金融審議会「インサイダー取引規制に関するワーキング・グループ」(第4回)議事録

  • 1.日時:

    平成23年11月4日(金曜日)16時00分~17時02分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館12階 共用第2特別会議室

○神田座長

それでは、時間になりましたので始めさせていただきます。

インサイダー取引規制に関するワーキング・グループ、本日は第4回目の会合ということになります。皆様方には、いつもお忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございます。

早速ですけれども、議事に入ります。お手元の議事次第にありますように、本日は、事務局から、お手元にお配りしました論点メモ、これをご説明いただいた上で、それぞれの論点についてご議論をお願いしたいと思います。

それで、論点メモ、資料1ということになるのですけれども、ちょっと分厚いというか、分量が多いので、3つの項目がありますので、全体を3つに分けてご審議をお願いしたいと思います。

まずは、資料1でいいますと6ページまでになると思いますけれども、1ポツの純粋持株会社等に係る重要事実に関する事項、これについて事務局から論点メモを説明していただいて、ご審議をいただきたいと思います。なお、全般についてですけれども、そろそろ取りまとめを意識したご議論というものをしていただければ大変ありがたく存じます。それでは、増田室長、よろしくお願いします。

○増田市場機能強化室長

では、論点メモ(2)からご説明させていただきます。

まず1つ目でございますが、純粋持株会社等に係る重要事実ということで、前回の論点メモ等の概要と書いてございます。前回、純粋持株会社、及び、それと同様に投資者の投資判断が基本的に連結ベースで行われると考えられる会社につきましては、連結ベースの数値との対比で軽微基準及び重要基準を定めることが適当であるということで、具体的には、連結ベースにより定めるべき会社の範囲について、案1「連結財務諸表提出会社について連結ベースの数値を用いる」、案2「上場会社等単体の売上高のうち、グループ会社からの収益―具体的には製品・商品売上高を除いて、主として配当や経営管理料等から成るもの―が、一定割合以上の会社について連結ベースの数値を用いる」という案がございました。

2ページ目でございますが、まず、案1の連結財務諸表提出会社とする案につきましてでございますが、金商法の開示規制が連結中心の制度になっていることと整合的でありますが、一方で、次のような問題があるのではないかと指摘をしております。

ポツの1つ目でございますが、金商法の開示規制、これは連結中心の制度になってございますが、投資判断に当たって有用な情報の1つとして単体の財務情報についても開示対象となっているところでございます。

また、実務におきましても、「持株会社化などによって、親会社情報の意味が乏しくなっている」との指摘がなされる一方で、信用リスク分析等においては、個別財務諸表についてまだ引き続き重要であるという指摘もなされているところでございます。具体的には、例えば日本証券アナリスト協会さんの意見書で指摘がされているところでございます。

また、上場会社の約9割、日経225構成銘柄で申し上げますと全社が連結財務諸表提出会社でございまして、これらの会社について軽微基準等を連結ベースとしますと、軽微基準等の水準が全般的に上昇、具体的には日経225構成銘柄の上場会社平均で2倍の水準になってしまう。具体的に見ていただきますと、資料2の4ページ目でございます。加重平均をした形で売上高、純資産、3会計年度にわたって示してございますが、連/単比率が約2倍ということでございますので、単純に計算をしますと、軽微基準の水準自体が全般的に2倍に緩和されてしまうという指摘をしております。こういった形で軽微基準等の水準を全般的かつ大幅に緩和することは、投資者の投資判断に影響を及ぼす事実が重要事実から漏れてしまうおそれがないとは言い切れないのではないかということでございます。

それから、論点メモ(2)の3ページ目でございます。上場会社の中には、その関係会社からの収益にほとんど依存していない会社、自ら事業を行っている会社、それから、グループの中でも特に自ら重要な事業を行っている会社がございます。こうした上場会社の株券等の価値を最終的に担保するのが、上場会社が行っている事業からの収益、それに基づく内部留保ということでございますので、仮にその上場会社単体において、その事業に大きなインパクトを与えるような事実が生じた場合に、連結ベースでの影響が限定的であれば、投資者の投資判断に影響を及ぼす影響が軽微であると割り切ることが適当かという指摘をしております。

例えばということで、右の欄に書いてございますが、連結と単体の売上高の比が5倍強となるような会社、例えば資料2の表の中で申し上げますと、93番に日立製作所という会社がございます。106番にTDKという会社がございますが、こちらは8.2倍となってございます。単純計算ではございますが、連結/単体の売上高の比が5倍超となるような会社では、上場会社の単体にその事業収益が半減するような事実が生じたときでも、連結ベースでは1割以下ということでございますので、重要事実に当たらない、具体的には軽微基準に該当するということになってしまうというところがあるのではないかということでございます。

それから、案2でございますが、前回の議論におきまして、計算が複雑になるのではないかというご指摘がございました。それから、連結ベースの対象に該当するか否かが年度ごとで頻繁に変動するのではないかというご指摘もございました。

それらの点につきましては、まず、論点メモ(2)の4ページでございますが、連結ベースの軽微基準等を用いるか否かについては、直近の事業年度の計数に基づいて判断をすることになりますので、基本的に年1回判定すればいいということでございます。併せて、資料3をご覧いただければと思います。計算式を書かせていただいておりますが、算定方法につきましては、上場会社等の売上高、それに占める関係会社からの売上高というのは、決算手続の過程で容易に算出し得る計数でございまして、過重な負担を求めることにはならないのではないかということでございます。

また、2点目の年度ごとに頻繁に変動するかという点でございますが、こちらについては、資料4をご覧いただければと思います。今回特に議論をさせていただいております上場会社の売上高のうち、製品売上高・商品売上高を除外した関係会社からの収益の割合について、特にその割合が高い会社を見てみますと、年度ごとに大きく変動するようなケースはあまり生じておりません。大体数%以内の変動が占めておりまして、10%を超えるような変動というのはごく一部でございます。

