金融審議会「インサイダー取引規制に関するワーキング・グループ」(第3回)議事録

1.日時:

平成24年10月16日(火曜日)17時00分~18時31分

2.場所:

場所:中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室

○神田座長

それでは予定の時間になりましたので、始めさせていただきます。インサイダー取引規制に関するワーキング・グループの第3回目の会合になります。

皆様方には、いつも大変お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございます。

早速ですけれども、議事に移らせていただきます。本日ですけれども、3つの諮問事項のうちの1つ目に当たります、「情報伝達行為への対応」について、皆様方にご審議をお願いしたいと思います。

お手元の議事次第にありますように、事務局からお手元にお配りいたしました論点メモ、これをご説明いただいて、それぞれの論点について皆様方にご審議、ご討議をお願いするという流れで議事を進めさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

論点メモというのは、お手元の資料1になりますけれども、大きく分けますと3つの項目に分かれると思います。第1が1ページから8ページまでの「I 情報伝達行為への対応」であります。第2が9ページから11ページまでの「II インサイダー取引の罰則について」であります。そして、第3が12ページ以降、「III 公開買付対象者に係る位置付けの見直し」ということになります。

したがいまして、全体を3つに分けて説明をしていただいて、ご審議をいただくこととしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

まず、第1の情報伝達行為への対応に関連する事項につきまして、事務局から論点メモの説明をお願いいたします。

○増田市場機能強化室長

では、資料のご説明をさせていただきます。

まず、情報伝達行為への対応、1ページ目の違反事案の状況でございます。証券取引等監視委員会による近年のインサイダー取引に係る課徴金勧告・刑事告発の事案については、いわゆるインサイダー取引の会社関係者による違反行為に比べますと、こういった者から情報伝達を受けた者、いわゆる第一次情報受領者による違反行為が最近増加しておりまして、違反事案の多数を占める状況になっているところでございます。また、今般問題になりました公募増資に係るインサイダー取引につきましても、引受け主幹事証券会社の営業職員による情報伝達に基づいて、インサイダー取引が発生したところでございます。

インサイダー取引規制導入時からの状況変化でございますが、近年増加している中で、特に我が国市場に対する内外投資家の信認が損なわれかねない状況になっているのではないかということでございます。

2ページ目でございます。刑事罰に関して申し上げますと、当初は6月以下の懲役等に過ぎなかったわけでございますが、3年以下の懲役等、それから5年以下の懲役等と法定刑の引上げが行われておりまして、インサイダー取引に対する違法性の認識が社会的にも高まっている状況にあるのではないかと思われます。

あわせて、情報伝達行為について、刑事罰についてはどういう状況か申し上げますと、情報伝達者が教唆犯・幇助犯として処罰されたケースは、教唆犯として1件あるのみでございます。概要は資料2の3ページに書いてございます。なお、注でございますが、平成16年に課徴金が導入されておりますが、教唆犯・幇助犯については課徴金の対象外とされているところでございます。

それから、金融取引がグローバルに行われる現在では、諸外国との規制環境の同等性が重要であると考えられますが、前回ご報告させていただきましたように、米国では情報伝達行為が刑事罰・民事制裁金の対象、それから欧州でも、特に英・独・仏の地域を見ますと、刑事罰・制裁金等の対象とされているところでございまして、欧米ともに、インサイダー取引に加え、情報伝達行為も規制対象となっているところでございます。

3ページ目でございます。情報伝達行為等への対応ということで、情報受領者によるインサイダー取引につきましては、情報伝達行為がなければ生じることがないということで、情報受領者によるインサイダー取引を防止するためには、不正な情報伝達を断つことが重要なポイントとなってくると考えられます。縷々述べましたように、最近の状況を踏まえますと、情報伝達行為について抑止していく必要性が高まっているのではないかということでございます。

次に、取引推奨行為への対応でございますが、内部情報を知り得る立場にある者が取引推奨すれば、重要事実の内容を伝達しなくても、推奨を受けた者は何らかの重要事実が現にあるものと考え、取引を行う誘引が働くものと考えられます。

また、内部情報を知る者が、一部の者に対し不正に取引推奨を行い、それによって取引が行われるということは、インサイダー取引規制の制度趣旨でもあります一般投資家にとって著しく不公平で、我が国市場の公正性・健全性に対する一般投資家の信頼を失うことにもなり得るのではないかということでございます。

また、仮に情報伝達行為を規制した場合につきましては、重要事実の内容を伝えずにこれを仄めかし、または重要事実を知り得る立場にあることを示しつつ取引を推奨することで、相手方に利益を得させるような、いわゆる潜脱行為が行われる恐れもあるのではないかということでございます。

4ページ目でございますが、欧州におきましては、先ほども申し上げましたが、情報伝達と並んで、刑事罰・制裁金等の対象になってございます。また、米国では法令上は明確には規制対象とはされておりませんが、法令違反となり得るという判例も出ているところでございます。

上記の点も踏まえまして、重要事実を知って行う一定の取引推奨行為も規制対象とすることについてどう考えるかというのが論点でございます。

5ページ目は、規制の対象でございます。規制対象を検討するに当たりましては、情報伝達・取引推奨行為への規制が過度に広範なものになることによって、上場会社等の健全な活動に支障が生じることのないように留意する必要があると考えられます。

情報伝達・取引推奨行為について規制を設ける場合には、金商法が「金融商品等の取引等の公正、有価証券の流通の円滑、資本市場の機能の十全な発揮による金融商品等の公正な価格形成等」を図ることを目的としていることを踏まえますと、証券市場あるいは金融商品の取引と結びついた不正な情報伝達・取引推奨行為を対象とすることが考えられるのではないかということでございます。

その際、論点としまして、まず、取引を行わせる目的の要否ということで、上場会社では、例えば業務・資本提携の交渉、法律相談等、健全な業務活動におきまして、重要事実を伝達することがございますし、また、IR活動においては、重要事実の存在とは無関係に、会社への投資を勧めるようなケースもございます。こうした上場会社の健全な業務活動の中で行われる情報伝達・取引推奨行為に支障が生じることがないような要件として、例えば「『取引を行わせる目的』をもって重要事実を伝達・取引推奨する」などの主観的な要件を加重することについてどう考えるか。あるいは、これに代わる適切な要件が考えられるかが論点でございます。

それから、取引が行われたことの要否でございますが、証券市場あるいは金融商品の取引と結びついた不正な情報伝達・取引推奨行為を対象とする場合につきましては、当該伝達・推奨行為が現実の取引に結びつかない場合にまで制裁等の対象とする必要性は低いとの考え方があり得ます。この点についてどう考えるかということでございます。取引が行われたことを要件とする場合には、客観的な処罰条件とすることが考えられるのではないかというところでございます。

それから、規制対象者でございますが、今回、検討の発端となりましたのが、インサイダー取引の防止を背景としたものであるということからしますと、情報伝達に基づいて取引を行った者がインサイダー取引規制違反となるような情報伝達・取引推奨者、つまり会社関係者(公開買付者等関係者に係るインサイダー取引規制の場合は公開買付者等関係者)を原則として規制対象とすることについてどう考えるかが論点でございます。

次に、エンフォースメントということで、金商法では不公正取引に関してエンフォースメントの手段として刑事罰及び課徴金制度が設けられております。今般、検討課題としております情報伝達・取引推奨行為につきましても、その規制の実効性を高めるために、刑事罰及び課徴金の対象とすることを検討することが適当ではないかというところでございます。

7ページ目でございます。金商業者等の一定の市場仲介機能を担う者の役職員につきましては、不正に一部の者のみに重要事実の伝達・取引推奨を行うようなことが生じますと、そのような者に担われている市場仲介機能によって支えられている証券市場に対する投資家の信頼が大きく損なわれてしまうということがございます。

