金融審議会「インサイダー取引規制に関するワーキング・グループ」(第1回)議事録

1.日時:

平成24年7月31日(火曜日)10時00分~11時38分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室

○増田市場機能強化室長

ワーキング・グループの開催に先立ちまして、お手元の資料の確認をさせていただきます。

資料1としましてメンバー名簿、資料2は諮問事項、資料3はインサイダー取引規制の概要、資料4はインサイダー取引に関する課徴金勧告及び告発の状況、資料5は主な論点でございます。ご確認をお願いいたします。

○神田座長

よろしゅうございますでしょうか。

それでは、ただいまから、インサイダー取引規制に関するワーキング・グループの第1回会合を開催させていただきます。皆様方には、ご多忙のところを、お集まりいただきまして、大変ありがとうございます。

私、吉野直行金融審議会会長・金融分科会長からご指名をいただきまして、このワーキング・グループの座長を務めさせていただきます、東京大学の神田と申します。よろしくお願いいたします。

それでは、初めに、このワーキング・グループについて、若干ご説明をさせていただきます。このワーキング・グループは、本年7月4日に開催されました金融審議会の総会、金融分科会の合同会合におきまして、大臣から諮問をいただきましたインサイダー取引規制の見直しについて調査審議を行うために設置されたものであります。

諮問の内容でございますが、これはお手元の資料2にあるとおりであります。これに沿いまして、情報伝達行為への対応、課徴金額の計算方法などのインサイダー取引規制の見直しについてのご検討を、皆様方にお願いするということでございます。

次に、ワーキング・グループにご参加いただくメンバーの皆様方のご紹介をさせていただきたいと思います。お手元に名簿をお配りしておりますので、ご覧いただきたいのですけれども、本日は第1回目ということでもございますので、メンバーの紹介を事務局からお願いいたします。

○増田市場機能強化室長

総務企画局市場課市場機能強化室長の増田でございます。

それでは、当ワーキング・グループのメンバーの方々をご紹介申し上げます。座席順にご紹介させていただきます。メンバーの皆様の右側から、阿部泰久様です。

○阿部委員

よろしくお願いします。

○増田市場機能強化室長

上柳敏郎様です。

○上柳委員

上柳でございます。よろしくお願いいたします。

○増田市場機能強化室長

内田貴和様です。

○内田委員

内田です。よろしくお願いします。

○増田市場機能強化室長

川口恭弘様です。

○川口委員

川口でございます。よろしくお願いします。

○増田市場機能強化室長

神作裕之様です。

○神作委員

神作でございます。よろしくお願いいたします。

○増田市場機能強化室長

黒沼悦郎様です。

○黒沼委員

黒沼でございます。よろしくお願いします。

○増田市場機能強化室長

佐伯仁志様です。

○佐伯委員

佐伯でございます。よろしくお願いします。

○増田市場機能強化室長

武田太老様です。

○武田委員

武田でございます。よろしくお願いいたします。

○増田市場機能強化室長

田島優子様です。

○田島委員

田島でございます。よろしくお願いいたします。

○増田市場機能強化室長

平田公一様です。

○平田委員

平田でございます。よろしくお願いいたします。

○増田市場機能強化室長

綿貫治子様です。

○綿貫委員

綿貫でございます。よろしくお願いいたします。

○増田市場機能強化室長

次に、オブザーバーをご紹介申し上げます。

名取法務省刑事局刑事課長です。

○名取オブザーバー

名取でございます。よろしくお願いいたします。

○増田市場機能強化室長

このほか、池永朝昭様が30分ほど遅れてのご参加と伺っておりますので、後ほどご紹介させていただきます。

また、本日はご欠席ですが、当ワーキング・グループのメンバーとして、大崎貞和様、柳川範之様にもご参加いただくこととなっております。

なお、事務局につきましては、時間の都合もありますので、お手元の配席表をもって、ご紹介にかえさせていただきます。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは、次に、議事の進め方につきまして、幾つかご確認をさせていただきたいと思います。このワーキング・グループですけれども、原則、公開とさせていただきまして、議事録も公表するということにさせていただきたいと思います。したがいまして、皆様方には公表を前提としてのご意見、ご発言をいただければと考えております。

このような形で進めさせていただくということで、ご承認というか、ご了解いただけますでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

○神田座長

ありがとうございます。それでは、そのようにさせていただきます。

それでは、引き続きまして、事務局から、お手元の資料に沿いましてのご説明をお願いします。まず、第1に諮問事項、第2にインサイダー取引規制の概要、第3にインサイダー取引に関する課徴金勧告及び告発の状況、第4に主な論点ということでございます。よろしくお願いいたします。

○増田市場機能強化室長

では、ご説明させていただきます。

まず、資料2でございます。既にご承知かと思いますが、7月4日に諮問が大臣よりされております。読み上げさせていただきます。

最近の公募増資に関連したインサイダー取引などを踏まえ、我が国市場の公正性・透明性に対する投資家の信頼を確保する観点から、情報伝達行為への対応、課徴金額の計算方法その他近年の違反事案の傾向や金融・企業実務の実態に鑑み必要となるインサイダー取引規制の見直しを検討することということでございます。

では、事務局の資料として用意してございます、資料3からご説明させていただきます。

資料3でございますが、めくっていただきまして、2ページ、インサイダー取引規制の概要ということでございます。5ページの図もあわせてご覧いただければと思います。

会社関係者のインサイダー取引規制ということで、既に皆様ご存じのとおりかと思いますが、会社関係者は、重要事実を、その者の職務等に関し知りながら、当該重要事実が公表される前に、当該上場会社等の株券等の売買等を行ってはならないという建て付けになってございます。

あわせて、情報受領者の禁止行為ということで、会社関係者から重要事実の伝達を受けた者、第一次情報受領者は、当該重要事実が公表される前に、当該上場会社等の株券等の売買等を行ってはならないという仕組みになってございます。

3ページでございますが、公開買付者等関係者のインサイダー取引規制ということで、これもあわせて、6ページの図を見ていただければと思います。こちらにつきましては、公開買付者等関係者が、公開買付け等事実、これは公開買付け等の実施または中止を決定した事実ということでございますが、その者の職務等に関し知りながら、当該公開買付け等事実が公表される前に、当該公開買付け等に係る株券等の買付け等または売付け等を行ってはならないということでございます。同じく、情報受領者についても、禁止行為が設けられてございます。

4ページでございますが、こういった規制をもとにしまして、エンフォースメントということで、大きく、罰則、没収・追徴、課徴金ということで設けられてございます。罰則につきましては、5年以下の懲役・500万円以下の罰金、法人については、法人重課ということで、5億円以下の罰金が設けられてございます。

また、没収・追徴については、刑法の特則が設けられてございまして、必要的没収・追徴ということで、インサイダー取引規制に違反した場合について、財産は没収、または、その価額を追徴するということになってございます。

課徴金制度でございますが、大きく自己の計算で行った場合と他人の計算で行った場合で、計算方法が分かれてございます。

自己の計算で行われた場合については、例えば買付けで申し上げますと、重要事実の公表後2週間以内の最高値から買付価格を引いて、買付株数を掛けたものとなってございますが、他人の計算で行った場合については、売買等に係る手数料、報酬その他の対価の額として内閣府令で定める額ということで、計算方法が違ってございます。

7ページでございますが、諸外国におけるインサイダー取引規制ということで、この秋に事務局で海外調査を予定しております。その関係もございまして、詳しくは、また、その際にご説明をさせていただければと思いますが、概要でございます。

アメリカにつきましては、規制される行為としては、包括的な詐欺的行為の禁止規定が設けられてございまして、重要な非公知の情報を保有した上で売買をしたり、伝達をした者については、規制対象になるということでございます。

また、刑事罰については、20年以下の懲役・500万ドル以下の罰金。法人については、2,500万ドル以下の罰金ということです。行政上の措置としては、不当利得の吐き出しと民事制裁金ということで、インサイダー取引については、不当に得た利得の3倍が上限でございますけれども、民事制裁金の制度も設けられているということでございます。

EUにつきましては、規制される行為としては、具体的には自己または第三者の計算で、内部情報を用いて金融商品の取得・処分をすること、いわゆる売買を行うことでございます。職務等を遂行する通常の過程で行われた場合を除いて、他者に内部情報を開示すること、情報の伝達行為自体が対象とされてございます。また、内部情報に基づいて、関係する金融資産の取得・処分を他者に推奨・誘引すること、いわゆる推奨・誘引行為も対象にされているということでございます。

内部者、内部情報を有する者ということで、以下の者が挙げられてございます。

具体的な制裁措置については、各国で規制が設けられているところでございます。

1ページおめくりいただきまして、インサイダー取引規制の立法趣旨ということでございます。

まず、証券取引審議会報告「内部者取引規制の在り方について」でございますが、これはインサイダー取引規制が設けられたときの審議会の報告でございまして、下線部にございますように、証券市場の公正性と健全性が損なわれ、証券市場に対する投資家の信頼を失うこととなることが、内部者取引の規制が必要とされる原因であるとされてございます。

