金融審議会「保険会社のグループ経営に関する規制の在り方ワーキング・グループ」(第2回)議事要旨

1.日時:

平成23年7月27日(水曜日)10時00分~12時00分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館12階 共用第2特別会議室

3.議題:

保険会社のグループ経営に関する規制の在り方について

  • 今後の検討事項について
  • 外国保険会社の買収等に係る子会社の業務範囲規制
  • 保険契約の移転単位規制の在り方

4.議事内容:

  • 今後の当ワーキング・グループにおいて、資料1『今後の検討事項について(案)』に掲記した項目に沿って検討を行うことが了承された。

  • 「外国保険会社の買収等に係る子会社の業務範囲規制」及び「保険契約の移転単位規制の在り方」に関して、それぞれ事務局及び実務メンバーから資料に基づいた説明等を行った後、討議。

  • 討議における主な意見等は以下のとおり

「外国保険会社の買収等に係る子会社の業務範囲規制」

  • 海外における多様な子会社を、仮に国内で保険会社が持つとした場合の評価についてどう考えるか。海外において現地での競争力確保のために持つ必要があるという理由は、どのような会社にも該当することなのか否か。また、国内における規制も本来は考え直すべきということが基礎にあるのか、当該現地における特有の事情ということを基礎にして考えていったら良いのか。
  • 海外子会社に関しては、規模が小さいものについて現行保険業法から一定程度、業務範囲を広げることや、保有できる期限をもう少し許容することが考えられる。また、国情から必要なものや、収益が期待できるビジネスモデルのものについても、保有を認めることが考えられる。国内の子会社規制のあり方も論点ではあるが、入札で競合した場合に外国の保険会社と比べて不利になることは喫緊の課題であり、海外の方を優先して検討して頂きたい。
  • 保険業法に適合しない外国保険会社の子会社の保有が、現地での競争力の確保等のためにどの程度必要なのかは、その業務の内容と国柄次第ではないか。当該子会社を保有した場合、時間の猶予があれば、保険業法の規制に合わせることがある程度はできるのではないか。国内の規制もあるが、海外についての問題が焦眉の急であると考える。
  • 外国の保険会社を買収する際の子会社の業務範囲の規制の在り方について、現状のように限定列挙する規定の書きぶりではなくて、当局の個別の判断によることがあり得るのか。
  • 現在の規制を見直すべき余地があると考えれば、今回の外国子会社の規制について、先行して規制を緩和していくということも十分考えられるのではないか。買収時点で存在した保険業法上現在認められている範囲外の子会社について、競争力確保のための必要性という点を重視すれば、その保持を認めたほうが良いのではないか。一般的には一定期間がたったら売却を義務付けるが、特に当該市場において、競争力確保のために必要である業務を行う子会社に限って、保有し続けてもよいという二段構えの規制もあり得るのではないか。
  • リーマン・ショックの事例等も踏まえ、グループ全体の事業のあり方・リスク管理の観点を含めたIAISのコムフレームの検討など各国の監督者の共通認識に基づいた諸施策の整備が徐々に進んでいる中で、海外において特段規制がないからといって、現行の業務範囲を広げることが短絡的にそれでオーケーということにはならないのではないか。外国保険会社の買収に係る子会社の業務範囲規制については、その買収時点には適用せず、一定の猶予期間を置いてから適用をすることが妥当ではないか。また、規模が小さければ、事業リスクが小さいとも限らず、買収後、規模の小さい他業なら保有し続けても問題がないとは言えないのではないか。一方で、もう少し長い視点で将来的には、実効性のあるグループリスク管理態勢が整った段階で、業務範囲の拡大について検討するのに妥当な時期が来るかもしれない。
  • 保険について、他業の範囲は国内と他のマーケットで異なっており、効率性の発揮や企業価値の増大という点から、その業務が本業に関連しているかという観点から見るということを考えれば、必ずしも国内の規制を変えなければ他国においても変わらないということではない。また現在の規制のありかたから考えて、他業を禁止することで企業のリスク管理を強化するという考え方自体が、果たして時宜にかなうものかどうか。
  • 親子会社間における親会社の責任法制は国によって異なり、持っている株式の価値がゼロになるということを超えて、親会社の責任が問われる可能性のある国もある。子会社規制の中にも、国によって様々なものが含まれているということを確認したい。
  • 海外に進出した保険会社において、他業禁止の趣旨を踏まえ、本体の健全性が削がれないような形が担保できれば、その国の法律の中でできることをやっていくというのが一つの考え方ではあるが、翻ってそのことが日本における子会社規制の撤廃というような短絡的な議論につながっては困る。
  • 保険会社が海外に進出した場合でも、当面、リスク量のコントロールを行うことが望ましい。その間に保険会社の他業に関してのリスクマネジメント能力を高めて、やがては国内にも反映できるかもしれないということになるのではないか。保険業法に適合しない子会社について、買収当初は全体の保有を認めて、例えば5年以内に2%以内等といった制限をせず、保有を全く認めないとなると、最終的に現地での競争力が削がれるおそれがある。
  • 保険業に関しては今後数年でグローバルなM&Aが増える可能性があることから、海外の保険会社の子会社の業務範囲の見直しに関しての緊急性は、十分高いと認識。一方で例えば財閥系の企業が多いアジアの保険会社については、保険事業と直接関係のない事業を行う会社を対象とするM&Aも今後行われることが想定されるため、当該事業に関しては、一定期間の後に売却をする形での業務範囲の規制が必要ではないか。
  • 日本の保険業法は、親会社である保険会社が子会社を救済するために無理な出資や融資をせざるを得ないのではないかという危険があるため、子会社についても厳しい業務範囲規制をかけてきたと理解。加えて海外の保険会社を子会社として保有する場合、そもそも法的にも親会社が、日本では考えられないような責任を負わされるリスクが有り得る。重要な子会社であればあるほど、破綻を防止するために親会社が無理な出資や融資をせざるを得なくなるということもあるため、規模が小さいから、あるいは海外だからという理由で問題を済ませることは必ずしもできないのではないか。

