考えられます。来店型店舗が、より実入りの多い商品の販売を選好することも想定されるところであります。一方で、乗合代理店でも、例えば価格という切り口を中心にお客さんにお勧めしますという方針の下、ほんとうにまじめに商品比較をすることを基軸として保険募集を行う代理店もあるかもしれません。保険ショップなどについては、やはり実入りが多い商品の販売を行うインセンティブが働かないという保証はないのは確かですが、現時点では、それを何らかの形でしっかり検証できるような体制は特段ないのではないかと思います。

以上です。

○洲崎座長

乗合代理店の中には手数料オリエンテッドな募集をしているところがあるのではないかという疑いは相当程度の人が持っておられると思うのですが、ただそれを公的にというか包括的網羅的に調査した結果というものは多分ないと思うのですね。

○水口委員

そうなんですね。ですから……。

○洲崎座長

ただ、法的にはその顧客のための最善の商品をアドバイスする義務というものを、乗合代理店は今の規制では負っておりませんので、そうしますと手数料の高い商品を選んで売るということは、論理的には非常にあり得る話ではあると思います。

○水口委員

そうですね。

○洲崎座長

ただ、そのことがどこかで証明されたというわけでは残念ながらないということで、そういう状況かと思います。

○水口委員

ですから、そうしたことを証明するような枠組みがあるわけでもないということですよね。

○洲崎座長

そうですね。

○水口委員

それがほんとうにしっかりデータの裏づけをもって検証されているという状況でもないということだと思います。

○洲崎座長

神戸委員。

○神戸委員

委員の神戸でございます。弊社の子会社が保険の乗り合い代理店をやっておりますので、現状については我々のほうが把握できている部分もあろうかと思い、ご参考までにお話をさせていただきます。まず金融商品、保険だけでなく投信なども含まれるんですが、その最大の特徴というのは実物商品と比べて購買時点でよしあしの判断がつきにくいということだと思っています。形がない商品であるということと、もちろんその商品がよかれと思って買うのでしょうが、実際によかったなと実感できるのは、例えば死亡保障であれば被保険者が亡くなったときであり、自動車保険であれば事故ったときでしょう。後になって入っていてよかったなと思うわけです。投資型商品でも相場予測などに基づいて買うことが多いのですが、よしあしが判明するのは一定時間経過後ということになりますので、金融商品を独力で選びにくい最大の理由は、買う時点でよしあしがわからないということだと思います。要は選びにくい商品の代表的な存在が金融商品ということになるんですが、それでは多くの生活者が何をモノサシにして買っているのかというと、これまでは多分ブランドで買ってこられた方が多いのでしょう。よしあしがよくわからないので、○○保険会社ならよいとか、△△銀行なら安心できそうだと。ある意味、エルメス、グッチを選ぶのに近い感覚なのかなと思います。カバンの本当のよしあしはよくわからないが、エルメスのならまあ安心できると。これにかなり心理的には近い購入方法が主流だったのではないかと思います。

もう一つの買い方として自分ではよしあしがわからないので、評価つき情報、つまりだれかの評価を当てにして買うという方法があり、こちらの方法で買いたいという方が以前よりも増えてきているように思います。ブランドだけでは安心できないという心理のもと、プロのアドバイス、目利きの専門家のアドバイスをもとにして買いたいという方が増えて来ている結果、保険ショップとか乗り合い代理店で複数の商品を比較しながら買いたいという方が増えつつあるのだろうと思います。

ただ、先ほどメンテナンスという話があったんですが、保険商品はメンテナンスがたぶん金融商品の中では一番要らない商品といえるでしょう。保険を毎年見直しましょう、というのはある意味で非常に変な話です。最初からもっとちゃんと選んでおいてくれということになってしまいます。新しい商品が出たということならともかくとして、毎年毎年見直しなんて普通は必要ありません。販売する側にとってはフォローの手間があまりかからず、最初にかなり大きな手数料をもらえます。つまり大変収益率が高い上に手離れがよいというのが売る側にとっての最大のチャーミングポイントといえるでしょう。ですから生保の乗り合い代理店などがお客さんをキチンと管理、メンテナンスしているかというと、あまりしていないというのが現状だと思います。ショップの多くも行っていないでしょう。むしろ一社専属で売られている外務員さんのほうがコンサルティングやメンテナンス・サービスを提供して継続的にフォローするので若干保険料は高くなるというのが、本来は正しい位置関係だろうと思います。

そういう状況の中でチャネルについての規制も見直していくことが重要だというお話も出ているのですが、乗り合い代理店の中で先ほど水口委員のお話の中にもありましたが、交渉力を持ちつつあるところが非常に増えてきているということがあります。代表的なのは銀行、金融機関ではないかと思いますが、メーカーに当たる生保会社さんや損保会社さんにしてみると、銀行チャネルというのは非常にコントロールしにくいチャネルではないかと思います。むしろ販売側の意向を非常に気にしながら商品開発を行ったり、手数料率の設定を行っておられる場合もあるのではないでしょうか。結果として、基本的にはメーカー側から販売側への収益の移転が進むという流れがあると思います。銀行や金融機関以外でも、中立・公平を標榜しているフランチャイズ方式の著名な保険ショップなどで似たような現象が進んでいるようです。利益が消費者まで還元されれば非常によいことだと思うんですけれども、保険業法の問題で手数料の割引はできませんから、今までメーカーの利益だったものがそれを販売する側の利益に移っているだけという状況だと思います。さらにこういう保険ショップ等では、各メーカーである保険会社さんと個別に交渉して、特定の保険の販売強化月間みたいなものを設定した上で、そのときの販売分は高目の手数料を受け取れるみたいなお約束ですね。そういうものも現実に存在するようです。販売側は、今月はそういった交渉がうまく行った保険会社複数社の商品を中心に顧客に提示する、それから何カ月かたつと今度は違う会社の商品を売っているといった具合なんですが、そういう弊害が生まれてきているのは間違いないようです。

金融庁さんは残念ながら直接乗合い代理店を監督される立場にはなく、保険会社側さんがこれを監督するという位置づけだとは思うのですが、監督する側とされる側の力関係が逆転しつつありますので、しっかり監督できるかというとなかなか難しい場合もあるでしょう。ですから一度何らかの形で金融庁さんが直接そういう新興チャネルの実態をきちんと把握される。その上でどうしたらいいのかを検討されるという機会が必要だと思います。

少し長くなりましたが、実際に保険商品を売っている者の持つ情報を話させていただきました。

○洲崎座長

米山委員。

○米山委員

今のご発言に関する確認ですけれども。今の発言を要約すると、手数料の高いものを売るというインセンティブよりも、むしろ保険会社に対する交渉力を強めることというインセンティブのほうが強いので、手数料が高いものを売るということは行われていないものと考えてもよろしいんでしょうか。確認です。

○神戸委員

これは代理店、例えば私どもはファイナンシャルプランナーとして保険を扱っているんですが、ファイナンシャルプランナーの特徴は購買代理店、先ほど加藤委員の資料にもありましたが、買う側つまり生活者側の代理店という立場だということです。ですから一般的な販売代理店さんというのは英語でいうとエージェンシー、エージェントというのが当てはまると思うんですが、我々はディストリビューターだと自分たちは考えています。売る側の代理人ではなく買う側の代理人ということですね。売る側の代理人として機能していますと、コミッションというのがものすごく大きなインセンティブになると思います。商品選択時に自分にとって収益性が高いものを選ぶということはあり得るでしょう。たとえば、不思議な話なのですが、それぞれの分野でよい保険、特定のニーズを持つお客様に合う保険はこの3つか4つだろう、その中であればどれもいいかなと考えられる商品がそろったとします。そのときに若干保険料は高くなるけれども、コミッションはほかの商品の倍もらえるみたいな商品が実際存在するんですね。その顧客にとって、機能あるいは有効性がほとんど変わらない保険であっても、その保険会社が売りたい保険であればどうしても手数料率は高めに設定されがちですので、それらの保険を比較したときにこの商品なら倍もらえるみたいな状況というのが実際に起こります。一般的な乗合い代理店でも、そのような場合手数料が高い商品を選択するということはあり得ると思います。全く箸にも棒にもかからない商品を手数料が高いからといって売っているということはあまりないと思いますが、それが多くの販売代理店の実態だと思います。