立法関係者の横畠さんが書かれた本に書いてございますけれども、こちらについては、下線部に書いてございますように、市場が人々の信頼を失い、健全な投資家が市場から退避することになっては、証券市場として果たすべき機能を果たせなくなる。したがって、インサイダー取引規制は、そのような行為が投資家の証券市場に対する信頼を著しく損なうものであるという観点から、規制する必要があり、そのような行為自体を処罰すべきものと考えられると整理されてございます。

9ページでございますが、日本織物加工事件最高裁判決でございますが、こちらにおきましても、下線部でございますけれども、証券市場の公正性、健全性に対する一般投資家の信頼を確保するという法目的と整理されてございます。

10ページでございますが、金商法の課徴金制度ということでございます。平成16年以前の不公正取引等については、刑事罰を中心とする実効性の確保が図られてきたところでございますが、一方で、刑事罰には謙抑性・補充性の原則がございますので、規制の実効性を確保して、違反行為を抑止するために、行政上の措置として金銭的な負担を課する制度、いわゆる課徴金制度を導入したということでございます。

それから、平成20年の改正を行いまして、顧客の計算(他人の計算)で違反行為をした場合についても、課徴金の対象に追加するなどの改正を行ってございます。

また、今般、国会に提出中の金商法等の一部を改正する法律案においても、拡充事項がございます。

課徴金制度につきましては、次の11ページでございますが、従前より、憲法39条の二重処罰の禁止との関係が、議論されてきたところでございます。こちらについては、参考となる判例を挙げさせていただいております。これは追徴税と罰金の併科の関係でございますけれども、追徴税につきましては、制裁的意義を有することを否定し得ないところであるけれども、罰金とは、その性質を異にするものと解すべきであり、刑罰が「詐欺その他の不正の行為により云々」の文字からもうかがわれるように、脱税者の不正行為の反社会性ないし反道義性に着目し、これに対する制裁として科せられているものであるのに反し、追徴税につきましては、納税義務違反の事実があれば、やむを得ない事由のない限り、その違反の法人に課せられるものであり、納税義務違反の発生を防止し、もって納税の実を上げんとする趣旨に出でた行政上の措置であるということでございます。追徴税のかような性質にかんがみれば、憲法39条の規定は、刑事罰たる罰金と追徴税を併科することを禁止する趣旨を含むものでないと解することが相当であると判示されてございます。

また、その下の独禁法の関係でございますが、カルテル行為について罰金刑が確定し、かつ、国から不当利得の返還を求める民事訴訟が提起されている場合におきましても、課徴金の納付を命ずることは、二重処罰の禁止には当たらないと判示されているところでございます。

12ページでございますが、では、独禁法の課徴金制度は、今どうなっているかというところを簡単にまとめたものでございます。

独禁法の課徴金制度につきましては、独禁法違反の防止という行政目的のため、行政庁が違反事業者等に金銭的不利益を課す行政上の措置ということで、現在は違反行為対象商品等の売上高に、法定の算定率(原則10%)を乗じて算定するとなってございます。

独禁法につきましても、従前より見直しが行われておりまして、特に平成17年でございますが、改正前につきましては、カルテル等による不当利得相当額を徴収するという仕組みになっておったわけでございますが、違反行為が後を絶たず、現行の算定率では、違反行為防止の観点から不十分ということで、違反行為防止の実効性を確保するために、カルテル等による不当利得相当額を超えて、金銭を徴収することとされてございます。

また、一定の場合に課徴金の算定率を割り増したり、軽減する制度も設けられているところでございます。

1ページめくっていただきまして、課徴金制度のあり方については、平成19年にワーキング・グループが設けられて、議論がされてございます。その中におきまして、課徴金制度の位置付けということで、課徴金は、金融・資本市場における違反行為を的確に抑止し、規制の実効性を確保していく観点から、金銭的な負担を課す行政上の措置として導入されたと整理されてございます。

その際に、違反行為がやり得とならないよう、利得相当額が課徴金の水準とされましたが、このワーキング・グループの議論の中では、必ずしも利得にとらわれる必要はないのではないかというご意見もあったようでございます。

また、一方で、反社会性、反道徳性を問うものでない以上、利得から完全に離れるべきではないというご指摘もあったようでございまして、今後の議論が期待されるということになっております。

14ページでございますが、平成19年のワーキングの報告を踏まえて、平成20年に金融商品取引法の改正が行われてございます。

課徴金の金額水準の見直しということで、経済的利得相当額を基準とする考え方は維持しつつ、課徴金の水準を実質的に引き上げる方向で算定方法の見直しが行われております。例えば、インサイダー取引に関しては、重要事実公表日翌日の株価を基準にしておったわけでございますが、重要事実公表後の市場価格への影響は、何日か継続するだろうということで、重要事実公表後2週間以内の最高値を基準とするという形になってございます。

課徴金の対象範囲の見直しも行われておりますが、特に大きいもので、課徴金の加算・減算措置ということで、違反者が過去5年以内に課徴金納付命令を受けたことがある場合については、課徴金額を1.5倍、自己株取得に係るインサイダー取引について、違反者が当局による調査前に申告を行った場合については、課徴金の額を半減するという形で、制度が新たに設けられているところでございます。

16ページでございますが、後ほど監視委員会のほうから、課徴金の事案等についてはご説明がございます。私のほうから簡単にご説明だけさせていただきますが、最近の傾向としまして、課徴金事案、犯則事件につきましても、情報受領者が違反行為者という例が、約半数を占めるということになってございます。

また、17ページでございますが、TOB対象者の関係者が取引を行った事案が増えておりまして、その中でも特にTOB対象者の役員等からの情報受領者が取引を行った事案の件数が、約半数を占めるということでございます。

18ページでございますが、最近の金融機関が関係したインサイダー取引の事案ということで、表にさせていただいております。これも監視委員会のほうから、後ほどご説明があるかと思いますので、省略させていただきます。

19ページでございますが、今回の大きいテーマの1つ、情報伝達行為についてということでございます。

20ページでございますが、情報伝達行為についての立法当時、どういう考え方であったかということでございます。横畠さんが書かれた本によりますと、「公務員、弁護士、公認会計士等の特に他人の秘密に関与する特別の職にある者については、秘密漏示罪が設けられているけれども、上場会社の役職員といった、そのような特別の職にあるわけではない一般の人々については、こういった罪を設けることは、必ずしも適当ではない。

また、実際に重要事実を知った者が取引を行うことが、証券市場の公正性及び健全性に対する投資家の信頼を害するものであるから、それ以前の単なる重要事実の伝達行為については、これを直ちに処罰するまでの必要性は乏しいと考えられる。しかし、このような会社の業務等に関して、重要事実を伝達する行為自体の処罰を設けていないということが、すべて不処罰とする趣旨ではないということで、刑法の規定によりまして、当該重要事実の伝達を行った者が、教唆犯または幇助犯として処罰されることになる」と整理されているところでございます。

21ページにつきましては、教唆犯と幇助犯に関する記述があります。

22ページでございますが、最近特に問題になりました、公募増資の関係でございますが、金商業者の情報管理に対して、どういった行為規制が設けられているかということを、参考でお付けしております。

まず、金商業者等は、その取り扱う法人関係情報に関する管理または顧客の有価証券の売買等に関する管理について、法人関係情報に係る不公正な取引の防止を図るため、必要かつ適切な措置を講じなければならないとなってございます。

法人関係情報は、インサイダー情報を含んで、それよりも広いと言われておりますけれども、こういった規定が設けられております。

また、金商業者等につきましては、顧客に対し法人関係情報を提供して勧誘してはならないということや、法人関係情報を用いて、自己の計算において有価証券の売買を行ってはならないという禁止規制も設けられているところでございます。

26ページでございます。今回の大きいテーマの1つであります、他人の計算による違反行為についての課徴金についてということで、先ほど少し申し上げましたが、平成19年に課徴金のあり方について検討が行われてございます。

その際に、現行制度上、不公正取引に係る課徴金については、自己の計算において行われた違反行為をその対象としているということでございますが、誰の計算において行われたかにかかわらず、市場規律を毀損する違反行為であり、その抑止が求められるということで、他者の計算で行われた不公正取引についても、課徴金の対象とすべきであるという報告をいただいております。

平成20年の金商法改正によりまして、金商業者が、顧客やファンドの計算で取引を行った場合について、違反行為による違反者は、顧客との契約を維持することができると考えられることから、業者に支払われる手数料、報酬その他の対価の額を基準として課徴金を賦課することとされたところでございます。