それから、3点目の理由でございますが、1、2点とも関連するわけでございますが、一定の数値基準、具体的には軽微基準については、現在用いられているものについても、定期的な再計算や数値の変動が通常生じ得るということから、本件特有の問題ではないのではないかということでございます。

結論として、案2ということが適当ではないかというのが結論でございます。

次の5ページ目でございますが、では、案2の場合に、具体的に収益依存度の水準についてはどのように定めるかということでございますが、一般的にこの売上高に基づく軽微基準と重要基準につきましては、いずれも10%を基準としまして、10%未満しか影響のない事実であれば、投資者の投資判断に及ぼす影響が軽微、または重要でないということで判断をしております。

今回の日経225銘柄について分布を示したものをつくっておりまして、資料5を見ていただきますと、おおむね7割、8割、9割あたりにちょっと分布をして、それから、下でございますと、大体3割、4割以下に分布しております。ということで、大体90%ということであれば、売上高に占める割合が軽微という判断もございますので、90%の層に大体おさまっていると。ただ、先ほども申し上げましたように、年度ごとに依存度の変動が数%ございますので、そのあたりも考慮する必要があるかと。

それから、具体的にこの80%、90%あたりを占める会社で見てみますと、ほぼもう関係会社からの売上げというのが占めているということでございますので、関係会社からの売上げは、特に配当や経営管理料ということでございまして、一方で、それ以外の収入というのは、不動産賃貸収入といった副次的なものが多うございます。こういったことも考えますと、両者の売上げのうち関係会社からのものが、性質的に投資者の投資判断に重要なものとなっているのではないかと。

こういったことを考慮した上で、軽微水準等を連結ベースとすべき関係会社からの収益依存度の水準としては、80%以上とするのが適当ではないかというように考えてございます。

最後、6ページ目でございますが、先ほど少し議論させていただきましたが、年度ごとの変動という議論がございますので、このあたりについて、さらに、2事業年度の収益依存度の平均値を用いることも考えられるのではないかと。ただ、現行の軽微基準等においては、こういった形で複数年度の数値の平均値を用いることは行っておりませんので、一般に数値基準を用いるものについては変動が生じるということもございますので、特に実務上、こういったものが必要だということがあれば別なのですが、まだまだ平均値までとる必要はないのではないかというのが事務局側でまとめさせていただいたメモでございます。

以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは、本日の3つのテーマのうちの1つ目ということになりますけれども、今のご説明につきましてご質問、ご意見等、どなたからでもお願いいたします。いかがでしょうか。阿部委員、どうぞ。

○阿部委員

案2で差し支えないと思いますが、ただ、具体的な数値のとり方で、80%という基準が気になりますのは、資料5の2枚目をご覧いただきますと、明らかに純粋持株会社の形態をとっていると思いますが、42番目の三菱UFJフィナンシャル・グループは、年度変動が若干大きめで、22年3月期は73.1%となっております。今回のWGは純粋持株会社の場合に特別な措置をとるという議論で始まったという理解ですので、ここで三菱UFJフィナンシャル・グループが外れるということになると、純粋持株会社を対象とすることを目的とした金融庁の議論としてはちょっとおかしいのではないかなと思っております。ここは複数年度のとり方でありますが、明らかに純粋持株会社の形態をとっている会社については措置の範囲におさまるような基準にしていただければと思います。

○神田座長

ありがとうございます。小林委員、どうぞ。

○小林委員

案1と案2につきまして、基本的には、証券取引所、今まで連結開示ということを進めてまいりました経緯といったことも含めまして、上場会社、そして、投資者にとっての簡明さ、わかりやすさ、あるいはコンプライアンス側からのリーチの届きやすさといった点から見ますと、案1というのが非常にわかりやすいということは、基本的に言えるのではないかと思っておりますが、一方、今、単体開示の有用性でありますとか、連結によるその希釈化度合い等のご説明を頂戴したところであり、そういったところも勘案しますと、将来的に連結による基準の一元化といったことを見据えつつも、現段階では、その一里塚としまして、一定の会社について案2のような形で整理をするということも、1つ現実的な方策ではなかろうかなと感じたところでございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。平田委員、どうぞ。

○平田委員

今、小林委員がお話をされたことに、まさに私も同感でございます。証券業界のさまざまなその基準も連結で進んでいます。特に我々がルールを持っています引受審査というような面でも、連結での審査というのがかなり進んできているところでありますので、将来的には連結に全面的に移行するというのがあるべき姿だとは思っております。例えば今、こういう形でその基準を考えた場合に、まだまだ親子上場のような状態というのも残っているというようなことを考えますと、いきなりすべて連結の会社だけ、連結の会社については連結で見ますというところは、若干ちょっと行き過ぎ感があるかなということなので、案2という提案は非常にリーズナブルな提案ではないかと思います。

ただ、当然ながら、すべてのものが連結で見るんだというような状況に移行していくのであれば、当然ながらそういうことも勘案して、わりと近い将来見直しをするというふうなことも念頭に置いた議論にしていただければなと思っております。

○神田座長

どうもありがとうございました。では、田中委員、静委員の順でお願いします。

○田中委員

事務局がまとめていただいたこの案2でいいと思います。理由に関しては、もう皆さんおっしゃられているのであえて説明しませんが、案2でいいと思います。

○神田座長

どうもありがとうございます。静委員、どうぞ。

○静委員

ありがとうございます。私は、何度も申し上げましたけれども、基本的には、やはり軽微基準は連結ベースに移行すべきではないかとは思っております。しかしながら、20年以上も単体の数字を軽微基準に使ってきたという経緯もございますし、神田座長がご指摘になったように、検討の時間も限られてございますので、今回、案2で当面の問題に対処するということで、よろしいかと思います。