金商業者等は、証券市場に対する投資家の信頼を確保するために、投資家の投資判断に影響を与えるような他社の重要事実が不公正な取引に結びつくことがないように、いわゆるチャイニーズ・ウォール等を設けて、内部情報の管理体制を適切に構築しなければならないものと考えられます。また、実際に規制もされているところでございます。こうした観点を踏まえますと、金商業者等の役職員が業務の推進等を図るために不当に情報伝達・取引推奨を行った場合には、それにより現に取引が行われたか否かにかかわらず、相応の責任を問う必要があるのではないかということでございます。

また、金商業者等につきましては、情報伝達・取引推奨を行うことにより、それに関連する幅広い利得、具体的には引受手数料、売買手数料などを得ることが類型的に考えられることも踏まえますと、課徴金の水準等についても、こうした点を踏まえた特別な考慮が必要ではないかというところでございます。

このため、金商業者等の一定の市場仲介機能を担う者の役職員に対しては、情報伝達・取引推奨行為に関して、通常の規制よりも厳格な規制を設けることについてどう考えるかが論点でございます。

8ページ目でございますが、重要事実を要求する行為への対応でございます。近時話題になりました、公募増資に関連するインサイダー取引事案におきましては、ヘッジファンドのファンド・マネジャーが、証券会社のブローカー評価に基づいて取引発注分量等を決定することを背景としまして、証券会社に対する影響力を強め、証券会社に対し、いわゆる「耳寄り情報」の提供を求めていたことが認められております。

このような重要事実の要求行為は、重要事実の伝達を助長するものでございますが、それにより情報を得て取引を行えばインサイダー取引規制違反になるという点もございます。これらの点を踏まえて、重要事実の要求行為について規制を設ける必要性をどう考えるかというのが論点でございます。

説明は以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。それでは今、説明をいただきました、お手元の資料でいうと8ページまでにつきまして、皆様方からご質問、ご意見をいただきたいと思います。どなたからでも、どの点についてでも結構です。

阿部委員、どうぞ。

○阿部委員

前回のワーキングで情報伝達行為に対して規制をするならば、インサイダー取引が行われたということを要件とするべきということを申し上げたので、そういう意味では今回の論点整理の5ページ、6ページはそのとおりかと思います。 しかし、7ページにある市場仲介業者に対する対応というところで、2つ目の項目につきまして、要は取引が行われたか否かにかかわらず「責任が問われる必要はないか」というところは、若干違和感があります。当然、こういうことをやっていけないのはわかるのですが、これは、要は金商法の中でも業者に対する監督、指導の話であって、インサイダー取引規制の中にここまで入れることについては、やや無理があるのではないでしょうか。関係業界がどのように考えていらっしゃるかにもよりますが、これは違和感があります。同じく、その次でありますが、課徴金の水準について、証券会社だと罰則、ペナルティーを重くすべきというご意見はわかるのですが、そこはもっと議論すべきではないでしょうか。

それから8ページですが、要求行為も問題があるというのはわかるのでありますが、実際に聞いただけで売買につながらなかったものまで、どう罰するのでしょうか。実際にインサイダー取引が行われたという段階で、これが対象になるということはわかるのですが、「何かお薦めはないですか?」と言って聞いてしまったら、もうそれですぐペナルティーというのは厳しすぎるのではないかと思います。以上です。

○神田座長

どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

平田委員、どうぞ。

○平田委員

今回お示しいただいたものに関しましては、かなり厳しい内容であると思っております。こういう事件を起こしてしまった証券界が悪いといえば悪いので、ある部分、受け入れざるを得ないとも考えておりますが、幾つか、意見を言わせていただきたいと思っております。

まず、3ページ目の「取引推奨行為への対応」の1番目の丸の部分でございます。「内部情報を知り得る立場にある者が取引推奨すれば、重要事実の内容を伝達しなくとも、推奨を受けた者は何らかの重要事実が現にあるものと考え、取引を行う誘因が働くものと考えられる」という記載がございます。確かにそういう部分がある一方で、証券会社は重要事実を持っていなくても、通常の情報伝達を行っています。基本的には現に適正な情報伝達があり得ることを前提とすれば、ここの書きぶりは少し粗いのではないか、もう少し書き込んでいただいたほうがいいのではないかと思います。そもそも情報の受け手は、情報提供者が重要事実を持っているか持っていないかを知り得る立場にないはずであり、「知り得る立場にある者」と単純に論じてしまうと、証券会社が情報提供したものが全部、何となくいけないことのように読めてしまうことにもなりかねませんので、少し丁寧に書き込んでいただければと思います。

それをベースに考えますと、取引推奨行為を行う者が、重要事実の内容を仄めかしたり、あるいは重要事実を知り得る立場にあることを示しつつという条件を入れていただくのがいいのではないかと思っております。全く情報伝達行為がなくても取引を推奨しただけで違反ということに関しては、通常の取引推奨行為を阻害する要因になるのではないかと、懸念を持っております。

次に、5ページ目の「規制対象」についてです。今、阿部委員から取引を行わせる目的をかなり狭めていただいたのでいいのではないかというご指摘がありましたが、その一方で、懸念としては、マスコミ等から情報が漏れることにより、市場のうわさとなることが多々あります。相当早い段階で市場にうわさが流れることもありますので、そこをどういうふうに考えるのかについて議論が必要ではないかと思っております。

それから7ページ目の「市場仲介業務を担う者をめぐる規制」については、我々としては厳しいというのが正直な感想でございます。確かに、証券会社が情報を提供して取引に結びつき、その結果としてインサイダー取引が行われることはあってはならないことであります。一方で阿部委員からもご指摘がありましたように、これは業規制の範囲であることを考えた場合においては、証券会社に対して法人関係情報の管理、あるいは法人関係情報を提供して勧誘してはいけないという業規制が既に別途存在しております。そこでの整合性を考えた場合に、どのように整理するのでしょうか。仮に業規制の場合は役職員へのペナルティーがないのではないかという議論があるとすれば、それは役職員については会社関係者に適用を考えている規制をかけていくことが可能です。また、証券会社のみ「取引が行われた否かにかかわらず」という記述は、厳し過ぎるのではないかというのが正直なところでございます。

最後に8ページ目の「重要事実を要求する行為への対応」についてです。情報を要求した者に対して罰則をかけることは厳しいというのは、多分一般的な感触なのかもしれません。一方で証券界としては、力関係を見ますと、取引相手である機関投資家さんの力は相当強いのが実態でございます。したがいまして、損失補填に関しましては、損失補填を求めた者に対しても刑事罰がかかるような規定になっていることとの整合性を考えますと、ある程度、情報を要求した者にも罰則がかかるような議論はしていただけるとありがたいと考えております。以上でございます。

○神田座長

ありがとうございました。

川口委員、お願いします。

○川口委員

私も情報伝達行為を規制対象にするというのは、そういう方向でよいのではないかと思います。

そこでは、企業活動に必要な情報伝達を阻害しないというのが非常に大事だと思います。そのため、まず考えられるのは、内部者による情報伝達を禁止した上で適用除外を設けていくというやり方ですが、その適用除外を過不足なく定めていくというのは、なかなか難しい。そうすると、内部者が情報受領者に取引を行わせる目的で情報を伝達する行為を規制するという方法も選択肢の1つかなと思っております。

ただ、取引を行わせる目的といった主観的意図を、監督当局とか、検察等が立証できるのかという点がやや気になります。内心の問題になりますので。例えば相場操縦などでも、取引を誘引する目的というのが規定されていますので、そういう立法もあり得るのだと思います。しかし、そこがネックになって、相場操縦の規制は難しいと言われてきたので、その辺が少し気になります。相場操縦の場合も、情況証拠の積み重ねで誘引目的を認定するという裁判例が確立されているようなので、予見可能性は高まっていると思いますが、相場操縦の認定と、ここの認定とちょっと違うような気がしまして、少し気になるところです。