一方、我々が購買代理という立場のファイナンシャルプランナーとして、私はFPですと言ってもし保険を売るとすれば、それはほんのちょっとでも保険料が安いほう、コミッションは大きく下がるという場合でも、お客さんにとって少しでも安いほうを売るでしょう。それがFPだと私は思っています。ですからファイナンシャルプランナーという肩書きを使って商品を売るというのと保険屋さんですよと言って売るのは、私は違うと思っていますので、一概に何がインセンティブなのかというのは難しいでしょう。私は乗合い代理店が手数料云々かんぬんというのだけで販売する商品を選択しているとは思いませんが。立場によって違いはあるような気がします。

○洲崎座長

確かに一概にこうだということはいうことはできないと思います。乗合代理店の中にはいろいろなところがあり得るだろうということしか多分言えないだろうと思いますね。

では、米山委員。

○米山委員

すみません、簡単にします。今のことで追加的な質問なのですけれども、その販売代理店という代理店の販売行為の中で、販売行動の根拠となるような販売店の規律みたいなことをお話しになったと思いますけれども、それの背景となる法的な根拠、あるいはそれに類する何か根拠があるんでしょうか。

○神戸委員

私どもの場合はコンサルティングを行う親会社と金融商品を販売する子会社を別につくっております。親会社であるFP会社ではコンサルティング契約、形式としては投資顧問契約ということになりますが、お客様と契約を結んだうえでアドバイスに対するフィーをちょうだいしています。フィーをちょうだいするわけですので、そのお客様のために完全に、買う側の代理人として機能するという中で、お客様との利害相反が起こり得ることに関しては契約書上で我々はアドバイスを行わないという旨を記載しております。契約書の中には子会社が取り扱う保険会社の名称も具体的に挙げておりますし、実際に弊社の場合、子会社で商品販売を行った場合には子会社がちょうだいしている手数料も全部開示しております。子会社では証券仲介業も行っており、取り扱う証券会社をどこにするかで手数料も違ってきますので、これもすべて開示した上で対応しております。顧客との利害相反が起こらないようにというのは一番気にしているところですが、基本的にはコンサルティングを行う親会社は金融商品取引法に、金融商品の販売を行う子会社は金融商品取引法と保険業法に基づいて対応しているということになります。

○洲崎座長

すみません。ちょっと確認ですが、それは保険業法上の保険仲立人ではないということですか。仲立人の登録も受けておられるのですか?

○神戸委員

仲立人はやっておりません。子会社のほうで保険の乗り合い代理店をやっているという形です。

○洲崎座長

親会社が投資顧問業をやっているということですか。

○神戸委員

そうです。

○洲崎座長

顧客とは投資顧問契約を締結していると。その限りでは顧客との間で委任契約上の善管注意義務を負うという法律関係にはあるということですね。

○神戸委員

はい、そういうことです。

○洲崎座長

どうもありがとうございます。

錦野委員。

○錦野委員

加藤委員のご報告の中にも独立した助言を求める消費者ニーズの高まりというのがあります。水口委員の中にも公平、中立な保険募集を標榜する代理店が一部存在とありまして、今までの議論もそういう話だと思うんですけれども。政策論としてはこういうアドバイスをだれに求めるかというのは、それは保険仲立人がそういう役割を担うべきですとか、あるいは保険業法の規制の枠外の出版ですとかアフィリエイトですとかいろいろあると思うんですけれども、今の議論の問題というのは単なる売り手ではなくて、顧客のためにコンサル販売をしますと。私は保険会社の代理店ではなくて顧客さん、あなたの代理店なんですよと。そういうことを言っておきながら一方では手数料の、当然手数料をもらう立場ですから、その多い少ないによって影響され得る立場にあると。そこの利益相反的な問題についてどう対処していくかという問題ではないかなと思います。現状、保険業法の中では、今までの議論の中で出てきたとおり保険仲立人以外にはそういう規制というのはないんですけれども、それを一歩踏み込んで進めていくべきかどうかという問題に集約される問題ではないかなと思います。

それからもう一つは、議論の中の保険会社が代理店から影響を受けてその財務の健全性が害される局面があるのではないかというところなんですけれども、現状の監督指針の中にも損害保険のところには特定の代理店に対する過度の便宜供与を防止するような体制整備が求められていたりする。ちょこっと書いてあるんですけれども。私もその監督指針のレベル感と同じような考えを持っていまして、そこはやっぱりビジネス間の世界ですから、あまり行政として関与していくべきでは、手とり足とり関与していくべきではないのではないかと。自由競争に任せるべきではないかと。ただそれが過度になって、財務の健全性を害するような、そういう大規模なものになればそれは何らかの行政の出番ではないかと、そういうふうに思っております。

以上でございます。

○洲崎座長

どうもありがとうございます。今の点について、ということでございますか。

○加藤委員

そうですね。

○洲崎座長

それでは簡潔にお願いいたします。

○加藤委員

すみません、簡潔に。

今、錦野委員からあったように、メーカーである保険会社とチャネルとの関係での強弱。あと先ほどらいからの議論であります代理店と保険会社の関係での強弱というポイントがあったと思います。あまり行き過ぎた議論にならないほうがいいかなということだけ申し上げたいと思っています。というのは、例えばメーカーである保険会社と代理店という関係でも、実態的には銀行窓販商品の売り止めという形で商品供給をしないということも起こってきていますので、一概に保険会社がすごく弱い立場にいるということだけでもないと思います。もっと踏み込んで申しますと、保険会社自身が代理店を子会社として設立される動きもある中で、そこは資本を当然握っているわけですから、保険会社が強い立場にある代理店も存在します。、世の常として代理店、よりお客様に近いほうが力を持つというのはビジネスの常識として当たり前だと思いますが、そういう当たり前のことを踏まえずに、保険会社が弱者になり過ぎているというような議論の立て方。もしくは購買代理、募集代理ということも金銭の取り方の違いという視点では分かりますが、ただ代理店を営んでいる方、例えば銀行にしても大手の代理店にしても、お客様にきちんと信頼を得て代理店としてのブランド、銀行としてのブランドを立てていくということも大事にしていらっしゃるので、悪者、弱者強者という議論にあまり流れ過ぎないほうがいいと思います。簡潔にということですので、ここで止めます。ただ少し、議論のトーンが偏っているので、いろいろな見方でのご意見があってしかるべきと思いました。以上です。

○洲崎座長

はい、では、お一言。

○水口委員

すみません、私のプレゼンテーションが何かもしかしてトリガーを引いてしまったとしたら申しわけなかったですが。

私はその代理店が強大な力を発揮して、保険会社に合理的でないことを一方的に押しつけていると考えているわけではないのでありません。いろいろ経験を経て、保険会社と代理店がお互いに理解を徐々に深め、安定的にビジネスを展開していける落としどころはどこなのかということを、だんだんと分かってきたところもあるかとは思います。一方で、急速な事業展開を目指して、販社に選らばれることを意図してリスクを取りすぎる保険会社がいたとしたら問題も起こるかもしれないとは思っております。

○洲崎座長

ありがとうございます。それでは時間もございますので先に進ませていただきたいと思います。

では、続きまして丹野委員、ご説明をお願いいたします。

○丹野委員

丹野でございます。レジュメは資料の3というワードで打ったものでして、ごく簡単にご説明をさせていただきたいと思います。

「消費者から見た保険の課題」とさせていただいたのは、さっき消費者もいろいろな消費者がいるんだという話がありましたけれども、私がお話をする消費者というのは従来の、どちらかというと保険加入に対して非常に受け身的に加入をされる方の実態をよく存じ上げていますので、そういう方から見たという意味の消費者ですが、保険の課題についてお話をさせていただきたいと思います。

前提と書きましたが、めくっていただくと、2枚目の裏からPIO-NETに見る保険の相談件数の推移というのを参照として国民生活センターから情報を提供いただきましたので、それを載せています。ごらんいただければわかりますように、国民生活センターの統計でも保険のトラブル件数が当然のことながら2005、6、7がピークではありますが、その以降も減っておらず、一定件数、1万6,000件、7,000件ぐらいから2万件の間を推移しているという状態でございます。

これはどうして起きるのかというお話だと思うんですが、皆さんよくご存じのとおり、日本人は保険好きでございまして、生命保険、医療保険、自動車保険、火災保険に、入りになっているにもかかわらず、その保険についてよくご存じない。想定される原因は何かといえば、やっぱり端的に申し上げれば商品が複雑だ。それから募集時の説明責任が必ずしも果たされてない。それから消費者ニーズとの適合性。ちゃんと一致しているんだろうかという問題点。それから先ほど来のいろいろな議論の中でありましたけれども、事故に遭ったとき初めて商品の中身がわかるということになるんですけれども、その支払い要件が当初想定したものと実際が違うというずれの問題等が挙げられると思っております。すみません、レジュメの1ページ目に戻っておりますが、具体的に事例はどんなのがあるかというのはその後ろにくっついていますので、後でごらんいただければと思います。