ただ、投資家は、基本的にはもう連結で投資判断を行っていると言っていますし、そうなっている以上は、基本の発想は連結ベースとしたうえで、単体で残らざるを得ないところはどこなのかということを検討するのが本筋だと思います。それから、これは犯罪の構成要件にも使われておりますので、単体の数値というのは、ご存じのとおり、子会社を使った操作がしやすいという欠点も持っておりますので、こういうものをいつまでも犯罪の構成要件として堂々と使い続けるのはどうかと思っております。したがいまして、今回は無理だということはよくわかりましたけれども、将来、本格的な見直しが行われるように期待をしたいと思います。

以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。川口委員、どうぞ。

○川口委員

皆さん、案2ということのようですので、これ以上、私も言う必要がないのかなという気もするのですけれども、第1回目の会合などで問題提起がなされたときに、純粋持株会社などの会社の売上は、子会社からの配当とか、経営管理料といったものが大半で、しかも、必ずしも子会社の業績を反映して決定されているのではないということと、同時に、実際上、投資家は持株会社単体ではなくて、子会社の動向を含めたグループ全体で持株会社の株式を評価しているという紹介がなされたかと思います。両方ともなるほどと思うのですが、後者、グループ全体で判断をするという点を強調するならば、連結財務諸表の提出を基礎とした連結ベースで基準を考えるというのが整合的というふうにも思います。

しかしながら、前者ですが、売上高のうち配当などが占める割合が高いという点が非常に特殊な例なんだという問題提起だったと思っておりますので、そういう特殊性を強調するならば、そのような会社について考慮すれば足りると思っております。

純粋持株会社であれば別ですけれども、自ら事業を行っていて、その売上げの中でかなりの部分をその事業が占めているというような場合には、連結ベースでやってしまうのは、やはり投資者保護の観点から規制すべき対象を漏らしてしまうという可能性が私もあるのではないかと思います。

他方で、この方法は、複雑であるとか、算定しにくいとかという指摘があったかと思いますが、これは前回も申し上げましたとおり、通常今までもやってきているようなレベルの話ではないかと思いますので、決定的な欠点にはならないと思っております。

○神田座長

どうもありがとうございました。川田委員、どうぞ。

○川田委員

基本的にこの案2で賛成でございます。やっぱりここで必要な観点といいますのは、投資家がどう判断をしているのか、連結ベースなのか、あるいは事業のその周囲についても関心を持っているのかというところを考えますと、この案2がふさわしかなと思っております。

それから、もう1つなんですけれども、この投資家観点というのが1つありますけれども、もう1つは、東証開示基準、例えば証券取引所の開示基準の整合性というのは、非常に私ども、今まで不便さを感じておりましたので、一歩でも二歩でもその開示基準との考え方の整合性がとれれば、私どもとしても非常に利用しやすいといいますか、考え方の整理がつくと思っておりますので、案2に賛成したいと、そう思っております。

○神田座長

どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。上柳委員、どうぞ。

○上柳委員

私は、そもそも純粋持株会社についてどこまで、ある意味で規制を合理化する必要性があるだろうかということについて、まだ十分納得しているわけではないんですけれども、ただ、少なくとも理屈、あるいは投資家の保護という観点から見ても、少なくとも純粋持株会社については、このような規制が改定されるということはあり得ることかなと思っております。その場合に100%ではなく、それに準ずるもの、今日のご説明では、軽微基準の水準そのほかで、これは何の10%かというのはなかなか難しいんですが、いわゆるその10%という数字がありまして、これについては、変動の範囲内でということで許容されていますので、その数字を使われることも、これも理屈的にはあり得るかなと思っております。

ただ、今日のご説明の中で、最初のほうで持株会社について、全体の平均をとると2.0になるというご説明があったんですが、これはほかの資料から見ても明らかなように、いわゆる純粋持株会社に近いものと事業会社が子会社をお持ちのものと大きく2つに山が分かれているので、その間を全部平均して説明するとかえって誤解を招くというか、私みたいな人間が揚げ足をとるのではないかと思いますので、端的に実態を説明されるほうがよいのではないかと思います。

それから、もう1つは、その80%基準も、1つの会社については、これは何かご事情があるんだと思いますし、ご説明あるかとは思いますけれども、それは無視して、もし必要があれば、その会社が考えられることだと思いますので、私は、9割というか、90%でよいのではないかと思います。

その関係で今、ちょっと気がついたんですが、資料5に、もう1つ富士電機が載っているんですが、資料5の下から4つ目、41番として載っているんですが、この数字はどうも、資料4の数字とは少し違うようなので、何かどうも、この42番の会社だけが8割や7割のところのように見えるのですが、そこも含めて9割でいいのではないかなと思いました。

以上です。

○神田座長

今の点について、事務局から発言はありますでしょうか。

○増田市場機能強化室長

今の点について申し上げますと、資料4は、製品売上高を引いた形ではない数字で出しておりまして、資料5は、製品売上高を引いた形で出しておりますので、そこでちょっと数字が違ってきております。

○神田座長

ありがとうございます。よろしいでしょうか。ほかにいかがでしょうか。

そうしますと、大体皆様方、状況をお察しいただいてというか…。確かにロジカルに考えると、連結ベースというのがわかりやすいという面もあるのですけれども、実態を踏まえると、この資料に書いてあるようなことですので、まあ、そこは将来の課題ということで、今回は、案2をベースにいくということでよろしゅうございますでしょうか。