「保険契約の移転単位規制の在り方」

  • 保険契約の移転単位規制に関し、現在又はこれからあるべき規律について、一般法理と横並びであるのはどこまでで、保険契約固有の規律や特有の考慮はどこにあるのか。海外においては、一般の包括的な契約移転についても同じ規律か、保険契約について特有のものがあるのか。
  • 相互会社である健全生保が保有する一部の有配当契約を移転対象とする場合に、内部留保への寄与度の計算をして、例えば移転対象者に現金で精算をすることの要否、また、株式会社である保険会社の危険準備金、異常危険準備金、価格変動準備金に対しての一定の寄与を、契約者に対して分配することの要否について、それぞれ実務的な作業に当たって問題になるのではないか。
  • 従来は、健全な会社がグループ経営の効率化等のために生命保険契約を包括移転させるということがあまりなかったので、有配当契約に対応する資産をどう切り分けて移すかということの議論もされる必要があまりなかったのではないか。今後1年間に配当されることが決まっている配当金のために積み立てられた契約者配当準備金以外の、「含み」の部分をどう移すかの具体的なルールはないのではないか。
  • 従来の緊急避難的な使われ方としてではなく、健全な保険会社が再編ツールの必要性を目的として包括移転を行うことは、消費者・契約者の想定外であり、そのような包括移転が消費者・契約者の利益になるのか。それを考慮すれば乗り越えるべき非常に複雑なバーがたくさんあるのではないか。
  • 包括移転に係る規制の見直しについては経済状況等も非常に厳しい時代であるため、経営の効率化やリソースの集約をできる限り実現できる体制を整えておきたいことが理由であり、これを契約者への通知など様々な対応をする中で認めてもらえないかと考えている。
  • 損害率やコスト特性が違うものが分離されることによって、非常に見えやすい形になることや、例えば代理店型に加えて通販型等の選択肢が増えるなどの意味において、消費者にとってプラスの面もあるのではないかと思われる。だが、元々破綻や破綻に近いものを前提にしていた包括移転の制度を、健全な形のときにまで認めるかということが今回の議論の本質でもあることから、じっくり議論をしていく必要。
  • 企業価値の増大と、それを通した契約者の利益や契約者保護という観点も重要。移転をした場合に、元受契約の不確実性が増大するという意味で消費者にとっての信用リスクが増大することには注意を払う必要がある。移転単位を考えるにあたって、配当をどう考えるかについては、責任準備金の算出の基礎が同じという概念的な議論よりも、むしろ満期に責任準備金がゼロとなるような商品又はならないような商品、あるいはキャッシュフローのある商品のうち、配当がある商品と無配当の商品等、大きな枠をもうけたうえで、とりあえずは大雑把に考えていくというのが一つの方法ではないか。
  • 当局による連結ベースでの監督が行われている保険会社について、子会社に対しての責任は持ち分のみという発想なのかどうか。保険契約の移転単位規制の在り方について、グループを超えた議論を意図しているのか。例えば自動車保険で赤字が出ている損害保険会社が、他の保険の契約者から急に追徴するようなことはないことからしても、保険会社においては最終的なキャピタルの部分がリスクを負うのではないかという点を確認したい。
  • 移転されるのは嫌だと言っているのに強制的に移されてしまうという問題は、民法の原則からは非常に大きな例外であるが、現行の移転単位規制の下でも存在する問題であるため、その対処は独立して考えるべきではないか。現行の異議手続は、5分の1の異議が集まらないと何の効果も生じない点で、契約者保護の観点から、平時としては弱過ぎることから、例えば契約の移転に伴い、ソルベンシー・マージン比率が一定程度下がるといった要件のもとで、異議を述べた契約者に対する連帯責任のようなものを移転元のほうに課していくということも考えられるのではないか。
  • 健全な会社に関わる包括移転を視野に入れた、適正な責任準備金の算出を担保する仕組みについて、議論する必要があるのではないか。

以上

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総務企画局企画課保険企画室(内線3557)

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