最後でございますが、29ページでございます。平成24年金商法改正案ということで、現在、参議院本会議で可決をされまして、今、衆議院のほうに審議が移ってございます。

現行制度では、誰の計算で行うかにかかわらず、違反行為を行った者が、規制・罰則の対象でございますが、平成20年の改正によりまして、他人の計算で行った場合についても課徴金の対象に追加されたところでございます。

その際に、生計を一にする者、子会社等の計算で違反行為を行った者と、顧客の計算で違反行為を行った金商業者等が対象になっているわけでございますが、今般の改正案では、金商業者以外の者、例えば、知人から委託を受けて、知人の計算で不公正取引を行った場合についても、課徴金の対象に追加をする改正案を、現在、国会で審議いただいているところでございます。

私からの説明は以上でございます。

○寺田総務課長

続きまして、証券取引等監視委員会の総務課長の寺田でございます。資料4に基づきまして、現実のインサイダー取引に関する課徴金勧告や告発状況についてご説明いたします。

目次をあけていただきました後、その後に1ページ目でございますが、インサイダー取引に係る課徴金勧告・告発状況でございます。もともとは、先ほどご説明がございましたように、課徴金制度は、平成16年の改正で導入されて、平成17年4月から施行されておりますので、課徴金は平成17年からでございます。

それ以前、監視委員会が設立された平成4年から、告発制度があったわけでございますが、最初はなかなか告発の実績も上がらなかったのでございますが、平成14年以後、毎年、大体10件をやや下回る程度のペースで、重要な告発案件が発生してございます。

一方、今回特に問題になっている課徴金勧告でございますが、徐々に件数を伸ばしてきておりまして、平成21年度の38件が、今まで最多でございますが、平成24年度も、もうこの7月6日までで12件ということで、年間、大体20から30件という大変多数のペースで進んでおりまして、これまでの合計数は、課徴金勧告が133件、告発件数が71件となっております。

2ページ目を見ていただきますと、先ほど来、いわゆるパニッシュメントのレベル感の話がございましたので、ご参考までにご説明しますが、告発事案では、追徴金が発生いたします。告発事案での追徴金額の大体の分布を見ていただきますと、1億円以下が48人、1億円から5億円が12人、5億円から10億円が5人、10億円以上が2人ということで、やはり、告発事案の場合、大変悪質かつ重大な事案ではございますが、追徴金ということになりますと、1億円以下数千万円というところが、最多価格帯となっております。

ただ、最高額としては10億円以上とございますように、ニッポン放送事件でありますとか、グッドウィル事件でありますと、大変多額の追徴金も発生しているところでございます。

3ページ目でございますが、今回、問題になっております勧告事案の課徴金額は、一体どのくらいのレベルなのかということでございますが、右側の計というところを見ていただきますと、最多価格帯は10万円から50万円の50件でございます。それに次ぐものが、100万円から500万円の33件となっておりまして、10万円から50万円というところが大変多いのですが、最近は数百万円という多額のものも多数発生しているということでございます。

先ほどおっしゃられていましたように、平成20年度に課徴金額の計算方法が変わったわけでございますが、それ以後、例えば、平成21年度に100万円から500万円というところが11件というように、やや多額の課徴金額も出ているところでございます。

とはいえ、500万円を超えるような多額の課徴金額は、年間、ほんの数件で、これまでの平成17年からのいわゆる累積ベースでも、13件にとどまっているところでございます。

続きまして、課徴金勧告件数の推移ということで、行為者の属性別、つまり、どのような方がインサイダー取引を行ったかということでございます。166条違反と167条違反に分けております。

全体の勧告件数は、先ほど申し上げた133件なのですが、行為者を属性別に分類すると計135件の違反行為があったということでございます。行為者の属性別で一番多いのは、会社関係者でございまして、計の欄の一番上、61人でございます。その中でも、発行会社役員、発行会社社員が、引き続き、インサイダー取引の行為者の中で、多数を占めているところでございます。

ただ、近時、増加しているのは、契約締結者等ということで、会社と何らかの契約を締結している者が、インサイダー取引を行ったという件数も、最近は増えてきております。

全体的な傾向としては、先ほど総務企画局のほうからもご説明がありましたが、実は平成21年度以降、第一次情報受領者が行為者になるケースが、いわゆる直接的な会社関係者、公開買付者等関係者を上回っております。

つまり、ちょっとこれは見にくい表なのですけれども、平成21年度の欄を見ていただきますと、全体で38人でありますが、166条違反の第一次情報受領者は12人、167条違反の第一次情報受領者は9人ということで、38分の21ということで、この年から、第一次情報受領者が上回ってきたということが、最近のトレンドとして申し上げる必要がございます。

また、上回った原因の1つですけれども、実は、平成21年度は非常にエポックメーキングな年でございまして、38人のうち、公開買付けの関係者が4人、今申し上げましたように、公開買付けの第一次情報受領者が9人ということで、これを足しますと13人ということで、3分の1近くが、いわゆる公開買付け関係の違反行為者であったということです。この時期、会社再編でTOB等が大変多かったわけでございますが、これに絡むインサイダー事件が、大変多かったという状態になっております。

さらに、ページをめくっていただきまして、近年、過去4年でございますが、より細かく行為者の属性を分解しております。会社関係者は26人となっておりますが、依然として発行会社の役員が5人、発行会社の社員、単に社員ということではなくて、執行役員とか役席者も、引き続き多数となっている現状でございます。

しかしながら、先ほど申し上げましたように、会社関係者の中で最近増えておるのは、契約締結者、しかも第三者割当に関する契約締結者が、大変多くなってございます。例えば、平成22年度、契約締結者5人すべてが、第三者割当に関する契約締結者なのですが、これは第三者割当の引受契約を締結している者及びファンドの関係者ということでございます。

また、契約締結者と言っても、会社の重要事実そのものに関連する業務を契約していた者がほとんどでありまして、会社にとっては、重要事実に関する業務を行うに際して、その契約を締結した者、その者が、インサイダー取引を行っているということで、情報管理対象が非常に拡大している状況にございます。

一方、先ほどからもお話を申し上げておりますように、第一次情報受領者のほうが、現在は、人数が多くなっておりまして、34人でございます。

第一次情報受領者の通常考えられるイメージでございますが、2段目にあります親族でありますとか、友人・同僚といったイメージがあるかもしれませんが、実は34人の中で、親族は8人、友人・同僚は6人にとどまっております。一番多いのは、取引先の従業員でございます。平成23年度、24年度の1件、4件というのは、公募増資インサイダーに関わる証券会社の社員から伝達を受けた者が入っておるわけでございます。

それ以外にも、平成21年度、22年度ですと、例えば、取引先として、契約締結先の社員から会社更生手続の事案を聞いて、慌ててこの会社がつぶれてしまうから売ってしまおうということで、いわゆるビジネス上の関係で、重要事実を知った会社関係者から情報を得て、インサイダー取引に及んだ者が多いわけでございます。

その下のその他は、重要事実に関して知っていておかしくないような関係者ではありますが、単に取引先や親族、友人・同僚ではないというような感じでイメージいただいたほうがいいかもしれません。

例えば、平成21年度の4件については、発行体の株式譲渡という重要事実について、発行体の役員から聞いた子会社そのものとか、第三者割当について、仲介者を通じて知った者とか、第三者割当先のオーナーの親族が含まれております。第三者割当をする相手方であるオーナーの親族なわけですから、重要事実に関して知っていて当然なわけでございます。

平成23年度の3件の中には、発行体の株主自身が、第一次情報受領者として、発行体が監理銘柄になるということを聞いて、慌てて違法行為を犯したというものが含まれております。その他の9人については、発行体に非常に密接な関係にある者というイメージでございます。

その次のページをめくっていただきますと、6ページ目で、こちらは公開買付けの違反行為者の属性でございます。こちらになりますと、公開買付者等関係者、つまり、公開買付けをする側の者というのは少なくなっておりまして、5人の中身を見ますと、証券会社1人、公開買付対象者が3人、公開買付者の社員、部長等の役職者が1人でございますが、少数でございます。さすがに、公開買付けを行う会社としては、売買管理は徹底しておられるようでございます。

こちらは、第一次情報受領者が大変多くなってございまして、20人となってございます。こちらは、やはり、TOBの場合には、確実にプレミアムが乗りますので、これの最多は、親族、友人・同僚でございます。

平成21年度を見ていただきますと、先ほど申し上げましたが、この年は、TOBに関する勧告件数が大変多かったのですけれども、親族が1人、友人・同僚が8人ということで、それ以降も、毎年、こういう方が出ております。

つまり、TOBの場合、確実に儲かりますので、後で申し上げます情報提供者は公開買付け先、もしくは、公開買付者の関係者なのですけれども、そういう方からしますと、友人・同僚に確実な儲け話になるということで、仲のよい方や親族に情報を提供して、そういう方が違法行為に及んでいるということが、トレンドとして読み取れるかと思います。