ありがとうございます。

それで、確かに、何というのでしょうか、軽微基準自体をどう考えるかという問題がありそうですね。インサイダー取引自体の要件というか、制度のつくり方が、昭和63年に導入されたときは罰金50万円、懲役6カ月という、そういう制度で導入されたわけですけども、その後、状況は様変わりして、今では、罰則も非常に強化されて、かつ課徴金制度も入りましたので、そういう意味では、インサイダー取引規制、軽微基準つきの規制というか、そういう要件、そして、東証の開示ルール等との関係も、本当は大きな話としては、考え直すというと言い過ぎかもしれませんけれども、もう一度考える必要がおそらくあるとは思うのですね。ただ、いずれにしましても、そうしたことは将来の課題ということで、また、引き続きご検討いただくということにしてはどうかと思います。

そうしますと、案2をベースにいくということなのですが、資料でいいますと5ページ目と6ページ目に書いてあることについて、もし追加でご意見をいただけますとありがたく思います。今までのところでは阿部委員からご指摘いただきました。それから、川田委員からも、東証の開示ルールとの調整、これは今後やっていただくということでご指摘いただきました。それから、上柳委員から、90%なのか、80%なのかというようなあたりのご指摘もあったかと思います。これは、さらに事務局で5ページ、6ページは詰めて、また次回ご報告していただきたいと思いますけど、もし、本日、何かお気づきの点があれば、ぜひお聞かせいただけるとありがたいと思いますけれども、いかがでしょうか。大崎委員、どうぞ。

○大崎委員

90%か80%か、はたまた70%かというのはちょっと引き続きご検討いただきたいのですけれども、6ページで書いておられるように、2事業年度の収益依存度の平均値を用いることについては、そこまでやるかというニュアンスで書かれていますが、私も、これはちょっと制度を過剰に複雑にするんで、1つの値をぱっと決めて、ある年だけひっかかるという、ひっかからない─ひっかかるという言い方はよくないかもしれない―ある年は該当するし、ある年は該当しないという会社が出ても、それは仕方がないのかなと思います。

○神田座長

どうもありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。どうぞ、阿部委員。

○阿部委員

前回申し上げたのですが、年度ごとに対象になるかならないかが変わるというのは混乱を招くと思いますので、もしそういうことであれば、逆に80%を75%ないし70%まで引き下げることも、ご検討いただければと存じます。

○神田座長

ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

それでは、いただきましたご指摘を踏まえて事務局でさらに詰めていただくということで、また、ご発言いただいた委員の方には個別にご相談をさせていただくかもしれませんけれども、そういうことで、先へ進ませていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

それでは、本日の2点目になろうかと思いますけれども、これは、資料でいいますと11ページまでになりますかね。組織再編による保有株式の承継についての審議をお願いしたいと思います。まず、事務局から論点メモの説明をお願いします。

○増田市場機能強化室長

では、2つ目でございます。組織再編による保有株式の承継ということでございます。前回の論点メモ等の概要を書かせていただいておりますが、端的に論点からご説明させていただきます。

論点1でございますが、承継資産に占める上場株券等の割合をどのように定めるかということでございます。以下の考え方に基づきまして、20%未満の場合には、証券取引としての性質が乏しく、インサイダー取引に利用される危険性が類型的に低いと考えられるのではないかということで整理させていただいています。

8ページ目でございますが、会社法上、組織再編行為は会社の基礎的変更に当たるということで、原則として株主総会の特別決議が必要とされております。一方、事業譲渡や会社分割による承継資産が総資産の20%を超えない場合につきましては、譲渡会社や分割会社における株主総会決議は不要とされております。簡易手続ということでございますが、これは組織再編を行おうとする会社にとってインパクトが小さく、基礎的変更とは言えない組織再編については、株主総会決議を要求する必要性が乏しいという考え方でございまして、この考え方を敷衍いたしまして、組織再編による承継資産のうち20%を超えないものについては、全体の承継資産について重要性が低いと考えられるのではないかということでございます。

また、もう1つ、承継資産の大宗が対象株券等以外の場合、具体的には20%を超えない場合につきましては、当該株券等の発行会社の株価に大きな影響を与えるような重要事実が仮に発生したとしましても、承継対価全体に与える影響は小さいと。具体的には、(注)で書いてございますが、例えば当該株券等の価値が半減するような事象が生じたとしても、承継資産全体に占める影響としては10%程度の影響ということになるということでございます。

それから、次のページでございますが、前回ご議論ございましたように、事業譲渡・会社分割と合併との場合で基準を分ける考えもあり得るのではないかというご指摘がございました。事業譲渡や会社分割の場合につきましては、会社資産の全部を必ずしも承継するものではないということで、承継対象となる資産を選択する余地があるということでございます。この点についてでございますが、事業譲渡や会社分割についても、承継資産が多くなりますほど、合併に近い性質を有するということで、例えば事業の全部譲渡については合併と同じような手続が要求されるところでもございます。そういうことでございますので、事業譲渡等であっても、承継資産の内容によって、合併に近い性質のものやそうでないものもあり得るということで、一律に合併とそれ以外を分けるということは適当ではないのではないかということでございます。

また、合併につきましても、承継資産に占める上場株券の割合が一定以上の場合につきましては、やはり全体としては証券取引としての性質を帯び得るということでございますので、事業譲渡等の場合と同様でございます。

また、合併につきましても、これはやり方ではございますが、事前に資産の一部を他の会社に移した上で合併を行うということはあり得ますので、選択的に資産を継承することも可能であるということでございますので、両者を分けない形で整理してはどうかということでございます。

それから、論点2でございますが、前回ご議論ございましたが、重要事実を知る前であれば、適用除外とするという整理の場合につきまして、重要事実を知る前の契約ということについての定義でございます。

現在のインサイダー取引規制におきましても、未公表の重要事実を知って売買等を行うことを禁止しておりますが、その既遂時期については、売買等の契約が成立することにより既遂になるという整理がされております。今回の例に関して申し上げますと、組織再編に関しては、会社の資産を承継する取引が合併契約等の締結によって成立いたしまして、その後の株主総会の承認等を経て、組織再編が実施されることになりますので、インサイダー取引の規制違反となるのは、会社関係者が未公表の重要事実を知って合併契約等を締結する行為ということでございますので、今回の例に関して申し上げますと、重要事実を知る前に締結した合併契約等に基づいて継承を行うことは、インサイダー取引規制の適用が除外になるということでございます。

