金融審議会「保険会社のグループ経営に関する規制の在り方ワーキング・グループ」(第5回)議事要旨

1.日時:

平成23年10月19日(水曜日)16時00分~18時10分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室

3.議題:

保険会社のグループ経営に関する規制の在り方について

  • 保険契約の移転に係る規制の在り方

4.議事内容:

  • 「保険契約の移転に係る規制の在り方」に関して、事務局及び実務メンバーからそれぞれ資料に基づいた説明を行った後、討議。

  • 討議における主な意見等は以下のとおり。

  • 販売停止規定の弊害について理解できるところはある。契約者に包括移転について十分な説明を行い、同意を得ることを保険会社に義務付け、同種の保険契約の締結を可能にすることで良いのではないかと考えている。
  • 引受停止期間については、何らかの手当てをした方が良いのではないかと思っており、その際新しく契約される人に対して「あなたは移転先に行くことになるからね」ということをしっかりと説明しておくことが必要になるのではないか。仮に移転単位規制を緩和し、同じ保険商品の種類の中で残る人と移る人が出てくる状況において、新しく募集をする場合、「募集は移転元で行うものの、包括移転後は移転先に移りますが良いですか」ということに対しての、契約者による了解をしっかり確認した上で包括移転を行うという手当ては必要。
  • 引受停止を適用しないことは、例えば支店形式が現地法人になるような事業の全部を譲渡する場合には確かに弊害はあまりないが、そうではない場合はいろいろと考えた方が良いのかも知れない。
  • 契約者利便の観点から、いわゆる異動を含めて幅広く、販売停止規定を適用しないことを認めて頂けるとありがたい。
  • 保険会社に対し、通常の募集上課せられる説明義務に加え、契約者になろうとする者が置かれた状況について、当人に理解してもらえる程度の説明を課すことが法制上も確保される必要。
  • 保険契約者の個別の承諾を得ている場合に限り、引受停止を適用しないで引受けやメンテナンスを行うことを認める他、現に包括移転の効力が生じたときにその合意に基づいて個別に移転させるという契約をすることを認めてもあまり弊害は考えられないのではないか。
  • 現状において、業法改正をしなくても、個別同意があった場合には販売停止期間の例外的な運用が行われるという解釈の是非をどう考えたらよいか。
  • 保険契約又は保険事業の特性からすると、個別の合意があったとしても保険契約上の債務に対応する資産を移して、保険契約を移転させることはできないという考え方に立っているのではないか。
  • 大数の法則などを含めた保険群団上の問題がないことや、保険会社及び保険契約者双方の観点からのメリット、及び保険契約者保護の観点からの懸念事項への適切な対応策をとることができることを確認することが、移転対象契約の合理的な切り分けかどうかを判断するステップとしてあっても良いと思われる。
  • 契約者に対する情報提供に加え、移転対象契約の切り分け方を当局又は第三者がチェックをすることの両方が必要。移転対象契約に係る切り分けの基準と責任準備金の適切な算定の2つの論点は、セットで対処する必要。
  • 移転対象契約を切り分ける基準や保険会社における説明義務の問題は、切り分け単位を小さくすることに限らず、保険契約の移転に伴う一番大きな論点としても考えることができるのではないか。
  • かつての同一商品、同一価格で監督官庁の比較的強い介入権を前提とした保険システムが変わった段階で、包括移転制度を考え直すことには意義がある。移転単位の切り分けは保険負債をどう公正に分けられるかという難しい問題であり、アクチュアリアルフェアと契約者間の公平性を前提にして専門家がチェックをし、監督官庁はソルベンや必要資本要件を用いながら内部管理ができているかをチェックする、二本立てというのも考えられるのではないか。
  • 経済価値ベースの評価手法や、ソルベンシー・マージン規制の中期的見直しの議論をまずしっかり固めた上で、その基準に基づいて第三者がしっかりと関与することが必要。この議論が固まっていない段階では、どこまで恣意性を排除できるか等の課題があり、慎重な検討が必要。
  • 最終的に保険会社の責任準備金で足りない状態になったときに、保険会社のキャピタルで賄うことになるため、責任準備金の適切な算定に加えてリスクをバッファする部分が分割できないと、合理的な切り分けは難しい。移転前後を通じてリスク許容度が一定のままということについては、グループ内であれば理解できるが、グループ外への移転も含むとかなり抵抗感があるのではないか。