その次に、7ページ目で、今回の諮問事項にも関係いたしますので、情報伝達者の属性を見てみました。情報伝達者について、166条違反では43人、そのうち発行会社の役職員が19人、契約締結者が24人ということです。166条違反は、どちらかというと、役職員から情報が漏れているケースが、普通、想定されるのですが、近年、契約締結者から情報が漏れていることが大変多くなってございます。これも先ほど申し上げましたように、情報管理の対象の範囲が広がっているという感じがいたします。

公開買付け等の伝達者のほうも25件のうち、買付者の役職員は7人でございます。これも少ないと言えば、少ないのですけれども、しかしながら、あってはならないわけでございまして、こういう方々が、毎年、後を絶たないという現状でございます。

ただ、契約締結者はコンスタントにおられまして、こちらが18人ということで、こちらのほうが多くなっております。

これもさらに細かく分析してみたものが、次の8ページ目でございます。情報伝達者の内訳を見てみますと、166条違反では34人いるわけでございますが、発行会社の役員、取締役が8人、これは、上場会社としては、非常に自戒されるべき事態ではないかと思います。

発行会社の社員でも7人ですが、執行役員1人、部長等役席者4人ということで、いわゆる単に社員というよりは、責任のある立場の方から、情報が漏れているということでございます。

契約締結者の19人ですが、証券会社の平成23年度、24年度の1人と5人というのは、公募増資インサイダーに係るものでございます。

それ以外のところでございますが、これも業務受託者、業務提携者は、まさに重要事実そのものに係る業務を受託している責任ある立場の者から、情報が漏れているというイメージでとらえていただければと思います。

例えば、平成22年度で申し上げますと、5件も、業務受託者から情報が漏れているわけでございますが、これは、例えば、第三者割当の出資者に関する事務をつかさどっている者、第三者割当の出資者に対するいわゆる代理人、業務提供サービス契約に関し、資本提携を行うことを決定した事実を知った者、そして、株式交換比率の計算をするに当たっての算定業務を受託している者、これは括弧の中に、士業の資格を有する者と書いてありますけれども、こういう方がやっておられるということでございます。まさに資本提携における、第三者割当に関しては、当然、必要となる業務について受託している者という方から、情報が漏れているということでございます。

業務提携者については、もう言わずもがなでございまして、もともと業務資本提携という重要事実でございますので、この相手方とか、業務資本提携の社員という方から漏れていますので、この業務提携について、相手方の社員とか役員が知っていることは当たり前でございますので、そういう方々、そういう情報を漏らしてはいけない責任があるにもかかわらず、そういう方から漏れているという状況でございます。

その次のページを見ていただきますと、今度は公開買付けでございますが、公開買付けは若干、趣を異にしておりまして、先ほど申し上げましたものは、20件のうち、買付者のほうも役員が2人、買付者の社員が4人ということで、まだまだここら辺は、買付者側の情報管理も厳正さを求められるところでございます。

中身を見ましても、取締役が2人、部長等の役席者も2人ということで、本当に責任のある者から漏れているということは、憂慮すべき事態かと思いますが、契約締結者から漏れている事例が大変多い中で、先ほど総務企画局からもお話がありましたが、公開買付けの対象者、つまり、買われる側から漏れている事例が、大変多くなってございます。

全体で9件でございまして、役員2人、社員7人ということで、これを見ますと、いわゆる公開買付けをする側にも問題がございますが、される側のほうも、情報管理上、かなり問題のある事例が多いということを見ていただけるかと思います。

次に、10ページでございますが、ちょっと話題を変えまして、最近の公募増資インサイダーの話がございますので、若干、イントロとして申し上げさせていただきますと、平成21年に、全国上場会社における国内株券発行、いわゆる公募増資が増加いたしました。

これに関連いたしまして、さまざまな疑いのある取引がございますので、監視委員会としては、監視体制を強化してまいったところ、次のページにございますように、公募増資に関連したインサイダー取引事案が5件、正確に言うと6件。6件というのは、4件目のうち、違反行為は2つありますので、実際には6件ということでございます。

これについては、1つの論点として、課徴金額のところを見ていただきますと、1番、2番、3番、5番が、いわゆる他人の計算による課徴金でございます。これらは後の資料で出てまいりますが、違反行為者の方々は、いわゆるファンドを運用しておられるわけでございますので、これらの方々の運用報酬で、しかも、それに運用したファンドの残高に占める違反行為の対象銘柄が占める割合を乗じた金額が課徴金額としてかかっております。

従いまして、最も金額的な差異が大きいケースを申し上げますと、2番の日本板硝子の件で、あすかアセットマネジメントは課徴金額が13万円だったのですが、ファンドの得た利益は6,051万円で、これにつきまして、仮にファンドの得た利益を自己の計算として、課徴金額を計算いたしますと7,622万円ということになりますが、現在の計算方法では、課徴金額は13万円ということでございます。

なお、4番目の案件は、自己の計算での売買でございます。

それでは、12ページ目以降は、簡単に申し上げますが、事案1の概要でございます。この5つの事案でございますが、基本的には同じ構図でございます。事案1の左側を見ていただきますと、国際石油開発帝石が、平成22年7月8日に新株発行及び株式売出しの公表をするわけでございますが、その公表前に、主幹事証券会社の投資銀行部門の引受部門、ここは、いわゆるイン部署でございますが、そことチャイニーズ・ウォールで隔絶されているはずの営業部に情報が伝わりまして、そこから中央三井アセット信託銀行の株式運用ファンドマネージャーに対して伝達が行われ、このファンドマネージャーは、先ほど申し上げましたように、外国籍のファンドで売付け、空売りを行ったということでございます。

つまり、これは、ファンドマネージャーが投資一任契約を締結しておりますので、他人の計算で売付け、空売りを行ったというわけでございまして、我が国市場には大きな影響があったということは、下の金額を見ていただくとわかるわけでございますが、平成22年7月1日及び平成22年7月7日に、この会社の株式を210株、売付総額1億124万円と、大変大きな市場に対する影響を及ぼしたわけでございます。

時間の関係もございますので、日本板硝子も同じような構図でございますし、その次のページ、みずほフィナンシャルグループも同じような構図でございます。

事案4だけは少し違いまして、先ほどのチャイニーズ・ウォールの隔絶から情報が漏れたことは事実なのでございますが、このケースだけは、コンサルティング会社の役員自身が、課徴金納付命令対象者なのですけれども、もともと伝達することを意図してというか、伝達する、いわば、道具として、営業員から情報の伝達を受けまして、ファースト・ニューヨーク証券に情報が伝達され、ファースト・ニューヨーク証券は自己勘定取引として売付けを行ったために、これは自己の取引となっております。

最後のページですが、この案件ですと、やはり主幹事証券会社のチャイニーズ・ウォールが機能しなかったわけでございますが、どちらかというと、ジャパン・アドバイザリー合同会社のほうが、いわゆるファンド・レーティングということで、主幹事証券会社のセールス担当者等に対して、情報提供の頻度とか、情報提供の内容でありますとか、そういうサービスについて、いわばレーティングをしているような、そういうプレッシャーをかけている中で、情報の提供を暗黙に求めているような環境の中で起きた事件でございまして、そういう状況の中、ジャパン・アドバイザリーに情報が伝達されたというわけでございます。

この案件では、課徴金そのものの話は関係ございませんが、ジャパン・アドバイザリー合同会社、その次のページに出ておりますが、投資助言会社といいながら、実際には投資運用会社としての実態でございましたので、行政処分として、登録の取消命令も受けております。

非常に駆け足でございますが、また、ご不明の点等がございましたら、ご質問を頂戴できればと思います。

○増田市場機能強化室長

では、資料5につきまして、ご説明をさせていただきます。今回の主な論点ということでございます。大きく3つの柱にさせていただいております。

1つ目でございますが、情報伝達行為への対応ということでございます。情報伝達行為に対する規制を設けることをどう考えるかということでございます。

情報伝達者に対する規制を設ける場合の規制の趣旨・保護法益をどう考えるか。先ほどの資料にもございましたように、証券市場の公正性、健全性に対する一般投資家の信頼を確保するということが、保護目的でございますが、今回の情報伝達者に対する規制を設けることについては、市場の信頼性を害する独自の犯罪行為としてとらえるのか、それとも、インサイダー取引の教唆犯、幇助犯の明確化という位置づけか、例えばということで挙げさせていただいてございます。

また、規制対象をどう考えるかということがございますが、行為主体、規制対象とする行為について、特に今回の場合は、情報伝達行為に対する禁止規制が、今までのインサイダー取引、売買に対する規制ということではなくて、内部情報を他人に伝えることということになりますので、こういったものをどうとらえていくか。その際、どのような要件が必要になるのか。例えば、結果として、インサイダー取引が行われたことを要件とするのかということも議論になるかと思います。