それでレジュメの1ページ目に戻りますが、実は国民生活センターは3年前になりますけれども、平成21年7月22日に「個人年金保険の銀行窓口販売に関するトラブル」という要請ならびに公表をいたしました。それから今年ですが24年4月19日には「銀行窓口で勧誘された一時払い終身保険に関するトラブル」といういわばイエローカードを世の中に出しています。両方ともご着目いただきたいのは銀行ということなので、後で銀行のことについて、お話ししたいと思います。

こういう前提の上に今日申し上げたいことは5つでございまして、いろいろある中で5点に絞らせていただきたいと思います。

1つ目は保険商品の簡素化ということでございます。実は前回もちらっと申し上げましたけれども、3年前の金融審の保険ワーキングの中間論点整理の総括はされたのかというのがございまして、その中間論点整理の中に3つ挙げてございますが、1つ目のところにありますように内容や構造が複雑で理解が容易でない商品が増えたとか、複雑な保険商品そのものをもっとわかりやすいものにするためにどうするべきかというテーマが上げられ、それに対してその募集時の規制だけじゃなく、保険商品に対する規制のあり方、云々と、規制検討を進めていく必要と言われたと思っております。

それに対してじゃあ現実がどういうふうになっているのかということです。保険商品の複雑さは、いわば万人が認めるところでございまして、どういうふうに複雑かと一例を申し上げれば、生命保険は保険自体はいろいろな保険があるんだけれども、主契約にいろいろなものがくっついていて、サンドイッチの状態になって、それが非常に分厚くて消費者の口よりサンドイッチのほうが大きいという状態なんではないかというのが1つございます。損害保険でいうと自動車保険は2種類の賠責保険と車両保険と、2種類の傷害保険の混在ということで、性質の異なる保険がワンユニットになっているというのがありまして、それがやっぱり非常にわかりにくく、特に支払い要件のことに関してわかりにくいということになります。

ですから先ほど来、少子高齢化とか単身家族が増えるとか長生きのリスクから医療・介護のほうへニーズが変化したとおっしゃっていますけれども、そんなものは20年も前から変わりませんで、その当時からずっとそう言われていたということになります。当然保険業界はそれに対して対応をさまざましてきたわけでございまして、そういう意味で今回の諮問事項の中で、多様なニーズにこたえるための保険商品やサービスの提供云々ということを諮問されましたけれども、決して保険商品が複雑化するほうに、諮問事項の流れの中でそういう方向に行ってはいけないと考えております。消費者が保険に期待しているのはシンプルな保険、基本的な保障、シンプル・イズ・ベストでございまして、自分が理解できる範囲の保険を待望する消費者の声は非常に大きいと、消費者の肉声をたくさん聞いている立場から思います。

それから2番目ですが、募集文書の簡素化ということです。顧客向けの募集文書って実はたくさんございまして、ぜひ次回あたりに各業界から一番複雑そうな商品の募集文書を全部出していただいてごらんいただくと、こんなにあるのかといってみなさま驚かれると思いますけれども。募集向け文書の目的というのは消費者に正しい理解をしてもらって、正しい判断をしてもらって、ニーズに合った契約締結をしてもらうことだと、ここにもう尽きるんだと思いますけれども、現状の顧客向けの募集資料は明らかに顧客の理解を超えたボリュームと内容になっております。ごらんいただければ百聞は一見にしかずでございまして、よくわかると思います。

現実にはどういうもので構成されているかというと、約款があります。約款の中に契約のしおりというのがあります。それから損保業界だとパンフレット、生保業界だと設計書といって個人向けの見積書です。それからその他の販売促進用の資料がある。それから契約締結の段階になると申込書と保険証券があるということになります。ここに何年前になりますか、契約概要、注意喚起情報、意向確認書というものが加わった。非常にわかりにくいからもっとわかりやすいために、その保険の骨だけの部分を示すのが契約概要で、顧客にとって必要な情報を入れるのが注意喚起情報で、この保険がそのお客様の意向に合っているかどうか確認するための意向確認書面というのが加わったんです。加わったんだけれども、それを実際には契約のしおりの中に入れます、設計書の中に入れますという形で埋め込みはされたんですが、実態としては保険会社はお客様にわかっていただくための丁寧な説明というのを理由に、非常に分量が増えた状態でございます。各文書の役割が重複かつ複雑でございまして、結果として募集文書の洪水ということになる。洪水が起きれば形骸化が起きるのは自明の理でございます。

消費者は自分の保険をどの文書のどの部分で理解すればいいのかわからないという、いわば迷子の状態になっています。消費者が知るべきことというのはそんなにたくさんあるわけではございません。全体の仕組み、保険金額、保険料、払込方法、保険期間、保険金の支払事由等がわかればいいのではないかということなので、消費者の正しい理解のための緊急に募集文書の見直し簡素化をぜひやってほしい。かなりオーバーウエートになっているから、ぜひダイエットをしていただきたいと思いますので、そこをぜひお願いをしたい。先ほど申し上げましたようにできましたら、現実に皆さんにごらんいただくと一番わかるのではないかと思います。

ちなみに、業界としては募集文書が真実、消費者にわかりやすくなったかの検証をぜひしていただきたいと思いますので、その結果をぜひこの本ワーキングにご報告いただければありがたいと思っております。これが2つ目でございます。

3つ目です。3つ目が先ほど皆さんがおっしゃっていた代理店の話でございまして、先ほど国センのプレスのことを申し上げました。消費者相談をやっている立場からいうと銀行のトラブルが非常に多いということになります。銀行等金融機関、巨大乗合代理店という俗な言い方をこれしましたけれども、そこの販売責任等の明確化をしたらどうかというお話です。消費者トラブルからも販売チャネルの中で、銀行窓販や保険ショップへの流れは認識できます。特に銀行窓販でのトラブルが多数あって一向に減っていない。何でだろうと思っておりますが、消費生活相談の現場から見て、もう既に保険会社が銀行等金融機関をコントロールできていないのではないかと思っております。

幾つかそこに挙げましたけれども、銀行はまず保険を保障の商品として売っているのではなくて、高リターン商品、預金を上回る高リターン商品として販売をしている現実がございます。それから製販分離の中で、販売側、つまり銀行側ですが、販売側が実は商品の内容を変えるほどの力を有している。○○銀行の保険といってラインナップが10も20も並びます。少しずつそれで、保険が違います。ほとんどの消費者トラブルの原因は保険商品の中に内在してあるのではなくて、募集時の顧客ニーズの把握の不適切さとか、もっと言えば説明が不適切だというところにあるんです。ちっとも変わらないでずっと一定あるんですが、現行制度の中では保険会社が募集人教育の責任を負い、銀行の募集人への指導教育を実施することになっています。業法の建前からそうなります。多数商品の中から、20も30もある中からどの商品をお客様にお勧めするかというのを現実には決め打ちで売っていたりするんですけれども、多数商品の中からの選択を含め、現実に保険会社のコントロールは困難ではないか。販売趨勢を見れば、銀行等金融機関への消費者の信頼が非常に高いものですから、今後は銀行等で、今だんだん投信が売りにくくなっていますので、ますます保険販売のほうに力点を置くことが予想されます。そうすると銀行での消費者被害がこれから増える可能性がありますので、それを放置していいわけがなく、当然安心して契約ができなくてはいけないということなので、トラブルをなくすために一定規模以上の乗合代理店に対して対応が必要じゃないかということで、3つご検討していただきたいことを挙げました。

1つ目は、体制を確保させるということがございます。商品を管理する。たくさんあるわけですから、その商品を管理する能力だとか、商品の比較選別能力だとか、多数の商品の説明能力の確保を制度として仕組んだらどうでしょうか。先ほどどなたかおっしゃいましたけれども、銀行は保険会社のコントロール下にあるんですけれども、当局のコントロール下にあるわけではありませんので、そういう意味ではそういう制度を仕組む必要性があるのではないかということが1つ目です。