エンフォースメントにつきましては、やはり規制をするのであれば、当然刑事罰と課徴金の対象にしていくという話になるのかと思います。刑事罰の程度につきましては、取引を行った者に対するものよりも、情報提供者のほうが重いということはあり得ず、同等、あるいはそれより軽くあるべきではないかと思います。

情報伝達行為の規制について、アメリカのように信認義務を根拠にするなら、情報伝達をしたことそれだけでだめだという話になるのでしょうけれども、インサイダー取引を誘引するといいますか、引き起こす可能性を助長するという点に不正があるとするならば、今回、そういう整理だと思いますが、情報伝達行為は補助的なものとして、取引者に対するものよりも軽くあるべきではないかと思います。

もう1点気になる点は、情報伝達行為を課徴金の対象にするときに、利得相当額というような考えを維持するのであれば、一体その課徴金の額はどのように決めればよいのでしょうかね。間接的に情報伝達者は何か利得は得ているとは思うのですけれども、それを金銭的にどう評価するのかは、なかなか難しいかなと思っております。

○神田座長

どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

黒沼委員、お願いします。

○黒沼委員

2点ほど意見を申したいと思います。1つは、取引推奨行為について、これを規制するときに、重要事実の内容を仄めかしたり、あるいは重要事実を知り得る立場にあることを示しつつという点を要件化したらどうかというご意見がありました。しかし、この取引推奨というのは、会社関係者等であって、情報を知っている者が取引推奨をする行為を禁止しようというものでありまして、その取引推奨を受けた者は、やはり会社関係者との関係があって、特別な地位にあるために、そのような取引推奨を受けた者の行う有価証券の売買等が、一般投資家との関係で不公正と見られると考えられると思います。したがって、この場合には仄めかしとか、あるいは立場を示すということを要件にする必要はないと考えます。

もう1点は、市場仲介業者、金融商品取引業者等の情報伝達、推奨行為について、現に取引が行われたか否かにかかわらず処罰をするという点ですが、これも事務局の案に賛成したいと思います。私個人は、業者に限らず一般に、現に取引が行われたか否かにかかわらず処罰の対象にするほうがいいと思うのですけれども、そこまで一足飛びに改正するのが難しいということであれば、業者についてのみ、このような規制を行うことには賛成です。金融商品取引業者等は、インサイダー取引が行われないような公正な市場を確保するということに責務を負っているわけですから、一般の投資家に比べて重い処罰の対象になることもやむを得ないと思います。現に、損失補填の禁止については、損失補填の申込みを行っただけで、実際に損失補填の約束がなされなかった場合とか、あるいは実行がなされなかった場合でも、証券会社の役職員等は処罰の対象になっていますので、そのような例もあることから、こういった立法は妥当であると考えています。

○神田座長

どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

神作委員、どうぞ。

○神作委員

ありがとうございます。3点申し上げさせていただきたいと思います。

まず、情報伝達行為と推奨行為について規制する方向につきましては、前回、詳細にご報告いただいた米国やEU諸国の動向、それから現実に我が国で起こった問題に対処するためにも、何らかの規制を導入することが必要であり適切であると思います。

そこで、具体的に情報伝達に係る規制のあり方についてでございますけれども、川口委員も指摘されておられましたように、この規制をするとしても、適用を除外すべきものがあるので、どのような情報伝達行為が正当なものとして許容されるかという点について、適切な適用除外ルールを設けるという観点からさらに検討を行う必要があると思います。

また、そもそも情報伝達行為を規制する趣旨というのは、内部者取引の予防のためでございますので、内部者取引規制の範囲によってその範囲が画されることになると考えられます。この点に関しまして、EUで情報伝達行為が単独の処罰行為となっているのは、第二次情報受領者以下も内部者取引規制の対象となっているのにもかかわらず、第二次、第三次と情報源から遠ざかれば遠ざかるほど、現実問題としては摘発が次第にむつかしくなるという問題が背景にあると思われます。そこで、第二次情報受領者以下の者についても内部者取引を禁止するという規制を完結させるためには、情報提供それ自体を独立の処罰の対象にすることにより、少しでも実効性のあるルールにすべきであるという考え方があったと思われます。そういたしますと、第一次情報受領者に限るという現行法の立場を動かさないという前提で議論する場合には、インサイダー取引が実際に行われたことを条件にすることも大いにあり得る考え方ではないかと思います。

これに対して、第2に推奨でございますけれども、推奨について規制する理由は、3ページに大きく3つの理由が挙がっておりますけれども、そのうちどの理由に着目するかによって、規制のあり方が変わってき得ると思います。したがって、取引推奨行為への対応を規制する場合には、規制の趣旨をよりはっきりさせる必要があると思われます。

例えば、3ページの取引推奨行為への対応の真ん中の黒丸ですと、取引推奨を行うと、一般投資家の信頼を失うということが記載されておりますが、このように取引推奨を行うこと自体で一般投資家の信頼を失うということになれば、そのこと自体悪性が強い行為であって実際にインサイダー取引がなされたかどうかは問わないという考え方もでてき得ると思われます。そうではなくて、一番下の黒丸のように、むしろ潜脱行為を規制するものだというように推奨行為の規制の趣旨を限定的に理解するとすれば、推奨行為についても実際に内部者取引が行われたことを要件にするということも考えられると思います。

取引推奨行為について、今、複数の理由が載っていますけれども、一体どれが決め手になる理由なのかということについて、さらに議論を尽くしていく必要があると思うところでございます。

それから、第3でございますけれども、金商業者等について、市場仲介業務を担う者として、特別に重い責任をという点につきましては、これまでの内部者取引の考え方というのは、何人であっても所定の要件を満たせば罰せられるという考え方だったかと思いますので、特定の職種の者を区別して扱うという点で、従来の考え方とは少し違うようにも思われます。そのように理解すれば、本来であれば、業法ですとか、また何よりも自主規制等で対処すべき問題であるようにも思われますけれども、それらが十分にワークしていないというのであれば、やはり法規制をするということも十分にあり得ます。金商業者等の情報提供により、一般投資家の信頼が大きく損なわれるということであれば、インサイダー取引が実際に行われたことが必ずしも要件ではないという考え方もあり得るように思われます。

いずれにいたしましても、現行の内部者取引規制の範囲等々の関係で、これらの行為について、一体どこまで規制の対象にするかについて、さらに慎重に議論して範囲を画していく必要があると思われます。以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。

佐伯委員、お願いします。

○佐伯委員

私は第1回目に情報伝達行為の処罰については、インサイダー取引の教唆・幇助に当たるような行為に限って、処罰するのが妥当ではないかと申し上げたのですけれども、その点で、現にインサイダー取引が行われたことを要求するということは、妥当なことではないかと思います。

もう一つ、教唆・幇助類型に限定するためには、現に取引が行われることを認識していたということが必要になってくるわけですけれども、それを担保する主観的な要件として、目的ということを要求することも、目的の意義の解釈によっては、教唆・幇助類型よりも限定される可能性が出てまいりますので、ほかの要件もあるかもしれませんが、基本的にはこのような主観的要件を要求するということは妥当だと思います。

それから、推奨行為につきましては、先ほど神作先生がご指摘になられましたけれども、3ページに挙がっている3つの理由の中では、第3の潜脱行為を防ぐということが、もし禁止するとすれば、私は主たる禁止の理由だろうと思いますので、やはり推奨行為についても伝達行為と同様に要件を絞るべきだろうと思います。