また、特に、EUの例などで申し上げますと、伝達がなくても、未公表の重要事実に基づいて取引を推奨する行為についても、処罰の対象となっておりますので、これをどう考えるかということでございます。

具体的なエンフォース手段ということでございますが、刑事罰、課徴金、その他ということでございますが、特に課徴金については、情報伝達者に利得がない場合がございますのでどうとらえるかということでございます。

2つ目の大きな柱としては、課徴金額の計算方法ということで、特に他人の計算によるインサイダー取引の課徴金額の計算方法について、どのような見直しが考えられるかということで、先ほどの資料にもございましたように、金商法の課徴金制度は、違反行為による経済的利得相当額を基準とした金額の課徴金を課すことによって、違反行為の防止を図るものという体系になってございますが、現行、違反行為者の得る報酬額が、違反行為によって得た経済的利得相当額と考えられてございます。

計算方法につきましても、違反行為が行われた月の報酬額に、運用財産の総額に対する違反となった対象銘柄の割合を掛ける形で計算がされております。これについて、どのような見直しが考えられるかということでございます。

3番目でございますが、その他近年の違反事案の傾向や金融・企業実務の実態に鑑み、どのようなインサイダー取引規制の見直しが考えられるか。これは規制強化、規制緩和、両面あるかと思いますが、これについてもご意見をいただいて、議論できればと考えております。以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。池永委員がご到着されましたので、ここでご紹介させていただきます。

○池永委員

池永でございます。よろしくお願いいたします。

○神田座長

よろしくお願いいたします。

それでは、本日は第1回目でもございますので、今のご説明を受けて、皆様方に自由討議をお願いしたいと思います。これまでの事務局からの説明等に関しまして、ご質問でも、ご意見でも、どなたからでもご自由にお出しいただければと思います。よろしくお願いいたします。阿部委員、どうぞ。

○阿部委員

初回ということで、まず、大きなご質問なのですが、先週、与党の資本市場・企業統治改革WTから、「インサイダー取引と金融取引規制の今後の方向性について」という提言が出ています。これは第1次提言となっていて、まだ第2次、第3次とつなぐそうなのですが、拝見すると、かなり具体的に今回の情報提供者の処罰について、あるいは、課徴金の問題についても取り上げられています。

この与党の提言は重く受け止めて、この審議会の議論や将来的な立法化のときにおいても、尊重しなければいけないのでしょうか。あるいは、あれはあれとして、ここで自由に議論していいということになるのでしょうか。感触だけでも結構なので、お聞かせ願えますか。

○古澤市場課長

与党の提言でございますが、今、阿部委員からございましたように、政府も呼ばれ、経団連や東証も呼ばれ意見聴取を受けた上での御提言と承知しております。

このワーキング・グループの場は有識者、専門家にご議論・ご検討をいただく場ですので、自ずとそれぞれの役割分担があるのではないかと思っております。

○阿部委員

どうもありがとうございました。

○神田座長

ほかにいかがでしょうか。綿貫委員、どうぞ。

○綿貫委員

いろいろとご説明、どうもありがとうございました。

お話を聞いていて、多分、問題意識みたいなところは、既に私どもと共有してくださっているものがあると思うのですけれども、私ども業者の立場から言いますと、資料3の7ページ目、これはアメリカとEUの規制について、おまとめいただきましてどうもありがとうございました。また、その際に、海外調査もご予定されているというお話を承りましたけれども、やはり、私どもとしては、このように、原則、禁止されているものがあるということは、もちろん了解しておりますが、全くざっくりした理解ですけれども、アメリカ、EUそれぞれ、例外規定というものが、縷々設けられておって、業者の活動を、もちろんディシプリンを持ってやらなければいけないことは確かですが、どのようなものが規制対象となるかという構成要件の明確化、何がそこから例外として除かれるのかについて、ここは、ぜひ議論を深めていきたいと思っております。

また、実際にインサイダートレードが起こってしまった場合に、業者のほうとしては、いろいろとチャイニーズ・ウォールも構築し、資料4でご説明いただいたようなチャイニーズ・ウォールが働いていなかったという事実がないにもかかわらず、悪意を持ってやる従業員がいるということも、これは人間がいるときは避けられませんので、そういった場合に、法人に対する両罰規定はどうなのかという点についても、明確にしていきたいと思っております。

1回目ですけど、今のところ、そういう問題意識でおりますので、よろしくお願いいたします。

○神田座長

ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。どのような点でも結構です。平田委員、どうぞ。

○平田委員

今の綿貫委員の補足といいますか、追加なのですけれども、やはり、証券会社の行為としては、情報を伝達しなければいけない場面は多々出てくるということになりますので、情報伝達イコールアウトのような単純な議論ではなくて、どういう情報伝達が悪いのかということに関しては、明確な議論をぜひともしていただきたいと思っております。

また、証券会社のさまざまないわゆる第三者委員会の報告書等も拝見をしていますと、証券会社がセールスをする際に、情報提供をするということが、当然ながら、それが未公知情報であってはならないわけでありますけれども、いわゆるウォール・クロッシングした情報なのか、そうではないかということが、割と混然一体としているところが、かなり大きな問題なのかなと我々も理解しております。

そういったときに、いわゆるウォール・クロッシングをしたものであるのか否かをどういうふうに判断していくのかは、技術的にも非常に難しい部分があるのかなと思っています。

既に、法人関係情報が不必要な部門に伝わらないように管理しなければならないという自主規制ルールはあるにせよ、今後、我々、自主規制機関においても、相当いろいろ突っ込んだ議論はしていかなければいけないと思っています。単純な情報提供ということではないと思っておりますので、その辺の十分な議論を尽くしていただければと思っています。

不適切な情報伝達に関しては、海外でかかっているような罰則規定を今回設けるということに関しては、我々としても賛成だということではあると思いますが、情報伝達という部分に関して、どういうものがアウトなのかということに関しては、十分な議論をお願いしたいと考えてございます。

○神田座長

ありがとうございます。どうぞ、阿部委員。

○阿部委員

今度は質問なのですが、まず資料5の主な論点の情報伝達行為への対応ですが、規制の趣旨、保護法益の考え方に関しまして、独自の犯罪行為と考えた場合、規制対象については、結果としてインサイダー取引がなくても、情報伝達をしたということのみが罪に問われることはあり得るのでしょうか。

2点目、課徴金の算定方法に関してです。いわゆる経済的利得を超えたものに改めた場合、刑事罰、特に罰金刑との調整は、具体的に設けられるのでしょうか。これは、金融庁、あるいは、刑事局がおられるので、刑事局にお聞きしたほうがよいのでしょうか。教えてください。

○神田座長

事務局からお答えできるものがあれば、お願いします。

○増田市場機能強化室長

独自の犯罪行為とするかどうかと、まず、そこから議論になりますし、具体的に、その後インサイダー取引が行われたかどうか。これは、例えば教唆犯、幇助犯のように構成する場合は必要になるかと思いますが、例えば、客観的な処罰条件ということで、必要になるという場合もございます。これは、今後、議論をしてみないと具体的にはなかなか決められないのかなと思います。

罰金の調整の話についても、いろいろ法制度、今、課徴金の制度は、大きく3つぐらい分かれているということで、罰金と調整しているものもございますが、これも、課徴金の性格を、これから議論していく中で、二重処罰の関係などを議論していく中で、やはり、必要に応じて、議論が出てくるのかなと思っておりますので、現段階で特にということではないと思います。

○阿部委員

ありがとうございました。

○神田座長

よろしいでしょうか。今後の検討ということで。ほかにいかがでしょうか。どうぞ、佐伯委員。

○佐伯委員

質問ですけれども、諸外国におけるインサイダー取引規制について資料3の7ページでご紹介いただいているのですけれども、EUでは、伝達自体が明確に禁止されているのですが、アメリカでは、私の知る限りでは、公開買付けについては、伝達を禁止しているようですけれども、一般的に伝達自体が禁止、処罰されているのかということについておわかりでしたら、教えていただきたいということと、もし不明でしたら、今後調査される中で調べていただければと思います。

○増田市場機能強化室長

まさに、これから海外調査もさせていただきますが、我々の把握している範囲では、アメリカの場合には、株主等に対する信認義務違反、また、情報源に対する不正流用行為に該当するという場合については、伝達行為自体も禁止になっているということで、判例も出ているという、SECの処分などもあると聞いてございます。その際には、具体的には、インサイダー取引の違反行為が行われているのではないかということが、我々の今把握している範囲でございます。

余談でございますが、推奨については、今のところ、よくわかっていないというところでございます。

○佐伯委員

確認ですが、伝達だけで処罰されている例はないということですか。

○増田市場機能強化室長

伝達だけで処罰をされているのですが、その際に、いわゆる信認義務違反といいますか、その情報伝達をしたことが、一様に詐欺的な行為であると、そういうことを前提に、さらにインサイダー取引が行われているということをもって、違反行為ととらえられているのではないかということです。