具体的に問題になりますのが、次のページです。それでは、それより前の段階である重要事実を知る前の取締役会決議を起源としてはどうかという指摘が前回ございました。未公表の重要事実を知る前の取締役会におきまして、合併契約等の決定、具体的に承継対価が決定されるということがなされていれば、その後、契約締結までの間に会社関係者が未公表の重要事実を知ったとしても、重要事実を知ったこととは無関係に株券等の承継が行われると考えられますので、証券市場の公正性・健全性に対する一般投資家の信頼を損なうものではないと考えられます。

また、組織再編に関しましては、長期間等の交渉等を経て積み重ねた上で合意に至るということと、それから、取締役会で合併契約等の決定がなされた後においても、仮にインサイダー取引規制を適用していくとすると、むしろ円滑な組織再編に支障を生じさせることにもなりかねないという危惧もございます。

こういった点も踏まえまして、合併契約等を決定する、あくまでも最終のでございますが、最終の取締役会決議に基づいて組織再編行為を行う場合には、インサイダー取引規制を適用除外とすることが適切ではないかということで整理させていただいております。

以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。

論点1と2がありまして、1は、線の引き方であり、2は、いわゆる知る前契約、あるいは知る前決議という話かと思います。どちらの点についてでも結構ですので、皆様方からご質問、ご意見をお出しいただきたいと思います。いかがでしょうか。阿部委員、どうぞ。

○阿部委員

最初の問題設定とはやや結論が違ってきているようですが、この考え方そのものは、論点1、2ともわかります。ただ、論点1について、また数字の問題で恐縮ですが、20%未満というのは、もう少し高い数字がいいのではないかと思うのですけど、いかがでしょうか。

○神田座長

ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。どうぞ、大崎委員。

○大崎委員

質問なんですけども、論点2で、重要事実を知る前の取締役会決議に基づいてなされる場合は、インサイダー取引には該当しないということになるということですが、そうしますと、取締役会決議をした後で知った重要事実について、会社としては、その重要事実を知ったということや、その重要事実の公表を促したりする、相手方に促したりするような必要もないという理解でよろしいんでしょうかね。

○増田市場機能強化室長

具体的にその公表自体は、適時開示とかいろいろありますし、やらなければいけないという点は別途あるんですけれども、今回のそのインサイダー取引の適用除外という考え方の起点としては、取締役会決議を起点にしようということでございます。

○神田座長

よろしいですか。組織再編行為の話です。個別に株式を取引する場合は別です。

○大崎委員

はいはい。いや…。

○神田座長

今の点でも、ほかの点でも結構です。いかがでしょうか。

○大崎委員

いや、ちょっとしつこいようですけど、つまり、適時開示が行われない状況でそのままディールが進んだとしても、それはインサイダー取引に当たらないということになるんですよね。

○増田市場機能強化室長

そういうことではなくて、公表するかどうかは適時開示ルールにのってやっていますので、それ以降に知ったとしても取引をやめる必要がないという、そういう意味でございますので。

○大崎委員

なるほどね。

○増田市場機能強化室長

はい。

○神田座長

ちょっと技術的にわかりにくいですかね。一般に、でも、知る前契約がそうですよね、大崎委員のように言えば。その後、開示するかどうかは確かに適時開示の問題ではありますけれども、知る前契約をそのまま履行しても、そのことをもってインサイダー取引規制違反になりませんということです。

今の点でも結構です。それから、ほかの点でも結構なのですけども、いかがでしょうか。どうぞ、川田委員。

○川田委員

よろしいでしょうか。実際、私ども、組織再編行為、何回か過去やった経験から申し上げますと、実は、継承対価が決定される合併契約書の最終の取締役会決議以前に、実は、合併のMOUとか、あるいはその合併以前に両社が合併するという事実は、まずは取締役会決議をして発表し、その後、デューデリジェンスを繰り返しながら、問題なければ、最終的に合併契約書の締結に関する取締役会決議を経て、また公表すると、こういう手順を踏んでいるわけですね。

実は、その最終の取締役会決議以降は、その適用がないというのは非常に実はわかりやすいように思うんですけれども、一方において、その決める前の取締役会、MOU、何というか、合併に関する覚書のときにも既に取締役会決議をしていまして、事実上の合併は開始されているんですね。で、その後に重要事実を知った場合でもどうなるのかという問題は残るのかなと、こういう思いがあります。

確かに対価は決めてないんですけれども、もう公表しているわけですし、もう両者が、よっぽどの事情の変更がない限りは、合併は、事業再編は行われるわけですね。最初のMOUの段階以後ですけれども。そうなりますと、むしろ最終の取締役会決議というのがやや狭く感じるところもあるんですけれども、それはいかがなんでしょうか。

○増田市場機能強化室長

やはり承継対価の決定というのは非常に重要ですし、やはりそれまでに事実が変わってくる可能性もあるわけですので、今回、知る前契約ということよりも、若干前にこの基準も設定させていただいておりますので、あくまでも最終で整理をさせていただくのがいいんじゃないかなということで考えておりますけれども。

○神田座長

資料の案が、そういう今、ご説明のあったところでどうかということであるのですけども。ほかの委員の方々、いかがでしょうか。今の点でも、別の点でも結構です。どうぞ、川口委員。

○川口委員

これも確認だけなんですけれども、日本のインサイダー取引規制では、業務執行を決定する機関が決定したという段階で重要事実になるという建て付けになっていますけど、その業務執行を決定する機関というのがさかのぼるとどこまでいくのかというのが問題になります。今回のケースも、知る前契約の決定機関が問題となり得るかと思いますが、それを取締役会と決めてしまうという理解でよろしいでしょうか。