市場仲介業者につきましては、伝達行為と同じようにインサイダー取引との関係で、処罰するということであれば、伝達だけで処罰するというのは、私は妥当ではないと思います。それとは別に先ほど来、損失補填が事例として挙げられていますけれども、同じような趣旨で市場仲介業者には特に重い義務が課せられていて、その義務に違反することを処罰するということは考えられる、特に、7ページに規制の理由といたしまして、金融商品取引業者等の役職員が業務の推進等を図るため不当に情報伝達・取引推奨を行った場合は、という理由が挙げられていますが、私はこの業務の推進等を図るため不当にという点が、特に重い義務に違反して、市場の公正さに対する信頼を害するということを基礎づけるのではないか。もし規制するとすれば、そこに理由を求めるべきではないだろうかと思っております。以上です。

○神田座長

どうもありがとうございました。

武田委員、お願いします。

○武田委員

まず1つは、審査の現場というところから補足といいますか、ご紹介をさせていただきますと、我が国におけるインサイダー取引の調査、審査の端緒というのは、ご案内のとおり、基本的には実際に市場で行われた売買ということではないかなと思います。あるべき規制の議論、すなわち不正な情報伝達行為は許すべきではないとか、一定の抑止効果を期待するというような点からはかけ離れているかもしれませんけれども、規制の実効性ということを高めるという観点から、今のようにあくまでも取引のほうからアプローチをしていくというのが実態であるということを申し上げたいと思います。

果たして、情報提供というところからアプローチをして、提供行為が違法かどうかというのが本当にわかるのかと言いますと、私の感じですけれども、内部告発であるとか外部の情報提供というようなものが想定されるのではないかなと思います。やはり取引行為からさかのぼらないと、なかなか不正な情報提供とか取引推奨行為というのはわからないのではないかなという感覚を持っております。もちろん難しいからやらなくていいということではございません。

情報提供とインサイダー取引行為をセットにするか、情報提供、あるいは推奨行為だけでも罰するかということにつきましては、事務局に1つご質問ということでお聞かせいただきたいのですけれども、推奨行為をした場合については、実際に取引を行った人は重要事実を知らないで、どこかの銘柄を買いなさいよと言われて、買うわけですから、その行為自体はインサイダー取引には当たらないと思うのですけれども、そういう理解でいいかどうか。その場合、単体でやるというケースについては、推奨行為のみを罰するという建て付けになるのかどうか。そこの最後のところを教えていただきたいと思います。

○増田市場機能強化室長

そういう理解でおります。

○神田座長

以上でよろしゅうございますか。

○武田委員

はい。

○神田座長

どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

川口委員、どうぞ。

○川口委員

業者について、規制を重くするかという論点なのですけれども、確かに証券取引などの仲介者として、重要な社会的使命を負っているという点で、一般人よりも責任は重いという説明は説得的だと思います。ただ、現在でも、法人関係情報を提供して勧誘する行為は禁止行為とされています。ですから、情報を伝達して勧誘すれば、行政処分の対象にはなる。証券会社の中の情報隔壁が厳格に守られて、さらに法人関係情報の提供の禁止というものが十分遵守されていれば、おそらく今回の増資インサイダーというものは起きなかったのではないでしょうか。

行政処分ではエンフォースメントは不十分だということで、今回、情報伝達行為について、刑事罰を科して規制をするということかもしれません。もっとも、行政処分というプラスアルファの部分が既に存在しているというようなところに、さらに厳しい規制を追加する必要性があるのかというのが気になります。

また、趣旨が違うので問題はないという反論もあるのかもしれませんが、実際問題として、証券取引所や証券業協会などの自主規制機関から過怠金などの金銭的な制裁を証券会社は受ける立場にありますので、負担がさらに重たくなることを少し懸念しております。

○神田座長

ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

綿貫委員、お願いします。

○綿貫委員

ありがとうございます。7ページ目の点につきまして、2つございます。1点目は、今お話がありましたように、現行法でも不当な情報伝達・取引推奨行為は禁止されていますので、それ以上に何か厳しく規制されるということについて、やや私どもとしては説得力を感じない部分がございます。

その次のブレットポイントで取引業者が情報伝達・取引推奨を行うことによって、それに関連する幅広い利得を得ることが類型的に考えられるという記述があるのですけれども、これは業者とすると、いかがなものかなと。こういった行為を行うことによって、引受手数料・売買手数料などを得るとありますけれども、引受手数料というのは、チャイニーズ・ウォールの内側にあるわけですし、売買手数料というのはチャイニーズ・ウォールの外側にある。これを一緒くたに幅広い利得というのは、ちょっと論点が違うのではないかという気がします。すいません。私の理解が遅いのかもしれません。

それから、幅広い利得ということではございますけれども、一旦行政処分を受けてしまう、あるいは新聞報道等でこの証券会社は、どうもインサイダー取引の疑いをもって、何か検査が入っているらしいというようなことが発表されると、当然ながら、お客様のほうとしては、そういうところとは取引できないということで、引受部門が一生懸命推進している案件などが、そこで止まってしまいますので、利得と、それから実際の不当行為が行われたときに受けるリスクを考えますと、とても売買手数料などでは補えないような莫大な損害が生じますので、3つ目の点については、事実があまり反映されていないのではないかと思っております。以上です。

○神田座長

どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。できましたら、重要なことですので、ご発言を皆様からいただければと思います。

田島委員、お願いします。

○田島委員

情報伝達行為及び取引推奨行為への対応についてですけれども、どちらの行為も一般投資家の市場に対する信頼を害する行為であると思いますので、やはり独立して処罰の対象にし、課徴金を課すということを考えるべきではないかと思います。

現実にインサイダー取引が行われた場合に限って罰するかどうかという点につきましては、取引が行われようと行われまいと、このような情報伝達行為と取引推奨行為があること自体、一般投資家の市場に対する信頼を害するということに変わりはないと思いますので、取引が行われたかどうかにかかわらず、処罰の対象にすることができると思います。

ただ、正当な行為についてまで規制をするようなことになってはまずいと思いますので、その正当な目的をもって行われる情報伝達行為については、処罰の対象から外すべきだと思いますけれども、逆にインサイダー取引を行わせる目的をもって行った情報伝達行為を処罰の対象とするというような規制にしまして、主観的要件を立証するというのは、なかなか難しいものがあります。そういう方面からのアプローチにはしないほうがよいかと思います。

市場仲介業務を担う者をめぐる規制につきまして、特に重くするかどうかという点につきましては、特に市場にかかわる者として、きちんとした行動をとらなければならないという点を、重要と評価しますと、何らかの形で重く罰するということは検討する余地はあろうかと思います。以上です。

○神田座長

どうもありがとうございました。

池永委員、どうぞ。

○池永委員

5ページのところの規制対象で、取引を行わせる目的をもって、という主観的な要件を加重することについて、何らかの要件を設けて絞っていくという方向性は賛成です。また取引が行われることを要件とするという客観的な処罰要件をつけ加えるということについても、私は賛成したいと思います。いろいろ上場会社の方の現実の仕事ぶりをお聞きしますと、会社関係者の中での情報伝達がやはりすごく重要で、それが制限されてしまうと、業務がなかなか進まないという恐れがあります。やはり要件をで絞らないと、非常にネガティブな影響が起きてしまうのではないかということを恐れるわけです。ですから、こういった一定の縛りをかけていくというのは必要ではないかと思います。

それから、先ほどから出ています市場仲介業務を担う者の規制についてなのですけれども、重い義務を負っていることは確かなのですが、ここの部分だけ取り上げて、類型的に非常により重い単独の情報提供だけで処罰をするという建て付けは、本当に正しいのかどうなのかという点については、正直言って、ちゅうちょがあります。今回のいわゆる増資インサイダー規制のさまざまな事件を見ますと、明らかに適格機関投資家のほうの圧力が非常に強い。特に我が国の市場環境がそういう顧客に対応しないと、なかなか増資業務ができないということがあるのかもしれません。そういう状況で、業者の責任だけ重くするということについては、私自身、非常に迷いがあります。