それから2つ目は販売責任を負わせるということです。端的に申し上げると非常に銀行で買った保険についてトラブルがあって、いろいろな形で、例えば消費者センターとかADRで解決をするんですけれども、解決をしたときに販売上の問題があるにもかかわらずどこが金銭負担をしているかというと、現実に銀行ではなく保険会社がしているように私どもからは見えます。ある意味自分で身銭を切らないと、痛い思いをしないと、その部分が変わらないのであれば適切・慎重な販売のために金銭負担をさせるということはできないでしょうか。保険業法283条との関係をぜひご検討いただきたいというのが2つ目でございます。

3つ目が商品選択の公正性、先ほど仲立人じゃないからいわゆるベストアドバイス義務がありません云々というお話がありましたが、ただ現実にお売りになっている方はお客様にこれはたくさんの中から選んで、お客様にスータブルな保険を売っているんですよという姿勢でお売りになっていることは間違いがないので、顧客に販売する商品選択の公正性だとか、顧客に適合した保険販売の担保が必要であって、そういう意味では今先ほど議論になっていましたけれども、手数料の開示も1つの方策だと。少なくとも1つめ2つめはぜひお願いをしたいと思っております。

4番目は、現物給付型保険への懸念と書きました。多様化の命題のもとで前回業界側からご提案された件ではございますが、法制審の保険法部会、金融審の保険ワーキングでの懸念は払拭されたのかと思っています。先ほどは水口委員のほうからいろいろおっしゃっていただいたので、詳しいことは申し上げませんが、少なくとも例えば老人ホームの話で言えば老人福祉法はもう改正され、入居権ではなくなりました。あれは権利ではなくて前払いの賃料ということになったので、そういう意味の制度の変更とか消費者ニーズの変化とかサービス価値の下落とか事業者の倒産リスクとか将来給付への金利リスクとか、給付の質を維持するために監督のあり方とか、そういう懸念があったからだめなんじゃないですかと言われていたことが、ではそれが変わったのかということをぜひお願いをしたいと思います。

それから5番目でございます。5番目は消費者教育の必要性というのをぜひお願いをしたいと思っています。一般の消費者は保険に加入にしているにもかかわらず保険がどんなものか、自分で入った保険の内容とか全く知らないといってもいいと思います。だから消費者にいかに保険を知ってもらうのかは、行政も努力し業界も努力し、それから知らなくていいはずはないので、消費者を巻き込んで真摯に取り組むべき課題で、あらゆる機会をとらえてこういうものをやっていただきたいと思います。消費者教育推進法も一応参議院を通りました。衆議院はまだどうなるかわかりませんけれども、一応通った段階でそうしたい。3・11で消費者の保険・保険制度に対する信頼感は非常に高まったので、それにぜひ応えるような検討をしていただきたいということを申し上げたいと思います。

以上でございます。

○洲崎座長

どうもありがとうございました。それでは続きまして木下参考人からご説明を伺いたいと存じますが、私のほうから簡単に木下参考人のご紹介をさせていただきたいと存じます。

木下参考人は同志社大学大学院司法研究科教授としてこれまで保険法の研究に精力的に取り組まれておられまして、前回の保険会社のグループ経営に関する規制のあり方ワーキング・グループのメンバーとしてもご活躍いただいたということは、皆様もよくご存じのことと存じます。木下教授は今年9月から約1年間の予定で在外研究に出られるとのことでございまして、本ワーキングでお話を伺うとすると今回しかチャンスがなさそうであるということで、お忙しい中ではございますが参考人としてお越しいただいたわけでございます。それでは木下参考人、どうぞよろしくお願いいたします。

○木下参考人

ただいまご紹介いただきました同志社大学の木下でございます。本日は参考人としまして発言の機会をお与えいただきまして、座長、事務局の皆様に厚く御礼を申し上げます。また保険募集には、尽きない問題がたくさんあって今般かなり幅広のテーマを取り上げていただけるのではないかと期待しておりますけれども、ご尽力に敬意を表しますとともに、大いなる成果が上げられることを期待したいと思います。

事務局から10分から15分でというご依頼をいただきながら、大部の資料を持ってきたのは大変申しわけないことでございますけれども、おそらく質疑の時間をとったほうがよろしいかと思いますので、手抜きをするわけではございませんが原則は書面による陳述にかえさえていただくということにいたしまして、どうしても口頭で補足説明が必要かなと思われるところについて、適宜ご説明をするという方向でのプレゼンをさせていただくことをどうかお許しいただきたいと思います。またそれでなぞかけに終始して、答えてないではないかというようなおしかりを受けることもあろうかと思いますけれども、その点についてもお許しいただきたいと思います。

1枚おめくりいただきまして2ページ目でございますが、これは前回の事務局のほうでもお話があったかと思います。従来の議論はどうだったかということでございまして、平成7年保険業法改正のときに募集のところについてかなり法制的な手当てがされましたけれども、それから20年たちまして特に販売勧誘検討チーム以後はこの問題について検討される機会はわりとあったということであります。じゃあ、いよいよこれで方向性について、根っこからの見直しをしていただけるのかということの期待が高まっておりますのは、先ほどの丹野委員のご発言もありましたけれども、保険の基本問題ワーキング2009年の中間論点整理で募集時の規制、商品に対する規制、募集主体の問題、支払い管理の規律にわたり、規制のあり方全体を総合的全体に考える必要があると。こういう整理になっておったところ、この問題を取り上げていただけるというのでありますから、そういう全般的なご検討をいただけるものかと期待しております。

そういう宿題がそこで出ておりましたので、私の報告の視点としまして次の3ページでございますけれども、大きく4つの視点を挙げさせていただいております。まずは販売勧誘の各段階の特質に応じて均整、バランスのとれた規制をしたい。どこかある局面だけ非常に細かい規制があって、その直前のところはあまり規制がないとか、どういう規制がかかっているかわからないというのはあまり好ましい状態ではなくて、特に先ほどの話にもありましたように募集人の前の段階でコンサルティングが入って、そこでかなり方向性が決まってしまうというような売られ方がかなり普及しているのだとすると、今まで募集として整理されていた前の時点について、そこにどういう規律があるべきかということまで広げた発想で、つまり現在の法制の体系でいうと、保険募集という概念自体を見直すのか、あるいは募集以前というところにもう一つ規制の軸を設けるのか、私はむしろ募集以前のところに少し緩やかな規制があって、さらにその中に実質募集が含まれているかどうかということについての判断ができるような規律をぜひご検討いただきたいと思っております。

それから2つ目は商品、まさに今指摘した問題でありますけれども、商品比較情報の生成や発信のコストが低下していることから、規制にすき間が現在できているので、これはぜひ埋めていただきたいということであります。結局のところは、募集の以前、比較法的に申しますと、紹介行為、イントロデューサーという比較法的には著名な規制がございますので、この規制のあり方をぜひ考えていただきたいということでございます。

それから3つ目は先ほどから話題になっておりますが、各種のチャネルの行為の特質に応じて、ここでもバランスのとれた規制が必要かと思われます。専属の募集人、乗合いの募集人、保険ブローカー、さらにそれに該当しない人たち、いろいろなプレーヤーがそこに存在するということは、どんな規制を持ってきても変えられないと思いますが、現状では保険ブローカーにはかなり重い厳しい規制がかかっているのに対して、それにかなり近いことができる乗合い代理店にはかなり緩い規制しかない。その差異は埋めていただく必要がある。それを単純に、乗合いはブローカーに近いから、ブローカーに準じた規制をしましょうということになると、今回のワーキングの諮問事項であります、商品比較情報をどんどん発信して、それを使えるようにしていきましょうという、政策目標にブレーキがかかってしまうのではないかという懸念があります。そうすると、実は平成7年の保険業法のときにブローカーに対する規制は、かなり慎重な規律を入れておられるのではないかという印象がありまして、そことの関係でブローカーに対する規制を少し緩やかにできるものはないかという発想もぜひ置いていただければと思います。

象徴的なことで少し申し上げますと、保険ブローカーはブローカーとして事業をする限りにおいては募集人として事業は絶対できない。登録上そこは二重登録はできないという規制がかかっておりますが、例えば、銀行では預金と保険とかいろいろなものについて誤認防止措置があれば同じ店舗の中で事業ができる。保険ブローカーだけが窓口を変えても、あるいは支店を変えても兼業ができないというのは、ほかの分野における兼業規制あるいは誤認防止規制とのバランスからいっても少し緩めることは可能ではないか。そこを緩めることによって本業は代理店だけれども、ある部分ではブローカーにしますというような事業は認める余地があるのではないか。そして、そういうことをするとブローカーの部分だけの賠償資力規制を考えればいいということになって、そこは参入障壁としてはすごく差があるのではないかということを考えておりますので、こういう提案にニーズがあるかどうかはこのワーキングで確認していただければと思いますけれども、ぜひご検討いただきたいと思っております。