○古澤市場課長

1点補足させていただきますと、SECのアナウンスメントなどを見ると、ティッパーだけが処罰されている事例があるものですから、その点についても確認しようと思っております。通常ですと、ティッパーとティッピーと両方が対象になっているのですが、アナウンスメントを見る限りは、ティッパーだけが対象になっている事例があるので、そこは確認させていただきたいという趣旨です。

○神田座長

とりあえずよろしいでしょうか。

○佐伯委員

はい。

○神田座長

川口委員、どうぞ。

○川口委員

エンフォースメントの手段をどう考えるのかという論点ですが、刑事罰をさらに重たくするというようなことも考えられているのでしょうか。日本のインサイダー取引規制は、いわゆる形式犯でとらえられていて、情報の利用とは全く関係なく要件に当てはまれば、刑事罰の適用があるということになっているのですが、そういうことから、当初、刑事罰は極めて軽いものになっていたかと思います。

その後、規制違反の場合の刑事罰が厳格化されるということで、現在に至っているのですけど、この点で、形式犯と刑事罰の重さの均衡が崩れているように思っております。

課徴金につきましては、今日、いろいろとご説明があったのですけれども、インサイダー取引は儲かる話ですから、人の性としてなくならないかもしれないのですが、課徴金が抑止効果としての効果があまりないのではないかというところも、議論の対象になるかと思います。利得相当額を吐き出すだけでは、なかなか、抑止効果は働かないように思います。

他方で、金融庁が、ぼんぼんと高い額の課徴金を課すことができるかというと、それもなかなか難しいところがあるかと思います。やはり利得相当額を基準としながらも、例えば2倍、3倍、アメリカのように機械的に算定可能な制度で課徴金の額を増やすという方向性はないのかどうか。そういうことも、今後、検討してみてはどうかと思っております。以上です。

○神田座長

どうもありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。黒沼委員、どうぞ。

○黒沼委員

主な論点についての個別的な意見でもよろしいですか。

○神田座長

もちろんです。お願いします。

○黒沼委員

まず、情報伝達行為に対する規制を設けることについては、設けるべきであると思います。

その場合の趣旨、保護法益は、インサイダー取引の防止ということで、最終的には、これは市場の信頼を害する独自の犯罪行為であると構成すべきではないかと思っています。

規制主体については、会社関係者、情報受領者、公開買付者等関係者といった者、現行法の枠組みに乗っかる者で良いのではないかと思います。

規制対象とする行為については、いろいろな考え方が出てくることかと思いますけれども、EUに見られるように、職務等を遂行する通常の過程で行われた場合を除きとか、あるいは、正当な理由はないのにという何らかの除外事由を設けなければならないことは、当然であります。

結果として、インサイダー取引が行われたことを要件とする必要はない。インサイダー取引の未然防止ですけれども、これも、インサイダー取引自体が抽象的危険犯だと思いますが、そのさらに抽象的な危険を取り除くということですので、結果を要件とする必要はないと思います。

推奨行為についても、伝達と同じような効果が生じますので、EUの規制を参考にして、規制の対象に含めるべきではないかと思っています。

エンフォースメント手段についてなんですが、先ほど言ったように、インサイダー取引の防止という観点から、規制を導入する以上は、刑事罰は、インサイダー取引を行った者より重くすることは難しいのではないかと思います。

課徴金については、利得相当額という考え方を変えることができるのかということが、一番重要な問題になるのではないかと思いますが、情報伝達者については、情報伝達を受けた者が、たまたま大きな利得を得たから、その利得を基準に厳しい処罰をし、そうでない場合は軽くするというのは、抑止効果からいっても、あまり効果的ではないと思いますので、できるならば、定額にするべきではないか。そして、罰金との間の調整規定を置くということで、二重処罰の禁止に違反しないという解釈を得られれば、それが一番いいと思っています。

長くなりますけれども、ついでですので、課徴金額の計算方法についてもこれから議論されると思いますが、2つの考え方があり得ると思っています。1つは、他人の計算によってインサイダー取引を行った行為者について、他人の利得を基準にした課徴金を課すということです。

しかし、それは、行為者の利得相当額という考え方から大きく外れて問題があるということであれば、この場合も定額の課徴金を課すという方法が考えられると思います。

もう一つは、少し理論的な問題は大きいかもしれませんけれども、例えば、法人の役員が、法人の計算でインサイダー取引を行った場合には、現在では、その法人に課徴金が課されることになっているわけですから、その考え方を拡げて、他人の計算でインサイダー取引が行われた場合には、計算の帰属する本人に課徴金を課す。

抑止効果を高めるために、課徴金を課された本人は、行為者に対して求償ができるような仕組みを多少整える。これは民事的な請求権になるのかもしれませんけれども、そういう整備をするのであれば、本人に課すということも考えてよいのではないかと思います。

最後に、その他の見直しの点についても多々あると思いますけれども、1点だけ発言させていただきます。監視委員会の事務局のご説明にあったように、情報受領者のインサイダー取引が増えているということであります。現行法でも、情報受領者が法人の社員であって、その法人の内部で職務に関して情報が伝達されたような場合には、その情報の伝達を受けた者も、情報受領者として、規制の対象になっています。これは、見方を考えれば、第二次情報受領者が、事実上、一部規制の対象になっているということだと思います。

また、第一次情報受領者のインサイダー取引規制が増えているということは、これは処罰の対象にならないので調査は行われていないのでしょうけれども、第二次情報受領者が取引を行っている可能性も大いに考えられるところです。情報の第一次受領者のみを規制対象にするということは、異例の法制ですので、この際、第二次以降の情報受領者もインサイダー取引の規制にするということも、検討の対象にしていただきたいと思っています。以上です。

○神田座長

どうもありがとうございました。佐伯委員、どうぞ。

○佐伯委員

私は、伝達行為自体を独自の犯罪行為とすることには、賛成できないと思っております。

その理由は、先ほどご紹介いただきました、横畠さんが述べておられることと、ほぼ同様ですので繰り返しませんが、もし、そのような独自の犯罪行為として規定する場合には、EUのように、やはり推奨行為も規制しないと、脱法が行われてしまうので、伝達行為自体を規制するのであれば、推奨行為も規制しないといけないと思います。そうなると、インサイダー取引がないのに、推奨行為だけを処罰するということになって、非常に不均衡ではないかという気がいたします。

そもそも伝達行為自体を犯罪行為として処罰すべきではなく、インサイダー取引が行われた場合には、その教唆、幇助として処罰できますので、それで十分ではないかとも思いますが、その点を明確化して、独自の正犯行為として規定するということは考え得るかと思います。

○神田座長

どうもありがとうございます。上柳委員、どうぞ。

○上柳委員

今ご議論があった点にも関わるのですけれども、伝達行為者については、この際、独自の類型としてきちんと位置づけるほうがいいと思います。あるいは、そのことを議論すべきだと思います。

どうしてこういうことが問題になるかと考えると、やっぱり1つは、インサイダー取引を防止することですので、インサイダー取引があったときに限るとか、あるいは、それにかなり近い伝達行為だけを罰するということが基本と、一方では思うのです。

でも、他方では、いろいろな関係者の方から情報をいただくのですけれども、例えば、特定の会社の名前を挙げなくても、実際上わかるとか、あるいは、あうんの呼吸で、このような新しい新株発行があるということが、大手あるいは大口のファンドマネージャーの方にわかるとか、それは、極端を言うと、もう日常茶飯にまで行われていたのだと。

ようやくここにメスが入るのかということを聞きますと、やっぱりアメリカのティッパーだけを規制しているように見えるということも、実態としては、それに対応する受領者があるのかもしれないけど、そこまで、なかなか証拠で立証できない、あるいは、そちらのほうの要処罰性が低いから、片方だけをやっているという意味で、くどいようですけれども、理論的にはインサイダー取引の存在を前提としなければいけないのだけれども、証拠なり、あるいは、規制の手法として、独自の類型を立てているという面があるのではないか。

さらに、加えて、単にこの問題は、インサイダー取引の問題というだけではなくて、やっぱり強く言えば、証券会社なり、こういうことに関係されている方々が、一部の人たちを優先する。これが、既存の株主の不利益において、大口の株主に利益を与えているとか、あるいは、一般の投資者の不利益において、そうでない方の利益を図っているとか、それこそ二十数年前の損失補てんのときに見られたようなことと、本質は同じでないかと私は思います、やっぱり証券市場に対する不公正のあらわれではないか。

そういう意味からいっても、全部の伝達行為者に、独自の処罰をすべきだとはならないのかもわかりませんけれども、少なくとも一定の情報伝達者については、そのようなことを考える時期に来たのではないか。これがアメリカの運用であり、あるいは、ヨーロッパの法制ではないかというふうに思います。また、もう少しよく考えてみたいと思います。