まさに8ページにお書きになっているように、投資家サイドのいろいろな情報提供の要求の圧力を少し下げてあげないといけないのではないのかなという感じをしておりまして、私はむしろこちらのほうの規制を設けていくという必要性があるのではないかと感じております。以上です。

○神田座長

どうもありがとうございました。

内田委員、お願いします。

○内田委員

冒頭の阿部委員、今の池永委員と同じなのでございますけれども、取引を行わせる目的等をもって、重要事実を伝達し、取引を推奨するなどの主観的要件をつけていただくことが必要なのかと思っています。

一方で、立証が非常に難しくなるのではないかという意見もございますけれども、これは裏返しになりますと、ここが例えばということになっておりますが、この主観的要件を今後、設計していくときに、より誤解の生じないような、上場会社等での実務面を担当させていただく立場としますと、より明確化をしていただくことが必要かと思います。以上です。

○神田座長

どうもありがとうございました。

武田委員、どうぞ。

○武田委員

もう一言だけ述べさせてください。自主規制法人といたしまして、市場仲介者に対する規制につきましては、もう今回の事件は、社会的批判も十分理解もしておりますし、我々、マーケットにかかわる者として、きちんと対応していかなければいけないということで、とるべき対応はとっておるつもりなのですけれども、いわゆる自主規制機能の中で、法人に対しては、処分を実施したりということで、業者に対する責任と、業者に勤めておられる社員の方に対する規制と、2つあると思うのです。業者につきましては、私どもも今後、ここの議論を踏まえながら、今、進めている施策の中で何ができるかということを考えていかなければいけないとは思っているのですけれども、やはり社員の方にまでの規制は、全体的な、いわゆる協会さんのほうの不都合行為者への規制もございますので、そういった自主規制機関、自主規制機能の中での対応ということも、ぜひ、ご判断の中には入れていただきたいとお願いしたいと思います。

○神田座長

どうもありがとうございます。

委員でご発言をまだいただいていないのは柳川先生ですけれども、何か、もしあればお願いします。

○柳川委員

皆さんがお話しになった点と、特に大きな差異はないので、規制対象のところも、何人かの方からご意見があったように、取引を行わせる目的の要否のところで、ここに書いてあるようなことでやっていくことは賛成です。

ただ、やはりここは、あるべき論の話と、実際どこまで本当にチェックができるのか、そういう現実論の中でどこで線を引くのかという話とが、しっかりと峻別された上で、それぞれ整理されるということが、本来あるべき話だろうと思うのです。 やはり、何人かの方からお話があったように、現実論として、あまりにも厳しいことがルールとして入ってしまうと、本来あるべき情報伝達まで妨げられてしまうことは問題だ、だから厳しいルールにはできないというところは、そのとおりなのですけれども、この間の問題が起こったときに、多くの投資家の方々が感じた問題点も、やはり非常に大きなポイントでございまして、そこに対してどういう信頼性を確保するのかというメッセージは、法律でどう書くのかというのは少しずれるのかもしれませんけれども、審議会の報告書としては、少しメッセージとしてきちっと出しておくのは、1つの方向性としてはあり得るのかと私は思うのです。

ですから、現実論として、立法のところで線を引く際には、ここで書いていらっしゃるようなところを打ち出していくのが現実問題としてあって、副作用を大きくしないようにするという点では、ここは妥当な話だと思うのですが、それはそうなのだけれども、やはり本質論としては、もちろん問題がないところを問題があるとされてもいけないのですけれども、そもそもインサイダー取引、あるいは投資家の信頼性を損なうような取引に関しては、基本的には問題があるのだときちっとメッセージを出していくというところは、少しお考えいただければと思います。

そのほかのところは、結局、今の仲介業務のところも、個別の社員の方々がどこまで把握できるのか、あるいはどこまで線を引くのかということも、やはり大きくはそういうところにかかわっているので、基本的には、そういう法律でどうやって縛るのかということが、ここでの議論の場だとは思うのですけれども、やはりそれ以外のところでも、少しメッセージを出していただくということも考えていただければと思います。

○神田座長

どうもありがとうございます。

佐伯委員、お願いします。

○佐伯委員

情報伝達について、主観的要件を要求する意味、その場合に目的という概念がいいかどうかはともかくとして、主観的要件を要求する意味について、一言だけコメントをさせていただきたいと思います。正当な業務行為を処罰範囲から除外するというだけであれば、客観的要件として、正当な理由なくとか、不当にという要件にするということが考えられると思うのですが、もう一つ、正当な業務としてとは言えないけれども、しかし刑罰が介入するのは、私にはやはり行き過ぎだろうと思えるような事例、例えば家族や知人に、最近、合併の仕事で忙しいという情報を漏らして、たまたま、その情報に基づいてインサイダー取引が行われてしまったような事例では、客観的処罰条件だけですと、処罰されてしまう可能性がありますけれども、それはやはり私には刑罰の行使としては、少し行き過ぎではないかと思われます。やはりインサイダー取引が行われることを認識しながら漏らした場合に処罰することで十分ではないかと考えますので、やはり、こういう目的、あるいは別の形の主観的要件が、少なくとも刑罰規定としては必要ではないかと思っております。

○神田座長

どうもありがとうございます。大変重要なご指摘だと思います。ほかにいかがでしょうか。

黒沼委員、どうぞ。

○黒沼委員

皆さんのご意見を伺っていまして、少し感想めいたことを申し上げさせていただきたいのですけれども、私は、EUのことはあまり詳しくないですが、日本はインサイダー取引の執行をしっかりやっていると思います。EUに比べて取り締まりは厳しくやっていて、それだけ公正な市場が成立していると思います。

しかし法律のレベルで見たときに、EUと比較して穴が大きいです。情報伝達行為や推奨行為が規制の対象になっていないとか、第二次受領者以降の取引が規制の対象になっていないとか。これは何というか、世界の投資家に向けて非常に印象が悪いです。今回、調べていただいたように、EUのように情報伝達行為も、独立した規制対象としているけれども、法の執行においては、必ずしもそうはなっていないという例もあるわけです。今回の立法については、皆さんの総意に従ってなされればいいと思いますけれども、あまり難しく考え過ぎないほうがいいと思っています。つまり法律に書いたら、がちがちにそれを執行するというのではなくて、少なくとも刑事罰については、起訴便宜主義もありますので、法律として、世界に胸を張って出せるようなものにしていっていただきたいと感じている次第であります。ですから、今回は改正の対象ではありませんけれども、第二次受領者以降の規制についても今後、検討していただきたいと考えています。

○神田座長

どうもありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

阿部委員、どうぞ。

○阿部委員

黒沼先生がおっしゃるとおりでありまして、日本の、特に金商法等の業法は非常にがんじがらめにつくられており、一歩でもはみ出すとアウトという構造が多いのですけれども、ヨーロッパはそんな仕組みを採っている国はほとんどありません。どちらが成熟した国かというのは、人によって考え方が違うと思うのですけれども、もう少し別の仕組みがあるかと思います。

○神田座長

ありがとうございます。

今のお話とあまり結びつかなくて申しわけないのですけれども、業者の取扱いについて、今もう禁止されているのではないかというのは、そのとおりなのかもしれないのですけれども、しかし増資インサイダー事件が現に起きていて、社会問題になっているわけです。本日の論点メモは厳し過ぎるようなご発言があるのですけれども、厳し過ぎると業者にとって困るのかどうかというのは、必ずしもどちらとも言えない面があると思うのです。