それから最後は、先ほど丹野委員からもご発言がありましたけれども、保険会社の代位責任です。保険業法の283条の規律の合理化をお考えいただきたい。これは後の資料で例をもって説明しておりますので、ここでは項目出しだけをいたしたいと思います。

4ページは今日の意見の要旨でありまして、基本的には省略をさせていただきます。

5ページは、保険が販売されるときに、どういう資料を使ってコミュニケーションされているかということについての私なりのイメージ図でありまして、これは必ずしも正確でないかもしれませんが、こういうイメージのもとに今日の話を組み立てたということでございまして、これも省略させていただきます。

6ページでありますが、募集の規制の基本になるのは保険会社が顧客に対してどういう情報を提供するかという、そこの交通整理のルールであります。保険会社はいろいろなメディアを使って情報は絶えず発信しておられるので、情報が不足しているとか、あるいはそこの発信量を規制するとかという話ではなくて、顧客にとって最初にアクセスすべき、信頼をするに値する第1次ソースとしてどういう情報があるべきかという、そういう問題としてお考えいただければと思います。

それから契約概要、注意喚起情報と、実務で導入されてかなり定着しているかと思いますけれども、ただなお改善の余地もあるという声も聞いておりますので、契約概要は比較のベースになる出発点の情報で、注意喚起情報は苦情対応を懸念される保険会社の判断で延ばせる資料、延ばしたければ延ばせる資料ということになろうかと思います。結局こういう書面による情報提供と説明義務の関係を整理しておくことのほうがむしろ重要でありまして、注意喚起情報を幾ら丁寧に書いても、募集話法におけるノイズとか、あるいはそもそも募集話法そのものがお客さんを少しミスリーディングするような形で仕組まれているときには、そういうものに由来するトラブルは減るわけがありませんから、この問題を一番減らす方法はそういう誤解を招かないような募集話法そのものを洗練させるということであろうかと思いまして、書面の問題にすりかえないでいただきたいということは業界にお願いしたいと思います。

それから情報提供の質の問題です。基本的には虚偽表示あるいは偏った比較というか、そういう行為が問題かと思いますけれども、先ほど申しましたように情報発信の担い手にかなりいろいろなプレーヤーがいるということがありますので、それぞれが発信する情報の質の保証をだれのイニシアチブで、どういう枠組みで行うかということについて、その枠組みづくりが一番難しいかと思います。それは金融庁だけでも限界があるでしょうし、業界もある程度の責任を担っていただくということがあるかと思いますので、何が望ましくて何が望ましくないかということについての事例を蓄積して、より、時間を追うにつれて規制のクオリティーを上げていけるような、経験の蓄積ができるような枠組みをぜひ構築していたければと思います。ADRなどを通して既に蓄積があるかもしれませんけれども、もう少し見えるような形で整理をできるような機会をぜひご検討いただきたいと思います。

それから次に、8ページに参りますが、販売勧誘検討チームでもなかなか苦労した適合性原則とか助言の問題であります。1つには適合性原則というルールそのものがわかりにくいということはいつまでたっても聞かれるんですけれども、適合性原則そのものはいきなり適用されるルールではなくて、適合性原則のもとでどういう具体的な行動が求められるかという、行為義務を明らかにするということに目を向けていただきたいということであります。それからキーワードとしては、お客さんの身の丈に合わない商品を売っているかどうかということが一番で、身の丈に合わない商品を売っている、そういうことがいつまでたっても絶えないということでなかろうかと思います。問題点としましては、適合性原則もわかりにくいけれども、それを助言と言いかえても助言とは何かがわかりにくいという指摘があろうかと思います。特にセールストークとの違いがわかりにくいということかと思いますが、セールストークは助言であるという整理をして私は構わないというのが私の理解であります。またその適合性原則は新規加入の問題だけではなくて転換などの場面でも問題になるわけでありまして、例えば、生命保険に加入して7年たちました。あと3年たったら保険料が上がりますというときに、今、見直せばさも3年後に上がる保険料よりもかなり安い保険料で今から10年いけますよというような勧誘は、多くの方は経験されているのではないかと思います。そのときに3年前倒しで見直しをすることによって保険料の支払い期間が後ろに延びているということをちゃんと言ってくれる募集人には私は当たったことがない。トータルで生涯に支払う保険料を全部計算して、確かにあなたのおっしゃるのはこれだけ安くなりますねということを申し上げたら、計算していただいて安くなるということがわかって私は安心しましたと。おまえは計算していなかったのかという感想を抱きましたが、、私はそういうやりとりを経験したことがありまして、その程度のクオリティーで募集をやっているから乗合い代理店にお客さんを持っていかれるということもあり得るわけでありますから、そこはぜひ改善をお考えいただきたいと思っております。

次に9ページであります。いろいろと適合性原則に基づくルールというのはあり得ると思いますけれども、まずご覧頂きたいのは3番目の点です。顧客意向確認書面は、現在、この中で実現しているものであります。これについて、このペーパーでは特に評価を入れておりませんが、これは費用対効果をこの場で検証して、足りないところを特定していただいて、さらにこの問題に関して前進していただくことを希望しているわけでありまして、顧客意向確認書面の制度があるから適合性原則の問題はもう現状維持でよいということを申し上げにまいったわけではございません。

それから募集手数料の開示の問題、いろいろとご指摘がありますけれども、売れ筋だから売れているのか、手数料が原因で偏っているのかというのは、なかなか真相はわからない。内部的な数字を細かく精査しないとわからないじゃないかと思いますし、またその手数料の最大化を仮にはかられたとしても、そのことがそのお客さんが購入した商品の不適合に直結するわけではないので、お客さんのこうむる不利益をどこまで守るかということからすると、少し因果関係の遠い話にはなるかと思います。お客さんの不信感は、これを開示するとかなり助長すると思いますけれども、ではそれを開示したからといってお客さんは何かメリットを還元されるのかというと、それは長い目で見たら偏った助言が減ることによって還元されると、そういう関係かと思います。それはそれで、もちろん開示のあり方を直していこうという政策判断もあり得ると思いますけれども、それよりも助言の話法のクオリティーを上げるということを直接目指すほうが、私は優先順位が高いのではないかと思っております。

次、10ページでございますが、これがまさになぞかけでありまして、業法283条、責任の問題であります。この283条の責任が規定されたときの立法趣旨は、民法の715条の使用者責任の規律を募集委託関係という、請負契約とかあるいは準委任契約とかにも等しく及ぼすということは言われておったかと思いますけれども、その趣旨のままで考えますと、保険会社と募集人の間に指揮監督関係といいますか、指揮命令関係といいますか、そういうものがあるということが前提のお話だったかと思います。昨今のチャネルの多様化からすると、そうではないと明らかに思えるようなものにもこの規律がかかっていて、要するに先ほどの乗合い代理店も所属保険会社が登録上決まっている。他方、保険ブローカーは所属保険会社は概念がそもそもない。その違いがあるからこれを適用できる、できないという違いがあるんですけれども、乗合募集人も、ある局面まではお客さんのためにコンサルティングをしていて、契約締結の時点では保険会社の代理人として行動するということには間違いがない。法的にそれ以外の法律構成はないわけでありますから、そういうことを715条のロジックの中でどう見ていけるのかということを、立ちどまって検証していただきたいということです。

それから最後ですが、結局そういう乗合い代理と仲立ちの関係をどう考えるかということであります。結局その乗合い募集は仲立ちに寄せてしまっていいかというと、結局仲立人は保険会社とのオーダーメードの契約交渉をするという形ではまさにお客さんから代理権をもらって交渉するわけで、そこまでの関係は乗合い募集には要らないわけなので、保険仲立ちと乗合い募集はやはり別の概念として残しておいたほうがいいと思われます。

そういうことからすると仲立ちと現在の募集の中に乗合い募集というものを入れて、乗合い募集には、複数商品の比較の中から助言をするというビジネスモデルがありますから、それに対する規制に漏れがないような法理をきっちり入れていただきたいということでございます。