○増田市場機能強化室長

こちらは、取締役会決議というのをもって知る前契約の時点を議論しているものでございますので、その重要事実の、また○○についての決定というところでございますけれども、そこはやはり最高裁判例もございますので、別途の判断ということになるかと思いますので、そこはちょっと逆に解釈でまた出てくるかと思いますし、今回、あくまでもこの知る前契約、今の知る前契約との並びでいうと、契約段階ではなく、一歩前の取締役会決議という、それはあくまでもその議事録とかで確認もできるというものをもって判断してはどうかということでございます。

○神田座長

よろしいでしょうか。ほかにいかがでしょうか。上柳委員、どうぞ。

○上柳委員

知る前契約というぐらいですから、契約なのではないかと思うんですが、ただし、確かに実質的には対価が決定していれば、その実質的な問題はないのでこういうことはあり得るかなと思います。

ただ、今までご議論があったように、本当に、じゃあ、いつが最終なのかとか、実質的に決めていればいいんじゃないかとか、ご発言の中で、対価がMOUの段階でも実質的にはいろいろ当事者間ではいろんな計算をされているし、それから、大まかな対価的なことも決めておられる場合はあるとは思うんですけれども、やっぱりそれは最終的には変わる、あるいは実際に変わってしまう問題だと思うので、最終、あるいは承継対価を決定する最終の取締役会決議より前にさかのぼることはないのではないかと思うのですが、実際のところは、改正するとしてこの規定を皆さん使われるんですかね。やっぱり危ないから契約のときにとされるような気もしないこともないんですが、以上のような感想です。

○神田座長

ありがとうございます。どうぞ、田中委員。

○田中委員

この論点1、論点2に関して、それぞれいろいろな観点はあるかと思うんですが、実務的に考えた場合、事務局で整理していただいた1、2の結論で問題ないと思いますので、この事務局案で賛成です。

○神田座長

どうもありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。神作委員、どうぞ。

○神作委員

論点1につきまして、組織再編における承継資産に占める上場株券等の割合に係る規制に関して発言申し上げます。ご提案の理由として、承継資産に占める上場株券等の割合が20%未満の場合には証券取引としての性質が乏しく、インサイダー取引に利用される危険性が類型的に低いというご説明がなされています。20%の根拠として、全体の承継資産にとっての重要性が低いというわけですが、現行規制の下では、事業譲渡の場合にはこのような軽微基準はないものと理解しています。そうであるとすると、事業譲渡の場合との規制の平仄が新たな問題となるように思われますが…。

○神田座長

そろえるということだと思いますが…。

○増田市場機能強化室長

そろえさせていただきます。

○神作委員

ここは、組織再編行為と事業譲渡で規制をそろえるわけですね。私がちょっと気になりましたのは、報告書案の最初のところで中立的な規制とするということがうたわれておりまして、論点1に掲げられている理由で両者を異なって取り扱うことにすると、規制の中立性の確保という目的が達成できないのではないかと思われましたので、ご質問させていただきました。両者をそろえるというご趣旨であるということで、よくわかりました。

○神田座長

ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

そうしますと、このテーマというのでしょうかね、につきましても、論点1、論点2というこの線で、基本的には皆様方のご了解がいただけそうでありまして、あと、阿部委員から指摘のあった点、上柳委員から指摘のあった点、あと、知る前、こういう制度になれば、知る前契約等と呼ばないといけなくなるのだとは思いますけれども、そういった細かな点は、さらに事務局で、実現可能で、かつ実際に動かせるような制度に向けた検討を進めていただくということになろうかと思います。

そういう方向で、さらに具体的に詰めていく上でご注意、あるいはお気づきの点がありましたら、お聞きしたいと思いますけれども、本日でなくても結構ですけれども、いかがでしょうか。よろしゅうございますか。

それでは、どうもありがとうございました。本日のご指摘を踏まえて、この資料の線でさらに事務局で詰めていただくということにさせていただきたいと思います。

それでは、3番目のテーマになりますけれども、残りですね、12ページ以降になります。発行者以外の者が行う公開買付けに関する公表措置についての事項に審議を移らせていただきます。事務局から、まず、論点メモの説明をお願いします。

○増田市場機能強化室長

では、12ページでございますが、今回、議論させていただきますのは、公開買付者等関係者によるインサイダー取引規制でございます。右側の欄に書いてございますように、公開買付け等には、発行者以外の者による株券等の公開買付けとそれに準ずる買集め行為、それから、発行者による上場株券等の公開買付けの3種類がございます。現在、重要事実の公表措置としましては、1、2、3ということで書かせていただいておりますのが、特に今回議論させていただきますのは、3の上場会社等が、取引所の規則で定めるところにより、重要事実等を取引所に通知し、当該取引所において公衆縦覧されたことということでございます。

この点につきましては、次のページでございますが、いわゆる発行者以外の者による株券等の公開買付けを行います、他社株TOBということでございますが、それから、それに準ずる買集め行為については、3の、いわゆるTDnetにより開示が認められていないというところがございます。他社株TOBを行う者ということでいいますと、上場会社以外の者が含まれるということがあって、いわゆる発行者による自社株TOBの場合については、これが認められているわけでございますが、発行者以外の者による他社株TOBについては認められていないという現状がございます。

この点について、第1回でも委員からご指摘をいただきましたので、現行制度の問題点ということで整理をさせていただいておりますのが、他社株TOBにつきましては、実務上、上場会社が取引所の適時開示ルールに則ってTDnetを使って、TOBの開始前にその決定事実、または賛同表明を公表するのが一般的とされてございます。しかし、当該公表措置については、インサイダー取引規制上の公表措置に該当しないとされておりますので、当該公表後であっても、アナリストに説明ができない。仮に説明したとすると、インサイダー取引規制上の第一次情報受領者を生じさせるということになりますので、そういった措置をとっておられるところもありまして、むしろ、企業の情報開示を妨げているのではないかというご指摘をいただいておりました。