私が例えば証券会社の新入社員か、あるいは2、3年目の社員で営業に属していまして、上司から仕事を取ってこいと言われ、あるいは機関投資家から情報を要求されたときに、もし私が処罰されるのだったら、私にはできません、したら処罰されますと言えますよね。損失補塡でも同じだと思います。要求されて、それをしたら、私が処罰されるのですと言えます。そうでないと、行政処分ぐらいならとは言いませんが、現場を考えると、断ることがしにくいということもあるのではないかと感じます。つまり、この問題は要件が問題であって、佐伯先生のご指摘にあったことですけれども、やはり、していけないことということが業者としてある場合には、それは禁止する、場合によっては刑事罰をもって禁止する。まさに損失補填と同じですけれども、そういうことも、必ずしも業者にとってマイナスにはならないと感じます。自主規制でと言われても現場では困ってしまうと思うのです。そういう面があるように思えます。

もう一つは、インサイダー取引だけではないと思いますけれども、被害者は誰かというと、それは市場ですということであって、それを知らずに売買していた一般の投資家ということでしょうけれども、増資インサイダーという場合は、やはり発行企業が大きな被害者です。インサイダー取引が一部の機関投資家によって行われるとしますと。

ですから、やはり日本の市場という話が先ほど出ましたけれども、重大な問題であって、だからこそ皆さんにご審議をお願いしているということではないかと思います。なかなか具体的な要件をどうしたらいいのかというのは、細かい点を詰めていくのが非常に難しいところだとは思いますけれども、ぜひ皆様方のお知恵で、何とか方向が出せればとは思います。

少し自分の感想が長くなってしまって、申しわけありませんでしたけれども、すごく重要なことですので、本日、何か方向が出るというわけではないとは思いますけれども、若干、皆様方の間にニュアンスの違いがあるように感じました。共通の面もあるとは思うのですけれども、一言で、本日の議論はこうでしたと、私から取りまとめられるところまではいっていないように思うものですから、さらに追加でお気づきの点やご意見があれば、ぜひお願いしたいと思います。いかがでしょうか。

よろしいですか。そうしたら、また後で発言していただいても結構ですけれども、今、申し上げましたように、私から、本日の皆様方のご議論はこうですと簡単に一言ではまとめられませんので、この論点メモの線で大方ご賛同いただけて、まあまあその方向でいいのではないかという部分と、若干、意見が分かれている部分、若干を超えて分かれている部分があろうかと思いますので、本日いただきましたご指摘を踏まえて、さらに先に進みたいと思います。

なお、この後、2点目、3点目とのご議論との関係で、第1点目に戻っていただいても結構ですので、もし特にさらにご指摘がないようでしたら、先に進ませていただきたいと思います。

それでは、2番目ですけれども、9ページからの罰則についてという部分です。

事務局から論点メモの説明をお願いします。

○増田市場機能強化室長

では、「II インサイダー取引の罰則について」、9ページでございます。

「はじめに」のところにございますように、公募増資に関連しまして、インサイダー取引事案等が発生したということで、現状の法定刑がインサイダー取引に対する抑止力として十分なものになっているか、点検を行う必要があるということでございます。

法定刑の推移につきましては、先ほども少し触れさせていただきましたが、6月以下の懲役等から3年以下の懲役等、5年以下の懲役等と引上げがなされてきているところでございます。このような改正が行われているところでございますが、実際の運用状況がどうなっているかというのが、10ページでございます。

近時の裁判例ということで、現行の法定刑が施行された後に行われた裁判の例でございますけれども、法定刑の上限である懲役5年に近い判決はございませんで、懲役1年6月から3年程度の判決になってございます。また、実刑が言い渡されたものは、右に書いてございます、2例のみということで、執行猶予期間が3年から5年程度のものになってございます。このため、裁判例におきましては、インサイダー取引規制の違反者に対する処罰が、法定刑の上限により不十分なものになっているという状況にはないということでございます。

また公正取引ルールとのバランスでございますが、「一般的な不正行為の禁止規制」(157条)が設けられております。これを設けた上で、「相場操縦行為に対する規制」というのが、個別の不正行為取引に対する規制として設けられているところでございます。法定刑について申し上げますと、「一般的な不正行為の禁止規制」や「相場操縦行為に対する規制」は10年となってございますが、インサイダー取引については、それよりも軽い5年となってございます。これについては、構成要件の明確化・客観化を重視し、取引の実質的な不正という点にまでは立ち入らずに、形式的に禁止対象を設定していることによるものと考えられます。

このため、法定刑を考える際には、取引の実質的な不正に着目している行為規制について、10年ということとのバランスに留意する必要があるのではないかということでございます。

11ページでございますが、欧米の法定刑との比較ということで、資料2の7ページにも参考につけてございますが、アメリカについては20年、イギリスについては7年となっておりまして、我が国の法定刑よりも重いものになっておりますが、一方でドイツについては5年、フランスについては2年という状況になってございます。ただ、我が国のインサイダー取引規制につきましては、欧米の規定とは異なりまして、動機や不正の意図というものを求めないという、いわゆる外形的、形式的な構成要件としている点で、規制対象が欧米よりもより広範であり、またエンフォースメントがしやすい状況になっていることに留意する必要があると思われますので、単純に欧米と比較することもできないのではないかと考えられます。

以上の点を踏まえまして、現時点において直ちにインサイダー取引規制の法定刑を引き上げる必要性についてどう考えるかというのが、論点でございます。以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。

こちらの論点は、インサイダー取引規制についての論点ですので、現在の法定刑を引き上げる必要があるかどうかというものであります。皆様方からご質問、ご意見をお願いします。

平田委員、どうぞ。

○平田委員

法定刑について主にまとめていただいた部分については、確かにご指摘のとおりと思う一方で、罰金刑に関しては、もう少し突っ込んで記載していただければと思っております。前回のプレゼンの機会をいただいたときに、少しお話をさせていただきましたけれども、日本の罰金刑に関しましては、アメリカに比べると2桁低い状況になっております。個人に対しては5百万円、一方、アメリカでは5百万ドルでございます。そういうところを考えますと、もう少し、この辺を引き上げる余地があるのではないかと思います。

10ページの備考のところで、実際の裁判事例を掲げていただいておりますけれども、2つの事案、両方とも上限の罰金5百万円に張りついているという実態もあります。これについては、少し検討の余地があるのではないかと思っております。

○神田座長

どうもありがとうございました。

阿部委員、どうぞ。

○阿部委員

確かに単独で見ますと、罰金の額はまだ引き上げる余地があるかのように見えます。しかし、経済的ペナルティーとしては、ほかにいろいろなものがついてくるわけでありまして、課徴金や、過怠金、もちろん追徴金もありますので、そういうものを合わせた総額を考えて、本当に今の罰金が妥当かどうかという議論をする必要があると思います。おそらく、実は罰金を引き上げれば抑止力が高まるということはないと考えられます。ほかの経済事犯でもそうなのですけれども、やはり一番効くのは実刑としての懲役刑です。ただし、これも大半は今、執行猶予がついているというので、議論はなかなかしにくいかと思うのですが、罰金の額だけを殊さらここで議論するというのではバランスを欠くと思います。経済的なペナルティー、特に法人に対するものを含めまして、全体を考えていただければと思います。

○神田座長

どうもありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。特にございませんでしょうか。

この論点は、皆様全員にご発言いただかなければいけないというほどのことではないのですけれども、もう少し、もしご意見があれば承れるとありがたいとは思います。

川口委員、お願いします。

○川口委員

罰則の話ではないのですけれども、このワーキングでは、課徴金の額は抑止効果になっていないのではないかという指摘がなされていたように記憶しているのですけれども、これは課徴金制度全体にかかわる話なので、今回は取り上げないということなのでしょうか。