質疑に移ったほうがいいかなと思いますので、私の発言はこれぐらいにさせていただきます。どうもありがとうございました。

○洲崎座長

どうもありがとうございました。それでは丹野委員と木下参考人からのただいまのご説明等に関しまして、ご質問ご意見等ございましたら、お願いしたいと思います。時間の関係もありまして、丹野委員についてはまた次回以降の会合でもいろいろご意見をいただくことができると思うのですが、木下参考人については多分今日が最後になると思いますので、とりあえずは木下参考人のご説明に関しての質疑応答からお願いしたいと思います。いかがでございましょう。

錦野委員。

○錦野委員

木下参考人に対してご質問したいんですけれども、レジュメの9ページの1つ目のところ、ここは権限明示、助言を行うか、助言の内容をマル4で書かれていることに絡めてその人の義務、助言義務を負うかどうかというのを開示している。こういう規制が書かれていて、非常にこれは参考になることだなと思います。また11ページのところですね。紹介人に対する行為規制というご提言がなされているところですが、こういう規制、各2つの規制というのは日本以外の諸外国においてこういう規制が実施されている例があるのかというのも、時間の関係もありますので、もう頭出しだけで結構ですのでご説明いただければありがたいと存じます。

○木下参考人

ご質問ありがとうございます。まずその助言の義務をどういう枠組み要件のもとで課すかにつきましては、まだ国際的に見てこれが多数派ですねということがかっちり決まっている状態ではなかろうと思っております。その1つの原因はヨーロッパの保険仲介業に関する指令が今世紀に入りまして出たんですけれども、指令の内容そのものは、かなり柔軟なもので、助言をするかどうかということも含めて、顧客にそれが伝わればちゃんと伝えなさいという規制はあるんですけれども、それ以上に募集する主体のほうにどういう行為までを認めるかという、その主体と行為の対応関係については縛ってもいいし、縛らなくてもいい。そういうことを前提としたルールが入っていますので、私は要するに契約で助言をするかどうかを決めるという、EC指令の中で一番緩やかな枠組みをとったらこうなるということで今日ご提案をしています。もう少し縛りをかけて、こういう主体にはこういうことはやらないといけないとか、こういうことはやってもいいし、また、ドイツのやり方では、助言をしなくてよいとするためにはどういう手順を踏まないかという、そういうルールがありまして、そこはいろいろとアイデアの出しよう、比較法的に検討のしようはあるかと思います。

それから紹介行為に対する行為規制ですけれども、まずは保険に関して募集資格のない者がいろいろな意見を述べる、情報を発信するということについては、これは表現の自由の問題もありますから、そのレベルで何か規制するということはなかなか難しかろうと思いますけれども、少なくとも自分から募集資格のある者に対して紹介ができる、つまり紹介するということを業として行っている者については、その者がどこまでの行為ができるのかという規制はかけられて、その者は情報提供はできるけれども、それは正確にやりなさい。募集行為の中でこれとこれはやってはいけませんとかということは、もう少し明確なルールが置けるのではないかと。そういう印象を持っております。

○洲崎座長

後藤委員。

○後藤委員

どうもありがとうございます。あまり細かいことをお伺いするべきかちょっと迷っているところもあるんですが、木下参考人の11ページあたり、最初のまとめのところでいうと3ページの右下あたりなんですけれども、乗合代理店の行為については、保険会社がどういう責任を負うべきかというところで、乗合代理店の行為の中でも保険会社の代位責任が及ばない部分があるかどうかを考えるべきではないかというご指摘があり、それは非常に重要なご指摘かと思うのですが、そのご趣旨を確認させていただければと思います。木下参考人がおっしゃったのは、乗合代理店はどんなものであれ、複数の保険会社から委託を受けた上で、その比較をしたり助言をしたり、中立っぽい行動をするという点に着目したご提言ではないかと考えております。これに対して、丹野委員のお話の中では、銀行窓販では銀行に責任を負わせるべきだというようなご指摘があって、それはどちらかというと、加藤委員からもご指摘がありましたように、保険会社は銀行を完全にはコントロールできないだろうということ、ある商品を売止めにしてくれということは言えたとしても、個別の説明とかまではおそらく踏み込めないし、賠償責任を果たした保険会社が銀行に求償するといっても多分その辺はいろいろあってもできないところもあるだろうというところで、その交渉力の差に着目して、損害賠償責任の抑止効果を働かせるために銀行に責任を負わせて、他方で、保険会社を守ってあげるというご趣旨ではないと思うんですが、保険会社を免責するような形にするというお話なのかなと思いました。木下参考人のご提言が、この丹野委員のお話と同じ方向のことなのか、それともまた別の枠組みなのかというあたりを参考のためにお聞かせいただければと思います。

○木下参考人

ご質問ありがとうございます。今のお話は私の資料で10ページですね。283条の問題について、2つ問題があるということをあまりはっきりと明確に区分して書かなかったことによるのではないかと思っております。

まず交渉上優位な地位を占める代理店、募集人、これは銀行を典型としますけれどもそれに限らないと思いますが、そもそも保険募集人といわれるものの中に、保険会社がその指揮監督関係を果たせないことが明らかである、外形的にも明らかである、実態として見ても指揮監督関係は認定できないというようなものについて、そもそも715条の論理に乗らないのではないかということが1点。今の話は専属であろうと乗り合いであろうと関係ない論点と思っています。

それから2つ目の問題は、乗り合っているということに伴うもので、乗り合うことによってその保険会社との募集委託契約の中身が専属のものとはかなり質的に違ってくる。うちの会社の代理人としてこの会社の商品をどんどん売ってくださいということよりも、おたくのビジネスモデルの中で比較する中で、うちの商品が売れるチャンスがあれば売ってくださいと。そういう委託に多分趣旨は変わっていると思うんですね。それ以上に今月はぜひうちの商品を、とかいう話を持ってくるかもしれませんが、それは募集委託契約の問題じゃなくてプロモーションの問題だと思われます。その場合に、おたくのモデルの中で比較をして売るというビジネスモデルの中で売ってくださいというのは、それは要するに民法715条でいうところの「業務の執行につき」というところにどこまで入ってくるかという問題、それはもちろん売ってくださいという大きな委託さえヒットすればその業務の執行につきというのは当たることは明らかですということであれば、この問題は解消をするんですけれども、ただ保険ブローカーの場合には、明らかにこの業務の執行につきというのはないという、クリアな判断を一方ではしているわけですね。そこに法制的な不整合はないかということを問題提起したいということであります。

○洲崎座長

阿部委員。

○阿部委員

11ページの資料の中でいわゆる紹介人という新しいご提案がございますけれども、この紹介人というのは例えばネット上の比較情報などを提供すれば、比較としての紹介人であることは必要になるという趣旨でお考えなんでしょうか。そうなると募集人とその紹介人の境目がまた難しくなってきて、そういう意味でここで募集人についてさらに資格要件を強めるというご提案があるかと思うんですが、ここでおっしゃっている紹介人というのは、この紹介人としての要件を満たさなければ比較情報等を提供してはならないという趣旨なんでしょうか。

○木下参考人

紹介人が比較情報を表示してはならないというルールを決めることは私は過剰規制ではないかと思っていますが、紹介人が比較の中でどこまでのコンサルティングといいますか説明をできるのかということかと思います。募集概念と紹介概念と2つ立てたときにどこに線を引くかという問題は、現在募集しかない概念の中でそれをどう処理するかという問題とは違う問題があると思っていまして、そこで、この場で整理をしていただきたいと思いますけれども、私の個人的な印象としましては、情報提供、一般的な情報、商品そのものについての一般的な情報提供、比較情報の提供というのは紹介人にもできると思いますけれども、あなたの場合にこうですということをするのは紹介人ではできないというルールにしたほうがいいんではないかという印象を持っています。

○洲崎座長

よろしゅうございますか。

沖野委員。

○沖野委員

申しわけありません。細かいことではあるのですが、後藤委員とのやりとりやご報告の中での木下参考人のお考えについてもう1点、明確にしておきたいということがあるものですから。代位責任に関連してのことです。

ここでは保険会社のほうの責任のあり方についてのご提言をお考えだと思うのですが、その前提として例えば金融機関、銀行が情報提供を適切にしないというときに、銀行自身は直接顧客に対して責任を負うということが前提で、それとともに保険会社の代位責任ということを導かれようとしているのか。それとも銀行自身は情報提供自体については責任を負わない。基本的には保険会社がむしろ本来的には責任を負うのだけれども、715条的な性格がないために文字どおり空白ができてしまうというお考えであるのか、前提が何かという点です。この点があるいは丹野委員のご指摘と少し違っているのかという気もいたしましたもので、前提がどういうことかということと、それがあるべき姿はさらにどういうものとお考えかということを確認させていただければと思います。