あと、ついでに、課徴金の額についても、いわゆる他人の計算によるというときの利得額の計算は、単にその報酬の中に含まれる割合というのでは、これで吐き出したことになるのかなというのは疑問ですけれども、この際、やはり、制裁ということをきちんと位置づけて、それで、罰金との関係は調整をする。

もう一つは、課徴金を課された人たちが、今でもできないわけではないですけれども、それを争うこともできるということで、事後の法制はきちんとするということで、手続的なことを整備した上で、正面から、独禁法と同じように、課徴金の性格は見据えるべきだと思います。

最後ですけれども、いわゆるファンドマネージャーが、何か問題が起きたときに、ファンドの本体は、そのこと自体は知らないかもしれないけれども、やはり、抑止効果の点からいっても、ファンドマネージャーを選任したということからいっても、一定の場合については、ファンドのほうにも不利益がある。つまり、そちらのほうの利得を基にして計算をするなり、あるいは、場合によっては、そのファンドのほうからも、一定の財産の吸い上げがあってもいいのではないかと思います。以上です。

○神田座長

どうもありがとうございます。阿部委員、どうぞ。

○阿部委員

情報伝達者の論点に関する中身に入ってきたので、2つ申し上げたいのですが、1つは、今回の件で問題になっている情報伝達者は、いずれも証券会社の営業社員等でした。本来であれば、知るべきでない情報を持っていたということ自体が問題なのであって、情報伝達者を罰するということは、今まで長く議論してきて、できないとされてきたことを、あえてできるようにしようということであれば、もう少し慎重に考えていただければと存じます。

発行会社の関係者が、もしこの情報伝達について、これを独自の犯罪行為と規律されて処罰されるのであれば、それこそ、何も言えなくなってしまいます。単に伝達のみをもって犯罪行為として構成するのであれば、例えば、特許部員が特許がとれそうだとか、あるいは、何か、法務部員が合併しそうだみたいな話でも、規制の対象になりかねません。

そういう意味では、仮に情報伝達行為について規制を設けようとしても、やはり、実際、インサイダー取引が行われた場合の教唆犯、幇助犯として考えるべきだと思いますし、もし独自の犯罪行為として構成するのであれば、例外規定や、セーフ・ハーバー・ルールを適正に設けていただかないと、それこそ発行会社の関係者は、寝言も言えなくなってしまいます。

もう一つは、今回の件について言えば、問題は、情報伝達者が、どのように情報を知ったかという、そこにあるはずなのです。証券会社の中での情報管理が機能していなかったということです。そちらをきちんと対応することによって、今後こういう行為が減るというか、行われなくなるという期待は十分できるのではないでしょうか。

そういう意味では、罰則をいきなり、あるいは、課徴金を議論するのではなくて、こういう行為がなぜ行われたかということを、少し証券会社の営業政策も含めて、考え直していただければと思います。以上です。

○神田座長

ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。どうぞ、武田委員。

○武田委員

2つ申し上げさせていただければと思います。

まず、情報伝達行為への対応ということでございます。私ども、マーケットの近くにいる者として、売買審査をやっておるわけなのですけれども、個別具体的なことを申し上げるわけにはまいりませんが、審査の過程では、売買取引を行った者のご職業であるとか、あるいは、タイミングのよい売買といったところの当事者のいわゆる売買の有無を調べまして、インサイダー取引のおそれがあるかどうかを調査しているわけでございます。この中でも、情報受領者という形で疑われる者による取引が認められて、その都度、委員会にご報告をさせていただいているケースがあるということは、間違いございません。

市場を開設する側として申し上げたいことは、インサイダー取引につながるような不適切な情報伝達行為については、諸外国と同様にきちんと規制をしていただきたいなと思っております。適切な法令整備がなされて、インサイダー取引が未然防止されるということで、証券市場の信頼の回復、公正性、信頼性が確保されるということは、非常に望ましいことでございますけれども、冒頭、業界の側の意見が、委員の意見でもございましたけれども、経済社会活動に支障を来すことがないよう、過剰規制とならないように、過剰規制になることによって、マーケットが萎縮するようなことがないように、このワーキングで、ご検討いただきたいということが、1点でございます。

阿部委員のご指摘がございました、発行体の部分のところでございますけれども、私どもは今回も一連の公募増資のインサイダーに係る問題ということは、非常に遺憾だということで憂慮をしておりまして、我々自身も、できることは着手しているところでございます。

今回は、残念ながら、証券会社の従業員の方が関与されていたということでございまして、上場会社自身の情報管理の問題という認識はしておりません。私どもは、常々、一般論にはなりますけれども、上場会社に対しては、意図せずして、特定の者に対して、未公表情報を伝達してしまうというリスクもございますので、そういったところも含めて、きちんと情報管理をしていただきたいということで、常々、取引所として要請をしているところでございますし、規則の中でも、努力義務という形で、我々がお願いしていることを、きちんと果たしてくださいということをお願いしているところでもございます。そういったものが、各社の事情、業態、実態、実情に合わせた、実効性のある未然防止体制につながると考えております。以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。ほかに。神作委員、どうぞ。

○神作委員

これまでにご議論されましたように、情報伝達行為を規制する目的は、違法な内部者取引規制の前段階の行為を規制することにあると考えられますので、あくまで内部者取引禁止規制が外在的な制約になるということだと思います。

違法な内部者取引の前提となる行為を、どの範囲でどのように規制するかということは、資本市場の信頼を確保するという観点から検討されるべき、極めて政策的な問題であると思います。しかしながら、上柳先生もご指摘されましたように、違法行為が前提となるのですけれども、内部者取引の場合は、やはり、違法行為が実際に起こったかどうか、なかなか見つけづらいという問題と、立証が容易ではないという2つの問題があると思います。

EUの場合は、事務局のほうからご報告がございましたように、推奨行為も含めて、広く情報伝達行為を規制しており、しかも内部者取引の共犯や幇助犯としてではなく、独立の類型として規制していると思いますけれども、日本法と比較した場合に、2つの点で違いがあると思います。

第1は、黒沼先生がすでにご指摘された点ですけれども、EUの場合には、第2次以下の情報受領者も規制の対象となっておりますので、そうすると、ますます見つけられないという場合が増えてくるという状況がございます。したがって、情報伝達行為の規制を考えるときには、やはり、内部者取引の規制の範囲がどこまでなのかという論点が密接に関連してくると思われます。

第2は、今度は逆に、EU法が日本法よりも要件を絞っている点といたしまして、内部者情報を利用して内部者取引を行うことが違法とされており、「利用する」という要件がございます。「利用する」という要件は、立証がなかなか容易ではないということがございます。情報提供行為を、事前的に規制するということは、今申し上げたような第2次情報受領者以下の者も規制するとともに、内部者情報を「利用して」行った取引であることという要件がかかってくるということとの関係で、EU法は極めて厳格に、情報の推奨行為ですとか、伝達行為を規制しているということになるかと思います。要するに、内部者取引を法律に書いてあるとおりに実効的に規制することは難しいという背景があるのです。情報伝達行為や推奨行為を広く規制しているのは、このことと関連していると思われます。

このように、情報伝達行為について検討する場合には、内部者取引の要件が何であるのか、内部者取引の対象者の範囲はどこまでかということとの関係を認識しながら、議論していく必要があるのではないかと考えております。

そのような観点に留意しながら、そうすると現行法の要件や内部者取引の範囲の下では、情報伝達行為の禁止は限定的になる可能性がありますけれども、方向といたしましては、独自の類型として、情報伝達について、明確に規制していく方向で議論していくことが重要なのではないかと感じております。以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。佐伯委員、どうぞ。

○佐伯委員

関連してお願いなのですけれども、先ほど神作先生から、EUでは利用が要求されているので、立証が容易ではないということから、伝達自体も規制しているのではないかというご指摘があったのですが、例えば、ドイツ等で、実際に伝達だけで処罰されている例が、本当にあるのか。インサイダー取引が行われているけれども、インサイダー情報の利用の立証が困難なので、伝達をとらえて処罰するということが行われているのだとすると、本当に伝達だけで処罰という例があるのかということも、調べていただきたいと思います。

追加で、先ほどの私の意見を補足いたします。私も、伝達行為を規制すること自体、もちろんどのような類型について規制するかということは、議論が必要かと思いますけれども、規制すること自体に反対というわけではなく、刑罰規定を設けることは、やはり適当ではないのではないか。

それは、投資家の信頼は、インサイダー取引が行われて害されるわけで、その前の段階、インサイダー取引は、未遂が処罰されていないわけですけれども、そのさらに前の段階にまで刑罰を課すということは、行き過ぎではないかと考えているということです。