○増田市場機能強化室長

まさにおっしゃるとおりでございますし、他人の計算の問題が次の論点で、次回、取り上げさせていただこうと思っておりますし、もう少し、また検討が進んで、お出しできるものが用意できた段階で、それは出させていただければということでございます。

○神田座長

次回以降、ご議論いただくということかと思います。ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

それでは3つ目の話に進ませていただきます。また、戻っていただいても結構です。3つ目は12ページ以降になります。「公開買付対象者に係る位置付けの見直し」に関する事項ということになります。

事務局から論点メモの説明をお願いします。

○増田市場機能強化室長

では「公開買付対象者に係る位置付けの見直し」、12ページでございます。近年、公開買付者等関係者による違反行為のうち、特に公開買付対象者、いわゆる被買付企業の役職員や、その情報受領者によるインサイダー取引の割合が増加しております。資料2の8ページ、9ページをご覧いただければと思いますが、件数も増えておりますけれども、約半数が、被買付企業の役職員又はその第一次情報受領者によるものという状況になっております。

現行法の建て付けを申し上げますと、被買付企業が公開買付者等と契約を締結している者又は締結の交渉を行っている者に該当いたしますと、被買付企業及びその役職員が会社関係者と同じ範疇であります公開買付者等関係者に該当することになります。実際の課徴金事案におきましても、公開買付者と被買付企業との間では守秘義務契約等が結ばれている場合が多く、これをもとに公開買付者等関係者に認定しているケースが相当数見られるところでございます。ただ一般的に、常に被買付企業がこういった守秘義務契約等の契約締結者とみなせるのか、認定できるのかどうかという点が問題になるわけでございます。

また、実際に公開買付者等関係者が、契約の締結・交渉・履行に関して、公開買付け等の事実を知ったときに規制の対象になっているわけでございますが、実際に守秘義務契約等の締結・交渉・履行に関し、そういった事実を知ったと認定できるとは限らない場合があるのではないか。仮に、例えば、先に公開買付け等事実が知らされてしまっていた後に、改めて守秘義務契約を結ぶような場合については、締結・交渉・履行に関し、と認定するのは難しい面があるのではないかと思われます。こういった点を踏まえて、現行規制の見直しを検討する必要があるのではないかというのが大きな論点でございます。

13ページでございますが、公開買付者等関係者の範囲ということで、現行の規制の建て付けとしては、公開買付者等の役員等にはじまりまして、先ほど申し上げましたマル4でございますが、公開買付者等と契約を締結している者又は締結の交渉を行っている者、マル5では、マル2又はマル4に掲げる者であって法人であるものの役員等ということで、対象が示されているところでございますが、こういった者の中から、さらに次の黒丸でございますが、公開買付け等の実施又は中止に関する事実を以下の態様で知ったときに、規制の対象になるということです。例えばマル1で申し上げますと、その者の職務に関し知ったとき。マル4に関して申し上げますと、当該契約の締結若しくはその交渉又は履行に関し知ったとき。マル5に関して申し上げますと、その者の職務に関し知ったとき。こういったことを通じて、規制の対象になることとされております。

14ページでございますが、以上のことから考えますと、現行規制の考え方としましては、公開買付者等の範囲は、公開買付け等事実について現実に知っている者であるか否かに基づいて対象にしようということではなくて、基本的には公開買付者等の内部にある当該事実を知り得る特別な立場にあるか否かにより画されているのではないかということで、規制の対象となるのは、かかる立場にある者がその職務等に関して現実に知った場合に限るとされていると考えられるのではないかということでございます。

論点でございますが、今回問題にしております、被買付企業及びその役職員が、公開買付け等事実を知り得る特別な立場にあると言えるかどうかが1つ目の論点でございます。この点について現状を申し上げますと、我が国における公開買付け等の大半は友好的なものであり、被買付企業につきましては、公開買付け等事実が公開買付者によって知らされるということでございます。また、敵対的な公開買付けの場合につきましても、実際には公開買付けに対する賛否を確認するために、あらかじめ告知する場合が多いのではないかと考えられます。買集めの場合につきましても、買集めを行う者が対象会社の経営に影響を及ぼす目的を有していることなどから、公表前に対象者に対して買集めに関する事実を告知する場合があると考えられます。

以上を鑑みますと、被買付企業及びその役職員につきましては、公開買付け等の事実を知り得る特別な立場にあると言えるのではないかということで、被買付企業及びその役職員も「公開買付者等関係者」の範囲に加えることについて、どう考えるかが、論点のマル1でございます。

論点のマル2でございますが、仮に被買付企業及びその役職員を「公開買付者等関係者」の範囲に加えたといたしますと、次に、被買付企業及びその役職員が、公開買付け等事実を「何に関し知ったとき」に規制対象とするのが適当であるかというのが、論点として出てまいります。この点については、現行の規制は、公開買付け等事実を知り得る特別な立場にある者が、当該事実を通常知り得る方法により知った場合に、規制対象とする趣旨ではないかと考えられますので、こうした観点から、公開買付け等の実施等に関する事実を知る契機を限定しているものと考えられます。

以上を踏まえれば、16ページでございますが、公開買付け等事実を公開買付者等から告知により知ったとき(その場合において、当該告知により知った役職員以外の被買付企業の役職員については、その者の職務に関し知ったとき)に規制対象とすることなどが考えられるがどうかというのが、論点のマル2でございます。以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。それでは皆様方からご質問、ご意見をいただければありがたく思います。どなたからでも結構です。いかがでしょうか。

どうぞ、阿部委員。

○阿部委員

論点の方向はこれでいいと思うので、16ページの最後のところで、公開買付者等からの告知により知ったときの括弧ですが、知った役職員以外の被買付企業の役職員については、その者の職務に関し知ったときとされています。例えば、企業の広報担当者が告知を直接聞いたわけではないのだけれども、社内でうわさになっているのを確認されたようなときは、これは関係ないという理解でいいのでしょうか。

○増田市場機能強化室長

これは通常の「職務に関し」と同じでございますので、その広報職員が職務に関して知った場合ということですので、全く違うところから、うわさで聞いたという話であれば別なのですが。

○阿部委員

もう少し限定的に言いますと、プレスの担当者であれば、「こういうような話があるけれど知っていますか」と、よく聞かれると思うのですけれども、単なるうわさよりもうちょっと、相手側が根拠に基づいて尋ねている場合が、実際にあるのです。

○増田市場機能強化室長

外部から知らされたわけですか。

○阿部委員

記者からですね。記者が気付いて裏をとりに来た場合です。

○増田市場機能強化室長

今回の場合は、被買付企業の中の業務で知った場合、その職務に関し聞いたということで書いているわけですので。

○阿部委員

広報担当者であっても、それは外からの情報だから関係ないということでいいのですよね。

○増田市場機能強化室長

そういうことにはなるのではないかと思います。

○阿部委員

はい。

○神田座長

ちょっとわかりにくい話かもしれませんね。何で現行法がこういう契約と限定しているのかという趣旨の説明はあったのでしょうけれども。ちょっと狭いのではないかということですかね。ほかにいかがでしょうか。

神作委員、お願いします。

○神作委員

基本的な現行法規制の考え方で公開買付者等の内部にある当該事実を知る特別の立場にあるか否かという観点からすると、まさに当事者ですので、被買付企業及び役職員について、公開買付者等に含めるというのは、基本的に正しい方向ではないかと思うのですが、ご質問なのですけれども、今、現行法のもとでもあるかと思いますけれども、敵対的買収の場合に防戦買いをすることについての障害と申しますか、ハードルになっているのではないかという議論があったようにも思うのですが、この規律というのは、そういった防戦買いについて何か影響を与えるということは、これはあるのでしょうか。