○洲崎座長

はい、木下参考人。

○木下参考人

銀行は募集人としての行為義務の違反があると思いますので、銀行はまさに不法行為の責任要件を満たせば責任があるという前提で考えております。ただこの問題、悩ましいのは、裁判だけのことで考えていいかという問題がありまして、ADRで処理される場面というのもあろうかと思います。保険商品に関する紛争は保険のADRに行くというような整理になっていると、銀行が関与しないところで銀行の不適切な行為について保険会社とお客さんと、それから保険のADRで話をするということが起きる。この問題と私の今日の報告とは少し方向性がずれる話になってくるんですけれども。銀行は責任を負うことは前提で、銀行が責任を負わないところで保険会社が責任負うということには基本的には考えておりません。それでお答えになりましたでしょうか。

○沖野委員

はい、ありがとうございます。

○洲崎座長

丹野委員。

○丹野委員

すみません。ちょっと一言だけ弁解を。弁解というか訂正というか、もう少し詳しくご説明を。先ほど後藤先生のほうからもおっしゃいましたが、銀行にその販売責任を負わせるべきだといって、ではそれで反射的に保険会社を免責にするのかという、もしも誤解があるのであればそれは違います。もともとの動機というか提案のその前提になっているのは、一向に銀行における販売のトラブルが減らない。減らない前提があって、なぜかと考えると、どうも銀行が販売責任をスルーしてしまって結局処理は保険会社がやるという実態があるからなんではないか。だから保険会社を免責したいからではなく、銀行にきちんと真正面から自分たちのやっている行為について慎重にかつ適切に販売をしていただきたいという思いがあって、283条との関係を整理したらいかがと申し上げたということだけを、ちょっと一言だけ訂正を。

○洲崎座長

現行法上は、保険業法283条で保険会社が所属保険会社として責任を負うためにはやはり募集人に不法行為があるということが、前提になっています。ですから銀行の場合であっても銀行と保険会社は両方責任を負うということになるのですが、ただ実際の訴訟の場では保険会社だけが被告になって、保険会社が損害賠償の責任を負わされる。もちろんその場合でも銀行に対して求償はできると思うのですが、そこが実際の力関係からするとなかなか求償はできないかもしれない。ですから1つのやり方としては求償できるという明文の規定を置くということがひとつ考えられるかもしれませんし、それから場合によっては銀行が募集人になるような場合には283条は適用せずに銀行だけが責任を負うということも、1つのやり方としては考えられるかもしれません。丹野委員がおっしゃったのはそういういろいろな可能性がある中で検討してくださいということかなと、私は理解いたしました。

ほかにいかがでしょうか。ちょっと、よろしいですか。私も木下参考人に。今日が最後だと思うと、私も一言聞いておきたいと思いまして。

木下参考人がおっしゃったご提言の中に非常に魅力的なものが幾つもありまして、私もなるほどと思うところが何カ所もあったのですが、9ページの右側の4のaのところで、仲立人の場合、または乗合募集人であって前記1.マル4を引き受けるものと評価される場合、つまり助言を行うことを引き受ける者と評価される場合には、助言義務を負わせるべきではないか。そして、それは専属募集人の場合でも同様ではないかということなのですが、この場合の助言というものをどのように理解するか。これは非常に広いものだというふうにもとりうる。ご報告の中ではセールストークをする場合は助言をしたものと見ていいのではないかというご発言もあったと思うのですが、そう考えるとかなり広い範囲で助言が認められることになって、そうすると現在の募集人の中でも相当範囲のものが仲立人に近い助言義務を負うことになる余地はあると思うのです。助言というものをどう理解すればいいのか。この助言に当たるかどうかという切り分けがうまくできるのかどうかというところについてご説明いただけますか。

○木下参考人

私のような考え方を仮に入れるとしますと、助言というのは簡単に認められる、認定されていく方向に動くのではないかと思っています。例えば募集文書の中でこの募集人は助言を行いませんというようなことを明確に書いてあるとか、そういうことがあったとしても実際にセールストークの中で助言をしていると評価できるような行為をしていれば、裁判になればそれは助言をしているという認定をされることがむしろ多くなるのではないかという予想をしています。

ただそこから先が問題でありまして、どういうチャネルがどういうクオリティー、あるいはどこまでの高いレベルの助言をしてくれると期待できるかということについては、評価は分かれてくると思います。この資料のところにも書いてございますが、期待される助言の質が仲立ち、乗合い、専属募集の区別によって異なり得るだろうということで、どのレベルの助言をすれば違法性がないかということについては、それなりにガイドライン的なことを抽象的に法律で定めることはできるだろうと思いますけれども、諸外国でもそこまできっちり決め込んでいる例はあまりなくて、むしろ判例法理にゆだねられているということのほうが多いだろうと思っております。まさに民事ルールの問題として考えられるんだけれども、そういう枠組みが保険の世界には必要だということの原則を確認する規定は少なくとも入れていただきたいということです。それ以上に何かチャネルの特性に応じてここまでは入れなさいということを決めていくと、それはかなりいいことだと思いますけれども、そういう提案そのものによって助言法理の提案が通らない方向にかなり引っ張られていくのではないかという懸念をしております。

○洲崎座長

民事ルールとして、助言をした場合にはベストアドバイス義務のような義務を負わされ得るというような、そういう規定を置くというようなことまで想定されているのですか。そこまではいかないということですか。

○木下参考人

ベストアドバイス義務というのは1986年でしたか、イギリスの金融サービス法の枠組みの中ではそういう話が出ていたかと思いますけれども、2000年の金融サービス市場法以降のイギリス法の中ではベストアドバイス義務という表現で語られることはなくなりまして、既に放棄された考え方であります。どういうクオリティーの助言を引き受けたかというのは、まさにどういう販売体制がそこで構築されていて、それがお客さんに対してどういう期待を持たせたかということ。それはそのお客さんとのコミュニケーションでどこまでどの資料を出したとか、そういうことによってもケースごとに変わってくると私は思っていまして、ケースごとに変わってくるんだけれども、やっぱりチャネルごとにこの辺が標準だよねということを決めていくということになるのか。あるいはそれはもう裁判官に評価を任せるのか。それは両方があり得ると思っています。

○洲崎座長

ほかにございますでしょうか。時間がもう12時になってしまったのですが、丹野委員のご発言についてどうしても今日のうちに何かご質問があるという方おられましたらどうぞ。よろしゅうございますか。それでは次回以降の会合のときにお願いしたいと思います。

それでは続きまして事務局より最近の保険募集に関する事例を踏まえた課題等についてご説明をお願いしたいと存じます。よろしくお願いいたします。

○小原保険課長

保険課長の小原でございます。もう時間も来ておりますし、今日は今後このワーキングでご議論いただきたいと監督の立場から思っている事項についてご紹介するつもりであったんですが、既にそのかなりの部分は議論されておりますので、以下の私の説明は不要なのかもしれませんが、資料5に沿いまして手短にお話をさせていただきたいと思います。

表紙をおめくりいただきまして。これも先ほど議論になりました保険募集の定義でございます。保険業法上、保険募集というのは保険契約の締結の代理または媒介となっておりますが、特にこの媒介がどこまでを指すのかというのが、監督上も悩みでございます。一応右側の監督指針では考え方を定めておりますが、これを読んでも一つ一つ当てはめができるわけではございません。それで下のほうに書いてあります最近出てきていることは、これは以前からあるものもありますけれども、例えばコンビニの店頭なんかに保険商品のパンフレットを置いたりする行為、それから比較サイトが例えば保険料見積もり欄をクリックすると保険会社のサイトに行くようなケース、こういったものが媒介に当たるのかどうかということで悩むことがあります。

現在の実務上どのように判断しているかということなんですが、それは個別に総合判断なんですけれども、個別具体的な契約締結にリンクしている行為なのかということで着目することにしておりまして、例えば手数料が契約締結に応じて支払われるように設定されている場合は、これはもう保険募集に当たるのではないかと判断しているところでございます。ただこの考え方自体が妥当かどうかという問題はもちろんあろうかと思います。