  • 移転対象契約を切り分けた後、想定された程のシナジーが出なかった場合に、更に切り刻んで細かくしてから安く売却することが事後的に可能となるような制度になってしまうと弊害が起きるため、当該切り分けの基準が、結果さえ出る見込みがあれば何でも良いのかということについては、少し注意頂きたい。
  • 責任準備金の算出が適正であるかどうかについて、独立性確保の観点からの独立的な専門家の検証に加えて監督当局による認可のプロセスも必要。当該専門家による検証の際、現行の例えば将来収支分析等のツールのみにとらわれず、経済価値ベース評価も視野に入れたアプローチも想定し得る。
  • 現行制度においても責任準備金の積立てに際しては、第三者である保険計理人がチェックをし、当局が審査等を行うという二重のチェックがある。
  • リスクの高い部分だけを切り離したり、作ってみたけれどもだめな商品であったりといったことを含めて、全ての場合をこの責任準備金の論点で処理しようとするのはおそらく無理な話である。移転対象契約の切り分け方について、不当な場合を具体的に列記することは不可能なため、抽象的にはなるが必要性や相当性というものであれば、保険契約の移転を種類ごとに行う場合と、さらに細かく切り分けることで生じ得る問題の双方に対処できるのではないか。健全性や支払可能性又は配当といった具体的な話がほかにあるにも関わらず、本丸でない責任準備金をどう分けるかという話ばかりが先行している印象。
  • 直近実績に基づいたシナリオである将来収支分析だけに頼るものでないとは思うが、特に市場において、移転当事会社のいずれかに偏りがある移転ではないかと評価されたときには、その評価によってかなり大きく影響を受ける恐れがあることを申し上げておきたい。
  • 移転後における両保険会社の支払余力について、現状ソルベンシー・マージン比率規制が健全性確保の基準として適当であれば、当該比率が200%を上回ることのみを要件とすれば十分。また個別通知における現実的な対応可能性と、異議を申立てた契約者を引き続き移転元に残しても、契約の移転を行う意味があるのかという点について説明してほしい。
  • 個別通知は極めて丁寧に対応することを考えており、行うことは可能と考えている。一方で異議を申立てた契約者を移転元に残すことは、保険会社の対応として困難が伴う。
  • 個別通知に関しては、膨大なコストとエネルギーを要する他、契約者の立場からみて、平時にいきなり通知が届いたときのインパクトも考える必要がある。現在行っているご契約内容確認等のお知らせとは、内容は相当異なるもの。
  • 異議を申立てた契約者を移転元に残す例は、アメリカにはあるようだが、保険業法において制度化するにはあまり現実的な案とは言えないのではないか。大きなインパクトがあるにも関わらず、契約移転に関する情報提供を公告のみで行うのは、話が逆のような気がする。
  • 異議の有無を確認する際、移転対象契約者に十分な判断材料を提供すべきであり、保険会社において、移転対象契約の切り分けの基準、サービスの影響の在り方、財務諸表の主要な指標又はソルベンシー・マージン比率等の内容の通知による説明義務を課すことが妥当。合理的な範囲で、契約移転への反対意見の背景となっている事項の解消に向けた施策を、保険会社が考察するプロセスを視野に入れても良いのではないか。
  • 保険会社の都合で、ある意味一方的に契約条件を変更させる状況において、納得性がない個人への手当てと、ソルベンシー・マージン等の手段を通じた契約者のガードをどこまで強くする必要があるかということは、セットの議論ではないか。契約者がどうしても嫌だというときに告知のみによって強制的に移転をされる平時の法制は、少々バランスに欠けるのではないか。
  • ソルベンシー・マージン比率について、200%という一般的な健全性の水準は別の問題として、契約者が自分の意思と関係なく契約関係を移されてしまう特殊な状況に鑑みると、それが移転後に下がった水準次第で個別の同意を必要とする制度もあり得るのではないか。また金融庁として、ソルベンシー・マージン比率の落ち幅の許容範囲内という一定の判断が仮にできれば、契約者に対する1つの情報になり得るのではないか。また、異議申立ての効果については、例えば異議を申立てた人に対して、契約関係は移すものの、移転元の会社が連帯保証のようなものをした形にするということもあり得る。その際に移転元会社と移転先会社において、例えば再保険をかけるような合理的なアレンジメントをすれば、異議の発生を抑制できる可能性があり、異議の抑制というものが、そのような合理的なアレンジメントに対するインセンティブにもなるのではないか。異議を述べなかった人は強制的に移されて、一部の異議を述べた人が移転元に残ってしまうと、保険会社が企図した合理化が実現できないことになるので、考えられる対応案についてはもう少し幅広に検討しても良いのではないか。