○神田座長

どうもありがとうございました。

なお、海外の状況の調査は、これから事務局においてする予定ですので、もしこういう点もあればというものがあれば、今、佐伯委員からも言っていただきましたけれども、別にこの場でなくても結構ですので、事務局にお寄せいただければありがたく思います。この場で出していただいても、結構でございます。

ほかに、どの点でも結構ですので、いかがでしょうか。田島委員、お願いします。

○田島委員

情報伝達行為の規制対象をどう考えるかの前提として、1つ教えていただきたいことがあるのです。資料3の18ページの2の公開買付けに関連したインサイダー取引の事案として挙げられております事件で、これは情報伝達者であるSMBC日興証券の元執行役員を、正犯として告発された事例でエントリーされていますけれども、この場合は、どのような事実関係で、どういった要素をとらえて、単なる情報伝達者ではなくて、インサイダー取引の正犯というふうに判断されて、告発されたのかという点について教えていただきたいと思います。

○寺田総務課長

監視委員会のほうで、告発し、その後起訴されたものでございますが、まだ公判前のものでございますので、私どもも、具体的にどういう行為をもって、正犯と認定したかということについてのつまびらかなところは、この場では差し控えさせていただければと思います。申し訳ございません。

○神田座長

よろしゅうございますでしょうか。どうぞ、池永委員。

○池永委員

若干、感想めいたことを申し上げますけれども、先ほど何人かの委員からご指摘があったとおり、今回のいわゆる増資インサイダー事件は、証券会社から情報が漏れている。その場合に、先ほど上柳委員からご指摘がありましたけれども、私も、昔の損失補てんとか利益供与と同じような根本的な原因みたいなものがあるように感じておりまして、この部分は、そういった部分も含めて考えなければいけないかなと思っております。

他方において、証券会社は、かなり内部で、インサイダー情報あるいは法人関係情報をコントロールしようとする体制・機能を、相当の間、積み重ねておりまして、特に、先ほど綿貫委員のほうからご指摘のあったような、不心得者が出た場合に、どうしても、それはとめられないという部分がある。したがって、除外規定の部分も十分慎重に検討する必要があるのではないかと思います。

私自身は、情報伝達者に対する独自の規制は必要だろうとは感じておるのですけれども、やはり、正当な業務にあまり影響を与えるようなことをやりますと、市場に対して、非常にネガティブなインパクトが出てしまうのではないかという点を恐れておりまして、適切な除外規定を、やはり念頭において、よく考えておく必要があろうかと思います。

発行会社等のほかの部分については、証券会社から情報が漏れる場合と、かなり様相が違うのではないかなと思っておりまして、阿部委員のほうから、発行会社についての懸念のご指摘がありましたけれども、こういったところも、やはり慎重に考えておく必要があるのではないかと思っていまして、非常に、とても難しい問題だなとも感じております。

ただ、おそらくこれだけ情報伝達行為そのものが、インサイダー事件をかなり引き起こしている点を見ると、伝達行為自体の処罰は、やはり真剣に考えなければいけない。法益としては、やはり市場の公正を守るというところが、中心になってくるのかなと思っております。

感想めいたことで恐縮ですけれども、以上です。

○神田座長

ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。どうぞ、川口委員。

○川口委員

先ほど、私、刑事罰の話をしたのですけど、この論点は、情報伝達行為への対応としての刑事罰というお話であれば、少し勘違いしたことを申し上げたかもしれません。ただ、インサイダー取引全体の刑事罰のあり方をどう考えるかということも、また、別の論点としてはあり得るかなと思います。

増資インサイダーの話が出ていましたけれども、私は、証券会社の情報管理がきちんとできていれば、情報伝達を法で禁止するまでもなく、それで防げるような話なのかなと思っていました。行政処分を証券会社に下せば、十分ではないのかという意見もあり得ます。しかし、完全な情報管理システムの構築は不可能でしょうし、人の口に蓋はできず、その者を会社で処分しただけでは不十分かもしれません。そうであれば、情報提供者のほうも、直接にインサイダー取引規制の対象に含める必要がありそうです。

ただし、これまで多くの方がおっしゃいましたように、情報の伝達を全面的に禁止するのではなくて、過剰規制を免れるように、正当事由をいろいろ考えていく必要があるかと思います。

インサイダー取引の悪性は、市場への悪影響、投資家への信頼喪失にあるので、情報の伝達によるインサイダー取引が行われて、初めて規制の対象にすべきと思います。私自身は、今のところ、適用除外を認めつつ、情報の伝達とそれによる取引が認定される場面で、情報受領者及び情報提供者を、両方処分するのがいいのではないかと思っております。

○神田座長

どうもありがとうございました。どうぞ、内田委員。

○内田委員

私も発行会社の中で、いろいろ情報をハンドリングする実務を担当しております。趣旨は非常に理解できるところもございますけれども、この体系なり、ルールが、それぞれの発行体の社内の実務面でのルールにも、かなり影響を及ぼしてくるような気がいたしますので、実務面からのインプリケーションといいますか、影響も十分に検討の中に盛り込んでいただきたいと思います。以上です。

○神田座長

どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

大体一通り、皆様方からご意見をいただきました。前途多難というか、専門的な議論をすると、なかなか難しそうですね。これから、海外調査もしていただきますし、皆様方からもたくさんご指摘をいただきましたけれども、先ほどの横畠さんの本は、何度も引用されているのですが、資料3でいうと、20ページあたりで、伝達行為に係る処罰の話なのですが、何というか、慎重な書き方というか、伝達行為については、これを直ちに処罰するまでの必要性に乏しいように考えられると書いてあります。これは当時の説明ですので、この辺はやはり議論がありそうです。

あと、もう一つ、証券会社ですとか、あるいは、発行会社とかのお立場というか、ご指摘等も伺って、何か抽象的に議論しようとするとなかなか難しいですよね。どういう場合に、どういうルールを設けるのか、例外をどうするのかという具体的なことを議論したほうがよさそうですね。少なくとも、最近問題になっているものは、非常に単純だと私は思うのです。公募増資あるいはTOBについて、マーケットが知らない未公表の情報がある。それを知って取引をすれば儲かる。それを証券会社の役職員が営業に使うというのは、これは適切ではないことは明らかだと思うのです。

それをどういうルールにして、禁止するのかはともかくとして、その部分は、明らかに不公平な、不公正な行為だと思いますので、それを規制することが、別にマーケットに悪影響を及ぼすことはあり得ないし、証券会社の経営に悪影響を及ぼすことはあり得ないと思うのです。ですから、そこが中心部分のところで、もともと、今回、このワーキングが立ち上がった背景と言ってもいいと思いますので、そこは外さないようにする必要がある。

その先が、ここでのまさに難しいご議論をお願いすることになるわけですけれども、現在のインサイダー取引規制、あるいは、不公正取引規制の枠組みの中で、どういうルールをつくることが、今回の一連の事件をきっかけに、今後の日本の証券市場の信頼を取り戻し、公正さを確保することになるのかというところです。そこは非常に難しいと思いますけれども、今後、ご審議をいただくということかと思います。

まだ、若干、時間がございます。佐伯委員、どうぞ。

○佐伯委員

たびたび恐縮です。今、神田先生からご指摘のあった、今、問題になっている類型を、インサイダー取引の前の段階、私の感じだと、前の前の段階という感じがいたしますけれども、あるいは、黒沼先生のお言葉をかりれば、抽象的危険のさらに抽象的危険犯という形で規制するのではなくて、不公正な取引の1つの類型として取り出して、規制するということは考えられるのではないか。今、問題になっている類型に限って、考えられるのではないかという気がいたします。そういう形でもご検討いただければと思います。

○神田座長

どうもありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。よろしゅうございますか。

そうしましたら、また、次回以降、延長することもあるかもしれませんので、今日は、時間が、予定した時間より多少早いのですけれども、このあたりにさせていただきたいと思います。

皆様方には、大変活発なご指摘を多数いただきまして、ありがとうございました。

なかなか難問が多そうですけれども、さらにお気づきの点がありましたら、この会議の外でも、事務局のほうまで、あるいは私まででも結構ですけれども、お知らせをいただければ、大変ありがたく思います。

本日いただきましたご意見、ご指摘を踏まえて、次回以降の具体的な検討に移らせていただきたいと思います。

なお、調査のほうは、引き続き、事務局のほうでさせていただく予定です。

次回でございますけれども、企業サイド、取引所、証券界、投資家サイドなどから、それぞれの取組み、あるいは、要望、その他についてヒアリングをさせていただくということを、現時点では考えております。

それでは、最後に、事務局からご連絡がありましたら、お願いいたします。

○増田市場機能強化室長

次回のワーキング・グループの日程でございますが、海外調査のほうもございますので、9月の中下旬をめどに、皆様のご都合を踏まえた上で、後日、事務局よりご案内をさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

事務局からは、以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは、以上で、本日の会議を終了させていただきます。どうもありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局市場課市場機能強化室(内線2644、3943)

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