それから次のページでございます。代理店規制でございます。これもかなり議論が出ておりましたので、改めて申し上げることはないかと思いますが、私どもは大規模な乗り合い代理店について若干関心を持っております。法律はほぼ形式的な拒否要件に該当しない限りは代理店の登録ができるということになっております。代理店に対する規制でございますが、右側の例えば305条、306条で立入検査、業務改善命令の権限は与えられておるわけですが、例えば事業報告書のような定期的な報告義務というものは設けられておりません。それから上のほうに保険仲立人に関する規定の一部を設けております。もちろん代理店と仲立人というのは本来性格が全く異なるものですので単純比較はできませんけれども、外見上非常に似通っている乗り合い代理店と仲立人との規制はかなり違うということでございます。

それで下のほうにまいりまして、論点としましては、これもさんざん先ほど議論されましたが、推奨する商品の選定の適切性をどう担保するのかという論点があるかと思います。それからその2つ目は乗り合う保険会社間の情報共有。例えばある保険会社の商品に関して代理店で不祥事件が起きたときに、それは当然当該商品を提供する保険会社には情報が提供されるわけですけれども、乗り合い他社に対してはやはり顧客情報の管理の問題がございますのでどこまで提供していいのかがわからないと。ですので、1社だけが改善を代理店に対して教育指導を行うというような形をとらざるを得ないという問題がございます。それから個人情報、これ逆の話でございますが、ある保険会社の顧客情報を他の乗り合い他社の保険会社の商品の勧誘に使うという行為もやろうと思えばできるということでございます。それから仲立人制度の関係は今申し上げましたとおりでございます。

それからその他のところでございますが、代理店が業務の一部をアウトソースする事例がかなり多くなっていると認識しております。例えば銀行などの保険代理店が行っているテレマーケティングでございますけれども、一応テレマーケティングを担当する方は募集人登録をされておりますので、直ちに保険業法違反ということにはなりませんけれども、あくまで銀行など代理店とは異なる組織の方に委託をしているということですので、どこまで指導監督が行き届くのかということについては問題意識を持っております。それから一番下は最近報道もされていますように、代理店主が架空の保険契約を締結して保険料を着服していたという事例が発生しておりまして、これは現在調査中ではございますけれども、もともとのきっかけはやっぱりお金に窮していたということが原因であろうと考えております。それで代理店につきましては財産的基礎についての要件もございませんし、先ほど申し上げましたように監督ツールも限られていることから、今後このワーキングでどの程度の規制を設けるべきかということは論点になろうかと思っております。

それから最後でございますが、契約概要等について、これも先ほど議論出ましたが、保険業法300条1項で保険募集等に関する禁止行為が定められております。このうち第1号の後段で契約条項のうち重要な事項を告げない行為が禁止行為となっておりまして、これを受けた形で監督指針で契約概要、それから注意喚起情報を記載しております。ここで数多くの論点がございますけれども、ここで取り上げますのは、被保険者に対してどの程度説明義務がこれでかかっているのかということでございます。法文上は明示的に「または被保険者」と書いておりますので、おそらくこの規定は契約者と被保険者が異なる保険契約があることを前提に、その場合、被保険者にも説明するようにという意図で規定されたものかと見受けられます。

一方で現行の実務がどうなっているかと申し上げますと、下のほうに団体保険の例を挙げております。典型的にはこの一番上の、企業が契約者になって、企業の従業員が被保険者になる生命保険の例がございます。こういうケースでは、一般的には企業の福利厚生部門が事務を行っているということでございます。例えば何か起きたときに支払い事由に該当するかどうかといった、商品には一応精通していることが期待されており、それから加入勧奨を行うときには、被保険者、あるいは従業員に対して商品内容の説明、重要事項に近い説明が行われることも期待できますので、これについて個々の被保険者に対して募集人等が直接説明する必要性は小さいであろうと考えられます。こういうことで現行、この団体保険については募集人等が直接被保険者に説明することは行われておりません。資料の右側に載せておりますように、監督指針上もこの契約概要等は団体保険の場合は対象としないと書いております。ただ団体保険もいろいろな類型がございますので、企業と従業員の関係のように非常に結びつきが強いと思われるものから、下に書いてありますようにカード会社とカード所有者との関係はおのずと異なってくると思われます。それから団体保険に限らず個人保険も当然契約者と被保険者は異なることがございます。資料の下の2つが個人保険でございます。その下から2つ目、これ生命保険などでございますが、この生命保険、いわゆる他人の生命保険でございますけれども、これについては近年保険会社はかなり説明体制の向上に努めておられるようでして、ほぼ契約者に対する説明内容と同様の説明が募集人等から直接行われております。

また、自動車保険については、募集人等から被保険者に対する説明は行われておりません。ただこのケースは、これは損害保険一般に言えることかと思いますけれども、被保険者というものは一方的に利益を受ける、保険カバーによって一方的に利益を受けるだけの立場でございますので、果たしてほんとうに説明する必要があるのかというのがまた疑問でございます。それからここにあります許諾被保険者というのは自動車を所有者から借りて運転する人でございますが、そういう場合に一々募集人が被保険者に説明することは物理的に不可能でございます。ただ法文上これがひょっとして違反ではないかと見えるということはございます。

現行の実務につきましては、私自身は被保険者の保護という観点から特段問題があると考えておりませんが、将来的にこのままの300条のたてつけでいいのかというと、やや懸念がございます。例えば契約概要を法令に引き上げるというご提案もあるかと思いますけれども、その場合には、より……例えば被保険者にどこまで説明すべきなのかということについて詰められていないと、場合によっては現行実務が保険業法違反になってしまったり、あるいは本来説明すべき者に説明がされないというようなことも起こり得るかと思います。

それから、保険業法300条につきましては、今申し上げました事項以外にもさまざまご指摘がございまして、例えばこの1号から3号までは罰則つきで最大懲役1年という非常に重たいものでございますので、そこでそもそも今の契約概要のようなものを法令上義務づけるということが適切なのかというご議論やご指摘もあるやに聞いております。むしろ100条の2の体制整備にぶら下げたほうがいいのではないかというご指摘もございますので、何とぞこのような点も踏まえてご審議いただければと思います。

以上でございます。

○洲崎座長

ありがとうございました。それではただいまのご説明等に関しましてご質問、ご意見等ございましたらお願いいたします。

錦野委員。

○錦野委員

最後の被保険者のところなんですけれども、確かに300条のところでは書いてないんですけれども、保険業法の100条の2とか規則53条の7にぶら下がっている監督指針がありまして、そこで団体契約等について保険契約者である団体が被保険者となる者に対して加入勧奨を行う場合に契約概要と同程度の情報提供をするようにという留意点、監督上の留意点がありまして、ここで書いてある図の中の被保険者の保護は現状は図っているということなんですけれども。確かにそれが法制上どうなのかという、体制整備のところで実質的には同程度のことをやっているわけですが、それが法制上どうなのかという問題は残るんだろうなと思います。

○洲崎座長

ただいまの小原課長からのお話は、被保険者に対して本来説明をすべき場合に説明をしなければいけないのはその通りなんだけれども、今の300条の規定だと説明をしなくてもいいような場合でも、被保険者に重要な事項を告げない行為がもう300条違反になるというような、何か文言上はそういう規律になっているので、これをそのままでいいのかという、むしろそちらのほうのお話であったと理解していますけれども。

○小原保険課長

座長がおっしゃるとおりの問題意識を持っておりますが、ただ現状は実務も定着しておりまして、現実に問題になるのかと言われると。

○洲崎座長

多分それほど困っていることはないと。

○小原保険課長

単に法文との関係で気持ち悪いという程度でございますけれども。今後例えば契約概要のステータスを高めたり、あるいはその契約概要の中身を簡素化したり、そういった議論が出てくるときに、今のままでいいのかという論点があろうかと考えております。

○洲崎座長

だから多分現在はこの条文の解釈ということで特に問題は生じていないと思うのですが、ここでより精密な規定を置くとした場合に、このままでいいのかというと、確かに問題がないわけではないということかと思います。

ほかにございますか。よろしゅうございますか。

本日は活発なご議論をいただきましてどうもありがとうございました。司会の不手際で時間が超過してしまいまして、どうも申しわけございません。今後の当ワーキング・グループの検討の進め方でございますが、前回及び今回いただいたご意見を踏まえつつ諮問事項に沿って、まずは保険契約者の多様なニーズにこたえるための保険商品やサービスの提供及び保険会社等の業務範囲のあり方から議論を行ってまいりたいと思います。

最後に次回の日程でございますが、皆様のご都合を踏まえた上で後日事務局よりご案内を差し上げたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

本日はどうもありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企画課保険企画室(内線3571)

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