  • 支払余力に大きな差がないことを要件とする案については、例えば新設会社で非常にキャピタルをたくさん積んでいる会社と通常の会社との間では、この要件だけで移転ができなくなってしまうことから、ソルベンシー・マージンを、参考資料である1つの指標として考えることは別として、あまり強い要件としては考えない方が良い。
  • ソルベンシー・マージン比率という単一指標の特定指標のみに焦点を当て、それに依拠して保険会社の健全性を判断することには限界がある。支払余力については、認可というプロセスを踏む中で、多面的な視点からご判断頂くことも考え得る。
  • ソルベンシー・マージン比率が200%を上回っていれば、支払余力についての審査がオーケーだということについては、移転させられる保険契約者の中に納得できない人が出てくるのではないか。
  • ソルベンシー・マージンが契約の移転によって低下する場合は、移転を認めないという形であれば、移転元において財務体質が低下してきている状態で、良質契約だけを外に切り売りをしていくというような状況の抑止になるのではないか。移転先の支払余力が非常に低いケースについては、移転先が再保険を引き受ければ、異論を唱えた契約者は、最終的に移転先において債務が履行できなくなった場合に移転元の会社が履行していくという形で保全できるのではないか。
  • ソルベンシー・マージンが低下する場合に移転を認めないという案については、ケース毎に事情や程度も異なると考えられ、一律の規定をおくことは困難と考える。
  • 個別通知だけではご納得を頂くことは難しく、不十分。反対した移転対象契約者について、例えばアメリカ型の、例えば再保険なり連帯保証なりという形で、何らかの道を用意しておくことが必要。
  • 集団的同意によって強制的に、支払能力に大きな商品がある種類の契約者に対する契約移転を認めることが、消費者側から見て一番の受け入れられないことではないか。市場としては、移転先のソルベンシー・マージンが下がらないような移転でないと持たないのではないかと懸念される一方で、移転元に残される契約者側にとっては、移転される資産の一部が自分たちの取り分ではないかという疑念が残るのではないか。契約の移転には、やり直しが効かず、再編シナジーについて分配を保障できない一方で、契約者において対象契約を切り間違えられることのリスクは負わされているということが、移転後の両保険会社の支払余力に関わる問題の本質ではないか。
  • 包括移転について、グループ内なら例えば全体としてのリスク許容度などが一定であると考えられ、でき得るのではないかと思われるが、グループを超えて再編するという問題はかなり困難。可能であればグループの中と外とを分けて議論した方が良いのではないか。
  • 包括移転は、実際にはグループ内で使われる可能性が高いと思われるが、従来からグループ外と区別せずに論議されている。
  • グループ内に限った場合、パターンによっては契約の移転が、アームズレングスの取引や利益移転にならないとするような制度の手当てにも、現在のルールだけで踏み込んで良いのかということについては懸念。
  • 平時の保険契約の移転について、グループ外も含めて行うことができるという一般的規定はあるものの、現状具体的なルールがなく、非常に行いにくくなっているので、何らかの要件を立てて、それをできるようにしようというのが、今回のミッションである。グループ内の移転に限って要件を立てるという作業を行うのは困難であり、グループ外も含めて検討する必要がある。
  • 一旦包括移転により子会社という形で切り出されたものは、その後容易に株式の取引でグループ外に売却され得るため、グループ外に出ていかないという制度的な保障ができず、グループ内に限るという前提を置くのは適切でない。
  • 保険契約の切り分けによって契約者が不利益を被る可能性があるという問題に対しては、その原因である情報のギャップについて、手当てすることを考えてはどうか。
  • 一部移転時には、計画や将来の予測に係る情報提供を行うことに加え、移転後、場合によっては連帯保証等によって、移転元の保険会社もその責任を負うことについて、移転対象契約者にある程度理解してもらうことが必要であるという印象。契約の移転後、契約関係のなくなる会社が負う責任については、かなり抜本的な検討が必要。
  • 包括移転に際して起こり得る不法行為に当たるものがあるとすれば、移転先がすぐつぶれてしまったということかと思われるが、それは保険金の支払余力を確保しておけば良い話であり、異議を述べた人に対して連帯保証等の手当てをする範囲をあまり無限に広げていくのはどうかという気はする。
  • アメリカでは、異議を申し立てた契約者は移転元に残れるが、経済的な効果を移転元と移転先が得るために、再保険で当該異議申立によって残った細かい契約を経済的に移転させる方法をとっている。移転先が破綻をした場合は、当該再保険契約自体はなくなるが、異議申立をした人の契約は移転元に残っているので、その人は支払が受けられる。