論点でございますが、他社株TOBについても、発行者による自社株TOBと同様に、取引所の規則で定めるところ、いわゆるTDnetを通じて開示をするものについても、インサイダー取引規制上は、事実の公表があったとして取り扱うことができないかという論点でございます。

2つに分けて議論させていただきますが、次のページでございますが、まず、上場会社によって他社株TOBを実施する場合。先ほど申し上げましたが、上場会社が自社株TOBをする場合については、既に取引所の規則に基づくTDnetによる開示をもって、インサイダー取引規制の適用が解除される公表措置となっております。

インサイダー取引規制に係る公表措置につきましては、一般の投資家が会社関係者等と対等な立場により投資判断し得るだけの事実が公表されたものとして、売買等の禁止を解除するという建て付けになってございます。その公表方法につきましては、一般投資家と会社関係者等との間で、情報の非対称性が解消されたとみなし得る周知性があるか否かということでございます。この点、先ほど申し上げましたが、実務におきましても、取引所の規則で定められているところによりまして、通知・公衆縦覧というのは、投資者に公平・平等に情報が開示されているということでございます。これについて、現行では自社株TOBにしか認められてないわけでございますが、他社株TOBについても認めるということがあり得るのではないかということが論点でございます。

なお、公表ということで申し上げますと、公開買付けを行う上場会社と非上場会社で適時開示のシステムを使えないというところが出てまいります。この点について、公表措置の利用範囲が異なること自体は、利用可能な手段を用いているという点では問題ないのではないかとも考えられますのが、次のページの15ページ以降について、改めて論点ということで整理をさせていただきますと、非上場会社による他社株TOBにつきましては、具体的に同じような形で認める可能性がないのかということでございます。

この点につきましては、非上場会社というのは、取引所の自主規制の対象でもないということもございまして、通知内容の真実性について十分管理することができないのではないか、あるいはシステムの問題という点もございます。この点につきましては、公開買付対象者となる上場会社との連名によって、非上場会社が他社株TOBを公表する場合であれば、当該上場会社に対する取引所の管理を通じまして、事実上、通知内容について一定の管理を行うことになるため、公表内容の正確性は基本的に確保されるのではないかということでございます。

他方、実務においては、公開買付対象者である上場会社がTOBの賛否を表明する。これも適時開示のルールに基づいて適時開示されているわけでございますが、その際に、公開買付者のプレスリリース、具体的には今の問題で申し上げますと、非上場会社のプレスリリースを添付するケースがございます。このプレスリリースの添付をもって公表措置とできないかというところも論点になるかと思いますが、やはり公表主体としては、あくまでも上場会社が、TOBを受けた側の上場会社側が公表主体となりますし、添付という形でなされている公表ということをもって、公表措置としてまで認めるのは不適当ではないかということでございます。

以上が事務局からの説明でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。それでは、ご質問、ご意見をお願いします。田中委員、どうぞ。

○田中委員

今回このようにまとめていただきまして、ありがとうございます。実務上、ちょっといろいろと問題があった制度でありましたので、それをこのようにまとめていただきましてありがとうございます。この論点1、論点2に関して、このようにしていただければ、実務上弊害がなくなるということで、大変ありがたいと思います。

さらに、今後の課題といたしまして、取引所にはぜひ検討していただきたいことがあります。情報の伝達方法は、ITの進歩により、従来は新聞だったのが、このTDnetも使えるようになってきました。そういう面では、今回、この論点2のところで、非上場会社の場合は、取引所が管理できないから、上場会社以外はTDnetにアクセスできないという形になっていますが、今後の通信手段のさらなる進展を考えると、非上場会社でもこのTDnetをどういうふうに活用できるか、そのためにはどういうふうな管理をしなければいけないか、この辺をぜひ今後検討していただければと思います。

今回の論点に関しては、この原案、この事務局案で賛成です。以上です。

○神田座長

どうもありがとうございました。静委員、どうぞ。

○静委員

ありがとうございます。この問題は、第1回目のときに田中委員がご指摘になった問題だと思いますし、関係者の方、皆さんお困りだろうと思いますので、このペーパーの線に沿って解決を図るということで、基本的にはよろしいのではないかと思います。

その上で、論点1、2と分けていただきましたけれども、2について2点ほど申し上げたいと思います。

まず、1点目でございます。これまでは公開買付けをする人が自分で記者発表して、それから12時間たつと公表されたということになって、売買ができるけれど、それまではだめだったということでございますけれども、この案によりますと、今後は、TDnetに掲載すると直ちに売買ができるようになるということでございますので、その点を悪用されて困ることがないかどうかということにつきまして、少々気になっております。と申しますのも、基本的には、だれが公開買付けを行う場合でも同じ問題だとは思うのですけれども、特に、非上場会社が公開買付けをする場合には、よくよく考えてみると、正体不明の会社だったり、ファンドだったりするということもあり得る話でございますので、それで、そういう方々がTDnetに上場会社と一緒に情報を載せたからといって、すぐに売買できるということにしてしまって、本当に問題がないのかどうかということにつきましては、一度よく整理していただく必要があるのではないかというような気もいたします。それが1点目でございます。

もう1点は、これはどちらかというと、客観的にどっちがいいかという話ではなくて、TDnetというシステムを運営している当事者として、おそらく小林委員も同じ立場だと思うのですけれども、強いお願いをしたいと思っております。