○古澤市場課長

私のほうで誤解があるかもしれませんけれども、今、御指摘がありました「防戦買い」については、実務の方から167条の5項の防戦買いの規定により、「公開買付け等に対抗するため」の一定の買付けが除外されているが、「公開買付け等に対抗するため」と言われても、それが公開買付者の意思として対外的に明らかにならないとの問題があり、それが実際に防戦買いの規定を発動する際の障害になっている、とのご議論をいただいているというふうに伺っております。

この問題については、今回の論点とは別になりますが、どのような対応が可能なのか4回目に向けて検討させていただいているというのが、今の状況でございます。

○神田座長

どうぞ、阿部委員。

○阿部委員

前回のワーキングでもお願いしたのですけれども、今、公開買付者が他の競合者に意図的に情報を伝達してしまうと、公表されるまでその競合者は身動きがとれなくなってしまいます。これを何とかしてほしいというのは、この機会にぜひお願いいたします。

○古澤市場課長

その話は、166条の問題、167条、両方ございますけれども、そういう問題だと理解してございます。まとまるかどうか、まだ自信ございませんけれども。

○神田座長

ありがとうございます。

ほかにいかがでしょうか。従来の条文がわりと純粋に166条のほうは、コーポレート・インフォメーションというのか、会社に関する情報で、167条のほうが海外で言うマーケット・インフォメーションという建て付けで書いてあるので、公開買付けの対象会社というのですか、役職員というのは直には入ってこなくて、契約を締結している者とかいう形で入ってきているわけです。そこで、今回の方向にいくと、体系的に言うと、むしろ166条のほうに近い話になるのかもしれませんけどね、実質はですね。これはちょっと体系の話です。いずれにしても、今、神作委員がご指摘の点、それから阿部委員がご指摘の点は留意させていただきたいと思います。ほかにいかがでしょうか。やや技術的な面もあるので、わかりにくい話かとは思いますけれども。

いただいている時間は2時間ということですので、あと35、6分程度あります。もし、本日の議論の全般について、さらに追加でご発言があれば、いただきたいと思いますけれども。特に1つ目の情報伝達行為への対応につきましては、皆様方から大変貴重なご指摘をいただきましたので、本日いただきましたご指摘を踏まえて、事務局で整理していただいて、さらにご審議をいただきませんと、最後、このワーキング・グループとしての方向性は出せませんので、そういうことを考えさせていただきたいと思います。

そういう進め方についてでも結構ですし、何か追加でのご発言でも結構ですので、ございましたら、お願いします。阿部委員、お願いします。

○阿部委員

7ページの仲介業者に対する別建てのペナルティーですけれども、海外の法令にこういう例はあるのでしょうか。

○増田市場機能強化室長

具体的に今回、調査で詳しくは聞いていないのですが、業規制として、やはり規制がされている部分というのもございますし、そこは規制としては、罰金が入っている例もあるかと思いますけれども、詳細についてはわからないところがございます。

○神田座長

どうぞ、黒沼委員。

○黒沼委員

よろしいでしょうか。人によって、見方は違うかもしれないのですけれども、少なくともEUでは取引行為が行われなくても、伝達のみで、業者であっても、個人であっても、処罰の対象になりますから、そこでは業者に特別に重い規制を課す必要はないわけです。今、日本で議論しているのはそれよりも軽い規制にしようという前提で、せめて業者だけは重い規制を残しておこうと、EU並みにしようという話ですから。日本だけ重い規制を入れようとしているわけではないということを、共通の認識にしておく必要があると思います。

○神田座長

ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

どうぞ、田島委員。

○田島委員

時間があるようですので、罰則についての論点なのですけれども、ご紹介いただいた事例に照らしまして、懲役刑については上限を上げる必要はないだろうと思います。ただ、罰金刑については、平田委員のご指摘にもありますとおり、上限の5百万円となっている事例が3件あるということに照らしますと、引き上げるのであれば、罰金についての引き上げを検討する余地はあろうかなと思います。でも、その場合でも、1千万円とかいう数字になるのかなと思いますけれども。1つ質問なのですが、事例について、執行猶予期間が3年から5年というふうにお書きいただいているのですが、5年の事例というのはどれになりますでしょうか。一覧表の中では、見当たらないように思いましたのですが。

○増田市場機能強化室長

失礼いたしました。法施行前の例が、5年があったということでございまして、法施行後、5年になってからは例がないということでございます。

○田島委員

3年ないし4年ということですか。

○増田市場機能強化室長

そうですね。この例だけでございますので。

○田島委員

それから細かいことになりますけれども、このバイオファーマの件は実刑にはなっておりますけれども、巨額詐欺事件であるために、懲役15年という判決になったと思います。これは、インサイダー取引の事案単独ですと、実刑になったのかどうかというのは、わからないかなというふうには思います。これは有印私文書偽造、同行使、詐欺と併合罪の関係になっていて、371億円ですか、巨額な詐欺事件であったので、この懲役15年という実刑になっていると思いますので、細かい話ですけれども、これがインサイダー取引の単独犯罪で実刑になったかどうかはわからない。

○増田市場機能強化室長

もちろん。そういうことでございます。

○田島委員

ちょっと参考になるかどうかというところは、問題があるかなと思いま

した。以上です。

○神田座長

ありがとうございます。

どうぞ、池永委員。

○池永委員

市場仲介機能のところの7ページのところなのですけれども、現に取引が行われたか否かにかかわらず、相応の責任が問われる必要はないかという言い方なのですけれども、事務局の考え方を確認させていただきたいのですが、現行でも法人関係情報を利用した勧誘は当然禁止されているわけで、それをやれば当然行政処分の対象になるという形になっているわけですから、ここで言われているのは、やはり刑事罰を科すと、さらに刑事罰についても取引が行われたか否かにかかわりなく、刑事罰を科していく方向という、そういうご提案だというふうに理解してよろしいのでしょうか。

○増田市場機能強化室長

はい。そういうことでございます。あくまでも不公正取引規制の一環として、金商業者等については上乗せ的な規制をということでございます。

○神田座長

よろしいでしょうか。どうぞ、阿部委員。

○阿部委員

もう一度罰金に戻りますけれども、次回以降、課徴金の水準の議論があると思うので、そことセットで考えていただくということと、罰金と課徴金については、何らかの調整をするという前提で議論していきたいと思います。

○神田座長

ありがとうございます。なかなか難しい話になりそうですけれども、それは次回以降、またご議論をお願いしたいと思います。ほかにいかがでしょうか。どうぞ、何かありますか。

○古澤市場課長

御指摘の「調整」というのは、現行制度の建て付けだと、罰金と没収・追徴との調整ということになろうかと思いますが。

○阿部委員

独禁法は課徴金と刑事罰の罰金という調整もありますので。水準次第ですけれども、そういう議論も必要になってくるかと思います。

○神田座長

次回以降、場合によっては、ご審議をお願いしたいと思います。ほかにいかがでしょうか。

よろしいでしょうか。そうしましたら、大変恐縮ですけれども、難問もまだ残っているように思いますので、お考えいただいて、さらにお気づきの点がございましたら、事務局までぜひご連絡をいただきたいと思います。先ほど申しましたように、本日の議論を踏まえて、さらなるご議論をお願いするように、事務局で整理していただきたいと思います。

それでは、事務局から今後についてのご連絡等がありましたら、お願いします。

○増田市場機能強化室長

次回のワーキング・グループの日程でございますが、皆様のご都合を踏まえまして、また後日、事務局よりご案内させていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。

以上をもちまして、本日の会議を終了いたします。ありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局市場課市場機能強化室(内線3607、2622)

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