  • 異議が申立てられた契約の管理を移転先にまとめて再保険に出し、実態としては移転先で管理をすることができるのか、実務の感触を伺いたい。
  • 外国保険会社の日本支店は、全ての契約を移転させた後でも、免許を維持するためには膨大なコストがかかるので、日本を撤退すると決めたらきれいに撤退しないと大変なことになる。通常、包括移転や事業譲渡において、例えば責任準備金や支払備金の見込み違いがあったら、プロフィットロスのシェアリングの条項に基づいて精算することとなっている。
  • 再保険や連帯保証が1つの手段の可能性としてあるということは否定しないが、それらにはコストが必要であり、だれが何のためにそのコストを支払うのかということを考えると、理屈としては難しいのではないか。経営判断として、多数の異議が見込まれ、再保険の手当てをせざるを得ないような移転はすべきではないと思われる。
  • 包括移転をすることが両当事者間で合理的なアレンジメントになったときに、再保険をかけておくことは、たくさん異議が出てくるリスクへの対処として十分正当化できるのではないか。また、外国保険会社の支店が日本を撤退する状況で、異議を述べた人に対して、連帯保証を行ったり、再保険をかけたりするだけであとは何もしない場合、日本の損害保険事業の免許を有していないことによって、ネックになることがあるべきではない。
  • 保険会社は、お支払いまできちんと行っていくことをご契約者に期待されて、ご契約を頂いている。契約者のメリットと保険業界のビジネスチャンスをセットにして考えることが必要。消費者にとってどのようなメリットがあるのか疑問であり、慎重な議論をお願いしたい。
  • 平時の包括移転を広く認める場合、移転元の会社が熱意をなくしているものと同種の保険商品を一生懸命売っている保険会社に移転するという例では、消費者にとってプラスになり得る。しかし、うまくいかなければ移転させてしまうような、無責任な商品開発がなされるリスクが無い訳ではなく、契約者にとってプラスにならない包括移転も当然有り得る。
  • 移転対象契約が寄与した移転元会社の剰余金の分配については、剰余金全体を対象とするのか、契約者が受け取れるであろうと合理的期待を持っている部分を指すのか、どちらもあり得、契約者への寄与分に応じた割り振りの前に考えるべき段階が1つあるのではないか。株式会社については、以前内部留保をしてとっておいたものを、配当で戻すというような実務慣行があるかどうかにも依存してくるが、相互会社の場合には、株式会社化するときに行われる、今までたまった分を全部株式として渡すという処理と同様のものも有り得、両者で差があっても良いところではないか。移転後に生じ得る配当水準の差については、移転から何年か経った後で、移転元に残っていたらもっと配当がもらえていたということは言わせるべきではないが、可能であれば移転元と移転先の配当方針の相違についても、契約者の保護の在り方に照らして、当局で見ることとするのではないか。
  • 株式会社である生命保険会社に対する株主の持ち分を見る上で、配当については一定の配当方針を想定した上で、様々な市場環境の変化をシミュレーションし、将来の利益を割り戻す手法を使うエンベディッド・バリューという指標を使っている。厳格に契約者間の寄与度や公平性の定義をしないとトラブルになりやすいのは株主と契約者間でのコンフリクトの部分と考える。相互会社が株式会社化する事例において、今後もらえる配当ではなく、これまでの内部留保部分に対しての寄与度によって個々の契約者に株式又は現金で分配をする手法がとられており、相互会社で寄与度を計算する方法論は一定確立をされている。
  • 相互会社で包括移転をするときには、自己資本の部分についても分けないとおかしくなるということがはっきりする。移転対象契約者にその寄与度に応じて自己資本部分を渡すことが、合理的であるということではないのか。
  • 保険契約の移転に係る移転対象契約の意義について、移転当時に存在する契約という意味に加えて、同じ保険種類によって過去に契約者であった者の寄与した部分をどう考慮するかという問題があり、どう解釈するか、かなり大きな問題である。
  • 移転元に残る内部留保などについては、支払余力とも関連するので、当該支払余力への影響も勘案しながらその他の剰余金の移転額を決定していくということも必要なのではないか。

以上

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総務企画局企画課保険企画室(内線3557)

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