それは、この案では、公開買付者と上場会社とで連名で開示をした場合に、即時公表されるということが提案されているわけでございますけれども、その連名の資料というのは、これはあくまでも上場会社が公開をしたものであって、公開買付者が公開したものではない、という建て付けにしていただけないかということでございます。私の案として申し上げますと、掲載される資料は、あくまで上場会社が公開したものなんだけれども、上場会社が両者連名で資料を公開した場合には、法令上は公開買付者が公開をしたわけじゃないのだけれども、そうみなす、というような取り扱いができないだろうかと考えてございます。

何でそんなことにこだわるのか、皆さん不思議に思われるかもしれませんが、このTDnetというのは、実は内外の主要な報道機関が皆、利用している共同のシステムになってございます。彼らは、上場会社がつくった資料を取引所がしっかり管理して、その結果の情報だけがここに掲載されるというふうに信頼をしているわけでございます。そういう前提でTDnetを利用しておりますので、TDnetに掲載されたものを自動的に自分の報道のニュースとして流すというようなところまでありますから、これを裏切るような可能性があるようなことをやってしまいますと、彼らの理解が、なかなか得られないだろうという問題を含んでいると思います。

しかも、もっと言えば、大量保有報告書で実例があったように、真偽不明の情報が掲載されたりしたら、どういう根拠で上場会社に訂正を求めることができるんだろうかとか、公開買付者が公開をした情報の責任を、その上場会社に対して、おまえが責任をとれというふうに言うことができるのか、といった問題にまで飛び火する可能性を考えますと、収拾がつかなくなってしまうおそれがあります。悪くしますと、大量保有報告書のときよりも深刻な問題に発展してしまう可能性も否定できないのだろうと思います。私どもとしましては、この問題の解決にぜひ協力したいと思っておるわけでございますけれども、やり方の問題1つで解決が遠のいてしまうということでは、本末転倒になってしまうのではないかと思います。この点につきましては、特に知恵を絞っていただきまして、私どもにあとはやってくれということではなくて、法令のレベルでご解決いただけるように、お願いを強く申し上げたいと思います。

以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。大崎委員、それから、阿部委員、小林委員の順でお願いします。

○大崎委員

今の静委員のご発言と関連するような気がいたしますが、私も、こういうことを見直す必要があるということについては、全くそのとおりだと思うのですけど、若干気になりましたのが、1つは、先ほどの連名で開示をするという点でございまして、静委員がご指摘のような点とともに、もう1つ気になるのは、公開買付けというのは、いわゆる友好的な場合と敵対的な場合がどうしてもあるわけでありますけれども、例えば敵対、これ、基本的には連名で、しかも、上場会社自身が開示をするということですから、上場会社が開示に関して協力的であるということが大前提になっていると思うのですけれども、それが得られないような場合と得られた場合では、結局その公表となって…、もちろん敵対的であっても、かける側は当然記者発表すると思いますので、永遠にわからないということはもちろんあり得ないわけですけれども、公表の時点が技術的に異なってくるということになるわけですが、で、私は、そのこと自体がおかしいと言っているんじゃないんですが、そのことによって何か非常に不合理なことや、あるいは市場を混乱させるような行動が非常に容易にできるというようなことはないのかというのはちょっと、何というのですかね、机上演習的に頭の体操をぜひやってみられていただきたいということが1つ要望でございます。

それから、もう1つは確認なんですが、ここでは非上場会社と書かれているんですけれども、これには、要するに、上場会社以外の者はすべて含まれるという理解でよろしいんでしょうか。

○増田市場機能強化室長

そうですね、はい。

○神田座長

ありがとうございます。後者はそのとおりですね。表現が上場会社以外の者というべきだと思いますね。阿部委員、どうぞ。

○阿部委員

論点1、2ともこの結論でいいかと思いますが、先ほどの静委員のご指摘は、そのとおりでありまして、金融庁で対応して頂きたいということに尽きるかと思います。取引所について、最近、強いご期待があるようですが、やはり法令で担保すべきことは担保していただきたいと思います。

○神田座長

ありがとうございます。小林委員、どうぞ。

○小林委員

現実的なところで申し上げますと、やはり静委員、大崎委員、お話しされていたように、これを実務的に解決していくということは大変重要なことだと思っておりますが、連名での公表ということについては、非友好的なTOBといったことになりますと、連名を取引所規則上で担保しようとすると、遵守できない状況が発生してしまうといったこととどういうふうに整合をつけていくかという、非常に悩ましい問題が出てこようかと思いますので、そういったところについても、ぜひ法令等のご検討方をいただければ大変ありがたいと思っております。

○神田座長

どうもありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。

そうしますと、基本的にはこの線でいくということで、静委員、ご指摘の点、それから、大崎委員のご心配と阿部委員のご指摘の点等、これは、結局TDnetでやるということですと、取引所が提供しているシステムであるということですので、資料でいうと、15ページにあることを具体的にやれるように、さらに事務局で取引所ともご相談していただいて詰めていただくということですかね。

○増田市場機能強化室長

はい。

○神田座長

それでは、そういうことで進ませていただきたいと思います。

本日は、思いのほかスムーズにご議論をいただきまして、大変ありがとうございました。全般につきまして、さらに追加でご発言があれば、ここでお聞きしたいと思いますけれども、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。

それでは、本日いただきました貴重なご指摘、ご議論を踏まえまして、今後は報告書の取りまとめに向けたご議論をお願いしたいと思います。本日は、お示しした資料1の方向性については基本的にはご了解をいただいたということにして、さらにそれを具体的に詰めるというところについて、事務局で引き続き検討して、皆様方には今後そこを追加的にご議論いただき、最終的には報告書を取りまとめると、こういう段取りに進ませていただきたいと思います。

それでは、最後に、事務局からご連絡等お願いします。

○増田市場機能強化室長

次回のワーキング・グループの日程でございますが、皆様のご都合を踏まえた上で、後日事務局よりご案内させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは、本日は、以上をもちまして、閉会とさせていただきます。どうもありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局市場課市場機能強化室(内線3607、2622)

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